説明

撮像装置

【課題】 レンズの移動なくマクロ撮影モードへの切り替えを実現でき、撮像装置の小型化に有効であり、画質の劣化を低減させる撮像装置を提供する。
【解決手段】 被写体からの光を集光する光学系と、光学系が集光した光を受光し、撮像信号を生成する半導体撮像素子4と、光学系と半導体撮像素子4の間に設けられ、印加された電界に応じて屈折率が変化する特性を有し、電界の電界制御に従って屈折率が切り替えられる透明部材5とを備え、透明部材5に電界が印加されて透明部材5の屈折率が変化することによって、撮影モードの切り替えが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体撮像素子を用いた撮像装置に関し、特に、撮影モードの切り替えを行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ付き携帯電話などには、レンズと撮像素子とを一体化した薄型・小型の撮像装置が多用されている。これらの撮像装置は、特許文献1に開示されているように、通常撮影モードとマクロ撮影モードとをレバーによって切り替えていた。例えば、レバーの回転によって、レンズ全体が光軸方向へ移動するように構成され、撮像素子とレンズ全体との物理的な距離が変更されることによって、撮影モードの切り替えが行われていた。
【0003】
また、特許文献2には、カメラ付きの折り畳み型の携帯電話において、QRコードを読み取る際に、携帯電話をほぼ直角に開くことによって、マクロ撮影できるように撮影モードを切り替えることが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、カメラ付きの携帯電話において、携帯電話の側面に配置されたピント切り替えレバーを操作することで焦点の合う距離を変更する発明が開示されている。
【0005】
このように、従来の撮像装置においては、レバーなどによって、レンズ全体を光軸方向に移動させ、通常撮影モードとマクロ撮影モードの切り替えが行われている。
【特許文献1】特開2006−99072号公報
【特許文献2】特開2005−300671号公報
【特許文献3】特開2005−277643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の撮像装置では、通常撮影モードとマクロ撮影モードとを切り替える場合、レバーなどを回転させることによって、レンズ全体が光軸方向へ移動するようになっており、マクロ撮影時にはレンズ全体が被写体側へと移動する。これにより、マクロ撮影時には、撮像装置全体の光軸方向の寸法が大きくなるために、同等のマクロ切り替え機能のない固定焦点の撮像装置と比較して、マクロ切り替え付きの撮像装置の小型化が阻害されていた。
【0007】
また、従来の撮像装置では、マクロ撮影時において撮像装置の寸法が最大長となるので、撮像装置を携帯電話など携帯端末装置に実装する場合には、撮像装置の最大長を収納できるスペースが確保されなければならないことから、レンズの移動スペースによって携帯端末装置の薄型化が阻害されていた。
【0008】
また、マクロ撮影モードへの切り替えに伴い、レバーなどを回転させてレンズ全体が移動する。この際、レバーとレンズ(レンズ鏡筒)の当接部の間、またはレンズ鏡筒とガイド部分との間において、部品同士が摺動する。この摺動により、磨耗粉や部品に付着しているゴミが移動したり、飛散したりする場合があり、これらの磨耗粉やゴミが、撮像画像を劣化させる原因となるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、撮影モードを変更する際に、レンズを移動させずに撮影モードの切り替えを実現し、撮像装置の小型化または携帯端末装置の薄型化を図ることにある。
【0010】
また、本発明の目的は、レンズを移動させる機械的な摺動部をなくすことにより、摺動による磨耗粉の発生を防止でき、画像の劣化のない撮像装置を実現できることにある。
【0011】
更には、本発明の目的は、この撮像装置を用いて、カメラ付き携帯電話などの携帯端末装置を構成することで、携帯端末装置の小型化・薄型化を図り、画像の劣化のない優れたカメラ付き携帯端末装置を実現できることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の撮像装置は、被写体からの光を集光する光学系と、光学系が集光した光を受光し、撮像信号を生成する撮像素子と、光学系と撮像素子の間に設けられ、印加された電界に応じて屈折率が変化する特性を有し、電界の電界制御に従って屈折率が切り替えられる透明部材とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、透明部材に電界を印加することにより屈折率が変化し、撮像光学系と半導体撮像素子との間の光学的な距離(光路長)を実質的に変更することができる。これにより、レバー回転のような機械的な動作を伴わずに、結像位置を変化させることができる。この結果、レンズ移動用のレバーなどを設ける必要がなくなり、撮像装置の小型化が可能となる。また、機械的な摺動部をなくすことにより発塵が防止できるので、撮像画質の劣化の少ない撮像装置を実現できる。
【0014】
本発明の撮像装置において、透明部材は、光学系側の面と撮像素子側の面の両面に、電界を印加するための透明電極を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電極が透明部材に直接的に電界を印加することができるので、構造を簡単にできる。また、透明電極を用いるため、撮像した画像の特に色再現性についての劣化を低減できる。
【0016】
本発明の撮像装置において、透明部材は、光学系側及び撮像素子側の何れかに、赤外光の透過を制限する赤外光制限部を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、透明部材が赤外光をカットするフィルター機能を構成するので、別にフィルターを用いる必要がなくなり、部品点数が削減できる。これにより、撮像装置の設計自由度が増し、撮像装置の小型化・薄型化を容易に実現できる。
【0018】
本発明の撮像装置において、透明部材は、光学系側及び撮像素子側のうち、赤外光制限部とは反対側に、光の反射を防止する反射防止部を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、光の反射を防止することにより、ゴーストの発生しにくい撮像装置を実現できる。
【0020】
本発明の撮像装置において、透明部材は、電界が印加されると屈折率が大きくなることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、通常撮影モードの場合には透明部材に電界を印加しないようにし、マクロ撮影モードの場合には電界を印加するようにして、マクロ撮影モードの場合に光路長を実質的に長くすることができる。これにより、マクロ撮影モードへの切り替えを行わない場合は、透明部材に通電する必要がなくなり、撮像装置の省電力化を実現できる。
【0022】
本発明の撮像装置は、撮影モードに応じて、電界の電界制御を行い、透明部材の屈折率を切り替える切替手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、透明部材の屈折率を変化させることによって、通常撮影モードからマクロ撮影モードへと切り替えることができる。これにより、マクロ撮影モードへの切り替えを行うレバーなどが必要なくなり、撮像装置の小型化が実現され、摺動部による磨耗粉の発生を防止することができる。
【0024】
本発明の別の態様は、上述の撮像装置を備えた携帯端末装置である。
【0025】
この構成によれば、透明部材の屈折率を変化させることにより合焦する撮像素子を備えることで、マクロ撮影モードへの切り替えを行うレバーなどが必要なくなり、撮像装置の小型化が実現され、摺動部による磨耗粉の発生を防止することができる。また、レバーを切り替える操作に代えて、ボタンを押すというような、より簡単な操作によって撮影モードが切り替えられるので、モード切り替えの煩雑さや切り替え忘れが解消されるため、利便性のより高いカメラ付き携帯端末装置を実現できる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、撮像光学系と半導体撮像素子の間に、電界を印加することで屈折率が変化する透明部材を備えることにより、透明部材に電界を印加して屈折率を変化させ、撮像光学系と半導体撮像素子との間の光学的な距離(光路長)を変更することができる。これにより、レバーの回転のような、機械的な動きを伴わずに結像位置を変化させることができ、機械的な機構を設ける必要がなくなるので、撮像装置の小型化が可能となる。また、レンズが移動することがないので、機械的な摺動部をなくすことができ、摺動による磨耗粉の発生を防止でき、画像の劣化のない撮像装置が実現される。
【0027】
また、これらの撮像装置を携帯電話などの携帯端末装置に用いれば、小型化され且つ画質劣化の少ない優れた携帯電話装置が実現される。更には、レバーを切り替える操作に代えて、ボタンを押すというような、より簡単な操作によって撮影モードが切り替えられることから、撮影モード切り替えの煩雑さや切り替え忘れが解消されるので、利便性のより高いカメラ付き携帯端末装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる撮像装置を示す斜視図である。
【0029】
撮像装置8は、立体基板1、レンズ2、絞り3、半導体撮像素子4、透明部材5、FPC(フレキシブルプリント回路)15、接合部16、レンズホルダー20、及び調整リング21を備える。
【0030】
立体基板1は、台座部7と鏡筒部17を備え、鏡筒部17は、平面形状が長方形である台座部7の上部に設けられる。立体基板1の材料として、ガラス強化PPA(ポリフタルアミド樹脂)などが用いられ、外部からの光の透過を防ぐために黒色の材料が用いられる。
【0031】
台座部7は、外部との接続のために設けられた端子部7aを備える。台座部7の下部には、外部機器との間で信号の授受を行うためのFPC15が配置される。そして、FPC15に形成された接続用ランド15aと端子部7aが、接合部16により接続されている。例えば、接合部16は半田である。
【0032】
鏡筒部17の内側には、レンズホルダー20に嵌め込まれた樹脂製のレンズ2が配置されている。レンズホルダー20は、その外側に配置された調整リング21を介して、鏡筒部17の外側に固定されている。レンズホルダー20には、絞り3が設けられている。台座部7と鏡筒部17の内側には、半導体撮像素子4と、透明部材5が配置されている。
【0033】
図2を参照して、撮像装置の構造についてより詳細に説明する。図2は、図1の撮像装置8を線X−Xで切断した断面図である。
【0034】
台座部7と鏡筒部17を構成する立体基板1の内側には、隔壁11が形成されている。隔壁11の中央部には、開口部10が形成されている。開口部10を囲む隔壁11の上下面は、互いに平行な平面を形成している。隔壁11の上部には透明部材5が配置され、隔壁11の下部には半導体撮像素子4が配置されている。透明部材5は、接着剤などによって、隔壁11の上面の所定の位置に固定されている。開口部10は、半導体撮像素子4の撮像エリアに対応して、長方形に形成されている。これら構成部品は、すべて立体基板1に組み付けられる構造となっている。
【0035】
図示しないが、台座部7の裏側には、無電解メッキなどにより配線パターンが形成されている。また、立体基板1の内側には、半導体撮像素子4をベア実装するための接続ランドが設けられている。接続ランドと端子部7aは、配線パターンにより接続されている。
【0036】
半導体撮像素子4は、例えば、約200万画素数の1/4インチUXGA型と呼ばれるCCDまたはCMOSであって、立体基板1にフェースダウン実装され、電気的に接続されている。これは、撮像装置の薄型化を実現するために、パッケージを用いないベア実装を行うためである。フェースダウン実装は、例えば、金で形成されたバンプとその先端に付与された導電性接着剤(Agペーストなどの導電材料)を用いた、SBB(Stud Bump Bond)やBGA(Ball Grid Array)などと呼ばれる接続方法によって行われる。半導体撮像素子4は、フェースダウン実装を行った後に封止剤9にて封止される。
【0037】
半導体撮像素子4及びチップ部品(図示せず)などにより得られた映像信号は、電気配線によって、外部へ出力される。また、電気配線によって、外部から制御信号が入力され、電源が供給される。これらの電気配線は、配線パターン及び図1に示すFPC15の接続用ランド15aを経由するように形成されている。図2に示すように、半導体撮像素子4への裏面からの可視光・赤外光の侵入を防止するため、FPC15の裏面には、金属箔14が貼られている。
【0038】
鏡筒部17に内蔵されたレンズ2は、光学的特性の異なる2つの非球面レンズ(以下、「レンズ」と略す)2aと2bを備える。レンズ2a及び2bは、一定の位置関係を保持できるようにレンズホルダー20に嵌め込まれている。レンズホルダー20の外周、及びその外側に配置された調整リング21の内周には、互いに螺合するネジ20a、21aがそれぞれ形成され、レンズホルダー20の光軸方向位置が調整可能になっている。
【0039】
次に、図3により、透明部材5の構成を説明する。図3は、透明部材5の断面図である。透明部材5は、基材部53、電極51a、電極51b、赤外光制限部であるIR(Infra Red)膜50、及び反射防止部であるAR膜52を備える。
【0040】
基材部53は、電界を印加すると屈折率が変化する材料で構成され、例えば、ニオブ酸リチウムなどを用いることができる。また、例えば、カリウム、タンタル、ニオブ、酸素からなる光学結晶(KTN結晶)を用いることも可能である。
【0041】
電極51a、51bは、基材部53の両面にそれぞれ設けられ、基材部53に電界を印加する。電極51a、51bは、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)膜のような透明電極により構成される。電極51a、51bは、FPC15を経由して外部のDSP(Digital Signal Processor)などに電気的に接続され、電極51a、51bに電圧が印加されることで、基材部53に電界が印加されるように構成されている。DSPは、切替手段として機能し、電極51a、51bに印加される電圧を制御することによって、基材部53に印加される電界の電界制御を行い、撮影モードに応じて、基材部53の屈折率を切り替えることができる。
【0042】
IR膜50は、電極51aの下部に設けられ、赤外光の透過を制限するための多層膜を備える。IR膜50は、波長約400nmから800nmの可視光領域に対して約93%以上の透過率を有し、それ以外の帯域に対しては透過率が充分低い特性を有する。IR膜50は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化チタン(TiO2)などの多層膜を備える。
【0043】
AR膜52は、IR膜50に対して基材部53の反対側の面に設けられている。AR膜52は、光の反射を防止する。AR膜52は、例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化チタン(TiO2)、及び酸化ジルコニウム(ZrO2)などの多層膜を備える。
【0044】
IR膜50やAR膜52の構成及び積層数については、可視光領域及び領域外の透過または反射に関する特性により適宜選択することができる。また、本実施の形態においては、IR膜50は、透明部材5の撮像素子側に配置されているが、撮像素子側とは反対の光学系側に配置されてもよい。また、本実施の形態においては、AR膜52は、透明部材5の光学系側に配置されているが、撮像素子側に配置されてもよい。また、本実施の形態においては、透明部材5に、電極51a、電極51bと共に、IR膜50、AR膜52を設けたが、他の基材に、IR膜50、AR膜52を設けることも可能である。
【0045】
次に、上記構成を有する本実施の形態にかかる撮像装置の光学系について説明する。被写体からの光は、図2に示すレンズホルダー20の中央に設けられた絞り3を通過して、レンズ2により集光され、透明部材5を通って半導体撮像素子4に入射・結像する。絞り3は、被写体側に向かうほど開口が広くなるように設計されている。これは、レンズ2に入射する光が絞り3の光軸方向の壁面に当たって散乱し、これによって生じる不要な光がレンズに入射するのを防止するためである。
【0046】
レンズ2には、透過率や屈折率などの所要の光学特性を満たす樹脂が用いられている。本実施の形態においては、レンズ2には、例えば、射出成型により成型されたものを用いる。レンズ2の構成については、レンズ2a、2bの2枚で構成され、所定の距離より遠方の被写体を結像できる構成となっている。本実施の形態においては、例えば、撮像装置から約30cmより遠方での被写体に対して焦点が合う(パンフォーカス)モードのレンズが設けられる。なお、レンズの構成や特性については、適宜選定することが可能である。
【0047】
被写体からの光は、レンズ2を通って、透明部材5に達する。そして、図3に示す透明部材5に設けられたIR膜50により、被写体からの光のうち赤外光・紫外光の透過が制限され、可視光が半導体撮像素子4に入射する。図示しないが、入射した光は、半導体撮像素子4の受光面の表面に設けられたマイクロレンズあるいはオンチップレンズと呼ばれるレンズを通って、その下部にある色素系の色フィルターを通過し、フォトダイオードによって所要の電気信号に変換される。その結果、半導体撮像素子4は、例えば、画面のアスペクト比が4:3で、毎秒30のフレームレートの画像信号を出力する。
【0048】
上述のように、レンズ2は、被写体との距離が約30cmより遠方での被写体に対して焦点が合うように構成されるが、より近くの被写体に対して焦点を合わせるためには、レンズ2と半導体撮像素子4の受光面の距離を長くする必要がある。これらの関係は、Newtonの式として知られている。つまり、被写体とレンズの距離をa、レンズと結像位置の距離をb、レンズの焦点距離をfとすると、式(1)が成立する。
(1/a)+(1/b)=(1/f) ・・・・・(1)
【0049】
式(1)によると、レンズ2の焦点距離fが一定の場合、被写体までの距離aが短くなれば、レンズと結像位置の距離bが長くなる。したがって、被写体とレンズの距離が短い場合、被写体を半導体撮像素子4の受光面に結像させるためには、レンズ2と半導体撮像素子4の受光面の距離を長くする必要がある。この距離調整が、被写体に接近した位置で撮影を行うマクロ撮影モードで必要となる。
【0050】
従来は、マクロ撮影モードの際には、切り替えレバーなどにより、半導体撮像素子からの物理的な距離が増加するように、レンズ全体を移動させていた。一方、本実施の形態では、レンズを物理的に動かさずとも、以下に説明するように、透明部材5の屈折率調整機能を利用して、レンズ2から半導体撮像素子4までの光学的な長さ(光路長)を実質的に長くし、これにより、マクロ撮影モードへの切り替えを行う。
【0051】
光路長Lは、透過する媒体の屈折率をndとし、透過する媒体の長さをtとすると、式2で表される。
L=nd*t ・・・・・(2)
【0052】
式(2)によると、光路長Lを長くするためには、屈折率を高くすればよい。本実施の形態では、マクロ撮影モードへの切り替えに際して、レンズ2から半導体撮像素子4までの光路長を長くするために、レンズ2から半導体撮像素子4の間に配置されている透明部材5の屈折率を変化させる。この結果、レンズ2を移動させることなく、光路長を調整することで、マクロ撮影モードへの切り替えができる。
【0053】
図4は、本実施の形態において、透明部材5に対して印加される電界と屈折率の関係を示した特性図である。電界を印加しないとき(E=0)の屈折率は、nd1となり、電界E2を印加したときの屈折率はnd2となる。ここで、印加される電界と屈折率の変化が、直線的になるものは、1次の電気光学効果(ポッケルス効果)と呼ばれ、印加される電界の二乗に屈折率変化が比例する効果を2次の電気光学効果(カー効果)と呼ばれる。本実施の形態では、屈折率変化の大きく取れるカー効果を用いている。但し、本発明は、これに限定されない。
【0054】
図2を用いて説明したように、レンズ2と半導体撮像素子4の間に配置された透明部材5には、外部回路(図示せず)からFPC15を通して電圧が印加され、図3に示す電極51a、51bを介して基材部53に電界が印加されるようになっている。そして、図4に示すように、電界E2が透明部材5の基材部53に印加されると、基材部53の屈折率がnd1からnd2へと変化する。この場合、屈折率はnd1<nd2であるので、式(2)より、レンズ2と半導体撮像素子4の間の光路長が長くなる。この結果、機械的にレンズ2を移動させることなく光路長が変更される。
【0055】
このように、本実施の形態にかかる撮像装置によれば、印加する電圧を変化させることによって、透明部材5の屈折率を変化させ、所要の光路長が設定される。これによって、レンズ移動用のレバーを回転させて機械的にレンズを移動させることなく光路長が変更され、電界の印加の有無によって、通常撮影モードとマクロ撮影モードを切り替えることができる。この結果、従来のようなレバーなどを設ける必要がなくなるため、撮像装置8の小型化を実現することができる。また、レンズ2全体が光軸方向へ機械的に移動する必要がなくなるため、発塵などによる画質劣化の問題も解消可能となる。
【0056】
本実施の形態においては、通常撮影モードとマクロ撮影モードを切り替える場合を説明したが、3つ以上の撮影モードの間で、撮影モードの切り替えを行ってよい。この場合は、それぞれ異なる電圧を透明部材5に印加して、3つ以上の屈折率を生じさせることによって、3つ以上の撮影モードの切り替えが可能となる。また、本実施の形態において、合焦のシーケンスについては、いわゆる山登り法などの様々な方法を適用することができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかる携帯端末装置の平面図である。携帯端末装置30は、本発明の第1の実施の形態にかかるマクロ撮影切り替え機能付の撮像装置を搭載する。
【0058】
図5に示すように、本実施の形態にかかる携帯端末装置30は、上側筐体31及び下側筐体32を備えた折り畳み型の携帯端末装置であり、使用時には上側筐体31と下側筐体32を開き、不使用時には上側筐体31と下側筐体32を折り畳む形態となっている。上側筐体31と下側筐体32がヒンジ35を介して連結されることにより、携帯端末装置30は折り畳み可能な構成となっている。上側筐体31は、スピーカ33、液晶表示画面34、送受信用アンテナ36、及び撮像装置38を備える。下側筐体32は、入力キー37及びマイク39を備える。入力キー37は、撮影モード切替用入力キー37aを備える。
【0059】
撮像装置38は、第1の実施の形態にかかるマクロ撮影切り替え機能付の撮像装置を備える。この場合、撮像装置38の撮像方向は、図5の紙面に対して垂直方向である。また、この場合、光軸が紙面に垂直方向に位置し、マクロ撮影モードへの切り替えによって撮像される被写体との距離方向も紙面に垂直の方向である。
【0060】
撮像装置38は、撮影モード切替用入力キー37aが繰り返し押されるのに応じて、通常撮影モードからマクロ撮影モードへ、そして、マクロ撮影モードから通常撮影モードへと、撮影モードが切り替わるように構成されている。また、撮像装置38は、起動時には、通常撮影モードとなるように設定されている。
【0061】
このように、本実施の形態では、一般的に使用頻度が多い通常撮影モードの際は、図3に示す透明部材5に電界が印加されない。この結果、携帯端末装置30の消費電力を低く抑えることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、既に第1の実施の形態で説明した通り、従来のような切り替えレバーなどを設ける必要がないので、レバーの移動範囲を考慮する必要がなくなることから、携帯電話などの携帯端末装置30が小型化・薄型化され、携帯端末装置30のデザインを簡素にすることができる。更に、撮影モードを液晶表示画面34に表示させることが容易にできるので、撮影モードを液晶表示画面34で確認でき、撮影モードの切り替え忘れを防止できることから、携帯端末装置30の利便性が向上する。また、透明部材5に携帯端末装置30の回路から電圧を印加することによって撮影モードの切り替えが行われるので、レンズ2を機械的に移動させる機構を設ける必要がないことから、携帯端末装置30の落下などに対する耐衝撃値の向上が可能となる。なお、レバーを回転させて機械的にレンズ2を移動させることがないので、発塵などによる画質劣化の問題も解消可能となる。
【0063】
本実施の形態では、携帯端末装置として携帯電話について説明したが、本実施の形態の携帯電話はこの構成に限定されない。また、本発明にかかる撮像装置は、様々な形態の携帯情報装置に適用可能である。例えば、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)や、パーソナルコンピュータ、パーソナルコンピュータの外付け機器などの携帯情報装置などにも、本発明にかかる撮像装置を応用することができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明にかかる撮像装置は、機械的及び物理的にレンズを移動させる機構を設けずに、撮影モードの切り替えができるので、撮像装置の小型化が可能である。また、本発明にかかる撮像装置は、レンズを移動させる機械的な摺動部をなくすことができるので、発塵を防止し、撮像装置の画質の劣化を防止できる。また、レンズの移動部分がないので、撮像装置の耐衝撃性能を向上させることができ、撮像装置の信頼性を高めることができる。また、撮影モードを液晶表示画面に表示させることにより、撮影モードの切り替え忘れを防止することができる。本発明にかかる撮像装置は、上記のような効果を有し、携帯端末装置などに搭載されるカメラ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる撮像装置を示す斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる撮像装置を示す断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる透明部材を示す断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる透明部材の電界と屈折率の特性を示す図
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる携帯端末装置を示す平面図
【符号の説明】
【0067】
1 立体基板
2、2a、2b レンズ
3 絞り
4 半導体撮像素子
5 透明部材
7 台座部
8 撮像装置
9 封止剤
10 開口部
11 隔壁
15 FPC
17 鏡筒部
20 レンズホルダー
21 調整リング
30 携帯端末装置
31 上側筐体
32 下側筐体
33 スピーカ
34 液晶表示画面
35 ヒンジ
36 アンテナ
37 入力キー
38 撮像装置
39 マイク
50 IR膜
51 電極
52 AR膜
53 基材部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を集光する光学系と、
前記光学系が集光した光を受光し、撮像信号を生成する撮像素子と、
前記光学系と前記撮像素子の間に設けられ、印加された電界に応じて屈折率が変化する特性を有し、前記電界の電界制御に従って前記屈折率が切り替えられる透明部材とを
備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記透明部材は、前記光学系側の面と前記撮像素子側の面の両面に、電界を印加するための透明電極を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記透明部材は、前記光学系側及び前記撮像素子側の何れかに、赤外光の透過を制限する赤外光制限部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記透明部材は、前記光学系側及び前記撮像素子側のうち、前記赤外光制限部とは反対側に、光の反射を防止する反射防止部を備えることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記透明部材は、電界が印加されると屈折率が大きくなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の撮像装置。
【請求項6】
撮影モードに応じて、前記電界の電界制御を行い、前記透明部材の屈折率を切り替える切替手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の撮像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の撮像装置を備えることを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−92314(P2008−92314A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271443(P2006−271443)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】