説明

攪拌機

【課題】比重を変化させることにより攪拌体を攪拌槽内で昇降させ、かつ攪拌体の浮上時攪拌体からの排出液の噴流にて攪拌槽内の攪拌を行うとともに、攪拌槽の内底部に汚泥が沈殿堆積するのを防止するようにした攪拌機を提供すること。
【解決手段】攪拌槽1内の攪拌流体W中を、自らの比重変化により昇降ようにした攪拌機であって、攪拌槽1内の攪拌流体W中を浮上する際に、攪拌体2からの排出液を噴射するようにした複数本のノズル3を攪拌体2の外周部に突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌機に関し、特に、攪拌体の比重を変化させることにより攪拌体を攪拌槽内で昇降させるとともに、攪拌体の浮上時攪拌体からの排出液の噴流にて攪拌槽内の攪拌を行うとともに、攪拌槽の内底部における汚泥等固形物の沈殿堆積を防止するようにした攪拌機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理、工事用排水の処理等において、土砂、汚泥などの固形不純物が含まれた汚水等の流体を処理、例えば、汚泥水を処理する場合、この汚泥水(以下、「攪拌流体W」という。)に凝集剤、殺菌剤等の薬剤を混合するようにして攪拌槽内に投入し、攪拌機により攪拌して、所要の凝集、殺菌などの処理を行うようにしている。
【0003】
ところで、攪拌機は、外部からのエネルギ、例えば、商用電源を得てモータなどの駆動体を介して攪拌羽根を回転させ、これにより発生する水流を利用して槽内の攪拌流体を循環するようにして槽内全体を強制的に攪拌するようにしている。
【0004】
このため、この攪拌機における攪拌動力が大となるため、外部から商用電力を給電しているのでその電力費が嵩むとともに、また高深度槽においてはさらに電力費が嵩むようになり、ランニングコストが高くなり、さらには商用電力が無い箇所では攪拌機を使用することができないという問題があった。
また、攪拌羽根は、昇降する攪拌体の中央部に配設しているため、槽内における攪拌流体の緩速攪拌時においては、槽の内底部での攪拌力も弱くなり、比較的比重の重い固形物の汚泥などが槽内定部に沈殿し、堆積するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の攪拌機の有する問題点に鑑み、比重を変化させることにより攪拌体を攪拌槽内で昇降させ、かつ攪拌体の浮上時攪拌体からの排出液の噴流にて攪拌槽内の攪拌を行うとともに、攪拌槽の内底部に汚泥が沈殿堆積するのを防止するようにした攪拌機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の攪拌機は、攪拌槽内の攪拌流体中を、自らの比重変化により昇降ようにした攪拌機であって、攪拌槽内の攪拌流体中を浮上する際に、攪拌体からの排出液を噴射するようにした複数本のノズルを攪拌体の外周部に突設するように構成したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、攪拌体を、内部へ流体を給排可能としたタンク形とし、攪拌体内を貫通するガイド棒に導かれて昇降するように構成することができる。
【0008】
また、攪拌体に突設するノズルを、攪拌体の下部外周位置に放射方向に或いは斜め下方を向くように配置することができる。
【0009】
また、攪拌体の上部外周に、攪拌体の昇降時に受ける攪拌流体の流体抵抗にて攪拌体を回転させるうようにした回転駆動用の攪拌羽根を突設して構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の攪拌機によれば、攪拌槽内の攪拌流体中を、自らの比重変化により昇降ようにした攪拌機であって、攪拌槽内の攪拌流体中を浮上する際に、攪拌体からの排出液を噴射するようにした複数本のノズルを攪拌体の外周部に突設するように構成することにより、攪拌体から排出される排出液の噴流により攪拌槽内の攪拌液体が攪拌されるので、小エネルギでの攪拌が可能となる。
【0011】
また、攪拌体を、内部へ流体を給排可能としたタンク形とし、攪拌体内を貫通するガイド棒に導かれて昇降するようにすることにより、攪拌体を昇降させるための比重変化を、攪拌流体を給排水する簡易な方法で行うことができる。
【0012】
また、攪拌体に突設するノズルを、攪拌体の下部外周位置に放射方向に或いは斜め下方を向くように配置するようにすることにより、攪拌体から排出される排出液の噴流により攪拌槽内の攪拌が行われるとともに、槽の内底部付近の攪拌も行われるので汚泥が槽の内底部に沈殿堆積するのを防止することができる。
【0013】
また、攪拌体の上部外周に、攪拌体の昇降時に受ける攪拌流体の流体抵抗にて攪拌体を回転させるうようにした回転駆動用の攪拌羽根を突設するようにすることにより、比重変化にて攪拌体が昇降する際、攪拌羽根に攪拌流体の流体抵抗を受けて攪拌体が回転するため、攪拌羽根とノズルによる排出液の噴流との相乗効果にて、小エネルギでの効率的な攪拌が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の攪拌機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図2に、本発明の攪拌機の第1実施例を示す。
【0016】
一般に、下水処理、工事用排水等の処理において、土砂、汚泥などの固形不純物が含まれた汚泥水等の攪拌流体Wを処理する場合、攪拌流体Wを供給した攪拌槽内に凝集剤、殺菌剤等の薬剤を投入し、該攪拌槽内に配設した攪拌機Aを駆動することにより攪拌流体Wを攪拌して、所要の凝集、殺菌などの処理を行うようにしている。
【0017】
攪拌槽1内に配設する攪拌機Aは、攪拌槽1内に、望ましくは攪拌槽1内中央部にほぼ垂直になるように配設したガイド棒に導かれ、かつ内部の比重を変化させることでそれ自体で昇降するよう構成した内部が空洞の円筒タンク形の攪拌体2と、この攪拌体2の外周部に、望ましくは下部外周部に放射方向に突設し、攪拌体からの攪拌流体Wを排出噴射するようにした複数本のノズル3とから構成する。
【0018】
この攪拌体2は、図2に示すように、攪拌体本体の中央部に透孔21を穿設し、この透孔21内にガイド棒5を貫通するように形成する。このガイド棒5により、攪拌体2の上下方向(昇降方向)と回転方向以外の動きを拘束するが、これは攪拌槽1の上部に配設したガイド棒支持体6にて吊垂、立設等の方法で支持するようにする。
【0019】
攪拌体2の比重を変化させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌槽内に収容した攪拌流体Wの一部を攪拌体2内に出し入れ、即ち攪拌流体Wをタンク形の攪拌体2内に吸引するようにして供給することで攪拌機Aの比重を大として攪拌槽1内をその自重により自然と降下するように、また反対に攪拌体2内から攪拌流体Wを排出することで攪拌機Aの比重を小となるようにして上昇動作を行うよう制御する。
なお、この攪拌体内への攪拌流体Wの給排制御は、特に限定されるものではないが、例えば、ポンプと電磁弁(いずれも図示省略)との組み合わせにより、かつ攪拌体2の位置をセンサーなどにて検知して行うことができる。
この攪拌体2内には、ポンプと駆動エネルギ源(いずれも図示省略)とを備え、タンク状攪拌体2内への給排水により攪拌体2の比重を変化させるためのポンプを、内蔵する駆動エネルギ源、例えば、蓄電池(図示省略)より必要な電力の供給を受けて駆動するようにする。
このように、攪拌流体Wの給排制御にて攪拌体2の比重を変化させて昇降するようにすることで、高深度槽においても小動力で、攪拌流体Wの均一攪拌を効率的に、確実に行えるようにすることができる。
【0020】
この攪拌槽1は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、所要の内容積を有する立方体、矩形のほか、円形など、収容する攪拌流体Wの攪拌が行える形状を備え、図示省略したが必要に応じて該攪拌槽1内に攪拌する攪拌流体Wを供給し、かつ攪拌後の処理水を排水できるように構成するとともに、攪拌槽1の上部に攪拌体2を貫通したガイド棒5を支持するためのガイド棒支持体6を配設し、かつ該ガイド棒支持体6に、攪拌機Aを昇降可能に支持するためのガイド棒5を鉛直に吊り下げ、或いは支持できるようにする。
【0021】
これにより、攪拌体2が攪拌槽1内で昇降する際、このガイド棒5にて攪拌体2の上下移動の際の平面位置範囲が拘束されつつガイドされ、円滑に昇降できるようにし、かつ攪拌体2の昇降時、予め定めた定位置にて停止するように、電気回路にポンプの回転方向を切り替える切り替えスイッチやセンサー(いずれも図示省略)を配設して構成する。
なお、この攪拌槽1の上面は開口しているが、密閉式とすることも可能である。
【0022】
次に、この攪拌機Aの作用について説明する。
攪拌槽1内に攪拌流体Wを供給し、攪拌体2内のポンプを駆動することで、攪拌槽1内に攪拌流体Wの一部を吸引することとなり、この攪拌体内に吸引した流体wの量に応じて攪拌体内の空気aは圧縮される。この攪拌体2内の空気を収縮することで、空気(気体)aと流体wとの重量混入比率を変化させる。
これにより、攪拌流体の重量比が高くなり、平均比重が減少することで、攪拌体2の比重が重くなり、攪拌体2内には流体wが、図1(A)の空状態から、図1(B)に示すように充満するまで収容され、この流体wの充填量に応じて攪拌体2は攪拌槽1内をガイド棒5に沿って降下するようになる。
【0023】
そして、攪拌体2が槽底部へ到達したことを検知して攪拌体2内の流体wを各ノズル3を経て攪拌槽1内に排出する。この流体wの排出は、特に限定されるものではないが、例えば、電磁弁(図示省略)の解放、排出ポンプ(図示省略)の駆動にて行う。このノズル3からの流体wの排出は噴流となり、この噴流を用いて攪拌槽内の攪拌液体を攪拌するものとなる。
なお、この流体wを排出するための電磁弁の解放や或いはポンプの駆動は、予めタイマーで予め設定した時間が経過すると停止するようにすることも可能である。
【0024】
この攪拌体2内の流体wの排出で、攪拌体2内で圧縮収縮されていた空気aは再び膨張するようになり、攪拌体2の比重が変化、即ち比重が軽くなる。このため攪拌体2の浮力が大きくなり、攪拌体2に浮力が作用するようになって攪拌体2は攪拌槽1内をガイド棒5に沿って上昇するようになる。
このように、流体wの給排作用にて攪拌体2の比重を変化させるようにすることで攪拌体2を昇降(浮沈)させ、かつ攪拌体2の浮上時に流体wの排出噴流にて攪拌し、この動作を繰り返すことで攪拌槽1内全体を攪拌するものである。
【実施例2】
【0025】
また、図3〜図4に、本発明の攪拌機の第2実施例を示す。
この第2実施例は、第1実施例の攪拌体2に回転駆動力発生用の攪拌羽根4を配設し、、ノズルからの噴流と攪拌羽根4による攪拌との相乗効果にて効率的に流体wを攪拌するようにしたものである。
【0026】
この攪拌羽根4は、図3〜図4に示すように、攪拌体本体の上部外周面に複数枚突設するが、これは特に限定されるものではないが、例えば、図示の実施例では6枚の攪拌羽根4を、ほぼ等間隔で放射方向に突設するようにして設け、これにより攪拌体2がその内部への給水或いは排水により比重を変化させることにより昇降動作をする際、各攪拌羽根4に液体の抵抗力を受けて攪拌体2を、時計方向の正回転、或いは反時計方向の逆回転させるような形状に形成するようにする。なお、この攪拌羽根4の大きさ、形状、数は、攪拌槽の大きさ等に対応したものとする。
なお、この攪拌機Aのその他の構成及び基本的な作用は、上記第1実施例の攪拌機と同様である。
【0027】
以上、本発明の攪拌機について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の攪拌機は、攪拌体の比重を変化させることにより攪拌槽内流体中を昇降させるとともに、その上昇時(浮上時)攪拌体からの攪拌流体を排出噴射することで攪拌流体を攪拌し、槽内全体を均一攪拌するという特性を有していることから、下水処理場の反応槽(嫌気槽又は無酸素槽)の攪拌の用途に好適に用いることができるほか、例えば、ダム湖の攪拌、化学反応槽の攪拌、槽底部状況のセンシングマシン(槽底でセンシングしたデータを液上部で人が確認する)の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の攪拌機の第1実施例を示し、(A)は攪拌流体の未充填時を、また(B)は充填時を示す正面縦断面図である。
【図2】攪拌体の拡大外観斜視図である。
【図3】本発明の攪拌機の第2実施例を示す正面縦断面図である。
【図4】攪拌体の拡大外観斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 攪拌槽
2 攪拌体
3 ノズル
4 攪拌羽根
5 ガイド棒
6 ガイド棒支持体
A 攪拌機
a 空気
W 攪拌流体
w 攪拌体内の流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌槽内の攪拌流体中を、自らの比重変化により昇降ようにした攪拌機であって、攪拌槽内の攪拌流体中を浮上する際に、攪拌体からの排出液を噴射するようにした複数本のノズルを攪拌体の外周部に突設するように構成したことを特徴とする攪拌機。
【請求項2】
攪拌体を、内部へ流体を給排可能としたタンク形とし、攪拌体内を貫通するガイド棒に導かれて昇降するように構成したことを特徴とする請求項1記載の攪拌機。
【請求項3】
攪拌体に突設するノズルを、攪拌体の下部外周位置に放射方向に或いは斜め下方を向くように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の攪拌機。
【請求項4】
攪拌体の上部外周に、攪拌体の昇降時に受ける攪拌流体の流体抵抗にて攪拌体を回転させるうようにした回転駆動用の攪拌羽根を突設して構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の攪拌機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−320788(P2006−320788A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144058(P2005−144058)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】