操作補助方法、操作補助装置、制御プログラム、および車両
【課題】ドライバの運転意図を精度よく推定し、ドライバの意図に合った反力制御を行う車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】車両用運転操作補助装置は、自車両周囲のリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに基づいてアクセルペダルに発生させる操作反力の指令値を算出する。そして、運転意図推定装置において推定した実際のドライバの運転意図と推定した運転意図状態に基づいて、反力指令値を補正する。実際のドライバの運転意図が車線変更であると推定される場合は、ドライバが車線変更を想起してからの経過時間に基づいてアクセルペダル反力指令値を減衰する。
【解決手段】車両用運転操作補助装置は、自車両周囲のリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに基づいてアクセルペダルに発生させる操作反力の指令値を算出する。そして、運転意図推定装置において推定した実際のドライバの運転意図と推定した運転意図状態に基づいて、反力指令値を補正する。実際のドライバの運転意図が車線変更であると推定される場合は、ドライバが車線変更を想起してからの経過時間に基づいてアクセルペダル反力指令値を減衰する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の運転者の運転行動意図を推定する運転意図推定装置、および運転意図に応じて運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転意図推定装置は、運転者の視線行動を用いて運転意図を推定している(例えば特許文献1参照)。この装置は、運転者の視線方向を前方投影平面に投影し、投影平面上の分割された複数の領域における視線方向頻度分布を用いて運転者の運転意図を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置は、運転者の視線方向や視線の注視頻度等を用いて運転者の運転行動意図を推定することができる。ただし、運転者の視線行動は車両走行環境の差異に影響され、さらに運転者の個人差も大きく意図推定の精度が変動してしまうという問題があるため、常に高い精度で運転意図を推定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による運転意図推定装置は、自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、車両周囲状態検出手段によって検出される自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて複数の仮想ドライバの運転意図をそれぞれ決定し、所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転操作量と実際のドライバの運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、運転意図系列生成手段によって生成された運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の運転操作量系列近似度合を比較することによって、実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、運転意図推定手段によって推定された実際のドライバの運転意図について、運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを備える。
【0006】
本発明による車両用運転操作補助装置は、運転意図推定装置と、自車両周囲の障害物状況を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段による検出結果に基づいて、自車両周囲のリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて、アクセルペダルの操作反力を計算する操作反力計算手段と、アクセルペダルに操作反力を発生させる操作反力発生手段と、運転意図推定装置によって推定された運転意図および運転意図の状態に基づいて、アクセルペダルに発生させる操作反力を補正する補正手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明による運転意図推定装置によれば、仮想ドライバの運転操作と実際のドライバの運転操作とを系列的に比較して運転意図を推定し、運転意図の状態を推定するので、精度よく運転意図を推定することができる。
【0008】
本発明による車両用運転操作補助装置によれば、推定された運転意図および運転意図の状態に基づいてアクセルペダルに発生させる操作反力を補正するので、実際のドライバの期待に合った操作反力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置のシステム図。
【図2】第1の実施の形態における運転意図推定処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】仮想ドライバの運転操作量の算出方法を説明する図。
【図4】仮想ドライバの動的運転意図系列の例を示す図。
【図5】(a)(b)仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法を説明する図。
【図6】動的運転意図系列における運転意図経過時間の算出方法を説明する図。
【図7】第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図8】図7に示す車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。
【図9】アクセルペダルおよびその周辺の構成を示す図。
【図10】第2の実施の形態における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図11】リスクポテンシャルと反力増加量との関係を示す図。
【図12】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図13】(a)自車両が車線変更を行う様子を示す図、(b)車線変更時のアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図14】第2の実施の形態の変形例における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図15】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図16】第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図17】第3の実施の形態における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図18】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図19】(a)自車両が車線変更を行う様子を示す図、(b)車線変更時のアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図20】第3の実施の形態の変形例における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図21】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置1の構成を示すシステム図である。まず、第1の実施の形態による運転意図推定装置1の構成を説明する。
【0011】
運転意図推定装置1は、自車両周囲の状態を検出する車両周囲状態検出部10と、車両状態を検出する車両状態検出部20と、ドライバの操作による運転操作量を検出する運転操作量検出部30と、仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40と、仮想ドライバ操作量計算部50と、仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60と、運転意図推定部70と、運転意図状態判定部80とを備えている。
【0012】
運転意図推定装置1は、運転意図を有する仮想のドライバを複数設定し、実際のドライバの運転操作と仮想ドライバの運転操作とを比較する。そして、実際のドライバの運転操作と仮想ドライバの運転操作がどれだけ近似しているかに基づいて、例えば車線維持や車線変更といった実際のドライバの運転意図を推定する。運転意図を推定するために、現在から過去の直近の所定時間における仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定する。そして、動的に決定した運転意図系列を用いて運転操作の系列的な近似度合を算出し、実際のドライバの運転意図を推定する。さらに、推定した実際のドライバの運転意図の状態を判定する。
【0013】
車両周囲状態検出部10は、例えば自車両の前方道路状況を画像として取得する前方カメラおよびヨー角センサ等を備え、自車両の車線内横方向位置、および車線に対する自車両のヨー角等を検出する。なお、車両周囲状態検出部10は、前方カメラで取得した画像信号を画像処理する画像処理装置も備えている。
【0014】
車両状態検出部20は、例えば自車速を検出する車速センサを備えている。運転操作量検出部30は、例えば操舵系に組み込まれた操舵角センサを備え、自車両の操舵角を検出する。
【0015】
仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40,仮想ドライバ操作量計算部50、仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60、運転意図推定部70および運転意図状態判定部80は、例えばそれぞれマイクロコンピュータから構成される。またはCPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成されるコントローラにおいて、CPUのソフトウェア形態によりそれぞれを構成することもできる。
【0016】
仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40は、現在から過去の直近の所定時間において、複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定する。ここで、仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定するとは、時間によって仮想ドライバの運転意図、さらには仮想ドライバすなわち運転意図系列の数が変化することを表している。従って、例えば現在の運転意図が右車線変更であっても、過去の運転意図は車線維持である仮想ドライバが設定される可能性もある。
【0017】
仮想ドライバ運転操作量計算部50は、それぞれ異なる運転意図を与えられた複数の仮想ドライバが、それぞれの運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する。仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60は、仮想ドライバ運転操作量計算部50で算出した仮想ドライバの運転操作量と、運転操作量検出部30で検出された実際のドライバの運転操作量との近似度合を、仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40で決定した運転意図系列毎に算出する。
【0018】
運転意図推定部70は、複数の仮想ドライバと実際のドライバについて算出された運転操作量に関する運転意図系列毎の近似度合を比較することにより、実際のドライバの運転意図を推定する。運転意図状態判定部80は、推定した実際のドライバの運転意図の状態を判定する。
【0019】
以下に、第1の実施の形態による運転意図推定装置1の動作を、図2〜図6を用いて詳細に説明する。図2は、運転意図推定装置1における運転意図推定処理プログラムの処理手順を示すフローチャートである。図3は、仮想ドライバの運転操作量の算出方法を説明する図、図4および図5(a)(b)は、仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法を説明する図、図6は、運転意図の状態判定方法を説明する図である。図2に示す処理の処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0020】
ステップS101では、車両周囲状態検出部10によって検出される現在の自車両の車線内横位置yと自車両のヨー角ψを読み込む。図3に示すように、車線内横位置yは、自車線の車線中央線から自車両中心点Oまでの左右方向距離であり、ヨー角ψは、自車線の直進方向に対する自車両の回転角である。
【0021】
ステップS102では、複数の仮想ドライバの運転操作量Oidを算出する。ここでは、車線維持(LK)、右車線変更(LCR)、および左車線変更(LCL)の運転意図を持つ3人の仮想ドライバを設定する。そして、それぞれの仮想ドライバがその運転意図を遂行するために必要な運転操作量Oidを算出する。ここでは、仮想ドライバが行う操舵操作の操舵角θidを、運転操作量Oidとして算出する。以下に、仮想ドライバの運転操作量Oidの算出方法を説明する。
【0022】
(1)仮想ドライバの運転意図が車線維持の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、まず仮想ドライバの運転意図が車線維持である場合の前方参照点LK(i)を設定し、前方参照点LK(i)の横位置p_lkを算出する。前方参照点LK(i)の個数は任意であるが、ここでは自車両の前後方向中心線上に2つの前方参照点LK1,LK2を設定した場合を例として説明する。図3に示すように、自車両中心点Oから前方参照点LK1,LK2までの距離px(i)は、例えばpx(1)=10m、px(2)=30mに設定する(px={10m、30m})。距離px(i)は、例えば自車速に応じて設定することもできる。
【0023】
現在自車両が走行する車線の中央線から前方参照点LK(i)までの左右方向距離lat_pos(px(i))は、自車両のヨー角ψと前方地点LK(i)までの距離px(i)に依存し、例えば前方カメラからの画像信号に基づいて算出することができる。車線維持の場合の前方参照点LK(i)の横位置p_lk(px(i))は、以下の(式1)で表すことができる。
p_lk(px(i))=lat_pos(px(i)) i={1,...,n}・・・(式1)
ここで、n=2である。
【0024】
前方参照点LK(i)の横位置p_lk(px(i))を用いて、車線維持の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lkを以下の(式2)から算出することができる。
θid_lk=Σ{a(i)×p_lk(px(i))} ・・・(式2)
ここで、a(i)は前方参照点LK(i)における横位置p_lk(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0025】
(2)仮想ドライバの運転意図が右車線変更の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、仮想ドライバの運転意図が右車線変更である場合の前方参照点LCR(i)を設定する。図3には、自車両の前方に2つの前方参照点LCR1,LCR2を設定した場合を例として示している。
【0026】
右車線変更の場合の前方参照点LCR(i)の横位置p_lcr(px(i))は、以下の(式3)で表すように、車線維持の場合の前方参照点LK(i)の左右方向距離lat_pos(px(i))にオフセット量lc_offset_lcrを加算して算出することができる。
p_lcr(px(i))=lat_pos(px(i))+lc_offset_lcr i={1,...,n}・・・(式3)
ここで、n=2である。オフセット量lc_offset_lcrは、右車線変更の場合の前方参照点LCR(i)の横位置p_lcr(px(i))を設定するために予め適切な値、例えばlc_offset_lcr=−1.75に設定する。
【0027】
前方参照点LCR(i)の車線内横位置p_lcr(px(i))を用いて、右車線変更の場合の操舵角θid_lcrを以下の(式4)から算出することができる。
θid_lcr=Σ{a(i)×p_lcr(px(i))} ・・・(式4)
ここで、a(i)は前方参照点LCR(i)における車線内横位置p_lcr(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0028】
(3)仮想ドライバの運転意図が左車線変更の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、仮想ドライバの運転意図が左車線変更である場合の前方参照点LCL(i)を設定する。図3には、自車両の前方に2つの前方参照点LCL1,LCL2を設定した場合を例として示している。
【0029】
左車線変更の場合の前方参照点LCL(i)の横位置p_lcl(px(i))は、以下の(式5)で表すように、車線維持の場合の前方参照点LK(i)の左右方向距離lat_pos(px(i))にオフセット量lc_offset_lclを加算して算出することができる。
p_lcl(px(i))=lat_pos(px(i))+lc_offset_lcl i={1,...,n}・・・(式5)
ここで、n=2である。オフセット量lc_offset_lclは、左車線変更の場合の前方参照点LCL(i)の横位置p_lcl(px(i))を設定するために予め適切な値、例えばlc_offset_lcl=1.75に設定する。
【0030】
前方参照点LCL(i)の車線内横位置p_lcl(px(i))を用いて、左車線変更の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lclを以下の(式6)から算出することができる。
θid_lcl=Σ{a(i)×p_lcl(px(i))} ・・・(式6)
ここで、a(i)は前方参照点LCL(i)における車線内横位置p_lcl(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0031】
このようにステップS102で仮想ドライバの運転操作量Oidを算出した後、ステップS103へ進む。ステップS103では、運転操作量検出部30によって検出される現在の操舵角θrdを、実際のドライバの運転操作量Ordとして読み込む。
【0032】
ステップS104では、仮想ドライバの動的運転意図系列を生成する。ここでは、図4に示すように、現時点tから過去の時点(t−m+1)までのm個の時間フレームにおいて可能性のある運転意図を組み合わせて仮想ドライバの運転意図系列を生成する。例えば、運転意図系列L1は、過去の時点(t−m+1)から(t−1)の時点までは車線維持LKの運転意図を有していたが、現時点tで運転意図が右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表している。運転意図系列L2は、1フレーム前の時点(t−1)で運転意図が車線維持LKから右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表し、運転意図系列L3は、過去の時点(t−m+3)で運転意図が車線維持LKから右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表している。
【0033】
以下に、仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法について説明する。過去の時点(t−m+1)から時間(t−1)までの運転意図系列は、時間(t−1)で設定した運転意図系列を継続して使用する。現時点tにおける仮想ドライバの運転意図は、1フレーム前の時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図および運転意図系列の生成則に基づいて動的に決定する。
【0034】
図5(a)に示すように、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が車線維持LKの場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は、車線維持LK、右車線変更LCRおよび左車線変更LCLである。従って、時間(t−1)までは一つであった運転意図系列が、時間tにおいて3つに増加する。このとき、3つの運転意図系列は分岐元の時間(t−m+1)から時間(t−1)までの運転意図系列をそれぞれ継承する。
【0035】
一方、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が車線変更の場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は同一方向の車線変更のみである。図5(b)に示すように、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が右車線変更LCRの場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は右車線変更LCRのみである。具体的には、時間tにおいて自車両が右車線変更を継続していると判定される場合は運転意図を右車線変更LCRとし、その運転意図系列を存続させる。一方、例えば右隣接車線への車線変更を完了し、時間tでは車線変更を実行していない場合は、その運転意図系列自体を消滅させる。
【0036】
車線変更継続判定方法としては、例えば自車両の横位置および走行車線検出結果を用いて、時間(t−1)の運転意図が右車線変更LCRの場合、時間tにおいて自車両がまだ同じ車線内を走行しているときは車線変更継続中であると判断する。一方、時間tにおいて時間(t−1)とは異なる車線を走行している場合は、車線変更の実行中ではないと判断する。時間(t−1)の運転意図が左車線変更LCLの場合も、同様にして時間tの運転意図を設定する。
【0037】
このように、ステップS104では、時間(t−1)の仮想ドライバの運転意図および現時点tでの自車両の車両周囲状態に基づいて運転意図系列を新たに形成または消滅して、現時点tから過去の時点(t−m+1)の間の複数の運転意図系列を生成する。
【0038】
なお、運転意図系列を生成する際のm個の時間フレームは、常に現在までの直近のm個の時間フレームであり、次周期(t+1)において運転意図系列を生成する時は、時間(t+1)から過去の時間(t−m+2)までのm個の時間フレームを用いる。
【0039】
ステップS105では、ステップS102で算出した各運転意図における仮想ドライバの運転操作量Oidと、ステップS103で検出した実際のドライバの運転操作量Ordとを用いて、仮想ドライバの運転操作量近似度合Pidを算出する。ここでは、運転意図が車線維持の場合、右車線変更の場合、および左車線変更の場合の近似度合Pid_lk, Pid_lcr, Pid_lclをまとめてPidで表す。同様に、運転意図が車線維持の場合、右車線変更の場合、および左車線変更の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lk, θid_lcr, θid_lclをまとめてθidで表す。
【0040】
仮想ドライバ運転操作量近似度合Pidは、実際のドライバの操舵角θrdを平均値、所定値ρrdを標準偏差とする正規分布に対して、仮想ドライバの操舵角θidの正規化(規準化)値の対数確率として、以下の(式7)から算出することができる。
Pid=log{Probn((θid−θrd)/ρrd)} ・・・(式7)
ここで、Probnは、与えられた標本が、正規分布で表される母集団から観測される確率を計算するための確率密度変換関数である。
【0041】
このように、ステップS105では、(式7)を用いて車線維持の場合の近似度合Pid_lk、右車線変更の場合の近似度合Pid_lcr、および左車線変更の場合の近似度合Pid_lclをそれぞれ算出する。その後、ステップS106へ進む。
【0042】
つづくステップS106では、ステップS104で生成した複数の仮想ドライバの動的運転意図系列について、それぞれ仮想ドライバ運転操作量系列近似度合Pidsを算出する。ここでは、図6に示すように、各動的運転意図系列jに属する過去の時点(t−m+1)から現時点tまでのm個の運転操作量近似度合Pid(j)(t-m+1)〜Pid(j)(t)を用いて、動的運転意図系列jの系列的な近似度合P(j)idsを算出する。なお、過去の運転操作量近似度合Pidは不図示のメモリに記憶されているとする。動的仮想ドライバ運転操作量系列近似度合P(j)idsは、以下の(式8)から算出することができる。
P(j)ids=ΠPid(j)(t−i+1) ・・・(式8)
ここで、Πは、動的運転意図系列jにおける現時点tでの仮想ドライバ運転操作量近似度合Pid(j)(t)から過去の時点(t−m+1)での仮想ドライバ運転操作量近似度合Pid(j)(t-m+1)までを全て積算した積和を表す。
【0043】
このように、ステップS106で、(式8)を用いて各動的運転意図系列jの近似度合P(j)idsをそれぞれ算出した後、ステップS107へ進む。
ステップS107では、以下の(式9)に表すように、ステップS106で算出した動的仮想ドライバ運転操作量系列近似度合P(j)idsの最大値を有する仮想ドライバの運転意図系列jを、最大の尤度を持つ運転意図系列Lmaxとして選択する。そして、運転意図系列Lmaxを持つ仮想ドライバの現在の運転意図を、実際のドライバの運転意図λrdとして選択する。
λrd=max{Pids_lk, Pids_lcr, Pids_lcl} ・・・(式9)
【0044】
ステップS108以降では、ステップS107で推定した実際のドライバの運転意図λrdの状態を判定する。例えば現時点tで運転意図が車線変更であると推定された場合でも、実際のドライバがどれだけの期間車線変更を想起していたかは、運転意図系列jによって異なる。
【0045】
具体的には、図4の系列L1に示すように現時点tで運転意図が右車線変更LCRに変化した場合と、系列L2に示すように1フレーム前の時点(t−1)で右車線変更LCRに変化した場合、また、系列L3に示すように過去の時点(t−m+3)から右車線変更LCRを想起していた場合では、実際のドライバが右車線変更LCRを想起してからの時間が異なり、推定された運転意図λrdの状態が異なる。そこで、実際のドライバが運転意図λrdを想起してから現時点tまでの経過時間etlcを推定し、ステップS107で推定した運転意図λrdの状態を判定する。
【0046】
まず、ステップS108では、運転意図λrdが出現してからの経過時間etlcを現時点tから後ろ向きに検索するための変数kとして、現在の時間tを代入する。ステップS109では、最大の尤度をもつ仮想ドライバの運転意図系列Lmaxを参照し、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、以下の(式10)で表すように、ステップS107で推定された運転意図λrdであるか否かを判定する。
λrd=Lmax(λdid(k)) ・・・(式10)
【0047】
ステップS109が肯定判定され、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、推定された運転意図λrdと同じ場合は、ステップS110へ進む。ステップS110では、運転意図系列Lmaxのm個の運転意図λdid(k)を全て検索したか否かを判定する。ステップS110が否定判定されると、ステップS111へ進む。ステップS111では、時間kとして1フレーム前の時間(k−1)をセットする。その後ステップS109へ戻り、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が運転意図λrdであるか否かを再び判定する。
【0048】
ステップS109が否定判定され、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、ステップS107で推定された運転意図λrdでない場合は、ステップS112へ進む。例えば、運転意図λrdが右車線変更LCRである場合は、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が車線維持LKとなると、ステップS109が否定判定されてステップS112へ進む。また、ステップS110が肯定判定され、運転意図系列Lmaxの先頭の時間フレーム(t−m+1)まで運転意図λdid(k)の検索を行った場合も、ステップS112へ進む。
【0049】
ステップS112では、運転意図系列Lmaxにおいて初めて運転意図λrdが出現してから現在までの経過時間、すなわち実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcを、以下の(式11)から算出する。
etlc=(t−k)×ΔT ・・・(式11)
(式11)において、ΔTは運転意図系列生成処理のサンプリング周期であり、例えば現時点tと、1フレーム前の時間(t−1)との時間間隔である。また、時間kは、運転意図系列Lmaxにおいて運転意図λrdが出現したときの時間を用いる。
【0050】
図6に示すように、系列L1では現時点tで右車線変更LCRの運転意図が出現しているので、(式11)の変数kに時間tを代入する。これにより、系列L1における推定運転意図経過時間etlcは0secと推定される。系列L2では1フレーム前の時点(t−1)で右車線変更LCRの運転意図が出現しているので(式11)に時間(t−1)を代入し、推定運転意図経過時間etlcをΔTsecと推定する。同様に、系列L3では、過去の時点(t−m+3)から右車線変更LCRの意図が出現しているので、推定運転意図経過時間etlcをΔT×(m−3)secと推定する。
【0051】
以上説明したように推定運転意図経過時間etlcを算出した後、ステップS113へ進む。
ステップS113では、ステップS107で推定した実際のドライバの運転意図λrd、およびステップS112で算出した推定運転意図経過時間etlcを出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0052】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)運転意図推定装置1は、現時点tを含む過去の所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成し、運転意図系列j毎に、仮想ドライバの運転操作量Oidと実際のドライバの運転操作量Ordとの系列的な近似度合を表す運転操作量系列近似度合P(j)idsを算出する。そして、複数の運転操作量系列近似度合P(j)idsを比較することによって実際のドライバの運転意図λrdを推定し、推定した運転意図λrdについてその状態を推定する。このように、運転意図λrdの状態を推定することにより、運転意図推定部70において実際のドライバの意図がλrdであると推定したときの、実際のドライバの状態を判定することができる。
(2)運転意図状態判定部80は、運転意図λrdの状態として、推定された運転意図λrdが実際のドライバによって想起されてからの経過時間etlcを推定する。これにより、運転意図λrdの状態、すなわち実際のドライバがどれだけの間その運転行動を意図していたかを的確に推定することができる。
(3)運転意図状態判定部80において、実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間(車線変更意図経過時間)etlcを推定することにより、運転意図推定部70で推定した車線変更意図がどれほど確実であるかを知るすることができる。なお、上述した第1の実施の形態においては、推定された運転意図λrdについて推定運転意図経過時間etlcを算出したが、車線変更意図が推定された場合のみに推定運転意図経過時間etlcを算出することも可能である。
【0053】
なお、上述した第1の実施の形態においては、実際のドライバの運転操作量Ordと仮想ドライバの運転操作量Oidとして、操舵角θrd、θidを用いた。ただし、これには限定されず、例えば運転操作量としてアクセルペダルの操作量を用いることもできる。この場合、仮想ドライバのペダル操作量Sidは、例えば自車両と先行車との車間距離および車間時間THW等で表される先行車に対する接近度合に基づいて算出することができる。そして、実際のドライバのペダル操作量Srdと仮想ドライバのペダル操作量Sidとの近似度合に基づいて、実際のドライバの運転意図を推定する。
【0054】
上述した第1の実施の形態においては、仮想ドライバの運転操作量Oidを算出するために、図3に示すように各運転意図において2つの前方参照点を設定したが、前方車参照点の数は任意に設定することができる。
【0055】
《第2の実施の形態》
本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置100の構成を示すシステム図であり、図8は、車両用運転操作補助装置100を搭載した車両の構成図である。
【0056】
まず、車両用運転操作補助装置100の構成を説明する。
レーザレーダ110は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して自車両の前方領域を走査する。レーザレーダ110は、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、先行車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離及び相対速度はコントローラ150へ出力される。レーザレーダ110によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg 程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
【0057】
前方カメラ120は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出する。前方カメラ120からの画像信号は画像処理装置130で画像処理を施され、コントローラ150へと出力される。前方カメラ120による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0058】
車速センサ140は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ150に出力する。
さらに、上述した第1の実施の形態の運転意図推定装置1によって推定された実際のドライバの運転意図λrdおよび運転意図経過時間etlcがコントローラ150へ入力される。
【0059】
コントローラ150は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成される。コントローラ150は、例えばCPUのソフトウェア形態により、リスクポテンシャル計算部151,アクセルペダル反力指令値計算部152,およびアクセルペダル反力指令値補正部153を構成する。
【0060】
リスクポテンシャル計算部151は、レーザレーダ110および車速センサ140から入力される自車速、車間距離および先行車両との相対車速と、画像処理装置130から入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出する。アクセルペダル反力指令値計算部152は、リスクポテンシャル計算部151で算出されたリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル160に発生させるアクセルペダル反力の指令値FAを算出する。
【0061】
アクセルペダル反力指令値補正部153は、運転意図推定装置1から入力される運転意図推定結果および運転意図経過時間etlcに基づいて、アクセルペダル反力指令値計算部152で算出されたアクセルペダル反力指令値FAを補正する。アクセルペダル反力指令値補正部153で補正されたアクセルペダル反力指令値FAcは、アクセルペダル反力制御装置170へ出力される。
【0062】
アクセルペダル反力制御装置170は、コントローラ150からの指令値に応じてアクセルペダル操作反力を制御する。図9に示すように、アクセルペダル160には、リンク機構を介してサーボモータ180およびアクセルペダルストロークセンサ181が接続されている。サーボモータ180は、アクセルペダル反力制御装置170からの指令に応じてトルクと回転角とを制御し、運転者がアクセルペダル160を操作する際に発生する操作反力を任意に制御する。アクセルペダルストロークセンサ181は、リンク機構を介してサーボモータ180の回転角に変換されたアクセルペダル160のストローク量Sを検出する。
【0063】
なお、アクセルペダル反力制御を行わない場合の通常のアクセルペダル反力特性は、例えば、ストローク量Sが大きくなるほどアクセルペダル反力がリニアに大きくなるよう設定されている。通常のアクセルペダル反力特性は、例えばアクセルペダル160の回転中心に設けられたねじりバネ(不図示)のバネ力によって実現することができる。
【0064】
次に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置100の動作を、図10を用いて詳細に説明する。図10は、コントローラ150における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0065】
ステップS201で、レーザレーダ110、前方カメラ120および車速センサ140によって検出される自車両周囲の走行環境を表す環境状態量を読み込む。具体的には、自車両と先行車との車間距離D、先行車速V2および自車速V1を読み込む。ステップS202では、ステップS201で読み込んだ走行環境に基づいて、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出する。ここでは、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出するために、先行車に対する余裕時間TTCと車間時間THWとを算出する。
【0066】
余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量である。余裕時間TTCは、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速V1、先行車速V2および相対車速Vr(Vr=V2−V1)が一定の場合に、何秒後に車間距離Dがゼロとなり自車と先行車両とが接触するかを示す値である。余裕時間TTCは、以下の(式12)により求められる。
TTC=−D/Vr ・・・(式12)
【0067】
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどの運転者が減速行動を開始することが知られている。
【0068】
車間時間THWは、自車両が先行車に追従走行している場合に、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響度合、つまり相対車速vrが変化すると仮定したときの影響度合を示す物理量である。車間時間THWは、以下の(式13)で表される。
THW=D/V1 ・・・(式13)
【0069】
車間時間THWは、車間距離Dを自車速V1で除したものであり、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す。この車間時間THWが大きいほど、周囲の環境変化に対する予測影響度合が小さくなる。つまり、車間時間THWが大きい場合には、もしも将来に先行車の車速が変化しても、先行車までの接近度合には大きな影響を与えず、余裕時間TTCはあまり大きく変化しないことを示す。なお、自車両が先行車に追従し、自車速V1=先行車速V2である場合は、(式13)において自車速V1の代わりに先行車速V2を用いて車間時間THWを算出することもできる。
【0070】
そして、算出した余裕時間TTCと車間時間THWとを用いて先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。先行車に対するリスクポテンシャルRPは、以下の(式14)を用いて算出することができる。
RP=a/THW+b/TTC ・・・(式14)
【0071】
(式14)に示すように、リスクポテンシャルRPは、余裕時間TTCと車間時間THWとから連続的に表現される物理量である。ここで、a、bは、車間時間THWおよび余裕時間TTCにそれぞれ適切な重み付けをするための定数であり、予め適切な値を設定しておく。定数a、bは、例えばa=1,b=8(a<b)に設定する。
【0072】
ステップS203では、アクセルペダルストロークセンサ181によって検出されるアクセルペダル160のストローク量Sを読み込む。ステップS204では、ステップS202で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル反力指令値FAを算出する。まず、リスクポテンシャルRPに応じた反力増加量ΔFを算出する。
【0073】
図11に、先行車に対するリスクポテンシャルRPと反力増加量ΔFとの関係を示す。図11に示すように、リスクポテンシャルRPが最小値RPmin以下の場合は、反力増加量ΔFを0とする。これは、自車両周囲のリスクポテンシャルRPが非常に小さいときにアクセルペダル反力FAを増加することによって、運転者に煩わしさを与えてしまうことを避けるためである。最小値RPminは、予め適切な値を設定しておく。
【0074】
リスクポテンシャルRPが最小値RPminを超える領域では、リスクポテンシャルRPに応じて反力増加量ΔFが指数関数的に増加するように設定する。反力増加量ΔFは、以下の(式15)で表される。
ΔF=k・RPn ・・・(式15)
ここで、定数k、nはそれぞれ車種等によって異なり、ドライブシミュレータや実地試験によって取得される結果に基づいて、リスクポテンシャルRPを効果的に反力増加量ΔFに変換できるように予め適切に設定しておく。
【0075】
さらに、(式15)に従って算出した反力増加量ΔFを、アクセルペダルストローク量Sに応じた通常の反力特性に加算することにより、アクセルペダル反力指令値FAを算出する。
【0076】
ステップS205では、運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdを読み込み、ステップS206で推定された運転者の運転意図λrdが車線変更であるか否かを判定する。運転者の運転意図λrdが車線変更の場合は、ステップS207へ進む。ステップS207では、運転意図推定装置1によって算出された推定運転意図経過時間etlcを読み込む。
【0077】
ステップS208では、ステップS207で入力した推定運転意図経過時間etlc、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間etlcに基づいて、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAを補正する。具体的には、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAにローパスフィルタ等のフィルタ処理を施して減衰させる。
【0078】
補正後のアクセルペダル反力指令値FAは、以下の(式16)を用いて表すことができる。なお、(式16)において補正後の反力指令値FAを制御用の反力指令値としてFAcで表す。
FAc=gf(FA)
=kf・{1/(1+Tsf_etlc)}・FA ・・・(式16)
ここで、kfは適切に設定された定数、Tsf_etlcはローパスフィルタの時定数である。なお、時定数Tsf_etlcは、以下の(式17)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Tsf_etlc=f(etlc) ・・・(式17)
【0079】
図12に、推定運転意図経過時間etlcと時定数Tsf_etlcとの関係を示す。図12に示すように、経過時間etlcが長くなるほど時定数Tsf_etlcが小さくなるように設定する。このように、実際のドライバが運転意図を想起してからの経過時間etlcが長いほど時定数Tsf_etlcを小さくすることにより、アクセルペダル反力を速やかに減衰させることができる。
【0080】
一方、ステップS206において運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdが車線維持であると判定された場合は、ステップS209へ進み、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAをそのまま制御用の指令値FAcとして設定する。
【0081】
ステップS210では、ステップS208またはS209で設定したアクセルペダル反力指令値FAcを、アクセルペダル反力制御装置170へ出力する。アクセルペダル反力制御装置170は、コントローラ150から入力された指令に従ってサーボモータ180を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0082】
図13(a)(b)を用いて、車両用運転操作補助装置100の作用を説明する。図13(a)は自車両が走行車線から左側の追い越し車線に車線変更を行っていく様子を表し、図13(b)は車線変更を行うときのアクセルペダル反力指令値FAcの時間変化を示している。時間t=taで運転者の車線変更意図が検出されると、アクセルペダル反力指令値FAcが徐々に低下していく。
【0083】
ここで、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcがt1の場合、図13(b)に実線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAcが緩やかに低下していく。一方、推定運転意図経過時間etlcが、t1よりも長いt2の場合(図12参照)、破線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAcが大きく低下する。
【0084】
このように、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcに応じてアクセルペダル反力指令値FAcを低下させる。ドライバが車線変更を意図してからドライバの運転意図が車線変更であると推定されるまでの時間経過時間etlcが長いほど、アクセルペダル反力指令値FAcを速やかに低下させるので、ドライバのペダル操作を妨げることなくドライバの期待に合致したアクセルペダル反力制御を行うことが可能となる。
【0085】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ150は、自車両周囲の障害物状況に基づいてリスクポテンシャルRPを算出し、リスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル操作反力制御を行う。このとき、推定された運転意図λrdおよび運転意図λrdの状態に基づいて、アクセルペダル160に発生させる操作反力を補正する。これにより、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを操作反力としてドライバに知らせながら、実際のドライバの運転意図を反映し、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
(2)コントローラ150は、推定された運転意図λrdが車線変更である場合に、車線変更意図経過時間etlcに基づいて、アクセルペダル160に発生させる操作反力を補正する。これにより、車線変更を行おうとしているときにドライバの意図に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
(3)コントローラ150は、リスクポテンシャルRPと操作反力との関係を補正するアクセルペダル反力指令値補正部153を備えている。アクセルペダル反力指令値補正部153は、車線変更意図経過時間etlcが長くなるほど操作反力を低下させる。これにより、実際のドライバが長い間車線変更を意図し、アクセルペダル反力の速やかな減少を期待しているときに、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
【0086】
−第2の実施の形態の変形例−
ここでは、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合のみ、アクセルペダル反力指令値FAを補正する。以下に、アクセルペダル反力指令値FAをどのように補正するかを、図14を用いて説明する。図14は、コントローラ150における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS301〜S307での処理は、図10のフローチャートで説明したステップS201〜S207での処理と同様であるので説明を省略する。
【0087】
ステップS308では、ステップS307で読み込んだ実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回るか否かを判定する。ステップS308が肯定判定され、経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合は、ステップS309へ進んでステップS304で算出したアクセルペダル反力指令値FAを推定運転意図経過時間etlcに基づいて補正する。
【0088】
具体的には、以下の(式18)により制御用の反力指令値FAcを算出する。
FAc=gf(FA)
=kf・{1/(1+Ksf×Tsf_etlc)}・FA ・・・(式18)
(式18)において、Ksfは時定数Tsf_etlcにかかる係数である。係数Ksfは、以下の(式19)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Ksf=f(etlc) ・・・(式19)
【0089】
図15に、推定運転意図経過時間etlcと係数Ksfとの関係を示す。図15に示すように、係数Ksfは、所定値etlcoを上回る領域で推定運転意図経過時間etlcが大きくなるほど小さくなる。なお、所定値etlcoのときに係数Ksf=1である。これにより、推定運転意図経過時間etlcが長くなるほど時定数項(Ksf×Tsf_etlc)が小さくなる。
【0090】
一方、ステップS308が否定判定されると、ステップS310へ進んでステップS304で算出したアクセルペダル反力指令値FAをそのまま制御用の反力指令値FAcとして設定する。つづくステップS311では、ステップS309またはステップS310で設定した反力指令値FAcをアクセルペダル反力制御装置170へ出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0091】
以上説明したように、推定運転意図経過時間etlcに応じてアクセルペダル反力指令値FAcを補正することにより、上述した第2の実施の形態と同様に実際のドライバの車線変更意図が検出された場合に、アクセルペダル反力を減衰させてドライバの意図に合った反力制御を行うことができる。さらに、推定運転意図経過時間etlcが所定値etlco以下の場合、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してから運転意図が車線変更であると推定されるまでの経過時間etlcが短い場合は、アクセルペダル反力指令値FAを補正しない。これにより、誤った運転意図推定結果に基づいて反力指令値FAを補正する確率を低下し、ドライバの意図に反する不要なペダル反力減衰を行ってドライバに煩わしさを与えてしまうことを軽減することが可能となる。
【0092】
なお、上述した第2の実施の形態において、予め設定した時定数Tsf_etlcに係数Ksfを掛け、係数Ksfを推定運転意図経過時間etlcに応じて設定することも可能である。
【0093】
《第3の実施の形態》
本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図16は、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置200の構成を示すシステム図である。図16において、上述した第2の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第2の実施の形態との相違点を説明する。
【0094】
第3の実施の形態においては、運転意図推定装置1によって運転者の車線変更意図が検出された場合に、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを補正する。そこで、車両用運転操作補助装置200のコントローラ150Aは、リスクポテンシャル計算部151,リスクポテンシャル補正部154,およびアクセルペダル反力指令値計算部155を備えている。
【0095】
次に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置200の動作を、図17を用いて詳細に説明する。図17は、コントローラ150Aにおける運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS401およびS402での処理は、図10のフローチャートで説明したステップS201およびS202での処理と同様であるので説明を省略する。
【0096】
ステップS403では、運転意図推定装置1で推定した実際のドライバの運転意図λrdを読み込む。ステップS404では、推定されたドライバの運転意図λrdが車線変更であるか否かを判定する。ドライバの運転意図λrdが車線変更の場合は、ステップS405へ進む。ステップS405では、運転意図推定装置1によって算出された推定運転意図経過時間etlcを読み込む。
【0097】
ステップS406では、ステップS405で入力した推定運転意図経過時間etlc、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間etlcに基づいて、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPを補正する。具体的には、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPにローパスフィルタ等のフィルタ処理を施して減衰させる。
【0098】
補正後のリスクポテンシャルRPは、以下の(式20)を用いて表すことができる。なお、(式20)において実際に制御に用いる補正後のリスクポテンシャルをRPcで表す。
RPc=gp(RP)
=kp・{1/(1+Tsp_etlc)}・RP ・・・(式20)
ここで、kpは適切に設定された定数、Tsp_etlcはローパスフィルタの時定数である。なお、時定数Tsp_etlcは、以下の(式21)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Tsp_etlc=f(etlc) ・・・(式21)
【0099】
図18に、推定運転意図経過時間etlcと時定数Tsp_etlcとの関係を示す。図18に示すように、経過時間etlcが長くなるほど時定数Tsp_etlcが小さくなるように設定する。このように、実際のドライバが運転意図を想起してからの経過時間etlcが長いほど時定数Tsf_etlcを小さくすることにより、リスクポテンシャルRPを低下してアクセルペダル反力を速やかに減衰させることができる。
【0100】
一方、ステップS404において運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdが車線維持であると判定された場合は、ステップS407へ進み、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPをそのまま制御用のリスクポテンシャルRPcとして設定する。
【0101】
つづくステップS408では、アクセルペダルストロークセンサ181によって検出されるアクセルペダルストローク量Sを読み込む。ステップS409では、ステップS406またはS407で設定したリスクポテンシャルRPcに基づいてアクセルペダル反力指令値FAを算出する。アクセルペダル反力指令値FAの算出処理は、図10のステップS204における処理と同様である。
【0102】
ステップS410では、ステップS409で算出したアクセルペダル反力指令値FAをアクセルペダル反力制御装置170へ出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0103】
図19(a)(b)を用いて、車両用運転操作補助装置200の作用を説明する。図19(a)は自車両が走行車線から左側の追い越し車線に車線変更を行っていく様子を表し、図19(b)は車線変更を行うときのアクセルペダル反力指令値FAの時間変化を示している。時間t=taで運転者の車線変更意図が検出されると、アクセルペダル反力指令値FAが徐々に低下していく。
【0104】
ここで、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcがt1の場合、図19(b)に実線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAが緩やかに低下していく。一方、推定運転意図経過時間etlcが、t1よりも長いt2の場合(図18参照)、破線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAが大きく低下する。
【0105】
このように、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcに応じてリスクポテンシャルRPを減衰し、アクセルペダル反力指令値FAを低下させる。ドライバが車線変更を意図してからドライバの運転意図が車線変更であると推定されるまでの時間経過時間etlcが長いほど、リスクポテンシャルRPを速やかに減衰してアクセルペダル反力指令値FAcを低下させるので、ドライバのペダル操作を妨げることなくドライバの期待に合致したアクセルペダル反力制御を行うことが可能となる。
【0106】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第2の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラ150Aは、障害物状況とリスクポテンシャルRPとの関係を補正するリスクポテンシャル補正部154を備えている。リスクポテンシャル補正部154は、車線変更意図経過時間etlcが長くなるほどリスクポテンシャルを低下させる。これにより、実際のドライバが長い間車線変更を意図し、アクセルペダル反力の速やかな減少を期待しているときに、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
【0107】
−第3の実施の形態の変形例−
ここでは、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合のみ、リスクポテンシャルRPを補正する。以下に、リスクポテンシャルRPをどのように補正するかを、図20を用いて説明する。図20は、コントローラ150Aにおける運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS501〜S505での処理は、図17のフローチャートで説明したステップS401〜S405での処理と同様であるので説明を省略する。
【0108】
ステップS506では、ステップS505で読み込んだ実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回るか否かを判定する。ステップS506が肯定判定され、経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合は、ステップS507へ進む。ステップS507では、ステップS502で算出したリスクポテンシャルRPを推定運転意図経過時間etlcに基づいて補正する。
【0109】
具体的には、以下の(式22)により制御用のリスクポテンシャルRPcを算出する。
RPc=gp(RP)
=kp・{1/(1+Ksp×Tsp_etlc)}・RP ・・・(式22)
(式22)において、Kspは時定数Tsp_etlcにかかる係数である。係数Kspは、以下の(式23)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Ksp=f(etlc) ・・・(式23)
【0110】
図21に、推定運転意図経過時間etlcと係数Kspとの関係を示す。図21に示すように、係数Kspは、所定値etlcoを上回る領域で推定運転意図経過時間etlcが大きくなるほど小さくなる。なお、所定値etlcoのときに係数Ksp=1である。これにより、推定運転意図経過時間etlcが長くなるほど時定数項(Ksp×Tsp_etlc)が小さくなる。
【0111】
一方、ステップS506が否定判定されると、ステップS508へ進んでステップS502で算出したリスクポテンシャルRPをそのまま制御用のリスクポテンシャルRPcとして設定する。つづくステップS509〜S511での処理は、図17のステップS408〜S410での処理と同様である。
【0112】
以上説明したように、推定運転意図経過時間etlcに応じてリスクポテンシャルRPを補正することにより、上述した第3の実施の形態と同様に、実際のドライバの車線変更意図が検出された場合に、アクセルペダル反力を減衰させてドライバの意図に合った反力制御を行うことができる。さらに、推定運転意図経過時間etlcが所定値etlco以下の場合、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してから運転意図が車線変更であると推定されるまでの経過時間etlcが短い場合は、リスクポテンシャルRPを補正しない。これにより、誤った運転意図推定結果に基づいてリスクポテンシャルRPを補正する確率を低下し、ドライバの意図に反する不要なペダル反力減衰を行ってドライバに煩わしさを与えてしまうことを軽減することが可能となる。
【0113】
なお、上述した第3の実施の形態において、予め設定した時定数Tsp_etlcに係数Kspを掛け、係数Kspを推定運転意図経過時間etlcに応じて設定することも可能である。
【0114】
上述した第2および第3の実施の形態においては、自車両と先行車との余裕時間TTCおよび車間時間THWとを用いてリスクポテンシャルRPを算出した。ただしこれには限定されず、例えば余裕時間TTCの逆数をリスクポテンシャルとして用いることもできる。
【0115】
以上説明した第1から第3の実施の形態においては、車両周囲状態検出手段として車両周囲状態検出部10,運転操作量検出手段として運転操作量検出部30、仮想ドライバ運転操作量計算手段として仮想ドライバ運転操作量計算部50,運転意図系列生成手段として仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40,運転操作量系列近似度合計算手段として仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60,運転意図推定手段として運転意図推定部70,運転意図状態判定手段として運転意図状態判定部80を用いた。また、障害物検出手段としてレーザレーダ110,前方カメラ120および車速センサ140を用い、リスクポテンシャル算出手段としてリスクポテンシャル計算部151,操作反力計算手段としてアクセルペダル反力指令値計算部152,155を用い、操作反力発生手段としてアクセルペダル反力制御装置170を用いた。さらに、補正手段としてコントローラ150,150Aを用い、操作反力補正手段としてアクセルペダル反力指令値補正部153,リスクポテンシャル補正手段としてリスクポテンシャル補正部154を用いた。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、別方式のミリ波レーダ等を用いることもできる。また、操作反力発生手段として操舵反力を発生させる操舵反力制御装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1:運転意図推定装置
10:車両周囲状態検出部
20:車両状態検出部
30:運転操作量検出部
40:仮想ドライバ運転意図系列動的決定部
50:仮想ドライバ運転操作量計算部
60:仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部
70:運転意図推定部
80:運転意図状態判定部
100,200:車両用運転操作補助装置
150,150A:コントローラ
170:アクセルペダル反力制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の運転者の運転行動意図を推定する運転意図推定装置、および運転意図に応じて運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転意図推定装置は、運転者の視線行動を用いて運転意図を推定している(例えば特許文献1参照)。この装置は、運転者の視線方向を前方投影平面に投影し、投影平面上の分割された複数の領域における視線方向頻度分布を用いて運転者の運転意図を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置は、運転者の視線方向や視線の注視頻度等を用いて運転者の運転行動意図を推定することができる。ただし、運転者の視線行動は車両走行環境の差異に影響され、さらに運転者の個人差も大きく意図推定の精度が変動してしまうという問題があるため、常に高い精度で運転意図を推定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による運転意図推定装置は、自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、車両周囲状態検出手段によって検出される自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて複数の仮想ドライバの運転意図をそれぞれ決定し、所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転操作量と実際のドライバの運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、運転意図系列生成手段によって生成された運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の運転操作量系列近似度合を比較することによって、実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、運転意図推定手段によって推定された実際のドライバの運転意図について、運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを備える。
【0006】
本発明による車両用運転操作補助装置は、運転意図推定装置と、自車両周囲の障害物状況を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段による検出結果に基づいて、自車両周囲のリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて、アクセルペダルの操作反力を計算する操作反力計算手段と、アクセルペダルに操作反力を発生させる操作反力発生手段と、運転意図推定装置によって推定された運転意図および運転意図の状態に基づいて、アクセルペダルに発生させる操作反力を補正する補正手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明による運転意図推定装置によれば、仮想ドライバの運転操作と実際のドライバの運転操作とを系列的に比較して運転意図を推定し、運転意図の状態を推定するので、精度よく運転意図を推定することができる。
【0008】
本発明による車両用運転操作補助装置によれば、推定された運転意図および運転意図の状態に基づいてアクセルペダルに発生させる操作反力を補正するので、実際のドライバの期待に合った操作反力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置のシステム図。
【図2】第1の実施の形態における運転意図推定処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】仮想ドライバの運転操作量の算出方法を説明する図。
【図4】仮想ドライバの動的運転意図系列の例を示す図。
【図5】(a)(b)仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法を説明する図。
【図6】動的運転意図系列における運転意図経過時間の算出方法を説明する図。
【図7】第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図8】図7に示す車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。
【図9】アクセルペダルおよびその周辺の構成を示す図。
【図10】第2の実施の形態における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図11】リスクポテンシャルと反力増加量との関係を示す図。
【図12】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図13】(a)自車両が車線変更を行う様子を示す図、(b)車線変更時のアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図14】第2の実施の形態の変形例における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図15】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図16】第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図17】第3の実施の形態における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図18】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【図19】(a)自車両が車線変更を行う様子を示す図、(b)車線変更時のアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図20】第3の実施の形態の変形例における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図21】推定運転意図経過時間と時定数との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による運転意図推定装置1の構成を示すシステム図である。まず、第1の実施の形態による運転意図推定装置1の構成を説明する。
【0011】
運転意図推定装置1は、自車両周囲の状態を検出する車両周囲状態検出部10と、車両状態を検出する車両状態検出部20と、ドライバの操作による運転操作量を検出する運転操作量検出部30と、仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40と、仮想ドライバ操作量計算部50と、仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60と、運転意図推定部70と、運転意図状態判定部80とを備えている。
【0012】
運転意図推定装置1は、運転意図を有する仮想のドライバを複数設定し、実際のドライバの運転操作と仮想ドライバの運転操作とを比較する。そして、実際のドライバの運転操作と仮想ドライバの運転操作がどれだけ近似しているかに基づいて、例えば車線維持や車線変更といった実際のドライバの運転意図を推定する。運転意図を推定するために、現在から過去の直近の所定時間における仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定する。そして、動的に決定した運転意図系列を用いて運転操作の系列的な近似度合を算出し、実際のドライバの運転意図を推定する。さらに、推定した実際のドライバの運転意図の状態を判定する。
【0013】
車両周囲状態検出部10は、例えば自車両の前方道路状況を画像として取得する前方カメラおよびヨー角センサ等を備え、自車両の車線内横方向位置、および車線に対する自車両のヨー角等を検出する。なお、車両周囲状態検出部10は、前方カメラで取得した画像信号を画像処理する画像処理装置も備えている。
【0014】
車両状態検出部20は、例えば自車速を検出する車速センサを備えている。運転操作量検出部30は、例えば操舵系に組み込まれた操舵角センサを備え、自車両の操舵角を検出する。
【0015】
仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40,仮想ドライバ操作量計算部50、仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60、運転意図推定部70および運転意図状態判定部80は、例えばそれぞれマイクロコンピュータから構成される。またはCPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成されるコントローラにおいて、CPUのソフトウェア形態によりそれぞれを構成することもできる。
【0016】
仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40は、現在から過去の直近の所定時間において、複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定する。ここで、仮想ドライバの運転意図系列を動的に決定するとは、時間によって仮想ドライバの運転意図、さらには仮想ドライバすなわち運転意図系列の数が変化することを表している。従って、例えば現在の運転意図が右車線変更であっても、過去の運転意図は車線維持である仮想ドライバが設定される可能性もある。
【0017】
仮想ドライバ運転操作量計算部50は、それぞれ異なる運転意図を与えられた複数の仮想ドライバが、それぞれの運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する。仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60は、仮想ドライバ運転操作量計算部50で算出した仮想ドライバの運転操作量と、運転操作量検出部30で検出された実際のドライバの運転操作量との近似度合を、仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40で決定した運転意図系列毎に算出する。
【0018】
運転意図推定部70は、複数の仮想ドライバと実際のドライバについて算出された運転操作量に関する運転意図系列毎の近似度合を比較することにより、実際のドライバの運転意図を推定する。運転意図状態判定部80は、推定した実際のドライバの運転意図の状態を判定する。
【0019】
以下に、第1の実施の形態による運転意図推定装置1の動作を、図2〜図6を用いて詳細に説明する。図2は、運転意図推定装置1における運転意図推定処理プログラムの処理手順を示すフローチャートである。図3は、仮想ドライバの運転操作量の算出方法を説明する図、図4および図5(a)(b)は、仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法を説明する図、図6は、運転意図の状態判定方法を説明する図である。図2に示す処理の処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0020】
ステップS101では、車両周囲状態検出部10によって検出される現在の自車両の車線内横位置yと自車両のヨー角ψを読み込む。図3に示すように、車線内横位置yは、自車線の車線中央線から自車両中心点Oまでの左右方向距離であり、ヨー角ψは、自車線の直進方向に対する自車両の回転角である。
【0021】
ステップS102では、複数の仮想ドライバの運転操作量Oidを算出する。ここでは、車線維持(LK)、右車線変更(LCR)、および左車線変更(LCL)の運転意図を持つ3人の仮想ドライバを設定する。そして、それぞれの仮想ドライバがその運転意図を遂行するために必要な運転操作量Oidを算出する。ここでは、仮想ドライバが行う操舵操作の操舵角θidを、運転操作量Oidとして算出する。以下に、仮想ドライバの運転操作量Oidの算出方法を説明する。
【0022】
(1)仮想ドライバの運転意図が車線維持の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、まず仮想ドライバの運転意図が車線維持である場合の前方参照点LK(i)を設定し、前方参照点LK(i)の横位置p_lkを算出する。前方参照点LK(i)の個数は任意であるが、ここでは自車両の前後方向中心線上に2つの前方参照点LK1,LK2を設定した場合を例として説明する。図3に示すように、自車両中心点Oから前方参照点LK1,LK2までの距離px(i)は、例えばpx(1)=10m、px(2)=30mに設定する(px={10m、30m})。距離px(i)は、例えば自車速に応じて設定することもできる。
【0023】
現在自車両が走行する車線の中央線から前方参照点LK(i)までの左右方向距離lat_pos(px(i))は、自車両のヨー角ψと前方地点LK(i)までの距離px(i)に依存し、例えば前方カメラからの画像信号に基づいて算出することができる。車線維持の場合の前方参照点LK(i)の横位置p_lk(px(i))は、以下の(式1)で表すことができる。
p_lk(px(i))=lat_pos(px(i)) i={1,...,n}・・・(式1)
ここで、n=2である。
【0024】
前方参照点LK(i)の横位置p_lk(px(i))を用いて、車線維持の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lkを以下の(式2)から算出することができる。
θid_lk=Σ{a(i)×p_lk(px(i))} ・・・(式2)
ここで、a(i)は前方参照点LK(i)における横位置p_lk(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0025】
(2)仮想ドライバの運転意図が右車線変更の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、仮想ドライバの運転意図が右車線変更である場合の前方参照点LCR(i)を設定する。図3には、自車両の前方に2つの前方参照点LCR1,LCR2を設定した場合を例として示している。
【0026】
右車線変更の場合の前方参照点LCR(i)の横位置p_lcr(px(i))は、以下の(式3)で表すように、車線維持の場合の前方参照点LK(i)の左右方向距離lat_pos(px(i))にオフセット量lc_offset_lcrを加算して算出することができる。
p_lcr(px(i))=lat_pos(px(i))+lc_offset_lcr i={1,...,n}・・・(式3)
ここで、n=2である。オフセット量lc_offset_lcrは、右車線変更の場合の前方参照点LCR(i)の横位置p_lcr(px(i))を設定するために予め適切な値、例えばlc_offset_lcr=−1.75に設定する。
【0027】
前方参照点LCR(i)の車線内横位置p_lcr(px(i))を用いて、右車線変更の場合の操舵角θid_lcrを以下の(式4)から算出することができる。
θid_lcr=Σ{a(i)×p_lcr(px(i))} ・・・(式4)
ここで、a(i)は前方参照点LCR(i)における車線内横位置p_lcr(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0028】
(3)仮想ドライバの運転意図が左車線変更の場合
仮想ドライバの操舵角θidを算出するために、仮想ドライバの運転意図が左車線変更である場合の前方参照点LCL(i)を設定する。図3には、自車両の前方に2つの前方参照点LCL1,LCL2を設定した場合を例として示している。
【0029】
左車線変更の場合の前方参照点LCL(i)の横位置p_lcl(px(i))は、以下の(式5)で表すように、車線維持の場合の前方参照点LK(i)の左右方向距離lat_pos(px(i))にオフセット量lc_offset_lclを加算して算出することができる。
p_lcl(px(i))=lat_pos(px(i))+lc_offset_lcl i={1,...,n}・・・(式5)
ここで、n=2である。オフセット量lc_offset_lclは、左車線変更の場合の前方参照点LCL(i)の横位置p_lcl(px(i))を設定するために予め適切な値、例えばlc_offset_lcl=1.75に設定する。
【0030】
前方参照点LCL(i)の車線内横位置p_lcl(px(i))を用いて、左車線変更の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lclを以下の(式6)から算出することができる。
θid_lcl=Σ{a(i)×p_lcl(px(i))} ・・・(式6)
ここで、a(i)は前方参照点LCL(i)における車線内横位置p_lcl(px(i))に重み付けをする重み付け係数であり、予め適切な値を設定しておく。
【0031】
このようにステップS102で仮想ドライバの運転操作量Oidを算出した後、ステップS103へ進む。ステップS103では、運転操作量検出部30によって検出される現在の操舵角θrdを、実際のドライバの運転操作量Ordとして読み込む。
【0032】
ステップS104では、仮想ドライバの動的運転意図系列を生成する。ここでは、図4に示すように、現時点tから過去の時点(t−m+1)までのm個の時間フレームにおいて可能性のある運転意図を組み合わせて仮想ドライバの運転意図系列を生成する。例えば、運転意図系列L1は、過去の時点(t−m+1)から(t−1)の時点までは車線維持LKの運転意図を有していたが、現時点tで運転意図が右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表している。運転意図系列L2は、1フレーム前の時点(t−1)で運転意図が車線維持LKから右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表し、運転意図系列L3は、過去の時点(t−m+3)で運転意図が車線維持LKから右車線変更LCRに変化した仮想ドライバを表している。
【0033】
以下に、仮想ドライバの動的運転意図系列の設定方法について説明する。過去の時点(t−m+1)から時間(t−1)までの運転意図系列は、時間(t−1)で設定した運転意図系列を継続して使用する。現時点tにおける仮想ドライバの運転意図は、1フレーム前の時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図および運転意図系列の生成則に基づいて動的に決定する。
【0034】
図5(a)に示すように、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が車線維持LKの場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は、車線維持LK、右車線変更LCRおよび左車線変更LCLである。従って、時間(t−1)までは一つであった運転意図系列が、時間tにおいて3つに増加する。このとき、3つの運転意図系列は分岐元の時間(t−m+1)から時間(t−1)までの運転意図系列をそれぞれ継承する。
【0035】
一方、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が車線変更の場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は同一方向の車線変更のみである。図5(b)に示すように、時間(t−1)における仮想ドライバの運転意図が右車線変更LCRの場合、時間tにおいて可能性のある仮想ドライバの運転意図は右車線変更LCRのみである。具体的には、時間tにおいて自車両が右車線変更を継続していると判定される場合は運転意図を右車線変更LCRとし、その運転意図系列を存続させる。一方、例えば右隣接車線への車線変更を完了し、時間tでは車線変更を実行していない場合は、その運転意図系列自体を消滅させる。
【0036】
車線変更継続判定方法としては、例えば自車両の横位置および走行車線検出結果を用いて、時間(t−1)の運転意図が右車線変更LCRの場合、時間tにおいて自車両がまだ同じ車線内を走行しているときは車線変更継続中であると判断する。一方、時間tにおいて時間(t−1)とは異なる車線を走行している場合は、車線変更の実行中ではないと判断する。時間(t−1)の運転意図が左車線変更LCLの場合も、同様にして時間tの運転意図を設定する。
【0037】
このように、ステップS104では、時間(t−1)の仮想ドライバの運転意図および現時点tでの自車両の車両周囲状態に基づいて運転意図系列を新たに形成または消滅して、現時点tから過去の時点(t−m+1)の間の複数の運転意図系列を生成する。
【0038】
なお、運転意図系列を生成する際のm個の時間フレームは、常に現在までの直近のm個の時間フレームであり、次周期(t+1)において運転意図系列を生成する時は、時間(t+1)から過去の時間(t−m+2)までのm個の時間フレームを用いる。
【0039】
ステップS105では、ステップS102で算出した各運転意図における仮想ドライバの運転操作量Oidと、ステップS103で検出した実際のドライバの運転操作量Ordとを用いて、仮想ドライバの運転操作量近似度合Pidを算出する。ここでは、運転意図が車線維持の場合、右車線変更の場合、および左車線変更の場合の近似度合Pid_lk, Pid_lcr, Pid_lclをまとめてPidで表す。同様に、運転意図が車線維持の場合、右車線変更の場合、および左車線変更の場合の仮想ドライバの操舵角θid_lk, θid_lcr, θid_lclをまとめてθidで表す。
【0040】
仮想ドライバ運転操作量近似度合Pidは、実際のドライバの操舵角θrdを平均値、所定値ρrdを標準偏差とする正規分布に対して、仮想ドライバの操舵角θidの正規化(規準化)値の対数確率として、以下の(式7)から算出することができる。
Pid=log{Probn((θid−θrd)/ρrd)} ・・・(式7)
ここで、Probnは、与えられた標本が、正規分布で表される母集団から観測される確率を計算するための確率密度変換関数である。
【0041】
このように、ステップS105では、(式7)を用いて車線維持の場合の近似度合Pid_lk、右車線変更の場合の近似度合Pid_lcr、および左車線変更の場合の近似度合Pid_lclをそれぞれ算出する。その後、ステップS106へ進む。
【0042】
つづくステップS106では、ステップS104で生成した複数の仮想ドライバの動的運転意図系列について、それぞれ仮想ドライバ運転操作量系列近似度合Pidsを算出する。ここでは、図6に示すように、各動的運転意図系列jに属する過去の時点(t−m+1)から現時点tまでのm個の運転操作量近似度合Pid(j)(t-m+1)〜Pid(j)(t)を用いて、動的運転意図系列jの系列的な近似度合P(j)idsを算出する。なお、過去の運転操作量近似度合Pidは不図示のメモリに記憶されているとする。動的仮想ドライバ運転操作量系列近似度合P(j)idsは、以下の(式8)から算出することができる。
P(j)ids=ΠPid(j)(t−i+1) ・・・(式8)
ここで、Πは、動的運転意図系列jにおける現時点tでの仮想ドライバ運転操作量近似度合Pid(j)(t)から過去の時点(t−m+1)での仮想ドライバ運転操作量近似度合Pid(j)(t-m+1)までを全て積算した積和を表す。
【0043】
このように、ステップS106で、(式8)を用いて各動的運転意図系列jの近似度合P(j)idsをそれぞれ算出した後、ステップS107へ進む。
ステップS107では、以下の(式9)に表すように、ステップS106で算出した動的仮想ドライバ運転操作量系列近似度合P(j)idsの最大値を有する仮想ドライバの運転意図系列jを、最大の尤度を持つ運転意図系列Lmaxとして選択する。そして、運転意図系列Lmaxを持つ仮想ドライバの現在の運転意図を、実際のドライバの運転意図λrdとして選択する。
λrd=max{Pids_lk, Pids_lcr, Pids_lcl} ・・・(式9)
【0044】
ステップS108以降では、ステップS107で推定した実際のドライバの運転意図λrdの状態を判定する。例えば現時点tで運転意図が車線変更であると推定された場合でも、実際のドライバがどれだけの期間車線変更を想起していたかは、運転意図系列jによって異なる。
【0045】
具体的には、図4の系列L1に示すように現時点tで運転意図が右車線変更LCRに変化した場合と、系列L2に示すように1フレーム前の時点(t−1)で右車線変更LCRに変化した場合、また、系列L3に示すように過去の時点(t−m+3)から右車線変更LCRを想起していた場合では、実際のドライバが右車線変更LCRを想起してからの時間が異なり、推定された運転意図λrdの状態が異なる。そこで、実際のドライバが運転意図λrdを想起してから現時点tまでの経過時間etlcを推定し、ステップS107で推定した運転意図λrdの状態を判定する。
【0046】
まず、ステップS108では、運転意図λrdが出現してからの経過時間etlcを現時点tから後ろ向きに検索するための変数kとして、現在の時間tを代入する。ステップS109では、最大の尤度をもつ仮想ドライバの運転意図系列Lmaxを参照し、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、以下の(式10)で表すように、ステップS107で推定された運転意図λrdであるか否かを判定する。
λrd=Lmax(λdid(k)) ・・・(式10)
【0047】
ステップS109が肯定判定され、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、推定された運転意図λrdと同じ場合は、ステップS110へ進む。ステップS110では、運転意図系列Lmaxのm個の運転意図λdid(k)を全て検索したか否かを判定する。ステップS110が否定判定されると、ステップS111へ進む。ステップS111では、時間kとして1フレーム前の時間(k−1)をセットする。その後ステップS109へ戻り、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が運転意図λrdであるか否かを再び判定する。
【0048】
ステップS109が否定判定され、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が、ステップS107で推定された運転意図λrdでない場合は、ステップS112へ進む。例えば、運転意図λrdが右車線変更LCRである場合は、時間kにおける運転意図系列Lmaxの運転意図λdid(k)が車線維持LKとなると、ステップS109が否定判定されてステップS112へ進む。また、ステップS110が肯定判定され、運転意図系列Lmaxの先頭の時間フレーム(t−m+1)まで運転意図λdid(k)の検索を行った場合も、ステップS112へ進む。
【0049】
ステップS112では、運転意図系列Lmaxにおいて初めて運転意図λrdが出現してから現在までの経過時間、すなわち実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcを、以下の(式11)から算出する。
etlc=(t−k)×ΔT ・・・(式11)
(式11)において、ΔTは運転意図系列生成処理のサンプリング周期であり、例えば現時点tと、1フレーム前の時間(t−1)との時間間隔である。また、時間kは、運転意図系列Lmaxにおいて運転意図λrdが出現したときの時間を用いる。
【0050】
図6に示すように、系列L1では現時点tで右車線変更LCRの運転意図が出現しているので、(式11)の変数kに時間tを代入する。これにより、系列L1における推定運転意図経過時間etlcは0secと推定される。系列L2では1フレーム前の時点(t−1)で右車線変更LCRの運転意図が出現しているので(式11)に時間(t−1)を代入し、推定運転意図経過時間etlcをΔTsecと推定する。同様に、系列L3では、過去の時点(t−m+3)から右車線変更LCRの意図が出現しているので、推定運転意図経過時間etlcをΔT×(m−3)secと推定する。
【0051】
以上説明したように推定運転意図経過時間etlcを算出した後、ステップS113へ進む。
ステップS113では、ステップS107で推定した実際のドライバの運転意図λrd、およびステップS112で算出した推定運転意図経過時間etlcを出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0052】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)運転意図推定装置1は、現時点tを含む過去の所定時間区間における複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成し、運転意図系列j毎に、仮想ドライバの運転操作量Oidと実際のドライバの運転操作量Ordとの系列的な近似度合を表す運転操作量系列近似度合P(j)idsを算出する。そして、複数の運転操作量系列近似度合P(j)idsを比較することによって実際のドライバの運転意図λrdを推定し、推定した運転意図λrdについてその状態を推定する。このように、運転意図λrdの状態を推定することにより、運転意図推定部70において実際のドライバの意図がλrdであると推定したときの、実際のドライバの状態を判定することができる。
(2)運転意図状態判定部80は、運転意図λrdの状態として、推定された運転意図λrdが実際のドライバによって想起されてからの経過時間etlcを推定する。これにより、運転意図λrdの状態、すなわち実際のドライバがどれだけの間その運転行動を意図していたかを的確に推定することができる。
(3)運転意図状態判定部80において、実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間(車線変更意図経過時間)etlcを推定することにより、運転意図推定部70で推定した車線変更意図がどれほど確実であるかを知るすることができる。なお、上述した第1の実施の形態においては、推定された運転意図λrdについて推定運転意図経過時間etlcを算出したが、車線変更意図が推定された場合のみに推定運転意図経過時間etlcを算出することも可能である。
【0053】
なお、上述した第1の実施の形態においては、実際のドライバの運転操作量Ordと仮想ドライバの運転操作量Oidとして、操舵角θrd、θidを用いた。ただし、これには限定されず、例えば運転操作量としてアクセルペダルの操作量を用いることもできる。この場合、仮想ドライバのペダル操作量Sidは、例えば自車両と先行車との車間距離および車間時間THW等で表される先行車に対する接近度合に基づいて算出することができる。そして、実際のドライバのペダル操作量Srdと仮想ドライバのペダル操作量Sidとの近似度合に基づいて、実際のドライバの運転意図を推定する。
【0054】
上述した第1の実施の形態においては、仮想ドライバの運転操作量Oidを算出するために、図3に示すように各運転意図において2つの前方参照点を設定したが、前方車参照点の数は任意に設定することができる。
【0055】
《第2の実施の形態》
本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置100の構成を示すシステム図であり、図8は、車両用運転操作補助装置100を搭載した車両の構成図である。
【0056】
まず、車両用運転操作補助装置100の構成を説明する。
レーザレーダ110は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して自車両の前方領域を走査する。レーザレーダ110は、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、先行車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離及び相対速度はコントローラ150へ出力される。レーザレーダ110によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg 程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
【0057】
前方カメラ120は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出する。前方カメラ120からの画像信号は画像処理装置130で画像処理を施され、コントローラ150へと出力される。前方カメラ120による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0058】
車速センサ140は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ150に出力する。
さらに、上述した第1の実施の形態の運転意図推定装置1によって推定された実際のドライバの運転意図λrdおよび運転意図経過時間etlcがコントローラ150へ入力される。
【0059】
コントローラ150は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成される。コントローラ150は、例えばCPUのソフトウェア形態により、リスクポテンシャル計算部151,アクセルペダル反力指令値計算部152,およびアクセルペダル反力指令値補正部153を構成する。
【0060】
リスクポテンシャル計算部151は、レーザレーダ110および車速センサ140から入力される自車速、車間距離および先行車両との相対車速と、画像処理装置130から入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出する。アクセルペダル反力指令値計算部152は、リスクポテンシャル計算部151で算出されたリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル160に発生させるアクセルペダル反力の指令値FAを算出する。
【0061】
アクセルペダル反力指令値補正部153は、運転意図推定装置1から入力される運転意図推定結果および運転意図経過時間etlcに基づいて、アクセルペダル反力指令値計算部152で算出されたアクセルペダル反力指令値FAを補正する。アクセルペダル反力指令値補正部153で補正されたアクセルペダル反力指令値FAcは、アクセルペダル反力制御装置170へ出力される。
【0062】
アクセルペダル反力制御装置170は、コントローラ150からの指令値に応じてアクセルペダル操作反力を制御する。図9に示すように、アクセルペダル160には、リンク機構を介してサーボモータ180およびアクセルペダルストロークセンサ181が接続されている。サーボモータ180は、アクセルペダル反力制御装置170からの指令に応じてトルクと回転角とを制御し、運転者がアクセルペダル160を操作する際に発生する操作反力を任意に制御する。アクセルペダルストロークセンサ181は、リンク機構を介してサーボモータ180の回転角に変換されたアクセルペダル160のストローク量Sを検出する。
【0063】
なお、アクセルペダル反力制御を行わない場合の通常のアクセルペダル反力特性は、例えば、ストローク量Sが大きくなるほどアクセルペダル反力がリニアに大きくなるよう設定されている。通常のアクセルペダル反力特性は、例えばアクセルペダル160の回転中心に設けられたねじりバネ(不図示)のバネ力によって実現することができる。
【0064】
次に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置100の動作を、図10を用いて詳細に説明する。図10は、コントローラ150における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0065】
ステップS201で、レーザレーダ110、前方カメラ120および車速センサ140によって検出される自車両周囲の走行環境を表す環境状態量を読み込む。具体的には、自車両と先行車との車間距離D、先行車速V2および自車速V1を読み込む。ステップS202では、ステップS201で読み込んだ走行環境に基づいて、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出する。ここでは、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを算出するために、先行車に対する余裕時間TTCと車間時間THWとを算出する。
【0066】
余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量である。余裕時間TTCは、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速V1、先行車速V2および相対車速Vr(Vr=V2−V1)が一定の場合に、何秒後に車間距離Dがゼロとなり自車と先行車両とが接触するかを示す値である。余裕時間TTCは、以下の(式12)により求められる。
TTC=−D/Vr ・・・(式12)
【0067】
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどの運転者が減速行動を開始することが知られている。
【0068】
車間時間THWは、自車両が先行車に追従走行している場合に、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響度合、つまり相対車速vrが変化すると仮定したときの影響度合を示す物理量である。車間時間THWは、以下の(式13)で表される。
THW=D/V1 ・・・(式13)
【0069】
車間時間THWは、車間距離Dを自車速V1で除したものであり、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す。この車間時間THWが大きいほど、周囲の環境変化に対する予測影響度合が小さくなる。つまり、車間時間THWが大きい場合には、もしも将来に先行車の車速が変化しても、先行車までの接近度合には大きな影響を与えず、余裕時間TTCはあまり大きく変化しないことを示す。なお、自車両が先行車に追従し、自車速V1=先行車速V2である場合は、(式13)において自車速V1の代わりに先行車速V2を用いて車間時間THWを算出することもできる。
【0070】
そして、算出した余裕時間TTCと車間時間THWとを用いて先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。先行車に対するリスクポテンシャルRPは、以下の(式14)を用いて算出することができる。
RP=a/THW+b/TTC ・・・(式14)
【0071】
(式14)に示すように、リスクポテンシャルRPは、余裕時間TTCと車間時間THWとから連続的に表現される物理量である。ここで、a、bは、車間時間THWおよび余裕時間TTCにそれぞれ適切な重み付けをするための定数であり、予め適切な値を設定しておく。定数a、bは、例えばa=1,b=8(a<b)に設定する。
【0072】
ステップS203では、アクセルペダルストロークセンサ181によって検出されるアクセルペダル160のストローク量Sを読み込む。ステップS204では、ステップS202で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル反力指令値FAを算出する。まず、リスクポテンシャルRPに応じた反力増加量ΔFを算出する。
【0073】
図11に、先行車に対するリスクポテンシャルRPと反力増加量ΔFとの関係を示す。図11に示すように、リスクポテンシャルRPが最小値RPmin以下の場合は、反力増加量ΔFを0とする。これは、自車両周囲のリスクポテンシャルRPが非常に小さいときにアクセルペダル反力FAを増加することによって、運転者に煩わしさを与えてしまうことを避けるためである。最小値RPminは、予め適切な値を設定しておく。
【0074】
リスクポテンシャルRPが最小値RPminを超える領域では、リスクポテンシャルRPに応じて反力増加量ΔFが指数関数的に増加するように設定する。反力増加量ΔFは、以下の(式15)で表される。
ΔF=k・RPn ・・・(式15)
ここで、定数k、nはそれぞれ車種等によって異なり、ドライブシミュレータや実地試験によって取得される結果に基づいて、リスクポテンシャルRPを効果的に反力増加量ΔFに変換できるように予め適切に設定しておく。
【0075】
さらに、(式15)に従って算出した反力増加量ΔFを、アクセルペダルストローク量Sに応じた通常の反力特性に加算することにより、アクセルペダル反力指令値FAを算出する。
【0076】
ステップS205では、運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdを読み込み、ステップS206で推定された運転者の運転意図λrdが車線変更であるか否かを判定する。運転者の運転意図λrdが車線変更の場合は、ステップS207へ進む。ステップS207では、運転意図推定装置1によって算出された推定運転意図経過時間etlcを読み込む。
【0077】
ステップS208では、ステップS207で入力した推定運転意図経過時間etlc、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間etlcに基づいて、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAを補正する。具体的には、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAにローパスフィルタ等のフィルタ処理を施して減衰させる。
【0078】
補正後のアクセルペダル反力指令値FAは、以下の(式16)を用いて表すことができる。なお、(式16)において補正後の反力指令値FAを制御用の反力指令値としてFAcで表す。
FAc=gf(FA)
=kf・{1/(1+Tsf_etlc)}・FA ・・・(式16)
ここで、kfは適切に設定された定数、Tsf_etlcはローパスフィルタの時定数である。なお、時定数Tsf_etlcは、以下の(式17)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Tsf_etlc=f(etlc) ・・・(式17)
【0079】
図12に、推定運転意図経過時間etlcと時定数Tsf_etlcとの関係を示す。図12に示すように、経過時間etlcが長くなるほど時定数Tsf_etlcが小さくなるように設定する。このように、実際のドライバが運転意図を想起してからの経過時間etlcが長いほど時定数Tsf_etlcを小さくすることにより、アクセルペダル反力を速やかに減衰させることができる。
【0080】
一方、ステップS206において運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdが車線維持であると判定された場合は、ステップS209へ進み、ステップS204で算出したアクセルペダル反力指令値FAをそのまま制御用の指令値FAcとして設定する。
【0081】
ステップS210では、ステップS208またはS209で設定したアクセルペダル反力指令値FAcを、アクセルペダル反力制御装置170へ出力する。アクセルペダル反力制御装置170は、コントローラ150から入力された指令に従ってサーボモータ180を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0082】
図13(a)(b)を用いて、車両用運転操作補助装置100の作用を説明する。図13(a)は自車両が走行車線から左側の追い越し車線に車線変更を行っていく様子を表し、図13(b)は車線変更を行うときのアクセルペダル反力指令値FAcの時間変化を示している。時間t=taで運転者の車線変更意図が検出されると、アクセルペダル反力指令値FAcが徐々に低下していく。
【0083】
ここで、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcがt1の場合、図13(b)に実線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAcが緩やかに低下していく。一方、推定運転意図経過時間etlcが、t1よりも長いt2の場合(図12参照)、破線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAcが大きく低下する。
【0084】
このように、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcに応じてアクセルペダル反力指令値FAcを低下させる。ドライバが車線変更を意図してからドライバの運転意図が車線変更であると推定されるまでの時間経過時間etlcが長いほど、アクセルペダル反力指令値FAcを速やかに低下させるので、ドライバのペダル操作を妨げることなくドライバの期待に合致したアクセルペダル反力制御を行うことが可能となる。
【0085】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ150は、自車両周囲の障害物状況に基づいてリスクポテンシャルRPを算出し、リスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル操作反力制御を行う。このとき、推定された運転意図λrdおよび運転意図λrdの状態に基づいて、アクセルペダル160に発生させる操作反力を補正する。これにより、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを操作反力としてドライバに知らせながら、実際のドライバの運転意図を反映し、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
(2)コントローラ150は、推定された運転意図λrdが車線変更である場合に、車線変更意図経過時間etlcに基づいて、アクセルペダル160に発生させる操作反力を補正する。これにより、車線変更を行おうとしているときにドライバの意図に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
(3)コントローラ150は、リスクポテンシャルRPと操作反力との関係を補正するアクセルペダル反力指令値補正部153を備えている。アクセルペダル反力指令値補正部153は、車線変更意図経過時間etlcが長くなるほど操作反力を低下させる。これにより、実際のドライバが長い間車線変更を意図し、アクセルペダル反力の速やかな減少を期待しているときに、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
【0086】
−第2の実施の形態の変形例−
ここでは、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合のみ、アクセルペダル反力指令値FAを補正する。以下に、アクセルペダル反力指令値FAをどのように補正するかを、図14を用いて説明する。図14は、コントローラ150における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS301〜S307での処理は、図10のフローチャートで説明したステップS201〜S207での処理と同様であるので説明を省略する。
【0087】
ステップS308では、ステップS307で読み込んだ実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回るか否かを判定する。ステップS308が肯定判定され、経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合は、ステップS309へ進んでステップS304で算出したアクセルペダル反力指令値FAを推定運転意図経過時間etlcに基づいて補正する。
【0088】
具体的には、以下の(式18)により制御用の反力指令値FAcを算出する。
FAc=gf(FA)
=kf・{1/(1+Ksf×Tsf_etlc)}・FA ・・・(式18)
(式18)において、Ksfは時定数Tsf_etlcにかかる係数である。係数Ksfは、以下の(式19)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Ksf=f(etlc) ・・・(式19)
【0089】
図15に、推定運転意図経過時間etlcと係数Ksfとの関係を示す。図15に示すように、係数Ksfは、所定値etlcoを上回る領域で推定運転意図経過時間etlcが大きくなるほど小さくなる。なお、所定値etlcoのときに係数Ksf=1である。これにより、推定運転意図経過時間etlcが長くなるほど時定数項(Ksf×Tsf_etlc)が小さくなる。
【0090】
一方、ステップS308が否定判定されると、ステップS310へ進んでステップS304で算出したアクセルペダル反力指令値FAをそのまま制御用の反力指令値FAcとして設定する。つづくステップS311では、ステップS309またはステップS310で設定した反力指令値FAcをアクセルペダル反力制御装置170へ出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0091】
以上説明したように、推定運転意図経過時間etlcに応じてアクセルペダル反力指令値FAcを補正することにより、上述した第2の実施の形態と同様に実際のドライバの車線変更意図が検出された場合に、アクセルペダル反力を減衰させてドライバの意図に合った反力制御を行うことができる。さらに、推定運転意図経過時間etlcが所定値etlco以下の場合、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してから運転意図が車線変更であると推定されるまでの経過時間etlcが短い場合は、アクセルペダル反力指令値FAを補正しない。これにより、誤った運転意図推定結果に基づいて反力指令値FAを補正する確率を低下し、ドライバの意図に反する不要なペダル反力減衰を行ってドライバに煩わしさを与えてしまうことを軽減することが可能となる。
【0092】
なお、上述した第2の実施の形態において、予め設定した時定数Tsf_etlcに係数Ksfを掛け、係数Ksfを推定運転意図経過時間etlcに応じて設定することも可能である。
【0093】
《第3の実施の形態》
本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図16は、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置200の構成を示すシステム図である。図16において、上述した第2の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第2の実施の形態との相違点を説明する。
【0094】
第3の実施の形態においては、運転意図推定装置1によって運転者の車線変更意図が検出された場合に、自車両周囲のリスクポテンシャルRPを補正する。そこで、車両用運転操作補助装置200のコントローラ150Aは、リスクポテンシャル計算部151,リスクポテンシャル補正部154,およびアクセルペダル反力指令値計算部155を備えている。
【0095】
次に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置200の動作を、図17を用いて詳細に説明する。図17は、コントローラ150Aにおける運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS401およびS402での処理は、図10のフローチャートで説明したステップS201およびS202での処理と同様であるので説明を省略する。
【0096】
ステップS403では、運転意図推定装置1で推定した実際のドライバの運転意図λrdを読み込む。ステップS404では、推定されたドライバの運転意図λrdが車線変更であるか否かを判定する。ドライバの運転意図λrdが車線変更の場合は、ステップS405へ進む。ステップS405では、運転意図推定装置1によって算出された推定運転意図経過時間etlcを読み込む。
【0097】
ステップS406では、ステップS405で入力した推定運転意図経過時間etlc、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してからの経過時間etlcに基づいて、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPを補正する。具体的には、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPにローパスフィルタ等のフィルタ処理を施して減衰させる。
【0098】
補正後のリスクポテンシャルRPは、以下の(式20)を用いて表すことができる。なお、(式20)において実際に制御に用いる補正後のリスクポテンシャルをRPcで表す。
RPc=gp(RP)
=kp・{1/(1+Tsp_etlc)}・RP ・・・(式20)
ここで、kpは適切に設定された定数、Tsp_etlcはローパスフィルタの時定数である。なお、時定数Tsp_etlcは、以下の(式21)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Tsp_etlc=f(etlc) ・・・(式21)
【0099】
図18に、推定運転意図経過時間etlcと時定数Tsp_etlcとの関係を示す。図18に示すように、経過時間etlcが長くなるほど時定数Tsp_etlcが小さくなるように設定する。このように、実際のドライバが運転意図を想起してからの経過時間etlcが長いほど時定数Tsf_etlcを小さくすることにより、リスクポテンシャルRPを低下してアクセルペダル反力を速やかに減衰させることができる。
【0100】
一方、ステップS404において運転意図推定装置1によって推定された運転意図λrdが車線維持であると判定された場合は、ステップS407へ進み、ステップS402で算出したリスクポテンシャルRPをそのまま制御用のリスクポテンシャルRPcとして設定する。
【0101】
つづくステップS408では、アクセルペダルストロークセンサ181によって検出されるアクセルペダルストローク量Sを読み込む。ステップS409では、ステップS406またはS407で設定したリスクポテンシャルRPcに基づいてアクセルペダル反力指令値FAを算出する。アクセルペダル反力指令値FAの算出処理は、図10のステップS204における処理と同様である。
【0102】
ステップS410では、ステップS409で算出したアクセルペダル反力指令値FAをアクセルペダル反力制御装置170へ出力する。これにより、今回の処理を終了する。
【0103】
図19(a)(b)を用いて、車両用運転操作補助装置200の作用を説明する。図19(a)は自車両が走行車線から左側の追い越し車線に車線変更を行っていく様子を表し、図19(b)は車線変更を行うときのアクセルペダル反力指令値FAの時間変化を示している。時間t=taで運転者の車線変更意図が検出されると、アクセルペダル反力指令値FAが徐々に低下していく。
【0104】
ここで、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcがt1の場合、図19(b)に実線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAが緩やかに低下していく。一方、推定運転意図経過時間etlcが、t1よりも長いt2の場合(図18参照)、破線で示すようにアクセルペダル反力指令値FAが大きく低下する。
【0105】
このように、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcに応じてリスクポテンシャルRPを減衰し、アクセルペダル反力指令値FAを低下させる。ドライバが車線変更を意図してからドライバの運転意図が車線変更であると推定されるまでの時間経過時間etlcが長いほど、リスクポテンシャルRPを速やかに減衰してアクセルペダル反力指令値FAcを低下させるので、ドライバのペダル操作を妨げることなくドライバの期待に合致したアクセルペダル反力制御を行うことが可能となる。
【0106】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第2の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラ150Aは、障害物状況とリスクポテンシャルRPとの関係を補正するリスクポテンシャル補正部154を備えている。リスクポテンシャル補正部154は、車線変更意図経過時間etlcが長くなるほどリスクポテンシャルを低下させる。これにより、実際のドライバが長い間車線変更を意図し、アクセルペダル反力の速やかな減少を期待しているときに、ドライバの期待に合ったアクセルペダル反力制御を行うことができる。
【0107】
−第3の実施の形態の変形例−
ここでは、実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合のみ、リスクポテンシャルRPを補正する。以下に、リスクポテンシャルRPをどのように補正するかを、図20を用いて説明する。図20は、コントローラ150Aにおける運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS501〜S505での処理は、図17のフローチャートで説明したステップS401〜S405での処理と同様であるので説明を省略する。
【0108】
ステップS506では、ステップS505で読み込んだ実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcが所定値etlcoを上回るか否かを判定する。ステップS506が肯定判定され、経過時間etlcが所定値etlcoを上回る場合は、ステップS507へ進む。ステップS507では、ステップS502で算出したリスクポテンシャルRPを推定運転意図経過時間etlcに基づいて補正する。
【0109】
具体的には、以下の(式22)により制御用のリスクポテンシャルRPcを算出する。
RPc=gp(RP)
=kp・{1/(1+Ksp×Tsp_etlc)}・RP ・・・(式22)
(式22)において、Kspは時定数Tsp_etlcにかかる係数である。係数Kspは、以下の(式23)に示すように実際のドライバの推定運転意図経過時間etlcの関数として設定される。
Ksp=f(etlc) ・・・(式23)
【0110】
図21に、推定運転意図経過時間etlcと係数Kspとの関係を示す。図21に示すように、係数Kspは、所定値etlcoを上回る領域で推定運転意図経過時間etlcが大きくなるほど小さくなる。なお、所定値etlcoのときに係数Ksp=1である。これにより、推定運転意図経過時間etlcが長くなるほど時定数項(Ksp×Tsp_etlc)が小さくなる。
【0111】
一方、ステップS506が否定判定されると、ステップS508へ進んでステップS502で算出したリスクポテンシャルRPをそのまま制御用のリスクポテンシャルRPcとして設定する。つづくステップS509〜S511での処理は、図17のステップS408〜S410での処理と同様である。
【0112】
以上説明したように、推定運転意図経過時間etlcに応じてリスクポテンシャルRPを補正することにより、上述した第3の実施の形態と同様に、実際のドライバの車線変更意図が検出された場合に、アクセルペダル反力を減衰させてドライバの意図に合った反力制御を行うことができる。さらに、推定運転意図経過時間etlcが所定値etlco以下の場合、すなわち実際のドライバが車線変更を想起してから運転意図が車線変更であると推定されるまでの経過時間etlcが短い場合は、リスクポテンシャルRPを補正しない。これにより、誤った運転意図推定結果に基づいてリスクポテンシャルRPを補正する確率を低下し、ドライバの意図に反する不要なペダル反力減衰を行ってドライバに煩わしさを与えてしまうことを軽減することが可能となる。
【0113】
なお、上述した第3の実施の形態において、予め設定した時定数Tsp_etlcに係数Kspを掛け、係数Kspを推定運転意図経過時間etlcに応じて設定することも可能である。
【0114】
上述した第2および第3の実施の形態においては、自車両と先行車との余裕時間TTCおよび車間時間THWとを用いてリスクポテンシャルRPを算出した。ただしこれには限定されず、例えば余裕時間TTCの逆数をリスクポテンシャルとして用いることもできる。
【0115】
以上説明した第1から第3の実施の形態においては、車両周囲状態検出手段として車両周囲状態検出部10,運転操作量検出手段として運転操作量検出部30、仮想ドライバ運転操作量計算手段として仮想ドライバ運転操作量計算部50,運転意図系列生成手段として仮想ドライバ運転意図系列動的決定部40,運転操作量系列近似度合計算手段として仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部60,運転意図推定手段として運転意図推定部70,運転意図状態判定手段として運転意図状態判定部80を用いた。また、障害物検出手段としてレーザレーダ110,前方カメラ120および車速センサ140を用い、リスクポテンシャル算出手段としてリスクポテンシャル計算部151,操作反力計算手段としてアクセルペダル反力指令値計算部152,155を用い、操作反力発生手段としてアクセルペダル反力制御装置170を用いた。さらに、補正手段としてコントローラ150,150Aを用い、操作反力補正手段としてアクセルペダル反力指令値補正部153,リスクポテンシャル補正手段としてリスクポテンシャル補正部154を用いた。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、別方式のミリ波レーダ等を用いることもできる。また、操作反力発生手段として操舵反力を発生させる操舵反力制御装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1:運転意図推定装置
10:車両周囲状態検出部
20:車両状態検出部
30:運転操作量検出部
40:仮想ドライバ運転意図系列動的決定部
50:仮想ドライバ運転操作量計算部
60:仮想ドライバ運転操作量近似度合計算部
70:運転意図推定部
80:運転意図状態判定部
100,200:車両用運転操作補助装置
150,150A:コントローラ
170:アクセルペダル反力制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、
実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、
運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、前記車両周囲状態検出手段によって検出される前記自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが前記運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、
現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて前記複数の仮想ドライバの前記運転意図をそれぞれ決定し、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、
前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの前記運転操作量と前記実際のドライバの前記運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、前記運転意図系列生成手段によって生成された前記運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、
前記運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の前記運転操作量系列近似度合を比較することによって、前記実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、
前記運転意図推定手段によって推定された前記実際のドライバの前記運転意図について、前記運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを備えることを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転意図推定装置において、
前記運転意図状態判定手段は、前記運転意図の状態として、前記運転意図推定手段によって推定された前記運転意図が前記実際のドライバによって想起されてからの経過時間を推定することを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転意図推定装置において、
前記複数の仮想ドライバの前記運転意図は、車線維持および車線変更であり、
前記運転意図状態判定手段は、前記実際のドライバが車線変更を想起してからの車線変更意図経過時間を推定することを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項4】
自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、前記車両周囲状態検出手段によって検出される前記自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが前記運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて前記複数の仮想ドライバの前記運転意図をそれぞれ決定し、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの前記運転操作量と前記実際のドライバの前記運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、前記運転意図系列生成手段によって生成された前記運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、前記運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の前記運転操作量系列近似度合を比較することによって、前記実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、前記運転意図推定手段によって推定された前記実際のドライバの前記運転意図について、前記運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを有する運転意図推定装置と、
自車両周囲の障害物状況を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記自車両周囲のリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、アクセルペダルの操作反力を計算する操作反力計算手段と、
前記アクセルペダルに前記操作反力を発生させる操作反力発生手段と、
前記運転意図推定装置によって推定された前記運転意図および前記運転意図の状態に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる前記操作反力を補正する補正手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記複数の仮想ドライバの前記運転意図は、車線維持および車線変更であり、
前記運転意図状態判定手段は、前記実際のドライバが車線変更を想起してからの車線変更意図経過時間を推定し、
前記運転意図推定装置によって前記運転意図が車線変更であると推定されると、前記車線変更意図経過時間に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる前記操作反力を補正する補正手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記補正手段は、前記リスクポテンシャルと前記操作反力との関係を補正する操作反力補正手段であり、前記操作反力補正手段は、前記車線変更意図経過時間が長くなるほど前記操作反力を低下することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記操作反力補正手段は、前記車線変更意図経過時間が所定値以上の場合に、前記リスクポテンシャルと前記操作反力との関係を補正することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記補正手段は、前記障害物状況と前記リスクポテンシャルとの関係を補正するリスクポテンシャル補正手段であり、前記リスクポテンシャル補正手段は、前記車線変更意図経過時間が長くなるほど前記リスクポテンシャルを低下することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャル補正手段は、前記車線変更意図経過時間が所定値以上の場合に、前記障害物状況と前記リスクポテンシャルとの関係を補正することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項1】
自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、
実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、
運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、前記車両周囲状態検出手段によって検出される前記自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが前記運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、
現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて前記複数の仮想ドライバの前記運転意図をそれぞれ決定し、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、
前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの前記運転操作量と前記実際のドライバの前記運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、前記運転意図系列生成手段によって生成された前記運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、
前記運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の前記運転操作量系列近似度合を比較することによって、前記実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、
前記運転意図推定手段によって推定された前記実際のドライバの前記運転意図について、前記運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを備えることを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転意図推定装置において、
前記運転意図状態判定手段は、前記運転意図の状態として、前記運転意図推定手段によって推定された前記運転意図が前記実際のドライバによって想起されてからの経過時間を推定することを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転意図推定装置において、
前記複数の仮想ドライバの前記運転意図は、車線維持および車線変更であり、
前記運転意図状態判定手段は、前記実際のドライバが車線変更を想起してからの車線変更意図経過時間を推定することを特徴とする運転意図推定装置。
【請求項4】
自車両の車両周囲状態を検出する車両周囲状態検出手段と、実際のドライバによる運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、運転意図を与えられた複数の異なる仮想のドライバについて、前記車両周囲状態検出手段によって検出される前記自車両の車両周囲状態に基づいて、各仮想ドライバが前記運転意図を遂行するために必要な運転操作量を計算する仮想ドライバ運転操作量計算手段と、現時点を含む過去の所定時間区間の各時間フレームにおいて前記複数の仮想ドライバの前記運転意図をそれぞれ決定し、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの運転意図系列を動的に生成する運転意図系列生成手段と、前記所定時間区間における前記複数の仮想ドライバの前記運転操作量と前記実際のドライバの前記運転操作量との系列的な近似度合(以降、運転操作量系列近似度合とする)を、前記運転意図系列生成手段によって生成された前記運転意図系列毎に計算する運転操作量系列近似度合計算手段と、前記運転操作量系列近似度合計算手段によって計算された複数の前記運転操作量系列近似度合を比較することによって、前記実際のドライバの運転意図を推定する運転意図推定手段と、前記運転意図推定手段によって推定された前記実際のドライバの前記運転意図について、前記運転意図の状態を推定する運転意図状態判定手段とを有する運転意図推定装置と、
自車両周囲の障害物状況を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記自車両周囲のリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、アクセルペダルの操作反力を計算する操作反力計算手段と、
前記アクセルペダルに前記操作反力を発生させる操作反力発生手段と、
前記運転意図推定装置によって推定された前記運転意図および前記運転意図の状態に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる前記操作反力を補正する補正手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記複数の仮想ドライバの前記運転意図は、車線維持および車線変更であり、
前記運転意図状態判定手段は、前記実際のドライバが車線変更を想起してからの車線変更意図経過時間を推定し、
前記運転意図推定装置によって前記運転意図が車線変更であると推定されると、前記車線変更意図経過時間に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる前記操作反力を補正する補正手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記補正手段は、前記リスクポテンシャルと前記操作反力との関係を補正する操作反力補正手段であり、前記操作反力補正手段は、前記車線変更意図経過時間が長くなるほど前記操作反力を低下することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記操作反力補正手段は、前記車線変更意図経過時間が所定値以上の場合に、前記リスクポテンシャルと前記操作反力との関係を補正することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記補正手段は、前記障害物状況と前記リスクポテンシャルとの関係を補正するリスクポテンシャル補正手段であり、前記リスクポテンシャル補正手段は、前記車線変更意図経過時間が長くなるほど前記リスクポテンシャルを低下することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャル補正手段は、前記車線変更意図経過時間が所定値以上の場合に、前記障害物状況と前記リスクポテンシャルとの関係を補正することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−14713(P2012−14713A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174948(P2011−174948)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2009−275642(P2009−275642)の分割
【原出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2009−275642(P2009−275642)の分割
【原出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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