説明

撮影映像記録装置

【課題】撮影時に定期的に他の撮影映像記録装置と時刻同期を取る必要がなく、撮影後の各映像の編集作業をユーザーに容易に行なわせることが可能な撮影映像記録装置を提供する。
【解決手段】自身の時計と他の撮影映像記録装置の時計とを時刻同期した時点から所定期間のみ有効となる時刻IDを生成して、撮影した映像から得られる映像ストリームにこの時刻IDと他の撮影映像記録装置を識別する機器識別情報を挿入し記録媒体に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵時計を備えた撮影映像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ等の撮影映像記録装置には、時計が内蔵されている。この内蔵時計は、主に撮影時刻を記録するのに使用される。
【0003】
しかし、ビデオカメラの内蔵時計は、基準クロックの精度のばらつき等により誤差が生じる。従って、複数のビデオカメラそれぞれの内蔵時計が同一時刻となる保証は無い。すなわち、複数のビデオカメラ間で時刻同期が取れていることは期待できない。
【0004】
このように、時刻同期が取れていない複数のビデオカメラで撮影した映像を切り替えながら編集する場合、映像の切り替え時において、お互いの内蔵時計の誤差分だけ、編集する映像が前後してしまう可能性があった。
【0005】
これを解決するため、例えば特許文献1には、外部機器から通信により時刻情報を取得し、内蔵時計の時刻を補正することにより、複数のビデオカメラの内蔵時計を時刻同期させ、この時刻同期された内蔵時計の時刻情報をタイムスタンプとして、撮影した映像のビデオストリームに挿入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−25063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術によれば、複数のビデオカメラの内蔵時計を時刻同期させることができる。しかし、たとえ時刻同期させたとしても、各内蔵時計にはクロック精度のばらつき等による誤差が生じるので、定期的に時刻同期の処理を繰り返さない限り、いずれは時刻同期が外れることになる。
【0008】
定期的に時刻同期の処理を繰り返すためには、無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)を用いて複数のビデオカメラを常時接続させておく必要があるが、常時接続させると、消費電力が増加するという課題が発生する。また、撮影時の各ビデオカメラの使用エリアが、常時接続させるための無線が届く範囲に制限されるという課題も発生する。
【0009】
更には、複数のビデオカメラによって撮影された各映像を、HDD(Hard Disk Drive)等の大容量メモリに一旦コピーした後、PC(Personal Computer)で編集する場合、各映像が、どのビデオカメラで撮影されたものであるか、他のどの映像と時刻同期が取れているのか等の映像の時刻同期に関する属性情報が付加されていないため、ユーザーはそれらを認識できず、実質上編集が困難になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、下記の装置を提供するものである。
(1)撮影映像記録装置であって、
他の撮影映像記録装置と情報の送受信を行なう通信部と、(109)
被写体を撮影して撮影映像を得、この得られた撮影映像を映像ストリームとして出力する撮影部と、(101,103)
時刻を計時する時計部と、(108)
前記通信部を介して前記他の撮影映像記録装置と情報の送受信を行なって、前記時計部が計時する時刻に、前記他の映像記録装置が備える他の時計部が計時する時刻を同期させる第1の処理か、前記時計部が計時する時刻を前記他の時計部が計時する時刻に同期させる第2の処理か、いずれか一方の処理を行なう時刻同期部と、(107)
前記通信部を介して、前記撮影映像記録装置を識別する機器識別情報を前記他の撮影映像記録装置へ送信するとともに、前記他の撮影映像記録装置から前記他の撮影映像記録装置を識別する他の機器識別情報を受信し、
更に、前記時刻同期部が前記第1の処理を行なった場合は、予め設定された所定期間のみ有効とする第1の時刻識別情報を生成し、この生成した第1の時刻識別情報を前記他の撮影映像記録装置へ送信する一方、
前記時刻同期部が前記第2の処理を行なった場合は、前記他の撮影映像記録装置が生成した第2の時刻識別情報を受信し、この受信した第2の時刻識別情報を予め設定された所定期間のみ有効とする時刻識別情報生成及び送受信部と、(106)
前記第1又は第2の時刻識別情報と前記他の機器識別情報とを前記映像ストリームに所定周期で挿入するメタ情報挿入部と、(104)
前記第1又は第2の時刻識別情報が挿入された映像ストリームを記録媒体に記録するストリーム記録部と、(102)
を有することを特徴とする撮影映像記録装置。
(2)前記所定期間は、前記時刻同期部が前記第1又は第2の処理を行なって、前記時計部が計時する時刻と前記他の時計部が計時する時刻とを同期させた時点から、前記時計部が計時する時刻と前記他の時計部が計時する時刻とのずれが所定量に達する時点までの期間であることを特徴とする請求項1記載の撮影映像記録装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影時に定期的に他の撮影映像記録装置と時刻同期をとらなくても、撮影後の編集作業をユーザーに容易に行なわせることが可能となる。
【0012】
また、撮影時に定期的に他の撮影映像記録装置と時刻同期をとる必要が無いので、消費電力を抑えることが可能になるとともに、各撮影映像記録装置の使用エリアの制限を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の撮影映像記録装置の実施形態であるビデオカメラの構成例を示すブロック図である。
【図2】ビデオストリームに挿入する時刻情報と時刻IDとの様子を説明する図である。
【図3】時刻IDと相手機器IDと残り有効時間との関係を説明する図である。
【図4】本実施例の動作を説明する図である。
【図5】本実施例で撮影された映像の編集時の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の撮影映像記録装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の撮影映像記録装置の一実施形態であるビデオカメラ100の構成例を示すブロック図である。以下、この図1を用いて各構成を説明する。
【0016】
本ビデオカメラ100は、被写体を撮影する撮影部101、撮影部101から出力される撮影映像を、MPEG(Moving Picture Experts Group)2やMPEG4/AVC等の圧縮符号化方式で符号化してビデオストリームを得るエンコード部103、エンコード部103で符号化されたビデオストリームを記録するストリーム記録部102、符号化されたビデオストリームに、このビデオストリームの映像が撮影された時刻を示す時刻情報や時刻ID等のメタ情報を挿入するメタ情報挿入部104、時刻情報を得るための内蔵時計108、外部からの情報によって他の機器(例えばビデオカメラ)の内蔵時計と自分自身の内蔵時計との時刻同期を取る時刻同期部107、時刻同期部107が時刻同期を取るときにどちらかマスター機器になるかを決定して、時刻ID(詳細は後述する)を生成したり、この生成した時刻IDを他の機器へ送信したり、他の機器から時刻IDを受信したり、送受信された時刻IDをID記憶部105に記憶するとともに必要に応じて記憶した時刻IDを更新したりする時刻ID生成及び送受信部106、時刻IDを記憶するID記憶部105、時刻同期や時刻ID送受信のため、他の機器と通信する通信部109、ID記憶部105に記憶された時刻IDを管理し、時刻IDに付加された残り有効時間を監視して、残り有効時間が過ぎた時刻IDをID記憶部から削除するID管理部110などを含んで構成される。
【0017】
このうち、撮影部101、ストリーム記録部102、エンコード部103は、ビデオカメラにおいて一般的に具備される構成である。従って、詳細説明は省略する。なお、一般的に、ストリーム記録部102に記録されたデータは、メモリーカードやUSB(Universal Serial Bus)インターフェースなどを経由して、外部に取り出すことが可能である。
【0018】
次に、本発明の要部を説明する。
<時刻同期部107>
時刻同期部107について説明する。
【0019】
例えば、2台のビデオカメラ100を用いて任意の被写体を撮影する場合を考える。
【0020】
お互いのビデオカメラ100の内蔵時計108は、通常時は、他のビデオカメラの内蔵時計と時刻同期を取っていない。
【0021】
時刻同期の指示を外部から受けた場合、2台のビデオカメラの各時刻同期部107は、自身の内蔵時計108の方か、他のビデオカメラ100の内蔵時計108の方か、いずれか一方の内蔵時計108の時刻を補正することでお互いの時刻を合わせ、時刻同期をとる。このとき、補正される方の内蔵時計108を有するビデオカメラをスレーブ機器、参照される方の内蔵時計108を有するビデオカメラをマスター機器と呼ぶこととする。
【0022】
時刻同期部107の詳細動作を説明する。時刻同期の指示を外部から受けた場合、まず、お互いの時刻同期部107は、相手の時刻同期部107と、通信部109を介して、例えば、Bluetooth(登録商標)や無線LAN等のインターフェースを用いて接続する。
【0023】
次に、お互いの時刻同期部107は、自分がマスター機器なのかスレーブ機器なのかを示す情報を時刻ID生成及び送受信部106から取得する。なお、時刻ID生成及び送受信部106がマスター機器かスレーブ機器かを決定する方法に関しては後述する。
【0024】
そして、相互に内蔵時計108から取得した時刻情報を通信しあうことにより、お互いの内蔵時計108間の時刻のずれ量(差分値)を算出する。スレーブ機器側の時刻同期部107は、算出した差分値により自機の内蔵時計108の時刻を、マスター機器側の内蔵時計108の時刻に合うように補正する。なお、通信回線を介しての時刻情報の送受信においては、通信回線による情報伝達の遅延が発生することを考慮しなければならない。この情報伝達の遅延を解消する技術に関しては、従来から種々の方法が提案されており、どのような方法を用いても良い。
<時刻ID生成及び送受信部106>
時刻ID生成及び送受信部106について説明する。
【0025】
時刻ID生成及び送受信部106は、主に以下の3つの処理を行なう。
(1)時刻合わせを行なう2台のビデオカメラのうちどちらをマスター機器とするかを決定する処理。
(2)時刻IDを生成する処理。
(3)ID記憶部105に記憶した時刻IDを更新する処理。
【0026】
以下、上記3つの処理について詳細に説明する。
【0027】
まず、時刻合わせを行なうお互いのビデオカメラ100のID記憶部105に記憶されている時刻IDの数を比較する。そして、時刻IDの数の多い方をマスター機器と決定し、他方をスレーブ機器と決定する。なお、時刻IDの数が同数の場合は、どちらをマスター機器と決定しても構わない。
【0028】
次に、マスター機器の時刻ID生成及び送受信部106は、新しい時刻IDをひとつ生成する。時刻IDとは、ビデオカメラ間で新しく時刻同期を取る処理を行なう毎に1つ生成するIDである。
【0029】
この時刻IDは、一意性を有する必要がある。一意性のある時刻IDの生成方法としては、例えば、マスター機器の機器IDと撮影時刻情報とを用いて、ハッシュデータを生成する方法が考えられる。単に機器IDと撮影時刻情報とを組み合わせるだけでも一意性のある時刻IDを生成できる。しかし、この時刻IDは、撮影した映像とともにビデオストリームとしてストリーム記録部102にも記録される。ストリーム記録部102に記録されたビデオストリームは、再生時に装置の外部へ出力される場合がある。従って、機器IDが容易に第三者に認識されてしまわないように、ハッシュをかけることが望ましい。なお、時刻IDの生成に用いる時刻情報の精度は、1秒単位程度の精度でよい。これは、ユーザーが、1秒以内に複数の機器と時刻同期を取ることは実質無いと判断できるからである。
【0030】
時刻IDには、この時刻IDが有効である期間を示す残り有効時間を示す情報と時刻同期を取った相手の機器の機器IDとが対応付けられる。これらの情報の詳細については後述する。なお、これら対応付けられた各情報を、以後、時刻ID関連情報と総称する。
【0031】
次に、上記で説明したように、お互いのビデオカメラ100の時刻同期部107は時刻同期を行なう。スレーブ機器の時刻同期部107は自機の内蔵時計108の時刻をマスター機器の内蔵時計108の時刻に合わせる。
【0032】
その後、お互いのビデオカメラ100の時刻ID生成及び送受信部106は、ID記憶部105のデータの更新を行なう。
【0033】
マスター機器の時刻ID生成及び送受信部106は、今回新たに生成した時刻IDと、残り有効時間を示す情報の初期値と、事前に取得した相手機器ID(スレーブ機器の機器ID)とを、マスター機器のID記憶部105に追加記憶する。
【0034】
また、マスター機器のID生成及び送受信部106は、新たに生成した時刻IDと、
この時刻IDの残り有効時間の初期値と、自機(マスター機器)の機器IDとを、スレーブ機器の時刻ID生成及び送受信部106に送信する。
【0035】
スレーブ機器の時刻ID生成及び送受信部106は、自機(スレーブ機器)のID記憶部105に記憶していたデータをすべて消去して、マスター機器から受信した時刻IDと、相手機器ID(マスター機器の機器ID)と、残り有効時間の初期値とを組にしてID記憶部105に記憶する。
【0036】
なお、残り有効時間の初期値に関しては、予め複数のビデオカメラ間で共通の値に定めておく場合は、その共通の値をお互いのID記憶部105に設定すればよいので、マスター機器がスレーブ機器へその情報を送信しなくても良い。
<ID記憶部105>
ID記憶部105について説明する。
【0037】
ID記憶部105は、時刻ID関連情報を記憶する。
【0038】
図3は、このID記憶部に記憶する時刻ID関連情報を説明する図である。
【0039】
このID記憶部に記憶される時刻ID関連情報は、時刻IDと、相手機器IDと、残り有効時間とが対応付けられた情報である。
【0040】
相手機器IDは、時刻同期を取った相手のビデオカメラ100の機器IDである。ビデオカメラ100にもユニークな機器IDが必要であるが、これは無線LANやBluetooth(登録商標)等のインターフェースハードウェアに割り当てられているMAC(Media Access Control)アドレスを使用することで実現できる。なお、これに限らず機器ごとに一意性を有するIDであればどのようなものを用いても良い。
【0041】
残り有効時間は、対応する時刻IDの残り有効時間を示す。精度は1秒程度の精度で十分である。
【0042】
残り有効時間について更に詳細に説明する。
【0043】
ビデオカメラ100の内蔵時計108は、既に説明したように、基準クロックの精度のばらつき等により誤差が生じるので、常に時刻を基準時刻と合うように補正し続けない限り、一旦基準時刻に合うように補正したとしても、時間の経過と共に基準時刻とずれていく。
【0044】
残り有効時間とは、一度時刻同期を取った後、時刻の経過と共に基準時刻からずれていくずれ量が、編集映像として許容できない量になるまでの残り時間を示す。すなわち、一つの時刻IDに対応する残り有効時間と相手機器IDとを示す情報を参照すれば、その時刻IDによって確立された相手機器との時刻同期があとどのくらい有効であるのかを確認することができる。
【0045】
この残り有効時間の初期値の算出方法を説明する。
【0046】
例えば、映像編集に許容できるずれ量が、映像周期の2フレーム分とした場合を説明する。
【0047】
一般的に、ビデオカメラ100の内蔵時計108の精度は15ppm程度であり、この場合、月差3.9秒程度の誤差になる。
【0048】
この精度の内蔵時計108で、一旦時刻同期を取ってから、編集映像として許容できる2フレーム分の時間ずれ量(誤差量)を生じるまでの時間は、2フレームの周期は約67msecであるので、
67msec÷15ppm=4467sec≒75min
となる。
【0049】
つまり、時刻同期をとってから少なくとも75minで2フレームのずれが生じる可能性がある。
【0050】
以上から、時刻IDを生成したときに初期値として残り有効時間を4467secとする。なお、この初期値は、ユーザーが許容可能なフレーム数および、内蔵時計の精度に依存する値である。
<ID管理部110>
ID管理部110について説明する。
【0051】
ID管理部110は、減算タイマーを用いて、ID記憶部に記憶されている各時刻IDに対応する残り有効時間から経過時間を減算する更新を行い、残り有効時間が0になったら、ID記憶部からその時刻IDを削除する。
<メタ情報挿入部104>
メタ情報挿入部104について説明する。
【0052】
メタ情報挿入部104は、撮影した映像を符号したビデオストリームの中に、撮影時刻情報と時刻IDとを適切な時刻間隔でビデオストリームに挿入する。一般的にはGOP単位(500msec程度)で挿入するのが好適である。また、挿入する位置は、一般にユーザーが使用可能な領域とする。例えば、ISO/IEC13818-2 MPEG2 Videoの場合は、32ビットのuser_data_start_codeから始まるuser_data()フィールドへ挿入し、ITU-T H.264(MPEG4 AVC)の場合は、Supplemental Enhancement Informationを用い、sei_message()フィールド内のuser_data_unregistered()フィールドへ挿入することが考えられるが、これに限らず、圧縮符号化フォーマットによって適した領域を使用する。
【0053】
なお、時刻IDは、1つのみとは限らず、複数個ある場合もあるし、ひとつもない場合もある。
【0054】
また、撮影時刻情報は、絶対時刻を示す情報を用いる。協定世界時(UTC:Universal Time, Coordinated)を用いても良いし、ローカル時刻を用いても良い。時刻の精度は最低でも33msec以上とする。
【0055】
図2は、ビデオストリームに挿入する撮影時刻情報と時刻IDとを説明する図である。この図でわかる通り、メタ情報挿入部104は、まず、そのGOPに含まれる映像が撮影された時刻を示す情報を挿入し、次いで、そのGOPに含まれる時刻IDの総数を示す情報を挿入し、次いで、時刻IDそのものを順次挿入する。
<時刻同期処理>
次に、本実施例における時刻同期処理の具体的な内容について図4を用いて説明する。
【0056】
図4は、3台のビデオカメラ間で互いに時刻同期をとる場合の時刻IDと相手機器IDと残り有効時間との関係を説明する図である。
【0057】
ビデオカメラA、ビデオカメラB、ビデオカメラCには、それぞれ機器IDが付加されている。本説明では、例えば、ビデオカメラAの機器IDを437、ビデオカメラBの機器IDを541、ビデオカメラCの機器IDを869とする。
【0058】
外部からの指示によって、最初にビデオカメラAとBとの時刻合わせ操作が開始されると、まず、お互いのビデオカメラの通信部109は相手の通信部109との接続を確立する。
【0059】
次に、お互いのビデオカメラの時刻ID生成及び送受信部106は、ID記憶部105に記憶してある時刻IDを交換するとともに、どちらのビデオカメラをマスター機器とするかを決定する。この時点では、双方のビデオカメラとも時刻IDがひとつも記録されていないため、どちらをマスター機器としても良いが、ここではビデオカメラAをマスター機器とし、ビデオカメラBをスレーブ機器とする。
【0060】
次に、スレーブ機器であるビデオカメラBの時刻同期部107は、マスター機器であるビデオカメラAの内蔵時計108の時刻に合うようにビデオカメラBの内蔵時計108を補正する。
【0061】
次に、マスター機器であるビデオカメラAの時刻ID生成及び送受信部106は、時刻ID12345678を生成し、この生成した時刻ID12345678と、ビデオカメラBの機器IDである相手機器ID541と、残り有効時間4467との情報を自機であるビデオカメラAのID記憶部105に記憶するとともに、スレーブ機器であるビデオカメラBへ、生成した時刻ID12345678と、自機であるビデオカメラAの機器ID437と、残り有効時間4467との情報を送信する。スレーブ機器であるビデオカメラBの時刻ID生成及び送受信部106は、送信された時刻ID12345678と、ビデオカメラAの機器ID437と、残り有効時間4467との情報をビデオカメラBのID記憶部105に記憶する。なお、ビデオカメラAがビデオカメラBの機器ID541を取得するタイミングは、双方の通信が確立された後であればどのタイミングでも良い。
【0062】
ここで、残り有効時間は、初期値を4467Secとしているが、この初期値は許容するフレーム誤差および、内蔵時計の精度に依存した値となる。
【0063】
双方のビデオカメラのID管理部110は、上記のようにして、双方のビデオカメラのID記憶部105にそれぞれ記憶した時刻ID12345678の残り有効時間を1秒ごとに減算していく。
【0064】
次に、ビデオカメラAとビデオカメラBとが時刻同期されてから30分後、すなわち1800秒後に、外部からの指示によって、ビデオカメラBとビデオカメラCとの時刻合わせ操作が開始されると、お互いのビデオカメラの通信部109は相手の通信部109との接続を確立する
次に、お互いのビデオカメラの時刻ID生成及び送受信部106は、ID記憶部105に記憶してある時刻IDを交換するとともに、どちらのビデオカメラをマスター機器とするかを決定する。この時点では、ビデオカメラBに時刻ID12345678が記憶されており、ビデオカメラCには時刻IDが記憶されていないので、ビデオカメラBをマスター機器とし、ビデオカメラCをスレーブ機器とする。
【0065】
次に、スレーブ機器であるビデオカメラCの時刻同期部107は、マスター機器であるビデオカメラBの内蔵時計108の時刻に合うようにビデオカメラCの内蔵時計108を補正する。
【0066】
次に、マスター機器であるビデオカメラBの時刻ID生成及び送受信部106は、新規に時刻ID15000000を生成し、この生成した時刻ID15000000と、ビデオカメラCの機器IDである相手機器ID869と、残り有効時間4467との情報を自機であるビデオカメラAのID記憶部105に記憶するとともに、スレーブ機器であるビデオカメラCへ、生成した時刻ID15000000と、自機であるビデオカメラBの機器ID541と、残り有効時間4467との情報、及び、時刻ID12345678とビデオカメラAの機器IDである相手機器ID437と、残り有効時間2667との情報を送信する。
【0067】
スレーブ機器であるビデオカメラCの時刻ID生成及び送受信部106は、送信された時刻ID15000000と、ビデオカメラBの機器ID541と、残り有効時間4467との情報、及び、時刻ID12345678と、相手機器ID437と、残り有効時間2667との情報をビデオカメラCのID記憶部105に記憶する。なお、ビデオカメラBがビデオカメラCの機器IDを取得するタイミングは、双方の通信が確立された後であればどのタイミングでも良い。
【0068】
最初の時刻同期から約75分、すなわち4467秒経過したときに、時刻ID12345678の残り有効時間が0になり、ビデオカメラA、ビデオカメラB、ビデオカメラC、それぞれのID管理部110はID記憶部105に記憶してある時刻ID12345678の情報を削除する。削除は残り有効時間に基づいて、それぞれのビデオカメラのID管理部110が独立して行なうので、削除の際にビデオカメラ同士が通信する必要は無い。
<編集時の処理>
次に、以上のようにして時刻同期されたビデオストリームを編集する際の処理について図5を用いて説明する。
【0069】
ビデオカメラA、ビデオカメラB,ビデオカメラCで撮影され、それぞれのストリーム記憶部102に記録されたビデオストリームは撮影カットごとに別のビデオファイルになる。これは、図5の5001から5034に相当する。
【0070】
図5は、撮影時にXの時点でビデオカメラAとBとが時刻同期され、Yの時点でビデオカメラBとCとが時刻同期され、Xの時点でビデオカメラAとBとの時刻同期の残り有効時間が0になった場合の例である。図5の上部に記載されている時刻ID関連情報は、それぞれX、Y、Zの時点でのビデオカメラAのID記憶部105に記憶されていた内容を示している。同様に、図5の下部に記載されている時刻ID関連情報は、それぞれY、Zの時点でのビデオカメラCのID記憶部105に記憶されていた内容を示している。
【0071】
ビデオファイルには、適切な間隔でタイムコード(撮影時刻)と上記時刻ID関連情報のうち時刻IDと相手機器IDとが挿入されている。なお、時刻IDと相手機器IDとはかならず挿入されているとは限らない。
【0072】
まず、ビデオファイルをタイムコード順に整列させる。但し、このタイムコードは各々のビデオカメラの内蔵時計108によるものなので、同じタイムコードであっても実際に同じ時刻で撮影されたとは限らない。
【0073】
次に、タイムコードが重なるビデオファイルを選び、その時刻IDを調べる。
【0074】
図5では、ビデオファイル5001、5011、5031が同じタイムコードを含んでおり、このうち、ビデオファイル5001、5011が、同じ時刻ID12345678を含んでいる。
【0075】
従って、この2つのビデオファイルのタイムコードは時刻同期していると判断できる。
しかし、ビデオファイル5031には時刻ID12345678が含まれていないので、このビデオファイルはビデオファイル5001,5011とタイムコードが時刻同期されていない可能性が高いと判断できる。
【0076】
従って、ビデオファイル5001と5011とは、時刻同期していると判断できるので、編集時や再生時にこの2つのビデオファイルを違和感なく切り替えることが可能になる。しかし、ビデオファイル5031は他の2つのファイルと時刻同期されていない可能性が高いので、編集時や再生時のこのビデオファイルと他の2つのビデオファイルとを切替えると、映像が前後してしまって違和感がでる可能性が高い。
【0077】
同様に、ビデオカメラCで撮影したビデオファイル5032にはビデオファイル5003,5015等と同じ時刻ID12345678が含まれているので、編集時や再生時に違和感の無い切り替えが可能である。
【0078】
ビデオファイル5034は、時刻ID12345678が含まれていないので、ビデオカメラAで撮影したビデオファイル5006、5007とは同期を取ることができない。
【0079】
このように、ビデオストリーム(ファイル)に挿入された時刻IDを比較するだけで、その時点で違和感の無い切り替えが可能なビデオストリームを特定することが出来、ユーザーは簡単に違和感の無い編集や切り替え視聴ができるようになる。
【0080】
以上のように、2台のビオカメラ同士を順次時刻同期させたときに時刻ID関連情報で撮影した映像のビデオストリームも再生時もしくは編集時にビデオストリームのみの情報から、同期しているカメラの映像を切り替えて表示・編集することが出来る。
【0081】
上記の通り、本発明は、一度時刻同期を取った後、内蔵時計の精度が不十分で時刻が次第にずれる場合でも、あえて再度の時刻同期を取ることはしない。その代わりに、一度時刻同期を取った時点から時刻同期のずれが許容できない量になる時点までの期間を、時刻同期が取れていることを保証する有効期間とし、この有効期間を識別する時刻IDをお互いのビデオカメラで撮影した映像のビデオストリームに挿入する。
【0082】
これにより、撮影時に定期的に他の撮影映像記録装置と時刻同期をとらなくても、撮影後の編集作業をユーザーに容易に行なわせることが可能となる。
【0083】
また、撮影時に定期的に他の撮影映像記録装置と時刻同期をとる必要が無いので、消費電力を抑えることが可能になるとともに、各撮影映像記録装置の使用エリアの制限を無くすことが可能となる。
【0084】
なお、上記実施例は、有効期間のみ前記時刻IDをビデオストリームに挿入する例であるが、有効期間内は時刻IDとともに有効フラグビデオストリームに挿入し、有効期間が過ぎたら、時刻IDとともに無効フラグビデオストリームに挿入するように構成してももちろん構わない。
【符号の説明】
【0085】
100 ビデオカメラ
101 撮影部
102 ストリーム記録部
103 エンコード部
104 メタ情報挿入部
105 ID記憶部
106 時刻ID生成及び送受信部
107 時刻同期部
108 内蔵時計
109 通信部
110 ID管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影映像記録装置であって、
他の撮影映像記録装置と情報の送受信を行なう通信部と、
被写体を撮影して撮影映像を得、この得られた撮影映像を映像ストリームとして出力する撮影部と、
時刻を計時する時計部と、
前記通信部を介して前記他の撮影映像記録装置と情報の送受信を行なって、前記時計部が計時する時刻に、前記他の映像記録装置が備える他の時計部が計時する時刻を同期させる第1の処理か、前記時計部が計時する時刻を前記他の時計部が計時する時刻に同期させる第2の処理か、いずれか一方の処理を行なう時刻同期部と、
前記通信部を介して、前記撮影映像記録装置を識別する機器識別情報を前記他の撮影映像記録装置へ送信するとともに、前記他の撮影映像記録装置から前記他の撮影映像記録装置を識別する他の機器識別情報を受信し、更に、
前記時刻同期部が前記第1の処理を行なった場合は、予め設定された所定期間のみ有効とする第1の時刻識別情報を生成し、この生成した第1の時刻識別情報を前記他の撮影映像記録装置へ送信する一方、
前記時刻同期部が前記第2の処理を行なった場合は、前記他の撮影映像記録装置が生成した第2の時刻識別情報を受信し、この受信した第2の時刻識別情報を予め設定された所定期間のみ有効とする時刻識別情報生成及び送受信部と、
前記第1又は第2の時刻識別情報と前記他の機器識別情報とを前記映像ストリームに所定周期で挿入するメタ情報挿入部と、
前記第1又は第2の時刻識別情報が挿入された映像ストリームを記録媒体に記録するストリーム記録部と、
を有することを特徴とする撮影映像記録装置。
【請求項2】
前記所定期間は、前記時刻同期部が前記第1又は第2の処理を行なって、前記時計部が計時する時刻と前記他の時計部が計時する時刻とを同期させた時点から、前記時計部が計時する時刻と前記他の時計部が計時する時刻とのずれが所定量に達する時点までの期間であることを特徴とする請求項1記載の撮影映像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−182363(P2011−182363A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47524(P2010−47524)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】