説明

操作入力装置および水栓装置

【課題】電極間の静電容量が変化した場合でも、回転操作量を正確に検知する。
【解決手段】回転軸を中心とした回転操作が可能な操作部と、回転軸を中心とした非対称形状を有する回転電極と、回転電極と非接触かつ対向して配置され、回転軸を中心とした対称形状を有し複数に分割された第1の電極と、回転電極と非接触かつ対向して配置された第2の電極と、第1および第2の電極のいずれか一方にパルス信号を送信し、第1および第2の電極のいずれか他方に誘起される電圧により、第1の電極と、第2の電極と、の間の静電容量を検出する静電容量検出部と、第1の電極のそれぞれと、第2の電極と、の間の静電容量検出部からの静電容量の比率の変化により、回転位置を検出可能な制御部と、を備え、静電容量検出部で検出された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて、検出された静電容量を分割された第1の電極ごとに補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、操作入力装置および水栓装置に関し、具体的には静電容量方式の操作入力装置およびそれを用いた水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機器を多様に操作する入力装置として、回転や、押し込み、傾き等の複数の操作手段を備えた入力装置が多数実用化されている。小型化が要求される携帯機器における操作部や、片手でも容易に操作できることが要求される自動車のオーディオやエアコンの調整(操作)部などのように、ひとつの操作部に複数の入力機能を持たせるニーズは多い。また、吐水や湯温を電子制御する水栓装置の実用例はまだ少ないが、水栓装置には、汚れた手を洗ったり、歯磨きを行ったり、皿を洗う等の多様な用途があり、自動車の操作部などと同様に、片手でいろいろな操作ができる水栓の操作装置が望まれている。
【0003】
このような入力装置の代表例として、例えば、回転の操作入力手段を備えたものがある。このような入力装置では、例えば、回転操作によってメニューやボリュームを選択する使い方がある。これを水栓装置に応用すれば、回転操作で水量や水温を選択する方法などが考えられる。
【0004】
回転操作は、可変抵抗や、電気接点パターンと回転移動するブラシ電極、光学センサと回転スリット、ホールICと回転移動する磁石、回転によって相互に位置関係が変化する電極の静電容量変化などにより検出される。そして、静電容量の変化により回転操作を検出する方法は、電気接点のような摺動部がなく非接触で行うことができるため、接触不良や接点の摩耗などが発生せず、信頼性が高い。また、静電容量の変化により回転操作を検出する方法では、光学センサやホールICと比較して消費電力を低減しやすいなどの利点がある。
【0005】
このとき、静電容量の変化により回転操作を検出する方法では、回転電極と固定電極との間の距離が変化することにより静電容量が変化するということが生じないようにする必要がある。これは、静電容量が変化すると、操作部の位置などを正確に検出することができないおそれがあるためである。また、このような検出方法では、回転電極と固定電極とが互いに接触することを抑制したり、回転電極の摺動性を向上させ、使い心地を向上させることが好ましい。
【0006】
そこで、移動子電極(回転電極)と固定体電極(固定電極)との間にポリテトラフルオルエチレンを両電極に回転自在あるいは移動自在に設置した静電容量式エンコーダがある(特許文献1)。特許文献1に記載された静電容量式エンコーダによれば、摺動性が向上し、大きな負荷に対しても移動子電極と固定体電極の短絡が低減できる。また、静電容量が変化せず回転体の位置や回転速度が正確に検出できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の記載された静電容量式エンコーダでは、ポリテトラフルオルエチレンの経年劣化やその経年劣化による電極間距離の変化などについてはあまり考慮されていない。ポリテトラフルオルエチレンが経年劣化したり、その経年劣化により電極間距離が変化すると、回転操作量に対する静電容量検出値が変化し、正確な回転操作量を検出できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−86664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、電極間の静電容量が変化した場合でも、回転操作量を正確に検知することができる操作入力装置および水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、回転軸を中心とした回転操作が可能な操作部と、前記回転操作に応じて回転し、前記回転軸を中心とした非対称形状を有する回転電極と、前記回転電極と非接触かつ対向して配置され、前記回転軸を中心とした対称形状を有し複数に分割された第1の電極と、前記回転電極と非接触かつ対向して配置された第2の電極と、前記第1および第2の電極のいずれか一方にパルス信号を送信し、前記第1および第2の電極のいずれか他方に誘起される電圧により、前記第1の電極と、前記第2の電極と、の間の静電容量を検出する静電容量検出部と、前記分割された第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の前記静電容量検出部からの静電容量の比率が変化することにより、前記回転操作に基づく前記操作部の回転位置を検出可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて、前記静電容量検出部により検出された静電容量を前記分割された第1の電極ごとに補正することを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、回転電極と、送信電極および受信電極と、の間の距離が変化した場合であっても、操作部の回転位置を判断する静電容量を補正することができる。そのため、操作部の回転位置(回転操作量)を正確に検出することができる。また、複数の送信電極ごとに静電容量の補正を行うことができるため、特定の送信電極と、回転電極と、の間の距離が変化した場合であっても対応することができる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の電極および前記第2の電極は、1つの基板上に形成され、前記回転電極は、前記基板との間に設けられた絶縁体を介して、前記基板の方向に付勢されていることを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、受信電極、送信電極、および回転電極の摩耗を抑制したり、受信電極および送信電極と、回転電極と、の間の距離を略一定に確保することができる。また、絶縁体に孔が開いた場合であっても、操作部の回転位置を判断する静電容量を補正することができる。そのため、操作部の回転位置を正確に検出することができる。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値よりも大きくなると、検出された静電容量の増幅率を切り替えることを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、回転電極と、送信電極および受信電極と、の間の距離が変化した場合であっても、増幅率を切り替えることにより、操作部の回転位置を判断する静電容量を確実且つ容易に補正することができる。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記操作部が非回転状態であると判断すると、前記非回転状態のときに前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて前記補正することを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、操作部が操作されていない状態、すなわち静電容量検出手段により検出された静電容量が安定している状態で補正を行うため、その補正を正確に行うことができる。
【0014】
また、第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記回転電極が、前記分割された第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の静電容量が最大値となる回転位置にあると判断すると、前記最大値となる回転位置にあるときに前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて前記補正することを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、回転電極あるいは操作部の回転位置が、静電容量検出手段により検出され出力された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差を最も検出しやすい位置にあるときに、制御手段は補正を行う。そのため、制御手段は、操作部の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部の回転位置を正確に検出することができる。
【0015】
また、第6の発明は、第3の発明において、前記制御部は、前記分割され第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の静電容量の少なくともいずれかが前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きくなり、且つ、前記少なくともいずれかの静電容量と、前記予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が前記閾値よりも大きくなると、検出された静電容量の増幅率を一括して切り替える補正を行うことを特徴とする操作入力装置である。
この操作入力装置によれば、複数の送信電極のそれぞれと、受信電極と、の間の静電容量の少なくともいずれかが操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きくなると、絶縁体が薄化したと判断し、速やかに補正を行う。そのため、操作部が360°回転しなくとも、制御手段は、操作部の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部の回転位置を正確に検出することができる。これにより、より確実にあるいはより速やかに補正を行うことができる。
【0016】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明の操作入力装置と、給水流路に供給する水の温度を調整する混合弁および前記給水流路に供給する水の流量を調整する流調弁の少なくともいずれかと、前記給水流路を介して供給された水を吐水する水栓本体と、を備え、前記制御部は、前記回転操作の検出に基づいて、前記混合弁および前記流調弁の少なくともいずれかの動作を制御することにより、前記水栓本体からの吐止水と前記温度と前記流量との少なくともいずれかを操作可能であることを特徴とする水栓装置である。
この水栓装置によれば、使用者は、操作入力装置に適宜設けられた操作部などを回転操作することにより、水栓本体から吐水される水の流量や温度などを調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、電極間の静電容量が変化した場合でも、回転操作量を正確に検知することができる操作入力装置および水栓装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかる操作入力装置を表す分解模式図である。
【図2】本実施形態にかかる操作入力装置の内部構造を表す断面模式図である。
【図3】本実施形態の基板に形成された受信電極と、送信電極と、を表す平面模式図である。
【図4】本実施形態の回転検出体に形成された回転電極を表す平面模式図である。
【図5】基板と、回転検出体と、のそれぞれに形成された電極の配置関係について説明するための斜視模式図である。
【図6】本実施形態の基板近傍の詳細を表す拡大模式図である。
【図7】絶縁体が劣化する前の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。
【図8】絶縁体に孔が開いた場合の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。
【図9】絶縁体が全面に亘って略均一に薄化した場合の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。
【図10】静電容量検出部に関する回路構成を例示する構成図である。
【図11】静電容量検出部に関する回路の動作波形を表すタイミングチャートである。
【図12】静電容量検出部に関する回路における送信電極の接続を説明するための模式図である。
【図13】静電容量検出部に関する回路における送信電極の接続を説明するための回路構成図である。
【図14】操作部の回転操作を検出する際の補正動作の具体例を例示するフローチャートである。
【図15】本具体例のゲイン調整サブルーチンを例示するフローチャートである。
【図16】操作部の回転操作を検出する際の補正動作の他の具体例を例示するフローチャートである。
【図17】操作部の回転操作を検出する際の補正動作のさらに他の具体例を例示するフローチャートである。
【図18】本実施形態の操作入力装置が備えられた水栓装置を例示する斜視模式図である。
【図19】本実施形態の操作入力装置が備えられた水栓装置を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる操作入力装置を表す分解模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる操作入力装置の内部構造を表す断面模式図である。
【0020】
本実施形態にかかる操作入力装置100は、固定電極を有する基板110と、回転電極121を有する回転検出体120と、回転操作が可能な操作部140と、を備える。固定電極は、図1に表したように、送信電極(第1の電極)115a、115b、115c、115dおよび受信電極(第2の電極)113を有する。なお、図1に表した操作入力装置100では、4つの送信電極が設けられているが、送信電極の設置数は、これだけに限定されるわけではない。
【0021】
また、操作部140は、押下操作が可能とされてもよい。この場合には、図1に表したように、回転検出体120とは別体の押下検出体130が設けられる。但し、回転操作のみが可能とされた操作入力装置では、押下検出体130は、必ずしも回転検出体120とは別体として設けられる必要はなく、回転検出体120と一体的に形成されていてもよい。以下では、説明の便宜上、回転検出体120と押下検出体130とが、別体として形成された場合を例に挙げて説明する。
【0022】
操作入力装置100は、図2に表したように、ケーシング150をさらに備える。ケーシング150は、基板110と、回転検出体120と、押下検出体130と、操作部140の一部と、を内蔵する。
【0023】
基板110の上面には、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、がこの順に内側から外側に向かって同心円状に形成されている。受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、は例えば銅などの金属により形成されており、導電性を有する。これらは、基板110の上面にそれぞれの電極形状の金属を貼り付ける構成でもよく、基板110が一般的なプリント基板であれば、通常の回路の配線パターンと同時に銅箔で形成しても良い。そして、基板110は、図2に表したように、ケーシング150の内部に設けられた支持部151により支持され固定されている。
【0024】
回転検出体120の下面には、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、に対向するように回転電極121が形成されている。回転検出体120は、例えば樹脂(絶縁体)などにより形成されている。回転電極121は、いわゆる「インサート成形」などにより形成され、その材料は、例えば銅などの金属である。そのため、回転電極121は、導電性を有する。なお、回転電極121は、例えばメッキ処理などの表面処理により形成されてもよい。また、回転検出体120は、筒形状を有しており、その内側には突起部123が形成されている。
【0025】
押下検出体130は、回転検出体120と同様に、例えば樹脂などにより形成されている。また、押下検出体130の周縁部には、回転検出体120の突起部123と係合可能な溝部133が形成されている。
【0026】
そして、押下検出体130の溝部133が設けられた部分の外径は、回転検出体120の突起部123が設けられた部分の内径よりも小さい。そのため、押下検出体130の溝部133と、回転検出体120の突起部123と、を係合させつつ、押下検出体130を回転検出体120に挿入させることができる。これにより、押下検出体130が回転軸Aを中心として回転する場合には、回転検出体120は、溝部133と突起部123とがかみ合うことにより押下検出体130とともに回転する。一方、押下検出体130が回転軸A方向に移動する場合には、回転検出体120は、溝部133と突起部123とが相対的にスライドすることにより押下検出体130とともには移動しない。なお、回転軸Aは、回転検出体120と、押下検出体130と、操作部140と、が回転するときの中心軸であり、基板110の中心に一致する。
【0027】
操作部140は、結合体181により押下検出体130に結合されている。そのため、図1に表した矢印Bのように、回転軸Aを中心として操作部140を回転操作すると、押下検出体130は、操作部140とともに回転軸Aを中心として回転する。つまり、回転軸Aを中心として操作部140を回転操作すると、その回転力が押下検出体130を介して回転検出体120に伝達され、回転検出体120および回転電極121は、操作部140および押下検出体130とともに回転軸Aを中心として回転する。また、図1に表した矢印Cのように、回転軸A方向に操作部140を押下操作すると、押下検出体130は、操作部140とともに回転軸A方向(矢印C方向)に移動する。また、操作部140は、図2に表したように、Oリング185を介してケーシング150に液密に取り付けられている。
【0028】
回転検出体120は、図1に表したように、鍔部125を有する。これと同様に、押下検出体130は、鍔部135を有する。そして、回転検出体120の鍔部125と、押下検出体130の鍔部135と、の間には、図2に表したように、例えば「コイルばね」などのような弾性体183が設置されている。この弾性体183は、回転検出体120を基板110の方向に付勢し、押下検出体130を操作部140の方向に付勢している。
【0029】
そのため、回転検出体120の下面に形成された回転電極121は、基板110の上面に形成された送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113の方向に付勢されている。その結果、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、は近接している。そして、後に詳述するように、送信電極115a、115b、115c、115dと、回転電極121と、は空間的に静電結合している。これと同様に、回転電極121と、受信電極113と、は空間的に静電結合している。
【0030】
次に、基板110と、回転検出体120と、のそれぞれに形成された電極の詳細および配置関係について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の基板に形成された受信電極と、送信電極と、を表す平面模式図である。
また、図4は、本実施形態の回転検出体に形成された回転電極を表す平面模式図である。
なお、図3は、基板110を上方から眺めた平面模式図であり、図4は、回転検出体120を下方からそれぞれ眺めた平面模式図である。また、回転検出体120に形成された突起部123については、説明の便宜上、それぞれ適宜省略している。
【0031】
図3に表したように、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、はこの順に基板110の内側から外側に向かって同心円状に形成されている。受信電極113は、中実円形状を有している。また、送信電極115a、115b、115c、115dは、互いに複数に分割されており、回転軸A(図1参照)を中心に対称となるように形成されている。なお、本実施形態の送信電極115a、115b、115c、115dは、扇形状を有しているが、これだけに限定されず、例えば、回転方向に従って面積が順次増加するパターンと、順次減少するパターンと、を有する形状であってもよい。また、送信電極の設置数は、図1に関して前述したように、4つに限定されるわけではない。
【0032】
回転電極121は、図4に表したように、回転軸A(図1参照)を中心に非対称となるように形成されている。より具体的には、回転電極121は、中空円形部121aと、扇形部121bと、を有する。そして、中空円形部121aと、扇形部121bと、の中心は、回転軸Aに一致している。
【0033】
図5は、基板と、回転検出体と、のそれぞれに形成された電極の配置関係について説明するための斜視模式図である。
なお、回転検出体120については、説明の便宜上、回転電極121のみを表している。
【0034】
回転電極121の中空円形部121aの内径は、受信電極113の外径よりも小さい。また、回転電極121の中空円形部121aの外径は、受信電極113の外径あるいは送信電極115a、115b、115c、115dの内径と同等である。また、回転電極121の扇形部121bの外径は、送信電極115a、115b、115c、115dの外径と同等である。そのため、回転電極121の中空円形部121aは、受信電極113の外周部の領域に対向するように配置されている。一方、回転電極121の扇形部121bは、送信電極115a、115b、115c、115dに対向するように配置されている。
【0035】
次に、操作部140の回転操作の検出について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の基板近傍の詳細を表す拡大模式図である。
また、図7は、絶縁体が劣化する前の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。
また、図8は、絶縁体に孔が開いた場合の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。 また、図9は、絶縁体が全面に亘って略均一に薄化した場合の静電容量出力の一例を表すグラフ図である。
【0036】
図6に表したように、基板110と、回転検出体120と、の間には、絶縁体161が設置されている。この絶縁体161は、受信電極113、送信電極115a、115b、115c、115d、および回転電極121の摩耗を抑制する機能や、回転検出体120の摺動抵抗を適宜調整する機能や、受信電極113および送信電極115a、115b、115c、115dと、回転電極121と、の間の距離を略一定に確保する機能などを有する。絶縁体161は、例えばセラミックや樹脂などにより形成され、フィルム状やシート状やプレート状を有している。
【0037】
回転検出体120の下面の外周部には、図6に表したように、絶縁体161および基板110に向かって突出した突出部127が設けられている。突出部127は、例えば、回転検出体120の形成と同時に形成され、絶縁体161と同様にセラミックや樹脂などにより形成されている。回転検出体120は、図2に関して前述したように、弾性体183により基板110の方向に付勢されている。そのため、回転検出体120の突出部127は、絶縁体161に押し付けられている。これに伴い、絶縁体161は、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、に押し付けられている。
【0038】
つまり、突出部127および回転電極121は、絶縁体161を介して、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、の方向に付勢されている。したがって、使用者などが操作部140を回転操作すると、突出部127は、絶縁体161に押し付けられつつ、回転電極121は、図5に表した矢印Fのように、絶縁体161の上を回転する。そのため、絶縁体161は、突出部127がより円滑に回転できるように、滑らかな表面を有することがより好ましい。
【0039】
また、回転検出体120の下面の外周部に突出部127が設けられていることにより、絶縁体161が摩耗し消失することを抑制することができる。つまり、絶縁体161と当接している部分は、突出部127であるため、絶縁体161は、突出部127と当接している部分が主として摩耗し薄化する。そのため、絶縁体161が略全面にわたって摩耗し、消失することを抑制することができる。なお、突出部127の高さは、絶縁体161の厚さよりも小さいことが好ましい。これによれば、突出部127と当接した絶縁体161の部分は、摩耗により薄化した場合であっても、その厚さから突出部127の高さを引いた分の厚さを確保される。
【0040】
ここで、図1および図2に関して前述したように、送信電極115a、115b、115c、115dと、回転電極121と、は絶縁体161を介して空間的に静電結合している。そのため、送信電極115a、115b、115c、115dに交流電圧をそれぞれ出力すると、それぞれの出力は、図6に表した二点鎖線Eのように、回転電極121を介して受信電極113に入力される。そして、受信電極113に入力された電荷量を測定することにより、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を検出することができる。なお、この検出動作は、後に詳述する静電容量検出部により行われる。
【0041】
ここで、静電容量は、一般的に、一対の電極間の面積および電極間に存在する誘電体の誘電率に比例し、電極間の距離に反比例する。本実施形態にかかる操作入力装置100では、回転電極121は、絶縁体161を介して、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、の方向に付勢されている。そのため、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離は、絶縁体161が薄化する前では略一定である。つまり、絶縁体161が薄化する前では、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、は絶縁体161の厚さおよび突出部127の高さの分だけ離間している。また、絶縁体161に孔が開いていない状態では、絶縁体161の誘電率は略一定である。
【0042】
したがって、絶縁体161が薄化したり、絶縁体161に孔が開いたりする前、すなわち、絶縁体161が劣化する前では、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量は、送信電極115a、115b、115c、115dのそれぞれに対向する回転電極121の扇形部121bの面積に比例する。これは、受信電極113に対向する回転電極121の中空円形部121aの面積が、回転電極121がどの角度に回転した場合であっても略一定であるため、受信電極113と回転電極121との間の静電容量が略一定となることによる。そのため、回転電極121が回転すると、送信電極115a、115b、115c、115dのそれぞれに対向する回転電極121の扇形部121bの面積が変化する。これに伴い、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量は、図7に表したように、送信電極115a、115b、115c、115dのそれぞれに対向する回転電極121の扇形部121bの面積比率に応じて変化する。
【0043】
これによれば、送信電極115a、115b、115c、115dからそれぞれ出力され受信電極113に入力された電荷量をそれぞれ測定することにより、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率を検出することができる。そして、それぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転位置を検出することができる。すなわち、それぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転操作を検出することができる。
【0044】
図7を参照しつつ、より具体的に説明すると、例えば、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の最大値が「100」であり、その最小値が「0」であるとする。このとき、例えば、送信電極115aと受信電極113との間の静電容量が「100」であり、送信電極115b、115c、115dと受信電極113との間のそれぞれの静電容量が「0」である場合には、操作部140の回転位置は、適宜設定された基準位置(0°)から90°回転した位置であると検出される。また、あるいは、送信電極115a、115bと受信電極113との間のそれぞれの静電容量が「50」であり、送信電極115c、115dと受信電極113との間のそれぞれの静電容量が「0」である場合には、操作部140の回転位置は、適宜設定された基準位置(0°)から135°回転した位置であると検出される。このようにして、それぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転位置を検出することができる。
【0045】
ここで、例えば、送信電極115bの上の部分の絶縁体161に孔が開いた場合には、図8に表したように、送信電極115bと受信電極113との間の静電容量のみが、絶縁体161に孔が開く前よりも減少する。より具体的には、図8に表したように、送信電極115bと受信電極113との間の静電容量の最大値(100)が最も減少する。一方、送信電極115bと受信電極113との間の静電容量の最小値(0)は減少しない。そして、孔が開いたことにより減少した静電容量の最大値と最小値との中間の静電容量は、その減少した最大値と最小値とを結んだ直線上の値となる。
【0046】
これは、受信電極113と送信電極115bとの間に存在する誘電体の誘電率が変化するためである。より具体的には、送信電極115bの上の部分の絶縁体161に孔が開いたことにより、受信電極113と送信電極115bとの間の誘電体が、絶縁体161よりも誘電率が小さい空気に置換されるためである。
【0047】
このように、例えば、送信電極115bの上の部分の絶縁体161に孔が開くことにより、送信電極115bと受信電極113との間の静電容量のみが、孔が開く前よりも減少すると、操作部140の回転位置(回転操作量)を正確に検出することができないおそれがある。これは、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転位置を検出するためである。つまり、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率が、例えば工場出荷時や使用開始時などの初期状態の比率からずれると、操作部140の回転位置を正確に検出することができないおそれがある。
【0048】
なお、図8に関しては、送信電極115bの上の部分の絶縁体161に孔が開いた場合を例に挙げて説明したが、これは、送信電極115a、115c、115dの上のそれぞれの部分の絶縁体161に孔が開いた場合でも同様である。
【0049】
そこで、本実施形態にかかる操作入力装置100は、静電容量検出部により検出され出力された静電容量が、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも減少し、その偏差に応じて、検出された静電容量を補正する。より具体的には、例えば、偏差の絶対値が閾値よりも大きくなると、図8に表した矢印のように、その減少した状態で出力された静電容量のみを補正し増加させる。その補正動作については、後に詳述する。
【0050】
また、例えば、回転検出体120の突出部127に当接した部分の絶縁体161が略均一に薄化した場合には、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量は、絶縁体161が薄化する前よりも増加する。より具体的には、送信電極115a、115b、115c、115dと受信電極113との間の静電容量の最大値(100)が最も増加する。一方、送信電極115a、115b、115c、115dと受信電極113との間の静電容量の最小値(0)は減少しない。但し、静電容量検出部の性能によっては、図9に表したように、検出された静電容量は、一定の角度範囲において飽和する場合もある。そして、絶縁体161が薄化したことにより増加した静電容量の最大値と最小値との中間の静電容量は、その増加した最大値と最小値とを結んだ直線上の値となる。
【0051】
これは、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離が変化したためである。より具体的には、回転検出体120の突出部127に当接した部分の絶縁体161が略均一に薄化したことにより、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離が略均一に小さくなったためである。
【0052】
なお、このようなことは、図6に表したように、回転検出体120の下面に突出部127が設けられた場合に生じやすい。すなわち、回転検出体120の下面に突出部127が設けられていない場合には、回転検出体120の下面および回転電極121が絶縁体161に接触することになるが、回転検出体120の下面と回転電極121とを同一面に形成することは一般的に困難である。そのため、回転検出体120の下面に突出部127が設けられていない場合には、回転検出体120の下面および回転電極121は、絶縁体161に片当たりするおそれがある。そうすると、絶縁体161は部分的に薄化し、略均一に薄化することは少ない。そのため、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離が略均一に小さくなることは少ない。
【0053】
これに対して、回転検出体120の下面に突出部127が設けられた場合には、前述したように、絶縁体161と当接している部分は、突出部127であるため、絶縁体161は、突出部127と当接している部分が主として摩耗し薄化する。そのため、突出部127が絶縁体161に片当たりするおそれは少なく、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離が略均一に小さくなりやすい。
【0054】
このように、回転検出体120の突出部127に当接した部分の絶縁体161が略均一に薄化することにより、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が、絶縁体161が薄化する前よりも増加すると、操作部140の回転位置(回転操作量)を正確に検出することができないおそれがある。これは、図8に関して前述したように、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転位置を検出するためである。つまり、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率が、例えば工場出荷時や使用開始時などの初期状態の比率からずれると、操作部140の回転位置を正確に検出することができないおそれがある。
【0055】
そこで、本実施形態にかかる操作入力装置100は、静電容量検出部により検出され出力された静電容量が、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも増加し、その偏差の絶対値が閾値よりも大きくなると、図9に表した矢印のように、その出力された静電容量を全て一括して補正し減少させる。その補正動作については、後に詳述する。
【0056】
本実施形態にかかる操作入力装置100によれば、絶縁体161が薄化したり、絶縁体161に孔が開いた場合、すなわち、絶縁体161が劣化した場合であっても、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正することができる。そのため、操作部140の回転位置(回転操作量)を正確に検出することができる。
【0057】
以上の説明では、基板110と回転検出体120との間に、絶縁体161が設置されている場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。例えば、絶縁体161の代替として、ケーシング150の内部において、支持部151(図2参照)と同様の図示しないストッパが基板110と回転検出体120との間に設けられていてもよい。そして、回転検出体120は、その図示しないストッパに支持されていてもよい。これによれば、絶縁体161が設置された場合と同様に、受信電極113および送信電極115a、115b、115c、115dと、回転電極121と、の間の距離を略一定に確保する効果や、回転検出体120の摺動抵抗を適宜調整する効果などを得ることができる。
【0058】
そして、この場合であっても、図示しないストッパが回転検出体120と摩耗することにより削れた場合には、絶縁体161が設置された場合と同様に、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量は、図示しないストッパが削れる前よりも増加する。これは、図9に関して前述したように、回転電極121と、送信電極115a、115b、115c、115dおよび受信電極113と、の間の距離が、略均一に小さくなるためである。したがって、例えば、絶縁体161の代替として、図示しないストッパが基板110と回転検出体120との間に設けられた場合でも、補正動作を行うことにより、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。
【0059】
また、以上の説明では、基板110の上面において、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、がこの順に内側から外側に向かって同心円状に形成されている場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。例えば、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、がこの順に内側から外側に向かって同心円状に形成されていてもよい。つまり、送信電極115a、115b、115c、115dが、基板110の上面の中央部に配置され、中空円形状の受信電極113が、送信電極115a、115b、115c、115dの周囲に配置されていてもよい。この場合であっても、本実施形態にかかる操作入力装置100は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転操作を検出することができる。
【0060】
あるいは、1つの送信電極(第2の電極)が基板110の上面の中央部に配置され、複数の受信電極(第1の電極)が1つの送信電極の周囲に配置されていてもよい。つまり、例えば、図3に表した受信電極113の位置に1つの送信電極が配置され、図3に表した送信電極115a、115b、115c、115dの位置に複数の受信電極がそれぞれ配置されていてもよい。この場合であっても、本実施形態にかかる操作入力装置100は、1つの送信電極と、複数の受信電極と、の間のそれぞれの静電容量の比率の変化を検出することにより、操作部140の回転操作を検出することができる。
【0061】
但し、図3に表したように、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、はこの順に内側から外側に向かって同心円状に形成されていることがより好ましい。これは、受信電極113を有する受信回路は、一般的に、ノイズに対して敏感でありノイズを受けやすいが、本実施形態の受信電極113は、後述するように、接地電位であってインピーダンスが受信電極113よりも低い送信電極115a、115b、115c、115dに挟まれているため、ノイズを受けにくいためである。すなわち、受信電極113と、送信電極115a、115b、115c、115dと、がこの順に内側から外側に向かって同心円状に形成された場合には、静電容量検出部は、受信電極113の外側を挟むように形成された送信電極115a、115b、115c、115dによりシールド効果を得ることができ、ノイズを抑制することができる。そのため、本実施形態にかかる操作入力装置100は、信号を安定化させることができる。また、受信電極113を有する受信回路のシールドを行う特別な部品などは不要であるため、静電容量検出部に関する回路を小型化することができ、操作入力装置100を小型化することができる。
【0062】
また、以上の説明では、操作入力装置100は、操作部140の回転操作を検出する場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。操作入力装置100は、操作部140の押下操作(押し込み操作)をさらに検出可能とされてもよい。この場合には、例えば、受信電極113は中空形状に形成され、その中空部であって基板110の上面に、中実円形状の押下送信電極が形成される。一方、押下検出体130の下面には、押下送信電極と、受信電極113と、に対向するように押下電極が形成される。
【0063】
そうすると、押下送信電極と、押下電極と、は絶縁体161および絶縁体161と押下電極との離間距離の空気層を介して空間的に静電結合する。これと同様に、押下電極と、受信電極113と、は絶縁体161および絶縁体161と押下電極との離間距離の空気層を介して空間的に静電結合する。ここで、使用者などが操作部140を押下操作すると、押下送信電極と、受信電極113と、の間の静電容量は押下操作前よりも大きくなる。これによれば、本実施形態にかかる操作入力装置100は、押下送信電極と、受信電極113と、の間の静電容量の大きさの変化を検出することにより、操作部140の押下操作をさらに検出することができる。
【0064】
また、本実施形態では、送信電極115a、115b、115c、115dは、基板110の外周部に形成されているため、送信電極115a、115b、115c、115dの面積をより広く確保することができる。回転操作の検出には、押下操作の検出と比較してより多くの信号量(情報量)が必要である。これは、押下操作の検出では、静電容量の大きさの変化、つまり単なる大小判定で検出するのに対し、回転操作の検出では、静電容量の比率の変化を検出して回転電極121の角度(回転位置)を段階的、または連続的(アナログ的)に検出するためである。そのため、本実施形態にかかる操作入力装置100のように、送信電極115a、115b、115c、115dを基板110の外周部に形成して、半径を大きくして面積を増やすことがより好ましく、操作入力装置100は、操作部140の回転操作をより精度良く検出することができる。
【0065】
次に、静電容量検出部について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、静電容量検出部に関する回路構成を例示する構成図である。
また、図11は、静電容量検出部に関する回路の動作波形を表すタイミングチャートである。
【0066】
本実施形態にかかる操作入力装置100は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間の静電容量を検出する静電容量検出部を備える。静電容量検出部は、送信電極115a、115b、115c、115dに電気信号(パルス信号)を送信し、受信電極113に誘起される電圧により静電容量を検出する。このような静電容量検出部に関する回路構成は、例えば図10に表した如くである。
【0067】
まず、静電容量検出部は、積分部240の積分値をリセットする。すなわち、受信電極113に受信された検出信号(静電容量)は、積分部240により積分されて制御部210へ出力されるため、静電容量検出部は、まず信号S1を「L、H、L」の順序で切り替えてスイッチ251により積分値をリセット(初期化)する。
【0068】
続いて、送信電極115a、115b、115c、115dにパルス信号を送信する際の動作を説明する。まず、送信電極115a、115b、115c、115dに「H」レベルの電圧が印加されているとき、すなわち送信電極115a、115b、115c、115dに電圧が印加され、図10に表したように電気力線が発生しているとき、スイッチ252は、図11に表した信号S2により「H:on」に切り替えられ、スイッチ253は、図11に表した信号S3により「L:off」に切り替えられる。そして、送信電極115a、115b、115c、115dから送信され、受信電極113に受信されたそれぞれの検出信号は、増幅部220により増幅される。
【0069】
ここで、増幅部220は、図10に表したように、複数の抵抗R、R、・・・、Rおよび複数のスイッチSW、SW、・・・、SWを有する。複数のスイッチSW、SW、・・・、SWの「on/off」は、制御部210からの信号S4により切り替えられる。その結果、増幅部220における抵抗値は、制御部210からの信号S4により複数の抵抗R、R、・・・、Rが切り替えられ、あるいは組み合わされることにより増加したり減少したりする。これにより、本実施形態の静電容量検出部は、増幅部220の増幅率を増加させたり減少させたりして、適宜切り替えることができる。その後、積分部240は、増幅部220からの信号(増幅された静電容量)を積分する(図11に表したタイミングT1〜T16のうちの奇数タイミング)。
【0070】
一方、送信電極115a、115b、115c、115dから電気力線が発生していないとき、すなわち送信電極115a、115b、115c、115dに電圧をかける信号が送信されていないとき(「L」レベル出力であり、送信電極115a、115b、115c、115dがGND(接地)電位にあるとき)には、スイッチ252は信号S2により「L:off」に切り替えられ、スイッチ253は信号S3により「H:on」に切り替えられる。つまり、送信電極115a、115b、115c、115dから「L」レベルの信号が送信され、受信電極113に受信されたそれぞれの検出信号は、増幅部220により増幅される。その後、反転部230は、増幅部220からの信号(増幅された静電容量)の極性を反転させる。続いて、積分部240は、反転部230により極性を反転された信号を積分する(図11に表したタイミングT1〜T16のうちの偶数タイミング)。
【0071】
このような積分演算が所定回数(図11に表した動作波形では8回)終了した場合には(図11に表したタイミングT17)、静電容量検出部は、その積分演算を終了させる。つまり、静電容量検出部は、信号S2および信号S3を「L:off」にそれぞれ切り替える。積分演算が所定回数終了していない場合には、その積分演算は所定回数終了するまで繰り返される。以上の積分演算の繰り返しにより、送信電極115a、115b、115c、115dに出力された送信信号が、静電結合によって回転電極121を介して受信電極113に伝達され、その信号成分が積分部240の出力として現れる。
【0072】
一方、受信電極113には送信信号以外のノイズ成分が入力される場合もあるが、ノイズ成分は不規則に変化するため、送信電極115a、115b、115c、115dの送信信号のタイミング、つまり、送信電極115a、115b、115c、115dに「H」レベルまたは「L」レベルの信号を出力するタイミングおよび積分演算のタイミングと同期しない。よって、図11に表したT1〜T16のうちの奇数タイミングと偶数タイミングとで増幅信号の極性を反転させながら増幅信号を積分することで、ノイズ成分は相殺され、積分部240の出力として現れない。このようにして、積分部240により積分された積分値は、制御部210へ出力され、その制御部210によりA/D(アナログ/ディジタル)変換されて、静電容量値として判定される。
【0073】
以上は、ひとつの送信電極と受信電極との組み合わせ条件における、静電容量の検出動作であり、容量測定の原理に相当するものである。しかし、回転検出のためには、複数の送信電極115a、115b、115c、115dと受信電極との組み合わせにおける、複数の静電容量を検出する必要がある。そこで、送信電極115a、115b、115c、115dを切り替える際の静電容量検出部の動作について、以下図面を参照しつつ説明する。
【0074】
図12は、静電容量検出部に関する回路における送信電極の接続を説明するための模式図である。
また、図13は、静電容量検出部に関する回路における送信電極の接続を説明するための回路構成図である。
なお、図13は、図12に表した模式図を回路構成図として表したものである。
【0075】
図13に表したように、本実施形態にかかる操作入力装置100では、送信電極115a、115b、115c、115dと、回転電極121と、は空間的に静電結合している(結合コンデンサC1〜C4)。これと同様に、回転電極121と、受信電極113と、は空間的に静電結合している(結合コンデンサC5)。図6に関して前述したように、操作部140の回転操作により回転電極121が回転すると、送信電極115a、115b、115c、115dのそれぞれに対向する回転電極121の面積は変化する。そのため、操作部140の回転操作により回転電極121が回転すると、結合コンデンサC1〜C4の静電容量は変化する。更に具体的には、結合コンデンサC1〜C4の静電容量の総和は変化せず、それぞれの割合が変化する。一方、操作部140の回転操作に伴い回転電極121が回転しても、受信電極113に対向した部分の回転電極121の面積と、回転電極121と受信電極113との間の距離は略一定であるため、結合コンデンサC5の静電容量は変化しない。
【0076】
ここで、本実施形態の静電容量検出部では、送信パルス信号である信号S2が、図12および図13に表したように、それぞれに抵抗を介して送信電極115a、115b、115c、115dに印加される。このとき、それぞれの送信信号のラインにはスイッチ255a〜255dがGNDに対して接続されており、これらのスイッチをオンにすることで、送信電極115a、115b、115c、115dへの信号印加を無効にすることができる。つまり、スイッチ255a〜255dのいずれかひとつだけをオフ状態とし、それ以外をオン状態とすることで、送信電極115a、115b、115c、115dのいずれかひとつを静電容量の検出対象として選択する。
【0077】
より具体的には、まず、送信電極115aが静電容量の検出対象として選択されると、スイッチ255aは、制御部210からの指令により「off(非接続)」に切り替えられる。このとき、スイッチ255b、255c、255dは、制御部210からの指令によりにより「on(接続)」に切り替えられる。そのため、送信電極115b、115c、115dとは接地され、それらの電位は接地電位となる。
【0078】
続いて、送信電極115bが静電容量の検出対象として選択されると、スイッチ255bは、「off(非接続)」に切り替えられる。このとき、スイッチ255a、255c、255dは、「on(接続)」に切り替えられる。そうすると、送信電極115a、115c、115dは接地され、それらの電位は接地電位となる。以下同様にして、いずれかの送信電極が、静電容量の検出対象として順次選択される。
【0079】
このように、本実施形態の静電容量検出部では、選択された送信電極以外の送信電極は接地される。これによれば、前述したように、受信電極113を有する受信回路は、一般的に、ノイズに対して敏感でありノイズを受けやすいが、本実施形態の受信電極113は、接地電位であってインピーダンスが受信電極113よりも低い送信電極115a、115c、115dに挟まれているため、ノイズを受けにくい。すなわち、本実施形態の静電容量検出部は、受信電極113の外側を挟むように形成された送信電極115a、115c、115dによりシールド効果を得ることができ、ノイズを抑制することができる。そのため、本実施形態にかかる操作入力装置100は、信号を安定化させることができる。
【0080】
次に、操作部140の回転操作を検出する際の補正動作について、図面を参照しつつ説明する。
図14は、操作部の回転操作を検出する際の補正動作の具体例を例示するフローチャートである。
また、図15は、本具体例のゲイン調整サブルーチンを例示するフローチャートである。
【0081】
まず、操作入力装置100の動作がスタートすると(ステップS101)、制御部210は、スイッチ255aを「off」に切り替え、送信電極115aを静電容量の検出対象として選択する(ステップS103)。そして、静電容量検出部は、図10および図11に関して前述した如く、送信電極115aと受信電極113との間の静電容量aを検出し出力する(ステップS105)。
【0082】
続いて、制御部210は、スイッチ255aを「on」に切り替え、スイッチ255bを「off」に切り替えて、送信電極115bを静電容量の検出対象として選択する(ステップS107)。そして、静電容量検出部は、送信電極115bと受信電極113との間の静電容量bを検出し出力する(ステップS109)。続いて、制御部210は、送信電極115c、115dに関しても同様の動作を行い、静電容量検出部は、送信電極115c、115dと受信電極113との間の静電容量c、dを検出し出力する(ステップS111、S113、S115、S117)。
【0083】
続いて、制御部210は、静電容量a、b、c、dの比率の変化に基づいて回転電極121の回転位置(θ=A)、すなわち操作部140の回転位置(θ=A)を決定する(ステップS119)。続いて、制御部210は、前回記憶された操作部140の回転位置(θ=A’)と、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)と、が等しいか否かを判断する(ステップS121)。前回記憶された操作部140の回転位置(θ=A’)と、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)と、が等しくない場合には(ステップS121:No)、再び、制御部210は、スイッチ255aを「off」に切り替え、送信電極115aを静電容量の検出対象として選択する(ステップS103)。
【0084】
一方、前回記憶された操作部140の回転位置(θ=A’)と、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)と、が等しい場合には(ステップS121:Yes)、タイマのカウントを開始し(ステップS123)、そのタイマカウンタ(tx)が、所定時間(X)を経過したか否かを判断する(ステップS125)。そして、タイマカウンタ(tx)が、所定時間(X)を経過していない場合には(ステップS125:No)、再び、制御部210は、スイッチ255aを「off」に切り替え、送信電極115aを静電容量の検出対象として選択する(ステップS103)。
【0085】
つまり、ステップS121、S123、S125では、所定時間の間、操作部140が操作されていないか否かを判断している。これは、操作部140が操作されていない状態、すなわち静電容量検出部により検出された静電容量a、b、c、dが安定している状態で補正動作を行うことにより、その補正をより正確に行うためである。
【0086】
続いて、制御部210は、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS127)。なお、図14のステップS127に表した「a’」は、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、適宜設定された閾値と、を加算した値である。また、回転位置に対応して予め記憶された静電容量とは、例えば工場出荷時や使用開始時などの初期状態において、回転位置に対応して予め制御部210に記憶された静電容量である。これらは、後述する「b’」、「c’」、および「d’」についても同様である。
【0087】
続いて、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下ではない場合、すなわち、その偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には(ステップS127:No)、制御部210は、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正動作を行う。
【0088】
ここで、本具体例のゲイン調整サブルーチンS200について、図15を参照しつつ説明する。まず、ゲイン調整サブルーチンS200の動作がスタートすると(ステップS201)、制御部210は、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きいか、あるいは小さいかを判断する(ステップS203)。
【0089】
静電容量検出部により検出され出力された静電容量aが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きい場合には(ステップS203:a>a’)、制御部210は、増幅部220の増幅率を所定量だけ減少させる。一方、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも小さい場合には(ステップS203:a<a’)、制御部210は、増幅部220の増幅率を所定量だけ増加させる。
【0090】
続いて、図14に表したフローチャートに戻って説明を続けると、制御部210は、再び、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS127)。そして、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には(ステップS127:No)、制御部210は、再び、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正動作を行う。つまり、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下になるまで、ステップS127およびS200の動作が繰り返される。
【0091】
このように、本具体例のゲイン調整サブルーチンS200では、増幅部220の増幅率は、段階的に増減される。これは、図9に関して前述したように、検出された静電容量が一定の角度範囲において飽和した場合などには、切り替えるべき増幅部220の増幅率を一回で決定することが困難となる場合があるためである。
【0092】
続いて、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下である場合には(ステップS127:Yes)、制御部210は、補正動作を行わず、静電容量bについてステップS127およびS200と同様の動作を行う(ステップS129、S200)。続いて、制御部210は、静電容量c、dについてステップS127およびS200と同様の動作を行い(ステップS131、S133、S200)、ステップS101に戻る(ステップS135)。
【0093】
本具体例の補正動作によれば、静電容量検出部により検出され出力された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値よりも大きくなると、制御部210は、増幅部220の増幅率を切り替えることにより、受信電極113から制御部210へ出力される静電容量の増幅率を増減させる。これによれば、絶縁体161が薄化したり、絶縁体161に孔が開いたことにより、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の比率が初期状態からずれても、制御部210は、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。
【0094】
また、本具体例の補正動作によれば、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を個別的に補正を行う。すなわち、本具体例の補正動作によれば、制御部210により静電容量の検出対象として選択された送信電極115a、115b、115c、115dごとに補正を行う。そのため、特定の送信電極の上の絶縁体161に孔が開いた場合でも、その特定の送信電極と受信電極113との間の静電容量について個別的に補正を行い、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。
【0095】
また、操作部140が操作されていない状態、すなわち静電容量検出部により検出された静電容量a、b、c、dが安定している状態で補正動作を行うため、その補正をより正確に行うことができる。
【0096】
図16は、操作部の回転操作を検出する際の補正動作の他の具体例を例示するフローチャートである。
まず、ステップS301、S303、S305、S307、S309、S311、S313、S315、S317、S319の動作については、図14に関して前述したステップS101、S103、S105、S107、S109、S111、S113、S115、S117、S119の動作と同様である。
【0097】
続いて、制御部210は、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、適宜設定された基準位置0°であるか、あるいは基準位置から90°回転した位置であるか、あるいは基準位置から180°回転した位置であるか、あるいは基準位置から270°回転した位置であるかを判断する(ステップS321)。
【0098】
すなわち、ステップS321の動作では、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が最大値となる位置に、操作部140の回転位置があるか否かを判断している(図7参照)。これは、図7〜図9に関して前述したように、静電容量検出部により検出され出力された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値は、静電容量が最大値となる位置において最も大きくなるためである。つまり、操作部140の回転位置(θ=A)が、0°、90°、180°、および270°のいずれかの回転位置であるときに、その偏差を最も検出しやすく、補正をより正確に行うことができるためである。
【0099】
そして、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、0°、90°、180°、および270°のいずれの回転位置でもない場合には(ステップS321:No)、再び、制御部210は、スイッチ255aを「off」に切り替え、送信電極115aを静電容量の検出対象として選択する(ステップS303)。
【0100】
ここで、本実施形態にかかる操作入力装置100では、操作部140を回転操作するといわゆる「クリック感」が得られる。この「クリック感」が得られる回転角度は特に限定されるわけではないが、例えば約45°間隔である。そして、例えば、使用者が「クリック感」の得られない回転角度で操作部140の回転操作を止めたとしても、操作部140は、止まった位置から「クリック感」の得られる隣接する回転位置まで回転する。そのため、本実施形態にかかる操作入力装置100では、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、0°、90°、180°、および270°のいずれかの回転位置である確率は比較的高い。
【0101】
一方、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、0°、90°、180°、および270°のいずれかの回転位置であって(ステップS321:Yes)、その回転位置が0°である場合には、制御部210は、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS323)。続いて、静電容量検出部により検出され出力された静電容量aと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下ではない場合、すなわち、その偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には(ステップS323:No)、制御部210は、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正動作を行う。これらのステップS323およびステップS200の動作については、図14および図15に関して前述した動作と同様である。
【0102】
続いて、今回決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、90°、180°、および270°のいずれかの回転位置である場合についても、静電容量検出部により検出され出力された静電容量b、c、dと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS325、S327、S329)。そして、静電容量検出部により検出され出力された静電容量b、c、dと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値以下ではない場合には(ステップS325、S327、S329:No)、制御部210は、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正動作を行う。そして、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいた補正動作が完了すると、ステップS301に戻る(ステップS331)。
【0103】
本具体例の補正動作によれば、静電容量検出部により検出され出力された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差を最も検出しやすい位置に、操作部140の回転位置があるときに、制御部210は、受信電極113から制御部210へ出力される静電容量の増幅率を増減させる。そのため、制御部210は、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。また、その他の効果についても、図14および図15に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0104】
なお、本具体例では、決定した操作部140の回転位置(θ=A)が、0°、90°、180°、および270°のいずれかの回転位置であるときに、制御部210が補正動作を行う場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。例えば、操作部140が回転しているときであっても、制御部210が、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量の最大値を保存する、いわゆる「ピークホールド」することにより、同様の補正動作を行うことができる。したがって、本具体例の補正動作は、操作部140が静止しているときにのみ行われるわけでない。
【0105】
また、ステップS321において判断する操作部140の回転位置(0°、90°、180°、270°)は、これだけに限定されるわけではない。この回転位置は、基板110に設置する送信電極の設置数あるいは設置位置に応じて適宜変更可能である。より具体的には、ステップS321において判断する操作部140の回転位置は、複数の送信電極と、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が最大値となる位置に設定されることが好ましい。これは、前述したように、静電容量検出部により検出され出力された静電容量と、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差を検出しやすくするためである。
【0106】
また、操作部140の「クリック感」が得られる回転角度の間隔は、前述した45°に限定されるわけではなく、適宜変更可能である。但し、操作部140の「クリック感」が得られる回転位置は、複数の送信電極と、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が最大値となる位置には少なくとも設定されることが好ましい。
【0107】
図17は、操作部の回転操作を検出する際の補正動作のさらに他の具体例を例示するフローチャートである。
本具体例では、静電容量検出部により検出され出力された静電容量のいずれかが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きい場合であって、その偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には、制御部210は、絶縁体161が薄化したと判断する。そして、操作部140が360°回転しなくとも、制御部210は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を一括的に補正する。
【0108】
図17を参照しつつ説明すると、まず、ステップS401、S403、S405、S407、S409、S411、S413、S415、S417、S419の動作については、図14に関して前述したステップS101、S103、S105、S107、S109、S111、S113、S115、S117、S119の動作と同様である。
【0109】
続いて、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dのいずれかが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きいか否かを判断する(ステップS421)。静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dのいずれもが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きくない場合には(ステップS421:No)、再び、制御部210は、スイッチ255aを「off」に切り替え、送信電極115aを静電容量の検出対象として選択する(ステップS403)。
【0110】
一方、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dのいずれかが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きい場合には(ステップS421:Yes)、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、のそれぞれの偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS423)。
【0111】
続いて、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、のそれぞれの偏差の絶対値が閾値以下ではない場合、すなわち、その偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には(ステップS423:No)、制御部210は、ゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正動作を行う。一方、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dと、回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、のそれぞれの偏差の絶対値が閾値以下である場合には(ステップS423:Yes)、ステップS401に戻る(ステップS425)。
【0112】
本具体例の補正動作によれば、前述したように、静電容量検出部により検出され出力された静電容量a、b、c、dのいずれかが、回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きい場合であって、それぞれの偏差の絶対値が閾値よりも大きい場合には、制御部210は、絶縁体161が薄化したと判断する。そして、制御部210は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を一括的にゲイン調整サブルーチンS200の動作に基づいて補正する。
【0113】
そのため、例えば、使用者が操作部140をあまり回転させないことにより、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が最大値とならない場合であっても、制御部210は、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。つまり、操作部140が360°回転しなくとも、制御部210は、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正し、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。これにより、より確実にあるいはより速やかに補正動作を行うことができる。
【0114】
また、本具体例の補正動作では、制御部210は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を個別的ではなく一括的に補正する。そのため、より速やかに補正動作を行うことができる。
【0115】
次に、操作入力装置100を備えた水栓装置について、図面を参照しつつ説明する。
図18は、本実施形態の操作入力装置が備えられた水栓装置を例示する斜視模式図である。
また、図19は、本実施形態の操作入力装置が備えられた水栓装置を例示するブロック図である。
【0116】
図18および図19に表した水栓装置は、本実施形態にかかる操作入力装置100と、モータ310と、水および湯を混合する混合弁320と、開閉弁としての機能を有する電磁弁(流調弁)330と、水栓本体340と、を備えている。
【0117】
制御部210は、受信電極113からの検出信号に基づいて、モータ310および電磁弁330の駆動を制御する。モータ310は、制御部210の指示に基づいて混合弁320を駆動し、設定された水温となるように水および湯を混合させる。一方、電磁弁330は、制御部210からの指示に基づいて弁の開閉駆動を行い、混合弁320から供給された水を水栓本体340へ通水したり止水したりする。すなわち、制御部210は、モータ310、混合弁320、および電磁弁330の駆動を制御することによって、水栓本体340から吐水される水の流量や温度の制御、および吐止水の制御を行う。なお、混合弁320から電磁弁330に供給され、水栓本体340から吐水される水は、冷水のみならず、加熱されたお湯、あるいは冷水とお湯との混合水も含むものとする。
【0118】
操作部140は、例えば洗面所やキッチンなどのカウンター350などに設けられる。使用者は、例えば、図18に表した矢印Bのように、操作部140を回動させることにより、水栓本体340から吐水される水の温度などを調整することができる。また、図6〜図9に関して前述したように、操作入力装置100が、操作部140の押下操作(押し込み操作)をさらに検出可能とされた場合には、図18に表した矢印Cの方向に操作部140を短時間押下することにより、水栓本体340から吐水される水の吐止水を操作することができる。また、使用者は、例えば、吐止水を操作する場合よりも長い時間押下することにより、水栓本体340から吐水される水の流量などを調整することができる。
【0119】
なお、操作部140の押下操作および回転操作により操作できる吐水状態(吐止水、流量、および温度)は、これだけに限定されるわけではない。例えば、使用者が、吐止水を操作する場合よりも長い時間、図18に表した矢印Cの方向に押下することにより、水栓本体340から吐水される水の温度を調整できてもよい。また、例えば、使用者が、図18に表した矢印Bの方向に操作部140を回動させることにより、水栓本体340から吐水される水の流量を調整できてもよい。
【0120】
このように、操作部140をカウンター350に設けることによって、水栓本体340はすっきりとしたデザインを有することができる。さらに、操作部140の大きさを比較的自由に設定できるため、その大きさを使用者が操作し易い大きさに設定することができる。また、図18に表したように、操作部140は水栓本体340に設けられてもよい。これによれば、使用者は、洗面所やキッチンなどのカウンター350の上面を広く利用することができる。さらに、カウンター350はすっきりとしたデザインを有することができる。
【0121】
以上説明したように、本実施形態によれば、絶縁体161が薄化したり、絶縁体161に孔が開いた場合、すなわち、絶縁体161が劣化した場合であっても、操作部140の回転位置を判断する静電容量を補正することができる。より具体的には、制御部210は、増幅部220の増幅率を切り替えることにより、受信電極113から制御部210へ出力される静電容量の増幅率を増減させる。そのため、操作部140の回転位置(回転操作量)を正確に検出することができる。またさらに、絶縁体161が劣化した場合であっても、操作部140の回転位置を正確に検出することができるため、操作入力装置100の寿命をより向上させることができる。
【0122】
また、以上の説明では、絶縁体161に孔が開いた場合と、絶縁体161が薄化した場合と、が個別的に生じた場合を例に挙げて説明したが、絶縁体161に孔が開いた場合と、絶縁体161が薄化した場合と、が同時あるいは同時期に生ずる場合がある。この場合には、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量が、絶縁体161が薄化する前よりも増加しつつ、絶縁体161に孔が開いた部分の下の送信電極と受信電極113との間の静電容量のみが、孔が開く前よりも部分的に減少する。そのため、この場合であっても、制御部210は、送信電極115a、115b、115c、115dと、受信電極113と、の間のそれぞれの静電容量を一括的に補正しつつ、絶縁体161に孔が開いた部分の下の送信電極と受信電極113との間の静電容量を個別的に補正する。そのため、操作部140の回転位置を正確に検出することができる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、基板110や回転検出体120や押下検出体130などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや送信電極115a、115b、115c、115dの設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0124】
100 操作入力装置、 110 基板、 113 受信電極、 115a、115b、115c、115d 送信電極、 120 回転検出体、 121 回転電極、 121a 中空円形部、 121b 扇形部、 123 突起部、 125 鍔部、 127 突出部、 130 押下検出体、 133 溝部、 135 鍔部、 140 操作部、 150 ケーシング、 151 支持部、 161 絶縁体、 181 結合体、 183 弾性体、 185 リング、 210 制御部、 220 増幅部、 230 反転部、 240 積分部、 251、252、253、255a、255b、255c、255d スイッチ、 310 モータ、 320 混合弁、 330 電磁弁、 340 水栓本体、 350 カウンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とした回転操作が可能な操作部と、
前記回転操作に応じて回転し、前記回転軸を中心とした非対称形状を有する回転電極と、
前記回転電極と非接触かつ対向して配置され、前記回転軸を中心とした対称形状を有し複数に分割された第1の電極と、
前記回転電極と非接触かつ対向して配置された第2の電極と、
前記第1および第2の電極のいずれか一方にパルス信号を送信し、前記第1および第2の電極のいずれか他方に誘起される電圧により、前記第1の電極と、前記第2の電極と、の間の静電容量を検出する静電容量検出部と、
前記分割された第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の前記静電容量検出部からの静電容量の比率が変化することにより、前記回転操作に基づく前記操作部の回転位置を検出可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて、前記静電容量検出部により検出された静電容量を前記分割された第1の電極ごとに補正することを特徴とする操作入力装置。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極は、1つの基板上に形成され、
前記回転電極は、前記基板との間に設けられた絶縁体を介して、前記基板の方向に付勢されていることを特徴とする請求項1記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が閾値よりも大きくなると、検出された静電容量の増幅率を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部が非回転状態であると判断すると、前記非回転状態のときに前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて前記補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転電極が、前記分割された第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の静電容量が最大値となる回転位置にあると判断すると、前記最大値となる回転位置にあるときに前記静電容量検出部により検出された静電容量と、前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量と、の偏差に応じて前記補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記分割され第1の電極のそれぞれと、前記第2の電極と、の間の静電容量の少なくともいずれかが前記操作部の回転位置に対応して予め記憶された静電容量よりも大きくなり、且つ、前記少なくともいずれかの静電容量と、前記予め記憶された静電容量と、の偏差の絶対値が前記閾値よりも大きくなると、検出された静電容量の増幅率を一括して切り替える補正を行うことを特徴とする請求項3記載の操作入力装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の操作入力装置と、
給水流路に供給する水の温度を調整する混合弁および前記給水流路に供給する水の流量を調整する流調弁の少なくともいずれかと、
前記給水流路を介して供給された水を吐水する水栓本体と、
を備え、
前記制御部は、前記回転操作の検出に基づいて、前記混合弁および前記流調弁の少なくともいずれかの動作を制御することにより、前記水栓本体からの吐止水と前記温度と前記流量との少なくともいずれかを操作可能であることを特徴とする水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−287351(P2010−287351A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138645(P2009−138645)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】