説明

撮像装置

【課題】 スタートシーンのように被写体が急激に動き出すシーンにおいても、被写体に対して焦点調節を追従可能にする。
【解決手段】 撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出手段101と、検出された焦点状態に応じて撮影レンズの焦点調節を行う焦点調節手段107と、焦点検出手段により焦点検出される際の像面位置の変化量である像面変化量が予め設定された閾値未満の場合に焦点調節手段の焦点調節動作を行わせる捕捉判定手段106と、予め決められた条件を満たすことによって被写体および撮像装置が静止状態にある場合に、捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくする閾値変更手段105とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節手段を有する、一眼レフデジタルカメラなどの撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦点調節手段を有するカメラにおいて、移動する被写体にピントを合わせ続けるために、移動する被写体の動きに連動させて撮影レンズを駆動させる制御方法が広く知られている。
【0003】
撮影者は、撮影画面(ファインダ上)に配置された焦点検出領域に、被写体を捕える(含める)ことで焦点調節を行う。
【0004】
撮影レンズの焦点調節制御では、始めの動作としてカメラは被写体への焦点検出結果に応じて焦点調節を行う。その後、再度焦点検出を行い、その焦点検出結果に応じて被写体の捕捉判定を行う。同一被写体を捕捉していると判定した場合にはレンズを駆動させる動作を繰り返す。また、撮影者が焦点検出領域から被写体を背景へ外したり、焦点検出領域に障害物等の別の被写体が入ってしまったりする場合には、同一被写体を捕捉していないと判定し、撮影者の意思とは異なるレンズ駆動、すなわち、他の被写体へすぐに追従することを防止するために、所定時間撮影レンズの焦点調節を停止させる方法が提案されている。
【0005】
被写体の捕捉判定では、図12(A)のように、過去に焦点検出した時の被写体402をカメラで観測した像面位置404と今回焦点検出した時の被写体403aをカメラで観測した像面位置405aから像面変化量が算出される。そして、算出された被写体の像面変化量があらかじめ設定された閾値(以下、抜けデフォーカス量)未満か否かで同一被写体を捕えているか否かを判定する。具体的には、像面変化量が抜けデフォーカス量未満である場合には焦点検出した被写体を捕えていると判定し、焦点調節を行う。一方、図12(B)で示すように像面位置405bの像面変化量が抜けデフォーカス量以上である場合には焦点検出した被写体とは異なった被写体を捕えていると判定し、焦点調節を停止する。また、図12(C)で示すように今回の焦点検出が背景403cを捕えてしまった場合にも過去に被写体402を焦点検出した時との像面位置405cの像面変化量が非常に大きくなり、抜けデフォーカス量以上となる。この場合にも過去に焦点検出した被写体とは異なった被写体を捕えていると判定して焦点調節を停止する。また、図12(D)で示すように今回の焦点検出時に過去の被写体とは異なる被写体406が手前に進入してきた場合にも像面位置407の像面変化量が大きくなることがある。この場合も過去に焦点検出した被写体とは異なる被写体を捕えていると判定し、焦点調節を停止する。
【0006】
この技術では、被写体の移動速度が速い場合には、像面位置上の移動速度(以下、像面移動速度)も速くなり、抜けデフォーカス量以上の被写体の移動変化量が検出されてしまう。そのため、別の被写体であると判断されることで撮影レンズが被写体に対して追従できないことがあった。この課題に対して、特許文献1では過去複数回の焦点検出データに基づいて像面移動速度を算出し、像面移動速度が所定値より大きいか否かで移動する被写体であるか否かを判定することを開示している。このように撮影レンズの被写体への追従判定に像面移動速度を用いることによって、像面移動速度が速い場合であっても移動する被写体であるか否かを判定可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−103998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、陸上競技や自動車レースのスタートシーンのような、被写体が急激に動き出すシーンにおいて被写体の捕捉判定がうまく機能しない。なぜならば、像面移動速度は、過去複数回の焦点検出データに基づいて算出されるため、算出される速度がすぐには大きくならない。よって、このようなシーンでは被写体は静止していると判定される。また、像面移動速度を、例えば、前回と今回の焦点検出結果から算出すると、被写体は移動していると判定することが可能となるが、被写体を背景へ外したり、焦点検出領域に障害物等の別の被写体が入ってしまった場合でも、移動する被写体と誤判定してしまう。結果としてピントが被写体に対して合っていない画像が得られてしまう。
【0009】
(発明の目的)
本発明の目的は、陸上競技や自動車レースのスタートシーンのように被写体が急激に動き出すシーンにおいても、被写体に対して焦点調節を追従可能にした撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出手段と、検出された前記焦点状態に応じて前記撮影レンズの焦点調節を行う焦点調節手段と、前記焦点検出手段により焦点検出される際の像面位置の変化量である像面変化量が予め設定された閾値未満の場合に前記焦点調節手段の焦点調節動作を行わせる捕捉判定手段と、予め決められた条件を満たすことによって被写体および撮像装置が静止状態にある場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくする閾値変更手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、陸上競技や自動車レースのスタートシーンのように被写体が急激に動き出すシーンにおいても、被写体に対して焦点調節を追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の概念を示すブロック図である。
【図2】実施例1としての一眼レフデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】被写体捕捉判定の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】被写体捕捉判定の動作の他の例を示すフローチャートである。
【図5】捕捉判定手段閾値変更の動作を示すフローチャートである。
【図6】パンニング検出手段によるヨー方向のカメラ振れ量を示すグラフである。
【図7】パンニング検出手段によるピッチ方向のカメラ振れ量を示すグラフである。
【図8】カメラの回転方向を示す図である。
【図9】任意設定可能なカスタム機能「スタートシーン撮影モード」の設定画面である。
【図10】本発明の実施例2の概念を示すブロック図である。
【図11】実施例2の捕捉判定手段閾値変更の動作を示すフローチャートである。
【図12】像面変化量と被写体移動変化量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例1および2に記載される通りである。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の撮像装置に係る実施例1の概念を示すブロック図である。
【0015】
図1において、101は、撮影レンズの焦点状態、つまりデフォーカス量を検出する焦点検出手段、107は、検出されたデフォーカス量から撮影レンズの焦点調節を行う焦点調節手段である。106は、今回の像面位置と過去の像面位置の変化量である像面変化量が閾値未満か否か、つまり抜けデフォーカス量未満か否か、に応じて同一被写体を捕えているか否かを判定する捕捉判定手段である。102はジャイロセンサ(角速度センサ)によりカメラのパンニングを検出するパンニング検出手段、103はパンニング検出手段102により所定時間(たとえば1s)のパンニング状態を判定するパンニング判定手段である。104は、像面位置の変化量から被写体の静止状態を判定し、パンニング状態からカメラの静止状態を判定することによって、被写体とカメラの両方の静止状態を判定する静止状態判定手段である、105は、閾値である抜けデフォーカス量を変更する閾値変更手段である。
【0016】
次に、本発明の撮像装置の実施例1である一眼レフデジタルカメラについて説明する。図2は、その一眼レフデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0017】
201は撮影レンズである。202はレンズ内に配置されているレンズの手振れ状態を検出する振れ検出手段で、具体的にはジャイロセンサ(角速度センサ)によって構成される。振れ検出手段202は主にレンズの手振れを補正するために用いられるが、本発明ではレンズのパンニングを検出するパンニング検出手段も兼ねるので、図2ではパンニング検出手段と表示する。
【0018】
203はレンズ駆動手段である。レンズ駆動手段203は、例えばDCモータや超音波モータによって構成され、マイクロコンピュータ223の制御によって撮影レンズ201のフォーカス位置を変化させることによりピントを合わせる。204は絞りである。205は絞り駆動手段である。絞り駆動手段205は絞り204を駆動する。駆動されるべき量はマイクロコンピュータ223によって算出され、光学的な絞り値を変化させる。
【0019】
206は撮影レンズ201から入射した光束をファインダ側と撮像素子側とに切り替えるための主ミラーである。主ミラー206は常時はファインダ側へと光束を導くよう反射させるように配されているが、撮影が行われる場合には、撮像素子215へと光束を導くように上方に跳ね上がり、光束中から待避する。また、主ミラー206はその中央部が光の一部を透過できるようにハーフミラーとなっており、焦点検出を行うための不図示の一対のAFセンサ(焦点検出手段212内に配置されている)に光束の一部を入射するように透過させる。207は主ミラー206から透過してきた光束を反射させて焦点検出を行うための一対のAFセンサに導くためのサブミラーである。
【0020】
208はファインダを構成するペンタプリズムである。ファインダは他にピント板209、アイピース210などによって構成される。
【0021】
211はカメラ内に配置されている、カメラのパンニングを検出するパンニング検出手段で、具体的にはジャイロセンサ(角速度センサ)によって構成される。
【0022】
212は焦点検出手段である。主ミラー206の中央部を透過し、サブミラー207で反射された光束は、焦点検出手段212の内部に配置された光電変換を行うための一対のAFセンサに至る。被写体に対する撮影レンズ201の焦点調節状態を示すデフォーカス量は、一対のAFセンサの出力を演算することによって求められる。マイクロコンピュータ223は演算結果を評価してレンズ駆動手段203に指示し、撮影レンズ201のフォーカスレンズを駆動させる。
【0023】
213はフォーカルプレーンシャッタである。214はシャッタ駆動手段であり、フォーカルプレーンシャッタ213を駆動する。シャッタの開口時間はマイクロコンピュータ223によって、制御される。
【0024】
215は撮像素子である。撮像素子215には、CCDやCMOSセンサなどが用いられ、撮影レンズ201によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0025】
216はクランプ回路である。217はAGC回路である。クランプ回路216やAGC回路217は、AD変換をする前の基本的なアナログ信号処理を行い、マイクロコンピュータ223により、クランプレベルやAGC基準レベルの変更が行われる。218はAD変換器である。AD変換器218は撮像素子215のアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
【0026】
219は映像信号処理回路であり、ゲートアレイなどのロジックデバイスにより実現される。220はメモリコントローラである。221はメモリである。222はバッファメモリである。映像信号処理回路219は、デジタル化された画像データに、フィルター処理、色変換処理、ガンマ処理を行うと共に、JPEGなどの圧縮処理を行い、メモリコントローラ220に出力する。
【0027】
映像信号処理回路219は、必要に応じて撮像素子215の信号の露出情報やホワイトバランスなどの情報をマイクロコンピュータ223に出力することが可能である。それらの情報を基にマイクロコンピュータ223はホワイトバランスやゲイン調整の指示を行う。連続撮影動作の場合においては、一旦、未処理画像のままバッファメモリ222に撮影データを格納し、メモリコントローラ220を通して未処理の画像データを読み出し、映像信号処理回路219にて画像処理や圧縮処理を行い、連続撮影を行う。連続撮影枚数は、バッファメモリ222の大きさに左右される。
【0028】
メモリコントローラ220では、映像信号処理回路219から入力された未処理のデジタル画像データをバッファメモリ222に格納し、処理済みのデジタル画像データをメモリ221に格納する。また、逆にバッファメモリ222やメモリ221から画像データを映像信号処理回路部219に出力する。メモリ221は取り外し可能である場合もある。
【0029】
223はマイクロコンピュータである。224は操作部材である。操作部材224は、マイクロコンピュータ223にその状態を伝え、マイクロコンピュータ223はその操作部材の変化に応じて各部をコントロールする。また、操作部材224は、止まっている被写体の撮影に適しているONESHOTモード、撮影距離が絶えず変化する被写体の撮影に適しているAI−SERVOモード、被写体の状態に応じてONESHOTからAI−SERVOへとカメラが自動的に切り換わるAI−FOCUSモードへの切り替え操作を行うことができる。
【0030】
225はスイッチSW1である。226はスイッチSW2である。スイッチSW1とスイッチSW2は、レリーズボタンの操作でオンオフするスイッチであり、それぞれ操作部材224の入力スイッチのうちの1つである。スイッチSW1のみオンの状態はレリーズボタン半押し状態であり、この状態でオートフォーカスの動作を行ったり、測光動作を行ったりする。スイッチSW1,SW2が共にオンの状態はレリーズボタンの全押し状態であり、画像を記録するためのレリーズボタンオン状態である。この状態で撮影が行われる。また、スイッチSW1,SW2がオンし続けている間は、連続撮影動作が行われる。操作部材224には、他に、ISO設定ボタン、画像サイズ設定ボタン、画質設定ボタン、情報表示ボタンなど不図示のスイッチが接続されており、スイッチの状態が検出されている。
【0031】
227は電源部である。電源部227は、各ICや駆動系に必要な電源を供給する。
【0032】
以上のように構成されたカメラにより、被写体捕捉判定の精度を向上させる。
【0033】
次に、本発明の実施例1に関わる被写体捕捉判定の動作の一例について図3のフローチャートに基づいて説明する。ステップ#101でスイッチSW1がオンされると、自動焦点調節動作が開始される。まず、ステップ#102では焦点検出を行い、被写体像信号からデフォーカス量を検出する。デフォーカス量の検出が終了すると、次のステップ#103にて同一被写体を捕えているか否かを判定する捕捉判定手段106の閾値を変更するルーチンを実行する。ステップ#103のルーチンについては図5のフローチャートを用いて後述する。捕捉判定手段106の閾値変更ルーチンが終了するとステップ#104へ進む。
【0034】
ステップ#104では、ステップ#102で検出したデフォーカス量と所定時間後のデフォーカス量の像面変化量が抜けデフォーカス量(閾値)未満か否かで同一被写体を捕えているか否かを判定する。被写体を捕捉していると判定されると、ステップ#105へ分岐し、フォーカスレンズの駆動を行う。フォーカスレンズの駆動を終えるとステップ#108へ進む。
【0035】
また、ステップ#104で同一被写体を捕捉していないと判定されると、ステップ#106へ進む。ステップ#106では撮影者が焦点検出領域を同一被写体へ戻すことを期待して所定時間内は焦点検出を繰り返す。ステップ#106で所定時間内に同一被写体を捕えていないと判定されると、ステップ#107aへ進み、フォーカスレンズを停止させ、ステップ#108へ進む。
【0036】
次のステップ#108では、スイッチSW1がオンされているかを判定し、オンされていればステップ#102の焦点検出へ戻り、以下スイッチSW1がオフされるまで自動焦点調節のフローを繰り返す。また、オンされていないと判定されると自動焦点調節を終了する。
【0037】
ステップ#104により同一被写体を捕捉していないと判断された場合には、レンズを停止する方法以外に、図4のステップ#107bに示すように過去複数回の焦点検出結果から被写体位置を予測(動体予測演算)し、レンズ駆動を行う方法がある。過去複数回の焦点検出結果から被写体位置を予測する動体予測演算の方法については、さまざまな方法が提案されており、本発明には直接関係ないので詳細な説明は省略する。以後、スイッチSW1がオフされるまで、前述と同様の動作を繰り返す。
【0038】
次に、図5のフローチャートを用いて、図3及び図4のステップ#103にて実行される同一被写体を捕えているか否かを判定する捕捉判定手段106の閾値を変更する閾値変更動作について説明する。
【0039】
ステップ#201ではレンズに搭載されたパンニング検出手段202またはカメラに搭載されたパンニング検出手段211によりレンズまたはカメラのパンニングを検出する。ステップ#201で検出されるカメラのパンニングを示す出力値について図6を用いて説明する。図6(A)は、撮影者がカメラを手持ちで構えて静止被写体を捕えている場合において、カメラ内に配置されているパンニング検出手段211がヨー方向のカメラ振れ量を検出した際の出力結果である。ヨー方向とは図8に示すようにY軸周りにカメラを回転させる方向で、ヨー方向のカメラ振れ量は主にカメラをパンニングした際に検出される量である。横軸が時刻、縦軸が角速度(deg/sec)を表している。通常、カメラを手持ちで静止被写体を捕えているときの出力値は−3〜3deg/sec程度で最大振れ幅は6deg/sec程度である。
【0040】
一方、図6(B)は、撮影者がカメラを手持ちで構えて移動する被写体をユーザがレンズを振りながら捕えている場合において、カメラ内に配置されているパンニング検出手段211がヨー方向のカメラの振れ量を検出した際の出力結果である。この場合の出力値の最大振れ幅は90程度であり、カメラがパンニングされていない場合に比べて出力値が大きくなる。
【0041】
さらに、図7(A)、図7(B)は、カメラ内に配置されているパンニング検出手段211がピッチ方向のカメラ振れ量を検出した際の出力結果である。ピッチ方向とは図8に示すようにX軸周りにカメラを回転させる方向で、パンニング時のピッチ方向のカメラ振れ量はヨー方向に比べて出力値が低くなる。よって、カメラを正位置で持つ場合はY軸周りの検出量を用い、カメラを縦位置で持つ場合はX軸周りの検出量を用いてパンニング検出を行う。
【0042】
ステップ#202ではステップ#201で検出されたレンズまたはカメラのパンニング検出結果に応じて、カメラがパンニングされていない場合/パンニングされている場合のパンニング状態の判定(以後、パンニング判定)をする。パンニング判定はカメラがパンニングされていないと判定できる閾値よりもパンニング検出手段が出力する出力値が小さければカメラがパンニングされていないと判定され、所定値以上であればカメラがパンニングされていると判定される。なお、パンニング判定はレンズのパンニングを検出するパンニング検出手段202を用いても判定可能である。
【0043】
ステップ#202ではまた、マイクロコンピュータ223の自走タイマで所定時間(例えば1s)を測定する。この所定時間の像面変化量が被写体が静止している(被写体が静止状態である)と判定できる変化量(所定値未満)で、かつ、パンニングされていない状態が所定時間続いている(カメラが静止状態である)場合に、ステップ#203へ進む。抜けデフォーカス量(閾値)を予め設定されている値より大きく設定する。ステップ#203で抜けデフォーカス量(閾値)の変更が終了したら閾値変更ルーチンから抜けてステップ#104へ進む。
【0044】
一方、所定時間の像面変化量が、被写体が静止していると判定できる変化量ではない、または所定時間内にカメラがパンニングされていると判定された場合には、ステップ#204であらかじめ設定された抜けデフォーカス量(閾値)に設定する。ステップ#204で抜けデフォーカス量の設定が終了したら、閾値変更ルーチンから抜けてステップ#104へ進む。
【0045】
以上、実施例1によれば、被写体の捕捉判定において、カメラまたはレンズのパンニング検出手段からカメラのパンニングを検出し、カメラのパンニング状態の情報を加味して同一被写体を捕えているか否かを判定する捕捉判定手段104の閾値を変更している。これにより、被写体の急激な動き出し等のシーンにおいて被写体捕捉精度の向上が可能である。
【実施例2】
【0046】
前記実施例1では、レリーズを行う通常のスイッチSW1を操作することによって、抜けデフォーカス量(閾値)の設定をするが、本発明の実施例2においては図2の操作部材224に被写体の急激な動き出しに対応するスタートシーン操作手段(例えば、スタートシーン撮影ボタン)を配置する。さらに、図9のように撮影者が任意で設定できるカスタム機能として「スタートシーン撮影モード」を備えた撮像装置である。
【0047】
図10は、本発明の撮像装置に係る実施例2の概念を示すブロック図である。
【0048】
図10において、1101は、撮影レンズ201の焦点状態、つまりデフォーカス量を検出する焦点検出手段、1106は、検出されたデフォーカス量から撮影レンズの焦点調節を行う焦点調節手段である。1105は、今回の像面位置と過去の像面位置の変化量である像面変化量が閾値未満か否か、つまり抜けデフォーカス量未満か否かに応じて同一被写体を捕えているか否かを判定する捕捉判定手段である。1102は、スタートシーン撮影ボタンのようなスタートシーン操作手段である。スタートシーン撮影モードが設定されている場合にスタートシーン操作手段1102が操作されると、スタートシーンを狙ってカメラは静止状態であると判定することができる。1103は、像面位置の変化量から被写体の静止状態を判定し、スタートシーン操作手段1102の操作からカメラの静止状態を判定することによって、被写体とカメラの両方の静止状態を判定する静止状態判定手段である。1104は、閾値である抜けデフォーカス量を変更する閾値変更手段である。
【0049】
実施例2の撮像装置は実施例1の撮像装置と同様に焦点検出を行った後に捕捉判定手段閾値変更動作(図11)に移行する。
【0050】
ステップ#301では所定時間の像面変化量が被写体が静止していると判定できる変化量(所定値未満)であるか否かの判定と、スタートシーン撮影モードがオンであるかオフであるかの判定を行う。ステップ#301で所定時間の像面変化量が被写体が静止していると判定できる変化量であり、かつスタートシーン撮影モードがオンであると判定された場合にはステップ#302へ進む。一方、所定時間の像面変化量が被写体が静止していると判定できる変化量ではない、またはスタートシーン撮影モードがオフであると判定された場合にはステップ#304へ進む。ステップ#304では、既定の抜けデフォーカス量(閾値)を設定し、閾値変更ルーチンから抜けてステップ#104へ進む。
【0051】
ステップ#302ではスタート撮影ボタンがオンであるかオフであるかを判定する。スタート撮影ボタンがオンであると判定された場合には抜けデフォーカス量を既定の値より大きく設定し、閾値変更ルーチンから抜けてステップ#104へ進む。一方、スタートシーン撮影ボタンがオフであると判定された場合には図5の捕捉判定手段閾値変更ルーチンに進む。
【0052】
以上、実施例2によれば所定時間の像面変化量が被写体が静止していると判定できる変化量(所定値未満)で、スタートシーン撮影モードを有効にする。そして、スタートシーン撮影ボタンをオンにすることによって、実施例1のパンニング検出手段102およびパンニング判定手段103を利用せず、かつ所定時間待たずに撮影者がスタートシーンを撮りたいタイミングで即時撮影することができる。また、所定時間の像面変化量が被写体が静止していると判定できる変化量で、スタートシーン撮影モードがオンであっても、スタートシーン撮影ボタンをオンにしないことによって、カメラがスタートシーンを自動で(操作手段を何も操作せずに)判定することができる。
【0053】
なお、ステップ#301において、スタートシーン撮影モードのオンを必ずしも条件にしなくともよい。
【0054】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
101、1101 焦点検出手段
102 パンニング検出手段
103 パンニング判定手段
104、1103 静止状態判定手段
105、1104 閾値変更手段
106、1105 捕捉判定手段
107、1106 焦点調節手段
1102 スタートシーン操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出手段と、
検出された前記焦点状態に応じて前記撮影レンズの焦点調節を行う焦点調節手段と、
前記焦点検出手段により焦点検出される際の像面位置の変化量である像面変化量が予め設定された閾値未満の場合に前記焦点調節手段の焦点調節動作を行わせる捕捉判定手段と、
予め決められた条件を満たすことによって被写体および撮像装置が静止状態にある場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくする閾値変更手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
パンニングを検出するパンニング検出手段をさらに有し、
前記閾値変更手段は、パンニングされていない状態が所定時間続いている場合で、かつ、前記像面変化量が所定値未満である場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
スタートシーンの撮影に際して操作されるスタートシーン操作手段をさらに有し、
前記閾値変更手段は、前記像面変化量が所定値未満である場合で、かつ、前記スタートシーン操作手段が操作された場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記捕捉判定手段は、像面変化量が予め設定された閾値以上の場合に前記焦点調節手段の焦点調節動作を停止させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記捕捉判定手段は、像面変化量が予め設定された閾値以上の場合に動体予測演算により前記焦点調節手段の焦点調節動作を行わせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
スタートシーン撮影モードを備え、
前記閾値変更手段は、前記スタートシーン撮影モードにおいて、前記像面変化量が所定値未満である場合で、かつ、前記スタートシーン操作手段が操作された場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくすることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
パンニングを検出するパンニング検出手段をさらに有し、
前記閾値変更手段は、前記スタートシーン撮影モードにおいて、前記像面変化量が所定値未満である場合であっても、前記スタートシーン操作手段が操作されない場合には、パンニングされていない状態が所定時間続いている場合に、前記捕捉判定手段の閾値を予め設定された値よりも大きくすることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−203207(P2012−203207A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67812(P2011−67812)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】