説明

撮影装置の自動合焦方法、自動合焦装置、撮影装置

【課題】光軸方向において作用する重力がレンズ移動に影響を与えることを抑制し、従来に比して正確な合焦を可能とした撮影装置の自動合焦方法を提供する。
【解決手段】複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程と、前記複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する第2工程と、前記最適合焦位置に前記光学レンズの一部または全部を移動させることにより自動合焦させる第3工程とを備える撮影装置の自動合焦方法において、前記自動合焦時に光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うことを特徴とする自動合焦方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置の自動合焦方法に係り、詳しくは重力の影響を抑制した撮影方法、係る自動合焦方法を用いた合焦装置および係る合焦装置を備えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置に使用する写真レンズは、通常複数の光学レンズを組み合わせて構成されている。ピント合わせ(合焦)時においては構成している各光学レンズの一部または全部を光軸方向に移動させることにより、撮影対象にピントが合うように調整する。
【0003】
ところで、現在使用されている撮影装置の多くは、オートフォーカス(自動合焦)機能を有している。これは撮影装置が備える合焦装置を用いて、撮影者に代わって、撮影装置が合焦を行うものである。特に、小型のデジタル式撮影装置においてはコントラスト検出方式の自動合焦方法を用いることが多い。その一例を以下に説明する。
【0004】
コントラスト検出方式は、写真レンズの合焦領域全体について、上述の光学レンズの一部または全部の移動(以下、単に、「レンズ移動」という)を順に行い、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)等の撮像素子上に実際に結像させることにより像を得る。得られた各像を比較し、最もコントラストが大きくなった状態の像を合焦状態における像と判断する。この合焦状態における像が得られる位置まで、写真レンズを構成する光学レンズの一部または全部を移動させて、合焦が終了する。といった方法で合焦を行う。この方法は対象物(被写体)に赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度により距離を検出し合焦するアクティブ方式に比して、無限遠にも合焦する点、実際の結像された像を基に判断するため、合焦精度が高い点が優れている。
【0005】
ところで、上述の合焦を行う際に、光学レンズの移動をさせる必要があるが、係る移動に対して重力が影響することが知られている。そこで、合焦動作(フォーカス動作)の前後で光軸に対するレンズの傾斜を矯正する技術が提示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る発明によれば、「可動部を回転させることにより、レンズの傾きを矯正することができる。したがって、フォーカス動作前(初期位置)と、フォーカス動作後の2つの位置において、レンズの光軸に対する適切な姿勢を維持するレンズ駆動装置を提供することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―047683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、合焦時の重力の影響が問題となるのは、写真レンズの傾きだけではない。レンズ移動の方向に及ぼす重力の影響が大きく合焦精度に影響を及ぼす。例えば、光軸方向においてレンズ移動と同じ向きに重力が作用すれば、設定された移動量よりレンズ移動は大きくなる。逆に光軸方向においてレンズ移動と逆の向きに重力が作用すれば、設定された移動量よりレンズ移動は小さくなる。その結果、合焦状態における像が得られる位置にレンズ移動させることができなければ、合焦精度が悪化する。この光軸方向における重力の作用については特許文献1に提示された方法によっても矯正することができない。
【0008】
本発明はかかる実情に鑑みて成されたもので、光軸方向において作用する重力がレンズ移動に影響を与えることを抑制し、従来に比して正確な合焦を可能とした撮影装置の自動合焦方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動合焦方法は、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程と、前記複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する第2工程と、前記最適合焦位置に前記光学レンズの一部または全部を移動させることにより自動合焦させる第3工程とを備える撮影装置の自動合焦方法である。また、前記自動合焦時に光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うことを特徴とする。
上記構成によると、光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うため、上記従来に比して、正確な自動合焦が可能となる。
【0010】
本発明に係る自動合焦方法は、前記第1工程において、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最小繰出し位置から前記最大繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第1群の複数の測定データを取得し、該複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最大繰出し位置から前記最小繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第2群の複数の測定データを取得し、前記第2工程において、前記第1群の複数の測定データおよび前記第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することが好ましい。
【0011】
上記構成によると、複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には逆向きの移動による合焦状態の測定を行うため、いずれかの向きの移動による測定により、光軸方向に置ける重力の影響がより小さい結果を得ることができる。第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出するため、より精度の高い群の複数の測定データを選択することができる。また、係る精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0012】
本発明に係る自動合焦方法は、前記第1工程において、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最大繰出し位置から前記最小繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第2群の複数の測定データを取得し、該複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最小繰出し位置から前記最大繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第1群の複数の測定データを取得し、前記第2工程において、前記第1群の複数の測定データおよび前記第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することを特徴とすることも好ましい。
【0013】
上記構成によると、複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には逆向きの移動による合焦状態の測定を行うため、いずれかの向きの移動による測定により、光軸方向に置ける重力の影響がより小さい結果を得ることができる。第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出するため、より精度の高い群の複数の測定データを選択することができる。また、係る精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより、光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0014】
本発明に係る自動合焦方法は、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、前記第1群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定することも好ましい。
【0015】
上記構成によると、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、第1群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定するため、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う必要が発生しない。また、精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。更に、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う場合に比して、順向きの移動による合焦状態の測定のみで済むため、合焦速度を速くしうる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0016】
本発明に係る自動合焦方法は、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、前記第2群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を予め設定したことも好ましい。
【0017】
上記構成によると、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、第2群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定するため、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う必要が発生しない。また、精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。更に、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う場合に比して、順向きのみの測定で済むため、合焦速度を速くしうる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0018】
本発明に係る自動合焦方法は、前記第2工程において、前記複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することを特徴とすることも好ましい。
【0019】
上記構成によると、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出する。即ち、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置をそのまま最適合焦位置とするのではなく、前後のデータをも考慮して、最適焦点位置を算出する構成である。例えば、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置の前方の位置の測定値が、後方の測定値より大きかった場合、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置とその前方の測定位置との間の測定していない位置において最適な合焦位置が存在すると推定できる。合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより、かかる位置を最適合焦位置として算出することが可能となり、合焦精度を向上させることが可能となる。
【0020】
本発明に係る自動合焦方法は、前記第1工程における前記合焦状態の測定は、前記写真レンズの結像のコントラスト値を測定することにより行うことを特徴とすることも好ましい。
上記構成によると、合焦状態の測定は、前記写真レンズの結像のコントラスト値を測定することにより行うため、汎用な方法で行うことが可能となる。
【0021】
本発明に係る自動合焦装置は、上記の自動合焦方法を用いた自動合焦装置である。また、本発明に係る撮影装置は上記の自動合焦装置を用いた撮影装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、センサ等の別段の部材を追加することなく、レンズ移動の方向に及ぼす重力の影響を抑制し、従来に比して正確な合焦を可能とした撮影装置の自動合焦方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、撮影装置である携帯電話の閉じた状態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、撮影装置である携帯電話の開いた状態を示す模式図であるとともに、(a)は内面を示す斜視図であり、(b)は背面を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、(a)は写真レンズが最小繰出し位置に位置する状態の断面構造を示す断面図であり、(b)は写真レンズが最小繰出し位置に位置する状態の断面構造を示す断面図である。
【図5】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、レンズ駆動装置を搭載した携帯電話の構成を示す模式図である。
【図6】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、(a)は重力と反対向きに写真レンズを移動させる場合を説明する断面図であり、(b)は重力と同じ向きに写真レンズを移動させる場合を説明する断面図である。
【図7】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、自動合焦操作を示すフローチャートである。
【図8】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、自動合焦操作のうち、足踏み判断の方法を説明するフローチャートである。
【図9】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、自動合焦操作のうち、逆探索の方法を説明するフローチャートである。
【図10】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、自動合焦操作のうち、最適位置算出の方法を説明するフローチャートである。
【図11】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、移動可能範囲とステップ数の関係を示すグラフである。(a)は重力の影響を受けない場合のステップ数を示しており、(b)は移動の向きと反対向きに重力の影響を受けた場合のステップ数を示しており、(c)は移動の向きと同じ向きに重力の影響を受けた場合のステップ数を示している。
【図12】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン1の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図13】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン2の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン3の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図15】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン4の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン5の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図17】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン6の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図18】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン7の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図19】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン8の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【図20】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、パターン9の場合のステップとコントラストとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の撮影装置を具体化した携帯電話の一実施形態を図面を用いて説明する。図1に示すように、係る携帯電話はヒンジHを中心に折り畳む構成の電話である。図1は折り畳んだ状態を示す図であり前面には写真レンズ1aの一部であるカバーガラス9が露出している。図2(a)は、この携帯電話を開いて表示部81、操作部82を前面にした図である。図2(b)は、開いた携帯電話を背面から見た図である。撮影者は、このように携帯電話を開いた状態でカバーガラス9を撮影したい対象に向けて操作部82を操作することによりシャッターを切り、対象物を撮影することができる。
【0025】
次に、図3を参照して、写真レンズ1aを駆動するレンズ駆動装置1の全体構成について説明する。
図3に示すように、レンズ駆動装置1は、光軸方向に移動可能な写真レンズ1aと、写真レンズ1aに駆動力を与えるとともに、このレンズ駆動装置1が搭載される機器に固定される固定体1bとにより構成されている。このレンズ駆動装置1により、写真レンズ1aを光軸方向の移動させることにより、オートフォーカスが実現される。また、本実施形態のレンズ駆動装置1は、光軸方向の平面視において、約8.5mmの正方形に形成されており、レンズ駆動装置1の光軸方向の高さが、約3mmに形成されている。
【0026】
写真レンズ1aは、写真レンズ1aを構成する複数の光学レンズ
、複数の光学レンズを保持するレンズホルダRH、レンズホルダRHを保持する樹脂によって形成されたホルダ10、およびホルダ10に固定される複数の磁石20により構成されている。なお、本実施形態の磁石20は、互いに周方向に一定の距離を介して、レンズホルダRHを径方向外方より周方向に取り囲むようにホルダ10に4個固定されている。
【0027】
図3に示すように、固定体1bは、レンズ駆動装置1の外枠を構成するベース30及びケース40と、ベース30に固定されて、ホルダ10の光軸方向への移動をガイドするシャフト50と、電流が印加されることにより磁場を形成するコイル60とにより構成されている。また、コイル60の径方向の外側には、磁性体の鋼板によって形成された長方形の板状の磁性部材である磁性板70がベース30に固定されている。
【0028】
ベース30には、レンズ駆動装置1の外枠の下面を構成する基部31と、基部31より光軸方向に沿って延設される支柱部32とが設けられている。基部31は、光軸方向の平面視において、正方形に形成される。そして、支柱部32は、基部31の四隅にそれぞれ設けられている。また、基部31の中央位置には、円形の貫通孔である開口部33が形成されている。また、ベース30の周縁の2箇所には、2個の磁性板70が固定されている。具体的には、磁性板70は、ベース30の周縁を構成する各辺の中央位置に固定されている。
【0029】
ケース40は、レンズ駆動装置1の外側の側面及び上面を構成している。そして、ケース40は、コイル60の径方向の外側を外囲するようにベース30に取り付けられる。また、ケース40の上面には、シャフト50を挿入する2個の貫通孔41と、写真レンズ1aを挿通可能とする開口部42とが設けられている。
【0030】
シャフト50は、ベース30の基部31にそれぞれ固定されるとともに、ケース40の貫通孔41に挿入されることにより、光軸方向に沿うように保持される。このシャフト50には、ホルダ10が挿入される。そして、ホルダ10は、シャフト50に対して摺動可能とすることにより、シャフト50に沿って移動可能となる。即ち、写真レンズ1aは、シャフト50にガイドされて、光軸方向に移動する。
【0031】
コイル60は、ベース30の4個の支柱部の周囲に巻き付けられている。そして、コイル60に電流が印加されることにより、コイル60の周囲に磁場が発生する。この磁場と磁石20とにより、写真レンズ1aを光軸方向に移動させる力が発生する。
【0032】
次に、図4を参照して、レンズ駆動装置1の駆動動作について説明する。図4中の一点鎖線は、光軸方向を示す。図4(a)では、写真レンズ1aは、最小繰出し位置に位置している。具体的には、写真レンズ1aのホルダ10の下面が、ベース30の基部31の上面と接触している。写真レンズ1aが最小繰出し位置に位置しているとき、コイル60には、電流が印加されていない。
【0033】
次に、コイル60に電流が印加されると、写真レンズ1aは、図4(b)に示す位置まで移動する。より具体的には、コイル60に電流が流れることにより、コイル60の周囲に磁場が発生する。この磁場と磁石20とにより磁気回路が形成されて、写真レンズ1aを光軸方向の最大繰出し位置に向かい移動させる力が発生する。係る力により、写真レンズ1aは、図4(a)に示す最小繰出し位置から光軸方向の最大繰出し位置に向かい図4(b)の位置まで移動する。
【0034】
一方、コイル60に逆向きの電流が印加された場合、コイル60の周囲に上記とは逆向きの磁場が発生する。この磁場と磁石20とにより磁気回路が形成されて、写真レンズ1aを光軸方向の最小繰出し位置に向かい移動させる力が発生する。係る力によって、写真レンズ1aは、図4(b)の位置から最小繰出し位置に向かい移動する。
【0035】
以上のように、写真レンズ1aを光軸方向の最大繰出し位置向き及び最小繰出し位置向きに移動させることにより写真レンズ1aを目的位置に移動させることができる。なお、レンズを目的位置に移動させた後に、コイル60への電流の印加は遮断されるが、磁石20と磁性板70との間の磁力により、写真レンズ1aは目的位置に維持される。
【0036】
次に、図5を参照して、本実施形態における携帯電話のカメラモジュールの構成について説明する。
図5に示すように、レンズ駆動装置1のベース30側には、フィルタ2とイメージセンサ3とが配置されている。即ち、ベース30の光軸方向の下側には、フィルタ2とイメージセンサ3とが配置されている。
【0037】
フォーカス動作時、CPU(Central Processing Unit)5は、ドライバ6を制御して、写真レンズ1aを最小繰出し位置から予め設定された繰出し位置(ステップ)まで光軸方向において最大繰出し位置に向って移動させる。より具体的には、予め決められた時間だけコイル60へ印加することにより、最大繰出し位置向きに写真レンズ1aを移動させる。移動が完了すると、CPU5は、イメージセンサ3から入力される信号を処理して撮像画像のコンストラスト値を取得する。係る動作を写真レンズ1aが最大繰出し位置に達するまで繰り返し、最もコンストラストが大きくなる写真レンズ1aの繰出し位置(ステップ)を合焦位置として位置として取得し、RAM8に記憶する。次に、CPU5は、写真レンズ1aを取得した合焦位置に移動させる。係る方法により、オートフォーカスが実現される。
【0038】
ところで、携帯電話(撮影装置)は常に水平方向に向けて使用されるとは限らない。例えば、図6(a)に示すように、最大繰り出し位置が重力方向において上向きになるように携帯電話を向けて撮影をする場合、磁気回路による最大繰出し位置方向の力Fが加わる一方で、重力による力Gが最小繰出し位置方向に作用する。相反する方向に力が加わるため、写真レンズ1aは、想定されている位置よりも小さく最大繰出し位置方向に移動することとなる。
【0039】
また逆に、図6(b)に示すように、最大繰り出し位置が最小繰り出し位置に対して、重力方向において下向きになるように携帯電話を向けて撮影をする場合、磁気回路による最大繰出し位置方向の力Fに加えて、重力による力Gが最大繰出し位置方向に作用する。そのため、写真レンズ1aは、想定されている位置よりも大きく最大繰出し位置方向に移動することとなる。
【0040】
このようにいずれの場合においても、重力が光軸方向に作用すると、繰出し位置が想定される位置よりずれることとなり、合焦精度が低下する。本実施形態における合焦操作は重力方向および反重力方向における移動の状態を示す情報に基づいてオートフォーカス(自動合焦)の際における重力の影響を抑制することを特徴とする。その方法を以下に詳説する。
【0041】
図7〜10は、CPUが実際に行う合焦操作を示すフローチャートである。係る手順を踏むことにより、光軸方向に作用する重力の影響を抑制できる。手順につき、以下に説明する。
【0042】
まず、写真レンズを最小繰出し位置に移動させる。この位置が通常無限遠に焦点が合う位置となるよう調整されている(S1)。最小繰出し位置においてコントラストを測定した(S2)後、最大繰出し位置側に3ステップ移動させ(S3)、垂直同期(VSYNC)が取れているかどうかを確認(S4)した後、コントラスト値を取得する(S5)。ここで、3ステップ移動し、コントラスト値を取得する回数を減らすことにより、合焦時間を短縮している。
【0043】
この時点でコントラスト値が2サンプル取得されたため、足踏み判断を実施(S6)する。足踏み判断は図8に示したフローチャートにあるように、まず、得られたコントラスト値が有効なものであるか否かを判断し(S31)、有効なものでなければ、それまでに得られたコントラスト値に有効なものがあるか否かを判断(S31)する。何れのコントラスト値も有効でなければ、まだ有効なコントラスト値を取得していないのであるから、足踏みをしていないと判断する。一方、既に有効なコントラスト値を取得していれば、同一値がN回以上連続しているかどうかを判断する(S34)。
【0044】
ここで、有効なコントラスト値とは、合焦したと認められる最小限のコントラスト値であって、撮影装置ごとに任意に決定することが可能である。また足踏みとは既に最大移動量に達するなどの理由により、移動信号を発しても同じ位置に写真レンズが留まっている状態を示す。
【0045】
さて、足踏み判断を開始する直前に得られたコントラスト値が有効なコントラスト値であれば(S31:YES)、一つ前に取得されたコントラスト値との差分を取ることにより比較し(S32)、その差が別に定める規定値以下であれば(S33:YES)同一値が連続して得られているとして、同一値がN回以上連続しているかどうかを判断する(S34)。同一値がN回以上連続していれば(S34:YES)足踏み状態であるとの判断をし、同一値がN回以上連続していなければ(S34:NO)脚踏み状態ではないとの判断をする。また、一つ前に取得されたコントラスト値との差が別に定める規定値以下でなければ(S33:NO)同一値が連続して得られているとはいえないため、脚踏み状態ではないと判断する。
【0046】
このようにして足踏み判断が(S6)が終了し、足踏み(S7)が生じていると判断されば(S7:YES)逆探索の必要性の判断に(S9)に移る。一方、足踏み(S7)が生じていないと判断されれば(S7:NO)、検索を終了してよいか否かを判断する(S8)。例えば、規定の移動回数を満たしていれば、検索を終了してよいと判断できる。検索終了できなければ(S8:NO)、最大繰出し位置側に3ステップ写真レンズを移動させ(S3)一連のコントラスト取得および判断作業を繰り返す(S4〜S9)。検索終了できれば(S8:YES)逆探索の必要性の判断に(S9)に移る。
【0047】
逆探索の必要性の判断(S9)においては、図9に示すように、ROM7に記憶されたコントラスト値の有効範囲を確認すること(S41)をまず行ったうえで、得られたデータ数が規定値以下であるかどうかを判断する(S42)。得られたデータ数が規定数以下である場合(S42:YES)、写真レンズの移動の向きが水平方向に比して、下を向いている可能性が高いため、逆探索が必要と判断する。一方、得られたデータ数が規定数以上であると判断した場合(S42:NO)、逆探索は不要と判断する。
【0048】
図7に示すように、逆探索が不要であれば(S10:NO)、合焦最適位置を算出する(S20)。合焦最適位置の算出は図10に示すように、それまでに取得した、コントラスト値が最大であるステップの前後のステップにおけるコントラスト値を比較し(S51)、前後のコントラスト値が一致すれば(S52:YES)、コントラスト値が最大であるステップが合焦最適位置であると判断し、係る位置を算出する(S55)。一方、前後のコントラスト値が異なる場合は(S52:NO)、いずれのコントラスト値が大きいかを判断し(S53)、後に取得したコントラスト値が大きければ(S53:YES)、最適位置はコントラスト最大位置より1ステップ後の位置であると判断し、係る位置を算出する(S54)。逆に、前に取得したコントラスト値が大きければ(S53:NO)、最適位置はコントラスト最大位置より1ステップ前の位置であると判断し、係る位置を算出する(S56)。
【0049】
逆に、逆探索が必要と判断した場合は、図7に示すように、S1とは逆に最大繰出し位置へ移動し(S11)、S2〜S8と同様の操作を行った後(S12〜S18)、探索が終了(S18:YES)すれば、有効コントラスト値の数に基づいて有効探索経路を求める。より具体的には、最小繰出し位置から最大繰出し位置まで移動させた場合と、最大繰出し位置から最小繰出し位置まで移動させた場合とを比較し、いずれにおいて有効なコントラスト値が多いかを判断する。例えば、最小繰出し位置から最大繰出し位置まで移動させた場合に有効なコントラスト値が多い場合には、最小繰出し位置を開始位置として係る位置まで写真レンズをまず移動させる(S21)。次に、開始位置からS20によって算出した合焦最適位置へ写真レンズを移動させ(S22)ることにより、合焦動作が終了する。
【0050】
次に、上述の方法により、撮影装置の向きにかかわらず、正確な合焦が可能であることを、いくつかのパターンに分けて、グラフを用いて具体的に説明する。以下の説明において、いずれも合焦操作開始時において、写真レンズは最小繰出し位置にあり、最大繰出し位置へ向い移動する。つまり、最小繰出し位置から最大繰出し位置までが写真レンズの移動可能範囲である。光軸方向が水平である場合、図11(a)に示すように、写真レンズ1aは移動可能範囲を移動するのに24ステップで移動するように設定されている。かかる設定で、図6(a)のように写真レンズ1aを重力と反対向きに移動させると、写真レンズ1aを移動させようとする向きと反対向きに重力が働くため、1ステップの移動距離が光軸方向が水平である場合より小さくなる。その結果、移動可能範囲を移動するのに図11(b)に示すように30ステップかかることとなる。一方、図6(b)のように写真レンズ1aを重力と同じ向きに移動させると、写真レンズ1aを移動させようとする向きと同じ向きに重力が働くため、1ステップの移動距離が光軸方向が水平である場合より大きくなる。その結果、移動可能範囲を移動するのに図11(c)に示すように18ステップですむ。また、以下のパターンにおける測定値において、有効なコントラスト値の下限を100としている。
【0051】
〔パターン1〕
パターン1は撮影対象が撮影装置の下方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(c)に示した場合であり、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させた場合には、移動可能範囲を18ステップで移動する。フローチャート図7〜10に加え、図12および表1を参照し、以下に説明する。
【表1】

【0052】
表1の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0において取得した(S2)コントラスト値は100であり、3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値は112である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図10に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ12でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下し、ステップ18以後一定値となる。即ち脚踏み状態である(S7:YES,S34:YES)。
【0053】
ここで、ステップ18以後におけるコントラスト値は115であり、100以上であるので、有効なコントラスト値である(S41)。このように有効なコントラスト値が連続している状態は、同一位置でコントラスト測定を繰り返していると考えられる。即ち、既に写真レンズ最大繰出し位置に達していると判断される。結局、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18の計7データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0054】
逆探索は最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返すのであるが、図12に示す四角ドットのグラフからも判るように、測定値のデータ数が正探索時より多くなる。これは、重力に逆らって、写真レンズを移動させているため、1ステップあたりの移動量が小さくなっているためである。逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12,9,6,3,0の計11データが得られた。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0055】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の7データのうち、有効値はステップ0のデータを除く6データである。一方、第2群の11データのうち、有効値はステップ0のデータを除く10データである。そうすると、有効な測定データ数の多い第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することとなる。言い換えれば有効な探索経路は最大繰出し位置から最小繰出し位置となる。
【0056】
第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出方法は以下の通りである。まずコントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ18で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ15のコントラスト値は130でステップ21のコントラスト値は135であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ21のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ18に1を加えたステップ19であると算出する(S54)。
【0057】
上記のように第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ19の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0058】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0059】
〔パターン2〕
パターン2も撮影対象が撮影装置の下方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(c)に示した場合である。合焦範囲がパターン1に比して狭い点においてパターン1と異なっている。フローチャート図7〜10に加え、図13および表2を参照し、以下に説明する。
【表2】

【0060】
表2の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0において取得した(S2)コントラスト値は100であり、3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値も100である。更に3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値が110となる。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図13に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ12でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下し、ステップ18で100に戻り以後100のまま一定となる。即ち脚踏み状態である(S7:YES,S34:YES)。
【0061】
上述のように、ステップ18以後におけるコントラスト値は100であり、有効なコントラスト値ではない。そのため、コントラスト値が測定限界以下となったため同一値が繰り返し測定されるのか、既に写真レンズ最大繰出し位置に達しているのか客観的には判定できない。この場合においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ21以上のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18の計7データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0062】
逆探索は最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返すのであるが、四角ドットのグラフからも判るように、測定値のデータ数が正探索時より多くなる。これは、重力に逆らって、写真レンズを移動させているため、1ステップあたりの移動量が小さくなっているためである。逆探索時においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ6以下のデータを除いて考えると、逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12,9の計8データが得られた。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0063】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の7データのうち、有効値はステップ0,3,18の3データを除く4データである。一方、第2群の8データのうち、有効値はステップ30,27,6の3データを除く5データである。そうすると、有効な測定データ数の多い第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することとなる。言い換えれば有効な探索経路は最大繰出し位置から最小繰出し位置となる。
【0064】
第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を次のように算出する。まず、コントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ18で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ15のコントラスト値は130でステップ21のコントラスト値は135であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ21のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ18に1を加えたステップ19であると算出する(S54)。
【0065】
この場合においても、第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ19の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0066】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0067】
〔パターン3〕
パターン3も撮影対象が撮影装置の下方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(c)に示した場合である。合焦範囲がパターン2に比して更に狭い点においてパターン1および2と異なっている。フローチャート図7〜10に加え、図14および表3を参照し、以下に説明する。
【表3】

【0068】
表3の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0〜3において取得した(S2)コントラスト値は全て100である。更に3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)したステップ9におけるコントラスト値が150となる。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図14に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ9でコントラスト値最大となり、更に3ステップ移動させたステップ12ではコントラスト値は低下し、再び100となり、そのままステップ30まで一定となる。即ち脚踏み状態である(S7:YES,S34:YES)。
【0069】
上述のように、ステップ12以後におけるコントラスト値は100であり、有効なコントラスト値ではない。そのため、コントラスト値が測定限界以下となったため同一値が繰り返し測定されるのか、既に写真レンズ最大繰出し位置に達しているのか客観的には判定できない。この場合においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ15以上のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12の計5データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0070】
逆探索は最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返すのであるが、四角ドットのグラフからも判るように、測定値のデータ数は正探索の場合と同じである。これは、重力に逆らって写真レンズを移動させているため、1ステップあたりの移動量が小さくなっているものの、合焦範囲が極めて狭いため、グラフ上明確に現れなったためである。逆探索時においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ9以下のデータを除いて考えると、逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12の計7データが得られた。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0071】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の5データのうち、有効値はステップ0,3,9,15の4データを除く1データのみである。一方、第2群の8データのうち、有効値はステップ30,27,24,18の4データを除く1データのみである。そうすると、有効な測定データ数は同じであるので、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれに基づいて最適合焦位置を算出してもよいこととなる。言い換えれば、有効な探索経路は、最大繰出し位置から最小繰出し位置の経路と、最小繰出し位置から最大繰出し位置の経路のいずれでも良いこととなる。
【0072】
例えば、第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出するときは、以下のようになる。まず、コントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ15で最大値150を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ18のコントラスト値は100でステップ12のコントラスト値とも100であるため、同じ値である(S52:YES)。従って、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ15であると算出する(S55)。
【0073】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0074】
〔パターン4〕
パターン4も撮影対象が撮影装置の下方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(c)に示した場合である。最適合焦位置がかなり近接している、言い換えると、撮影対象がかなりレンズの近房にある点がパターン1〜3にと異なっている。フローチャート図7〜10に加え、図15および表4を参照し、以下に説明する。
【表4】

【0075】
表4の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0〜9において取得した(S2)コントラスト値は全て100である。更に3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)したステップ12におけるコントラスト値が122となる。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図15に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ15でコントラスト値135と最大となり、その後コントラスト値一定のまま脚踏み状態となる(S7:YES,S34:YES)。
【0076】
ここで、ステップ15以後におけるコントラスト値は135であり、コントラスト値の有効値は100以上であるので、有効なコントラスト値である(S41)。このように有効なコントラスト値が連続している状態は、同一位置でコントラスト測定を繰り返していると考えられる。即ち、既に写真レンズ最大繰出し位置に達していると判断される。結局、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15の計6データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0077】
逆探索は最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返すのであるが、四角ドットのグラフからも判るように、測定値のデータ数が正探索時より多くなる。これは、重力に逆らって、写真レンズを移動させているため、1ステップあたりの移動量が小さくなっているためである。逆探索時においても、逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12,9,6,3,0の計11データが得られた。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0078】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の6データのうち、有効値はステップ0,3,6,9の4データを除く2データである。一方、第2群の11データのうち、有効値はステップ18,15,12,9,6,6,0の7データを除く4データである。そうすると、有効な測定データ数の多い第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することとなる。言い換えれば有効な探索経路は最大繰出し位置から最小繰出し位置となる。
【0079】
第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を次のように算出する。まず、コントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ27で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ24のコントラスト値は130でステップ30のコントラスト値は135であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ30のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ27に1を加えたステップ28であると算出する(S54)。
【0080】
この場合においても、第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ28の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0081】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ28へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0082】
〔パターン5〕
パターン5も撮影対象が撮影装置の下方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(c)に示した場合である。最適合焦位置が無限遠に近いところにある、言い換えると、撮影対象がかなり撮影装置の遠方にある点がパターン1〜3と異なっている。フローチャート図7〜10に加え、図16および表5を参照し、以下に説明する。
【表5】

【0083】
表5の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0において取得した(S2)コントラスト値は135であり、3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値は132である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図16に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ0でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下し、ステップ9で基準値100となり以後一定値となる。即ち脚踏み状態である(S7:YES,S34:YES)。
【0084】
ここで、コントラスト値の有効値は100超えた値であるので、ステップ9以後におけるコントラスト値100は有効なコントラスト値(S41)ではない。そのため、コントラスト値が測定限界以下となったため同一値が繰り返し測定されるのか、既に写真レンズ最大繰出し位置に達しているのか客観的には判定できない。この場合においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ15以上のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9の計4データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0085】
逆探索は最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返すのであるが、四角ドットのグラフからも判るように、測定値のデータ数が正探索時より多くなる。これは、重力に逆らって、写真レンズを移動させているため、1ステップあたりの移動量が小さくなっているためである。逆探索時においても、逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12,9,6,3,0の計11データが得られた。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0086】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。上述のように、コントラスト値の有効値は100を超えた値である。従って、第1群の7データのうち、有効値はステップ9のデータを除く3データである。一方、第2群の11データのうち、有効値はステップ30〜12の7データを除く4データである。そうすると、有効な測定データ数の多い第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することとなる。言い換えれば有効な探索経路は最大繰出し位置から最小繰出し位置となる。
【0087】
第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を次のように算出する。まず、コントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ3で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ0のコントラスト値は135でステップ6のコントラスト値は130であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ0のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ3から1を減じたステップ2であると算出する(S54)。
【0088】
この場合においても、第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ2の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0089】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ2へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0090】
〔パターン6〕
パターン6は撮影対象が撮影装置の上方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(b)に示した場合である。フローチャート図7〜10に加え、図17および表6を参照し、以下に説明する。
【表6】

【0091】
表6の「最小→最大」欄に示すように、開始位置ステップ0において取得した(S2)コントラスト値は100であり、3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値は110である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図17に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ18でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下する。従って、脚踏み状態は発生しない(S7:NO,S33:NO)。
【0092】
この場合、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18,21,24,27,30の計11データであり、規定数の9より多い。従って、逆探索不要との結論に至る(S42:NO,S10:NO)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。この場合、逆探索を実施しないので、第2群の複数の測定データは発生しない。ここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0093】
次に、第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の11データのうち、有効値はステップ0のデータを除く10データである。
【0094】
第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出方法は以下の通りである。まずコントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ18で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ15のコントラスト値は130でステップ21のコントラスト値は135であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ21のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ18に1を加えたステップ19であると算出する(S54)。
【0095】
上記のように第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ19の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0096】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、正探索の開始位置である最小繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第1群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0097】
なお、実際には行わないのであるが、逆探索を行った場合に得られるグラフを三角ドットで参考のため表示している。この場合の有効値は6データであり、順探索のときに得られるデータ数より少ない。
【0098】
〔パターン7〕
パターン7も撮影対象が撮影装置の上方にあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きとは反対向きに重力の作用を受け、写真レンズを最大繰出し位置から最小繰出し位置に移動させる際には、移動の向きに重力の作用を受ける場合である。即ち、図11(b)に示した場合である。即ち、図11(b)に示した場合である。フローチャート図7〜10に加え、図18および表7を参照し、以下に説明する。
【表7】

【0099】
表8の「最小→最大」欄に示すように、開始位置であるステップ0からステップ9において取得した(S2)コントラスト値は100であり、更に3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値は125である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図18に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ18でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下するその後コントラスト値は低下し、ステップ27で基準値100となり最終ステップであるステップ30も同値である。しかし同値を2回繰り返しただけでは、足ふみとは判断されない(S7:NO,S34:NO)。また、ステップ30全てを終了しているので探索は終了している(S8:YES)。
【0100】
この場合においても、脚踏み状態となっている可能性があるステップ30のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18,21,24,27の計10データであり、規定数の9より多い。従って、逆探索不要との結論に至る(S42:NO,S10:NO)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。この場合、逆探索を実施しないので、第2群の複数の測定データは発生しない。ここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0101】
次に、第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の10データのうち、有効値はステップ0〜9のデータおよびステップ27,30のデータを除く5データである。
【0102】
第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出方法は以下の通りである。まずコントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ18で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ15のコントラスト値は130でステップ21のコントラスト値は135であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ21のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ18に1を加えたステップ19であると算出する(S54)。
【0103】
上記のように第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ19の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0104】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、正探索の開始位置である最小繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第1群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0105】
なお、実際には行わないのであるが、逆探索を行った場合に得られるグラフを三角ドットで参考のため表示している。この場合の有効値は4データであり、順探索のときに得られるデータ数より少ない。
【0106】
〔パターン8〕
パターン8は撮影対象が撮影装置と鉛直方向において同じ高さにあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受けることがない場合である。つまり水平方向に写真レンズを移動させた場合であり、図11(a)に示した場合である。フローチャート図7〜10に加え、図19および表8を参照し、以下に説明する。
【表8】

【0107】
表8の「最小→最大」欄に示すように、開始位置であるステップ0において取得した(S2)コントラスト値は100であり、3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した後のコントラスト値は111である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図19に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ15でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下し、ステップ24以降で115で一定となる。従って、足踏み発生と判断される(S7:YES,S34:YES)。
【0108】
この場合、脚踏み状態となっている可能性があるステップ27および30のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18,21,24の計9データであり、規定数の9に等しい。従って、逆探索不要との結論に至る(S42:NO,S10:NO)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。この場合、逆探索を実施しないので、第2群の複数の測定データは発生しない。ここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0109】
次に、第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。ここで、コントラスト値の有効値は100以上である。従って、第1群の9データのうち、有効値はステップ0のデータを除く8データである。
【0110】
第1群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出方法は以下の通りである。まずコントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ15で最大値137を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ12のコントラスト値は133でステップ18のコントラスト値は110であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ12のコントラスト値の方が大きいため(S53:NO)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ15から1を減じたステップ14であると算出する(S56)。
【0111】
上記のように第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ14の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0112】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、正探索の開始位置である最小繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ19へ移動させる。この工程が第3工程となる。第1群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0113】
なお、実際には行わないのであるが、逆探索を行った場合に得られるグラフを三角ドットで参考のため表示している。この場合も有効値は8データであり、順探索であっても、逆探索であっても同じデータ数が得られる。したがって、いずれで検索をした場合であっても、同等の精度で最適合焦位置を得られたものと考えられる。
【0114】
〔パターン9〕
パターン9も撮影対象が撮影装置と鉛直方向において同じ高さにあるため、写真レンズを最小繰出し位置から最大繰出し位置に移動させる際に、移動の向きに重力の作用を受けることがない場合である。つまり水平方向に写真レンズを移動させた場合であり、図11(a)に示した場合である。フローチャート図7〜10に加え、図20および表9を参照し、以下に説明する。
【表9】

【0115】
表9の「最小→最大」欄に示すように、開始位置であるステップ0〜3において取得した(S2)コントラスト値は100であり、更に3ステップ最大繰出し位置に向きに移動(S3)した第9ステップのコントラスト値は125である。このように写真レンズを3ステップずつ移動させるごとにコントラスト値を取得することにより、図20に示す三角ドットのグラフが得られる。このグラフによると、ステップ15でコントラスト値最大となり、その後コントラスト値は低下し、ステップ21以降で100で一定となる。従って、足踏み発生と判断される(S7:YES,S34:YES)。
【0116】
この場合、脚踏み状態となっている可能性があるステップ24,27および30のデータを除いて考えると、測定値のデータ数はステップ0,3,6,9,12,15,18,21の計8データであり、規定数の9より少ない。従って、逆探索必要との結論に至る(S42:YES,S10:YES)。このように最小繰出し位置から最大繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第1群の複数の測定データに該当する。
【0117】
最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、同様の操作を繰り返す逆探索によって、ステップ30,27,24,21,18,15,12の計7データが得られ、ステップ9,6,3,0においてコントラスト値100で足踏みしている。このように最大繰出し位置から最小繰出し位置へ写真レンズを移動させることによって取得された一群のデータが第2群の複数の測定データに該当する。またここまでの操作が、複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程に該当する。
【0118】
次に、第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する(S19)。上述のように、コントラスト値の有効値は100を超えた値である。従って、第1群の8データのうち、有効値はステップ0〜6のデータおよび21を除く4データである。一方、第2群の7データのうち、有効値はステップ30および12の2データを除く5データである。そうすると、有効な測定データ数の多い第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することとなる。言い換えれば有効な探索経路は最大繰出し位置から最小繰出し位置となる。
【0119】
第2群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を次のように算出する。まず、コントラスト値最大となる位置を見つける。この場合ステップ21で最大値140を得ている。次にその前後のコントラスト値を比較する(S51)。ステップ18のコントラスト値は128でステップ24のコントラスト値は132であるため、異なる値である(S52:NO)。更に、ステップ24のコントラスト値の方が大きいため(S53:YES)、最適合焦位置は、コントラスト値が最高であったステップ21に1を加えたステップ22であると算出する(S54)。
【0120】
この場合においても、第2工程において、複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより実際にコントラスト値を測定していないステップ28の位置を最適合焦位置と算出することができる。つまり、実際には3ステップ毎11の位置しかコントラスト値を測定していないにもかかわらず、0ステップ〜30ステップの31のいずれの位置について合焦位置とすることができる。従って、全31の位置についてコントラスト値を測定する場合に比べて、合焦精度の低下を抑制しつつ、合焦速度を高速化できる。
【0121】
最適合焦位置が算出(S20)されると、有効検索経路の開始位置、即ち逆探索の開始位置である最大繰出し位置に写真レンズを移動させ(S21)、そこから改めて、最適合焦位置であるステップ28へ移動させる。この工程が第3工程となる。第2群の複数の測定データを測定したときと同じ方向に写真レンズを移動させるため、移動時における光軸方向に作用する重力も同様となるため、正確な移動が可能となる。
【0122】
このように、撮影対象がそれぞれ撮影装置の鉛直方向下向きにある場合、上向きにある場合、水平方向にある場合について、有効なデータ数を確保して、合焦動作をすることがわかる。また、説明の便宜のため、端的な場合に限定して説明したが、例えば、撮影対象がそれぞれ撮影装置の鉛直方向下向きと水平方向との中間位置にある場合、および撮影対象がそれぞれ撮影装置の鉛直方向上向きと水平方向との中間位置にある場合、についても同様に考えることが可能である。
【0123】
上記実施形態のレンズ装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、上記構成によると、光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うため、上記従来に比して、正確な合焦が可能となる。
【0124】
(2)上記実施形態では、複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には逆向きの移動による合焦状態の測定を行うため、いずれかの向きの移動による測定により、光軸方向に置ける重力の影響がより小さい結果を得ることができる。第1群の複数の測定データおよび第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出するため、より精度の高い群の複数の測定データを選択することができる。また、係る精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0125】
(3)上記実施形態によると、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出する。即ち、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置をそのまま最適合焦位置とするのではなく、前後のデータをも考慮して、最適焦点位置を算出する構成である。例えば、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置の前方の位置の測定値が、後方の測定値より大きかった場合、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置とその前方の測定位置との間の測定していない位置において最適な合焦位置が存在すると推定できる。合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより、かかる位置を最適合焦位置として算出することが可能となり、合焦精度を向上させることが可能となる。
【0126】
(4)上記実施形態によると、合焦状態の測定は、前記写真レンズの結像のコントラスト値を測定することにより行うため、汎用な方法で行うことが可能となる。
【0127】
(5)本発明に係る自動合焦装置は、上記の自動合焦方法を用いた自動合焦装置である。また、本発明に係る撮影装置は上記の自動合焦装置を用いた撮影装置である。
【0128】
(第2の実施形態)
次に、本発明の撮影装置を具体化した携帯電話の第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の合焦方法を変更したのみの構成であり、基本的構造等は全て同一である。従って、携帯電話の構造、基本的な合焦方法を含む同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0129】
第2の実施形態においては、光軸方向が水平である場合、写真レンズ1aは移動可能範囲を移動するのに39ステップで移動するように設定されている。かかる設定で、図6(a)のように写真レンズ1aを重力と反対向きに移動させると、写真レンズ1aを移動させようとする向きと反対向きに重力が働くため、1ステップの移動距離が光軸方向が水平である場合より小さくなる。その結果、移動可能範囲を移動するのに48ステップかかることとなる。一方、写真レンズ1aを重力と同じ向きに移動させると、写真レンズ1aを移動させようとする向きと同じ向きに重力が働くため、1ステップの移動距離が光軸方向が水平である場合より大きくなる。その結果、移動可能範囲を移動するのに30ステップですむのである。
【0130】
このように、写真レンズ1aを重力と同じ向きに移動させた場合、即ち、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、第1の実施形態において最大のステップ数であった30ステップを確保できるため、正検索のみで第1群の複数の測定データのデータ数が規定数より大きくなる。従って、逆検索の必要は生じない。その結果、撮影装置と撮影物との位置関係にかかわらず、正検索のみの測定で済むため、合焦速度を速くしうる。
【0131】
上記実施形態のレンズ装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、上記構成によると、光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うため、上記従来に比して、正確な合焦が可能となる。
【0132】
(2)上記実施形態では、光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、第1群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定するため、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う必要が発生しない。また、精度の高い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出ことにより光軸方向に置ける重力の影響を抑制することができる。更に、逆向きの移動による合焦状態の測定を行う場合に比して、順向きのみの測定で済むため、合焦速度を速くしうる。ここで、規定数は要求される合焦精度に基づいて任意に決めることができる。
【0133】
(3)上記実施形態によると、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出する。即ち、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置をそのまま最適合焦位置とするのではなく、前後のデータをも考慮して、最適焦点位置を算出する構成である。例えば、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置の前方の位置の測定値が、後方の測定値より大きかった場合、合焦状態の測定値の最大値が得られた位置とその前方の測定位置との間の測定していない位置において最適な合焦位置が存在すると推定できる。合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することにより、かかる位置を最適合焦位置として算出することが可能となり、合焦精度を向上させることが可能となる。
【0134】
(4)上記実施形態によると、合焦状態の測定は、前記写真レンズの結像のコントラスト値を測定することにより行うため、汎用な方法で行うことが可能となる。
【0135】
(5)本発明に係る自動合焦装置は、上記の自動合焦方法を用いた自動合焦装置である。また、本発明に係る撮影装置は上記の自動合焦装置を用いた撮影装置である。
【0136】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、最小繰出し位置から最大繰出し位置に向って、測定を繰り返す正探索を先に行っているが、他の構成であっても良い。即ち、最大繰出し位置から最小繰出し位置に向って、測定を繰り返す逆探索を先に行っても良い。
【0137】
・また、第2の実施形態は、正探索のみを行い、逆検索を行う必要がない構成としているが、他の構成であっても良い。即ち逆検索のみを行い、正検索を省略できる構成としても良い。係る構成であっても、第2群の複数の測定データのデータ数が規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定するため、繰出し最小位置から繰出し最大位置への移動による合焦状態の測定を行う必要が発生しない。
【0138】
・上記実施形態における撮影装置は、写真レンズ全体を移動させる構成としているが、他の構成であっても良い。写真レンズの設計によっては、写真レンズを構成する光学レンズの一部を移動させて自動合焦させることも可能である。かかる構成とすれば、いわゆるインナーフォーカス設計が可能となり、写真レンズの全長が変化しない扱いやすい撮影装置とすることが可能となる。
【0139】
・上記実施形態における撮影装置は、コントラスト検出方式を採用しているが、他の方式の合焦方法を採用しても良い。コントラスト検出方式と同じパッシブ方式であるパッシブ外光方式を用いても良いし、赤外線や超音波を用いたアクティブ方式を採用しても良い。いずれの方式で合焦を判断した場合であっても本実形態の方法を適用することにより、移動方向に働く重力の影響を抑制しうる。
【0140】
・上記実施形態における撮影装置は、携帯電話であるが、他の構成であっても良い。コンパクトデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラであってもよいし、銀塩写真用のカメラであっても良い。また、動画撮影用のデジタルビデオカメラやフィルムカメラに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、撮影装置の自動合焦方法に係り、詳しくは重力の影響を抑制した撮影方法、係る自動合焦方法を用いた合焦装置および係る合焦装置を備えた撮影装置に関するため、産業上広く利用可能である。
【符号の説明】
【0142】
1…レンズ駆動装置、1a…写真レンズ、1b…固定体、2…フィルタ、3…イメージセンサ、6…ドライバ、7…ROM、8…RAM、9…カバーガラス、10…ホルダ、30…ベース、31…基部、32…支柱部、33…開口部、40…ケース、41…貫通孔、42…開口部、50…シャフト、60…コイル、70…磁性板、81…表示部、82…操作部、F…力、G…力、H…ヒンジ、RH…レンズホルダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学レンズを備える写真レンズの該複数の光学レンズの一部または全部を、最小繰出し位置と最大繰出し位置との間の複数位置に、光軸方向において移動させるとともに合焦状態を測定することを複数回行うことにより複数の測定データを取得する第1工程と、
前記複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出する第2工程と、
前記最適合焦位置に前記光学レンズの一部または全部を移動させることにより自動合焦させる第3工程とを備える撮影装置の自動合焦方法において、
前記自動合焦時に光軸方向に働く重力の影響の抑制を行うことを特徴とする自動合焦方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最小繰出し位置から前記最大繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第1群の複数の測定データを取得し、該複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最大繰出し位置から前記最小繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第2群の複数の測定データを取得し、
前記第2工程において、前記第1群の複数の測定データおよび前記第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の自動合焦方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最大繰出し位置から前記最小繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第2群の複数の測定データを取得し、該複数の測定データのデータ数が規定数より少ない場合には、前記光学レンズの一部または全部を光軸方向において前記最小繰出し位置から前記最大繰出し位置に向って移動させるとともに、合焦状態を測定することを複数回行うことにより第1群の複数の測定データを取得し、
前記第2工程において、前記第1群の複数の測定データおよび前記第2群の複数の測定データのいずれか有効な測定データ数の多い群の複数の測定データに基づいて最適合焦位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の自動合焦方法。
【請求項4】
光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、前記第1群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を設定したことを特徴とする請求項2に記載の自動合焦方法。
【請求項5】
光軸方向に働く重力の影響が最大である場合においても、前記第2群の複数の測定データのデータ数が前記規定数より大きくなるように、測定データを取得する回数を予め設定したことを特徴とする請求項3に記載の自動合焦方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記複数の測定データのうち、合焦状態の測定値の最大値とその前後における測定値に基づいて最適合焦位置を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動合焦方法。
【請求項7】
前記第1工程における前記合焦状態の測定は、前記写真レンズの結像のコントラスト値を測定することにより行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動合焦方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動合焦方法を用いた自動合焦装置。
【請求項9】
請求項8に記載の自動合焦装置を用いた撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−93378(P2012−93378A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41416(P2009−41416)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】