説明

改善された表面特性を有するポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液、その製造方法並びにその使用

改善された表面特性(低い臨界表面張力γ及び極めて高い接触角θ)を有する場合によりフッ素化されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液に関し、この分散液はa)場合によりフッ素化された側鎖を有する場合によりヒドロキシ官能性及び/又はアミノ官能性のポリウレタン−ポリマーハイブリッドの水溶液又は水性分散液をベースとする分散成分(結合剤)を製造し並びに、場合によりb)引き続き工程a)からの分散成分を架橋剤成分(D)と反応させることにより得られる。本発明によるポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、この場合、溶剤不含又は溶剤貧有であることができかつ高い固体含有量で製造することができかつ極めてわずかな必要量の安定化基を必要とするにすぎない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された表面特性を有するポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液、その製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
(フッ素変性された、水性)ポリマーは、その独自の表面特性(疎水性及び疎油性)に基づき次第に重要性を増してきており、従って防汚被覆系としての使用が予定されている。このことは特にこのテーマについて最近公開された多くの文献により示されている(R. Winter, P. G. Nixon, R. J. Terjeson, J. Nohtasham, N. R. Holcomb, D. W. Grainger, D. Graham, D. G. Castner, G. L. Gard著, J. Fluorine Chem., 2002, 115(2), 107-113; R. D. van de Grampel, W. Ming, J. Laven, R. van der Linde, F. A. M. Leermakers著, Macromol., 2002, 35(14), 5670-5680; V. Castelvetro, M. Aglietto, F. Ciardelli, O. Chiantore, M. Lazzari, L. Toniolo著, J. Coat. Technol., 2002, 74, 57-66)。
【0003】
ペルフルオロアルキル基含有のモノマーをベースとする水性のコポリマー分散液もしくはエマルションは、以前から既に公知である。これは、ペルフルオロアルキル基が線状であり、かつ少なくとも6個の炭素原子を有していることが前提で、特に繊維もしくはカーペットの疎水化及び疎油化のために他の繊維助剤と組み合わせても使用される。
【0004】
このコポリマー分散液もしくはエマルションを乳化重合により製造するために多様な乳化剤系が使用され、使用された乳化剤系の種類に応じて、多様な実用特性を有するアニオン性又はカチオン性に安定化されたコポリマー分散液もしくはエマルションが得られる。
【0005】
ペルフルオロアルキル基を含有するグラフトコポリマーの水性分散液及び疎水化剤及び疎油化剤としてのその使用は、既に数年来、特許文献から公知である。
【0006】
EP 0 452 774 A1及びDE 34 07 362 A1は、エチレン性不飽和ペルフルオロアルキルモノマーとフッ素変性されていないエチレン性不飽和モノマーとからなるコポリマー及び/又はグラフトコポリマーの水性分散液の製造方法を記載していて、その際、グラフト基体として水性の乳化剤不含のポリウレタン分散液が使用されている。
【0007】
DE 36 07 773 C2にはペルフルオロアルキルリガンドを有するポリウレタンが記載されていて、前記ポリウレタンは水性分散液の形であるが、しかし外部の乳化剤の使用下で、又は有機溶剤(混合物)中の溶液の形で、もっぱら繊維材料及び皮革の仕上げ加工のために使用される。
【0008】
繊維の疎油化及び疎水化仕上げのためのペルフルオロアルキル基を含有するポリウレタンは、特許明細書DE 14 68 295 A1, DE 17 94 356 A1, DE 33 19 368 A1, EP 0 103 752 A1, US 3,398,182 B1, US 3,484,281 B1及びUS 3,896,251 B1にも記載されている。この化合物は、もちろん大量に適用する必要があり、かつ基材との不十分な付着を示す。
【0009】
WO 99/26 992 A1は、低い表面エネルギーを有する水性のフッ素変性された及び/又はシリコーン変性されたポリウレタン系を記載していて、この系は硬化して防汚特性を有する耐水性及び耐溶剤性の硬質のポリウレタン被膜になり、その際次の2つのペルフルオロアルキル成分が開示されている:
−SON−(R−OH)
[式中、R=1〜20個のC原子を有するペルフルオロアルキル基及びR=1〜20個のC原子を有するアルキル基]
R′CF−COCHCR(CHOH)
[式中、R=C〜C−フルオロアルキル、R′=C〜C−フルオロアルキル及びR=C〜C−アルキル]。
【0010】
特にインク吸収性被覆用の、低い表面エネルギーを有する水中で分散可能なスルホ−ポリウレタン組成物又はスルホ−ポリ尿素組成物は、EP 0 717 057 B1に記載されていて、その際、疎水性セグメントはポリシロキサンセグメントからなるか又は6〜12個の炭素原子を有し、その炭素原子の少なくとも4つが完全にフッ素化されている飽和フルオロ脂肪族基からなる。
【0011】
外部の乳化剤を使用しないペルフルオロアルキル−側鎖を有する水に分散可能なポリウレタンの水性分散液は、EP 0 339 862 A1から公知である。イソシアナート反応性成分として、ここでは、ポリテトラメチレングリコールのフッ素化されたオレフィンへのラジカル付加により得られたフッ素化されたポリオールが使用されている(EP 0 260 846 B1参照)。この得られたポリウレタン分散液は、例外なく30質量%を下回る固体含有量を有し、かつ更に大量の親水性成分を必要とする。乾燥した被膜の表面エネルギーは、いまだに>30dyne cm−1である。
【0012】
US 4,636,545では、繊維製品、天然及び合成繊維、紙及び皮革の疎水化及び疎油化のための、不飽和ペルフルオロアルキルモノマーのポリマー(M>367ダルトン)のラジカルグラフトのためのグラフト基体としての、場合により乳化されたブロックトポリイソシアナートと、場合により不飽和のコモノマー(溶剤又は水性エマルション中の)とを有する水性ポリウレタン分散液が記載されている。この固体含有量は5〜50質量%、有利に10〜30質量%であり、フッ素含有量は6〜50質量%、有利に10〜30質量%である。フッ素化された側鎖は、PU主鎖中にモノマーとして組み込まれず、製造されたPU分散液の主鎖上に不飽和フッ素化合物としてラジカルグラフト重合する。このために、前記不飽和化合物はポリウレタン分散液のエマルション(溶剤含有)の形で添加される。
【0013】
US 5,703,194は、ヒドロキシ官能性のプレポリマーの製造のための、オキセタンモノマーのペルフルオロ化されたアルコキシ側鎖とのカチオン重合を記載している。しかしながら水性系は開示されていない。ポリエーテル主鎖により、この系はUV安定性ではない。
【0014】
EP 1 162 220 A1には、熱により後架橋可能なカチオン性ポリウレタン分散液が記載されている。使用されたペルフルオロポリエーテルは、ジオール成分又はモノモール成分として主鎖に組み込まれている。このポリウレタンの分子量は9000ダルトン以下である。
【0015】
WO 02/04 538からは、ペルフルオロアルキル側鎖がペルフルオロオキセタンポリオールコポリマーを介して導入されている系が公知である。ポリエーテル主鎖により、この系はUV安定性ではない。
【0016】
JP 09118843には、接合部のシーリングの表面の着色を回避するための、フッ素変性されたリン酸エステル塩と、1つ以上のペルフルオロアルキル基を有する低分子量のウレタン化合物とからなる水性組成物が記載されている。この出願はPURポリマーコーティングに関するものではない。
【0017】
従って、本発明の根底をなす課題は、多様な適用領域に対した、鉱物性及び非鉱物性の下地の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、改善された表面特性を有する、場合によりフッ素変性されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液を開発することであり、前記分散液は上記の先行技術の欠点を有しておらず、良好な実用特性を有し、かつ同時に経済的、環境的及び生理的な観点を考慮して製造することができることである。
【0018】
前記課題は、本発明により、
a) 場合によりフッ素変性された側鎖を有する、場合によりヒドロキシ官能性及び/又はアミノ官能性ポリウレタン−ポリマーハイブリッドの水溶液又は水性分散液をベースとする分散液成分もしくは結合剤成分を製造し、その際、
) 有利に完全に線状のセグメント化された構造を有し、0〜5質量%のポリマー結合されたフッ素含有量を有し、0〜250mg KOH/gのヒドロキシル価及び/又はアミン価を有し、20〜60質量%の固体含有量を有し、0〜20質量%の溶剤含有量を有しかつ5000〜100000ダルトンの平均分子量を有する、場合により横側がフッ素変性されたアニオン安定化されたポリウレタンベース分散液(A)5〜100質量部に、
(i) アクリル酸及びその誘導体及び/又はメタクリル酸及びその誘導体及び/又はスチレン及びその誘導体のグループから選択される、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和モノマー(B)(i)1〜100質量部、
及び/又は
(ii) アルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は1−(1−イソシアナト−1−メチル−エチル)−3−(2−プロペニル)ベンゼン(m−TMI)とペルフルオロアルキルアルコールとからなる反応生成物のグループから選択される、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する、1つ以上の不飽和のフッ素変性されたモノマー(B)(ii)1〜100質量部
及び/又は
(iii) 一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子を有しかつ0〜50個のN原子及び/又はO原子及び/又はF原子及び/又はSi原子及び/又はS原子を有しかつ250〜25000ダルトンの分子量を有する任意の有機基)の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和の(場合によりフッ素変性された)モノマー(B)(iii)1〜100質量部
からなるモノマー成分(B)3〜300質量部、
1つ以上の熱的に不安定なアゾ基又はペルオキソ基を有する少なくとも1つの親油性ラジカル開始剤からなる開始剤成分(C)0.01〜10質量部並びに水0〜200質量部を添加し、その際、モノマー成分(B)、開始剤成分(C)及び水を同時に、順番に又はポリウレタンベース分散液(A)と混合して供給することができ、引き続き、
) 工程a)からの反応混合物中で、成分(C)の熱分解により、ポリウレタンベース分散液(A)のミセル内で成分(B)のラジカル重合を実施し、
並びに、場合により
b) 引き続き、工程a)からの成分(A)〜(C)からなる分散液成分もしくは結合剤成分を、架橋剤成分もしくは硬化剤(D)20〜100質量部と反応させ、その際、架橋剤成分又は硬化剤(D)として、有機溶剤0〜25質量%含有することができる、脂肪族及び/又は環式脂肪族及び/又は芳香族に結合したイソシアナート基を有する水に分散可能な(塗料)ポリイソシアナートを使用することにより製造されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の提供により解決された。
【0019】
意外にも、ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液中で適当なフッ素化されたモノマー(の組合せ)を使用することにより、硬質な被覆系もしくは極めて低い臨界表面張力γ(18.6mN/mを有するテフロン(R)よりも低い)を有する表面及び極めて高い接触角θ(111゜を有するテフロン(R)の範囲内)が得られるだけでなく、これは更に公知の先行技術と比較してもなお明らかに低下された吸塵傾向(dirt pickup)を有することが見出された。この特性プロフィールは、既に極めてわずかなフッ素含有量(固体樹脂に対して0.5〜2.0質量%)もしくは極めて少量のフッ素化されたマクロモノマーを用いて達成される。このために重要なのは、ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液が共有結合したフッ素化された側鎖を有し、この側鎖はポリウレタンベース分散液及び/又はラジカル重合可能なモノマーを介して導入さることができることである。更に、場合によりフッ素変性されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、溶剤不含又は溶剤貧有で高い固体含有量でも製造することができ、かつ極めてわずかな必要量の安定化基が必要なだけであることは予想できなかった。
【0020】
改善された表面特性を有する本発明によるポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、その多工程の製造方法により定義される。反応工程a)において、まず、場合によりヒドロキシ官能性及び/又はアミノ官能性のポリウレタン−ポリマーハイブリッド(結合剤)の水溶液又は水性分散液を製造し、これを次いで場合により反応工程b)において更に架橋剤成分(硬化剤)と反応させる。
【0021】
反応工程a)において、有利に完全に線状のセグメント化された構造を有し、0〜5質量%のポリマー結合されたフッ素含有量を有し、0〜250mg KOH/gのヒドロキシル価及び/又はアミン価を有し、20〜60質量%の固体含有量を有し、0〜20質量%の溶剤含有量を有し、5000〜100000ダルトンの平均分子量を有する、場合により横側がフッ素変性されたアニオン安定化されたポリウレタンベース分散液(A)5〜100質量部に、アクリル酸及びその誘導体及び/又はメタクリル酸及びその誘導体及び/又はスチレン及びその誘導体のグループから選択された1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和モノマー(B)(i)1〜100質量部及び/又はアルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は1−(1−イソシアナト−1−メチル−エチル)−3−(2−プロペニル)−ベンゼン(m−TMI)とペルフルオロアルキルアルコールとからなる反応生成物のグループから選択された1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上のフッ素変性された不飽和モノマー(B)(ii)1〜100質量部及び/又は一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子を有し、かつ0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有し、かつ250〜25000ダルトンの分子量を有する任意の有機基)の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和(場合によりフッ素変性された)モノマー(B)(iii)1〜100質量部からなるモノマー成分(B)3〜300質量部の混合物、1つ以上の熱的に不安定なアゾ基又はペルオキソ基を有する少なくとも1つの親油性ラジカル開始剤からなる開始剤成分(C)0.01〜10質量部、水0〜200質量部を添加し、その際、モノマー成分(B)、開始剤成分(C)及び水は同時に、順番に又はポリウレタンベース分散液(A)と混合して供給することができ、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液に反応させる。
【0022】
成分(A)として、有利に、(疎水性に変性された)ポリアルキレングリコール、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、α,ω−ポリブタジエンポリオール、α,ω−ポリメタクリラートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、マクロモノマー、テレケル(Telechele)、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、ビスエポキシドと不飽和脂肪酸とをベースとする酸化乾燥するアルキド樹脂、ヒドロキシ官能性ポリスルフィド又はこれらの混合物をベースとする場合によりヒドロキシ官能化及び/又はアミノ官能化されたポリウレタン−分散液が使用される。
【0023】
特に、構成グループとして、ペルフルオロアルキルアルコール、ジイソシアナート及びジエタノールアミン(その際、一般式
CF−(CF(CH−OH
[式中、x=3〜20及びy=1〜6]の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルコール(炭化水素−スペーサー)又は一般式
CFCFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)CH−OH
[式中、z=1〜10]のヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)−オリゴマーアルコール又はこれらの混合物を使用するのが有利である)、及び/又はペルフルオロアルキルアルケン及びジエタノールアミン(その際、一般式
CF−(CFCH=CH
[式中、x=3〜20]の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルケン(炭化水素−スペーサー)又はこれらの混合物を使用するのが有利である)、及び/又はアルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート、及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及びジエタノールアミン及び/又は(ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシド及びN−メチルエタノールアミン又はジエタノールアミンからなる反応生成物をベースとする横側がフッ素変性されたマクロモノマーを含有するポリウレタン分散液が適している。
【0024】
特に有利な実施態様の場合には、ハイソリッドゼロVOCプロセス(High Solids Zero VOC Process)(EP 1 064 314 B1並びにDE 102 08 567 A1参照)を用いてフッ素変性されたポリウレタンベース分散液が製造されるこの方法は、カスタムメイドのポリウレタン分散液の全般的な製造方法である。この方法は技術的要求が少なくかつ揮発性及び/又は不揮発性有機溶剤を全く使用しないことで、低コストで高い空時収率を可能にする。本発明によるポリウレタン分散液の、溶剤不含、固体含有量、材料特性に関する性能は注目に値する。更に、この方法の単純性及び再現性並びに生成物の貯蔵安定性は際立っている。このポリウレタン分散液もしくはポリウレタン−ポリ尿素ポリマーは、その製造方法に基づき、完全に線状のセグメント化された構造を有する。このポリウレタンポリマーの完全に線状のセグメント化された構造のために、分子間で硬質セグメントと軟質セグメントとからなる極めて顕著なかつ規則的なドメイン構造が生じる。硬質セグメントは、剛性のウレタン基及び尿素基並びに短鎖ジオールを有する構造エレメントからなり、これは著しい分子鎖間(interchenare)の相互作用を及ぼす。軟質セグメントは、カーボネート基、エステル基及びエーテル基を有する柔軟な構造エレメントからなり、これは弱い分子鎖間(interchenare)の相互作用を及ぼす。
【0025】
この用語の「完全に線状のセグメント化された(ideal linear segmentiert)ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー」は次のことを実現する:
a) ポリウレタン−プレポリマー用の2工程の製造方法により、ポリイソシアナート2molとポリオール1molとからなるほぼ対称の2:1付加物を形成し、その際、ポリオールは反応性の第2のイソシアナート基と反応し、2:1付加物は末端の第1のイソシアナート基を有する、
b) ポリウレタン−プレポリマー用の2工程の製造方法により、カルボキシル基もしくはカルボキシラート基(DMPA)及び/又はスルホン酸基もしくはスルホナート基の比較的わずかな全体量でポリウレタン−ポリ尿素ポリマー中に非対称の電荷密度分布をさせるオリゴウレタンの形成を抑制する、
c) ポリイソシアナート2molとポリオール1molとからなる2:1付加物は、2つのウレタン基を介して相互に結合している3つの構造単位を提供する、
d) ポリイソシアナート2molとポリオール1molとからなる2つの2:1付加物は、他の構造単位を介して及び1つ又は2つの尿素基を介して結合(二官能性アミン又は水を用いてCO脱離下での連鎖延長)しているか、又はポリイソシアナート2molとポリオール1molとからなる1つの2:1付加物は、ポリマー鎖に対して他の構造単位(下記参照)を介して及び1つ又は2つの尿素基を介して結合(二官能性アミン又は水を用いてCO脱離下での連鎖延長)していて、かつポリマー末端に対して他の構造単位を介して及び1つの尿素基を介して結合(単官能性アミン及び/又は水を用いてCO脱離下での連鎖停止)している、
e) 連鎖延長及び場合により連鎖停止により、並びに残留するNCO基と水との反応により、優れた機械的特性を有する線状セグメントポリマーが形成される、
g) カルボキシル基もしくはカルボキシラート基(DMPA)及び/又はスルホン酸基もしくはスルホナート基の均一な分布が製造される、
f) 優れた機械的特性を達成するために連鎖延長剤の配列は重要ではない、
それにより、全体のポリウレタン−ポリ尿素ポリマーにわたるポリイソシアナート2molとポリオール1molとからなる定義されたかつ対称の2:1付加物の連続による規則的な配列が得られる。
【0026】
(フッ素変性された)ポリウレタン−分散液のこの優れた材料特性は、適切なプロセス実施において(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液に伝達される。(フッ素変性された)ポリウレタン−分散液及び(フッ素変性された)モノマー成分の選択に応じて、伸び率及び引張強さにおける伸び率を広範囲にわたりほとんど任意に変えることができる。
【0027】
成分(B)(i)として、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つのモノマー、例えばアクリル酸及びその誘導体及び/又はメタクリル酸及びその誘導体及び/又はスチレン及びその誘導体を使用する。有利に、アクリル酸、アクリル酸無水物、アクリル酸アミド、アクリル酸ジメチルアミド、アクリル酸ニトリル、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ビニルエステル、アクリル酸プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸−tert−ブチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸シクロヘキシルエステル、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸−(2−エチルヘキシルエステル)、アクリル酸−(3,3,5−トリメチルヘキシルエステル)、アクリル酸ドデシルエステル、アクリル酸イソドデシルエステル、アクリル酸オクタデシルエステル並びにアクリル酸−(2−ヒドロキシエチルエステル)、アクリル酸−(ヒドロキシプロピルエステル)(異性体混合物)、アクリル酸[(2−ジメチルアミノ)−エチルエステル]、アクリル酸−[(ジメチルアミノ)−プロピルエステル]、アクリル酸−(3−スルホプロピルエステル)カリウム塩、メタクリル酸、メタクリル酸無水物、メタクリル酸アミド、メタクリル酸ジメチルアミド、メタクリル酸ニトリル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ビニルエステル、メタクリル酸プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸イソブチルエステル、メタクリル酸−tert−ブチルエステル、メタクリル酸ヘキシルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、メタクリル酸オクチルエステル、メタクリル酸−(2−エチルヘキシルエステル)、メタクリル酸ドデシルエステル、メタクリル酸イソドデシルエステル、メタクリル酸オクタデシルエステル、メタクリル酸ベンジルエステル並びにメタクリル酸−(2−ヒドロキシエチルエステル)、メタクリル酸−(ヒドロキシプロピルエステル)(異性体混合物)、メタクリル酸−[(2−ジメチルアミノ)−エチルエステル]、メタクリル酸−2,3−エポキシプロピルエステル、メタクリル酸[2−(アセトアセトキシ)−エチルエステル]、メタクリル酸−(3−スルホプロピルエステル)カリウム塩、ジメチル−[2−(メタクリロイルオキシ)−エチル]−(3−スルホプロピル)−アンモニウム−ベタイン、ジメチル−[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−(3−スルホプロピル)−アンモニウム−ベタイン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸(AMPS(R))及びその塩、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸、ナトリウム塩が使用される。その他に、メトキシポリエチレングリコールをベースとするラジカル重合可能な二重結合を有する(メタ)アクリル酸エステル、低分子量及び/又は高分子量のポリマーのポリオールをベースとする2つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用することもできる。基本的に同様に、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン並びに無水マレイン酸及びその誘導体が適している。メチルメタクリラート5〜95質量%とn−ブチルアクリラート5〜95質量%との組合せが特に有利である。
【0028】
成分(B)(ii)として、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つのフッ素変性されたモノマー、例えばアルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は1−(1−イソシアナト−1−メチル−エチル)−3−(2−プロペニル)−ベンゼン(m−TMI)とペルフルオロアルキルアルコールとからなる反応生成物が使用される。有利に、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリラート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリラート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリラート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリラート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロブチル)エチルアクリラート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロデシル)エチルアクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート、3−ペルフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリラート、3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリラート、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリラート、3−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−(ペルフルオロオクチル)エチルアクリラート、3−ペルフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリラート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリラート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリラート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリラート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリラート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルメタクリラート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタクリラート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリラート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリラート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロブチル)エチルメタクリラート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロデシル)エチルメタクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリラート、3−ペルフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリラート、3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリラート、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリラート、3−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、2−(ペルフルオロオクチル)エチルメタクリラート、3−ペルフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリラート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリラート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリラートが使用される。(ペル)フルオロアルキルメタクリラートが特に有利である。
【0029】
成分(B)(iii)として、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する少なくとも1つの(場合によりフッ素変性された)モノマー、例えば一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子及び0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有する任意の有機基)の多面体のオリゴマーポリシルセスキオキサン(POSS)が使用される。
【0030】
シルセスキオキサンは、オリゴマー又はポリマーの物質であり、この完全に縮合された代表物は一般式(SiO3/2R)を表し、その際、n>4であり、基Rは水素原子であることができるが大抵は有機基を表す。シルセスキオキサンの最も小さな構造は四面体である。Voronkov及びLavrent'yev著(Top. Curr. Chem. 102 (1982), 199-236)は、三官能性のRSiY前駆体(式中、Rは炭化水素基を表し、Yは加水分解可能基、例えばクロリド、アルコキシド又はシロキシドを表す)の加水分解による縮合による、完全に縮合された及び完全には縮合されていないオリゴマーのシルセスキオキサンの合成を記載している。Lichtenhan et al.はオリゴマーのシルセスキオキサンの塩基触媒による製造を記載している(WO 01/10,871)。式RSi12のシルセスキオキサン(同じ又は異なる炭化水素基Rを有する)は、塩基触媒により反応させて、官能化された完全には縮合されていないシルセスキオキサン、例えばRSi(OH)又はRSi11(OH)及びRSi10(OH)にし、(Chem. Commun. (1999), 2309-10; Polym. Mater. Sci. Eng. 82 (2000), 301-2; WO 01/10871)、それにより多様な完全には縮合されていない多官能性のシルセスキオキサン用の原料化合物として利用することができる。特に、式RSi(OH)のシルセスキオキサン(トリシラノール)は、官能化されたモノマーのシラン(corner capping)と反応させることにより相応して変性されたオリゴマーのシルセスキオキサンに変換される。
【0031】
有利に、一般式(RSiO1.5(式中、R=メタクリロイルオキシプロピル及び場合によりCHCHCFCFCFCFCFCF及び/又はH及び/又はC〜C25−アルキル及び/又はC〜C25−シクロアルキル及び/又はC〜C30−アリール及び/又は(CH(OCHCHOMe及び/又はアミノプロピル及び/又はエポキシプロピル及び/又はジメトキシシリルオキシ及び/又はイソシアナトプロピル及び/又はトリエトキシシリルプロピル)の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)が使用される。一般式(RSiO1.5(式中、R=メタクリロイルオキシプロピル及び場合によりCHCHCFCFCFCFCFCF及び/又はアルキル)の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサンが特に有利であると見なされる。
【0032】
しかしながら本発明の範囲内で、成分(B)(iii)として、一般式
(RSiO1.5
[式中、a=0又は1、b=0又は1、a+b=1、m=2、6、8、10、12、並びにR=水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基又はポリマー単位(これらは置換されているか又は非置換である)又はポリマー単位又は架橋単位を介して結合されている他の官能化された多面体のオリゴマーのケイ素−酸素クラスター単位、X=オキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シロキシ基、アルキルシロキシ基、アルコキシシロキシ基、シリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、ハロゲン基、エポキシ基、エステル基、フルオロアルキル基、イソシアナート基、ブロックトイソシアナート基、アクリラート基、メタクリラート基、ニトリル基、アミノ基、ホスフィン基、ポリエーテル基又はタイプXのような基を少なくとも1つ有するタイプRの置換基を意味し、その際、タイプRの前記置換基並びにタイプXの置換基は同じ又は異なる]の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することも可能である。
【0033】
成分(C)として、1つ以上の熱的に不安定なアゾ基又はペルオキソ基を有する少なくとも親油性ラジカル開始剤が使用され、前記開始剤は40〜120℃の範囲内の分解温度で1時間の半減時間を有する。有利に、無機ペルオキシド、例えばアンモニウムペルオキソジスルファート、ナトリウムペルオキソジスルファート、カリウムペルオキソジスルファート、過酸化水素、有機ペルオキシド、例えばペルカーボネート、ジアシルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、アルキルペルオキシド、例えばジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、例えばジ−tert−ブチルペルオキシド、アシルアルキルペルオキシド、例えばtert−ブチルペルオキシベンゾエート、アゾ開始剤、殊に2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)もしくは2,2′−アゾイソブチロニトリルが使用される。70〜90℃の分解温度で1時間の半減時間を有するラジカル開始剤、例えば2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及び/又は2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)が特に適している。
【0034】
成分(B)と(C)との開始剤/モノマー比は、0.001〜0.05の範囲内に調節される。
【0035】
反応工程a)は15〜35℃、有利に20〜30℃の温度で実施される。
【0036】
この方法の更なる実施のために、反応工程a)で重合において通常の技術を適用しながら工程a)からの反応混合物中で成分(C)の熱分解により成分(B)のラジカル重合をポリウレタンベース分散液(A)のミセル中で実施する。
【0037】
ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の製造のために、工業的に通常の、文献に頻繁にIn-Situ重合として表される方法をその多様なバリエーションで使用する。
【0038】
バリエーションA(バッチプロセス)
これらのモノマーは、単独でもしくは混合した形でラジカル重合の前に完全にポリウレタンベース分散液中に導入される。
【0039】
バリエーションB(シード−フィードプロセス)
これらのモノマーは、単独で又は混合した形でラジカル重合の間に連続してポリウレタンベース分散液中に導入される。
【0040】
バリエーションC(バッチプロセスとシード−フィードプロセスとからなる組合せ)
モノマーの一部を、単独で又は混合した形でラジカル重合の前にポリウレタン−ベース分散液中へ導入し、残りのモノマーを単独で又は混合した形でラジカル重合の間に連続的にポリウレタン−ベース分散液中に導入する。
【0041】
開始剤はモノマーと一緒に又は別々に添加することができる。通常では、開始剤はラジカル重合の前にモノマー中に又はモノマー混合物中に溶かされるか又はモノマー又はモノマー混合物を添加したポリウレタン−ベース分散液中に溶かされる。
【0042】
水は固体含有量の調節のために用いられ、かつモノマーもしくはモノマー混合物の添加の前に及び/又はモノマーもしくはモノマー混合物と一緒に(プレエマルション)及び/又はラジカル重合の後で添加することができる。
【0043】
この製造方法の利点は、モノマーと開始剤とを一緒に室温で添加することができ、この安定化のためにポリウレタン分散液中に、付加的(外部の)乳化剤を必要としないことにある。このモノマー及び開始剤は、ポリウレタン分散液のミセルによって乳化されている。ラジカル重合の際に、ミセル内でポリウレタン樹脂とポリマー樹脂とからなる相互侵入網目が形成され、これらの樹脂は物理的架橋によって相互に結合されている。このハイブリッド化の際に、ポリウレタン−ポリマーハイブリッド[meq・(100g)−1]中の電荷密度もしくはカルボキシラート基の数は通常ではかなり低下する。ポリウレタン分散液もしくはアニオン変性されたポリウレタンポリマーのミセルの電荷密度はどのような場合でも十分に大きく、付加的にモノマー並びにモノマーから製造されたポリマーを十分に安定化することができる。
【0044】
反応工程a)中での乳化重合は、有利に他の乳化剤なしで実施される。重合の完了後に、仕上がったフッ素変性されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液を、有利な実施態様の場合には冷却し、100μm篩を介して濾過し、場合により存在する硬化したフォームをこの際完全に分離する。ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の貯蔵安定性は少なくとも1年である。
【0045】
この反応工程a)は、成分(C)が1時間の半減時間を有する温度の±10℃の温度差で実施される。有利に、この反応工程a)は2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及び/又は2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)を成分(C)として使用した場合に、80±10℃の温度で実施される。
【0046】
成分(A)〜(C)からなるアニオン変性されたポリウレタン−ハイブリッドポリマー中のカルボキシラート基及び/又はスルホナート基の含有量は、5〜25meq・(100g)−1、有利に10〜20meq・(100g)−1、及び酸価は2.5〜15meq KOH・g−1、有利に5〜12.5meq・KOH・g−1に調節される。
【0047】
成分(A)〜(C)からなる(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッドの固体含有量は、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の全体量に対して30〜70質量%、有利に40〜60質量%に調節される。
【0048】
成分(A)からの(フッ素変性された)ポリウレタン−樹脂対成分(B)及び(C)からの(フッ素変性された)ポリマー樹脂との固体含有量の割合は、有利に20〜80対80〜20質量%、有利に40〜60対60〜40質量%に調節される。
【0049】
(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、有機溶剤を10質量%よりも少なく含有し、その際この有機溶剤は有利にポリウレタン−ベース分散液により導入される。(フッ素化された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の塗膜形成もしくは凝集を改善するために、反応工程a1)及びa2)による製造の間又はその後に、更に有機溶剤、凝集助剤、例えばN−メチルピロリドン、グリコールエーテル、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル(Proglyde DMM(R))及び環式アルキレンカーボネートを使用することができる。有利に、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、有機溶剤を10質量%より少なく含有する。特に有利な実施態様によると、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は溶剤不含で存在する。
【0050】
成分(A)〜(C)からなる(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の平均粒子径は50〜500nm、有利に100〜400nmである。
【0051】
成分(A)〜(C)からなる(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の平均分子量(数平均)は、50000〜500000ダルトンである。
【0052】
残留モノマー含有量は、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の全体量に対して0.1質量%より少ない。
【0053】
反応工程a)中の成分(B)及び(C)からなる純粋なポリマーは、−50〜+100℃、殊に−25〜+25℃の有利なガラス転移温度を有する。この計算はFox式を用いて行われる。
【0054】
場合により、引き続く工程b)において、工程a)からの成分(A)〜(C)からなる分散液成分(結合剤)を、架橋剤成分(D)(硬化剤)20〜100質量部と反応させ、その際、架橋剤成分(D)として、脂肪族及び/又は環式脂肪族及び/又は芳香族に結合したイソシアナート基を有する水に分散可能な(塗料)ポリイソシアナートを使用し、これは有機溶剤0〜25質量%含有することができる。架橋剤成分(D)対成分(A)〜(C)からなる結合剤成分の比は1:3〜1:5である。適用後に、改善された耐薬品性を有する高度に架橋したフッ素変性されたポリウレタン被覆系が得られた。
【0055】
架橋剤成分(D)として、脂肪族及び/又は環式脂肪族及び/又は芳香族に結合したイソシアナート基を有する水に分散可能なポリイソシアナートが使用され、これは有機溶剤0〜25質量%を含有する。脂肪族ポリイソシアナートは、芳香族ポリイソシアナートと比較して有利である。特に、ポリウレタン化学において十分に公知の、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン(H12MDI)、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−5−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(IPDI)又はこれらの混合物をベースとするいわゆる「塗料イソシアナート(Lackpolyisocyanate)」が適している。「塗料イソシアナート」の概念は、アロファナート基、ビューレット基、カルボジイミド基、イソシアヌラート基、ウレトジオン基、ウレタン基を有する、このジイソシアナートの誘導体を表し、この場合モノマーのジイソシアナートの残留含有量は先行技術に相応して最小限に減少される。その他に、例えば「塗料ポリイソシアナート」とポリエチレングリコールとの反応により得られた親水性に変性されたポリイソシアナートを使用することもできる。適当なポリイソシアナートとして、例えば市販の親水性に変性されていないHDIイソシアナート(商品名Rhodocoat WT 2102, Rhodia AG社)又は親水性に変性されたHDIイソシアナート(商品名Desmodur DAもしくはBayhydur 3100, Bayer AG社)を使用することもできる。持続的親水性変性されていない脂肪族ポリイソシアナートが有利である。
【0056】
すぐに使用できる水性の高度に架橋された二成分ポリウレタン被覆材料を製造するために、架橋剤成分(D)(「硬化剤」、部分B)は、加工の直前に成分(A)〜(C)からなる結合剤成分(「原料塗料」、部分A)中に混入される。問題のない乳化を達成するために、ポリイソシアナートを少量の有機溶剤、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル(Proglyde DMM(R))、ブチル(ジ)グリコールアセタート又はブチルアセタートで希釈することが推奨される。大抵は、例えば機械的撹拌機(撹拌機を備えたボーリング機械)を用いた簡単な乳化技術又は手による両方の成分の簡単な混合が、ポリイソシアナート液滴の結合剤成分中での均一な分配を保証するために十分である。結合剤成分及び架橋剤成分の量は、この場合、架橋剤成分のイソシアナート基対結合剤成分のヒドロキシル基及び/又はアミノ基のNCO/(OH+NH(2))当量比は、1.1〜1.6、有利に1.2〜1.4に調節される。
【0057】
このように、高い高度と組合せた高い架橋密度により、優れた特性を有する防汚被覆系が達成される。このことは、極めて良好な耐溶剤性及び耐薬品性と組み合わせた、加工性に関しても、機械的特性に関しても通用する。結合剤成分中での比較的低い含有量の親水性基に基づき、この被覆は優れた耐水性を特徴とする。
【0058】
この反応工程b)は15〜35℃、有利に20〜30℃の温度で実施される。
【0059】
本発明により調製されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は1成分及び2成分の形で使用されるが、この1成分の形が改善された取り扱い性のために有利である。2成分適用の場合に、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は結合剤成分として使用され、水に乳化可能なポリイソシアナートは硬化剤成分として使用される。
【0060】
本発明の他の主題は、建築分野又は工業分野において、鉱物性及び非鉱物性の下地、例えば
a) 無機表面、
例えば、全ての種類の多孔性、吸収性、粗面及び研磨された建築資材及び建築材料(例えば、コンクリート、漆喰、ケイ酸及びケイ酸塩、人工石、天然石(例えば、花崗岩、大理石、砂岩、粘板岩、蛇紋岩)、粘土、セメント、レンガ)並びにエナメル、充填剤及び顔料、ガラス、セラミック、金属及び金属合金、
b) 有機表面
例えば、木及び木材、ベニア、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、プラスチック、皮革、天然繊維、全ての種類の極性有機ポリマー、複合材料
の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、改善された表面特性を有する(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の使用に関する。
【0061】
本発明により提案された、改善された表面特性を有する(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、次の適用分野において、持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のために適している:
建築、例えば
・ 落書き防止/防汚コーティング、
・ イージークリーンコーティング、
・ 全ての種類の他の被覆(例えばバルコニー被覆、屋根(瓦)被覆、焼き付け塗料、ペイント及び塗料、ファッサードペイント、床用被覆、軽量、中量及び重量負荷可能な工業用床、公園地盤被覆、スポーツ用床)、
・ シーリング、
・ コンクリート完成部品、
・ コンクリート成形品、
・ タイル及び目地、
・ 接着剤及び封止剤、
・ 防音壁、
・ 防食、
・ 漆喰及び装飾漆喰、
・ 断熱複合材料系(WDVS)及び断熱系(WDS)
並びに
非建築及び工業、例えば
・ 自動車工業、
・ コイルコーティング、
・ 焼き付け塗料、
・ ガラス繊維及びガラス表面、
・ セラミック及び衛生用セラミック、
・ 皮革仕上げ、
・ 表面変性された充填剤及び顔料、
・ 紙被覆、
・ 風力装置のロータ
・ 船舶用塗料。
【0062】
本発明による、改善された表面特性を有する(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、それぞれの適用分野のために調製された形又は調製されていない形で使用することができる。調製成分は、例えば消泡剤、脱気剤、潤滑剤、レベリング剤、分散剤、基材湿潤剤、疎水化剤、流動性付与剤、凝集助剤、艶消し剤、定着剤、凍結防止剤、酸化防止剤、UV安定剤、殺菌剤、殺真菌剤、他のポリマー及び/又はポリマー分散液、充填剤、顔料及び全ての種類のナノ粒子又はこれらの適当な組合せであり、その際、個々の調製成分はこの場合不活性と見なされる。この調製成分は、(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の製造の間及び/又はその後に導入することができる。原則として、調製物の範囲内で、改善された表面特性を有する本発明による(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液を水性又は非水性の結合剤と組み合わせる及び/又は改善された表面特性を有する本発明による(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液をベースとする調製物を水性又は非水性の結合剤をベースとする調製物と組み合わせることもできる。水性又は非水性の結合剤の概念は、この場合、水ベースのポリウレタン、ポリマー分散液、再分散性ポリマー粉末又は非水性の溶剤含有又は溶剤不含の、場合により反応性のポリマーを表す。ペルフルオロアルキル鎖の整列を改善するためもしくは表面でのミセル形成を抑制するために、場合によりフッ素含有の界面活性剤を使用することができる。
【0063】
改善された表面特性を有する本発明による(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の適用は、塗料工業から公知の方法、例えばフローコーティング、キャストコーティング、ブレードコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、刷毛塗り、ディップコーティング、ローラーコーティングで行われる。
【0064】
改善された表面特性を有する本発明による(フッ素変性された)ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液から製造された被覆の乾燥及び硬化は、一般に、5〜50℃の範囲内の常温(外気温、室内温度)で、つまり被覆を特別加熱することなしに行われるが、しかしこの適用に応じて50〜150℃の範囲内の高めた温度でも行うこともできる。
【0065】
改善された表面特性(低い臨界表面張力γ及び極めて高い接触角θ)を有する場合によりフッ素化されたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液に関し、この分散液は
a) 場合によりフッ素化された側鎖を有する、場合によりヒドロキシ官能性及び/又はアミノ官能性のポリウレタン−ポリマーハイブリッドの水溶液又は水性分散液をベースとする分散成分(結合剤)を製造し
並びに、場合により
b) 引き続き工程a)からの分散成分を架橋剤成分(D)と反応させる
ことにより得られる。
【0066】
本発明によるポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、この場合、溶剤不含又は溶剤貧有であることができかつ高い固体含有量で製造することができかつ極めてわずかな必要量の安定化基を必要とするにすぎない。
【0067】
次の実施例は、本発明を詳細に説明する。
【0068】
実施例
実施例1
0.64質量%のポリマーに結合したフッ素含有量、38質量%の固体含有量及びNMP3.60質量%の溶剤含有量を有するフッ素変性されたポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、n−ブチルアクリラート(3)及びメチルメタクリラート(4)を撹拌しながら添加する。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(5)をに良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0069】
1. フッ素変性されたポリウレタン−分散液(A)400.00g
2. 水道水72.12g
3. n−ブチルアクリラート20.27g
4. メチルメタクリラート81.07g
5. 2,2′−アゾイソブチロニトリル1.27g
【0070】
実施例2
0.64質量%のポリマーに結合したフッ素含有量、38質量%の固体含有量及びNMP3.60質量%の溶剤含有量を有するフッ素変性されたポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート(3)、メチルメタクリラート(4)及びn−ブチルアクリラート(5)を撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0071】
1. フッ素変性されたポリウレタン−分散体(A)400.00g
2. 水道水18.40g
3. 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート3.26g
4. メチルメタクリラート55.37g
5. n−ブチルアクリラート6.51g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル0.80g
【0072】
実施例3
0.64質量%のポリマーに結合したフッ素含有量、38質量%の固体含有量及びNMP3.60質量%の溶剤含有量を有するフッ素変性されたポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3−{3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1(3,9).1(5,15).1(7,13)]オクタシロキサン−1−イル}プロピルメタクリラート(C357414Si)(3)、メチルメタクリラート(4)及びn−ブチルアクリラート(5)を個別に混合し、次いで撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0073】
1. フッ素変性されたポリウレタン−分散体(A)400.00g
2. 水道水39.07g
3. メタクリロイル官能性POSS4.09g
4. メチルメタクリラート 69.57g
5. n−ブチルアクリラート8.18g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル1.00g
【0074】
実施例4
0.64質量%のポリマーに結合したフッ素含有量、38質量%の固体含有量及びNMP3.60質量%の溶剤含有量を有するフッ素変性されたポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロオクチルメタクリラート(3)、メチルメタクリラート(4)及びn−ブチルアクリラート(5)を撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0075】
1. フッ素変性されたポリウレタン−分散体(B)400.00g
2. 水道水18.19g
3. 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルメタクリラート3.26g
4. メチルメタクリラート55.37g
5. n−ブチルアクリラート6.51g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル0.80g
【0076】
実施例5
40質量%の固体含有量及びNMP3.73質量%の溶剤含有量を有するポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート(3)、メチルメタクリラート(4)及びn−ブチルアクリラート(5)を撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0077】
1. ポリウレタン−分散体(B)400.00g
2. 水道水87.56g
3. 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート4.09g
4. メチルメタクリラート67.11g
5. n−ブチルアクリラート10.64g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル1.34g
【0078】
実施例6
40質量%の固体含有量及びNMP3.73質量%の溶剤含有量を有するポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3−{3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1(3,9).1(5,15).1(7,13)]オクタシロキサン−1−イル}プロピルメタクリラート(C357414Si)(3)、メチルメタクリラート(4)及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート(5)を個別に混合し、次いで撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0079】
1. ポリウレタン−分散体(B)400.00g
2. 水道水40.37g
3. メタクリロイル官能性POSS2.74g
4. メチルメタクリラート60.34g
5. 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリラート5.49g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル0.81g
【0080】
実施例7
40質量%の固体含有量及びNMP3.73質量%の溶剤含有量を有するポリウレタンベース分散液(1)を反応容器中に室温で装入し、均一に撹拌しながら水(2)で希釈した。引き続き、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロオクチルメタクリラート(3)、メチルメタクリラート(4)及びn−ブチルアクリラート(5)を撹拌しながら添加した。その後に、開始剤成分の2,2′−アゾイソブチロニトリル(6)を良好に撹拌混入する。更に、この反応混合物を80〜85℃に加熱し、この温度で5時間保持する。引き続き、この分散液を25℃に冷却する。約45質量%の固体含有量を有する微細に分散した不透明なハイブリッド分散液が得られた。
【0081】
1. ポリウレタン−分散体(B)400.00g
2. 水道水87.19g
3. 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルメタアクリラート7.47g
4. メチルメタクリラート87.47g
5. n−ブチルアクリラート11.73g
6. 2,2′−アゾイソブチロニトリル1.04g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 場合によりフッ素変性された側鎖を有する、場合によりヒドロキシ官能性及び/又はアミノ官能性ポリウレタン−ポリマーハイブリッドの水溶液又は水性分散液をベースとする分散液成分もしくは結合剤成分を製造し、その際、
) 有利に完全に線状のセグメント化された構造を有し、0〜5質量%のポリマー結合されたフッ素含有量を有し、0〜250mg KOH/gのヒドロキシル価及び/又はアミン価を有し、20〜60質量%の固体含有量を有し、0〜20質量%の溶剤含有量を有しかつ5000〜100000ダルトンの平均分子量を有する、場合により横側がフッ素変性されたアニオン安定化されたポリウレタンベース分散液(A)5〜100質量部に、
(i) アクリル酸及びその誘導体及び/又はメタクリル酸及びその誘導体及び/又はスチレン及びその誘導体のグループから選択される、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和モノマー(B)(i)1〜100質量部、
及び/又は
(ii) アルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及び/又は1−(1−イソシアナト−1−メチル−エチル)−3−(2−プロペニル)ベンゼン(m−TMI)とペルフルオロアルキルアルコールとからなる反応生成物のグループから選択される、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する、1つ以上の不飽和のフッ素変性されたモノマー(B)(ii)1〜100質量部
及び/又は
(iii) 一般式(RSiO1.5(式中、n=4、6、8、10、12及びR=1〜100個のC原子を有しかつ0〜50個のN原子及び/又は0〜50個のO原子及び/又は0〜50個のF原子及び/又は0〜50個のSi原子及び/又は0〜50個のS原子を有しかつ250〜25000ダルトンの分子量を有する任意の有機基)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)のグループから選択された、1つ以上のラジカル重合可能な二重結合を有する1つ以上の不飽和の、場合によりフッ素変性されたモノマー(B)(iii)1〜100質量部
からなるモノマー成分(B)3〜300質量部からなる混合物、
1つ以上の熱的に不安定なアゾ基又はペルオキソ基を有する少なくとも1つの親油性ラジカル開始剤からなる開始剤成分(C)0.01〜10質量部並びに水0〜200質量部を添加し、その際、モノマー成分(B)、開始剤成分(C)及び水を同時に、順番に又はポリウレタンベース分散液(A)と混合して供給することができ、引き続き、
) 工程a)からの反応混合物中で、成分(C)の熱分解により、ポリウレタンベース分散液(A)のミセル内で成分(B)のラジカル重合が実施され、
並びに、場合により
b) 引き続き、工程a)からの成分(A)〜(C)からなる分散液成分もしくは結合剤成分を、架橋剤成分(D)(硬化剤)20〜100質量部と反応させ、その際、架橋剤成分(D)として、有機溶剤0〜25質量%含有することができる脂肪族及び/又は環式脂肪族及び/又は芳香族に結合したイソシアナート基を有する水に分散可能な(塗料)ポリイソシアナートを使用することにより得られたポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項2】
成分(A)として、(疎水性に変性された)ポリアルキレングリコール、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、α,ω−ポリブタジエンポリオール、α,ω−ポリメタクリラートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、マクロモノマー、テレケル、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、ビスエポキシドと不飽和脂肪酸とをベースとする酸化乾燥するアルキド樹脂、ヒドロキシ官能性ポリスルフィド又はこれらの混合物をベースとする場合によりヒドロキシ官能化及び/又はアミノ官能化されたポリウレタン−分散液を使用することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項3】
構成グループとして、
a) ペルフルオロアルキルアルコール、ジイソシアナート及びジエタノールアミン(その際、有利に一般式
CF−(CF(CH−OH
[式中、x=3〜20及びy=1〜6]の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルコール(炭化水素−スペーサー)又は一般式
CFCFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)CH−OH
[式中、z=1〜10]のヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)−オリゴマーアルコール又はこれらの混合物が使用される)
及び/又は
b) ペルフルオロアルキルアルケン及びジエタノールアミン(その際、有利に一般式
CF−(CFCH=CH
[式中、x=3〜20]の末端メチレン基を有するペルフルオロアルキルアルケン(炭化水素−スペーサー)又はこれらの混合物が使用される)、
及び/又は
c) アルキル(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート、及び/又は(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリラート及び/又は(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロ(メタ)アクリラート及びジエタノールアミン
及び/又は
d) (ペル)フルオロアルキルアルキレンオキシド及びN−メチルエタノールアミン又はジエタノールアミンからなる反応混合物をベースとする横側がフッ素変性されたマクロモノマーを含有するポリウレタン分散液を成分(A)として使用することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項4】
成分(B)(iii)として、一般式(RSiO1.5(式中、R=メタクリロイルオキシプロピル及び場合によりCHCHCFCFCFCFCFCF及び/又はH及び/又はC〜C25−アルキル及び/又はC〜C25−シクロアルキル及び/又はC〜C30−アリール及び/又は(CH(OCHCHOMe及び/又はアミノプロピル及び/又はエポキシプロピル及び/又はジメトキシシリルオキシ及び/又はイソシアナトプロピル及び/又はトリエトキシシリルプロピル)の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項5】
成分(B)(iii)として、一般式
(RSiO1.5
[式中、
a=0又は1、
b=0又は1、
a+b=1、
m=2、6、8、10、12、並びに
R=水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基又はポリマー単位(これらはそれぞれ置換されているか又は非置換である)又はポリマー単位又は架橋単位を介して結合されている他の官能化された多面体のオリゴマーのケイ素−酸素クラスター単位、
X=オキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シロキシ基、アルキルシロキシ基、アルコキシシロキシ基、シリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、ハロゲン基、エポキシ基、エステル基、フルオロアルキル基、イソシアナート基、ブロックトイソシアナート基、アクリラート基、メタクリラート基、ニトリル基、アミノ基、ホスフィン基、ポリエーテル基又はタイプXのような基を少なくとも1つ有するタイプRの置換基を表し、
タイプRの前記置換基並びにタイプXの置換基は同じ又は異なる]の反応性の多面体のオリゴマーのポリシルセスキオキサン(POSS)を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項6】
成分(C)として、40〜120℃の範囲内の分解温度で1時間の半減時間を有するラジカル開始剤を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項7】
成分(C)として2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及び/又は2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項8】
成分(B)及び(C)の開始剤/モノマーのモル比を0.001〜0.05の値に調節することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項9】
成分(A)〜(C)からなるアニオン変性されたポリウレタン−ハイブリッドポリマー中で、カルボキシラート基及び/又はスルホナート基の含有量は5〜25meq・(100g)−1、有利に10〜20meq・(100g)−1に、及び酸価は2.5〜15meq KOH・g−1、有利に5〜12.5meq・KOH・g−1に調節されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項10】
成分(A)〜(C)からなるフッ素変性されたポリウレタン−ハイブリッドポリマーの固体含有量は、ポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の全体量に対して、30〜70質量%、有利に40〜60質量%に調節されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項11】
成分(A)からの(フッ素変性された)ポリウレタン−樹脂対成分(B)及び(C)からの(フッ素変性された)ポリマー樹脂との固体含有量の比は、20〜80対80〜20質量%、有利に40〜60対60〜40質量%に調節されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項12】
ポリウレタン分散液又はポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液は、有機溶剤を10質量%より少なく含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項13】
ミセルの平均粒子径は50〜500nm、有利に100〜400nmであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項14】
平均分子量(数平均)が50000〜500000ダルトンであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項15】
架橋剤成分(D)対成分(A)〜(C)からなる結合剤成分の比が1:3〜1:5であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液。
【請求項16】
分散液成分が、
) 場合によりフッ素変性されたポリウレタンベース分散液(A)を場合により水で希釈し、成分(B)と(C)との予め製造された混合物並びに水を添加し、その際、モノマー成分(B)又はその個々の成分、開始剤成分(C)及び水を、同時に、順番に又はポリウレタンベース分散液(A)との混合物の形で供給することができ、続いて、
) 成分(C)の熱分解により成分(B)のラジカル重合を実施し、
並びに、場合により
b) 工程a)からの成分(A)〜(C)からなる結合剤成分を引き続き架橋剤成分(D)20〜100質量部と反応させることにより製造されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の製造方法。
【請求項17】
反応工程a)を15〜35℃、有利に20〜30℃の温度で実施することを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
この反応工程a)を、成分(C)が1時間の半減時間を有する温度の±10℃の温度差で実施することを特徴とする、請求項16から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
反応工程a)を、有利に、成分(C)として2,2′−アゾビスイソブチロニトリルを使用する場合に、80±10℃の温度で実施することを特徴とする、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
反応工程a)のラジカル重合を他の乳化剤なしで実施することを特徴とする、請求項16から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
反応工程b)を15〜35℃、有利に20〜30℃の温度で実施することを特徴とする、請求項16から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
1成分又は2成分の形で使用することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の使用。
【請求項23】
2成分適用の場合に、調製された又は調製されていないポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液を結合剤成分として使用し、かつ水に乳化可能な(塗料)イソシアナートを硬化剤成分として使用することを特徴とする、請求項22記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の使用
【請求項24】
建築分野又は工業分野において、鉱物性及び非鉱物性の下地、例えば
a) 無機表面、
例えば、全ての種類の多孔性、吸収性、粗面及び研磨された建築資材及び建築材料(例えば、コンクリート、漆喰、ケイ酸及びケイ酸塩、人工石、天然石(例えば、花崗岩、大理石、砂岩、粘板岩、蛇紋岩)、粘土、セメント、レンガ)並びにエナメル、充填剤及び顔料、ガラス、セラミック、金属及び金属合金、
b) 有機表面
例えば、木及び木材、ベニア、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、プラスチック、皮革、天然繊維、全ての種類の極性有機ポリマー、複合材料
の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、請求項22から23までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の使用。
【請求項25】
次の適用分野
建築、例えば
・ 落書き防止/防汚コーティング、
・ イージークリーンコーティング、
・ 全ての種類の他の被覆(例えばバルコニー被覆、屋根(瓦)被覆、焼き付け塗料、ペイント及び塗料、ファッサードペイント、床用被覆、軽量、中量及び重量負荷可能な工業用床、公園地盤被覆、スポーツ用床)、
・ シーリング、
・ コンクリート完成部品、
・ コンクリート成形品、
・ タイル及び目地、
・ 接着剤及び封止剤、
・ 防音壁、
・ 防食、
・ 漆喰及び装飾漆喰、
・ 断熱複合材料系(WDVS)及び断熱系(WDS)
並びに
非建築及び工業、例えば
・ 自動車工業、
・ コイルコーティング、
・ 焼き付け塗料、
・ ガラス繊維及びガラス表面、
・ セラミック及び衛生用セラミック、
・ 皮革仕上げ、
・ 表面変性された充填剤及び顔料
・ 紙被覆、
・ 風力装置のロータ、
・ 船舶用塗料
において、鉱物性及び非鉱物性の下地の持続的な撥油性及び撥水性の表面処理もしくは表面変性のための、請求項22から24までのいずれか1項記載のポリウレタン−ポリマーハイブリッド分散液の使用。

【公表番号】特表2009−513749(P2009−513749A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519842(P2006−519842)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007592
【国際公開番号】WO2005/007762
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】