説明

撹拌装置の流体撹拌部及び撹拌装置

【課題】 撹拌効率的を促進すること。
【解決手段】 流体を撹拌する撹拌装置に装備する流体撹拌部であって、上記流体撹拌部は、対向状態にして同軸的に配置した一対の撹拌体を同一軸線廻りに回転させて、一方の撹拌体の回転中心である中心部に形成した流入部を通して流入した流体を、両撹拌体間に形成した撹拌流路を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体の外周縁部間に形成した流出部から流出させるように構成すると共に、撹拌流路は、流入部側から流出部側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成し、同撹拌流路内には、一方の撹拌体から他方の攪拌体に向けて突出させた一方側蛇行流路形成片と、他方の撹拌体から一方の攪拌体に向けて突出させた他方側蛇行流路形成片とを撹拌流路の伸延方向に間隔を開けて交互に配置して、流入部から流入した流体は、各蛇行流路形成片を越流しながら流出部側に蛇行状態に流動して撹拌されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体収容部内に収容した流体を撹拌、さらには、複数種類の流体を混合する流体撹拌部、及び同流体撹拌部を具備する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌装置に装備する流体撹拌部の一形態として、回転駆動源に連結した回転軸に取り付けられて撹拌槽内の液中に配設される混合回転体がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、混合回転体は、上下2枚の円板を一組みとして重ね合わせ、上方の円板の中央には流入口を形成すると共に、互いに対向する前面には、前方開口する多数の筒状の小室をほぼ全面にわたって整然と配列させて形成し、上方の円板の小室と、下方の円板の小室とは互いの小室が対向する他の複数の小室に連通するように位置を違えて配列させている。このようにして、かかる撹拌装置は、液体を一方の小室から他方の複数の小室へ分流させたり、一方の複数の小室から他方の小室へ合流させたりすることで、撹拌するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3623044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記した撹拌装置では上下2枚の円板の対向する面にそれぞれ多数の小室を全面にわたって形成しているため、撹拌効率は高いものの、洗浄等のメンテナンス作業に手間を要するという課題がある。特に撹拌する対象となる液体の種類が多い場合には、頻繁に2枚の円板を分離して各小室内を丹念に洗浄しなければならないという煩雑さがある。そこで、撹拌効率は良好に確保したまま、洗浄等のメンテナンス作業の手間を軽減し、さらには製造コストを低減することができる撹拌装置の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、流体を撹拌する撹拌装置に装備する流体撹拌部であって、上記流体撹拌部は、対向状態にして同軸的に配置した一対の撹拌体を同一軸線廻りに回転させて、一方の撹拌体の回転中心である中心部に形成した流入部を通して流入した流体を、両撹拌体間に形成した撹拌流路を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体の外周縁部間に形成した流出部から流出させるように構成すると共に、撹拌流路は、流入部側から流出部側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成し、同撹拌流路内には、一方の撹拌体から他方の撹拌体に向けて突出させた一方側蛇行流路形成片と、他方の撹拌体から一方の撹拌体に向けて突出させた他方側蛇行流路形成片とを撹拌流路の伸延方向に間隔を開けて交互に配置して、流入部から流入した流体は、各蛇行流路形成片を越流しながら流出部側に蛇行状態に流動して撹拌されるようにしたことを特徴とする撹拌装置の流体撹拌部を提供するものである。
【0007】
また、本発明は以下の構成にも特徴を有する。
(1)撹拌流路は、一方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する一側流路形成凹部と、他方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する他側流路形成凹部とを対向状態に配置して形成し、一方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を他側流路形成凹部内に配置すると共に、他方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を一側流路形成凹部内に配置したこと。
(2)一方の撹拌体は円板状に形成すると共に、他方の撹拌体は一方の撹拌体よりもやや大径円板状の本片と同本片の周縁部から延設した周壁形成片とから一方の撹拌体を収容可能な凹部を有する蓋状に形成して、同凹部内に収容した一方の撹拌体の外周縁部と上記周壁形成片の内周面との間にリング状の間隙を形成し、同間隙に前記流出部を連通させたこと。
【0008】
また、本発明では、モーターに、流体流入口と流体流出口とを有する流体収容ケースを取り付け、同流体収容ケース内に前記(1)〜(3)のいずれかに記載の流体撹拌部を配置すると共に、同流体撹拌部を上記モーターの駆動軸に連動連結したことを特徴とする撹拌装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
(1)請求項1記載の本発明では、流体を撹拌する撹拌装置に装備する流体撹拌部であって、上記流体撹拌部は、対向状態にして同軸的に配置した一対の撹拌体を同一軸線廻りに回転させて、一方の撹拌体の回転中心である中心部に形成した流入部を通して流入した流体を、両撹拌体間に形成した撹拌流路を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体の外周縁部間に形成した流出部から流出させるように構成すると共に、撹拌流路は、流入部側から流出部側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成し、同撹拌流路内には、一方の撹拌体から他方の攪拌体に向けて突出させた一方側蛇行流路形成片と、他方の撹拌体から一方の攪拌体に向けて突出させた他方側蛇行流路形成片とを撹拌流路の伸延方向に間隔を開けて交互に配置して、流入部から流入した流体は、各蛇行流路形成片を越流しながら流出部側に蛇行状態に流動して撹拌されるようにしている。
【0010】
このようにして、流体中にて一対の撹拌体を一体的に回転させると、同流体は流入部から流入されて撹拌流路を経て流出部から流出される。そして、かかる流入部→撹拌流路→流出部→流入部という流体の循環流路が形成される。
【0011】
この際、撹拌流路は流入部側から流出部側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成することで、撹拌流路を通過する流体の線速度を漸次増大させることができる。しかも、撹拌体にはその中心部から周縁部に向けて遠心力が大きく作用する。そのため、流体は流入部側から流出部側に撹拌流路中を円滑に流れて、同流出部から放出される。その結果、堅実に循環流路が形成される。また、流入部から流入した流体は各蛇行流路形成片を越流しながら折り返し状に流動して流出部側に蛇行状態に流動する。この蛇行状態に流動する流体にはせん断力が作用するが、このせん断力は速度勾配に比例するため、流体に作用するせん断力を流動方向において漸次増大させることができる。そのため、流体に作用するせん断力により流体への撹拌作用(分散作用)が増大される。その結果、流体を循環流路中にて循環させることで撹拌効率を促進させることができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、撹拌流路は、一方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する一側流路形成凹部と、他方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する他側流路形成凹部とを対向状態に配置して形成し、一方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を他側流路形成凹部内に配置すると共に、他方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を一側流路形成凹部内に配置している。
【0013】
このように、一方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を他側流路形成凹部内に配置すると共に、他方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を一側流路形成凹部内に配置しているため、撹拌流路を蛇行流路となすことができると共に、蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、一方の撹拌体は円板状に形成すると共に、他方の撹拌体は一方の撹拌体よりもやや大径円板状の本片と同本片の周縁部から延設した周壁形成片とから一方の撹拌体を収容可能な凹部を有する蓋状に形成して、同凹部内に収容した一方の撹拌体の外周縁部と上記周壁形成片の内周面との間にリング状の間隙を形成し、同間隙に前記流出部を連通させている。
【0015】
このように、一方の撹拌体の外周縁部と上記周壁形成片の内周面との間に形成したリング状の間隙に流出部を連通させているため、流出部から流出される流体を間隙を通して所要の方向に案内することができる。この際、間隙はリング状に形成されて流出部と連通されているため、同流出部から放出される流体は遠心力を受けながら間隙に沿って円周方向に流動されながらスパイラル状の軌跡を描きながら前記した循環流路を形成する。そのため、循環流路がスムーズにかつ堅実に形成されて、この点からも撹拌効率を向上させることができる。
【0016】
(4)請求項4記載の本発明では、モーターに、流体流入口と流体流出口とを有する流体収容ケースを取り付け、同流体収容ケース内に請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体撹拌部を配置すると共に、同流体撹拌部を上記モーターの駆動軸に連動連結している。
【0017】
このようにして、流体収容ケース内に流体流入口から撹拌対象である流体を流入させて、同流体を流体収容ケース内に満たし、同状態にてモーターの駆動軸に連動連結した流体撹拌部を回転させることで、流体を堅実に撹拌することができる。
【0018】
しかも、かかる撹拌装置は軽量化、コンパクト化を容易に図ることができる。そのため、持ち運びが楽(搬送性が良好)で操作も簡単であるため、幅広い分野において撹拌作業に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る撹拌装置の一部切欠説明図。
【図2】本発明に係る流体撹拌部の正面断面説明図。
【図3】同流体撹拌部の平面説明図。
【図4】同流体撹拌部の底面説明図。
【図5】同流体撹拌部の分解斜視説明図。
【図6】上方の撹拌体の正面断面説明図。
【図7】上方の撹拌体の底面説明図。
【図8】下方の撹拌体の正面断面説明図。
【図9】下方の撹拌体の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態は、以下の通りである。
【0021】
図1は、本発明に係る流体撹拌部Aを装備する撹拌装置Kを示す一部切欠説明図である。撹拌装置Kは、図1に示すように、原動機部としてのモーターMのモーターケース1の下端部に、流体を収容する流体収容部として有底筒状に形成した流体収容ケース2の開口縁部を着脱自在に取り付け、同流体収容ケース2内の流体を撹拌する流体撹拌部Aを配設している。そして、流体撹拌部AはモーターMの駆動軸3に着脱自在に連動連結している。また、流体収容ケース2には流体流入口としての液体流入口2aと流体流出口としての液体流出口2bと流体流入口としての気体流入口2cを形成して、液体流入口2aに液体流入パイプ4の先端部を接続し、液体流出口2bに液体流出パイプ5の基端部を接続し、気体流入口2cに気体流入パイプ6の先端部を接続している。P1,P2は圧送ポンプ、Cはコンプレッサ、V1,V2,V3は第1・第2・第3開閉弁、T1は第1タンクとしての液体供給タンク、T2は第2タンクとしての液体貯留タンク、T3は第3タンクとしての気体供給タンクである。aは流体撹拌部Aの回転方向、Rは循環流路である。
【0022】
このようにして、第1開閉弁V1を開弁して液体供給タンクT1から流体としての1種類ないしは複数種類の液体を、圧送ポンプP1により流体流入パイプ4を通して流体収容ケース2内に流入させる。液体を一定量流入させた後は第1開閉弁V1を閉弁する。この際、第2開閉弁V2は閉弁している。流体収容ケース2内にて流体撹拌部Aを回転させることで、液体をナノレベルに超微細化すると共に均一に撹拌することができる。その後、第2開閉弁V2を開弁して流体収容ケース2内から撹拌処理後の液体を、圧送ポンプP2により流体流出パイプ5を通して流出(回収)させて、液体貯留タンクT2に貯留することができる。流体撹拌部Aを回転させて撹拌する際には、必要に応じて、第3開閉弁V3を開弁して気体供給タンクT3から流体としての空気や酸素や低酸素(酸素濃度が30%位の空気)等の気体を、コンプレッサCにより気体流入パイプ6から流入させることもできる。そして、気体を一定量流入させた後は第3開閉弁V3を閉弁して、液体と気体を流体撹拌部Aにより撹拌することで、気体を数μmレベルに超微細化すると共に均一にすることができる。例えば、重油と水と低酸素を混合・撹拌することで超微細な低酸素混じりの均一なエマルジョン燃料となすことができる。また、塗料や農薬を撹拌して超微細に均一化することもできる。
【0023】
次に、本発明に係る流体撹拌部Aの構成を、図2〜図12を参照しながら詳説する。ここで、図2は流体撹拌部Aの正面断面説明図、図3は同流体撹拌部Aの平面説明図、図4は同流体撹拌部Aの底面説明図、図5は同流体撹拌部Aの分解斜視説明図、図6は上方の撹拌体の正面断面説明図、図7は上方の撹拌体の底面説明図、図8は下方の撹拌体の正面断面説明図、図9は下方の撹拌体の平面説明図である。
【0024】
すなわち、流体撹拌部Aは、図2〜図5に示すように、一対(本実施形態では上下一対)の撹拌体10,11を対向状態に配置して、ビス17を介して同軸的に連結して構成している。そして、前記モーターMの駆動軸3に上方の撹拌体10を着脱自在に取り付けて、駆動軸3と両撹拌体10,11とを一体的に同一軸線廻りに回転させるようにしている。また、下方の撹拌体11の回転中心である中心部には流入部12を形成し、両撹拌体10,11間には流入部12から放射線方向に複数(本実施形態では8本)の撹拌流路13を円周方向に均等に配置して形成し、両撹拌体10,11の外周縁部間には各撹拌流路13の先端部に連通する流出部14を形成している。18はビス孔である。
【0025】
このようにして、モーターMにより駆動軸3を介して流体撹拌部Aを回転させることで、下方の撹拌体11の中心部に形成した流入部12を通して流入した流体を、両撹拌体10,11間に形成した8本の撹拌流路13を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体10,11の外周縁部間に形成した各流出部14から流出させるようにしている。
【0026】
さらに具体的に説明すると、図8及び図9に示すように、下方の撹拌体11は円板状に形成すると共に、少なくとも上面を扁平な当接面11aとなしている。そして、中心部には円形に開口する流入部12を形成している。図6及び図7に示すように、上方の撹拌体10は下方の撹拌体11よりもやや大径円板状の本片10aと同本片10aの周縁部から延設した周壁形成片10bとから下方の撹拌体11を収容可能な凹部15を有する蓋状に形成している。そして、図2及び図4に示すように、本片10aの少なくとも下面を扁平な当接面10cとなしている。また、凹部15内に下方の撹拌体11を収容すると共に、本片10aの当接面10cに下方の撹拌体11の当接面11aを密接状態に面接触させている。そして、下方の撹拌体11の外周縁部11bと上記周壁形成片10bの内周面10dとの間にリング状の間隙16を形成し、同間隙16に前記流出部14を連通させている。図2,図3及び図6中、10eは駆動軸3に取り付けるための取付ボス部、10fは取付ボルト、10gはボルト孔である。
【0027】
撹拌流路13は、図2及び図4に示すように、流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成している。図4中、W1は撹拌流路13の基端幅、W2は撹拌流路13の先端幅であり、基端幅W1>先端幅W2となしている。図6及び図7に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した上方側蛇行流路形成片10hを仕切り状に配設すると共に、同上方側蛇行流路形成片10hの先端部を上方の撹拌体10から下方の撹拌体11に向けて突出させている。また、図8及び図9に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した下方側蛇行流路形成片11cを仕切り状に配設すると共に、同下方側蛇行流路形成片11cの先端部を下方の撹拌体11から上方の撹拌体10に向けて突出させている。そして、図2及び図4に示すように、これら蛇行流路形成片10h,11cは撹拌流路13の伸延方向に間隔を開けて交互に配置している。
【0028】
このようにして、流入部12から流入した流体は、各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して、流出部側に蛇行状態に流動するようにしている。そして、流体は蛇行流動中に撹拌されるようにしている。
【0029】
撹拌流路13は、図7及び図9に示すように、上方の撹拌体10の流入部12側から流出部側14に向けて放射状に伸延する上側流路形成凹部13aと、下方の撹拌体11の流入部12側から流出部14側に向けて放射状に伸延する下側流路形成凹部13bとを対向状態に配置して形成している。
【0030】
また、図2に示すように、上方側蛇行流路形成片10hは上側流路形成凹部13a内から突出させて、同上側流路形成凹部13a内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内まで伸延させて配置している。下方側蛇行流路形成片11cは下側流路形成凹部13b内から突出させて、同下側流路形成凹部13b内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内まで伸延させて配置している。そして、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に略等間隔で配置している。
【0031】
このように、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に配置すると共に、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを相互に対向する流路形成凹部13b,13a内まで伸延させることで、撹拌体10,11の回転軸線方向に往復して放射線方向に伸延する蛇行流路を形成することができると共に、この蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0032】
本発明の実施形態は上記のように構成しているものであり、流体中にて一対の撹拌体10,11を一体的に回転させると、同流体は流入部12から流入されて撹拌流路13を経て流出部14から流出される。そして、かかる流入部12→撹拌流路13→流出部14→流入部12という流体の循環流路R(図1参照)が形成される。
【0033】
この際、撹拌流路13は流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成することで、撹拌流路13を通過する流体の線速度を漸次増大させることができる。しかも、撹拌体10,11にはその中心部から周縁部に向けて遠心力が大きく作用する。そのため流体は流入部12側から流出部14側に撹拌流路13中を円滑に流れて、堅実に循環流路Rが形成される。そして、流入部12から流入した流体は各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して流出部14側に蛇行状態に流動する。この蛇行状態に流動する流体にはせん断力が作用するが、このせん断力は速度勾配に比例するため、流体に作用するせん断力を流動方向において漸次増大させることができる。そのため、流体に作用するせん断力により流体への撹拌作用(分散作用)が増大される。その結果、流体を循環流路R中にて循環させることで撹拌効率を促進させることができる。
【0034】
しかも、上方側蛇行流路形成片10hは先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内に配置すると共に、下方側蛇行流路形成片11cは先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内に配置しているため、撹拌流路13を蛇行流路となすことができると共に、撹拌流路13の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0035】
さらには、上方の撹拌体10の外周縁部と上記周壁形成片10bの内周面10dとの間に形成したリング状の間隙16に流出部を連通させているため、流出部14から流出される流体を間隙16を通して所要の方向(本実施形態では下方)に案内することができる。この際、間隙16はリング状に形成されて流出部14と連通されているため、同流出部14から放出される流体は遠心力を受けながら間隙16に沿って円周方向に流動されて、スパイラル状の軌跡を描きながら前記した循環流路Rを形成する。そのため、循環流路Rがスムーズにかつ堅実に形成されて、この点からも撹拌効率を向上させることができる。
【0036】
また、撹拌装置Mは、流体収容ケース2内に液体流入口2aから撹拌対象である流体を流入させて、同流体を流体収容ケース2内に満たし、同状態にてモーターMの駆動軸3に連動連結した流体撹拌部Aを回転させることで、流体を堅実に撹拌することができる。
【0037】
しかも、かかる撹拌装置Mは軽量化、コンパクト化を容易に図ることができる。そのため、持ち運びが楽(搬送性が良好)で操作も簡単であるため、幅広い分野において撹拌作業に適用させることができる。メンテナンス作業を行う際には、モーターケース1の下端部から流体収容ケース2を取り外し、さらには、駆動軸3から流体撹拌部Aを取り外すことができる。そして、流体撹拌部Aはビス17を取り外すことで撹拌体10,11を分離することができる。従って、各撹拌体10,11のメンテナンス作業、例えば、各流路形成凹部13a,13bの洗浄を迅速かつ簡単に行うことができる。その結果、撹拌対象となる流体によっては頻繁に洗浄等のメンテナンス作業を要する場合があるが、このような場合にも好適なものとなる。
【0038】
また、他実施形態として、撹拌流路13の断面積に大→小→大→小の交互の変化をもたせることで、撹拌流路13内を流動する流体に脈流を形成して撹拌効率を増大させることもできる。例えば、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを凹状ないしは凸状に形成することで、流路断面積が交互に大→小→大→小と変化するように形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
撹拌効率を良好に確保したまま、洗浄等のメンテナンス作業の手間を軽減し、さらには製造コストを低減することができる流体撹拌部を提供することができる。そして、かかる流体撹拌部を具備する撹拌装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
A 流体撹拌部
M 撹拌装置
1 モーター
2 流体収容ケース
3 駆動軸
10 上方の撹拌体
11 下方の撹拌体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を撹拌する撹拌装置に装備する流体撹拌部であって、
上記流体撹拌部は、対向状態にして同軸的に配置した一対の撹拌体を同一軸線廻りに回転させて、一方の撹拌体の回転中心である中心部に形成した流入部を通して流入した流体を、両撹拌体間に形成した撹拌流路を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体の外周縁部間に形成した流出部から流出させるように構成すると共に、
撹拌流路は、流入部側から流出部側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成し、同撹拌流路内には、一方の撹拌体から他方の撹拌体に向けて突出させた一方側蛇行流路形成片と、他方の撹拌体から一方の撹拌体に向けて突出させた他方側蛇行流路形成片とを撹拌流路の伸延方向に間隔を開けて交互に配置して、
流入部から流入した流体は、各蛇行流路形成片を越流しながら流出部側に蛇行状態に流動して撹拌されるようにしたことを特徴とする撹拌装置の流体撹拌部。
【請求項2】
撹拌流路は、一方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する一側流路形成凹部と、他方の撹拌体の流入部側から流出部側に向けて放射状に伸延する他側流路形成凹部とを対向状態に配置して形成し、
一方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を他側流路形成凹部内に配置すると共に、他方側蛇行流路形成片は先端の越流縁部を一側流路形成凹部内に配置したことを特徴とする請求項1記載の撹拌装置の流体撹拌部。
【請求項3】
一方の撹拌体は円板状に形成すると共に、他方の撹拌体は一方の撹拌体よりもやや大径円板状の本片と同本片の周縁部から延設した周壁形成片とから一方の撹拌体を収容可能な凹部を有する蓋状に形成して、同凹部内に収容した一方の撹拌体の外周縁部と上記周壁形成片の内周面との間にリング状の間隙を形成し、同間隙に前記流出部を連通させたことを特徴とする請求項1又は2記載の撹拌装置の流体撹拌部。
【請求項4】
モーターに、流体流入口と流体流出口とを有する流体収容ケースを取り付け、同流体収容ケース内に請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体撹拌部を配置すると共に、同流体撹拌部を上記モーターの駆動軸に連動連結したことを特徴とする撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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