説明

改善された免疫療法

本発明は、標的細胞に対する免疫応答を誘導する改善された方法を提供する。標的細胞種を殺す手段として毒素またはプロドラッグ変換酵素およびストレス応答タンパク質(特に、ヒートショックタンパク質)の両方を発現するために遺伝子治療を使用すると、このような細胞に対するその後の免疫応答を増強する。本発明の方法は、標的細胞に対する免疫応答の誘導に特に適用可能である。このような方法に使用するためのポリヌクレオチド、産物およびベクターも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は免疫療法の分野に関し、特に抗腫瘍免疫応答の増強に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
癌を治療する1つの方法は、比較的低毒性のプロドラッグを強力な細胞傷害薬に変換することができる酵素をコードする遺伝子を腫瘍細胞に導入することである。プロドラッグはプロドラッグ変換酵素を発現する細胞によって腫瘍内で局所的に毒性の誘導体に変換されるので、プロドラッグの全身投与は耐容される。この方法は遺伝子運搬酵素プロドラッグ療法(GDEPT:gene-directed enzyme prodrug therapy)、または遺伝子が組換えウイルスベクターによって送達される場合には、ウイルス運搬プロドラッグ療法(VDEPT:virus-directed prodrug therapy)として知られている(McNeishら、1997年)。
【0003】
この方法に使用されるプロドラッグおよびプロドラッグ変換酵素の例には、ガンシクロビルとHSVチミジンキナーゼ、5−フルオロシトシンとシトシンデアミナーゼ、シクロホスファミドまたはパラセタモールとチトクロームP450および本発明に特に関連のあるアジリジニルプロドラッグCB1954(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミドとニトロレダクターゼが挙げられる(Konoxら1988年)。Walkerラット癌細胞系統がCB1954に特に感受性であったという観察により、これはラットニトロレダクターゼDHジアフォラーゼの発現によるものであることが示された。しかし、CB1954はヒト型のこの酵素のすぐれた基質ではないので、ヒト腫瘍細胞はCB1954に対する感受性がかなり低い。GDEPTは、標的細胞を敏感にするために、好ましくはCB1954に対する活性が大きい好適なニトロレダクターゼを導入する方法と考えられた。NFSB遺伝子(またはNFNB、NFSIもしくはDPRAとして知られている)によってコードされる大腸菌ニトロレダクターゼ(EC1.6.99.7、または酸素非感受性NAD(P)Hニトロレダクターゼもしくはジヒドロプテリジンレダクターゼとして知られており、NTRと略されることが多い)はこの目的のために広範に使用されている(Groveら、1999年に総説が示されている)。NFSBにコードされるニトロレダクターゼ(NTR)は、2つのフラビンモノヌクレオチド(FMN)補因子分子に結合するホモダイマーである。電子ドナーとしてのNADHまたはNADPHおよび還元型中間体としての結合型FMNを使用して、NTRはCB1954の2つのニトロ基の一方または他方を還元して、毒性の高い4−ヒドロキシルアミン誘導体または比較的無毒性の2−ヒドロキシルアミンを生ずる。細胞内では、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドは、おそらくさらに別の毒性代謝物を介して、非常に遺伝毒性となる(Knoxら、1991年)。生じる障害の正確な性質は明らかではないが、他の薬剤によって生じるものとは異なる。特に高い割合のストランド間の架橋が生じ、損傷は修復が不良であると思われ、その結果としてCB1954は格別に影響力のある抗腫瘍剤である(Friedlosら、1992年)。このシステムは、ヌードマウスに異種移植したヒト腫瘍を含む数多くのモデルシステムにおいて有用な抗腫瘍応答を生ずる際に有効であることが示されている(Djehaら、2000年)。
【0004】
とは言うものの、酵素−プロドラッグ方法に免疫治療法を組み合わせることによって、このような酵素−プロドラッグ方法の殺腫瘍性作用を増強する試みがなされている。根本的な根拠は、腫瘍部位および転移部位に残存する細胞が(主に)細胞傷害性T細胞応答によって殺されることを期待して、細胞傷害剤で殺される細胞における腫瘍特異的抗原に対する抗腫瘍免疫応答を形成しようとすることである。このような応答を刺激する助けとするために、数多くの免疫賦活分子(immunostimulatory molecule)を使用する遺伝子治療がGDEPT/VDEPTと併用して試みられている。他よりすぐれた候補の1つはGM−CSFであると思われ、チミジンキナーゼ(Jonesら)と併用しておよびシトシンデアミナーゼ(Caoら)と併用して使用されている。一方または両方と併用して試みられる他の候補には、IL−2、Il−6、B7−1(Felzmanら)、IFN−γ(Santodonatoら)およびMCP−1(Sakaiら)が挙げられる。
【0005】
しかし、一般に、結果はばらついており、信頼できる治療の改善に至っていない。癌の免疫治療を改善する明白な必要性が存在している。
【0006】
細胞のストレスに応答して、遺伝子のサブセットが誘導されて、ストレス応答タンパク質が発現される。これらのタンパク質は多様な機能を有し、NFκBおよび高移動度群B1(HMGB1、Bustin、2002年)などの細胞内メッセンジャーおよび転写因子並びにIL−1β、IL−1α、IL−6、IL−8、TNF−α、GM−CSF、IL−12およびIL−15などのサイトカインを含む。しかし、最も重要なものには、ヒートショックタンパク質として知られるタンパク質グループが挙げられる。
【0007】
ヒートショックタンパク質は、偏在的な細胞内タンパク質で、進化の過程中高度に保存されており、タンパク質の折り畳み、アンフォールディングおよび変性並びに多サブユニットタンパク質複合体の集合などの基本的な細胞過程に関与することが知られている。それらの発現は細胞ストレス(熱、毒素、飢餓、低酸素)によって厳しくアップレギュレーションされており、それらは細胞ストレス中に生じるタンパク質損傷を修復および改善する際に役割を果たす(ParsellおよびLindquist、1993年に総説が示されている)。ヒートショックタンパク質の発現は、ヒートショックタンパク質プロモーターのエレメントに結合している数多くの上流ファクターによって制御される。これらには、HSF−1(ヒートショックファクター−1、Balerら、1993年)、HSF−2(Mathewら、2001年)およびHSF−3(NakaiおよびMorimoto、1993年)並びにIRF−1および2を含むインターフェロン反応ファクター(Taniguchiら、2001年およびMamaneら、1999年)が挙げられる。
【0008】
さらに最近、それらはまた、細胞内タンパク質由来のペプチドの処理および発現並びに抗原提示細胞へのこれらの送達に役割を果たすことが明らかになった。特に、ヒートショックタンパク質Hsp70、Hsp90およびカルレチクリン(calreticulin)は極めて大きな親和性で自己ペプチドに結合し、細胞の溶解によって細胞から放出されると、Hsp受容体CD91を発現している抗原提示細胞にそれらを送達する(Basuら、2001年)。細胞溶解前の細胞ストレスはヒートショックタンパク質のレベルを増加するので、この作用を増強する。細胞内抗原に対する免疫応答の刺激は、アポトーシス細胞死またはプログラムされた細胞死ではなく壊死性細胞死に関連することおよびこれは、少なくとも部分的には、抗原提示細胞レベルで制御されることが提唱されている(Matzinger、1994年)。抗腫瘍応答に具体的に適用すると、腫瘍細胞の非アポトーシス(すなわち、壊死性)細胞死は高レベルのHsp70を誘導し、免疫原性の増加、炎症細胞内容物の放出、炎症誘発性Th1型サイトカインの分泌増加およびマクロファージ活性化に関連することが示されている(Goughら、2001年)。一方、一般に細胞外環境に接触する前に細胞内高分子が分解され、Hsp70、Hsp90およびカルレチクリンがあまり大量に放出されない(Basuら、2000年)アポトーシス細胞死は炎症および免疫応答を開始しない。壊死性細胞溶解液は、樹状細胞、免疫応答の開始時において未処理のT細胞を活性化するための主要な抗原提示細胞の成熟を生じるが、アポトーシス細胞溶解液は生じない(Galucciら、1999年;Sauterら、2000年。Hsp70そのものが樹状細胞の成熟因子であることが示されている(Kuppnerら、2001年;Gastparら、欧州特許出願EP1209226号)。また、アポトーシス細胞は、例えば、ホスファチジルセリン受容体により、抗−炎症および免疫抑制シグナルを抗原提示細胞に直接送達することができる(Fadokら、2000年)。
【発明の開示】
【0009】
[発明の概要]
ニトロレダクターゼ/CB1954酵素/プロドラッグシステムの使用は、溶解した細胞から放出される活性型CB1954の毒性産物に接触した標的腫瘍細胞およびバイスタンダー細胞を死滅する以外に、同じ種類の腫瘍細胞による後の攻撃に対する大きな保護作用も生じたことを本発明者らは見出した。早期の研究はこのような死滅作用はアポトーシス機序によるものであると示唆しており(Djehaら、2000年)、アポトーシス細胞死は比較的弱い免疫応答しか生じないと考えられていたので、これは予想しなかった。抗腫瘍作用をさらに増強する目的で、その研究者らは、ニトロレダクターゼおよびHsp70の両方を発現することができるポリヌクレオチドをコードするアデノウイルス遺伝子治療ベクターを構築した。根拠は、ベクターが標的として感染し、CB1954の投与によって死滅させられる腫瘍細胞は、腫瘍細胞の死滅によって誘発され、Hsp70の過剰発現によって増強される抗腫瘍免疫応答を開始する作用をするということである。これにより、Hsp70が結合した細胞内ペプチドが、CD91を発現する抗原提示細胞に効率的に送達される。このように送達されるペプチドの一部は、腫瘍細胞内の体細胞突然変異によって生じる腫瘍特異的な「非自己」エピトープを含有するので、(主に)MHCクラスI分子に関連するこれらの提示により、CD8+細胞傷害性T細胞抗腫瘍応答が開始される。しかし、Hsp送達されるペプチドの一部はMHCクラスII提示経路に進入するので、CD4+ヘルパーT細胞応答が増加する。細胞応答の両方の能力は抗腫瘍免疫において重要である。
【0010】
抗腫瘍免疫応答を形成する際のこの方法の成功性は、GDEPT媒介性の死滅が少なくともある割合の細胞においては壊死性であるからであるかどうか、死滅の主要な機序はアポトーシス性であるが、かなりのレベルの二次的な壊死が生じるかどうか、またはアポトーシス細胞死の抗炎症性および非免疫原性はヒートショック因子の過剰発現によってある程度克服されうるかどうかは不明である。しかし、本発明者らは、マウス腫瘍モデルにおいて、原発性腫瘍を、NTR遺伝子を送達するベクターと共に注射し、その後CB1954を全身投与すると、腫瘍を死滅させるだけでなく、同じ種類の腫瘍細胞のその後の負荷に対するある程度の保護作用を与えることを実証した。彼らはさらに、この保護作用は、便利なことに同じ遺伝子治療ベクターにおいて、Hsp70の発現を誘導する遺伝子を同時投与することによって大幅に増強されることを実証した。
【0011】
本発明は、プロドラッグ変換酵素としてのニトロ還元酵素の使用に限定されず、プロドラッグ変換に依存する細胞死滅方法に限定されない。原則として、細胞を死滅させることができる分子をコードするポリヌクレオチドを含む、任意の細胞死滅方法を、内因的アジュバントとして作用し、抗腫瘍応答を促進する際にヒートショックタンパク質様の機能を有する任意の分子と併用使用することができる。コードされ、この方法に使用できると思われる毒素には、リシン、アブリン、ジフテリア毒素およびボツリヌス毒素がある。別の好適なプロドラッグ変換酵素には、チトクロームP450/アセトアミノフェン酵素/プロドラッグ組み合わせがある。このようなシステムが腫瘍細胞を死滅させる手段として有用であることは既知であり(国際特許出願国際公開公報第00/40272号)、アセトアミノフェンを毒性代謝物N−アセチルベンゾキノミニン(N-asetylbenzoquinoneimine)(NABQI)に活性化することによって生ずる細胞死滅はアポトーシス性であるといういくつかの証拠がある(Baeら、2001年;Boularesら、2002年)。にもかかわらず、治療レベルのアセトアミノフェンの存在下におけるチトクロームP450とhsp70の同時発現は、チトクロームP450単独で得られるものよりかなり改善された抗腫瘍応答を与えるということを出願人らは見出した。
【0012】
実際、ヒートショックタンパク質の発現を提供するベクターを送達する開示の方法は、種々の方法のいずれかによって死滅される腫瘍細胞(限定されない)などの細胞に対する免疫応答を増強するために使用することができることが明らかである。従って、化学療法または放射線療法と併用するアジュバント免疫療法としてのヒートショックタンパク質のDNA送達は有用である可能性がある。
【0013】
使用することができる好適なアジュバント特性を有する分子には、Hsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウム(Mycobacterium)Hsp65、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)Hsp60、大腸菌(Escherichia coli)GroELおよびGroESがある。
【0014】
さらに、壊死性細胞死を生ずるGDEPTに基づいた方法の使用(NTR/CB1954併用など)は、関連するHsp導入遺伝子によって提供されるHsp発現のアップレギュレーションの別の有用な影響がなくても、大きな免疫原性を示すことが本明細書に開示されているデータから明らかである。
【0015】
ベクターは細胞にDNAを導入することができる任意のベクターであってもよい。好ましくは、ベクターは組込みベクターまたはエピソームベクターである。
【0016】
好ましい組込みベクターには、組換えレトロウイルスベクターが挙げられる。組換えレトロウイルスベクターは、その一部が標的細胞に感染することができるレトロウイルスゲノムの少なくとも一部のDNAを含む。「感染」という用語は、ウイルスが遺伝物質を宿主または標的細胞に導入する過程を意味するために使用される。好ましくは、本発明のベクターを構築する際に使用するレトロウイルスも、標的細胞のウイルス複製性を除去するために複製欠損型にされる。このような場合には、複製欠損型ウイルスゲノムは従来の技法によりヘルパーウイルスによってパッケージングされうる。一般に、感染性および機能的遺伝子導入能力に関する上記の基準を満たす任意のレトロウイルスを本発明を実施する際に使用することができる。
【0017】
好適なレトロウイルスベクターには、当業者に既知のpLJ、pZip、pWeおよびpEMが挙げられるが、これらに限定されない。複製欠損型レトロウイルスに好適なパッケージングウイルス系統には、例えば、ΨCrip、ΨCre、Ψ2およびΨAmが挙げられる。特に好適なレトロウイルスベクターはレンチウイルスベクター、特にHIV、SIVおよびFIVである。
【0018】
本発明に有用な他のベクターには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40ウイルス、ワクシニアウイルス、HSVおよびポックスウイルスベクターが挙げられる。好ましいベクターはアデノウイルスである。アデノウイルスベクターは当業者に既知であり、気道上皮、骨格筋、肝臓、脳および皮膚を含む数多くの細胞種(Hittら、1997年;Anderson、1998年)並びに腫瘍(Mountain、2000年)に遺伝子を送達するために使用されている。
【0019】
さらに別の好ましいベクターはアデノ随伴(AAV)ベクターである。AAVベクターは当業者に既知であり、遺伝子治療適用のためにヒトTリンパ球、線維芽細胞、鼻ポリープ、骨格筋、脳、赤血球および造血幹細胞に安定して形質導入するために使用されている(Philipら、1994年;Russelら、Flotteら、1993年;Walshら、1994年;Millerら、1994年;Emerson、1996年)。国際特許出願国際公開公報第91/18088号は具体的なAAV系ベクターを記載している。
【0020】
好ましいエピソームベクターには、EBV、ヒトパポバウイルス(BK)およびBPV−1由来のものなどのウイルスの複製開始点由来の機能を有する一過的な非複製エピソームベクターおよび自己複製エピソームベクターが挙げられる。
【0021】
このような組込みベクターおよびエピソームベクターは当業者に既知であり、当業者に既知の多数の文献に十分に記載されている。特に、好適なエピソームベクターは国際公開公報第98/07876号に記載されている。
【0022】
哺乳類人工染色体も本発明においてベクターとして使用することができる。哺乳類人工染色体の使用はCalos(1996年)によって考察されている。
【0023】
好ましい実施態様において、本発明のベクターはプラスミドである。プラスミドは非複製で、組込まれないプラスミドである。
【0024】
本明細書において使用する「プラスミド」という用語は、発現可能な遺伝子をコードする任意の核酸をいい、鎖状または環状核酸および2本鎖または1本鎖核酸を含む。核酸はDNAまたはRNAであってもよく、修飾ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含んでもよく、メチル化、または保護基またはキャップ−もしくはテール構造の導入などの手段によって化学的に修飾してもよい。
【0025】
非複製で組込まれないプラスミドは、宿主細胞にトランスフェクトされたとき、複製せず、特に宿主細胞のゲノムに組込まない(すなわち、高い頻度で組込まず、特定の部位に組込まない)核酸である。
【0026】
複製するプラスミドは、Ustavら(1991年)の標準的な複製アッセイを含む標準的なアッセイを使用して同定することができる。
【0027】
本発明はまた、本発明のベクターをトランスフェクトした宿主細胞を提供する。宿主細胞は任意の哺乳類細胞であってもよい。好ましくは、宿主細胞は齧歯類または哺乳類細胞である。
【0028】
核酸縮合剤の使用、エレクトロポレーション、アスベストとの複合体形成、ポリブレン、DEAEセルロース、デキストラン、リポソーム、陽イオンリポソーム、リポポリアミン、ポリオルニチン、微粒子銃および直接マイクロインジェクション(KucherlapatiおよびSkoultchi(1984年)による総説;Keownら(1990年)を含む、数多くの技法が既知であり、本明細書に記載されているベクターを細胞に送達するために本発明により有用である。
【0029】
本発明のベクターは、ウイルス性または非ウイルス性送達手段により非特異的または特異的に(すなわち、宿主細胞の指定したサブセットに)宿主細胞に送達することができる。ウイルス起源の好ましい送達方法には、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびパポバウイルスのものなどの、ウイルスのパッケージングシグナルが工作されている本発明のベクターのトランスフェクションレシピエントとしてのウイルス粒子産生パッケージング細胞系統が挙げられる。好ましい非ウイルス系遺伝子送達手段および方法も本発明に使用することができ、裸の核酸の直接注射、核酸縮合ペプチドおよび非ペプチド、陽イオンリポソーム並びにリポソームへの封入化が挙げられる。
【0030】
組織へのベクターの直接送達が記載されており、いくつかの短期遺伝子発現が達成されている。筋肉(Wolffら、1990年)、甲状腺(Sikesら、1994年)、黒色腫(Vileら、1993年)、皮膚(Henggeら、(1995年)、肝臓(Hickmanら(1994年)へのベクターの直接送達および気道上皮の暴露(Meyerら、1995年)によるベクターの直接送達は従来技術に明白に記載されている。
【0031】
ウイルスエンベロープタンパク質のアミノ酸配列由来の種々のペプチドが、ポリリジンDNA複合体と同時投与される場合に遺伝子導入に使用されており(Plankら、1994年;Trubetskoyら、1992年;国際公開公報第91/17773号;国際公開公報第92/19287号およびMackら、1994年)、ポリリジン複合体と陽イオン脂質の共縮合により遺伝子導入効率を改善することができることを示唆している。国際特許出願国際公開公報第95/02698号は、陽イオン脂質による遺伝子導入効率を増加する試みにウイルス成分を使用することを開示している。
【0032】
本発明に有用な核酸縮合剤には、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリリジンなどの、スペルミン、スペルミン誘導体、ヒストン、陽イオンペプチド、陽イオン非ペプチドが挙げられる。「スペルミン誘導体」はスペルミンの類似物および誘導体をいい、国際特許出願国際公開公報第93/18759号(1993年9月30日公開)に記載されている化合物が挙げられる。
【0033】
ジスルフィド結合は送達媒体のペプチド成分を結合するために使用されている(Cottenら、1992年)。Trubetskoyら(上記)も参照されたい。
【0034】
DNA構築物を細胞に送達するための送達媒体は当技術分野において既知であり、例えば、WuおよびWu(1988年)、Wilsonら(1992年)および米国特許第5,166,320号に記載されている細胞表面受容体に特異的であるDNA/ポリカチオン複合体が挙げられる。
【0035】
本発明によるベクターの送達は、核酸縮合ペプチドを使用することが考慮されている。ベクターを縮合し、ベクターを細胞に送達するのに特に有用である核酸縮合ペプチドは国際特許出願国際公開公報第96/41606号に記載されている。国際公開公報第96/41606号に記載されているように、本発明によるベクターの送達に有用なペプチドに官能基を結合することができる。これらの官能基には、モノクローナル抗体、インスリン、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質または糖などの特定の細胞種を標的とするリガンドを挙げることができる。従って、リガンドは、非特異的または細胞種に関して制限される特異的に細胞を標的とすることができる。
【0036】
官能基はまた、パルミトイル、オレイルもしくはステアロイルなどの脂質;ポリエチレングリコール(PEG)もしくはポリビニルピロリドン(PVP)などの中性親水性ポリマー;インフルエンザウイルスのHAペプチドなどの膜融合性ペプチド;またはリコンビナーゼもしくはインテグラーゼを含んでもよい。官能基はまた、核局在化配列(NLS)などの細胞内輸送タンパク質、膜破壊ペプチドなどのエンドソームエスケープシグナルまたは細胞質に直接タンパク質を誘導するシグナルを含んでもよい。
【0037】
従って、本発明は以下を提供する:毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチド配列とストレス応答タンパク質またはストレス応答タンパク質発現のインデューサーをコードするポリヌクレオチド配列を含む産物。このようなストレス応答タンパク質には、NFκB、高移動度群B1タンパク質HMGB1、IL−1β、IL−1α、IL−6、IL−8、TNF−α、GM−CSF、IL−12およびIL−15などのサイトカイン並びにHsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウムHsp65、レジオネラ・ニューモフィラHsp60、大腸菌GroELおよびGroESなどのヒートショックタンパク質が挙げられる。ストレスタンパク質発現のインデューサーにはHSF−1、HSF−2、HSF−3、IRF−1およびIRF−2が挙げられる。
【0038】
好ましい一実施態様において、毒素またはプロドラッグ変換酵素は細胞を壊死的に死滅することができることが好ましい。「壊死的」または「壊死性細胞死」という用語は、プログラムされていないまたはアポトーシス性ではない全ての形態の細胞死を含む。
【0039】
第二の好ましい実施態様において、このような産物は免疫応答、さらに好ましくは抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用する。
【0040】
別の実施態様において、毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチド配列およびストレス応答タンパク質もしくはストレス応答タンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチド配列は、1つのポリヌクレオチド分子の両方の要素である。さらに別の実施態様において、このような配列は、同時投与または連続投与することができる別個のポリヌクレオチドに存在する。
【0041】
好ましくは、毒素またはプロドラッグ変換酵素は、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである。または、それは、好ましくは哺乳類起源、さらに好ましくはヒト起源のチトクロームP450酵素である。最も好ましくは、それはヒトCYP1A2である。または、それはヒトCYP2E1またはCYP3A4である。
【0042】
別の好ましい実施態様において、コードされる酵素は齧歯類チトクロームP450であり、好ましくはマウス由来である。最も好ましくは、それはマウスCYP1A2、CYP2E1またはCYP3A4である。
【0043】
好ましくは、ポリヌクレオチドにコードされるストレス応答タンパク質はヒートショックタンパク質である。さらに好ましくは、ヒートショックタンパク質は、Hsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウムHsp65、レジオネラ・ニューモフィラHsp60、大腸菌GroELおよびGroESからなるリストから選択され、最も好ましくは、それはHsp70である。または、ポリヌクレオチドは、ヒートショックタンパク質の発現を誘導するストレスタンパク質発現インデューサーをコードする。好ましくは、それは、ヒートショック因子−1(HSF−1)、ヒートショック因子−2(HSF−2)、ヒートショック因子−1(HSF−3)、インターフェロン応答因子−1(IRF−1)またはインターフェロン応答因子−1(IRF−2)を含むリストから選択される。
【0044】
第二の態様において、本発明は、上記に記載する産物を含むDNAワクチンを提供する。「DNAワクチン」は、免疫原性またはアジュバント特性を有するタンパク質またはペプチドをコードするまたは発現することができる1つ以上のポリヌクレオチドを含む治療的免疫応答を誘導または増強することが意図されている産物を意味する。
【0045】
第三の態様において、DNAワクチンは、抗腫瘍免疫応答を増強するための毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドを含む。好ましくは、毒素またはプロドラッグ変換酵素は、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである。または、毒素またはプロドラッグ変換酵素はチトクロームP450である。好ましくは、チトクロームP450は、ヒトCYP1A2、ヒトCYP2E1、ヒトCYP3A4、齧歯類CYP1A2、齧歯類CYP2E1および齧歯類CYP3A4からなるリストから選択される。
【0046】
好ましくは、毒素またはプロドラッグ変換酵素は壊死性細胞死を誘導することができる。
【0047】
第四の態様において、本発明は、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドと、抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用するための免疫賦活分子をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。「免疫賦活性」という用語には、免疫抑制因子または作用の阻害剤として機能すると思われる(IL−10およびTGF−βなどの)因子が含まれる。
【0048】
好ましくは、免疫賦活分子は、GM−CSF、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、B7−2、TNFα、γ−IFN、MCP−1、MIP−2、RANTES、TGF−β、CD154(CD40リガンド)、CD134リガンド(OX40L)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD135リガンド(Flt3L)およびTNF関連アポトーシス誘導受容体(TRAIL、Apo−2リガンド)からなるリストから選択される。
【0049】
本発明の特定の実施態様は、免疫応答を増強する際に使用するための、
a)毒素またはプロドラッグ変換酵素と
b)ストレス応答タンパク質と
をコードするベクターである。
【0050】
好ましくは、免疫応答は抗腫瘍免疫応答である。
【0051】
ストレス応答タンパク質がヒートショックタンパク質であることも好ましい。さらに好ましくは、ヒートショックタンパク質は、Hsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウムHsp65、レジオネラ・ニューモフィラHsp60、大腸菌GroELおよびGroESからなるリストから選択される。最も好ましくは、それはHsp70である。
【0052】
好ましくは、毒素またはプロドラッグ変換酵素は、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである。最も好ましくは、ベクターは、図1に示すCTL102/mCMV−mHSP70である。
【0053】
または、それは、好ましくは哺乳類起源、さらに好ましくはヒト起源のチトクロームP450酵素である。最も好ましくは、ヒトCYP1A2である。または、それはヒトCYP2E1またはCYP3A4である。
【0054】
別の好ましい実施態様において、コードされる酵素は齧歯類チトクロームP450であり、好ましくはマウス由来である。最も好ましくは、それはマウスCYP1A2、CYP2E1またはCYP3A4である。
【0055】
上記のベクターのいずれかが、腫瘍選択的発現を提供する1つ以上のプロモーターに機能的に結合し、一方で毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチド配列および他方でストレス応答タンパク質またはストレス応答タンパク質発現インデューサーをコードするするポリヌクレオチドの一方または両方を有することがさらに好ましい。
【0056】
本明細書において使用する「機能的に結合する」という用語は、プロモーターの制御下において遺伝子を発現させるcis結合をいう。
【0057】
好ましい腫瘍選択性プロモーターには、TRP−1、HER2、HER3、ERBB2、ERBB3、CEA、MUC−1、α−フェトプロテイン、前立腺特異的抗原(PSA)、ビリン、膵臓アミラーゼ、チロシナーゼ関連ペプチド、腫瘍拒絶抗原前駆体およびT細胞因子(TCF)応答プロモーターが挙げられる。好ましくは、プロモーターは1つ以上のTCF応答要素を含む。
【0058】
TCFは、DNA結合タンパク質の高移動度群(HMG)の転写因子ファミリーである(Loveら、Nature,376,791-795,1995)。ファミリーには、van der Weteringら(EMBO J.10,123-132,1991)、欧州特許出願第0 939 122号およびKorinekら(Science,275,1784-1787,1997)に記載されているTCF−1、TCF−3およびTCF−4が含まれる。TCF−4は、Wnt/Winglessシグナル伝達系に関連する腫瘍形成に関与することが示されている。TCFおよびLEF−1(リンパ系増強因子−1)は、β−カテニンと相互作用することによってWnt信号に対する核応答を媒介すると考えられる。β−カテニンの安定性を増加するWntシグナル伝達系および他の細胞事象は、β−カテニンと関連したLEF−1およびTCFタンパク質による遺伝子の転写活性化を生じると考えられる。Wntシグナル伝達系が存在しない場合には、LEF−1/TCFタンパク質はGrouchoおよびCBP(CREB結合タンパク質)と関連する転写を抑制する。
【0059】
Wntシグナル伝達系が存在しない場合には、β−カテニンは2つの別個の多タンパク質複合体に見られる。細胞膜に位置する一方の複合体はカドヘリン(カルシウム依存的接着分子)とアクチン細胞骨格を結合するが、他方の複合体(タンパク質、腺腫性結腸ポリープタンパク質(APC)、アクシンおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)を含有する)は分解のためにβ−カテニンを標的とする。Wntシグナル伝達系はAPC−アクシンGSK3β複合体と拮抗して、遊離の細胞質内β−カテニンの貯蔵を増加する。遊離の細胞質内β−カテニンは核に転位して、LEF−1/TCF因子に結合し、Wnt標的遺伝子を活性化する。Wntおよび他の信号によるLEF−1/TCF因子の調節はEastmanら(Current Opin.Cell Biology,11,233-240,1999)に考察されている。
【0060】
TCFは、ヌクレオチド配列CTTTGNN(式中、NはAまたはTを示す)を有するTCF結合要素を認識し、結合することが知られている(van der Weteringら、上記)。
【0061】
TCF応答要素は、特に結腸および肝臓腫瘍において機能的に結合した遺伝子の腫瘍選択性の高い発現を提供することが示されている(国際公開公報第01/64739号)。
【0062】
好ましくは、ベクターはウイルスベクターであり、さらに好ましくはアデノウイルスベクターである。特に好ましい実施態様は、抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用するための(a)プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼおよび(b)hsp70をコードし、発現を可能にするアデノウイルスベクターである。最も好ましくは、それはCTL102/mCMV−mHSP70である。
【0063】
または、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり、さらに好ましくはレンチウイルスベクターである。
【0064】
さらに別の実施態様は、上記ベクターのいずれかを含む宿主細胞である。
【0065】
本発明の別の態様は、上記の産物または組成物、ベクターまたは宿主細胞を含むワクチンである。
【0066】
医薬品またはワクチンとして使用するための上記の産物または組成物、ベクターまたは宿主細胞も提供される。
【0067】
本発明のさらに別の態様は、上記の産物、組成物、DNAワクチン、ベクターまたは宿主細胞のいずれかと、製薬学的に許容されうる希釈剤、緩衝剤、補助剤または賦形剤を含む製薬学的組成物である。
【0068】
また、癌を治療するための医薬品を製造するためまたは癌を治療するためのワクチンを製造するための上記産物、組成物、DNAワクチン、ベクターまたは宿主細胞のいずれかの使用も提供する。
【0069】
本発明は、毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質またはヒートショックタンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップを含む、免疫応答を増強する方法を提供する。好ましくは、免疫応答は抗腫瘍免疫応答である。
【0070】
毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質またはヒートショックタンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップを含む、ある形態の癌に罹患している患者を治療する方法も提供される。
【0071】
好ましい一実施態様において、本発明の方法は、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップと、産物が腫瘍細胞に進入し、コードされているニトロレダクターゼおよびヒートショックタンパク質が発現される時間をおくステップと、治療量のCB1954を投与するステップとを含む。
【0072】
または、本発明の方法は、チトクロームP450をコードするポリヌクレオチドおよびヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップと、産物が腫瘍細胞に進入し、コードされているチトクロームP450およびヒートショックタンパク質が発現される時間をおくステップと、治療量のプロドラッグを投与するステップとを含む。好ましくは、プロドラッグはアセトアミノフェンである。
【0073】
上記方法のいずれにおいても、ヒートショックタンパク質がHsp70であることが好ましい。
【0074】
本発明の別の態様において、治療的な抗腫瘍免疫応答が誘導されるように、ヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物と治療量の抗癌細胞傷害薬を投与するステップを含む、ある形態の癌に罹患している患者を治療する方法が提供される。
【0075】
好ましい実施態様において、抗癌細胞傷害薬は、腫瘍細胞に壊死性細胞死を誘導することができる。
【0076】
本発明の最後の態様において、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップと、組成物が腫瘍細胞に進入して、コードされているニトロレダクターゼが発現される時間をおくステップと、治療量のCB1954を投与するステップとを含む抗腫瘍免疫応答を誘発する方法が提供される。
【0077】
本発明の産物、DNAワクチン、ベクターもしくは宿主細胞または製薬学的組成物は、全身、筋肉内、皮下、皮内、静脈内、エアゾール、経口(固体または液体剤形)、局所、点眼、坐剤、腹腔内および/またはくも膜下腔内および局所的な直接注射を含む経路によって投与することができる。
【0078】
当然のことながら、正確な用法用量は、個々の患者について個々の医師が決定する必要があり、治療用遺伝子が発現するタンパク質の性質および治療対象の組織の種類によって制御される。
【0079】
用量はまた、適応症および投与経路に依存する。
【0080】
本発明による効果的な治療のために送達される核酸構築物またはベクターの量は、好ましくは、約50μg〜1000μgのベクターDNA/体重1kgの範囲内であり、さらに好ましくは約1〜100μgベクターDNA/kgの範囲内である。
【0081】
インビボにおける細胞への取り込みのために核酸構築物、ベクターまたは宿主細胞を哺乳類に投与することが本発明により好ましいが、細胞を動物から取り出し、核酸構築物またはベクターを形質導入し、次いで動物に再植え込みする半ビボ方法を使用することができる。
【0082】
[発明の詳細な説明]
本発明は以下の実施例を使用することによって詳細に説明される。これらは例示的にすぎず、限定するものと考えられるべきではない。
【実施例】
【0083】
[実施例1]
〔材料と方法〕
(細胞培養)
4T1、マウス乳癌細胞はATCC(CRL−2539)から入手した。EJ−6−2−Bam−6aはATCC(CRL−1888)から入手し、ヒトEJ膀胱癌のDNAをNIH/3T3にトランスフェクトすることによって作製した。PER.C6細胞(lit)はIntroGene(Leiden、オランダ)から入手した。911細胞はProf.L.Young(CRC Institute for Cancer Studies、University of Birmingham、英国)の親切な提供を受け、10%FCS、10mMのMgCl2および抗生物質を含有するDMEMで維持した。4T1およびEJ−6−2−Bam−6aは、供給元が推奨するように培養した。
【0084】
(プラスミド構築)
pTX0374は、大腸菌(E. coli)ntr遺伝子(NTR:ゲノムDNAから増幅した大腸菌(E. coli)B/rニトロレダクターゼ遺伝子)に融合させたヒトCMVプロモーターを含有する1.6kbのBglII−BamHIフラグメントをpSW107にクローニングすることによって構築した。pRAJ43BP4は、マウスGM−CSF cDNAを含有するpUC19プラスミドであり、Prof.L.Young(CRC Institute for Cancer Studies、University of Birmingham、英国)の親切な提供を受けた。CET902は、マウスCMV 1Eエンハンサー/プロモーターおよび後期SV40ポリ(A)シグナルを含有するpUC19プラスミドである。
【0085】
CET902/mCMV−mHSP70は、ストレス誘導性マウスHSP70タンパク質の発現カセットを含有し、記載するように構築した。先ず、完全長(1.4kb)のマウスCMVプロモーターをpUC19系ベクターにクローニングした。第二に、後期SV40ポリ(A)シグナルをプロモーターの下流にクローニングした。最後に、マウスHsp70をコードするcDNAを、SmaI部位を使用して、プロモーターとポリ(A)シグナルの間にクローニングした。マウスHSP70のcDNAを含有するプラスミドは、Dr.R.Vile(Molecular Medicine Program、Mayo Clinic、200 First Street SW、Rochester、Minnesota、米国)の親切な提供を受け、NheI/BamHIフラグメントとして切断し、T4 DNAポリメラーゼを使用して、平滑末端化した。
【0086】
CET902/mCMV−mGM−CSFは、pRAJ 43 BP4をEcoRIおよびBamHIで消化して、465bpのフラグメントを放出することによって作製した。フラグメントを平滑末端化し、SmaIにライゲーションしてCET902を作製した。
【0087】
pPS1128はDr.P.Searle、CRC Institue of Cancer Studies、University of Birminghamの親切な提供を受けた。pPS1128は左側ITRからnt359およびnt3525から10,579のアデノウイルス配列を含有し、従ってE1欠損ベクターである。pPS1128は、ポリ(A)付加シグナルおよびヒト補体C2遺伝子の転写停止シグナルを含有する240bpのHincII−BamHIフラグメントに結合したヒトβ−グロビン遺伝子の917bpフラグメント(エクソン2のBamHI部位からエクソン3のEcoRI部位)をpBluescript(Stratagene)にクローニングすることによって構築した。このプラスミドは2段階で構築した。第1の段階において、pPS971の左側EcoRI部位(Weedonら、Int.J.Cancer、印刷中)をSwaI部位に変換してpPS115を作製した。第2の段階において、2つのオリゴヌクレオチド:
5’−CTAGTATCGATTGTTAATTAAGGGCGTGGCC−3’および
5’−TTAAGGCCACGCCCTTAATTAACAATCGATA−3’
をアニーリングすることによって、pPS115の350bpのSpe1−AflIIフラグメントをリンカーと置換した。
【0088】
pPS1022は、右側EcoRI部位をSwaI部位に変換することによってpPS972から構築した。
【0089】
pTX0375、CTL102を作製するために使用する導入ベクターは、pTX0374の全発現カセットにわたるSpeIフラグメント(hCMV−NTR−IVSII−p(A))をSpeI消化したpPS1128にクローニングすることによって構築し、左から右方向にカセットを含有するクローンを同定した。pPS1128/mCMV−mHSP70およびpTX0375/mCMV−mHSP70は、それぞれ、pTX0375の平滑末端化したpPS1128部位または平滑末端化したPacI部位にCET902/mHSP70のmCMV−mHSP70−SV40p(A)発現カセットを導入することによって構築した。mCMV−mHSP−SV40p(A)発現カセットは、CET902/mHSP70プラスミドをXmnI、AscIおよびBstZ171で消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化することによって作製した。従って、最終的なカセットは約500bpのマウスCMVプロモーターを含有し、このピースは活性の大半を提供する。pPS118/mCMV−mGM−CSFはCET902/mCMV−mGM−CSFから作製した完全な発現カセット(1.3kb)(BstZ171およびAscI消化し、平滑末端化)をpPS1128にクローニングすることによって構築した。
【0090】
アデノウイルス「バックボーン」ベクターpPS1160は、pPS1128をPacI鎖状化し、XbaI部位を含有するPacI−適合性アダプター(オリゴ1:5’−TACATCTAGATAAT−3’、オリゴ2:5’−TTATCTAGATGTA−3’)をライゲーションし、次にXbaI消化して、Ad5配列3524〜10589を含有する約7kbのXbaIフラグメントを遊離することによって構築した。次いで、これをXbaI鎖状化したpPS1022(Dr.Peter Searle)、nt10,589から右側ITRのAd5配列を含有するが、nt28,592から30,470(E3領域)を欠損するpUC18系プラスミドにクローニングした。
【0091】
(アデノウイルスベクター構築)
組換えウイルスCTL102(Ad.hCMV−NTR)、CTL102/mCMV−mHSP70、Ad.mCMV−mHSP70およびAd.mCMV−mGM−CSFは、Per.C6細胞における相同組換えによって構築した。これらの細胞に、pTX0375、pTX0375/mCMV−mHSP70、pPS1128/mCMV−HSP70またはpPS1128/mCMV−mGM−CSFおよびpPS1160の等モル混合物を同時形質移入し、PER.C6細胞を90%集密化させた。組換えウイルスは、感染培地(DMEM、1%FCS、2mMのMgCl2)中で凍結−融解を3サイクル実施することによって約7日後に回収した。感染/回収サイクルを反復することによって、ウイルスを大量に増殖させ、次いで標準的なCsCl密度勾配遠心分離によって精製し、過剰量の保存緩衝液(10mMのTris pH7.4、140mMのNaCl、5mMのKCl、0.6mMのNa2HPO4、0.9mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2および5%スクロース)で透析し、最後に液体窒素中でスナップ凍結し、−80℃において保存した。粒子濃度は、BCA Protein Assay Reagent(Perbio Science UK,LTD、Tattenhall、Cheshire、UK)を使用して測定した。プラーク形成単位(p.f.u.)力価は911細胞のプラークアッセイによって測定した。
【0092】
(4T1のインビトロにおける感染)
4T1細胞は、感染培地(通常培地であるが、1%FCSを含有する)中で細胞あたり示したp.f.u.(MOI)を、細胞密度1×107/mlのときに加湿したCO2インキュベーター中で約2.5時間感染させた。感染中、30分ごとに細胞をゆっくり混合した。次いで、細胞をペレット化(300×g、5分)し、洗浄してからPBSに再懸濁させた。ワクチン化実験では、使用したMOIは200〜300であり、ウイルスの組み合わせを使用する場合には、ベクターの最終用量は、用量依存的な細胞変性作用を回避するために一定にした。
【0093】
(ウェスタンブロット分析)
3×105のHeLa細胞に、5%CO2雰囲気下で37℃において2時間インキュベーションすることによって感染培地中で示したMOIを感染させた。次いで、細胞に完全培地(10%FCS)を供給し、24時間培養した。次いで、細胞をPBS中で洗浄し、次いで6ウェルあたり200μlRIPA緩衝液(10mMのTris pH8.0、150mMのNaCl、1.0%NP40、0.1%SDS、0.5%Na−デスオキシコラット(Desoxycholat)プラス完全プロテアーゼ阻害剤カクテル、Roche)を添加することによって全細胞溶菌液を調製した。細胞を室温において10分間インキュベーションし、4℃において13,000RPMで遠心分離した。透明な溶菌液を別の試験管に移し、Biorad DC Protein Assayキット(Hercules、CA、米国)を使用してタンパク質濃度を測定した。High Rainbowタンパク質サイズマーカー(Amersham Pharmacia、Piscataway、NJ、米国)を使用して、30μgの各溶菌液試料を11%SDS−PAGEで分解した。次いで、タンパク質をニトロセルロース膜(Gelma Sciences、Ann Arbor、MI、米国)に移した。TBS(10mMのTris pH7.5、150mMのNaCl)/0.1%Tween20/5%粉乳中で室温において1時間膜をブロッキングした。以下のようにブロッキング緩衝液で一次抗体を希釈した:ヒツジ抗NTR(ポリクローナル抗体、Dyfed、英国):1:2000、マウス抗HSP70(SPA-810、Stressgen Biotechnologies、Victoria BC、カナダ)1:1000およびヤギ抗GM−CSF(SantaCruz、CA、米国;sc−1322):1:1000。膜は室温において1時間一次抗体と共にインキュベーションし、次いで十分に洗浄し、次いで以下のようにTBS/0.1%Tween20/0.5%粉乳中で室温において30分間二次抗体と共にインキュベーションした:ロバ抗ヤギHRP(1:7,500;Sigma)、抗マウスHRP(1:10,000;Sigma A-9917)および抗ヤギHRP(Sigma、A-5420)。十分に洗浄後、Pierce「SuperSignal West Pico Chemiluminescence基質」(Perbio Science UK Ltd.、Tattenhall、英国)を使用して高感度化学発光を実施し、Alpha Innotech Imager Model#2.3.1で分析した。
【0094】
(マウス)
雌BALB/cマウス(H−2d、6〜8週齢)はHarlan(Oxion、米国)から入手し、温度制御し、明暗サイクルを行える部屋で、飼料と水は随時与えて管理した。マウスは1週間休息させてから任意の処理を実施した。注意および全ての実験手法は、UK Home Office規則に遵守して実施した。
【0095】
(マウス腫瘍モデル)
4T1は、BALB/cfC3Hマウスにおいて自然に発生した乳腺癌から樹立された攻撃性が高く転移性の細胞系統である(Dexterら、1978年)。H−2dクラスIを発現するが、クラスII分子を発現しない4T1細胞系統は、インビトロまたはインビボにおいて同質遺伝子的な抗腫瘍応答を刺激しない非免疫原性腫瘍モデルである。BALB/cマウスにおける100%腫瘍誘導最小量は5×102細胞である。4T1細胞は、BALB/cマウスに皮下注射すると、攻撃的な固形腫瘍を形成し、主に肺に自然転移することがあるが、原発腫瘍もその場で増殖を続ける。線維芽細胞系統である、EJ−6−2−Bam−6a(Shinら、1981年)を対照腫瘍として使用した。
【0096】
(ワクチン化プロトコール)
示した数のアデノウイルス−形質導入した4T1細胞を、合計100μlの容量で各未処理のマウスの右横腹に皮下注射した(0日目)。異なる実験群に、ニトロレダクターゼおよび/または同時刺激遺伝子を含有するアデノウイルスの1つの組み合わせまたは異なる組み合わせを注射した。導入遺伝子の最大の発現が生じうることが実証されている2日目まで導入遺伝子の発現をインビボにおいて進行させてから、400μMのCB1954溶液を総容量500μlで腫瘍周囲に注射した。特に記載しない限り、21日目に全てのマウスに5.0×103親4T1細胞の2回目の対側注射により腫瘍を負荷した。この量は、未処理のマウスにおける最小致死量より10倍多い。未処理のマウス群にも同じ経過時点にこれらの細胞を注射した。長期抗腫瘍免疫応答の誘導は、ワクチン後80日目にマウスに腫瘍負荷することによって実証した。任意の1つの実験における全てのマウス群は、同じ細胞調製物を使用して同じ日に腫瘍負荷した。動物は触診によって腫瘍の出現を定期的に調査した;以降は、2〜3回/週ノギスを使用して腫瘍の直交方向の2つの寸法を測定した。腫瘍サイズは個々の腫瘍の2つの径の積として表した。マウスは、窮迫徴候を示し、腫瘍が過剰に壊死的になったときまたは腫瘍サイズが160mm2を越えたとき、人道的な理由により処分した。
【0097】
〔結果〕
(4T1のCTL102/CB1954死滅は、4T1細胞負荷に対する大きな長期的防御を誘導することができる)
インサイチューにおけるNTR/CB1954腫瘍死滅が特異的な抗腫瘍免疫の形成に寄与する可能性を試験するために、ワクチン化実験を実施した。細胞接種の用量範囲(5.0×102〜5.0×106NTR発現4T1細胞)および用量を100から400μMの範囲で増加させたCB1954によるその後のインビボ処理を試した最適死滅条件を確立するための最適化実験(データは示していない)において、腫瘍を保有しないマウスをワクチン化した。5.0×103または5.0×104NTR発現4T1細胞でそれぞれワクチン化した2つの群の腫瘍細胞の最初の接種を拒絶したマウスに、細胞接種後21日目に反対側の横腹に5.0×103の未改変の4T1細胞を負荷した。長期抗腫瘍免疫応答の誘導を評価するために、ワクチン化後80日目にもマウスへの細胞負荷を実施した。全ての未処理のマウスは、10日目までに進行的に増殖する腫瘍を発生し、負荷後25日目までに強制的な犠牲に処した。細胞負荷を拒絶するワクチンの用量依存的な応答は、細胞負荷の時期に関係なく、NTR/CB1954死滅細胞でワクチン化したマウスにおいて観察された(図4A)。低用量の5.0×103細胞によるワクチン化は、未処理のマウスと比較して低いレベルの防御を与えるが、高ワクチン化用量(5.0×104)は4T1細胞の免疫原性をかなり増強し、マウスの大半を細胞負荷から防御した。
【0098】
NTR/CB1954死菌ワクチンで見られる防御の特異性を評価するために、5.0×103または5.0×104NTR発現4T1細胞でワクチン化したマウスに、別の同系腫瘍、EJ6、マウス線維肉腫を負荷した。4T1細胞による免疫化は、EJ6細胞の負荷から全てのマウスを防御しなかった(図4B)。
【0099】
(マウスHSP70同時刺激分子の発現によるNTR/CB1954死滅の抗腫瘍免疫の増強)
ワクチン化モデルにおけるNTR/CB1954死滅の影響が同時刺激分子HSP70の発現によって改善されるかどうかを判定するために、NTR遺伝子を保有するシングル組換えウイルスまたはNTRとHSP70遺伝子の両方を保有するダブル組換えウイルスを形質導入した4T1細胞からなる単回免疫化をマウスに実施した。動物にCB1954を2日目に腫瘍周囲に注射し、次いで動物の反対側の横腹に5.0×103未改変4T1細胞を負荷した(免疫化プロトコールを参照されたい)。2つの異なるワクチン化用量、5.0×104の低用量および5.0×105の高用量を使用した。細胞接種後21日目に全ての動物に5.0×103未改変4T1細胞を負荷し、腫瘍の出現、腫瘍の増殖および生存率について追跡調査した。結果は、HSP70を発現する細胞のNTR/CB1954死滅作用は、NTR/CB1954死滅細胞単独でワクチン化したマウスより、免疫応答を刺激する際により強力であることを示唆している(図5A)。ワクチン化細胞の数が多いことは、4T1細胞のその後の負荷からマウスを防御する際にすぐれていると思われる。結果として、NTR−HSP70を発現する細胞でワクチン化した動物は有意な生存率を示した(図5C)。一方、NTRを発現する細胞を与えた動物は、中程度の生存という利点を示しただけで、1匹のマウスが腫瘍を形成しないで3ヶ月より長く生存する。HSP70を発現する細胞単独による免疫化およびCB1954による処理は、接種部位における腫瘍の出現からどのマウスも防御せず、接種部位では進行的に増殖する腫瘍が形成され、約30日で強制的な犠牲の対象となるサイズに達し、マウスは細胞接種後21日目の免疫化時から間もなく犠牲にしなければならなかった。
【0100】
(mGM−CSF同時刺激分子の発現によるNTR/CB1954死滅の抗腫瘍免疫の増強)
NTR/CB1954死滅の免疫活性化特性に対するGM−CSF発現の影響を評価するために、4T1細胞にNTRおよびGM−CSFを保有するアデノウイルスベクターを同時形質導入し、マウスに注射し(5.0×105)、CB1954でインビボにおいて処理した(免疫化プロトコールを参照されたい)。GM−CSF単独は細胞負荷の拒絶に大きな影響を示し、NTR/CB1954死滅細胞によるワクチン化よりかなり優れていたが、NTR/CB1954死滅時に腫瘍環境にGM−CSFが存在すると、細胞負荷に対するかなり良好な防御を生じ、マウスの57%が細胞負荷後30日目に細胞負荷を拒絶した(図5A)。免疫化しない未処理のマウスは全て、腫瘍負荷後1ヶ月も経過しないうちに腫瘍組織量のために犠牲にしなければならなかった。
【0101】
[引用文献]
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】アデノウイルス血清型5(Ad5)E1組換えアデノウイルスの構造である。全てのウイルスは、示すようにウイルス領域E1およびE3が欠損している。E1欠損はAd5ウイルスゲノムのnt359〜3524を含み、E3欠損はAd5ウイルスゲノムのnt28、592−30、470を含む。HCMV:ヒトCMV(サイトメガロウィルス)IE(前初期)エンハンサー/プロモーター;NTR:大腸菌ニトロレダクターゼ遺伝子;IVSII:ヒトβ−グロビンイントロンII配列;mCMV:マウスCMV IEエンハンサー/プロモーター;mHSP70:マウスヒートショックタンパク質70;SV40:後期SV40ポリ(A)シグナル;mGM−CSF:マウス顆粒球単球−コロニー刺激因子。
【図2】NTR、mHSP70およびmGM−CSFタンパク質発現を分析する、アデノウイルスベクター感染細胞の細胞溶解液のウェスタンブロット分析である。(A)CMT93細胞(内因性HSP70を発現しない)に、MOIを増加させて、Ad.mCMV−mHSP70(レーン3〜5)またはCTL102/mCMV−mHSP70(レーン8〜10)を感染させた。CTL102感染細胞の抽出液をNTR発現の陽性対照として使用した。Ad.CMV−LacZ感染細胞の抽出液(レーン2)を陰性対照として使用した。(B)HeLa細胞にAd.mCMV−mGM−CSF(レーン2)またはAd.CMV−LacZ(レーン1;陰性対照)を感染させた。全細胞抽出液を感染の24時間後に調製した。50μgタンパク質溶菌液を使用して、変性SDS−PAGEを実施し、材料と方法に記載するようにダウンストリームプロセッシングを実施した。発現されたタンパク質の予想サイズを確認するためにBiorad分子量標準を使用した。
【図3】ワクチン化スキームである。
【図4】5.0×103の1回ワクチン化による5.0×103親4T1細胞および5.0×104Ad.hCMV−NTR−形質導入(CTL102)4T1細胞による腫瘍負荷とインビボにおけるCB1954処理によるマウスの防御である。ワクチン化の21日後(白ぬきのバー)または80日後(黒塗りのバー)にマウスに腫瘍負荷した。B 5.0×103または5.0×104CTL102−形質導入4T1細胞の単回投与によるワクチン化とインビボにおけるCB1954処理の21日目には、5.0×104EJ6細胞、関係のない腫瘍細胞系統の腫瘍負荷に対する防御は見られない。バーは、強制的に犠牲にした時点における未処理のマウスの対照群の平均腫瘍サイズと比較した、処理マウスにおける腫瘍負荷の個々の腫瘍サイズの割合を示す。
【図5】A(a)5.0×104Ad.hCMV−NTR−形質導入(CTL102)した4T1細胞でワクチン化し、CB1954で処理したBALB/cマウス、(b)5.0×104Ad.hCMV−NTR/mCMV−mHSP70−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したBALB/cマウス、(c)5.0×105CTL102−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したBALB/cマウスおよび(d)5.0×105Ad.hCMV−NTR/mCMV−mHSP−形質導入した4T1細胞でワクチン化し、CB1954で処理したBALB/cマウスそれぞれにおける腫瘍負荷後30日経過時における負荷した腫瘍の腫瘍サイズである。ワクチン化後21日目に、全てのマウスおよび未処理のマウス群(e)に5.0×103親4T1細胞を負荷した。B グラフは処理群の平均腫瘍サイズを示す。C 5.0×105CTL102−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したマウス、5.0×105Ad.mCMV−mHSP70−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したマウスおよび5.0×105Ad.hCMV−NTR/mCMV−mHSP−形質導入した4T1細胞でワクチン化し、CB1954で処理したマウスの生存率を示す。ワクチン化後21日目に、全てのマウスおよび未処理のマウス群に5.0×103親4T1細胞を負荷した。
【図6】A (a)5.0×104Ad.hCMV−NTR−形質導入(CTL102)した4T1細胞でワクチン化し、CB1954で処理したBALB/cマウス、(b)5.0×105CTL102+Ad.mCMV−mHSP70−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したBALB/cマウス、(c)5.0×105Ad.mCMV−mGM−CSF−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したBALB/cマウスおよび(d)5.0×105CTL102+Ad.mCMV−mGM−CSF−形質導入した4T1細胞でワクチンし、CB1954で処理したBALB/cマウスそれぞれにおける腫瘍負荷後30日経過時の負荷した腫瘍の腫瘍サイズである。ワクチン化後21日目に、全てのマウスおよび未処理のマウス群(e)に5.0×103親4T1細胞を負荷した。B グラフは処理群の平均腫瘍サイズを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチド配列と、ストレス応答タンパク質またはストレス応答タンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチド配列とを含む産物。
【請求項2】
免疫応答を増強する際に使用するための、請求項1に記載の産物。
【請求項3】
増強される免疫応答が抗腫瘍応答である請求項1または2に記載の産物。
【請求項4】
壊死性細胞死を誘導することができる毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチド配列、およびストレス応答タンパク質またはストレス応答タンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチド配列が、1つのポリヌクレオチド分子の要素である請求項1〜3のいずれかに記載の産物。
【請求項5】
毒素またはプロドラッグ変換酵素が、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである請求項1〜4のいずれかに記載の産物。
【請求項6】
毒素またはプロドラッグ変換酵素がチトクロームP450である請求項1〜4のいずれかに記載の産物。
【請求項7】
チトクロームP450が、ヒトCYP1A2、ヒトCYP2E1、ヒトCYP3A4、齧歯類CYP1A2、齧歯類CYP2E1および齧歯類CYP3A4からなるリストから選択される請求項5に記載の産物。
【請求項8】
コードされるまたは誘導されるストレス応答タンパク質が、ヒートショックタンパク質である請求項1〜7のいずれかに記載の産物。
【請求項9】
ヒートショックタンパク質が、Hsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウムHsp65、レジオネラ・ニューモフィラHsp60、大腸菌GroELおよびGroESからなるリストから選択される請求項8に記載の産物。
【請求項10】
ヒートショックタンパク質がHsp70である請求項9に記載の産物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の産物を含むDNAワクチン。
【請求項12】
抗腫瘍免疫応答を増強するための、毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドを含むDNAワクチン。
【請求項13】
毒素またはプロドラッグ変換酵素が、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである請求項12に記載のDNAワクチン。
【請求項14】
毒素またはプロドラッグ変換酵素がチトクロームP450である請求項13に記載のDNAワクチン。
【請求項15】
チトクロームP450が、ヒトCYP1A2、ヒトCYP2E1、ヒトCYP3A4、齧歯類CYP1A2、齧歯類CYP2E1および齧歯類CYP3A4からなるリストから選択される請求項14に記載のDNAワクチン。
【請求項16】
抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用するための、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドと、免疫賦活分子をコードするポリヌクレオチドとを含む産物。
【請求項17】
抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用するための、チトクロームP450をコードするポリヌクレオチドと、免疫賦活分子をコードするポリヌクレオチドとを含む産物。
【請求項18】
免疫賦活分子が、GM−CSF、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、B7−2、TNFα、γ−IFN、MCP−1、MIP−2、RANTES、TGF−β、CD154、CD134リガンド、MHCクラスI、MHCクラスII、CD135リガンドおよびTRAILからなるリストから選択される請求項16または17に記載の産物。
【請求項19】
免疫応答を増強する際に使用するための、
a)毒素またはプロドラッグ変換酵素と
b)ストレス応答タンパク質と
をコードし、これらの発現を可能にするベクター。
【請求項20】
免疫応答が抗腫瘍応答である請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
ストレス応答タンパク質がヒートショックタンパク質である請求項19または20に記載のベクター。
【請求項22】
ヒートショックタンパク質が、Hsp70、Hsp90、Hsp110、カルレチクリン、gp96、grp170、Hsp27、Hsc70、マイコバクテリウムHsp65、レジオネラ・ニューモフィラHsp60、大腸菌GroELおよびGroESからなるリストから選択される請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
ヒートショックタンパク質がhsp70である請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
毒素またはプロドラッグ変換酵素が、プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼである請求項19〜23のいずれかに記載のベクター。
【請求項25】
毒素またはプロドラッグ変換酵素がチトクロームP450である請求項19〜23のいずれかに記載のベクター。
【請求項26】
チトクロームP450が、ヒトCYP1A2、ヒトCYP2E1、ヒトCYP3A4、齧歯類CYP1A2、齧歯類CYP2E1および齧歯類CYP3A4からなるリストから選択される請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
一方で毒素またはプロドラッグ変換酵素を、他方でストレス応答タンパク質またはストレスタンパク質のインデューサーをコードするポリヌクレオチドの一方または両方が、腫瘍選択性発現を提供する1つ以上のプロモーターに機能的に結合している請求項19〜26のいずれかに記載のベクター。
【請求項28】
プロモーターが、1つ以上のTCF応答要素を含む請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
ベクターがウイルスベクターである請求項19〜29のいずれかに記載のベクター。
【請求項30】
ベクターがアデノウイルスベクターである請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
ベクターがレトロウイルスベクターである請求項29に記載のベクター。
【請求項32】
ベクターがレンチウイルスベクターである請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
抗腫瘍免疫応答を増強する際に使用するための、
a)プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼと
b)hsp70と
をコードし、これらの発現を可能にするアデノウイルスベクター。
【請求項34】
請求項19〜33のいずれかに記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項35】
請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の産物、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項34に記載の宿主細胞を含むワクチン。
【請求項36】
医薬品として使用するための、請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の産物、請求項10〜15のいずれかに記載のDNAワクチン、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項37】
ワクチンとして使用するための、請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の産物、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項38】
請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の組成物、請求項10〜15のいずれかに記載のDNAワクチン、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項34に記載の宿主細胞と、製薬学的に許容可能な希釈剤、緩衝剤、アジュバントまたは賦形剤とを含む製薬学的組成物。
【請求項39】
癌を治療するための医薬品を製造するための、請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の産物、請求項10〜15のいずれかに記載のDNAワクチン、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項34に記載の宿主細胞の使用。
【請求項40】
癌を治療するためのワクチンを製造するための、請求項1〜10もしくは16〜18のいずれかに記載の産物、請求項10〜15のいずれかに記載のDNAワクチン、請求項19〜33のいずれかに記載のベクターまたは請求項23に記載の宿主細胞の使用。
【請求項41】
毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質またはヒートショックタンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチドとを含む治療量の産物を投与するステップを含む、免疫応答を増強する方法。
【請求項42】
免疫応答が抗腫瘍免疫応答である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
毒素またはプロドラッグ変換酵素をコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質またはヒートショックタンパク質発現インデューサーをコードするポリヌクレオチドとを含む治療量の産物を投与するステップを含む、ある形態の癌に罹患している患者を治療する方法。
【請求項44】
a)プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む治療量の産物を投与するステップと、
b)産物が腫瘍細胞に進入し、コードされているニトロレダクターゼおよびヒートショックタンパク質が発現される時間をおくステップと、
c)治療量のCB1954を投与するステップと
を含む、請求項41〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
a)チトクロームP450をコードするポリヌクレオチドとヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む治療量の産物を投与するステップと、
b)産物が腫瘍細胞に進入し、コードされているチトクロームP450およびヒートショックタンパク質が発現される時間をおくステップと、
c)治療量のプロドラッグを投与するステップと
を含む、請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
プロドラッグがアセトアミノフェンである請求項43に記載の方法。
【請求項47】
ヒートショックタンパク質がHsp70である請求項40〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
治療的な抗腫瘍免疫応答が誘導されるように、ヒートショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物と治療量の抗癌細胞傷害薬とを投与するステップを含む、ある形態の癌に罹患している患者を治療する方法。
【請求項49】
a)プロドラッグCB1954を活性化することができるニトロレダクターゼをコードするポリヌクレオチドを含む治療量の産物を投与するステップと、
b)組成物が腫瘍細胞に進入して、コードされているニトロレダクターゼが発現される時間をおくステップと、
c)治療量のCB1954を投与するステップと
を含む抗腫瘍免疫応答を誘発する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B−C】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2006−502726(P2006−502726A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544436(P2004−544436)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004388
【国際公開番号】WO2004/035769
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(502023251)エムエル・ラボラトリーズ・パブリック・リミテッド・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】