説明

撮像装置

【課題】レリーズタイムラグの増大を回避しつつライブビューなどの動画撮影時における消費電力を低減することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、後幕73と当該後幕73を走行させる後幕駆動部材83と当該後幕駆動部材83を吸着する吸着力を発生させる保持手段とを有するシャッタ装置7を備える。撮像装置の制御手段は、後幕駆動部材83が保持手段の永久磁石の磁力に基づく吸着力により当該保持手段に吸着されて所定位置に保持され後幕73が露光開始位置に維持された状態で、シャッタ装置7の開口部OPを通過した被写体像に関する時系列の画像を撮像素子に取得させる。また、当該制御手段は、所定のタイミングで電磁石に対する通電を開始して、永久磁石の磁束を打ち消す向きの磁束を生成して吸着力を低減し後幕駆動部材83の保持を解除し、後幕73を露光開始位置から露光終了位置へと走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置に用いられるシャッタ装置としては、特許文献1に記載のものが存在する。特許文献1に記載のシャッタ装置は、先幕と後幕との双方を有しているが、ここでは後幕の動作を中心に説明する。
【0003】
このようなシャッタ装置では、撮影時には、後幕を駆動する駆動レバー(後幕駆動部材)がカム部材(チャージ部材)によって所定位置にまで回転移動され、当該駆動レバーの駆動用のバネがチャージされる。
【0004】
そして、当該駆動レバーは、後幕を露光開始位置に移動させた時点で電磁石によって保持される。具体的には、駆動レバーの回転移動に伴って後幕が露光開始位置に移動した後に、電磁石に対する通電が開始される。なお、当該電磁石は、後幕が露光開始位置に存在するときに、駆動レバーの鉄片に対向する位置に設けられる。さらに、この通電開始に応じて、当該鉄片が電磁石で吸着され、チャージバネの付勢力は電磁石の吸着力によって相殺される。このような電磁石の吸着作用により、当該駆動レバーが所定位置に保持されるとともに後幕は露光開始位置に維持される。なお、当該駆動レバーを当該所定位置にまで移動させたカム部材は、後幕の走行動作(次述)を妨げないように、適宜の退避位置にまで移動される。
【0005】
その後、先幕の走行後に、電磁石に対する通電を停止することによって、後幕が走行する。具体的には、この通電停止に応じてチャージバネの付勢力への対抗力(電磁的な吸着力)が消滅するため、当該付勢力により駆動レバーが移動を開始し、当該移動動作に伴って、後幕が露光開始位置から露光終了位置へ向けて移動する。
【0006】
また、特許文献2においては、後幕を露光開始位置に移動させた駆動レバーを、電磁石の磁力ではなく機械的な保持機構による押圧力を用いて保持する技術が記載されている。具体的には、駆動レバーに関するバネ力をチャージするチャージ部材(セット部材)が当該駆動レバーに接触して押圧力を加えることによって、駆動レバーが保持される。また、その後に後幕を駆動させる際には、駆動レバーによる保持を解除するための動作(詳細にはチャージ部材の回転動作)が、当該後幕の駆動動作に先行して実行される。
【0007】
【特許文献1】実公平6−26895号公報
【特許文献2】特開2003−15190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、一眼レフタイプのデジタルカメラにおいて、ライブビュー機能を搭載するものが存在する。
【0009】
このようなライブビュー機能を実現する技術としては、メインイメージャとは別個にサブイメージャを設け、当該サブイメージャでライブビューを実現する技術が存在する。また、メインイメージャによって取得される時系列の画像をライブビュー画像として用いる技術も存在する。特に、後者の技術においては、ライブビュー時にはシャッタ装置の露光用の開口部を開放状態に維持することが求められる。
【0010】
特許文献1に記載のシャッタ装置を、後者のライブビュー技術に用いる場合には、次のような問題が生じる。具体的には、上記のようなシャッタ装置を用いてライブビューを実現する場合には、後幕を露光開始位置に維持し続けるために、電磁石に通電し続けることが求められる。このように、ライブビュー時において常に通電することが求められる。したがって、消費電力が増大するという問題が存在する。
【0011】
また、特許文献2のように機械的な保持機構を用いて押圧力により後幕駆動部材を保持部することによれば、消費電力の増大を回避することは可能である。しかしながら、特許文献2の技術においては、当該機械的な保持機構による保持を解除するための時間をレリーズボタン押下後に設けることを要するため、所謂レリーズタイムラグが長くなるという問題が存在する。
【0012】
そこで、この発明の課題は、レリーズタイムラグの増大を回避しつつライブビューなどの動画撮影時における消費電力を低減することが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面は、撮像装置であって、シャッタ装置と、前記シャッタ装置の露光用の開口部を通過した被写体像に関する時系列の画像を順次に取得する撮像素子と、前記シャッタ装置の動作と前記撮像素子の動作とを制御する制御手段とを備え、前記シャッタ装置は、露光開始位置から露光終了位置へと走行した後に前記開口部を覆う後幕と、前記後幕を前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる後幕駆動部材と、前記露光開始位置から前記露光終了位置へと向かう向きに前記後幕を移動させる付勢力を、前記後幕駆動部材に対して付与する付勢力付与手段と、永久磁石の磁力に基づく吸着力により、前記後幕駆動部材を前記付勢力に抗して保持する保持手段と、電磁石への通電により前記永久磁石の磁束を打ち消す向きの磁束を生成して前記吸着力を低減し前記後幕駆動部材の保持を解除する保持解除手段とを有し、前記制御手段は、前記後幕駆動部材が前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記保持手段に吸着されて所定位置に保持され前記後幕が前記露光開始位置に維持された状態で、前記開口部を通過した被写体像に関する前記時系列の画像を前記撮像素子に取得させ、本撮影画像に関する撮影指令付与後の所定のタイミングで前記電磁石に対する通電を開始して前記後幕駆動部材の保持を解除し、前記後幕を前記付勢力により前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させるものである。
【0014】
本発明の第2の側面は、撮像装置であって、シャッタ装置と、前記シャッタ装置の露光用の開口部を通過した被写体像に関する時系列の画像を順次に取得する撮像素子と、前記シャッタ装置の動作と前記撮像素子の動作とを制御する制御手段とを備え、前記シャッタ装置は、露光開始位置から露光終了位置へと走行した後に前記開口部を覆う後幕と、前記後幕を前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる後幕駆動部材と、前記露光開始位置から前記露光終了位置へと向かう向きに前記後幕を移動させる付勢力を、前記後幕駆動部材に対して付与する付勢力付与手段と、永久磁石と電磁石とを有し、前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記後幕駆動部材を前記付勢力に抗して保持するとともに、前記電磁石への通電により前記永久磁石の磁束を打ち消す向きの磁束を生成して前記吸着力を低減し前記後幕駆動部材の保持を解除する吸着力調整手段とを有し、前記制御手段は、前記後幕駆動部材が前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記保持手段に吸着されて所定位置に保持され前記後幕が前記露光開始位置に維持された状態で、前記開口部を通過した被写体像に関する前記時系列の画像を前記撮像素子に取得させ、本撮影画像に関する撮影指令付与後の所定のタイミングで前記電磁石に対する通電を開始して前記後幕駆動部材の保持を解除し、前記後幕を前記付勢力により前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レリーズタイムラグの増大を回避しつつライブビューなどの動画撮影時における消費電力を低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明を実施するための最良の形態(実施形態とも称する)について説明する。なお、説明は以下の順序、すなわち、
1.撮像装置の概要、
2.撮像装置の機能ブロック、
3.撮影動作の概要、
4.シャッタ装置の構成、
5.シャッタ装置の動作、
6.その他、
の順序で行う。
【0017】
<1.撮像装置の概要>
図1および図2は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の外観構成を示す図である。ここで、図1は、撮像装置1の正面外観図であり、図2は、撮像装置1の背面外観図である。この撮像装置1は、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルカメラとして構成されている。
【0018】
図1に示すように、撮像装置1は、カメラ本体部(カメラボディ)2を備えている。このカメラ本体部2に対して、交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)3が着脱可能である。
【0019】
撮影レンズユニット3は、主として、鏡胴3cならびに鏡胴3cの内部に設けられるレンズ群3e(図3参照)及び絞り等によって構成される。レンズ群3e(撮影光学系)には、光軸方向に移動することによって焦点位置を変更するフォーカスレンズ等が含まれている。
【0020】
カメラ本体部2は、撮影レンズユニット3が装着される円環状のマウント部Mtを正面略中央に備えている。
【0021】
また、カメラ本体部2は、その正面右上部にモード設定ダイヤル15を備えている。モード設定ダイヤル15を操作することによれば、カメラの各種モード(本撮影画像を撮影する「撮影モード」、撮影した画像を再生する「再生モード」、および外部機器との間でデータ交信を行う「通信モード」等を含む)の設定動作(切替動作)を行うことが可能である。
【0022】
また、カメラ本体部2は、正面左端部に撮影者が把持するためのグリップ部14を備えている。グリップ部14の上面には露光開始を指示するためのレリーズボタン11が設けられている。グリップ部14の内部には電池収納室とカード収納室とが設けられている。電池収納室にはカメラの電源として、例えばリチウムイオン電池などの電池が収納されており、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するためのメモリカード90(図3参照)が着脱可能に収納されるようになっている。
【0023】
レリーズボタン11は、半押し状態(S1状態)と全押し状態(S2状態)の2つの状態を検出可能な2段階検出ボタンである。レリーズボタン11が半押しされS1状態になると、被写体に関する記録用静止画像(本撮影画像)を取得するための準備動作(例えば、AF制御動作等)が行われる。また、レリーズボタン11がさらに押し込まれてS2状態になると、当該本撮影画像の撮影動作が行われる。詳細には、撮像素子5(後述)を用いて被写体像(被写体の光像)に関する露光動作が行われ、その露光動作によって得られた画像信号に所定の画像処理を施す一連の動作が実行される。このように、撮像装置1は、レリーズボタン11が半押し状態S1にされると撮影準備指令が付与されたものとみなし、レリーズボタン11が全押し状態S2にされると撮影指令が付与されたものとみなす。
【0024】
図2において、カメラ本体部2の背面略中央上部には、ファインダ窓(接眼窓)10が設けられている。撮影者は、ファインダ窓10を覗くことによって、撮影レンズユニット3から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことができる。すなわち、光学ファインダを用いて構図決めを行うことが可能である。
【0025】
図2において、カメラ本体部2の背面の略中央には、背面モニタ12が設けられている。背面モニタ12は、例えばカラー液晶ディスプレイ(LCD)として構成される。
【0026】
背面モニタ12は、撮影条件等を設定するためのメニュー画面を表示すること、および再生モードにおいてメモリカード90に記録された撮影画像を再生表示することなどが可能である。
【0027】
また、背面モニタ12は、撮像素子5(後述)によって取得された時系列の複数の画像(すなわち動画像)をライブビュー画像として順次に表示することも可能である。この実施形態に係る撮像装置1においては、背面モニタ12に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことが可能である。
【0028】
背面モニタ12の左上部には電源スイッチ(メインスイッチ)16が設けられている。電源スイッチ16は2点スライドスイッチからなり、接点を左方の「OFF」位置に設定すると、電源がオフになり、接点の右方の「ON」位置に設定すると、電源がオンになる。
【0029】
背面モニタ12の右側には方向選択キー18が設けられている。この方向選択キー18は円形の操作ボタンを有し、この操作ボタンにおける上下左右の4方向の押圧操作と、右上、左上、右下及び左下の4方向の押圧操作とが、それぞれ検出されるようになっている。なお、方向選択キー18は、上記8方向の押圧操作とは別に、中央部のプッシュボタンの押圧操作も検出されるようになっている。
【0030】
<2.撮像装置の機能ブロック>
つぎに、図3を参照しながら、撮像装置1の機能の概要について説明する。図3は、撮像装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように、撮像装置1は、AFモジュール20、全体制御部101、フォーカス制御部121、ミラー制御部122、シャッタ制御部123、およびデジタル信号処理回路53等を備える。
【0032】
全体制御部101は、マイクロコンピュータとして構成され、主にCPU、メモリ、及びROM(例えばEEPROM)等を備える。全体制御部101は、ROM内に格納されるプログラムを読み出し、当該プログラムをCPUで実行することによって、各種機能を実現する。全体制御部101は、AF動作、シャッタ装置の動作、および撮像素子の動作等を統括的に制御する。
【0033】
AFモジュール20は、ミラー機構6を介して進入してきた光を用いて、位相差方式の合焦状態検出手法により被写体の合焦状態を検出することが可能である。全体制御部101は、AFモジュール20によって検出される被写体の合焦状態に応じて、フォーカス制御部121を用いてAF動作を実現する。特に、位相差方式のAFモジュール20を用いることによれば、非常に高速に合焦レンズ位置を求めることができる。
【0034】
フォーカス制御部121は、全体制御部101と協働して合焦制御動作を実現する。具体的には、フォーカス制御部121は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成し、撮影レンズユニット3のレンズ群3eに含まれるフォーカスレンズを移動する。また、フォーカスレンズの位置は、撮影レンズユニット3のレンズ位置検出部3dによって検出され、フォーカスレンズの位置を示すデータが全体制御部101に送られる。このように、フォーカス制御部121は、フォーカスレンズの光軸方向の動き等を制御する。
【0035】
また、ミラー制御部122は、ミラー機構6が光路から退避した状態(ミラーアップ状態)とミラー機構6が光路を遮断した状態(ミラーダウン状態)との状態切替を制御する。ミラー制御部122は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成することによって、ミラーアップ状態とミラーダウン状態とを切り替える。
【0036】
シャッタ制御部123は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成することによって、シャッタ装置7の動作(特に駆動動作等)を制御する。
【0037】
シャッタ装置7は、撮像素子5の被写体側において撮像素子5の近接位置に配置される。シャッタ装置7は、いわゆるフォーカル・プレーン・シャッタである。このシャッタ装置7は、撮影レンズユニット3の光軸に対して略垂直となるように配置される。詳細には、シャッタ装置7は、当該シャッタ装置7の開口部OP(後述)の中心位置が撮影レンズユニット3の光軸に一致するように配置される。
【0038】
また、シャッタ装置7の背面側には、撮像素子5が撮影レンズユニット3の光軸に対して略垂直に配置される。
【0039】
撮像素子(ここではCMOSセンサ)5は、撮影レンズユニット3からの被写体の光像(被写体像)を光電変換作用により電気的信号に変換する受光素子であり、本撮影画像に係る画像信号(記録用の画像信号)を生成して取得する。また、撮像素子5は、ライブビュー用の画像をも取得する。
【0040】
撮像素子5は、全体制御部101からの駆動制御信号(蓄積開始信号および蓄積終了信号)に応答して、受光面に結像された被写体像の露光(光電変換による電荷蓄積)を行い、当該被写体像に係る画像信号を生成する。また、撮像素子5は、全体制御部101からの読出制御信号に応答して、当該画像信号を信号処理部51へ出力する。
【0041】
撮像素子5で取得された画像信号に対して信号処理部51により所定のアナログ信号処理が施されると、当該アナログ信号処理後の画像信号はA/D変換回路52によってデジタル画像データ(画像データ)に変換される。この画像データは、デジタル信号処理回路53に入力される。
【0042】
デジタル信号処理回路53は、A/D変換回路52から入力される画像データに対してデジタル信号処理を行い、撮像画像に係る画像データを生成する。デジタル信号処理回路53は、黒レベル補正回路、ホワイトバランス(WB)回路、γ補正回路等を備え、各種のデジタル画像処理を施す。なお、デジタル信号処理回路53によって処理された画像信号(画像データ)は、画像メモリ55に格納される。画像メモリ55は、生成された画像データを一時的に記憶するための、高速アクセス可能な画像メモリであり、複数フレーム分の画像データを記憶可能な容量を有する。
【0043】
本撮影時には、画像メモリ55に一時記憶される画像データは、全体制御部101において適宜画像処理(圧縮処理等)が施された後、メモリカード90に記憶される。
【0044】
また、ライブビュー時においては、撮像素子5により取得され画像メモリ55に一時記憶される時系列の画像(ライブビュー画像)が、背面モニタ12に順次に表示される。
【0045】
<3.撮影動作の概要>
上述したように、この撮像装置1においては、ファインダ光学系等で構成される光学ファインダ(光学ビューファインダ(OVF)とも称される)を用いて構図決め(フレーミング)を行うことが可能である。
【0046】
また、この撮像装置1においては、背面モニタ12に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことも可能である。なお、背面モニタ12を利用して実現されるファインダ機能は、被写体の光像を電子データに変換した後に可視化するものであることから電子ビューファインダ(EVF)とも称される。
【0047】
OVFによる構図決めモード(OVFモード)とEVFによる構図決めモード(EVFモード)とは適宜の切換スイッチ(不図示)によって切り換えられる。
【0048】
図4および図5は、撮像装置1の断面図である。図4は、ミラーダウン状態を示しており、図5はミラーアップ状態を示している。
【0049】
図4および図5に示すように、撮影レンズユニット3から撮像素子5に至る光路(撮影光路)上にはミラー機構6が設けられている。ミラー機構6は、撮影光学系からの光を上方に向けて反射する主ミラー6a(主反射面)を有している。この主ミラー6aは、例えばその一部または全部がハーフミラーとして構成され、撮影光学系からの光の一部を透過する。また、ミラー機構6は、主ミラー6aを透過した光を下方に反射させるサブミラー6b(副反射面)をも有している。サブミラー6bで下方に反射された光は、AFモジュール20へと導かれて入射し、位相差方式のAF動作に利用される。
【0050】
OVFモードにおいては、レリーズボタン11が全押し状態S2にされる前まで(すなわち構図決め時において)、ミラー機構6はミラーダウン状態となるように配置される(図4)。そして、この際には、撮影レンズユニット3からの被写体像は、主ミラー6aで上方に反射され観察用光束としてペンタプリズム65に入射し、ペンタプリズム65において更に反射され、接眼レンズ67およびファインダ窓10を通過して、撮影者の眼に到達する。このようにして、光学ビューファインダ(OVF)を用いた構図決め動作が行われる。
【0051】
その後、レリーズボタン11が全押し状態S2にされると、ミラー機構6はミラーアップ状態となるように駆動され、露光動作が開始される(図5参照)。具体的には、図5に示すように、露光時には、ミラー機構6は、撮影光路から退避する。詳細には、撮影光学系からの光(被写体像)を遮らないように主ミラー6aとサブミラー6bとが上方に退避し、撮影レンズユニット3からの光が、主ミラー6aで反射されることなく進行して、シャッタ装置7の開放期間に合わせて撮像素子5に到達する。撮像素子5は、光電変換によって、受光した光束に基づいて被写体の画像信号を生成する。このように、被写体からの光束(被写体像)が撮影レンズユニット3を通過して撮像素子5に導かれることによって、被写体に係る撮影画像(撮影画像データ)が得られる。
【0052】
一方、EVFモード(ライブビューモードとも称する)においては、次のような動作が実行される。
【0053】
具体的には、レリーズボタン11が全押し状態S2にされる前まで(すなわち構図決め時において)、ミラー機構6はミラーアップ状態となるように配置される(図5)。そして、この際には、撮影レンズユニット3からの被写体像は、主ミラー6aで反射されることなくそのまま直進して撮像素子5に入射する。また、ライブビュー期間中においては、シャッタ装置7の開口部OPは開放状態で維持されており、当該開口部OPを通過した被写体像が撮像素子5に到達する。
【0054】
そして、撮像素子5は、当該撮像素子5に入射した被写体像に基づいて、被写体像に係る時系列の画像(ライブビュー画像)を順次に取得する。具体的には、撮像素子5は、微小時間間隔(例えば、1/60秒)で複数の画像を順次に生成する。そして、取得された時系列の画像は背面モニタ12において順次に表示される。これによって、撮影者は、背面モニタ12に表示される動画像(ライブビュー画像)を視認し、当該動画像を用いて構図決めを行うことが可能になる。このようにしてライブビュー画像を用いた構図決め動作が実行される。
【0055】
その後、レリーズボタン11が全押し状態S2にされると、電子先幕(後述)とメカ後幕(後述)とが走行し、露光動作が実行される。そして、シャッタ装置7の開放期間に撮像素子5に到達した被写体像に基づいて、撮像素子5における光電変換作用により、被写体の画像信号が生成される。このようにして、被写体からの光束(被写体像)が撮影レンズユニット3を通過して撮像素子5に導かれることによって、被写体に係る本撮影画像(撮影画像データ)が得られる。更に、その後、ライブビュー表示が再開される。
【0056】
<4.シャッタ装置の構成>
図6は、シャッタ装置7の構成を示す正面図であり、図7は、シャッタ装置7の構成を示す斜視図である。なお、図7においては、駆動機構80(次述)の内部構成を示すために、他の一部の部品(板状部材71c等)が省略されて示されている。
【0057】
撮像装置1は、EVFモードにおいては、シャッタ装置7における先幕として、いわゆる「電子先幕」を利用する。例えば、撮像素子5における所定単位(例えばライン)ごとのリセット動作を所定方向に順次に実行していく動作が、電子先幕の「走行動作」に相当する。そして、「走行中の電子先幕」の先端位置を追いかけるように、機械的な後幕が走行することによって、微小期間における露光動作が実現される。このとき、撮像素子(例えばCMOS)5内の或る画素に注目すると、当該撮像素子5におけるリセット動作直後の時刻T1から、「後幕」が当該画素を覆って遮光する時刻T2までの期間TM(=T2−T1)にわたって、当該画素に関する露光動作が行われる。この期間TMの長さ(例えば、1/100秒)がシャッタスピードに対応する。
【0058】
ただし、このシャッタ装置7は、機械的な先幕(メカ先幕)をも備えている。すなわち、シャッタ装置7は、機械的な先幕と機械的な後幕との双方を備えている。この機械的な先幕72(後述)は、OVFモードにおいては、一般的な先幕(メカ先幕)としての動作を実行する。一方、EVFモードにおいては、当該先幕72は、OVFモードにおける一般的な先幕(メカ先幕)としての動作とは異なり、後述するように露光動作中の多重露光防止動作を実行する。
【0059】
図6および図7に示すように、シャッタ装置7は、シャッタ地板71aと、先羽根群72(72a,72b,72c)と、後羽根群73(73a,73b,73c)と、アーム74a,74b,75a,75bとを備える。また、シャッタ装置7は、シャッタ地板71aの裏側に、シャッタ地板71aと略同形状の補助地板71bをも備えている。両地板71a,71bは、所定の間隙を有する状態で対向して設けられる。両地板71a,71bの当該間隙は、後羽根群73a,73b,73c等が収容される空間であるため、「羽根室」とも称される。
【0060】
シャッタ地板71aは、略中央に露光用の開口部OPを有している。同様に、補助地板71bも、略中央に露光用の開口部OPを有している。シャッタ地板71aの開口部OPと補助地板71bの開口部OPとは、略同形状(略長方形形状)を有するとともに互いに対応する位置に設けられる。これらの開口部は、シャッタ装置7の組立状態では一体化してシャッタ装置7における露光用の開口部OPを形成する。
【0061】
また、シャッタ地板71a,71bには、2つの円弧状の長孔HL2,HL3(図7参照)が設けられている。長孔HL2は、軸AX2を中心とする円弧に沿って設けられており、長孔HL3は、軸AX3を中心とする円弧に沿って設けられている。
【0062】
シャッタ地板71aと補助地板71bとの間には、後羽根群73a,73b,73cが設けられている。後羽根群73a,73b,73cは、それぞれ、遮光性を有する薄板状部材である。これらの後羽根群73a,73b,73cは、「後幕」を構成する。なお、ここでは、3枚の後羽根群73a,73b,73cによって「後幕」が構成される場合を例示するが、これに限定されず、2枚以下或いは4枚以上の羽根によって後幕が構成されるようにしてもよい。
【0063】
後羽根群73a,73b,73c(後幕73とも称する)は、いずれも、アーム75aに回転可能に結合されるとともに、アーム75bにも回転可能に結合される。アーム75aは軸AX7(図6参照)を中心に回動可能であり、アーム75bは軸AX8を中心に回動可能である。なお、ここでは軸AX7は軸AX3(後述)と同じ軸である。
【0064】
図6に示すように、アーム75aとアーム75bとが所定の位置に存在するときには、後羽根群73a,73b,73cで構成される後幕が開口部OPを閉鎖しており、後幕による「開口部OPの閉鎖状態」が実現される。一方、この状態から、アーム75aが軸AX7を中心に反時計回りに回転すると、アーム75bも軸AX8を中心に反時計回りに回転し、図7に示されるように、後羽根群73a,73b,73cで構成される後幕が開口部OPから退避する。すなわち、後幕による「開口部OPの開放状態」が実現される。また逆に、図7に示す状態から、アーム75aが軸AX7を中心に時計回りに回転すると、アーム75bも軸AX8を中心に時計回りに回転し、図6の「開口部OPの閉鎖状態」に移行する。
【0065】
なお、図6における各後羽根群73a,73b,73cの位置を「露光終了位置」とも称し、図7における各後羽根群73a,73b,73cの位置を「露光開始位置」とも称する。「後幕」は、露光開始位置から露光終了位置へと走行した後には開口部OPを覆い(図6)、露光終了位置から露光開始位置へと走行した後には開口部OPを開放する(図7)。換言すれば、露光開始位置においては開口部OPが後幕によって覆われておらず開放されており、露光終了位置においては開口部OPが後幕によって覆われている。
【0066】
また、シャッタ地板71aと補助地板71bとの間には、先羽根群72a,72b,72cも設けられている。先羽根群72a,72b,72cは、それぞれ、遮光性を有する薄板状部材である。これらの先羽根群72a,72b,72cは、機械的な先幕(メカ先幕)72を構成する。なお、ここでは、3枚の先羽根群72,72b,72cによって「メカ先幕」が構成される場合を例示するが、これに限定されない。メカ先幕は、2枚以下或いは4枚以上の羽根によって構成されてもよい。
【0067】
先羽根群72a,72b,72cは、いずれも、アーム74aに回転可能に結合されるとともに、アーム74bにも回転可能に結合される。アーム74aは軸AX4を中心に回動可能であり、アーム75bは軸AX5を中心に回動可能である。なお、ここでは軸AX4は軸AX2(後述)と同じ軸である。
【0068】
図13および図14に示すように、アーム74aとアーム74bとが所定の位置に存在するときには、先羽根群72a,72b,72cで構成される先幕が開口部OPを閉鎖しており、先幕による「開口部OPの閉鎖状態」が実現される。一方、この状態から、アーム74aが軸AX4(AX2)を中心に時計回りに回転すると、アーム74bも軸AX5を中心に時計回りに回転する。そして、図6、図7、図12および図15に示されるように、先羽根群72a,72b,72cで構成される先幕72が開口部OPから退避する。すなわち、先幕による「開口部OPの開放状態」が実現される。また逆に、図6に示す状態から、アーム74aが軸AX4を中心に反時計回りに回転すると、アーム74bも軸AX5を中心に反時計回りに回転し、図13の「開口部OPの閉鎖状態」に移行する。
【0069】
また、上記のアーム74a,74b,75a,75b、先幕72および後幕73は、次述する駆動機構80によって駆動される。図8〜図11は、それぞれ、駆動機構80の一部の構成部品82,81,83,85(84)を示す図である。また、図12〜図15は、駆動機構80の一連の動作を示す図である。
【0070】
図7等に示すように、駆動機構80は、チャージ部材81(図9)と先幕駆動部材82(図8)と後幕駆動部材83(図10)とを備える。
【0071】
これらの部材81,82,83は、シャッタ地板71aの表(おもて)側(図6および図12等の紙面に対する手前側)に設けられる。なお、後幕駆動部材83は、後幕73を露光開始位置から露光終了位置へと走行させる部材である。チャージ部材81は、後幕駆動部材83を軸AX3回りに回転させることによって、バネ89(後述)による付勢力を増大(チャージ)させる部材である。
【0072】
チャージ部材81は、軸AX1を中心に回動することが可能な略板状の回転体である。また、先幕駆動部材82は、軸AX2を中心に回動することが可能な略板状(略扇形形状)の回転体であり、後幕駆動部材83は、軸AX3を中心に回動することが可能な略板状(略扇形形状)の回転体である。
【0073】
チャージ部材81と板状部材71c(図6参照)とはバネ87(図7参照)によって結合されており、当該バネ87は「反時計回り」の付勢力をチャージ部材81に対して付与している。板状部材71cは、固定用立設部材(不図示)を介してシャッタ地板71aの手前側(おもて側)においてシャッタ地板71aに対して略平行に固定される部材である。また、ここでは、バネ87として、チャージ部材81の円筒状立設部81b(図9参照)の外周に配置されるトーションバネ(ねじりバネ)が用いられる。
【0074】
また、先幕駆動部材82と板状部材71cとはバネ88(図7参照)によって結合されており、当該バネ88は「時計回り」の付勢力を先幕駆動部材82に対して付与している。ここでは、バネ88として、先幕駆動部材82の円筒状立設部82b(図8参照)の外周に配置されるトーションバネが用いられる。このバネ88による時計回りの付勢力は、先幕72を、図14の位置(開口部OPを覆う位置)から図15の位置(開口部OPから退避した位置)へと向かう向きに移動させる力として作用する。
【0075】
同様に、後幕駆動部材83と板状部材71cとはバネ89(図7参照)によって結合されており、当該バネ89は「時計回り」の付勢力を後幕駆動部材83に対して付与している。ここでは、バネ89として、後幕駆動部材83の円筒状立設部83b(図10参照)の外周に配置されるトーションバネが用いられる。このバネ89による時計回りの付勢力は、後幕73を、図15の位置(開口部OPから退避した位置)から図12の位置(開口部OPを覆う位置)へと向かう向きに移動させる力として作用する。
【0076】
図10に示すように、後幕駆動部材83は、円筒状立設部83bに加えて、板部83pとリンクピン83nと突出部83eと立設部83gとを有している。
【0077】
略扇形形状の後幕駆動部材83は、その外周部側においてリンクピン83nを有している。このリンクピン83nは、後幕駆動部材83の板部83pの裏面からさらに奥側(裏側)に向けて立設されている。特に、リンクピン83nは、シャッタ地板71aの長孔HL3、およびアーム75aに設けられた孔75h(図7参照)を貫通して設けられる。また、孔75hの径とリンクピン83nの径とはほぼ同一である。そのため、後幕駆動部材83の軸AX3回りの回動動作に伴ってリンクピン83nが移動すると、アーム75aがリンクピン83nによって軸AX7(=AX3)を中心に回動する。これにより、後羽根群73a,73b,73cの移動動作、すなわち「後幕」の開閉動作が実現される。このように、リンクピン83nに連動して「後幕」が動作することによって、図6(図12等も参照)の閉鎖状態と図7(図14等も参照)の開放状態とが実現される。
【0078】
また、後幕駆動部材83は、チャージ部材81側に突出する突出部(接触面)83eを有している。突出部83eは、チャージ部材81が時計回りに回転すると、チャージ部材81の突出部81eと接触し、当該突出部81eからの押圧力を受ける。そして、この押圧力は後幕駆動部材83を反時計回りに回転させる。この押圧力の作用によって、後幕駆動部材83は、バネ89による(時計回りの)付勢力に抗して反時計回りに回転する。
【0079】
また、板部83pは、略扇形形状の後幕駆動部材83の外周部付近において立設部83gを有している。この立設部83gは、板部83pの表(おもて)面からさらにおもて側(図12の紙面に対する手前側)に向けて立設されている。この立設部83gには鉄片部材83mが固定されている。
【0080】
図12の紙面に垂直な方向において鉄片部材83mと同じ位置(すなわち同じ高さ)には、吸着部材85(後述)が設けられている。当該吸着部材85は、板状部材71cに固定されている。
【0081】
後幕駆動部材83が、図12の状態から反時計回りに回転し、図13〜図15に示す回転角度を有するときには、吸着部材85に対向する鉄片部材83mが当該吸着部材85によって吸着される。これにより、後幕駆動部材83の回転移動は抑止される。なお、後幕駆動部材83が図15等で示される位置に存在するときに吸着部材85のコア吸着面85aが鉄片部材83mに対向するように、吸着部材85は配置されている。
【0082】
同様に、図8に示すように、先幕駆動部材82は、円筒状立設部82bに加えて、板部82pとリンクピン82nと突出部82cと立設部82gとを有している。
【0083】
略扇形形状の先幕駆動部材82は、その外周部側においてリンクピン82nを有している。このリンクピン82nは、駆動部材82の板部82pの裏面からさらに奥側(裏側)に向けて立設されている。特に、リンクピン82nは、シャッタ地板71aの長孔HL2、およびアーム74aに設けられた孔74h(図7参照)を貫通して設けられる。また、先幕駆動部材82の軸AX2回りの回動動作に伴ってリンクピン82nが移動すると、アーム74aがリンクピン82nによって軸AX4(=AX2)を中心に回動する。これにより、先羽根群72a,72b,72cの移動動作、すなわち「メカ先幕」の開閉動作が実現される。このように、リンクピン82nに連動して「メカ先幕」が動作することによって、メカ先幕による開口部OPの開放状態(図12参照)とメカ先幕による開口部OPの閉鎖状態(図13参照)とが実現される。
【0084】
また、先幕駆動部材82は、チャージ部材81側に突出する突出部(接触面)82cを有している。突出部82cは、チャージ部材81が時計回りに回転すると、チャージ部材81の突出部81cと接触し、当該突出部81cからの押圧力を受ける。そして、この押圧力は先幕駆動部材82を反時計回りに回転させる。この押圧力の作用によって、先幕駆動部材82は、バネ88による(時計回りの)付勢力に抗して反時計回りに回転する。
【0085】
また、板部82pは、略扇形形状の外周部付近において立設部82gを有している。この立設部82gは、板部82pの表(おもて)面からさらにおもて側(図12の紙面に対する手前側)に向けて立設されている。この立設部82gには鉄片部材82mが固定されている。
【0086】
図12の紙面に垂直な方向において鉄片部材82mと同じ位置(すなわち同じ高さ)には、吸着部材84(後述)が設けられている。当該吸着部材84は、板状部材71cに固定されている。
【0087】
先幕駆動部材82が、図12の状態から反時計回りに回転し、図13(後述)に示す回転角度を有するときには、吸着部材84に対向する鉄片部材82mが当該吸着部材84によって吸着される。これにより、先幕駆動部材82の回転移動は抑止される。なお、先幕駆動部材82が図13等で示される位置に存在するときに吸着部材84のコア吸着面84aが鉄片部材82mに対向するように、吸着部材84は配置されている。
【0088】
図11は、吸着部材85を示す図である。図11に示すように、吸着部材85は、永久磁石85cとコア85bとボビン85dとコイル85eと端子85f,85gとを有している。
【0089】
コア85bは、2つの脚部を有する略U字形状を有しており、当該コア85bの両脚部の結合部分には永久磁石85cが埋設されている。また、当該両脚部の端面は、当該永久磁石85cの磁力によって被吸着物を吸着する吸着面(コア吸着面とも称する)85aとして機能する。
【0090】
また、コア85bの2つの脚部のうちの一方の脚部には、電磁石が設けられている。具体的には、コイル85eが巻回されたボビン85dが、当該一方の脚部に設けられており、コイル85eの両端のそれぞれに接続された各端子85f,85gがボビン85dの表面に突設されている。端子85f、85gの間に電圧が印加されると、コイル85eは、磁束を発生する。すなわち、コイル85e等は電磁石として機能する。
【0091】
このように、吸着部材85は、「永久磁石」と「電磁石」とを有している。
【0092】
ここにおいて、吸着部材85は、電磁石への非通電時においては、永久磁石85cの磁力によって被吸着物(例えば鉄片部材83m)を吸着する。なお、永久磁石85c等は吸着力を発生する吸着力発生部材であるとも表現される。
【0093】
また、吸着部材85は、電磁石への通電(コイル85eへの通電)によって、コア吸着面85aにおける吸着力を変化させることが可能である。なお、このような電磁石等は、吸着力を低減する吸着力低減部材であるとも表現される。
【0094】
具体的には、電磁石への当該通電時においては、永久磁石85cの磁束を打ち消す向きの磁束を生成する電圧が、コイル85eに印加される。そのため、コイル85eへの通電時におけるコア吸着面85aの吸着力は、コイル85eへの非通電時におけるコア吸着面85aの吸着力よりも低減される。すなわち、電磁石への通電時には、吸着部材85は被吸着物を吸着しにくくなる。なお、吸着部材85は、電磁石への非通電時に自らの永久磁石85cの磁力で被吸着物を吸着するため、「自己保持型」の吸着部材であるとも表現される。
【0095】
この実施形態においては、このような吸着部材85を用い、電磁石に対する非通電状態において永久磁石85cの磁力に基づく吸着力によって後幕駆動部材83(詳細には鉄片部材83m)を保持する。これによって、ライブビュー時の消費電力の低減を図る。一方、電磁石への通電により、永久磁石85cの磁束を打ち消す向きの磁束を生成して永久磁石85cによる吸着力を低減して、後幕駆動部材83の保持を解除する。これにより、バネ89の付勢力により後幕駆動部材83を駆動して、後幕73を露光終了位置へ向けて直ちに駆動することが可能である。
【0096】
なお、吸着部材85の永久磁石85cは、電磁石への非通電時には後幕駆動部材83を保持する保持部材として機能する。また、吸着部材85の電磁石は、当該電磁石への通電時に後幕駆動部材83の保持を解除する保持解除部材として機能する。さらに、吸着部材85は、永久磁石85cの磁力に基づく吸着力を調整することによって、後幕駆動部材83の保持機能と保持解除機能との双方を実現する吸着力調整部材であるとも表現される。
【0097】
また、吸着部材84も吸着部材85と同様の構成を有している。具体的には、吸着部材84は、永久磁石84cとコア84bとボビン84dとコイル84eと端子84f,84gとを有している。そして、吸着部材84は、電磁石への非通電時においては、永久磁石84cの磁力によって被吸着物(例えば鉄片部材82m)を吸着する。一方、電磁石への通電時(コイル84eへの通電時)においては、永久磁石84cの磁束を打ち消す向きの磁束を生成する電圧が、コイル84eに印加される。そのため、コイル84eへの通電時におけるコア吸着面84aの吸着力は、コイル84eへの非通電時におけるコア吸着面84aの吸着力よりも小さくなる。なお、吸着部材84も、「自己保持型」の吸着部材であるとも表現される。
【0098】
また、図9に示すように、チャージ部材81は、円筒状立設部81bに加えて、板部81pと突出部81cと突出部81eと突出部81fとを有している。
【0099】
突出部81fは、所定のリンク部材86の先端部86pと接触する。
【0100】
リンク部材86の先端部86p(図12参照)が図12の上下方向(図13および図14の矢印の方向)に移動すると、チャージ部材81が軸AX1回りに回動して、チャージ部材81の回転角度が変更される。
【0101】
チャージ部材81が時計回りに回転するときには、チャージ部材81の突出部81cは先幕駆動部材82の突出部82cに接触し始める。そして、先幕駆動部材82は、突出部81cからの押圧力を受けて、軸AX2を中心に反時計回りに回転する。
【0102】
同様に、チャージ部材81が時計回りに回転するときには、チャージ部材81の突出部81eは後幕駆動部材83の突出部83eに接触し始める。そして、後幕駆動部材83は、突出部81eからの押圧力を受けて、軸AX3を中心に反時計回りに回転する。
【0103】
なお、突出部81c,81eは、突出部82c,83eをそれぞれ押し動かす「押動部」であるとも表現され、突出部82c,83eは、突出部81c,81eによってそれぞれ押し動かされる「被押動部」であるとも表現される。
【0104】
<5.シャッタ装置の動作>
つぎに、図12〜図16等を参照しながら、シャッタ装置7等の動作について説明する。ここでは、ライブビューモードの撮影時におけるシャッタ装置7等の動作を説明する。図16は、ライブビューモード時の撮影動作に関するタイムチャートである。また、上述したように、図12〜図15は、駆動機構80の一連の動作を示す図である。より詳細には、図12は、或る本撮影画像に関する露光動作の完了直後の状態STaを示す図であり、図13は、バネチャージ完了直後の状態STcを示す図である。また、図14は、チャージ部材81の復帰状態STeを示す図であり、図15はEVFモード時における次の本撮影画像に係る露光動作の開始直前の状態STvを示す図である。
【0105】
まず図15を参照する。図15は、ライブビュー時におけるシャッタ装置7の状態STvを示している。図15に示すように、ライブビュー時には、後幕駆動部材83の鉄片部材83mが吸着部材85(詳細にはコア吸着面85a)に吸着され停止している。このとき、後幕73は、開口部OPを覆わないように退避位置(露光開始位置)に維持された状態で停止している。また、ライブビュー時には、先幕72も、開口部OPを覆わないように退避位置で停止している。ただし、このとき、先幕駆動部材82の鉄片部材82mは、吸着部材84によって吸着されていない。具体的には、先幕駆動部材82は、バネ88による時計回りの付勢力を受けて回転し、長孔HL2の一端側(図の右上側の停止端)にリンクピン82nが当接する位置にまで移動した状態で、停止している。
【0106】
このように状態STvにおいては、先幕と後幕との双方が、開口部OPを覆わない位置に退避している。そして、開口部OPを通過した被写体像に関する時系列の画像が撮像素子5によって順次に取得される。このとき、吸着部材85の永久磁石85cの磁力に基づく吸着力で、バネ89による時計回りの付勢力が相殺されて、後幕駆動部材83が図15の位置で保持され、後幕が露光開始位置に維持されている。そのため、後幕駆動部材83を保持するために吸着部材85に通電することを要しない。したがって、ライブビュー時の省電力化を図ることが可能である。
【0107】
さて、この状態STv(図15)において、本撮影画像に関する撮影指令が付与されると、本撮影画像の取得に向けた動作が開始される。具体的には、レリーズボタン11が全押し状態S2(時刻T10(図16))にされると、まず、撮影レンズユニット3内の絞り調整動作が実行される。そして、露光開始の準備が整うと、露光動作が時刻T12(図16)から開始される。時刻T12は、レリーズボタン11が全押し状態S2にされた時刻T10から微小時間が経過した時刻である。
【0108】
ここでは、EVFモードにおける露光動作は、「メカ先幕」ではなく「電子先幕」を利用して実行されるものとする。
【0109】
具体的には、時刻T12において電子先幕が走行を始めるとともに、所定期間(例えば1/100秒)経過後の時刻T14において当該電子先幕を追いかけるようにメカ後幕が走行を開始する。これにより、電子先幕とメカ後幕との走行開始時間差に応じた露光期間にわたる露光動作が実行され、時刻T20において当該露光動作が完了する。この時刻T20においては、シャッタ装置7は状態STa(図12)を有している。
【0110】
時刻T14から時刻T20までの期間において、状態STv(図15)から状態STa(図12)への遷移動作が実行される。まず、この遷移動作について説明する。
【0111】
詳細には、時刻T14において、吸着部材85のコイル85eへの通電が開始される。この通電開始に応じてコイル85eは永久磁石85cの磁力と逆向きの磁力を発生する。このため、コア吸着面85aにおける吸着力が低減し、当該吸着力はバネ89による時計回りの付勢力よりも小さくなる。この結果、後幕駆動部材83の鉄片部材83mは吸着部材85のコア吸着面85aから離反を開始し、後幕駆動部材83は軸AX3を中心に時計回りに回転する。このようにして、吸着部材85による後幕駆動部材83の保持が解除される。また、コイル85eへの通電は微小時間で終了し、コイル85eへの通電は再び停止される。なお、吸着部材85のコイル85eに対する通電は、本撮影画像に関する構図決め動作が開始されてから、当該本撮影画像に関する露光動作が完了し次の本撮影画像に関する構図決め動作が開始されるまでの期間において、後幕を走行させるときにのみ行われる。例えば、図16の時刻T5から時刻T28までの期間においては、時刻T14から時刻T20(詳細には時刻T20の直前の時刻T19)までの一部期間にのみ、コイル85eに対して通電される。
【0112】
また、後幕駆動部材83の移動動作に伴ってリンクピン83nが長孔HL3に沿って移動する。当該リンクピン83nは当該長孔HL3の上端部にまで移動すると停止する(図12参照)。当該リンクピン83nの移動に伴って、アーム75aが軸AX7(AX3)を中心に時計回りに回動して、後羽根群73a,73b,73cが露光終了位置(換言すれば、開口部OPの閉鎖位置)にまで移動する。これにより、図12の状態STaに移行し、「後幕」の閉鎖動作が実現される。
【0113】
このように、電子先幕が走行した後に、所定のタイミングで吸着部材85への通電が開始されることによって、さらに後幕(詳細にはメカニカル後幕(メカ後幕とも略称する))が走行する。このようにして、いわゆる「電子先幕」および「メカ後幕」によるシャッタ動作が実行され、各画素を所定期間TMにわたって露光する露光動作が実現される。
【0114】
以上のようにして、図15の状態STvから、図12の露光終了直後の状態STaへの遷移動作が実現される。
【0115】
つぎに、時刻T20から時刻T26までの期間において撮像素子5からの画素データの読出処理(撮像素子の電荷転送処理等)が実行される。なお、読み出された画素データに基づいて、本撮影画像の画像データが生成される。また、時刻T20から時刻T26までの期間においては、絞りを開放状態へ復帰させる動作等が実行される。
【0116】
時刻T20から時刻T26までの期間においては、状態STa(図12)から状態STc(図13)への遷移動作と、状態STc(図13)から状態STe(図14)への遷移動作とが順次に実行される。なお、時刻T20から時刻T26までの期間は画素データの読み出し期間である、とも表現される。当該期間においては、撮像素子5における多重露光を防止するため、後幕と先幕との少なくとも一方が開口部OPを覆うように、後幕および先幕が移動される。
【0117】
まず、前者の遷移動作、すなわち、状態STa(図12)から状態STc(図13)への遷移動作について説明する。この前者の遷移動作は、時刻T20から時刻T22までの期間に実行される。
【0118】
リンク部材86の先端部86pがチャージ部材81の突出部81fに接触しながら図12の上向きに移動すると、チャージ部材81が軸AX1を中心に時計回りに回転移動する。
【0119】
この回転に伴って、突出部81cが先幕駆動部材82の突出部82cを押し、先幕駆動部材82に押圧力が伝達される。この押圧力によって、先幕駆動部材82が軸AX2を中心に反時計回りに回転し始める。先幕駆動部材82の当該回転動作は、鉄片部材82mが吸着部材84のコア吸着面84aに当接し吸着された後に停止する(図13参照)。この回転動作により、バネ88の付勢力は増大される。換言すれば、バネ88がチャージされる。なお、先幕駆動部材82の回転動作中においては、チャージ部材81の板部81pが、図12の紙面に垂直な方向において、先幕駆動部材82の板部82pとシャッタ地板71aとの間を通過し、板部81pと板部82pとの干渉が回避される。
【0120】
また、このような先幕駆動部材82の回転動作に応じて、リンクピン82nが円弧状の長孔HL2に沿って移動し、アーム74aが軸AX4(=AX2)を中心に反時計回りに回動する。これにより、先羽根群72a,72b,72cが開口部OPの下側の位置にまで移動する。すなわち「メカ先幕」による開口部OPの閉鎖状態が実現される。なお、永久磁石84cの磁力により吸着部材84が鉄片部材82mを吸着するため、コイル84eに対する非通電状態で先幕駆動部材82および先幕72は停止し続ける。
【0121】
このようして、チャージ部材81の回転移動に伴って、先幕駆動部材82および先幕72の移動動作が実行される。
【0122】
また、チャージ部材81の回転移動に伴って、先幕駆動部材82および先幕72に関する上記の移動動作と同時に(並行して)、後幕駆動部材83および後幕73の移動動作も実行される。
【0123】
具体的には、突出部81eが後幕駆動部材83の突出部83eを押し始めると、チャージ部材81から後幕駆動部材83へと伝達される押圧力によって、後幕駆動部材83が軸AX3を中心に反時計回りに回転し始める。後幕駆動部材83の当該回転動作は、鉄片部材83mが吸着部材85のコア吸着面85aに当接し吸着された後に停止する(図13参照)。この回転動作により、バネ89の付勢力は増大される。換言すれば、バネ89がチャージされる。
【0124】
また、このような後幕駆動部材83の回転動作に応じて、リンクピン83nが円弧状の長孔HL3に沿って移動し、アーム75aが軸AX7(=AX3)を中心に反時計回りに回動する。これにより、後羽根群73a,73b,73cが開口部OPの下側の位置、すなわち露光開始位置(換言すれば、開口部OPの開放位置)にまで移動する。なお、永久磁石85cの磁力により吸着部材85が鉄片部材83mを吸着するため、コイル85eに対する非通電状態で後幕駆動部材83および後幕73は停止し続ける。すなわち、後幕駆動部材83および後幕73は、永久磁石84cの磁力により図13の位置に保持される。
【0125】
このような後幕73の移動動作は、先幕72の移動動作と同時に行われる。詳細には、後幕73と先幕72との少なくとも一方が開口部OPを覆うように、後幕73および先幕72が移動される。これによれば、撮像素子5における多重露光が防止される。より具体的には、後幕73と先幕72とが常に重複部分を有する状態で、後幕73の移動動作と先幕72の移動動作とが同時に実行されることが好ましい。
【0126】
つぎに、状態STc(図13)から状態STe(図14)への遷移動作について説明する。この遷移動作においては、チャージ部材81のリセット動作が実行される。当該リセット動作は、時刻T22から時刻T24までの期間に実行される。
【0127】
具体的には、リンク部材86の先端部86pが図13の下向きに移動する。これに応じてリンク部材86からチャージ部材81への押圧力が低下するため、バネ87の反時計回りの付勢力によって、チャージ部材81が軸AX1を中心に反時計回りに回転移動する。
【0128】
状態STeにおいても、永久磁石84cの磁力により鉄片部材82mがコア吸着面84aに吸着され続け、永久磁石85cの磁力により鉄片部材83mが吸着部材85のコア吸着面85aに吸着され続ける。そのため、コイル84eに対する非通電状態で先幕駆動部材82および先幕72は停止し続け、コイル85eに対する非通電状態で後幕駆動部材83および後幕73は停止し続ける。また、チャージ部材81は、先幕駆動部材82から離反するとともに、後幕駆動部材83からも離反する。換言すれば、チャージ部材81は、退避位置に移動する。また、チャージ部材81の退避位置に移動した後においても、後幕駆動部材83は永久磁石85cの磁力で所定位置に保持され続ける。なお、この保持動作は、少なくとも、チャージ部材81の退避位置への移動開始時点から本撮影画像の画素データの読出処理の終了時点(次述)までを含む期間において、継続される。
【0129】
その後、撮像素子5からの画素データの読出処理(撮像素子の電荷転送処理等)が終了すると、状態STvへの復帰動作が時刻T26(図16)から開始される。すなわち、状態STe(図14)から状態STv(図15)への遷移動作が実行される。次に、この遷移動作について説明する。
【0130】
具体的には、時刻T26において、吸着部材84のコイル84eへの通電が開始される。この通電開始に応じてコイル84eは永久磁石84cの磁束と逆向きの磁束を発生する。このため、コア吸着面84aにおける吸着力が低減し、当該吸着力はバネ88による時計回りの付勢力よりも小さくなる。この結果、先幕駆動部材82の鉄片部材82mは吸着部材84のコア吸着面84aから離反を開始し、先幕駆動部材82は軸AX2を中心に時計回りに回転する。また、先幕駆動部材82の移動動作に伴ってリンクピン82nが長孔HL2に沿って移動する。当該リンクピン82nは当該長孔HL2の右上側の端部にまで移動すると停止する(図15参照)。当該リンクピン82nの移動に伴って、アーム74aが軸AX4(AX2)を中心に時計回りに回動して、先羽根群72a,72b,72cが開口部OPの上側位置(開口部OPを覆わない位置)にまで移動する(時刻T28)。これにより、図15の状態STvに移行し、開口部OPの開放状態が実現される。
【0131】
このような先幕72の移動動作の完了時点T28の後において、ライブビュー動作が実行される。具体的には、開口部OPを通過した被写体像に関する時系列の画像が撮像素子5によって順次に取得される。そして、当該時系列の画像が背面モニタ12において順次に表示される。
【0132】
このような動作によれば、上述したように、ライブビュー動作時においては、後幕駆動部材83の鉄片部材83mが吸着部材85の永久磁石85cの磁力によって吸着されている。そのため、後幕駆動部材83を保持するために吸着部材85に通電することを要しない。したがって、ライブビュー時の省電力化を図ることが可能である。特に、ライブビュー期間は非常に長いため、ライブビュー時における消費電力の低減効果は非常に大きい。
【0133】
このような効果に関してさらに説明する。
【0134】
ここでは、上述の特許文献1に記載の技術のようなシャッタ装置(すなわち、電磁石に対する通電を伴って後幕を露光開始位置に維持するシャッタ装置)を用いてライブビューを行う技術を比較例として想定する。図17は、当該比較例に係るシャッタ装置の動作を示すタイミングチャートである。
【0135】
図17に示すように、このような比較例においては、時刻T28以後のライブビュー動作において、後幕を露光開始位置に維持するため、電磁石に対する通電を継続する必要がある。このような通電に伴う消費電力は多大である。
【0136】
一方、上記の実施形態に係る撮像装置1によれば、時刻T28以後のライブビュー動作において、電磁石に対する通電を行うことなく、後幕を露光開始位置に維持することが可能である。したがって、上記比較例と比べて消費電力を抑制することができる。
【0137】
また、上述の特許文献2に記載の技術においては、押圧力による後幕駆動部材の保持を解除するための時間をレリーズボタン押下後に設けることを要する。具体的には、一旦、後幕駆動部材に対する押圧力を加えていたチャージ部材を退避位置にまで移動させる動作が、レリーズボタン押下(全押し状態S2)後に行われる。このため、所謂レリーズタイムラグが長大化するという問題が存在する。例えば、後幕駆動部材の保持解除に要する時間が上述の絞り変更動作に要する時間(時刻T10から時刻T12までの時間)よりも長い場合などにおいては、いわゆるレリーズタイムラグが増大する。
【0138】
これに対して、上記実施形態に係る撮像装置1は、永久磁石85cによって後幕駆動部材83を保持しており、特許文献2に記載の技術のような押圧力を用いた後幕保持機構を有していない。そのため、後幕駆動部材の保持を解除するための時間を設けることを要しない。上記実施形態に係る撮像装置1においては、基本的には、レリーズボタン11が全押し状態S2にされた後において、吸着部材85のコイル85eへの通電を開始することによって、後幕の走行を直ちに開始することができる。したがって、いわゆるレリーズタイムラグの増大を回避することが可能である。なお、上記実施形態においては、絞り変更動作の完了を待ってから露光動作を開始する場合が例示されているが、このような場合でも、レリーズタイムラグを最小限の値(絞り変更動作に要する時間)に止めることが可能である。
【0139】
<6.その他>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0140】
たとえば、上記実施形態においては、電子先幕を擬似的に走行させること(撮像素子5におけるラインごとのリセット動作を所定方向に順次に実行していく動作等)によって露光動作を開始する場合を例示したが、これに限定されない。具体的には、メカ先幕を実際に(物理的に)走行させることによって露光動作を開始するようにしてもよい。換言すれば、本撮影画像に関する露光動作は、電子先幕を伴うものであってもよく、あるいは、メカ先幕を伴うもの等であってもよい。
【0141】
また、上記実施形態においては、吸着部材84の永久磁石の磁力を用いて、先幕72を図15の位置に維持する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、永久磁石を有さず且つ電磁石を有する吸着部材を用いて、先幕72を図15の位置に維持するようにしてもよい。端的に言えば、当該電磁石に通電することによって磁力(吸着力)を発生させて、先幕72を図15の位置に維持するようにしてもよい。
【0142】
また、上記実施形態においては、絞り値を変更する動作(図16参照)が実行される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、絞り値を所定の値(撮影レンズユニットの開放値等)で固定しておき、本撮影動作において絞り値を変更しない場合に、上記の思想を適用するようにしてもよい。特にこの場合には、絞り値の変更動作を行うことを要しないため、レリーズボタン11が全押し状態S2にされた直後に露光動作を開始することができる。
【0143】
例えば、絞り優先モードにおいて絞り値が撮影レンズユニット3の開放値に設定されたときには、操作者からの撮影開始指示に応答して、撮像素子に関する本撮影用画像の露光動作を直ちに開始させる。そして、当該露光動作の開始から所定時間(シャッタスピードに応じた時間)経過後に吸着部材85の電磁石への通電を開始して後幕の走行を開始する。
【0144】
このときには、特に、図16のような絞り値の変更動作(時刻T10〜時刻T12)を伴わないため、レリーズボタン11が全押し状態S2にされた直後に露光動作を開始することができる。すなわち、レリーズタイムラグを非常に微小な時間(理想的にはゼロ)に抑制することが可能である。
【0145】
なお、特許文献2に記載の技術のように押圧力による後幕保持機構によって後幕を保持する場合には、絞り値の変更動作を伴わない場合であっても、当該保持機構の保持を解除するための時間をレリーズボタン押下後に設けることを要する。すなわち、絞り値の変更動作を伴わない場合にも、無用なタイムラグが生じる。
【0146】
これに対して、上記のような変形例に係る技術によれば、保持解除動作の完了を待たずに直ちに露光動作を開始することができるので、上記のような無用なレリーズタイムラグの発生を回避することが可能である。
【0147】
また、上記実施形態においては、静止画撮影時における構図決め動作等において本発明の思想を適用する場合について例示したが、本発明はこれに限定されない。ライブビュー画像以外の動画像を撮影する際にも上述の思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】撮像装置の正面外観図である。
【図2】撮像装置の背面外観図である。
【図3】撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】撮像装置の断面図である(ミラーダウン状態)。
【図5】撮像装置の断面図である(ミラーアップ状態)。
【図6】シャッタ装置の構成を示す平面図である。
【図7】シャッタ装置の構成を示す斜視図である。
【図8】或る構成部品を示す図である。
【図9】別の構成部品を示す図である。
【図10】更に別の構成部品を示す図である。
【図11】吸着部材を示す図である。
【図12】露光動作完了直後におけるシャッタ装置の状態を示す図である。
【図13】バネチャージ完了直後におけるシャッタ装置の状態を示す図である。
【図14】チャージ部材の復帰時におけるシャッタ装置の状態を示す図である。
【図15】ライブビュー実行時におけるシャッタ装置の状態を示す図である。
【図16】ライブビューモード時の撮影動作に関するタイムチャートである。
【図17】比較例に係る動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0149】
1 撮像装置
5 撮像素子
7 シャッタ装置
71a,71b シャッタ地板
72 先幕
73 後幕
80 駆動機構
81 チャージ部材
82 先幕駆動部材
83 後幕駆動部材
84,85 吸着部材
84a,85a コア吸着面
84b,85b コア
84c,85c 永久磁石
84e,85e コイル
87,88,89 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
シャッタ装置と、
前記シャッタ装置の露光用の開口部を通過した被写体像に関する時系列の画像を順次に取得する撮像素子と、
前記シャッタ装置の動作と前記撮像素子の動作とを制御する制御手段と、
を備え、
前記シャッタ装置は、
露光開始位置から露光終了位置へと走行した後に前記開口部を覆う後幕と、
前記後幕を前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる後幕駆動部材と、
前記露光開始位置から前記露光終了位置へと向かう向きに前記後幕を移動させる付勢力を、前記後幕駆動部材に対して付与する付勢力付与手段と、
永久磁石の磁力に基づく吸着力により、前記後幕駆動部材を前記付勢力に抗して保持する保持手段と、
電磁石への通電により前記永久磁石の磁束を打ち消す向きの磁束を生成して前記吸着力を低減し前記後幕駆動部材の保持を解除する保持解除手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記後幕駆動部材が前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記保持手段に吸着されて所定位置に保持され前記後幕が前記露光開始位置に維持された状態で、前記開口部を通過した被写体像に関する前記時系列の画像を前記撮像素子に取得させ、
本撮影画像に関する撮影指令付与後の所定のタイミングで前記電磁石に対する通電を開始して前記後幕駆動部材の保持を解除し、前記後幕を前記付勢力により前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる、撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記シャッタ装置は、
前記後幕駆動部材を前記所定位置に移動させることによって、前記付勢力を増大するチャージ部材、
をさらに有し、
前記保持手段の吸着面は、前記後幕駆動部材が前記所定位置に存在するときに前記後幕駆動部材の被吸着部材に対向する位置に設けられ、
前記チャージ部材は、前記後幕駆動部材を前記所定位置にまで移動させて、前記被吸着部材を前記永久磁石の磁力で前記吸着面に吸着させ前記後幕駆動部材を前記永久磁石の磁力で前記所定位置に保持させる、撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記チャージ部材は、前記後幕駆動部材を前記所定位置に移動させることによって、前記付勢力をチャージした後、所定の退避位置に移動し、
前記保持手段は、前記チャージ部材の前記所定の退避位置への移動開始時点から前記前記本撮影画像の画素データの読出処理の終了時点までを含む期間において、前記後幕駆動部材を前記永久磁石の磁力で前記所定位置に保持する、撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記本撮影画像に関する構図決め動作が開始されてから、当該本撮影画像に関する露光動作が完了し次の本撮影画像に関する構図決め動作が開始されるまでの期間において、前記後幕を走行させるときのみ前記電磁石に対して通電する、撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御手段は、絞り優先モードにおいて絞り値が撮影レンズの開放値に設定されたときには、操作者からの撮影開始指示に応答して、前記撮像素子に関する本撮影用画像の露光動作を直ちに開始させるとともに、当該露光動作の開始から所定時間経過後に前記電磁石への通電を開始して前記後幕の走行を開始する、撮像装置。
【請求項6】
撮像装置であって、
シャッタ装置と、
前記シャッタ装置の露光用の開口部を通過した被写体像に関する時系列の画像を順次に取得する撮像素子と、
前記シャッタ装置の動作と前記撮像素子の動作とを制御する制御手段と、
を備え、
前記シャッタ装置は、
露光開始位置から露光終了位置へと走行した後に前記開口部を覆う後幕と、
前記後幕を前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる後幕駆動部材と、
前記露光開始位置から前記露光終了位置へと向かう向きに前記後幕を移動させる付勢力を、前記後幕駆動部材に対して付与する付勢力付与手段と、
永久磁石と電磁石とを有し、前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記後幕駆動部材を前記付勢力に抗して保持するとともに、前記電磁石への通電により前記永久磁石の磁束を打ち消す向きの磁束を生成して前記吸着力を低減し前記後幕駆動部材の保持を解除する吸着力調整手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記後幕駆動部材が前記永久磁石の磁力に基づく吸着力により前記保持手段に吸着されて所定位置に保持され前記後幕が前記露光開始位置に維持された状態で、前記開口部を通過した被写体像に関する前記時系列の画像を前記撮像素子に取得させ、
本撮影画像に関する撮影指令付与後の所定のタイミングで前記電磁石に対する通電を開始して前記後幕駆動部材の保持を解除し、前記後幕を前記付勢力により前記露光開始位置から前記露光終了位置へと走行させる、撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−152000(P2010−152000A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328578(P2008−328578)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】