説明

撮像装置

【課題】2段階のズーム速度の切り替えが可能な操作部材を備え、低コストで小型化を実現した撮像装置を提供する。
【解決手段】デジタルカメラ1は、撮影レンズの光軸に対して直交する軸を中心として回転可能に配置されたズームレバー6と、光軸と直交するように配置される回路基板21と、回路基板21に実装され、ズームレバー6の回転角度を検出する第1の検出手段22及び第2の検出手段23と、ズームレバー6と共に回転して第1の検出手段22及び第2の検出手段23のオン状態とオフ状態とを切り替える回転部材14とを有し、制御部304が、第1の検出手段22及び第2の検出手段のオン状態及びオフ状態に基づいてズーム速度を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズーム手段を備える光学機器、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に関し、特に2段階以上の変速が可能なズーム操作手段を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂、デジタルカメラやデジタルビデオカメラに代表されるような撮像装置における高機能化の1つとして、ズーム性能のアップ、すなわち、ズーム倍率の高倍率化が進んでいる。このようなズーム倍率の高倍率化に伴い、高速でズーム操作を行いたい場合と、繊細にズーム量を調整したい場合の両方に対応することができるように、2段階以上のズーム速度の変速機構を備えるものが知られている。ここで、撮像装置に対しては、小型化や低コスト化の要求も強いため、ズーム速度の変速機構を搭載しながら、小型化や低コスト化という要求をも達成する必要がある。
【0003】
撮像装置におけるズーム操作手段には様々な方式のものが知られている。例えば、撮影者が直感的に操作しやすい回転操作部材を用いたズーム操作方式では、回転操作部材の回転角度を検出する検出スイッチが用いられる。検出スイッチを用いて2段階のズーム速度を調整する場合、回転操作部材の回転角度に応じて切り換わる低速操作用スイッチと高速操作用スイッチとを用いる方法が知られている(特許文献1参照)。一方、検出スイッチを使用しない方式として、回路基板上にコードパターンを配線により形成し、導電性ブラシがコードパターンと接触することで回転操作部材の回転角度を検出し、回転角度に応じて低速ズームと高速ズームの制御を切り替える方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−186651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている技術では、多数の検出スイッチを用いるために部品コストが高くなり、検出スイッチを実装する回路基板の面積が大きくなるために小型化が難しくなる。一方、検出スイッチを用いずにコードパターンと導電性ブラシを用いる方式では、コードパターンを形成するために回路基板の面積が大きくなり、また、コードパターン上や導電性ブラシに金メッキ処理を施す必要があるために部品コストが高くなる。
【0006】
本発明は、2段階のズーム速度の切り替えが可能な操作部材を備え、低コストで小型化を実現した撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、撮影レンズの光軸に対して直交する軸を中心として回転可能に配置された操作部材を有する撮像装置であって、前記光軸と直交するように配置される回路基板と、前記回路基板に実装され、前記操作部材の回転角度を検出する第1の検出手段及び第2の検出手段と、前記操作部材と共に回転することによって前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段のオン状態とオフ状態とを切り替える回転部材と、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段のオン状態及びオフ状態に基づいてズーム速度を切り替える制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像装置の上面に配置される回路基板を削減することができ、少ない部品点数でズーム速度を2段階に切り替えるズーム操作を実現することができる。これにより、撮像装置の低コスト化と小型化とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のデジタルカメラにおける、ズームレバーを含む上部ユニットの構成を示す分解図である。
【図3】図1のデジタルカメラにおける、ズームレバー及びその近傍の構造を示す断面図である。
【図4】図1のデジタルカメラを構成する上部ユニットと回路基板とを示す正面図である。
【図5】図1のデジタルカメラにおける、回転板、第1の検出手段及び第2の検出手段の位置関係及び動作態様を示す図である。
【図6】図1のデジタルカメラにおける、ズームレバーの回転角によるズーム速度の2段切り替え制御を示すフローチャートである。
【図7】図1のデジタルカメラの制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、撮像装置の一例として、所謂、コンパクトタイプのデジタルカメラを取り上げることとする。但し、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<デジタルカメラの外観構成>
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラの外観を示す斜視図である。デジタルカメラ1の本体(不図示)を覆うカバーは、被写体側の面(前面)と上面とを構成する前面外装カバー2と、撮影者側の面(背面)を構成する背面外装カバー3とを有している。
【0012】
デジタルカメラ1の前面には、撮影レンズ(不図示)を内包するレンズ鏡筒7が配置されている。デジタルカメラ1の上部には、合焦開始及び撮影開始を指示するレリーズボタン4やデジタルカメラ1の電源のオン/オフを切り替える電源ボタン5等、各種の操作を行う部材が配置されている。レリーズボタン4は、押し込み方向に対して押し込み量に応じた2段階で操作を検出する2段スイッチ構造となっている。
【0013】
デジタルカメラ1の上面には、撮影者が撮影画像の画角調整、すなわち、ズーム操作を行うための操作部材であるズームレバー6が配設されており、ズームレバー6は光軸に対して略直交する回転軸を中心として回転可能である。後述する制御部304(図7参照)が、ズームレバー6の回転操作の操作量(回転角度)を検出し、検出した操作量に応じてレンズ鏡筒7が内包する撮影レンズを光軸方向において進退させるズーム制御を行う。
【0014】
また、デジタルカメラ1の上部には、撮影モードの切り替えに使用されるモードスイッチ8が設けられており、モードスイッチ8のスライド操作によって静止画撮影と動画撮影とが切り替わるようになっている。なお、レリーズボタン4やズームレバー6は、撮影者(操作者)がデジタルカメラ1を把持したときに人差し指で容易に操作できるようにデジタルカメラ1の上部に配置されることが望ましい。
【0015】
<ズームレバー及びその近傍の構造>
図2は、デジタルカメラ1における、ズームレバー6を含む上部ユニットの構成を示す分解図であり、図3は、ズームレバー6及びその近傍の構造を示す断面図である。
【0016】
上部ユニット9を構成する支持部材10には、ズームレバー6の軸部(回転軸)を回転可能に挿通させる穴部11が設けられている。ズームレバー6の軸部には貫通穴17が設けられており、装飾用のキャップ4aとボタン本体4bとで構成されているレリーズボタン4の軸部材4cが貫通穴17に挿通される。レリーズボタン4をズームレバー6に対して組み立てる際に、コイルスプリング18がレリーズボタン4とズームレバー6との間に挿入され、レリーズボタン4のボタン本体4bから延出された爪部4dがズームレバー6に固定される。
【0017】
このような構成により、レリーズボタン4は、コイルスプリング18の反発力で上方に押し上げられ、レリーズボタン4の爪部4dがズームレバー6に固定されることで、外れてしまうことが防止される。撮影者がレリーズボタン4を押下すると、レリーズボタン4は下方向に押し込まれ、レリーズボタン4を押下する力を取り除くと、レリーズボタン4は上方向へ押し上げられ、所定の位置で保持される。
【0018】
支持部材10には、ズームレバー6のボス12を挿通させるための円弧状の穴部(以下「円弧状穴部」と記す)13が設けられており、円弧状穴部13の端部にズームレバー6のボス12が突き当ることで、ズームレバー6の回転が規制される。また、円弧状穴部13に挿通されたズームレバー6のボス12は、板状の回転部材14に対してビス15で固定されている。よって、回転部材14は、ズームレバー6の回転軸を回転軸としてズームレバー6と一緒にズームレバー6と同じ角度だけ回転する。
【0019】
回転部材14には、支持部材10と同様に、ズームレバー6の軸部が挿通される穴部16が設けられている。回転部材14にはバネ掛け部19が設けられており、バネ掛け部19は、回転部材14の回転面に対して略直角に折り曲げられている。円部20aと円部20aから延伸した2本の腕部20bを有するコイルバネ20が、円部20aが支持部材10のボス(不図示)に挿通され、このボスに対してビスが嵌め込まれることにより、支持部材10に固定されている。このとき、コイルバネ20は、腕部20bが支持部材10に設けられた別の凸部(不図示)に当接すると共に、回転部材14のバネ掛け部19を挟持するように配設される。
【0020】
ズームレバー6の回転操作によって回転部材14が回転すると、回転部材14に設けられたバネ掛け部19に当接したコイルバネ20の腕部20bが変形する。この腕部20bの変形がズームレバー6の回転操作に対する復帰力となる。つまり、コイルバネ20はズームレバー6に対する付勢部材として機能し、撮影者がズームレバー6に加えた操作力である回転力を取り除くと、ズームレバー6はコイルバネ20により発生している復帰力によって停止位置に戻される。
【0021】
<回路基板の配置>
図4は、デジタルカメラ1を構成する上部ユニット9と回路基板とを示す正面図である。回路基板21は、できるだけ基板面積を大きく取ることができるように、光軸に対して直交するように配置されている。回路基板21には、デジタルカメラ1の動作制御や撮像信号処理等を行う各種の電子部品が実装される。
【0022】
特に、本実施形態では、回路基板21には、ズームレバー6の回転操作を検出する第1の検出手段22及び第2の検出手段23が実装されている。これら第1の検出手段22及び第2の検出手段23の回路基板21への実装形態及び動作形態については、後に詳細に説明する。
【0023】
レリーズボタン4の押し込み操作を検出する検出スイッチ24は、回路基板21の基板面に対して平行な方向の2段階の押し込み量を検出することができるように、回路基板21に実装されている。回路基板21には、複数のフレキシブル基板(不図示)が電気的に接続される。フレキシブル基板の例としては、デジタルカメラ1の背面に配置される各種操作部材を撮影者が操作したことを検出するスイッチ類を搭載したものや、撮像素子が実装され、回路基板21との間で撮像信号のやり取りを行うものが挙げられる。また、その他のフレキシブル基板として、撮影画像を変倍するズームレンズやフォーカス調整用のフォーカスレンズを所望の位置に駆動するためのモータ及び各種の動作制御のための検出センサ類を回路基板21に対して電気的に接続するもの等が挙げられる。
【0024】
<ズームレバーの回転を検出する機構の詳細>
図5は、回転部材14、第1の検出手段22及び第2の検出手段23の位置関係及び動作態様を示す図であり、図5(A)〜(C)のそれぞれについて、模式図(i)、上面図(ii)、側面図(iii)が示されている。なお、図5(A)に示した構成と図5(B),(C)に示した構成との対応は明確であるため、図5(B),(C)では参照符号の記載を省略している。
【0025】
本実施形態では、第1の検出手段22及び第2の検出手段23として、発光部と受光部とが一定の間隔で離間して配置された構造を有するフォトインタラプタを用いることとする。なお、第1の検出手段22及び第2の検出手段23は、フォトインタラプタに限定されることなく、他のスイッチやフォトリフレクタ等を用いてもよい。
【0026】
第1の検出手段22と第2の検出手段23とは、ズームレバー6の回転中心を通り、且つ、光軸と平行な軸に対して対称な位置に配置されている。図5(A)〜(C)(iii)に示されるように、回転部材14は、フォトインタラプタにおいて発光部と受光部(検出点28,29)との間に配置されている。そして、回転部材14の構造及び回転動作にしたがって発光部と受光部とを結ぶ光路における光の透過/遮光を切り替えることで、第1の検出手段22及び第2の検出手段23のそれぞれのオン/オフを切り替える。本実施形態では、第1の検出手段22及び第2の検出手段23は、それぞれの光路において光が透過する状態でオフ状態にあるものとし、それぞれの光路において光が遮られている状態でオン状態にあるものとする。
【0027】
図5(A)〜(C)の(i)に示されるように、回転部材14には2箇所の切り欠き部25が設けられており、回転部材14は、それぞれの切り欠き部25と回転中心と結んだ線によって区画される第1の羽部26と第2の羽部27とによって構成されている。
【0028】
図5(A)の(i)に図示するように、第1の検出手段22の検出点28と回転部材14の回転中心とを結ぶ線L1と、第1の検出手段22側の切り欠き部25に面した第1の羽部26の側辺26aとの成す角を“θ”とする。なお、第2の検出手段23の検出点29と回転部材14の回転中心とを結ぶ線L2と、第2の検出手段23側の切り欠き部25に面した第1の羽部26の側辺26bとの成す角も“θ”となる。
【0029】
第1の検出手段22の検出点28と回転部材14の回転中心とを結ぶ線L1と、第1の検出手段22側の切り欠き部25に面した第2の羽部27の側辺27aとの成す角を“θ”とする。なお、第2の検出手段23の検出点29と回転部材14の回転中心とを結ぶ線L2と、第2の検出手段23側の切り欠き部25に面した第2の羽部27の側辺27bとの成す角も“θ”となる。
【0030】
本実施形態では、これらの角度θ,θとの間に、“θ>θ”の関係が成立している。回転部材14の切り欠き部25の大きさは、回転部材14の回転軸に対して平行に投影した場合に、第1の検出手段22及び第2の検出手段23を避けた大きさとなっている(図5(A)〜(C)の(i)参照)。これにより、デジタルカメラ1に回路基板21を組付けた状態で上部ユニット9をデジタルカメラ1の上方から組付けるときに、回転部材14と第1の検出手段22及び第2の検出手段23とが干渉するのを防止することができる。
【0031】
回路基板21には、図5(A)〜(C)の(iii)に示されるように、回転部材14の回転時に回転部材14と回路基板21とが干渉するのを回避するためのスリット30が設けられている。第1の検出手段22はスリット30の一方端に位置するように、回路基板21に実装されている。第2の検出手段23はスリット30の他方端に位置するように、回路基板21に実装されている。撮影者がズームレバー6を所定の角度だけ回転させた際に、回転部材14の第1の羽部26及び第2の羽部27は、回路基板21のスリット30と第1の検出手段22及び第2の検出手段23のそれぞれのギャップ間(光路)とを干渉(接触)することなく通過する。
【0032】
次に、撮影者によるズームレバー6の回転操作を、操作角度に応じて2段階に検出する仕組みについて説明する。図5(B)に示されるように、ズームレバー6を図5(A)に示す停止位置から時計回り(第1の方向)に第1の回転角度として角度θだけ回転させると、回転部材14の第1の羽部26の側辺26aが第1の検出手段22の検出点28に到達し、第1の検出手段22の光路が遮られる。これにより、第1の検出手段22はオフ状態からオン状態に変わる。この状態では、第2の羽部27の側辺27bは第2の検出手段23の検出点29に到達していないので、第2の検出手段23の光路は遮られておらず、第2の検出手段23はオフ状態のままである。よって、第1の検出手段22のみが回転部材14の回転を検出したことになる。
【0033】
次に、図5(C)に示されるように、ズームレバー6を図5(A)に示す停止位置から時計回りに第2の回転角度として角度θだけ回転させると、回転部材14の第2の羽部27の側辺27bが第2の検出手段23の検出点29に到達し、第2の検出手段23の光路が遮られる。これにより、第2の検出手段23はオフ状態からオン状態に変わる。このとき第1の羽部26の側辺26aは、図5(B)に示す状態よりも時計回りに回転しているので、第1の羽部26によって第1の検出手段22の光路も遮られている。よって、第1の検出手段22及び第2の検出手段23の両方が回転部材14を検出したことになる。
【0034】
ズームレバー6を、時計回りとは反対の反時計回り(第2の方向)に回転させた場合も、上述した時計回りに回転させた場合と同様になる。すなわち、ズームレバー6を図5(A)に示す停止位置から反時計回りに角度θだけ回転させると、回転部材14の第1の羽部26の側辺26bが第2の検出手段23の検出点に到達し、第2の検出手段23の光路が遮られる。これにより、第2の検出手段23はオフ状態からオン状態に変わる。このとき、第2の羽部27の側辺27aは第1の検出手段22の検出点28に到達していないので、第1の検出手段22の光路は遮られず、第1の検出手段22はオフ状態のままである。よって、第2の検出手段23のみが回転部材14を検出したことになる。
【0035】
ズームレバー6を図5(A)に示す停止位置から反時計回りに角度θだけ回転させた場合、回転部材14の第2の羽部27の側辺27aが第1の検出手段22の検出点に到達し、第1の検出手段22の光路が遮られる。これにより、第1の検出手段22はオフ状態からオン状態に変わる。このとき、第1の羽部26の側辺26bは、反時計回りに回転しているので、第1の羽部26によって第2の検出手段23の光路も遮られている。よって、第2の検出手段23及び第1の検出手段22の両方が回転部材14を検出したことになる。
【0036】
このように、ズームレバー6の回転角の大きさの違いによって、回転部材14が第1の検出手段22及び第2の検出手段23のオン/オフの状態を切り替える構成を利用して、ズーム速度の2段切り替え制御を行う。
【0037】
<ズーム速度の切り替え制御フロー>
図6は、ズームレバー6の回転角によるズーム速度の2段切り替え制御を示すフローチャートである。また、図7は、デジタルカメラ1の制御系を示すブロック図、すなわち、図6のフローチャートに示される制御を行う制御系のブロック図である。
【0038】
図7に示されるように、デジタルカメラ1は、撮影部301、画像処理部302、記録部303、制御部304、操作部305及び表示部306を備えている。撮影部301には、撮影レンズ、撮影レンズを保持するレンズ鏡筒7、撮影レンズにより結像された被写体像を光電変換する撮像素子、撮像素子の駆動回路、撮像素子から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換器等が含まれる。画像処理部302は、撮影部301から出力されるデジタル画像信号に画像処理を施す。
【0039】
制御部304は、デジタルカメラ1の全体的な制御を行う制御回路を有しており、CPUやROM、RAM等を含む。記録部303は、画像処理部302より画像処理されたデジタル画像信号を不図示の記録媒体に記録する処理を行う。操作部305は、撮影者がデジタルカメラ1を操作するためのボタン等の操作キーを含み、ズームレバー6も操作部305に含まれる。ズームレバー6の操作が制御部304によって検出されると、制御部304は、撮影部301が有するレンズ鏡筒7を駆動するズーム制御を行う。表示部306はLCD等を有し、撮影画像の再生やメニュー画面等を表示する。なお、表示部306が有するLCD等にタッチパネル機能を付加して、操作部305としても機能させることができる。
【0040】
図6のフローチャートに示されるズーム速度の切り替え制御は、制御部304が有するCPUがROMに保存されているプログラムをRAMの作業領域に展開して実行することにより実行される。本実施形態では、ズームレバー6を時計回りに回転させると、広角側から望遠側へレンズ鏡筒7のズーム動作が行われ、ズームレバー6を反時計回りに回転させると、望遠側から広角側へレンズ鏡筒7のズーム動作が行われるものとする。
【0041】
最初に、制御部304は、デジタルカメラ1(レンズ鏡筒7)がズーム動作中かを判定する(ステップS201)。ステップS201の判定は、撮影部301において実行されているレンズ鏡筒7の実際のズーム動作に基づいて判定することができる。
【0042】
ズーム動作中ではない場合(S201:NO)、制御部304は、第1の検出手段22がオン(ON)したかを判定する(ステップS202)。ステップS202において第1の検出手段22がオンするときとは、既に説明した通り、回転部材14の第1の羽部26が第1の検出手段22の光路を遮ったときである。また、ステップS202において第1の検出手段22がオンするときとは、ズーム動作中ではないため、ズームレバー6が時計回りに角度θ以上角度θ未満(第1の回転角以上、第2の回転角未満)だけ回転したときである。
【0043】
よって、第1の検出手段22がオンした場合(S202:YES)、制御部304は、第1の速度で撮影レンズを広角側から望遠側にズーム動作させる制御を行い(ステップS203)、その後、処理をステップS201に戻す(リターン)。
【0044】
第1の検出手段22がオンしていない場合(S202:NO)、制御部304は、第2の検出手段23がオンしたかを判定する(ステップS204)。ステップS204において第2の検出手段23がオンするときとは、既に説明した通り、回転部材14の第1の羽部26が第2の検出手段23の光路を遮ったときである。また、ステップS204において第2の検出手段23がオンするときとは、ズーム動作中ではないため、ズームレバー6は反時計回りに角度θ以上角度θ未満だけ回転したときである。
【0045】
よって、第2の検出手段23がオンした場合(S204:YES)、制御部304は、第1の速度で撮影レンズを望遠側から広角側にズーム動作させる制御を行い(ステップS205)、その後、処理をステップS201に戻す(リターン)。第2の検出手段23がオンしていない場合(S204:NO)、ズームレバー6は停止位置から動いていないことになるため、制御部304は、処理をステップS201に戻す(リターン)。
【0046】
ステップS201でズーム動作中であると判定された場合(S201:YES)、制御部304は、動作中のズーム動作が広角側から望遠側への動作であるかを判定する(ステップS206)。ステップS206の判定は、撮影部301において実行されている撮影レンズの実際のズーム動作に基づいて判定することができる。広角側から望遠側へのズーム動作である場合(S206:YES)、制御部304は、第1の検出手段22がオン状態であるかを判定する(ステップS207)。
【0047】
ステップS207において第1の検出手段22がオン状態ではない場合とは、一度、時計回りに角度θ以上回転したズームレバー6が角度θ未満に戻された場合である。よって、第1の検出手段22がオン状態ではない場合(S207:NO)、制御部304は、ズーム動作を停止して(ステップS208)、その後、処理をステップS201に戻す(リターン)。一方、第1の検出手段22がオン状態である場合(S207:YES)、制御部304は、第2の検出手段23がオン状態であるかを判定する(ステップS208)。
【0048】
ステップS209において第2の検出手段23がオン状態ではない(オフ状態にある)場合とは、ズームレバー6の回転角度が時計回りに角度θ以上θ未満に維持されている場合である。よって、第2の検出手段23がオン状態ではない場合(S209:NO)、制御部304は、広角側から望遠側へのズーム動作を第1の速度で行って、処理をステップS201に戻す。
【0049】
ステップS209において第2の検出手段23がオン状態である場合とは、広角側から望遠側へのズーム動作の制御が行われている状態において、ズームレバー6の回転角度が時計回りに角度θ以上(第2の回転角以上)となっている場合である。よって、第2の検出手段23がオン状態である場合(S209:YES)、制御部304は、第1の速度よりも速い第2の速度で撮影レンズを広角側から望遠側にズーム動作させる制御を行い(ステップS210)、その後、処理をステップS201に戻す。
【0050】
制御部304は、ステップS206で動作中のズーム動作が広角側から望遠側への制御ではない(つまり、広角側への制御である)と判断すると(S206:NO)、第2の検出手段23がオン状態であるかを判定する(ステップS211)。第2の検出手段23がオン状態ではない場合とは、一度、反時計回りに角度θ以上回転したズームレバー6が角度θ未満に戻された場合である。よって、第2の検出手段23がオン状態ではない場合(S211:NO)、制御部304は、ズーム動作を停止して(ステップS212)、その後、処理をステップS201に戻す(リターン)。一方、第2の検出手段23がオン状態である場合(S211:YES)、制御部304は、第1の検出手段22がオン状態であるかを判定する(ステップS213)。
【0051】
ステップS213において第1の検出手段22がオン状態ではない場合とは、ズームレバー6の回転角度が反時計回りに角度θ以上θ未満に維持されている場合である。よって、第1の検出手段22がオン状態ではない場合(S213:NO)、制御部304は、望遠側から広角側へのズーム動作を第1の速度で行って、処理をステップS201に戻す。
【0052】
ステップS213において第1の検出手段22がオン状態である場合とは、望遠側から広角側へのズーム動作の制御が行われている状態において、ズームレバー6の回転角度が反時計回りに角度θ以上となっている場合である。よって、第1の検出手段22がオン状態である場合(S213:YES)、制御部304は、第1の速度よりも速い第2の速度で撮影レンズを望遠側から広角側にズーム動作させる制御を行い(ステップS214)、その後、処理をステップS201に戻す。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、ズームレバー6の停止位置を含む5つの位置を、第1の検出手段22と第2の検出手段23という2つの検出手段のみによって把握することができる。また、第1の検出手段22と第2の検出手段23を光軸に直交するようにデジタルカメラ1の正面に配置された回路基板21に実装することで、デジタルカメラ1の上面に余分な回路基板を削減することができる。こうして、デジタルカメラ1の小型化を実現すると同時に、製品コストを低く抑える(製品コストの上昇を抑える)ことができる。
【0054】
また、第1の検出手段22と第2の検出手段23とによってズームレバー6の位置を検出することにより、第1の速度での望遠側又は広角側へのズーム制御、第2の速度での望遠側又は広角側へのズーム制御およびズーム動作の停止制御を行うことができる。このとき、第2の速度を第1の速度よりも速い速度に設定することにより、即座に望遠側又は広角側にズームさせたいという撮影者の要望と、微妙なズーム量の調整を行いたいという撮影者の要望とを両立させることができる。
【0055】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0056】
例えば、本実施形態ではデジタルカメラについて説明したが、互いに異なる方向に操作されるレバーを備え、このレバーの操作量に応じて異なる信号を出力させるような構成を持った電子機器であれば同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 デジタルカメラ本体
6 ズームレバー
14 回転部材
20 コイルバネ
21 回路基板
22 第1の検出手段
23 第2の検出手段
25 切り欠き部
26 第1の羽部
27 第2の羽部
30 スリット
301 撮影部
304 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの光軸に対して直交する軸を中心として回転可能に配置された操作部材を有する撮像装置であって、
前記光軸と直交するように配置される回路基板と、
前記回路基板に実装され、前記操作部材の回転角度を検出する第1の検出手段及び第2の検出手段と、
前記操作部材と共に回転することによって前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段のオン状態とオフ状態とを切り替える回転部材と、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段のオン状態及びオフ状態に基づいてズーム速度を切り替える制御手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記回路基板には前記回転部材が配置されるスリットが形成され、前記第1の検出手段は前記スリットの一方端に位置するように前記回路基板に実装され、前記第2の検出手段は前記スリットの他方端に位置するように前記回路基板に実装されることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、フォトインタラプタ又はフォトリフレクタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の光路である前記フォトインタラプタ又はフォトリフレクタの光路が前記回転部材によって遮られるとオン状態となり、前記光路が前記回転部材によって遮られていない状態ではオフ状態となることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記操作部材に対して操作力が加わらない状態において前記操作部材を停止位置に保持する付勢部材を有し、
前記回転部材は、2箇所に設けられた切り欠き部と、前記切り欠き部と前記回転部材の回転中心とを結ぶ線によって区画される第1の羽部及び第2の羽部と、を有し、
前記操作部材が前記停止位置にあるときに、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は前記切り欠き部によってオフ状態にあり、
前記回転部材が前記停止位置から第1の方向に第1の回転角だけ回転したときに、前記第2の検出手段はオフ状態のまま、前記第1の検出手段は前記第1の羽部によってオン状態になり、前記回転部材が前記停止位置から前記第1の方向に前記第1の回転角より大きい第2の回転角だけ回転したときに、前記第1の検出手段は前記第1の羽部によってオン状態になり、前記第2の検出手段は前記第2の羽部によってオン状態になり、
前記回転部材が前記停止位置から前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記第1の回転角だけ回転したときに、前記第1の検出手段はオフ状態のまま、前記第2の検出手段は前記第1の羽部によってオン状態になり、前記回転部材が前記停止位置から前記第2の方向に前記第2の回転角だけ回転したときに、前記第2の検出手段は前記第1の羽部によってオン状態になり、前記第1の検出手段は前記第2の羽部によってオン状態になることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操作部材の操作によって、前記回転部材を前記第1の方向に回転させたときに広角側から望遠側へのズーム動作を行い、前記回転部材を前記第2の方向に回転させたときに望遠側から広角側へのズーム動作を行うことを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記回転部材の回転角度が、前記第1の回転角以上、且つ、前記第2の回転角未満の場合のズーム速度が、前記第2の回転角以上の場合のズーム速度よりも遅いことを特徴とする請求項5又は6に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−42205(P2013−42205A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175928(P2011−175928)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】