説明

改善された効率を有する倒置型OLED装置

基板、前記基板上に配置されるカソード、前記カソードから間隔を置いて配置されるアノード、前記アノードと前記カソードとの間に配置される少なくとも1つの発光層、前記アノードと前記発光層との間に配置される正孔輸送層、前記カソードと前記発光層との間に配置される電子輸送層、前記正孔輸送層と前記アノードとの間に配置されると共に、第1の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第1の電子不足有機物質を含む第1の電子受容層、及び前記電子輸送層と前記カソードとの間に配置されると共に、第2の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第2の電子不足有機物質を含む第2の電子受容層を含む倒置型OLED装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED装置に関し、特に、倒置型(inverted)OLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード装置は、OLEDとも称され、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に挟まれた有機エレクトロルミネッセンス(EL)ユニットを一般に含む。有機ELユニットは、少なくとも1つの正孔輸送層(HLT)、発光層(LEL)、及び電子輸送層(ETL)を含む。OLEDは、低駆動電圧、高輝度、広視野角、並びにフルカラーディスプレイ及び他の用途の可能性の観点から魅力的である。タン(Tang)らは、米国特許第4,769,292号及び同第4,885,211号において多層OLEDを記載している。
【0003】
OLED装置は、OLEDが構成される基板又は支持材(support)と接して配置される正極又はアノードを用いてしばしば構成される。これは、名目上の又は倒置されていないOLED構造として知られている。低消費電力ディスプレイは、薄膜トランジスタ(a−Si又はLTPSから作製されるTFT)がOLEDに電流を与える(drive)アクティブマトリックス背面板を典型的に使用する。この場合、OLED積層体はTFTのソースにあり、従ってOLED画素のアノードは、駆動TFTのソースに直接接続される。この製造方法は非常に簡易であるが、回路は、OLED材料の特性に依存するようになる。OLED電圧の経時挙動(aging behavior)による変化は、ゲートとソースとの間の電圧(Vgs)、及び駆動TFTとOLED画素とを流れる電流(Ids)の両方に影響を与えるであろう。或いは、OLED積層体が駆動TFTのドレインにあり得るなら、OLED特性の変化は、電流(Ids)のみに影響を与え、ゲートとソースとの間の電圧(Vgs)に影響を与えない。しかし、これは、駆動TFTのドレインにOLEDカソードを接続するために、OLEDのカソードが最初に堆積される倒置型OLED構造を要求する。しかしながら、倒置型OLED構造において、有機層の堆積は逆にしなければならない。倒置型OLED構造の例は、当該技術分野において公知である。ブロホヴィツ(Blochwitz)らは、米国特許出願第2006/0033115号において、また、スピンドラー(Spindler)らは、国際情報ディスプレイ学会の第26回国際ディスプレイ研究会議(the 26th International Display Research Conference)、カリフォルニア州サンノゼ(2006年)の会議記録51〜54頁において、倒置型OLED構造のいくつかの例を記載する。しかしながら、これらの装置は、アノード及びカソード界面のそれぞれにおけるホール及び電子の弱い又は不十分な注入のために十分に実施されない。特に、時間の経過による電圧の上昇は、倒置型構造において非常に大きくなり得る。これは、所望の発光を達成する上での困難性をもたらす。
【0004】
米国特許第6,436,559号(上野ら)は、標準構造OLED装置(すなわち、アノードが基板に隣接した装置)における特定の電子不足有機物質の使用を開示する。好ましい実施形態及び実施例では、カソードに隣接した層において電子不足物質を使用する。
【0005】
米国特許第6,720,573号(ソンら)は、標準構造OLED装置における特定の電子不足有機物質の使用を開示する。この場合、前記物質は、アノードに隣接した層において使用される。
【0006】
上野ら及びソンらはいずれも、かかる層を有しない装置に比べて、改善された寿命及び低い初期作動電圧を主張する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、倒置型構造(すなわち、カソードが基板に隣接した構造)において電子不足有機物質を使用する2つの電子受容層の組み合わせを必要とする。1つの電子受容層は、正孔輸送層とアノードとの間に与えられるのに対し、他の電子受容層は、電子輸送層とカソードとの間に与えられる。出願人は、この特徴の組み合わせが、装置の作動期間にわたって減電圧の予期しない利益を与えることを見出した。現在クレームされた発明については、上野ら又はソンらの単独又は組み合わせによっても教示も示唆もされていない。クレームされた組み合わせが、時間の経過に伴う電圧の上昇を減少するという予期しない結果を与えるために必要であることを認識した特許はない。
【0008】
従って、本発明の目的は、時間の経過に伴う駆動電圧の上昇を減少することを示す倒置型OLED装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、
a.基板、
b.前記基板上に配置されるカソード、
c.前記カソードから間隔を置いて配置されるアノード、
d.前記アノードと前記カソードとの間に配置される少なくとも1つの発光層、
e.前記アノードと前記発光層(複数可)との間に配置される正孔輸送層、
f.前記カソードと前記発光層(複数可)との間に配置される電子輸送層、
g.前記正孔輸送層と前記アノードとの間に配置されると共に、第1の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第1の電子不足有機物質を含む第1の電子受容層、及び
h.前記電子輸送層と前記カソードとの間に配置されると共に、第2の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第2の電子不足有機物質を含む第2の電子受容層
を含む倒置型OLED装置によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の利益は、倒置型OLED装置において、経時に伴う駆動電圧の上昇を低減することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の倒置型OLED装置の断面図を示す。
【図2】本発明による1つの実施形態の倒置型OLED装置の断面図を示す。
【図3】本発明による他の実施形態の倒置型OLED装置の断面図を示す。
【図4】本発明による1つの実施形態の倒置型OLED装置の製造方法のブロック図を示す。
【図5】非発明例と比較した本発明の倒置型OLED装置の電流密度と駆動電圧との比較を示す。
【図6】非発明例と比較した本発明の倒置型OLED装置の効率と電流密度との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図1を見ると、従来の倒置型OLED装置の断面図が示されている。倒置型OLED装置10は、基板20の上方に配置されるカソード30と、カソード30から間隔を置いて配置されるアノード90とを含む。少なくとも1つの発光層は、アノード90とカソード30との間に配置される。この特定の実施形態において、青色発光層50b及び黄色発光層50yは、発光層を含む。しかしながら、多くの異なる発光層又は発光層の組み合わせが、本明細書中の非発明例及び発明例の両方で使用され得る。倒置型OLED装置10は、アノード90と発光層(複数可)との間に配置され、且つ少なくとも1つの発光層(例えば、黄色発光層50y)と接触する正孔輸送層55をさらに含む。倒置型OLED装置10は、カソード30と発光層(複数可)との間に配置され、且つ少なくとも1つの発光層(例えば、青色発光層50b)と接触する電子輸送層40をさらに含む。倒置型OLED装置10は、正孔輸送層55とアノード90との間に配置され、且つ正孔の注入を容易にする電子不足物質を含む正孔注入層60をさらに含む。アノード90は、正孔注入層60と接触している。
【0013】
次に図2を見ると、本発明による1つの実施形態の倒置型OLED装置の断面図が示されている。倒置型OLED装置15は、第1の電子不足有機物質を含む第1の電子受容層61が正孔注入層と置換されていることを除いて、上記の倒置型OLED装置10の構成要素を含む。倒置型OLED装置15は、電子輸送層40とカソード30との間に配置された第2の電子受容層35をさらに含む。カソード30は、第2の電子不足有機物質を含有する第2の電子受容層35と接触している。これらの構成要素について、より詳細に説明されるであろう。
【0014】
本発明の第1及び第2の電子受容層は、電子受容特性、及び飽和カロメル電極(SCE)を基準として−0.5V超過の還元電位をそれぞれ有する1つ以上の電子不足有機物質を含み、この1つ以上の電子不足有機物質は、中間接続層(intermediate connector)において50体積%超過を与える。第1及び第2の電子受容層の電子不足有機物質は、同一でも異なっていてもよい。製造の簡素化のためには、それらは同一であることが好ましい。同じ理由のため、電子受容層は、単一の電子不足有機物質を100体積%で使用することが好ましい。好ましくは、第1及び第2の電子受容層は、SCEを基準として−0.1V超過の還元電位を有する1つ以上の電子不足有機物質を含む。また、電子受容層は、効果的な光透過性を有することが好ましい。
【0015】
ボルトで表される用語「還元電位」は、電子に対する物質の親和力を評価し、正数が大きいほど親和力が大きい。水素ガスへのヒドロニウムイオンの還元は、標準条件下において0.00Vの還元電位を有するであろう。物質の還元電位は、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって便利に得ることができ、それはSCEを基準として測定される。物質の還元電位の測定は、以下の通りであり得る。モデルCHI660電気化学分析装置(CHインスツルメンツ社、テキサス州オースチン)を使用して電気化学的測定が行われる。CVとオスターヤング短形波ボルタンメトリー(SWV)との両方を使用して物質の酸化還元特性を明らかにすることができる。ガラス状炭素(GC)ディスク電極(A=0.071cm2)が作用電極として使用される。GC電極は、0.05μmのアルミナスラリーで研磨した後、脱イオン水中で2回超音波洗浄し、水洗浄の間はアセトンでリンスする。電極を最終的に清浄にし、使用前に電気化学処理によって活性化される。白金ワイヤを対電極として使用することができ、SCEを準基準電極(quasi-reference electrode)として使用して標準的な3電極電気化学的セルを完成させる。アセトニトリルとトルエンとの混合物(1:1MeCN/トルエン)又は塩化メチレン(MeCl2)を有機溶媒系として使用することができる。使用される全ての溶媒は、極低水グレード(<10ppmの水)である。支持電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)は、イソプロパノールで2回再結晶させ、真空下で3日間乾燥させる。フェロセン(Fc)は、内標準(0.1MのTBAF、1:1MeCN/トルエン中でSCEを基準としてEredFc=0.50V、MeCl2中でSCEを基準としてEredFc=0.55V)として使用することができる。試験溶液は、高純度窒素ガスで約15分間パージして酸素を除去し、実験中は溶液の上部で窒素ブランケットを維持する。全ての測定は、25±1℃の周囲温度で行われる。興味のある化合物が不十分な溶解性を有するなら、当業者は他の溶媒を選択して使用することができる。或いは、適切な溶媒系が確認できないなら、電子受容物質を電極上に堆積し、修飾電極の還元電位を測定することができる。
【0016】
電子受容層に使用するのに適した電子不足有機物質は、還元電位がSCEを基準として−0.5Vよりも正、好ましくは−0.1Vよりも正である限りは、少なくとも炭素及び水素を含有する単純化合物だけでなく、金属錯体(例えば、有機配位子及び有機金属化合物を有する遷移金属錯体)を含む。電子受容層用の有機物質は、小分子(蒸着によって堆積させることができる)、ポリマー、デンドリマー又は組み合わせを含み得る。電子受容層を形成するために使用され得る、SCEを基準として−0.5V超過の還元電位を有する有機物質のいくつかの例としては、ヘキサアザトリフェニレン及びテトラシアノキノジメタンの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
電子受容層に使用される有機物質は、式Iの化合物であり得る。
【0018】
【化1】

【0019】
式中、R1〜R6は、水素、又はハロ、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO2)、スルホニル(−SO2R)、スルホキシド(−SOR)、トリフルオロメチル(−CF3)、エステル(−CO−OR)、アミド(−CO−NHR又は−CO−NRR’)、置換若しくは無置換のアリール、置換若しくは無置換のヘテロアリール、及び置換若しくは無置換のアルキルを含む群から独立して選択される置換基を表す。ここで、R及びR’は、置換若しくは無置換のアルキル若しくはアリールを含み、又はR1及びR2、R3及びR4、若しくはR5及びR6は結合して芳香環、芳香族複素環若しくは非芳香環(nonaromatic ring)を形成し、各環は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0020】
その定義に含まれる物質としては、小分子、デンドリマー及びポリマーが挙げられる。ポリマーの場合、例えば、ヘキサアザトリフェニレン単位が、ポリマー骨格に結合したペンダント基又はポリマー骨格の一部であり得る。クザルニク(Czarnik)らは、米国特許第4,780,536号において、その化合物の調製について開示した。
【0021】
特に、電子受容層で使用される有機物質は、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンとしても知られる式Iaの化合物:
【0022】
【化2】

【0023】
又は式Ibの化合物:
【0024】
【化3】

【0025】
又は式Icの化合物:
【0026】
【化4】

【0027】
又は式Idの化合物:
【0028】
【化5】

【0029】
又は式Ieの化合物:
【0030】
【化6】

【0031】
であり得る。
【0032】
また、電子受容層において使用される有機物質は、式IIの化合物でもあり得る。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、R1〜R4は、水素、又はニトリル(−CN)、ニトロ(−NO2)、スルホニル(−SO2R)、スルホキシド(−SOR)、トリフルオロメチル(−CF3)、エステル(−CO−OR)、アミド(−CO−NHR又は−CO−NRR’)、置換若しくは無置換のアリール、置換若しくは無置換のヘテロアリール、及び置換若しくは無置換のアルキルを含む群から独立して選択される置換基を表す。ここで、R及びR’は、置換若しくは無置換のアルキル若しくはアリールを含み、又はR1及びR2、R3及びR4は結合して芳香環、芳香族複素環若しくは非芳香環(nonaromatic ring)を形成し、各環は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0035】
その定義に含まれる物質としては、小分子、デンドリマー及びポリマーが挙げられる。ポリマーの場合、例えば、テトラシアノキノリン単位が、ポリマー骨格に結合したペンダント基又はポリマー骨格の一部であり得る。アッカー(Acker)らは、米国特許第3,115,506号において、その化合物の調製について開示した。
【0036】
特に、電子受容層において使用される有機物質は、式IIaの化合物:
【0037】
【化8】

【0038】
又は式IIbの化合物:
【0039】
【化9】

【0040】
であり得る。
【0041】
電子受容層の有用な厚さは、典型的に3〜100nmである。
【0042】
OLED装置は、支持基板、例えば、OLED基板20上に一般に形成される。基板と接する電極は、便宜上、下部電極と呼ばれる。本明細書中に記載される倒置型構造において、下部電極はカソードである。基板は、発光の意図する方向に応じ、光透過性であっても不透明であってもよい。光透過特性は、基板を通してEL発光を見るのに好ましい。透明なガラス又はプラスチックは、このような場合に一般に使用される。EL発光が上部電極を通して見られる応用に関しては、下部支持体の透過特性は重要ではないため、光透過性、光吸収性又は光反射性であり得る。この場合において使用される基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス、及び回路基板材料が挙げられるが、これらに限定されない。もちろん、これらの装置構成においては、光透過性上部電極を与える必要がある。
【0043】
カソード30は、基板20の上方に形成される。装置が底面発光(ボトムエミッション)であるなら、電極は、透明又はほぼ透明でなければならない。かかる応用に関して、金属は、薄く(好ましくは25nm未満)なければならないか、又は透明な導電性酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物)若しくはこれらの物質の組み合わせを使用しなければならない。任意に透明なカソードは、米国特許第5,776,623号に、より詳細に記載されている。装置が表面発光(トップエミッション)であるなら、カソードは、アルミニウム、モリブデン、金、イリジウム、銀、マグネシウム、上記の透明な導電性酸化物、又はこれらの組み合わせなどの金属を含む、OLED装置に有用であると知られている任意の導電性物質であり得る。所望の物質は、低電圧で電子注入を促進し、効果的な安定性を有する。有用なカソード物質は、低仕事関数金属(<4.0eV)又は金属合金をしばしば含有する。蒸発、スパッタリング又は化学気相蒸着によってカソード物質を堆積させることができる。必要なら、多くの公知の方法(米国特許第5,276,380号及び欧州特許第0732868号に記載されているようなスルーマスク堆積(through-mask deposition)、集積シャドーマスク(integral shadow masking)、レーザーアブレーション、及び選択化学気相蒸着が挙げられるが、これらに限定されない)を通じてパターニングが達成され得る。
【0044】
アノード90は、他のOLED層の上方に形成される。EL発光がアノードを通して見られる場合、重要な発光のために、アノードは透明又は実質的に透明でなければならない。本発明で使用される一般的な透明アノード物質は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)及び酸化スズであるが、他の金属酸化物(アルミニウム又はインジウムドープ酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物及びニッケルタングステン酸化物が挙げられるが、これらに限定されない)が有効であり得る。これらの酸化物に加えて、窒化ガリウムなどの金属窒化物、セレン化亜鉛などの金属セレン化物、硫化亜鉛などの金属硫化物が、アノードとして使用され得る。EL発光がカソード電極を通してのみ見られる応用に関しては、アノードの透過特性は重要ではなく、透明、不透明又は反射性(reflective)であるかに関らず、多くの導電性物質が使用され得る。本発明のための導電性物質(conductor)の例としては、金、銀、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられるが、これらに限定されない。透過性又は他の場合の典型的なアノード物質は、4.0eVよりも大きな仕事関数を有する。所望のアノード物質は、蒸発、スパッタリング、化学気相蒸着、又は電気化学析出などの任意の適切な方法によって堆積され得る。必要なら、アノード物質は、公知のフォトリソグラフィープロセスを用いてパターン化され得る。
【0045】
倒置型OLED装置15が底面発光装置である1つの有用な実施形態において、カソード30は、インジウムスズ酸化物を含み、アノード90はアルミニウムを含む。倒置型OLED装置15が表面発光装置である他の有用な実施形態において、カソード30はアルミニウムを含み、アノード90はインジウムスズ酸化物を含む。
【0046】
正孔輸送層55は、OLED装置に有用な任意の正孔輸送物質を含むことができ、その多くの例は当業者に公知である。所望の正孔輸送物質は、蒸発、スパッタリング、化学気相蒸着、電気化学プロセス、ドナー物質からの熱転写(thermal transfer)又はレーザー熱転写などの任意の適切な方法によって堆積され得る。正孔輸送層に有用な正孔輸送物質は、芳香族第3級アミンなどの化合物を含むことが公知であり、芳香族第3級アミンは、炭素原子のみに結合した少なくとも1つの3価窒素原子を含有し、その少なくとも1つは芳香環の一部である化合物であると理解される。1つの形態において、芳香族第3級アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、又はポリマーアリールアミン(polymeric arylamine)などのアリールアミンであり得る。典型的なモノマートリアリールアミン(monomeric triarylamine)は、米国特許第3,180,730号においてクルプフェル(Klupfel)らによって説明されている。1つ以上のビニル基で置換された、又は少なくとも1つの活性水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、米国特許第3,567,450号及び同第3,658,520号においてブラントレイ(Brantley)らによって開示されている。
【0047】
芳香族第3級アミンのより好ましい類は、米国特許第4,720,432号及び同第5,061,569号に記載されているような、少なくとも2つの芳香族第3級アミン部分を含むものである。かかる化合物としては、化学構造式Aによって表されるものが挙げられる。
【0048】
【化10】

【0049】
式中、Q1及びQ2は、独立して選択された芳香族第3級アミン部分であり、Gは、炭素−炭素結合のアリーレン、シクロアルキレン又はアルキレン基などの結合基である。
かかる芳香族第3級アミンの1つの類は、テトラアリールジアミンである。所望のテトラアリールジアミンは、アリーレン基を介して結合した2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンとしては、式Bによって表されるものが挙げられる。
【0050】
【化11】

【0051】
式中、各Areは、フェニレン又はアントラセン部分などの、独立して選択されたアリーレン基であり、nは1〜4の整数であり、Ar、R7、R8及びR9は、独立して選択されたアリール基である。
上記の化学構造式L及びMの様々なアルキル、アルキレン、アリール及びアリーレン部分は、それぞれ順に置換され得る。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、並びにフッ化物、塩化物及び臭化物などのハロゲンが挙げられる。様々なアルキル及びアルキレン部分は、1〜約6個の炭素原子を典型的に含有する。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含有し得るが、5個、6個又は7個の炭素原子(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル環構造)を典型的に含有する。アリール及びアリーレン部分は、通常、フェニル及びフェニレン部分である。有用には、正孔輸送ホスト物質は、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジンであり、式BのAreがフェニレン基を表し、nが2であるものである。
【0052】
正孔輸送層55は、複数の層及び正孔輸送物質を含み得る。かかる層の1つ以上は、F4−TCNQなどのp型ドーパントを任意に含み得る。
【0053】
電子輸送層40は、OLED装置に有用な任意の電子輸送物質を含むことができ、その多くの例は当業者に公知である。電子輸送層40は、オキシン自体(8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも一般に称される)のキレートを含む、1つ以上の金属キレートオキシノイド化合物を含有し得る。かかる化合物は、電子の注入及び輸送を促し、高水準の性能を示し、薄膜の形状に容易に製造される。典型的な意図するオキシノイド化合物は、構造式Cを満足するものである。
【0054】
【化12】

【0055】
式中、Mは金属を表し、nは1〜3の整数であり、それぞれ存在するZは、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核(nucleus)を完成する原子を独立して表す。
【0056】
上記から、金属は、1価、2価又は3価の金属であり得ることが明らかである。金属は、例えば、リチウム、ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム若しくはカルシウムなどのアルカリ土類金属;又はホウ素若しくはアルミニウムなどの土類金属であり得る。一般に、有用なキレート金属(chelating metal)であると知られている任意の1価、2価又は3価の金属が使用され得る。
【0057】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香環を含有する複素環を完成し、その少なくとも1つはアゾール又はアジン環である。もし必要なら、脂肪族環及び芳香環の両方を含む追加の環が、2つの要求される環と縮合され得る。機能を改善することなしの分子バルク(molecular bulk)の増加を避けるために、環原子の数は、通常18以下に保持される。
【0058】
有用なキレートオキシノイド化合物の例は以下の通りである。
CO−1:アルミニウムトリソキシン[別名:トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]、
CO−2:マグネシウムビオキシン[別名:ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]、
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)、
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、
CO−5:インジウムトリソキシン[別名:トリス(8−キノリノラト)インジウム]、
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名:トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]、
CO−7:リチウムオキシン[別名:(8−キノリノラト)リチウム(I)]、
CO−8:ガリウムオキシン[別名:トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]、及び
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名:テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0059】
他の電子輸送物質としては、米国特許第4,356,429号に開示されている様々なブタジエン誘導体や、米国特許第4,539,507号に記載されている様々な複素環式光学的光沢剤が挙げられる。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、フェナントロリン誘導体、及びいくつかのシロール誘導体もまた、有用な電子輸送物質である。電子輸送物質として有用であることが知られている置換1,10−フェナントロリン化合物は、特開2003−115387号、特開2004−311184号、特開2001−267080号、及び国際公開第2002/043449号に開示されている。
【0060】
電子輸送層40は、電子輸送物質の複数の層を含み得る。これらの層の1つ以上は、n型ドーパント(例えば、リチウム又はセシウムなどのアルカリ又はアルカリ金属)を含み得る。
【0061】
本明細書に示される実施形態は、2つの発光層:青色発光層50b及び黄色発光層50yを含む。しかしながら、本発明は、この構成に限定されない。多種多様の発光層が当該技術分野において公知であり、そして本発明で使用され得る。かかる発光層は、赤色発光層、黄色発光層、緑色発光層、青色発光層、又はこれらの組み合わせを含み得る。本明細書に記載されるような発光層は、電子−正孔再結合に応じて光を生じる。所望の有機発光物質は、蒸発、スパッタリング、化学気相蒸着、電気化学プロセス、又はドナー物質からの放射熱転写(radiation thermal transfer)などの任意の適切な方法によって堆積され得る。本発明の発光層は、1つ以上の発光ゲスト化合物をドープした1つ以上のホスト物質、又は発光がドーパントから主にもたらされるドーパントを含む。ドーパントは、特定のスペクトルを有する色彩光(color light)を生じ、且つ他の所望の特性を有するように選択される。ドーパントは、0.01〜15重量%でホスト物質中に典型的に塗装(coated)される。
【0062】
発光層は、アントラセンホスト、望ましくは9,10−ジアリールアントラセンを含むことができ、その特定の誘導体(式F)は、エレクトロルミネッセンスを支持し得る有用なホスト物質群を構成することが知られており、400nmより長い波長の発光(例えば、青色、緑色、黄色、橙色又は赤色)に特に適している。
【0063】
【化13】

【0064】
式中、R1、R2、R3及びR4は、各環における1つ以上の置換基を表し、各置換基は下記の群からそれぞれ選択される。
第1群:水素、又は1〜24個の炭素原子を有するアルキル
第2群:5〜20個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール
第3群:アントラセニル、ピレニル又はペリレニルの縮合芳香環を完成するのに必要な4〜24個の炭素原子
第4群:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル又は他の複素環系の縮合芳香族複素環を完成するのに必要な5〜24個の炭素原子を有するヘテロアリール又は置換ヘテロアリール
第5群:1〜24個の炭素原子を有するアルコキシルアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノ
第6群:フッ素又はシアノ
【0065】
特に有用なのは、R1及びR2、場合によってはR3が付加(additional)芳香環を表す化合物である。
【0066】
また、ホスト又は共同ホスト(co-host)物質として有用なのは、芳香族第3級アミン(例えば、上記の構造A及びB)などの特定の正孔輸送物質や、キレートオキシノイド化合物(例えば、上記の構造C)などの特定の電子輸送物質である。
【0067】
上記したホスト物質に加えて、発光層はまた、第1の発光物質として1つ以上のドーパントを含む。赤色発光ドーパントは、以下の構造Gのジインデノペリレン化合物を含み得る。
【0068】
【化14】

【0069】
式中、X1−X16は、水素、又は1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、5〜20個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール基、1つ以上の縮合芳香環又は環系(ring system)を完成する、4〜24個の炭素原子を含有する炭化水素基、又はハロゲンなどの置換基から独立して選択され、ただし、置換基は560nm〜640nmの最大発光を与えるように選択される。
【0070】
ハットワー(Hatwar)らは、特許第7,247,394号において、この種類の有用な赤色ドーパントの実例を示しており、その内容は参照することによって本明細書に援用される。
【0071】
いくつかの他の赤色ドーパントは、式Hによって表される染料のDCM類(DCM class)に属する。
【0072】
【化15】

【0073】
式中、Y1−Y5は、水素(hydro)、アルキル、置換アルキル、アリール、又は置換アリールから独立して選択される1つ以上の基を表し;Y1−Y5は、アクリル基を独立して含むか、又は一対で結合して(joined pairwise)1つ以上の縮合環を形成することができ;ただし、Y3及びY5は一緒になって縮合環を形成しない。リックス(Ricks)らは、米国特許第7,252,893号において、DCM類の特に有用なドーパントの構造を示しており、その内容は参照することによって本明細書に援用される。
【0074】
黄色発光ドーパントは、以下の構造の化合物を含み得る。
【0075】
【化16】

【0076】
式中、A1−A6及びA’1−A’6は、各環における1つ以上の置換基を表し、各置換基は、以下の群の1つから個別に選択される。
第1群:水素、又は1〜24個の炭素原子を有するアルキル
第2群:5〜20個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール
第3群:縮合芳香環又は環系を完成する、4〜24個の炭素原子を含有する炭化水素
第4群:単結合を介して結合されるか、又は縮合芳香族複素環系を完成する、チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル又は他の複素環系などの5〜24個の炭素原子を有するヘテロアリール又は置換へテロアリール
第5群:1〜24個の炭素原子を有するアルコキシルアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノ
第6群:フルオロ又はシアノ
【0077】
リックス(Ricks)らは、特に有用な黄色ドーパントの例を示す。
【0078】
緑色発光ドーパントは、キナクリドン化合物、例えば、以下の構造の化合物を含み得る。
【0079】
【化17】

【0080】
式中、置換基R1及びR2は独立して、アルキル、アルコキシル、アリール又はヘテロアリールであり;置換基R3〜R12は独立して、水素、アルキル、アルコキシル、ハロゲン、アリール、又はヘテロアリールであり、隣接した置換基R3〜R10は任意に接続されて、縮合芳香環及び縮合芳香族複素環などの1つ以上の環系を形成することができ、ただし、置換基は510nm〜540nmの最大発光を与えるように選択される。アルキル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、縮合芳香環及び縮合芳香族複素環置換基は、さらに置換され得る。有用なキナクリドンのいくつかの例としては、米国特許第5,593,788号及び米国特許出願公開第2004/0001969A1に開示されているものが挙げられる。
【0081】
有用なキナクリドン緑色ドーパントの例としては、以下のものが挙げられる。
【0082】
【化18】

【0083】
また、緑色発光ドーパントは、以下の式によって表されるような2,6−ジアミノアントラセン発光ドーパントを含み得る。
【0084】
【化19】

【0085】
式中、d1、d3−d5及びd7−d10は同一でも異なっていてもよく、水素又は独立して選択された置換基をそれぞれ表し、各hは同一でも異なっていてもよく、独立して選択された1つ以上の置換基をそれぞれ表し、ただし、2つの置換基が結合して環基(ring group)を形成することができ、a−dは独立して0〜5である。
【0086】
青色発光ドーパントは、構造Lのビス(アジニル)アゼンボロン錯体化合物を含み得る。
【0087】
【化20】

【0088】
式中、A及びA’は、少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香環系に相当する独立したアジン環系を表し;(Xan及び(Xbmは、1つ以上の独立して選択された置換基を表し、且つアクリル置換基を含むか、又は結合してA又はA1と縮合した環を形成し;m及びnは独立して0〜4であり;Za及びZbは、独立して選択された置換基であり;1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’は、炭素又は窒素原子のいずれかとして独立的に選択され;ただし、Xa、Xb、Za及びZb、1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’は、青色発光を与えるように選択される。
【0089】
リックス(Ricks)らは、上記類のドーパントのいくつかの例を開示する。発光層におけるこの類のドーパントの濃度は、望ましくは0.1%〜5%である。
【0090】
他の類の青色ドーパントは、ペリレン類である。ペリレン類の特に有用な青色ドーパントは、ペリレン及びテトラ−t−ブチルペリレン(TBP)を含む。
【0091】
他の類の青色ドーパントとしては、米国特許第5,121,029号及び米国特許出願公開第2006/0093856号に記載された化合物を含む、ジスチリルベンゼン、スチリルビフェニル、及びジスチリルビフェニルなどのスチリルアレンやジスチリルアレンの青色発光誘導体が挙げられる。青色発光を与えるこれらの誘導体の中でも、第2の発光層52において特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたものであり、本明細書ではアミノスチリルアレンと称する。例としては、以下に示される一般構造M1のビス[2−[4−[N,N−ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]−ベンゼン:
【0092】
【化21】

【0093】
以下に示される一般構造M2の[N,N−ジアリールアミノ][2−[4−[N,N−ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]ビフェニル:
【0094】
【化22】

【0095】
及び以下に示される一般構造M3のビス[2−[4−[N,N−ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]ビフェニル:
【0096】
【化23】

が挙げられる。
【0097】
式M1〜M3において、X1−X4は同一でも異なっていてもよく、アルキル、アリール、縮合アリール、ハロ(halo)、又はシアノなどの1つ以上の置換基をそれぞれ表す。好ましい実施形態において、X1−X4はそれぞれ、1〜約10個の炭素原子をそれぞれ含有するアルキル基である。
【0098】
次に図3を見ると、本発明に従う他の実施形態の倒置型OLED装置の断面図が示されている。この実施形態は、図2の倒置型OLED装置15のものと類似している。しかしながら、カソードに関して、倒置型OLED装置18は、2つの層:カソード層31a及びカソード層31bを含む。この実施形態の有用な例は、カソード層31aがアルミニウム層であり、カソード層31bがアルミニウムの上方のインジウムスズ酸化物層であり、アノード90がインジウムスズ酸化物を含み、そして倒置型OLED装置18が表面発光装置であるものである。
【0099】
次に図4を見ると共に図2を参照すると、本発明に従う1つの実施形態の倒置型OLED装置の製造方法のブロック図が示されている。方法300の最初に、上記したような基板20が提供される(工程310)。次に、カソード30が公知の方法によって基板20上に形成される(工程320)。第2の電子受容層35がカソード30上に堆積される(工程330)。第2の電子受容層35は、電子の注入を阻害しない上記したような電子不足有機物質を含み、正孔注入層を堆積するための公知の方法によって堆積される。電子輸送層40が公知の方法によって第2の電子受容層35の上方に堆積される(工程340)。1つ以上の発光層(例えば、50b及び50a)が公知の方法によって電子輸送層40の上方に堆積される(工程350)。正孔輸送層55が公知の方法によって最後に堆積された発光層と接するように堆積される(工程360)。第1の電子受容層61が公知の方法によって正孔輸送層55の上方に堆積される(工程370)。第1の電子受容層61は、上記したような電子不足有機物質を含む。最後に、アノード90が公知の方法によって正孔注入層60と接するように形成される(工程380)。
【0100】
当該技術分野で教示されているような励起子、電子及び正孔ブロック層などの、工程340と工程370との間で与えられ得る追加の層が、本発明の装置で使用され得る。正孔ブロック層は、例えば、米国特許第20020015859号、国際公開第00/70655A2号、国際公開第01/93642A1号、米国特許第20030068528号及び米国特許第20030175553A1号において、リン光発光装置の効率を向上するために一般的に使用される。
【0101】
本発明は、例えば、米国特許第6,337,492号、米国特許第2003/0170491号、及び米国特許第6,717,358号で教示されているような、いわゆるタンデム式装置構造で使用され得る。かかるタンデム式装置は、アノードとカソードとの間に与えられる多数の発光ユニットを有し、通常、ユニット間に接続層(connector layer)をもち、電荷発生及び発光層への注入を促進する。
【0102】
上記した有機物質は、昇華などの気相法により適宜堆積されるが、流体、例えば、薄膜形成性を改善するための任意のバインダーと共に溶剤から堆積させてもよい。当該物質がポリマーである場合、溶媒による堆積が有用であるが、スパッタリング又はドナーシートからの熱転写などの他の方法を使用してもよい。昇華により堆積すべき物質は、例えば、米国特許第6,237,529号に記載されているように、タンタル物質から構成されることが多い昇華「ボード」から気化されるか、又はドナーシート上に最初に塗装し、次いで基板に近接させて昇華させてもよい。物質の混合物をもつ層は、個別の昇華ボートを利用することができ、又は当該物質を予め混合し、単一のボート若しくはドナーシートから、或いはフラッシュ蒸発により塗装してもよい。パターン化された堆積は、シャドーマスク、集積シャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間画定型感熱色素転写(米国特許第5,688,551号、同第5,851,709号及び同第6,066,357号)、及びインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を用いて達成され得る。
【0103】
ほとんどのOLED装置は、湿気若しくは酸素、又は両方に対して敏感であるため、窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気において一般に封止される。不活性環境中のOLEDの封止において、有機接着剤、金属半田又は低融点ガラスを用いて保護カバーが取り付けられ得る。一般に、ゲッター又は乾燥剤も封止空間内に与えられる。有用なゲッター及び乾燥剤としては、アルカリ及びアルカリ金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレイ、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩が挙げられる。封入法及び乾燥法としては、米国特許第6,226,890号に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当該技術分野では、封入用として、SiOx、テフロン(登録商標)及び無機/ポリマー交互層などのバリア層が知られている。
【0104】
本発明のOLED装置は、所望により、その特性を高めるために、公知の各種光学効果を利用することができる。これには、透光性を最大化するための層厚の最適化、誘電体ミラー構造の付与、反射性電極の吸光性電極への交換、ディスプレイ上への遮光(anti glare)又は反射防止コーティングの付与、ディスプレイ上への偏光媒体の付与、又はディスプレイの発光領域と機能的な関係にある着色、中性密度又は色変換フィルタの付与が含まれる。フィルタ、偏光板、及び遮光又は反射防止コーティングは、カバーの上方に、又はカバーの一部として与えられ得る。
【0105】
OLED装置は、微小空洞構造を有し得る。1つの有用な例において、電極の1つは本質的に不透明且つ反射性であり、他の1つは反射性且つ半透明である。反射性電極は、Au、Ag、Al又はこれらの合金から好ましくは選択される。光路長は、有機層の厚さを選択すること、又は電極間に透明な光学スペーサーを配置することにより変えることができる。
【実施例】
【0106】
本発明及びその利益が、以下の発明例及び比較例によって、より良く理解され得る。真空蒸着されると記載される層は、約10-6Torrの真空下で加熱ボートからの気化によって蒸着させた。OLED層の蒸着の後、カプセル化のために各装置をドライボックスに移した。OLEDは、10mm2の発光領域を有する。フェード安定性を80mA/cm2で試験したこと以外は、電極間に20mA/cm2の電流を適用することによって装置を試験した。実施例1〜3の結果を表1に示す。
【0107】
<実施例1(比較)>
比較の底面発光倒置型OLED装置が以下の方法によって製造された。この実施例は、HTLとアノードとの間に第1の電子受容層を使用し、カソードとETLとの間に第2の電子受容層を使用しなかった。
【0108】
1.きれいなガラス基板にインジウムスズ酸化物(ITO)をスパッタリングにより堆積させ、85nmの厚さの透明カソードを形成した。
2.共同ホストとして49%の4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソフェン又はBphenとしても知られている)及び49%のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)と、2%のLi金属を含む40nmの混合電子輸送層を真空蒸着した。
【0109】
3.上記で調製した基板を、92%の9−(2−ナフチル)−10−(ビフェニル−4−イル)アントラセン(NBA)ホスト及び7%の4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)共同ホストと、青色発光ドーパントとしての1%のテトラ−t−ブチルペリレン(TBP)とを含む20nmの青色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
4.上記で調製した基板を、68%のNPB(ホストとして)及び30%のNBA(共同ホストとして)と、2%の黄色−橙色発光ドーパントジフェニルテトラ−t−ブチルルブレン(PTBR)との20nmの黄色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
【0110】
【化24】

【0111】
5.上記で調製した基板を、正孔輸送層(HTL)として4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
6.上記で調製した基板を、第1の電子受容層としてヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(CHATP)の10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
【0112】
【化25】

【0113】
7.基板上に100nmのアルミニウム層を蒸発によって堆積させ、アノード層を形成した。
【0114】
<実施例2(本発明)>
本発明の底面発光倒置型OLED装置が以下の方法によって製造された。
1.きれいなガラス基板にITOをスパッタリングにより堆積させ、85nmの厚さの透明カソードを形成した。
2.第2の電子受容層としてCHATPの10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
3.共同ホストとして49%のBphen及び49%のALQと、2%のLi金属を含む40nmの混合電子輸送層を真空蒸着した。
4.上記で調製した基板を、92%のNBAホスト及び7%のNPB共同ホストと、青色発光ドーパントとしての1%のテトラ−t−ブチルペリレン(TBP)とを含む20nmの青色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
【0115】
5.上記で調製した基板を、68%のNPB(ホストとして)及び30%のNBA(共同ホストとして)と、2%のPTBRとの20nmの黄色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
6.上記で調製した基板を、正孔輸送層(HTL)としてNPBの10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
7.上記で調製した基板を、第1の電子受容層としてCHATPの10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
8.基板上に100nmのアルミニウム層を蒸発によって堆積させ、アノード層を形成した。
【0116】
<実施例3(本発明)>
工程1、3、6及び8を以下のようにしたこと以外は、実施例2で上記した通りにして本発明の表面発光倒置型OLED装置が製造された。
1.きれいなガラス基板に、蒸着ボートにおけるアルミニウム金属を気化することにより堆積させて100nmの厚さの層を形成し、この上方に10nmのITO層を堆積させて反射性カソードを形成した。
3.共同ホストとして49%のBphen及び49%のALQと、2%のLi金属を含む25nmの混合電子輸送層を真空蒸着した。
6.上記で調製した基板を、正孔輸送層(HTL)としてNPBの150nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
8.上記で調製した基板を、ITOをスパッタすることによってさらに処理し、50nmの透明アノード層を形成した。
【0117】
表1に示されるように、装置の寿命を上回る本発明例の電圧上昇は、比較例の装置よりも小さかった。
【0118】
【表1】

【0119】
次に図5を見ると、非発明例(実施例1)と比較した本発明の倒置型OLED装置(実施例2)の電流密度と駆動電圧との比較が示されている。本発明例は、所定の電流密度を生じさせるのに必要な駆動電圧が小さいことを示す。
【0120】
次に図6を見ると、非発明例(実施例1)と比較した本発明の倒置型OLED装置(実施例2)の効率と電流密度との比較が示されている。本発明例は、大きな電流密度で効率が大きいことを示す。
【0121】
従来(倒置型でない)の装置構造において、第1及び第2の電子受容層を用いることの有効性についての試験が行われた。以下の2つの実施例は、これを記載する。実施例4及び5からの結果は、表2に与えられ、実施例1〜3について上記したようにして得られた。
【0122】
<実施例4(比較)>
比較の底面発光従来型OLED装置が以下の方法によって製造された。
1.きれいなガラス基板にインジウムスズ酸化物(ITO)をスパッタリングにより堆積させ、85nmの厚さの透明アノードを形成した。
2.上記で調製した基板を、第1の電子受容層としてヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(CHATP)の10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
3.上記で調製した基板を、68%のNPB(ホストとして)及び30%のNBA(共同ホストとして)と、2%のPTBRとの20nmの黄色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
【0123】
4.上記で調製した基板を、92%のNBAホスト及び7%のNPB共同ホストと、青色発光ドーパントとしての1%のTBPとを含む20nmの青色発光層を真空蒸着することによってさらに処理した。
5.共同ホストとして49%のBphen及び49%のALQと、2%のLi金属を含む40nmの混合電子輸送層を真空蒸着した。
6.基板上に100nmのアルミニウム層を蒸発によって堆積させ、カソード層を形成した。
【0124】
<実施例5(比較)>
工程6及び7を以下のようにしたこと以外は、実施例4で上記した通りにして比較の底面発光従来型OLED装置が製造された。
6.上記で調製した基板を、第2の電子受容層としてCHATPの10nm層を真空蒸着することによってさらに処理した。
7.基板上に100nmのアルミニウム層を蒸発によって堆積させ、カソード層を形成した。
【0125】
表2に示されるように、装置の寿命を上回る実施例の電圧上昇は、第2の電子受容層の有無によって何ら変わらなかった。これは、第1の電子受容層と組み合わせられた第2の電子受容層が電圧上昇の著しく且つ予期しない改善(低減)を与えた本発明の倒置型構造例とは異なる
【0126】
【表2】

【符号の説明】
【0127】
10 倒置型LED装置
15 倒置型LED装置
18 倒置型LED装置
20 基板
30 カソード
31a カソード層
31b カソード層
35 第2の電子受容層
40 電子輸送層
50b 青色発光層
50y 黄色発光層
55 正孔輸送層
60 正孔注入層
61 第1の電子受容層
90 アノード
300 方法
310 工程
320 工程
330 工程
340 工程
350 工程
360 工程
370 工程
380 工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.基板、
b.前記基板上に配置されるカソード、
c.前記カソードから間隔を置いて配置されるアノード、
d.前記アノードと前記カソードとの間に配置される少なくとも1つの発光層、
e.前記アノードと前記発光層との間に配置される正孔輸送層、
f.前記カソードと前記発光層との間に配置される電子輸送層、
g.前記正孔輸送層と前記アノードとの間に配置されると共に、第1の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第1の電子不足有機物質を含む第1の電子受容層、及び
h.前記電子輸送層と前記カソードとの間に配置されると共に、第2の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第2の電子不足有機物質を含む第2の電子受容層
を含む倒置型OLED装置。
【請求項2】
前記第1又は第2の電子不足有機物質は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体である請求項1に記載の倒置型OLED装置。
【請求項3】
前記ヘキサアザトリフェニレン誘導体は、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンである請求項2に記載の倒置型OLED装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の電子不足有機物質の両方は、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンであり、且つ前記第1及び第2の電子受容層の全体積を実質的に構成する請求項2に記載の倒置型OLED装置。
【請求項5】
前記第1又は第2の電子不足有機物質の前記還元電位は、−0.1Vよりも大きい請求項1に記載の倒置型OLED装置。
【請求項6】
前記アノードはアルミニウムを含み、且つ前記カソードはインジウムスズ酸化物を含む請求項1に記載の倒置型OLED装置。
【請求項7】
前記アノードはインジウムスズ酸化物を含み、且つ前記カソードは、アルミニウム及び前記アルミニウムの上方のインジウムスズ酸化物の層を含む請求項1に記載の倒置型OLED装置。
【請求項8】
a.基板を提供すること、
b.前記基板上にカソードを形成すること、
c.第2の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第2の電子不足有機物質を含む第2の電子受容層を前記カソードの上方に堆積すること、
d.電荷移動バッファー層の上方に電子輸送層、前記電子輸送層の上方に1つ以上の発光層、及び最後に堆積された発光層の上方に正孔輸送層を順次堆積すること、
e.第1の電子受容層の50体積%超過を構成し、且つ飽和カロメル電極を基準として−0.5V超過の還元電位を有する第1の電子不足有機物質を含む第1の電子受容層を前記正孔輸送層の上方に堆積すること、及び
f.前記第1の電子受容層と接するアノードを形成すること
を含む倒置型OLED装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の電子不足有機物質の両方は、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンであり、且つ前記第1及び第2の電子受容層の全体積を実質的に構成する請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−501432(P2011−501432A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529924(P2010−529924)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/011700
【国際公開番号】WO2009/051684
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】1209 Orange Street, Wilmington, Delaware 19801, United States of America
【Fターム(参考)】