説明

改善されたプレ−mRNAトランススプライシング分子(RTM)分子およびその使用

本発明は、標的化される細胞内で発現される特異的遺伝子を修正するように設計されて、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、および乾癬または神経皮膚炎のみならず皮膚の癌に関連する、特異的で顕著に改善されたプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM)分子に関する。詳しくは、本発明のRTMは、それによって、遺伝子欠損の修正または多様な異なる皮膚障害の原因である遺伝子発現の再プログラミングが得られるように、標的化される細胞において発現される特異的標的プレ-mRNAと相互作用するように遺伝子工学操作される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的化される細胞内で発現される特異的欠損遺伝子を修正するように設計され、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、および乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患のみならず、皮膚の癌に関連する特異的で顕著に改善されたプレ-mRNAトランススプライシング分子(pre-mRNA trans-splicing molecule: RTM)分子に関する。詳しくは、本発明のRTMは、それによって多様な異なる皮膚障害および他の上皮の障害が処置されるように、標的化される細胞において発現される特異的標的プレ-mRNAと相互作用するように遺伝子工学操作される。
【0002】
本発明の組成物にはさらに、本発明のRTMを発現することができる組み換え型核酸およびベクター系、ならびに該RTMを発現する細胞が含まれる。本発明の方法は、特異的遺伝子における遺伝子欠損が修正されている、RTMの一部が標的プレ-mRNAの一部にトランススプライスされて、キメラRNA分子を形成する条件下で、標的化される細胞内で発現される特異的標的プレ-mRNAを本発明のRTMに接触させる段階を包含する。本発明は、CFTR、インテグリン、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼ、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群から選択される哺乳動物遺伝子のプレ-mRNAのトランススプライシングの成功に基づいており、それによって皮膚疾患の修正に関するトランススプライシングの有用性を確立する。本発明の方法および組成物は、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、および乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患のみならず皮膚の癌などの、ヒトの体の皮膚および他の上皮の障害を処置するための遺伝子治療において用いられうる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
RNAの標的化は、遺伝子障害を処置するための従来の遺伝子置換療法に対する強力な代替治療として出現しつつある。新たな分野ではあるが、RNAの改変は、(i)遺伝子移入効率が低いこと;(ii)トランスジーンサイズに制限があること、具体的にゲノムサイズの座を送達できないこと;(iii)挿入変異誘発および組み込み関連事象;ならびに(iv)ベクターによる免疫応答および毒性、が含まれる標準的な遺伝子治療法の欠点のいくつかを克服する潜在性を有する。その上、機能的遺伝子を導入しても優性変異体転写物の発現が起こらない常染色体優性疾患などのいくつかの疾患の状況は、RNA標的化による修正をより受けやすいであろう。
【0004】
同様に、異常なスプライシングなどのRNAプロセシングの障害では、内因性のスプライシングパターンを修復することが好ましい可能性があり、これは多数の選択的アイソフォームも修正できるであろう。
【0005】
より重要なことに、RNAの標的化は、正常な調節的環境内で本来のmRNA転写物を治療的に改変するという独自の潜在性を有する。そのようなアプローチの潜在性は、問題のmRNAの排除から、天然のエレメントまたはエキソンの除去または付加による成熟mRNA産物の改変、およびキメラ遺伝子産物を作成するために外来mRNAエレメントの付加によるmRNA転写物の修復に至るまでの範囲に及ぶ。
【0006】
RNAトランススプライシングの出現によって、成熟mRNA転写物における遺伝子欠損を修復するための方法が開発されている。トランススプライシングは天然のプロセスであるが、哺乳動物ではまれであり、複合転写物が産生されるように2つの個別に転写されたmRNAの間でのスプライシングを伴う。このプロセスの操作は、アイソフォームスイッチングの誘導、または野生型遺伝子産物への変換による優性変異の修正に関する潜在性を提供する。
【0007】
現在用いられている最も一般的な方法論は、スプライセオソーム媒介RNAトランススプライシング(SMaRT)およびリボザイム媒介トランススプライシングである。
【0008】
SMaRTアプローチにおいて、工学操作されたプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM)は、スプライセオソームによって媒介されるプロセスにおいてそれがトランススプライシングを誘発するように、核における標的プレ-mRNAに対して特異的に結合する(Puttaraju M, Jamison SF, Mansfield SG, Garcia-Blanco MA, Mitchell LG. Spliceosome-mediated RNA trans-splicing as a tool for gene therapy. Nat Biotechnol. 1999; 17:246-252)。RTMの主要な成分は結合ドメイン、スプライシングドメインおよびコードドメインである。結合ドメインは、標的特異性を付与するが、スプライシングドメインは、トランススプライシング反応が起こるために必要なモチーフを含有する。コードドメインは、標的化された変異を修復するために必要である野生型cDNAの一部、通常1つまたは複数のエキソンを保有する。この修復は典型的に、機能的遺伝子産物が転写されうるように、エキソンの交換および標的プレ-mRNAの欠損部分のその後の除去によって達成される。スプライセオソーム媒介トランススプライシングを用いる機能の修正は、嚢胞性線維症(CF)(Liu X, Jiang Q, Mansfield SG, Puttaraju M, Zhang Y, et al. Partial correction of endogenous DeltaF508 CFTR in human cystic fibrosis airway epithelia by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Nat Biotechnol. 2002; 20: 47-52)、血友病A(Chao H, Mansfield SG, Bartel RC, Hiriyanna S, Mitchell LG, et al. Phenotype correction of hemophilia A mice by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Nat Med. 2003; 9: 1015- 1019)、およびX-連鎖免疫欠損(Tahara M, Pergolizzi RG, Kobayashi H, Krause A, Luettich K, et al. Trans-splicing repair of CD40 ligand deficiency results in naturally regulated correction of a mouse model of hyper-IgM X-linked immunodeficiency. Nat Med. 2004; 10: 835-841)が含まれるいくつかの前臨床疾患モデルにおいて報告されている。
【0009】
今日までのトランススプライシング試験の大部分は、疾患を引き起こす変異を含有するmRNA転写物の部分の交換を通して機能を回復することに焦点を当てている。しかし、トランススプライシングはまた、異常なスプライシングに連鎖する障害を処置する場合にも潜在的応用も有する。ヒトSMN(運動ニューロンの生存)(Molecular Therapy (2006) 13, S97 253. AAV Delivery of a Trans-Splicing RNA Re-Directs SMN2 Splicing and Results in Increased Full-Length SMN. Tristan H. Coady, Monir Shabab and Christian L. Lorson)およびMAPTの場合の結果は、SMaRTが、選択的スプライシングを操作するために用いられうること、および異常なスプライシングの結果である障害に関して治療応用を有しうることを証明している(Rodriguez-Martin T, Garcia-Blanco MA, Mansfield SG, Grover AC, Hutton M, et al. Reprogramming of tau alternative splicing by spliceosome-mediated RNA trans-splicing: Implications for tauopathies. Proc Natl Acad Sci USA. 2005; 102: 15659-15664)。
【0010】
SMaRTは、従来の遺伝子治療に対していくつかの長所を有する。遺伝子が導入されるのではなくて修復されることから、遺伝子の空間的および時間的発現は、タンパク質発現が健常な個体のタンパク質発現に似るように内因性の調節によって制御されるはずである。標的転写物が発現される場合に限って修復が起こることから、送達の際に非特異的に標的化された細胞において有害な効果は予想されないであろう。トランススプライシングはまた、常染色体優性障害にも取り組むことができる。修復された転写物のレベルが増加すると、遺伝子の交換では取り組まない変異体転写物のレベルが減少すると予想される。別の長所は、交換される必要があるのは遺伝子の断片のみであることから、RTM構築物が現在のベクター系において容易に適合される点である。
【0011】
表皮水疱症(EB)は、軽度の外傷によって皮膚および粘膜の水疱が起こる不均一な遺伝性皮膚障害群に適用される用語である。皮膚裂傷のレベルに応じて、EBを主に3つの群に分けることができる:(i)水疱形成が基底部ケラチノサイトにおいて起こる単純型EB、(ii)透明板における水疱形成を伴う接合部型EB(JEB)、および(iii)透明板の下での水疱形成を伴う栄養障害型EB。
【0012】
JEB患者は主に2つの群、ヘルリッツJEBおよび全身萎縮性良性EB(GABEB)に分けられる。前者の疾患であると診断された患者は通常、生後1年以内に死亡するが、後者の診断は、良好な予後に関連して、年齢と共に改善する傾向がある。GABEBに罹患している患者においてXVII型コラーゲンとして同定される水疱性類天疱瘡抗原2(BPAG2)の発現が低減していることを記述する最初の観察の後、BPAG2をコードする遺伝子(Col17A1)の変異が同定された。今日まで、Col17A1における多数の異なる変異が同定されており、変異データベースが確立されて、それによってnH-JEBの臨床発現に及ぼす特異的変異の効果の分析は容易となっている。たとえば、終止コドン変異または双方の対立遺伝子の下流の終止コドンに至る変異は、当初の「GABEB」表現型に関連することが決定されている。
【0013】
加えて、晩発性筋ジストロフィー(EBS-MD)を伴う単純型EB患者は、プレクチン遺伝子における変異を特徴としている。これらの患者の何人かは、ロイシンの挿入のみならず、プレクチンコード領域における終止コドンの挿入を引き起こすミスセンス変異Q1518Xに至る1287位での3塩基対挿入(1287ins3)に関する複合ヘテロ接合性を特色とする(Bauer, JW et al, 2001 Am J Pathol 158: 617-625)。
【0014】
基礎となる遺伝子異常に応じて、遺伝子治療において標的化される遺伝子を交換または修復するために多様な異なる方法が存在する。現在のアプローチには、遺伝子の交換、遺伝子の修正、遺伝子の沈黙化、および遺伝子の標的化が含まれる(Zahid and Brownell 2007)。劣性の機能喪失変異の場合、修正するためには、ウイルスまたは非ウイルス挿入によるこの遺伝子の機能的な野生型コピーの単純な再導入を通しての遺伝子交換で十分である可能性がある(Khavari P.A., Rollman O., & Vahlquist A. (2002) Cutaneous gene transfer for skin and systemic diseases. Journal of Internal Medicine 252, 1-10)。最近、エクスビボ遺伝子治療は、ウイルスベクターによって保有される各々のcDNAの形質導入による接合部型EB患者の処置に成功した(Mavilio F. et al. (2006) Correction of junctional epidermolysis bullosa by transplantation of genetically modified epidermal stem cells. Nature Medicine 12, 1397-1402)。この試験は、ノックアウト変異の場合にcDNA相補的アプローチの実現可能性を証明する。しかし、高度に発現された機能的遺伝子を追加することは、ドミナントネガティブ機能獲得変異を中和するためには不適切である。この問題を克服するために有望な戦略が開発されている(Laimer M. et al. (2006) Current approaches to cutaneous gene therapy. Expert Rev. Dermatol. 1, 833-853. 2006)。
【0015】
皮膚遺伝子治療の場合、今日までのほとんどの努力は、レトロウイルスベクターを用いて罹患遺伝子の完全長のcDNAコピーを送達することを試みている。しかし、皮膚治療における完全長のcDNAの送達はしばしば、mRNA(またはcDNA)のサイズによって制限され、たとえばプレクチンmRNAは14.8 kb、VII型コラーゲンmRNAは9.2 kb、およびXVII型コラーゲンmRNAは6.5 kbである。EBの様々な型を有する患者において変異したこれらの遺伝子のサイズ、およびその調節エレメントは、レトロウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターを用いる皮膚遺伝子治療にとって適した送達系の能力を超えている。ゆえに、送達されなければならない治療的配列のサイズを低減することが有利であろう。
【0016】
同様に、皮膚水疱形成障害に関係して、遺伝子治療のために標的化される遺伝子が、特異的表皮層のケラチノサイトによってのみ発現されることも極めて重要である。たとえば、そのような遺伝子の異所発現によって、上皮細胞極性障害が起こる可能性がある。ケラチノサイト特異的発現の問題に取り組む1つの可能性がある方法は、トランスジーン発現を指示するために特異的調節エレメントを用いることである。しかしそのようなプロモーターを用いることは、治療ベクターにおけるインサートのサイズをさらに増加させる。
【0017】
Col17A1遺伝子に関して、遺伝子修正のための別のアプローチが記述されている。特に、それによって変異がCol17A1遺伝子において修正されている天然の機序が存在し、これは遺伝子治療の概念を確認する。たとえば、Jonkman et al.,(1997, Cell 88:543-551)は、上肢において対称的な葉様のパターンの正常に見える皮膚斑を有する患者に関して報告した。Col17A1遺伝子における基礎となる変異は、父親からR1226X、および母親から1706delAとして同定されていた。皮膚の臨床での非罹患領域において、基底細胞の約50%が、母親からの変異の周囲での分裂遺伝子変換のために低減されたレベルでXVII型コラーゲンを発現しており、このためこの領域においてヘテロ接合性が失われた。これらの観察は、nH-JEBの表現型発現を修正するためには、完全長のXVII型コラーゲンの50%未満の発現で十分であることを示唆している。加えて、Col17A1遺伝子におけるホモ接合R785X変異を有する患者において、ケラチノサイトスプライシング機構による遺伝子修正の部分的成功が記述されている(Ruzzi L et al, 2001 J. Invest Dermatol 116: 182-187)。これらの患者において、変異を有するエキソン33を除外することによって、異常な軽度の表現型が得られるが、検出可能なXVII型コラーゲンタンパク質は3〜4%であるに過ぎない。エキソンの類似のインフレームスキッピングはまた、Col17A1およびLAMB3遺伝子に変異を有する患者に関しても報告されている。
【0018】
SMaRTによる機能的RNA修復が、多様なインビトロ、エクスビボ、およびインビボ試験において報告されている。これらの試験の各々において、完全長のcDNAの部分および内因性のプレ-mRNAにおける特異的イントロンを標的とするように設計された結合ドメインを保有するRTMを、遺伝子障害の修正のために用いた。トランススプライシングによるmRNA修復の原理の証明は、インビトロモデルにおいて優勢な嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CFTR)変異△F508の機能の修正を示すLiu et al.によって紹介されている(Liu, X, M. Luo, L.N. Zhang, Z. Yan, R. Zak, W. Ding, G.S. Mansfield, L.G. Mitchell, and J.F. Engelhardt. Spliceosome-Mediated RNA Trans-splicing with rAAV Partially Restores CFTR Function to Polarized Human CF Airway Epithelial Cells. Human Gene Therapy 16(9):1116-23, 2005)。皮膚の遺伝子治療においてSMaRTを用いる実現可能性は、本発明者らの研究室において、正常なヒトケラチノサイトおよび不死化GABEB細胞株におけるXVII型コラーゲン遺伝子における十分に特徴付けされた変異4003delTCに関するダブルトランスフェクション系において確立されている(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)。このアプローチによって、本発明者らは、ケラチノサイトがトランススプライシングを行うことができることを示している。さらに、Walley et al.は、最近、患者の線維芽細胞におけるプレクチン遺伝子におけるトランススプライシングによって、インビボで機能的プレクチンタンパク質レベルが58%増加することを示した(Wally V. et al. (2008) 5' trans-splicing repair of the PLECl gene. J. Invest Dermatol. 128, 568-574)。インビトロでのRNA-修復技術としてのSMaRTの有用性に関する成功の報告に加えて、トランススプライシングを用いる機能の修正は、嚢胞性線維症(Puttaraju M. et al. (2001) Messenger RNA repair and restoration of protein function by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Molecular Therapy 4, 105-114)、血友病A(Chao H. et al. (2003) Phenotype correction of hemophilia A mice by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Nat.Med. 9, 1015-1019)、およびX連鎖免疫欠損(Tahara M. et al. (2004) Trans-splicing repair of CD40 ligand deficiency results in naturally regulated correction of a mouse model of hyper-IgM X-linked immunodeficiency. Nat.Med. 10, 835-841)などのヒト疾患に関するいくつかの前臨床モデルにおいて示されている。
【0019】
米国特許第6,083,702号、第6,013,487号、第6,280,978号、第7,399,753号、およびEP 0 883 344(その全内容物の全てが参照により本明細書に組み入れられる)は、新規キメラRNAを生成するために標的前駆体mRNAを接触させることによってトランススプライシング反応を媒介するためにRTMを用いることを記述している。
【0020】
WO 2004/006678は、皮膚の細胞内に発現されて皮膚障害に関連する特異的欠損遺伝子を修正するように設計された特異的RTM分子を記述している。表皮脆弱性障害、角質生成障害、毛髪障害、色素障害および癌が含まれる遺伝性皮膚症などの多様な異なる皮膚障害を処置するために特異的RTMを用いてもよい。
【0021】
RTM分子の分野における進歩にもかかわらず、およびミニ遺伝子標的とRTMとの同時トランスフェクションによってインビトロで妥当なレベルのトランススプライシングが得られたが、内因性のプレ-mRNAまたはインビボで安定に発現されたプレ-mRNAに関しては、スプライシング効率は低い。
【0022】
ゆえに、本発明の目的は標的化される細胞内で発現される特異的欠損遺伝子を修正するように設計されて、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、および乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患のみならず皮膚の癌に関連する、新規で特異的で顕著に改善されたRTM分子を提供することである。本発明のさらなる目的は、RTMに基づいて、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、および乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患のみならず皮膚の癌などの皮膚の障害を処置するためのさらに改善された方法を提供することである。
【0023】
本発明の第一の局面において、この目的は、以下を含むプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM)を提供することを通して解決される:a)細胞内で発現されるプレ-mRNAに対する核酸分子の結合を標的とする少なくとも1つの結合ドメイン;(b)トランススプライシング反応が起こるために必要なモチーフを含有する少なくとも1つのスプライシングドメイン;および(c)CFTR、インテグリン、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼ、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群から選択される哺乳動物遺伝子の少なくとも1つのエキソンをコードする、少なくとも1つのコードドメイン。
【0024】
RTMの全般的設計、構築、および遺伝子操作、ならびにそれが細胞内でスプライセオソーム媒介トランススプライシング反応を首尾よく媒介できる能力の証明は、その全内容の開示が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,083,702号、第6,013,487号、第7,399,753号、および第6,280,978号のみならず米国特許出願第09/756,095号、第09/756,096号、第09/756,097号、および第09/941,492号において詳細に記述される。
【0025】
簡単に説明すると、RTM分子は、RTMと標的とのあいだのトランススプライシングを増強しながら標的のシススプライシングを抑制するために、標的プレ-mRNAのイントロン配列に対して相補的でアンチセンス方向である結合ドメイン(BD)を保有するように設計される(Mansfield et al. 2000)。RTM分子はさらに、強い保存された分岐点(BP)配列、ポリピリミジントラクト(PPT)、および3'アクセプタースプライス部位(ss)を含むスプライシングドメインからなる。スペーサー配列は、スプライシングドメインを標的結合ドメインから分離する。そして最後にRTMは、標的プレ-mRNAにトランススプライスされる野生型コード配列の一部を有するコードドメインを含む(図2)。コードドメインは、1つのエキソン、多数のエキソン、またはコード配列全体でありうる。
【0026】
BDは、内因性の標的プレ-mRNAに特異的に結合することによってトランススプライシングに対して特異性をもたらすが、スプライシングおよびコードドメインは、スプライセオソームによって認識され、トランススプライシング反応を実際に起こさせる必須のコンセンサスモチーフを提供する。BPおよびPPTを用いた後に、シススプライシングに関係し、およびおそらくトランススプライシングにも関係する2つのホスホリル転移反応の実行にとって必要であるコンセンサス配列が続く(Kramer 1996)。スプライセオソームによって触媒されるこれらの反応は、機能的mRNAを産生するためにイントロンを正確に切除しなければならない。RNAシススプライシングプロセスと類似の様式で、RTM RNAの結合ドメインおよびスプライシングドメイン配列は、トランススプライシング後に切除され、再プログラムされた最終的なmRNA産物において保持されない。
【0027】
本発明の方法は、RTMの一部が標的プレ-mRNAの一部にトランススプライスされて、新規RNA分子を形成し、これがさらにプロセシングされて標的mRNAを発現するように機能するmRNAを形成する条件下で、本発明のRTMに標的プレ-mRNAを接触させる段階を含む。
【0028】
RTMの標的結合ドメインは、標的プレ-mRNAに対する結合親和性をRTMに与える。本明細書において用いられるように、標的結合ドメインは、結合の特異性を付与して、核のスプライセオソームプロセシング機構が合成RTMの一部をプレ-mRNAの一部にトランススプライスできるように、合成RTMに対して空間的に近い位置にプレ-mRNAを固定する任意の分子、すなわちヌクレオチド、タンパク質、化学化合物等として定義される。
【0029】
RTMの標的結合ドメインは、選択された標的プレ-mRNAの標的化領域に対して相補的でアンチセンス方向である多数の結合ドメインを含有してもよい。標的結合ドメインは、数千ヌクレオチドまでを含んでもよい。本発明の好ましい態様において、結合ドメインは、少なくとも10〜30および数百またはそれより多いヌクレオチドまでを含んでもよい。RTMの特異性は、標的結合ドメインの長さを増加させることによって有意に増加する可能性がある。たとえば、標的結合ドメインは、数百ヌクレオチドまたはそれより多くを含んでもよい。絶対的な相補性が好ましいが必要ではない。本明細書において言及されるRNAの一部に対して「相補的な」配列は、標的プレ-mRNAとハイブリダイズ可能であって、安定な二重鎖を形成するために十分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリダイズ能は、相補性の程度と核酸の長さの双方に依存するであろう(たとえば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。一般的に、ハイブリダイズする核酸がより長ければ、それが含有するRNAとの塩基ミスマッチはより多くなるが、それでもなお安定な二重鎖を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の安定性を決定するために、標準的な技法を用いることによってミスマッチの認容できる程度および二重鎖の長さを確認することができる。
【0030】
結合ドメインが哺乳動物遺伝子のイントロンまたはエキソンに対して相補的な配列の少なくとも一部を含み、好ましくは哺乳動物遺伝子のエキソンに対して相補的な配列の少なくとも一部を含む、本発明に従うRTMが好ましい。
【0031】
本発明の状況において、および現在の知識とは対照的に、およびWO 00/009734におけるような技術の現状において強調されるように、遺伝子のエキソン領域に対する結合、すなわち遺伝子のエキソン配列を標的とする結合ドメイン(遺伝子PLEC1およびCOL17A1に関して示されるように、実施例3)は、イントロン領域に対する結合より高い効率で達成されうることが証明された。それによって、遺伝子PLEC1およびCOL17A1を用いる実験は、エキソン配列が本発明に従うPTMの設計および使用のために強力かつ有効な開始点を提供するという考え方の証明を提供する。
【0032】
結合ドメインとして機能する少なくとも1つのエキソンの上流のそれぞれのイントロンの少なくとも一部をさらに含む、本発明に従うRTMが好ましい。
【0033】
それにもかかわらず、本発明のRTMには以下の特色の少なくとも1つが含まれてもよい:(a)標的イントロンの3'または5'スプライスシグナルに対して非常に近位のイントロン配列に標的化される結合ドメイン、(b)ミニイントロン、および(c)トランススプライシングを調節するであろうイントロンまたはエキソンのエンハンサーまたはサイレンサー(Garcia-Blanco et al (2004) Nature Biotechnology, 22, 535-546)。本発明のRTMは、標的結合ドメインからRNAスプライス部位を分離するために、1つまたは複数のスペーサー領域をさらに含んでもよい。
【0034】
結合はまた、他の機序を通して、たとえば、三重らせん形成、アプタマー相互作用、抗体相互作用、またはその中でRTMが特異的RNA結合タンパク質、すなわち特異的標的プレ-mRNAに結合したタンパク質を認識するように工学操作されている相互作用などのタンパク質/核酸相互作用を通して達成されてもよい。
【0035】
3' RTM分子はまた、分岐点配列および3'スプライスアクセプターAG部位が含まれる3'スプライス領域および/または5'スプライスドナー部位を含有する。3'スプライス領域はさらに、ポリピリミジントラクトを含んでもよい。5' RTMは、GUスプライスドナー部位が含まれる5'スプライス部位領域を含有する。RNAスプライシングにおいて用いられる5'スプライスドナー部位および3'スプライス領域に関するコンセンサス配列は、当技術分野において周知である(Moore, et al., 1993, The RNA World, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p. 303-358を参照されたい)。加えて、5'ドナースプライス部位と3'スプライス領域として機能する能力を維持する改変コンセンサス配列を、本発明の実践において用いてもよい。簡単に説明すると、5'スプライス部位コンセンサス配列はAG/GURAGU(式中A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアノシン、C=シトシン、R=プリンおよび/=スプライス部位)である。3'スプライス部位は、3つの個別の配列エレメント:分岐点または分岐部位、ポリピリミジントラクト、および3'コンセンサス配列(YAG)からなる。哺乳動物における分岐点コンセンサス配列は、YNYURAC(Y=ピリミジン;N=任意のヌクレオチド)である。下線Aは、分岐形成部位である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライス部位アクセプターのあいだに位置し、異なる分岐点利用および3'スプライス部位認識にとって重要である。最近、その多くがジヌクレオチドAUによって始まり、ジヌクレオチドACで終わるU12依存的イントロンと呼ばれるプレ-mRNAイントロンが記述されている。U12-依存的イントロン配列のみならず、スプライスアクセプター/ドナー配列として機能するいかなる配列も、本発明のRTMを生成するために用いてもよい。
【0036】
標的結合ドメインからRNAスプライス部位を分離するためのスペーサー領域もまた、RTMに含まれてもよい。スペーサー領域は、(i)任意の非スプライスRTMの翻訳を遮断するように機能するであろう終止コドン、および/または(ii)標的プレ-mRNAに対するトランススプライシングを増強する配列などの特色が含まれるように設計されてもよい。
【0037】
本発明の状況において本発明者らによって行われる実験のあいだ、これらの遺伝子は、本明細書において言及された疾患を処置するために、プレ-mRNAトランススプライシングに関する有効な標的として適していることが見いだされた。本発明の状況において、「処置」は、所定の患者における疾患の症状を予防、発生を遅らせる、疾患の症状の重症度を低減させるおよび/または疾患の症状を除去する(治癒する)ことのいずれかを意味するであろう。
【0038】
本発明の方法は、mRNAを修正するために、RTMの一部が標的プレ-mRNAにスプライスされて標的遺伝子の新規mRNAを形成する条件下で、本発明のRTMに標的プレ-mRNAを接触させる段階を包含する。または、標的mRNAの発現を低減するように設計されるプレ-miRNA(以下を参照されたい)を形成することができる。このように、本発明の方法および組成物を用いて、特異的変異および/または遺伝子発現に関連する疾患/病態を処置することができる。たとえば、本発明の方法および組成物は、変異を「修正する」ために、または癌などの増殖障害などの本明細書において記述される皮膚細胞の疾患に関連する遺伝子の発現を低減させるために用いることができる。別の好ましい態様において、本発明の方法および組成物はまた、1つの特異的遺伝子を別の遺伝子に再組み込みするために用いられうる。1つの例として、インターロイキン10エキソンをICAM-1遺伝子に付加すると、遺伝子発現を再プログラミングする、およびこのように乾癬などの自己免疫疾患を処置する、という2つの局面を生じる。一方、内皮細胞における乾癬の発病にとって極めて重要な遺伝子がダウンレギュレートされて、同時に免疫抑制インターロイキンが同じICAM-1遺伝子によって産生される。得られたペプチドは、ICAM-1のエキソン1とIL-10のエキソン2〜5のハイブリッドである。もう1つの例として、HSV-チミジンキナーゼをMMP-9に付加すると、皮膚の腫瘍の処置が改善される(Siegele et al. eIF4E-targeted suicide gene therapy in a minimal residual mouse model for metastatic soft-tissue head and neck squamous cell carcinoma improves disease-free survival. J Surg Res. 2008 Jul;148(l):83-9の刊行物に基づく)。
【0039】
既に先に考察したように、本発明は、1つの部分としてCFTR、インテグリン、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群から選択される哺乳動物遺伝子の少なくとも1つのエキソンをコードする少なくとも1つのコードドメインを含むプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM)を提供する。本発明はさらに、1つの部分として、上記の再プログラミング部分と共に、CFTR、インテグリン、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群から選択される哺乳動物遺伝子の少なくとも1つのエキソンをコードする少なくとも1つのコードドメインを含むプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM)を提供し、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼは、「標的遺伝子」としてのみならずRTMの起源として用いられうる(たとえば標的としてのICAM-1およびRTMとしてのインターロイキン-10;標的としてのMMP-9およびRTMとしてのHSVチミジンキナーゼ)。
【0040】
表皮水疱症および筋ジストロフィーなどの関連疾患を処置するために、プレクチン、コラーゲン、およびケラチンに由来する本発明のRTMを用いることが好ましい(Pfendner, E.; Uitto, J.: Plectin gene mutations can cause epidermolysis bullosa with pyloric atresia. J. Invest. Derm. 124: 111-115, 2005、およびその中で引用されている参考文献、Varki, R.; Sadowski, S.; Uitto, J.; Pfendner, E.: Epidermolysis bullosa. II. Type VII collagen mutations and phenotype-genotype correlations in the dystrophic subtypes. J. Med. Genet. 44: 181-192, 2007、およびその中で引用されている参考文献;Jonkman, M. F.; Pas, H. H.; Nijenhuis, M.; Kloosterhuis, G.; van der Steege, G.: Deletion of a cytoplasmic domain of integrin beta-4 causes epidermolysis bullosa simplex. J. Invest. Derm. 119: 1275-1281, 2002、およびその中で引用されている参考文献を比較されたい)。
【0041】
同様に、嚢胞性線維症を処置するためにCFTRに由来する本発明のRTMを用いることも好ましい。
【0042】
本発明のRTMは、カリクレインおよびマトリクスメタロプロテナーゼ(MMP9などの)に由来して、たとえばHSV-チミジンキナーゼなどの自殺またはアポトーシス遺伝子(またはその機能的断片)を導入することによって、皮膚の腫瘍および他の癌を処置するために該遺伝子を標的化するための構築物として機能するように構成されうる。これらの治療遺伝子の他の例は文献に記述されている(たとえば、Revil T, Shkreta L, Chabot B. Pre-mRNA alternative splicing in cancer: functional impact, molecular mechanisms and therapeutic perspectives Bull Cancer. 2006 Sep 1 ; 93 (9): 909-19において)。
【0043】
本発明のさらに好ましいRTMは、先天性爪肥厚および関連疾患を処置するためにケラチン6、16、または17に由来しうる。本発明のさらに好ましいRTMは、インターロイキン-10および12に由来しえて、乾癬または神経皮膚炎および関連する自己免疫疾患の処置のために用いられる。本明細書において、RTMは好ましくはICAM-1、VCAM-1、および/またはTNF-aに標的化される。
【0044】
本発明の好ましいRTMは、以下の表の1つまたは複数の由来しうる1つまたは複数のエキソンをコードするコードドメインを含みうる。表において、名称およびデータベースのアクセッション番号を、そこから本発明に従うRTMに含まれるエキソンが構成されうる好ましい遺伝子に関して与える。例として、本発明のRTMは、遺伝子KRT 17の1〜7個のエキソン(データベースアクセッション番号NM_000422)を含みうる。遺伝子における変異または他の欠損は、疾患先天性爪肥厚に関連する(Terrinoni, A.; Smith, F. J. D.; Didona, B.; Canzona, F.; Paradisi, M.; Huber, M.; Hohl, D.; David, A.; Verloes, A.; Leigh, I. M.; Munro, C. S.; Melino, G.; McLean, W. H. I.: Novel and recurrent mutations in the genes encoding keratins K6a, K16 and K17 in 13 cases of pachyonychia congenita. J. Invest. Derm. 117: 1391-1396, 2001)。以下の表に由来する構築物は好ましくは以下にさらに記述されるように改変されうる。
【0045】
当業者は、与えられるデータベースアクセッション番号が配列の後の修正を必要とする配列の誤りおよび/またはシークエンシングの誤りを含有する可能性があることを理解するであろう。本発明は、これらの全ての推定の修正を包含すると企図され、当業者は、本発明を実施する場合にこれらの修正を考慮に入れることができる。データベースアクセッション番号によって提供される配列はまた、同じまたは別の哺乳動物生物において相同な配列を検索するために用いられてもよい。
【0046】
(表1)ケラチンに由来する構築物の基礎



【0047】
(表2)コラーゲンに由来する構築物の基礎

【0048】
(表3)腫瘍壊死因子-αに由来する構築物の基礎

【0049】
(表4)インターロイキンに由来する構築物の基礎

【0050】
(表5)ICAM/VCAMに由来する構築物の基礎

【0051】
(表6)カリクレインに由来する構築物の基礎

【0052】
(表7)マトリクスメタロプロテナーゼに由来する構築物の基礎

【0053】
(表8)ラミニンに由来する構築物の基礎

【0054】
(表9)CFTRに由来する構築物の基礎

【0055】
(表10)インテグリンに由来する構築物の基礎

【0056】
(表11)プレクチンに由来する構築物の基礎

【0057】
本発明において、「相同な」という用語は、2つの核酸配列の配列間の同一性の程度を指す。相同な配列の相同性は、比較される配列に対して最適な条件下で整列させた2つの配列を比較することによって決定される。本明細書において比較される配列は、2つの配列の最適なアライメントにおいて付加または欠失(たとえばギャップ等)を有してもよい。そのような配列相同性はたとえばClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res., 22(22): 4673 4680 (1994))を用いてアラインメントを作成することによって計算されうる。一般的に入手可能な配列分析ソフトウェア、より具体的にVector NTI、GENETYX、BLAST、またはたとえばhttp://dragon.bio.purdue.edu/bioinfolinks/において見いだされるツールなどの公共のデータベースによって提供される分析ツールも同様に用いてもよい。
【0058】
ゆえに、本発明は、一般的に、上記の表において与えられるそれぞれの遺伝子に関してエキソンx〜yを含むコードドメインの任意の組み合わせを含む、本発明に従うRTMを包含し、式中xは1または2からエキソンの最大数までの整数から選択される整数であり、ならびにyは0およびx+1から選択される整数であり、x+1は遺伝子のエキソンの最大数によって制限される。
【0059】
好ましい例として、MMP9に由来するRTM(NM_004994、表7を参照されたい)は、エキソン1〜13、または遺伝子の2〜13個のエキソンを含むコードドメインを含みうる(x+1はMMP9の13個のエキソンによって制限される);プレクチンに由来するRTM(NM_000445、表11を参照されたい)は、エキソン1〜33の1つもしくは複数、または遺伝子の2〜33個のエキソンを含むコードドメインを含みうる(x+1はプレクチン、アイソフォーム1の10個のエキソンによって制限される);ケラチン14に由来するRTM(NM_000526、表1を参照されたい)は、エキソン1〜8の1つもしくは複数、または遺伝子の2〜8個のエキソンを含むコードドメインを含みうる(x+1は、ケラチン14の8個のエキソンによって制限される);7型コラーゲンに由来するRTM(遺伝子ID 1294、表2を参照されたい)は、エキソン1〜118の1つもしくは複数、または遺伝子の2〜118個のエキソンを含むコードドメインを含みうる(x+1は7型コラーゲンの118個のエキソンによって制限される);およびICAM-1に由来するRTM(NM_000201、表5を参照されたい)は、エキソン1〜7の1つもしくは複数、または遺伝子の2〜7個のエキソンを含むコードドメインを含みうる(x+1はICAM-1の7個のエキソンによって制限される)。さらなる例として、5'トランススプライシングに関して、遺伝子の先端が交換され、そのためRTMはエキソン1のみ、エキソン1および2、1〜3、1〜4等を送達することができる。プレクチンに関して、エキソン1は除外され、この場合構築物は2、2および3、2〜4等である。3'トランススプライシングの場合、末端のエキソンyのみを交換することができ、それによってy+(y-1)、y〜(y-2)、y〜(y-3)等が得られる。ダブルトランススプライシングRTMは、任意の内部エキソンまたはエキソンの組み合わせを交換することができる。
【0060】
本発明に従うRTMの1つの好ましい態様において、RTMは、追加の望ましい機能性を提供するために、他の遺伝子に由来する少なくとも1つのイントロンおよび/またはエキソン、好ましくはエキソンを含む。好ましい例は、インターロイキン-10に融合させたICAM-1のイントロン1と相補的な結合ドメインの導入であるか、またはHSV-チミジンキナーゼが導入されるMMP-9遺伝子において結合するためにRTMを含む構築物の導入である。たとえばガンシクロビルを添加した後、これをリン酸化して活性化させるようにする。他の好ましい態様において、エキソンは、遺伝子発現を低減させるために天然に存在するもしくは人工的に導入された終止コドンを含むか、またはRNAi-様効果を生じる他の配列を含有する。
【0061】
本発明に従うRTMは、遺伝子がプレクチン、ケラチン14、7型コラーゲン、ケラチン5、ケラチン6、17型コラーゲン、ラミニンA3、ラミニンB3、g2、インテグリンβ4、a6、CFTR、およびインターロイキン-10(IL-10)の群から選択され、好ましくはプレクチン、ケラチン14、コラーゲン7A1、コラーゲン17A1、およびIL-10の少なくとも1つである。これらの遺伝子における変異は、本明細書において記述される皮膚細胞の疾患および関連する疾患に連鎖している。IL-10は、自己免疫疾患を処置するために用いることができる免疫抑制性のインターロイキンである。
【0062】
さらに好ましいのは、核酸分子がスプライシングドメインにおいて少なくとも1つの安全策配列をさらに含む、本発明に従うRTMである。「安全策」は、非特異的トランススプライシングを防止するために、RTMにおいてスペーサー、結合ドメイン、またはその他に組み入れられる。これは、比較的弱い相補性によってRTMの3'および/または5'スプライス部位のエレメントを覆うRTMの領域であり、それによって非特異的トランススプライシングを防止する。RTMは、RTMの結合/標的化部分とのハイブリダイゼーションにより、3'および/または5'スプライス部位が露出して、完全に活性となるように設計される。そのような「安全策」配列は、RTM分岐点、ピリミジントラクト、3'スプライス部位および/もしくは5'スプライス部位(スプライシングエレメント)の1つもしくは双方の面に結合する、またはスプライシングエレメント自身の一部に結合することができる、シス配列の1つまたは複数の相補的な枝を含む(または、核酸の第二の個別の鎖でありうる)。この「安全策」の結合は、スプライシングエレメントが活性にならないように防止する(すなわち、U2 snRNPまたは他のスプライシング因子がRTMスプライス部位認識エレメントに付着することを遮断する)。「安全策」の結合は、標的プレ-mRNAに対するRTMの標的結合領域の結合によって破壊されてもよく、このようにRTMスプライシングエレメントを露出して活性化してもよい(それらを標的プレ-mRNAへのトランススプライスに利用できるようにする)。
【0063】
さらに好ましいのは、標的プレ-mRNAに対する核酸分子の結合が、相補性(すなわち核酸の塩基対形成特徴に基づく)、三重らせん形成(たとえばSuzuki T. Targeted gene modification by oligonucleotides and small DNA fragments in eukaryotes. Front Biosci. 2008 Jan 1; 13:737-44. Review. Dang N, Klingberg S, Marr P, Murrell DF. Review of collagen VII sequence variants found in Australasian patients with dystrophic epidermolysis bullosa reveals nine novel COL7A1 variants. J Dermatol Sci. 2007 Jun;46(3): 169-78. Reviewにおいて記述されるように)、またはタンパク質-核酸相互作用(それぞれの文献において記述されるように)によって媒介される、本発明に従うRTMである。
【0064】
本発明の別の局面は、トランススプライスされるエキソンが、RNAi様効果を提供するために、天然に存在するまたは人工的に導入された終止コドンおよび/またはステム形成構造を含む、本発明に従うRTMに関する。
【0065】
本発明の別の局面は、RTMが3' UTR配列、または3'もしくは5'端に付加されたリボザイム配列を有する、本発明に従うRTMに関する。
【0066】
1つの好ましい態様において、本発明の組成物には、天然の標的プレ-mRNA分子(本明細書において以降「プレ-mRNA」と呼ばれる)と相互作用して、トランススプライシング反応を媒介し、それによって標的mRNAの発現を減少させることができる新規キメラRNA分子(本明細書において以降「プレ-miRNA」と呼ばれる)が得られるように設計されたRTM分子が含まれる。本発明の方法は、RTMの一部が天然のプレ-mRNAにスプライスされて新規プレ-miRNAを形成する条件で天然の標的プレ-mRNAを本発明のRTMに接触させる段階を包含する。本発明のRTMは、トランススプライシング反応に起因する新規プレ-miRNAが特異的mRNAに対する干渉活性を有する活性なmiRNAを形成するようにさらにプロセシングされうるように遺伝子工学操作される。特異的標的mRNAは、標的プレ-mRNAのシススプライシングに通常起因するmRNAであってもよく、または無関係なmRNAであってもよい。一般的に、標的プレ-mRNAは、特異的細胞タイプ内でそれが発現され、それによって選択された細胞タイプに新規RNAの発現を標的化する手段をそれが提供することから選ばれる。プレ-miRNAのそのような標的化発現は、標的mRNAの発現に関連する疾患/病態における標的プレ-mRNAの発現を低減させるために用いられうる。
【0067】
さらに好ましいのは、DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド分子である本発明に従うRTMである。このように、そのさらなる局面において、本発明は、本発明のRTMの1つをコードする少なくとも1つの核酸を含む核酸に向けられる。好ましくは、核酸は、DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド分子からなり、DNAまたはRNAは優先的に一本鎖または二本鎖のいずれかである。同様に、好ましくはストリンジェントな条件、たとえば60℃で2.5×SSC緩衝液におけるハイブリダイゼーションおよび37℃でより低い緩衝液濃度、たとえば0.5×SSC緩衝液での数回の洗浄のような条件で、前述のRNAまたはDNAの1つとハイブリダイズして、脂質リン酸ホスファターゼ活性および/または形質膜との会合を示すタンパク質をコードするするRNAまたはDNAが含まれる。たとえば一本鎖サケ精子DNAなどの、ストリンジェントなノザンまたはサザンブロットなどを行うために必要な追加の試薬が当技術分野において周知である。同様に、本発明に従う核酸および/または遺伝子コードの縮重により先に概要したハイブリダイズする核酸に関連する核酸配列も含まれる。
【0068】
いくつかの場合において、たとえば本発明の核酸の転写または翻訳を干渉することが望ましい可能性があり、ゆえに本発明はまた、本発明の核酸と相補的であり、このようにたとえば転写または翻訳を阻害することができる核酸にも向けられる。そのような相補的核酸の好ましい態様は、いわゆるアンチセンスオリゴヌクレオチド(R. Q. Zheng and D. M. Kemeny (1995) Clin. Exp. Immunol. 100:380-2、W. Nellen and C. Lichtenstein (1993) Trends. Biochem. Sci. 18:419-423、およびC. A. Stein (1992) Leukemia 6:967-74)、リボザイム(M. Amarzguioui and H. Prydz (1998) Cell. Mol. Life Sci. 54:1175-1202、N. K. Vaish et al (1998) Nucleic Acids Res. 96:5237-5242、Persidis (1997) Nat. Biotechnol. 15:921-922、およびL. A. Couture and D. T. Stinchcomb (1996) Trends Genet. 12:510-515)、および/またはいわゆる低分子干渉RNA分子(siRNAs)(S. M. Elbashir et al. (2001) Nature 411 :494-498)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましい態様において、少なくとも20個、好ましくは少なくとも約30個、より好ましくは少なくとも約40個の核酸の長さ、および最も好ましくは少なくとも約50個の核酸の長さを有する。
【0069】
オリゴヌクレオチドは、細胞に存在する場合、エンドまたはエキソヌクレアーゼによって、特にDNアーゼおよびRNアーゼによって一般的に急速に分解され、ゆえにたとえばアンチセンス戦略において分解に対してそれらを安定化して、それによって核酸の有効量が細胞内で維持される時間を延長するために、リボザイムまたはsiRNAとして用いられる核酸を改変することは有利である(L. Beigelmann et al. (1995) Nucleic acids Res. 23:3989-94、WO 95/11910、WO 98/37340、およびWO 97/29116)。典型的にそのような安定化は、1つまたは複数のヌクレオチド間リン酸基の導入によって、および/または1つまたは複数の非リンヌクレオチド間基の導入によって得られうる。
【0070】
ふさわしく改変されたヌクレオチド間基は、たとえばUhlmann and Peimann (1990) Can. Rev. 90:544において要約される。本発明の核酸において用いられうる改変されたヌクレオチド間リン酸残基および/または非リン酸架橋は、たとえばメチルホスホネート、ホスホチオエート、ホスホラミデート、ホスホジチオネート、リン酸エステルを含み、本発明の核酸において用いることができる非リンヌクレオチド間類似体には、たとえばシロキサン架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル、アセタミド架橋、および/またはチオエーテル架橋が含まれる。
【0071】
本発明の好ましい態様において、たとえばエキソンスプライシングエンハンサーと呼ばれる配列などのスプライシングエンハンサーも同様に合成RTMの構造に含めてもよい。実行するスプライシング因子、すなわちセリン/アルギニンリッチ(SR)タンパク質は、そのようなエキソンスプライシングエンハンサーと相互作用してスプライシングをモジュレートすることが示されている(Tacke et al., 1999, Curr. Opin. Cell Biol. 11 :358-362;Tian et al., 2001, J. Biological Chemistry 276:33833-33839;Fu, 1995, RNA 1:663-680を参照されたい)。このように、RTMには、好ましくは標的プレ-mRNAにおけるイントロンおよび/またはエキソン配列に対して相補的な1つまたは複数の配列が含まれる。これは、選ばれた内因性の標的プレ-mRNAにRTMを結合させて、それによってRTMスプライス部位が標的プレ-mRNAにおけるスプライス部位とのスプライシング反応を完了する可能性がより高くなる。
【0072】
RNA発現/安定性を改変するためのポリアデニル化シグナル、またはスプライシングを増強するための5'スプライス配列、追加の結合領域、「安全策」自己相補性領域、追加のスプライス部位、または分子の安定性をモジュレートおよび分解を防止するための保護基などの追加の特色をRTM分子に加えることができる。加えて、非スプライスRTMの翻訳を防止するために、終止コドンをRTM構造に含めてもよい。核の局在化およびスプライレオソーム取り込み、ならびに細胞内安定性を促進または容易にするために、3'ヘアピン構造、環状RNA、ヌクレオチド塩基改変、または合成類似体などのさらなるエレメントをRTMに組み入れることができる。
【0073】
特異的RTMをインビトロで合成する場合(合成RTM)、そのようなRTMを、たとえば分子の安定性、標的mRNAに対するハイブリダイゼーション、細胞への輸送等を改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で改変することができる。たとえば、全体的な電荷を低減させるようにRTMを改変すると、分子の細胞取り込みを増強することができる。加えて、ヌクレアーゼまたは化学物質分解に対する感受性を低減させるために、改変を行うことができる。核酸分子は、ペプチド(たとえば、インビボで宿主細胞受容体を標的化するため)、または形質膜(たとえば、Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 6553-6556;Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652;1988年12月15日に公開されたPCT公開番号WO 88/09810を参照されたい)もしくは血液-脳関門(たとえば1988年4月25日に公開されたPCT公開番号WO 89/10134を参照されたい)を超えての輸送を容易にする物質、ハイブリダイゼーション誘発切断物質(たとえば、Krol et al., 1988, BioTechniques 6: 958- 976)、またはインターカレート剤(たとえば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5: 539-549を参照されたい)などの別の分子にコンジュゲートされるように合成されてもよい。この目的のために、核酸分子を、別の分子、たとえばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発クロスリンク剤、輸送物質、ハイブリダイゼーション誘発切断物質等にコンジュゲートさせてもよい。
【0074】
核酸分子に対する様々な他の周知の改変を、細胞内安定性および半減期を増加させる手段として導入することができる(同様に、オリゴヌクレオチドに関する上記を参照されたい)。可能性がある改変には、分子の5'および/または3'端へのリボヌクレオチドの隣接配列の付加が含まれるがこれらに限定されるわけではない。増加した安定性が望ましいいくつかの状況において、2'-O-メチル化などの改変ヌクレオシド間連結を有する核酸が好ましい可能性がある。改変ヌクレオシド間連結を含有する核酸を、当技術分野において周知である試薬および方法を用いて合成してもよい(Uhlmann et al., 1990, Chem. Rev. 90: 543-584;Schneider et al., 1990, Tetrahedron Lett. 31 :335、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい)。
【0075】
合成によって産生される場合、本発明の合成RTMは好ましくは細胞におけるその安定性を増加させるように改変される。RNA分子は、細胞のリボヌクレアーゼによる切断に対して感受性であることから、競合的阻害剤として、RNA結合配列の作用を模倣するがヌクレアーゼ切断に対する感受性がより低い化学改変オリゴヌクレオチド(又は、オリゴヌクレオチドの組み合わせ)を用いることは好ましい可能性がある。加えて、合成RTMを、ヌクレアーゼによる分解を防止するために増強された安定性を有するヌクレアーゼ抵抗性環状分子として産生することができる(Puttaraju et al., 1995, Nucleic Acids Symposium Series No. 33: 49-51;Puttaraju et al., 1993, Nucleic Acid Research 21 : 4253- 4258)。たとえば結合を増強するため、細胞の取り込みを増強するため、薬理学もしくは薬物動態を改善するため、または他の薬学的に望ましい特徴を改善するために、他の改変も同様に必要である可能性がある。
【0076】
合成RTMの構造に対して作成されてもよい改変には、(i)ホスホロチオエート(X もしくはYもしくはWもしくはZ=S、またはOとしての残りとの2つまたはそれより多くの任意の組み合わせ)、たとえばY=S(Stein, C. A., et al., 1988, Nucleic Acids Res., 16:3209-3221)、X=S(Cosstick, R., et al., 1989, Tetrahedron Letters, 30, 4693-4696)、YおよびZ=S(Brill, W. K.-D., et al., 1989, J. Amer. Chem. Soc, 111: 2321-2322);(ii)メチルホスホネート(たとえば、Z=メチル(Miller, P. S., et al., 1980, J. Biol. Chem., 255: 9659-9665);(iii)ホスホラミデート(Z=N-(アルキル)2、たとえばアルキルメチル、エチル、ブチル)(Z=モルフォリンまたはピペラジン)(Agrawal, S., et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 7079-7083)(XまたはW=NH)(Mag, M., et al., 1988, Nucleic Acids Res., 16:3525-3543);(iv)ホスホトリエステル(Z=O-アルキル、たとえばメチル、エチル等)(Miller, P. S., et al., 1982, Biochemistry, 21 : 5468-5474);および(v)リンを含まない連結(たとえば、カーバメート、アセタミデート、アセテート)(Gait, M. J., et al., 1974, J. Chem. Soc. Perkin I, 1684-1686;Gait, M. J., et al., 1979, J. Chem. Soc. Perkin I, 1389-1394)を用いることなどの骨格改変が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0077】
加えて、糖の改変を本発明のRTM分子に組み入れてもよい。そのような改変には、(i)2'-リボヌクレオシド(R=H);(ii)2'-O-メチル化ヌクレオシド(R=OMe)(Sproat, B. S., et al., 1989, Nucleic Acids Res., 17:3373-3386);および(iii)2'-フルオロ-2'-リボキシヌクレオシド(R=F)(Krug, A., et al., 1989, Nucleosides and Nucleotides, 8: 1473-1483)を用いることが含まれる。
【0078】
さらに、(i)5-位で置換された(たとえば、メチル、ブロモ、フルオロ等)ピリミジン誘導体、またはカルボニル基のアミノ基への交換(Piccirilli, J. A., et al., 1990, Nature, 343:33-37)を用いること;(ii)特異的窒素原子が欠乏している(たとえば、7-デアザアデニン、ヒポキサンチン)、または8-位で官能化された(たとえば、8-アジドアデニン、8-ブロモアデニン)プリン誘導体を用いることが含まれるがこれらに限定されるわけではない塩基改変を、RTMに対して行ってもよい(論評に関してはJones, A. S., 1979, Int. J. Biolog. Macromolecules, 1 : 194-207を参照されたい)。
【0079】
加えて、(i)ソラレン(Miller, P. S., et al., 1988, Nucleic Acids Res., Special Pub. No. 20, 113-114)、フェナンスロリン(Sun, J-S., et al., 1988, Biochemistry, 27: 6039-6045)、マスタード(Vlassov, V. V., et al, 1988, Gene, 72:313-322)(共試薬を必要とするまたは必要としない非可逆的クロスリンク剤);(ii)アクリジン(インターカレート剤)(Helene, C, et al., 1985, Biochimie, 67: 777-783);(iii)チオール誘導体(タンパク質との可逆的ジスルフィド形成)(Connolly, B. A., and Newman, P. C, 1989, Nucleic Acids Res., 17: 4957-4974);(iv)アルデヒド(シッフ塩基形成);(v)アジド、ブロモ基(UVクロスリンク)、または(vi)エリプチシン(光分解性クロスリンク)(Perrouault, L., et al., 1990, Nature, 344: 358-360)などの反応性官能基に、RTMを共有的に連結させてもよい。
【0080】
本発明の1つの態様において、糖およびヌクレオシド間連結、すなわちヌクレオチド単位の骨格が新規の基に交換されているオリゴヌクレオチド模倣体を用いることができる。たとえば、天然のオリゴヌクレオチドより高い親和性でDNAおよびRNAに結合することが示されている1つのそのようなオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる(論評に関してはUhlmann, E. 1998, Biol. Chem. 379: 1045-52を参照されたい)。このように標的プレ-mRNAに対するその安定性および/または結合親和性を増加させるために、PNAを合成RTMに組み入れてもよい。
【0081】
本発明の別の態様において、合成RTMを、細胞による取り込みを改善することができる親油性基または他の試薬に共有的に連結させてもよい。たとえば、RTMが細胞に送達される効率を改善するために、RTM分子を(i)コレステロール(Letsinger, R. L., et al, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 6553-6556);(ii)ポリアミン(Lemaitre, M., et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 84: 648-652);他の可溶性ポリマー(たとえば、ポリエチレングリコール)に共有的に連結させてもよい。加えて、上記で同定された改変の組み合わせを利用して、RTMの安定性および標的細胞への送達を増加させてもよい。本発明のRTMは、標的細胞において新規キメラRNAを産生するように設計された方法において用いられうる。
【0082】
本発明の別の局面は、上記の本発明に従うRTMを含む組み換え型発現ベクターに関する。本発明の意味におけるベクターは、導入されることができるまたは細胞に含まれると核酸を導入することができる核酸である。導入された核酸によってコードされるRTMは、ベクターが導入されると細胞内で発現されることが好ましい。好ましくは、ベクターは、真核細胞発現ベクターであり、好ましくはウイルス由来配列を含むベクターである。さらに好ましいのは、トランスジーン発現を指示するために、皮膚細胞および好ましくはケラチノサイト特異的調節エレメントをさらに含む、本発明のベクターである。
【0083】
インビトロまたはインビボ発現にとって適した発現ベクターは、文献において見いだされうる。これらのベクターは、本発明の方法において適用されるために、当業者によって容易に改変されうる。発現ベクターは通常、特異的RTM分子の産生にとって必要である全ての遺伝子エレメントを含有する。本発明のいくつかの態様において、本発明に従う発現ベクターは、「トランスジーン」の形を有しうる、すなわちたとえば、発現のために設計される、および特にインビボで誘導可能なおよび/または制御可能な発現のために設計される適したベクターにおける発現エレメントを有しうる。よって、トランスジーンは、本明細書において考察される発現のために一定の遺伝子制御エレメントと共に本発明の核酸を含む。
【0084】
好ましい態様において、本発明のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ、コスミド、人工哺乳動物染色体、ノックアウトまたはノックイン構築物、ウイルス、特にアデノウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス(Chang, L.J. and Gay, E.E. (20001) Curr. Gene Therap. 1 : 237-251)、単純ヘルペスウイルス(HSV-1, Carlezon, W.A. et al. (2000) Crit. Rev. Neurobiol.; 14(1): 47-67)、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV, Carter, PJ. and Samulski, R. J. (2000) J. Mol. Med. 6: 17-27)、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、フィロウイルスおよびその工学操作版(たとえば、Cobinger G. P. et al (2001) Nat. Biotechnol. 19: 225-30を参照されたい)、ヴィロソーム、「裸の」DNAリポソーム、ならびに核酸コーティング粒子、特に金の球体を含む。アデノウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが特に好ましい(Lindemann et al. (1997) Mol. Med. 3: 466-76およびSpringer et al. (1998) Mol. Cell. 2: 549-58)。リポソームは通常、たとえばリポソーム浮遊液の超音波処理によって、中性の陽イオンおよび/または陰イオン脂質で作成される小さいユニラメラまたはマルチラメラ小胞である。DNAは、たとえばリポソームの表面にイオン結合しうる、またはリポソームの内部に封入されうる。適した脂質混合物が当技術分野において公知であり、たとえばコレステロール、リン脂質等、たとえばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)等、そのいずれも多様な細胞株において用いられているDOTMA(1,2-ジオレイルオクス(Dioleylox)プロピル-3-トリメチルアンモニウムブロミド)およびDPOE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)を含む。核酸コーティング粒子は、細胞に粒子を機械的に導入させる、いわゆる「遺伝子銃」を用いて細胞に核酸を導入するためのもう1つの手段である。好ましくは、粒子そのものは不活性であり、ゆえに、好ましい態様において、金の球体で作成される。
【0085】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクター構築物によって形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞のいずれかでありうる。細菌細胞は、いくつかの状況において好ましい原核宿主細胞である可能性があり、典型的にBethesda Research Laboratories Inc., Bethesda, MD, USAから入手可能な大腸菌株DH5、およびRockville, MD, USAのAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能なRR1(No ATCC 31343)などの大腸菌の株である。好ましい真核宿主細胞には、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞が含まれ、好ましくはマウス、ラット、サル、またはヒト線維芽細胞および結腸細胞株などの脊椎動物細胞である。酵母宿主細胞には、YPH499、YPH500、およびYPH501が含まれ、これらは一般的にStratagene Cloning Systems、La Jolla、CA 92037、USAから入手可能である。好ましい哺乳動物宿主細胞には、ATCCからCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL 1658として入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH 3T3、ATCCからCRL 1650として入手可能なサル腎由来COS-1細胞、およびヒト胎児腎細胞である293細胞が含まれる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターをトランスフェクトさせることができるSf9細胞である。発現にとって適した宿主細胞の選び方に関する概要は、たとえばPaulina Balbas and Argelia Lorenceのテキスト"Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression, Reviews and Protocols," Part One, Second Edition, ISBN 978-1-58829-262-9、および当業者に公知の他の文献において見いだされうる。
【0086】
本発明のDNA構築物による適当な細胞宿主の形質転換は、用いられるベクターのタイプに典型的に依存する周知の方法によって成就される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、たとえば、Cohen et al (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 2110、およびSambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al (1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NYにおいて記述される。Beggs((1978) Nature 275, 104-109)の方法も同様に有用である。脊椎動物細胞に関して、そのような細胞をトランスフェクトするために有用な試薬、たとえばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストラン、またはリポソーム製剤は、Stratagene Cloning Systems、またはLife Technologies Inc., Gaithersburg, MD 20877, USAから入手可能である。電気穿孔はまた、細胞を形質転換および/またはトランスフェクトするために有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞の形質転換に関して当技術分野において周知である。
【0087】
本発明の別の局面は、本発明に従うRTM分子および/または本発明に従う組み換え型発現ベクターを含む、組み換え型皮膚細胞、好ましくは組み換え型ケラチノサイト、線維芽細胞、または内皮細胞に関する。組み換え型発現ベクターに関する先の記述に加えて、RTMをコードする核酸分子を、当技術分野において入手可能な任意の手段によって、皮膚細胞、好ましくはケラチノサイト、線維芽細胞、または内皮細胞に導入することができる。現在好ましい態様において、レトロウイルスベクターはインビトロでケラチノサイトを形質導入するために用いられる。より詳しくは、Morganstern and Land(1990)のpBabe puroレトロウイルスベクターを用いることができ、RTMをコードするDNAを挿入することができる。BABEベクターを用いる好ましいケラチノサイトの形質導入は文献において記述されている。変更された核酸を哺乳動物細胞に導入する正確な方法は当然、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、偽型レトロウイルスベクターを用いることが含まれる他の技術が、この技法に関して広く利用可能である。リポソーム送達ならびに受容体媒介および他のエンドサイトーシス機序などの物理的な形質導入技術も同様に用いることができる。本発明は、これらおよび他の一般的に用いられる遺伝子移入法のいずれかと共に用いられうる。
【0088】
当技術分野において公知の他の方法をまた用いて、同様に先に既に記述されているように、RTMをコードする核酸を、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、線維芽細胞、または内皮細胞に導入することができる。1つの方法は、細いガラス針を通して細胞の細胞質の中にDNAが直接注射されるマイクロインジェクションである。または、DNAを、それに対して陽性荷電化学基(DEAE、ジエチルアミノエチルに関して)がカップリングされている不活性な炭水化物ポリマー(デキストラン)と共にインキュベートすることができる。DNAはその陰性荷電リン酸基を通してDEAE-デキストランに粘着する。これらの大きいDNA含有粒子は次に細胞の表面に粘着して、細胞はエンドサイトーシスとして知られるプロセスによってそれらを中に取り込むと考えられる。もう1つの方法において、細胞は、リン酸カルシウムとの沈殿の形でDNAを効率よく取り込む。電気穿孔において、細胞をDNAを含有する溶液中に入れて、その膜を一過性に開かせる穴を開ける短い電気パルスに供する。DNAは穴を通して細胞質の中に直接入り、DEAEデキストランおよびリン酸カルシウム技法の際にその中をそれらが通過するエンドサイトーシス小胞を迂回する。またDNAを、人工の脂質小胞であるリポソームに組み入れることができ、リポソームは細胞膜と融合してその内容物を細胞質の中に直接送達する。さらにより直接のアプローチにおいて、DNAはタングステン微小発射物の表面に吸収され、猟銃に似た装置によって細胞に発射される。
【0089】
本発明の別の局面は、生理的に許容される担体および本発明に従うRTM分子、本発明に従う組み換え型発現ベクター、または本発明に従う組み換え型皮膚細胞を含む薬学的調製物に関する。次に、本発明のなおもう1つの局面は、本発明に従うRTM分子、本発明に従う組み換え型発現ベクター、本発明に従う組み換え型皮膚細胞、または薬剤として用いるための本発明に従う薬学的調製物に関する。
【0090】
特異的態様において、「薬学的に許容される」という用語は、動物での使用、より詳しくはヒトでの使用に関して、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識された薬局方において記載されていることを意味する。「担体」という用語は、それと共に合成物質が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。適した薬学的担体の例は、E.W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical sciences"において記述される。
【0091】
特異的態様において、薬学的組成物は、(1)たとえばタンパク質が欠乏している、遺伝的に欠損している、生物学的に不活性である、または異常に不活性である、または過少発現されている宿主における、内因性のタンパク質または機能のレベルの非存在または減少(正常と比較して、または望ましいレベル)を伴う疾患または障害;または(2)インビトロもしくはインビボでアッセイが特定のタンパク質の機能を阻害する合成RTMの有用性を示す疾患もしくは障害、において投与される。合成RTM媒介トランススプライシング反応に起因するキメラmRNAによってコードされるタンパク質の活性は、たとえば宿主組織試料(たとえば、生検組織から)を得る段階、およびインビトロでそれをmRNAまたはタンパク質レベル、発現されたキメラmRNAの構造および/または活性に関してアッセイする段階によって容易に検出されうる。このように、キメラmRNAによってコードされるタンパク質を検出および/または可視化するためのイムノアッセイ(たとえば、ウェスタンブロット、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学等)、および/またはキメラmRNAの存在を検出および/または可視化することによってキメラmRNA発現の形成を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(たとえば、ノザンアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、および逆転写PCR等)等が含まれるがこれらに限定されるわけではない、当技術分野において標準である多くの方法を使用することができる。または、合成RTMによってコードされるまたはRTMに関連するレポーター遺伝子の直接可視化を行ってもよい。
【0092】
本発明はまた、合成RTMまたは合成RTMをコードする核酸の有効量と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物も提供する。特異的態様において、処置を必要とする領域に本発明の薬学的組成物を局所投与することが望ましい可能性がある。これは、たとえば手術時の局所注入、たとえば術後の創傷包帯と共に局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはシアラスティックメンブレンなどのメンブレンもしくはファイバーが含まれる多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン様材料であるインプラントによって達成される可能性があるが、これらに限定されない。ナノ粒子、放出制御ポリマーなどのマトリクス、ハイドロゲルなどの他の放出制御薬物送達系。RTMまたは合成RTMは、標的細胞において望ましい効果を生じるために有効である量で投与されるであろう。合成RTMの有効量は、生物学的半減期、生物学的利用率、および毒性などのパラメータを処理する当業者に周知の技法を通して決定されうる。有効である本発明の組成物の量は、処置される疾患または障害の性質に依存して、標準的な臨床技術によって決定されうる。加えて、最適な用量範囲を同定するために役立つように、任意で、インビトロアッセイを使用してもよい。
【0093】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の成分の1つまたは複数を充填した1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供し、任意でそのような容器には、製造、薬剤もしくは生物学的製品の使用もしくは販売を規制する政府当局によって規定された形状の通知書を添付することができ、通知書は、製造当局による、ヒトでの投与のための使用または販売の承認を反映する。
【0094】
本発明の任意の分子、核酸、発現ベクター、または細胞は、本明細書において記述される障害を処置するために有用である。ゆえに、本発明の任意の分子を薬剤として、または薬剤の製造において用いてもよい。分子は単独でまたは本発明の他の分子もしくは公知の分子(複数)と併用して用いられてもよい。
【0095】
好ましくは、本発明の薬剤は、直接、患者に、罹患臓器に、もしくは全身、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.投与されうる、または患者もしくはヒト細胞株に由来する細胞にエクスビボで適用されて、その後患者に投与されるか、もしくはインビトロで組み換え型細胞を産生するために用いられて、これを患者に再投与することができる。
【0096】
本発明のアミノ酸は、実質的に純粋であってもよく、または適したベクターもしくは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、またはその組み合わせであってもよい。そのような核酸を設計および導入するための方法は当技術分野において周知である。概要は、たとえばPascolo S. 2006、Stan R. 2006、またはA Mahdavi 2006によって提供される(Mahdavi A, Monk BJ. Recent advances in human papillomavirus vaccines. Curr Oncol Rep. 2006 Nov;8 (6): 465-72、Stan R, Wolchok JD, Cohen AD. DNA vaccines against cancer. Hematol Oncol Clin North Am. 2006 Jun; 20(3): 613-36、Pascolo S. Vaccination with messenger RNA. Methods Mol Med. 2006; 127:23-40を参照されたい)。ポリヌクレオチドワクチンは、調製が容易であるが、免疫応答の誘導におけるこれらのベクターの作用様式は、完全には理解されていない。適したベクターおよび送達系には、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または1つより多いウイルスのエレメントを含有するハイブリッドに基づく系などのウイルスDNAおよび/またはRNAが含まれる。非ウイルス送達系には、陽イオン脂質および陽イオンポリマーが含まれ、これらはDNA送達の技術分野において周知である。「遺伝子銃」による送達などの物理的送達も同様に用いてもよい。
【0097】
本発明はこのように、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患、および皮膚の癌などの皮膚または他の上皮の障害を処置するために有用である薬剤を提供する。
【0098】
本発明の別の局面は、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患、および皮膚の癌などの皮膚または他の上皮の障害から選択される疾患を処置するために、本発明に従うRTM分子、本発明に従う組み換え型発現ベクター、本発明に従う組み換え型皮膚細胞、または本発明に従う薬学的調製物を用いることに関する。好ましいのは、薬剤が皮膚に適用される本発明に従う使用である。上記の疾患のそれぞれの処置法もまた、本発明の範囲に包含される。
【0099】
本発明の製剤は、局所適用、経口(腸管内)、鼻腔内、眼内、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、または経皮などの任意の許容される経路による、それぞれの活性化合物、特に本発明のRTMの投与にとって適した製剤である。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくは局所適用である。投与は注入ポンプによって行われてもよい。
【0100】
本発明の別の局面は、本発明に従うRTM分子、本発明に従う組み換え型発現ベクター、本発明に従う組み換え型皮膚細胞、または本発明に従う薬学的調製物を被験者に投与する段階を含む、被験者における遺伝子欠損を修正するための方法に関する。先に述べたように、標的とされる遺伝子の遺伝子発現の遺伝子異常は、様々な障害および疾患の基礎であり、これらを本発明の組成物を用いて修正することができる。
【0101】
加えて、組成物および方法はまた、機能的な生物活性分子をコードする遺伝子を、欠失しているまたは変異体の遺伝子産物の発現が正常な表現型を生じる遺伝性の遺伝子障害を有する個体の細胞に提供するために用いられてもよい。これらの組成物および方法の別の本発明の応用は、先に説明したように自己免疫疾患のような多様な疾患において特異的役割を果たす遺伝子を再プログラムすることである。
【0102】
以下の図面および実施例は、単に本発明を例証するために役立ち、本発明は、本明細書において記述される特異的態様によって範囲を制限されるべきではない。実際に、本明細書において記述される改変に加えて本発明の様々な改変が以下の説明および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲に入ると意図される。上記の特色および以下において記述される特色は、本発明に従って個々に、または互いに組み合わせて実現されてもよい。本文において引用された参考文献は全て、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
(図1)選択された標的プレ-mRNAと相互作用するように設計されるRTM分子の概略図を示す。RTMは、標的結合ドメイン、スプライシングドメイン、およびプレ-mRNAを再プログラムするために新規または改変遺伝子情報を含有するコードドメインを含む。
(図2)24個のエキソンを有するRNAにおける起こりうる3つのタイプのRTMの概略図を示す、1)5'スプライス部位が含まれる5'トランススプライシングRTM。トランススプライシング後、5' RTMは標的mRNAの5'領域を変化させるであろう;2)標的mRNAの3'領域をトランススプライスして交換するために用いられる3'スプライス部位が含まれる3' RTM;ならびに3)3'および5'スプライス部位と共に1つまたは2つの結合ドメインを保有するダブルトランススプライシングRTM。トランススプライシング後、このRTMは、プロセシングされた標的mRNAにおいて1つまたは複数の内部エキソンを交換するであろう。
(図3)3'トランススプライシングの模式図を示す。SMaRTは、内因性の標的プレ-mRNAの5'スプライス部位と外から送達されたプレ-トランススプライシングRNA分子の3'スプライス部位の間でのスプライセオソームによって媒介されるトランススプライシング反応を通してキメラmRNAを作成する。RTM分子は、内因性の標的プレ-mRNAのイントロンとの特異的塩基対形成を通して結合し、標的化イントロンの上流の内因性の遺伝子の3'配列全体を、RTMの野生型コード配列に交換する。
(図4)以下の実施例において用いられるLacZダブルトランススプライシングモデル系のRTM分子を示す。結合ドメイン配列:

スペーサー配列

分岐点配列:TACTAAC;ポリピリミジントラクト:

3'アクセプタースプライス部位:CAG。
(図5)以下の実施例1において記述されるCOL17A1遺伝子の内因性のトランススプライシングに関する構築物PTM-6を示す。結合ドメイン配列:(太字で記した配列はCOL7A1エキソン65に対して相補的である)

スペーサー配列:

分岐点配列:TACTAAC;ポリピリミジントラクト:

3'アクセプタースプライス部位:CAG。
(図6)β-ガラクトシダーゼ染色トランスフェクトHEK 293FT細胞の光学顕微鏡写真を示す。倍率:100倍;A)標的ベクター単独によるHEK 293FTのトランスフェクションによっていかなるβ-gal活性も得られなかった。B)標的プレ-mRNAとRTM RNAとのあいだの正確なトランススプライシングによって、同時トランスフェクトされた上皮293FT細胞において機能的なβ-galを産生した。同時トランスフェクトした細胞の10%がβ-gal発現の回復を示した。
(図7)同時トランスフェクトしたHEK 293FT細胞の顕微鏡分析を示す。倍率:200倍。A)同時トランスフェクトされた細胞におけるGFP-標的とGFP-PTM-1とのあいだの特異的トランススプライシングによって、完全なGFPエキソンが得られ、ゆえに細胞は緑色蛍光を産生する。B)RTMにおける赤色蛍光レポーターは、トランスフェクション対照として役立ち、非スプライスRTMの非特異的トランススプライシング、シススプライシング、または直接発現を示している。
(図8)抗VII型コラーゲン抗体による器官型皮膚同等物の免疫蛍光染色を示す。分析を、落射蛍光Zeiss Axioscope顕微鏡において行った。倍率:100倍、露出時間:10秒。A)無処置不死化RDEB ROケラチノサイトおよびRDEB線維芽細胞によって作成されたSEの免疫蛍光染色は、器官型培養が、陽性対照と比較してほとんど免疫反応性ではなかったことを示している。B)野生型ケラチノサイトおよび線維芽細胞によって作成されたSEにおいて、真皮-表皮接合部(DEJ)は強く反応性であり、このことはVII型コラーゲンの沈着を示している。C)復帰変異したRO初代培養ケラチノサイトのクローン原性細胞#1によって作成されたSEにおけるVII型コラーゲンに対する染色によって、高い緑色シグナルが得られ、これはDEJでのVII型コラーゲンの沈着を報告する。染色強度は、野生型ケラチノサイトによって作成されたSEにおいて観察された強度と同等である。
(図9)実施例において用いられる蛍光モデル系における5' RTMと標的分子の概略図を示す。RTM誘導トランススプライシング事象によって、RTMおよび標的分子トランスフェクトHEK293細胞におけるdsRED-acGFP融合タンパク質の発現が起こる。
(図10)遺伝子PLEC1のエキソン/イントロン領域9に対して特異的なRTMクローンの位置を示す。
(図11)遺伝子PLEC1のエキソン/イントロン領域9に対して特異的なRTMクローンのGFP発現の結果を示す。
(図12)遺伝子COL17A1のエキソン/イントロン領域52に対して特異的なRTMクローンの位置を示す。
(図13)実施例4に従って産生されたRTM構築物に関する概略図を示す。
【0104】
SEQ ID NO:1〜26は、実施例において用いられる領域、プライマー、およびプローブの配列を示す。
【0105】
SEQ ID NO:27は、PLEC1のエキソン9に対して特異的な構築物PTM 13の結合ドメインの配列を示す(実施例3)。
【0106】
SEQ ID NO:28は、COL17A1のエキソン52に対して特異的な構築物PTMN9の結合ドメインの配列を示す(実施例3)。
【0107】
SEQ ID NO:29は、MMP-9における結合に関する本発明に従う構築物RTM-BD6の配列を示す(イントロン1)。
【実施例】
【0108】
緒言
3'エキソンの交換は現在のトランススプライシング試験において最も頻繁に採択されるタイプであることから、インビトロでCOL7A1遺伝子を修正するために、細胞へのRTMの移入の成功および標的プレ-mRNAとRTMのあいだのダブルトランススプライシングによる内部エキソンの正確な交換を証明するための一例として、3'トランススプライシング法を用いた(Chao H. et al. (2003) Phenotype correction of hemophilia A mice by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Nat. Med. 9, 1015-1019)(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)(Liu X.M. et al. (2002) Partial correction of endogenous Delta F508 CFTR in human cystic fibrosis airway epithelia by spliceosome-mediated RNA trans-splicing. Nature Biotechnology 20, 47-52)(Mansfield S.G. et al. (2000) Repair of CFTR mRNA by spliceosome-mediated RNA transsplicing. Gene Ther. 7, 1885-1895)(Puttaraju M. et al. (1999) Spliceosome-mediated RNA trans-splicing as a tool for gene therapy. Nat.Biotechnol. 17, 246-252)(Sullenger B.A. and Gilboa E. (2002) Emerging clinical applications of RNA. Nature 418, 252-258)。このプロセスにおいて、標的プレ-mRNAの3'領域全体が、3' RTMが保有するコード配列によって交換される。
【0109】
RTMは、結合ドメインを通して標的プレ-mRNAのイントロンと塩基対を形成した後、SMaRTによってこのイントロンの近接5'ドナースプライス部位とRTMの3'アクセプタースプライス部位との間でトランススプライシングを誘導する。このRTMは、ポリアデニル化部位(pA)を保有するが、ATG開始コドンを有さず、これは標的プレ-mRNAから獲得されなければならない(Mitchell L. G. and McGarrity GJ. (2005) Gene therapy progress and prospects: reprograming gene expression by trans-splicing. Gene Ther. 12, 1477-1485)。
【0110】
図3は、3'トランススプライシングの模式図を示す。SMaRTは、内因性の標的プレ-mRNAの5'スプライス部位と外から送達されたプレ-トランススプライシングRNA分子の3'スプライス部位との間でのスプライセオソームによって媒介されるトランススプライシング反応を通してキメラmRNAを作成する。RTM分子は、内因性の標的プレ-mRNAのイントロンとの特異的塩基対形成を通して結合し、標的化イントロンの上流の内因性の遺伝子の3'配列全体をRTMの野生型コード配列に交換する。このプロセスによって、変異を起こすことなく3'野生型配列からなる再プログラムされた転写物が得られる。
【0111】
その結果が以下に考察される実験を行うための好ましい材料および方法は、たとえば参照により本明細書に組み入れられるWO 2003/069311の実験の章などのそれぞれの文献から得ることができる。
【0112】
分子クローニング技術
分子クローニングのための試薬
クローニングのためのDNA増幅は、Pfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)によってApplied Biosystems 2720 Thermal Cyclerにおいて行われた。PCR断片(1.6〜4 kb)を増幅するために、本発明者らは、Expand Long Range dNTPackを製造元のプロトコール(Roche, Mannheim, Germany)に従って用いた。PCR産物および消化されたプラスミドを1%アガロースゲルから溶出させて、GFXキット(GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)を用いて精製した。DNAをH2OまたはTris-EDTA、pH 8.0のいずれかにおいて溶出させた。クローニング技法のために用いられた制限酵素は全てNew England Biolabs, Beverly, MAから購入した。PromegaのT4 DNAリガーゼ(Madison, WI)、またはNew England Biolabs(Beverly, MA)のT4 DNAリガーゼのいずれかによって,ライゲーションを行った。消化したベクター端部を脱リン酸化するために、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Fermentas, St. Leonrot, Germany)を用いた。ダブル/トランススプライシングモデル系のために用いられた全ての標的およびRTMプラスミドを、pcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Invitrogen, Calrlsbad, CA)にクローニングした。プラスミドを化学的コンピテント細菌株TOP10またはDH5α(Invitrogen, Calrlsbad, CA)において増幅した。化学的コンピテントXL10-Gold細菌(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を大きいベクター(14 kbまで)の増幅のために用いた。プラスミドの調製は、Sigma-Aldrich(St Louis, MO)のGenElute(商標)Plasmid Miniprep KitおよびQIAquickキット(Qiagen, Courtaboeuf, France)を用いて行われた。ベクターpAcGFP1およびpDs-Red Monomerから増幅された蛍光レポーター遺伝子GFPおよびDsRed、ならびにベクターpIRES2-AcGFP1を、野生型IRES配列を増幅するための鋳型として用いた(Clontech, Saint-Germain-en-Laye, France)。ランダム結合ドメインライブラリを構築するために用いられる制限酵素CviJI*をRoboklon(Berlin, Germany)から購入した。DNA Terminator End Repair KitをLucigen(Middleton, WI)から購入した。培養接着細胞のRNAを単離するためのRneasy Mini kitは、Qiagen(Hilden, Germany)から購入した。
【0113】
RT-PCR反応を、SuperScript One-Step RT-PCRおよびSuperScript One- Step RT-PCR for Long Templates with Platinum Taq(Invitrogen)によって行った。ベクター構築物およびPCR産物を全て、配列を確認するために、ABI Prism自動シークエンサーによってABI PRISM色素ターミネーターサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems, Foster City, CA)および反応あたりプライマー3.2 pmolを用いてシークエンシングした。レトロウイルスベクターpLZRS-IRES-Zeo(Nolan and Shatzman 1998 Curr Opin Biotechnol. 1998 Oct; 9 (5): 447-50)は、G. Meneguzzi, Nice, Franceから寄贈された。ダブルトランスフェクションモデル系におけるCOL7A1のトランススプライシング。
【0114】
ダブルトランスフェクションモデル系におけるトランススプライシング
LacZトランススプライシングモデル系のためのベクターの構築
LacZモデル系のための標的
LacZ-Targetベクターをクローニングするために、G. DallingerからのLacZ-T1(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)をBamHIおよびBstEII(New England Biolabs)によって消化した。LacZ-Targetには、LacZ 5'エキソン(1〜1788 bp)、その後に続くコラーゲン7遺伝子のイントロン43(359 bp)およびLacZ 3'エキソン(1789〜3174 bp)が含まれる。3' LacZエキソンは、1800 bpの位置で2つのインフレーム終止コドンを含有する。COL7A1のイントロン43を、PCRによって鋳型としてヒトゲノムDNAおよびプライマー

を用いてPfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)によって増幅した。ゲノムDNAをPuregeneTM DNA精製キット(Gentra Systems, Minneapolis, MN)によって単離した。断片をBamHIおよびBstEII(New England Biolabs)によって消化して、T4 DNAリガーゼ(Promega)を用いて2つのLacZエキソンのあいだに室温で3時間20μlで挿入した。
【0115】
LacZモデル系のRTM
pCOL17-PTM、pcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)をEcoRIおよびKpnI(New England Biolabs)によって消化して、COL17A1結合ドメインをCOL7A1イントロン43に関する43 bpのアンチセンス結合ドメイン(BD)を含有するオリゴヌクレオチドに交換することによってLacZ-PTMを構築した。BDのほかに、LacZ-PTMは27 bpのスペーサー配列、分岐点(BP)、ポリピリミジントラクト(PPT)、その後に続く3'スプライスアクセプター部位CAG、および終止コドンを有しない3' LacZエキソンを含有する(図4を参照されたい)。
【0116】
蛍光トランススプライシングモデル系のためのベクターの構築
蛍光モデル系の標的
蛍光スクリーニング技法の標的は、GFPエキソンの5'側の半分(5' half)、ならびにCOL7A1のイントロン64およびエキソン65からなる。GFPの5'部分(1〜336 bp)をPfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いてベクターpAcGFP1(Clontech)から増幅した。リバースプライマーを、標的イントロンをトランススプライシングするために用いられるGFP/イントロン境界配列で5'スプライス部位(gtaag)を挿入するのみならず、EcoRV制限部位を挿入するように設計した:

。5' GFP断片をpcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Invitrogen)のTOPOクローニング部位に、製造元の説明書に従ってクローニングした。
【0117】
イントロン64およびエキソン65を、以下のプライマー対によってヒトゲノムDNAから増幅した:EcoRV部位が含まれるInt64F:

およびNotI部位が含まれるInt64R:

。ベクターおよびPCR断片をいずれもEcoRVおよびNotIによって切断して、NEB T4 DNAリガーゼを用いてRTで1時間ライゲーションした。
【0118】
蛍光モデル系のためのRTM
RTMベクターを構築するために、PPT配列、ならびに断片の5'端でKpnI制限部位および3'端でHindIII制限部位を挿入するように設計されたプライマーを用いて、3' GFP(337〜720 bp)を、pAcGFP1ベクター(Clontech)から増幅した

。KpnI制限部位のすぐ上流に27 bpスペーサーおよびBP配列を含有するG. DallingerからのPTM-5(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)を、増幅産物のライゲーションのためにKpnIおよびHindIIIによって消化した。第二のクローニング段階は、スペーサー、BP、およびPPT配列が含まれる3' GFPのpcDNA3.1D/V5-His-TOPOベクター(Invitrogen)のTOPO部位へのライゲーションであった。470 bp断片を、EcoRIおよびHpaI制限部位を保有するフォワードプライマーを用いて増幅した

。HpaI配列を可変の結合ドメインの平滑末端ライゲーションのための制限部位として役立つように挿入した。リバースプライマーは

であった。得られたベクターを以下のクローニング段階のための標的ベクターとして用いた。野生型IRES配列をベクターpIRES2-AcGFP1から増幅して、EcoRVおよびXmaI制限部位のあいだにライゲーションした。以下のプライマーを用いた:

。完全長のDsRed遺伝子を、EcoRVおよびNotI制限酵素を用いてベクターpDs-Red Monomer(Clontech)から切り出して、RTMベクターの2つの制限部位のあいだにクローニングした。
【0119】
内因性のCOL7A1遺伝子におけるトランススプライシング
内因性のトランススプライシングのためのベクターの構築
RTMベクターへのCOL7A1エキソン配列のクローニング
内因性のトランススプライシングのためのプレトランススプライシング分子(RTM)は、COL7A1のイントロン64およびエキソン65に対して相補的な224 bpの結合ドメイン(BD)、31 bpスペーサー、分岐点(BP)、およびポリピリミジントラクト(PPT)、その後に続く3'スプライスアクセプター部位(CAG)およびヒトCOL 7A1の3'野生型コード配列(5648〜8951 bp)からなる。BD、スペーサー、BPおよびPPTに及ぶ300 bp配列をFACS選択RTMから増幅して、pcDNA3.1D/V5-His-TOPO(Invitrogen)のTOPOクローニング部位にクローニングした。EcoRI制限部位を導入するようにフォワードプライマーを設計し、リバースプライマーにはさらなるクローニング戦略のために1つのNheI部位を導入した。非罹患者のエキソン65からエキソン118からなるヒトCOL7A1の3.3 kbの3'配列を一段階逆転写酵素PCR(Superscript One-Step RT-PCR for Long Templates with Platinum Taq;Invitrogen)によって増幅した。増幅産物をNheIおよびEcoRVによって消化して、RTMベクターにクローニングした。全構築物をシークエンシングによって分析してその正確な配列を確認した。
【0120】
レトロウイルスベクターpLZRS-IRES-ZeoへのRTMのサブクローニング
安定な形質導入のために、RTMを、EcoRIとSNaBI制限部位の間でMuLV-由来pLZRS-IRES-Zeoレトロウイルスベクター(G. Meneguzzi氏からの寄贈、Nice)(Michiels F. et al. (2000) Expression of Rho GTPases using retroviral vectors. Regulators and Effectors of Small Gtpases, Pt D 325, 295-302)にサブクローニングした。ベクターおよびインサートを適当な制限酵素によって消化して、ゲル精製してT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)によって室温で3時間ライゲーションすることによって、レトロウイルス構築物を生成した。プラスミドをE.coli XL10-Gold株(Stratagene)において増幅してQIAquickキット(Qiagen)によって精製した後、シークエンシングに供した。
【0121】
標的およびRTMのHEK 293FT細胞へのトランスフェクション
HEK 293FT細胞は、内因性のCOL7A1 mRNAを欠如していることから、これをダブルトランススプライシング実験のために用いた。LacZ標的およびRTMプラスミド(各2μg)のダブルトランスフェクションを、製造元のプロトコールに従ってLipofectaminePlus試薬(Invitrogen)を用いて行った。トランスフェクションの前日、細胞3×105個を60 mmプレートに平板培養して、抗生物質を含まないDMEMにおいて24時間生育させた。細胞をトランスフェクションの48時間後に分析した。蛍光標的1μgおよび調製した蛍光RTMライブラリ3μg、またはむしろ1つの結合ドメインからなる蛍光RTMベクターを、EcoTransfect(商標)(OZ Biosciences)を用いて293FT細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞106個を製造元のプロトコールに従ってトランスフェクションのために用いた。蛍光顕微鏡およびFACSにおける分析をトランスフェクション後48時間で行った。
【0122】
LacZモデル系におけるトランススプライシングの分析
タンパク質調製およびβ-galアッセイ
トランスフェクト細胞からの総タンパク質を、凍結融解法によって単離した。β-gal活性の決定に関して、本発明者らはInvitrogenβ-galアッセイキット(Invitrogen)を用いた。総タンパク質濃度を、Bio-Radタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad)を用いてBradfordに従う色素結合アッセイによって測定した。
【0123】
β-galのインサイチュー染色
機能的β-galの発現をβ-gal染色キット(Invitrogen)を用いて、製造元のプロトコールに従ってモニターした。β-gal陽性細胞の百分率を、無作為に選択した5つの視野において染色細胞対非染色細胞を計数することによって決定した(Dallinger G. et al. (2003) Development of spliceosome-mediated RNA trans-splicing (SMaRT) for the correction of inherited skin diseases. Experimental Dermatology 12, 37-46)。
【0124】
蛍光モデル系におけるトランススプライシングの分析
蛍光顕微鏡におけるトランススプライシングの可視化およびFACS
細胞におけるトランススプライシングを落射蛍光Zeiss Axioskop顕微鏡(Carl Zeiss)において確認した。FACSにおけるトランススプライシング分析に関して、細胞106個を冷FACS緩衝液(Dulbecco's PBS、3%FCS)によって洗浄して、FACS緩衝液1 mlに浮遊させて、氷中で維持した。分析前に、細胞を7-AAD(Beckman Coulter)10μlによって氷中で5分間染色して、事象25,000個をBeckman Coulter FC500を用いて分析した。CXPソフトウェアをデータ分析のために用いた。
【0125】
mRNAレベルにおける正確なトランススプライシングの分析
蛍光標的とRTMベクターのあいだの正確なトランススプライシングをシークエンシングによって分析した。標的およびRTMを一過性に同時トランスフェクトしたHEK 293FT細胞の総RNAを、Rneasy Mini Kit(Qiagen)を用いてトランスフェクション後48時間で単離した。標的のシススプライシングを、5' GFPの配列と相補的であるフォワードプライマー

および標的上のCOL7A1エキソン65の配列と相補的なリバースプライマー

を用いて、RT-PCR(Superscript One-Step RT-PCR, Invitrogen)によって分析した。
【0126】
内因性のトランススプライシングモデルにおける細胞培養および分析
ヒトケラチノサイトのpLZRS-RTMベクターによるレトロウイルス感染
Amphotropic Phoenixパッケージング細胞(Phoenix-ampho)を用いて感染性のレトロウイルス粒子を生成した(Michiels et al. 2000)。組み換え型プラスミドpLZRS-PTMを一過性のリン酸カルシウムトランスフェクションによってPhoenix-ampho細胞に導入した。pLZRS-PTM組み換え型ウイルスを、一過性のトランスフェクションの48時間後に細胞培養培地から採収した(力価はおよそ2.5×106 CFU/ml)(Gache et al. 2004)。RDEB ROBケラチノサイト(2×105個/cm2)培養物に、5μg/mlポリブレンの存在下で5%CO2の湿潤大気中で32℃でウイルス浮遊液を感染させた。新鮮な培養培地を2時間後に添加して、細胞を32℃で終夜インキュベートした。ケラチノサイトを200μg/mlゼオシン(Invitrogen)の存在下で7日間選択した。選択された細胞を継代して、さらなる試験のために処理した。
【0127】
クローン原性細胞の単離
ゼオシン選択後継代2回目での形質導入RO RDEBケラチノサイトのサブコンフルエント培養物を、1つのクローン性細胞タイプを単離するために用いた。この目的に関して、形質導入されたROケラチノサイト103、2×103、および5×103個を、75 cm2ペトリ皿において通常のフィーダー層の上に播種して、14日間培養して生育させた。規則正しい周囲および大きい直径(約1 cm2)を有する細胞コロニーを単離して、トリプシン処理し、さらなる分析のために拡大させた。
【0128】
ケラチノサイトゲノムへのRTMの組み込みの分析
細胞からのゲノムDNAの調製
細胞5×106個をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)によって洗浄して、1%トリプシン-EDTA(Biochrom)を用いてトリプシン処理して、遠心沈降させた。ゲノムDNAをDneasy Blood and Tissue Kit(Qiagen)によって製造元のプロトコールに従って単離して、溶出緩衝液200μl中に希釈した。
【0129】
ゲノムDNAのPCR分析
本発明者らは、単離されたゲノムDNA 1μlを、Expand Long Range dNTPack(Roche)を用いるPCR反応のために用いた。3.6 kb断片をベクター特異的プライマーによって増幅した。フォワードプライマー

は、RTM結合ドメインの上流のpLZRS-PTMベクター骨格配列に結合し、およびリバースプライマー

は、pLZRS-PTMベクター上のCOL7A1の最後のエキソンと相補的である。pLZRS-PTMの染色体組み込みを確認するために、およびエピソーム複製pLZRS-PTMベクターが増幅される可能性を除外するために、第二のPCRを行った。この試験のために、本発明者らはレトロウイルスRTMベクターのLTR領域の外部に結合するプライマーを用いた

。ウイルスゲノムがエピソームの形態で存在する場合、280 bp断片が増幅されるであろう。陽性対照に関して、本発明者らはそれぞれ、pLZRS-PTMプラスミド調製物1μlを用いた。断片を1%アガロースゲルにおいて分析した。
【0130】
RNAレベルでのRTM発現の分析
細胞からの総RNAの調製
感染後継代2回目の細胞(4×106個)をPBSによって1回すすぎ、トリプシン処理して、沈降させ、総RNAをRNAqueousキット(Ambion)を用いて単離した。混入したプラスミドおよびゲノムDNAを、DnアーゼI(Sigma-Aldrich)によって処置することによって排除した。
【0131】
シークエンシング分析
pLZRS-PTMのシークエンシング分析に関して、本発明者らは、ベクターがCOL7A1配列上で2つの多型を有することを学習したが、これらはRO RDEBケラチノサイトの内因性のCOL7A1転写物では検出されなかった。RTMが形質導入された細胞において発現されたか否かを確認するために、本発明者らは、RTM形質導入および非形質導入細胞の総RNAを用いて所望のCOL7A1領域のシークエンシング分析を行った。COL7A1転写物の8274位および8615位での多型が含まれる532 bpのRT-PCR産物を増幅するようにプライマーを設計した


【0132】
実施例1
LacZモデル系におけるトランススプライシング
COL7A1遺伝子の修正を3'トランススプライシングが実現できることは、LacZトランススプライシングモデル修復系を用いて確立されている。この系において、本発明者らはトランススプライシングの標的としてCOL7A1のイントロン43を用いた。イントロンはLacZ遺伝子の5'エキソンおよび2つのインフレーム終止コドンを含有する3'エキソンに隣接する。終止コドンのために、標的のシススプライシングによって、欠陥RNA転写物が得られ、ゆえに機能的β-ガラクトシダーゼを産生しない。LacZモデル修復系の第二の構築物は、イントロン43の43 bpアンチセンス結合ドメインと、終止コドンを有しない3' LacZエキソンとからなるRTMである。ダブルトランスフェクト細胞における標的とRTMとのあいだの正確なトランススプライシングは、標的の変異体3'エキソンを交換して、ゆえにβ-gal活性を回復する。
【0133】
タンパク質機能回復の分析
本発明者らは、SMaRTおよび機能的β-galタンパク質の産生によって欠陥LacZプレ-mRNAの修復を調べるために、標的およびRTMプラスミドを293FT細胞に一過性に同時トランスフェクトした。同時トランスフェクトした293FT細胞のインサイチュー染色により、β-gal陽性細胞が総細胞の10%であることが明らかとなったが、このことは標的とRTMのあいだの機能的なトランススプライシングによって産生された修正されたRNAを示している。対照的に、LacZ-標的またはRTM単独のいずれかをトランスフェクトした細胞は、β-gal陽性細胞が全く存在しないことによって認められるように、いかなる機能的なβ-galも産生しなかった。産生されたβ-gal量をさらに定量するために、β-gal酵素活性を、トランスフェクションの48時間後に293FT細胞溶解物を用いて比色アッセイにおいて測定した。LacZ-標的またはRTM単独のいずれか2μgをトランスフェクトした細胞から調製されたタンパク質抽出物におけるβ-gal活性は、ほぼバックグラウンドレベルに対応した。対照的に双方の構築物を同時トランスフェクトした細胞は、対照と比較してβ-gal活性の20倍増加を示した。結果に関しては図6も参照されたい。
【0134】
実施例2
蛍光モデル系におけるトランススプライシング
RTM誘導トランススプライシングがCOL7A1プレ-mRNAを修復できるか否かを、蛍光に基づく一過性の同時トランスフェクションアッセイにおいてさらに検査した。このトランススプライシングモデルでは、正確なトランススプライシングが起こると緑色蛍光タンパク質(GFP)が発現される。この系に関して、本発明者らはGFPエキソンの5'半分(5' half)、COL7A1のイントロン64、およびCOL7A1エキソン65を含む標的ベクターを構築した。RTMは、COL7A1イントロン64の配列と相補的な結合ドメイン(ランダム設計、以下を参照されたい)、分岐点(BP)およびポリピリミジントラクト(PPT)が含まれる3'スプライシングドメイン、その後に続くGFPの3'半分(3' half)からなる。半-GFPエキソンの下流に、本発明者らは配列内リボソーム進入部位(IRES)、およびトランスフェクト細胞において対照レポーターとして作用する完全長のDsRed遺伝子を挿入した。同時トランスフェクト細胞における標的とRTMのあいだの正確なトランススプライシングによって、完全で機能的なGFPエキソンが得られ、これを蛍光顕微鏡またはFACSにおいて直接検査することができる。
【0135】
タンパク質機能回復の分析
イントロン64におけるCOL7A1遺伝子のトランススプライシングの実現可能性は、HEK 293FT細胞における同時トランスフェクションアッセイにおいて証明されている。本発明者らは、イントロン64の配列および緑色蛍光タンパク質の一部分を含む標的ベクターに、42塩基対アンチセンス結合ドメインおよび緑色蛍光タンパク質の第二の部分からなる1つのRTM分子のみならず、完全なDeRed遺伝子を、一過性にトランスフェクトした(GFP-PTM-1)。結合ドメインは、イントロンの5'領域における塩基対形成を通して結合するように手動で設計された。トランスフェクションの48時間後での蛍光顕微鏡下での同時トランスフェクト細胞の分析により、トランススプライシング効率がトランスフェクトした全ての細胞の約10%であることが明らかとなった。結果に関しては図7も参照されたい。
【0136】
RNAレベルでの正確なトランススプライシングの分析
GFP-標的とGFP-PTM-1とのあいだのトランススプライシングによって正確にトランススプライスされたGFPエキソンが得られるか否かを確認するために、産生されたRNAをシークエンシング分析によって検査した。HEK 293FT細胞にGFP-標的単独をトランスフェクトしたのみならず、GFP-標的およびCOL7A1イントロン64に関する43 bp BDからなるGFP-PTM-1を同時トランスフェクトした。総RNAをトランスフェクションの48時間後に単離して、シス特異的またはトランス特異的プライマー対のいずれかを用いてRT-PCR分析を行った。トランススプライスされたRT-PCR産物のシークエンシングにより、トランススプライシングがGFP-標的とGFP-RTMの間で正確であることが証明された。
【0137】
COL7A1遺伝子における内因性のトランススプライシング
構築物PTM-6を、DEB患者のケラチノサイトにおけるCOL7A1プレ-mRNAの内因性のトランススプライシングにおける応用のために選択した。細胞の効率的なトランスフェクションを達成するために、本発明者らは、PTM-6の結合ドメインおよび3'スプライシングエレメント、その後に続くCOL7A1エキソン65からエキソン118の野生型cDNA配列を、レトロウイルスベクターpLZRS-IRES-Zeo(pLZRS-PTM)にクローニングした。
【0138】
ヒトケラチノサイトのpLZRS-PTMベクターによる感染
内因性のCOL7A1遺伝子におけるトランススプライシングを、KUおよびROと呼ばれる異なる2人のRDEB患者に由来するVII型コラーゲン欠損ケラチノサイトにおいて評価した。KUケラチノサイトは、COL7A1エキソン105におけるナンセンス変異に関してホモ接合であり、ゆえにイントロン64における3'トランススプライシングに関して最適な標的細胞を表す。ROケラチノサイトは、COL7A1エキソン14および104において2つのヘテロ接合ナンセンス変異を保有する。初代培養KUおよびROケラチノサイトのみならず、不死化ROケラチノサイトに、RTMをコードするウイルス粒子を感染させた。
【0139】
RTM形質導入RDEBケラチノサイトの選択
安定にトランスフェクトしたケラチノサイトに関する抗生物質による選択後、トランススプライシングの成功を明らかにするために、細胞を一連の分析に関して増幅した。残念なことに、形質導入された選択されたKU初代培養ケラチノサイトは、2回継代後の培養時に死滅して、本発明者らはそれらの処置患者細胞において以下のトランススプライシング分析を行うことができなかった。さらなるトランススプライシング分析のために形質導入されたROケラチノサイトの長期間の連続的繁殖を達成するために、本発明者らは表皮クローン原性細胞の分化およびクローン原性能を示すケラチノサイトを単離するために、細胞プールにおいて単細胞クローニングを行った(Barrandon Y. and Green H. (1987) Three clonal types of keratinocyte with different capacities for multiplication. Proc Natl Acad Sci USA 84, 2302-2306)。本発明者らは、形質導入されたRO初代培養ケラチノサイトからクローン7個を単離および拡大することができた。
【0140】
形質導入ケラチノサイトにおけるRTM発現の分析
感染前のpLZRS-PTMベクターのシークエンシング分析により、RTMのCOL7A1コード配列において、ROケラチノサイトの内因性のCOL7A1配列には存在しなかった約2個の多型(サイレント)が認められた。この情報を用いて、RTMが形質導入細胞において発現されたか否かをmRNAレベルで検出した。本発明者らは、所望の多型領域の近接シークエンシングによって非形質導入および形質導入ROケラチノサイトから調製されたmRNAのRT-PCRを行った。
【0141】
RTM形質導入RO細胞および細胞株に関して得られた配列は、多型に関してホモ接合であった。この結果は、形質導入されたケラチノサイトにおいてトランススプライシングが起こったか否かに関する情報を提供しないが、それらの細胞においてRTMが内因性に発現されることを確認している。
【0142】
培養細胞の免疫蛍光染色
形質導入ケラチノサイトにおけるタンパク質発現がトランススプライシングによって回復しうるか否かを確認するために、本発明者らは、培養細胞プールにおいてVII型コラーゲンに対する免疫蛍光染色を行った。VII型コラーゲンに対する染色は、分析された多数の形質導入ケラチノサイトにおいて陽性であった。この実験は、VII型コラーゲン欠損ROケラチノサイトが、内因性のCOL7A1プレ-mRNAと導入されたRTMの間での正確なトランススプライシングのために、機能的なVII型コラーゲンタンパク質の産生能を再度獲得したことを証明した。
【0143】
復帰変異ケラチノサイトのウェスタンブロット分析
トランススプライシングによるRTM形質導入ROケラチノサイトにおける機能的なVII型コラーゲンの回復を確認するためにウェスタンブロット分析を行った。290 kDaの分泌されたタンパク質としてVII型コラーゲンの発現を検出するために、培養細胞の培地を用いてイムノブロット分析を行った。陽性対照として用いられた培養野生型ケラチノサイトの消費培地において正しいサイズのかすかなバンドを検出することができた。このバンドは親RDEB RO細胞株および初代培養細胞では全く存在しなかった。強い特異的バンドが、復帰変異した不死化および初代培養ROケラチノサイトにおいて検出された。これらの転帰は、RTM感染ROケラチノサイトにおけるトランススプライシングによって290 kDaのVII型コラーゲンタンパク質の発現が得られるという証拠を示している。
【0144】
生成された皮膚同等物の免疫蛍光染色
次の段階において、本発明者らは、復帰変異ケラチノサイトが真皮-皮膚接合部でVII型コラーゲンを分泌して沈着させる能力を再度獲得したか否かをチェックするために皮膚同等物(SE)を構築した。本発明者らは、ヒトVII型コラーゲン欠損RDEB線維芽細胞を含有するフィブリンマトリクス上に復帰変異ケラチノサイトを播種することによって人工皮膚を調製した。陰性対照に関して、本発明者らは親の非形質導入不死化ROケラチノサイトを有するSEを構築し、陽性対照に関して、本発明者らは野生型線維芽細胞を包埋したフィブリンゲルマトリクス上に野生型ケラチノサイトを播種した。空気-液体界面まで皮膚を持ち上げた後4週間目に抗VII型コラーゲン抗体を用いてSEの免疫蛍光染色を行った。形質導入されたRO初代培養ケラチノサイト細胞プール(図8C)のみならず、形質導入RO細胞のクローン1(データは示していない)で構成される皮膚同等物におけるVII型コラーゲンに対する染色が陽性であったことは、基底膜におけるVII型コラーゲンの沈着を示している。
【0145】
上記の実験からわかるように、本発明者らは、表皮水疱症ならびに筋ジストロフィー、癌、およびエーラース・ダンロス症候群などの関連疾患の処置のために、CFTR、インテグリン、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼ、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群に由来する本発明のRTMを用いることができる(Pfendner, E.; Uitto, J.: Plectin gene mutations can cause epidermolysis bullosa with pyloric atresia. J. Invest. Derm. 124: 111-115, 2005、およびその中で引用される参考文献、Varki, R.; Sadowski, S.; Uitto, J.; Pfendner, E.: Epidermolysis bullosa. Type VII collagen mutations and phenotype-genotype correlations in the dystrophic subtypes. J. Med. Genet. 44: 181-192, 2007、およびその中で引用される参考文献;Jonkman, M. F.; Pas, H. H.; Nijenhuis, M.; Kloosterhuis, G.; van der Steege, G.: Deletion of a cytoplasmic domain of integrin beta-4 causes epidermolysis bullosa simplex. J. Invest. Derm. 119: 1275-1281, 2002、およびその中で引用される参考文献、ならびにWally V, Klausegger A, Koller U, Lochmuller H, Krause S, Wiche G, Mitchell LG, Hintner H, Bauer JW. 1 : J Invest Dermatol. 5' trans-splicing repair of the PLEC1 gene. 2008 Mar; 128(3): 568-74. Epub 2007 Nov 8 −特に5'スプライシングに関してHengge UR. SMaRT technology enables gene expression repair in skin gene therapy. J Invest Dermatol. 2008 Mar; 128 (3): 499-500を参照されたい)。データはさらに、表皮水疱症および皮膚癒着疾患などの関連疾患における遺伝子ケラチン5、ラミニンA3、B3、g2、インテグリンβ4、およびa6と同じ群(上記の表を参照されたい)において見いだされる遺伝子の類似の機能を支持および可能にする。
【0146】
上記の開示および本明細書において引用される参考文献に基づいて、当業者は、上記のCFTR、インテグリン、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼ、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群の哺乳動物遺伝子に関連する疾患を処置するために有効なRTM分子を提供するために、上記の例としての構築物と類似のRTM-構築物を容易に設計および用いることができるであろう。
【0147】
実施例3
イントロン/エキソンスプライシング効率と比較した、PLEC1のエキソン9およびCOL17A1のエキソン52への効率的なトランススプライシング
蛍光レポーター系を用いてPLEC1のエキソン/イントロン9およびCOL17A1のエキソン/イントロン52に対して特異的な最も機能的なRTMを同定して、イントロン特異的標的分子およびPTMライブラリによって構築されるスクリーニング系を確立した。RTMは、標的イントロンまたは上流のエキソンと塩基対を形成する可変の結合ドメインを含有して、それによってトランススプライシングによる双方のプレ-mRNAの組み換えを誘導する(図9を参照されたい)。
【0148】
トランススプライシング効率の評価は、FACS分析およびリアルタイムPCRを用いて行った。スクリーニング分子のHEK293細胞への導入後少なくとも2日目に、蛍光顕微鏡および「蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)」分析により、標的イントロンに対するその結合特性に従ってRTMの機能性が明らかとなった。GFPの発現は、特異的トランススプライシング事象の全量を表すはずであるが、dsRED発現は非特異的トランススプライシング事象に相関した。FACS分析とは別に、標的イントロンに対して異なる結合挙動を有するRTMの機能性をリアルタイムPCRによってmRNAレベルで調べることができる。RNAトランススプライシングによって誘導される標的分子およびRTMの組み換えによって、標的分子の3'GFP部分に対するPTMの5' GFP部分の融合が得られた。ゆえに、GFP融合mRNA分子の増幅は、1つのRTMのトランススプライシング効率を組み入れる。
【0149】
PLEC1
1つのRTMおよび標的分子によるHEK293細胞のダブルトランスフェクション後のFACS分析によるトランススプライシング効率の評価後、構築物PTM2に関する効率(PLEC1のエキソン/イントロン9に対して特異的)は89%(すなわち、RTMトランスフェクト細胞の89%がGFPを発現した)であるが、構築物PTM13(PLEC1のエキソン9に対して特異的)の効率は99%である(すなわち、RTMトランスフェクト細胞の99%がGFPを発現した)ことが意外にも見いだされた。
【0150】
結果として、「蛍光活性化細胞ソーティング」(FACS)によって同定された最も効率的なRTMは、標的遺伝子PLEC1の3'エキソン配列とのスプリットGFPプレ-mRNAの融合において明らかとなるプレ-mRNAレベルで内因性のトランススプライシングを誘導することができる(クローンの位置および結果に関しては図10および11を参照されたい)。
【0151】
COL17A1
PLEC1と同様に、1つのRTMおよび標的分子によるHEK293細胞のダブルトランスフェクション後のFACS分析によるトランススプライシング効率の評価後、構築物PTMN4(COL17A1のイントロン52に対して特異的)に関する効率が79%(すなわち、RTMトランスフェクト細胞の79%がGFPを発現した)であるが、構築物PTMN9(COL17A1のエキソン52に対して特異的)に関する効率は99%(すなわち、RTMトランスフェクト細胞の99%がGFPを発現した)であることが意外にも見いだされた。
【0152】
その結果、「蛍光活性化細胞ソーティング」(FACS)によって同定された最も効率のよいRTMは、標的遺伝子COL17A1の3'エキソン配列とのスプリットGFPプレ-mRNAの融合において明らかとなるプレ-mRNAレベルで内因性のトランススプライシングを誘導することができる(クローンの位置に関しては図12を参照されたい)。遺伝子および実験はいずれも、エキソン配列が本発明に従うRTMに関するより強力で有効な開始点を提供するという考え方の証明を提供する。
【0153】
実施例4
ICAM-1からIL-10への遺伝子の内因性のトランススプライシング
図13は、本実施例に従って産生される構築物に関する概略図を示す。内因性のRTMの構築物を用いて、ICAM-1発現のダウンレギュレーションおよびサイトカインIL-10の内因性の産生に関して最も効率的な結合ドメインおよびスプライスエレメントを分析した。
【0154】
RTM含有ベクターまたは偽ベクターによる細胞のトランスフェクション後18時間で、HaCaTsを、ICAM-1を発現するようにTNF-αおよびIFN-γによって刺激した。さらに26時間後、ICAM-1の内因性の発現を検出するためにリアルタイムPCRを行った。さらに、IL-10 ELISAアッセイを行った。結果をそれぞれ、表12および13に示す。
【0155】
(表12)IL-10に融合したICAM-1のイントロン1に関する結合ドメインを有するRTMを含有するベクターのトランスフェクションによって、ICAM-1のダウンレギュレーションが起こる:リアルタイムPCRの結果

【0156】
(表13)ICAM-1のイントロン1の結合ドメインおよびコードするcDNAを有するRTMを含有するベクターのトランスフェクションによってIL-10タンパク質の発現が起こる:IL-10のELISAアッセイの結果

表の説明文:
偽:マルチクローニングサイト(MCS)、配列内リボソーム進入部位(IRES)、およびリンカーのみを含有するベクターによるトランスフェクション
OD:吸光度
OD-LW:吸光度の基礎値
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むプレ-mRNAトランススプライシング分子(RTM):
a)細胞内で発現されるプレ-mRNAに対する核酸分子の結合を標的とする少なくとも1つの結合ドメイン;
b)トランススプライシング反応が起こるために必要なモチーフを含有する少なくとも1つのスプライシングドメイン、および
c)CFTR、インテグリン、TNF-α、インターロイキン、免疫グロブリンスーパーファミリー、カリクレイン、マトリクスメタロプロテナーゼ、ケラチン、コラーゲン、およびラミニンの群から選択される哺乳動物遺伝子の少なくとも1つのエキソンをコードする、少なくとも1つのコードドメイン。
【請求項2】
結合ドメインが、哺乳動物遺伝子のイントロンまたはエキソンと相補的な配列の少なくとも一部、および好ましくは哺乳動物遺伝子のエキソンと相補的な配列の少なくとも一部を含む、請求項1記載のRTM。
【請求項3】
哺乳動物遺伝子が、プレクチン、ケラチン14、ケラチン5、ケラチン6、7型コラーゲン、17型コラーゲン、ラミニンA3、ラミニンB3、g2、インテグリンβ4、a6、CFTR、ICAM-1、およびインターロイキン-10(IL-10)の群から選択され、好ましくはプレクチン、ケラチン14、COL7A1、COL17A1、およびIL-10の少なくとも1つから選択され、該遺伝子が皮膚の細胞に発現される、請求項1または2記載のRTM。
【請求項4】
xが1または2からエキソンの最大数までの整数から選択される整数であり、yが0およびx+1から選択される整数であり、x+1が遺伝子のエキソンの最大数によって限定される、エキソンx〜yのコードドメインを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のRTM。
【請求項5】
核酸分子が、スプライシングドメインにおける少なくとも1つの安全策配列、および/または近傍のエキソン配列と相補的である少なくとも1つの配列をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載のRTM。
【請求項6】
標的プレ-mRNAに対する核酸分子の結合が、相補性、三重らせん形成、またはタンパク質-核酸相互作用によって媒介される、請求項1〜5のいずれかに記載のRTM。
【請求項7】
追加の望ましい機能性を提供するために、他の遺伝子に由来する少なくとも1つのイントロンおよび/またはエキソン、好ましくはエキソンをさらに含み、および/またはトランススプライスされるエキソンが、遺伝子発現を低減させるため天然に存在するもしくは人工的に導入された終止コドンを含む、またはRNAi様の効果を生じる他の配列を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のRTM。
【請求項8】
トランススプライシング効率、発現、またはRNAの安定性を改善する3' UTRをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載のRTM。
【請求項9】
DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、または核酸類似体分子である、請求項1〜8のいずれかに記載のRTM。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のRTMを含む組み換え型発現ベクター。
【請求項11】
真核細胞発現ベクター、好ましくはウイルス由来配列を含むベクターである、請求項10記載のベクター。
【請求項12】
皮膚細胞、および好ましくはトランスジーン発現を調節するためのケラチノサイトまたは内皮細胞特異的調節エレメントをさらに含む、請求項10または11記載のベクター。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、または請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクターを含む、組み換え型皮膚細胞、好ましくは組み換え型ケラチノサイト、線維芽細胞、または内皮細胞。
【請求項14】
生理的に許容される担体と、請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクター、または請求項13記載の組み換え型皮膚細胞とを含む、薬学的調製物。
【請求項15】
薬剤として使用するための、請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクター、請求項13記載の組み換え型皮膚細胞、または請求項14記載の薬学的調製物。
【請求項16】
表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、乾癬または神経皮膚炎などの免疫疾患、および皮膚の癌などの皮膚のおよび上皮の遺伝性障害から選択される疾患を処置するための、請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクター、請求項13記載の組み換え型皮膚細胞、または請求項14記載の薬学的調製物の使用。
【請求項17】
薬剤が、皮膚または全身循環に適用される、請求項15または16記載の使用。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクター、請求項13記載の組み換え型皮膚細胞、または請求項14記載の薬学的調製物の治療的有効量を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、皮膚または他の上皮の疾患を処置するための方法。
【請求項19】
薬剤が皮膚または全身循環に適用される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
疾患が、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患、および皮膚の癌から選択される、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれかに記載のRTM分子、請求項10〜12のいずれかに記載の組み換え型発現ベクター、請求項13記載の組み換え型皮膚細胞、または請求項14記載の薬学的調製物を被験者に投与する段階を含む、被験者における遺伝的欠損を修正するための方法。
【請求項22】
修正する段階が、表皮水疱症、嚢胞性線維症、先天性爪肥厚、乾癬または神経皮膚炎などの自己免疫疾患、および皮膚の癌から選択される疾患において特異的役割を果たす遺伝子を再プログラムする段階を含む、請求項21記載の方法。

【公表番号】特表2011−529333(P2011−529333A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520382(P2011−520382)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005538
【国際公開番号】WO2010/012472
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511025525)
【Fターム(参考)】