説明

操作レバー式混合水栓

【課題】操作レバーを構成する樹脂部と金属部との接合界面強度を高めること。
【解決手段】 湯と水の混合比及び吐水量を変化させる湯水混合バルブユニット2の可動弁体駆動軸3を操作する操作レバー4は、操作可能な合成樹脂製の樹脂部5と、前記可動弁体駆動軸3に連結固定される金属部6とが接合一体化されており、この金属部6における前記樹脂部5と接合される外側面に凹部を設け、この凹部内で金属と樹脂とを結合させた操作レバー式混合水栓1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバー式混合水栓に関し、詳しくは単一の操作レバーを操作することにより供給された湯及び水の混合比を変化させると共に吐水流量を変化させる操作レバー式混合水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台の混合水栓に使用する操作レバーは、湯水混合バルブユニットから突出した可動弁体駆動軸に差し込んで固定することで、吐水。止水操作を行うことができる。
【0003】
従来より、この種の操作レバーとして、例えば特許文献1の混合水栓に使用するものが知られている。従来の操作レバーは、湯水混合バルブユニットから突出する可動弁体駆動軸の上部に接続されるベース部材と、ベース部材に側方突出状に取り付けられる偏平なグリップ部材とを備える。ベース部材は、金属製または合成樹脂製のキャップ状のものであって、略テーパ筒状の周壁部と、周壁部の上方開口を覆う頂壁部と、頂壁部の下面中心部から下方にのびる垂直軸部とを一体に備える。垂直軸部には、下端に開口した有底孔があけられている。そして、この有底孔に、下端にフランジを有する筒状の金属部を設け、この金属部に可動弁体駆動軸の上部を嵌め込むことで、ベース部材が可動弁体駆動軸の上部に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−56916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に示された従来の操作レバー式混合水栓は、図8に示すように、湯と水の混合比及び吐水量を変化させる湯水混合バルブユニット2と、この湯水混合バルブユニット2の可動弁体駆動軸3を操作する操作レバー4とを備える。操作レバー4は、合成樹脂製の樹脂部5と、可動弁体駆動軸3に連結固定される金属部6とがインサート成型により接合一体化されている。しかし、樹脂と金属とが完全に接着するわけではないため、操作レバー4に対して例えば上下方向Aに強い力が加わった場合は、垂直軸部9において樹脂と金属との接合界面8が剥離して、金属部6が樹脂部5から外れやすくなり、混合水栓の操作ができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、操作レバーを構成する樹脂部と金属部との接合界面強度を高めることが可能な操作レバー式混合水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、湯と水の混合比及び吐水量を変化させる湯水混合バルブユニットと、この湯水混合バルブユニットの可動弁体駆動軸を操作する操作レバーとを備えた操作レバー式混合水栓であって、前記操作レバーは、操作可能な合成樹脂製の樹脂部と、前記可動弁体駆動軸に連結固定される金属部とが接合一体化されており、前記金属部における前記樹脂部と接合される外側面に凹部を設け、この凹部内で金属と樹脂とを結合させてなることを特徴とする。
【0008】
また、前記凹部は、前記金属部の外側面から前記可動弁体駆動軸と嵌合される内側面に向かって貫通する貫通穴であるのが好ましい。
【0009】
また、前記凹部は、前記金属部を貫通しない有底溝状凹所であるのが好ましい。
【0010】
また、前記金属部の外側面に、前記凹部とは別に、前記凹部よりも外方に突出して前記樹脂部に食い込み可能な凸部を突設するのが好ましい。
【0011】
また、前記金属部をキャップ状に形成し、この金属部の頭部側の外側面から前記凸部を突設させ、この凸部よりも開口部側の外側面に前記凹部を凹設するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の操作レバー式混合水栓は、操作レバーを構成する樹脂部と金属部との接合界面強度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に用いる混合水栓の操作レバー付近の断面図である。
【図2】(a)は同上の操作レバーの断面図であり、(b)は金属部の斜視図であり、(c)は金属部の側面図である。
【図3】(a)は他の実施形態の操作レバーの断面図であり、(b)は金属部の斜視図であり、(c)は金属部の側面図である。
【図4】(a)は更に他の実施形態の金属部の斜視図であり、(b)は金属部の側面図である。
【図5】(a)は更に他の実施形態の操作レバーの断面図であり、(b)は金属部の斜視図であり、(c)は金属部の側面図である。
【図6】(a)は更に他の実施形態の操作レバーの断面図であり、(b)は金属部の斜視図であり、(c)は金属部の側面図である。
【図7】(a)は更に他の実施形態の操作レバーの断面図であり、(b)は金属部の斜視図であり、(c)は金属部の側面図である。
【図8】従来例の操作レバーを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は操作レバー式混合水栓1の要部側面図である。
【0016】
この操作レバー式混合水栓1は、湯水混合バルブユニット2と、操作レバー4と、吐水ヘッド(図示略)とを備えている。
【0017】
湯水混合バルブユニット2は、図示を省略しているが、固定弁体と可動弁体とが上下に重なるようにカートリッジ内に組み込まれている。そして、可動弁体駆動軸3の軸線Mと直交する方向(本実施形態では、上下方向A)に操作レバー4を傾動させることによって可動弁体が固定弁体上を前後にスライドしてて止水、吐水および吐水量の調節が行われる。また、操作レバー4を軸線M回りに回転操作することで可動弁体が固定弁体上を円周方向にスライドして、湯と水との混合割合、即ち、吐水温度の調節が行われる。勿論、これは一例であり、湯と水の混合比及び吐水量を変化させる湯水混合バルブユニット2全般に広く適用される。
【0018】
操作レバー4は、図2(a)に示すように、操作可能な合成樹脂製の樹脂部5と、前記可動弁体駆動軸3に連結固定される金属部6とが接合一体化されている。
【0019】
樹脂の長手方向の一端は、使用者によって操作される操作部5bとされ、他端は連結部5aとされる。連結部5aは、操作部5bと可動弁体駆動軸3とを連結して、操作部5bの前後方向及び左右方向の作動を可動弁体駆動軸3に伝達する。
【0020】
連結部5aの下面側には、テーパー筒状の周壁部5c,5dで囲まれた垂直軸部9が突設されている。垂直軸部9の内部に、下端に向けて開口した有底穴が形成されている。これら周壁部5c,5d、垂直軸部9は、連結部5aと同様、合成樹脂製とされる。
【0021】
上記垂直軸部9の有底穴の内部に、金属製の金属部6がインサート成型により一体に設けられている。この金属部6は、下端に開口した有底穴状の軸挿入部15を有するキャップ状に形成されており、この軸挿入部15に可動弁体駆動軸3の上部が差し込まれて固着されている。
【0022】
本例の金属部6の外面は、図2(b)(c)に示すように、立方体状に形成されている。金属部6の外側面6aには、樹脂が侵入する凹部7が設けられている。この凹部7は、金属部の外側面6aから内側面6bに貫通する貫通穴7aからなる。ここで、外側面6aは垂直軸部9を構成する樹脂部5との接合面であり、内側面6bは可動弁体駆動軸3(図1参照)との嵌合面である。金属部6を樹脂部5にインサート成型することで、金属部6の貫通穴7aに樹脂が侵入することにより、この貫通穴7a内において金属と樹脂とが結合するようになっている。なお、貫通穴7aの数は1つに限らず、2つ以上設けてもよい。
【0023】
しかして、上記操作レバー4の樹脂部5に金属部6をインサート成型することにより、1回の樹脂成形で、金属部6付き操作レバー4を製造できる。しかも、金属部6の外側面6aに金属部6を貫通する貫通穴7aを形成して、樹脂を貫通穴7aに侵入させているので、樹脂が金属部6を貫通して可動弁体駆動軸3にまで到達するようになる。これにより、金属と樹脂との結合力が増大して、金属と樹脂との保持力が強められる。結果、操作レバーを構成する樹脂と金属との接合界面強度が高まり、金属部6が樹脂部5から外れにくくなり、混合水栓の操作性を長期に亘って高く維持できる。
【0024】
なお、本例では、金属部6の片側(図1の右側)の外側面6aに貫通穴7aを設けているが、他側(図1の左側)の外側面6aに貫通穴7aを設けてもよい。つまり、操作レバー4の操作部5bに近い側(図2(a)の右側)は、操作部5bの力が加わりやすい側であり、該近い側に貫通穴7aを設けて樹脂と金属との接合界面強度を高めることで、金属部6が樹脂部5から一層外れにくくできる。
【0025】
この結果、可動弁体駆動軸3と金属部6との嵌合連結強度を持たせながら、操作レバー4の大部分を安価な合成樹脂で形成できる利点もある。
【0026】
図3は他の実施形態であり、金属部6の外側面6aに形成される凹部7を、金属部6を貫通しない有底溝状凹所7bで形成した場合の一例を示している。金属部6以外の他の構成は図1、図2の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付して詳しい説明は省略する。本例の有底溝状凹所7bは、水平方向に連続する断面溝型に形成されている。これにより、有底溝状凹所7bを含む接合界面8での樹脂と金属との接合面積が増加すると共に、金属部6が樹脂部5から抜ける方向(図3(a)の下方)に対して、有底溝状凹所7bによる抜け止め力が増大する。さらに、金属部6の外側面のうち、操作レバー4の操作部5b(図1参照)に近い側(図3(a)の左側)の外側面6aには、上下3列の有底溝状凹所7bが形成されている。一方、操作レバー4の操作部5b(図1参照)から離れた側(図3(a)の右側)の外側面6aには、上下2列の有底溝状凹所7bが形成されている。つまり、操作レバー4の操作部5bに近い側は操作部5bの力が加わりやすい側であり、該近い側の有底溝状凹所7bの数を増加させることで、該近い側での樹脂と金属との接合界面強度を高めることができる。
【0027】
図3の変形例として、図4に示す例では、凹部7を水平方向に連続しない複数のスポット形状の有底状凹所7cで形成している。他の構成は図3と同様である。本例の場合、複数の有底状凹所7cを設けることで、有底状凹所7c内での樹脂と金属との接合面積が増加すると共に、金属部6の凹み量を図3の場合と比較して減らすことができる。これにより金属部6の強度向上を図ることができる。
【0028】
図5は更に他の実施形態であり、金属部の外側面6aから外方に向かって樹脂部5に食い込み可能なフランジ状の凸部11を突設させている。本例のフランジ状の凸部11は、キャップ状の頭部側から突出しており、この凸部11よりも下側の外側面6aは凹状の段差部7dとなっている。金属部6以外の他の構成は図1の実施形態と同様である。本例では、段差部7dにおいて金属と樹脂とが結合される。そのうえ、金属部6が樹脂部5から抜ける方向(図5(a)の下方)に対して、フランジ状の凸部11による抜け止め力が増大するので、金属と樹脂との保持力が一層強められる。
【0029】
図6は図5の変形例であり、金属部6の外側面6aの複数個所から爪形状の凸部12を突設させており、凸部12,12間が凹部7eとなっている。本例の凸部12は外方に行く程斜め下方になるように傾斜している。これにより、凹部7eに樹脂が侵入するとこの樹脂は、外側面6aに向かう程斜め上方に向くようになり、この樹脂が向く斜め上方は、金属部6が樹脂部5から抜ける方向(図6(a)の下方)とは反対方向である。さらに、凸部12が樹脂に食い込むことで、凹部7e内において樹脂と金属との結合力が一層強められる。
【0030】
図7は更に他の実施形態であり、金属部6を平面視で略円筒形状に形成し、この金属部6の外周面6aにネジ形状の凹溝7fを凹設している。このネジ形状の凹溝7f内で樹脂と金属とが結合することで、樹脂と金属との結合力が一層強められる。また本例では金属部6をインサート成型する以外に、例えば樹脂部5を成形後に後工程で金属部6を樹脂部5内にネジ込み可能となる。つまり、金属部6を垂直軸部9と同芯状にして金属部6を軸回りに回しながら垂直軸部9内にネジ込むことで、樹脂が凹溝7fに食い込むようになる。この場合、より安価に、樹脂部5と金属部6との接合界面強度向上を図ることができる。
【0031】
本実施形態の操作レバー式混合水栓1は、洗面化粧台や浴室の洗い場など、各種の水回り設備に広く使用される。
【符号の説明】
【0032】
1 操作レバー式混合水栓
2 湯水混合バルブユニット
3 可動弁体駆動軸
4 操作レバー
5 樹脂部
6 金属部
7 凹部
8 接合界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯と水の混合比及び吐水量を変化させる湯水混合バルブユニットと、この湯水混合バルブユニットの可動弁体駆動軸を操作する操作レバーとを備えた操作レバー式混合水栓であって、前記操作レバーは、操作可能な合成樹脂製の樹脂部と、前記可動弁体駆動軸に連結固定される金属部とが接合一体化されており、前記金属部における前記樹脂部と接合される外側面に凹部を設け、この凹部内で金属と樹脂とを結合させてなることを特徴とする操作レバー式混合水栓。
【請求項2】
前記凹部は、前記金属部の外側面から前記可動弁体駆動軸と嵌合される内側面に向かって貫通する貫通穴であることを特徴とする請求項1記載の操作レバー式混合水栓。
【請求項3】
前記凹部は、前記金属部を貫通しない有底溝状凹所であることを特徴とする請求項1記載の操作レバー式混合水栓。
【請求項4】
前記金属部の外側面に、前記凹部とは別に、前記凹部よりも外方に突出して前記樹脂部に食い込み可能な凸部を突設したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操作レバー式混合水栓。
【請求項5】
前記金属部をキャップ状に形成し、この金属部の頭部側の外側面から前記凸部を突設させ、この凸部よりも開口部側の外側面に前記凹部を凹設したことを特徴とする請求項4記載の操作レバー式混合水栓。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72558(P2012−72558A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216202(P2010−216202)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】