説明

攪拌脱泡方法および攪拌脱泡装置

【課題】 高真空化を実現することで、従来よりも高精度に攪拌脱泡することができる攪拌脱泡方法および攪拌脱法装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 被混練物Kの攪拌脱泡方法であって、被混練物Kを収容した容器15を公転させて被混練物Kに遠心力を作用させる第1工程と、被混練物Kに遠心力が作用した状態で容器15内の圧力を400Pa以下、好ましくは66Pa以下まで下げて被混練物Kの脱泡を行う第2工程と、を有するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空式の攪拌脱泡方法および攪拌脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被混練物を収容した容器を容器ホルダに保持して公転させながら、その公転軌道上で自転させるように構成した攪拌脱泡装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の攪拌脱泡装置においては、容器の公転によって働く遠心力により容器内の内壁に被混練物を押し付けて、被混練物に内在する気泡を外部に放出すると共に、容器の自転運動によって容器内の被混練物を攪拌するようになっている。具体的には、容器の公転速度が大きいと被混練物の脱泡性能が良くなり、自転速度が大きいと攪拌性能が良くなることが明らかになっている。
【0003】
特許文献1に記載の攪拌脱泡装置を常圧下で用いると、脱泡性能は、被混練物の物性、自転の回転速度、公転の回転速度などで変化するものの、金、銀、半田ペースト、歯科用印象材(アルギン酸)などでは、実用上充分な脱泡性能であることが認められる。しかし、気泡について詳細に観察すると、残存する気泡の直径が小さくなっていて、その分布が数百μm以下に偏っている。従って、ミクロン、サブミクロンレベルの気泡が問題となるようなアプリケーションにおいては不都合が生じていた。
【0004】
そこで、真空下(0.5〜50Torr)で容器を自転および公転させることで、被混練物を攪拌脱泡する方法および装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。被混練物に真空圧をかけると、被混練物に内在する微細な気泡が膨張、発泡して、被混練物との分離を促進させることができるので、短時間かつ高精度の脱泡が容易に促進される。
【0005】
つまり、回転速度等他の条件を同一とした場合においては、より高真空にするほど、被混練物に内在する気体分子の量は減少すると考えられる。
【特許文献1】特開平10−43568号公報(段落0013〜0023、図1)
【特許文献2】特開平11−104404号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、真空度が高すぎると被混練物が沸騰して、新たな泡の発生を招くとともに物性が変化するため、現実的には、超高真空化することができなかった。例えば、材料メーカ等においては、一般的に、400Pa(≒3Torr)以下の高真空環境で、材料である被混練物を処理することはタブーとされていた。また、特許文献2に記載されている通り、従来の攪拌脱泡処理においても、67Pa(≒0.5Torr)以下には真空引きすることができなかった。従って、現段階では400Paを限界とした真空度でしか脱泡処理を行うことができず、それで消滅しない微細な気泡の残存は許容せざるを得なかった。
【0007】
一方、沸騰は、被混練物の蒸気圧が外圧より高くなったときに起こるものであることが知られている。つまり、外圧を操作(高く)することで、被混練物の沸騰を抑制することができるため、一層の高真空化が可能になると考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、高真空化を実現することで、従来よりも高精度に攪拌脱泡することができる攪拌脱泡方法および攪拌脱泡装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願出願人は、容器の公転により被混練物に働く遠心力に着目し、被混練物を高精度に攪拌脱泡することを目的として鋭意検討した。
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、攪拌脱泡方法であって、被混練物を収容した容器を公転させて前記被混練物に遠心力を作用させる第1工程と、前記被混練物に遠心力が作用した状態で前記容器内の圧力を400Pa以下まで下げて前記被混練物の脱泡を行う第2工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、容器に公転のみの回転を与えることで、被混練物に大きな遠心力が擬似的な外圧として加わるため、従来の限界を超える400Pa以下まで圧力を下げても(真空度を高めても)、被混練物の沸騰を招来しない。そして、このように容器を公転させるとともに高真空化することで、脱泡が行われる。つまり、攪拌脱泡工程において、容器を(自転させることなく)公転のみさせることで、従来不可能であった高真空環境に被混練物を晒すことが可能になり、この高真空環境と遠心力による作用とが相俟って、高精度な脱泡が可能となった。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の攪拌脱泡方法において、前記第2工程で前記容器内の圧力を66Pa以下まで下げて前記被混練物の脱泡を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、66Pa以下まで容器内の圧力を下げて真空度を高めるため、より高精度な脱泡作用が得られる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の攪拌脱泡方法において、前記容器内の圧力が66Pa以下に下がった後に前記容器を自転させる第3工程を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、請求項1に係る発明による作用に加え、容器に自転を加えることで、被混練物の攪拌脱泡が促進される。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項3に記載の攪拌脱泡方法において、前記被混練物は、封止用ペースト材であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項3に記載の攪拌脱泡方法において、その被混練物の対象を具体的に特定したものである。封止用ペースト材は、その用途のため、微細な気泡の残存が問題になる。請求項4に係る発明によれば、このような封止用ペースト材の攪拌脱泡が高精度に行われる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の攪拌脱泡方法において、前記第2工程で前記混練物にかかる遠心力は、3000m/s2以上であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の攪拌脱泡方法において、その容器にかかる遠心力を具体的に特定したものである。遠心力が無い状態または低い状態で真空度を高めると被混練物の沸騰を招くおそれがある。請求項5に係る発明によれば、被混練物に充分な遠心力が作用するため、高真空化に起因する沸騰が抑えられて、被混練物の変性が防止される。
【0019】
請求項6に係る発明は、被混練物を収容する容器と、この容器を回転自在に軸支する公転テーブルと、前記公転テーブルを回転自在に支持する支持部材と、前記容器を前記公転テーブル上で自転させる自転用回転駆動機構と、前記公転テーブルを回転させることで前記容器を公転させる公転用回転駆動機構と、前記容器内を減圧するための真空ポンプと、前記容器の公転および自転と前記容器内の圧力を制御する制御部とを備える攪拌脱泡装置であって、前記制御部は、前記容器を公転させて前記被混練物に遠心力が作用した状態で、前記容器内の圧力を400Pa以下まで下げるように制御することを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の攪拌脱泡方法を実現する装置である。請求項6に係る発明によれば、公転テーブルを公転用回転駆動機構で回転させることで、容器を公転させ、容器内の被混練物に遠心力を働かせる。そして、この状態で、容器内の圧力を400Pa以下まで下げる。これにより、被混練物には、遠心力と高真空環境による作用が相俟って高精度な脱泡が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の攪拌脱泡方法によれば、従来不可能であった高真空環境に被混練物を晒すとともに、遠心力による作用が相俟って、被混練物の脱泡を高精度に行うことができる。また、このように高精度な脱泡を行った後、容器を自転させることで、従来どおり、充分な攪拌も行うことができる。また、本発明の攪拌脱泡装置によれば、前記攪拌脱泡方法を実現することができ、被混練物を高精度に攪拌脱泡することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の攪拌脱泡方法を行う攪拌脱泡装置の縦断面図である。
本実施形態では、被混練物として、例えば、封止用ペースト材を想定して説明するが、この被混練物は特に限定されるものではなく、あらゆる材料を対象とすることができる。
【0023】
まず、本発明に係る攪拌脱泡方法を行う攪拌脱泡装置について説明する。
図1に示すように、攪拌脱泡装置1は、筺体11、支持部材12、モータ13、公転テーブル14、容器15、吸引管16、減圧手段17、自転力付与軸18、自転力伝達軸19、支軸20、電磁ブレーキ21(制動手段)、制御部(図示せず)と、を主に有し、その他、ばね22、バランス錘取付部23等を有している。攪拌脱泡装置1は、容器15を所定軌道上で公転運動させつつ自転運動させ、容器15に収容された被混練物Kを攪拌脱泡するものである。図1においては、容器15を公転運動させるときの公転軸を符号Y1で表し、自転運動させるときの自転軸を符号Y2で表す。
【0024】
支持部材12は、複数のバネ22を介して筺体11内に水平に保持されている。支持部材12には、紙面右側にモータ13の回転軸13bを挿通するためのモータ貫通孔12aと、紙面中央に円筒状の公転テーブル固定部12bとが形成されており、モータ貫通孔12a近傍にモータ13、公転テーブル固定部12bに公転テーブル14が取り付けられている。複数のバネ22により、モータ13および公転テーブル14等の回転に伴う励起振動が吸収され、筺体11には伝達されないようになっている。
【0025】
モータ13は、支持部材12の上面側に固定されるモータ本体13aと、このモータ本体13aから支持部材12のモータ貫通孔12aを貫通して下面側に突出する回転軸13bとからなる。回転軸13bの先端には回転軸13bと同期して回転するプーリP1が固定されている。
【0026】
公転テーブル14は、公転テーブル固定部12bを貫通した状態で、公転テーブル固定部12bにベアリングb1を介して回転自在に軸支されている。公転テーブル14の下部には、プーリP2が固定されている。このプーリP2と前記プーリP1の間には、ベルトV1が掛け渡されており、モータ13の回転が、プーリP1およびベルトV1を介してプーリP2に伝達されることで、公転テーブル14を回転させる。これらのプーリP1、ベルトV1、プーリP2等が[特許請求の範囲]の「公転用回転駆動機構」に相当する。また、公転テーブル14には、公転中心を貫通する貫通孔14aと、この貫通孔14aに傾斜するように設けられる貫通孔14bと、この貫通孔14bより外周側、かつ、貫通孔14bと平行な貫通孔14cとが形成されるとともに、その上面側には、容器15、バランス錘取付部23等が配置されている。
【0027】
容器15は、容器本体15a、この容器本体15aの開口を閉蓋する上蓋15b、容器本体15aと上蓋15bを密閉するOリング15c、容器本体15a内に収容される試料ホルダ15dとから構成されている。
【0028】
容器本体15aは、上部が開口した有底円筒形状に形成され、その開口部の縁に形成された溝に前記Oリング15cが配設される。上蓋15bの下面周縁部と容器本体15aの開口側端面とは、Oリング15cを介して圧接されることで、両者間がシールされる。これにより、容器15内における内部の密閉状態が保たれる。
【0029】
試料ホルダ15dは、内部に被混練物Kを収容し、容器本体15aに対して自転軸Y2周りに相対回転しないように、かつ、嵌脱自在に容器本体15a内に収容される。容器本体15aに嵌脱自在とすることで、被混練物Kの混練脱泡作業の終了後、試料ホルダ15dごと次の工程に移すことができる。そして、一回使用した試料ホルダ15dは、洗浄して繰り返し使用することもできるし、使い捨てることもできる。
【0030】
吸引管16は、容器15内を真空引きするために設けられるもので、容器15の上蓋15bにおける自転軸Y2上に一端16aが接続されている。また、他端16bは、筺体11における公転軸Y1上に形成されたホース引出孔11aに、磁性流体シール24を介して固定されている。磁性流体シール24を介することで、超高圧真空においての真空度(例えば1.3×10-6Pa(=10-8Torr))も保持可能になる。
【0031】
減圧手段17は、筺体11外に設けられるもので、接続管17a、真空ポンプ17b、真空度を測定する真空計17c、接続管17aに設けられる遮断弁17dおよびリーク弁17eとから構成されている。接続管17aは、真空ポンプ17bと吸引管16を接続しており、これにより、容器15内を真空ポンプ17bで真空引きすることができる。
【0032】
自転力付与軸18、自転力伝達軸19、支軸20、および、電磁ブレーキ21は、容器15を自転軸Y2周りに回転させるための自転用回転駆動機構である。
自転力付与軸18は、公転テーブル14の回転中心に形成された貫通孔14aにベアリングb2を介して回転自在に軸支されている。自転力付与軸18の下端部には後記する電磁ブレーキ21が設けられ、上端部に傘歯車である自転用ギアG1が固定されている。
【0033】
自転力伝達軸19は、公転テーブル14の貫通孔14bにベアリングb3を介して回転自在に軸支されている。自転力伝達軸19の上端部には、前記自転用ギアG1と噛合する傘歯車である自転用ギアG2が固定され、下端部には自転用ギアG3が固定されている。
【0034】
支軸20は、公転テーブル14の貫通孔14cにベアリングb4を介して回転自在に軸支されている。支軸20の下端部には、前記自転用ギアG3と噛合する自転用ギアG4が固定され、その上端部には、前記容器15が固定されている。支軸20の上端側は内傾しており、これにより、容器15の自転軸Y2は、公転軸Y1に対して一定角度で内傾する。自転軸Y2が内傾していることで、容器15の公転により、図1に示すように被混練物Kの液面がせり上がっても、試料ホルダ15dからはみ出し、容器本体15a内に溢れることがない。
なお、自転用ギアG1と自転用ギアG2、自転用ギアG3と自転用ギアG4の歯数は適宜設定することができるものとする。
【0035】
電磁ブレーキ21は、自転力付与軸18を制動するためのもので、支持部材12に取り付けられた取付部材21aに固定されている。電磁ブレーキ21は、電磁石、リンク機構、自転力付与軸18を付勢するバネ等で構成された励磁作動形のブレーキである。電磁石は通電すると(ON状態)、自転力付与軸18はバネの力で制動され、支持部材12と相対回転不能になる。電磁石への通電を止めると(OFF状態)、自転力付与軸18は制動が解放され、回転可能になる。
【0036】
このように構成された自転用回転駆動機構において、電磁ブレーキ21がON状態であるときは、自転力付与軸18は回転不能になっている。このとき、公転テーブル14が、例えば回転速度xで回転すると、自転力付与軸18が公転テーブル14に対して回転速度xで相対的に回転することになる。また、自転力付与軸18の回転は、自転力伝達軸19、支軸20を介して容器15に対し伝達される。即ち、容器15は、前記公転テーブルの回転と同一の回転速度xで、かつ、回転方向が逆となるように、公転テーブル14に対して回転(自転)する。
【0037】
一方、電磁ブレーキ21がOFF状態であるときは、自転力付与軸18は回転可能になっている。このとき、公転テーブル14が回転すると、その回転に合わせて、支軸20、自転力伝達軸19、自転力付与軸18が従動回転するため、容器15は、公転テーブル14に対して回転(自転)しない。
【0038】
制御部(図示せず)は、モータ13および電磁ブレーキ21を駆動させ、容器15の自転・公転を制御するとともに、減圧手段17を制御し、容器15内の真空圧を制御するものである。
【0039】
バランス錘取付部23は、公転軸Y1を中心として、公転テーブル14における容器15の対称位置に設けられている。バランス錘取付部23は、公転テーブル14の径方向に沿って設けられたネジ部材23aと、このネジ部材23aに螺合したバランス錘23bとから構成され、バランス錘23bを径方向に移動させることで、公転テーブル14上での重量バランスをとっている。
【0040】
次に、図1および図2を適宜参照しながら、攪拌脱泡装置1の動作を説明しつつ、この攪拌脱泡装置1を用いて行う攪拌脱泡方法について説明する。図2は、攪拌脱泡工程を説明するフローチャートである。
【0041】
まず、被混練物Kを収容した試料ホルダ15dを容器本体15aに設置するとともに、電磁ブレーキ21をOFF状態にしておく(図2のステップS1)。そして、制御部で、モータ13を駆動し、その回転を、プーリP1、ベルトV1、プーリP2を介して公転テーブル14に伝達することで、公転テーブル14を回転させる(図2のステップS2)。これにより、容器15を公転軸Y1周りに公転させる。このとき、容器15の公転速度を例えば、1000rpm以上とする。これにより、被混練物Kには、3000m/s2以上の遠心力が加わる。なお、本実施形態では、公転速度を1000rpm以上としたが、この公転速度は限定されるものではなく、容器15内の被混練物Kに充分な遠心力を作用させる速度であれば適宜設定変更することができる。
【0042】
そして、回転速度が所定値以上になったか否かを判定し(図2のステップS3)、所定値に達していない場合は(図2のステップS3でNo)、再度判定を繰り返す。一方、回転速度が所定値以上になった場合は(図2のステップS3でYes)、制御部は容器15を公転させた状態で、容器15内を真空ポンプ17bで減圧する(図2のステップS4)。容器15内の真空度は一定タイミングごとに真空計17cで検出され(図2のステップS5)、制御部は、検出値が所定値以下、例えば、400Pa以下になったか否かを判定する(図2のステップS6)。なお、所定値は特に限定されるものではなく、400Pa以下の値に設定されるものであればどのような値であってもよい。好ましくは、66Pa、さらには、50Paで、これにより、一層好適な脱泡効果が得られる。
【0043】
そして、検出値が所定値より高い場合(図2のステップS6でNo)は、ステップS3に戻り、容器15の減圧を続ける。検出値が所定値以下になったら(図2のステップS6でYes)、容器15の自転を開始する(図2のステップS7)。具体的には、電磁ブレーキ21をON状態にすることで、容器15が公転テーブル14に対して自転する。このときの自転速度は、例えば、600rpmとする。なお、この自転速度も適宜設定変更可能である。
【0044】
そして、所定時間(例えば5分間)が経過するまで容器15を公転させつつ自転させ(図2のステップS8)、所定時間が経過したら(ステップS8でYes)、モータ13を停止させる。そして、攪拌脱泡作業を終了する。
【0045】
これにより、容器15の公転によって働く遠心力で、被混練物Kが試料ホルダ15dの内壁に押し付けられ、被混練物に内在する気泡が外部に放出(脱泡)される。また、容器15を400Pa(好ましくは66Pa)以下まで減圧すると、被混練物Kに内在する微細な気泡が膨張、発泡して、被混練物Kとの分離が促進される。つまり、容器15を公転させながら400Pa(好ましくは66Pa)以下まで真空引きすることで、高精度な脱泡が行われる。さらに、容器15の自転によって被混練物Kが攪拌(混練)される。
【0046】
本実施形態に係る攪拌脱泡方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、容器15に公転のみの回転を与えることで、被混練物Kに大きな遠心力が加わるため、従来の限界を超える400Pa(好ましくは66Pa)以下まで圧力を下げても(真空度を高めても)、被混練物の沸騰を招来しない。そして、このように容器15を公転させるとともに高真空化することで、脱泡が行われる。つまり、攪拌脱泡工程において、容器15を公転させることで、従来不可能であった高真空環境に被混練物を晒すことが可能になり、この高真空環境と遠心力による作用とが相俟って、高精度に脱泡することができる。
【0047】
また、容器15を自転させることで、被混練物Kを従来どおり攪拌することもできる。これにより、高精度な攪拌脱泡が促進される。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施することができる。
本発明に係る攪拌脱泡方法を実施する装置は、前記攪拌脱泡装置1に限定されない。
前記実施形態においては、容器15に回転を伝達する回転伝達機構として、ギアを用いた攪拌脱泡装置1を用いたが、例えば、ギアの代わりにプーリ等を用いた攪拌脱泡装置を使用してもよい。
【0049】
前記実施形態においては、1つのモータ13で、容器15の自転運動・公転運動を実現したが、自転用と公転用のモータをそれぞれ別個に設けた攪拌脱泡装置を用いることもできる。これによれば、自転または公転速度を任意に変更することができる。つまり、公転テーブル14と容器15の回転比は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の攪拌脱泡方法を行う攪拌脱泡装置の縦断面図である。
【図2】攪拌脱泡工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 攪拌脱泡装置
Y1 公転軸
Y2 自転軸
11 筺体
12 支持部材
13 モータ
14 公転テーブル
15 容器
16 吸引管
17 減圧手段
18 自転力付与軸
19 自転力伝達軸
20 支軸
21 電磁ブレーキ
24 磁性流体シール
K 被混練物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練物を収容した容器を公転させて前記被混練物に遠心力を作用させる第1工程と、前記被混練物に遠心力が作用した状態で前記容器内の圧力を400Pa以下まで下げて前記被混練物の脱泡を行う第2工程と、を有することを特徴とする攪拌脱泡方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記容器内の圧力を66Pa以下まで下げて前記被混練物の脱泡を行うことを特徴とする請求項1に記載の攪拌脱泡方法。
【請求項3】
前記容器内の圧力が66Pa以下に下がった後に前記容器を自転させる第3工程を有することを特徴とする請求項2に記載の攪拌脱泡方法。
【請求項4】
前記被混練物は、封止用ペースト材であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の攪拌脱泡方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記被混練物にかかる遠心力は3000m/s2以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の攪拌脱泡方法。
【請求項6】
被混練物を収容する容器と、
この容器を回転自在に軸支する公転テーブルと、
前記公転テーブルを回転自在に支持する支持部材と、
前記容器を前記公転テーブル上で自転させる自転用回転駆動機構と、
前記公転テーブルを回転させることで前記容器を公転させる公転用回転駆動機構と、
前記容器内を減圧するための真空ポンプと、
前記容器の公転および自転と前記容器内の圧力を制御する制御部と
を備える攪拌脱泡装置であって、
前記制御部は、前記容器を公転させて前記被混練物に遠心力が作用した状態で、前記容器内の圧力を400Pa以下まで下げるように制御することを特徴とする攪拌脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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