説明

操作されたタンパク質、ならびに作製方法および使用方法

本発明は、操作されたタンパク質およびその操作されたタンパク質から作製された生物医学的生成物を提供する。その生物医学的生成物は、眼科目的に有用なレンズを含む。本発明の操作されたタンパク質は、任意の天然に存在しないタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであり得、これらは架橋される場合、望ましい光学的特性を有するレンズを形成し得る。本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、少なくとも1つのフィブロネクチンドメインおよび少なくとも1つのエラスチンドメインを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年1月23日に出願された米国仮特許出願番号60/538,844および2004年3月10日に出願された米国仮特許出願番号60/552,029(これらは両方ともその全体が参考として本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府によって資金提供を受けた研究または開発に関する記載)
本発明は、米国政府認可番号R01−HL59987からの資金によって開発された。それゆえ、米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
(技術分野)
本発明は、操作されたタンパク質、特に眼科成形物のような生物医学的成形物を作製するために使用される場合の操作されたタンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
角膜は、ヒトの眼の屈折力のうち3分の2を占める。この力は、角膜弯曲を変化させるかまたは角膜の屈折率を変えることによって変更され得る。米国国立健康統計センター(National Center for Health Statistics)によると、米国の人口のうち約52%が、ある種の矯正レンズを身に付けている。過去十年間にわたり、近視、遠視および乱視を矯正するための屈折矯正手術において有意な進歩が存在するが、一定の問題も残っている。レーザー角膜内切削形成術(LASIK)および光学的角膜屈折矯正手術(PRK)は、近視、乱視および軽度〜中程度の遠視の矯正において非常に有効であると証明されてきた。これらの手順の主な制限は、それらの可逆性の欠如ならびに遠視および重度の近視の矯正におけるそれらの制限された効力である。
【0005】
最近、有水晶体眼内レンズ(IOL)[Verisyse,Advanced Medical Optics Santa Ana,CA]のFDA認可に伴い、重度の近視を処置するための潜在的に改善された手段が存在する。これらの有水晶体IOLは、移植された近視眼者に対して優れた質の視覚を提供するが、これらのレンズは、重篤な眼内合併症(例えば、静脈内膜炎および角膜機能不全)に関係し得る。さらに、これらのIOLは、浅前房を有する傾向のある遠視の患者に移植するほど安全ではなく、移植物に由来する角膜損傷に対する増加した危険性を有する。
【0006】
現在の屈折矯正手術のアプローチに伴うこれらの問題は、遠視および重度の近視を処置するための眼内移植物(インレー)への関心を新たにしている。屈折異常を矯正するために角膜へ角膜片を移植することは、新たな着想ではない。1949年に、Barraquerは、ウサギモデルにおいて6mmのフリントガラス角膜内レンズを記載した。その角膜は実質の壊死を生じ、レンズは押し出された。ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いるBarraquerによるその後の実験は、同様の結果であった。彼は、合成アンレーにわたる限定された代謝交換(exchanged)は角膜の生存度と相いれないと結論付けた。1967年に、Dohlmanは、ウサギおよびネコにおいてメタクリル酸グリセリルでできたヒドロゲルインレーを試験した。これらの水透過性の移植物は、代謝交換が可能であり、ウザギの角膜によってより良い耐容性を示された。しかし、3ヶ月目まで、これらの移植物はしばしば押し出された。ネコでは優れた臨床的生体適合性が存在し、押し出しはなかった。コロイジン、ポリプロピレン、シラスティック(sialastic)およびポリスルホンを用いる合成インレーへの他の試みは、角膜によって十分に耐用性を示されず、透明度の喪失をもたらした。
【0007】
ヒドロゲルインレーによる初期の有望な結果に基づいて、これらの材料は、動物モデルにおいて、そして最近になって臨床試験において最も徹底的に研究されている。微孔性ヒドロゲル処方物(Nutrapore(登録商標))は、角膜インレー(Perma Vision(登録商標)レンズ、Anamed Inc.,Anaheim,CA)に加えられており、遠視および重度の近視を矯正するために移植されている。これらのインレーは、直径5.0mmであり25μm〜60μmの範囲にわたる中央の厚みを有する。これらの含水量は78%であり、屈折率は角膜と類似している。Michielettoおよび共同研究者らは、角膜弁を作製するためにマイクロケラトームを用いて、縫合糸を用いずに固定するPerma Vision(登録商標)を移植した10例の遠視者について報告した。1つのインレーは分散に起因して取り外されなければならなかったが、他の眼はいずれも最も矯正された視力を失わず、レンズは6ヶ月の追跡調査の間十分に耐容性であったようである。注意すべきことは、0.5ジオプトリを超える術前乱視を有する眼は手術されなかった。Guellらは、Perma Vision(登録商標)インレーを移植された6例の遠視者の眼を報告した。すべての眼は矯正なしで12ヶ月目で20/40以上であったが、1例の眼のみが矯正なしで20/20であった。この著者らは、インレーの力の予測性は「改善されなければならない」と結論付けた。Werblinおよび共同研究者らは、重度の近視を矯正するために異なるヒドロゲルインレー(Permalens(登録商標)(Alcon Labs,Fort Worth,TX))の使用を報告した。−10.00ジオプトリ〜−15.00ジオプトリの範囲にわたるインレーが、5例の近視患者に移植された。すべての症例における少なくとも18ヶ月間の追跡調査で、角膜の透明度は維持されたが、遠視のインレーと同様に、力の予測性が重大な問題であった。実際に、平均術後屈折異常は、−5.7±2.1ジオプトリであった。遠視および重度の近視を矯正するためのヒドロゲルインレーを用いるこれらの予備的研究は、一般的な生体適合性を確立する(いくつかの研究は水晶体周囲の炎症および線維症を示した)が、これらの研究は、視覚的結果を最大限にするための調節性の必要性を明らかにした。移植後の患者における術後屈折異常を予測するのは不可能であるので、インレーの力を術後に調整するための手段が望ましい。
【0008】
現在のヒドロゲルインレーの重大な制限は、それらが術後の調節性への重要な必要性に対処不可能であることである。
【0009】
(Miyataに対して発行された)特許文献1は、コラーゲンゲルから作製されたソフトコンタクトレンズを開示し、このコラーゲンゲルは、水溶性の有機ポリヒドロキシポリマー(例えば、ムコポリ多糖類、ポリビニルアルコールなど)が添加され、その後そのゲルが化学的架橋される。ポリヒドロキシポリマーの「添加物」は、微生物分解に対してコラーゲン分子の鎖を保護するようにこれらを「取り囲む」と言われる。特許文献1には、エチレン不飽和かまたはポリマー置換コラーゲンを生成するためにコラーゲンをアシル化し得、これが次いで重合して高度な生物学的受容性および組織受容性を有する有用な生物医学的物品を形成し得ることは記載も示唆もされていない。
【0010】
例えば、特許文献2から、眼の光学的特性を矯正するかまたは眼の外見を変えるために多孔性ポリマー材料からなる角膜人工器官を提供することは公知である。角膜インレーは、一般的に、外科的方法を用いて(例えば、角膜の実質組織に切開を作製してアンレーが置かれるポケットを形成し、次いで縫合により切開を閉じることによって)哺乳動物の角膜中もしくは角膜上に移植される。
【0011】
屈折異常の矯正のための代替的アプローチは、角膜アンレーの配置である。これは、可逆性であり、外科的により単純であり、そして安定であるという利点を有する。この着想は、角膜実質にわたるボーマン層へのアンレーの配置が角膜弯曲を変化させ、それによって角膜の屈折力が変わるということである。
【0012】
1つの方法は、角膜の角膜上皮細胞層を擦過することによって除去すること、合成微小レンズ片を直接角膜組織上にその角膜組織と密接に接触させて置くこと、およびその合成微小レンズ片を上皮組織が回復し、その移植物を越えて成長し、それゆえ、その移植物を持続性の様式で固定するのに十分な期間適切な場所に保持することを伴う。角膜上へのアンレーの最初の一時的な固定は、生体適合性の膠(例えば、市販のコラーゲンベースもしくはフィブリンベースの二成分の膠)の使用によって達成される。しかし、上記の膠は、重篤な取り扱い上の問題が主な理由で、現在のところ満足のいくものが示されていない。
【特許文献1】米国特許第4,264,155号明細書
【特許文献2】国際公開第95/13764号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの欠点および他の欠点を考えると、生物医学的成形物、特に角膜アンレーのための改良された材料への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、操作されたタンパク質ならびにその操作されたタンパク質を作製する方法および使用する方法を提供する。本発明の操作されたタンパク質は、任意の天然に存在しないタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであり得、これらは架橋される場合、望ましい光学的特性を有するレンズを形成し得る。本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、少なくとも1つのフィブロネクチンドメインおよび少なくとも1つのエラスチンドメインを含む。このタンパク質は、当業者に公知の方法に従って合成され得、組換えタンパク質または融合タンパク質であり得る。フィブロネクチンドメインは、特定に実施形態において、CS1、CS5もしくはIII型ドメイン、またはRGDドメインを含み得る。他の特定の実施形態において、エラスチンドメインは、アミノ酸配列VPGVG、VPGKG、VPGIGのうちの1つ、またはこれらのアミノ酸配列の組み合わせ、あるいはそれらの機能的等価物を含む。
【0015】
1つの実施形態において、操作されたタンパク質は、配列番号1(LD−YAVTGRGDSPASSKPIA((VPGIG)VPGKG(VPGIG)VP)を含む。また、タンパク質が精製を容易にするために特定のタグ(例えば、Hisタグ)を有し得ることも意図される。当業者は、そのようなタグが切断されるかまたは他の場合には除去され、操作されたタンパク質の物質特性に寄与しないことを認識する。本発明の1つの実施形態において、操作されたタンパク質は30キロダルトン未満、15キロダルトン未満、または10キロダルトン未満である。
【0016】
タンパク質は、本発明に従って架橋され得る。架橋は化学的架橋または紫外線架橋であることが意図される。特定の実施形態において、架橋は、架橋された生成物中に最小限の不純物を残すような様式で生じる。当業者は、操作されたタンパク質の弾性特性が架橋の程度によって変化され得ること、およびより硬質な生成物が増加された架橋によって形成され得ることを認識する。当業者はまた、架橋の増加がタンパク質の設計を変更することによって達成され得ることを認識する。例えば、本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、ドメインVPGKGにおけるリジン残基を介して架橋される。架橋に利用可能なリジン残基の数が増加することは、そのタンパク質の弾性特性を変化させ得る。従って、配列番号1のタンパク質は、VPGIG繰り返しブロックの数 対 VPGKGブロックの数を変化させることによって変わり得る。特定の実施形態において、架橋された生成物中の不純物は、リンスすることまたは化学的抽出によって除去され得る。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、フィブロネクチン様ドメインとエラスチン様ドメインとの繰り返しブロックの鎖を含む操作されたタンパク組成物を提供する。その操作されたタンパク質組成物はまた、フィブロイン、エラスチン、ケラチン、コラーゲンまたは繰り返し単位の組み合わせの繰り返しブロックを含み得ることが意図される。
【0018】
本発明の1つの実施形態は、操作されたタンパク質を含むレンズであり、ここで、その操作されたタンパク質、そのタンパク質は架橋される。特定の実施形態において、そのレンズは、コンタクトレンズ、角膜アンレー、角膜インレーまたは眼内レンズである。別の特定の実施形態において、その生成物は、角膜移植片または角膜パッチを形成する。本発明の操作されたタンパク質生成物は、角膜置換に適しており、ここで、すべてまたは一部の角膜組織が本明細書中に記載される操作されたタンパク質で置き換えられる。
【0019】
特定の実施形態において、レンズが生体適合性であり、光学的に透明であり、生分解に抵抗性であり、隣接細胞の接着を刺激し、そして好ましい弾性特性を有することが意図される。本発明の1つの実施形態において、レンズは約0.01Mpa〜約5.0Mpaの弾性率を有する。別の実施形態において、レンズは約0.05Mpa〜約2.0Mpaの弾性率を有する。別の実施形態において、レンズは内毒素または他の混入物を実質的に含まない。
【0020】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載される操作されたタンパク質から作製されるフィルムまたはコーティングである。
【0021】
本発明の別の実施形態は、角膜中または角膜上に操作されたタンパク質を含む角膜アンレーを移植することによって眼の光学的特性を矯正するための方法であり、ここで、そのタンパク質は少なくとも1つのフィブロネクチンドメインおよび少なくとも1つのエラスチンドメインを含む。
【0022】
特定の実施形態において、調節可能な生物医学的移植物(例えば、角膜移植物)が、光化学的架橋に感受性の反応性側鎖を含めることによって、操作されたタンパク質から調製され得ることが意図される。例えば、アクリロイル基またはメタクリロイル基が、本発明のタンパク質のリジン側鎖に結合され得る。当業者は、アクリロイルまたはメタクリロイルを有する単一の操作されたタンパク質中のアミノ酸側鎖の数が調節され得ることを認識する。本発明の特定の実施形態において、各々の操作されたタンパク質は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する少なくとも1つの改変されたリジン残基を有する。本発明の他の実施形態において、いくつかのリジン残基が改変されるが、他のものは改変されない。当業者は、改変されたリジン残基の数を変化させることが様々な物質特性を有する光硬化可能な改変体をもたらすことを認識する。当業者は、他のアミノ酸残基が架橋の程度を増大する反応性側鎖を用いて同様に改変されることを認識する。当業者は、眼科レンズが調節され得る技術を認識する。例えば、米国特許公開番号第20030176521号および同第20030174375号(これらの明細書の両方が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、パターン化された照射および浸透勾配に応じた低分子量種の拡散を通して移植物の局所的弯曲を変化させるための基礎を提供する低分子量のタンパク質である。意図された形状変化が達成された後、その構造は移植物全体のさらなる照射によって「ロック」される。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、本発明の操作されたタンパク質は、操作されたタンパク質溶液を通して拡散し得、架橋もしくは重合プロセスを補助し得る低分子と接触される。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、本発明の操作されたタンパク質は、すべてまたは一部の角膜の置換のための移植片を形成し得る。
【0026】
前述のことは、以下に続く本発明の詳細な説明がより十分に理解され得るように、本発明の特徴および技術的な利点をいくぶん大まかに概説している。本発明のさらなる特徴および利点は、以下に記載される。開示される概念および特定の実施形態は、本発明の同様の目的を果たすために他の構造を改変または設計するための基礎として容易に利用され得ることが認識されるべきである。また、そのような等価な構成は本明細書に示される本発明から逸脱しないことが認識されるべきである。本発明の特徴的なことであると理解される新規な特徴(その構成および操作方法の両方について)は、さらなる目的および利点と一緒に、添付の図面に関して考慮された場合に以下の説明からより十分に理解される。しかし、各々の図面は例示および説明のみの目的のために提供され、本発明の制限の規定として意図されないことが明確に理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(I.本発明)
本発明は、操作されたタンパク質生成物に関し、この生成物は、医学的適用(眼科用、外科用、整形外科用および心臓学用の移植物を含む)に有用な成形物品を形成し得る。操作されたタンパク質から作製されたこれらの材料はまた、層状角膜移植または全層角膜移植の後に角膜の一部または全体を置き換えるために(すなわち、移植組織として)使用され得る。本発明の操作されたタンパク質材料および生成物は、アンレーおよびインレーの両方としての役割を果たし得る。操作されたタンパク質材料および生成物は、白内障の手術において水晶体を置き換えるためかまたは有水晶体眼内レンズとして使用され得る。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質から作製されるレンズは、以下の望ましい眼科的特性のうちの少なくとも1つを有し、特定の実施形態ではこれらの眼科的特性のすべてを有する:生体適合性;近視、遠視および乱視の予測可能な矯正;重度の他の収差(特に、球面収差)を矯正して20/20よりもよい視覚を与える能力;挿入の容易さおよび耐久性を可能にする機械的特性;長期にわたる安定な屈折矯正を維持する能力;製造の容易さおよび低い製造費;ならびに可撤性。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、操作されたタンパク質生成物は角膜アンレーである。本発明によって意図される角膜アンレーレンズは、デノボ設計されたタンパク質から構成され、望ましい光学的特性を提供するドメインを含むように遺伝的に操作される。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、ヒトフィブロネクチンおよび哺乳動物のエラスチンから作製される。アミノ酸配列 アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)を含み得るフィブロネクチンドメインは、細胞増殖および細胞接着を容易にするように設計される。エラスチン様ドメインは、タンパク質の大部分を構成し得、架橋された材料の弾性を確実にするように設計される。角膜アンレーの基礎としての操作されたタンパク質の適用は、これまでに検討されていない。これらのタンパク質は、以下の理由により、角膜アンレーにおける適用に対する利点を有する:
1)RGD配列は多くの細胞型に対する接着を促進することが公知である
2)エラスチン様材料は生体適合性であることが以前に示されている
3)エラスチン、およびエラスチン様タンパク質は、一般的に、酵素的分解に抵抗性であり、このことは角膜におけるこれらの期待される寿命を延ばす
4)エラスチン様ドメインは水中で高い分子移動度を示し、このことはアンレーフィルムを通した栄養分の良好な拡散を促進することが期待される
5)タンパク質のモジュール設計は、ほんのわずかのアミノ酸ドメインが存在するが、角膜アンレーで使用され得る天然のタンパク質(例えば、コラーゲン)の生物学はより複雑であることを意味する
6)設計されたタンパク質は、透明なフィルム(角膜レンズに成形されたフィルムを含む)を生成するための既存の化学を用いて架橋され得る
7)架橋されたタンパク質フィルムのモジュールはおおよそ0.2MPaであり、これは、適用のために十分に可撓性であり、良好な外科的操作性を可能にするのに十分である。
【0031】
本明細書中に記載される角膜アンレーは、その光学的特性を変化させる(例えば、眼の視覚欠損を矯正する)ため、または眼の外見を変化させる(例えば、瞳孔の呈色)ために、生角膜に外科的に結び付けられ得、そして好ましくは生角膜に取り付けられ得る。アンレーまたはその一部は、当該分野で周知の1以上の色素もしくは染料で着色され得る。着色されたアンレーおよび特に瞳孔領域の周囲の着色は、移植における眼の色合いの変化をもたらす。
【0032】
本発明はまた、操作されたタンパク質ポリマー組成物について多くの他の用途を意図する。用途としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:操作された組織および器官(操作されたタンパク質材料のパッチ、プラグまたは組織のような構造物を含む)の製造。これらの構成物および他の構成物は、細胞で補完されても細胞の補完なしで使用されてもよい。さらなる用途としては、以下が挙げられる:補綴学的移植物および他の移植物;組織足場、インビトロもしくはインビボのいずれかでの細胞の分化の誘導;創傷の修復もしくは包帯する(dressing)こと;止血デバイス;組織修復および組織支持において使用するためのデバイスもしくは構造体(例えば、縫合糸、接着剤、外科用ネジおよび眼科用ネジ、ならびに外科用プレートおよび眼科用プレート);合成移植物のための天然のコーティングもしくは成分;美容用の移植物および支持体;器官もしくは組織のための修復もしくは構造的支持;物質送達;生物工学的プラットホーム;細胞への物質の影響を試験するためのプラットホーム;細胞培養物;ならびに多くの他の用途。
【0033】
(II.定義)
本明細書中で使用される場合、単語「a」もしくは「an」の使用は、文章および/または明細書中で用語「〜を含む(comprising)」に関して使用される場合は、「1」を意味するが、「1以上」、「少なくとも1」および「1または1よりも大きい」とも一致する。本明細書中で使用される場合、「別の」とは、少なくとも第二またはそれ以降を意味し得る。なおさらに、用語「〜を有する」、「〜を含む(including)」、「〜を含む(containing)」および「〜を含む(comprising)」は、交換可能であり、当業者はこれらの用語が非限定的な用語(open ended term)であることを認識している。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「cDNA」は、一本鎖のDNA分子または二本鎖のDNA分子を指し得る。一本鎖のcDNA分子について、DNA鎖は、遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(「mRNA」)に相補的であり得る。二本鎖のcDNA分子について、一方のDNA鎖はmRNAに相補的であり、他方は第一のDNA鎖に相補的である。
【0035】
用語「保存的置換」は、分子の活性(特異性または結合親和性)を実質的に変えないアミノ酸置換を反映するために、タンパク質またはペプチドに関して使用される。代表的な保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸に置換することを含む。以下の6つの群は、各々、互いに代表的な保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。本発明の内在化ペプチド(internalizing peptide)は、その置換がそのペプチドの内在的能力に影響を与えないかぎり、保存的置換を含むように改変され得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「コード配列」または特定のタンパク質を「コードするヌクレオチド配列」は、適切な制御配列の制御下に置かれた場合にインビボまたはインビトロで転写され、ポリペプチドに翻訳される核酸分子である。コード配列の境界は、5’末端における開始コドンおよび3’末端における翻訳終止コドンによって決定される。コード配列としては、原核生物の核酸分子、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳類)の供給源由来のゲノムDNA、ウイルスRNAもしくはウイルスDNA、および同等の合成ヌクレオチド分子が挙げられ得るが、これらに限定されない。転写終止配列は、通常は、コード配列に対して3’に位置する。
【0037】
本明細書中で使用される場合、タンパク質「ドメイン」とは、ペプチド配列の機能単位を指す。例えば、VPGVGは、エラスチンドメインである。さらに、フィブロネクチンのCS1領域は、ドメインである。本発明の目的のために、タンパク質ドメインはいかなる特定の構造的特性もフォールディング特性も有する必要はない。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「操作されたタンパク質」とは、天然に存在しないポリペプチドをいう。この用語は、例えば、天然に存在するタンパク質に対する1以上の変化(付加、欠失または置換が挙げられる)を含むポリペプチドを包含し、ここで、そのような変化は、組換えDNA技術によって導入された。この用語はまた、人によって生成されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、人工タンパク質、融合タンパク質、およびキメラポリペプチドを包含する。当業者は、本発明のこの局面に従って有用な操作されたタンパク質を容易に生成し得る。数個の所望のタンパク質フラグメントまたはペプチドがベクターに取り込まれたヌクレオチド配列中にコードされる場合、当業者は、そのタンパク質フラグメトまたはペプチドが、1以上のアミノ酸からなるスペーサー分子(例えば、ペプチド)によって分離され得ることを認識する。一般的には、そのスペーサーは、その所望のタンパク質フラグメントまたはペプチドと一緒に結合するか、またはその所望のタンパク質フラグメントまたはペプチドとの間にいくらかの最小限の距離もしくは他の空間的関係を保つこと以外に特定の生物学的活性を有さない。しかし、スペーサーの構成アミノ酸は、その分子のいくつかの特性(例えば、フォールディング、正味電荷、または疎水性)に影響を及ぼすように選択され得る。発現された組換えタンパク質の精製において有用であり得る残基の生成についてコードするヌクレオチド配列は、ベクター中に構築され得る。このような配列は、当該分野で公知である。例えば、ポリヒスチジン配列についてコードするヌクレオチド配列は、ニッケルカラムでの発現された組換えタンパク質の精製を容易にするためにベクターに加えられ得る。一旦発現されると、組換えペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、当業者に公知の標準的な手順(硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などが挙げられる)に従って精製され得る。50%〜99%の均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、80%〜95%またはより高い均一性が治療剤としての使用に最も好ましい。操作されたタンパク質は、任意の手段(例えば、ペプチド合成、ポリペプチド合成またはタンパク質合成が挙げられる)によって生成され得る。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」とは、規定された生物学的活性を有する核酸またはタンパク質生成物を直接的にかまたは間接的にかのいずれかでコードするDNA分子をいう。当該分野において頻繁に遭遇する遺伝子の1つのクラスは、いわゆる「レポーター遺伝子」である。レポーター遺伝子は、その発現が、レポーター遺伝子が作動可能に連結されている制御配列の活性の尺度として使用される任意の遺伝子である。一般的に使用されるレポーター遺伝子の例としては、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアミノトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、ルシフェラーゼ(luc)遺伝子、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP))をコードする遺伝子などが挙げられるが、これらに限定されない。理想的には、レポーター遺伝子は、研究の標的である根本的な生物学的プロセスを妨害しない。しかし、いくつかの例では、制御配列の活性を、その配列を遺伝子(その生成物は、遺伝子発現が起こる系の根本的な生物学を変える)に連結することによって測定することが望ましい可能性がある。このような遺伝子は、レポーター遺伝子でもあるが、多くの場合「生物学的に活性な」遺伝子といわれる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「ゲノムDNA」とは、DNA分子(それからRNA分子が転写される)をいう。RNA分子は、最も多くの場合、規定された生物学的活性を有するタンパク質に最終的には転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)分子であるが、あるいは、タンパク質合成プロセスのメディエーターであるトランスファーRNA(tRNA)分子であってもリボソームRNA(rRNA)分子であってもよい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、2つの核酸分子が2つ以上の定量化可能な生物学的機能を共有する場合、その2つの核酸分子は「機能的に等価」である。例えば、異なる一次配列の核酸分子は、同一のポリペプチドをコードし得;このような分子は、異なっているが、機能的に等価である。この例において、これらの分子はまた、高度の配列相同性を共有する。同様に、異なる一次配列の核酸分子は、RNA転写のプロモーターとしての活性を共有し得、ここでこのRNA転写は、細胞の特異的な亜集団において起こり、かつ特定の群の制御物質に応答する。このような核酸分子もまた、機能的に等価である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、DNA構築物の「異種」領域は、本来は他の分子と結合しては見出されない別のDNA分子の中にあるか、またはその別のDNA分子に結合された、同定可能なDNAのセグメントである。異種コード配列の例は、コード配列自体は本来は見出されない構築物(例えば、ネイティブな遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子改変体または天然に存在する突然変異事象は、本明細書中で使用されるDNAの異種領域を生じさせない。
【0043】
本明細書中で使用される場合、標準的な配列分析ソフトウェア(例えば、Vector NTI、GCG、またはBLAST)を使用して決定されたとき、2つの核酸分子を含むヌクレオチドの少なくとも約60%〜約75%、または好ましくは少なくとも約80%、または最も好ましくは少なくとも約90%が、その分子の規定された長さにわたって同一である場合、その2つの核酸分子は「相同」である。相同であるDNA配列は、特定の系のために規定されたような、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションにより同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当該分野の技術の範囲内である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Volume I.Ausubelら編、John Wiley:New York N.Y.,pp.2.10.1−2.10.16(1989年に初めて出版されたが、毎年再版されている)を参照のこと。この文献において、ニトロセルロースフィルター上に固定化されたDNAサンプルに対する最大のハイブリダイゼーション特異性は、65℃〜68℃またはそれより高い温度にて、0.1〜2×SSC(15〜30mM NaCl、1.5〜3mM クエン酸ナトリウム(pH7.0))と0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とを含む溶液における繰り返し洗浄を用いることにより、達成され得る。ナイロンフィルター上に固定化されたDNAサンプルに対しては、ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄液は、40mM NaPO(pH7.2)、1〜2% SDSおよび1mM EDTAからなり得る。再度、少なくとも65℃〜68℃の洗浄温度が推奨されるが、本当にストリンジェントな洗浄に必要とされる最適な温度は、核酸プローブの長さ、そのGC含量、一価カチオンの濃度および(もし存在するならば)そのハイブリダイゼーション溶液に含まれていたホルムアミドの濃度に依存する(Current Protocols in Molecular Biology,Volume I.Ausubelら編、John Wiley:New York N.Y.,pp.2.10.1−2.10.16.1989、毎年更新)。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNAおよびRNAの両方を包含し、そして他に特定されない限り、二本鎖核酸および一本鎖核酸の両方を包含する。DNAとRNAの両方を含む分子(DNA/RNAへテロ二本鎖(DNA/RNAハイブリッドとしても既知)または同じ鎖内にDNAとRNAの両方を含有するキメラ分子のいずれか)もまた、包含される。本発明の核酸分子は、改変された塩基を含み得る。本発明は、「センス」方向(すなわち、遺伝子のコード鎖と同じ方向)の核酸分子および「アンチセンス」方向(すなわち、遺伝子のコード鎖と相補的な方向)の核酸分子の両方を提供する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成成分が、その通常の機能を行うように構成された核酸分子の配置をいう。
【0046】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、隣接する残基のα−アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合により互いに結合された、直鎖状の一連のアミノ酸残基を指すように、本明細書中で使用される。そのアミノ酸残基は、好ましくは、天然の「L」異性体形態である。しかし、「D」異性体形態の残基が、所望の機能的特性がそのポリペプチドによって保持される限り、任意のL−アミノ酸残基に対して置換され得る。さらに、そのアミノ酸は、20個の「標準的な」アミノ酸に加えて、改変され、かつ通常ではないアミノ酸を含む。さらに、アミノ酸残基の配列の開始または末端におけるダッシュは、1以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合またはカルボキシル末端基もしくはヒドロキシル末端基への共有結合のいずれかを示すことに、注意するべきである。
【0047】
本明細書中で使用される場合、外来性DNAは、「形質導入」、「トランスフェクション」または「形質転換」とよばれるプロセスによって、細胞に導入され得る。形質導入とは、ウイルスに由来するベクターを介する、真核細胞の膜を通しての遺伝物質(RNAまたはDNAのいずれか)の導入をいう。トランスフェクションとは、化学的手段(例えば、リン酸カルシウム沈殿による)、機械的手段(例えば、エレクトロポレーション)、または物理的手段(例えば、生物弾道送達(bioballistic delivery))による、真核生物の膜を通しての遺伝物質の導入をいう。形質転換とは、化学的手段、機械的手段、物理的手段または生物学的手段による、非真核細胞(例えば、細菌細胞または酵母細胞)への遺伝物質の導入をいう。細胞内へ送達される遺伝物質は、染色体DNAに組み込まれても(共有結合されても)よいし、されなくてもよい。
【0048】
(III.角膜上皮)
角膜は、視覚のためのいくつかの重要な機能を果たす。この機能は、例えば、入ってくる光の80%以上を網膜に屈折させること、有害な紫外線を除去すること、および視覚的な「窓」を維持することである。角膜は、5つの構造的層:上皮、ボーマン層、実質、デセメ膜、および内皮、からなる。最も外側の層である角膜上皮は、細胞間接合、化学的シグナル伝達、および神経終末の複雑な配置を有する多層構造である。身体中の他の上皮層と同様に、角膜上皮は、病原体の進入を阻み、流体流出に対する障壁を提供し、そして研磨損傷に対して保護する。上皮は、流体の層である涙のみによって、外的環境から分離されている。
【0049】
角膜上皮は、緊密な細胞接合により互いに接着している3つの型の細胞−−基底細胞(1層)、翼状細胞(1〜3層)および扁平上皮細胞(3〜4層)−−からなる。その基底細胞はまた、下にある細胞外マトリックスと、そして最終的にボーマン層と、強力な接着複合体を形成する。角膜実質の最も前側の層であるボーマン層は、コラーゲン原線維と、布様のマトリックスにランダムな様式で密に織られた結合プロテオグリカンとからなる、無細胞領域である。上皮の細胞のうち、基底細胞のみが、有糸分裂能力を有する。身体における全ての層別化した上皮と同様に、角膜上皮は自己再生性であり;完全な細胞の代謝回転が、5〜7日ごとに起こる。一般に、基底細胞が有糸分裂をした後に、娘細胞が、最終分化および結果として起こる落屑に向けて、外側に動き出す。C.Hannaら、「Cell production and migration in the epithelial layer of the cornea」、Arch.Ophthalmol.,vol.64,pp.536(1960)を参照のこと。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、角膜アンレー、眼内レンズまたはコンタクトレンズを含む本発明の眼科的に操作されたタンパク質生成物が、その生成物の表面上で、上皮細胞のコンフルエントな成長を示すことが企図される。さらに、本発明のいくつかの実施形態において、操作されたタンパク質生成物は、分解に対する抵抗性および拒絶に対する抵抗性を示す。特定の実施形態において、操作されたタンパク質は、神経成長因子の機能的フラグメントのような、移植物を通して神経成長を促進する成分を含む。特定の実施形態において、適切な場合、外科的技術が、本発明のアンレーを物理的接着によって角膜実質に接着させるために使用され得る。他の実施形態において、角膜アンレーは、生物接着性の接着剤(例えば、フィブリン組織接着剤)の手段により、角膜に接着され得る。特定の実施形態において、角膜上皮とボーマン層との間の外科的ポケットまたは弁が、外科的にか作製され得るか、または特定の実施形態においてはレーザーの使用により作製され得る。次いで、本発明のレンズは、生物接着剤を使用せずに、その弁の下またはそのポケット内に移植され得る。当業者は、わずかな設計の改変が、特定の利点(例えば、角膜におけるアンレーとボーマン層との間の接着を強化すること)を促進するために、操作されたタンパク質の設計または操作されたタンパク質生成物の形状を改変するのに必要とされ得ることを認識し得る。
【0051】
(IV.操作されたタンパク質)
本発明の操作されたタンパク質は、成形された生成物に架橋されるかまたは形成されたときに、好ましい眼科特性(例えば、弾性、透明性、生体適合性など)を有する任意のタンパク質であり得る。本発明の特定の実施形態において、その操作されたタンパク質は、融合タンパク質またはキメラタンパク質である。本発明の特定の実施形態において、その操作されたタンパク質は、種々のタンパク質供給源由来のヒトタンパク質ドメインの組み合わせから作製される。本発明の1つの実施形態において、その操作されたタンパク質は、ヒト細胞外マトリックスタンパク質由来の少なくとも1つのドメインを含む。本発明の別の実施形態において、そのヒトタンパク質ドメインは、操作されたタンパク質の好ましい眼科特性を強めるように改変されている野生型タンパク質の改変体である。
【0052】
操作されたタンパク質における使用に適したドメインまたはタンパク質フラグメントの1つの例は、エラスチンドメインである。エラスチン(配列番号29)は、高い強度および可撓性を提供する構造分子である。エラスチンは、崩壊に抵抗性である。その配列は、大部分が、疎水性アミノ酸の単純な繰り返し配列からなる。エラスチンの独特の構造および不溶性の原因となる、エラスチンの重要な特徴は、リジン残基においてで生じるポリペプチド鎖間の広範囲の架橋である。エラスチンの1つの代表的な繰り返し配列は、VPGVGである。フィブロネクチン(配列番号28)は、I型、II型およびIII型として知られる3つの原型的な型のドメインの相同的繰り返しからなるモジュラータンパク質である。III型フィブロネクチン(FN3)の繰り返しは、最も大きく、かつ最も一般的なフィブロネクチンサブドメインである。FN3は、機能的かつ構造的モジュール性を示す。他の分子との相互作用の部位は、種々のFN3ドメインにおいて見出されるアミノ酸(例えば、Arg−Gly−Asp(RGD))配列の短いストレッチにマッピングされている。このRGD配列は、インテグリンとの相互作用に関与する。このRGD配列を含む小ペプチドは、血栓症、炎症および腫瘍転移に関連する種々の細胞接着事象(invent)を調節し得る。角膜において、フィブロネクチンは、創傷治癒における重要な役割を果たすことが知られており;それは、上皮細胞を、成長、移動させ、そして下にある細胞外マトリックスへ接着させる引き金となる。FN3ドメインを含むことが知られているいくつかの他のタンパク質は;コンタクチン(Contactin)2またはアキソニン(axonin)−1タンパク質、コラーゲンα1鎖、神経細胞接着タンパク質L1、白血球共通抗原、およびコンタクチンタンパク質である。
【0053】
一般的に、ブロックは、タンパク質において生じるペプチド配列を構成する、繰り返しのアミノ酸の群を含む。遺伝的に操作されたタンパク質は、そのブロックの繰り返しがより大きなものであり得(連続したポリペプチドに対して、数百のアミノ酸 対 10未満)、そしてそのブロックの繰り返しの配列がほとんど無限に複雑であるという点で、天然に見られる配列のポリペプチドから定量的に区別される。表1は、遺伝的に操作されたブロックの例を示す。表1および遺伝的に操作されたブロックのさらなる説明は、Protein−Based Materials(Kevin McGrathおよびDavid Kaplan編)、Chapter2,pp.37−60,Birkhauser,Boston(1997)のFranco A.FerrariおよびJoseph Cappello,Biosynthesis of Protein Polymersに見られ得る。本発明の操作されたタンパク質は、以下の任意の配列を任意の順序で、任意の数の繰り返しで、そして任意の他の適切なドメイン(例えば、フィブロネクチンドメインまたはエラスチンドメイン)と組み合わせて含み、レンズまたは人工組織へと形成された場合に好ましい眼科的特性を提供し得る。本発明の操作されたタンパク質はまた、本明細書中に記載される任意の配列の機能的改変体も包含する。本発明の特定の実施形態において、機能的改変体は、その参照配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。
【0054】
【表1−1】

【0055】
【表1−2】

選択されたタンパク質ポリマーの代表的なアミノ酸配列。SLP=絹様タンパク質;SLPF=フィブロネクチン由来のRGD配列を含有するSLP;SLPL 3/0およびSLPL 3/1=ラミニンタンパク質由来の2つの異なる配列を含有するSLP;ELP=エラスチン様タンパク質;SELP=絹エラスチン様(silk elastin like)タンパク質;CLP=コラーゲン様タンパク質;CLP−CB=ヒトコラーゲン由来の細胞結合ドメインを含有するCLP;KLP=ケラチン様タンパク質。
【0056】
操作されたタンパク質の実施形態は、架橋されたタンパク質生成物を包含する。そのタンパク質は、そのタンパク質と、適切かつ生体適合性の架橋剤とを反応させることにより、架橋され得る。架橋剤としては、グルタルアルデヒド、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、p−アジドベンゾリルヒドラジド(p−Azidobenzolyl Hydazide)、N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド、4−[p−アジドサリチルアミド]ブチルアミン、および任意の他の適した架橋剤ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。種々の架橋剤の説明および一覧表ならびにこのような薬剤との架橋工程を実施する方法の開示は、Pierce Endogen 2001−2002 Catalog(これは、本明細書中に参考として援用される)において見られ得る。上記操作されたタンパク質は、当該分野において一般的に知られた方法を用いることにより、架橋され得る。例えば、その操作されたタンパク質は、ガス状架橋試薬、液体架橋試薬、光またはそれらの組み合わせと、その操作されたタンパク質デバイスとを、曝露、接触および/またはインキュベートすることにより、部分的または完全に架橋され得る。
【0057】
調節可能な生物医学移植物(例えば、角膜移植物)は、光化学架橋に感受性の反応性側鎖を含めることにより、上記操作されたタンパク質から調製され得る。アクリロイル基またはメタクリロイル基の、そのタンパク質のリジン側鎖への結合により、レーザー照射により架橋され得る光硬化可能な改変体がもたらされる。同様に官能化された低分子量タンパク質を含めることは、パターン化された照射および浸透勾配に応じた、低分子量種の拡散により、移植物の局所的屈曲率を変化させるための基礎を提供する。意図された形状変化が達成された後、構造が、完全な移植物のさらなる照射により「ロック」される。
【0058】
本発明の操作されたタンパク質はまた、そのタンパク質が例えばレンズとして使用される場合に、患者に治療的利益を提供するための、治療的ペプチドフラグメントを包含し得る。
【0059】
(V.ペプチド合成)
本発明の操作されたタンパク質は、当業者に周知のペプチド合成技術に従って、合成され得る(Bodanszkyら、1976)、Peptide Synthesis,1985;Solid Phase Peptide Synthelia,1984);The Proteins,1976。このような合成において使用するための適切な保護基は、上記の文書およびProtective Groups in Organic Chemistry,1973において見られる。これらの合成方法は、伸長しているペプチド鎖への、1つ以上のアミノ酸残基または適節に保護されたアミノ酸残基の連続的付加に関する。通常は、第一のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、適した、選択的に除去可能な保護基により保護される。異なる、選択的に除去可能な保護基は、リジンのような反応性側鎖を含有するアミノ酸のために用いられる。
【0060】
例として固層合成を使用する場合、保護または誘導体化されたアミノ酸が、その保護されていないカルボキシル基またはアミノ基を通じて、不活性な固体支持体に結合される。次いでそのアミノ基またはカルボキシル基の保護基が選択的に除去され、適切に保護された相補的な(アミノまたはカルボキシル)基を有する、配列における次のアミノ酸が、その固体支持体にすでに結合されている残基と、混合および反応される。アミノ基またはカルボキシル基の保護基が、次いで、この新しく付加されたアミノ酸残基から除去され、そして次の(適切に保護された)アミノ酸が次いで付加される、などである。全ての所望のアミノ酸が正確な配列で連結された後、いずれの残りの末端保護基および側鎖保護基(および固体支持体)も連続的または同時に除去され、最終的なペプチドを提供する。本発明のペプチドは、好ましくは、ベンジル化アミノ酸またはメチルベンジル化アミノ酸を欠く。このような保護基部分は合成の過程において使用され得るが、それらは、そのペプチドが使用される前に除去される。他の箇所に記載されるように、コンホメーションを防止するための分子内結合を形成するために、更なる反応が必要とされ得る。
【0061】
(VI.融合タンパク質)
本発明は、組み換えタンパク質であり得る操作されたタンパク質に関する。本発明の特定の実施形態において、融合タンパク質は、有用であり得る。融合タンパク質は、一般に、標準的な技術(化学的結合体化を含む)を使用して調製され得る。好ましくは、融合タンパク質は、発現系において非融合タンパク質に対して増加したレベルの産生を可能にする組み換えタンパク質として発現される。簡潔に述べると、ポリペプチド成分をコードするDNA配列が別個に組み立てられ、適切な発現ベクター内にライゲーションされる。第一のポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端が、ペプチドリンカーを用いてかまたは用いずに、第二のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端にライゲーションされ、その結果、その配列のリーディングフレームが一致(in phase)する。これにより、両方のポリペプチド成分の生物学的活性を保持する単一の融合タンパク質への翻訳が可能になる。
【0062】
ペプチドリンカー配列は、第一のポリペプチド成分と第二のポリペプチド成分とを、各々のポリペプチドがその二次構造および三次構造にフォールディングされることを確実にするのに十分な距離で分離するために、用いられ得る。このようなペプチドリンカー配列は、当該分野において周知な標準的な技術を使用して、上記融合タンパク質に組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づいて選択され得る:(1)柔軟な、伸張したコンホメーションをとる能力;(2)第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドにおける機能的エピトープと相互作用し得る二次構造をとることができないこと;ならびに(3)ポリペプチドの機能的エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基を欠くこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基およびSer残基を含む。他の中性に近いアミノ酸(例えば、ThrおよびAla)もまた、リンカー配列において使用され得る。リンカーとして有用に用いられ得るアミノ酸配列としては、Marateaら、Gene 40:39−46,1985;Murphyら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 83:8258−8262,1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されるものが挙げられる。これらのリンカー配列は、一般に、1アミノ酸長〜約50アミノ酸長であり得る。第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、かつ立体的障害を妨げるために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要とされない。
【0063】
ライゲーションされたDNA配列は、適切な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントに、作動可能に連結される。DNAの発現を担う、その調節エレメントは、上記第一のポリペプチドをコードするDNA配列に対して5’のみに位置する。同様に、翻訳終結シグナルおよび転写終結シグナルをを終わらせるために必要とされる停止コドンは、上記第二のポリペプチドをコードするDNA配列に対して3’のみに存在する。
【0064】
(VII.タンパク質発現系)
本発明の操作されたタンパク質は、組み換え産生され得る。原核細胞ベースの系および真核細胞ベースの系は、核酸配列または同族のポリペプチド、タンパク質およびペプチドを産生するために、本発明と一緒に使用するために用いられ得る。多くのこのような系は、商業的かつ広範に利用可能である。
【0065】
例えば米国特許第5,871,986号、同第4,879,236号(いずれも本明細書中に参考として援用される)に記載され、例えばINVITROGEN(登録商標)製のMAXBAC(登録商標)2.0およびCLONTECH(登録商標)製のBACPACKTM BACULOVIRUS EXPRESSION SYSTEMの名の下で購入され得る昆虫細胞/バキュロウイルス系は、異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現を産生を実現し得る。
【0066】
発現系の他の例としては、STRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROLTM Inducible Mammalian Expression Systemが挙げられる。これは、エクジソン誘導性レポーター、またはE.coli発現系であるそのpET発現系を含む。誘導性発現系の別の例は、INVITROGEN(登録商標)から入手可能であり、これは、全長CMVプロモーターを使用する誘導性哺乳動物発現系であるT−REXTM(テトラサイクリン制御発現)系を有する。INVITROGEN(登録商標)はまた、Pichia methanolica発現系と呼ばれる酵母発現系を提供し、これは、メチロトローフ酵母であるPichia methanolicaにおける高レベルの組み換えタンパク質産生のために設計されている。当業者は、どのようにベクター(例えば、発現構築物)を発現し、核酸配列またはその同族のポリペプチド、タンパク質またはペプチドを産生するかを知っている。
【0067】
本発明の方法により産生されるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが、「過剰発現」され得る、すなわち、細胞におけるその本来の発現に対して増加したレベルで発現され得ることが企図される。そのような過剰発現は、種々の方法(放射性標識および/またはタンパク質精製を含む)により評価され得る。しかし、単純かつ直接的な方法が好ましく、これは、SDS/PAGEおよびタンパク質染色またはウェスタンブロッティング、それに引き続く定量的分析(例えば、生じたゲルまたはブロットのデンシトメトリー走査)を含む。本来の細胞におけるレベルと比較して、上記組み換えタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのレベルにおける特異的な増加は、過剰発現の指標であり、宿主細胞により産生され、そして例えばゲル上で見ることができる他のタンパク質に対する、特異的なタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの相対的存在量も同様に、過剰発現の指標である。
【0068】
いくつかの実施形態において、発現されたタンパク質様(proteinaceous)配列は、宿主細胞において封入体を形成し、その宿主細胞は、例えば細胞ホモジナイザーにおける破壊により溶解され、洗浄され、そして/または遠心分離されて、可溶性細胞成分から、濃縮封入体および細胞膜を分離する。緩衝液への糖(例えば、スクロース)の混和および選択的な速度での遠心分離により、その濃縮封入体が選択的に濃縮されるような条件下で、この遠心分離は実施され得る。封入体は、当業者に公知であるように、還元剤(例えば、β−メルカプトエタノールまたはDTT(ジチオスレイトール))の存在下で、高濃度の尿素(例えば、8M)またはカオトロピック剤(例えば、塩酸グアニジン)を含む溶液において可溶化され、より所望されるコンホメーションにリフォールディングされる。
【0069】
(VIII.タンパク質様組成物)
特定の実施形態において、本発明の操作されたタンパク質は、タンパク質様分子であり得る。本明細書中で使用される場合、「タンパク質様分子」、「タンパク質様組成物」、「タンパク質様化合物」、「タンパク質様鎖」または「タンパク質様物質」は、一般に、少なくとも2つのアミノ酸のタンパク質またはポリペプチドを指すがこれらに限定されない。上記の「タンパク質様」の用語の全ては、本明細書中で交換可能に使用され得る。さらに、用語、タンパク質、ペプチドおよびポリペプチドは、本明細書中で交換可能に使用され得る。
【0070】
特定の実施形態において、タンパク質様分子または操作されたタンパク質の少なくとも1つのサイズは、約2〜約2500アミノ分子残基以上、およびこの中で導き出せる任意の範囲を有する分子を含み得るが、これらに限定されない。本発明は、本明細書中で議論される任意の配列の連続したアミノ酸の長さを含む。
【0071】
本明細書中で使用される場合、「アミノ分子」とは、あらゆるアミノ酸、アミノ酸誘導体または当業者に公知であるようなアミノ酸模倣物を指す。特定の実施形態において、タンパク質様分子の残基は、任意の非アミノ分子が、アミノ分子の残基の配列を中断することなく、連続している。他の実施形態において、配列は、1つ以上の非アミノ分子部分を含み得る。特定の実施形態において、タンパク質様分子の残基の配列は、1つ以上の非アミノ分子の部分により中断され得る。
【0072】
従って、用語「タンパク質様組成物」は、天然に合成されたタンパク質における20の共通したアミノ酸の少なくとも1つ、または、修飾アミノ酸もしくは異常な(unusual)アミノ酸の少なくとも1つを含む、アミノ分子配列を包含する。
【0073】
特定の実施形態において、タンパク質様組成物は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの少なくとも1つを含む。さらなる実施形態において、タンパク質様組成物は、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。本明細書中で使用される場合、用語「生体適合性」とは、本明細書中に記載される方法および量に従って、所定の生物に適用または投与される場合に、有意な有害な影響を生じない物質を指す。このような、有害または所望されない影響は、有意な毒性または有害な免疫学的反応のようなものである。好ましい実施形態において、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含有する組成物は、一般に、哺乳動物のタンパク質もしくはペプチド、または合成タンパク質もしくはペプチドであり、この各々が、本質的に、毒素、病原体および有害な免疫原を含まない。
【0074】
タンパク質様組成物は、当業者に公知の任意の技術により作製され得、これらの技術としては、標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク質様化合物の単離、およびタンパク質様物質の化学合成が挙げられる。種々の遺伝子についてのヌクレオチド、ならびにタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースで見出され得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGenbankおよびGenPeptデータベースである。これらの公知の遺伝子についてのコード領域は、本明細書中に開示され、そして、当業者に公知である技術を用いて、増幅および/または発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの種々の市販の調製物が、当業者に公知である。
【0075】
特定の実施形態において、タンパク質様化合物が精製され得る。一般に、「精製された」とは、種々の他のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドを取り除くために、分画に供された特定のもしくは所望のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの組成物を指し、この組成物は、例えば、その特定のもしくは所望のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドについての当業者に公知である、タンパク質アッセイによって評価され得ると、実質的にその活性を保持する。
【0076】
事実上、タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドのいずれかを含有する成分が、本明細書中に開示される組成物および方法において使用され得ることが企図される。しかし、タンパク質様物質は生体適合性であることが好ましい。特定の実施形態において、より粘性の組成物の形成が、この組成物を組織に対してより正確もしくはより容易に適用することを可能にし、そして、手順の間に組織との接触を維持することを可能にするという点で有利であるということが想定される。このような場合、ペプチド組成物、より好ましくは、ポリペプチド組成物もしくはタンパク質組成物の使用が企図される。粘性の範囲としては、約40ポアズ〜約100ポアズが挙げられるがこれらに限定されない。特定の局面において、約80ポアズ〜約100ポアズの粘性が好ましい。
【0077】
(IX.タンパク質様組成物の改変体)
本発明のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドのアミノ酸配列改変体は、置換改変体、挿入改変体もしくは欠失改変体であり得る。欠失改変体は、機能または免疫学的活性に必須でない、天然のタンパク質の1つ以上の残基を欠く。別の一般的な型の欠失改変体は、分泌シグナル配列、または、タンパク質を細胞の特定の部分に結合させるシグナル配列を欠くものである。挿入変異体は、代表的に、ポリペプチドの非末端の点における物質の付加を伴う。この付加としては、免疫反応性エピトープ、または単なる単一残基の挿入が挙げられ得る。融合タンパク質と呼ばれる、末端の付加は、以下に議論される。
【0078】
置換改変体は、代表的に、タンパク質内の1つ以上の部位でのあるアミノ酸の別のアミノ酸での交換を含み、そして、他の機能もしくは特性を失うことなく、ポリペプチドの1つ以上の特性(例えば、タンパク質分解性の切断に対する安定性)を調節するように設計され得る。この種の置換は、好ましくは、保存的であり、すなわち、1つのアミノ酸が、類似の形状および電荷のアミノ酸で置き換えられる。保存的置換は、当該分野で周知であり、例えば、アラニンのセリンへの変化;アルギニンのリジンへの変化;アスパラギンのグルタミンもしくはヒスチジンへの変化;アスパラギン酸のグルタミン酸への変化;システインのセリンへの変化;グルタミンのアスパラギンへの変化;グルタミン酸のアスパラギン酸への変化;グリシンのプロリンへの変化;ヒスチジンのアスパラギンもしくはグルタミンへの変化;イソロイシンのロイシンもしくはバリンへの変化;ロイシンのバリンもしくはイソロイシンへの変化;リジンのアルギニンへの変化;メチオニンのロイシンもしくはイソロイシンへの変化;フェニルアラニンのチロシン、ロイシンもしくはメチオニンへの変化;セリンのスレオニンへの変化;スレオニンのセリンへの変化;トリプトファンのチロシンへの変化;チロシンのトリプトファンもしくはフェニルアラニンへの変化;およびバリンのイソロイシンもしくはロイシンへの変化が挙げられる。
【0079】
用語「生物学的な機能的に等価」とは、当該分野で十分に理解され、そして、本明細書中でさらに詳細に定義される。従って、模倣物の生物学的活性が維持されるという条件で、そのペプチド模倣物のアミノ酸の約70%と約80%との間;またより好ましくは、約81%と約90%との間;またはなおより好ましくは、約91%と約99%との間のアミノ酸を有する配列が、ペプチド模倣物のアミノ酸に対して同一もしくは機能的に等価である(機能的に等価なコドンを列挙する、以下の表2を参照のこと)。
【0080】
【表2】

以下は、等価な、もしくは、なお改善された、第二世代分子(second−generation molecule)を作製するための、タンパク質のアミノ酸の変更に基づいた議論である。例えば、タンパク質構造において、特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合領域、もしくは、基質分子上の結合部位のような構造との双方向性の結合能を感知できるほど失うことなく、他のアミノ酸で置換され得る。そのタンパク質の生物学的な機能的活性を規定するのは、タンパク質の双方向性の能力および性質であるので、特定のアミノ酸置換が、タンパク質配列において、その根底にあるDNAコード配列において、作製され得るが、それでもやはり、類似の特性を有するタンパク質を生成する。従って、以下に議論されるような、生物学的有用性もしくは生物学的活性を感知できるほど失うことなく、遺伝子のDNA配列に種々の変化が作製され得ることが、本発明者らによって意図される。
【0081】
このような変化を作製する際に、アミノ酸のヒドロパシー指数(hydropathic index)が考慮され得る。タンパク質における双方向性の生物学的機能を比較する際のアミノ酸のヒドロパシー指数の重要性は、当該分野で一般に理解されている(KyteおよびDoolittle,1982)。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次いで、そのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが理解される。
【0082】
類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて、有効になされ得ることがまた当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号(本明細書中に参考として援用される)は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配される、タンパク質の最大局所平均親水性は、そのタンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に対して割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0083】
アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸で置換され得、そして、なお、生物学的に等価かつ免疫学的に等価なタンパク質を生成し得ることが理解される。このような変化において、親水性値が、±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸置換が特に好ましく、そして、±0.5以内のアミノ酸置換がさらに特に好ましい。
【0084】
上に概説したように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換の相対的な類似性(例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に基づく。上記の種々の特徴を考慮した例示的な置換は、当業者に周知であり、そして、以下が挙げられる:アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;および、バリンとロイシンとイソロイシン。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態の示すために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能する、本発明者らによって発見された技術を代表し、従って、その実施に好ましい様式を構成すると考えられ得ることが、当業者により理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更がなされ得、そしてなお、同様もしくは類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0086】
(実施例1 ECMタンパク質「aE−RGD」のクローニングおよび発現)
アミノ酸配列:M−MASMTGGQQMG−HHHHHHH−DDDDK−(LD−YAVTGRGDSPASSKPIA((VPGIG)VPGKG(VPGIG)VP)−LE(配列番号1)を有するタンパク質、aE−RGDは、ウェスタンブロッティングによって識別のために使用されるT7タグ、精製のために使用され得る6−Hisタグ、T7および6−Hisタグとが酵素的に除去されることを可能にする、エンテロキナーゼ切断部位、ならびに、細胞結合エラスチン様ドメインの3回の交互リピート(alternating repeat)を含む。RGDを含む17のアミノ酸細胞結合ドメインは、フィブロネクチンの10番目のIII型ドメインから取得され;これは、αβインテグリンおよびαβインテグリンに対するリガンドとして機能する。フィブロネクチンに由来するCS1ドメインおよびCS5ドメインを含む、他の細胞結合ドメインもまた、RGDドメインに代えて、同じ設計中に遺伝的に操作されている。細胞結合ドメインは、最も都合の良い細胞応答を誘発するように、これらおよび他の可能性のある生物活性ドメインから選択され得る。エラスチン様ドメインは、哺乳動物エラスチンに由来するモチーフである、(VPGVG)の修飾されたバージョンである。リジン残基は、その求核性の側鎖を介する、特異的な架橋を可能にするように、エラスチン様ドメイン内に組み込まれる。光架橋を含む、他の架橋化学もまた使用され得る。
【0087】
クローニング、細菌増殖、タンパク質発現、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、およびウェスタンブロッティングのための標準的な方法を実施して、aE−RGDを生成した。aE−RGDについての遺伝子を、pET28発現ベクター内にT7バクテリオファージプロモーターの制御下に入れて、タンパク質の発現宿主である、BL21(DE3)pLysSに形質転換した。
【0088】
宿主細胞を、「テリフィックブロス(terrific broth)」培地(pH7.4)を用いて、10Lの発酵槽(New Brunswick Scientific BioFlo 3000)内で増殖させた。約6の光学密度において、イソプロピル−1−β−D−チオガラクトシダーゼ(IPTG)を用いてタンパク質の発現を誘導し;誘導の1.5時間後に、4℃での遠心分離により細胞を回収した。
【0089】
(実施例2 aE−RGDタンパク質の精製)
発現させたaE−RGDタンパク質を含む細胞を、TEN緩衝液(10mM Tris−HC1、pH7.5、1mM EDTA、100mM NaCI)中に、0.5g/mLの濃度で再懸濁し、−20℃にて凍結した。この懸濁液を解凍し、細胞を溶解し、そして、タンパク質分解を阻害するために、10μg/mLのデオキシリボヌクレアーゼI、10μg/mLのリボヌクレアーゼA、5mMの塩化マグネシウムおよび1mMのフッ化フェニルメチルスルホニルと共に、37℃で約3時間、または4℃にて一晩振盪した。温度が上昇するにつれて、タンパク質が水溶液から分離するという、aE−RGDの低臨界溶液温度(LCST)挙動は、温度を周期変動させることによって、タンパク質を精製することを可能にした(水中でのaE−RGDのLCSTは、35℃である)。細胞溶解物のpHを、9.0に調節して、タンパク質の可溶性を確保し、LCST以下で遠心分離した(約1時間、39,750g、4℃)。上清(タンパク質を含む)に、1M NaClを加え、LCSTより上で遠心分離を繰り返した(約1時間、39,750g、37℃)。このペレットを、50〜100mg/mLの濃度で水中に再懸濁した。この温度の周期変動を、2回繰返した;タンパク質の純度(SDS−PAGE)は、回毎に上昇する。
【0090】
aE−RGDタンパク質を含む溶液を、4℃にて3日間透析して汚染物質を取り除き、そして、凍結乾燥させた。このタンパク質の純度および分子量を、SDS−PAGEゲル、ウェスタンブロット、アミノ酸分析、およびマトリックス支援レーザ脱着イオン化−質量分析(MALDI−MS)により評価した。内毒素のレベルを、類似の精製プロトコールにより容認された標準まで減少し得る。これらの手順を使用する、代表的な10Lの発酵により、1〜2グラムのaE−RGDを得た。
【0091】
(実施例3 aE−RGDを架橋して角膜アンレーを形成する)
4℃、水中でのaE−RGDとスベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)(BS3)との架橋により、0.2MPaの弾性率を有するフィルムを生じる。このフィルムは、生理学的温度では透明なままである。角膜アンレーレンズを、6mmの光学直径および7.5mmの半径の、2片PMMA型を用いて、この化学物質で作製する。全ての操作を、aE−RGDのLCSTの十分下である、4℃にて行い、透明性を確保する。各バッチについて、20mgのaE−RGDを、55μLの水に溶解し、次いで、直前に20μLの水に溶解した2.3mgのBS3を混合する(BS3のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基は、このタンパク質の第一級アミンに対して化学量論的である)。このサンプルを、卓上遠心機で迅速にスピンダウン(10秒)して、混合により持ち込まれた気泡を除き、そして、12μLの混合物を、一定重量(約300g)下で組み立てた5つの型の各々にピペットで入れて、4℃にて一晩架橋させる。数個のレンズを、弾性率について試験し、そして、約0.2MPaの値が一貫して見られる。これらのレンズを、過剰の水およびエタノールに曝すことによって、汚染物質および反応副産物を除去し、そして、リンスしたレンズを、使用時まで加湿した容器内に保管する。
【0092】
(実施例4 外科手術)
研究に用いたウサギ(n=12)に、3%イソフルランの吸入および局所のプロパラカインを用いて麻酔をかけた。外科手術の間中、動物のバイタルサイン(角膜反射、心拍数、呼吸および酸素飽和度を含む)を、注意深くモニターした。角膜アンレーを接着させる最初の試みは失敗に終わった。各動物の右眼を、ベタジン溶液(betadine solution)で洗浄し、そして、ワイヤ開瞼器(wire lid speculum)をその眼に入れた。約7mm直径の中央角膜上皮領域を、こすって除去した。角膜アンレーを、削った領域の中央に置いた。ウサギの眼瞼がまばたきをすると、アンレーが外れた。Tisseel(登録商標)(フィブロネクチン組織シーラント)を削った角膜に適用し、そして、アンレーを、Tisseel(登録商標)の上に置いた。Tisseel(登録商標)は固まって、目に見えるフィブリン塊を形成した。
【0093】
削った角膜へとアンレーをしっかりと接着するために、以下に記載するように角膜内にポケットを作製した。各動物の右眼を、ベタジン溶液で洗浄し、ワイヤ開瞼器を眼の中に入れた。3.0mmの穿孔器を使用して、角膜中央に、部分的な厚みが深さ約100〜200ミクロンの角膜切開を作製した。0.12鉗子および69ブレードを用いて、角膜切開の基部から穿孔した領域内の間質薄層を取り除いた。これにより、直径3.0mmの円形の角膜切除が残された。鋭利なポケットブレードを用いて、角膜縁に向かって半径方向外向きに延びる角膜切開の基部に、2mm幅の円形の層内ポケットを作製した。
【0094】
3群の角膜を準備した。第1群(n=1)においては、傷は作製したが、移植片は入れなかった。第2群(n=8)においては、同じ傷を構築し、次いで、直径5.0mmの角膜アンレー移植片を、注意深く、角膜表面に置いた。この移植片を、先の尖っていない毛様体剥離スパチュラを用いて、溝有のポケット内に、360°ねじ込んだ。この群には、縫合を施さなかった。第3群(n=3)においては、同じ傷を構築し、移植片をポケット内に入れ、次いで、9−0ナイロン縫合糸で、移植片の周りに縫合を施し、移植片を、適所に維持した。移植後、眼を、BSS溶液で洗浄した。これらのウサギに、カルプロフェン鎮痛薬を術後に注射した(5mg/kg IM)。
【0095】
(実施例5 臨床評価)
移植後1週間にわたり、毎日評価を行なった。これらの動物を、不快感または傷の感染のあらゆる徴候について綿密に見守った。不快感の任意の徴候があったときには、動物に、0.03%フルビプロフェンの局所滴下および24時間ごとのカルプロフェン5mg/kg IMを与えた。これらの動物の体重をモニターした。細隙灯生体顕微鏡検査を、最初の手順の後2〜4日ごとに行なった。青色光によるフルオレセイン染色を用いて、再上皮化プロセスを評価した。再上皮化の速度および程度、ならびに炎症のあらゆる徴候を記録した。
【0096】
(実施例6 組織学)
筋肉内へのケタミン35〜50mg/kgおよびキシラジン5〜10mg/kgから構成される、大きな動物のための標準的なガイドラインを用いて、ウサギに麻酔をかけた。各動物にはまた、ペントバルビタールナトリウムの心臓内注射も与え、異なる時点で双方的開胸術を行なった。
【0097】
眼を、グルタルアルデヒド溶液中で固定し、そして、異なる時点で組織学的に試験した。スライドを、ヘマトキシリン−エオジン(H&E)、過ヨウ素酸Shciff(PAS)、コラーゲンのためのマッソントリクローム(Mason tnchrome)で染色し、そして、ムコ多糖について染色した。染色した切片をマウントし、光学顕微鏡で見た。角膜移植片の上の上皮の増殖パターンを、組織学的に評価した。角膜間質内および移植片内の両方の炎症の程度を評価した。
【0098】
光学顕微鏡は、上皮細胞が、外科手術の1週間後の組織学的試験の時点で、角膜の全移植片を覆っていたことを示した。移植片にかぶさっている角膜上皮は、いくつかの細胞層から構成される、著しく正常なものであった。角膜間質と移植片との間の界面は、目立たなかった。2〜3の症例において、角膜間質と角膜移植片は、中程度の量の炎症性細胞(リンパ球および好中球を含む)が顕著であった。他の症例においては、移植片の後側の角膜間質と角膜上皮とは、正常であり、炎症がないように見えた。
【0099】
(実施例7 電子顕微鏡検査)
数個の眼を、電子顕微鏡検査で試験した。動物に麻酔をかけ、眼を光学顕微鏡について記載したように固定した。数匹の動物を、電子顕微鏡検査に使用して、移植片と上皮との界面を評価した。
【0100】
(実施例8 臨床観察)
移植片もまた、十分にこれらの手順に耐えた。なぜならば、移植片は、十分に水分補給されている限り、外科手術の間に、比較的扱いが容易であり、耐久性があったからである。全ての移植片は、インタクトなままであり、円形の間質ポケット内にうまく位置していた。縫合がなされていようと、なされていまいと、移植片の適切な位置への維持には、差がなかった。縫合がなされた眼において、移植片は、移植片に対してなされた縫合の張力に起因して、いくつかの表面上のしわを示した。コントロールと比較すると、眼球結膜の軽度の充血および軽度の角膜間質浮腫により示されるように、最初の軽度〜中程度の炎症が、移植片を有する全ての眼において観察された。動物のいずれにおいても、有意なムコイドまたは膿性分泌物は記録されなかった。
【0101】
全ての症例において、上皮化は、角膜アンレーの露出された表面の周囲から始まり、中央に向かって内向きに進んだ。完全な上皮化に要した時間は、個々の動物間で幾分変動した。移植した動物(第2群および第3群)の全ては、96時間の時点で、部分的に再上皮化しており、そして、全ての動物が、1週間の時点で、完全に再上皮化していた。対照的に、コントロールの眼は、96時間で完全に再上皮化していた。動物は、これらの手順に十分に耐え、そして、外科的な合併症はなかった。
【0102】
(実施例9 上皮の挙動)
通常は、上皮細胞は、ヘミデスモソームおよび係留フィブリルを含む、接着複合体によって、その下にある基底膜に係留されている。電子顕微鏡検査を用いて、本発明者らの長期にわたる研究において、これらの構造の形成をさがすために、アンレー−上皮界面を観察した。次の工程は、その下にあるボウマン層への接着の問題に対処することである。タンパク質へのフィブリノーゲンドメインの付加により、トロンビンの存在下で、接着が促進され得る。
【0103】
(参考文献)
明細書中で言及した全ての特許および刊行物は、本発明が属する分野の当業者の技術水準を示す。全ての特許および刊行物は、まるで各個々の刊行物が、参考として援用されることを具体的かつ個々に示されているかのような程度まで、本明細書中に参考として援用される。
米国特許第4,264,155号
米国特許出願第2002/0028243号
WO 95/13764
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46)Jones JCR,Asmuth J,Baker SEら.Hemidesmosomes:extracellular matrix/intermediate filament connectors.Exp Cell Res 1994;213:1−11。
【0104】
本発明およびその利点が、詳細に記載されてきたが、種々の変化、置換および変更が、添付の特許請求の範囲により規定される本発明から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。さらに、本発明の範囲は、本明細書中に記載される、プロセス、機器、製造、物質の組成、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることは意図されない。これらの開示から容易に理解するように、実質的に同じ機能を果たすか、または、本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、または、後に開発される、プロセス、機器、製造、物質の組成、手段、または工程が、利用され得る。従って、添付の特許請求の範囲は、このようなプロセス、機器、製造、物質の組成、手段、方法または工程も、その範囲内に包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
本発明のより完全な理解のために、ここで、添付の図面に関してなされる以下の説明に対して参照がなされる。
【図1】図1は、操作されたタンパク材料のためのタンパク質設計を示す。全アミノ酸配列が示される。(上皮細胞との相互作用を促進するための)フィブロネクチンに由来するドメインおよび(可撓性を構造的に支持するための)エラスチンドメインが示される。また、タンパク質同定、タンパク質精製のためのタグ、および切断部位が存在する。
【図2】図2は、35.1kDaの分子量を有する人工タンパク質を表す単一バンドを示すSDSゲルおよび対応するウエスタンブロットを示す。
【図3】図3は、どのように操作されたタンパク質がアンレー中に架橋されるかを示す。次いで、操作されたタンパク質の溶液は、角膜アンレーに成形された後、架橋反応を受けた。成形物が示される。これらはPMMA材料で作製されて、6.0mmのアンレーを与える。
【図4】図4は、アンレーの画像を示す。
【図5】図5は、臨床試験写真を示し、これは、外科手術の直後、外科手術の48時間後、および外科手術の1週間後に角膜中に移植されたアンレーをあらわす。白抜きの矢印は、ポケット内の移植されたアンレーの詰め込まれた端部を示す。黒色の矢印は、穿孔された創傷を示す。フルオレセイン色素は、曝露されたアンレー表面全体を染色する。48時間後の同じ眼の写真において、これらの領域におけるフルオレセイン色素の喪失によって証明されるように、再上皮形成プロセスが開始されており、細胞は末梢から内側に向かって移動している。黒色の矢印は、比較のための初期の創傷の端部を示す。外科手術の1週間後に、アンレーは上皮によって取り込まれ、完全に覆われる。フルオレセインの染色は存在しない。
【図6】図6は、コントロールの眼の模式断面を示す。
【図7】図7は、移植されたアンレーの模式断面を示す。PAS染色を伴う低倍率の図は、層状のポケットにおけるアンレーを示す。変形された角膜構造は、保存プロセスの人為的結果である。
【図8】図8は、7日目の時点での組織学的試験を示す。(A)低倍率で、Mason三色染色は、天然の角膜と比較して新規なアンレー材料の染色が存在しないことを示す。(B)H & E染色した検体は、アンレー表面の再上皮形成を裏付ける。(C)より高倍率のものは、角膜実質、アンレー、および再生する角膜上皮に典型的な1〜2の細胞層の厚さであるように上皮が覆われていることを明らかにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されたタンパク質を含むレンズであって、該レンズは、該操作されたタンパク質を架橋することによって形成される、レンズ。
【請求項2】
前記操作されたタンパク質が、少なくとも1つのフィブロネクチン様ドメインおよび少なくとも1つのエラスチン様ドメインを含む、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記フィブロネクチン様ドメインが配列番号26を含む、請求項2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記フィブロネクチン様ドメインが配列番号27を含む、請求項2に記載のレンズ。
【請求項5】
前記操作されたタンパク質が、配列番号1を含む、請求項2に記載のレンズ。
【請求項6】
前記架橋することが照射を含む、請求項1に記載のレンズ。
【請求項7】
前記照射がレーザー照射を含む、請求項6に記載のレンズ。
【請求項8】
前記架橋の程度が不均一である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項9】
前記架橋が所定のパターンである、請求項1に記載のレンズ。
【請求項10】
前記レンズがさらに第二の架橋に供される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項11】
前記操作されたタンパク質が、該タンパク質に対する少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基の結合によって改変される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項12】
前記操作されたタンパク質が、約15キロダルトン未満の低分子量のタンパク質である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項13】
前記レンズが、コンタクトレンズ、角膜アンレー、角膜インレーおよび眼内レンズからなる群より選択される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項14】
前記レンズが角膜アンレーである、請求項1に記載のレンズ。
【請求項15】
前記レンズが生体適合性である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項16】
前記レンズが光学的に透明である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項17】
前記レンズが生分解に抵抗性である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項18】
前記レンズが隣接する細胞の付着を促す、請求項1に記載のレンズ。
【請求項19】
前記レンズが0.05MPa〜2.0MPaの弾性率を有する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項20】
操作されたタンパク質を含む角膜移植片であって、該移植片は該操作されたタンパク質を架橋することによって形成される、角膜移植片。
【請求項21】
少なくとも1つのフィブロネクチン様ドメインおよび少なくとも1つのエラスチン様ドメインを含む、操作されたタンパク質。
【請求項22】
前記フィブロネクチン様ドメインが、CS1、CS5、RGDドメインまたはIII型ドメインを含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項23】
前記エラスチン様ドメインが、VPGVG(配列番号2)、VPGKG(配列番号3)、VPGIG(配列番号4)またはそれらの機能的等価物を含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項24】
架橋される、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項25】
前記フィブロネクチン様ドメインが配列番号26を含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項26】
前記フィブロネクチン様ドメインが配列番号27を含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項27】
前記タンパク質が配列番号1を含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項28】
前記操作されたタンパク質が、該操作されたタンパク質に対する1以上の実体の結合によって改変され、これが、該操作されたタンパク質の架橋能を変化させる、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項29】
前記操作されたタンパク質が、該タンパク質に対する少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基の結合によって改変される、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項30】
約15キロダルトン未満の分子量である、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項31】
フィブロイン、エラスチン、ケラチン、コラーゲンの繰り返しブロック、または繰り返しブロックの組み合わせをさらに含む、請求項21に記載の操作されたタンパク質。
【請求項32】
操作されたタンパク質を含む生物医学的コーティングであって、該タンパク質は、少なくとも1つのフィブロネクチン様ドメインおよび少なくとも1つのエラスチン様ドメインを含む、生物医学的コーティング。
【請求項33】
眼の光学的特性を矯正するための方法であって、該方法は、操作されたタンパク質を含む角膜アンレーを角膜中にまたは角膜上に移植する工程を包含し、該タンパク質は、少なくとも1つのフィブロネクチン様ドメインおよび少なくとも1つのエラスチン様ドメインを含む、方法。
【請求項34】
前記アンレーの表面が、該移植されたアンレーに隣接する細胞の接着を促す、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−518811(P2007−518811A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551255(P2006−551255)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001773
【国際公開番号】WO2005/072223
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(301059570)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (14)
【出願人】(506251395)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア−サン フランシスコ (1)
【Fターム(参考)】