説明

撮像装置

【課題】 発光ユニットが収納状態となるとき、発光ユニットは撮像装置本体に収納された状態となるので、発光ユニットを収納状態から使用状態にする場合には、手動操作が困難になってしまう。
【解決手段】 駆動環30には、発光ユニット1が収納状態となるときに、スライダ37と係合する第1のカムが形成されるとともに、収納状態の発光ユニット1を手動操作によって、使用状態に移動させる際に、スライダ37と第1のカムとの係合を解除して、スライダ37と係合する第2のカムが形成され、発光ユニット1を手動操作によって、収納状態から使用状態に移動させる際には、スライダ37が移動することなく第1のカムとの係合した状態で、発光ユニット1が収納状態から第1の状態まで移動するように、収納状態となる発光ユニット1とスライダ37との間にクリアランスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用状態と収納状態との間で移動する発光部を有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撮像装置において、発光ユニットは電源オフ時などの撮像不能状態では収納状態となり、電源オン時などの撮像可能状態では、撮像装置本体から突出した使用状態となる。
【0003】
特許文献1には、レンズ鏡筒の沈胴位置からの繰り出し動作、および沈胴位置への繰り込み動作に連動し、発光ユニットを使用状態と収納状態との間で移動させる撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−199295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の撮像装置では、撮像可能状態となるレンズ鏡筒が繰り出した状態では発光ユニットは常に突出した使用状態となり、撮像不能状態となるレンズ鏡筒が沈胴状態では常に収納状態となる。
【0006】
本出願人は、先の出願にて、レンズ鏡筒を沈胴状態から繰り出し状態とするときに、発光ユニットを収納状態から使用状態とする撮像装置において、使用状態となった発光ユニットを手動で収納状態とし、手動で使用状態に戻すことの可能な撮像装置を提案した。
【0007】
発光ユニットが使用状態となるとき、発光ユニットは撮像装置本体から突出した状態となるので、発光ユニットを使用状態から収納状態にする場合には、手動操作が比較的容易である。一方、発光ユニットが収納状態となるとき、発光ユニットは撮像装置本体に収納された状態となるので、発光ユニットを収納状態から使用状態にする場合には、手動操作が困難になってしまう。
【0008】
本発明の目的は、先の出願の撮像装置において、発光ユニットを収納状態から使用状態にする場合にも、手動操作が困難にならない撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、使用状態と収納状態との間で移動可能な発光ユニットと、前記発光ユニットを前記収納状態に付勢する付勢部材と、駆動源によって駆動される駆動部材と、前記駆動部材に連動して移動することで前記発光ユニットと当接し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記発光ユニットを前記収納状態から前記使用状態に移動させる移動部材とを有し、前記駆動部材には、前記発光ユニットが前記収納状態となるときに、前記移動部材と係合する第1のカムが形成されるとともに、前記収納状態の前記発光ユニットを手動操作によって、前記使用状態に移動させる際に、前記移動部材と前記第1のカムとの係合を解除して、前記移動部材と係合する第2のカムが形成され、前記発光ユニットを手動操作によって、前記収納状態から前記使用状態に移動させる際には、前記移動部材が移動することなく前記第1のカムとの係合した状態で、前記発光ユニットが前記収納状態から第1の状態まで移動するように、前記収納状態となる前記発光ユニットと前記移動部材との間に第1のクリアランスを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光ユニットを収納状態から使用状態にする場合にも、手動操作が困難にならない撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例であるデジタルカメラの外観斜視図である。
【図2】レンズ鏡筒ユニットの分解斜視図である。
【図3】レンズ鏡筒ユニットを説明する図である。
【図4】発光ユニットの分解斜視図である。
【図5】発光部を説明する図である。
【図6】発光部が使用状態と収納状態との間で移動する動作を説明する図である。
【図7】駆動環30に形成される3つのカム形状を説明する図である。
【図8】発光部の動作を説明する図である。
【図9】発光部が手動操作される際の動作を説明する図である。
【図10】収納状態となった発光部を、手動操作によって使用状態まで移動させる動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図1〜10を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明を実施した撮像装置としてのデジタルカメラを説明するものであって、本実施例のデジタルカメラの4つの状態を説明する図である。図1(a)は、撮像不能状態の一例である電源オフ状態を示している。この状態ではレンズ鏡筒ユニットLは沈胴状態となり、発光ユニット1は収納状態となる。図1(b)は、撮像可能状態の一例である電源オン状態を示している。この状態ではレンズ鏡筒ユニットLは繰り出し状態となり、発光ユニット1は使用状態となる。図1(c)は、図1(b)に示す状態から、発光ユニット1を手動操作によって使用状態から収納状態に移動させた状態を示している。この状態ではレンズ鏡筒ユニットLは繰り出し状態となり、発光ユニット1は収納状態となる。図1(d)は、図1(a)に示す状態から、発光ユニット1を手動操作によって収納状態から使用状態に移動させた状態を示している。この状態ではレンズ鏡筒ユニットLは沈胴状態となり、発光ユニット1は使用状態となる。
【0014】
本実施例のデジタルカメラは図1(b)の状態から手動操作によって、図1(c)の状態とすることができる。そして、図1(c)の状態で電源をオフしたときに、発光部Sは収納状態のまま、図1(a)の状態となる。また、本実施例のデジタルカメラは図1(a)の状態から図1(d)の状態とすることができる。そして、図1(d)の状態で電源をオンしたときに、発光部Sは使用状態のまま、図1(b)の状態となる。
【0015】
図2はデジタルカメラのレンズ鏡筒ユニットLの分解斜視図である。
【0016】
レンズ鏡筒ユニットLは、1群レンズ、2群レンズおよび不図示の3群レンズから構成される。1群レンズは1群レンズホルダ10に保持され、2群レンズは2群レンズホルダ11に保持される。直進案内板12には、1群レンズホルダ10を光軸方向へ移動可能に支持する1群案内棒13が形成されている。1群案内棒13は、1群レンズホルダ10の内面に形成された光軸方向へ延びる不図示の溝に係合している。同様に、直進案内板12には、2群レンズホルダ11を光軸方向へ移動可能に支持する2群案内棒15が一体的に形成されている。2群案内棒15は2群レンズホルダ11の外周部に設けられた2群直進穴14に係合し、2群レンズホルダ11を光軸方向へ移動可能に支持する。
【0017】
したがって、直進案内板12に形成される1群案内棒13および2群案内棒15によって、1群レンズホルダ10および2群レンズホルダ11は光軸方向へ移動を案内される。また、直進案内板12のフランジ部の外縁部には複数の突起16が形成されている。突起16が固定カム環17の内面に設けられた光軸方向へ伸びる複数の溝18にそれぞれ係合することにより、直進案内板12は光軸方向へ移動可能に支持される。
【0018】
移動カム環19の外周面には、外周面を3等分するようにカムフォロワー20が形成される。カムフォロワー20は固定カム環17の内面に形成された同形状の3本のカム21にそれぞれカム係合する。これによって、移動カム環19の回転に伴いカムフォロワー20はカム21をトレースし、移動カム環19は回転しながら光軸方向に移動する。
【0019】
さらに、移動カム環19の内周面後端部に設けられた係合溝22に、直進案内板12のフック23が係合することによって、直進案内板12は移動カム環19に対して回転可能に係合する。これにより、移動カム環19の光軸方向への移動にともない、直進案内板12もともに光軸方向へ移動する。
【0020】
1群レンズホルダ10の外周面部には、外周面を3等分するように1群カムフォロワー24が形成される。1群カムフォロワー24は移動カム環19の内周面に設けられた同形状の3本の1群カム25にそれぞれカム係合する。これによって、移動カム環19の回転に伴って1群カムフォロワー24は1群カム25をトレースする。また、1群レンズホルダ10は光軸方向へ移動するよう案内されているので、1群レンズホルダ10は移動カム環19の回転に伴って1群カム25の光軸方向への変位量に合わせて移動する。
【0021】
2群レンズホルダ11の外周面部には、外周面を3等分するように2群カムフォロワー26が形成される。2群カムフォロワー26は、移動カム環19の内周面に設けられた同形状の3本の2群カム27にそれぞれカム係合する。これによって、移動カム環19の回転に伴って2群カムフォロワー26は2群カム27をトレースする。また、2群レンズホルダ11は光軸方向へ移動するよう案内されているので、2群レンズホルダ11は移動カム環19の回転に伴って2群カム27の光軸方向への変位量に合わせて移動する。
【0022】
移動カム環19の外周面には、外周面を3等分するように駆動ピン28が形成される。駆動ピン28は固定カム環17の内周面から外周面に貫通するカム穴29を貫通して固定カム環17の外周面から突出する。カム21とカム穴29は同形状であり、移動カム環19の固定カム環17に対する回転繰り出し移動に対して、駆動ピン28はカム穴29をトレースしてカム環17から突出した状態を維持する。
【0023】
駆動部材としての駆動環30は固定カム環17の外周面に嵌合して回転自在に支持される。駆動環30の内周面には、光軸方向へ伸びる溝31が3等分にするように配置され、溝31に駆動ピン28がそれぞれ係合する。これにより、駆動環30の回転が溝31と駆動ピン28を介して移動カム環19へと伝達される。
【0024】
このように、1群レンズホルダ10、2群レンズホルダ11、直進案内板12、固定カム環17、移動カム環19および駆動環30は一体となり、それぞれが連携して動作する。そしてこの一体となった部品は鏡筒ベース32へと組み込まれる。さらに、撮像素子を保持する撮像素子ホルダ33が鏡筒ベース32とともに固定カム環17のフランジ部分を挟み込むように固定される。
【0025】
レンズ鏡筒ユニットLの駆動源44は電力を動力へと変換する電磁モーターである。駆動源44の動力はギア列45を介して駆動環30の外周面に形成された駆動環ギア46へと伝達される。これにより、駆動源44への通電によって駆動環30を回転させることができる。
【0026】
鏡筒ベース32は駆動源44およびギア列45を保持するとともに、移動部材としてのスライダ37を光軸方向に移動可能に保持する。スライダ37は鏡筒ベース32に保持されたスライダシャフト38に案内されることで、鏡筒ベース32上において、光軸方向へ移動可能となっている。スライダ37には、スライダ37の内部に進退可能なフォロワーとしてのストロボフォロワー39が形成され、ストロボフォロワー39は圧縮ばね40によってスライダ37から突出する方向に付勢されている。
【0027】
駆動環30の外周面には、ストロボフォロワー39と係合可能な第1のストロボカム30a、第2のストロボカム30bおよび第3のストロボカム30cが形成されている。ストロボフォロワー39が第1のストロボカム30aと係合する場合には、駆動環30が回転することによって、スライダ37は鏡筒ベース32上で光軸方向に移動する。
【0028】
図3は、レンズ鏡筒ユニットLを説明する図である。図3(a)はレンズ鏡筒ユニットLの外観斜視図である。図3(a)の状態ではレンズ鏡筒ユニットLは沈胴状態となっている。図3(b)は図3(a)の状態におけるレンズ鏡筒ユニットLの外観正面図である。図3(c)はレンズ鏡筒ユニットLの図3(b)におけるA−A断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、スライダ37にはU字部37aが形成され、後述するストロボホルダー408から突出形成される突起408bを挟み込む。図3(c)に示すように、スライダ37には、スライダ37をスライダシャフト38に支持した状態で、駆動環30の外周面に対して略垂直となる穴部が形成され、この穴部にストロボフォロワー39および圧縮ばね40が挿入されている。図3(c)の状態では、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aと係合している。
【0030】
図4はデジタルカメラの発光ユニット1の分解斜視図である。
図4(a)は、発光ユニット1の分解斜視図で、401は、キセノン管であり、リード線402によって、図4(b)に示すフレキシブル配線基板403と電気的に接続される。フレキシブル配線基板403は発光制御を行うストロボ基板404と電気的に接続されている。反射笠405はキセノン管401からの光を集光させる。キセノン管ゴム406はキセノン管401の端子部の絶縁を行うとともに、キセノン管401を反射笠405側へ付勢する。プリズムパネル407はキセノン管401と反射笠405からの光を所望の範囲に照射する。
【0031】
キセノン管401、反射笠405、キセノン管ゴム406およびプリズムパネル407をストロボホルダー408に配置した後、ストロボカバー2をストロボホルダー408にビスによって固定することで、発光ユニット1は組み立てられる。
【0032】
図4(b)は、発光ユニット1が使用状態と収納状態との間で移動するように保持する構造を説明する図である。
【0033】
発光ユニット1は、ストロボシャフト302によってストロボベース301に対して回動可能に支持される。ストロボホルダー408には、トグルばね409の一端を引っ掛ける軸410が圧入されている。トグルばね409の他端はストロボベース301に備える軸301aに引っ掛けられる。トグルばね409は、ストロボシャフト302を回動中心に発光ユニット1を使用状態および収納状態に付勢する付勢部材として機能する。
【0034】
フレキシブル配線基板403、ストロボ基板404およびストロボコンデンサー412は取り付け部材411に取り付けられる。ストロボベース301もビスによって取り付け部材411に取り付けられる。
【0035】
フレキシブル配線基板403には、レバー式検知スイッチ403aが実装され、発光ユニット1が使用状態であるのか、収納位置であるのかを検知する。レバー式検知スイッチ403aは取り付け部材411に備える穴411aからレバー部分が突出するように配置される。したがって、発光ユニット1が収納状態となるときには、ストロボホルダー408の突起408aが検知スイッチ403aのレバー部分を押し込む。一方、発光ユニット1が使用状態となるときには、突起408aは検知スイッチ403aのレバー部分に接触しない。検知スイッチ403aによって発光ユニット1が使用状態であると検知するときのみ、デジタルカメラは発光ユニット1を発光させる制御を行う。
【0036】
図5はデジタルカメラの発光部を説明する図である。本実施例では、発光ユニット1およびスライダ37をあわせて発光部という。
【0037】
図5では、鏡筒ベース32、取り付け部材411などを省略している。上述したように、駆動環30が回転すると、ストロボフォロワー39が第1のストロボカム30aをトレースして、スライダ37は光軸方向に移動する。そして、発光ユニット1は、ストロボベース301に対して回動可能に支持される。図5に示すように、ストロボホルダー408から突出形成される突起408bがスライダ37に形成されるU字部37aに入り込む。したがって、スライダ37が光軸方向に移動することで、U字部37aの壁37a1または壁37a2が突起408bを押し込むことで、発光ユニット1は収納状態と使用状態との間を移動する。
【0038】
図6は発光部が使用状態と収納状態との間で移動する動作を説明する図である。
図6(a)は発光ユニット1を収納した収納状態を示している。図6(a)に示すように、この状態では突起408bはU字部37aのいずれの壁とも当接していないが、発光ユニット1はトグルばね409によって、収納状態となる方向に付勢されているので、発光ユニット1は収納状態を保持できる。
【0039】
図6(b)は図6(a)の状態からスライダ37が矢印Q方向に移動した状態を示している。この状態で、U字部37aの壁37a2が突起408bと当接し、トグルばね409の付勢力に抗して、発光ユニット1を使用状態へ移動させる。
【0040】
図6(b)の状態からスライダ37がトグルばね409の付勢力の方向が反転する地点まで発光ユニット1を移動させると、トグルばね409の付勢方向が反転して、発光ユニット1は使用状態の方向に付勢される。図6(c)は発光ユニット1が使用状態となった様子を示している。このとき、突起408bはU字部37aのいずれの壁とも当接していないが、発光ユニット1はトグルばね409によって、使用状態となる方向に付勢されているので、発光ユニット1は使用状態を保持できる。
【0041】
このように、スライダ37を光軸方向に移動させることによって、発光ユニット1は収納状態から使用状態へ移動する。発光ユニット1を使用状態から収納状態へ移動する場合には、図6(c)の状態からスライダ37を図中の左方向に移動させればよい。
【0042】
図7は駆動環30に形成される3つのカム形状を説明する図である。
図7(a)は、駆動環30の正面図および側面図である。図7(b)は、図7(a)のB−B断面図である。図7(c)は、駆動環30を展開し、第1のストロボカム30a、第2のストロボカム30bおよび第3のストロボカム30cが形成される部分を拡大した図である。
【0043】
図8は発光部の動作を説明する図である。
図8(a)は、本実施例のデジタルカメラが図1(a)の状態となるときの発光部の状態を示している。図8(b)は、本実施例のデジタルカメラが図1(b)の状態となるときの発光部の状態を示している。図8(c)は、本実施例のデジタルカメラが図1(c)の状態となるときの発光部の状態を示している。図8(d)は、本実施例のデジタルカメラが図1(d)の状態となるときの発光部の状態を示している。
【0044】
図7(a)〜(c)に示すように、駆動環30には第1のカムとしての第1のストロボカム30a、第2のカムとしての第2のストロボカム30bおよび第3のカムとしての第3のストロボカム30cが形成されている。第1のストロボカム30aは、レンズ鏡筒ユニットLが沈胴状態から繰り出し状態となるときに、発光ユニット1を収納状態から使用状態にするカムである。また、第1のストロボカム30aは、レンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態から沈胴状態となるときに、発光ユニット1を使用状態から収納状態にするカムである。したがって、発光部が図8(a)に示す状態と図8(b)に示す状態との間で変化するとき、スライダ37のストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aをトレースする。
【0045】
第2のストロボカム30bは、レンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態で、発光ユニット1が収納状態となったときに、発光ユニット1が収納状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLを繰り出し状態から沈胴状態にするカムである。また、第2のストロボカム30bは、レンズ鏡筒ユニットLが沈胴状態から繰り出し状態となるときに、発光ユニット1を押さえ込んで収納状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLを沈胴状態から繰り出し状態にするカムである。したがって、発光部が図8(c)に示す状態と図8(a)に示す状態との間で変化するとき、スライダ37のストロボフォロワー39は第2のストロボカム30bをトレースする。
【0046】
第3のストロボカム30cは、レンズ鏡筒ユニットLが沈胴状態で、発光ユニット1が使用状態となったときに、発光ユニット1が使用状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLを沈胴状態から繰り出し状態にするカムである。また、第3のストロボカム30cは、レンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態から沈胴状態となるときに、発光ユニット1を押さえ込んで使用状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLを繰り出し状態から沈胴状態にするカムである。したがって、発光部が図8(b)に示す状態と図8(d)に示す状態との間で変化するとき、スライダ37のストロボフォロワー39は第3のストロボカム30cをトレースする。
【0047】
図7(c)において、図8(a)に示すレンズ鏡筒ユニットLが沈胴状態となり、発光ユニット1が収納状態となるとき、スライダ37のストロボフォロワー39はポジション30a1に位置する。図8(b)に示すレンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態としてのワイド状態となり、発光ユニット1が使用状態となるとき、スライダ37のストロボフォロワー39はポジション30a2に位置する。レンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態としてのテレ状態となり、発光ユニット1が使用状態となるとき、スライダ37のストロボフォロワー39はポジション30a3に位置する。第1のストロボカム30aは、ポジション30a1とポジション30a2との間で発光ユニット1を収納状態と使用状態との間で移動させ、ポジション30a2とポジション30a3との間ではカムリフトがほぼ0となるように設定される。
【0048】
図8(b)に示すように、スライダ37のストロボフォロワー39がポジション30a2に位置するときに、発光ユニット1を手動操作によって収納状態とすると、図8(c)に示す状態になる。このとき、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除して、ポジション30b2にて第2のストロボカム30bと係合する。同様に、ストロボフォロワー39がポジション30a3に位置するときに、発光ユニット1を手動操作によって収納状態とすると、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除する。そして、ストロボフォロワー39はポジション30b3にて第2のストロボカム30bと係合する。
【0049】
図9は発光部が手動操作される際の動作を説明する図である。図9(a)は、スライダ37のストロボフォロワー39がポジション30a2に位置する状態を示している。この状態で発光ユニット1を手動操作によって収納されると、図9(b)に示すように、スライダ37に矢印F1方向の力が作用し、ストロボフォロワー39が圧縮ばね40の付勢力に抗して、矢印P方向に移動する。すなわち、ストロボフォロワー39はスライダ37の内部に退避する。
【0050】
これによって、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除して、スライダ37は矢印F1方向に移動する。そして、図9(c)に示す状態となるときに、ストロボフォロワー39が圧縮ばね40の付勢力によって、第2のストロボカム30bに挿入される。このとき、ストロボフォロワー39が第2のストロボカム30bに挿入される際に、ストロボフォロワー39の先端が第2のストロボカム30bの斜面をすべることとなるので、矢印F1方向の力がスライダ37に作用する。そして、図9(d)に示すように、第2のストロボカム30bと係合する。このように、ストロボフォロワー39は、駆動環30の外周面に対して略垂直となるスライダ37の穴部に進退するので、ストレスなくカムとの係合と係合の解除を行うことができる。
【0051】
ストロボフォロワー39が第2のストロボカム30bと係合するときに、レンズ鏡筒ユニットLが繰り出し状態から沈胴状態となると、ストロボフォロワー39は図7(c)に示す第2のストロボカム30bの右端までトレースする。そして、ストロボフォロワー39は第2のストロボカム30bとの係合を解除して、図7(c)の矢印B1方向に進み、第1のストロボカム30aと係合して、ポジション30a1に位置する。
【0052】
ストロボフォロワー39がポジション30a1に位置するとき、発光ユニット1を押さえ込んで収納状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLを沈胴状態からワイド状態にする。このとき、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除して、図7(c)の矢印B2方向に進む。そして、ストロボフォロワー39は第2のストロボカム30bと係合して、ポジション30b2に位置する。
【0053】
図8(a)に示すように、ストロボフォロワー39がポジション30a1に位置するとき、発光ユニット1を手動操作によって使用状態とすると、図8(d)に示す状態になる。このとき、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除して、ポジション30c1にて第3のストロボカム30cと係合する。ストロボフォロワー39がポジション30c1に位置するとき、レンズ鏡筒ユニットLを沈胴状態からワイド状態にすると、ストロボフォロワー39は第3のストロボカム30cとの係合を解除して、矢印C1方向に進む。そして、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aと係合して、ポジション30a2に位置する。
【0054】
ストロボフォロワー39がポジション30a2に位置するとき、発光ユニット1を押さえ込んで使用状態のまま、レンズ鏡筒ユニットLをワイド状態から沈胴状態にする。このとき、ストロボフォロワー39は第1のストロボカム30aとの係合を解除して、図7(c)の矢印C2方向に進む。そして、ストロボフォロワー39は第3のストロボカム30cと係合して、ポジション30c1に位置する。
【0055】
本実施例では、第1のストロボカム30aと第2のストロボカム30bとの間、第1のストロボカム30aと第3のストロボカム30cとの間はそれぞれ連結されていない。例えば、第1のストロボカム30aと第2のストロボカム30bとの間を連結すると、ストロボフォロワー39がポジション30a1に位置する状態からポジション30a2に位置する状態にする際に、ポジション30b2に位置する状態となってしまう。すなわち、第1のストロボカム30aをトレースせず、第2のストロボカム30bをトレースしてしまう。このようなことから、本実施例では、第1のストロボカム30aと第2のストロボカム30bとの間、第1のストロボカム30aと第3のストロボカム30cとの間を分離している。
【0056】
図10は、収納状態となった発光部を、手動操作によって使用状態まで移動させる動作を説明する図である。
【0057】
図10(a)は、図8(a)または図8(c)に示すように、発光部が収納状態となるときのスライダ37とストロボホルダー408の突起408bとの関係を示している。図10(a)が、図8(a)に示す状態であるとき、ストロボカムフォロワー39は第1のストロボカム30aに係合する。図10(a)が、図8(c)に示す状態であるとき、ストロボカムフォロワー39は第2のストロボカム30bに係合する。図10(a)に示す状態では、突起408bとU字部37aの壁37a1との間に第1のクリアランスK1が形成されている。この状態では、トグルばね409が発光ユニット1を付勢する方向Sは、発光ユニット1を収納状態に向けて付勢する方向となる。
【0058】
図10(a)に示す状態から発光ユニット1を手動操作によって使用状態に移動させる際には、ストロボカバー2に形成した突起2aに指を掛けて、矢印R方向に手動操作する。発光ユニット1を手動操作によって矢印R方向に回転させると、第1のクリアランスK1がなくなって、突起408bがU字部37aの壁37a1に当接する。
【0059】
図10(b)は、この状態を示している。本実施例では、図10(b)に示す状態となるとき、発光ユニット1が第1の状態にあるという。このとき、ストロボカバー2と本体カバー901との間にクリアランスTが形成される。図10(a)の状態から図10(b)の状態までは、手動操作によって発光ユニット1のみが移動し、スライダ37は移動しない。
【0060】
図10(a)の状態から図10(b)の状態までの間に必要な手動操作力はトグルばね409が発光ユニット1を収納状態に付勢する付勢力より大きな力であればよい。すなわち、比較的小さな操作力で、発光ユニット1は図10(a)に示す収納状態から図10(b)の状態まで移動させることができる。
【0061】
図10(b)に示す状態から、発光ユニット1をさらに矢印R方向に回転させると、突起408bがU字部37aの壁37a1を押圧して、スライダ37も矢印F方向に移動する。図10(c)は発光ユニット1の回転軸302、トグルばね409が引っ掛けられる軸301aと軸410とが一直線上に並んだ状態を示している。この位置を越えると、トグルばね409が発光ユニット1を付勢する方向Sは、発光ユニット1を使用状態に付勢する方向となる。
【0062】
図10(b)の状態から図10(c)の状態までの間に必要な手動操作力は、トグルばね409が発光ユニット1を収納状態に付勢する付勢力と、スライダ37を移動させる力との合力より大きな力を必要とする。
【0063】
スライダ37を移動させるには、ストロボカムフォロワー39と第1のストロボカム30aまたは第2のストロボカム30bとの係合を解除しなければならない。ストロボカムフォロワー39と第1のストロボカム30aまたは第2のストロボカム30bとの係合を解除するには、ストロボフォロワー39が圧縮ばね40の付勢力に抗して、スライダ37の内部に退避させる力が必要となる。
【0064】
すなわち、図10(b)の状態から図10(c)の状態までの間に必要な手動操作力は、図10(a)の状態から図10(b)の状態までの間に必要な手動操作力よりも大きくなる。図10(b)の状態では発光ユニットの一部であるストロボカバー2と撮像装置本体としての本体カバー901との間に隙間(クリアランスT)が形成される。そして、この隙間(クリアランスT)に指を掛けることができるので、発光ユニット1に力を掛けやすくなる。
【0065】
クリアランスTが形成されない図10(a)の状態から図10(b)の状態までの間では、ストロボカバー2の突起2aを押し上げなければならないので、必要な手動操作力を比較的小さくしている。突起2aの大きさを大きくすれば、収納状態から大きな力で発光ユニット1を押し上げることもできるが、突起2aを大きくすることは、デジタルカメラのデザイン上、好ましくない。
【0066】
このような点を勘案して、本実施例のデジタルカメラでは、発光ユニット1を収納状態から第1の状態までは小さな突起であっても、手動操作可能な操作力となるように、第1のクリアランスK1を形成している。
【0067】
図10(d)は、図8(b)または図8(d)に示すように、発光部が収納状態となるときのスライダ37とストロボホルダー408の突起408bとの関係を示している。図10(d)が、図8(b)に示す状態であるとき、ストロボカムフォロワー39は第1のストロボカム30aに係合する。図10(d)が、図8(d)に示す状態であるとき、ストロボカムフォロワー39は第3のストロボカム30cに係合する。図10(d)に示す状態では、トグルばね409が発光ユニット1を付勢する方向Sは、発光ユニット1を使用状態に向けて付勢する方向となる。この状態では、突起408bとU字部37aの壁37a2との間に第2のクリアランスK2が形成されている。
【0068】
また、図10(d)に示す状態となるとき、発光ユニット1はトグルばね409によって使用状態に向けて付勢され、ストロボカムフォロワー39は第1のストロボカム30aまたは第3のストロボカム30cに係合する。ストロボカムフォロワー39が第1のストロボカム30aまたは第3のストロボカム30cに係合し始めると、スライダ37が図中の右方向に引き寄せられる。これは、圧縮ばね40によって付勢されたストロボカムフォロワー39が第1のストロボカム30aまたは第3のストロボカム30cに挿入されることによって、スライダ37を移動させているからである。これによって、図10(d)に示す状態でも、突起408bとU字部37aの壁37a1との間にクリアランスが形成されることとなる。
【0069】
図10(d)に示す状態にて、発光ユニット1を手動操作によって図10(a)に示す状態に移動させる場合には、まず第2のクリアランスK2がなくなるまでの間は、トグルばね409の付勢力に抗する力のみで、発光ユニット1を押し下げることができる。その後、突起408bがU字部37aの壁37a2に当接して、スライダ37を移動させて、図10(a)に示す状態となる。第2のクリアランスK2がなくなって、突起408bがU字部37aの壁37a2に当接する状態を第2の状態という。
【0070】
図10(a)においても、圧縮ばね40によって付勢されたストロボカムフォロワー39が第1のストロボカム30aまたは第2のストロボカム30bに挿入されることで、スライダ37を移動させる。したがって、突起408bとU字部37aの壁37a2との間にクリアランスが形成されることとなる。
【0071】
以上、説明したように、本実施例のデジタルカメラによれば、撮像不能状態の一例である電源オフから撮像可能状態の一例である電源オン状態としたときに、発光部は収納状態から使用状態となる。そして、電源オン状態で発光部が使用状態となっているときに、手動操作によって使用状態から収納状態とすることができ、発光部を収納状態のまま、電源オフ状態とすることができる。さらに、電源オフ状態で発光部が収納状態となっているときに、手動操作によって収納状態から使用状態とすることができ、発光部を使用状態のまま、電源オン状態とすることができる。
【0072】
したがって、レンズ鏡筒ユニットに連動させて、発光部を使用状態と収納状態との間で移動させるものでありながら、電源オン状態でも、電源オフ状態でも、手動操作によって発光部を使用状態と収納状態との間で移動させることも可能となる。さらに、手動操作によって発光部を移動させた後は、発光部はその状態のまま、デジタルカメラの電源をオンオフすることができる。すなわち、電源オン状態で発光部を手動操作によって収納し、電源をオフにした場合にも、次に電源をオンすれば、発光部は収納状態から使用状態となる。同様に、電源オフ状態で発光部を手動操作によって使用状態として、電源をオンにした後、電源をオフすれば、発光部は使用状態から収納状態となる。
【0073】
そして、第1のクリアランスK1を形成することで、発光ユニット1を手動操作によって、収納状態から使用状態に移動させる際には、スライダ37が移動することなく、発光ユニット1が収納状態から第1の状態まで移動する。そして、発光ユニット1とスライダ37とが一体となって動き出すときには、クリアランスTが形成され、発光ユニット1に大きな力を掛けやすくなる。
【符号の説明】
【0074】
1 発光ユニット
30 駆動環
30a 第1のストロボカム
30b 第2のストロボカム
30c 第3のストロボカム
37 スライダ
39 ストロボフォロワー
44 駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態と収納状態との間で移動可能な発光ユニットと、
前記発光ユニットを前記収納状態に付勢する付勢部材と、
駆動源によって駆動される駆動部材と、
前記駆動部材に連動して移動することで前記発光ユニットと当接し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記発光ユニットを前記収納状態から前記使用状態に移動させる移動部材とを有し、
前記駆動部材には、前記発光ユニットが前記収納状態となるときに、前記移動部材と係合する第1のカムが形成されるとともに、前記収納状態の前記発光ユニットを手動操作によって、前記使用状態に移動させる際に、前記移動部材と前記第1のカムとの係合を解除して、前記移動部材と係合する第2のカムが形成され、
前記発光ユニットを手動操作によって、前記収納状態から前記使用状態に移動させる際には、前記移動部材が移動することなく前記第1のカムとの係合した状態で、前記発光ユニットが前記収納状態から第1の状態まで移動するように、前記収納状態となる前記発光ユニットと前記移動部材との間に第1のクリアランスを形成することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記発光ユニットを手動操作によって、前記使用状態から前記収納状態に移動させる際には、前記移動部材が移動することなく前記第2のカムとの係合した状態で、前記発光ユニットが前記使用状態から第2の状態まで移動するように、前記使用状態となる前記発光ユニットと前記移動部材との間に第2のクリアランスを形成することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記発光ユニットが前記収納状態となるときには、前記発光ユニットを前記収納状態に付勢するとともに、前記発光ユニットが前記使用状態となるときには、前記発光ユニットを前記使用状態に付勢するトグルばねであって、
前記発光ユニットが前記収納状態から前記第1の状態まで移動する間には、前記トグルばねは前記発光ユニットを前記収納状態に付勢し、
前記発光ユニットが前記使用状態から前記第2の状態まで移動する間には、前記トグルばねは前記発光ユニットを前記使用状態に付勢することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記発光ユニットを前記収納状態から前記第1の状態まで移動させることで、前記発光ユニットと撮像装置本体との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記移動部材には、前記第1のカムまたは前記第2のカムと係合可能であって、前記第1のカムまたは前記第2のカムとの係合を解除する際に、前記移動部材の内部に退避するフォロワーが形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−155384(P2011−155384A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14500(P2010−14500)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】