説明

撮影装置及び再生装置

【課題】高速度撮影処理において、センサ出力であるRAWデータから動画圧縮するまでの処理時間を短縮する。
【解決手段】RAWデータを直接動画像圧縮するに当たり、RAWデータをRAWデータ分割回路101にて色成分毎に分割後、再構成回路102により各色成分をスライス単位として1フレームの画像を再構成し、かつスライスの一つを用いて動き検出回路103にて動き検出を行い、検出された動きベクトルを用いて各スライスを並列に動画圧縮回路104で処理することで、動画像圧縮の処理量と処理時間、消費電力のピークを低減することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速度撮影装置及び高速度撮影された圧縮データを再生する再生装置に関し、特に撮影時の1フレーム処理に要する処理量削減と、高速度動画圧縮時の省電力化を目的とする信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年デジタル動画像圧縮技術の進歩により、動画像圧縮記録の分野でもアナログ記録からデジタル記録へ遷移し、デジタル動画圧縮の適用範囲が広がっている。動画記録メディアとしてDVDやハードディスク装置への記録時の動画圧縮技術MPEG−2を始め、地上波テレビ放送ではH.264(MPEG−4 AVC)の技術が採用されている。同時に、動画撮影時の圧縮技術としてもMPEG−4やH.264が採用され、家電製品であるデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラへの搭載が進んでいる。
【0003】
一方、デジタルビデオカメラの動画撮影時の機能として、通常撮影に加え暗闇に対応したモードの機能が追加されているように、各社の独自性を打ち出している。その追加機能の一つ技術として高速度撮影がある。高速度撮影に対応したビデオカメラは以前から存在していたが、撮影時のフレームレートを追求することで高コストとなり、そのため主に専門分野で使用されてきた。高速度撮影技術を家電製品であるデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラに搭載するに当たり、専門分野で要求されているより低いフレームレートをターゲットとする事で、家電製品としてのコストの範囲内に収めている。
【0004】
デジタルビデオカメラ及びデジタルスチルカメラで動画を撮影する際の信号の流れを説明すると、まずCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の受光素子を持つセンサで光電変換を行なう。この際、各受光素子では色の識別能力がないため、受光素子毎にカラーフィルタを適用する事でカラー撮像を実現している。ただし、1画素に付きRGBの3原色のカラーフィルタを用いると素子の規模が大きくなるため、一般的にはベイヤ(Bayer)配列と呼ばれる1画素1原色に対応した配置となっている。ベイヤ配列の例を図2に示す。
【0005】
このベイヤ配列で受光した色信号をRAWデータと呼び、RAWデータからデモザイク処理を行なう事でフルカラー画像を作成する。デモザイク処理とは注目する1画素のRAWデータとその周辺画素のRAWデータを用いて色補完処理を行い、注目する1画素をRGBの3原色に変換する(例えば、特許文献1参照)。場合によってはRGBの3原色ではなく、動画像圧縮に適したYUVフォーマットに直接変換することもある。
【0006】
ここで、RAWデータは補完処理の基礎データとなるため、補完後のR・G・Bのそれぞれの分解能と比較して、RAWデータの分解能は大きくなっている。例えば補完後のRが8ビットに対し、RAWデータでのRは12ビットの分解能の場合がある。
【0007】
補完後のRGB若しくはYUV画像は動画像圧縮後に記録メディアに記録される。再生装置は圧縮された動画像を再生(復号)し、表示装置に合わせた画像フォーマットに変換し表示する(例えば、非特許文献1)。
【0008】
高速度撮影を行なう場合、センサから出力されたRAWデータを処理して動画像圧縮処理までの時間が非常に短い為、対応策として2つの対応策が考えられる。まず1つ目として、画像を圧縮せず一時的にメモリへ蓄積する。撮影終了後にメモリに書き込んだ画像を動画圧縮する。これによりリアルタイムでの処理時間の制約を外すことが可能である。メモリの位置によりセンサ出力を蓄積する場合もあれば、最近はセンサの受光素子毎にメモリを直結したカメラも存在する(例えば、非特許文献2)。
【0009】
2つ目として、RAWデータを直接圧縮対象とすることで処理時間を短縮する方法が考えられる。RAWデータを直接圧縮する方法は、すでに静止画撮影時で用いられる技術である(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−128583号公報
【特許文献2】特開2005−286415号公報
【特許文献3】特開2003−125209号公報
【非特許文献1】高橋 聖夫、外3名,「高画質MPEG−4方式デジタルムービーカメラ」,三洋電機技報,三洋電機株式会社,平成17年6月,Vol.37 No.1 通巻第76号 P.16)
【非特許文献2】北村和也、外10名,「30万画素超高速度高感度カメラ」,高速度撮影とフォトニクスに関する総合シンポジウム2005東京,平成17年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記の技術により高速度撮影を用いる場合、メモリに一時的に蓄積する方式だとメモリ容量により蓄積するフレーム数に制約が発生する。また、非圧縮の画像を蓄積するため、必要とするメモリ容量が大きくなり、それはコストへ直接反映する。
【0011】
また、上記のRAWデータを直接圧縮する方式であっても、動画像圧縮では静止画圧縮と比較し処理量が多いため、さらに高速度のフレームレートを上げる場合には、動画像圧縮の高速処理が必要となり、高速処理を実現するために回路規模増加に伴うコスト増加や消費電力の増大が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明ではRAWデータを直接動画像圧縮するに当たり、センサから出力されたベイヤ配列になったRAWデータを色成分毎に分割後、各色成分をスライス単位として1フレームの画像を再構成し、かつスライスの一つを用いて動き検出を行い、検出された動きベクトルを用いて各スライスを並列に処理することで、動画像圧縮の処理量と処理時間、消費電力のピークを低減することを可能とする。
【0013】
また動画再生時に復号画像後のスライス単位となっている色成分RAWデータをベイヤ配列に並び替え、色補完を行なうことで再生画像を生成することを可能とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサから出力されたRAWデータを高速に並列処理し動画像圧縮を行なうことで、高速度撮影のフレームレートを上げることができ、かつ処理量と消費電力のピークを低減することができる。
【0015】
また動画再生時は通常速度での処理となることで色補完処理の速度を抑えることができ、撮影時に色補完処理を行なう場合と比較して回路面積と消費電力のピークを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1を示す高速度撮影及び再生装置の構成図である。
【0018】
図1の高速度撮影装置100は、RAWデータ分割回路101、再構成回路102、動き検出回路103、動画像圧縮回路104により構成され、再生装置200は、動画像復号回路201、画像復元回路202、色補完回路203により構成されている。
【0019】
かかる構成によれば、まずセンサより出力された図2に示すようなベイヤ配列のRAWデータを、RAWデータ分割回路101にて色成分毎に分割する。図3に分割の例を示す。一般的なベイヤ配列の場合、RGBG(G成分はR列とB列にそれぞれ存在し、G列のG成分をGr、B列のG成分をGbとすることもある)の4つのデータが存在するため、4つの色成分のRAWデータに分割する。各色成分のRAWデータは、再構成回路102によりスライス単位として扱われフレームを再構成する。フレーム再構成の例を図4に示す。
【0020】
再構成されたフレームは動画像圧縮回路104にて圧縮されるが、動画圧縮技術について、まず一般的な例としてMPEG−4を用いて説明する。図5(a)が、MPEG−4での圧縮を行なう場合の構成である。原画像が入力されると、まず動き検出部301が既に符号化された参照画像と原画像を用いて動きベクトルを検出する。動き補償部306は参照画像と動きベクトルを用いて差分画像を生成し、DCT302部にて離散コサイン変換され、さらに量子化部303にて量子化後、可変長符号化部307にて可変長符号化処理を受け、動きベクトル等の付加情報と共にビットストリームが生成される。同時に、次の参照画像を生成するために逆量子化部304で逆量子化、IDCT部305で逆離散コサイン変換を行い、動き補償部306にて次の参照画像が生成される。
【0021】
本発明での、動き検出回路103と動画像圧縮回路104の構成例を図6に示す。動き検出回路103は、再構成回路102で再構成されたスライス単位のRAWデータの一つをRAWデータ選択部1031で選択する。どのスライスを選択するかは外部からの選択信号を受け選択してもよいし、常に固定のスライスを選択してもよい。選択されたスライスのRAWデータと同じスライスの参照画像を参照画像選択部1032でメモリから読み出し、動き検出部1033にて動き検出を行い、動きベクトルを算出する。動画圧縮回路104は、スライスの数と同じ数だけのスライス単位動画圧縮部1040と1つの符号合成部1041で構成される。スライス単位動画圧縮部1040は、動き検出回路103で検出された動きベクトルを共有化し、該当するスライスのRAWデータと参照画像をそれぞれ再構成回路102とメモリから取得し動画圧縮を行なう。スライス毎に符号化された符号化データは、符号合成部1041にて1フレームの符号化データに合成され出力される。
【0022】
このような構成と処理を行なうことにより、RAWデータでの動画圧縮処理の並列処理が可能となり、センサ出力から動画圧縮までの時間短縮を図ることができる。また動き検出回路を1つにして動きベクトルを共通化することにより、通常の並列化と比較して回路面積削減と処理量削減を図ることが出来る。
【0023】
次に動画圧縮データを再生する手順を図1を用いて説明する。再生装置200は、上記の動画圧縮回路により圧縮された符号化データを動画復号回路201にて復号する。復号処理の例として、MPEG−4を用いて説明する。図5(b)がMPEG−4での復号を行なう場合の構成例である。符号化されたデータが入力されると、可変長復号部308にて可変長復号を行なう。可変長復号されたデータは、逆量子化部304にて逆量子化処理、IDCT部305にて逆離散コサイン変換処理を受け、動き補償306にて動き補償を行い画像が復号される。今回の動画圧縮データでは、復号された画像は図4に示すような各色成分をスライスとしたRAWデータが復号される。続いて画像復元回路202で、復号した各色成分のRAWデータを元のベイヤ配列に従った形に並び替える。色補完回路203は、ベイヤ配列のRAWデータに色補完処理を行い、フルカラー画像若しくは表示に適した画像フォーマット(RGBやYUVフォーマット)に変換する。
【0024】
このような構成と処理を行なうことにより、上記の高速度撮影装置で撮影し圧縮された動画像を復号し、表示することができる。
【0025】
高速度撮影をリアルタイムで動画像圧縮するためには、高速度のフレームレートに従った処理が要求される。そのため撮影時の処理を軽くする事により、特に消費電力のピークを抑えることができる。今回の発明では、RAWデータから色補完を行なう処理を復号時に行なっているが、これは高速度撮影された動画はスローモーションで再生される事が前提のため、復号時のフレームレートは通常と同じスピードに設定される。例えば、高速度撮影の撮影時のフレームレートを1000fps(frame per second)とした場合でも、復号時には表示に合わせた30fpsで表示することになるため、色補完を行なう回路の動作スピードを低くすることができ、回路規模と消費電力を抑えることが可能となる。
【0026】
本発明では画像データとしてRAWデータを用いているが、これは通常のMPEG−4やH.264で用いられるYUVフォーマットとは異なる。通常のYUVフォーマットでは、YUVがそれぞれ8ビットの分解能で表現され、かつYUVそれぞれで符号化される。ただしRAWデータが12ビットの分解能の場合、例えばH.264のプロファイルの一つであるHigh4:4:4を用いると、このプロファイルはYUVが12ビットの分解能を持つため、このプロファイルに対応した符号化器及び復号器を用い、かつRAWデータをY(輝度)データとし、Yデータのみの画像として取り扱うことで、通常の撮影に用いる符号化器及び復号器と共通化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる高速度撮影及び再生装置の技術は、高性能な動画圧縮装置を要求しないためコストを抑えることができ、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラへ高速度撮影技術を適用した場合でも、安価に適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】高速度撮影と再生を行なう本発明の高速度撮影及び再生装置の構成図
【図2】イメージセンサでのベイヤ配列RAWデータの配置図
【図3】センサ出力とRAWデータ分割回路の出力の関係を表す図
【図4】再構成回路により再構成されたRAWデータの画像を表す図
【図5】MPEG−4での動画符号化及び復号化の処理を行なう構成図
【図6】本発明の動き検出回路と動画圧縮回路の構成図
【符号の説明】
【0029】
100 高速度撮影装置
101 RAWデータ分割回路
102 再構成回路
103 動き検出回路
1031 RAWデータ選択部
1032 参照画像選択部
1033 動き検出部
104 動画圧縮回路
1041 符号合成部
200 再生装置
201 動画復号回路
202 画像復元回路
203 色補完回路
301 動き検出部
302 DCT部
303 量子化部
304 逆量子化部
305 IDCT部
306 動き補償部
307 可変長符号部
308 可変長復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから出力されたRAWデータを色成分毎に分割するRAWデータ分割部と、
前記RAWデータ分割部で分割された各色成分のRAWデータをスライス単位としてフレームを再構成する再構成部と、
前記再構成部で再構成された各スライスのRAWデータのうち一つのスライスのRAWデータを選択し動き検出を行う動き検出部と、
前記動き検出部で検出した動きベクトルと前記再構成部で再構成された各スライスのRAWデータを用いて動画圧縮を行なう動画圧縮部と
を備えた撮影装置。
【請求項2】
前記動き検出部は、
前記再構成部で再構成された各スライスから一つを選択するRAWデータ選択部と、
動き検出の参照画像を選択する参照画像選択部と、
前記RAWデータ選択部で選択されたスライスのRAWデータと前記参照画像選択部で選択された参照画像により動き検出を行う動き検出部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の高速度撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮影装置により圧縮されたデータから動画を再生する再生装置であって、
前記撮影装置で圧縮した圧縮データを復号する動画像復号部と、
前記復号したデータをスライス単位に分割し各スライスを各色成分に応じたRAWデータとして撮像時の配列に並べ替える画像復元部と、
前記画像復元回路により復元されたRAWデータから色補完を行い、表示用画像を作成する色補完部と
を備える再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−147508(P2010−147508A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105604(P2007−105604)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】