説明

撮像装置

【課題】 回動可能な表示装置を有する撮像装置において、ヒンジユニット信号線を覆う外装部材に衝撃に対する高い信頼性を持たせ、かつ液晶表示ユニットに起因する電磁ノイズの発生にも配慮した構造を提供する。
【解決手段】 本体と、表示装置と、前記表示装置を回動可能に保持するヒンジユニットと、前記表示装置が収納される収納部を有する外装部材と、前記表示装置の信号を伝達する信号線と、前記信号線を保護する保護カバーとを有し、前記保護カバーは、前記本体の角部に位置し、前記保護カバーの内側に高さの異なる複数のリブが配設されることを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能な表示装置を有する撮像装置に関し、特に表示装置の信号線を保護するカバーの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラなどの撮像装置において、撮像素子から出力された信号を撮像装置の外観に設けられた表示装置に表示して、撮影前に構図や露出を確認する事が出来るライブビュー機能を有するものがある。この様な撮像装置においては、極端なローアングルやハイアングルにおいて表示装置の視認性を確保するために、表示装置が撮像装置本体に対して回動可能に保持されているものが数多く提案されている。表示装置を回動可能に保持するためには、表示装置とヒンジユニットを締結した表示装置ユニットのヒンジ側を撮像装置本体に固定することが一般的である。この際、表示装置の信号線はヒンジユニットの中空の回動軸を通った後、カメラ本体に引き込まれる構成を取ることが多い。
【0003】
また、表示装置の回動範囲を確保するために、ヒンジユニットは撮像装置の端部付近に配置することが一般的である。そのため表示装置の信号線を覆うカバーは必然的に撮像装置の角部付近に設けられてしまい、撮像装置の落下時などに大きな衝撃が加わってしまう構成になっていた。
【0004】
以下に示す特許文献1では、ヒンジユニットの中空の回動軸を通してカメラ本体に表示装置の電源線および信号線を引き込む構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-101779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来技術では、ヒンジユニットの中空軸を通してカメラ本体に表示装置の電源線および信号線を引き込んでいる。この構成では、信号線からの電磁ノイズの放射を防ぐためにはこの中空の回動軸付近の外装部材は導電性のある樹脂を用いることが望ましい。また、ヒンジユニットの中空の回動軸がカメラの上側の角部付近に設けられているため、カメラが自然落下した際などに、中空の回動軸付近のカバーが直に衝撃を受けることが考えられる。一般的に導電樹脂は導電性を確保するためのフィラーが混ぜられているため、耐衝撃性という点で通常の樹脂に劣ることが多い。よって先行文献1に開示された従来技術では、ヒンジユニット中軸の外装部材の衝撃に対する信頼性が低下する恐れがある。
【0007】
そこで本発明の目的はヒンジユニット信号線を覆う外装部材に衝撃に対する高い信頼性を持たせ、かつ液晶表示ユニットに起因する電磁ノイズの発生にも配慮した構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、本体と、表示装置と、前記表示装置を回動可能に保持するヒンジユニットと、前記表示装置が収納される収納部を有する外装部材と、前記表示装置の信号を伝達する信号線と、前記信号線を保護する保護カバーとを有し、前記保護カバーは、前記本体の角部に位置し、前記保護カバーの内側に高さの異なる複数のリブが配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば回動可能な液晶表示ユニットからの信号線をカメラ端部付近から本体内に引き込む構成において、信号線を覆うカバーに衝撃に対する十分な信頼性を付与するとともに、液晶表示ユニットに起因する電磁ノイズの放射を抑えた撮像装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示したデジタルカメラの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示したヒンジ機構の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態を示したデジタルカメラの背面カバーユニット取り付け構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示した背面カバーユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態を示した背面カバーユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0012】
[実施例]
図1から図を用いて、本発明の表示装置を搭載する撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラを説明する。
【0013】
図1(a)は本実施例のデジタルカメラを前方(被写体側)から見た斜視図である。図1(b)は本実施例のデジタルカメラを後方(撮影者側)底面方向から見た斜視図である。図1(c)は本実施例のデジタルカメラの表示装置を開いた状態を後方(撮影者側)から見た斜視図である。
【0014】
図1(a)から図1(c)において、1はデジタルカメラ本体であり、2は撮影画像等を確認可能な表示装置ユニットである。表示装置ユニット2は、例えば3.0インチ程度のTFT液晶パネルなどから構成されている。ここで、表示装置ユニット2は、撮影画像等が表示される表示面2aと背面2bを有している。また、表示装置ユニット2は、撮影時ビューファインダーとしても利用可能となっている。
【0015】
3はヒンジ機構であり、ヒンジ機構3は後述する背面カバー40と一体化されており、表示装置ユニット2はヒンジ機構3により回転し、デジタルカメラ本体1に対して開閉可能に結合されている。ヒンジ機構3の第1の回転中心軸Aにより回転し、表示装置ユニット2が開いている状態で、さらにヒンジ機構3の第2の回転中心軸Bにより回転をさせることで、撮影者はより自由なアングルにて撮影を行うことができる。
【0016】
図2は、ヒンジ機構3の分解斜視図である。
【0017】
図2において、301、302は背面カバー40への取り付け部であり、ヒンジ機構3は取り付け部301、302が背面カバー40に後述する不図示のビスで取り付けられる。
【0018】
303、304は開閉支軸、303a、304aは開閉ストッパであり、それぞれの支軸と一体に形成されている。305はベース板であり、開閉ストッパ303a、304aをベース板305に形成された当接部(不図示)に当接させることで、開閉支軸303、304による表示装置ユニット2の開きを180度に規制する。306は可動カム、307はコイルバネであり、可動カム306は開閉支軸304の軸方向に移動自在に挿入され、コイルバネ307は可動カム306を開閉支軸305に設けられたカム面に常時付勢する。開閉支軸303、304はそれぞれの一端でベース板305に回動可能に保持され、回転中心軸Aを回転中心として開閉させる際の開閉支軸となる。
【0019】
308は表示取り付け部、308aは回動軸であり、表示取り付け部308に表示装置ユニット2が取り付けられる。回転軸308aは表示取り付け部308と一体に形成され、表示装置ユニット2をデジタルカメラ本体1に対して、回転中心軸Bを回転中心として回動させる際の回転軸となる。309は固定カムであり、固定カム309は回動軸308aに固定される。310は板バネであり、板バネ310は回動軸308aに所定のトルクを与える。311は回動ストッパであり、回動ストッパ311をベース板305に形成された突起(不図示)に当接させることで、回動軸308aを中心とする画像表示部2の回転を一定範囲に規制する。ベース板305は回動軸308aを回動自在に支持する。
【0020】
312、313はヒンジカバーであり、ヒンジカバー312、313はビス314によりベース板305に固定され、ヒンジ機構3を覆う。
【0021】
なお本実施例では、ヒンジ機構の構成部品のうちヒンジカバー312,313を除いた部品はすべて金属製である。
【0022】
図3(a)は、デジタルカメラ1の分解斜視図である。
【0023】
図3(a)において、4は背面カバーユニット、5はサイドカバーであり、背面カバーユニット4はビス13、サイドカバー5はビス14によってデジタルカメラ本体1に取り付けられる。サイドカバー5は樹脂で成形されている。
【0024】
6は端子カバー、9は電気回路基板、10は外部インターフェース端子部、11は周辺機器用端子部である。端子カバー6は弾力性のあるエラストマー部材で形成され、サイドカバー5に圧入され、外部インターフェース端子部10、周辺機器用端子部11を保護している。外部インターフェース端子部10は、カメラを外部機器と接続するための端子部であり、電気回路基板9に実装されている。本実施例では、USB MiNi−BおよびHDMI TypeA端子である。周辺機器用端子部11は、カメラの周辺機器を接続するための端子部であり、不図示の電気回路基板に実装されている。本実施例では、マイクおよびリモートコントローラー用の端子である。これらは主に、カメラ使用状態において使用される。そのため、ヒンジ機構3による画面表示部2の回動軌跡から外れた位置に配置されており、周辺機器を接続した状態において、表示装置ユニット2の回動を妨げることなくカメラおよび周辺機器の使用を可能としている。
【0025】
7は外装ラバーであり、外装ラバー7は弾力性のあるエラストマー部材で成形されており、端子カバー6と一体的に意匠性を高めつつ、撮影時の滑り止めの役割を持つ。8はシャーシであり、シャーシ8は金属で成形されており、デジタルカメラ本体1の骨格の一部をなしている。12はコネクタであり、シャーシ8に固定された電気回路基板9上に実装されている。背面カバーユニット4は後述するフレキシブル電気回路基板によってコネクタ12に電気的に接続される。15はハーネスコネクタであり、後述する表示装置ユニットからの信号線44が接続される。
【0026】
図3(b)は、背面カバーユニット4を前方(被写体側)から見た斜視図であり、表示装置ユニットが回動した位置にある状態を示している。
【0027】
40は背面カバーであり、樹脂で成形されている。41はヒンジ保持部材であり、金属で成形されている。43はフレキシブル電気回路基板であり、背面カバーユニット4の操作用ボタン(不図示)、スピーカ(不図示)、ディテクタスイッチ(不図示)と、これらに付随する抵抗(不図示)、コンデンサ(不図示)等の実装部品が搭載されている。フレキシブル基板43は、デジタルカメラ本体1に固定された電気回路基板9に実装されたコネクタ12によって接続され、前記実装部品に対して電気信号の処理が行われる。44は表示装置ユニットからの信号線であり、複数本の信号線を束ねて1本のハーネスにしたものである。表示装置ユニットからの信号線44は前述した電気回路基板9上のハーネスコネクタ15に接続される。表示装置ユニットからの信号線44は図に示すように背面カバー40の底面付近を通って、電気回路基板9の下部に配置されたコネクタ12に接続される。
【0028】
次に図4を用いて、背面カバーユニットの構成について説明する。
【0029】
図4(a)は背面カバーユニットの分解斜視図である。図4(b)は、信号線保護カバー45を撮影者側から見た図である。信号線保護カバー45に関する詳細は後述する。
【0030】
表示装置ユニット2はヒンジ機構3に不図示のビスによって固定されている。ヒンジ機構3の固定部301および302には、背面カバーとの位置関係を決めるための位置決め穴301a、302bおよびビス301c、302cによってヒンジ機構を固定するためのビス穴301a、302aが設けられている。
【0031】
背面カバー40には、ヒンジ機構の位置をガイドするための位置決めダボ401a、402aおよび、ビス301c、302cを通すためのビス穴401b、402bが設けられている。403は表示装置収納部であり、表示装置ユニット2はこの表示装置収納部403に収納される。
【0032】
表示装置ユニットからの信号線44は、詳細は後述するように、ヒンジ機構3の回動軸308b、開閉支軸303を通って、背面カバー40に設けられた信号線引込み穴404を通って、デジタルカメラ本体1の内部に引き込まれる。
【0033】
46はヒンジカバーであり、ビス46aによって背面カバー40に固定され、ヒンジ機構3の固定部302を保護する。45は信号線保護カバーであり、ビス45aによって背面カバー40に固定され、前述した信号線引込み穴404付近を覆う。なお、信号線保護カバー45は導電樹脂製であり、表示装置ユニットからの信号線44からの電磁ノイズの発生を抑制することができる。
【0034】
41はヒンジ保持部材であり、ヒンジ機構3を固定するためのビス301c、302cが締結されるための不図示のビス穴が設けられている。また、背面カバーユニットをシャーシ8と接続するためのシャーシ固定部413、414が設けられている。
【0035】
図4(b)に示すように、信号線保護カバー45の内側には高さの異なる第1リブ451と第2リブ452が設けられている。詳細は後述するように第2リブ452は第1リブ451に比べて高さが高くなっている。453はビス45aが締結されるダボであり、第2リブ452と一体的に成形されている。
【0036】
図5は表示装置ユニットからの信号線44の這い回しを説明するための図である。図5(a)中の線分C−C、D−Dでの断面図を図5(b)、図5(c)に示す。
【0037】
図5(b)に示すように、表示装置ユニットからの信号線44はヒンジ機構3の回動軸308a、開閉支軸303を通過した後、背面カバー40に設けられた信号線引込み穴404を通ってデジタルカメラ本体内に引き込まれる。
【0038】
開閉支軸303に近い第1リブ451に比べて、信号線引込み穴404に近い第2リブ452の方が高さが高くなっている。これによって表示装置ユニットからの信号線44は開閉支軸303を通過した後、第1リブ451に対しては十分なクリアランスをもって近傍を通過し、高さのある第2リブ452によって信号線引込み穴404に向かってガイドされる。第2リブ452の高さは、表示装置ユニットからの信号線44が信号線引込み穴404に引き込まれる際に余計なテンションがかからないように設定されている。このように第2リブ452がガイドの役割を果たすことで、背面カバーユニット4の状態で信号線44の長さのばらつきを抑え、背面カバーユニット4をデジタルカメラ本体1に組み付ける際の作業性を向上させることが可能となる。また、信号線44に対して余分なストレスがかかることを防止できる。
【0039】
また第2リブ452はダボ453と一体的に成形されているため、信号線保護カバー45の強度をより向上させることが可能となる。これにより、表示装置ユニットからの信号線44からの電磁ノイズの発生を抑制するために、信号線保護カバー45の材質を一般的に強度の劣る導電樹脂にした場合でも、衝撃等の外力に対して十分な強度を持たせることが可能となる。
【0040】
図5(c)は表示装置ユニットからの信号線44のデジタルカメラ本体内での這い回しを説明するための図である。図に示すように表示装置ユニットからの信号線44は、背面カバー40の内側下端部に設けられた信号線スペース405を通って、電気回路基板9上に配置されたハーネスコネクタ15に接続される。信号線スペース405は、表示装置収納部403の下部のリブの裏側に設けられた凹みであり、この空間に表示装置からの信号線44を通すことでカメラ本体1の薄型化が可能となる。さらには、信号線スペース405は、電気回路基板9の下端より下に位置するため、表示装置ユニットからの信号線44と電気回路基板9をカメラ光軸方向においてほぼ同一の位置に配置することが可能となり、デジタルカメラ本体1のより一層の薄型化が可能となる。また、表示装置ユニットからの信号線44が電気回路基板9の面上を通過しないため、表示装置ユニットからの信号線44から放射される電磁ノイズが回路基板9に影響を及ぼすことを防止できる。
【0041】
また、ヒンジユニットの開閉支軸303はカメラの下側に配置されているため、表示装置ユニットからの信号線44の長さを最小限に抑えることが可能となり、製品のコスト増加を防ぐことが可能である。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、本発明は、デジタルムービーカメラ、携帯型のPC、携帯電話等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 デジタルカメラ本体
2 表示装置ユニット
3 ヒンジ機構
4 背面カバーユニット
5 サイドカバー
6 端子カバー
7 外装ラバー
8 シャーシ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(1)と、
表示装置(2)と、
前記表示装置(2)を回動可能に保持するヒンジユニット(3)と、
前記表示装置(2)が収納される収納部(403)を有する外装部材(40)と、
前記表示装置(2)の信号を伝達する信号線(44)と、
前記信号線(44)を保護する保護カバー(45)とを有し、
前記保護カバー(45)は、前記本体(1)の角部に位置し、前記保護カバー(45)の内側に高さの異なる複数のリブ(451,452)が配設されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記信号線(44)は、
前記外装部材(40)に設けられた穴部(404)を通って前記本体(1)に接続され、
前記信号線(44)および前記穴部(404)は前記保護カバー(45)によって覆われ、
前記保護カバー(45)は導電樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数のリブ(451、452)は、
前記ヒンジユニット(3)より前記穴部(404)に近い箇所の方が高さが高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147354(P2012−147354A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5667(P2011−5667)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】