説明

操業ルール作成方法及び生産物流計画作成方法

【課題】ボトルネック工程の発生を抑制する操業ルールを作成すること。
【解決手段】CPU13が、生産物流シミュレーションによって所定期間内における設備の処理量を算出し、設備の処理量と処理計画量とを比較することによって生産物流ラインにボトルネック設備が存在するか否かを判別する。そして、CPU13は、ボトルネック設備が存在する場合、ボトルネック設備を含む周辺設備の稼働計画を変更して再度生産物流シミュレーションを実行し、生産物流シミュレーションの結果と稼働計画の変更内容とを関連付けして操業ルール情報として記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製品の生産物流ラインの生産物流計画を作成するための操業ルールを作成する操業ルール作成方法、及びこの操業ルール作成方法によって作成された操業ルールを用いて鉄鋼製品の生産物流ラインの生産物流計画を作成する生産物流計画作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の工程を経て生産,出荷される製品の生産物流ラインでは、ある工程において生産物流計画からの遅れが生じると、客先に回答した納期までに最終製品を出荷できなくなる。このような背景から、ある工程において生産計画からの遅れが生じた場合、その工程をボトルネック工程として山積み/山崩し処理によって各工程の負荷を平準化させた生産物流計画を再作成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−128983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、ボトルネック工程が発生した場合の対処方法に関するものであり、生産物流計画を作成する段階でボトルネック工程を発生させない又は最小化する生産物流計画を作成するものではない。このため、生産物流計画を作成する段階でボトルネック工程を発生させない又は最小化する生産物流計画を作成することによって、製造リードタイムの短縮,在庫量の削減,及び歩留まりの向上を実現可能な生産物流計画の作成技術の提供が期待されていた。
【0005】
鉄鋼製品の生産物流ラインでは、ボトルネック工程の発生確率が特許文献1記載の技術が対象としている半導体装置の製造ラインと比較して低い。このため、鉄鋼製品の生産物流ラインでは、特許文献1記載の技術のような場当たり的な負荷の平準化ではなく、ボトルネック工程を発生させない又は最小化する操業ルールによる平準化を行うことにより、製造リードタイムの短縮,在庫量の削減,及び歩留まりの向上を実現できる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボトルネック工程の発生を抑制する操業ルールを作成する操業ルール作成方法、及びボトルネック工程の発生を抑制する生産物流計画を作成する生産物流計画作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る操業ルール作成装置は、製品の通過工程及び処理時間に関する情報を含む注文情報、生産物流ラインを構成する各工程における仕掛在庫量に関する情報を含む仕掛在庫情報、該各工程に設けられた設備の処理能力に関する情報を含む設備諸元情報、及び該設備の稼働計画に関する情報を含む稼働計画情報に基づいて、所定期間内における該設備の処理量を算出する生産物流シミュレーションステップと、前記設備の処理量と処理計画量とを比較することによって前記生産物流ラインにボトルネック設備が存在するか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにおいてボトルネック設備が存在すると判別された場合、該ボトルネック設備を含む周辺設備の稼働計画を変更する稼働計画変更ステップと、前記稼働計画変更ステップによって変更された稼働計画を用いて前記生産物流シミュレーションステップを再度実行する再シミュレーションステップと、前記再シミュレーションステップの処理結果と前記稼働計画変更ステップにおける稼働計画の変更内容とを関連付けして操業ルールとして記憶する操業ルール記憶ステップと、を含む。
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る生産物流計画作成方法は、本発明に係る操業ルール作成装置によって作成された操業ルールに基づいて生産物流ラインの生産物流計画を作成するステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る操業ルール作成方法によれば、ボトルネック工程の発生を抑制する操業ルールを作成することができる。本発明に係る生産物流計画作成方法によれば、ボトルネック工程の発生を抑制する生産物流計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムが生産物流計画を作成する対象となる鉄鋼製品の生産物流ラインを示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す注文情報DBに格納されている注文情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、図2に示す仕掛在庫DBに格納されている仕掛在庫情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、図2に示す設備諸元DBに格納されている設備諸元情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、図2に示す稼働計画DBに格納されている稼働計画情報の一例を示す図である。
【図7】図7は、図2に示す故障発生確率DBに格納されている故障発生確率情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、図2に示す操業ルールDBに格納されている操業ルール情報の一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態である操業ルール作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、生産物流シミュレーション条件及び生産物流シミュレーション結果の一例を示す図である。
【図11】図11は、生産物流シミュレーション条件及び生産物流シミュレーション結果の一例を示す図である。
【図12】図12は、生産物流シミュレーション条件及び生産物流シミュレーション結果の一例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態である稼働計画変更処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムの構成及びその動作について説明する。
【0012】
〔鉄鋼製品の生産物流ライン〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムが生産物流計画を作成する対象となる鉄鋼製品の生産物流ラインについて説明する。但し、本発明が生産物流計画を作成する対象とする生産物流ラインは、図1に示す鉄鋼製品の生産物流ラインに限定されることはない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムが生産物流計画を作成する対象となる鉄鋼製品の生産物流ラインを示す模式図である。図1に示すように、この生産物流ライン100では、始めに、圧延機において鉄鋼製品に対する圧延工程が行われ、圧延工程が完了した鉄鋼製品は冷却置場において冷却される。次に、冷却置場において冷却された鉄鋼製品は、精整設備1〜3のうちのいずれかにおいて精整処理された後、製品置場に載置される。そして、製品置場に載置された鉄鋼製品は、出荷設備によって客先に向けて出荷される。
【0014】
〔生産物流計画作成システムの構成〕
次に、図2乃至図8を参照して、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムの構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システムの構成を示すブロック図である。図3は、図2に示す注文情報DB2に格納されている注文情報の一例を示す図である。図4は、図2に示す仕掛在庫DB3に格納されている仕掛在庫情報の一例を示す図である。図5は、図2に示す設備諸元DB4に格納されている設備諸元情報の一例を示す図である。図6は、図2に示す稼働計画DB5に格納されている稼働計画情報の一例を示す図である。図7は、図2に示す故障発生確率DB6に格納されている故障発生確率情報の一例を示す図である。図8は、図2に示す操業ルールDB7に格納されている操業ルール情報の一例を示す図である。
【0015】
図2に示すように、本発明の一実施形態である生産物流計画作成システム1は、注文情報データベース(DB)2,仕掛在庫DB3,設備諸元DB4,稼働計画DB5,故障発生確率DB6,操業ルールDB7,生産物流計画作成装置10,入力装置20,及び出力装置30を備えている。
【0016】
注文情報DB2は、図1に示す生産物流ライン100に供給される鉄鋼製品の通過工程及び処理時間に関する情報を処理順に記録した注文情報を格納している。具体的には、注文情報は、図3に示すように、各鉄鋼製品に付与された固有の識別情報(製品ID)と、製品IDに対応する鉄鋼製品の厚み,幅,重量,置場区分,冷却時間,通過工程,処理時間1,処理時間2,代替可否フラグ,及び出荷予定日に関する情報とを含む。なお、置場区分とは、鉄鋼製品が載置される冷却置場の区分を意味する。通過工程とは、精整処理において使用される精整設備の種別を意味する。処理時間1とは、鉄鋼製品が1番目に通過する精整設備における処理時間を意味する。処理時間2とは、鉄鋼製品が2番目に通過する精整設備における処理時間に基づいて決められる区分を意味する。代替可否フラグは、精整設備1における処理を精整設備3で代替可能であるか否かを示すものであり、代替可の場合は○,代替不可の場合は×が設定される。
【0017】
仕掛在庫DB3は、図1に示す生産物流ライン100を構成する各工程における仕掛在庫量に関する情報を鉄鋼製品単位で記録した仕掛在庫情報を格納している。具体的には、仕掛在庫情報は、図4に示すように、冷却置場内の領域毎に付与された4桁の固有の識別情報(置場ID)と、置場IDに対応する領域に載置されている鉄鋼製品に付与された製品ID,置場IDに対応する領域の置場区分,置場IDに対応する領域に載置されている鉄鋼製品の冷却開始時刻及び冷却終了時刻に関する情報を含む。なお、本実施形態では、置場IDの1桁目は置場IDに対応する領域の幅区分(S,M,L)を示し、置場IDの2〜4桁目は置場IDに対応する領域に付与された番地(001〜999)を示している。
【0018】
設備諸元DB4は、図1に示す生産物流ライン100の各工程に設けられた設備の処理能力(置場の場合は収容個数)に関する情報を設備諸元情報として格納している。具体的には、設備諸元情報は、図5に示すように、冷却置場の置場区分と置場IDの1桁目及び2〜4桁目の文字情報との関係を示す情報を含み、冷却置場に収容可能な鉄鋼製品の数に関する情報を有している。
【0019】
稼働計画DB5は、図1に示す生産物流ライン100の各工程に設けられた設備の稼働/休止計画に関する情報を稼働計画情報として格納している。具体的には、稼働計画情報は、図6に示すように、各時間帯において精整設備1〜3が稼働又は休止予定であるか否かを示す情報を含む。
【0020】
故障発生確率DB6は、図1に示す生産物流ライン100の各工程に設けられた設備の故障発生確率に関する情報を故障発生確率情報として格納している。具体的には、故障発生確率情報は、図7に示すように、精整設備1〜3の故障発生間隔及び故障停止時間に関する情報を含む。
【0021】
操業ルール情報DB7は、図1に示す生産物流ライン100における各設備についてボトルネック工程を発生させないための操業ルールに関する情報を操業ルール情報として格納している。具体的には、操業ルール情報は、図8に示すように、対象設備とその対象設備がボトルネック設備にならないような操業ルールに関する情報とを含む。この操業ルール情報は、後述する操業ルール作成処理によって作成される。
【0022】
生産物流計画作成装置10は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、RAM11,ROM12,及びCPU13を主な構成要素として備えている。RAM11は、CPU13が実行する処理に関係する制御プログラム及び制御データを一時的に記憶し、CPU13のワーキングエリアとして機能する。ROM12は、後述する操業ルール作成処理を実現する生産物流計画作成プログラム14等の制御プログラムや制御データを記憶している。CPU13は、ROM12内に記憶されている制御プログラムを実行することによって、生産物流計画作成装置10全体の動作を制御する。
【0023】
入力装置20は、キーボード,マウスポインタ,テンキー等の情報入力装置によって構成され、オペレータが各種情報を生産物流計画作成装置10に入力する際に操作される。出力装置30は、表示装置や印刷装置等の出力装置によって構成され、生産物流計画作成装置10の各種処理情報を出力する。
【0024】
〔操業ルール作成処理〕
このような構成を有する生産物流計画作成システム1では、生産物流計画作成装置10が以下に示す操業ルール作成処理を実行することによって、ボトルネック工程の発生を抑制する操業ルールを作成する。以下、図9に示すフローチャートを参照して、操業ルール作成処理を実行する際の生産物流計画作成装置10の動作について説明する。なお、以下に示す生産物流計画作成装置10の動作は、CPU13がROM12内に記憶されている生産物流計画作成プログラム14を実行することによって実現される。
【0025】
図9は、本発明の一実施形態である操業ルール作成処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、オペレータが、入力装置20を操作することによって操業ルール作成処理の実行を指示したタイミングで開始となり、操業ルール作成処理はステップS1の処理に進む。
【0026】
ステップS1の処理では、生産物流計画作成装置10が、注文情報DB2,仕掛在庫DB3,設備諸元DB4,稼働計画DB5,及び故障発生確率DB6に格納されている情報を用いて生産物流ライン100の状態を模倣したシミュレーションモデルを構築し、構築されたシミュレーションモデルを用いて生産物流シミュレーションを実行することによって各設備における処理量を算出する。具体的には、始めに、生産物流計画作成装置10は、仕掛在庫DB3内に格納されている仕掛在庫情報に基づいて、各置場に鉄鋼製品を配置する。次に、生産物流計画作成装置10は、注文情報DB2内に格納されている注文情報に基づいて、圧延機に鉄鋼製品を順次投入し、圧延工程完了後の鉄鋼製品を冷却置場に載置する。次に、生産物流計画作成装置10は、注文情報DB2内に格納されている注文情報に基づいて、冷却時間経過後の鉄鋼製品を精整設備に供給し、精整工程完了後の鉄鋼製品を製品置場に載置する。そして、生産物流計画作成装置10は、注文情報DB2内に格納されている注文情報に基づいて、出荷設備を利用して製品置場に載置されている製品を出荷予定日に出荷する。これにより、ステップS1の処理は完了し、操業ルール作成処理はステップS2の処理に進む。
【0027】
ステップS2の処理では、生産物流計画作成装置10が、ステップS1の処理結果に基づいて、圧延機及び精整設備1〜3のいずれかの設備において計画量に対する処理量の過不足が発生しているか否かを判別する。判別の結果、計画量に対する処理量の過不足が発生していない場合、生産物流計画作成装置10は一連の操業ルール作成処理を終了する。一方、計画量の処理量の過不足が発生している場合には、生産物流計画作成装置10は、ボトルネック工程が発生していると判断し、操業ルール作成処理をステップS3の処理に進める。
【0028】
ステップS3の処理では、生産物流計画作成装置10が、各設備の稼働率,処理量と計画量との較差,及び置場使用率の時間推移に基づいて、ボトルネック工程の原因となっている設備をボトルネック設備として特定する。具体的には、圧延機及び精整設備1〜3に10日の稼働日数が設定されている場合において、各設備の処理時間が図10(a)に示す状態に設定されている時には、図10(b),(c)に示すようにどの設備においても稼働率及び処理量は処理能力以下であり、図10(d)に示すように冷却置場の使用率が100%以上となって設備前に製品が滞留することはない。すなわち、ボトルネック工程は発生していない。これに対して、各工程の処理時間が図11(a)に示す状態に設定され、精整設備1の処理時間が稼働日数の10日を上回っている時には、図11(b)に示すように精整設備1の稼働率が100%に達し、図11(c)に示すように各設備の処理量が目標値以下になっていることがわかる。また、図11(d)に示すように、冷却置場の使用率が100%に達する時間帯が2回発生している。図1に示す生産物流ライン100の構成によれば、冷却置場の使用率が100%になると上流の圧延工程が停止する。従って、図11(c)において圧延工程における処理量が目標値に達していない理由は、冷却置場の使用率が100%に達しているためであると考えられる。また、図11(c)において、精整設備2,3の処理量が目標量に達していない理由は、精整設備2,3が精整設備1と同じ冷却置場を共有し、且つ、圧延工程からの鉄鋼製品の供給が停止しているためであると考えられる。以上のことから、この場合、生産物流計画作成装置10は、精整設備1がボトルネック設備であると特定することができる。これにより、ステップS3の処理は完了し、操業ルール作成処理はステップS4の処理に進む。
【0029】
ステップS4の処理では、生産物流計画作成装置10が、ボトルネック工程が解消されるように、ステップS3の処理によって特定されたボトルネック設備とその周辺設備の稼働計画を変更する。この稼働計画変更処理の詳細については、図13に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS4の処理は完了し、操業ルール作成処理はステップS5の処理に進む。
【0030】
ステップS5の処理では、生産物流計画作成装置10が、ステップS4の処理によって変更されたたボトルネック設備とその周辺設備の稼働計画とに基づいて、再度生産物流シミュレーションを実行する。これにより、ステップS5の処理は完了し、操業ルール作成処理はステップS6の処理に進む。
【0031】
ステップS6の処理では、生産物流計画作成装置10が、ステップS5の処理結果に基づいて、いずれかの工程において計画量に対する処理量の過不足が発生しているか否かを判別する。判別の結果、計画量に対する処理量の過不足が発生していない場合、生産物流計画作成装置10は操業ルール作成処理をステップS9の処理に進める。一方、計画量に対する処理量の過不足が発生している場合には、生産物流計画作成装置10は、操業ルール作成処理をステップS7の処理に進める。
【0032】
ステップS7の処理では、生産物流計画作成装置10が、稼働計画を変更した回数が所定の繰り返し上限回数に達したか否かを判別する。判別の結果、稼働計画を変更した回数が所定の繰り返し上限回数に達していない場合、生産物流計画作成装置10は操業ルール作成処理をステップS8の処理に進める。一方、稼働計画を変更した回数が所定の繰り返し上限回数に達した場合には、生産物流計画作成装置10は一連の操業ルール作成処理を終了する。
【0033】
ステップS8の処理では、生産物流計画作成装置10が、稼働計画を変更する設備を変更する。これにより、ステップS8の処理は完了し、操業ルール作成処理はステップS4の処理に進む。
【0034】
ステップS9の処理では、生産物流計画作成装置10が、ステップS4の処理結果に基づいて、ボトルネック設備に関する情報とそのボトルネック設備を解消するように行った稼働計画の変更内容に関する情報とを関連づけして操業ルール情報として操業ルールDB7に格納する。具体的には、図11に示すように精製設備1がボトルネック設備である場合において、図12に示すように稼働計画変更処理によって精整設備3で代替可能な製品の生産計画を1.1日分だけ精整設備に割り当てることによりボトルネック設備が解消された場合、生産物流計画作成装置10は、この旨の情報を操業ルールとして操業ルールDB7内に格納する。これにより、ステップS9の処理は完了し、一連の操業ルール作成処理は終了する。以後、生産物流計画作成装置10は、図1に示す生産物流ライン100の生産物流計画を作成する際は、操業ルールDB7内に格納されている操業ルール情報を参照して生産物流計画を作成する。
【0035】
〔稼働計画変更処理〕
次に、図13に示すフローチャートを参照して、上記ステップS4の稼働計画変更処理について説明する。
【0036】
図13に示すフローチャートは、ステップS3の処理が完了したタイミングで開始となり、稼働計画変更処理はステップS11の処理に進む。
【0037】
ステップS11の処理では、生産物流計画作成装置10が、注文情報DB2内に格納されている注文情報に基づいて、ボトルネック設備を通過する注文数を集計する。これにより、ステップS11の処理は完了し、稼働計画変更処理はステップS12の処理に進む。
【0038】
ステップS12の処理では、生産物流計画作成装置10が、注文情報に含まれる代替処理フラグの情報を参照してボトルネック設備において処理される製品を代替処理可能な設備(振替先設備)を検索し、検索された振替先設備の処理余力(処理能力量−処理量)を集計する。これにより、ステップS12の処理は完了し、稼働計画変更処理はステップS13の処理に進む。
【0039】
ステップS13の処理では、生産物流計画作成装置10が、ステップS12の処理結果に基づいて、振替先設備の処理余力があるか否かを判別する。判別の結果、振替先設備の処理余力がある場合、生産物流計画作成装置10は稼働計画変更処理をステップS14の処理に進める。一方、振替先設備の処理余力がない場合には、生産物流計画作成装置10は稼働計画変更処理をステップS15の処理に進める。
【0040】
ステップS14の処理では、生産物流計画作成装置10が、設備諸元DB4に格納されているボトルネック設備の処理能力に関する情報に基づいて、ステップS11の処理によって集計されたボトルネック設備の注文数のうち、ボトルネック設備の処理能力以上の注文の生産計画を振替先設備に割り付ける。これにより、ステップS14の処理は完了し、一連の稼働計画変更処理は終了する。
【0041】
ステップS15の処理では、生産物流計画作成装置10が、稼働計画DB5内に格納されている稼働計画情報を参照して、ボトルネック設備が休止状態にあるか否かを判別する。判別の結果、ボトルネック設備が休止状態にある場合、生産物流計画作成装置10は稼働計画変更処理をステップS16の処理に進める。一方、ボトルネック設備が休止状態にない場合には、生産物流計画作製装置10は稼働計画変更処理をステップS18の処理に進める。
【0042】
ステップS16の処理では、生産物流計画作成装置10は、ボトルネック設備の休止状態を稼働状態に変更する。これにより、ステップS16の処理は完了し、稼働計画変更処理はステップS17の処理に進む。
【0043】
ステップS17の処理では、生産物流計画作成装置10が、設備諸元DB4に格納されているボトルネック設備の処理能力に関する情報に基づいて、ステップS11の処理によって集計された注文数がボトルネック設備の処理能力以上であるか否かを判別する。判別の結果、注文数が処理能力以上である場合、生産物流計画作成装置10は稼働計画変更処理をステップS18の処理に進める。一方、注文数が処理能力以上でない場合には、生産物流計画作成装置10は一連の稼働計画変更処理を終了する。
【0044】
ステップS18の処理では、生産物流計画作成装置10が、ボトルネック設備を解消することができない旨の警告情報を出力痩地30に出力する。これにより、ステップS18の処理は完了し、一連の稼働計画変更処理は終了する。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である操業ルール作成処理では、CPU13が、生産物流シミュレーションによって所定期間内における設備の処理量を算出し、設備の処理量と処理計画量とを比較することによって生産物流ラインにボトルネック設備が存在するか否かを判別する。そして、CPU13は、ボトルネック設備が存在する場合、ボトルネック設備を含む周辺設備の稼働計画を変更して再度生産物流シミュレーションを実行し、生産物流シミュレーションの結果と稼働計画の変更内容とを関連付けして操業ルール情報として記憶する。これにより、ボトルネック工程の発生を抑制する操業ルールを作成することができる。また、作成された操業ルールに基づいて生産物流計画を作成することによって、ボトルネック工程の発生を抑制する生産物流計画を作成することができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 生産物流計画作成システム
2 注文情報DB
3 仕掛在庫DB
4 設備諸元DB
5 稼働計画DB
6 故障発生確率DB
7 操業ルールDB
10 生産物流計画作成装置
11 RAM
12 ROM
13 CPU
14 生産物流計画作成プログラム
20 入力装置
30 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の通過工程及び処理時間に関する情報を含む注文情報、生産物流ラインを構成する各工程における仕掛在庫量に関する情報を含む仕掛在庫情報、該各工程に設けられた設備の処理能力に関する情報を含む設備諸元情報、及び該設備の稼働計画に関する情報を含む稼働計画情報に基づいて、所定期間内における該設備の処理量を算出する生産物流シミュレーションステップと、
前記設備の処理量と処理計画量とを比較することによって前記生産物流ラインにボトルネック設備が存在するか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにおいてボトルネック設備が存在すると判別された場合、該ボトルネック設備を含む周辺設備の稼働計画を変更する稼働計画変更ステップと、
前記稼働計画変更ステップによって変更された稼働計画を用いて前記生産物流シミュレーションステップを再度実行する再シミュレーションステップと、
前記再シミュレーションステップの処理結果と前記稼働計画変更ステップにおける稼働計画の変更内容とを関連付けして操業ルールとして記憶する操業ルール記憶ステップと、
を含むことを特徴とする操業ルール作成方法。
【請求項2】
前記再シミュレーションステップは、前記設備の処理量が処理計画量以下になるまで前記稼働計画を変更して前記生産物流シミュレーションステップを再度実行するステップを含み、前記操業ルール記憶ステップは、前記設備の処理量が処理計画量以下になったときの稼働計画の変更内容を操業ルールとして記憶するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の操業ルール作成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の操業ルール作成方法によって作成された操業ルールに基づいて前記生産物流ラインの生産物流計画を作成するステップを含むことを特徴とする生産物流計画作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3959(P2013−3959A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136201(P2011−136201)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】