説明

改善された保存性及び溶解特性を有する3−ベータ−ヒドロキシ−5−アルファ−プレグナン−20−オンを含有する薬学的組成物

3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン、少なくとも一のそのステロール又はエステルと、25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物とを含有する薬学的組成物を提供する。さらに、薬学的組成物を調製するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの改善された製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンは、プレグナンファミリーのステロイドであり、性/ストレスステロイド誘発疾患状態の治療に適応することが示されているGABA-レセプター活性のモジュレーターである(国際公開第99/45931号)。3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンは、多くの治療的に許容可能な溶媒に難溶性であり、これが患者への化合物の投与を難しくしている。
【0003】
動物実験で、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンは、シクロデキストリンを含む製剤でラットに静脈内的に投与されている(国際公開第99/45931号)。
【0004】
Grantら(JPET 326:354-362, 2008)は、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンを含有する製剤を使用することにより、サルに3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを投与した。
【0005】
シクロデキストリンを含有する製剤は、ヒト患者への投与には適していない。この理由の一つは、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの難溶性であり、製剤が、静脈的にのみ投与可能な多量の治療容量になってしまうからである。
【0006】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンは、水に対して難溶性であるため、この化合物の薬学的に許容可能な製剤は未だ存在していない。
【0007】
(定義)
本出願で使用される場合、以下の用語は、他に特定されないならば、以下に特定される意味を有する。
【0008】
「アシルグリセロール」とは、グリセロールにエステル化される全ての種類の脂肪酸及びその組合せを意味する。
【0009】
「中鎖アシルグリセロール」とは、オクタン酸(カプリル酸)及びデカン酸(カプリン酸)の全組合せパーセンテージが少なくとも95%であるアシルグリセロール類の混合物を意味する。
【0010】
「固形脂肪含有量」とは、パルスNMR(核磁気共鳴)により測定される固形物のパーセンテージを意味する。
【0011】
「室温」は、18℃〜25℃の温度を示す。
【0012】
「UC1010」は、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを示す。
【0013】
「そのステロール又はエステル」は、少なくとも一のヒドロキシル基を有するステロイド類と、少なくとも一のヒドロキシル基がエステルの合成に使用されている該ステロイド類のエステルを示す。
【0014】
ステロイド類、例えばステロール類は、通常、化合物中の炭素原子の数により記述される。よって、例えば、コレステロールはC27ステロールであり、これは化合物が27の炭素原子からなることを示している。
【0015】
他に記載されなければ、濃度は、薬学的組成物1グラム当たりのmgである、mg/gとして記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、2通りの投与量:1mg/kg(矩形)及び5mg/kg(丸)で、コレステロールを含有するゴマ油(1:1)中の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを皮下投与した後の、ウサギにおける3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの平均血漿中濃度(ng/mL)を示す。
【図2】図2は、コレステロール:3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの比に対する、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン懸濁液からの濾液(0.2μm)中の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの濃度を示す。
【図3a】図3aは、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液の写真を示す。
【図3b】図3bは、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液の写真を示す。
【図4a】図4aは、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液の写真を示す。
【図4b】図4bは、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液の写真を示す。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、薬学的に許容可能な担体中の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの、改善された製剤を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、保存特性が高められた3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン製剤を提供することである。
【0019】
さらなる他の目的は、改善された薬物動態を有する3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン製剤を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる他の目的は、薬理学的に許容可能な担体に、増大した溶解度での3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの製剤を提供することである。
【0021】
これらの目的及び他の目的は、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン、少なくとも一のそのステロール又はエステルと、25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物を含有する薬学的組成物を提供する本発明の第1の一般的態様により達成される。
【0022】
本発明の第2の一般的態様では、薬学的組成物を調製する方法が提供される。
【0023】
本発明の第3の一般的態様では、本発明の方法で得ることができる薬学的組成物が提供される。
【0024】
本発明の第4の一般的態様では、中枢神経系の病状を治療する薬学的組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
本発明者は、ステロールの添加により、驚くべきことに、アシルグリセロール類における3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの溶解度が増加し、薬物動態が改善されることを見出した。
【0026】
一般的に、薬学的組成物は、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン、少なくとも一のそのステロール又はエステルと、25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物を含有する。
【0027】
特に、ステロール構造の第3の炭素原子に結合したヒドロキシル基を有するステロールが本発明において有用である。ステロールはコレステロールでもベータ-シトステロールでもよいが、他のステロール類、例えばスチグマステロール、ブラシカステロール又はアベナステロール(avenasterol)を使用することもできる。特に、コレステロールが使用され得る。
【0028】
さらに、コレステリルエステルを使用することができる。このようなエステルの例は、硫酸コレステリルナトリウム、安息香酸コレステリル、酢酸コレステリル、カプリル酸コレステリル、デカン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、及びステアリン酸コレステリルである。
【0029】
そのステロール又はエステルは、そのC18-C30ステロール又はエステル、そのC21-C27ステロール又はエステル、又はそのC27-C29ステロール又はエステルとすることができる。
【0030】
第1の実施態様では、薬学的組成物は、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが組成物中に本質的に溶解しているものとすることができる。よって、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンは、本発明のこの実施態様によれば、溶解又は本質的に溶解可能である。
【0031】
この実施態様では、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンに対するステロール(又はそのエステル)の重量比は、約1:10〜10:1の範囲とすることができる。そのステロール又はエステルは、重量で、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの量と同様の量、添加することができる。3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンとステロールは同様の分子量を有しているため、これにより、ステロールに対し、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンがほぼ等モル量になる。
【0032】
よって、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンに対するステロールの重量比は、1:5〜5:1の範囲にすることができる。特に、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ プレグナン-20-オンに対するステロールの重量比は、1:3〜3:1にすることができる。
【0033】
3-ベータ-ヒドロキシ-5 アルファ-プレグナン-20-オンの適切な濃度は、0.1mg/g〜75mg/gである。また、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ プレグナン-20-オンの濃度は、1mg/g〜50mg/g、5mg/g〜30mg/g、又は10mg/g〜25mg/gとすることができる。
【0034】
また、第2の実施態様では、薬学的組成物は3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液を含む。この場合、薬学的組成物は、粒子の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンと、また組成物に溶解した3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを含有するであろう。ステロールは、ステロールを含まない懸濁液と比較して、このような懸濁液中における3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの可溶性画分を増加させる。懸濁液での一つの利点は、製剤が高濃度の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを含むことができることである。懸濁液を含む組成物のさらなる利点は、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンのゆっくりとした放出を生じることである。
【0035】
薬学的組成物が懸濁液を含む場合、粒子は、好ましくはマクロファージに貪食されない範囲の大きさである。マクロファージは、2−3マイクロメーターの大きさの粒子を主として貪食する(Championら, Pharm Res 2008; 25(8):1815-1821)。
【0036】
この第2の実施態様では、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ プレグナン-20-オンに対するステロール(又はそのエステル)の重量比は、約1:10〜10:1の範囲にとすることができる。3-ベータ-ヒドロキシ-5アルファ プレグナン-20-オンに対するステロールの重量比は、1:5〜5:1の範囲とすることができる。特に、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンに対するステロールの重量比は、1:4〜3:1、又は1:3〜3:1とすることができる。
【0037】
この第2の実施態様では、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの適切な濃度は、0.1mg/g〜750mg/gである。また、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの濃度は、1mg/g〜300mg/g、1mg/g〜100mg/g、1mg/g〜50mg/g、5mg/g〜30mg/g、又は10mg/g〜25mg/gとすることもできる。
【0038】
以下の事項は、本発明に一般的に適用される。
一般的に、アシルグリセロール類の混合物は、25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有することを特徴とする。よって、固形脂肪含有量は、実際的な目的によっては、37℃で0%である。固形脂肪含有量は、37℃で最大0.01%である。
【0039】
アシルグリセロール類の混合物は、植物性油とすることができる。よって、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油、及びヒマシ油、及びその混合物からなる群から選択される植物性油とすることができる。
【0040】
特に、アシルグリセロール類の混合物は、中鎖アシルグリセロール、つまり、8の炭素原子(オクタン酸)及び10の炭素原子(デカン酸)を有する脂肪酸の組合せた全パーセンテージが少なくとも95%であるアシルグリセロール類の混合物とすることができる。中鎖アシルグリセロールは、モノアシルグリセロール類、ジアシルグリセロール類及びトリアシルグリセロール類の様々な混合物でありうる。
【0041】
中鎖アシルグリセロールは、約50%〜約65%のモノアシルグリセロール類、約25%〜約35%のジアシルグリセロール類、約5%未満のトリアシルグリセロール類、及び約2.5%未満のグリセロールからなりうる。このような中鎖アシルグリセロールはAkoline MCMである。
【0042】
中鎖アシルグリセロールは、少なくとも約95%のトリアシルグリセロール類を含有するようなものとすることができる。Akomed R MCTは、このような中鎖アシルグリセロールの例である。
【0043】
アシルグリセロール類の混合物は、植物性油と中鎖アシルグリセロールの混合物を含むことができる。アシルグリセロール類の混合物は、ヒマシ油と中鎖アシルグリセロールの混合物を含むことができ、ここでヒマシ油は40重量%〜60重量%の量で存在する。アシルグリセロール類の混合物は、約48重量%のヒマシ油と約52重量%の中鎖アシルグリセロールからなりうる。特に、アシルグリセロール類の混合物は、約48重量%のヒマシ油と約52重量%の中鎖アシルグリセロールからなりうる。
【0044】
薬学的組成物は、当業者に知られているさらなる賦形剤、例えば酸化防止剤、保存料、界面活性剤、着色剤、香料、又は増粘剤を含有しうる。
【0045】
薬学的組成物は、種々の手段により、患者に投与することができる。例えば、経口的、非経口的、又は局所的に投与されうる。よって、薬学的組成物は、皮下的、筋内的、静脈内的、経鼻的、経皮的又は経膣的に投与されうる。
【0046】
本発明の第2の一般的態様では、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの薬学的組成物を調製する方法が提供される。
【0047】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが組成物に溶解又は本質的に溶解される一方法は、a)エタノールに3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを溶解させ、b)25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物と、そのステロール又はエステルを添加し、c)均質な液体が得られるまで混合し、d)エタノールを蒸発させることを含む。
【0048】
アシルグリセロールの混合物が、例えば中鎖アシルグリセロールのように、室温で固体又は半固体である場合、本方法は、中鎖アシルグリセロールを溶解させた後に、エタノール-薬剤調製物とそれを混合物するさらなる工程を含みうる。溶解工程により、この種のアシルグリセロールと他の成分の均質な混合が可能になる。ひとたび溶解し、他の成分と混合されると直ぐに、調製物は、少なくとも表1に示した期間に対して、液状のままである。
【0049】
製剤が懸濁液を含む場合、製剤は、次の工程:1)アシルグリセロール類の混合物に、ステロール又はそのエステルを溶解又は懸濁させ、2)アシルグリセロール-ステロールの混合物中に3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを懸濁させ、3)穏やかに混合することを含む方法により、有利には調製される。驚くべきことに、この手順により、より小さなサイズの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを含む懸濁粒子を生じる。
【0050】
本発明の第3の一般的態様では、本発明の第2の態様の方法に従って得ることができる薬学的組成物が提供される。
【0051】
本発明の第4の一般的態様では、中枢神経系の病状を治療又は予防するための、本発明の薬学的組成物の使用が提供される。
【0052】
薬学的組成物は、中枢神経系の病状を治療又は予防するのに使用可能である。治療することができるこのような病状の例は、てんかん、月経周期依存性てんかん、鬱、ストレス関連性鬱、片頭痛、疲労、特にストレス関連性疲労、月経前症候群、月経前不快気分障害、月経周期関連性気分変動、ストレス関連性記憶変化、月経周期関連性記憶変化、アルツハイマー型認知症、月経周期関連性の集中困難、月経周期関連性睡眠障害及び疲労、物質乱用、月経周期関連性アルコール依存症、又はそれらの合併症である。
【0053】
特に、薬学的組成物は、ステロイド誘発性気分障害、特に月経前不快気分障害の処置に使用可能である。
【0054】
また薬学的組成物は、経口避妊薬及び閉経後治療の副作用を治療又は予防するのに使用可能である。
【0055】
さらに薬学的組成物は、ステロイド誘発性感覚消失のコントロール又は終了に使用することもできる。
【実施例】
【0056】
本発明を以下に非限定的実施例を用いて記載する。
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを含有する薬学的組成物を見出すために、幾つかの異なったビヒクル及びビヒクルの組合せを評価した。3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを様々なビヒクルに溶解させ、室温での経時的な物理的安定性を目視評価した。外観に如何なる可視的変化もなく、30日以内で、濁り(haziness)、沈殿、沈降、2以上の液状相への相分離、又は色調変化の兆候がなく、室温での保存で透明性を維持している製剤を、「安定」と考えた。
【0057】
さらに、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液を含む製剤における3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの粒子サイズ及び溶解度を評価した。
【0058】
実施例1−49の一般的手順
次の手順を、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン-含有製剤の調製に適合させた。
【0059】
所望の量の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンとステロール(例えばコレステロール)を、100ml又は250mlの丸底フラスコにおいて計量した。3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンとステロールの混合物のグラム当たり約30mlの容量の無水エタノールを添加した。透明な液体が得られるまで、混合物を超音波浴(50℃を超えない)で処理した。これは通常10分以内に達成された。ついで、表1の「ビヒクル」の欄に示したさらなる脂質成分を20gまで添加した。得られた混合物を、透明で均質な液体が得られるまで、手で穏やかに振揺した。脂質が室温で固体である場合、添加前に液体形態になるまで、超音波温浴で溶解させた。
【0060】
以下の供給者からの化合物を使用した(括弧内に製品番号):Sigmaのコレステロール(C8503)、Apoteket、Swedenのオリーブ油及びピーナッツ油(それぞれ26 36 16及び26 66 01)、Flukaのゴマ油(85067)、及びSigmaのヒマシ油(259853)。アコメッドR中鎖トリアシルグリセロール(MCT)及びアコリン中鎖モノアシルグリセロール(MCM)は、双方とも、AarhusKarlshamns Sweden AB, Karlshamn, Swedenからのものである。
【0061】
アルコールを、約25mbarの圧力、約40℃の温度で、フラスコの重量が本質的に一定になるまで、ロータリーエバポレーターにおいて、液体から蒸発させた。残存したエタノール含有量は、本質的に1%未満であった。目的は、室温で透明な油の外観を有する液体を得ることである。ついで、油性の液体を透明なガラスバイアルに移し、評価するまで室温で保存した。
【0062】
サンプルを、ガラスバイアル中のサンプルを観察することによって評価し、調製の1又は2日後、及び調製の30日後に、濁り、沈殿、沈降、2又はそれ以上の液状相への相分離、又は色調変化の兆候を記録した。いくつかの場合では、他の間隔を使用した(表1に示す)。示した場合、沈殿を誘発させるために、全サンプルを冷蔵庫(2−8℃)に配した。
【0063】
実施例1
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン(UC1010)(5mg/g)及びピーナッツ油を、表1に示す濃度で、上述したようなエタノールを含有するエマルションに混合し、エタノールを蒸発させた。調製物の最終重量は20gであった。混合物は油性液体の形態をしていた。1日後、サンプルを評価した時に、沈殿の兆候があった。30日後、沈殿物が、底部沈降物を形成した。よって、製剤は安定しなかった。
【0064】
実施例2
実施例2は、コレステロール(5.5mg/g)を添加した以外は、本質的に実施例1のように実施した。1日後、サンプルを評価したところ、サンプルの外観は変化していなかった。30日後、4ヶ月後までは、変化はなかった。5ヶ月後、わずかな沈殿があった。実施例1と比較して、実施例2では、ピーナッツ油中の5mg/gの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの溶液への5.5mg/gのコレステロールの添加が、沈殿の代わりに、実質的溶解度を増加させ、沈殿が生じることなく、サンプルは4ヶ月安定していたことが示された。しかしながら、5ヶ月後には、わずかな沈降が生じた。
【0065】
実施例3から49
実施例3から49を、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン濃度に関して変動させて、本質的に上述したようにして実施し、使用したアシルグリセロール混合物、使用したステロール及びステロール濃度を表1に示す。
【0066】
実施例1から49のデータを表1にまとめる。例えば、コレステロール添加の効果は、実施例8から12において明白であり、コレステロール(10mg/g)の添加により実質的に溶解度が増加し、サンプルは沈殿することなく、12ヶ月間、安定していた。
【0067】
表1において、「UC1010(mg/g)の計量した量」とは、ステロールを含む(ステロールが存在する場合)最終的な全組成物のグラム当たりの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの量である。「ビヒクル」とは、試験されている担体を示す。ステロールの量は「mg/g」、つまり、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを含む最終的な全組成物の重量当たりのステロールの重量として記載される。「調製時の外観」は、調製中の混合物の外観の変化を記述する;通常、調製物は、最初はエマルション又は溶液であるが、エタノールの蒸発後は油性の外観になる;「変化なし」は、サンプルが安定しており、よって、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが、濁り、沈殿、沈降、2以上の液状相への相分離、又は色調変化の可視的兆候なしに、溶液中に残存していることを示す。また、このことは、表中の星印(*)によっても示される。
【0068】





【0069】
実施例50−75
実施例50から75を、実施例1−49と本質的に同様にして実施した。Akoline中鎖モノグリセリド(MCM)(バッチ8192270及び8218940)及びアコメッドR中鎖トリグリセリド(MCT)(バッチ4765)を、AarhusKarlshamns Sweden AB, Karlshamn, Swedenから得た。無水エタノール(>99%)をVWR Internationalから得た。
【0070】
脂質ベース製剤の作製及び評価の手順は以下の通りである:バッチサイズは、20g又は100gの最終製剤のいずれかとした。所望量の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンとコレステロールを、バッチサイズに応じて、丸底フラスコ、250又は1000mlにおいて計量した。
【0071】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンとコレステロールの混合物のグラム当たり、約15〜30mlの容量の無水エタノールを添加した。最も大きさなバッチサイズである100gの最終製剤を調製する場合は、溶質のグラム当たり、さらに少量のアルコールを使用した。透明な溶液が得られるまで、混合物を超音波浴(55℃を超えない)において処理した。これは、通常、数分内で達成された。ついで、グリセリド類を添加し、得られた混合物を、透明で均質な液体が得られるまで、数秒、超音波浴で処理した。フラスコの重量がおおよそ一定になるまで、約20mbarの圧力、約40℃の温度で、ロータリーエバポレーターによって、アルコールを液体から蒸発させた。通常、残存するエタノール含有量は0.5%(w/w)又はそれ以下であった。蒸発時間は、バッチサイズに応じて、0.5−1.5時間とした。目的は、室温で透明な油の外観を有する、ほとんど無色の液体を得ることであった。液体を透明なガラスバイアルに移し、評価まで室温で保存した。いくつかの選択した製剤を分割し、限定された期間、2−8℃で保存した。
【0072】
評価には、室温での経時的な物理的安定性の観察が含まれる。サンプルを、濁り、粒子の沈殿、凝集又は結晶、及び後続する沈降、及び/又は2又はそれ以上の液状相への相分離、及び/又は色調変化について観察した。
【0073】
室温で1ヶ月以上保存する場合、50%のMCT及び50%のMCM(実施例68及び69)をベースにした最終製剤のグラム当たり、25mgまでの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが、外観に何らの顕著な変化なしに溶解可能であった。また、サンプルの一つ(実施例69)は2−8℃及び繰り返しの温度サイクルでの保存に耐えた。
【0074】
製剤及びその調製手順のロバスト性及び再現性をチェックするために、最終製剤のバッチサイズを20gから100gにスケールアップして実施した。実施例60及び69の組成物を、この手順のために選択した。調製中の性状、及び得られた製剤(実施例74及び75)の当初の観察から、適用した手順が100gまでの製剤を作製するためにロバスト性がありまた再現性があると、結論付けることができる。
【0075】





【0076】
実施例76
該研究の目的は、ニュージーランドホワイトウサギに皮下投与した後の、ゴマ油とコレステロールを含有する3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン製剤の、血漿中における相対的薬物動態を調査することである。3匹のメスウサギの2つのグループは、それぞれ1mg/kg(実施例7の製剤)又は5mg/kg(実施例10の製剤)の単一投与を受けた。動物の背部頸部領域に皮下注射した後、投与の0.25、0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間後に、血液サンプルを取り出した。血漿中の3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン濃度を、有効LC-MS/MS法により測定した。データを図1に提示し、2つの投与量:1mg/kg(矩形)及び5mg/kg(丸)についての3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの平均血漿中濃度(ng/mL)を示す。
【0077】
実施例77
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液を、以下のようにして、溶解度の研究のために調製した:まず、コレステロールを室温で、ゴマ油にそれぞれ10及び20mg/ml溶解させた。異なるコレステロール量を有するゴマ油に、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが入った懸濁液を、室温で、数日間、2−8℃の偶発的サイクルにて、一般的なテフロンコーティング攪拌棒を使用し、約500rpmで、磁石式攪拌器において調製した。この時点で、粒子はかなり小さくなった。その後、それぞれの懸濁液のサンプルを0.2μmのフィルターで濾過し、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン濃度に関して分析した。結果を表3と図2に提示するが、コレステロールの量を増加させると、3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの可溶性画分も増加することが分かった。図2には、10mg/gの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン濃度についてのデータが示されている。図3a及び3bには、10mg/gの3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン濃度、1:1のコレステロール:3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン比率を有する懸濁液の、混合してすぐ(3a)及び攪拌して数日後(3b)の、5×拡大で撮られた顕微鏡写真が示されている。
【0078】

【0079】
実施例78
平均粒子経6マイクロメーターを有する微細化された3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン(10mg/g)を、コレステロール(20mg/g) を含有するゴマ油に懸濁させ、実施例77のようにして攪拌した。懸濁してすぐ(図4a)及び攪拌して19時間後(図4b)の写真を撮った。
【0080】
結果
ステロール、例えばコレステロールが存在することで、油性溶液又は油性懸濁液のいずれにおいても、アシルグリセロール類を含有する薬学的組成物に3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを処方する可能性が改善されることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オン、少なくとも一のそのステロール又はエステルと、25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物を含有する薬学的組成物。
【請求項2】
ステロールが、コレステロール、ベータ-シトステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール及びアベナステロールからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
ステロールがコレステロールである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
アシルグリセロール類の混合物が植物性油である、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
植物性油が、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油、及びヒマシ油からなる群から選択される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
アシルグリセロール類の混合物が中鎖アシルグリセロールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンが本質的に溶解している、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンの懸濁液を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
非経口投与のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
経口投与のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
経膣投与のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
経鼻投与のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
a)エタノールに3-ベータ-ヒドロキシ-5-アルファ-プレグナン-20-オンを溶解させ、
b)25℃で約5%未満、37℃で約0%の固形脂肪含有量を有するアシルグリセロール類の混合物と、ステロール又はそのエステルを添加し、
c)均質な液体が得られるまで混合し、
d)エタノールを蒸発させることを含む、
請求項7に記載の薬学的組成物を調製する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得ることができる薬学的組成物。
【請求項15】
中枢神経系の病状を治療又は予防するための、請求項1から12又は14のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項16】
中枢神経系の病状が、てんかん、月経周期依存性てんかん、鬱、ストレス関連性鬱、片頭痛、疲労、特にストレス関連性疲労、月経前症候群、月経前不快気分障害、月経周期関連性気分変動、ストレス関連性記憶変化、月経周期関連性記憶変化、アルツハイマー型認知症、月経周期関連性の集中困難、月経周期関連性睡眠障害及び疲労、物質乱用、月経周期関連性アルコール依存症、経口避妊薬及び閉経後治療の副作用、又はその合併症からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ステロイド誘発性感覚消失の治療のための、請求項1から12又は14のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2013−517269(P2013−517269A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548918(P2012−548918)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050036
【国際公開番号】WO2011/087441
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(512179968)ウメクライン ムード エービー (1)
【Fターム(参考)】