説明

撮像装置

【課題】色再現性や分解能が優れる上に、パララックスの発生を抑制することができ、広い範囲の画像を取得可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】各撮像手段11,12,13,14において、NP点5が撮像素子より後方に設定され、1つのNP点を中心とした半径約20mm以内の領域に集合させており、レンズ1,2を通過した光線を波長の異なる複数の光線に分離する分離手段3と、分離された複数の光線をそれぞれ検知する複数の撮像素子4R,4G,4Bとを備えた撮像装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全天(全方位)等の広い範囲を撮影することができる撮像装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
周知のように、多数のビデオカメラを1つの筐体に収納して、全方位・全周、或いは広角・広域を、同時に撮影するカメラが種々開発されている。
【0003】
このようなカメラを構成した場合において課題となる、パララックス(視差)の問題を解決するために、ミラーを使用しないでパララックスを解決する光学系が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ミラーを使用しない光学系は、ミラー部分の体積が不要となることによって、装置全体の小型化が可能である利点や、ミラーが無いことによって光学系の小型化と通常のレンズのみの光学系と同等の扱いやすさとを実現できる利点を有する。
【0005】
上述の光学系では、具体的には、多数のカメラでそれぞれのカメラのNP点(ノンパララックス点)の位置を略一致させるように、配置している。
このNP点(ノンパララックス点)とは、カメラの光学系の開口絞りの中心を通る多数の主光線のうち、ガウス領域に位置する主光線を選択して、この選択された主光線の物空間における直線成分を延長して前記光学系の光軸と交わる点として定義されるものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−162018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、モノクロ、カラーにかかわらず、単板式カメラが使用されてきた。その理由の1つは、各カメラでNP点を略一致させるために、撮像素子周辺の容積が限定されるためであった。
その結果、撮影された画像の色再現性や分解能において難があった。
【0008】
上述のように撮像素子周辺の容積が限定されることを、図8を参照して説明する。図8は、多数のカメラを接合して、広範囲(全方位・全周、或いは広角・広域)を同時に撮影するカメラのうちの1つのカメラ100を示した概略断面図である。
【0009】
図8のカメラ100において、最も被写体側のレンズ(前玉レンズ)101の端縁の点111,112を通った主光線105,106は、レンズ群102を通過(途中の区間の図示は省略している)して、撮像素子103の受光面の端点に到達する。
【0010】
広い範囲の撮影には、図8で示したカメラ100のNP点104を、複数のカメラで略一致させ、かつ100Aで示す外周面を、隣り合うカメラの100Bで示す外周面に接するように配置する。
このように隣り合うカメラ100を外周面100A,100Bで接するように配置するため、撮像素子103の近傍に位置させる必要性の高い、電気回路基板やケーブル等を、ほぼ斜線で示した空間S内に収納する必要がある。
斜線で示した空間Sは、外周面100A及び100Bと撮像素子103の近傍の光軸107に垂直な面とによって囲まれた空間である。
空間Sの内部に、撮像素子103、電気回路基板やケーブル等を収納することを考慮すると、単板式カメラとすることが望ましいので、従来は単板式カメラが用いられていた。
【0011】
また、監視カメラ等では、照度の低い環境に置かれた被写体を撮影する必要性が高い。
しかしながら、単板式カラーカメラでは、カラーフィルタを通過しない色の光は撮像素子で検知されない。このため、照度の低い環境用の監視カメラ等の用途に対して、単板式カラーカメラを搭載する全方位・広角・広域撮影カメラでは感度が不足していた。
【0012】
上述した問題の解決のために、本発明においては、色再現性や分解能が優れる上に、パララックスの発生を抑制することができ、広い範囲の画像を取得可能な撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の撮像装置は、広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部を、それぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理する撮像装置であって、撮像手段がレンズ及びこのレンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、各撮像手段において、NP点が撮像素子より後方に設定され、かつ複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした半径約20mm以内の領域に集合させ、各撮像手段において、レンズを通過した光線を波長の異なる複数の光線に分離する分離手段と、分離された複数の光線をそれぞれ検知する複数の撮像素子とを備えたものである。
【0014】
上述の本発明の撮像装置の構成によれば、各撮像手段においてNP点が撮像素子よりも後方に設定されているため、各撮像手段のレンズ等の光学系が他の撮像手段の光路を遮らない。また、複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした半径約20mm以内の領域に集合させたことにより、各撮像手段の間のパララックスを抑制して、ほとんどなくすことが可能になる。
そして、広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影するので、広範囲の被写体を、パララックスをほとんど生じることなく撮影することが可能になる。
さらに、レンズを通過した光線を波長の異なる複数の光線に分離する分離手段を備えると共に、分離された複数の光線をそれぞれ検知する複数の撮像素子を備えたことにより、単板式と比較して、それぞれの色の光を検知する画素数を多くすることができるため、色再現性や分解能を高めることができる。また、分離された光線をそれぞれ撮像素子で検知することができるため、カラーフィルタを通過しない色の光が検知されない単板式と比較して、入射光を効率よく検知することができ、感度を向上することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
上述の本発明によれば、色再現性や分解能を高めることができる。これにより、高精細な画像を得ることが可能になる。
また、広範囲の被写体を、パララックスをほとんど生じることなく撮影することが可能になる。
従って、本発明によれば、広い範囲、例えば全方位等を、高精細でかつ良好な画質で撮影することが可能な撮像装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明によれば、単板式と比較して、入射光を効率よく検知することができ、感度を向上することが可能になるため、低照度における視認特性が優れ、広い範囲を高精細でかつ良好な画質で撮影することが可能な撮像装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の撮像装置の一実施の形態を、図1〜図5を参照して説明する。図1は撮像装置の上下方向の概略断面図を示し、図2は図1の要部の拡大図を示し、図3は撮像装置の水平方向の概略断面図を示し、図4は図2の要部の拡大図を示し、図5は、撮像装置を被写体側から見た概略平面図を示している。
【0018】
この撮像装置10は、被写体側の端部にレンズ(前玉レンズ)1が設けられた、4個のカメラ11,12,13,14によって構成されている。そして、4個のカメラ11,12,13,14でそれぞれ撮影した画像から1つの貼り合せ画像を得るものである。
【0019】
各カメラ11,12,13,14は、断面がほぼ正方形の四角錐形状を有する筐体の内部に、前玉レンズ1、4個のレンズから成るレンズ群2、開口絞り(図示せず)、並びに、撮像素子を配置して成る。開口絞りは、レンズ群2の前段、途中、後段のいずれかの位置に設けられる(特開2004−80088号公報、特開2004−191593号公報等を参照)。
【0020】
最も被写体側の前玉レンズ1よりも前方(図1中左側)の空間を、物空間と呼ぶ。
開口絞りの中心を通過する光(主光線)のうち、光学系の光軸7に近い位置(ガウス領域)の主光線で、かつ物空間にある光線を延長して光軸7と交わる点を、NP点5と定義する。
また、各カメラ11,12,13,14のNP点5が、四角錐形状の筐体の頂点に存在するように、レンズ1,2や開口絞り等から成る光学系を構成している。四角錐形状の筐体の側面は、前玉レンズ1の端縁とNP点5とを結ぶ線分の集合から成る平面となっている。
さらに、各カメラ11,12,13,14のNP点5は、レンズ群2及び撮像素子よりも後方にある。このように後方にNP点5を存在させるためには、レンズ1,2や開口絞り等により、例えばテレフォト型(望遠型)の光学系を構成すればよい。
レンズ群2及び撮像素子よりも後方にNP点5があることにより、各カメラ11,12,13,14のレンズ1,2等の光学系が、他のカメラの光路を遮らない。
【0021】
前玉レンズ1は、断面がほぼ正方形の筐体内に設けられているので、筐体の断面形状に合わせてほぼ正方形の断面形状となっている。このような前玉レンズ1は、例えば断面形状が円形の球面レンズを、断面形状がほぼ正方形となるように、中心線を通らない平面でカットすることにより、作製することができる。
【0022】
なお、図1〜図4は、上下又は左右に並ぶ2個のカメラの各光軸を通る平面における断面図を示している。即ち、図3は図1のA−Aを通る面における断面図であり、図1は図3のB−Bを通る面における断面図である。また、これら各断面を、図5の平面図に鎖線A,Bとして示す。
【0023】
図1に示すように、上下方向Vに並ぶ2個のカメラ11,13において、NP点5を略一致させている。
図3に示すように、水平方向Hに並ぶ2個のカメラ11,12において、NP点5を略一致させている。
図示しないが、カメラ12とカメラ14、カメラ13とカメラ14についても、同様にNP点5を略一致させている。
即ち、図5に示す4個のカメラ11,12,13,14において、NP点5を略一致させている。
なお、このようにNP点5を略一致させるように4個のカメラ11,12,13,14を接合していることから、図5の平面図において、各カメラ11,12,13,14の底面が紙面の向こう側に若干傾斜しており、厳密には正方形にならない。しかしながら、図1及び図3に示すように、前玉レンズ1の大きさに対して、カメラ11,12,13,14の長さが5倍程度もあり、底面の傾斜角度が小さいことから、図5において各底面を正方形で表現している。
【0024】
本実施の形態の撮像装置10においては、特に、レンズ群2と撮像素子との間に、入射する光線を波長領域(赤色光、緑色光、青色光)ごとに分離する分離手段として、分光プリズム3を配置して、この分光プリズム3により光線を分離して、分離した光線をそれぞれ対応する撮像素子4R,4G,4Bで検知する構成としている。
【0025】
図3に示す水平方向Hの概略断面図によると、2個のカメラ11,12においてNP点5が略一致しており、かつ2個のカメラ11,12がそれぞれの四角錐形状の筐体の側面11D,12Cでほぼ接している。これにより、2個のカメラ11,12によって撮影された画像は、簡単な画像処理を行うことにより、任意の距離にある被写体に対しても画像の境目に違和感を生じないで画像をつなげることができる。
【0026】
カメラ11の筐体の側面11D及びカメラ12の筐体の側面12Cは、図3の断面では、物空間(被写体側の空間)における主光線25が前玉レンズ1のレンズ第1面(被写体側のレンズ面)1Aと交差する点25Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
カメラ11の筐体の側面11Cは、図3の断面では、物空間における主光線24が前玉レンズ1のレンズ第1面1Aと交差する点24Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
カメラ12の筐体の側面12Dは、図3の断面では、物空間における主光線26が前玉レンズ1のレンズ第1面1Aと交差する点26Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
【0027】
被写体から発せられた主光線24は、一方のカメラ11の最も被写体側にある前玉レンズ1を通り、屈折し主光線35となる。この主光線35は、4個のレンズから成るレンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り撮像素子4Gの水平方向Hの端点42で受光面に到達する。
同様に、被写体から発せられた主光線25は、一方のカメラ11において、前玉レンズ1を通り、屈折し主光線36となる。この主光線36は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り撮像素子4Gの水平方向Hの端点41で受光面に到達する。
また、この主光線25は、他方のカメラ12において、前玉レンズ1を通り、屈折し主光線37となる。この主光線37は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り撮像素子4Gの水平方向Hの端点42で受光面に到達する。端点42は、端点41とは光軸7を中心として180度の位置にある。
被写体から発せられた主光線26は、他方のカメラ12の前玉レンズ1を通り、屈折し主光線38となる。この主光線38は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り撮像素子4Gの水平方向Hの端点41で受光面に到達する。
【0028】
従って、各カメラ11,12において、撮像素子4Gの端点41,42を通る主光線35,36,37,38が、前玉レンズ1の端縁にある点24A,25A,26Aを通るように光学系が構成されている。これにより、各カメラ11,12の撮像領域を欠損なく接合させることができることから、各カメラ11,12の撮像素子4Gでそれぞれ得られた画像を張り合わせることができる。
【0029】
以上から、物空間における2つの主光線24,26によって囲まれた、水平方向Hの画角範囲では、2個のカメラ11,12での撮影にもかかわらず、死角なしに撮影が可能である。
【0030】
図3中の面39は、レンズ群2の最も像面側のレンズ面と光軸7とが交わる点の、光軸7に対して垂直な面を、示している。
この面39と筐体の側面11C,12Cと筐体の側面11D,12Dとによって囲まれた空間S1,S2の中に、分光プリズム3、撮像素子4G、カメラ回路(図示せず)を配置することにより、NP点5を2個のカメラ11,12で略一致させることが可能となっている。
なお、筐体の側面11C,11D,12C,12Dは、NP点5と、前玉レンズ1の端縁にあり主光線24,25,26が入射する点24A,25A,26Aとを、それぞれ結ぶ線分を図3の紙面と垂直な方向に拡張した面となっている。
【0031】
図1は、本実施の形態の撮像装置10を上下方向V、つまり図3を90度回転させた方向から見た概略断面図である。
【0032】
分光プリズム3は、図1及び図2の拡大図に示すように、3個のプリズム3A,3B,3Cを組み立てて構成される。各プリズム3A,3B,3Cの隣接するプリズムとの間の境界面には、入射光を波長で分離する機能を有する光学膜を設けて、可視光を赤色光、緑色光、青色光に分離する。光学膜は、接着(貼り付け)又は成膜(塗布、その他の成膜法)により、プリズム3A,3B,3Cの境界面に形成されている。
手前側の1番目のプリズム3Aに対して、青色光を検知する撮像素子4Bが設けられている。2番目のプリズム3Bに対して、赤色光を検知する撮像素子4Rが設けられている。奥側の3番目のプリズム3Cに対して、緑色光を検知する撮像素子4Gが設けられている。
【0033】
図1に示す上下方向Vの概略断面図によると、図3に示した水平方向Hの概略断面図と同様に、2個のカメラ11,13においてNP点5が略一致しており、かつ2個のカメラ11,13がそれぞれの四角錐形状の筐体の側面11B,13Aでほぼ接している。これにより、2個のカメラ11,13によって撮影された画像は、簡単な画像処理を行うことにより、任意の距離にある被写体に対しても画像の境目に違和感を生じないで画像をつなげることができる。
【0034】
カメラ11の筐体の側面11B及びカメラ13の筐体の側面13Aは、図1の断面では、物空間(被写体側の空間)における主光線22が前玉レンズ1のレンズ第1面(被写体側のレンズ面)1Aと交差する点22Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
カメラ11の筐体の側面11Aは、図1の断面では、物空間における主光線21が前玉レンズ1のレンズ第1面1Aと交差する点21Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
カメラ13の筐体の側面13Bは、図1の断面では、物空間における主光線23が前玉レンズ1のレンズ第1面1Aと交差する点23Aと、NP点5とを結んだ線分となっている。
【0035】
被写体から発せられた主光線21は、一方のカメラ11の最も被写体側にある前玉レンズ1を通り、屈折し主光線31となる。この主光線31は、4個のレンズから成るレンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り、可視光400nm〜700nmのうちの、赤成分(赤色光)が撮像素子4Rの受光面に到達し、緑成分(緑色光)が撮像素子4Gの上下方向Vの端点44で受光面に到達し、青成分(青色光)が撮像素子4Bの受光面に到達する。
同様に、被写体から発せられた主光線22は、一方のカメラ11において、前玉レンズ1を通り、屈折し主光線32となる。この主光線32は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り、赤成分は撮像素子4Rの受光面に到達し、緑成分は撮像素子4Gの上下方向Vの端点43で受光面に到達し、青成分は撮像素子4Bの受光面に到達する。端点43は、端点44とは光軸7を中心として180度の位置にある。
また、この主光線22は、他方のカメラ13において、前玉レンズ1を通り、屈折し主光線33となる。この主光線33は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り、赤成分は撮像素子4Rの受光面に到達し、緑成分は撮像素子4Gの上下方向Vの端点44で受光面に到達し、青成分は撮像素子4Bの受光面に到達する。
被写体から発せられた主光線23は、他方のカメラ13の前玉レンズ1を通り、屈折し主光線34となる。この主光線34は、レンズ群2を通った後に、分光プリズム3を通り、赤成分は撮像素子4Rの受光面に到達し、緑成分は撮像素子4Gの上下方向Vの端点43で受光面に到達し、青成分は撮像素子4Bの受光面に到達する。
【0036】
従って、各カメラ11,13において、撮像素子4Gの端点43,44を通る主光線31,32,33,34が、前玉レンズ1の端縁にある点21A,22A,23Aを通るように光学系が構成されている。また、これらの主光線31,32,33,34は、分光プリズム3で分離されて、撮像素子4Rや撮像素子4Bの端点を通る。
これにより、各カメラ11,13の撮像領域を欠損なく接合させることができることから、各カメラ11,13の撮像素子4R,4G,4Bでそれぞれ得られた画像を張り合わせることができる。
【0037】
以上から、物空間における2本の主光線21,23によって囲まれた、上下方向Vの画角範囲では、2個のカメラ11,13での撮影にもかかわらず、死角なしに撮影が可能である。
【0038】
図1中の面39は、図3中の面39と同じ面である。
この面39と筐体の側面11A,13Aと筐体の側面11B,13Bとによって囲まれた空間S1,S3の中に、分光プリズム3、撮像素子4R,4G,4B、カメラ回路(図示せず)を配置することにより、上下方向VにおいてもNP点5を2個のカメラ11,13で略一致させることが可能となっている。
なお、筐体の側面11A,11B,13A,13Bは、NP点5と、前玉レンズ1の端縁にあり主光線21,22,23が入射する点21A,22A,23Aとを、それぞれ結ぶ線分を図1の紙面と垂直な方向に拡張した面となっている。
【0039】
上述の本実施の形態の撮像装置10の構成によれば、前玉レンズ1とレンズ群2を通過した光線を、波長の異なる3本の光線に分離する分光プリズム3(3A,3B,3C)を備えると共に、分離された複数の光線(赤色光、緑色光、青色光)をそれぞれ検知する3個の撮像素子4R,4G,4Bを備えたことにより、単板式と比較して、それぞれの色の光を検知する画素数を多くすることができるため、色再現性や分解能を高めることが可能になる。また、カラーフィルタを通過しない色の光が検知されない単板式と比較して、入射した光線を効率よく検知することができ、感度を向上することが可能になる。
これにより、色再現性や分解能を高めて、高精細な画像を得ることが可能になる。また、感度を向上して、低照度においても充分な感度を得ることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、4個のカメラ11,12,13,14のNP点5を略一致させていることにより、隣り合うカメラとのパララックスを抑制して、ほとんどなくすことが可能になる。
これにより、4個のカメラ11,12,13,14により、広い範囲を、パララックスをほとんど生じることなく良好な画質で撮影することが可能になる。
【0041】
従って、広い範囲、例えば全方位等を、高精細でかつ良好な画質で撮影することが可能な撮像装置10を実現することができる。
また、低照度における視認特性が優れ、広い範囲を高精細でかつ良好な画質で撮影することが可能な撮像装置10を実現することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、各カメラ11,12,13,14において、レンズ群2の最も撮像素子側のレンズの撮像素子側のレンズ面と光軸7との交点を通り光軸7に垂直な面39及び、主光線31,32,33,34,35,36,37,38等の主光線と前玉レンズ1の被写体側のレンズ面1Aとの交点の集合による光線とNP点5とを結ぶ面(カメラ11の四角錐形状の筐体の側面11A,11B,11C,11D)に囲まれた空間S1,S2,S3の内部に、分離手段の分光プリズム3及びそれぞれの撮像素子4R,4G,4Bが収納されている。
表現を変えると、撮像素子4Gの受光面の端点41,42,43,44にそれぞれ入射する主光線(主光線31,32,33,34,35,36,37,38等)が前玉レンズ1を通る点(21A,22A,23A,24A,25A,26A等)とNP点5とにより囲まれる空間から、前玉レンズ1からレンズ群2の最も撮像素子側のレンズまでが占める空間を除いた空間S1,S2,S3の内部に、分離手段の分光プリズム3及びそれぞれの撮像素子4R,4G,4Bが収納されている。
このように、空間S1,S2,S3の内部に、分光プリズム3及び撮像素子4R,4G,4Bが収納されていることにより、電気回路基板やケーブル等をもこの空間S1,S2,S3の内部に収納することが可能であり、隣り合うカメラを接合してNP点5を略一致させることができる。
これにより、撮像装置10をコンパクトに構成することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、カメラ11,12,13,14の筐体を底面がほぼ正方形の四角錐形状として、前玉レンズ1をほぼ正方形の断面形状としているため、カメラ11,12,13,14の外周面を隙間なく接合することができる。このように隙間なく接合することができるため、前玉レンズ1の被写体側のレンズ面1Aから隣り合うカメラの撮像領域がオーバーラップすることから、撮像装置10の前方に死角を生じない。また、撮像素子の撮像領域は通常長方形や正方形であるため、ほぼ正方形の断面形状である前玉レンズ1の端縁を通った主光線が、撮像素子の撮像領域の端部の画素に到達するように光学系(レンズ1,2や開口彫り等)を構成することができる。これにより、正方形又は長方形の撮像領域の角部の画素にも充分な量の光が到達し、撮像素子の撮像領域を有効に利用することができる。
カメラの筐体の底面及び前玉レンズ1の断面形状を長方形とした場合も、ほぼ同様の効果が得られる。
一方、カメラを円錐形状とした場合には、隣り合うカメラの前玉レンズの間に隙間を生じるため、撮像領域がオーバーラップするまでの区間に、いずれのカメラの撮像領域にも含まれない死角の領域を生じる。また、撮像素子に達する像が円形もしくは楕円形となるので、正方形又は長方形の撮像領域の角部の画素には光が到達しにくくなり、撮像素子の撮像領域の利用効率が劣る。
【0044】
前述したように、例えば、監視用のカメラにおいては、照度の低い環境に置かれた被写体を撮影する必要性が高くなる。
単板式の全方位・広角・広域撮影カメラでは、カラーフィルタにおける吸収があることや、画素を各色に振り分けることによって、受光感度が低くなるため、照度の低い被写体を撮影することが困難である。
そこで、本発明を適用してプリズムにより入射した光線を分離すると共に、可視光を検知する撮像素子と、赤外光を検知する撮像素子とにおいて、分離した光線をそれぞれ検知する構成とすることが考えられる。
この場合の実施の形態を、次に示す。
【0045】
本発明の撮像装置の他の実施の形態を、図6〜図7を参照して説明する。図6は撮像装置の上下方向の概略断面図を示し、図7は図6の要部の拡大図を示している。
本実施の形態は、図1〜図5に示した先の実施の形態と同様に、4個のレンズ及びカメラで、広い範囲を高精細に撮影するものである。
水平方向の断面図については、先の実施の形態の撮像装置10と同様であるので、図面及び説明は省略する。
【0046】
先の実施の形態の撮像装置10では、約400nm〜700nmの可視光が分光プリズム3(3A,3B,3C)に入射し、青、緑、赤に分離されてそれぞれの波長に対応した撮像素子に到達して検知される構成であった。
これに対して、本実施の形態の撮像装置50では、先の実施の形態の3番目のプリズム3Cの代わりに、2個のプリズム3D,3Eを設けて、4個のプリズム3A,3B,3D,3Eによって分光プリズム3を構成している。そして、本実施の形態においても、各プリズム3A,3B,3D,3Eの隣接するプリズムとの間の境界面に、入射光を波長で分離する機能を有する光学膜を設けている。
手前側の1番目のプリズム3Aに対して、青色光を検知する撮像素子4Bが設けられている。2番目のプリズム3Bに対して、赤色光を検知する撮像素子4Rが設けられている。3番目のプリズム3Dに対して、赤外光を検知する撮像素子4IRが設けられている。奥側の4番目のプリズム3Eに対して、緑色光を検知する撮像素子4Gが設けられている。
3番目のプリズム3Dに対して赤外光を検知する撮像素子4IRを設けているので、3番目のプリズム3Dと4番目のプリズム3Eとの間の境界面の光学膜には、赤外光を反射し緑色光を透過する特性を有する光学膜を選定する。
【0047】
レンズ群2を通過した光のうち、約400nm〜1000nmの可視光及び赤外光が、分光プリズム3に入射して、分光される。
波長約700nm〜1000nmの赤外成分は、撮像素子4IRの受光面に到達する。
波長約400nm〜700nmの可視光のうち、青成分は撮像素子4Bの受光面に到達し、緑成分は撮像素子4Gの受光面に到達し、赤成分は撮像素子4Rの受光面に到達する。
【0048】
各撮像素子4IR,4G,4R,4Bは、それぞれの波長の光が鮮鋭な像を結ぶ位置に設けられている。これにより、各撮像素子4IR,4R,4G,4Bで得られた4枚の画像を利用して1枚の画像を生成する場合においても、フォーカスの合った画像が得られる。
【0049】
その他の構成は、先の実施の形態の撮像装置10と同様であるので、重複説明を省略する。
【0050】
上述の本実施の形態の撮像装置50の構成によれば、先の実施の形態の撮像装置10と同様に、本実施の形態によれば、4個のカメラ11,12,13,14のNP点5を略一致させていることにより、隣り合うカメラとのパララックスを抑制して、ほとんどなくすことが可能になる。
これにより、4個のカメラ11,12,13,14により、広い範囲を、パララックスをほとんど生じることなく良好な画質で撮影することが可能になる。
【0051】
また、分光プリズム3(3A,3B,3D,3E)において、前玉レンズ1とレンズ群2を通過した光線を波長の異なる4本の光線(赤外光、赤色光、緑色光、青色光)に分離して、それぞれの光線を検知する4個の撮像素子4IR,4R,4G,4Bを備えているので、単板式と比較して、色再現性や分解能を高めることが可能になり、また、感度を向上することが可能になる。
そして、特に、前玉レンズ1とレンズ群2を通過した光線から赤外光を分離して、撮像素子4IRで検知するので、赤外光による画像を得ることができる。これにより、低照度での視認性能を、先の実施の形態の撮像装置10から、さらに高めることができる。
従って、低照度における視認特性が特に優れており、広い範囲を高精細でかつ良好な画質で撮影することが可能な撮像装置50を実現することができる。
【0052】
ここで、赤外光を検知する撮像素子4IRを、可視光を検知する他の撮像素子4R,4G,4Bとは、異なる構成としても良い。例えば、固体撮像素子のフォトダイオードを赤外光の検出効率を高くするために深く形成することや、赤外光のうち波長の長い領域の光を検知できるように特化した構成とすること等が、考えられる。
【0053】
また、赤外光を検知する撮像素子4IRが検出する波長範囲は、上述した波長約7000nm〜1000nmに限定されるものではなく、その他の波長範囲(より広い範囲、より狭い範囲等)としても構わない。そして、検出する波長範囲に合わせて、撮像素子4IR及び光を分離する光学膜の構成を選定すればよい。
【0054】
さらにまた、図1〜図5に示した撮像装置10の構成を変形して、例えば、2番目のプリズム3Bに設けた撮像素子において、赤色光と近赤外光の両方を検知する構成としても構わない。この場合、2番目のプリズム3Bと3番目のプリズム3Cとの間の光学膜を、赤色光を反射するだけでなく、近赤外光をも反射する特性を有する構成とする。
【0055】
さらにまた、2個のプリズムによって分光プリズムを構成して、波長約400nm〜約1000nmの光線を、可視光である波長約400nm〜約700nmと近赤外光である波長約700nm〜約1000nmとの2本に分離し、分離した各光線に対応した2個の撮像素子(可視光用、近赤外光用)を設ける構成とすることも可能である。
【0056】
上述の各実施の形態では、撮像装置10,50の各カメラ11,12,13,14を、底面がほぼ正方形である四角錐形状の筐体を有する構成としていたが、例えば、底面の縦横がある程度異なる長方形であっても構わない。例えば、テレビジョン受像機の画面の縦横比(3:4や9:16)に合わせた、長方形の底面形状とすることが可能である。
【0057】
上述の各実施の形態では、光線を波長により複数に分離する分離手段として、光学膜を境界面に設けた複数のプリズムから成る分光プリズム3を使用した構成であった。
本発明の分離手段としては、その他の構成も可能である。例えば、プロジェクタ等で使用されているように、光線を分離する光学膜をガラス板の表面に形成した構成等が考えられる。ただし、それぞれの撮像手段(カメラ等)の大きさと比較して、分離手段が大きくなり過ぎないように、適切な構成の分離手段を使用する。
なお、上述の各実施の形態のように複数のプリズムを接合した分光プリズム3を使用すると、ガラス板を使用した場合と比較して、光学系の調整が容易になり、光学系の精度を容易に高めることができる、という利点を有する。
【0058】
上述の各実施の形態では、レンズ群2の最も撮像素子側のレンズ面と光軸7との交点を通り光軸7に垂直な面と、カメラの筐体の外周面とに囲まれた空間S1,S2,S3に、分光プリズム3及び撮像素子4R,4G,4B,4IRを収納した構成であった。このような構成とすると、撮像装置の構成が簡略化され小型化が可能になる利点を有する。
しかしながら、本発明の撮像装置においては、分離手段及び撮像素子を、この空間内に設けることが必須ではない。そして、例えば、隣り合う撮像手段(カメラ等)を接合する側とは反対の側の外周面に対して、図5の構成で言えば面11Aや面11C等の面に対して、面よりも外側に撮像素子を設けること(例えば、本出願人による先の出願である、特開2006−30664号公報を参照)や、面の外側にまで跨るように分離手段を設けることも可能である。このように撮像装置を構成した場合、撮像手段の筐体は四角錐形状から一部突出した形状となる。この場合でも、色再現性や分解能を高めることができ、複数の撮像手段を接合してパララックスをほとんど生じることなく広範囲の被写体を撮影することが可能になる。
【0059】
上述の各実施の形態では、4個のカメラ11,12,13,14のNP点5を略一致させていたが、本発明においては、各撮像手段のNP点を、1つのNP点を中心とした半径約20mm以内の領域に集合させていればよい。この領域内にNP点を集合させれば、パララックスを生じることなく、各撮像手段の撮像素子で得られた画像を張り合わせることができる。
【0060】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態の撮像装置の上下方向の概略断面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態の撮像装置の水平方向の概略断面図である。
【図4】図3の要部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施の形態の撮像装置を被写体側から見た概略平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の撮像装置の上下方向の断面図である。
【図7】図6の要部の拡大図である。
【図8】多数のカメラを接合して、広範囲を同時に撮影するカメラのうちの1つのカメラを示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 レンズ(前玉レンズ)、2 レンズ群、3 分光プリズム、3A,3B,3C,3D,3E プリズム、4R,4G,4B,4IR 撮像素子、5 NP点、7 光軸、10,50 撮像装置、11,12,13,14 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部を、それぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、各前記撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理する撮像装置であって、
前記撮像手段が、レンズ及び前記レンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、
前記撮像手段の前記レンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、前記選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、
各前記撮像手段において、前記NP点が前記撮像素子より後方に設定され、かつ前記複数の撮像手段の各前記NP点を1つのNP点を中心とした半径約20mm以内の領域に集合させ、
各前記撮像手段において、前記レンズを通過した光線を、波長の異なる複数の光線に分離する分離手段と、分離された複数の光線をそれぞれ検知する複数の前記撮像素子とを備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
各前記撮像手段において、最も前記撮像素子側のレンズの前記撮像素子側のレンズ面と前記光軸との交点を通り前記光軸に垂直な面及び、前記選択された主光線と最も被写体側のレンズの被写体側のレンズ面との交点の集合による交線と前記NP点とを結ぶ面に囲まれた空間の内部に、前記分離手段が収納されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
各前記撮像手段において、複数の光線をそれぞれ検知する複数の前記撮像素子も、前記空間の内部に収納されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記分離手段において、波長約400nm〜約700nmの光を、波長により、青・緑・赤の3色に対応する3つの波長領域に分離し、分離して得られたそれぞれの光を検知する3個の撮像素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記分離手段において、波長約400nm〜約1000nmの光を、可視光である波長約400nm〜約700nmと、近赤外光である波長約700nm〜約1000nmとに分離し、分離して得られたそれぞれの光を検知する2個の撮像素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記分離手段において、波長約400nm〜約1000nmの光を、波長により、青、緑、赤及び近赤外の3つの波長領域に分離し、分離して得られたそれぞれの光を検知する3個の撮像素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記分離手段において、波長約400nm〜約1000nmの光を、波長により、青、緑、赤、近赤外の4つの波長領域に分離し、分離して得られたそれぞれの光を検知する4個の撮像素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記分離手段を、前記レンズと前記撮像素子との間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
各前記撮像手段において、最も被写体側にあるレンズの断面形状が正方形又は長方形とされており、四角錐形状の筐体が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−294819(P2008−294819A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139235(P2007−139235)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】