説明

攪拌用要素および気体発生装置を備えた攪拌用アセンブリー

本発明は、液体を攪拌するための攪拌用要素(2)と、攪拌用要素(2)の下方または攪拌用要素(2)の側方で、空気などのガスを供給する気体発生装置(3または3’)とを備え、攪拌用要素により気体が噴霧される攪拌用アセンブリーに関する。気体発生装置(3;3’)は、フラッディング点を決定する臨界気体量の値に達するまで、気体発生装置(3;3’)が攪拌用要素(2)に下方から当該量の気体を供給するとともに、フラッディング点を超えたならば、気体発生装置(3;3’)は同時にフラッディング点を超える気体量を攪拌用要素(2)の側方で供給するように設計される。本発明の目的は、攪拌用要素(2)をフラッドから防ぐとともに、液体および気体の噴霧効果を向上させることにある。この目的のために、攪拌用要素(2)に関して下方および側方から、供給される気体の量で決まる、本発明による攪拌用アセンブリーにおける気体供給が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を攪拌するための攪拌用要素と、攪拌用要素の下方または攪拌用要素の側方で、空気などのガスを供給する気体発生装置とを備え、攪拌用要素により気体が噴霧される攪拌用アセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、特に、液体を攪拌するための気体発生による攪拌用要素として、攪拌用要素を使用することが記載されている。例えば空気などの気体が、液体に供給される。この気体発生による攪拌用要素において、気体は供給管によって供給され、供給管の口は攪拌用要素の攪拌軸の下方に設けられる。
【0003】
供給管の代わりとして、環形状の気体配送装置、いわゆるリングシャワーを、攪拌用要素の下方に配置することができる。リングシャワーは、外縁に沿って数個の開口を有しており、それらによって攪拌用要素に供給される気体は出て行くことができる。
【0004】
このタイプの気体発生による攪拌用要素を使用すると、攪拌用要素は、フラッディング点とも呼ばれる臨界気体量の値を超えた場合に、供給される気体の全量を噴霧することができなくなることが知られている。フラッディング点を超えると、気体発生装置によって供給される気体の一部が大きな泡の形で上昇し、液体への物質輸送に関与しなくなる。攪拌用要素は、液体と気体とが混ざりにくくなるので、その後に適切なポンピング作用をも提供できなくなる。このことは、特にこのタイプの気体発生による攪拌用装置を用いている連続的に作動する反応器にとって、既に存在する固体粒子が、その後底部に沈殿し得るので、不都合である。
【0005】
これらのフラッディング点を超えた場合の困難は、気体発生装置を側方や半径方向外方のある位置に設けられた攪拌用要素から気体を供給するように気体発生装置を構成することにより克服できる。周方向において一つまたは複数の管を配置することにより側方から気体を供給することができ、あるいは、攪拌用要素の外側にリングシャワーを配置することができる。それにより、攪拌用アセンブリーのフラッディングを防ぎ得るとともに、混合および懸濁効果を維持する。しかしながら、このことは、そのような攪拌用配置をフラッディング点以下で作動させた場合に、気体を攪拌用要素の外側から供給した場合よりも物質輸送が少ないことが原因で不利な噴霧効果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許公開第847799号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多量の気体に関してフラッディングを防ぐことに資するとともに、同時に物質輸送をも最適化する攪拌用要素および気体発生装置を備えた攪拌用アセンブリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、液体を攪拌するための攪拌用要素と気体発生装置とを備えた攪拌用アセンブリーであって、例えば空気などの気体を供給し、前記攪拌用要素により前記気体が噴霧され、前記気体発生装置は、フラッディング点を決定する臨界気体量の値に達するまで前記気体発生装置が前記攪拌用要素に下方から気体を供給するとともに、前記フラッディング点を超えたならば、前記気体発生装置はフラッディング点を超える気体量を側方から同時に供給するように構成されることを特徴とする、攪拌用アセンブリーが提供される。
【0009】
本発明による前記攪拌用要素の設計に関し、前記気体発生装置は、フラッディング限界値で決まる供給される気体量を意図的に制御することにより、フラッディング限界値以下で作動する場合には前記攪拌用要素の下方でその気体量を前記攪拌用要素に供給するとともに、フラッディング限界を超えた場合には、フラッディング限界を超える量の気体量を前記攪拌用要素の側方で前記気体発生装置にさらに供給するように作動する。それにより、本発明による攪拌用アセンブリーの設計は、フラッディング限界またはフラッディング点またはフラッディング限界値で決まる前記攪拌用要素に供給される気体の制御を可能にする。このアプローチは、前記攪拌用要素のフラッディングを防ぎ、かつそれゆえに連想される弊害や問題点をも除去するとともに、多量の気体、すなわち、フラッディング点の臨界気体量の値を超えた気体量であっても、全体として噴霧効果を最適化することを達成する。したがって、本発明による攪拌用アセンブリーは、供給および噴霧される気体量で決まる、別個のあるいは分かれて気体供給をする前記気体発生装置を提供する。
【0010】
本発明による好ましい形態によれば、前記攪拌用要素の下方および側方で気体を供給するための前記気体発生装置は、少なくとも一つまたは複数の管により形成されていてもよい。この形態では、気体は、前記攪拌用要素から軸方向および半径方向に離れて配置される一つまたは複数の管により前記気体発生装置を介して供給される。
【0011】
前記攪拌用アセンブリーの代替的な形態では、前記攪拌用要素の下方および側方で気体を供給するための前記気体発生装置は、リングシャワーにより形成されていてもよい。この形態では、環形状の気体配送装置が用いられ、それは、前記攪拌用要素から軸方向および半径方向に離れて配置されるとともに、それによって回転する前記攪拌用要素に気体を供給することにふさわしい開口を有する。
【0012】
本発明による他の形態では、一つまたは複数の管とリングシャワーとの組み合わせであって、全体的には、前記攪拌用要素から軸方向に離れて配置され、上記の一つまたは複数の管またはリングシャワーで構成される、下方から気体を供給するための前記気体発生装置が設けられるのに対して、側方で前記気体発生装置とともに気体を供給するための、前記攪拌用要素から半径方向に離れて配置される一つまたは複数の管または前記攪拌用要素から半径方向に離れて配置されるリングシャワーが設けられる、前記組み合わせを有利には含んでいてもよい。
【0013】
管またはリングシャワーの軸方向および/または半径方向位置は、ある限界内で変更することができる。このことは、請求項5および6において前記攪拌用要素およびその中心軸の外径について、より密接に記載されている。
【0014】
要約すると、本発明の攪拌用アセンブリーに関して重要なのは、効果的に前記攪拌用アセンブリーの前記攪拌用要素のフラッディング点を防ぐとともに、噴霧の間の気体から液体への最適な物質輸送を確保するために、前記気体発生装置が、全気体量の一部、つまりフラッディング点以下の量が下方から前記攪拌用要素に供給されるのに対し、残りの気体量が側方から前記攪拌用要素に供給されるように、供給される気体量で決まる気体を分けることである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による攪拌用要素および気体発生装置を備えた攪拌用アセンブリーの概略的な側面図である。
【図2】本発明による攪拌用要素および気体発生装置を備えた攪拌用アセンブリーの変形例の概略的な側面図である。
【図3】図1の形態における好ましい範囲指定とそれらの攪拌用要素および気体発生装置との関連を説明する図である。
【図4】図2の形態における好ましい範囲指定とそれらの攪拌用要素および気体発生装置との関連を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら説明するが、本発明を実施例のみに解釈したり、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0017】
以下の好ましい実施形態の説明では、同一または類似の要素には同じ参照符号を付す。
【0018】
図1は、通常は参照番号1が付された攪拌用アセンブリーの第1の形態を示す。攪拌用アセンブリー1は、概略図において示されるとともに参照番号2が付される攪拌用要素を含んでおり、攪拌用要素2は、欧州特許公開第847799号明細書により詳細に記載される方法により組み立てられている。また、攪拌用アセンブリー1は、番号3が付される気体発生装置を含んでおり、気体発生装置3は、例えば図1に示されるように、攪拌用要素2に噴霧するための気体が下方から攪拌用要素2に供給されるように、軸から離れて配置された一つまたは複数の管4(図1では一つのみが示されている)によって、構成されている。さらに、概略的に示されている一つまたは複数の管5では、それらによって気体発生装置3が、半径方向に離れた側方で供給される気体の流れの少なくとも一部を、攪拌用要素2に供給する。一重矢印は攪拌用要素2に回転方向を概略的に示すのに対し、二重矢印は攪拌用要素2からの流出方向を示す。
【0019】
図1に示される攪拌用アセンブリーは、攪拌用要素2の底側から軸方向に離れて配置された管4によって空気などの気体を、臨界気体量がフラッディング点またはフラッディング限界と称するものに達するまで供給するように構成されており、供給される気体は、攪拌用要素の噴霧領域における物質輸送に関与する。供給される気体量が攪拌用要素2のフラッディング限界を超えると、フラッディング限界を超える気体量が、攪拌用要素2の側方で攪拌用要素2から半径方向に離れて配置された一つまたは複数の管5によってさらに供給され、それによって、図1に示した攪拌用アセンブリーにおいて攪拌用要素2のフラッディングを効果的に防ぐとともに、フラッディング限界を超える気体量が液体を噴霧するための攪拌用要素2に最適に供給される。
【0020】
図2は、図1と同様に攪拌用要素2を含む、通常は参照番号1’が付された攪拌用アセンブリーを示す。図2の形態では、気体発生装置3’は、開口を有し、それによって回転する攪拌用要素2に気体を供給できる環形状の気体配送装置6および環形状の気体配送装置7によって、攪拌用要素2の下方からのみならず攪拌用要素2の側方からも気体が供給されるように構成されている。これらの環形状の気体配送装置6,7もまた、リングシャワーとして参照される。
【0021】
攪拌用要素の回転方向は図1および図2のいずれにおいても一重矢印により示されるのに対し、攪拌用要素2の流出方向は二重矢印により示される。図に基づく気体発生装置3’の手段もまた、フラッディング限界に至るまでの気体量が、軸方向に離れて配置されたリングシャワー6によって攪拌用要素2に供給されるとともに、フラッディング限界を超える気体量が、側方で半径方向に離れて配置されたリングシャワー7によって攪拌用要素2にさらに供給されるように構成されている。
【0022】
詳細には図示しないが、管4および5とリングシャワー6および7は、気体発生装置3および3’を設計する際に、それぞれ組み合わせることもできる。例えば、管4は下方から気体に供給してもよいし、側方に配置されるとともに外縁に沿って分割される複数の管5は側方から気体を供給するための攪拌用要素2と結合されてもよい。あるいは、気体発生装置3,3’はまた、気体が部分的に下方からリングシャワー6を介して供給される一方、気体が外縁に沿って分割された一つまたは複数の管5によって側方で供給されるように構成してもよい。あるいは、一つまたは複数の管4は、下方から攪拌用要素2に気体を供給してもよいのに対し、環形状の気体配送装置またはリングシャワー7は、側方で気体発生装置3,3’から気体を供給するために設けられる。気体発生装置3,3’および下方や側方の付随する供給装置の具体的な設計は、個々の状況や具体的な作動条件を考慮することにより選択してもよい。
【0023】
次に、図1に基づく攪拌用アセンブリー1における図1の気体発生装置3の設計基準の好ましい関係を、図3を参照しながらより詳細に説明する。攪拌用要素2の外径をdで示し、hが攪拌用要素2の軸方向高さであるのに対し、dRohrは図1における管4の外径を示す。攪拌用要素2の中心軸からの軸方向距離xはx=(0.1−5)dRohrの範囲内であり、好ましい範囲はx=(0.2−1)dRohrである。管5の中心軸から、図1において側方で気体発生装置3から気体を供給するための攪拌用要素2の外郭(outside contour)まで、で測定される半径方向距離yは、y=(0.03−0.5)dの範囲内であり、好ましくはy=(0.05−2)dの範囲内である。管5の開口における攪拌用要素2の中心軸と側方における気体供給との間の軸方向距離zは、好ましくはz=±(0−1)hの範囲内であり、より好ましくはz=±(0−0.75)hの範囲内である。
【0024】
図4では、図2の例における気体発生装置3’と攪拌用要素2との間の幾何学上の関係が記載されている。hは、再び図4における攪拌用要素2の軸方向高さを示す。dは、攪拌用要素2の外径を示す。底部気体供給のためのリングシャワー6の直径dR1は、好ましくはdR1=(0.3−1.2)dの範囲内であり、dR1に関してより好ましくはdR1=(0.5−1)dの範囲内である。攪拌用要素2の底部における軸方向距離xは、(0.03−0.5)dの範囲内であってもよく、好ましくはx=(0.05−2)dの範囲内であってもよい。側方における気体発生装置3’からの気体供給のためのリングシャワー7の平均半径dR2は、dR2=(1.05−2)dの範囲内であってもよく、好ましくはdR2=(1.1−1.5)dの範囲内であってもよい。zは、図2におけるリングシャワー7の中心軸と攪拌用要素2の中心軸との間の軸方向距離zを示す。この軸方向距離は、z=±(0−1)hの範囲内であることができ、z=±(0−0.75)hの範囲内であることができる。
【0025】
これらの例や範囲値は、概算的な値であり、絶対量ではないことが理解されるであろう。
【0026】
また、本発明は、好ましい実施形態を参照しながら説明した前記実施例や詳細に限定されず、必要であれば、ふさわしい実験により決定される特別な用途に応じて、行い得る多くの変更や修正が可能であることが理解される。本発明による攪拌用アセンブリー1,1’の重要な属性は、気体が攪拌用要素2のフラッディング限界程度まで攪拌用要素2の底側から供給されるのに対し、フラッディング限界を超える気体量が側方で気体発生装置3,3’から攪拌用要素2にさらに供給されるように、攪拌用要素2の下方および側方から気体が供給されることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌用要素(2)であり、その攪拌用要素(2)の下方または前記攪拌用要素(2)の側方で、空気などのガスを供給する気体発生装置(3または3’)内の液体を攪拌するための攪拌用要素(2)を有する攪拌用アセンブリーであって、前記攪拌用要素(2)により前記気体が噴霧されるものにおいて、前記気体発生装置(3または3’)は、フラッディング点を決定する臨界気体量の値に達するまで前記気体発生装置(3または3’)が前記攪拌用要素(2)に下方から気体を供給するとともに、前記フラッディング点を超えたならば、前記気体発生装置(3または3’)はフラッディング点を超える気体量を側方から同時に供給するように構成されることを特徴とする、攪拌用アセンブリー。
【請求項2】
前記攪拌用要素(2)の下方および側方から気体を供給するための前記気体発生装置(3)は、少なくとも一つまたは複数の管(4,5)により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌用アセンブリー。
【請求項3】
前記攪拌用要素(2)の下方および側方から気体を供給するための前記気体発生装置(3)は、環形状の気体配送装置またはリングシャワー(6,7)により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌用アセンブリー。
【請求項4】
前記攪拌用要素(2)の下方から気体を供給するための気体発生装置(3)は一つまたは複数の管(4)およびリングシャワー(6)のいずれかにより形成されるとともに、前記気体はリングシャワー(7)および一つまたは複数の管(5)のいずれかによって前記攪拌用要素(2)の側方で供給されることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌用アセンブリー。
【請求項5】
前記攪拌用要素(2)の外径をd、前記攪拌用要素(2)の軸方向高さをh、および前記管(4)の直径をdRohrとした場合において、前記攪拌用要素(2)の中心軸から前記管(4)の開口の軸方向距離xはx=(0.1−5)dRohrの範囲内、好ましくはx=(0.2−1)dRohrの範囲内であり、前記攪拌用要素(2)の外郭(outside contour)から前記管(5)の中心軸の半径方向距離yはy=(0.03−0.5)dの範囲内および好ましくはy=(0.05−2)dの範囲内であり、かつ前記管(5)の開口における前記攪拌用要素(2)の半径方向中心軸への軸方向距離zはz=±(0−1)hの範囲内、好ましくはz=±(0−0.75)hの範囲内であることを特徴とする、請求項2に記載の攪拌用アセンブリー。
【請求項6】
前記攪拌用要素(2)の外径をdとし、かつ前記攪拌用要素の軸方向寸法をhとした場合において、前記気体発生装置(3’)の底部気体供給のためのリングシャワー(6)の平均直径dR1はdR1=(0.3−1.2)dの範囲内および好ましくはdR1=(0.5−1)dの範囲内であり、前記気体発生装置(3)の前記攪拌用要素(2)の底側からの軸方向距離はx=(0.03−0.5)dの範囲内、好ましくはx=(0.05−2)dの範囲内であり、側方で前記気体発生装置(3’)から気体を供給するための前記リングシャワー(7)の平均直径dR2はdR2=(1.05−2)d、好ましくはdR2=(1.1−1.5)dの範囲内であるとともに、前記攪拌用要素(2)の中心軸と前記リングシャワー(7)の中心軸との間の軸方向距離zはz=±(0−1)hの範囲内、好ましくはz=±(0−0.75)hの範囲内であることを特徴とする、請求項3に記載の攪拌用アセンブリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−515561(P2010−515561A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545061(P2009−545061)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000030
【国際公開番号】WO2008/083673
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(595009408)エカト・リュール・ウント・ミッシュテヒニック・ゲー.エム.ベー.ハー (3)
【氏名又は名称原語表記】EKATO Ruhr− und Mischtechnik GmbH
【Fターム(参考)】