撮像装置
【課題】 ズーミングに応じて歪曲収差量が変動するズームレンズにおいて、ワイドコンバージョンレンズ等の装着の有無によって変動する歪曲収差をズーミングに応じて、高精度に補正を行う。
【解決手段】 変倍系レンズであるバリエータの移動量またはズーミングおよびフォーカシングに応じ、コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更する。
【解決手段】 変倍系レンズであるバリエータの移動量またはズーミングおよびフォーカシングに応じ、コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像光学系に適用される電子歪曲収差補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子を用いて静止画を撮影するデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラが主流となっている。このようなデジタル光学機器は、今後も画像情報の入力機器として車載カメラなど多くの場面で活躍していくことが予想される。
【0003】
デジタル光学機器に搭載されるレンズには収差が存在し、レンズの小型軽量化に伴い、十分に収差補正が行われず、固体撮像装置の結像位置にずれが生じる。また、上記レンズにコンバージョンレンズやアタッチメントレンズを装着し、撮影を行った場合、周辺光量の低下や歪曲収差量が助長されるといった問題点がある。
【0004】
コンバージョンレンズやアタッチメントレンズの高精度化により、上記問題点を緩和することが可能だが、大型化やコストアップを招いてしまう。
【0005】
一方、レンズに起因する収差を電子的な処理で緩和する技術も日々進歩している。
【0006】
特許文献1では、ビデオレンズに装着するワイドコンバージョンレンズの歪曲収差補正方法が提案されている。
【0007】
特許文献2では、デジタルスチルカメラに装着するコンバージョンレンズの装着の有無を判別し、判別結果に基づき歪曲補正を行う方法が提案されている。
【特許文献1】特開平08−163426号公報
【特許文献2】特開2006-54543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、像高に応じて電子歪曲収差補正やエッジ処理を行うことで従来よりも高精度に歪曲収差補正を行う提案をしているが、撮像装置が歪曲特性記憶手段を有すため、コンバージョンレンズの種類に応じた適正な補正を行うことは困難である。
【0009】
特許文献2では、コンバージョンレンズの有無を検知し、その装着によって生じる問題を軽減するための補正を行うという開示内容であるが、光学機器そのものの特性を考慮していないため十分ではない。
【0010】
また、特許文献1や特許文献2で開示された実施例は、各像高の歪曲収差量が変化することしか考慮されていないため、ズーミングに応じて、歪曲収差補正を適切に行うことが難しい。また、コンバージョンレンズ等未装着時に歪曲収差補正が行われている機器に対して、適応が困難である。
【0011】
本発明は、これらの従来例を顧みてなされたもので、ズーミングに応じて歪曲収差量が変動するズームレンズにおいて高精度に歪曲収差補正を行うことである。また、ズーミングに応じて歪曲収差補正の実行、停止を切り替える歪曲収差補正装置を提供する。歪曲収差補正の実行、停止の切り替えによりメモリ容量を抑え、低コスト化が実現し、画像の解像力低下を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、
撮影光学系と、その先端にコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱可能なカメラなどの撮像装置において、
前記撮影光学系がズーミングあるいはフォーカシングの少なくとも一方を行う際に前記撮影光学系が所定位置にあることを検出する位置検出手段と、歪曲収差量を記憶する手段とから構成され、
前記コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、
歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、
前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更することを特徴と
する。
【発明の効果】
【0013】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像光学系に適用される撮像光学系のズームレンズは、高い要求性能を満たし且つさらなる小型化を行うことが困難となりつつある。そこで、ズームレンズに起因する収差を電子的に補正を行い、さらなる小型化を行う手法が主流になってきている。
【0014】
光学機器を高性能かつコンパクトに設計するために、ズームレンズの広角端側の歪曲収差を許容し、その歪曲収差を電子的に補正することにより、光学機器全体として要求を満たすことができる。コンバージョンレンズ等も同様であり、小型化・低コスト化達成のため、歪曲収差をある程度許容している。
【0015】
広角端側で歪曲収差を電子的に補正した光学機器において、ワイドコンバージョンレンズ等のアクセサリレンズを装着した際に、電子的補正量を再度調整する必要がある。
【0016】
上記コンバージョンレンズ等とは、ワイドコンバージョンレンズ・ワイドアタッチメントレンズ・フィッシュアイレンズ・テレコンバージョンレンズ等のことである。
【0017】
本発明によれば、電子歪曲補正を行っているデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の光学機器にコンバージョンレンズ等を装着した際に、電子的補正量を調整し、精度のよい歪曲収差補正を行うことが可能となる。また、撮影時のズーム位置に応じた適切な歪曲収差補正を行うことが可能となる。
【0018】
さらに、歪曲収差補正を行うデータをパラメータで多項式近似を行ことにより、歪曲収差データのためのメモリ容量の節約となり、補正結果も滑らかで自然な画像となる。
【0019】
ズームレンズにおいて、ズーム全域歪曲収差補正が必要なものや、一部のズーム領域で歪曲収差補正が必要なものなど、ズームレンズにより異なるため、必要に応じて歪曲収差補正を行う必要がある。コンバージョンレンズ装着時も同様であり、コンバージョンレンズ装着前と装着後では、歪曲収差補正量を変更する必要がある。
【0020】
また、ズームレンズは、ズーム位置により歪曲収差量が大きく変動するため、歪曲収差量を記憶する手段はズームレンズのレンズ位置検出手段に関連付けられていることが望ましい。
【0021】
ただし、ズーム停止位置全ての歪曲収差データを記憶した場合、メモリ容量が大きくなってしまうため、歪曲収差補正を行う領域、または、補間演算によりズーム全域の歪曲収差量が算出可能な情報を記憶すればよい。
【0022】
ズーム位置と同様に、フォーカス位置により歪曲収差が大きく変動するため、歪曲収差量を記憶する手段はズームレンズのレンズ位置検出手段に関連付けられていることが望ましい。
【0023】
撮像素子の最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が1%未満のズーム位置で歪曲収差補正を行った場合、現実座標(x,y)と理想座標(X,Y)の差が1画素以上となる画面の領域が少なく、歪曲収差補正の効果に比べ、画像の解像力劣化を招くという問題が生じるため、光学ディストーションの絶対値が1%未満のズーム位置では歪曲収差補正を行わないことが望ましい。
【0024】
更に好ましくは撮像素子の最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が3%以上のズーム位置で歪曲収差補正を行うと良い。光学ディストーションの絶対値が5%以上のズーム位置で歪曲収差補正を行うと、より一層好ましい。
【0025】
ただし、歪曲収差補正後、ズーミングによる歪曲収差量が不自然とならないように、歪曲収差補正量を段階的に減少させる必要がある。
【0026】
例えば、ワイドコンバージョンレンズ装着時のズームレンズの特性として、広角端寄りのズーム領域にて、負の大きな歪曲収差(樽型)が生じ、望遠端で歪曲収差が十分小さいため、歪曲補正領域を広角端から、最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が初めて1%未満となる領域とすれば、電子歪曲収差補正実行有無の切り替えを行う点をひとつとすることができ、システムの構成の簡素化が行える。
【0027】
また、歪曲収差補正ズーム領域は、コンバージョンレンズ等の装着前と装着後で異なる点を注意する必要がある。本発明によれば、コンバージョンレンズ装着前のズームレンズで予め設定した歪曲収差補正領域に対し、コンバージョンレンズ装着後も適正な補正ズーム領域を設定できる。
【0028】
また、歪曲収差補正実行の際、歪曲収差補正量に比例し、画像の解像力劣化を招くため、歪曲収差補正後に歪曲収差量をゼロにすることはあまり好ましくはない。電子歪曲収差補正を行う際は、0.5%以上の光学歪曲収差量を残存させることにより、解像力劣化を防ぐことが望ましい。また、製造誤差等による過剰補正を防ぐことができる。
【0029】
また、焦点距離に対する歪曲収差量(ディストーションカーブ)の形を変えずに歪曲収差を補正することにより、ズームレンズの極端な解像力劣化を防ぐことができる。
【0030】
また、歪曲収差補正を行う際、倍率色収差の補正を行うことにより、エッジ処理後により高精細な画像を得ることができる。画像処理を行う赤、緑、青の信号に対して、緑の信号を基準とし、赤および青の倍率色収差量に応じた歪曲収差補正係数を決定すればよい。
【0031】
また、歪曲収差補正を行う際、周辺光量の補正を行うことにより、画像周辺部の光量低下を防いだ高精細な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0033】
以下の実施例1から実施例2に示される通りである。実施例においてRiは物体側より順に第i番目の面の曲率半径、Diは物体側より順に第i番目と第i+1番目間のレンズ厚及び空気間隔、Niとνiは各々物体側より順に第i番目の光学部材の材質の屈折率とアッベ数である。非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にh軸、光の進行方向を正とし
【0034】
【数1】
で表される。
【0035】
但しRは近軸曲率半径、kは円錐定数、B,C,D,E,A',B',C',D',E'は非球面係数である。
*は非球面形状を有する面を意味している。
【0036】
「e−x」は10-xを意味している。
【0037】
fは焦点距離、FnoはFナンバー、ωは画角を示す。
【実施例1】
【0038】
以下、本発明の実施例1を説明する。
【0039】
図1は、実施例1のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。ズームレンズ(主レンズ)は次に示す構成となっている。以下、フロントコンバージョンレンズ等を装着していないレンズを主レンズと呼ぶ。
単位mm
f = 4.00 〜 25.36 〜 79.99 Fno = 1.80 〜 2.45 〜 3.48 2ω = 58.6゜〜10.1゜〜 3.2゜
R 1 = 49.309 D 1 = 1.35 N 1 = 1.846660 ν 1 =23.8
R 2 = 25.491 D 2 = 5.23 N 2 = 1.603112 ν 2 =60.6
R 3 = -279.616 D 3 = 0.23
R 4 = 22.253 D 4 = 2.98 N 3 = 1.696797 ν 3 = 55.5
R 5 = 55.374 D 5 = 可変
R 6 = 56.337 D 6 = 0.90 N 4 = 1.882997 ν 4 = 40.8
R 7 = 6.326 D 7 = 2.27
R 8 = -31.521 D 8 = 0.79 N 5 = 1.834807 ν 5 = 42.7
R 9 = 9.816 D 9 = 0.90
R10 = 10.847 D10 = 1.69 N 6 = 1.922860 ν 6 = 18.9
R11 = 62.525 D11 = 可変
R12 = 絞り D12 = 1.75
R13*= 8.375 D13 = 3.20 N 7 = 1.583126 ν 7 = 59.4
R14*= -45.642 D14 = 0.55
R15 = 11.897 D15 = 0.80 N 8 = 1.846660 ν 8 = 23.8
R16 = 7.258 D16 = 可変
R17 = 14.285 D17 = 3.40 N 9 = 1.518229 ν 9 = 58.9
R18 = -6.569 D18 = 0.65 N10 = 1.805181 ν10 = 25.4
R19 = -11.779 D19 = 可変
R20 = ∞ D20 = 3.00 N11 = 1.516330 ν11 = 64.1
R21 = ∞
非球面係数
R13* k =-1.05184e+00
A'=1.07744e-04 B'=3.04976e-05 C'=-7.50046e-07 D'=8.51162e-09 E'=-2.53506e-11
R14* k =-3.92850e+00
A'=1.80179e-04 B'=4.07796e-05 C'=-1.29088e-06 D'=7.64844e-09 E'=1.80690e-10
各種データ
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 4.00 25.36 79.99
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 58.6゜ 10.1゜ 3.2゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 69.00 69.00 69.00
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔
D 5 0.62 18.35 23.35
D11 25.03 7.30 2.30
D16 7.58 3.70 11.77
D19 6.08 9.96 1.89
ズームレンズ群データ
始面 終面 f 前側主点位置 後側主点位置
b 1 1 5 34.88 2.16 -3.84
b 2 6 11 -6.22 0.72 -4.36
b 3 12 16 19.79 -0.83 -4.85
b 4 17 19 16.94 1.39 -1.35
b 5 20 21 ∞ 0.99 -0.99
図2に主レンズのズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0040】
図3は、実施例1のズームレンズにフロント装着方式のワイドコンバージョンレンズ(以下、ワイドコンバータ)を装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドコンバータは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 96.414 D 1 = 3.00 N 1 = 1.487490 ν 1 = 70.2
R 2 = 28.560 D 2 = 25.77
R 3 = -30.868 D 3 = 2.40 N 2 = 1.743997 ν 2 = 44.8
R 4 = -57.624 D 4 = 0.30
R 5 = 549.682 D 5 = 5.50 N 3 = 1.712995 ν 3 = 53.9
R 6 = -43.106
各種データ
アフォーカル倍率 0.70
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 3.00
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 2.78 17.60 55.36
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 77.9゜ 14.6゜ 4.7゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 110.32 110.32 110.32
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔は、主レンズのズーミング時と同一である。
【0041】
図4にワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0042】
従来の電子歪曲収差補正は、広角端において主レンズと同等に電子歪曲収差補正を行い、その補正量をズーム全域に適応していた(図5参照)。広角端近傍の拡大図を図6に示す。
【0043】
広角端での補正値をズーミングに応じて線形的に減少するように補正を行った場合、正のディストーションが生じ、広角端以外では過補正なズーム領域が発生する場合がある。
【0044】
ここで、従来例の歪曲収差補正パラメータとして、
Dpi=(1−Zp)×Dwi
としている。
【0045】
Dpiは、像高iでの歪曲収差補正パラメータ、Zpはズーム全領域を1に正規化したズームパラメータ、Dwiは広角端を基準に決定した各像高の補正パラメータである。
【0046】
図5および図6ではDwiは以下のようにしている。
【0047】
Dw9 Dw7 Dw5 Dw3
0.10 0.05 0.03 0.01
Dw9=0.10のとき、広角端像高9割では歪曲収差量を10%補正するということを意味する。
【0048】
図2に示した主レンズでのズーミングによる歪曲収差量と図4に示したワイドコンバージョンレンズを装着した際のズーミングによる歪曲収差量が大きく異なる点を補正パラメータとして設定できないため、図6のような正の歪曲収差量が2%以上発生するズーム領域が生じ、過補正を招いていた。
【0049】
図7は実施例1の電子歪曲補正装置の構成を示すブロック図の一例である。
図7において、
10aは撮像光学系、101はバリエータ、102はコンペンセータ、103は絞り、104は撮像素子である。
【0050】
撮像素子からの信号は、105A/D変換器、10b補間処理回路、106D/A変換器、にて処理される。
【0051】
10aの撮像光学系の制御は、111のレンズ駆動制御マイクロコンピュータにて総合的に制御を行っている。111のマイクロコンピュータは必要に応じて、メモリを参照し、適切な処理を行う。
【0052】
110のセレクタは、ズーム位置に応じて112歪曲収差メモリを読み出し、補間処理回路へ送る。113の検出手段にて、コンバージョンレンズの着脱および種類を判断する。
【0053】
図8は図7の10b補間処理回路を詳細に示すブロック図の一例である。
【0054】
図8において、120は歪曲収差量補間算出部である。像高3割、5割、7割、9割における離散的な歪曲収差データに対し、多項式補間演算を行い、画面中心(像高0割)から10割まで連続的な歪曲収差量を算出する。
【0055】
次に121は、歪曲収差量から、現実座標(x,y)と理想座標(X,Y)の設定を行う。
【0056】
122で、歪曲収差補間係数を算出し、123にて、画素補間係数を算出する。
【0057】
図9にコンバージョンレンズ装着時の検出フローの一例を示す。S03にて、歪曲収差メモリが参照可能な場合、S05にて直ちに歪曲収差補正パラメータの書き換えが行われる。
【0058】
図2および図4から明らかなように、主レンズのみの場合は、広角端(焦点距離4mm)から焦点距離20mm(ズーム比5倍)まで電子歪曲収差補正を行い、ワイドコンバージョンレンズ装着時は、広角端(焦点距離2.78mm)から焦点距離45mm(ズーム比16倍)まで歪曲収差補正を実施することにより、歪曲収差補正実行後に自然かつズーミングによる歪曲収差変動の少ない画像となる。
【0059】
また、ワイドコンバータ装着の前後において、歪曲収差量が異なるため、補正量を変更する必要がある。
【0060】
図10にワイドコンバータ未装着時(主レンズのみ)において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0061】
図11にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0062】
図12に主レンズの広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0063】
図13にワイドコンバータ未装着時(主レンズのみ)において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0064】
歪曲収差補正実行により、接写(マクロ)撮影時、例えば、レンズ先端から10mmでの撮影においても良好に補正が実現している。
【0065】
図14にワイドコンバータ装着時の広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0066】
図15にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0067】
歪曲収差補正実行により、接写(マクロ)撮影時、例えば、レンズ先端から10mmでの撮影においても良好に補正が実現している。
【0068】
本実施例では、フォーカシングによる歪曲収差発生量が像高9割において−1%程度であり、許容可能のためフォーカシングによる補正を行っていない。フォーカシングによる歪曲収差発生が許容できない場合は、必要に応じて歪曲収差補正を実行する必要がある。
【0069】
主レンズおよびコンバージョンレンズの歪曲収差量が予め参照可能な場合は、本実施例のように歪曲収差補正ズーム領域、フォーカス領域および歪曲収差補正量を適切に決めることが可能となる。
【実施例2】
【0070】
以下、本発明の実施例2を説明する。実施例1のワイドコンバージョンレンズに対して、歪曲収差量(設計歪曲収差量)が参照できない(検出手段等がない)場合について、電子歪曲収差補正を行う方法について説明する。電子歪曲収差補正装置を有している光学機器、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダにおいて、歪曲収差補正を行うことを想定している。
【0071】
図16に歪曲収差補正チャートの一例を示す。図17に、歪曲収差補正調整時の光学機器の調整モード画面の一例を示す。
【0072】
主レンズを有する光学機器において、電子歪曲収差補正が十分に行われ、ズーム全域において、歪曲収差量が±0.5%未満であるとする。
【0073】
歪曲収差が良好に補正した主レンズに対し、ワイドコンバージョンレンズを装着した際、ズーミングによる歪曲収差量は図18のようになる。ただし、横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。図18から明らかなように広角端(焦点距離2.78mm)から焦点距離30mmのズーム領域において、歪曲収差量の絶対値が1%以上であり、補正することが望ましい。歪曲収差補正後、ズーミング時に不自然な歪曲収差変動(不連続)とならないように、焦点距離40mmまで歪曲収差補正量を減少させている。
【0074】
光学機器とチャートを正対させ、図16のチャートの中心位置と図17の調整モード画面に表示される十字像を合致させることにより、画面全域の歪曲収差量が測定できる。広角端では負の歪曲収差が像高9割において−10.4%発生しているため、図16のチャート像はたる型となり、光学機器で観察される画像は図19のようになる。
【0075】
上記の歪曲収差量の測定を広角端から望遠端まで20分割し、21回の歪曲収差量測定を行うことで、ズーム全域の歪曲収差量測定が完了する。図20に歪曲収差量測定フローの一例を示す。
【0076】
図21にワイドコンバータ装着時において、広角端より焦点距離40mmまで歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【実施例3】
【0077】
以下、本発明の実施例3を説明する。
【0078】
実施例3では、歪曲収差補正効果を撮影時の特殊効果として利用する方法について説明する。実施例2と同様に、電子歪曲収差補正装置を有している光学機器、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダ等を想定している。
【0079】
実施例2の図20に示したフローチャートでのステップS14において、歪曲収差補正後に像高9割の歪曲収差量が2%以下ではなく、例えば、−15±2%となるように歪曲収差補正パラメータを演算すればよい。
【0080】
歪曲収差量が−15±2%となるように歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量を図22に焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0081】
図23に歪曲収差補正実施後の歪曲収差補正チャートの撮影した際に観察される像を示す。ズーム全域において、所望の歪曲収差量を設定可能である。
【実施例4】
【0082】
以下、本発明の実施例5を説明する。
【0083】
図24は、実施例1の主レンズ(ズームレンズ)にフロント装着方式のワイドコンバータを装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドコンバータは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 1659.323 D 1 = 3.00 N 1 = 1.618000 ν 1 = 63.3
R 2 = 57.300 D 2 = 10.03
R 3 = -122.579 D 3 = 2.50 N 2 = 1.618000 ν 2 = 63.3
R 4 = 37.291 D 4 = 2.89
R 5 = 52.800 D 5 = 7.50 N 3 = 1.517417 ν 3 = 52.4
R 6 = 390.109 D 6 = 16.29
R 7 = 205.139 D 7 = 6.00 N 4 = 1.487490 ν 4 = 70.2
R 8 = -43.767
各種データ
アフォーカル倍率 0.55
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 2.50
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 2.20 13.93 43.80
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 91.3゜ 9.2゜ 4.7゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 119.71 119.71 119.71
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔は、主レンズのズーミング時と同一である。
【0084】
図25にワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。広角端近傍の拡大図を図26に示す。
【0085】
図4および図25、図26から明らかなように、主レンズのみの場合は、広角端(焦点距離4mm)から焦点距離20mm(ズーム比5倍)まで電子歪曲収差補正を行い、ワイドコンバージョンレンズ装着時は、広角端(焦点距離2.20mm)から焦点距離8mm(ズーム比3.6倍)まで電子歪曲補正を実施することにより、歪曲収差補正の実行後に自然かつズーミングによる歪曲収差変動の少ない画像となる。
【0086】
図27にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0087】
ワイドコンバータ装着時の電子歪曲収差補正実施前において、−30%以下の大きな負の歪曲収差が発生しているため、画像の解像力低下を抑制するため、電子歪曲収差補正実施後の広角端において、−3%程度歪曲収差を残存させている。
【0088】
主レンズおよびコンバージョンレンズの歪曲収差量が予め参照可能な場合において、本実施例のように画像の解像力低下を抑制し、歪曲収差補正量を適切に決めることが可能となる。
【実施例5】
【0089】
以下、本発明の実施例5を説明する。
【0090】
図28は、実施例1の主レンズ(ズームレンズ)にフロント装着方式のワイドアタッチメントレンズ(以下、ワイドアタッチメント)を装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドアタッチメントはマクロ機構またはフランジバック調整機構にて、ピント調整を行うため、広角端のみで歪曲収差補正を行えばよい。ワイドアタッチメントは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 52.016 D 1 = 2.00 N 1 = 1.487490 ν 1 = 70.2
R 2 = 18.662
各種データ
ワイドアタッチ焦点距離 -60.895
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 8.00
(広角)
焦点距離 2.88
Fno 1.80
画角 76.0゜
像高 2.25
レンズ全長 79.19
BF 1.35
図29にワイドアタッチメント装着時のズーミングによる歪曲収差を示す。図30にワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行後の歪曲収差を示す。歪曲収差補正前の収差の形状を残し、像高9割において−2%以下で良好な補正が実現可能となる。
【0091】
また、本実施例のように、ズーム位置だけではなく、フォーカス位置に応じて歪曲収差補正パラメータを関係付ける必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1の主レンズ(ズームレンズ)の広角端のレンズ断面図。
【図2】実施例1の主レンズのズーミングによる歪曲収差量。
【図3】実施例1のワイドコンバータレンズ装着時の広角端のレンズ断面図。
【図4】実施例1のワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量。
【図5】従来例の電子歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量。
【図6】図5の広角端近傍の拡大図。
【図7】実施例1の構成を示すブロック図の一例。
【図8】図7の10b補間処理回路の詳細を示すブロック図の一例。
【図9】コンバージョンレンズ検出フローチャート。
【図10】ワイドコンバータ未装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図11】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図12】実施例1の主レンズの広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量。
【図13】実施例1の主レンズの歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量。
【図14】実施例1のワイドコンバータ装着時の広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量。
【図15】実施例1のワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量。
【図16】実施例2の歪曲収差補正チャートの一例。
【図17】実施例2の歪曲収差補正調整時の光学機器の調整モード画面の一例。
【図18】実施例2の歪曲収差が良好に補正した主レンズに対して、ワイドコンバージョンレンズを装着した際、ズーミングによる歪曲収差量。
【図19】実施例2の光学機器で観察される画像。
【図20】実施例2の歪曲収差量測定フローチャート。
【図21】実施例2のワイドコンバータ装着時において、広角端より焦点距離40mmまで歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差量。
【図22】実施例3の歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量。
【図23】実施例3の歪曲収差補正実施後の歪曲収差補正チャートの撮影した際に観察される像。
【図24】実施例4のワイドコンバータレンズ装着時の広角端のレンズ断面図。
【図25】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行前のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図26】図5の広角端近傍の拡大図。
【図27】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差補正量(広角端近傍)。
【図28】実施例5のワイドアタッチメント装着時の広角端のレンズ断面図。
【図29】ワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行前歪曲収差。
【図30】ワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行前歪曲収差。
【符号の説明】
【0093】
B1 第1レンズ群
B2 第2レンズ群
B3 第3レンズ群
B4 第4レンズ群
SP 絞り
IP 結像面
G CCDのフォースプレートやローパスフィルター等のガラスブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像光学系に適用される電子歪曲収差補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子を用いて静止画を撮影するデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラが主流となっている。このようなデジタル光学機器は、今後も画像情報の入力機器として車載カメラなど多くの場面で活躍していくことが予想される。
【0003】
デジタル光学機器に搭載されるレンズには収差が存在し、レンズの小型軽量化に伴い、十分に収差補正が行われず、固体撮像装置の結像位置にずれが生じる。また、上記レンズにコンバージョンレンズやアタッチメントレンズを装着し、撮影を行った場合、周辺光量の低下や歪曲収差量が助長されるといった問題点がある。
【0004】
コンバージョンレンズやアタッチメントレンズの高精度化により、上記問題点を緩和することが可能だが、大型化やコストアップを招いてしまう。
【0005】
一方、レンズに起因する収差を電子的な処理で緩和する技術も日々進歩している。
【0006】
特許文献1では、ビデオレンズに装着するワイドコンバージョンレンズの歪曲収差補正方法が提案されている。
【0007】
特許文献2では、デジタルスチルカメラに装着するコンバージョンレンズの装着の有無を判別し、判別結果に基づき歪曲補正を行う方法が提案されている。
【特許文献1】特開平08−163426号公報
【特許文献2】特開2006-54543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、像高に応じて電子歪曲収差補正やエッジ処理を行うことで従来よりも高精度に歪曲収差補正を行う提案をしているが、撮像装置が歪曲特性記憶手段を有すため、コンバージョンレンズの種類に応じた適正な補正を行うことは困難である。
【0009】
特許文献2では、コンバージョンレンズの有無を検知し、その装着によって生じる問題を軽減するための補正を行うという開示内容であるが、光学機器そのものの特性を考慮していないため十分ではない。
【0010】
また、特許文献1や特許文献2で開示された実施例は、各像高の歪曲収差量が変化することしか考慮されていないため、ズーミングに応じて、歪曲収差補正を適切に行うことが難しい。また、コンバージョンレンズ等未装着時に歪曲収差補正が行われている機器に対して、適応が困難である。
【0011】
本発明は、これらの従来例を顧みてなされたもので、ズーミングに応じて歪曲収差量が変動するズームレンズにおいて高精度に歪曲収差補正を行うことである。また、ズーミングに応じて歪曲収差補正の実行、停止を切り替える歪曲収差補正装置を提供する。歪曲収差補正の実行、停止の切り替えによりメモリ容量を抑え、低コスト化が実現し、画像の解像力低下を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、
撮影光学系と、その先端にコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱可能なカメラなどの撮像装置において、
前記撮影光学系がズーミングあるいはフォーカシングの少なくとも一方を行う際に前記撮影光学系が所定位置にあることを検出する位置検出手段と、歪曲収差量を記憶する手段とから構成され、
前記コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、
歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、
前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更することを特徴と
する。
【発明の効果】
【0013】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像光学系に適用される撮像光学系のズームレンズは、高い要求性能を満たし且つさらなる小型化を行うことが困難となりつつある。そこで、ズームレンズに起因する収差を電子的に補正を行い、さらなる小型化を行う手法が主流になってきている。
【0014】
光学機器を高性能かつコンパクトに設計するために、ズームレンズの広角端側の歪曲収差を許容し、その歪曲収差を電子的に補正することにより、光学機器全体として要求を満たすことができる。コンバージョンレンズ等も同様であり、小型化・低コスト化達成のため、歪曲収差をある程度許容している。
【0015】
広角端側で歪曲収差を電子的に補正した光学機器において、ワイドコンバージョンレンズ等のアクセサリレンズを装着した際に、電子的補正量を再度調整する必要がある。
【0016】
上記コンバージョンレンズ等とは、ワイドコンバージョンレンズ・ワイドアタッチメントレンズ・フィッシュアイレンズ・テレコンバージョンレンズ等のことである。
【0017】
本発明によれば、電子歪曲補正を行っているデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の光学機器にコンバージョンレンズ等を装着した際に、電子的補正量を調整し、精度のよい歪曲収差補正を行うことが可能となる。また、撮影時のズーム位置に応じた適切な歪曲収差補正を行うことが可能となる。
【0018】
さらに、歪曲収差補正を行うデータをパラメータで多項式近似を行ことにより、歪曲収差データのためのメモリ容量の節約となり、補正結果も滑らかで自然な画像となる。
【0019】
ズームレンズにおいて、ズーム全域歪曲収差補正が必要なものや、一部のズーム領域で歪曲収差補正が必要なものなど、ズームレンズにより異なるため、必要に応じて歪曲収差補正を行う必要がある。コンバージョンレンズ装着時も同様であり、コンバージョンレンズ装着前と装着後では、歪曲収差補正量を変更する必要がある。
【0020】
また、ズームレンズは、ズーム位置により歪曲収差量が大きく変動するため、歪曲収差量を記憶する手段はズームレンズのレンズ位置検出手段に関連付けられていることが望ましい。
【0021】
ただし、ズーム停止位置全ての歪曲収差データを記憶した場合、メモリ容量が大きくなってしまうため、歪曲収差補正を行う領域、または、補間演算によりズーム全域の歪曲収差量が算出可能な情報を記憶すればよい。
【0022】
ズーム位置と同様に、フォーカス位置により歪曲収差が大きく変動するため、歪曲収差量を記憶する手段はズームレンズのレンズ位置検出手段に関連付けられていることが望ましい。
【0023】
撮像素子の最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が1%未満のズーム位置で歪曲収差補正を行った場合、現実座標(x,y)と理想座標(X,Y)の差が1画素以上となる画面の領域が少なく、歪曲収差補正の効果に比べ、画像の解像力劣化を招くという問題が生じるため、光学ディストーションの絶対値が1%未満のズーム位置では歪曲収差補正を行わないことが望ましい。
【0024】
更に好ましくは撮像素子の最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が3%以上のズーム位置で歪曲収差補正を行うと良い。光学ディストーションの絶対値が5%以上のズーム位置で歪曲収差補正を行うと、より一層好ましい。
【0025】
ただし、歪曲収差補正後、ズーミングによる歪曲収差量が不自然とならないように、歪曲収差補正量を段階的に減少させる必要がある。
【0026】
例えば、ワイドコンバージョンレンズ装着時のズームレンズの特性として、広角端寄りのズーム領域にて、負の大きな歪曲収差(樽型)が生じ、望遠端で歪曲収差が十分小さいため、歪曲補正領域を広角端から、最大像高の像高比7割における光学ディストーションの絶対値が初めて1%未満となる領域とすれば、電子歪曲収差補正実行有無の切り替えを行う点をひとつとすることができ、システムの構成の簡素化が行える。
【0027】
また、歪曲収差補正ズーム領域は、コンバージョンレンズ等の装着前と装着後で異なる点を注意する必要がある。本発明によれば、コンバージョンレンズ装着前のズームレンズで予め設定した歪曲収差補正領域に対し、コンバージョンレンズ装着後も適正な補正ズーム領域を設定できる。
【0028】
また、歪曲収差補正実行の際、歪曲収差補正量に比例し、画像の解像力劣化を招くため、歪曲収差補正後に歪曲収差量をゼロにすることはあまり好ましくはない。電子歪曲収差補正を行う際は、0.5%以上の光学歪曲収差量を残存させることにより、解像力劣化を防ぐことが望ましい。また、製造誤差等による過剰補正を防ぐことができる。
【0029】
また、焦点距離に対する歪曲収差量(ディストーションカーブ)の形を変えずに歪曲収差を補正することにより、ズームレンズの極端な解像力劣化を防ぐことができる。
【0030】
また、歪曲収差補正を行う際、倍率色収差の補正を行うことにより、エッジ処理後により高精細な画像を得ることができる。画像処理を行う赤、緑、青の信号に対して、緑の信号を基準とし、赤および青の倍率色収差量に応じた歪曲収差補正係数を決定すればよい。
【0031】
また、歪曲収差補正を行う際、周辺光量の補正を行うことにより、画像周辺部の光量低下を防いだ高精細な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0033】
以下の実施例1から実施例2に示される通りである。実施例においてRiは物体側より順に第i番目の面の曲率半径、Diは物体側より順に第i番目と第i+1番目間のレンズ厚及び空気間隔、Niとνiは各々物体側より順に第i番目の光学部材の材質の屈折率とアッベ数である。非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にh軸、光の進行方向を正とし
【0034】
【数1】
で表される。
【0035】
但しRは近軸曲率半径、kは円錐定数、B,C,D,E,A',B',C',D',E'は非球面係数である。
*は非球面形状を有する面を意味している。
【0036】
「e−x」は10-xを意味している。
【0037】
fは焦点距離、FnoはFナンバー、ωは画角を示す。
【実施例1】
【0038】
以下、本発明の実施例1を説明する。
【0039】
図1は、実施例1のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。ズームレンズ(主レンズ)は次に示す構成となっている。以下、フロントコンバージョンレンズ等を装着していないレンズを主レンズと呼ぶ。
単位mm
f = 4.00 〜 25.36 〜 79.99 Fno = 1.80 〜 2.45 〜 3.48 2ω = 58.6゜〜10.1゜〜 3.2゜
R 1 = 49.309 D 1 = 1.35 N 1 = 1.846660 ν 1 =23.8
R 2 = 25.491 D 2 = 5.23 N 2 = 1.603112 ν 2 =60.6
R 3 = -279.616 D 3 = 0.23
R 4 = 22.253 D 4 = 2.98 N 3 = 1.696797 ν 3 = 55.5
R 5 = 55.374 D 5 = 可変
R 6 = 56.337 D 6 = 0.90 N 4 = 1.882997 ν 4 = 40.8
R 7 = 6.326 D 7 = 2.27
R 8 = -31.521 D 8 = 0.79 N 5 = 1.834807 ν 5 = 42.7
R 9 = 9.816 D 9 = 0.90
R10 = 10.847 D10 = 1.69 N 6 = 1.922860 ν 6 = 18.9
R11 = 62.525 D11 = 可変
R12 = 絞り D12 = 1.75
R13*= 8.375 D13 = 3.20 N 7 = 1.583126 ν 7 = 59.4
R14*= -45.642 D14 = 0.55
R15 = 11.897 D15 = 0.80 N 8 = 1.846660 ν 8 = 23.8
R16 = 7.258 D16 = 可変
R17 = 14.285 D17 = 3.40 N 9 = 1.518229 ν 9 = 58.9
R18 = -6.569 D18 = 0.65 N10 = 1.805181 ν10 = 25.4
R19 = -11.779 D19 = 可変
R20 = ∞ D20 = 3.00 N11 = 1.516330 ν11 = 64.1
R21 = ∞
非球面係数
R13* k =-1.05184e+00
A'=1.07744e-04 B'=3.04976e-05 C'=-7.50046e-07 D'=8.51162e-09 E'=-2.53506e-11
R14* k =-3.92850e+00
A'=1.80179e-04 B'=4.07796e-05 C'=-1.29088e-06 D'=7.64844e-09 E'=1.80690e-10
各種データ
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 4.00 25.36 79.99
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 58.6゜ 10.1゜ 3.2゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 69.00 69.00 69.00
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔
D 5 0.62 18.35 23.35
D11 25.03 7.30 2.30
D16 7.58 3.70 11.77
D19 6.08 9.96 1.89
ズームレンズ群データ
始面 終面 f 前側主点位置 後側主点位置
b 1 1 5 34.88 2.16 -3.84
b 2 6 11 -6.22 0.72 -4.36
b 3 12 16 19.79 -0.83 -4.85
b 4 17 19 16.94 1.39 -1.35
b 5 20 21 ∞ 0.99 -0.99
図2に主レンズのズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0040】
図3は、実施例1のズームレンズにフロント装着方式のワイドコンバージョンレンズ(以下、ワイドコンバータ)を装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドコンバータは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 96.414 D 1 = 3.00 N 1 = 1.487490 ν 1 = 70.2
R 2 = 28.560 D 2 = 25.77
R 3 = -30.868 D 3 = 2.40 N 2 = 1.743997 ν 2 = 44.8
R 4 = -57.624 D 4 = 0.30
R 5 = 549.682 D 5 = 5.50 N 3 = 1.712995 ν 3 = 53.9
R 6 = -43.106
各種データ
アフォーカル倍率 0.70
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 3.00
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 2.78 17.60 55.36
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 77.9゜ 14.6゜ 4.7゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 110.32 110.32 110.32
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔は、主レンズのズーミング時と同一である。
【0041】
図4にワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0042】
従来の電子歪曲収差補正は、広角端において主レンズと同等に電子歪曲収差補正を行い、その補正量をズーム全域に適応していた(図5参照)。広角端近傍の拡大図を図6に示す。
【0043】
広角端での補正値をズーミングに応じて線形的に減少するように補正を行った場合、正のディストーションが生じ、広角端以外では過補正なズーム領域が発生する場合がある。
【0044】
ここで、従来例の歪曲収差補正パラメータとして、
Dpi=(1−Zp)×Dwi
としている。
【0045】
Dpiは、像高iでの歪曲収差補正パラメータ、Zpはズーム全領域を1に正規化したズームパラメータ、Dwiは広角端を基準に決定した各像高の補正パラメータである。
【0046】
図5および図6ではDwiは以下のようにしている。
【0047】
Dw9 Dw7 Dw5 Dw3
0.10 0.05 0.03 0.01
Dw9=0.10のとき、広角端像高9割では歪曲収差量を10%補正するということを意味する。
【0048】
図2に示した主レンズでのズーミングによる歪曲収差量と図4に示したワイドコンバージョンレンズを装着した際のズーミングによる歪曲収差量が大きく異なる点を補正パラメータとして設定できないため、図6のような正の歪曲収差量が2%以上発生するズーム領域が生じ、過補正を招いていた。
【0049】
図7は実施例1の電子歪曲補正装置の構成を示すブロック図の一例である。
図7において、
10aは撮像光学系、101はバリエータ、102はコンペンセータ、103は絞り、104は撮像素子である。
【0050】
撮像素子からの信号は、105A/D変換器、10b補間処理回路、106D/A変換器、にて処理される。
【0051】
10aの撮像光学系の制御は、111のレンズ駆動制御マイクロコンピュータにて総合的に制御を行っている。111のマイクロコンピュータは必要に応じて、メモリを参照し、適切な処理を行う。
【0052】
110のセレクタは、ズーム位置に応じて112歪曲収差メモリを読み出し、補間処理回路へ送る。113の検出手段にて、コンバージョンレンズの着脱および種類を判断する。
【0053】
図8は図7の10b補間処理回路を詳細に示すブロック図の一例である。
【0054】
図8において、120は歪曲収差量補間算出部である。像高3割、5割、7割、9割における離散的な歪曲収差データに対し、多項式補間演算を行い、画面中心(像高0割)から10割まで連続的な歪曲収差量を算出する。
【0055】
次に121は、歪曲収差量から、現実座標(x,y)と理想座標(X,Y)の設定を行う。
【0056】
122で、歪曲収差補間係数を算出し、123にて、画素補間係数を算出する。
【0057】
図9にコンバージョンレンズ装着時の検出フローの一例を示す。S03にて、歪曲収差メモリが参照可能な場合、S05にて直ちに歪曲収差補正パラメータの書き換えが行われる。
【0058】
図2および図4から明らかなように、主レンズのみの場合は、広角端(焦点距離4mm)から焦点距離20mm(ズーム比5倍)まで電子歪曲収差補正を行い、ワイドコンバージョンレンズ装着時は、広角端(焦点距離2.78mm)から焦点距離45mm(ズーム比16倍)まで歪曲収差補正を実施することにより、歪曲収差補正実行後に自然かつズーミングによる歪曲収差変動の少ない画像となる。
【0059】
また、ワイドコンバータ装着の前後において、歪曲収差量が異なるため、補正量を変更する必要がある。
【0060】
図10にワイドコンバータ未装着時(主レンズのみ)において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0061】
図11にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0062】
図12に主レンズの広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0063】
図13にワイドコンバータ未装着時(主レンズのみ)において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0064】
歪曲収差補正実行により、接写(マクロ)撮影時、例えば、レンズ先端から10mmでの撮影においても良好に補正が実現している。
【0065】
図14にワイドコンバータ装着時の広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0066】
図15にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量を示す。横軸はレンズ先端からの撮影距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0067】
歪曲収差補正実行により、接写(マクロ)撮影時、例えば、レンズ先端から10mmでの撮影においても良好に補正が実現している。
【0068】
本実施例では、フォーカシングによる歪曲収差発生量が像高9割において−1%程度であり、許容可能のためフォーカシングによる補正を行っていない。フォーカシングによる歪曲収差発生が許容できない場合は、必要に応じて歪曲収差補正を実行する必要がある。
【0069】
主レンズおよびコンバージョンレンズの歪曲収差量が予め参照可能な場合は、本実施例のように歪曲収差補正ズーム領域、フォーカス領域および歪曲収差補正量を適切に決めることが可能となる。
【実施例2】
【0070】
以下、本発明の実施例2を説明する。実施例1のワイドコンバージョンレンズに対して、歪曲収差量(設計歪曲収差量)が参照できない(検出手段等がない)場合について、電子歪曲収差補正を行う方法について説明する。電子歪曲収差補正装置を有している光学機器、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダにおいて、歪曲収差補正を行うことを想定している。
【0071】
図16に歪曲収差補正チャートの一例を示す。図17に、歪曲収差補正調整時の光学機器の調整モード画面の一例を示す。
【0072】
主レンズを有する光学機器において、電子歪曲収差補正が十分に行われ、ズーム全域において、歪曲収差量が±0.5%未満であるとする。
【0073】
歪曲収差が良好に補正した主レンズに対し、ワイドコンバージョンレンズを装着した際、ズーミングによる歪曲収差量は図18のようになる。ただし、横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。図18から明らかなように広角端(焦点距離2.78mm)から焦点距離30mmのズーム領域において、歪曲収差量の絶対値が1%以上であり、補正することが望ましい。歪曲収差補正後、ズーミング時に不自然な歪曲収差変動(不連続)とならないように、焦点距離40mmまで歪曲収差補正量を減少させている。
【0074】
光学機器とチャートを正対させ、図16のチャートの中心位置と図17の調整モード画面に表示される十字像を合致させることにより、画面全域の歪曲収差量が測定できる。広角端では負の歪曲収差が像高9割において−10.4%発生しているため、図16のチャート像はたる型となり、光学機器で観察される画像は図19のようになる。
【0075】
上記の歪曲収差量の測定を広角端から望遠端まで20分割し、21回の歪曲収差量測定を行うことで、ズーム全域の歪曲収差量測定が完了する。図20に歪曲収差量測定フローの一例を示す。
【0076】
図21にワイドコンバータ装着時において、広角端より焦点距離40mmまで歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【実施例3】
【0077】
以下、本発明の実施例3を説明する。
【0078】
実施例3では、歪曲収差補正効果を撮影時の特殊効果として利用する方法について説明する。実施例2と同様に、電子歪曲収差補正装置を有している光学機器、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダ等を想定している。
【0079】
実施例2の図20に示したフローチャートでのステップS14において、歪曲収差補正後に像高9割の歪曲収差量が2%以下ではなく、例えば、−15±2%となるように歪曲収差補正パラメータを演算すればよい。
【0080】
歪曲収差量が−15±2%となるように歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量を図22に焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0081】
図23に歪曲収差補正実施後の歪曲収差補正チャートの撮影した際に観察される像を示す。ズーム全域において、所望の歪曲収差量を設定可能である。
【実施例4】
【0082】
以下、本発明の実施例5を説明する。
【0083】
図24は、実施例1の主レンズ(ズームレンズ)にフロント装着方式のワイドコンバータを装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドコンバータは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 1659.323 D 1 = 3.00 N 1 = 1.618000 ν 1 = 63.3
R 2 = 57.300 D 2 = 10.03
R 3 = -122.579 D 3 = 2.50 N 2 = 1.618000 ν 2 = 63.3
R 4 = 37.291 D 4 = 2.89
R 5 = 52.800 D 5 = 7.50 N 3 = 1.517417 ν 3 = 52.4
R 6 = 390.109 D 6 = 16.29
R 7 = 205.139 D 7 = 6.00 N 4 = 1.487490 ν 4 = 70.2
R 8 = -43.767
各種データ
アフォーカル倍率 0.55
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 2.50
ズーム比 20.0
広角 中間 望遠
焦点距離 2.20 13.93 43.80
Fno 1.80 2.45 3.48
画角 91.3゜ 9.2゜ 4.7゜
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 119.71 119.71 119.71
BF 1.35 1.35 1.35
可変間隔は、主レンズのズーミング時と同一である。
【0084】
図25にワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量を示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。広角端近傍の拡大図を図26に示す。
【0085】
図4および図25、図26から明らかなように、主レンズのみの場合は、広角端(焦点距離4mm)から焦点距離20mm(ズーム比5倍)まで電子歪曲収差補正を行い、ワイドコンバージョンレンズ装着時は、広角端(焦点距離2.20mm)から焦点距離8mm(ズーム比3.6倍)まで電子歪曲補正を実施することにより、歪曲収差補正の実行後に自然かつズーミングによる歪曲収差変動の少ない画像となる。
【0086】
図27にワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差量を、焦点距離に応じて示す。横軸は焦点距離、縦軸は歪曲収差量(%)である。
【0087】
ワイドコンバータ装着時の電子歪曲収差補正実施前において、−30%以下の大きな負の歪曲収差が発生しているため、画像の解像力低下を抑制するため、電子歪曲収差補正実施後の広角端において、−3%程度歪曲収差を残存させている。
【0088】
主レンズおよびコンバージョンレンズの歪曲収差量が予め参照可能な場合において、本実施例のように画像の解像力低下を抑制し、歪曲収差補正量を適切に決めることが可能となる。
【実施例5】
【0089】
以下、本発明の実施例5を説明する。
【0090】
図28は、実施例1の主レンズ(ズームレンズ)にフロント装着方式のワイドアタッチメントレンズ(以下、ワイドアタッチメント)を装着した広角端のレンズ断面図である。ワイドアタッチメントはマクロ機構またはフランジバック調整機構にて、ピント調整を行うため、広角端のみで歪曲収差補正を行えばよい。ワイドアタッチメントは次に示す構成となっている。
単位mm
R 1 = 52.016 D 1 = 2.00 N 1 = 1.487490 ν 1 = 70.2
R 2 = 18.662
各種データ
ワイドアタッチ焦点距離 -60.895
アフォーカルコンバータ〜主レンズ面間隔 8.00
(広角)
焦点距離 2.88
Fno 1.80
画角 76.0゜
像高 2.25
レンズ全長 79.19
BF 1.35
図29にワイドアタッチメント装着時のズーミングによる歪曲収差を示す。図30にワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行後の歪曲収差を示す。歪曲収差補正前の収差の形状を残し、像高9割において−2%以下で良好な補正が実現可能となる。
【0091】
また、本実施例のように、ズーム位置だけではなく、フォーカス位置に応じて歪曲収差補正パラメータを関係付ける必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1の主レンズ(ズームレンズ)の広角端のレンズ断面図。
【図2】実施例1の主レンズのズーミングによる歪曲収差量。
【図3】実施例1のワイドコンバータレンズ装着時の広角端のレンズ断面図。
【図4】実施例1のワイドコンバータ装着時のズーミングによる歪曲収差量。
【図5】従来例の電子歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量。
【図6】図5の広角端近傍の拡大図。
【図7】実施例1の構成を示すブロック図の一例。
【図8】図7の10b補間処理回路の詳細を示すブロック図の一例。
【図9】コンバージョンレンズ検出フローチャート。
【図10】ワイドコンバータ未装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図11】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図12】実施例1の主レンズの広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量。
【図13】実施例1の主レンズの歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量。
【図14】実施例1のワイドコンバータ装着時の広角端でのフォーカシングによる歪曲収差量。
【図15】実施例1のワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行時のフォーカシングによる歪曲収差量。
【図16】実施例2の歪曲収差補正チャートの一例。
【図17】実施例2の歪曲収差補正調整時の光学機器の調整モード画面の一例。
【図18】実施例2の歪曲収差が良好に補正した主レンズに対して、ワイドコンバージョンレンズを装着した際、ズーミングによる歪曲収差量。
【図19】実施例2の光学機器で観察される画像。
【図20】実施例2の歪曲収差量測定フローチャート。
【図21】実施例2のワイドコンバータ装着時において、広角端より焦点距離40mmまで歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差量。
【図22】実施例3の歪曲収差補正を行った際のズーミングによる歪曲収差量。
【図23】実施例3の歪曲収差補正実施後の歪曲収差補正チャートの撮影した際に観察される像。
【図24】実施例4のワイドコンバータレンズ装着時の広角端のレンズ断面図。
【図25】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行前のズーミングによる歪曲収差補正量。
【図26】図5の広角端近傍の拡大図。
【図27】ワイドコンバータ装着時において、歪曲収差補正実行後のズーミングによる歪曲収差補正量(広角端近傍)。
【図28】実施例5のワイドアタッチメント装着時の広角端のレンズ断面図。
【図29】ワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行前歪曲収差。
【図30】ワイドアタッチメント装着時において、歪曲収差補正実行前歪曲収差。
【符号の説明】
【0093】
B1 第1レンズ群
B2 第2レンズ群
B3 第3レンズ群
B4 第4レンズ群
SP 絞り
IP 結像面
G CCDのフォースプレートやローパスフィルター等のガラスブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系と、その先端にコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱可能な撮像装置において、
前記撮影光学系がズーミングあるいはフォーカシングの少なくとも一方を行う際に前記撮影光学系が所定位置にあることを検出する位置検出手段と、歪曲収差量を記憶する手段とから構成され、
前記コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、
歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、
前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更することを特徴とした撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方の判別を判別信号により判別することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方の判別をユーザが行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズ装着時、
電子歪曲収差補正を実行するズーム領域および歪曲収差補正を行う際に必要なパラメータを決定し、記憶することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の撮像装置であって、
電子歪曲収差補正を行う際、倍率色収差補正を同時に行うことを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の撮像装置であって、
電子歪曲収差補正を行う際、周辺光量補正を同時に行うことを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記撮像装置は、コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを未装着時において、
予め電子歪曲収差補正を行っていることを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電子歪曲収差補正装置を有していることを特徴とする光学機器。
【請求項1】
撮影光学系と、その先端にコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱可能な撮像装置において、
前記撮影光学系がズーミングあるいはフォーカシングの少なくとも一方を行う際に前記撮影光学系が所定位置にあることを検出する位置検出手段と、歪曲収差量を記憶する手段とから構成され、
前記コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方を判別し、
歪曲収差量から補正係数を算出する係数演算手段と、前記係数演算手段からの補正係数で前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段とを備え、
前記撮像素子からの撮像信号を乗算させる乗算手段はコンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを着脱時に歪曲補正ズーム領域および歪曲収差補正量を変更することを特徴とした撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方の判別を判別信号により判別することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズの着脱状態と種類との少なくとも一方の判別をユーザが行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撮像装置であって、
コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズ装着時、
電子歪曲収差補正を実行するズーム領域および歪曲収差補正を行う際に必要なパラメータを決定し、記憶することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の撮像装置であって、
電子歪曲収差補正を行う際、倍率色収差補正を同時に行うことを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の撮像装置であって、
電子歪曲収差補正を行う際、周辺光量補正を同時に行うことを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記撮像装置は、コンバージョンレンズまたはアタッチメントレンズを未装着時において、
予め電子歪曲収差補正を行っていることを特徴とする電子歪曲補正装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電子歪曲収差補正装置を有していることを特徴とする光学機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2010−147959(P2010−147959A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324981(P2008−324981)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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