支柱保護用ゴム巻装帯
【課題】支柱を取り外すことなくゴム巻装帯を交換して、スリーブの保護を行うと共に、支柱の基部への水の滲透を防止する。
【解決手段】鋼管製の支柱11の基部11aに、スリーブ15により防水処理を施してから地中に埋設する。スリーブ15の上部にゴム巻装帯17を巻装し、内部の基部11aに水の浸入を防止する。ゴム巻装帯17の上部は直接に支柱11に密着して、支柱11との間からの雨水の侵入を防止すると共に、更にはスリーブ15の上部を抑さえ付けて、スリーブ15の太陽光や風雨による劣化を防止する。
【解決手段】鋼管製の支柱11の基部11aに、スリーブ15により防水処理を施してから地中に埋設する。スリーブ15の上部にゴム巻装帯17を巻装し、内部の基部11aに水の浸入を防止する。ゴム巻装帯17の上部は直接に支柱11に密着して、支柱11との間からの雨水の侵入を防止すると共に、更にはスリーブ15の上部を抑さえ付けて、スリーブ15の太陽光や風雨による劣化を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガードレールを支持する鋼製支柱の腐食を防止するための支柱保護用ゴム巻装帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速道路等に設けるガードレール1は、図12に示すように帯状の鋼板を成形したものを、所定の長さごとに支柱2により支える構造になっている。この支柱2は直径が15cm程度の円筒、或いは一辺が12cm程度の四角筒の鋼管により製作し、頂部に防水用のキャップ3を被せている。支柱2の長さは使用する場所によって異なり、通常では普通の道路のように基部を土中に埋設する場合は長く、橋梁のように土の層がなく、基部全体をコンクリート構造物中に埋設する場合は短いものが使用されている。
【0003】
一般に、地中に埋設する場合には、コンクリート4の舗装に設けた内径20cmほどの埋設孔5に支柱2の基部2aを挿入し、下端部2bの周囲にアスファルト又はセメントモルタルのような道路補修材6を置き、その上の周囲の空所には地表面近くまで砂7を充填し、最後に支柱2の地表付近を再び道路補修材6で覆って固定している。
【0004】
このようにして固定した支柱2には、数年から早い場合は数ヶ月で腐食による錆が生ずることが認められている。錆は地中であれば、埋設された地表面付近から下方に向かって、約20cmから深い場合は40cmまでの範囲において生じ、或る範囲よりも深い部分では、あまり錆が見られない。この腐食の原因は雨水の滲透により、この位置の支柱2の周囲が湿った状態にあり、局部電池が形成されるマクロセル現象が生じて電流が流れたり、迷走電流が流れたりするためとされている。
【0005】
従来から、その対策として支柱2に対する塗装が行われているが、効果的とは云えず、抜本的な解決策が求められている。同様な問題はガードレールに限らず、照明灯のような鋼管製のポールを設置する場合にも同様である。
【0006】
そのための対策として、特許文献1が開示されている。特許文献1には図13に示すように、支柱2が埋設される部分のうち、腐食が生じ易い部分を、ブチルゴムから成る両面粘着シート8を介して合成樹脂製のスリーブ9を巻回する防食処理を施してから、予め設けた埋設孔5の中に挿入する。そして、基部2aの防食を必要とする部分の周囲の地表面近くまで砂7を充填した後に、砂7の上の地表面よりも若干上の位置に至る部分を、道路補修材6により覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4211870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1においても、年数の経過に従い、合成樹脂製のスリーブ9、ブチルゴムから成る両面粘着シート8は太陽光や風雨により劣化が進行する。また、支柱2と道路補修材6との隙間を介して支柱2とスリーブ9との間に雨水が滲透することがある。
【0009】
この問題を解決するために、本出願人の一人はスリーブ9の上縁に、図14に示すような円筒状のゴム製カバー10を挿着する発明を出願している。
【0010】
このゴム製カバー10は支柱2に密着すると共に、スリーブ9を支柱2に対し強く押し付けているために、スリーブ9等を太陽光等から保護すると共に、外部からの雨水の浸入が防止される。しかし、ゴム製カバー10は新しい支柱2に挿通してから埋設する場合には好適であるが、ゴム製カバー10は太陽光等に晒されているため劣化し易く、交換を必要とすることが屡々ある。この場合には、ガードレール1等を支柱2から取り外してから、新たなゴム製カバー10を支柱2の上方から挿通して被着しなければならない厄介さがある。
【0011】
本発明の目的は、従来の円筒状のゴム製カバーに代えて使用でき、既設の支柱に対しても対応が容易であり、スリ−ブを保護すると共に、耐水能力に優れた支柱保護用ゴム巻装帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯は、基部を合成樹脂製のスリーブで覆うことにより防水処理を施して地中に埋設する金属製の支柱に、前記スリーブの上部に巻装して、雨水の前記スリーブ内への浸入を防止する支柱保護用ゴム巻装帯であって、弾性を有するベルト状の合成ゴムに、前記スリーブの上端を覆う段部を設け、両端部を重ね合わせて固定金具により前記支柱、前記スリーブに密着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯によれば、支柱を抜き取ることなく交換が可能であり、スリーブを太陽光等から保護し、支柱とスリーブとの間への雨水の滲透が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の支柱を埋設した状態の断面図である
【図2】ゴム巻装帯の正面図である。
【図3】ゴム巻装帯の背面図である。
【図4】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図7】図2のD−D線に沿った断面図である。
【図8】固定金具の斜視図である。
【図9】固定金具をゴム巻装帯の端部に取り付けた状態の斜視図である。
【図10】ゴム巻装帯を着装する前の支柱の断面図である。
【図11】ゴム巻装帯の端部同士を重合した状態の断面図である。
【図12】従来のガードレール支柱の基部を土中に埋設した状態の断面図である。
【図13】従来例の腐食を防いだ状態の支柱の断面図である。
【図14】ゴム製キャップを被着した状態の支柱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図1〜図11に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は図示しないガードレールを上部に取り付けた円筒状の支柱の基部を、橋梁などのコンクリート構造物等の地中に埋設した状態における実施例の断面図を示している。支柱11の埋設部分である基部11aは、コンクリート12に設けられた埋設孔13中に挿入されている。支柱11の基部11aには、粘着シート14を介して合成樹脂製のスリーブ15が巻き付けられている。スリーブ15の上部は固定金具16により円筒状に係止されたベルト状のゴム巻装帯17が巻回されている。支柱11の底部にアスファルトやモルタル等の道路補修材18を敷き、その上に砂19を充填し、更にその上に道路補修材18を充填し、道路補修材18はゴム巻装帯17の裾部まで覆い、裾部の周囲の道路補修材18は円錐台形状の余盛とされている。
【0016】
ゴム巻装帯17はその弾性を利用して支柱11を絞め付けて巻装することにより、支柱11とゴム巻装帯17との間が密着し、更にはスリーブ15は支柱11と密着するので、スリーブ15の内側への雨水の滲透が防止され、防食効果が発揮される。また、道路補修材18による円錐台形の余盛りを施して傾斜面を形成し、水はけを良くすることが好ましい。更に、ゴム巻装帯17の下端は地表面にほぼ合致した高さとして、スリーブ15が太陽光と大気に晒されないようにして、スリーブ15、粘着シート14を保護する。
【0017】
粘着シート14の材料としては、未加硫のブチルゴムが好適であり、粘着性を有するシートの表面に離型紙を貼ったものが好都合に使用できる。一方、スリーブ15は帯状の材料を支柱11に引き伸ばしながら巻き付けたとき、両端の削いだ部分同士が重なり合って、被覆が円筒状に形成される。スリーブ15の材料は耐候性を有する合成樹脂材であればよいが、特にポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンが好適である。スリーブ15は粘着シート14を巻いた支柱11の基部11aに覆う作業に際して、スリーブ15が持つ適度の弾性を利用して支柱11に密着させることができる。
【0018】
図2はゴム巻装帯17の正面図、図3は背面図、図4は図2のA−A線に沿った断面図、図5はB−B線に沿った断面図、図6はC−C線に沿った断面図、図7はD−D線に沿った断面図であり、図8はゴム巻装帯17の両端部を固定する固定金具16の斜視図である。
【0019】
ゴム巻装帯17の成形方法は任意であって射出成形が最適であるが、長尺のバンド体を加工して製造することもできる。ゴム巻装帯17の材料には、耐候性に優れていることが要求されるため、ニトリルゴムを始めとして数種類の合成ゴムが知られているが、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ターポリマゴム)が好適である。
【0020】
ゴム巻装帯17の寸法は支柱11の径によって異なるが、例えば直径が11cmの支柱11に対しては、支柱11の外径にシート14の厚さとスリーブ15の厚さとの合計を加えた直径の外周より若干小さく、両端部の重合部を含めて37cmであり、高さ(幅)は57mm、厚さは1.5mmである。ゴム巻装帯17の上部は長手方向に沿って肉厚部とされ、段部17aとなって内側に張り出されており、段部17aの高さは7mm、厚みは5.5mmとされている。また、段部17aの外側部分は水切りを良くするために傾斜面17bとされている。
【0021】
ゴム巻装帯17の両端は重合部とされ、その一方の主端部17cは肉厚部とされ、他方の副端部17dが内側から重なり合うようにされている。また、主端部17cの内側には上下方向に係止溝17eが設けられ、副端部17dの外側には係止溝17eに嵌まり込む係止凸部17fが形成されている。更に、主端部17cは固定金具16の舌片部16bを挿入するための複数個の切込み17g、副端部17dには同様に複数個の切込み17hが設けられている。
【0022】
固定金具16は金属板、好ましくは錆の発生を考慮してステンレス板を打ち抜いて形成されており、基板部16aの両側に複数個の短舌片部16b、長舌片部16cが付設されている。例えば、固定金具16の厚みは0.3mm、基板部16aの長さは45mm、幅は12.6mm、短舌片部16bの長さは5.3mm、長舌片部16cの長さは10.3mmとされている。
【0023】
使用に際しては、図8に示すように各舌片部16b、16cは折曲され、図9に示すようにゴム巻装帯17の副端部17dの裏側に基板部16aを当接し、短舌片部16b、長舌片部16cを各切込み17g、17hに挿通し、短舌片部16bの先端を副端部17dの外側において、副端部17dの先端側に向けて折り曲げて固定しておく。
【0024】
既設の支柱11に対して、ゴム巻装帯17を交換する場合には、図10に示すように、道路補修材18を除去し、使用済みのゴム巻装帯17やゴム製カバーを取り外してスリーブ15を露出し、その上にこのゴム巻装帯17を巻装する。
【0025】
この巻装に際しては、ゴム巻装帯17を引き伸ばし、スリーブ15の上端に段部17aが係合するように取り付けることにより、ゴム巻装帯17の上下方向の位置が定まる。この状態で、ゴム巻装帯17を引き伸ばしながら、副端部17dの係止凸部17fを主端部17cの係止溝17eに嵌合すると、ゴム巻装帯17を仮巻装することができる。
【0026】
更に、固定金具16の長舌片部16cを主端部17cの切込み17gに挿通した後に、図11に示すように長舌片部16cを主端部17cの外側において、主端部17cの先端側に向けて折り曲げる。これにより、ゴム巻装帯17の主端部17cと副端部17dは固定金具16によりかしめ止められ、ゴム巻装帯17の支柱11、スリーブ15への巻装が完了する。
【0027】
その後に、支柱11の基部11aの周囲に砂19を埋め戻し、その上に道路補修材18を充填すると、図1に示すように防食、防水処理が施された支柱11が得られ、このような処理を施した支柱11は、図14に示した支柱2と同様に、防食性、防水性が十分に確保される。
【0028】
なお、新たな支柱11にこのゴム巻装帯17を巻装する場合には、工場においてスリーブ15の上に上述したように巻装した後に、現地において支柱11を埋設すればよい。
【0029】
また、支柱11が四角筒の場合においても、同様に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯は、ガードレール用の支柱のみならず、照明灯のポールのような鋼管柱に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0031】
11 支柱
11a 基部
12 コンクリート
13 埋設孔
14 粘着シート
15 スリーブ
16 固定金具
17 ゴム巻装帯
18 道路補修材
19 砂
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガードレールを支持する鋼製支柱の腐食を防止するための支柱保護用ゴム巻装帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速道路等に設けるガードレール1は、図12に示すように帯状の鋼板を成形したものを、所定の長さごとに支柱2により支える構造になっている。この支柱2は直径が15cm程度の円筒、或いは一辺が12cm程度の四角筒の鋼管により製作し、頂部に防水用のキャップ3を被せている。支柱2の長さは使用する場所によって異なり、通常では普通の道路のように基部を土中に埋設する場合は長く、橋梁のように土の層がなく、基部全体をコンクリート構造物中に埋設する場合は短いものが使用されている。
【0003】
一般に、地中に埋設する場合には、コンクリート4の舗装に設けた内径20cmほどの埋設孔5に支柱2の基部2aを挿入し、下端部2bの周囲にアスファルト又はセメントモルタルのような道路補修材6を置き、その上の周囲の空所には地表面近くまで砂7を充填し、最後に支柱2の地表付近を再び道路補修材6で覆って固定している。
【0004】
このようにして固定した支柱2には、数年から早い場合は数ヶ月で腐食による錆が生ずることが認められている。錆は地中であれば、埋設された地表面付近から下方に向かって、約20cmから深い場合は40cmまでの範囲において生じ、或る範囲よりも深い部分では、あまり錆が見られない。この腐食の原因は雨水の滲透により、この位置の支柱2の周囲が湿った状態にあり、局部電池が形成されるマクロセル現象が生じて電流が流れたり、迷走電流が流れたりするためとされている。
【0005】
従来から、その対策として支柱2に対する塗装が行われているが、効果的とは云えず、抜本的な解決策が求められている。同様な問題はガードレールに限らず、照明灯のような鋼管製のポールを設置する場合にも同様である。
【0006】
そのための対策として、特許文献1が開示されている。特許文献1には図13に示すように、支柱2が埋設される部分のうち、腐食が生じ易い部分を、ブチルゴムから成る両面粘着シート8を介して合成樹脂製のスリーブ9を巻回する防食処理を施してから、予め設けた埋設孔5の中に挿入する。そして、基部2aの防食を必要とする部分の周囲の地表面近くまで砂7を充填した後に、砂7の上の地表面よりも若干上の位置に至る部分を、道路補修材6により覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4211870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1においても、年数の経過に従い、合成樹脂製のスリーブ9、ブチルゴムから成る両面粘着シート8は太陽光や風雨により劣化が進行する。また、支柱2と道路補修材6との隙間を介して支柱2とスリーブ9との間に雨水が滲透することがある。
【0009】
この問題を解決するために、本出願人の一人はスリーブ9の上縁に、図14に示すような円筒状のゴム製カバー10を挿着する発明を出願している。
【0010】
このゴム製カバー10は支柱2に密着すると共に、スリーブ9を支柱2に対し強く押し付けているために、スリーブ9等を太陽光等から保護すると共に、外部からの雨水の浸入が防止される。しかし、ゴム製カバー10は新しい支柱2に挿通してから埋設する場合には好適であるが、ゴム製カバー10は太陽光等に晒されているため劣化し易く、交換を必要とすることが屡々ある。この場合には、ガードレール1等を支柱2から取り外してから、新たなゴム製カバー10を支柱2の上方から挿通して被着しなければならない厄介さがある。
【0011】
本発明の目的は、従来の円筒状のゴム製カバーに代えて使用でき、既設の支柱に対しても対応が容易であり、スリ−ブを保護すると共に、耐水能力に優れた支柱保護用ゴム巻装帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯は、基部を合成樹脂製のスリーブで覆うことにより防水処理を施して地中に埋設する金属製の支柱に、前記スリーブの上部に巻装して、雨水の前記スリーブ内への浸入を防止する支柱保護用ゴム巻装帯であって、弾性を有するベルト状の合成ゴムに、前記スリーブの上端を覆う段部を設け、両端部を重ね合わせて固定金具により前記支柱、前記スリーブに密着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯によれば、支柱を抜き取ることなく交換が可能であり、スリーブを太陽光等から保護し、支柱とスリーブとの間への雨水の滲透が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の支柱を埋設した状態の断面図である
【図2】ゴム巻装帯の正面図である。
【図3】ゴム巻装帯の背面図である。
【図4】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図7】図2のD−D線に沿った断面図である。
【図8】固定金具の斜視図である。
【図9】固定金具をゴム巻装帯の端部に取り付けた状態の斜視図である。
【図10】ゴム巻装帯を着装する前の支柱の断面図である。
【図11】ゴム巻装帯の端部同士を重合した状態の断面図である。
【図12】従来のガードレール支柱の基部を土中に埋設した状態の断面図である。
【図13】従来例の腐食を防いだ状態の支柱の断面図である。
【図14】ゴム製キャップを被着した状態の支柱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図1〜図11に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は図示しないガードレールを上部に取り付けた円筒状の支柱の基部を、橋梁などのコンクリート構造物等の地中に埋設した状態における実施例の断面図を示している。支柱11の埋設部分である基部11aは、コンクリート12に設けられた埋設孔13中に挿入されている。支柱11の基部11aには、粘着シート14を介して合成樹脂製のスリーブ15が巻き付けられている。スリーブ15の上部は固定金具16により円筒状に係止されたベルト状のゴム巻装帯17が巻回されている。支柱11の底部にアスファルトやモルタル等の道路補修材18を敷き、その上に砂19を充填し、更にその上に道路補修材18を充填し、道路補修材18はゴム巻装帯17の裾部まで覆い、裾部の周囲の道路補修材18は円錐台形状の余盛とされている。
【0016】
ゴム巻装帯17はその弾性を利用して支柱11を絞め付けて巻装することにより、支柱11とゴム巻装帯17との間が密着し、更にはスリーブ15は支柱11と密着するので、スリーブ15の内側への雨水の滲透が防止され、防食効果が発揮される。また、道路補修材18による円錐台形の余盛りを施して傾斜面を形成し、水はけを良くすることが好ましい。更に、ゴム巻装帯17の下端は地表面にほぼ合致した高さとして、スリーブ15が太陽光と大気に晒されないようにして、スリーブ15、粘着シート14を保護する。
【0017】
粘着シート14の材料としては、未加硫のブチルゴムが好適であり、粘着性を有するシートの表面に離型紙を貼ったものが好都合に使用できる。一方、スリーブ15は帯状の材料を支柱11に引き伸ばしながら巻き付けたとき、両端の削いだ部分同士が重なり合って、被覆が円筒状に形成される。スリーブ15の材料は耐候性を有する合成樹脂材であればよいが、特にポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンが好適である。スリーブ15は粘着シート14を巻いた支柱11の基部11aに覆う作業に際して、スリーブ15が持つ適度の弾性を利用して支柱11に密着させることができる。
【0018】
図2はゴム巻装帯17の正面図、図3は背面図、図4は図2のA−A線に沿った断面図、図5はB−B線に沿った断面図、図6はC−C線に沿った断面図、図7はD−D線に沿った断面図であり、図8はゴム巻装帯17の両端部を固定する固定金具16の斜視図である。
【0019】
ゴム巻装帯17の成形方法は任意であって射出成形が最適であるが、長尺のバンド体を加工して製造することもできる。ゴム巻装帯17の材料には、耐候性に優れていることが要求されるため、ニトリルゴムを始めとして数種類の合成ゴムが知られているが、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ターポリマゴム)が好適である。
【0020】
ゴム巻装帯17の寸法は支柱11の径によって異なるが、例えば直径が11cmの支柱11に対しては、支柱11の外径にシート14の厚さとスリーブ15の厚さとの合計を加えた直径の外周より若干小さく、両端部の重合部を含めて37cmであり、高さ(幅)は57mm、厚さは1.5mmである。ゴム巻装帯17の上部は長手方向に沿って肉厚部とされ、段部17aとなって内側に張り出されており、段部17aの高さは7mm、厚みは5.5mmとされている。また、段部17aの外側部分は水切りを良くするために傾斜面17bとされている。
【0021】
ゴム巻装帯17の両端は重合部とされ、その一方の主端部17cは肉厚部とされ、他方の副端部17dが内側から重なり合うようにされている。また、主端部17cの内側には上下方向に係止溝17eが設けられ、副端部17dの外側には係止溝17eに嵌まり込む係止凸部17fが形成されている。更に、主端部17cは固定金具16の舌片部16bを挿入するための複数個の切込み17g、副端部17dには同様に複数個の切込み17hが設けられている。
【0022】
固定金具16は金属板、好ましくは錆の発生を考慮してステンレス板を打ち抜いて形成されており、基板部16aの両側に複数個の短舌片部16b、長舌片部16cが付設されている。例えば、固定金具16の厚みは0.3mm、基板部16aの長さは45mm、幅は12.6mm、短舌片部16bの長さは5.3mm、長舌片部16cの長さは10.3mmとされている。
【0023】
使用に際しては、図8に示すように各舌片部16b、16cは折曲され、図9に示すようにゴム巻装帯17の副端部17dの裏側に基板部16aを当接し、短舌片部16b、長舌片部16cを各切込み17g、17hに挿通し、短舌片部16bの先端を副端部17dの外側において、副端部17dの先端側に向けて折り曲げて固定しておく。
【0024】
既設の支柱11に対して、ゴム巻装帯17を交換する場合には、図10に示すように、道路補修材18を除去し、使用済みのゴム巻装帯17やゴム製カバーを取り外してスリーブ15を露出し、その上にこのゴム巻装帯17を巻装する。
【0025】
この巻装に際しては、ゴム巻装帯17を引き伸ばし、スリーブ15の上端に段部17aが係合するように取り付けることにより、ゴム巻装帯17の上下方向の位置が定まる。この状態で、ゴム巻装帯17を引き伸ばしながら、副端部17dの係止凸部17fを主端部17cの係止溝17eに嵌合すると、ゴム巻装帯17を仮巻装することができる。
【0026】
更に、固定金具16の長舌片部16cを主端部17cの切込み17gに挿通した後に、図11に示すように長舌片部16cを主端部17cの外側において、主端部17cの先端側に向けて折り曲げる。これにより、ゴム巻装帯17の主端部17cと副端部17dは固定金具16によりかしめ止められ、ゴム巻装帯17の支柱11、スリーブ15への巻装が完了する。
【0027】
その後に、支柱11の基部11aの周囲に砂19を埋め戻し、その上に道路補修材18を充填すると、図1に示すように防食、防水処理が施された支柱11が得られ、このような処理を施した支柱11は、図14に示した支柱2と同様に、防食性、防水性が十分に確保される。
【0028】
なお、新たな支柱11にこのゴム巻装帯17を巻装する場合には、工場においてスリーブ15の上に上述したように巻装した後に、現地において支柱11を埋設すればよい。
【0029】
また、支柱11が四角筒の場合においても、同様に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る支柱保護用ゴム巻装帯は、ガードレール用の支柱のみならず、照明灯のポールのような鋼管柱に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0031】
11 支柱
11a 基部
12 コンクリート
13 埋設孔
14 粘着シート
15 スリーブ
16 固定金具
17 ゴム巻装帯
18 道路補修材
19 砂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部を合成樹脂製のスリーブで覆うことにより防水処理を施して地中に埋設する金属製の支柱に、前記スリーブの上部に巻装して、雨水の前記スリーブ内への浸入を防止する支柱保護用ゴム巻装帯であって、弾性を有するベルト状の合成ゴムに、前記スリーブの上端を覆う段部を設け、両端部を重ね合わせて固定金具により前記支柱、前記スリーブに密着させることを特徴とする支柱保護用ゴム巻装帯。
【請求項2】
前記両端の重合部には、一方の端部に係止溝を形成し他方の端部に前記係止溝に嵌合する係止凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の支柱保護用ゴム巻装帯。
【請求項3】
前記固定金具は基板部に複数個の舌片部を付設し、これらの舌片部を前記重合部を挿通して固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の支柱保護用ゴム巻装帯。
【請求項1】
基部を合成樹脂製のスリーブで覆うことにより防水処理を施して地中に埋設する金属製の支柱に、前記スリーブの上部に巻装して、雨水の前記スリーブ内への浸入を防止する支柱保護用ゴム巻装帯であって、弾性を有するベルト状の合成ゴムに、前記スリーブの上端を覆う段部を設け、両端部を重ね合わせて固定金具により前記支柱、前記スリーブに密着させることを特徴とする支柱保護用ゴム巻装帯。
【請求項2】
前記両端の重合部には、一方の端部に係止溝を形成し他方の端部に前記係止溝に嵌合する係止凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の支柱保護用ゴム巻装帯。
【請求項3】
前記固定金具は基板部に複数個の舌片部を付設し、これらの舌片部を前記重合部を挿通して固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の支柱保護用ゴム巻装帯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−99221(P2011−99221A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253207(P2009−253207)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(591205411)
【出願人】(509305745)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(591205411)
【出願人】(509305745)
【Fターム(参考)】
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