説明

撮影装置

【課題】変えるべきでない色を維持しつつ提示に適した色変換を撮影画像に行える撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被写体を撮影して撮影画像を得るスコープで得られた撮影画像に対して色変換を施す画像処理回路250と、その画像処理回路250による色変換を経た色で上記の撮影画像を表示するモニタ300と、モニタ300の表示色のうちの一部の色に対する修正が入力操作によって入力され、その入力された修正を画像処理回路250による色変換に包括的に反映させる、反映に際し、予め特定されている色範囲については反映を抑制する計算部212とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影して撮影画像を得る撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療の分野においては、先端にCCDなどが取り付けられた細長い管を被検体の体内に挿入し、被検体の体内を撮影して腫瘍や血栓などを観察する内視鏡装置が広く利用されている。このような内視鏡装置によれば、被検体の体内を直接撮影することによって、被検体に外的なダメージを与えることなく、放射線画像では分かりにくい病巣の色や形状などを把握することができ、治療方針の決定などに必要な情報を手軽に得ることができる。
【0003】
ここで、内視鏡装置は、撮影箇所を照らす照明用の光源を備えており、その光源が発する光が光ファイバー等で撮影箇所まで導かれ、撮影はその光の照明下で行われる。従来、内視鏡装置の分野では、光源として、ハロゲン光源が多く用いられてきたが、近年では、明るさ等において優れているキセノン光源が主流となってきている。ところが、内視鏡装置を使用する医師の中には、ハロゲン光源による照明下での色に慣れ、キセノン光源を用いた内視鏡装置で得られる撮影画像の色に違和感を覚える者も多い。
【0004】
そこで、キセノン光源を用いた内視鏡装置で得られる撮影画像を、あたかもハロゲン光源による照明下で得られたような色に変換する色変換を施してから医師に提示するという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−142002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内視鏡装置で撮影される被検体の体内の色には個人差があり、そのような個人差が医師の診断の妨げとなることがある。さらに、診断に最適な色が、診断を行う医師によって異なることもある。ここで、一見すると、上記の特許文献1の技術を適用すれば、内視鏡装置で得られる撮影画像の色を、各医師の診断に最適な色に変換する色変換を行うことも可能のように思われる。しかしながら、特許文献1の技術では、色変換を定義する色変換定義を予め用意しておいて、撮影時にはその色変換定義を使って色変換が行われているため、そのような色変換定義を不特定多数の被検体や医師について予め用意することは事実上不可能である。
【0006】
さらに、内視鏡装置で得られる撮影画像中には、例えば血管等の色といった、色についての共通のイメージが医師の間で定着しており、不用意に変えてもらっては困るとの見解が持たれている色がある。しかしながら、特許文献1の技術では、このような見解とは無関係に色変換が行われてしまう。
【0007】
このような色変換に関する問題は、ここまでに説明した内視鏡装置では特に顕著であるが、内視鏡装置以外でも、撮影画像に色変換を施して撮影者等に提示する撮影装置では一般的に生じ得る問題である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、変えるべきでない色を維持しつつ提示に適した色変換を撮影画像に行える撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の撮影装置は、
被写体を撮影して撮影画像を得る撮影部と、
上記撮影部で得られた撮影画像に対して色変換を施す色変換部と、
上記色変換部による色変換を経た色で上記撮影画像を表示するモニタと、
上記モニタの表示色のうちの一部の色に対する修正が入力操作によって入力される修正入力部と、
上記修正入力部で入力された修正を上記色変換部による色変換に包括的に反映させる、反映に際し、予め特定されている色範囲については反映を抑制する修正反映部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この本発明の撮影装置によれば、ユーザは、上記モニタの表示色のうちの一部の色に対する所望の修正を入力することにより、撮影画像の表示色を所望の色に変更することができる。さらに、上記修正反映部によって、その色の変更が、上記特定されている色範囲については抑制されるので、変えるべきでない色について変更を抑制してその色を維持させることができる。つまり、本発明の撮影装置によれば、変えるべきでない色を維持しつつ提示に適した色変換を撮影画像に行うことができる。
【0011】
ここで、本発明の撮影装置において、
「上記撮影部は、先端に撮像素子を保持したチューブ形状を有し、その撮像素子を上記被写体まで運び、その撮像素子でその被写体からの光を受光することで上記撮影画像を得るものである」という形態は典型的な形態である。
【0012】
この典型的な形態は、被検体内部の被写体を撮影する内視鏡装置に対応した形態である。
【0013】
また、本発明の撮影装置において、
「上記修正入力部は、上記モニタ上に表示されている撮影画像中から選択操作によって選択される表示色に対する修正目標の表示色が入力操作によって入力されるものである」という形態は好ましい形態である。
【0014】
この好ましい形態の撮影装置によれば、上記修正の始点となる表示色と、終点となる修正目標の表示色とを容易に指定することができる。
【0015】
また、本発明の撮影装置において、
「上記色変換部が、上記色変換を定義した色変換定義を与えられ、その色変換定義に従った色変換を上記撮影画像に施すものであり、
上記修正反映部は、上記色変換定義を修正し、修正後の色変換定義を上記色変換部に与えるものである」という形態も好ましい形態である。
【0016】
この好ましい形態の撮影装置によれば、上記色変換定義を介することで、上記表示色についてユーザが所望する修正を、簡単かつ確実に色変換に反映させることができる。
【0017】
また、本発明の撮影装置において、
「上記修正反映部が、上記修正入力部で入力された修正に基づいて作成する、包括的な抑制無しの修正を定義した修正定義と、予め与えられている、上記色範囲における抑制の程度を定義した抑制定義とを用いて、上記色変換部による色変換に修正を反映させるものである」という形態も好ましい。
【0018】
この好ましい形態の撮影装置によれば、ユーザからの入力操作に基づいて作成された修正定義で定義された修正を、上記抑制定義で定義された程度で抑制するという一連の処理により、ユーザの所望が反映され、かつ、一部の色についてはそのまま維持するという色変換を確実に行うことができる。
【0019】
また、本発明の撮影装置において、
「この撮影装置に対する複数種類の利用環境それぞれに対応付けて、上記色範囲が互いに異なる複数の上記抑制定義を記憶した抑制定義記憶部と、
上記複数種類の利用環境のうちの1つの利用環境を選択する環境選択部と、
上記修正反映部が、上記環境選択部によって選択された利用環境に対応付けられて上記抑制定義記憶部に記憶されている抑制定義を用いて、上記色変換部による色変換に修正を反映させるものである」という形態も好ましい。
【0020】
例えば内視鏡装置による撮影は、患部の切除や色素による着色等といった、色に影響を与えることが予測される様々な利用環境下で行われることが多い。そして、各利用環境によって撮影画像中で維持すべき色が異なることが多い。上記の好ましい形態の撮影装置によれば、複数の利用環境毎に上記抑制定義が用意されており、色変換時には、利用環境に対応した抑制定義が使われる。その結果、利用環境に対応した色を維持する好ましい色変換が可能となる。
【0021】
また、本発明の撮影装置において、
「上記修正定義を記憶する、複数個の修正定義の記憶が可能な修正定義記憶部と、
上記修正定義記憶部に記憶されている修正定義のうち選択操作に応じた1つの修正定義を選択する修正定義選択部とを備え、
上記修正反映部が、上記修正定義選択部によって修正定義が選択された場合に、その選択された修正定義と上記抑制定義とを用いて上記色変換部による色変換に修正を反映させるものである」という形態も好ましい。
【0022】
この好ましい形態の撮影装置によれば、過去に作成された修正定義が記憶され、再利用することが可能なので効率的である。また、この修正定義は、色変換に使われる色変換定義と一対一に対応し色変換を間接的に表わすものであるが、データ量に関しては、修正内容しか含んでいないため色変換定義よりも少ない。この好ましい形態の撮影装置によれば、過去の修正の再現が、このデータ量の少ない修正定義を記憶しておくことで行われるので、この点でも効率的である。
【0023】
また、本発明の撮影装置において、
「上記修正反映部が、上記色変換に対する上記修正の反映度合いを調整操作に応じて調整するものである」という形態も好ましい形態である。
【0024】
この好ましい形態の撮影装置によれば、上記調整操作によって、表示色に対する修正を適宜に強めたり弱めたりすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明によれば、変えるべきでない色を維持しつつ提示に適した色変換を撮影画像に行える撮影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態である内視鏡装置を示す図である。
【0028】
この図1に示す内視鏡装置10は、本発明にいう撮影装置の一例に相当し、被検体の内部に挿入されその内部の被写体を撮影して撮影画像を得るスコープ100と、スコープ100で得られた撮影画像に各種の画像処理等を施すプロセッサ200と、プロセッサ200における画像処理等を経た撮影画像を表示するモニタ300とを備えている。スコープ100は、本発明にいう撮影部の一例に相当し、モニタ300は、本発明にいうモニタの一例に相当する。
【0029】
スコープ100は、チューブ形状を有し、そのチューブ形状の先端に、被写体からの光を受光するCCD110を保持している。CCD110は、本発明にいう撮像素子の一例に相当し、被写体からの光を受光することでその被写体の像をあらわす動画のアナログ画像データを生成する。スコープ100は、さらに、相関二重サンプリング(CDS)、アナログデータを適宜に増幅する自動利得制御(AGC)、および、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換を行うスコープ側信号処理回路120を備えている。CCD110で生成された動画のアナログ画像データは、CDS、AGC、およびA/D変換を経て、動画のデジタル画像データに変換される。そして、その動画のデジタル画像データが、プロセッサ200に渡される。また、スコープ100には、このスコープ100の型番等の各種情報を記憶するEEPROM130と、各種ユーザ操作を受け付ける操作ボタン140も備えられている。
【0030】
プロセッサ200には、スコープ100の各構成要素の動作を含む、この内視鏡装置10全体の制御を行うCPU210と、各種制御プログラムや制御に必要な各種情報やデジタル画像データを記憶するメモリ220とが備えられている。また、本実施形態では、各種情報やデジタル画像データの記憶を外部メディアMに行うことも可能であり、プロセッサ200には、外部メディアMへの記憶や外部メディアMからの読出しを制御するメディア制御部230が備えられている。さらに、プロセッサ200には、CPU210の指示によりガンマ補正等といった信号処理を行うプロセッサ側信号処理回路240と、プロセッサ側信号処理回路240による画像処理を経た画像に、後述の各種画像処理を施す画像処理回路250と、その各種画像処理済みの画像をモニタ300に表示する表示制御回路260と、各種ユーザ操作を受け付けるキーボード270とを備えている。
【0031】
このプロセッサ200では、スコープ100から渡された動画のデジタル画像データがプロセッサ側信号処理回路240に入力され、プロセッサ側信号処理回路240による信号処理及び画像処理回路250による画像処理を経て、処理済みのデジタル画像データが表わす動画が、表示制御回路260によってモニタ300に表示される。
【0032】
次に、上記の画像処理回路250で実行される各種画像処理について説明する。
【0033】
図2は、画像処理回路250で実行される画像処理の流れを示す図である。
【0034】
画像処理回路250では、スコープ100から動画のデジタル画像データが渡されると、そのデジタル画像データが表わす画像からノイズを除去するノイズ処理(ステップS11)が実行され、次いで、画像の階調を好ましい階調に変換する階調変換処理(ステップS12)が実行される。さらに、それらの処理を経た画像の色を表わす色データを、そのモニタ300の出力特性等が反映された色データに変換する色変換処理(ステップS13)が実行される。また、ユーザから、後述の調整を行う旨の指示がある場合には、その指示に基づく色調整処理(ステップS14)が実行される。最後に、色変換処理あるいは色調整処理を経た画像に対して、ハイパートーン処理やシャープネス処理等といった強調処理(ステップS15)が実行される。以下では、これら上記の色変換処理(ステップS13)および色調整処理(ステップS14)に注目して説明を行う。画像処理回路250は、本発明にいう色変換部の一例に相当する。
【0035】
図3は、図1のCPU210が有する、図2の色変換処理(ステップS13)および色調整処理(ステップS14)に関連した処理を行う処理機能を示す機能ブロック図である。
【0036】
本実施形態では、画像処理回路250での色変換処理や色調整処理には、各処理内容を定義する色変換定義が使われる。ここで、メモリ220には、予め製造メーカにおいて作り込まれた、モニタ300の出力特性等が反映された色変換を定義した基準色変換定義T1が記憶されている。CPU210には、詳細については後述する修正入力部211と計算部212とが備えられており、デフォルト状態では、計算部212が、色変換処理用の色変換定義として、この基準色変換定義T1をメモリ220から読み出して画像処理回路250に渡す。そして、画像処理回路250は、上記のノイズ処理等を経たデジタル画像データ(入力画像データDi)が表わす動画に、この基準色変換定義T1を使った色変換処理と上記の強調処理を施して、処理後の動画を表わすデジタル画像データ(出力画像データDo)を得る。その出力画像データDoは、表示制御回路260に渡され、その表示制御回路260によって、出力画像データDoが表わす動画がモニタ300に表示される。
【0037】
ここで、以上に説明したデフォルト状態におけるモニタ300での表示色には、上述したようにモニタ300の出力特性等が反映されているのみである。そのため、その表示色が、診断に適した色であること等といったユーザの要望を満足した色とはなっていない場合が多々ある。そこで、本実施形態では、モニタ300での表示色にユーザの要望を反映させるための機能が設けられている。
【0038】
修正入力部211は、本発明にいう修正入力部の一例に相当し、モニタ300の表示色に対する修正が、ユーザが自らの要望に基づいて行う所定の入力操作を介して入力される役割を担っている。また、計算部212は、本発明にいう修正反映部と環境選択部と修正定義選択部とを兼ねた一例に相当し、上記の基準色変換定義T1を修正することで、ユーザから入力された修正が反映された修正色変換定義T2を作成する役割を担っている。ここで、これら基準色変換定義T1および修正色変換定義T2は、各々が本発明にいう色変換定義の一例に相当する。
【0039】
修正入力部211において、モニタ300の表示色に対する修正が入力されると、計算部212は、まず、メモリ220に保管されている基準色変換定義T1を読み出す。
【0040】
ここで、本実施形態では、計算部212は、基本的に、この基準色変換定義T1に、入力された修正を包括的に反映させる。しかし、一方で、内視鏡装置10で得られる撮影画像中には、例えば血管等の色といった、色についての共通のイメージが医師一般の間で定着しており、不用意に変えてもらっては困るとの見解が持たれている色がある。そこで、本実施形態では、予め特定されている色範囲については修正の反映が抑制されることになっている。この抑制の程度を定義した重みテーブルT3は、予め製造メーカにおいて作り込まれ、メモリ220に保管されている。この重みテーブルT3は、本発明にいう抑制定義の一例に相当する。また、メモリ220は、本発明にいう抑制定義記憶部の一例に相当する。計算部212は、基準色変換定義T1の読出しの際には、この重みテーブルT3もメモリ220から読み出す。
【0041】
また、修正入力部211において、表示色に対する修正が入力されると、計算部212は、その修正内容に基づいて、基準色変換定義T1に対する、包括的で、かつ上記の抑制無しの基本的な修正を定義した修正テーブルT4を作成する。この修正テーブルT4は、本発明にいう修正定義の一例に相当する。作成された修正テーブルT4は、計算部212において、基準色変換定義T1の修正に供されるとともに、メモリ220に記憶される。メモリ220は、本発明にいう修正定義記憶部の一例も兼ねている。計算部212は、重みテーブルT3と修正テーブルT4とを使って基準色変換定義T1を修正して修正色変換定義T2を得る。
【0042】
計算部212で得られた修正色変換定義T2は、画像処理回路250に渡される。そして、画像処理回路250は、上記の入力画像データDiが表わす動画に、今度は、修正色変換定義T2を使った色変換処理と上記の強調処理を施して出力画像データDoを得る。その出力画像データDoは、表示制御回路260に渡され、その表示制御回路260によって、出力画像データDoが表わす、ユーザから入力された表示色に対する修正が反映された動画がモニタ300に表示される。
【0043】
また、その表示された動画を見たユーザが、表示色についての修正の反映度合いが、想像していたものよりも強すぎるあるいは弱すぎると感じる場合がある。そこで、本実施形態では、この反映度合いを調整する機能が設けられている。ユーザから、その調整についての指示がある場合には、計算部212において、上記の修正テーブルT4にその度合いを表わす係数が乗ぜられることで反映度合いが調整された修正色変換定義T2が作り直される。そして、画像処理回路250において、その調整済みの修正色変換定義T2を使った色変換が上記の色調整処理として行われ、上記の強調処理を経て再度得られた出力画像データDoが表示制御回路260に渡され、調整済みの動画がモニタ300に表示される。
【0044】
また、上述したように、本実施形態では、上記の修正テーブルT4はメモリ220に記憶される。そして、後日、ユーザが、かつて入力した修正と同じ修正を望む場合には、その旨を示す所定操作に従って、計算部212が、その記憶された修正テーブルT4を再利用することで処理の効率化が図られている。
【0045】
本実施形態における色変換処理および色調整処理は、概略、以上に説明したように行なわれる。以下、色変換処理および色調整処理についてさらに詳細に説明する。
【0046】
まず、モニタ300にデフォルト状態で表示されている動画を見たユーザが、表示色の修正を望んだとする。本実施形態の内視鏡装置10には、この内視鏡装置10において、表示色の修正を指示するための操作子として、図1に示すスコープ100の操作ボタン140と、プロセッサ200のキーボード270とが用意されている。ユーザが、操作ボタン140あるいはキーボード270を操作して、表示色の修正を指示すると、CPU210の指示により、モニタ300に、まず、次のような操作画面が表示される。
【0047】
図4は、表示色の修正の実行が指示されたときにモニタ300に表示される操作画面を示す図である。
【0048】
この図4に示す操作画面310は、かつて行われた修正を再現する場合に、その再現に用いる修正テーブルT4をメモリ220に記憶されている複数の修正テーブルT4の中から指定したり、新たな修正を実行する場合に、その修正に用いられる重みテーブルT3をメモリ220に記憶されている複数の修正テーブルT4の中から指定するための画面である。
【0049】
ここで、本実施形態では、複数の重みテーブルT3それぞれが、内視鏡装置10での撮影で想定される複数種類の利用環境に一対一に対応付けられてメモリ220に記憶されている。この内視鏡装置10では、まず、患部の撮影のみを行う手技や、患部を撮影しながら患部の切除を行う手技等といった複数種類の手技それぞれについて重みテーブルT3が用意されている。これは、単純な撮影や患部の切除によって出血を伴う撮影等といった複数種類の手技それぞれについて撮影対象の色について状態が異なり、その結果、各手技によって修正の反映を抑制して維持すべき表示色が異なっているためである。また、胃、十二指腸、小腸、大腸等といった撮影部位それぞれについても維持すべき表示色が異なっているため、各撮影部位毎に重みテーブルT3が用意されている。さらに、内視鏡装置10では、例えばインジコカルミン等といった色素を患部に散布して、患部が観察しやすいように染色した上で撮影を行う場合がある。その場合、どのような色素を使って染色を行うかといった染色の種類によって維持すべき表示色が異なっているので、各染色について重みテーブルT3が用意されている。また、内視鏡装置10を操作する医師の種類によっても、維持することが診断にとって好ましい表示色が異なっている。これは、例えば、日頃、手術を行って実際の患部の色を見慣れている外科医と、撮影画像を介した患部の色を見慣れている内科医とでは診断にとって好ましい表示色が異なっているためである。そこで、本実施形態では、外科医や内科医等といったユーザの種類毎に重みテーブルT3が用意されている。
【0050】
このように、本実施形態では、複数種類の手技への利用、複数種類の撮影部位についての利用、複数種類の染色下での利用、および複数種類のユーザによる利用が想定されている。そして、これら想定されている複数種類の利用環境それぞれについて重みテーブルT3が用意されメモリ220に記憶されている。ユーザが新たな色変換を望む場合には、その色変換に用いられる重みテーブルT3が、ユーザが現在の利用環境を指定することで、複数の重みテーブルT3の中から指定される。
【0051】
図4に示す操作画面310には、画面の右側に、新たな色変換を望む場合に、ユーザが現在の利用環境を指定するための第1の環境指定部311と、その第1の環境指定部311での指定を有効とするための第1ラジオボタン312とが備えられている。第1の環境指定部311は、メニューボタン311aと、指定された利用環境が表示される表示部311bとを備えており、第1ラジオボタン312が操作されると、メニューボタン311aに対する操作が可能となる。このメニューボタン311aが操作されると、複数種類の利用環境が列記されたプルダウンメニューが表示される。そして、ユーザが、そのプルダウンメニューにおける所望の利用環境をクリック操作すると、その利用環境が指定され、その指定された利用環境が表示部311bに表示される。
【0052】
ここで、このように利用環境が指定されて色変換が行われる際には、上述したように、基準色変換定義T1に対する、包括的で、かつ上記の抑制無しの基本的な修正を定義した修正テーブルT4が作成されてメモリ220に記憶される。このとき、本実施形態では、この修正テーブルT4は、第1の環境指定部311で指定された利用環境に、その利用環境についての通し番号が付された名称が対応付けられて記憶される。上述したように、本実施形態では、過去に行われた色変換の再現が修正テーブルT4を使って行なわれる。ユーザが過去の色変換の再現を望む場合には、その過去の色変換に対応する、通し番号付の利用環境を指定することで、その再現に使われる修正テーブルT4が、複数の修正テーブルT4の中から指定される。また、この再現には、その指定された通し番号付の利用環境における、その利用環境に対応付けられた重みテーブルT3も使われる。即ち、ユーザが、所望の通し番号付の利用環境を指定すると、修正テーブルT4と重みテーブルT3がともに指定されることになる。
【0053】
図4に示す操作画面310には、画面の左側に、過去の色変換の再現を望む場合に、ユーザが、その過去の色変換に対応する通し番号付の利用環境を指定するための第2の環境指定部313と、その第2の環境指定部313での指定を有効とするための第2ラジオボタン314とが備えられている。第2の環境指定部313には、過去に記憶された修正テーブルT4に対応付けられた通し番号付の利用環境のリストが表示されており、第2ラジオボタン314が操作されると、このリストに対する操作が可能となる。そして、ユーザが、そのリストにおける所望の通し番号付の利用環境をクリック操作すると、その通し番号付の利用環境が指定される。また、指定された通し番号付の利用環境は、グレー表示される。
【0054】
図4に示す操作画面310には、第1の環境指定部311あるいは第2の環境指定部313での指定操作が終了すると、ここでの指定内容に基づいた色変換を開始させるための開始指示ボタン315が備えられている。この開始指示ボタン315が操作されると、次のように色変換が開始される。
【0055】
図5は、色変換の処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
このフローチャートが示す処理がスタートすると、まず、図4に示す操作画面310において、第1の環境指定部311から新たな利用環境の指定があったか否かが判定される(ステップS101)。
【0057】
第1の環境指定部311から利用環境の指定があったと判定された場合(ステップS101におけるYes判定)、次のような手順で静止画が撮影され、その静止画がモニタ300に表示される(ステップS102)。
【0058】
ステップS102の処理における静止画の撮影では、まず、モニタ300に表示されている動画中で表示色を変更したい領域をユーザが指定するための領域指定マークが表示される。
【0059】
図6は、モニタ300に動画と領域指定マークが表示されている表示画面を示す模式図である。
【0060】
図6に示す表示画面320には、円形の動画表示領域321に動画が表示される。本実施形態では、上記の図4の操作画面310の第1の環境指定部311から利用環境の指定があった場合には、この動画表示領域321中に、表示色を変更したい領域をユーザが指定するための正方形の領域指定マーク322が表示される。ユーザが、図1のスコープ100の先端の向きを動かすことで、領域指定マーク322内に、表示色を変更したい領域を捉え、その状態で、スコープ100の操作ボタン140あるいはキーボード270を操作して静止画撮影を指示すると、その時点の静止画が撮影され、動画表示領域321内の画像がその静止画となる。また、その際には、表示画面320に、領域指定マーク322内の表示色に対する修正目標の表示色をユーザが入力するための次のような修正目標入力画面が表示される。
【0061】
図7は、表示画面320に修正目標入力画面が表示された様子を示す模式図である。
【0062】
この図7には、静止画が撮影された時点で表示される修正目標入力画面323が示されている。この修正目標入力画面323は、この入力画面における上段左側に、領域指定マーク322内の現在の表示色が表示される現表示色表示部323aが備えられている。本実施形態では、領域指定マーク322内の表示色の平均色が、この現表示色表示部323aに表示される。
【0063】
図5のステップS102の処理によって静止画の撮影および表示が終了すると、続いて、上記の修正目標入力画面323へのユーザ操作による修正目標の表示色の入力が行われる(ステップS103)。
【0064】
図8は、図7の修正目標入力画面323の拡大図である。
【0065】
本実施形態では、画像の色は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色の座標軸を有するRGB色空間上の座標で表わされ、その座標に相当するRGB3色の画素値の組合わせで表現されている。各色の画素値は、「0」から「255」までのいずれかの値となる。この修正目標入力画面323では、修正目標の表示色の入力を、現在の表示色に対応するRGB色空間上の座標に対する修正値、即ちRGB3色の画素値に対する修正値を入力することで行うことができる。また、修正値の入力によって入力された修正目標の表示色は、ユーザが入力する指定番号に対応付けられて図1のメモリ220に記憶される。そして、修正目標入力画面323では、修正目標の表示色の入力を、過去にメモリ220に記憶された修正目標の表示色の中から選択することで行うこともできる。この選択は、所望の表示色に対応付けられている指定番号を指定することで行われる。
【0066】
修正目標入力画面323には、RGB各画素値の修正値の入力による修正目標の表示色の入力を有効にするための第3ラジオボタン323bと、修正値入力部323cと、修正値の入力によって入力された修正目標の表示色を記憶する際にその表示色に対応付ける指定番号を入力するための指定番号入力部323dと、指定番号の指定による修正目標の表示色の入力を有効にするための第4ラジオボタン323eと、指定番号の指定によって修正目標の表示色を入力する番号指定部323fと、入力された修正目標の表示色を表示する目標表示色表示部323gと、この修正目標入力画面323での入力内容に基づく色変換の実行を指示する実行指示部323hとが備えられている。
【0067】
図8には、第3ラジオボタン323bが操作されて、修正値入力部323cと指定番号入力部323dとに対する操作が有効となり、番号指定部323fに対する操作が無効となっている様子が示されている。
【0068】
この状態では、修正値入力部323cには、現表示色表示部323aに表示されている現在の表示色を表わすRGB各画素値に対する修正値(dr,dg,db)が入力される。そして、目標表示色表示部323gには、その現在の表示色を、入力された修正値を使って修正した色が表示される。ユーザは、この目標表示色表示部323gに表示される色を見ながら修正値入力部323cに入力する修正値を適宜に増減させることで所望の修正目標の表示色を決めることができる。また、指定番号入力部323dには、指定番号を適宜に増減させることで、修正目標の表示色に対応付ける指定番号が入力される。このように、所望の修正目標の表示色と指定番号とが入力された状態で、実行指示部323hが操作されると、その修正目標の表示色が指定番号に対応付けられてメモリ220に記憶されるとともに、その修正目標の表示色に基づいた色変換が開始される。
【0069】
また、修正目標入力画面323では、上述したように、修正目標の表示色の入力を、過去にメモリ220に記憶された修正目標の表示色の中から選択することで行うこともできる。このような入力方法は、第4ラジオボタン323eが操作されることで可能となる。
【0070】
図9は、修正目標入力画面323において第4ラジオボタン323eが操作された様子を示す模式図である。
【0071】
図9に示すように第4ラジオボタン323eが操作された状態では、番号指定部323fに対する操作が有効となり、修正値入力部323cと指定番号入力部323dとに対する操作は無効となっている。
【0072】
この状態では、過去に入力されて記憶された修正目標の表示色のうち、番号指定部323fで指定されている指定番号に対応した表示色が、目標表示色表示部323gに表示される。そして、ユーザは、その表示される色を見ながら番号指定部323fを操作して、この番号指定部323fで指定される指定番号を適宜に変えて、所望の修正目標の表示色を決めることができる。このように、所望の修正目標の表示色と指定番号とが入力された状態で、実行指示部323hが操作されると、その修正目標の表示色に基づいた色変換が開始される。
【0073】
図5のフローチャートが示す処理は、ステップ103において上述したように所望の修正目標の表示色が入力が開始されると、上記の実行指示部323hに対する操作が行われて色変換の実行が指示されるまで待機状態となる(ステップS104)。そして、この実行指示部323hに対する操作が行われると(ステップS104におけるYes判定)、色変換のための準備として、まず、修正目標入力画面323での入力内容に基づいた上記の修正テーブルT4の作成と、上記の図4に示す操作画面310の第1の環境指定部311で指定された利用環境に対応付けられた重みテーブルT3の読出しとが行われる(ステップS105)。
【0074】
このステップS105の処理では、まず、上記の基準色変換定義T1がメモリ220から読み出され、その基準色変換定義T1と修正目標入力画面323での入力内容とを使って修正テーブルT4が作成される。
【0075】
図10は、基準色変換定義T1、修正色変換定義T2、重みテーブルT3、および修正テーブルT4の各一例を示す図である。尚、この図10では、これらが、1つの表形式にまとめられて示されている。
【0076】
この図10に示す基準色変換定義T1は、図3に示す入力画像データDiとして取り得るRGB3色の画素値からなる、RGB色空間上で所定間隔で格子状に並ぶ複数の座標それぞれを表わす複数の入力色データ(Ri,Gi,Bi)と、各入力色データが示す色を表示色としてモニタ300に表示させるために要する出力色データ(Ro,Go,Bo)との、モニタ300の出力特性等が反映された対応関係を定義したものである。また、この基準色変換定義T1では、上記の対応関係が、所定の代表の入力色データについて定義されている。
【0077】
修正テーブルT4は、基準色変換定義T1における各出力色データ(Ro,Go,Bo)を修正する修正値(dR,dG,dB)と、各入力色データ(Ri,Gi,Bi)との対応関係を定義したものである。本実施形態では、上記の修正目標入力画面323で修正目標の表示色がRGB3色の修正値(dr,dg,db)で入力されると、その修正値(dr,dg,db)が、全ての出力色データ(Ro,Go,Bo)を修正する修正値(dR,dG,dB)として一律に使われて、基準色変換定義T1における各入力色データ(Ri,Gi,Bi)に対応付けられて修正テーブルT4が作成される。ただし、その際には、プラスの修正値については、修正後の画素値が最大画素値「255」を越えないように調整され、マイナスの修正値については、修正後の画素値が最少画素値「0」を下回らないように調整される。ここでの例では、修正目標の表示色に対応したRGB3色の修正値は(0,−5,5)である。そして、基準色変換定義T1において例えば出力色データ(0,0,34)が対応している入力色データ(0,0,32)には、修正テーブルT4では、修正値(0,0,5)が対応付けられている。また、例えば出力色データ(224,128,255)が対応している入力色データ(224,128,255)には、修正値(0,−5,0)が対応付けられている。
【0078】
また、図10には、この修正テーブルT4におけるRGB3色の修正値(dR,dG,dB)に関連して、基準色変換定義T1の出力色データ(Ro,Go,Bo)を、対応する修正値(dR,dG,dB)で抑制無しに修正した、無抑制修正出力色データ(Rt,Gt,Bt)も示されている。ここで、この無抑制修正出力色データ(Rt,Gt,Bt)は、本実施形態では装置上において発生せず、図10では、あくまで参考のために、この無抑制修正出力色データ(Rt,Gt,Bt)が示されている。
【0079】
尚、ここでは、修正テーブルT4の作成が、修正目標の表示色に対応したRGB3色の修正値(dr,dg,db)を、全ての出力色データ(Ro,Go,Bo)を修正する修正値(dR,dG,dB)として一律に用いることで行われる例を示した。この例は、RGB色空間上の1点の座標に対する修正値(dr,dg,db)を、RGB色空間上の複数点の座標である出力色データ(Ro,Go,Bo)それぞれに対する修正値として、RGB色空間上でそのまま用いることを意味している。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、以下に説明するように、各出力色データ(Ro,Go,Bo)に対する修正値(dR,dG,dB)を求める方法は、RGB色空間上の1点の座標に対する修正値(dr,dg,db)に基づいて、Lab色空間、XYZ色空間、CMY色空間、LCH色空間等といった他の色空間を介して修正値を求める別方法等であっても良い。以下、この別方法について説明する。また、以下の説明では、他の色空間をLab色空間とする。
【0080】
この別方法では、まず、RGB色空間上の1点の座標についての修正値(dr,dg,db)が、その1点にLab色空間上で対応する点の座標についての修正値(dL,da,db)に変換される。次に、各出力色データ(Ro,Go,Bo)がLab色空間上に写像され、写像後の各出力色データ(Lo,ao,bo)が、上記の変換後の修正値(dL,da,db)を使ってLab色空間上で一律かつ抑制無しに修正されて、Lab色空間上での無抑制修正出力色データ(Lt,at,bt)が求められる。さらに、その求められた無抑制修正出力色データ(Lt,at,bt)がRGB色空間上に写像されて、RGB色空間上での無抑制修正出力色データ(Rt,Gt,Bt)が求められる。その後に、各無抑制修正出力色データ(Rt,Gt,Bt)に対する各出力色データ(Ro,Go,Bo)の差分が算出されて、RGB色空間上での修正値(dR,dG,dB)が求められる。この方法では、各修正値(dR,dG,dB)は、上記の図10に示す例のように一律な値にはならず、個別の値をとることとなる。
【0081】
また、この別方法は、現在の表示色を修正する修正値がRGB色空間上の座標についての修正値として入力される例であるが、現在の表示色を修正する修正値は、各出力色データ(Ro,Go,Bo)についての修正値(dR,dG,dB)を求める際に介されるLab色空間等といった他の色空間上の座標についての修正値として入力されても良い。
【0082】
以上で、別方法についての説明を終了し、図10に示す修正テーブルT4等を用いる実施形態の説明に戻る。
【0083】
本実施形態では、修正テーブルT4における修正値(dR,dG,dB)を使って、基準色変換定義T1の出力色データ(Ro,Go,Bo)を修正して、修正出力色データ(Ro’,Go’,Bo’)を得ることで修正色変換定義T2を得るが、その修正には、後述するように重みテーブルT3を使った抑制が加えられる。
【0084】
重みテーブルT3は、基準色変換定義T1の各入力色データ(Ri,Gi,Bi)と、RGB3色の修正値(dR,dG,dB)に乗ずる重み係数(T)との対応関係を定義したものである。「1」の重み係数(T)は抑制無しの修正を意味し、「0」の重み係数(T)は対応する出力色データ(Ro,Go,Bo)がそのまま維持されることを意味する。これにより、例えば血管の色等といった変えるべきでない色を示す出力色データ(Ro,Go,Bo)をそのまま維持することができる。このような変えるべきでない色は、上述したように複数種類の利用環境それぞれ毎に異なっていることもあるので、本実施形態では、重みテーブルT3が、複数種類の利用環境それぞれ毎に用意されている。図5のステップS105の処理では、この重みテーブルT3として、ステップS101の処理で入力された利用環境に対応した重みテーブルT3がメモリ220から読み出される。
【0085】
ところで、ここまで、ステップS102からステップS105に至る修正テーブルT4の作成等について説明してきたが、本実施形態では、このような処理を省略することもできる。本実施形態では、上述したように、図4の操作画面310の第2の環境指定部313を介して、過去の色変換に対応する通し番号付の利用環境を指定することができる。この場合には(ステップS101におけるNo判定)、ステップS102からステップS105に至る修正テーブルT4の作成等が全て省略されて、その指定された通し番号付の利用環境に対応付けられてメモリ220に記憶されている修正テーブルT4と重みテーブルT3がそのメモリ220から読み出される(ステップS106)。
【0086】
以上説明したようにステップS105あるいはステップS106の処理を経て修正テーブルT4と重みテーブルT3が得られると、両者を使って基準色変換定義T1が修正されて、図10に示すように、基準色変換定義T1の各入力色データ(Ri,Gi,Bi)と、修正出力色データ(Ro’,Go’,Bo’)との対応関係を定義した修正色変換定義T2が作成される(ステップS107)。この修正色変換定義T2では、基準色変換定義T1における出力色データ(Ro,Go,Bo)が示す色のうち、変えるべきでない色についてはそのまま維持されている。
【0087】
このステップS107の処理では、修正色変換定義T2における各修正出力色データ(Ro’,Go’,Bo’)は、基準色変換定義T1の出力色データ(Ro,Go,Bo)と、RGB3色の修正値(dR,dG,dB)と、重み係数(T)とを使って、次式によって算出される。
【0088】
(Ro’,Go’,Bo’)=(Ro+T×dR,Go+T×dG,Bo+T×dB)
ステップS107におけるこのような算出処理によって修正色変換定義T2が得られると、次に、その修正色変換定義T2を使った動画に対する色変換が行われ、その変換済みの動画が、図6等に示すモニタ300の動画表示領域321に表示される(ステップS108)。
【0089】
ここで、ステップS108の処理で表示された動画を見たユーザが、表示色に対する修正の反映度合いが、想像していたものよりも強すぎるあるいは弱すぎると感じる場合がある。そこで、図5のフローチャートでは、この反映度合いを調整する、図2ではステップS14として示した色調整処理が実行される。
【0090】
まず、ステップS108の処理で動画が表示されると、色調整処理の実行を指示する調整指示が、図1のスコープ100の操作ボタン140あるいはプロセッサ200のキーボード270に対する所定操作によって入力されるまで待機状態となる(ステップS109)。ここで、ステップS108の処理で表示された動画の表示色に違和感を覚えないユーザが、この調整指示を入力せず、ステップS108の処理での表示状態のまま撮影作業を終える場合もある。この場合には、ステップS109での待機中に内視鏡装置10の電源が落とされ、この図5のフローチャートが示す処理が終了することになる。
【0091】
一方、表示色に対する修正の反映度合いが強すぎるあるいは弱すぎると感じたユーザによって反映度合いを調整するための調整指示が入力された場合には(ステップS109におけるYes判定)、以下に説明する手順に従って色調整処理が実行され、調整済みの動画がモニタ300に表示される(ステップS110)。
【0092】
調整指示が入力されると、動画を表示中の表示画面320に、現在の反映度合いを調整して好みの反映度合いに設定するための設定バーが表示される。
【0093】
図11は、反映度合いを調整して好みの反映度合いに設定するための設定バーを示す図である。
【0094】
この図11には、表示画面320において、動画表示領域321の右上の位置に設定バー324が表示された表示された様子が示されている。ここで、本実施形態では、この設定バー324を使った調整操作により、上記の反映度合いが7段階に設定可能となっており、調整用の操作子324aが、操作ボタン140あるいはキーボード270に対する操作によって「0」から「6」までの7段階の目盛のうちのいずれかの目盛上に置かれると、反映度合いがその目盛の段階に設定される。7段階の中間である「3」の目盛は無調整段階を表わす目盛である。調整指示が入力された直後では、当然に無調整であるので、図11に示すように調整用の操作子324aは、「3」の目盛上に置かれている。また、「0」の目盛は、反映度合いを、表示色に対する修正が完全にキャンセルされるまで弱めた段階を表わす目盛である。また、「6」の目盛は、修正の反映度合いを最大まで強めた段階を表わす目盛である。
【0095】
本実施形態では、「0」から「6」までの7段階の目盛に、「0」から「2.0」までの7段階の係数が対応している。即ち、「0」の目盛には「0」の係数が対応し、「3」の目盛には「1.0」の係数が対応し、「6」の目盛には「2.0」の係数が対応している。そして、調整用の操作子324aがいずれかの目盛上に置かれると、図3の計算部212において、修正色変換定義T2に対して、調整用の操作子324aが置かれた目盛に対応する係数を用いた調整が施される。この調整は、修正色変換定義T2における各修正出力色データ(Ro’,Go’,Bo’)に一律に上記の係数が乗ぜられることで行われる。
【0096】
修正色変換定義T2が調整されると、図3に示す入力画像データDiが表わす動画に対してその調整済みの修正色変換定義T2を使った色変換処理が実行されて、処理済みの動画がモニタ300に表示される。
【0097】
また、本実施形態では、色調整処理の調整指示が入力された後は、表示画面320には、常に設定バー324が表示された状態となる。そのため、ユーザは、1度調整指示を入力した後は、表示される動画を見ながら、いつでも調整用の操作子324aを動かして色調整処理を行うことができる。
【0098】
図5のステップS110での表示状態で撮影が終了し、内視鏡装置10の電源が落とされると、この図5のフローチャートが示す処理が終了することになる。
【0099】
以上、説明したように、本実施形態の内視鏡装置10によれば、ユーザは、表示色のうちの一部の色に対する所望の修正を入力することにより、表示色を所望の色に変更することができる。さらに、変えるべきでない色については変更を抑制してその色を維持させることができる。つまり、本実施形態の内視鏡装置10によれば、変えるべきでない色を維持しつつ提示に適した色変換を撮影画像に行うことができる。
【0100】
尚、本実施形態の内視鏡装置10、修正テーブルT4を作成するために静止画像を撮影する際には、図6に示す領域指定マーク322内に、表示色を変更したい領域を捉えることで、ユーザが変更対象の表示色を選ぶという形態になっている。しかしながら、本発明はこの形態に限るものではなく、例えば以下に説明するように、変更対象の表示色が自動的に求められるという形態であっても良い。
【0101】
以下、この変更対象の表示色が自動的に求められる別形態について説明する。尚、以下では、図1から図11までを参照して説明した上記の実施形態との相違点に注目した説明を行い、同一点については説明を省略する。
【0102】
図12は、変更対象の表示色が自動的に求められる別形態の内視鏡装置における色変換の処理の流れを示すフローチャートである。
【0103】
この図12では、図5に示すフローチャートにおける処理過程と同等な処理過程については図5と同じステップ番号を付し、以下ではそれらの処理過程についての説明を省略する。
【0104】
この図12のフローチャートにおける静止画像の撮影および表示処理(ステップS201)では、表示画面上には、図6に示したような領域指定マークは表示されず、ユーザが円形の動画表示領域内に所望の画像を捉えて静止画撮影を指示するという、一般的な静止画撮影と同様の単純な手順で静止画像が撮影される。
【0105】
続いて、撮影された静止画像に対して色についての統計的な分析が行われ、その静止画像中で最も出現頻度の高い色が、変更対象の表示色として自動的に求められる(ステップS202)。そして、上記の静止画像が、その変更対象の表示色とともに表示画面320に表示される。
【0106】
図13は、変更対象の表示色が自動的に求められる別形態の内視鏡装置において、静止画像が撮影された直後に表示される表示画面320を示す模式図である。
【0107】
この別形態の内視鏡装置でも、静止画像が撮影されると、表示画面320に、修正目標の表示色をユーザが入力するための、図7と同様の修正目標入力画面323が表示される。ただし、この別形態の内視鏡装置では、修正目標入力画面323の現表示色表示部323aには、図7の場合とは異なり、図12のステップS202において自動的に求められた変更対象の表示色が表示される。
【0108】
以上説明したように変更対象の表示色が自動的に求められ表示された後は、図1から図11までを参照して説明した上記の実施形態と同様に、ユーザによって修正目標の表示色が入力されて色変換処理が行われる。この別形態の内視鏡装置でも、ユーザは、表示色を所望の色に変更することができ、また、一部の色については変更を抑制してその色を維持させることができる。さらに、この別形態の内視鏡装置によれば静止画像の撮影が容易であるので、ユーザの手間がその分だけ軽減される。
【0109】
尚、上記では、本発明を内視鏡装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明は、撮影画像に色変換を施して撮影者等に提示する撮影装置一般に適用することができる。
【0110】
また、上記では、本発明の内視鏡装置の一実施形態として、画像の色をRGB色空間上での座標で表わす内視鏡装置10を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の内視鏡装置は、画像の色を、Lab色空間、XYZ色空間、CMY色空間、LCH色空間等といった他の色空間上での座標で表わすものであっても良い。
【0111】
また、上記では、本発明にいう抑制定義記憶部や修正定義記憶部の一例として、プロセッサ200が備えるメモリ220を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の抑制定義記憶部や修正定義記憶部は、例えば、スコープ100が備えるEEPROMや外部メディア等であっても良い。
【0112】
また、上記では、修正目標の表示色の入力方法の一例として、現在の表示色を表わす画素値に対する修正値を入力する方法を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、この入力方法は、例えば、修正目標の表示色を表わす画素値そのものを入力する方法であっても良い。
【0113】
また、上記では、修正目標の表示色の入力方法の一例として、上記の修正値を入力する方法の他に、過去にユーザによって入力された修正目標の表示色の中から所望の色を選択する方法も示したが、本発明はこれらに限るものではなく、この入力方法は、例えば、複数の候補色をメモリ等に予め製造メーカ等で記憶させておいて、ユーザがそれら複数の候補色の中から所望の色を選択する方法等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態である内視鏡装置を示す図である。
【図2】画像処理回路250で実行される画像処理の流れを示す図である。
【図3】図1のCPU210が有する、図2の色変換処理(ステップS13)および色調整処理(ステップS14)に関連した処理を行う処理機能を示す機能ブロック図である。
【図4】表示色の修正の実行が指示されたときにモニタ300に表示される操作画面を示す図である。
【図5】色変換の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】モニタ300に動画と領域指定マークが表示されている表示画面を示す模式図である。
【図7】表示画面320に修正目標入力画面が表示された様子を示す模式図である。
【図8】図7の修正目標入力画面323の拡大図である。
【図9】修正目標入力画面323において第4ラジオボタン323eが操作された様子を示す模式図である。
【図10】基準色変換定義T1、修正色変換定義T2、重みテーブルT3、および修正テーブルT4の各一例を示す図である。
【図11】反映度合いを調整して好みの反映度合いに設定するための設定バーを示す図である。
【図12】変更対象の表示色が自動的に求められる別形態の内視鏡装置における色変換の処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】変更対象の表示色が自動的に求められる別形態の内視鏡装置において、静止画像が撮影された直後に表示される表示画面320を示す模式図である。
【符号の説明】
【0115】
10 内視鏡装置
100 スコープ
110 CCD
120 スコープ側信号処理回路
130 EEPROM
140 操作ボタン
200 プロセッサ
210 CPU
211 修正入力部
212 計算部
220 メモリ
230 メディア制御部
240 プロセッサ側信号処理回路
250 画像処理回路
260 表示制御回路
270 キーボード
300 モニタ
310 操作画面
311 第1の環境指定部
311a メニューボタン
311b 表示部
312 第1ラジオボタン
313 第2の環境指定部
314 第2ラジオボタン
315 開始指示ボタン
320 表示画面
321 動画表示領域
322 領域指定マーク
323 修正目標入力画面
323a 現表示色表示部
323b 第3ラジオボタン
323c 修正値入力部
323d 指定番号入力部
323e 第4ラジオボタン
323f 番号指定部
323g 目標表示色表示部
323h 実行指示部
324 設定バー
324a 調整用の操作子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して撮影画像を得る撮影部と、
前記撮影部で得られた撮影画像に対して色変換を施す色変換部と、
前記色変換部による色変換を経た色で前記撮影画像を表示するモニタと、
前記モニタの表示色のうちの一部の色に対する修正が入力操作によって入力される修正入力部と、
前記修正入力部で入力された修正を前記色変換部による色変換に包括的に反映させる、反映に際し、予め特定されている色範囲については反映を抑制する修正反映部とを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記撮影部は、先端に撮像素子を保持したチューブ形状を有し、該撮像素子を前記被写体まで運び、該撮像素子で該被写体からの光を受光することで前記撮影画像を得るものであることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記修正入力部は、前記モニタ上に表示されている撮影画像中から選択操作によって選択される表示色に対する修正目標の表示色が入力操作によって入力されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記色変換部が、前記色変換を定義した色変換定義を与えられ、その色変換定義に従った色変換を前記撮影画像に施すものであり、
前記修正反映部は、前記色変換定義を修正し、修正後の色変換定義を前記色変換部に与えるものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の撮影装置。
【請求項5】
前記修正反映部が、前記修正入力部で入力された修正に基づいて作成する、包括的な抑制無しの修正を定義した修正定義と、予め与えられている、前記色範囲における抑制の程度を定義した抑制定義とを用いて、前記色変換部による色変換に修正を反映させるものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の撮影装置。
【請求項6】
この撮影装置に対する複数種類の利用環境それぞれに対応付けて、前記色範囲が互いに異なる複数の前記抑制定義を記憶した抑制定義記憶部と、
前記複数種類の利用環境のうちの1つの利用環境を選択する環境選択部と、
前記修正反映部が、前記環境選択部によって選択された利用環境に対応付けられて前記抑制定義記憶部に記憶されている抑制定義を用いて、前記色変換部による色変換に修正を反映させるものであることを特徴とする請求項5記載の撮影装置。
【請求項7】
前記修正定義を記憶する、複数個の修正定義の記憶が可能な修正定義記憶部と、
前記修正定義記憶部に記憶されている修正定義のうち選択操作に応じた1つの修正定義を選択する修正定義選択部とを備え、
前記修正反映部が、前記修正定義選択部によって修正定義が選択された場合に、その選択された修正定義と前記抑制定義とを用いて前記色変換部による色変換に修正を反映させるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の撮影装置。
【請求項8】
前記修正反映部が、前記色変換に対する前記修正の反映度合いを調整操作に応じて調整するものであることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−77951(P2009−77951A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249807(P2007−249807)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】