説明

支持体

【課題】 機械的強度が高く且つ流体拡散性能の高い支持体を提供する。
【解決手段】 支持体12は、内周壁18と、その外周面に突設された16本のリブ状部20と、外周壁16とを備えるため、この支持体12上に電解質膜14が設けられた燃料電池10において、その電解質膜14は、外周壁16を介してそのリブ状部20で支持される。このため、電解質膜14と内周壁18との間に、リブ状部20の相互間隔および高さ寸法に応じた大きさの通気路22がその長手方向に沿って形成される。そのため、多孔質の外周壁16が内周壁18およびリブ状部20によって支持されることから、外周壁16が0.2〜1.0(mm)程度の薄い厚さ寸法に構成されているにも拘らず、支持体12全体として十分に高い機械的強度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の機能を有する筒状の機能膜を支持するための支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体分離フィルターや固体電解質型燃料電池(SOFC)では、分離膜や電解質膜等の所定の機能を有する膜(以下、これらを機能膜という)が薄いほど分離速度や発電量等の性能が高められる。そのため、膜単体で用いる自立膜に代えて、機能膜を薄膜に構成すると共に、肉厚方向に貫通する多数の細孔を備えた多孔質の支持体上にその機能膜を形成すること(すなわち非対称膜に構成すること)により、その機械的強度を補うことが行われている(例えば特許文献1,2を参照。)。
【0003】
また、上記液体分離フィルターやSOFCは、化学プラント用等の実用的な規模での使用を考慮すると、筒状や管状、例えば円筒形状が好ましいと考えられている(例えば特許文献3を参照。)。筒状エレメントは、平板積層構造のものに比べてシールや大型化が比較的容易である。また、複数個を密接させて束ねて構成することもできるため、装置が小型化できる点でも有利である。
【0004】
上記のような事情により、円筒形状の多孔質支持体が用いられているが、非対称膜構造では多孔質支持体の流体(処理対象の液体或いはガス)の拡散性能が装置性能に直ちに影響する。そのため、分離速度の高い液体分離フィルターや発電量の大きいSOFCを製造するためには、流体拡散性の高い支持体が必要になる。
【特許文献1】特許第3128517号公報
【特許文献2】特開2004−082008号公報
【特許文献3】特開2002−083517号公報
【特許文献4】特許第3540495号公報
【特許文献5】特開平11−099324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のような多孔質支持体は、原料を高温で焼き固め、解砕後、再度成形する未焼結法と称される方法で製造されてきた(例えば特許文献4,5を参照。)。一般に、上記のような目的で用いられる支持体の厚さ寸法は、機械的強度の面では厚いほど好ましく、経験上、少なくとも2.0(mm)以上が必要である。また、未焼結法で製造した多孔質体では、粒子相互の接触状態を保ったまま実現し得る気孔率は40(%)が限界で、これを超えると粒子相互の接合部の減少に伴って機械的強度が著しく低下する。そのため、一般に用いられている支持体の気孔率は、20〜40(%)程度であるが、このような支持体では流体拡散性能が低いので、支持体内における流体拡散性能が膜性能に直ちに影響し、機能膜の性能を十分に発揮させることが困難である。特に、機能膜が緻密質に構成される場合には、流体は圧力差では無く物質拡散により移動するため、影響が一層顕著である。すなわち、機械的強度と流体拡散性能とを共に満足させることは困難であった。したがって、機能膜の性能が向上しても、支持体の流体拡散性能がセラミックフィルターやSOFCの性能向上を妨げていた。
【0006】
なお、支持体上に膜を設けた分離膜としては、通気用の多数の孔が開いた金属製のベースパイプを支持体として用い、その外周面に水素透過性金属箔を重ね合わせた水素分離膜が提案されている(例えば、特許文献4,5を参照。)。このような支持体の肉厚方向に直線的に貫通する直管状の孔は、屈曲する連通孔に比べて通気抵抗が著しく小さいため、これらによれば、流体拡散性能を著しく高めることができる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献4,5に記載されているベースパイプは、水素分離に用いることを目的とした金属製多孔質支持体であって、セラミックフィルターやSOFC等に適用できるものでは無い。これらの用途では、温度、圧力等の使用条件や、要求される機械的強度等を考慮するとセラミックスで支持体を構成することが望まれる。金属製円筒には直管孔を容易に設けることができるが、機械加工性に劣るセラミックスに多数の直管孔を設けることは極めて困難である。例えば、成形体や焼結体に機械加工を施すことで特許文献4,5に記載されているものと同様な孔を設けようとすると、一度に形成できる孔数は1乃至数個、多くとも10個未満であるため、多大な手間が必要となる。しかも、曲面に貫通孔を形成するので、位置や寸法形状精度等を確保するためには、複雑な制御が必要となる問題もある。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、機械的強度が高く且つ流体拡散性能の高い支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、所定の機能を有する筒状の機能膜を支持するための支持体であって、(a)長手状を成し且つその長手方向に沿って伸びる筒状面を備えた基体部と、(b)前記筒状面からその径方向に離隔した位置で前記機能膜を支持するためにその筒状面に突設され且つ前記基体部の長手方向に沿って伸びる複数本のリブ状部とを、含むことにある。
【0010】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、所定の機能を有する筒状の機能膜を支持するための支持体であって、(a)長手状を成し且つその長手方向に沿って伸びる筒状面を備えた基体部と、(b)前記筒状面と前記機能膜との間において前記基体部の長手方向に沿って気体を導くための複数本の流体通路とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、支持体は、基体部と、その筒状面に突設された複数本のリブ状部とを備えるため、この支持体上に設けられる機能膜は、そのリブ状部で支持されることになる。すなわち、機能膜が設けられた状態では、機能膜と基体部との間に、基体部の周方向におけるリブ状部の相互間隔とリブ状部の高さ寸法に応じた大きさの隙間がその長手方向に沿って形成される。そのため、処理対象の流体をその隙間に送入すれば、その流体は基体部を厚み方向に透過すること無く機能膜に導かれることになるので、基体部には流体透過性が要求されない。したがって、基体部を緻密或いは低気孔率に構成できることから、支持体自体の機械的強度を基体部で確保することが容易になる。この結果、リブ状部に要求される機械的強度が小さくなるため、基体部と機能膜との間における空隙率を増大させて、基体部から機能膜に向かう方向における流体拡散量を大きくすることが可能となる。上記により、基体部の筒状面に複数本のリブ状部を設けただけの簡単な構造で、機械的強度を確保しつつ流体拡散量を大きくすることができるので、機械的強度が高く且つ流体拡散性能の高い支持体が得られる。
【0012】
また、第2発明によれば、支持体は、基体部と、基体部および機能膜間に備えられた複数本の流体通路とを有し、それら複数本の流体通路内を基体部の長手方向に沿って流体が導かれる。そのため、処理対象の流体をその流体通路に送入すれば、その流体は基体部を厚み方向に透過すること無く機能膜に導かれることになるので、基体部には流体透過性が要求されない。したがって、基体部を緻密或いは低気孔率に構成できることから、支持体自体の機械的強度を基体部で確保することが容易になる。この結果、流体通路の基体部以外の構成要素に要求される機械的強度が小さくなるため、基体部と機能膜との間における空隙率を増大させて、基体部から機能膜に向かう流体拡散量を大きくすることが可能となる。上記により、基体部の筒状面上に複数本の流体通路を設けただけの簡単な構造で、機械的強度を確保しつつ流体拡散量を大きくすることができるので、機械的強度が高く且つ流体拡散性能の高い支持体が得られる。
【0013】
ここで、好適には、前記第1発明の支持体は、厚み方向に貫通する多数の連通孔を有する膜受け部を前記機能膜を支持するために前記複数本のリブ状部上に備えたものである。このようにすれば、リブ状部が基体部とは反対側に位置する先端を開放した形状とされている場合に比較して、機能膜の支持面積が大きくなるため、膜厚の一層薄い機能膜を設けることが可能な支持体が得られる。
【0014】
なお、上記膜受け部は、前記筒状面の周方向において連続するものであってもよいが、周方向において断続する形状も可能である。例えば、複数のリブ状部の各々の先端部の側面が筒状面の周方向に延長された形状とすることもできる。この態様において、延長部分は周方向の両側に設けられても、一方側に設けられてもよい。なお、このように断続する形状の場合には、その連続が断たれた部分において膜受け部の貫通孔を構成し得るので、その貫通孔の全体積が十分に大きくなるのであれば、膜受け部の実体部分は緻密に構成されていても差し支えない。
【0015】
また、前記膜受け部は、前記基体部およびリブ状部とは別に成形され、そのリブ状部の先端に接合されたものである。膜受け部は前述したように多孔質であることが要求されるが、このようにすれば、強度が要求される基体部を緻密質に構成することができるため、支持体の機械的強度の確保が一層容易になる。好適には、基体部およびリブ状部は押出成形法等を用いて一体的に成形され、膜受け部はテープ成形法等を用いて成形された後、それら基体部およびリブ状部に巻き付けて焼成処理によって一体化させられる。
【0016】
また、好適には、前記膜受け部の厚さ寸法は1(mm)以下である。このようにすれば、機能膜を支持するために設けられた多孔質の膜受け部の膜厚が十分に薄くされているため、その膜受け部による流体拡散量の低下が抑制される。因みに、基体部を有しない支持体においては、前述したように、膜受け部に相当する部分の厚さ寸法は、機械的強度確保のために少なくとも2(mm)以上にする必要がある。第1発明によれば、基体部によって機械的強度が確保されることから、多孔質体の膜受け部で機能膜を支持する態様としても、機械的強度を何ら犠牲にすることなく、その膜受け部の膜厚を1(mm)以下に留めることができる。1(mm)以下の薄い膜であれば、未焼結法等で形成された屈曲し且つ小さい細孔が設けられたものであっても、流体拡散性能に対する影響は無視できる程度に小さくなる。そのため、機械的強度を確保しつつ、機能膜を一層薄くすることの可能な支持体が得られる。
【0017】
また、前記膜受け部は、前述したように厚さ寸法を1(mm)以下にすることが好ましく、0.2〜1(mm)の範囲内の厚さ寸法とすることが最も好ましい。厚さ寸法を0.1(mm)以下にすると、機械的強度が著しく低くなると共に成形も困難になる。
【0018】
また、好適には、前記第1発明および前記第2発明の支持体は、押出成形によって成形されたものである。支持体は、長手状の基体部と、その基体部の長手方向に沿って伸びるリブ状部或いは流体通路とを備えたものであるから、その長手方向において一様な断面形状を有する構成を採り得る。そのため、簡易且つ長さ寸法の長いものであっても容易に成形可能な押出成形法を採用することにより、一層簡単に製造することが可能となる。
【0019】
また、好適には、前記基体部は、断面形状の一様な筒状を成すものである。このようにすれば、基体部が中実に構成される場合に比較して、その筒状面に備えられるリブ状部や前記膜受け部との肉厚寸法の相違を小さくすることができる。そのため、押出成形法による成形が一層容易になる。しかも、必要な材料が少なくなるため一層安価に製造することが可能になる。また、支持体重量が減じられることから、取扱いが容易になると共に、酸素分離膜を備えた装置に必要な機械的強度が減じられるので、製造費用が一層安価になり、更に輸送費用も低廉になる利点がある。
【0020】
また、好適には、前記基体部は、前記膜受け部の厚さ寸法の1〜3倍の範囲内の厚さ寸法を備えた筒状に構成される。このようにすれば、基体部の機械的強度を十分に大きく保つことができる。前述したように膜受け部は0.2〜1(mm)の範囲内の厚さ寸法にすることが好ましいので、基体部は、0.2〜3(mm)の範囲内の厚さ寸法とすることが好ましい。
【0021】
また、好適には、前記リブ状部は、0.5〜2(mm)の範囲内の厚さ寸法を備えたものである。リブ状部は機能膜或いは膜受け部をこれらの径方向における変形が許容範囲内に留まるように支持する必要があることから、0.5(mm)以上の厚さ寸法を有することが望ましい。その一方、厚さ寸法が厚くなるほど、支持体の長手方向における流体流通の妨げになるので、可及的に薄いことが望ましく、2(mm)以下の厚さ寸法に留めることが好ましい。上記許容範囲は、例えば10(%)以下である。
【0022】
また、リブ状部の径方向長さ寸法は、0.5〜10(mm)の範囲内が好ましい。流体流通断面積の確保のために大きい方が好ましいが、大きくするほど機械的強度は低下する。したがって、これらを共に満足させるために上記の範囲が好ましい。
【0023】
また、好適には、前記基体部および前記リブ状部は一体的に成形されたものである。これらは別々に成形したものを接合してもよいが、一体成形することが製造コスト面および機械的強度面で有利である。
【0024】
また、前記基体部、前記リブ状部、および前記膜受け部は、一体的に構成されていてもよい。このようにすれば、全体を多孔質に構成する必要があるが、気孔率を十分に小さくしつつ膜受け部を十分に薄くすれば十分な特性を得ることが可能である。すなわち、基体部およびリブ状部は、緻密質であってもよく、多孔質であっても良い。
【0025】
また、好適には、前記リブ状部は、前記基体部の外周側に設けられる。リブ状部は、機能膜を基体部から離隔して支持するためのものであるため、基体部が筒状を成す場合には、そのリブ状部および機能膜を基体部の内周側に設けることも可能である。しかしながら、これらを外周側に設ける方が製造が容易であるため好ましい。
【0026】
また、前記機能膜は、予めテープ成形した機能膜材料を前記リブ状部に巻き付けることによって設けることができる。或いは、前記膜受け部が基体部の周方向に連続的に形成される場合には、その膜受け部の表面に機能膜材料をディップコーティング等の適宜の方法で塗布することによって前記機能膜を設けることもできる。何れの場合にも、必要に応じて、焼成処理等が施される。
【0027】
また、好適には、前記リブ状部は、前記筒状面の径方向の各方向に広がるように放射状に設けられる。リブ状部は、例えば周方向において10〜90度の範囲内の間隔で設けることができる。
【0028】
また、好適には、前記支持体は、セラミックスから成るものである。前述したように、液体分離やSOFC等の用途では温度、圧力等の使用条件や、要求される機械的強度等を考慮すると、セラミックスで支持体を構成することが望ましい。
【0029】
なお、前記支持体の構成材料は、特に限定されず、用途に応じた適宜のものを用い得る。例えば、液体分離やSOFC等の用途では、セラミック材料が好ましいが、特に、パーベーパレーション(浸透気化分離)等の水分離用途では、導電性が無用であることから、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、コーディエライト、窒化珪素、チタニア等を好適に用い得る。また、SOFC用途では、支持体が導電性を有していることが好ましいことから、ランタノイド系ペロブスカイト型複合酸化物が好適に用いられるが、安定化ジルコニアやセリア等も機械的強度の面で好ましい。
【0030】
上記ランタノイド系ペロブスカイト型複合酸化物としては、例えば、LaSrGaFeO3、LaSrTiFeO3、LaSrCoO3、LaSrCoFeO3、LaSrMnO3等が挙げられる。これらはイオン伝導性および電子伝導性が高く、且つ支持体自体も酸素透過作用を有する利点がある。また、これらのペロブスカイト型複合酸化物と、その熱膨張係数を調節するためのNi等の金属との混合材料も好ましい。
【0031】
上記安定化ジルコニアの安定化剤は特に限定されず、イットリア、セリア、マグネシア等、種々の安定化剤を添加したものを用いることができる。また、安定化ジルコニアとNi等の金属とを混合して熱膨張係数を機能膜構成材料に合わせたものも好ましい。
【0032】
また、前記機能膜は、用途に応じた適宜の材料で構成されたものを用い得るが、例えば、SOFC用途では、LaSrGaMgO3、LaSrTiFeO3等のランタノイド系ペロブスカイト型複合酸化物、スカンジア安定化ジルコニア(Sc-ZrO2)、イットリア安定化ジルコニア(Y-ZrO2)等の安定化ジルコニア、ガドリニア安定化セリア(Gd-CeO2)等の安定化セリア等が挙げられる。また、水とエタノールやIPA等との混合液からの水分離用途では、ゼオライト等が挙げられる。
【0033】
因みに、ゼオライトは含水アルミノケイ酸塩の一種である沸石群の総称で、一般式はAmBxO2x・sH2Oで表され(但し、AはCa,Na,K,Sr,Mg,Mn等、BはSiまたはAl。)、三次元網目構造を有する。構造中に含まれている水分子は可逆脱水され易く、陽イオン交換特性が大きい特徴があるので、分子篩や水分離用途等に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0035】
図1は、本発明の一実施例の単セルの燃料電池10を示す斜視図である。燃料電池10は、筒状の支持体12と、その表面に固着された電解質膜14とを備えている。
【0036】
上記の支持体12は、例えば外径15.0(mm)×内径8.0(mm)×長さ300(mm)程度の大きさで、略円筒形状を成すものである。図2に上記燃料電池10の端面を示すように、この支持体12には、例えば外径15.0(mm)×内径13.5(mm)程度の外周壁16と、例えば外径10.5(mm)×内径8.0(mm)程度の内周壁18と、それら外周壁16と内周壁18とを接続する例えば16本のリブ状部20とが備えられている。
【0037】
また、支持体12は、例えば、LaSrTiFeO3から成る気孔率が30(%)程度の多孔質体で、外周壁16は0.2〜1(mm)程度、内周壁は1.5(mm)程度の厚さ寸法を備えている。また、上記リブ状部20は、例えば1(mm)程度の一様な厚さ寸法を備え、外周壁16および内周壁18の周方向において均等に、すなわち22.5度毎に設けられている。このため、外周壁16および内周壁18間には、支持体12の長手方向に沿って伸びる16本の通気路22が形成されている。また、外周壁16、内周壁18、およびリブ状部20には、それぞれの厚み方向に貫通する屈曲した多数の連通孔が形成されている。
【0038】
また、前記電解質膜14は、例えば、LaSrGaFeO3等の酸素イオン伝導性材料から成るものであって、例えば100(μm)程度の厚さ寸法を備えた緻密質の薄膜である。したがって、電解質膜14を含む燃料電池10全体の外径寸法は、例えば50(mm)程度になっている。本実施例においては、内周壁18が基体部に、外周壁16が膜受け部にそれぞれ相当する。
【0039】
なお、図示は省略するが、電解質膜14の内周側すなわち支持体12の外周面と電解質膜14の間、または支持体12の内周面には、例えばLa0.8Sr0.2CoO3等から成る空気極触媒層が設けられており、電解質膜14の外周面にはNi等から成る燃料極触媒層が設けられている。
【0040】
以上のように構成された燃料電池10は、図3に示すように、支持体12の一端を例えば半球状のキャップ24で閉じた状態で、例えば800(℃)程度の所定の動作温度に保持し、図示しない他端側から通気路22内に酸素を含む気体例えば空気を送入する一方、外周面に向かって或いは外周面に沿って水素等の燃料ガスを供給して用いられる。すなわち、空気極触媒層側に空気を、燃料極触媒層側に燃料ガスを供給する。なお、図3においては電解質膜14や触媒層を省略した。
【0041】
このとき、本実施例によれば、支持体12は、内周壁18と、その外周面に突設された16本のリブ状部20と、外周壁16とを備えるため、この支持体12上に電解質膜14が設けられた燃料電池10において、その電解質膜14は、外周壁16を介してそのリブ状部20で支持される。このため、電解質膜14と内周壁18との間に、リブ状部20の相互間隔および高さ寸法に応じた大きさの通気路22がその長手方向に沿って形成される。そのため、多孔質の外周壁16が内周壁18およびリブ状部20によって支持されることから、外周壁16が0.2〜1.0(mm)程度の薄い厚さ寸法に構成されているにも拘らず、支持体12全体として十分に高い機械的強度を有している。すなわち、本実施例によれば、外周壁16を十分に大きな空気拡散量を得るために十分な薄い厚さ寸法に構成しながら、高い機械的強度を確保できている。
【0042】
ところで、上記の燃料電池10は、例えば、以下のようにして製造される。以下、図4の工程図を参照しつつ製造方法の一例を説明する。
【0043】
先ず、混練工程P1においては、支持体12を構成するためのLaSrTiFeO3やNi-YSZ、Ni-SSZ、Ni-LaSrTiFeO3、LaSrCoO3、LaSrCoFeO3、LaSrMnO3等の原料粉末に、ワックス、溶剤、分散剤、バインダー、および可塑剤を順次に混合し、例えばニーダーを用いて20分程度の混練処理を施すことにより、押出成形用の坏土を調製する。溶剤は、バインダー等の種類に応じて適宜定められるが、例えば水を用いる。また、バインダーは、例えばエチルセルロースを用いる。また、可塑剤は、例えばポリオキシアルキレン系等を用いる。
【0044】
次いで、押出成形工程P2においては、所定形状の口金を取り付けた押出成形装置を用い、上記坏土を押し出して前記支持体12を成形する。成形体は、例えば室温〜100(℃)程度の乾燥条件で乾燥処理を施す。成形条件は、例えばオーガー回転数が60回転/分、押出圧が50(bar)程度である。なお、この回転数および圧力は、成形しようとする成形体の形状および各部の肉厚、原料に応じて定められる坏土の調合仕様に応じて適宜決定される。
【0045】
次いで、巻取り工程P3では、例えば別途成形した外周壁16用の成形体を上記押出成形体の外周に巻き付ける。なお、内周壁18,リブ状部20、および外周壁16が一体的に成形される場合には、この工程は不要である。
【0046】
次いで、焼成工程P4では、用いた原料に応じて定められる適宜の温度および時間、例えば前記の原料では1400(℃)で例えば6時間の焼成処理を施す。これにより、押出成形体の焼結がある程度進み、気孔率が30(%)程度の多孔質の支持体12が得られる。
【0047】
次いで、製膜工程P5では、前記の電解質膜14の構成材料を溶媒、バインダー、可塑剤、および分散剤等を加えて、混合してスラリーを調製し、上記の支持体12をこれに浸漬することにより、その外周面に電解質スラリーをディップコートする。これに乾燥処理を施し、スラリー中の原料に応じて所定の焼成温度、例えば大気中で1000〜1600(℃)程度の温度で3時間程度保持して、スラリーから緻密質の電解質膜14を生成させることにより、前記の燃料電池10が得られる。
【0048】
上記のような構成例および製造方法例において、支持体構成材料および電解質膜構成材料を種々変更して燃料電池10を製造し、発電量を評価した結果を表1に示す。表1において、「膜材料」は、前記電解質膜14の構成材料を表しており、膜厚みは全て100(μm)である。また、発電量は、図5(a)、(b)に示すように集電用金属箔26,28を設けると共に、一端を封止部材30でシールし、800(℃)にて、燃料極側に水素ガスを500(cc/min)程度の流速で、空気極側に空気を2000(cc/min)程度の流速でそれぞれ供給して測定した。16本の通気路22の各々に設けられた集電用金属箔26、および燃料電池10の外周面に設けられた集電用金属箔28は、何れも厚さ寸法が0.2(mm)程度の耐熱金属で構成されている。なお、各構成例において、支持体材料および膜(すなわち電解質)材料が異なる他は、燃料電池10を全て前述したような形状および寸法に構成して評価した。
【0049】
【表1】

【0050】
上記の評価結果に示すように、本実施例によれば、何れの支持体材料および膜材料の組合せにおいても、0.8〜1.3(W/cm2)程度の十分に大きな発電量が得られることが確かめられた。本実施例によれば、電解質膜14が実質的に0.2〜1.0(mm)の厚さ寸法に過ぎない外周壁16で支持されると共に、その外周壁16の内周側には、支持体12の長手方向に沿って伸びる複数本の通気路22が備えられることにより、その外周壁16の内面に十分に多い量の気体が供給されることから、電解質膜14の構成材料の高い特性が好適に発揮され、上記のような大きな発電量が得られるのである。
【0051】
下記の表2は、従来の未焼結法で製造した支持体を上記支持体12に代えて用いた比較例の燃料電池の発電量測定結果をまとめたものである。比較例の支持体は、用いた材料が実施例の支持体12と同様で、製造方法および支持体形状が相違する。比較例の支持体の製造方法は以下の通りであり、外径15(mm)程度、内径8(mm)程度の円筒形状に成形して、外周面に空気極触媒層、電解質層、燃料極触媒層を順次に積層形成した。これら3層の厚さおよび構成材料は実施例と同一である。
(1)原料を所定の焼成温度(第1の温度)で焼成する。
(2)焼成体を解砕、粉砕する。
(3)この原料を用いて、前記の支持体の製造工程に従って押出成形し、所定の焼成温度(第2の温度)で焼成する。
上記の製造工程において、第1の温度は、第2の温度と同一またはそれよりも高い温度である。
【0052】
【表2】

【0053】
上記の表2に示すように、未焼結法で製造した支持体を用いた燃料電池は、支持体材料も膜材料も同一であるにも拘わらず、発電量が0.1〜0.4(W/cm2)程度の低い値に留まった。この支持体では、強度確保のために2(mm)程度の厚さ寸法に構成されている支持体周壁を空気が透過する必要があるが、その周壁は原料粒子相互の隙間で気体流路が形成され且つ20〜40(%)の気孔率であるため、空気の十分な拡散量が得られない。そのため、発電量が低くなるのである。
【0054】
上記実施例および比較例によれば、支持体のみの相違で著しく発電量が相違することが明らかで、本実施例の支持体が燃料電池用途に好ましいことが判る。
【0055】
また、以下の表3は、支持体12と同様な形状の支持体を作製し、その外周面にゼオライト膜を20(μm)程度の厚さ寸法で形成した分離膜を用いて、90(wt%)エタノール水溶液から水を分離した試験結果を、比較例(未焼結法)と併せて示したものである。なお、この実施例では、支持体構成材料としてアルミナを選択したが、支持体各部の寸法は、例えば前記支持体12と同一である。
【0056】
【表3】

【0057】
試験に際しては、分離膜の温度を80(℃)に保ち、上記のゼオライト膜側にエタノール水溶液を供給して、支持体内周側から真空吸引した。この結果、未焼結法で作製した支持体を用いた場合には、分離された水の透過流束が4(kg/m2g)程度に留まったのに対し、実施例の支持体を用いた場合には、13(kg/m2g)程度の高い透過流束が得られた。分離係数は同程度であった。すなわち、このような水分離用途においても、本発明の支持体は好適に用いられる。
【0058】
なお、上記ゼオライト膜は、例えば、珪酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、水を原料として、水熱合成法によって製膜したものである。製膜するに際しては、まず、支持体に種結晶を塗布する。次いで、上記原料を例えばNa2O:SiO2:Al2O3:H2O=2:2:1:30〜40の原料モル比で均一に混合撹拌してアルミノシリケートゲルを調製する。次いで、このゲルを80(℃)に加熱し、種結晶を塗布した支持体をこれに6時間漬ける。これにより、支持体表面に形成されたゲル状物質中で核発生と結晶成長が起こり、緻密なゼオライト結晶が生成される。
【0059】
図6は、本発明の他の実施例の支持体32の構成を説明するための前記図2に対応する図である。図6において、支持体32は、円筒状の外周壁34と、円柱状の内周基体部36と、内周基体部36の外周面と外周壁34の内周面との間に設けられたリブ状部38とを備えている。リブ状部38は、前記リブ状部20と同様に支持体32の長手方向に沿って伸びる長手状に構成されている。本実施例においては、外周壁34がリブ状部38によって内周基体部36の円筒状外周面から外周側に離隔して支持されることにより、それらの間に例えば16本の通気路40が形成されている。
【0060】
また、上記支持体32は、支持体12と同様に全体が多孔質材料で構成されている。また、外周壁34の厚さ寸法は、外周壁16と同様に0.2〜1.0(mm)程度である。なお、本実施例においても、支持体32は、その外周面を緻密質の電解質膜14やゼオライト膜で覆うことにより、燃料電池や水分離膜として用いられる。
【0061】
例えば、燃料電池として用いられる場合には、電解質膜14を設けた状態で通気路40に酸素を含む気体が送り込まれると、その気体は、支持体32の長手方向に沿って流れる過程で薄い外周壁34を外周側に透過する。外周側に透過した気体は、電解質膜14に接触し、酸素がイオン化させられることにより、選択的にその電解質膜14を透過させられて燃料ガスと反応させられる。
【0062】
なお、本実施例では、支持体32の内周部が中実に構成されているため、前記図3に示されるようなキャップ24を設け、全ての通気路40に空気を供給して内周部の貫通孔から排出させる使用方法を採ることはできないが、一端から送り込まれた空気を他端から排出するように構成し、或いは、キャップ24を設けて通気路40のうちの一部を空気供給用に、残部を排出用に利用する使用方法を採ることにより、同様に燃料電池や水分離膜として利用できる。
【0063】
図7は、更に他の実施例の支持体42の構成を説明する図である。この支持体42は、円筒状の内周壁部44と、その外周面に長手方向に沿って設けられた16本のリブ状部46とを備えているが、そのリブ状部46の先端側は開放されており、外周壁部は備えられていない。支持体42は、例えば、全体が通気性の無い(或いは著しく低い)緻密質体に構成されている。
【0064】
上記支持体42は、例えば、図7に一点鎖線で示すようにリブ状部46上に膜48を円筒状に設けて用いられる。例えば、多孔質体で上記膜48を構成する場合には、その膜48が電解質膜14を受けるための膜受け部として機能するので、前記支持体12と同様に用いることができる。このとき、支持体42は、内周壁部44およびリブ状部46に通気性が要求されないことから、前記のように支持体42全体を緻密質に構成することができる。そのため、膜受け部として機能する部分を一体的に構成した多孔質の支持体12等に比較して、機械的強度が一層高められる利点がある。
【0065】
また、緻密質の電解質で上記膜48を構成する場合には、この膜48を以て前記電解質膜14を代替させ、その両面に触媒層を設けることにより、前記燃料電池10と同様な燃料電池を構成することもできる。すなわち、膜受け部が省略された構成とすることも可能である。このような構成では、その電解質膜と内周壁部44との間の空間がそのまま通気路として機能するため、電解質膜を面で受ける多孔質の膜受け部が備えられている場合に比較して、支持体42がガス拡散に及ぼす影響が著しく小さくなる利点がある。
【0066】
なお、上記態様において、リブ状部46の先端部の間隔は、膜48を支持するために適当な大きさになるように適宜調節すればよい。例えば、リブ状部46の厚さ寸法を厚くして膜48の受け面を広くし、或いは、リブ状部46の本数を増せばよい。
【0067】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例の燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1の燃料電池の端面形状を示す図である。
【図3】図1の燃料電池の使用形態を説明する模式図である。
【図4】図1の燃料電池の製造方法の要部を説明するための工程図である。
【図5】図1の燃料電池の集電用金属箔の配置を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施例の支持体の端面形状を示す図である。
【図7】本発明の更に他の実施例の支持体の端面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10:燃料電池、12:支持体、14:電解質膜、16:外周壁、18:内周壁、20:リブ状部、22:通気路、24:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する筒状機能膜を支持するための支持体であって、
長手状を成し且つその長手方向に沿って伸びる筒状面を備えた基体部と、
前記筒状面からその径方向に離隔した位置で前記機能膜を支持するためにその筒状面に突設され且つ前記基体部の長手方向に沿って伸びる複数本のリブ状部と
を、含むことを特徴とする支持体。
【請求項2】
前記機能膜を支持するために、厚み方向に貫通する多数の連通孔を有する膜受け部を前記複数本のリブ状部上に備えたものである請求項1の支持体。
【請求項3】
前記膜受け部は、前記基体部およびリブ状部とは別に成形され、そのリブ状部の先端に接合されたものである請求項2の支持体。
【請求項4】
前記膜受け部の厚さ寸法は1(mm)以下である請求項2または請求項3の支持体。
【請求項5】
所定の機能を有する筒状機能膜を支持するための支持体であって、
長手状を成し且つその長手方向に沿って伸びる筒状面を備えた基体部と、
前記筒状面と前記機能膜との間において前記基体部の長手方向に沿って流体を導くための複数本の流体通路と
を、含むことを特徴とする支持体。
【請求項6】
押出成形によって成形されたものである請求項1乃至請求項5の何れかの支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−36500(P2008−36500A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212534(P2006−212534)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】