説明

改善された特異性を有するトランスグルタミナーゼ変異体

Streptoverticillium ladakanum(ストレプトベルチシリウム・ラダカヌム)由来のトランスグルタミナーゼの変異体で、ヒト成長ホルモンのGln-141に対する改善された選択性を有する変異体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Streptoverticillium ladakanum(ストレプトベルチシリウム・ラダカヌム)由来のトランスグルタミナーゼの新規変異体に関する。該変異体は、改善された選択性を有し、所定のグルタミン残基でのペプチドの部位特異的修飾に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
性質を適切に変化させる基をタンパク質にコンジュゲートさせることにより、ペプチドの性質及び特徴を改変することはよく知られている。特に治療用ペプチドにとって、ペプチドの半減期を延長する基を前記ペプチドにコンジュゲートさせることは望ましく、又は必要でさえある場合がある。典型的には、このようなコンジュゲート基は、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、又は脂肪酸である−J.Biol.Chem. 271, 21969-21977 (1996)を参照。
【0003】
これまで、トランスグルタミナーゼ(TGase)は、ペプチドの特性を変化させるために使用されている。食品産業、特にダイアリー産業において、多くの技術が、TGaseを使用した例えばペプチドの交差結合に利用されている。他の文献には、生理学的に活性なペプチドの特性を変えるためにTGaseを使用することが開示されている。欧州特許出願公開第950665号、欧州特許出願公開第785276号、及びSato, Adv. Drug Delivery Rev. 54, 487-504(2002)には、TGaseの存在下での少なくとも一のGlnを含有するペプチドとアミノ官能化PEG又は類似のリガンド間の直接反応が開示されており、Wada、Biotech. Lett. 23, 1367-1372(2001)には、TGaseによる脂肪酸とのβ-ラクトグロブリンの直接コンジュゲーションが開示されており、Valdivia, J. Biotechnol. 122, 326-333(2006)には、TGaseにより触媒されたカタラーゼの部位特異性グリコシド化が報告されている。国際公開第2005070468号には、TGaseを用いてグルタミン含有ペプチド中に官能基を導入して官能化ペプチドを形成し、次の工程において該官能化ペプチドを、該官能化タンパク質と反応可能なPEG等と反応させて、ペグ化ペプチドを形成することができることが開示されている。
【0004】
また、トランスグルタミナーゼ(E.C.2.3.2.13)は、タンパク質-グルタミン-γ-グルタミルトランスフェラーゼとして知られていて、一般反応:

[上式中、Q-C(O)-NHはグルタミン含有ペプチドを表すことができ、Q'-NHはそのとき上で検討した反応においてペプチドに導入される官能基を提供するアミン供与体を表す]
を触媒する。
【0005】
インビボにおける一般的なアミン供与体はペプチド結合リジンであり、そのとき上述の反応によりペプチドの交差結合が可能となる。凝固第XIII因子は、損傷時に血液凝固を生じさせるトランスグルタミナーゼである。例えば、Glnの回りのどのアミノ酸残基が、タンパク質が基質であるために必要であるかについて、様々なTGaseは互いに異なっており、すなわち、様々なTGaseは、どのアミノ酸残基がGln残基に隣接しているかに応じて、基質として異なったGln含有ペプチドを有しうる。この態様は、修飾されるペプチドが一を越えるGln残基を含む場合に利用できる。存在するGln残基のいくつかでのみペプチドを選択的にコンジュゲートさせることが所望される場合、この選択性は、基質として関連Gln残基(群)のみを受容するTGaseを選択することにより、得ることができる。
【0006】
ヒト成長ホルモン(hGH)は13のグルタミン残基を有しており、よって、hGHの任意のTGase媒介性コンジュゲーションは、低選択性により潜在的に妨害される。hGHの13のグルタミン(Gln)残基のうち、2つの(Q141及びQ40)グルタミンが、TGase触媒の存在下で反応性であることが以前に記載されている(国際公開第2006/134148号)。hGHのさらに特異的な官能化を媒介するTGaseを同定する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
Streptoverticillium ladakanum由来のmTGase(mTGaseなる用語は、それが単離された微生物により発現されるとしてTGaseを示すために使用される)(S. ladakanum由来のmTGaseはmTGase-SLと省略される)は、Streptomyces mobaraensis(ストレプトマイセス・モバレンス)のmTGaseの2倍の、さらに高い部位特異性(選択性とも呼ぶ)を有している。
【0008】
一実施態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対する位置の一又は複数で修飾されている、単離されたペプチドに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクトに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸を含んでなるベクターに関する。
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸を含んでなるベクターを含む宿主に関する。
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドを含有する組成物に関する。
一実施態様では、本発明は、hGHのコンジュゲート方法に関し、該方法は、本発明のペプチドの存在下でhGHをアミン供与体と反応させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、Streptomyces mobaraensis由来のmTGaseと、Streptoverticillium ladakanum由来のmTGaseの配列の配列アラインメントを示す。
【図2A】図2Aは、反応のブランクである:1,3-ジアミノプロパノールを用いた野生型hGH。mTGaseを添加せず。
【図2B】図2Bは、S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseである。反応時間=30分;選択性=5.7;転換率=32%。
【図2C】図2Cは、GlyPro-mTGase-SLである;反応時間=15分;選択性=10.31;hGH転換率=55%。
【図2D】図2Dは、GlyPro-mTGase_Y75A-SLである;反応時間=300分;選択性=17.33;hGH転換率=40%。
【図2E】図2Eは、GlyPro-mTGase_Y75F-SLである;反応時間=75分;選択性=20.94;hGH転換率=33%。
【図2F】図2Fは、GlyPro-mTGase_Y75N-SLである;反応時間=90分;選択性=15.66;hGH転換率=50%。
【図2G】図2Gは、GlyPro-mTGase_Y62H_Y75N-SLである;反応時間=75分;選択性=26.33;hGH転換率=38%。
【図2H】図2Hは、GlyPro-mTGase_Y62H_Y75F-SLである;反応時間=120分;選択性=36.21;hGH転換率=49.4%。
【図3】図3は、HPLCによるS. ladakanum由来TGaseで触媒されるhGH変異体の反応混合物の分析である。頂部:hGH-Q40N。第1のピーク(26.5分、面積1238)は生成物-Q141であり、第2のピーク(29.7分、面積(375)は残りのhGH-Q40Nである。底部:hGH-Q141N。第1のピーク(19.2分、面積127)は生成物-Q40であり、第2のピーク(30.3分、面積1158)は残りのhGH-Q141Nである。
【図4】図4は、HPLCによるS. mobarenseのTGaseで触媒されるhGH変異体の反応混合物の分析である。頂部:hGH-Q40N。第1のピーク(26.9分、面積1283)は生成物-Q141であり、第2のピーク(30.1分、面積519)は残存するhGH-Q40Nである。底部:hGH-Q141N。第1のピーク(19.5分、面積296)は生成物-Q40であり、第2のピーク(30.6分、面積1291)は残存するhGH-Q141Nである。
【図5】図5は、表5のアミノ基転移混合物3及び4のCIE HPLCである。ピーク1=hGH、ピーク2=40位でアミノ基転移、ピーク3=141位でアミノ基転移、及びピーク4=40/141位でアミノ基転移。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、TGase活性を有するペプチドを提供するものであり、該ペプチドは、hGH中のGln40に対してhGH中のGln141に対して改善された選択性を有し、より詳細には、本発明は、hGHのGln-40と比較して、hGHのGln-141に対する特異性を有し、これがhGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対し、配列番号:1に示すようなアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高いトランスグルタミナーゼペプチドに関する。
【0011】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、ペプチド結合により連結した、少なくとも5の構成アミノ酸からなる化合物を意味すると理解されるべきである。構成アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるアミノ酸の群からのものであってよく、またそれらは遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸、並びに合成アミノ酸であってもよい。遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸は、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート、オルニチン、ホスホセリン、D-アラニン及びD-グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成により製造されたアミノ酸、すなわち遺伝暗号によりコードされるアミノ酸のD-異性体、例えばD-アラニン及びD-ロイシン、Aib(a-アミノイソ酪酸)、Abu(a-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸、及びアントラニル酸を含む。名詞としての「コンジュゲート」なる用語は、修飾されたペプチド、すなわち該ペプチドの特性を改変させる部分をそれに結合させたペプチドを表すことを意図している。動詞としては、該用語は、前記ペプチドの特性を改変する部分をペプチドに結合させる方法を表すことを意図している。
【0012】
本文脈において、「TGase活性を有するペプチド」又は「トランスグルタミナーゼ」又はその類似語は、グルタミン残基のγ-カルボキシアミド基と、アミン供与体として働く種々の第1級アミンとの間のアシル転移反応を触媒する能力を有するポリペプチドを意味することを意図している。
本文脈において、「アミノ基転移」、「グルタミン転移」、「トランスグルタミナーゼ反応」又はその類似語は、タンパク質/ペプチドからのグルタミン残基のγ-グルタミニルが、アンモニア分子が放出される水又はリジンのε-アミノ基又は第1級アミンに移動する反応を示すことを意図している。
【0013】
本文脈において、「特異性」及び「選択性」なる用語は、交換可能に使用され、hGHにおける他の特定のグルタミン残基と比較した、hGHにおける一又は複数の特定のグルタミン残基との反応についてのTGaseの優先性を記述するものである。この明細書における目的にとって、hGHにおけるGln141と比較した場合のGln-40に対する本発明のペプチドの特異性は、実施例に記載するようにしてペプチドを試験した結果に従い決定される。
【0014】
本発明のペプチドは、hGH等のペプチドをグルタミン転移させるためのトランスグルタミナーゼとして有用である。ペプチドのグルタミン転移は、例えば国際公開第2005/070468号及び国際公開第2006/134148号に記載されているように、前記ペプチドのコンジュゲートを調製するのに有用である。
【0015】
例としてhGHを使用してコンジュゲートペプチドを調製するための一方法は、hGHを官能基を有するアミン供与体と反応させて官能化hGHを得る第1の反応を含み、該第1の反応は、TGaseによって媒介(すなわち触媒)される。第2の反応工程において、前記官能化hGHは、該導入された官能基と反応するか又は反応可能な脂肪酸又はPEG等とさらに反応させられて、コンジュゲートされたhGHが得られる。第1の反応の概略を以下に記載する。

[上式中、Xは官能基又は潜在的官能基、すなわち、さらなる反応、例えば酸化又は加水分解時に官能基に転換される基を表す]
【0016】
微生物S. mobaraensisはまたStreptoverticillium mobaraense(ストレプトベルチシリウム・モバレンス)として分類されている。TGaseは生物から単離され得、このTGaseは比較的低分子量(〜38kDa)であることと、カルシウム非依存性であることで特徴付けられる。S. mobaraensis由来のTGaseは比較的よく記載されており;例えば、結晶構造は解析されている(米国特許第156956号; Appl. Microbiol. Biotech. 64, 447-454(2004))。
【0017】
上述の反応が、Streptomyces mobaraensis由来のTGaseにより媒介される場合、hGHとHN-X(アミン供与体)との反応が、主にGln-40及びGln-141で生じる。上述の反応は、例えばhGHのペグ化に使用され、延長された半減期を有する治療用成長ホルモン生成物が得られる。治療用組成物が単一化合物の組成物であることが一般的に所望されている場合、上で議論した特異性の欠落は、Gln-40官能化hGH、Gln-141官能化hGH、及び/又はGln-40/Gln-141二重官能化hGHが互いに分離されるさらなる精製工程を必要とする。
【0018】
ヒト成長ホルモンのコンジュゲーションにおけるトランスグルタミナーゼのかかる使用は、国際公開第2005/070468号、国際公開第2006/134148号、国際公開第2007/020291号及び国際公開第2007/020290号に広く記載されている。
S. ladakanumから単離されたTGaseの配列は、2つの配列に間に全部で22のアミノ酸差異があることを除けば、S. mobaraensis由来の配列と同一のアミノ酸配列を有する(Yi-Sin Linら, Process Biochemistry 39(5), 591-598(2004)。
【0019】
S. ladakanum由来のmTGaseの配列は、配列番号:1に与えられており、S. mobaraensis由来のmTGaseの配列は、配列番号:2に与えられている。
本発明のペプチドは、hGHのGln-40と比較してGln-141に対して特異性を有しており、該特異性は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドのhGHのGln-40と比較したGln-141に対する特異性よりも有意に高く、ここで特異性は、実施例に記載したようにして測定される。よって、本発明のペプチドは、hGHをグルタミン転移させる方法に使用され得、配列番号:2のアミノ酸配列を有するTGaseを使用する反応と比較して、Gln-40官能化hGH又はGln-141官能化hGHの生成を増加させる。
【0020】
よって、一実施態様では、本発明のトランスグルタミナーゼペプチドは、hGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドのhGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対する特異性よりも高い。一実施態様では、Gln-40と比較したGln-141に対する本発明のペプチドの特異性は、Gln-40と比較したGln-141に対する配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも、少なくとも1.25、例えば少なくとも1.50、例えば少なくとも1.75、例えば少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5、例えば少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5、例えば少なくとも7.0、例えば少なくとも7.5、例えば少なくとも8.0、例えば少なくとも8.5、例えば少なくとも9.0、例えば少なくとも9.5、例えば少なくとも10.0倍高い。
【0021】
一実施態様では、本発明のトランスグルタミナーゼペプチドは、hGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性は、Ala-ProのN末端付加の配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドと同じ特異性を有するので、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチド、又はAla-ProのN末端付加の配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドのhGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対する特異性よりも高い(実施例を参照)。一実施態様では、Gln-40と比較したGln-141に対する本発明のペプチドの特異性は、Gln-40と比較したGln-141に対する配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも、少なくとも1.25、例えば少なくとも1.50、例えば少なくとも1.75、例えば少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5、例えば少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5、例えば少なくとも7.0、例えば少なくとも7.5、例えば少なくとも8.0、例えば少なくとも8.5、例えば少なくとも9.0、例えば少なくとも9.5、例えば少なくとも10.0倍高い。
【0022】
一実施態様では、本発明のペプチドは、特定のアミノ酸残基における変異を有し、及び/又はさらにN末端付加されたアミノ酸残基を有する、S. ladakanum由来のmTGaseの配列をベースにした配列を含む。一実施態様では、本発明のペプチドは、さらにN末端付加されたアミノ酸配列を有する、S. mobaraensis由来のmTGaseの配列をベースにした配列を含む。
【0023】
本発明は、特にStreptoverticillium ladakanum由来のトランスグルタミナーゼの新規変異体に関する。変異体は、改善された選択性を有し、所定のグルタミン残基でペプチドを部位特異性修飾するために使用されうる。
本文脈において、「変異体」なる用語は、与えられたポリペプチドの自然に生じた変異体、又は与えられたペプチド又はタンパク質の組換え的に調製され又は他の方法で修飾された変異体を意味することを意図しており、ここで、一又は複数のアミノ酸残基は、アミノ酸の置換、付加、欠失、挿入、又は反転(invertion)により修飾されている。
【0024】
一実施態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有する単離されたペプチドを提供し、ここで、該配列は、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対する一又は複数の位置で修飾されている。
【0025】
当該分野で知られている「同一性」なる用語は、配列を比較することにより決定される、2又はそれ以上のペプチド配列間の関係を意味する。当該分野では、「同一性」とは、2又はそれ以上のアミノ酸残基の鎖間の適合数により決定される、ペプチド間の配列関連性の度合いを意味する。「同一性」は、特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により処理されるギャップアラインメント(もしあれば)を用いて、2又はそれ以上の配列の小さい方の同一適合性のパーセントを測定する。関連ペプチドの同一性は、既知の方法により容易に算出することができる。このような方法は、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M編, Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W編, Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M.,及びGriffin, H. G編, Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. 及びDevereux, J編, M. Stockton Press, New York, 1991;及びCarilloら, SIAM J. Applied Math., 48:1073 (1988)に記載されているものを含む。
【0026】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間に最も大きな適合性を与えるように設計される。同一性を決定するための方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法は、GAP(Devereuxら, Nucl. Acid. Res., 12:387(1984)を含むGCGプログラムパッケージ;Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschulら, J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))を含む。BLASTXプログラムは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他の供給源(BLAST Manual, Altschulら, NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894;Altschulら, 上掲)から公に入手可能である。よく知られているスミス・ウォーターマン・アルゴリズム(Smith Waterman algorithm)も、同一性を決定するために使用されうる。
【0027】
例えば、コンピュータアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)の使用では、パーセント配列同一性が決定される2つのペプチドを、それぞれのアミノ酸が最適に適合するように整列させられる(アルゴリズムにより決定される「適合スパン」)。ギャップ開裂ペナルティ(これは平均ダイアゴナルの3倍と算出される;「平均ダイアゴナル」は使用される比較マトリックスのダイアゴナルの平均である;「ダイアゴナル」とは、特定の比較マトリックスによるそれぞれの完全なアミノ酸適合に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(これは通常はギャップ開裂ペナルティの倍数{分率(1/10)}である)、並びに比較マトリックス、例えばPAM250又はBLOSUM62が、アルゴリズムに併せて使用される。標準的な比較マトリックス(PAM250比較マトリックス用には、Dayhoffら, Atlas of Protein Sequence and Structure, vol.5, supp.3(1978);BLOSUM62比較マトリックス用には、Henikoffら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89:10915-10919(1992)を参照)も、アルゴリズムにより使用される。
【0028】
ペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、次のものを含む:
アルゴリズム:Needlemanら, J. Mol. Biol, 48:443-453(1970);比較マトリックス:Henikoffら, PNAS. USA, 89:10915-10919(1992)のBLOSUM62;GAPペナルティ:12、GAP長ペナルティ:4、類似性閾値:0。
上述のパラメータでのGAPプログラムが有用である。上述のパラメータは、GAPアルゴリズムを使用するペプチド比較(末端ギャップに対するペナルティを伴わない)のための初期設定パラメータである。
【0029】
一実施態様では、本発明は、上述した単離ペプチドを提供するものであり、ここで該アミノ酸配列はTyr62に対応する位置で修飾されており、該修飾はTyrとは異なるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基を置換することからなる。一実施態様では、Tyr62に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基を置換することからなる。一実施態様では、Tyr62に対応する位置におけるTyrは、His、Met、Asn、Val、Thr、及びLeuから選択されるアミノ酸残基で置換される。
【0030】
一実施態様では、本発明は、上述した単離したペプチドを提供するものであり、ここで該アミノ酸配列はTyr75に対応する位置で修飾されており、修飾はTyrとは異なるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基を置換することからなる。一実施態様では、Tyr75に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基を置換することからなる。一実施態様では、Tyr75に対応する位置におけるTyrは、Ala、Phe、Asn、Met、又はCysで置換される。
【0031】
一実施態様では、本発明は、上述した単離したペプチドを提供するものであり、ここで該アミノ酸配列はSer250に対応する位置で修飾されており、修飾はSerとは異なるアミノ酸残基で、最初のセリン残基を置換することからなる。一実施態様では、Ser250に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Thr、Trp、Tyr及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基を置換することからなる。
【0032】
一実施態様では、本発明のペプチドは、N末端に、一又は複数、例えば1〜9、例えば1〜8、例えば1〜7、例えば1〜6、例えば1〜5、例えば1〜4、例えば1〜3、例えば1〜2、例えば1のアミノ酸が付加されることにより修飾される。一実施態様では、前記配列はMetをN末端に付加することにより修飾されている。
一実施態様では、本発明のペプチドは、N末端に、一又は複数、例えば2〜9、例えば2〜8、例えば2〜7、例えば2〜6、例えば2〜5、例えば2〜4、例えば2〜3、例えば2のアミノ酸が付加されることにより修飾される。一実施態様では、付加されるアミノ酸残基は、ジペプチド基Gly-Pro-である。一実施態様では、付加されるアミノ酸残基は、ジペプチド基Ala-Pro-である。
【0033】
本発明のペプチドは、米国特許第5156956号に記載されたアッセイで測定されるTGase活性を示す。簡単に記載すれば、与えられたペプチド活性の測定は、Ca2+の不在下、基質としてベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシン及びヒドロキシルアミンとを使用する反応を実施し、トリクロロ酢酸の存在下、得られたヒドロキサム酸を用いて鉄錯体を形成させ、525nmでの吸光度を測定し、検量線によりヒドロキサム酸の量を測定し、活性を算出することにより行われる。この明細書の目的では、前記アッセイにおいてトランスグルタミナーゼ活性を示すペプチドは、トランスグルタミナーゼ活性を有しているとみなされる。特に、本発明のペプチドは、配列番号:2のアミノ酸配列を有するS. ladakanum由来のTGaseより、30%以上、例えば50%以上、例えば70%以上、例えば90%以上の活性を示す。
【0034】
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクトを提供する。
ここで使用される場合、「核酸コンストラクト」なる用語は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はRNA起源の任意の核酸分子を示すことを意図している。「コンストラクト」なる用語は、一本鎖又は二本鎖であってよく、関心あるタンパク質をコードする、完全な又は部分的な自然に発生するヌクレオチド配列をベースにしてもよい核酸セグメントを示すことを意図している。コンストラクトは、場合によっては、他の核酸セグメントを含んでいてもよい。
本発明のペプチドをコードする本発明の核酸コンストラクトは、ゲノム又はcDNA由来のものが適しており、例えばゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、標準的な技術(例えば、J. Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor,New York)に従い、合成オリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションにより、タンパク質の全体又は一部をコードするDNA配列をスクリーニングし、当該分野で知られているようにして、変異を導入することにより得られる。
【0035】
また、タンパク質をコードする本発明の核酸コンストラクトは、確立された標準的な方法、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22, 1859-1869(1981)に記載されたホスホラミダイト法、又はMatthesら, EMBO Journal 3, 801-805(1984)により記載された方法により合成的に調製してもよい。ホスホラミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成器において合成され、精製され、アニーリングされ、ライゲーションされて、適切なベクターにクローニングされる。
【0036】
さらに、核酸コンストラクトは、標準的な技術に従い、合成、ゲノム又はcDNA由来(適切であるならば)のフラグメント、全核酸コンストラクトの種々の部位に相当するフラグメントをライゲーションすることにより調製される、混合された合成及びゲノム、混合された合成及びcDNA、又は混合されたゲノム及びcDNA由来のものであってもよい。
核酸コンストラクトは、例えば米国特許第4683202号、又はSaikiら, Science 239, 487-491(1988)に記載されたようにして、特定のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により調製されてもよい。
【0037】
一実施態様では、核酸コンストラクトはDNAコンストラクトである。
一実施態様では、本発明の核酸コンストラクトは核酸配列を含み、該核酸配列はプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、該プロテアーゼ基質アミノ酸配列は、核酸コンストラクトによりコードされるペプチドのN末端部として発現される。一実施態様では、本発明の核酸コンストラクトは核酸配列を含み、該核酸配列はプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、該プロテアーゼ基質アミノ酸配列は、該核酸コンストラクトによりコードされるペプチドのC末端部として発現される。
このようなプロテアーゼ及びプロテアーゼ基質アミノ酸配列は、当該分野でよく知られている。このような配列を担持するペプチドが、適切な環境下、適切なプロテアーゼで処理されるならば(プロテアーゼの選択に応じて)、プロテアーゼは、プロテアーゼとプロテアーゼ基質アミノ酸配列に応じた位置でペプチドを切断するであろう。よって、プロテアーゼ基質アミノ酸配列の実際のアミノ酸配列は、調製の設定と、もちろんプロテアーゼの選択に応じて異なるであろう。
【0038】
いくつかの場合、プロテアーゼ処理により、その場合に最初のペプチドへのN又はC末端付加として考えられるいくつかのアミノ酸が残り、最初のペプチドは、プロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードする核酸配列が付加される前の核酸によりコードされるものである。
【0039】
一実施態様では、前記プロテアーゼは3Cプロテアーゼである。一実施態様では、前記プロテアーゼは3Cプロテアーゼであり、プロテアーゼ基質アミノ酸配列は、適切な環境下で、3Cプロテアーゼにより切断され得る配列である。一実施態様では、前記3Cプロテアーゼ基質アミノ酸配列はLEVLFQGPである。さらなる実施態様では、3Cプロテアーゼ基質アミノ酸配列LEVLFQGPは、最初のペプチドのN末端に結合されており、3Cプロテアーゼでの処理により、Gly-Proジペプチドが最初のペプチドのN末端に結合して残る。
【0040】
一実施態様では、前記プロテアーゼはエンテロキナーゼである。一実施態様では、前記プロテアーゼはエンテロキナーゼであり、プロテアーゼ基質アミノ酸配列は、適切な環境下で、エンテロキナーゼにより切断され得る配列である。さらなる実施態様では、エンテロキナーゼ基質アミノ酸配列は、最初のペプチドのN末端に結合しており、エンテロキナーゼを用いた処理により、Ala-Proジペプチドが最初のペプチドのN末端に結合して残る。
これは、例えば、ある種のアミノ酸はN末端に付加されているmTGase-SL変異体の調製に利用される。
【0041】
一実施態様では、本発明は、本発明の核酸コンストラクトを含む組換えベクターを提供する。
一実施態様では、本発明は、本発明のベクターを含む宿主を提供する。
【0042】
本発明のDNAコンストラクトが挿入される組換えベクターは、簡便に組換えDNA手順にかけられうる任意のベクターであってよく、多くの場合、ベクターの選択は、それが導入される宿主細胞に依存する。例えば、ベクターは自己複製可能なベクター、すなわち染色体外実体として存在しており、その複製は染色体複製、例えばプラスミドとは独立しているベクターでありうる。また、ベクターは、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれる染色体(群)と共に複製されるものであってもよい。ベクターは好ましくは本発明のタンパク質をコードするDNA配列が、DNAの転写に必要な付加的なセグメントに作用可能に結合している発現ベクターである。「作用可能に結合する」なる用語は、セグメントが、意図する目的に合わせて機能するように、例えばプロモーターにおいて転写が開始し、タンパク質をコードするDNA配列を介して進行するように構成されることを示す。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であってよく、宿主細胞と同属又は異種のタンパク質をコードする遺伝子から誘導されたものであってもよい。また、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、必要であるならば、適切なターミネーター、例えばヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiterら, 前掲)又は(真菌宿主では)TPI1(Alber及びKawasaki, 前掲)又はADH3(McKnightら, 前掲)ターミネーターに作用可能に結合していてもよい。さらにベクターは、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40又はアデノウイルス5Elb領域からのもの)、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)、及び翻訳エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVA RNAをコードするもの)等のエレメントを含んでいてもよい。
【0043】
本発明の組換えベクターは、ベクターを当該宿主細胞で複製させうるDNA配列をさらに含んでいてもよい。
また、ベクターは、選択可能マーカー、例えば宿主細胞における欠失を補完する生成物の遺伝子、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子、又はSchizosaccharomyces pombe(シゾサッカロミセス・ポンベ)TPI遺伝子(P.R. Russell, Gene 40, 125-130(1985)に記載)、又は例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン、又はメトトレキサート等の薬剤に対する耐性を付与するものを含んでいてもよい。糸状菌用の選択可能マーカーには、amdS、pyrG、argB、niaD及びsCが含まれる。
【0044】
宿主細胞の分泌経路に本発明のタンパク質を方向付けるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても既知)が、組換えベクター内に提供されてもよい。分泌シグナル配列は正確なリーディングフレームでタンパク質をコードするDNA配列に結合している。分泌シグナル配列は、通常、タンパク質をコードするDNA配列の5'に位置している。分泌シグナル配列は、タンパク質に通常付随しているものでもよく、又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子からのものであってもよい。
【0045】
本タンパク質、プロモーター、場合によってはターミネーター、及び/又は分泌シグナルペプチドをそれぞれコードするDNA配列をライゲーションし、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを挿入するのに使用される手順は、当業者によく知られている(例えば、Sambrookら, 前掲を参照)。
本発明の組換えベクター又はDNAコンストラクトが導入される宿主細胞は、本タンパク質を生成可能な任意の細胞であってよく、細菌、酵母、真菌、及び高等真核細胞が含まれる。ついで、上述した形質転換又は形質移入された宿主細胞は、本ペプチドの発現を可能にする条件下で、適切な栄養培地中で培養された後、生じたタンパク質が培地から回収される。
【0046】
細胞培養に使用される培地は、宿主細胞の増殖に適した任意の従来からの培地、例えば適切なサプリメントを含有する最小又は複合培地であってよい。適切な培地は商業的供給者から入手可能であり、又は公開されているレシピ(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)に従い調製されてもよい。ついで、細胞により生成されるタンパク質は、遠心分離又は濾過による培地からの宿主細胞の分離、硫酸アンモニウム等の塩による上清又は濾液のタンパク質様成分の沈殿、当該タンパク質の種類に応じて、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の多様なクロマトグラフィー手順による精製を含む一般的な手順により培養培地から回収されうる。
【0047】
本発明のペプチドは種々の方法で調製されうる。本ペプチドは、当該分野で知られているタンパク質合成方法により調製されうる。ペプチドがかなり大きい場合、これは、ペプチドのいくつかのフラグメントを合成し、ついで組み合わせることにより簡便になされ、本発明のペプチドが得られる。しかしながら、特定の実施態様では、本発明のペプチドは、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクト、又は本発明のペプチドに修飾され得るペプチドをコードする核酸コンストラクトを含む適切な宿主を発酵することにより調製される。
【0048】
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドを調製する方法を提供するものであり、ここでは、
i)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で発酵させ、
ii)工程i)で発現したペプチドを含有する組成物を、第1のイオン交換クロマトグラフィー工程として、カチオン交換クロマトグラフィーにかける。
カチオン交換クロマトグラフィーを使用することで、発酵後の第1のクロマトグラフィー工程として、同様のアニオン交換クロマトグラフィーと比較して、選択性及び収率が大きくなる。
【0049】
場合によっては、ii)のペプチドを含有する組成物は、各工程の前と後の双方で、さらなる精製工程にかけてもよく、但し、工程ii)のカチオンクロマトグラフィーは第1のクロマトグラフィー工程である。また、それが唯一のクロマトグラフィー工程であってもよい。
例えば、工程i)での発酵の上清を、希釈及びpH調節等、カチオン交換にかける前に、さらなる修飾にかけてもよい。上清は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍、もしくはそれ以上に希釈されてもよく、pHは、カチオン交換物質の選択によって、又は他に当業者によって適切であると判断されているもので調節されうる。
【0050】
一実施態様では、工程ii)に記載されているカチオン交換は、SPビッグビーズ(Big Beads)(GE Healthcare)等のアガロースベースの樹脂、又はトーヨーパール・メガキャップ(Toyopearl Megacap)2(TosoBioscience)等のポリマーベースの樹脂において実施される。双方の例示的な樹脂は強カチオン交換樹脂である。さらなる実施態様では、ii)のカチオン交換工程にかけられる組成物は、5.2のpHを有する。
【0051】
一実施態様では、本発明は、本発明のペプチドを調製する方法を提供するものであり、ここでは、
a)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で発酵させ、該宿主細胞は、本発明のペプチドをコードする核酸コンストラクトを含有するベクターを含み、該核酸コンストラクトは核酸配列を含有し、核酸配列はプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、プロテアーゼ基質アミノ酸配列は、核酸コンストラクトによりコードされる最初のペプチドのN-又はC末端部として発現され、
b)a)の元での発酵からの組換えペプチドを含有する組成物を、プロテアーゼ基質アミノ酸配列を切断可能なプロテアーゼを用いた処理にかける。
プロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードする核酸配列を含むこのような核酸コンストラクトは本明細書の他の箇所で記載されている。
【0052】
一実施態様では、a)で発酵した組換えペプチドを、上述したプロテアーゼを用いた処理にかける前に、第1のクロマトグラフィー工程としてカチオン交換クロマトグラフィーにかける。
一実施態様では、工程b)でプロテアーゼ処理にかけたペプチドを含有する組成物を、工程b)の後に、第2のカチオン交換クロマトグラフィーにかける。
一実施態様では、エチレングリコールを、最終濃度20%になるまで、本発明のペプチドを含有する得られた組成物に添加する。
【0053】
一実施態様では、本発明は、ペプチドをコンジュゲートさせる方法を提供するもので、該方法は、本発明のペプチドの存在下、該ペプチドをアミン供与体と反応させることを含む。一実施態様では、コンジュゲートされるペプチドは成長ホルモンである。一実施態様では、ペプチドはhGH又はその変異体又は誘導体である。
本文脈において、「誘導体」なる用語は、修飾した、すなわち親ペプチドに、好ましくは生物活性を有する任意の種類の分子を共有結合させたポリペプチド又は変異体又はフラグメントを意味することを意図している。典型的な修飾は、アミド、炭水化物、アルキル基、アシル基、エステル、ペグ化等である。
【0054】
一実施態様では、本発明は、上述の成長ホルモンのコンジュゲート法を提供するもので、ここで、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、本発明のペプチドの代わりに該方法に使用される場合、hGHの位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートした成長ホルモンの量が、位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHと比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比べて、有意に増加している。
【0055】
一実施態様では、本発明は、hGHのコンジュゲート法を提供するもので、ここで、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、本発明のペプチドの代わりに該方法に使用される場合、hGHの位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートした成長ホルモンの量は、位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHと比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比べて、有意に増加している。
【0056】
一実施態様では、本発明は、位置141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHを調製する方法を提供するものであり、該方法は、本発明のペプチドの存在下で、前記hGHをアミン供与体と反応させることを含む。
本発明の方法の一実施態様では、コンジュゲートしたhGHは、ペグ化されたhGHの調製にも使用され、ここで該ペグ化はコンジュゲートした位置で生じる。
一実施態様では、本発明はコンジュゲートした成長ホルモンを製薬調製する方法を提供するものであり、該方法は、本発明のペプチドの存在下で、該hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させる工程を含む。一実施態様では、成長ホルモンはhGH又はその変異体又は誘導体である。
【0057】
一実施態様では、本発明は、ペグ化された成長ホルモンを製薬調製する方法を提供するものであり、該方法は、本発明のペプチドの存在下、該hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させ、ペグ化された成長ホルモンの調製に、得られたコンジュゲートした成長ホルモンペプチドを使用する工程を含み、ここで該ペグ化はコンジュゲートした位置で生じる。一実施態様では、成長ホルモンはhGH又はその変異体又は誘導体である。一実施態様では、ペグ化された成長ホルモンは、位置Gln141でペグ化されたhGHである。一実施態様では、ペグ化された成長ホルモンは、国際公開第2006/134148号に記載されているペグ化された成長ホルモンである。
【0058】
一実施態様では、本発明は、コンジュゲートした成長ホルモンの調製への、本発明のペプチドの使用を提供する。一実施態様では、成長ホルモンはhGH又はその変異体又は誘導体である。一実施態様では、成長ホルモンは、hGHの位置Gln141に対応する位置でコンジュゲートされている。
【0059】
一実施態様では、本発明は、患者の成長ホルモンの欠失に関連した病気又は疾患を処置する方法を提供するものであり、該方法は、本発明の方法を使用して調製された製薬用調製物を、それを必要とする患者に投与することを含み、ここで、コンジュゲートしたペプチドは成長ホルモンである。一実施態様では、患者の成長ホルモンの欠失に関連した病気又は疾患は、成長ホルモン欠損症(GHD);ターナー症候群;プラダーウィリ症候群(PWS);ヌーナン症候群;ダウン症候群;慢性腎臓病、若年性関節リウマチ;嚢胞性線維症、HAART治療を受けた小児のHIV感染(HIV/HALS小児);SGAで出生した低身長小児;SGA以外の極少低出生時体重(VLBW)で出生した低身長症;骨格形成異常;軟骨低形成症;軟骨形成不全;特発性低身長(ISS);成人のGHD;脛骨、腓骨、大腿、上腕、橈骨、尺骨、鎖骨、中手、中足、及び指等、長骨又は内部の骨折;頭蓋骨、手の基部、及び足の基部等、海綿様骨の中又はその骨折;例えば手、膝又は肩等の腱又は靱帯の手術後の患者;仮骨延長術を受けるか又は受けた患者;人工股関節置換手術又は円板置換手術、半月板修復、脊椎固定術、又は膝、臀部、肩、肘、手首又は顎の補綴固定術後の患者;例えばネイル、スクリュー及びプレートのような骨接合術材料が固定されている患者;骨折の変形癒合又は偽関節を有する患者;例えば脛骨又は第一趾からの骨切り術後の患者;移植片植え込み後の患者;外傷又は関節炎に起因する膝の関節軟骨変性;ターナー症候群を患っている患者の骨粗鬆症;男性における骨粗鬆症、慢性透析の成人患者(APCD);APCDにおける栄養不良関連循環器疾患;APCDにおける悪液質の逆流;APCDにおける癌;APCDにおける慢性的閉塞性肺疾患;APCDにおけるHIV;APCDの高齢者;APCDにおける慢性的な肝臓病、APCDにおける疲労症候群;クローン病;肝機能障害;HIV感染した男性;短腸症候群;中心性肥満;HIV関連リポジストロフィー症候群(HALS):男性不妊;待機的大手術後の患者、アルコール/薬物解毒又は神経的トラウマ;加齢;虚弱な高齢者;骨関節炎;衝撃的な損傷を受けた軟骨;勃起不全;繊維筋痛;記憶障害;鬱病;外傷性脳損傷;くも膜下出血;極低出生体重;メタボリックシンドローム;グルココルチコイドミオパシー;又は小児のグルココルチコイド治療による低身長症から選択される。
【0060】
以下は、本発明の実施態様の列挙であり、該列挙に限定されるとみなされるものではない。
実施態様1:配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対する一又は複数の位置において修飾されている、単離されたペプチド。
実施態様2:配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、実施態様1の単離されたペプチド。
実施態様3:配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、実施態様2の単離されたペプチド。
実施態様4:配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、実施態様3の単離されたペプチド。
【0061】
実施態様5:前記配列が、配列番号1:のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含有する、実施態様4の単離されたペプチド。
実施態様6:前記アミノ酸配列が、Tyr62に対応する位置で修飾されており、修飾が、Tyrとは異なるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基が置換されることからなる、実施態様1ないし5のいずれかの単離されたペプチド。
実施態様7:Tyr62に対応する位置でのアミノ酸残基の修飾が、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基が置換されることからなる、実施態様6の単離されたペプチド。
【0062】
実施態様8:Tyr62に対応する位置のTyrが、His、Met、Asn、Val、Thr、及びLeuから選択されるアミノ酸残基で置換されている、実施態様7の単離されたペプチド。
実施態様9:Tyr62に対応する位置のTyrがHisで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
実施態様10:Tyr62に対応する位置のTyrがValで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
【0063】
実施態様11:Tyr62に対応する位置のTyrが、Met、Asn、Thr、及びLeuから選択されるアミノ酸残基で置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
実施態様12:Tyr62に対応する位置のTyrがMetで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
実施態様13:Tyr62に対応する位置のTyrがAnsで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
実施態様14:Tyr62に対応する位置のTyrがThrで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
実施態様15:Tyr62に対応する位置のTyrがLeuで置換されている、実施態様8の単離されたペプチド。
【0064】
実施態様16:前記アミノ酸配列がTyr75に対応する位置において修飾されており、修飾が、Tyrとは異なるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基が置換されることからなる、実施態様1ないし15のいずれかの単離されたペプチド。
実施態様17:Tyr75に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾が、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のチロシン残基が置換されることからなる、実施態様16の単離されたペプチド。
【0065】
実施態様18:Tyr75に対応する位置のTyrが、Ala、Phe、Asn、Met、Leu、又はCysで置換されている、実施態様17の単離されたペプチド。
実施態様19:Tyr75に対応する位置のTyrがPheで置換されている、実施態様18の単離されたペプチド。
実施態様20:Tyr75に対応する位置のTyrがAsnで置換されている、実施態様18の単離されたペプチド。
実施態様21:Tyr75に対応する位置のTyrが、Ala、Met、Leu、又はCysで置換されている、実施態様18の単離されたペプチド。
【0066】
実施態様22:Tyr75に対応する位置のTyrがAlaで置換されている、実施態様21の単離されたペプチド。
実施態様23:Tyr75に対応する位置のTyrがMetで置換されている、実施態様21の単離されたペプチド。
実施態様24:Tyr75に対応する位置のTyrがLeuで置換されている、実施態様21の単離されたペプチド。
実施態様25:Tyr75に対応する位置のTyrがCysで置換されている、実施態様21の単離されたペプチド。
【0067】
実施態様26:前記アミノ酸配列がSer250に対応する位置において修飾されており、修飾が、Serとは異なるアミノ酸残基で、最初のセリン残基が置換されることからなる、実施態様1ないし25のいずれかの単離されたペプチド。
実施態様27:Ser250に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾が、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Thr、Trp、Tyr、及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のセリン残基が置換されることからなる、実施態様26の単離されたペプチド。
【0068】
実施態様28:Ser250に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾が、Ala、Arg、Asp、Cys、Gln、Gly、His、Leu、Met、Phe、Pro、Thr、Trp、Tyr、及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のセリン残基が置換されることからなる、実施態様27の単離されたペプチド。
実施態様29:Ser250に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾が、Glyで最初のセリン残基が置換されることからなる、実施態様27の単離されたペプチド。
実施態様30:Ser250に対応する位置におけるアミノ酸残基の修飾が、Cys、Leu、Pro、Trp、Tyr、及びValから選択されるアミノ酸残基で、最初のセリン残基が置換されることからなる、実施態様27の単離されたペプチド。
【0069】
実施態様31:前記Ser250がCysで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
実施態様32:前記Ser250がLeuで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
実施態様33:前記Ser250がProで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
実施態様34:前記Ser250がTrpで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
実施態様35:前記Ser250がTyrで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
実施態様36:前記Ser250がValで置換されている、実施態様30の単離されたペプチド。
【0070】
実施態様37:前記アミノ酸配列が、1〜10のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様1ないし36のいずれかの単離されたペプチド。
実施態様38:前記アミノ酸配列が、1〜9のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様37の単離されたペプチド。
実施態様39:前記配列が、1〜8のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様38の単離されたペプチド。
実施態様40:前記配列が、1〜7のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様39の単離されたペプチド。
実施態様41:前記配列が、1〜6のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様40の単離されたペプチド。
実施態様42:前記配列が、1〜5のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様41の単離されたペプチド。
実施態様43:前記配列が、1〜4のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様42の単離されたペプチド。
実施態様44:前記配列が、1〜3のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様43の単離されたペプチド。
実施態様45:前記配列が、1〜2のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様44の単離されたペプチド。
実施態様46:前記配列が、1つのアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様45の単離されたペプチド。
実施態様47:前記配列が、MetをN末端に付加することにより修飾されている、実施態様48の単離されたペプチド。
【0071】
実施態様48:前記配列が、2〜9のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様37の単離されたペプチド。
実施態様49:前記配列が、2〜8のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様48の単離されたペプチド。
実施態様50:前記配列が、2〜7のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様49の単離されたペプチド。
実施態様51:前記配列が、2〜6のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様50の単離されたペプチド。
実施態様52:前記配列が、2〜5のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様51の単離されたペプチド。
実施態様53:前記配列が、2〜4のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様52の単離されたペプチド。
実施態様54:前記配列が、2〜3のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様53の単離されたペプチド。
実施態様55:前記配列が、2つのアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、実施態様54の単離されたペプチド。
【0072】
実施態様56:付加されたジペプチド基がGly-Pro-である、実施態様55の単離されたペプチド。
実施態様57:付加されたジペプチド基がAla-Pro-である、実施態様55の単離されたペプチド。
【0073】
実施態様58:ペプチドがトランスグルタミナーゼ活性を有している、実施態様1ないし55のいずれかの単離されたペプチド。
実施態様59:ペプチドが、hGHのGln-40と比較して、hGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性が、hGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対し、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高い、実施態様58の単離されたペプチド。
実施態様60:ペプチドが、hGHのGln-40と比較して、hGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性が、hGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対し、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高い、実施態様58の単離されたペプチド。
【0074】
実施態様61:ペプチドがトランスグルタミナーゼ活性を有している、実施態様56又は実施態様57の単離されたペプチド。
実施態様62:ペプチドが、hGHのGln-40と比較して、hGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性が、hGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対し、配列番号:2に示すようなアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高い、実施態様61の単離されたペプチド。
実施態様63:ペプチドが、hGHのGln-40と比較して、hGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性が、hGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対し、配列番号:1に示すようなアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高い、実施態様61の単離されたペプチド。
【0075】
実施態様64:実施態様1ないし63のいずれかのペプチドをコードする核酸コンストラクト。
実施態様65:前記核酸コンストラクトが核酸配列を含み、核酸配列がプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、プロテアーゼ基質アミノ酸配列が、核酸コンストラクトによりコードされる実施態様1ないし63のいずれかのペプチドのN末端部として発現される、実施態様64の核酸コンストラクト。
実施態様66:前記核酸コンストラクトが核酸配列を含み、核酸配列がプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、プロテアーゼ基質アミノ酸配列が、核酸コンストラクトによりコードされる実施態様1ないし63のいずれかのペプチドのC末端部として発現される、実施態様64の核酸コンストラクト。
【0076】
実施態様67:前記プロテアーゼ基質アミノ酸配列が、適切な条件下で、3Cプロテアーゼにより切断可能である、実施態様65又は実施態様66の核酸コンストラクト。
実施態様68:前記プロテアーゼ基質アミノ酸配列がLEVLFQGPである、実施態様67の核酸コンストラクト。
実施態様69:前記プロテアーゼ基質アミノ酸配列が、適切な条件下で、エンテロキナーゼにより切断可能である、実施態様65の核酸コンストラクト。
【0077】
実施態様70:実施態様64の核酸を含んでなるベクター。
実施態様71:実施態様65ないし69の核酸を含んでなるベクター。
実施態様72:実施態様70のベクターを含有する宿主細胞。
実施態様73:実施態様1ないし63のいずれかのペプチドを含有する組成物。
【0078】
実施態様74:
i)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で発酵させ、
ii)工程i)で発酵した組換えペプチドを含有する組成物を、任意のさらなるイオン交換クロマトグラフィーにかける前に、カチオン交換クロマトグラフィーにかける、
実施態様1ないし63のいずれかのペプチドを調製する方法。
実施態様75:工程ii)のカチオン交換クロマトグラフィーが、SPビッグビーズ又はトーヨーパール・メガキャップ2から選択される樹脂で実施される、実施態様74の方法。
【0079】
実施態様76:
a)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で発酵させ、該宿主細胞は、実施態様71のベクターを含み、
b)a)で発酵した組換えペプチドを含有する組成物を、プロテアーゼ基質アミノ酸配列を切断可能なプロテアーゼを用いた処理にかける、
実施態様1ないし63のいずれかのペプチドを調製する方法。
【0080】
実施態様77:a)で発酵した組換えペプチドを、工程b)に記載のプロテアーゼで処理する前に、カチオン交換クロマトグラフィーにかける、実施態様76の方法。
実施態様78:工程ii)のカチオン交換クロマトグラフィーが、SPビッグビーズ又はトーヨーパール・メガキャップ2から選択される樹脂で実施される、実施態様77の方法。
実施態様79:工程b)でプロテアーゼ処理にかけられたペプチドを含有する組成物を、工程b)の後に、第2のカチオン交換クロマトグラフィーにかける、実施態様76又は実施態様78の方法。
実施態様80:エチレングリコールを、全量が20%になるまで、ペプチドを含有する組成物に添加する、実施態様74ないし79のいずれかの方法。
【0081】
実施態様81:ペプチドをコンジュゲートさせる方法であって、該方法が、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの存在下で、アミン供与体と該ペプチドとを反応させることを含む方法。
実施態様82:前記コンジュゲートされるペプチドが成長ホルモンである、実施態様81のペプチドをコンジュゲートさせる方法。
実施態様83:前記成長ホルモンが、hGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様82の方法。
【0082】
実施態様84:実施態様83の成長ホルモンをコンジュゲートさせる方法であって、ここで、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの代わりに該方法に使用される場合、hGHの位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートした成長ホルモンの量が、位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHと比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比べて、有意に増加している方法。
【0083】
実施態様85:実施態様81のhGHをコンジュゲートさせる方法であって、ここで、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの代わりに該方法に使用される場合、hGHの位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートした成長ホルモンの量が、位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHと比較した、hGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比べて、有意に増加している方法。
【0084】
実施態様86:位置141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHを調製する方法であって、該方法が、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの存在下で、hGHをアミン供与体と反応させることを含む方法。
実施態様87:実施態様81ないし86のいずれかの方法であって、コンジュゲートしたhGHが、ペグ化されたhGHの調製に使用され、ここで該ペグ化がコンジュゲートした位置で生じる方法。
実施態様88:コンジュゲートした成長ホルモンを製薬調製する方法であって、該方法が、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの存在下で、該hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させる工程を含む方法。
実施態様89:成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様88の方法。
【0085】
実施態様90:ペグ化された成長ホルモンを製薬調製する方法であって、該方法が、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの存在下、該hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させ、ペグ化された成長ホルモンの調製に、得られたコンジュゲートした成長ホルモンペプチドを使用する工程を含み、ここで該ペグ化がコンジュゲートした位置で生じる方法。
実施態様91:成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様90の方法。
実施態様92:ペグ化された成長ホルモンが、位置Gln141でペグ化されたhGHである、実施態様91の方法。
【0086】
実施態様93:コンジュゲートした成長ホルモンの調製における、実施態様1ないし63のいずれかのペプチドの使用。
実施態様94:成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体である、実施態様63の使用。
実施態様95:成長ホルモンが、hGHの位置Gln141に対応する位置でコンジュゲートしている、実施態様93又は実施態様94の使用。
【0087】
実施態様96:患者の成長ホルモンの欠乏に関連した病気又は疾患を処置する方法であって、該方法が、実施態様88ないし92のいずれかの方法を使用して調製された製薬用調製物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
実施態様97:実施態様96の方法であって、患者における成長ホルモンの欠乏に関連した病気又は疾患が、成長ホルモン欠損症(GHD);ターナー症候群;プラダーウィリ症候群(PWS);ヌーナン症候群;ダウン症候群;慢性腎臓病、若年性関節リウマチ;嚢胞性線維症、HAART治療を受けた小児のHIV感染(HIV/HALS小児);SGAで出生した低身長小児;SGA以外の極少低出生時体重(VLBW)で出生した低身長症;骨格形成異常;軟骨低形成症;軟骨形成不全;特発性低身長(ISS);成人のGHD;脛骨、腓骨、大腿、上腕、橈骨、尺骨、鎖骨、中手、中足、及び指等、長骨又は内部の骨折;頭蓋骨、手の基部、及び足の基部等、海綿様骨の中又はその骨折;例えば手、膝又は肩等の腱又は靱帯の手術後の患者;仮骨延長術を受けるか又は受けた患者;人工股関節置換手術又は円板置換手術、半月板修復、脊椎固定術、又は膝、臀部、肩、肘、手首又は顎の補綴固定術後の患者;例えばネイル、スクリュー及びプレートのような骨接合術材料が固定されている患者;骨折の変形癒合又は偽関節を有する患者;例えば脛骨又は第一趾からの骨切り術後の患者;移植片植え込み後の患者;外傷又は関節炎に起因する膝の関節軟骨変性;ターナー症候群を患っている患者の骨粗鬆症;男性における骨粗鬆症、慢性透析の成人患者(APCD);APCDにおける栄養不良関連循環器疾患;APCDにおける悪液質の逆流;APCDにおける癌;APCDにおける慢性的閉塞性肺疾患;APCDにおけるHIV;APCDの高齢者;APCDにおける慢性的な肝臓病、APCDにおける疲労症候群;クローン病;肝機能障害;HIV感染した男性;短腸症候群;中心性肥満;HIV関連リポジストロフィー症候群(HALS):男性不妊;待機的大手術後の患者、アルコール/薬物解毒又は神経的トラウマ;加齢;虚弱な高齢者;骨関節炎;衝撃的な損傷を受けた軟骨;勃起不全;繊維筋痛;記憶障害;鬱病;外傷性脳損傷;くも膜下出血;極低出生体重;メタボリックシンドローム;グルココルチコイドミオパシー;又は小児のグルココルチコイド治療による低身長症から選択される、実施態様96の方法。
【0088】
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、特定の文献の別個に提供される援用がここでの他の箇所でなされているかにかかわらず、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
本発明で記載されて使用されている「a」及び「an」及び「the」及び類似指示対象なる用語は、ここで示され、文脈においてはっきりと矛盾していない限りは、単数形及び複数形の双方をカバーすると解釈される。例えば、「化合物」なる表現は、特に示さない限りは、本発明又は特定の記載された態様の種々の「化合物」を称すると理解される。
【0089】
特に示さない限り、ここで提供される全ての正確な値は、対応する近似値の代表例である(例えば、特定の要因又は測定値に関して提供される全ての正確な例示的値は、適切な場合は、「約」により修飾される、対応する近似測定値を提供するとみなすことができる)。
特に明記せず、文脈においてはっきりと矛盾していない限りは、要素又は要素群に関して、「含有する」、「有する」、「含む」又は「含める」等の用語を使用する、本発明の任意の側面又は実施態様のここでの記載は、特定の要素又は要素群「からなる」、「本質的になる」、又は「実施的に含有する」本発明の類似した側面又は実施態様に対する裏付けを提供することを意図したものである(例えば、特定の要素を含むここに記載の組成物は、特に明記しないか又は文脈においてはっきりと矛盾していない限りは、その要素からなる組成物をまた記述していると理解されなければならない)。
【実施例】
【0090】
実施例1
GlyPro-TGase形態のプロペプチド-mTGaseのクローニング及び変異体生成
Streptoverticillium ladakanum ATCC27441由来のTGase
S. ladakanum由来のプロペプチド-mTGaseの配列(プロペプチド-mTGaseは、大腸菌等の他の生物において、S. ladakanum由来のTGaseをコードするDNAを発させて得られるペプチドである)を、配列番号:3に示す。ポリペプチド部分は、配列番号:3のaa1-49であり、残りの配列は配列番号:1に示す成熟mTGaseであった。成熟mTGase部分(配列番号:1)は、図1に示すようにS. mobaraensis由来のmTGase(配列番号:2)と93.4%の同一性を有する。
【0091】
3C-プロテアーゼ配列LEVLFQGP(3C)を、S. ladakanumのプロペプチド-TGaseの成熟mTGaseドメインとプロペプチド-ドメイン(配列番号:3のaa1-49)との間にクローニングした。3C-プロテアーゼにより、LEVLFQGP部位のQとGとの間で特異的に切断され、2つの付加的なアミノ酸残基Gly-Proが成熟mTGase(配列番号:1に示す)のN末端に付加された。大腸菌での発現のために、Met-プロペプチド-(3C)-mTGaseをコードするDNAを、pET39b(Novagen)発現ベクターのNdeI及びBamHI部位の間でにクローニングし、発現のために大腸菌BL21(DE3)に移した。 S. ladakanum由来のプロペプチド-(3C)-mTGaseの配列は、配列番号:6として示す。
部位特異的突然変異を、QuikChange部位特異的突然変異キット(Stratagene)を使用して実施した。例えばY75A、Y75F、Y62H_Y75N及びY62H_Y75Fの突然変異(配列番号:1の番号付けを使用)を、PCR鋳型として、プロペプチド-(3C)-mTGase配列をコードするDNAを使用して生成させた。
【0092】
実施例2
アニオンクロマトグラフィーを使用するN末端にアミノ酸残基が付加されたTGase変異体の調製
GlyPro-mTGaseの調製
pET39b_Met-プロペプチド-(3C)-mTGase-SL/大腸菌BL21(DE3)細胞を、光学密度0.4になるまで、30μg/mlのカナマイシンが補填されたLB培地中で30℃で培養し、さらに4時間、細胞を0.1mMのIPTGで誘導した。遠心分離により、細胞ペレットを収集した。
細胞ペレットからの可溶性フラクションを抽出し、アニオン交換、Q-セファロースHP、カラムを用いて精製し、純粋なプロペプチド-(3C)−mTGaseタンパク質を得た。ついで、このタンパク質を、20℃で一晩、プロペプチド-(3C)-mTGaseタンパク質に対して1:100(w/w)の比率で3C-プロテアーゼ(ポリオウイルス由来)を用いて消化させた。消化混合物を、TGase活性アッセイにより同定した活性なmTGaseについて、カチオン交換カラム、SPセファロースHP/ソース30Sでさらに精製した。
【0093】
AlaPro-mTGaseの調製
ポリペプチドの消化を、3Cプロテアーゼの代わりにエンテロキナーゼ(EK)にて実施したことを除けば、GlyPro-mTGaseに類似した方法で、AlaPro-mTGaseを生成させた。簡単に述べると、Streptomyces mobaraensis由来のプロペプチド-mTGaseを大腸菌で発現させ、可溶性フラクションに見出した。プロペプチド-mTGaseをQセファロースHPイオン交換クロマトグラフィーにより精製し、EKにより消化させることで、AlaPro-mTGaseを得た。ついで、AlaPro-mTGaseを、SPセファロースHPイオン交換カラムでさらに精製した。
S. ladakanum由来のmTGaseの選択性に対する種々のN末端外配列の効果を比較するために、S. ladakanum由来の野生型mTGase、AlaPro-mTGase、Met-mTGaseの形態のmTGaseを別々にクローニングし、発現させ、精製した。
上述したようにしてEKから得られたS. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseと比較すると、GlyPro-mTGase-SLの生成は、EK消化を使用するよりも改善された回収収率で、より特異的に、プロペプチド-3C-mTGase-SLからの3C-プロテアーゼ(ポリオウイルス由来)消化により処理された。
【0094】
実施例3
カチオンクロマトグラフィーを使用するN末端にアミノ酸残基が付加されたTGase変異体の精製
GE HealthcareからのAKTA技術を使用し、GlyPro-mTGase(Tyr62His、Tyr75Phe)の調製物を、カチオン交換カラムで精製した。
使用したカラムは、トーヨーパール・メガキャップ2及びSPセファロースBB、直径11mm、高さ200mm、室温での容量19.0mlであった。


【0095】
実施例4
カチオンクロマトグラフィーを使用するN末端にアミノ酸残基が付加されたTGase変異体の調製
GlyPro-mTGaseの調製(Tyr62His、Tyr75Phe)
pET39b_Met-プロペプチド-(3C)-mTGase-SL Tyr62His、Tyr75Phe/大腸菌BL21(DE3)細胞を、光学密度0.4になるまで、30μg/mlのカナマイシンが補填されたLB培地中で30℃で培養し、さらに4時間、細胞を0.1mMのIPTGで誘導させた。遠心分離により、細胞ペレットを収集した。
細胞ペレットからの可溶性フラクションを抽出し、実施例に記載したようなカチオン交換を用いて精製し、純粋なプロペプチド-(3C)-mTGaseタンパク質を得た。ついで、このタンパク質を、20℃で一晩、プロペプチド-(3C)-mTGaseタンパク質に対して1:100(w/w)の比率で3C-プロテアーゼ(ポリオウイルス由来)を用いて消化した。消化混合物を、活性なmTGaseについて、カチオン交換カラム、SPセファロースHP/ソース30Sでさらに精製し、エチレングリコールを20%濃度まで、精製したmTGaseに添加した。
【0096】
実施例5
高度の選択性の変異体に対するスクリーニングアッセイ−S. ladakanum由来のmTGaseの選択性に対するN末端外配列の効果を評価するために使用した動力学的方法
hGHQ40N及びhGHQ141Nの調製
hGH変異体hGHQ40N及びhGHQ141Nを、部位特異的突然変異により構築した。それらを、N末端に4つの付加アミノ酸残基を有するMEAE-hGHQ40N及びMEAE-hGHQ141Nとして大腸菌中で発現させ、野生型組換えhGHと同じ方法で精製した。簡単に述べると、可溶性MEAE-hGH変異体を、QセファロースXLクロマトグラフィーを用いて、粗大腸菌溶解液から回収し、ついで、フェニルセファロースFFを用いて、さらにポリッシュした。部分的に精製されたMEAE-hGH変異体を、42℃で1時間、DAP-1酵素を用いて消化し、N末端のMEAEを除去した。最後に、hGH変異体を、38%の冷エタノールを用いて沈殿させ、ついで、7Mの尿素を用いて溶解させ、ソース30Qカラムを用いて精製した。
【0097】
動力学的反応
動力学的反応を、200mMのNaCl、50μMのhGHQ141N又はhGHQ40N、100μMのダンシル-カダベリン(DNC, Fluka)を含有する200μlのトリス-HClバッファー、20mM、pH7.4中で実施した。2μgのmTGaseを添加することにより反応を開始し、26℃で操作した。20秒毎に1時間、Ex/Em:340/520nmで、蛍光をモニターした。0−2000秒の間に収集されたデータを使用し、二次多項式を用いて進行曲線を適合させ、勾配を得た。適合計算は、初期時間範囲(0-2000秒)に得られたデータに基づいており、進行曲線の勾配は線形で、逆反応は比較的小さい。
【0098】
実施例6
TGase変異体の高度の選択性を実証するためのキャピラリー電気泳動:
hGHのグルタミン転移(トランスグルタミネーション)反応
アミン供与体として1,3-ジアミノ-プロパノールを使用し、グルタミン転移反応を実施した。TGaseタンパク質を添加することにより、反応を開始させ、室温で2時間インキュベートした。時間間隔(15−30分)でサンプルを取り、液体窒素を使用して凍結させ、CEによる転換率及び選択性の分析のために−20℃で保存した。反応混合物が表1のように製造された。
【0099】
表1
野生型hGHと1,3-ジアミノプロパノールを用いた、グルタミン転移のための反応混合物の調製。まず、hGHの作用溶液を、トリスHCl、5mM、pH7.0中にある保存溶液から調製した後、反応に使用した。

【0100】
CE分析
まず、グルタミン転移反応からの凍結サンプルを、HOを用いて1:10に希釈し、30.5cmx50μm内径のキャピラリーを用い、ベックマンコールター製のP/ACE MDQを使用してCEを実施し、UV検出を20℃、214nmで実施した。アミノ基転移したhGHのplが約5.80−6.20になってから、トリスHCl、50mM、pH8.0で、CE分析を実行した。
0.5分、0.1MのHClを用いてキャピラリーを最初に調整し、蒸留水で1.5分洗浄し、0.5分サンプルを注入し、最後に、サンプル分離のために+15kVで25分操作した。
CEプロファイルから、野生型hGH、Q141で一置換されたhGH、及びQ40で一置換されたhGHの保持時間は、それぞれ6.5、7.9及び10分であった。
【0101】
実施例7
高選択性を有するmTGase変異体の評価
変異体の選択性の改善を、S. mobaraensis由来の野生型mTGase(AlaPro-mTGase形態)からのものと比較した。N末端変異体の選択性は、スクリーニングアッセイで評価した。全ての変異体の選択性は、基質として野生型hGHを、アミン供与体として1,3-ジアミノプロパノールを使用する、グルタミン転移反応でのCE分析により評価した。
【0102】
実施例8
S. ladakanum由来のmTGaseの選択性に対する、種々のN末端配列の効果
種々のN末端外配列を有する、S. ladakanum由来のmTGaseの変異体を、実施例5に記載したアッセイを使用し、hGHQ40(基質としてhGHQ141を使用)に対する、hGHQ141(基質としてhGHQ40Nを使用)での選択性に対して比較した。
表2に示す結果には、S. ladakanum由来のmTGaseの全体的な選択性が、S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseのものよりも高いことが示された。
【0103】
異なるN末端配列を有するS. ladakanum由来の4つの異なる型のmTGaseの中でも、GlyPro-mTGaseはRS2.7の最も高度な選択性を有していることで突出する。S. ladakanum由来のmTGaseの結晶構造は利用できないが、表2に示す結果には、mTGaseのN末端が、hGH等のその基質に対するmTGaseの結合ポケットの高次構造変化に関与していることが示されている。mTGaseの結合ポケットの締め付け低下により選択性が改善され、例えばhGHのQ141等の基質の所定部位のGln残基を、mTGaseで触媒されるグルタミン転移にとってより好ましいものにする。S. ladakanum由来の野生型GlyPro-mTGaseの選択性は、CEにより測定されるグルタミン転移反応でさらに確認した。上述の結果に基づき、S. ladakanumのGlyPro-mTGaseについてさらなる突然変異を生成させた。
S. mobaraensis由来の様々なN末端型のmTGaseに対して選択性に何の差異も観察されないため、S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseを参照として使用し、選択性の改善を、実施例5に記載のスクリーニングアッセイから算出されるRS(相対的選択性)により評価した。
【0104】
表2
様々なN末端配列を有するS. ladakanum由来のmTGase変異体の選択性の比較。S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseを参照として使用した。算出された選択性は、hGH40(基質としてhGHQ141を使用)と比較した、hGHQ141(基質としてhGHQ40Nを使用)に対する活性であった。

【0105】
実施例9
S. ladakanum由来のGlyPro-mTGaseをベースにした部位特異的突然変異よって生成されたmTGase
基質として野生型hGHを、及びアミン供与体として1,3-ジアミノプロパノールを用い、GlyPro-mTGaseを使用して、グルタミン転移反応を実施した。Q40に対する、hGHのQ141でのグルタミン転移に対する選択性を、CEにより評価した。選択性の改善を、参照としてS. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseを、ベンチマークとしてS. ladakanum由来のGlyPro-mTGaseを使用して、評価した。結果を表3にまとめる。各変異体に対するCEグラフを、図2Bから図2Hに示す。
【0106】
表3にまとめられた結果には、Y75A、Y75F、Y75N、Y62H_Y75N及びY62H_Y75Fを含む全ての変異体が、GlyPro-mTGase-SLのものよりも、改善された選択性を有していたことが示されている。最も高い選択性の変異体は、hGHの転換率が49.2%の場合に、36.2の選択性を有するGlyPro-mTGase_Y62H_Y75Fであり、S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseのものよりも、6.4倍高い。hGH転換率が38.1%以下で、選択性が7.6倍改善された、さらなる測定を実施した。GlyPro-mTGase_Y62H_Y75F変異体を使用するグルタミン転移反応を繰り返すと、変異体及び参照mTGaseの双方に対するhGH転換率が約40%である場合、S. mobaraensis由来のAlaPro-mTGaseのものより、選択性の改善度が、7.6倍高かった。
【0107】
表3
mTGaseの選択性の比較

S. ladakanum由来のGlyPro-mTGase_Y62H_Y75Fの配列は、配列番号:4として与える。
S. ladakanum由来のペプチド プロペプチド-(3C)-MTGaseの配列は、配列番号:5として与える。
【0108】
実施例10
hGHにおけるGln-141対Gln-40に対するそれらの選択性についてのS. ladakanum及びS. mobarense由来のmTGaseの試験
このアッセイでは、位置Gln-40及びGln-141の一にグルタミンの代わりにアスパラギン残基をそれぞれ有し、一のグルタミンのみを残して反応させる2つのhGH変異体を使用する。前記変異体の調製法は、Kunkel TAら, Methods in Enzymology 154, 367-382(1987)、及びChung Nan Changら, Cell 55, 189-196(1987)に記載されている。hGH変異体Q40Nは、hGHにおけるGln-141のモデル基質であり、Q141NはGln-40のモデル基質である。
400μlのバッファー溶液に、225mMの1,3-ジアミノ-2-プロパノール、及び35mMのトリス(pHは、濃HClを添加することにより8.0に調節)、600μlの変異hGH(1.5mg/ml)及び5μlのTGase(1.6mg/ml)を添加する。反応混合物を25℃で30分、インキュベートする。
【0109】
続く分析を、280nmで、モノQ5/5GL 1ml(GE Health)カラム及び280nmでのUV検出器を使用するFPLCにより実施する。バッファーA:20mMのトリエタノールアミン、pH8.5;バッファーB:20mMのトリエタノールアミン、0.2MのNaCl、H8.5;流量:0.8ml/分。溶離勾配は以下のように定める:

【0110】
ついで、選択率を、2つの生成物Q141及びQ40に帰する曲線(図3及び図4に示す)下の2つの面積(任意単位)の比率から算出する。S. ladakanum(配列番号:1)及びS. mobarense(配列番号:2)由来のTGaseを使用する場合に達成される結果を、表4に示す。Q40N+その生成物−Q141=Q141N+その生成物−Q40で、100に正規化させる。
表4

【0111】
実施例11
hGHのペグ化
a) hGHを、リン酸塩バッファー(50mM、pH8.0)に溶解させる。この溶液を、リン酸塩バッファーにアミン供与体、例えば1,3-ジアミノ-プロパン-2-オールが入った溶液(50mM、1ml、pH8.0、アミン供与体を溶解させた後、希塩酸で8.0に調整)と混合する。
最後に、リン酸塩バッファーにTGase(〜40U)を溶解させた溶液(50mM、pH8.0、1ml)を添加し、リン酸塩バッファー(50mM、pH8)を添加することにより、容量を10mlに調節する。組合せた混合物を37℃で約4時間、インキュベートする。温度を室温まで低下させ、N-エチル-マレイミド(TGaseインヒビター)を、1mMの最終濃度まで添加する。さらに1時間後、混合物を、10容量のトリスバッファー(50mM、pH8.5)で希釈する。
b) ついで、アミン供与体が存在しているならば、a)で得られたアミノ基転移されたhGHを、場合によってはさらに反応させて、潜在的官能基を活性化させてもよい。
c) ついで、a)又はb)で得られた官能化されたhGHを、hGHに導入された官能基と反応可能な、適切に官能化されたPEGと反応させる。例として、オキシム結合を、アルコキシアミンとカルボニル部分(アルデヒド又はケトン)とを反応させることにより形成してもよい。
【0112】
実施例12
hGHのペグ化
工程a
hGHを、トリエタノールアミンバッファー(20mM、pH8.5、40%v/vのエチレングリコール)に溶解させる。この溶液を、トリエタノールアミンバッファーに、アミン供与体、例えば1,3-ジアミノ-プロパン-2-オールを溶解させた溶液(20mM、pH8.5、40%v/vのエチレングリコール、アミン供与体を溶解させた後、希塩酸を用いて、pHを8.6に調整)と混合する。
最終的に、S. mobarense由来のAlaPro-mTGase(AlaPro-mTGase-SM)、又はS. ladakanum由来のGlyPro-mTGase Y62H_Y75F(GlyPro-mTGase Y62H_Y75F-SL)(〜0.5−7mg/gのhGH)を、20mMのPBに溶解させた溶液、pH6.0を添加し、容量を調節し、5-15mg/mlのhGH(20mM、pH8.5)に至らしめる。組合せた混合物を、室温で1-25時間インキュベートする。表5及び図5に示すように、反応混合物をCIE HPLCにより分析する。TA40は位置40におけるアミノ基転移を意味し、TA141は位置141におけるアミノ基転移を意味し、TA40/141は、位置40及び141におけるアミノ基転移を意味する。
【0113】
表5

*出発物質において75%のhGH
【0114】
工程b
アミン供与体が存在しているならば、工程a)で得られたアミノ基転移されたhGHを、場合によってはさらに反応させて、潜在的官能基を活性化させてもよい。
工程c
ついで、工程a)又はb)で得られた官能化されたhGHを、hGHに導入された官能基と反応可能な、適切に官能化されたPEGと反応させる。例として、オキシム結合を、アルコキシアミンとカルボニル部分(アルデヒド又はケトン)と反応させることにより形成してもよい。
【0115】
実施例13
S. ladakanumのTGase変異体の選択性
各反応を、室温にて、100μMのモノダンシル-カダベリン(酢酸にパウダーを溶解させて調製し、1Mのトリス-HClで緩衝、pH8.5)、及び50μMのQ141N又はQ40Nヒト成長ホルモンを含有する200mMのNaClバッファー、及び20mMのトリス-HCl、pH7.4中において実施した。TGaseを混合物に添加し、反応を開始させた。30秒毎に、ext/em340/520nmで蛍光を測定した。Q40N及びQ141Nについての最初の反応速度を概算し、選択性を算出するのに使用した。
いくつかの S. ladakanumGlyPro-TGase変異体についてのこの実験の結果を、表6に示す。
表6


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対する一又は複数の位置において修飾されている、単離されたペプチド。
【請求項2】
配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号:1のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含んでなり、該配列が、配列番号1:のアミノ酸残基Tyr62、Tyr75及びSer250に対応する一又は複数の位置において修飾されている、請求項2に記載の単離されたペプチド。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が、1〜10のアミノ酸をN末端に付加することにより修飾されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の単離されたペプチド。
【請求項5】
付加されたジペプチド基がGly-Pro-である、請求項4に記載の単離されたペプチド。
【請求項6】
付加されたジペプチド基がAla-Pro-である、請求項4に記載の単離されたペプチド。
【請求項7】
ペプチドがトランスグルタミナーゼ活性を有している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたペプチド。
【請求項8】
ペプチドがトランスグルタミナーゼ活性を有している、請求項5又は6に記載の単離されたペプチド。
【請求項9】
ペプチドが、hGHのGln-40と比較してhGHのGln-141に対して特異性を有し、該特異性が、hGHのGln-40と比較したhGHのGln-141に対して、配列番号:1に示したアミノ酸配列を有するペプチドの特異性よりも高い、請求項7又は8に記載の単離されたペプチド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸コンストラクト。
【請求項11】
前記核酸コンストラクトが核酸配列を含み、該核酸配列がプロテアーゼ基質アミノ酸配列をコードし、該プロテアーゼ基質アミノ酸配列が、核酸コンストラクトによりコードされる請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドのN末端部又はC末端部として発現される、請求項10の核酸コンストラクト。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項14】
請求項12に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを含有する組成物。
【請求項16】
i)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現を可能にする条件下で発酵させ、
ii)工程i)で発酵した組換えペプチドを含有する組成物を、さらなるイオン交換クロマトグラフィーにかける前に、カチオン交換クロマトグラフィーにかける、
実施例1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを調製する方法。
【請求項17】
a)ペプチドの組換え発現を可能にする宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で発酵させ、該宿主細胞は、請求項13に記載のベクターを含み、
b)a)で発酵した組換えペプチドを含有する組成物を、プロテアーゼ基質アミノ酸配列を切断可能なプロテアーゼを用いた処理にかける、
実施例1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを調製する方法。
【請求項18】
ペプチドのコンジュゲート方法であって、該方法が、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で、前記ペプチドをアミン供与体と反応させることを含む方法。
【請求項19】
前記コンジュゲートされるペプチドが成長ホルモンである、請求項18に記載のペプチドのコンジュゲート方法。
【請求項20】
請求項19に記載の成長ホルモンのコンジュゲート方法において、前記成長ホルモンがhGH又はその変異体又は誘導体であり、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するペプチドが、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの代わりに該方法において使用される場合、hGHの位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較したhGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートした成長ホルモンの量が、位置Gln-40に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比較したhGHの位置Gln-141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの量と比べて有意に増加している方法。
【請求項21】
位置141に対応する位置でコンジュゲートしたhGHの調製方法であって、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で、前記hGHをアミン供与体と反応させることを含む方法。
【請求項22】
コンジュゲートした成長ホルモンの製薬調製方法において、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で、前記hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させる工程を含む方法。
【請求項23】
ペグ化成長ホルモンの製薬調製方法において、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で、前記hGH又はその変異体又は誘導体をアミン供与体と反応させ、得られたコンジュゲートした成長ホルモンペプチドを、ペグ化成長ホルモンの調製に使用する工程を含み、該ペグ化がコンジュゲート位置で生じる方法。
【請求項24】
コンジュゲートした成長ホルモンの調製における請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項25】
患者の成長ホルモンの欠乏に関連した病気又は疾患の治療方法において、請求項22又は請求項23に記載の方法を使用して調製された薬学的調製物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−518842(P2010−518842A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550721(P2009−550721)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052190
【国際公開番号】WO2008/102007
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】