支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置
【課題】 主桁のジャッキアップ操作を不要にできるようにする。
【解決手段】 主桁4,5,6のフルウェブ部の所要個所の下面にソールプレート23を取り付ける。ソールプレート23下方の増設横梁14上に台座11を介して支承本体22を設け、支承本体22の上沓22aの上面とソールプレート23の下面との間に間詰め材充填空間部24を形成させる。間詰め材充填空間部24に無収縮モルタル25を充填し、硬化させることで、増設横梁14と主桁4,5,6との間に、両者の間隔に一致する上下寸法を有する取替用支承装置21を形成させる。その後、既設の支承装置10を徐々に切断することで、主桁4,5,6の荷重を既設の支承装置10から新設した取替用支承装置21へ徐々に盛替え、しかる後、既設の支承装置10を撤去させる。
【解決手段】 主桁4,5,6のフルウェブ部の所要個所の下面にソールプレート23を取り付ける。ソールプレート23下方の増設横梁14上に台座11を介して支承本体22を設け、支承本体22の上沓22aの上面とソールプレート23の下面との間に間詰め材充填空間部24を形成させる。間詰め材充填空間部24に無収縮モルタル25を充填し、硬化させることで、増設横梁14と主桁4,5,6との間に、両者の間隔に一致する上下寸法を有する取替用支承装置21を形成させる。その後、既設の支承装置10を徐々に切断することで、主桁4,5,6の荷重を既設の支承装置10から新設した取替用支承装置21へ徐々に盛替え、しかる後、既設の支承装置10を撤去させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁橋の橋脚と各主桁との間に介在させて設けて該各主桁の荷重を橋脚へ伝えて支持させるようにしてある支承装置のように、所要の支持構造物と、その上方に載置する被支持構造物との間に介在させて設けて該被支持構造物の荷重を上記支持構造物へ伝えて支持させるようにしてある既設の支承装置を、新規の支承装置に取り替えるために用いる支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼橋の形式の1つに、多主I桁橋があり、この種の多主I桁橋の一例としては、たとえば、首都高速道路等の都市部の高架橋で用いられている図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示す如き3主I桁橋がある。
【0003】
これは、橋幅方向の両側に立設した一対の脚柱2と、橋幅方向に延びてその両端部を上記各脚柱2にそれぞれ一体に取り付けた横梁3とからなる門型の鋼製橋脚1を備えている。
【0004】
更に、I桁からなる3本の主桁4,5,6を、橋幅方向に所要間隔で配置して、該各主桁4,5,6のうち、橋幅方向両端部の各主桁(以下、外主桁と云う)4,6の桁端はフルウェブとすると共に、橋幅方向中央部の主桁(以下、中主桁と云う)5の桁端には下部側に切欠き部7が設けてある。且つ上記中主桁5における上記切欠き部7の上側の桁端より所要寸法離れた桁端縁部所要個所の両側面と、その両側に位置する上記各外主桁4,6の桁端より所要寸法離れた桁端縁部所要個所の上部内側面とを、橋幅方向に延びる横桁(以下、端横桁と云う)8を介しそれぞれ一体に接続した構成として、上記中主桁5の切欠き部7が設けてある桁端と、上記各端横桁8の橋幅方向の外側端部寄り位置とを、上記鋼製橋脚1の横梁3の各橋軸方向面の下部に突設した桁受けブラケット9a,9b,9cの上側に、支承装置10を介在させて支持させた構成としてある。
【0005】
上記各支承装置10は、図9に示す如く、通常、上記各桁受けブラケット9a,9b,9c上に設置した台座11と、該各台座11上に取り付けた支承本体(シュー)12と、上記中主桁5の切欠き部7が設けてある桁端の下面、及び、上記各端横桁8の下面にて上記各支承本体12の真上となる所要個所にそれぞれ取り付けたソールプレート13とを備えて、該各ソールプレート13を、上記各支承本体12の上沓12aに図示しないセットボルトを介して連結した構成としてある。
【0006】
かかる構成としてあるI桁橋によれば、上記鋼製橋脚1の横梁3に、上記各主桁4,5,6を、該横梁3の上下寸法内で受けさせることができるため、上記横梁3の上下端部の高さ位置と、上記各主桁4,5,6の上下端部の高さ位置を揃えることができて、建築限界等により桁高制限を受ける場合に有利な構成とすることができるようにしてある。なお、図8(イ)(ロ)(ハ)では図示する便宜上、上記鋼製橋脚1の横梁3及び各主桁4,5,6の上側に設ける床版の記載を省略してある。(以後の図も同様。)
ところで、近年、上記図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示した如き構成を有するI桁橋では、老朽化に伴う各支承装置10の支承本体12の機能の劣化や、支承周りの損傷が指摘されてきている。
【0007】
そのために、既設の各支承装置10の取り替えによる機能回復を図ると共に、支承周りの補強を行う改修方法として、いわゆる主桁フルウェブ化工事が従来行われている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0008】
上記主桁フルウェブ化工事は、たとえば、図10(イ)(ロ)乃至図12(イ)(ロ)(ハ)の手順で行うようにしてある。すなわち、先ず、図10(イ)(ロ)に示す如く、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様の構成としてあるI桁橋における鋼製橋脚1の横梁3の下側に、橋軸方向に各主桁4,5,6の桁端縁部の下方位置まで延びる幅広の増設横梁14を配置して、その上端部を上記横梁3の下端部に一体に取り付けると共に、該増設横梁14の橋幅方向の両端部を、両脚柱2にそれぞれ一体に固定する。更に、上記増設横梁14の各橋軸方向面における上記各主桁4,5,6の真下となる位置には、個別のジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを、上記中主桁5のウェブがフルウェブとなっている部分と対応する支間中央側位置まで橋軸方向に沿って突出するようにそれぞれ仮設する。
【0009】
次に、図11(イ)(ロ)(ハ)に示すように、上記増設横梁14の各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15c上に設置したジャッキ16をそれぞれジャッキアップして、該各ジャッキ16の上側に上記各主桁4,5,6の下フランジをそれぞれ受けることで、該各主桁4,5,6に作用している荷重を、上記各ジャッキ16及び各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを介し上記増設横梁14へ伝えて支持させるようにする。
【0010】
次いで、上記のようにして、各主桁4,5,6に作用している荷重を各ジャッキ16及び各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを介して上記増設横梁14に受けさせると、上記鋼製橋脚1の横梁3の各橋軸方向面に設けてある各桁受けブラケット9a,9b,9c及びその上側の各支承装置10には、上記各主桁4,5,6からの荷重が作用しなくなるため、この状態で、上記横梁3より上記既設の各桁受けブラケット9a,9b,9c及び既設の各支承装置10を撤去する。
【0011】
その後、上記中主桁5の切欠き部7の周りに設けてあった下フランジを切除してから、図12(ロ)に示すように、該中主桁5の桁端を受けていた桁受けブラケット9b及び支承装置10が撤去された空間にて、上記中主桁5の残存するウェブに、該ウェブの切り欠かれた部分に嵌合可能な所要形状のフルウェブ化補強部材17を接合して、中主桁5の桁端をフルウェブ化する。更に、上記フルウェブ化された中主桁5の桁端における上記増設横梁14の上方で且つ後述する新規の支承装置19の上方に配される位置には、ウェブの下端から上端付近まで上下方向に延びる支点上補剛材18を、ウェブ両側面と下フランジにリブ状に取り付けて補強すると共に、該支点上補剛材18の橋軸方向の両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、更に補強用のリブ20をそれぞれ取り付ける。同様に、図12(ハ)に示すように、上記各外主桁4,6の桁端における上記増設横梁14の上方で且つ後述する新規の支承装置19の上方に配される位置にも、支点上補剛材18をウェブ両側面と上下フランジにリブ状に取り付けて補強し、その橋軸方向両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、更に補強用のリブ20をそれぞれ取り付ける。
【0012】
上記のようにして中主桁5の桁端のフルウェブ化が終了した後は、図12(イ)(ロ)(ハ)に示すように、上記増設横梁14における各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置の真下となる所定個所に、図9に示した既設支承装置10と同様の図示しない台座、支承本体、ソールプレートからなる構成の新規支承装置19をそれぞれ設けてから、上記各ジャッキ16をジャッキダウンすることにより、上記各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置を、上記各新規支承装置19を介して上記増設横梁14に支持させるようにして、既設の支承装置10の新規の支承装置19への取り替えと支承周りの補強の工事を終了する。
【0013】
しかる後、上記各ジャッキ16と増設横梁14に仮設してある各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cをそれぞれ撤去し、更に、必要に応じて、上記既設の各端横桁8の移設や取り替え等を行うようにしてある。
【0014】
【非特許文献1】下里哲弘,「首都高速道路の若返り作戦」,JSSC会誌,社団法人日本鋼構造協会,2003年10月,No.50,p.1−10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、上記図10(イ)(ロ)乃至図12(イ)(ロ)(ハ)に示した従来の支承装置の取替工法では、鋼製橋脚1の横梁3に設けた桁受けブラケット9a,9b,9c上の既設の支承装置10に直接あるいは端横桁8を介して支持された各主桁4,5,6の当初の上下方向位置と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14上に新規の各支承装置19を介して各々支持させる各主桁4,5,6の上下方向位置が一致するように、上記新規の各支承装置19の高さ寸法をそれぞれ所定の寸法に設定することで、支承装置取替工事の前後で上記各主桁4,5,6の上下方向位置が変化しないようにしてあるが、上記鋼製橋脚1に対し増設横梁14を増設した後、該増設横梁14の上面における各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置の真下となる所定個所に上記所定の高さ寸法を有する新規の各支承装置19を配設する作業を行うためには、上記各主桁4,5,6の桁端を当初の上下方向位置より所要寸法上方へ変位させて、上記増設横梁14の上面より該各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面までの間隔を、上記新規の各支承装置19の高さ寸法よりも広げておく必要がある。
【0016】
又、各主桁4,5,6を直接あるいは端横桁8を介して支持していた既設の各支承装置10を撤去する際には、撤去作業を、該各支承装置10に上記各主桁4,5,6より作用している荷重を完全に抜いた後で行うようにしてある。
【0017】
そのために、上記従来の支承装置の取替工法では、上記各主桁4,5,6を、該各主桁4,5,6の長手方向における既設の各支承装置10による当初の支承位置、及び、上記新規の各支承装置19による最終支承位置のいずれとも異なる個所で一旦ジャッキアップする操作が必要とされることから、上記増設横梁14に、上記各主桁4,5,6のジャッキアップ操作に専用に用いる仮設の各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを設ける必要があり、よって、該各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cの製作に要する鋼材及び製造コストが嵩むと共に、上記各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cの設置や撤去に手間及び時間を要しているというのが実状である。
【0018】
そこで、本発明は、上記I桁橋の鋼製橋脚と各主桁との間に介在させて設けて該各主桁の荷重を橋脚へ伝えて支持させるようにしてある支承装置のように、所要の支持構造物と被支持構造物との間に介在させて設けて該被支持構造物の荷重を上記支持構造物へ伝えて支持させるようにしてある既設の支承装置を、上記被支持構造物のジャッキアップ操作を要することなく新規の支承装置へ取り替えることができるようにして、被支持構造物のジャッキアップ操作に専用に用いるジャッキアップ用受け台を設ける必要をなくすことができるようにするための支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにする支承装置の取替工法とする。
【0020】
更に、上記構成において、支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにする。
【0021】
又、請求項3に対応して、既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有する取替用支承装置とする。
【0022】
更に、上記取替用支承装置の構成において、支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材を、硬化性の流体とした構成とする。
【0023】
更に又、上記取替用支承装置の構成において、支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにする支承装置の取替工法としてあるので、支持構造物と被支持構造物の間に取替用支承装置を設ける際、上記被支持構造物のジャッキアップ操作を不要にできる。又、既設の支承装置より新たに設けた取替用支承装置へ被支持構造物の荷重を盛替える際にも、該被支持構造物のジャッキアップ操作を不要にできる。よって、被支持構造物のジャッキアップ操作に用いるための受け台を設ける必要をなくすことができることから、支承装置の取替工事に要する工程を大幅に削減することができて、工期の短縮化を図ることが可能になる。
(2)既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有する取替用支承装置とすることにより、上記(1)の支承装置の取替方法の実施に用いる取替用支承装置を容易に実現できる。
(3)支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにすることにより、間詰め材充填空間部へ間詰め材を流動性を有する状態で注入、充填することで、該間詰め材充填空間部へ間詰め材を入れる作業を容易なものとすることができると共に、上記(1)に示した支承装置の取替工法で用いる取替用支承装置を、支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法でより確実に形成できる。
(4)支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした構成とすることにより、硬化性の流体である間詰め材を間詰め材充填空間部へ入れるときに、該間詰め材の流出を抑えることができて、間詰め材を間詰め材充填空間部へ容易に充填することができる。又、上記間詰め材充填空間部に確実に保持した状態で上記間詰め材を硬化させることができる。更には、硬化した間詰め材に上下方向の大きな荷重が作用する際に、該硬化した間詰め材の水平方向への変形を拘束する体積拘束効果を発揮させる効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1(イ)(ロ)乃至図6は本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置の実施の一形態として、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様に、支持構造物としての鋼製橋脚1に、被支持構造物としての主桁4,5,6の荷重を支持させる部分に設けてある既設の支承装置10を取替工事対象とする場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0027】
すなわち、図1(イ)(ロ)は上記本発明の支承装置の取替工法で用いる取替用支承装置21を示すもので、図10乃至図12に示したと同様の上記鋼製橋脚1に増設する支持構造物としての増設横梁14の上面における上記各主桁4,5,6の最終支承位置の真下となる所要個所に設置する台座11と、該台座11の上側に取り付ける支承本体22と、被支持構造物としての主桁4,5,6の最終支承位置の下端に取り付けるソールプレート23を備え、更に、上記支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に上下方向所要寸法の隙間として形成させる間詰め材充填空間部24に充填する間詰め材25を備えてなる構成とする。
【0028】
具体的には、上記間詰め材25は、無収縮性又は硬化時における収縮率が極わずかな硬化性の流体として、たとえば、無収縮モルタル25を用いるようにしてある。
【0029】
上記ソールプレート23は、たとえば、所要の厚み寸法を有する方形の平板状とすると共に、所要の側面の上端部、たとえば、対向する一対の側面の上端部より水平方向外向きに所要寸法突出する取付部23aを備えた構成としてある。これにより、上記被支持構造物としての各主桁4,5,6の最終支承位置の下端部となる下フランジの下側に、上記ソールプレート23を配置した状態で、該ソールプレート23の上記各取付部23aを、上記各主桁4,5,6の下フランジにボルト等の図示しない所要の取付手段により取り付けて一体とすることができるようにしてある。
【0030】
上記支承本体22は、上沓22aを上記ソールプレート23の下端部の平面形状よりも一回り大きな方形としてある。更に、該上沓22aの外周縁部の上面には、所要寸法上方へ突出する堰部26が一体に設けてある。これにより、該堰部26の内側に上記ソールプレート23の下端部を上方より挿入できるようにして、上記上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に隙間としての間詰め材充填空間部24を形成させるときに、上記堰部26の上端位置が上記ソールプレート23の下端位置よりも高くなるようにすることで、上記間詰め材充填空間部24の周囲を該堰部26により取り囲むことができるようにしてある。よって、上記間詰め材充填空間部24へ上記間詰め材としての無収縮モルタル25を充填するときには、硬化前の流動性を有する無収縮モルタル25を上記堰部26の内側に溜めることで、該硬化前の無収縮モルタル25の間詰め材充填空間部24への充填を容易なものとすることができるようにしてあると共に、該無収縮モルタル25を上記間詰め材充填空間部24に確実に保持した状態で硬化させることができるようにしてある。更には、上記間詰め材充填空間部24へ充填した無収縮モルタル25が硬化した後は、該硬化した無収縮モルタル25の周りに配置されている上記堰部26により、硬化した無収縮モルタル25に対して上下方向の大きな荷重が作用する際に、該硬化した無収縮モルタル25のポアソン比に応じた水平方向への変形を拘束して体積拘束効果を発揮させる効果が期待できるようにしてある。
【0031】
更に、上記ソールプレート23の厚み寸法と、上記支承本体22の下端から上記堰部26と後述するボス30を除く上沓22aの上面までの高さ寸法と、台座11の高さ寸法は、該各寸法の和が、上記鋼製橋脚1に増設した増設横梁14の上面から、鋼製橋脚1の横梁3に設けた既設の桁受けブラケット9a,9b,9c上に既設の支承装置10と端横桁8を介して支持された状態の各主桁4,5,6の最終支承位置となるフルウェブ部の下フランジ下面までの上下方向寸法よりも所要寸法、たとえば、20〜30mm程度小さくなるようにしてある。これにより、上記増設横梁14の上面に台座11を介して設置した状態の支承本体22の上沓22aの上面と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面に取り付けた状態のソールプレート23の下面との間に、上下方向寸法が20〜30mm程度となる隙間として間詰め材充填空間部24を形成させることができるようにしてある。なお、上記支承本体22の上沓22aの上面と上記ソールプレート23の下面との間に形成される間詰め材充填空間部24への間詰め材としての無収縮モルタル25の充填は、該間詰め材充填空間部24へ隙間なく充填できるようにしてあれば、たとえば、上記ソールプレート23及び上記各主桁4,5,6の下フランジの所要個所に貫通させて設けた図示しない注入孔を通して圧入するようにしたり、上記ソールプレート23と支承本体22の上沓22aに設けた堰部26との隙間を通して圧入したり、上記支承本体22の上沓22aやソールプレート23の所要個所に上記間詰め材充填空間部24に連通させるための注入口を予め設けてなる構成として、該注入口より圧入する等、任意の充填手段を採用してよい。
【0032】
上記ソールプレート23や支承本体22の平面サイズは、被支持構造物としての上記各主桁4,5,6より取替用支承装置21に作用することとなる垂直荷重の大小に応じて、上記ソールプレート23や支承本体22や両者の間に充填する間詰め材としての無収縮モルタル25に作用する面圧が、該ソールプレート23や支承本体22や無収縮モルタル25の耐圧能の許容範囲内に収まるように適宜設定してあるものとする。
【0033】
更に、上記支承本体22の上沓22aの上面所要個所にはねじ穴27を設け、一方、上記ソールプレート23及び各主桁4,5,6の下フランジにおける上記ねじ穴27と対応する個所にはボルト孔(ボルト挿通孔)28を設けて、上記各主桁4,5,6の下フランジ、及び、その下側に取り付けたソールプレート23のボルト孔28に上方より挿通させたセットボルト29の先端部(下端部)を、上記支承本体22の上沓22aのねじ穴27に螺着させることで、上記ソールプレート23の下側に配置した上記支承本体22を、上記セットボルト29により吊って保持することができるようにしてある。
【0034】
なお、図1(イ)に示す如く、支承本体22の上沓22aの上面の中央部に、剪断拘束部材としてのボス30を、該上沓22aの上面と上記ソールプレート23の下面との間に形成させる間詰め材充填空間部24の上下方向寸法よりも大となる上下方向寸法で突設する一方、上記ソールプレート23の中央部に、上記ボス30の断面形状に応じた形状の嵌合孔31を設けた構成としてもよい。このようにすれば、上記ソールプレート23と上記支承本体22を上下方向に並べて配置するときに、該支承本体22の上沓22aに設けてあるボス30の上部を、上記ソールプレート23の嵌合孔31に下方より挿入して嵌合させることで、鋼製橋脚1の増設横梁14に台座11を介して取り付ける支承本体22の上沓22aと、上記各主桁4,5,6に取り付けたソールプレート23との間に水平方向に相対変位させようとする荷重が作用するときに、該荷重を上記上沓22aのボス30と、ソールプレート23の嵌合孔31との嵌合により受けることができるようにしてもよい。
【0035】
その他の構成は図9に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0036】
以上の構成としてある本発明の取替用支承装置21を用いて支承装置の取替工事を行う場合は、先ず、図2(イ)(ロ)に示す如く、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様の3主I桁橋の鋼製橋脚1の横梁3の下側に、橋軸方向に中主桁5のフルウェブ部の下方位置まで延びる幅広の増設横梁14を配置して、その上端部を上記横梁3の下端部に一体に取り付けると共に、該増設横梁14の橋幅方向の両端部を、両脚柱2にそれぞれ一体に固定する。又、予め、本発明の取替用支承装置21の構成要素である台座11と支承本体22とソールプレート23を分離した状態で準備すると共に、間詰め材として用いるための無収縮モルタル25を別途用意しておく。
【0037】
上記のようにして増設横梁14を設けた後は、図3(イ)(ロ)に示す如く、上記各主桁4,5,6における上記増設横梁14の橋軸方向両端部の上方に位置するフルウェブ部分を最終支承位置に設定して、該最終支承位置の下フランジの下面に、上記ソールプレート23の取付部23aを、ボルト等の図示しない所要の取付手段により取り付ける。又、上記各主桁4,5,6の上記最終支承位置のウェブの両側面と下フランジには、図12(ロ)(ハ)に示したと同様に支点上補剛材18を設け、更に、該支点上補剛材18の橋軸方向の両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、補強用のリブ20をそれぞれ取り付けるようにする。なお、この際、上記各主桁4,5,6のうち、中主桁5の場合は、図3(ロ)に示すように、支点上補剛材18の橋軸方向両側近傍個所のウェブの両側面と下フランジに予め設けるリブ20のうち、上記支点上補剛材18よりも桁端寄りに設けるリブとして、該中主桁5の切欠き部7に沿って設けてある既設のフランジをそのまま利用するようにしてもよい。このようにすれば、上記中主桁5に新設するリブ20の数を半減できるため、該中主桁5にリブ20を設けるための作業に要する手間及び時間を削減できるようになる。
【0038】
次に、図4(イ)に示すように(以後の工程は各主桁4,5,6について共通であるため、図示する便宜上、図4(イ)(ロ)乃至図6では、図3(ロ)に対応する図のみを示して各主桁4,5,6について実施する工程を説明するようにする。)、上記ソールプレート23の下側に支承本体22を配置して、該支承本体22の上沓22aの上面に突設してあるボス30を上記ソールプレート23に設けた嵌合孔31に挿入すると共に、上記上沓22aの上面の外周縁部に設けてある堰部26を上記ソールプレート23の下端部の周りに配置した状態で、上記各主桁4,5,6の下フランジと上記ソールプレート23のボルト孔28に上方より挿通させたセットボルト29の先端部を、上記支承本体22の上沓22aに設けてあるねじ穴27に螺着させて、該支承本体22を上記各ソールプレート23の下側に一旦吊り下げるようにして保持させる。
【0039】
次いで、図4(ロ)に示す如く、上記増設横梁14の上面と、上記支承本体22の下端との間に、台座11を挿入して仮設置する。
【0040】
上記のようにして支承本体22の下方に台座11を配置したら、上記セットボルト29を緩めることにより、図5(イ)に示すように、上記支承本体22を自重により下降させて、上記台座11の上に載置させ、この状態で、該各支承本体22の下端部を対応する台座11の上端部に溶接等の所要の固定手段により固定して一体化する。これにより、上記台座11上に固定された支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間には、隙間としての間詰め材充填空間部24が形成されるようになる。
【0041】
上記間詰め材充填空間部24が形成された後は、図5(ロ)に示すように、上記間詰め材充填空間部24に無収縮モルタル25を隙間なく充填する。
【0042】
上記間詰め材充填空間部24に充填された無収縮モルタル25が硬化して強度が発現された後は、上記台座11の下端部を上記増設横梁14に溶接等の所要の固定手段により固定して一体化する。これにより、上記増設横梁14と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジとの間には、上記ソールプレート23と強度発現した無収縮モルタル25と支承本体22と台座11が上下方向に一体に連結された構成を具備して大きな垂直荷重に耐え得る強度を備えた本発明の取替用支承装置21が、上記増設横梁14の上面と、横梁3に既設の桁受けブラケット9a,9b,9cに既設の支承装置10や端横桁8(図2(イ)参照)を介して支持された状態の各主桁4,5,6の上記最終支承位置の下フランジの下面との間隔に一致した上下方向寸法で形成されるようになる。
【0043】
したがって、その後、上記各主桁4,5,6の荷重を上記横梁3に設置してある桁受けブラケット9a,9b,9cへ伝えて支持している既設の支承装置10を、ガス切断等の所要の切断手段により徐々に切断して、強度を徐々に低下させると、上記各主桁4,5,6の荷重が、該既設の支承装置10より、上記取替用支承装置21に徐々に盛替えられるようになり、上記既設の支承装置10を介した横梁3の桁受けブラケット9a,9b,9cまでの荷重伝達経路が完全に切り離された時点で、上記各主桁4,5,6の荷重は、すべて上記取替用支承装置21を介して増設横梁14へ伝えられて支持されるようになる。
【0044】
よって、その後は、図6に示すように、上記既設の支承装置10及び既設の桁受けブラケット9a,9b,9cを完全に撤去することで、上記既設の支承装置10から新たに設けた取替用支承装置21への支承装置の取替工事が完了するようになる。又、必要に応じて、既設の各端横桁8(図2(イ)参照)の移設や取り替え等を行うようにすればよい。
【0045】
このように、本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置によれば、鋼製橋脚1の横梁3に設けた桁受けブラケット9a,9b,9cに既設の支承装置10を介して支持されている各主桁4,5,6に設定した最終支承位置の下フランジの下面と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14の上面との間に、両者の間隔に一致する上下方向寸法を備えた取替用支承装置21を設置することができるため、該取替用支承装置21を上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下方に配設する際に上記各主桁のジャッキアップ操作を不要にできる。
【0046】
又、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14の上面との間に取替用支承装置21を設けた後は、上記既設の支承装置10を徐々に切断することで、上記各主桁4,5,6の荷重を上記既設の支承装置10から新たに設けた上記取替用支承装置21へ盛替えることができるため、上記支承装置10や、鋼製橋脚1の横梁3に設けてあった既設の桁受けブラケット9a,9b,9cを撤去する際にも、上記各主桁4,5,6のジャッキアップ操作を不要にすることができる。
【0047】
以上により、本発明の支承装置の取替工法では、各主桁4,5,6のジャッキアップ操作を行う必要がなく、よって、非特許文献1に示されたような従来の支承装置取替工法で要していた如き各主桁4,5,6のジャッキアップ操作に専用に用いるジャッキアップ用受け台は不要になるため、支承装置の取替工事に要する工程を大幅に削減することができて、工期の短縮化を図ることが可能になる。
【0048】
更に、上記中主桁5は、既設の支承装置10による当初の支承位置である切欠き部7が設けてある桁端より、フルウェブ部分へと支承位置を変更するようにしてあるので、上記切欠き部7を補強するためのフルウェブ化の工程を不要にでき、このことによっても、支承装置の取替工事に要する工程を削減して、工期の短縮化を図ることが可能になる。
【0049】
上記実施の形態においては、間詰め材として無収縮モルタル25を用いる場合について示したが、上記間詰め材25は、無収縮性又は硬化時における収縮率が極わずかな硬化性の流体であり、且つ、上記支承本体22の上沓22aの上面とソールプレート23の下面との間に形成される間詰め材充填空間部24に充填された状態で、各主桁4,5,6より作用する垂直荷重に耐え得る耐圧能を備えていれば、エポキシ樹脂等の樹脂や、その他、いかなる硬化性の流体を用いるようにしてもよい。
【0050】
更には、上記硬化性の流体の間詰め材25に代えて、各主桁4,5,6より作用する垂直荷重に耐え得る耐圧能を備えた鋼材等によるソリッドな間詰め材を用いるようにしてもよい。すなわち、図7に示すように、上記増設横梁14上に支承本体22を台座11を介して設置し、且つ各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けることで、上記支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に隙間としての間詰め材充填空間部24を形成させた後、該間詰め材充填空間部24の上下方向寸法に対応した厚み寸法となるように鋼材等により製作したソリッドな間詰め材25aを、上記間詰め材充填空間部24へ側方より押し込み、必要に応じて上記間詰め材25aを上記支承本体22の上沓22aやソールプレート23の一方又は双方に溶接等の所要の固定手段で固定することにより、上記増設横梁14の上面と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面との間にて、上記ソールプレート23と間詰め材25aと支承本体22と台座11が上下方向に連結された構成を具備して大きな垂直荷重に耐え得る強度を備え、且つ上記増設横梁14の上面と上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面との間の間隔に一致した上下方向寸法を有する本発明の取替用支承装置21を形成させるようにしてもよい。なお、このようにソリッドな間詰め材25aを用いる場合は、上記間詰め材25aを、上記間詰め材充填空間部24へ側方より押し込む必要上、上記支承本体22の上沓22aの外周縁部の上面側の堰部26は省略すればよい。又、上記支承本体22の上沓22aの上面中央部にボス30が設けてある場合は、上記間詰め材25aを、2分割以上の複数分割構造として、各分割体に上記ボス30との干渉を防止するための半円形や扇形等の切り欠きを設けておくようにすればよい。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、支承本体22の上沓22aと、上記各主桁4,5,6に取り付けたソールプレート23との間に水平方向に相対変位させようとする方向に作用する荷重に対する耐力を向上させる観点からすると、上記支承本体22の上沓22aにボス30を設けると共に、ソールプレート23に上記上沓22aのボス30を嵌合させるための嵌合孔31を設けることが好ましいが、上記上沓22aのボス30とソールプレート23の嵌合孔31を省略してもよい。
【0052】
又、上記実施の形態においては、支承本体22の上沓22aの上面外周縁部に、間詰め材充填空間部24を取り囲むための堰部26を一体に設けるものとして示したが、該上記上沓22aの堰部26を省略して上記間詰め材充填空間部24に間詰め材としての無収縮モルタル25を充填するときに、該間詰め材充填空間部24の周りに無収縮モルタル25の流出を阻止するための型枠を設けるようにしてもよい。
【0053】
上記のように支承本体22の上沓22aの上面側の堰部26及びボス30を共に省略する場合は、図3(イ)(ロ)に示したように主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けた後、図4(イ)に示したように、上記ソールプレート23に、一旦、支承本体22をセットボルト29により取り付けた状態としてから、図4(ロ)に示したように、該ソールプレート23に取り付けた支承本体22と、増設横梁14上面との間に台座11を挿入し、その後、図5(イ)に示すように上記セットボルト29を緩めて、上記支承本体22を台座11上に載置させるようにする工程に代えて、図3(イ)(ロ)に示したように主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けた後、該ソールプレート23の下面と増設横梁14の上面との間に、台座11及び支承本体22を、順次又は重ねた状態で一括して側方から挿入して配置するようにしてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、図5(ロ)に示したように間詰め材充填空間部24への間詰め材としての無収縮モルタル25の充填を行った後に台座11の下端部を上記増設横梁14の上面に溶接等の所要の固定手段により固定するものとして示したが、図4(ロ)に示す如く、上記増設横梁14の上面と、ソールプレート23に一旦取り付けた支承本体22の下端との間に台座11を挿入した段階で、該台座11の下端部を増設横梁14の上面に溶接等の所要の固定手段により固定するようにしてもよい。
【0055】
本発明の支承装置の取替工法は、箱桁橋にて、支持構造物としての鋼製橋脚上に、被支持構造物としての箱桁を支持するために用いている支承装置10の取替工事に適用してもよい。更には、支持構造物の上側に被支持構造物が既設の支承装置10を介して支持され、且つ支承取替工事により新たに設ける取替用支承装置21による被支持構造物の最終支承位置を、上記既設の支承装置10による当初の支承位置と異なる個所に設定できれば、鋼橋における鋼製橋脚1による主桁4,5,6の支承部分以外のいかなる支持構造物上にて被支持構造物を支持している支承装置の取替工事に適用してもよい。
【0056】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置の実施の一形態として、I桁橋の鋼製橋脚に主桁を支持させる部分に設けてある支承装置の取替工事を行う場合の適用例を示すもので、(イ)は該取替工法で用いる取替用支承装置を示す一部切断概略側面図、(ロ)は(イ)の取替用支承装置における支承本体の上端部を拡大して示す切断側面図である。
【図2】図1の取替工法の手順を示すもので、(イ)鋼製橋脚の横梁の下方に増設横梁を設けた状態を示す概略平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の取替工法における図2(イ)(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)は外主桁の最終支承位置の下端部にソールプレートを取り付けた状態を、(ロ)は中主桁の最終支承位置の下端部にソールプレートを取り付けた状態をそれぞれ示す概略側面図である。
【図4】図1の取替工法における図3(イ)(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)はソールプレートの下側に支承本体を取り付けた状態を示す一部切断概略側面図、(ロ)は増設横梁の上面に台座を設置した状態を示す一部切断該略側面図である。
【図5】図1の取替工法における図4(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)は台座の上側に支承本体を取り付けて上沓とソールプレートとの間に間詰め材充填空間部を形成させた状態を示す一部切断概略側面図、(ロ)は間詰め材充填空間部に無収縮モルタルを充填して取替用支承装置を形成させた状態を示す一部切断概略側面図である。
【図6】図1の取替工法における図5(ロ)に続く手順を示すもので、取替用支承装置に主桁の荷重を盛替えて、既設の支承装置及び桁受けブラケットを撤去した状態を示す一部切断概略側面図である。
【図7】本発明の実施の他の形態として、支承装置の取替工法に用いる取替用支承装置の別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図8】多主I桁橋の一例として、従来首都高速道路等で用いられている3主I桁橋の概略を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図、(ハ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図9】図8の3主I桁橋にて鋼製橋脚に主桁を支持させる部分に設けてある支承装置を拡大して示す概略側面図である。
【図10】従来主桁フルウェブ化工事として行われている支承装置の取替工法にて鋼製橋脚の横梁の下方に増設横梁を設けた状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のD−D方向矢視図である。
【図11】主桁フルウェブ化工事にて各主桁をジャッキアップした状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のE−E方向矢視図、(ハ)は(イ)のF−F方向矢視図である。
【図12】主桁フルウェブ化工事にて中主桁をフルウェブ化した後、増設横梁上に新たに設けた支承装置の上側に各主桁を載置した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のG−G方向矢視図、(ハ)は(イ)のH−H方向矢視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 鋼製橋脚(支持構造物)
4,5,6 主桁(被支持構造物)
10 支承装置(既設の支承装置)
11 台座
14 増設横梁(支持構造物)
21 取替用支承装置
22 支承本体
22a 上沓
23 ソールプレート
24 間詰め材充填空間部
25 無収縮モルタル(間詰め材)
25a 間詰め材
26 堰部
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁橋の橋脚と各主桁との間に介在させて設けて該各主桁の荷重を橋脚へ伝えて支持させるようにしてある支承装置のように、所要の支持構造物と、その上方に載置する被支持構造物との間に介在させて設けて該被支持構造物の荷重を上記支持構造物へ伝えて支持させるようにしてある既設の支承装置を、新規の支承装置に取り替えるために用いる支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼橋の形式の1つに、多主I桁橋があり、この種の多主I桁橋の一例としては、たとえば、首都高速道路等の都市部の高架橋で用いられている図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示す如き3主I桁橋がある。
【0003】
これは、橋幅方向の両側に立設した一対の脚柱2と、橋幅方向に延びてその両端部を上記各脚柱2にそれぞれ一体に取り付けた横梁3とからなる門型の鋼製橋脚1を備えている。
【0004】
更に、I桁からなる3本の主桁4,5,6を、橋幅方向に所要間隔で配置して、該各主桁4,5,6のうち、橋幅方向両端部の各主桁(以下、外主桁と云う)4,6の桁端はフルウェブとすると共に、橋幅方向中央部の主桁(以下、中主桁と云う)5の桁端には下部側に切欠き部7が設けてある。且つ上記中主桁5における上記切欠き部7の上側の桁端より所要寸法離れた桁端縁部所要個所の両側面と、その両側に位置する上記各外主桁4,6の桁端より所要寸法離れた桁端縁部所要個所の上部内側面とを、橋幅方向に延びる横桁(以下、端横桁と云う)8を介しそれぞれ一体に接続した構成として、上記中主桁5の切欠き部7が設けてある桁端と、上記各端横桁8の橋幅方向の外側端部寄り位置とを、上記鋼製橋脚1の横梁3の各橋軸方向面の下部に突設した桁受けブラケット9a,9b,9cの上側に、支承装置10を介在させて支持させた構成としてある。
【0005】
上記各支承装置10は、図9に示す如く、通常、上記各桁受けブラケット9a,9b,9c上に設置した台座11と、該各台座11上に取り付けた支承本体(シュー)12と、上記中主桁5の切欠き部7が設けてある桁端の下面、及び、上記各端横桁8の下面にて上記各支承本体12の真上となる所要個所にそれぞれ取り付けたソールプレート13とを備えて、該各ソールプレート13を、上記各支承本体12の上沓12aに図示しないセットボルトを介して連結した構成としてある。
【0006】
かかる構成としてあるI桁橋によれば、上記鋼製橋脚1の横梁3に、上記各主桁4,5,6を、該横梁3の上下寸法内で受けさせることができるため、上記横梁3の上下端部の高さ位置と、上記各主桁4,5,6の上下端部の高さ位置を揃えることができて、建築限界等により桁高制限を受ける場合に有利な構成とすることができるようにしてある。なお、図8(イ)(ロ)(ハ)では図示する便宜上、上記鋼製橋脚1の横梁3及び各主桁4,5,6の上側に設ける床版の記載を省略してある。(以後の図も同様。)
ところで、近年、上記図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示した如き構成を有するI桁橋では、老朽化に伴う各支承装置10の支承本体12の機能の劣化や、支承周りの損傷が指摘されてきている。
【0007】
そのために、既設の各支承装置10の取り替えによる機能回復を図ると共に、支承周りの補強を行う改修方法として、いわゆる主桁フルウェブ化工事が従来行われている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0008】
上記主桁フルウェブ化工事は、たとえば、図10(イ)(ロ)乃至図12(イ)(ロ)(ハ)の手順で行うようにしてある。すなわち、先ず、図10(イ)(ロ)に示す如く、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様の構成としてあるI桁橋における鋼製橋脚1の横梁3の下側に、橋軸方向に各主桁4,5,6の桁端縁部の下方位置まで延びる幅広の増設横梁14を配置して、その上端部を上記横梁3の下端部に一体に取り付けると共に、該増設横梁14の橋幅方向の両端部を、両脚柱2にそれぞれ一体に固定する。更に、上記増設横梁14の各橋軸方向面における上記各主桁4,5,6の真下となる位置には、個別のジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを、上記中主桁5のウェブがフルウェブとなっている部分と対応する支間中央側位置まで橋軸方向に沿って突出するようにそれぞれ仮設する。
【0009】
次に、図11(イ)(ロ)(ハ)に示すように、上記増設横梁14の各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15c上に設置したジャッキ16をそれぞれジャッキアップして、該各ジャッキ16の上側に上記各主桁4,5,6の下フランジをそれぞれ受けることで、該各主桁4,5,6に作用している荷重を、上記各ジャッキ16及び各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを介し上記増設横梁14へ伝えて支持させるようにする。
【0010】
次いで、上記のようにして、各主桁4,5,6に作用している荷重を各ジャッキ16及び各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを介して上記増設横梁14に受けさせると、上記鋼製橋脚1の横梁3の各橋軸方向面に設けてある各桁受けブラケット9a,9b,9c及びその上側の各支承装置10には、上記各主桁4,5,6からの荷重が作用しなくなるため、この状態で、上記横梁3より上記既設の各桁受けブラケット9a,9b,9c及び既設の各支承装置10を撤去する。
【0011】
その後、上記中主桁5の切欠き部7の周りに設けてあった下フランジを切除してから、図12(ロ)に示すように、該中主桁5の桁端を受けていた桁受けブラケット9b及び支承装置10が撤去された空間にて、上記中主桁5の残存するウェブに、該ウェブの切り欠かれた部分に嵌合可能な所要形状のフルウェブ化補強部材17を接合して、中主桁5の桁端をフルウェブ化する。更に、上記フルウェブ化された中主桁5の桁端における上記増設横梁14の上方で且つ後述する新規の支承装置19の上方に配される位置には、ウェブの下端から上端付近まで上下方向に延びる支点上補剛材18を、ウェブ両側面と下フランジにリブ状に取り付けて補強すると共に、該支点上補剛材18の橋軸方向の両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、更に補強用のリブ20をそれぞれ取り付ける。同様に、図12(ハ)に示すように、上記各外主桁4,6の桁端における上記増設横梁14の上方で且つ後述する新規の支承装置19の上方に配される位置にも、支点上補剛材18をウェブ両側面と上下フランジにリブ状に取り付けて補強し、その橋軸方向両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、更に補強用のリブ20をそれぞれ取り付ける。
【0012】
上記のようにして中主桁5の桁端のフルウェブ化が終了した後は、図12(イ)(ロ)(ハ)に示すように、上記増設横梁14における各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置の真下となる所定個所に、図9に示した既設支承装置10と同様の図示しない台座、支承本体、ソールプレートからなる構成の新規支承装置19をそれぞれ設けてから、上記各ジャッキ16をジャッキダウンすることにより、上記各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置を、上記各新規支承装置19を介して上記増設横梁14に支持させるようにして、既設の支承装置10の新規の支承装置19への取り替えと支承周りの補強の工事を終了する。
【0013】
しかる後、上記各ジャッキ16と増設横梁14に仮設してある各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cをそれぞれ撤去し、更に、必要に応じて、上記既設の各端横桁8の移設や取り替え等を行うようにしてある。
【0014】
【非特許文献1】下里哲弘,「首都高速道路の若返り作戦」,JSSC会誌,社団法人日本鋼構造協会,2003年10月,No.50,p.1−10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、上記図10(イ)(ロ)乃至図12(イ)(ロ)(ハ)に示した従来の支承装置の取替工法では、鋼製橋脚1の横梁3に設けた桁受けブラケット9a,9b,9c上の既設の支承装置10に直接あるいは端横桁8を介して支持された各主桁4,5,6の当初の上下方向位置と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14上に新規の各支承装置19を介して各々支持させる各主桁4,5,6の上下方向位置が一致するように、上記新規の各支承装置19の高さ寸法をそれぞれ所定の寸法に設定することで、支承装置取替工事の前後で上記各主桁4,5,6の上下方向位置が変化しないようにしてあるが、上記鋼製橋脚1に対し増設横梁14を増設した後、該増設横梁14の上面における各主桁4,5,6の桁端の最終支承位置の真下となる所定個所に上記所定の高さ寸法を有する新規の各支承装置19を配設する作業を行うためには、上記各主桁4,5,6の桁端を当初の上下方向位置より所要寸法上方へ変位させて、上記増設横梁14の上面より該各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面までの間隔を、上記新規の各支承装置19の高さ寸法よりも広げておく必要がある。
【0016】
又、各主桁4,5,6を直接あるいは端横桁8を介して支持していた既設の各支承装置10を撤去する際には、撤去作業を、該各支承装置10に上記各主桁4,5,6より作用している荷重を完全に抜いた後で行うようにしてある。
【0017】
そのために、上記従来の支承装置の取替工法では、上記各主桁4,5,6を、該各主桁4,5,6の長手方向における既設の各支承装置10による当初の支承位置、及び、上記新規の各支承装置19による最終支承位置のいずれとも異なる個所で一旦ジャッキアップする操作が必要とされることから、上記増設横梁14に、上記各主桁4,5,6のジャッキアップ操作に専用に用いる仮設の各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cを設ける必要があり、よって、該各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cの製作に要する鋼材及び製造コストが嵩むと共に、上記各ジャッキアップ用受け台15a,15b,15cの設置や撤去に手間及び時間を要しているというのが実状である。
【0018】
そこで、本発明は、上記I桁橋の鋼製橋脚と各主桁との間に介在させて設けて該各主桁の荷重を橋脚へ伝えて支持させるようにしてある支承装置のように、所要の支持構造物と被支持構造物との間に介在させて設けて該被支持構造物の荷重を上記支持構造物へ伝えて支持させるようにしてある既設の支承装置を、上記被支持構造物のジャッキアップ操作を要することなく新規の支承装置へ取り替えることができるようにして、被支持構造物のジャッキアップ操作に専用に用いるジャッキアップ用受け台を設ける必要をなくすことができるようにするための支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにする支承装置の取替工法とする。
【0020】
更に、上記構成において、支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにする。
【0021】
又、請求項3に対応して、既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有する取替用支承装置とする。
【0022】
更に、上記取替用支承装置の構成において、支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材を、硬化性の流体とした構成とする。
【0023】
更に又、上記取替用支承装置の構成において、支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにする支承装置の取替工法としてあるので、支持構造物と被支持構造物の間に取替用支承装置を設ける際、上記被支持構造物のジャッキアップ操作を不要にできる。又、既設の支承装置より新たに設けた取替用支承装置へ被支持構造物の荷重を盛替える際にも、該被支持構造物のジャッキアップ操作を不要にできる。よって、被支持構造物のジャッキアップ操作に用いるための受け台を設ける必要をなくすことができることから、支承装置の取替工事に要する工程を大幅に削減することができて、工期の短縮化を図ることが可能になる。
(2)既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有する取替用支承装置とすることにより、上記(1)の支承装置の取替方法の実施に用いる取替用支承装置を容易に実現できる。
(3)支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにすることにより、間詰め材充填空間部へ間詰め材を流動性を有する状態で注入、充填することで、該間詰め材充填空間部へ間詰め材を入れる作業を容易なものとすることができると共に、上記(1)に示した支承装置の取替工法で用いる取替用支承装置を、支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法でより確実に形成できる。
(4)支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした構成とすることにより、硬化性の流体である間詰め材を間詰め材充填空間部へ入れるときに、該間詰め材の流出を抑えることができて、間詰め材を間詰め材充填空間部へ容易に充填することができる。又、上記間詰め材充填空間部に確実に保持した状態で上記間詰め材を硬化させることができる。更には、硬化した間詰め材に上下方向の大きな荷重が作用する際に、該硬化した間詰め材の水平方向への変形を拘束する体積拘束効果を発揮させる効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1(イ)(ロ)乃至図6は本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置の実施の一形態として、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様に、支持構造物としての鋼製橋脚1に、被支持構造物としての主桁4,5,6の荷重を支持させる部分に設けてある既設の支承装置10を取替工事対象とする場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0027】
すなわち、図1(イ)(ロ)は上記本発明の支承装置の取替工法で用いる取替用支承装置21を示すもので、図10乃至図12に示したと同様の上記鋼製橋脚1に増設する支持構造物としての増設横梁14の上面における上記各主桁4,5,6の最終支承位置の真下となる所要個所に設置する台座11と、該台座11の上側に取り付ける支承本体22と、被支持構造物としての主桁4,5,6の最終支承位置の下端に取り付けるソールプレート23を備え、更に、上記支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に上下方向所要寸法の隙間として形成させる間詰め材充填空間部24に充填する間詰め材25を備えてなる構成とする。
【0028】
具体的には、上記間詰め材25は、無収縮性又は硬化時における収縮率が極わずかな硬化性の流体として、たとえば、無収縮モルタル25を用いるようにしてある。
【0029】
上記ソールプレート23は、たとえば、所要の厚み寸法を有する方形の平板状とすると共に、所要の側面の上端部、たとえば、対向する一対の側面の上端部より水平方向外向きに所要寸法突出する取付部23aを備えた構成としてある。これにより、上記被支持構造物としての各主桁4,5,6の最終支承位置の下端部となる下フランジの下側に、上記ソールプレート23を配置した状態で、該ソールプレート23の上記各取付部23aを、上記各主桁4,5,6の下フランジにボルト等の図示しない所要の取付手段により取り付けて一体とすることができるようにしてある。
【0030】
上記支承本体22は、上沓22aを上記ソールプレート23の下端部の平面形状よりも一回り大きな方形としてある。更に、該上沓22aの外周縁部の上面には、所要寸法上方へ突出する堰部26が一体に設けてある。これにより、該堰部26の内側に上記ソールプレート23の下端部を上方より挿入できるようにして、上記上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に隙間としての間詰め材充填空間部24を形成させるときに、上記堰部26の上端位置が上記ソールプレート23の下端位置よりも高くなるようにすることで、上記間詰め材充填空間部24の周囲を該堰部26により取り囲むことができるようにしてある。よって、上記間詰め材充填空間部24へ上記間詰め材としての無収縮モルタル25を充填するときには、硬化前の流動性を有する無収縮モルタル25を上記堰部26の内側に溜めることで、該硬化前の無収縮モルタル25の間詰め材充填空間部24への充填を容易なものとすることができるようにしてあると共に、該無収縮モルタル25を上記間詰め材充填空間部24に確実に保持した状態で硬化させることができるようにしてある。更には、上記間詰め材充填空間部24へ充填した無収縮モルタル25が硬化した後は、該硬化した無収縮モルタル25の周りに配置されている上記堰部26により、硬化した無収縮モルタル25に対して上下方向の大きな荷重が作用する際に、該硬化した無収縮モルタル25のポアソン比に応じた水平方向への変形を拘束して体積拘束効果を発揮させる効果が期待できるようにしてある。
【0031】
更に、上記ソールプレート23の厚み寸法と、上記支承本体22の下端から上記堰部26と後述するボス30を除く上沓22aの上面までの高さ寸法と、台座11の高さ寸法は、該各寸法の和が、上記鋼製橋脚1に増設した増設横梁14の上面から、鋼製橋脚1の横梁3に設けた既設の桁受けブラケット9a,9b,9c上に既設の支承装置10と端横桁8を介して支持された状態の各主桁4,5,6の最終支承位置となるフルウェブ部の下フランジ下面までの上下方向寸法よりも所要寸法、たとえば、20〜30mm程度小さくなるようにしてある。これにより、上記増設横梁14の上面に台座11を介して設置した状態の支承本体22の上沓22aの上面と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面に取り付けた状態のソールプレート23の下面との間に、上下方向寸法が20〜30mm程度となる隙間として間詰め材充填空間部24を形成させることができるようにしてある。なお、上記支承本体22の上沓22aの上面と上記ソールプレート23の下面との間に形成される間詰め材充填空間部24への間詰め材としての無収縮モルタル25の充填は、該間詰め材充填空間部24へ隙間なく充填できるようにしてあれば、たとえば、上記ソールプレート23及び上記各主桁4,5,6の下フランジの所要個所に貫通させて設けた図示しない注入孔を通して圧入するようにしたり、上記ソールプレート23と支承本体22の上沓22aに設けた堰部26との隙間を通して圧入したり、上記支承本体22の上沓22aやソールプレート23の所要個所に上記間詰め材充填空間部24に連通させるための注入口を予め設けてなる構成として、該注入口より圧入する等、任意の充填手段を採用してよい。
【0032】
上記ソールプレート23や支承本体22の平面サイズは、被支持構造物としての上記各主桁4,5,6より取替用支承装置21に作用することとなる垂直荷重の大小に応じて、上記ソールプレート23や支承本体22や両者の間に充填する間詰め材としての無収縮モルタル25に作用する面圧が、該ソールプレート23や支承本体22や無収縮モルタル25の耐圧能の許容範囲内に収まるように適宜設定してあるものとする。
【0033】
更に、上記支承本体22の上沓22aの上面所要個所にはねじ穴27を設け、一方、上記ソールプレート23及び各主桁4,5,6の下フランジにおける上記ねじ穴27と対応する個所にはボルト孔(ボルト挿通孔)28を設けて、上記各主桁4,5,6の下フランジ、及び、その下側に取り付けたソールプレート23のボルト孔28に上方より挿通させたセットボルト29の先端部(下端部)を、上記支承本体22の上沓22aのねじ穴27に螺着させることで、上記ソールプレート23の下側に配置した上記支承本体22を、上記セットボルト29により吊って保持することができるようにしてある。
【0034】
なお、図1(イ)に示す如く、支承本体22の上沓22aの上面の中央部に、剪断拘束部材としてのボス30を、該上沓22aの上面と上記ソールプレート23の下面との間に形成させる間詰め材充填空間部24の上下方向寸法よりも大となる上下方向寸法で突設する一方、上記ソールプレート23の中央部に、上記ボス30の断面形状に応じた形状の嵌合孔31を設けた構成としてもよい。このようにすれば、上記ソールプレート23と上記支承本体22を上下方向に並べて配置するときに、該支承本体22の上沓22aに設けてあるボス30の上部を、上記ソールプレート23の嵌合孔31に下方より挿入して嵌合させることで、鋼製橋脚1の増設横梁14に台座11を介して取り付ける支承本体22の上沓22aと、上記各主桁4,5,6に取り付けたソールプレート23との間に水平方向に相対変位させようとする荷重が作用するときに、該荷重を上記上沓22aのボス30と、ソールプレート23の嵌合孔31との嵌合により受けることができるようにしてもよい。
【0035】
その他の構成は図9に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0036】
以上の構成としてある本発明の取替用支承装置21を用いて支承装置の取替工事を行う場合は、先ず、図2(イ)(ロ)に示す如く、図8(イ)(ロ)(ハ)及び図9に示したと同様の3主I桁橋の鋼製橋脚1の横梁3の下側に、橋軸方向に中主桁5のフルウェブ部の下方位置まで延びる幅広の増設横梁14を配置して、その上端部を上記横梁3の下端部に一体に取り付けると共に、該増設横梁14の橋幅方向の両端部を、両脚柱2にそれぞれ一体に固定する。又、予め、本発明の取替用支承装置21の構成要素である台座11と支承本体22とソールプレート23を分離した状態で準備すると共に、間詰め材として用いるための無収縮モルタル25を別途用意しておく。
【0037】
上記のようにして増設横梁14を設けた後は、図3(イ)(ロ)に示す如く、上記各主桁4,5,6における上記増設横梁14の橋軸方向両端部の上方に位置するフルウェブ部分を最終支承位置に設定して、該最終支承位置の下フランジの下面に、上記ソールプレート23の取付部23aを、ボルト等の図示しない所要の取付手段により取り付ける。又、上記各主桁4,5,6の上記最終支承位置のウェブの両側面と下フランジには、図12(ロ)(ハ)に示したと同様に支点上補剛材18を設け、更に、該支点上補剛材18の橋軸方向の両側近傍個所のウェブ両側面と下フランジに、補強用のリブ20をそれぞれ取り付けるようにする。なお、この際、上記各主桁4,5,6のうち、中主桁5の場合は、図3(ロ)に示すように、支点上補剛材18の橋軸方向両側近傍個所のウェブの両側面と下フランジに予め設けるリブ20のうち、上記支点上補剛材18よりも桁端寄りに設けるリブとして、該中主桁5の切欠き部7に沿って設けてある既設のフランジをそのまま利用するようにしてもよい。このようにすれば、上記中主桁5に新設するリブ20の数を半減できるため、該中主桁5にリブ20を設けるための作業に要する手間及び時間を削減できるようになる。
【0038】
次に、図4(イ)に示すように(以後の工程は各主桁4,5,6について共通であるため、図示する便宜上、図4(イ)(ロ)乃至図6では、図3(ロ)に対応する図のみを示して各主桁4,5,6について実施する工程を説明するようにする。)、上記ソールプレート23の下側に支承本体22を配置して、該支承本体22の上沓22aの上面に突設してあるボス30を上記ソールプレート23に設けた嵌合孔31に挿入すると共に、上記上沓22aの上面の外周縁部に設けてある堰部26を上記ソールプレート23の下端部の周りに配置した状態で、上記各主桁4,5,6の下フランジと上記ソールプレート23のボルト孔28に上方より挿通させたセットボルト29の先端部を、上記支承本体22の上沓22aに設けてあるねじ穴27に螺着させて、該支承本体22を上記各ソールプレート23の下側に一旦吊り下げるようにして保持させる。
【0039】
次いで、図4(ロ)に示す如く、上記増設横梁14の上面と、上記支承本体22の下端との間に、台座11を挿入して仮設置する。
【0040】
上記のようにして支承本体22の下方に台座11を配置したら、上記セットボルト29を緩めることにより、図5(イ)に示すように、上記支承本体22を自重により下降させて、上記台座11の上に載置させ、この状態で、該各支承本体22の下端部を対応する台座11の上端部に溶接等の所要の固定手段により固定して一体化する。これにより、上記台座11上に固定された支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間には、隙間としての間詰め材充填空間部24が形成されるようになる。
【0041】
上記間詰め材充填空間部24が形成された後は、図5(ロ)に示すように、上記間詰め材充填空間部24に無収縮モルタル25を隙間なく充填する。
【0042】
上記間詰め材充填空間部24に充填された無収縮モルタル25が硬化して強度が発現された後は、上記台座11の下端部を上記増設横梁14に溶接等の所要の固定手段により固定して一体化する。これにより、上記増設横梁14と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジとの間には、上記ソールプレート23と強度発現した無収縮モルタル25と支承本体22と台座11が上下方向に一体に連結された構成を具備して大きな垂直荷重に耐え得る強度を備えた本発明の取替用支承装置21が、上記増設横梁14の上面と、横梁3に既設の桁受けブラケット9a,9b,9cに既設の支承装置10や端横桁8(図2(イ)参照)を介して支持された状態の各主桁4,5,6の上記最終支承位置の下フランジの下面との間隔に一致した上下方向寸法で形成されるようになる。
【0043】
したがって、その後、上記各主桁4,5,6の荷重を上記横梁3に設置してある桁受けブラケット9a,9b,9cへ伝えて支持している既設の支承装置10を、ガス切断等の所要の切断手段により徐々に切断して、強度を徐々に低下させると、上記各主桁4,5,6の荷重が、該既設の支承装置10より、上記取替用支承装置21に徐々に盛替えられるようになり、上記既設の支承装置10を介した横梁3の桁受けブラケット9a,9b,9cまでの荷重伝達経路が完全に切り離された時点で、上記各主桁4,5,6の荷重は、すべて上記取替用支承装置21を介して増設横梁14へ伝えられて支持されるようになる。
【0044】
よって、その後は、図6に示すように、上記既設の支承装置10及び既設の桁受けブラケット9a,9b,9cを完全に撤去することで、上記既設の支承装置10から新たに設けた取替用支承装置21への支承装置の取替工事が完了するようになる。又、必要に応じて、既設の各端横桁8(図2(イ)参照)の移設や取り替え等を行うようにすればよい。
【0045】
このように、本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置によれば、鋼製橋脚1の横梁3に設けた桁受けブラケット9a,9b,9cに既設の支承装置10を介して支持されている各主桁4,5,6に設定した最終支承位置の下フランジの下面と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14の上面との間に、両者の間隔に一致する上下方向寸法を備えた取替用支承装置21を設置することができるため、該取替用支承装置21を上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下方に配設する際に上記各主桁のジャッキアップ操作を不要にできる。
【0046】
又、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面と、上記鋼製橋脚1に増設する増設横梁14の上面との間に取替用支承装置21を設けた後は、上記既設の支承装置10を徐々に切断することで、上記各主桁4,5,6の荷重を上記既設の支承装置10から新たに設けた上記取替用支承装置21へ盛替えることができるため、上記支承装置10や、鋼製橋脚1の横梁3に設けてあった既設の桁受けブラケット9a,9b,9cを撤去する際にも、上記各主桁4,5,6のジャッキアップ操作を不要にすることができる。
【0047】
以上により、本発明の支承装置の取替工法では、各主桁4,5,6のジャッキアップ操作を行う必要がなく、よって、非特許文献1に示されたような従来の支承装置取替工法で要していた如き各主桁4,5,6のジャッキアップ操作に専用に用いるジャッキアップ用受け台は不要になるため、支承装置の取替工事に要する工程を大幅に削減することができて、工期の短縮化を図ることが可能になる。
【0048】
更に、上記中主桁5は、既設の支承装置10による当初の支承位置である切欠き部7が設けてある桁端より、フルウェブ部分へと支承位置を変更するようにしてあるので、上記切欠き部7を補強するためのフルウェブ化の工程を不要にでき、このことによっても、支承装置の取替工事に要する工程を削減して、工期の短縮化を図ることが可能になる。
【0049】
上記実施の形態においては、間詰め材として無収縮モルタル25を用いる場合について示したが、上記間詰め材25は、無収縮性又は硬化時における収縮率が極わずかな硬化性の流体であり、且つ、上記支承本体22の上沓22aの上面とソールプレート23の下面との間に形成される間詰め材充填空間部24に充填された状態で、各主桁4,5,6より作用する垂直荷重に耐え得る耐圧能を備えていれば、エポキシ樹脂等の樹脂や、その他、いかなる硬化性の流体を用いるようにしてもよい。
【0050】
更には、上記硬化性の流体の間詰め材25に代えて、各主桁4,5,6より作用する垂直荷重に耐え得る耐圧能を備えた鋼材等によるソリッドな間詰め材を用いるようにしてもよい。すなわち、図7に示すように、上記増設横梁14上に支承本体22を台座11を介して設置し、且つ各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けることで、上記支承本体22の上沓22aの上面と、上記ソールプレート23の下面との間に隙間としての間詰め材充填空間部24を形成させた後、該間詰め材充填空間部24の上下方向寸法に対応した厚み寸法となるように鋼材等により製作したソリッドな間詰め材25aを、上記間詰め材充填空間部24へ側方より押し込み、必要に応じて上記間詰め材25aを上記支承本体22の上沓22aやソールプレート23の一方又は双方に溶接等の所要の固定手段で固定することにより、上記増設横梁14の上面と、上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面との間にて、上記ソールプレート23と間詰め材25aと支承本体22と台座11が上下方向に連結された構成を具備して大きな垂直荷重に耐え得る強度を備え、且つ上記増設横梁14の上面と上記各主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジ下面との間の間隔に一致した上下方向寸法を有する本発明の取替用支承装置21を形成させるようにしてもよい。なお、このようにソリッドな間詰め材25aを用いる場合は、上記間詰め材25aを、上記間詰め材充填空間部24へ側方より押し込む必要上、上記支承本体22の上沓22aの外周縁部の上面側の堰部26は省略すればよい。又、上記支承本体22の上沓22aの上面中央部にボス30が設けてある場合は、上記間詰め材25aを、2分割以上の複数分割構造として、各分割体に上記ボス30との干渉を防止するための半円形や扇形等の切り欠きを設けておくようにすればよい。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、支承本体22の上沓22aと、上記各主桁4,5,6に取り付けたソールプレート23との間に水平方向に相対変位させようとする方向に作用する荷重に対する耐力を向上させる観点からすると、上記支承本体22の上沓22aにボス30を設けると共に、ソールプレート23に上記上沓22aのボス30を嵌合させるための嵌合孔31を設けることが好ましいが、上記上沓22aのボス30とソールプレート23の嵌合孔31を省略してもよい。
【0052】
又、上記実施の形態においては、支承本体22の上沓22aの上面外周縁部に、間詰め材充填空間部24を取り囲むための堰部26を一体に設けるものとして示したが、該上記上沓22aの堰部26を省略して上記間詰め材充填空間部24に間詰め材としての無収縮モルタル25を充填するときに、該間詰め材充填空間部24の周りに無収縮モルタル25の流出を阻止するための型枠を設けるようにしてもよい。
【0053】
上記のように支承本体22の上沓22aの上面側の堰部26及びボス30を共に省略する場合は、図3(イ)(ロ)に示したように主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けた後、図4(イ)に示したように、上記ソールプレート23に、一旦、支承本体22をセットボルト29により取り付けた状態としてから、図4(ロ)に示したように、該ソールプレート23に取り付けた支承本体22と、増設横梁14上面との間に台座11を挿入し、その後、図5(イ)に示すように上記セットボルト29を緩めて、上記支承本体22を台座11上に載置させるようにする工程に代えて、図3(イ)(ロ)に示したように主桁4,5,6の最終支承位置の下フランジの下面にソールプレート23を取り付けた後、該ソールプレート23の下面と増設横梁14の上面との間に、台座11及び支承本体22を、順次又は重ねた状態で一括して側方から挿入して配置するようにしてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、図5(ロ)に示したように間詰め材充填空間部24への間詰め材としての無収縮モルタル25の充填を行った後に台座11の下端部を上記増設横梁14の上面に溶接等の所要の固定手段により固定するものとして示したが、図4(ロ)に示す如く、上記増設横梁14の上面と、ソールプレート23に一旦取り付けた支承本体22の下端との間に台座11を挿入した段階で、該台座11の下端部を増設横梁14の上面に溶接等の所要の固定手段により固定するようにしてもよい。
【0055】
本発明の支承装置の取替工法は、箱桁橋にて、支持構造物としての鋼製橋脚上に、被支持構造物としての箱桁を支持するために用いている支承装置10の取替工事に適用してもよい。更には、支持構造物の上側に被支持構造物が既設の支承装置10を介して支持され、且つ支承取替工事により新たに設ける取替用支承装置21による被支持構造物の最終支承位置を、上記既設の支承装置10による当初の支承位置と異なる個所に設定できれば、鋼橋における鋼製橋脚1による主桁4,5,6の支承部分以外のいかなる支持構造物上にて被支持構造物を支持している支承装置の取替工事に適用してもよい。
【0056】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の支承装置の取替工法及び該工法に用いる取替用支承装置の実施の一形態として、I桁橋の鋼製橋脚に主桁を支持させる部分に設けてある支承装置の取替工事を行う場合の適用例を示すもので、(イ)は該取替工法で用いる取替用支承装置を示す一部切断概略側面図、(ロ)は(イ)の取替用支承装置における支承本体の上端部を拡大して示す切断側面図である。
【図2】図1の取替工法の手順を示すもので、(イ)鋼製橋脚の横梁の下方に増設横梁を設けた状態を示す概略平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の取替工法における図2(イ)(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)は外主桁の最終支承位置の下端部にソールプレートを取り付けた状態を、(ロ)は中主桁の最終支承位置の下端部にソールプレートを取り付けた状態をそれぞれ示す概略側面図である。
【図4】図1の取替工法における図3(イ)(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)はソールプレートの下側に支承本体を取り付けた状態を示す一部切断概略側面図、(ロ)は増設横梁の上面に台座を設置した状態を示す一部切断該略側面図である。
【図5】図1の取替工法における図4(ロ)に続く手順を示すもので、(イ)は台座の上側に支承本体を取り付けて上沓とソールプレートとの間に間詰め材充填空間部を形成させた状態を示す一部切断概略側面図、(ロ)は間詰め材充填空間部に無収縮モルタルを充填して取替用支承装置を形成させた状態を示す一部切断概略側面図である。
【図6】図1の取替工法における図5(ロ)に続く手順を示すもので、取替用支承装置に主桁の荷重を盛替えて、既設の支承装置及び桁受けブラケットを撤去した状態を示す一部切断概略側面図である。
【図7】本発明の実施の他の形態として、支承装置の取替工法に用いる取替用支承装置の別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図8】多主I桁橋の一例として、従来首都高速道路等で用いられている3主I桁橋の概略を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図、(ハ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図9】図8の3主I桁橋にて鋼製橋脚に主桁を支持させる部分に設けてある支承装置を拡大して示す概略側面図である。
【図10】従来主桁フルウェブ化工事として行われている支承装置の取替工法にて鋼製橋脚の横梁の下方に増設横梁を設けた状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のD−D方向矢視図である。
【図11】主桁フルウェブ化工事にて各主桁をジャッキアップした状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のE−E方向矢視図、(ハ)は(イ)のF−F方向矢視図である。
【図12】主桁フルウェブ化工事にて中主桁をフルウェブ化した後、増設横梁上に新たに設けた支承装置の上側に各主桁を載置した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は(イ)のG−G方向矢視図、(ハ)は(イ)のH−H方向矢視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 鋼製橋脚(支持構造物)
4,5,6 主桁(被支持構造物)
10 支承装置(既設の支承装置)
11 台座
14 増設横梁(支持構造物)
21 取替用支承装置
22 支承本体
22a 上沓
23 ソールプレート
24 間詰め材充填空間部
25 無収縮モルタル(間詰め材)
25a 間詰め材
26 堰部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにすることを特徴とする支承装置の取替工法。
【請求項2】
支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにする請求項1記載の支承装置の取替工法。
【請求項3】
既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有することを特徴とする取替用支承装置。
【請求項4】
支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材を、硬化性の流体とした請求項3記載の取替用支承装置。
【請求項5】
支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした請求項4記載の取替用支承装置。
【請求項1】
既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所にソールプレートを取り付け、該ソールプレートの下方の支持構造物上に、台座を設けると共に、該台座の上側に支承本体を取り付けて、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に間詰め材充填空間部を形成させ、次に、上記間詰め材充填空間部に間詰め材を入れることで、上記支持構造物と被支持構造物との間に、上記台座と支承本体と間詰め材とソールプレートからなり且つ上記支持構造物と被支持構造物の間隔に応じた上下寸法を有する取替用支承装置を形成し、次いで、上記被支持構造物の既設の支承装置を介した上記支持構造物への荷重の伝達経路を、徐々に破壊することで上記被支持構造物の荷重を該既設の支承装置より上記取替用支承装置へ徐々に盛替えて、該被支持構造物の荷重を取替用支承装置を介して支持構造物へ伝えて支持させるようにすることを特徴とする支承装置の取替工法。
【請求項2】
支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材として、硬化性の流体を用いるようにする請求項1記載の支承装置の取替工法。
【請求項3】
既設の支承装置で支持されている被支持構造物の所要個所に取り付けるソールプレートと、支持構造物上における上記ソールプレートの真下位置に設置するための台座と、該台座上に取り付ける支承本体と、該支承本体の上沓の上面と上記ソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れるための間詰め材を備えてなる構成を有することを特徴とする取替用支承装置。
【請求項4】
支承本体の上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部に入れる間詰め材を、硬化性の流体とした請求項3記載の取替用支承装置。
【請求項5】
支承本体の上沓の外周縁部の上面側に、該上沓の上面とソールプレートの下面との間に形成させる間詰め材充填空間部を取り囲む堰部を設けるようにした請求項4記載の取替用支承装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−144453(P2010−144453A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324214(P2008−324214)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【Fターム(参考)】
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