説明

撮像装置

【課題】 撮像素子が移動可能に筐体に保持されるものであっても、撮像素子の位置に関わらず、安定して撮像素子を冷却する。
【解決手段】 撮像素子41と、放熱部42aが形成され、撮像素子41と熱結合する放熱部材42と、撮像素子41および放熱部材42を移動可能に保持するものであって、撮像素子41および放熱部材42が移動範囲内のどの位置に移動しても、放熱部42aが露出する開口部25が形成されるレンズ筐体23と、空気流を発生させる送風ファン32と、送風ファン32による空気流を開口部25に向かわせる第1の空気流路Aを形成するダクト31を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特に撮像素子の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像素子は受光した光を電気信号に変換し出力するものである。撮像素子の温度が上昇すると不要なノイズ成分が出力信号に重畳し画質劣化を引き起こすため、撮像素子を備えた装置では撮像素子を冷却することが必須となっている。
【0003】
例えば、撮像素子と装置筐体を放熱部材で機械的に接続することで、熱伝導によって撮像素子の熱を筐体表面から外気に放出するものがある。この方式は簡単な構造でコスト的にも有利であることから、製品実装形態として広く用いられている。(例えば、特許文献1参照)
また、撮像素子周辺に空気流路を形成し、強制空冷によって冷却する手段も提案されている。より高い冷却効果が見込めること、装置筐体が熱くなるのを回避できること等、熱伝導による冷却手段と比較して有利な点も多い。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−354637号公報
【特許文献2】特開2009−33718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタルカメラ等の撮像装置では、撮像光学系を構成するレンズ群のうち1群もしくは複数群を移動させることで撮影画像の画角変更を行う変倍機構を有するものが一般的である。これに加えて近年では、撮像光学系の小型化や信頼性向上を目的として、被写体像が結像される撮像素子を、変倍操作によって可動レンズ群とともに移動させる構成が提案されている。
【0006】
このような変倍操作によって撮像素子を移動させる構成では、上述した冷却方法を適用すると以下の問題が生じ得る。
【0007】
熱伝導による冷却方法については、撮像素子と装置筐体等を放熱部材で機械的に結合することが必要であるので、撮像素子が移動する構成では適用が難しい。
【0008】
強制空冷による冷却についても、撮像素子周辺に直接の空気流路を形成することに伴う問題が懸念される。即ち、変倍動作に伴って撮像素子の位置が変化するので、撮像素子の位置に応じて流路も変化させる必要があり、冷却効果が安定しない。撮像素子の配置や周辺空間によっては効果的な流路を確保するために装置を大型化する必要が生じる。撮像素子がレンズ機構の一部となるためレンズ内に空気流が形成されることで塵埃の混入や飛散が発生する。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、撮像素子が移動可能に筐体に保持されるものであっても、撮像素子の位置に関わらず、安定して撮像素子を冷却することのできる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の撮像装置は、撮像素子と、放熱部が形成され、前記撮像素子に固定されることで前記撮像素子と熱結合する放熱部材と、前記撮像素子および前記放熱部材を移動可能に保持するものであって、前記撮像素子および前記放熱部材が移動範囲内のどの位置に移動しても、前記放熱部が露出する開口部が形成される筐体と、空気流を発生させるファンと、前記ファンによる前記空気流を前記開口部に向かわせる空気流路を形成するダクトを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
撮像素子が移動可能に筐体に保持されるものであっても、撮像素子の位置に関わらず、安定して撮像素子を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のデジタルカメラを説明する斜視図。
【図2】レンズユニット20を光軸を含む垂直面で切断した断面図。
【図3】撮像ユニット40を分解した分解斜視図。
【図4】撮像ユニット40が光軸方向に移動したときの放熱部42aの位置関係を説明する図。
【図5】冷却ユニット30の外観を示す斜視図。
【図6】冷却ユニット30を光軸との直交面で切断した断面図。
【図7】レンズユニット20および冷却ユニット30を光軸との直交面で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施した撮像装置としてのデジタルカメラについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1(a)〜(c)は本実施形態のデジタルカメラを説明する斜視図である。図1(a)および(b)は、本実施形態のデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、図1(c)は本実施形態のデジタルカメラの内部構成を示す斜視図である。
【0015】
図1(a)および(b)に図示するように、本実施形態のデジタルカメラは、カメラ本体10と、レンズユニット20で構成されている。カメラ本体10にはズームキー11を備え、レンズユニット20には、ズームリング21を備えている。図1(c)に図示するように、カメラ本体10の内部には、ズームキー11またはズームリング21からの出力信号に基づいて、ズームイン、ズームアウト等の変倍動作を実行する制御部12を備えられている。
【0016】
また、図1(c)に図示するように、レンズユニット20は、後述する撮像素子を冷却するための冷却ユニット30を備えている。
【0017】
次に、図2を参照して、レンズユニット20の内部構成について説明する。図2は、レンズユニット20を光軸を含む垂直面で切断した断面図である。レンズユニット20は、レンズ筐体23の内部に、第1レンズ群22a、第2レンズ群22b、第3レンズ群22c、第4レンズ群22dから成る撮影レンズ群22と、撮影レンズ群22からの被写体像が結像される撮像ユニット40を保持する。すなわち、レンズ筐体23は撮像ユニット40を移動可能に保持する筐体に相当する。
【0018】
本実施形態では、第2レンズ群22b、第4レンズ群22d、撮像ユニット40が光軸方向に移動可能な可動群であり、図示しない個別のアクチュエーターに駆動されることで、それぞれが光軸方向に移動する。
【0019】
撮影者がズームキー11またはズームリング21を操作することで、制御部12が各アクチュエーターを駆動制御して、変倍動作を実行する。
【0020】
図3は、撮像ユニット40を分解した分解斜視図である。撮像ユニット40は、撮像素子41、放熱部材42、ローパスフィルタ43、ゴムブッシュ44、ホルダ45を一体化したものである。撮像素子41は、前述した撮影レンズ群22により結像された被写体像を電気信号に変換し出力するもので、CMOSセンサ、CCDセンサ等の光電変換素子である。
【0021】
図3に図示するように、放熱部材42には放熱部42aが形成されている。放熱部42aは撮像ユニット40が移動範囲内のどの位置に移動しても、後述するレンズ筐体23の開口部25から露出するように、光軸方向に延出した形状を有している。放熱部材42は、撮像素子41の背面に接触するように固定されると同時にホルダ45とも固定され、撮像素子41の位置決め部材としても機能している。すなわち、放熱部材42と撮像素子41とは熱結合している。ホルダ45には光軸方向に穿設された案内孔45aが形成され、レンズユニット20内に設けられたガイドシャフト24が案内孔45aに挿通することで、撮像ユニット40が光軸方向に移動する際の精度を保証する。
【0022】
図4(a)および(b)は、レンズユニット20の変倍動作に連動して、撮像ユニット40が光軸方向に移動したときの放熱部42aの位置関係を説明する図である。レンズ筐体23の側面には、開口部25が穿設されており、撮像ユニット40は、開口部25から放熱部42aが露出するようにレンズユニット20内に配置される。図4(a)は、撮像ユニット40が移動範囲の後方端に位置する状態を示している。このとき、開口部25から放熱部42aの先端部が露出する。この状態であっても、放熱部42aが開口部25を完全に塞ぐ位置関係となる。一方、図4(b)においては、撮像ユニット40が移動範囲の前方端に位置する状態を示している。このとき、開口部25から放熱部42aの後端部が露出する。この状態であっても、放熱部42aが開口部25を完全に塞ぐ位置関係となる。すなわち、撮像ユニット40が移動範囲内のどの位置に移動しても、放熱部42aは開口部25から露出するとともに、放熱部42aが開口部25を完全に塞ぐ位置関係となる。したがって、開口部25からゴミなどの異物がレンズユニット20の内部に入り込むことはない。
【0023】
図5(a)および(b)は、冷却ユニット30の外観を示す斜視図である。冷却ユニット30は、ダクト31、送風ファン32、送風ファン33を一体として構成される。送風ファン32は第1のファンに相当し、送風ファン33は第2のファンに相当する。ダクト31には、送風ファン32による空気流を吐出する吐出口35と、送風ファン33による空気流を吸入する吸気口36が形成される。送風ファン32は吸気口34を有し、送風ダクト31に密接固定される。送風ファン33は排気口37を有し、ダクト31に密接固定される。したがって、ダクト31は、送風ファン32が吸気口34から吸入した空気流を吐出口35から吐出する第1の空気流路を形成する。そして、ダクト31は、送風ファン33がダクト31内の空気を排気口37から排出することで、新たな空気が吸気口36からダクト31内に入る第2の空気流路を形成する。
【0024】
図6は、冷却ユニット30を光軸との直交面で切断した断面図である。送風ダクト31内には、送風ファン32による第1の空気流路Aおよび送風ファン33による第2の空気流路Bが形成される。図6に図示するように、第1の空気流路Aおよび第2の空気流路Bは互いに交差する。
【0025】
本実施形態では、送風ファン32は高圧力特性を有するので、第1の空気流路Aは指向性の強い高流速の空気流となり、高い局所空冷能力を有する。一方、送風ファン33は大風量としているので、第2の空気流路Bは送風ダクト31内を全体的に吸引する空気流となり、送風ダクトを均一に換気する能力を有する。送風ファン32および送風ファン33はそれぞれ独立した吸気口を設けているので、第1の空気流路Aには常に冷たい外気が流入し、第2の空気流路Bは送風ファン33の大風量に応じた換気性能を維持することができる。すなわち、各々の空気流路が有する能力を最大に発揮することができる。
【0026】
図7は、レンズユニット20および冷却ユニット30を、撮像ユニット40の近辺において光軸との直交面で切断した断面図である。まず、撮像素子41から発生した熱は、熱伝導によって放熱部材42を経由して放熱部42aまで伝達される(図7中に示した点線)。図7に図示するように、冷却ユニット30をレンズユニット20に取り付けた状態では、吐出口35が開口部25に対向する位置関係となる。すなわち、吐出口35が形成されることでダクト31は送風ファン32による空気流を開口部25に向かわせる第1の空気流路Aを形成する。したがって、放熱部42aは、開口部25および吐出口35を通してダクト31の内部に露出した状態となり、ここに第1の空気流路Aによって高流速の空気が吹き付けられることで強制的に冷却される。前述したように、放熱部42aは、レンズ筐体23の内壁に近接して光軸方向に延出した形状を成しているので、撮像ユニット40の位置に関わらず、放熱部42aは開口部25から露出するとともに、放熱部42aが開口部25を完全に塞ぐ状態となる。したがって、放熱部42aに吹き付けられて温度上昇した空気は、ダクト31内に拡散した後、第2の空気流路Bによりダクト31の外に排気される。
【0027】
以上に述べた本実施の形態による撮像装置では、以下のような効果を奏する。撮像素子と一体で移動する放熱部材を高流速の気流で局所空冷するので、移動する撮像素子を効率よく冷却することができる。空気流路をレンズユニットの外部に形成し、冷却機構と撮像機構を構造的に分離しているため、空冷機構を最適化でき、装置全体を小型化することができる。放熱部材の位置に関わらず、放熱部がレンズ筐体の開口部を覆う構造としているので、レンズユニットの防塵性を確保することができる。特性の異なる複数の送風ファンを備えるとともに、個別の吸気口を有するので、冷却効果を最大限に発揮することができる。
【符号の説明】
【0028】
20 レンズユニット
23 レンズ筐体
25 開口部
30 冷却ユニット
31 ダクト
32 送風ファン
33 送風ファン
34 吸気口
35 吐出口
36 吸気口
37 排気口
40 撮像ユニット
41 撮像素子
42 放熱部材
42a 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
放熱部が形成され、前記撮像素子に固定されることで前記撮像素子と熱結合する放熱部材と、
前記撮像素子および前記放熱部材を移動可能に保持するものであって、前記撮像素子および前記放熱部材が移動範囲内のどの位置に移動しても、前記放熱部が露出する開口部が形成される筐体と、
空気流を発生させるファンと、
前記ファンによる前記空気流を前記開口部に向かわせる空気流路を形成するダクトを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像素子と、
放熱部が形成され、前記撮像素子に固定されることで前記撮像素子と熱結合する放熱部材と、
前記撮像素子および前記放熱部材を移動可能に保持するものであって、前記撮像素子および前記放熱部材が移動範囲内のどの位置に移動しても、前記放熱部が露出する開口部が形成される筐体と、
空気流を発生させる第1のファンと、
前記第1のファンによる前記空気流を前記開口部に向かわせる第1の空気流路を形成するとともに、前記第1の空気流路と交差する第2の空気流路を形成するダクトと、
前記第2の空気流路の空気を排出する第2のファンとを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記放熱部は、前記撮像素子および前記放熱部材が移動範囲内のどの位置に移動しても、前記開口部を塞ぐように、前記開口部から露出することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子および前記放熱部材は撮影レンズの変倍動作に連動して光軸方向に移動可能に前記筐体に保持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49613(P2012−49613A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187126(P2010−187126)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】