説明

改善された音響性能を有する超音波トランスデューサ

【課題】音響アーティファクトを減少させる。
【解決手段】音波スペクトルの内部のアーティファクトを減少させることにより超音波トランスデューサ(106)の音響性能を改善するシステムは、音響素子のアレイを有する音響層(146)と、音響層に結合されており音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層(152)と、デマッチング層に結合されており基材(158)及び複数の伝導性素子(160)を含む介在層(154)とを含んでいる。介在層(154)は、デマッチング層(152)の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有するように形成される。超音波トランスデューサ(106)はまた、介在層(154)に結合されておりデマッチング層(152)及び介在層(154)を通して音響素子のアレイ(146)に電気的に接続されている集積回路(156)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、超音波トランスデューサに関し、さらに具体的には、音波スペクトルの内部のアーティファクトを減少させることにより超音波トランスデューサの音響性能を改善する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサ(すなわち超音波プローブ)は医用撮像に応用されており、患者に音響プローブを押圧してプローブが超音波を送受波する。すると、受信されたエネルギが患者の体内組織の画像化を容易にすることができる。例えば、トランスデューサを用いて患者の心臓を撮像することができる。経食道検査装置、腹腔鏡検査装置及び心内検査装置等のような体内型装置での利用を可能にするために、超音波トランスデューサの寸法を最小にすることが益々望ましくなっている。かかる応用は要求が非常にに厳しく、極く小型でありながら多量の情報を収集し得るトランスデューサ・パッケージが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超音波トランスデューサは典型的には、一次元又は二次元(2D)アレイに配列された多数の音響積層体を有している。各々の音響積層体がトランスデューサの内部の素子に対応しており、トランスデューサは、2Dアレイに配列された数千個等のように多数の音響積層体を内部に有し得る。2D音響アレイを有する超音波トランスデューサの占める空間及び電気キャパシタンスを最小にするためには、送受信ビームフォーミングに必要な電子回路に音響素子を直接接合することが好ましい。2D音響アレイ素子を関連するビームフォーミング電子回路に取り付ける単純な方法は、はんだ球、金スタッド・バンプ及びめっきポスト等のような従来の方法を用いてこれら二つの構成要素を直接接着することである。しかしながら、この接続方法ではアレイからの音波エネルギが電子回路の内部にまで伝播し、音波スペクトルの内部にアーティファクトが生じて最終的に医用診断画像の画質を低下させる。すなわち、電子的構成要素は典型的にはシリコン・ウェーハを用いて製造されるため、比較的低い音響減衰を有する。従って、音響アレイ(2Dアレイ等)がシリコン基材に直接取り付けられると、送信時に発生される音波エネルギの幾分かがシリコン基材の内部まで伝播する。この音波エネルギはシリコン基材の内部で最小損失で反響し、音響アレイに帰投して長いリングダウン(ring-down)アーティファクト及び他の音響アーティファクトを招き得る。これらのアーティファクトは、医用診断撮像に有用とされるもののような音波画像の画質を低下させる。
【0004】
音響アーティファクトは、音響アレイとシリコン電子回路との間に高音響インピーダンス層(すなわち「デマッチング(整合分離)層」)を配置することにより減少させることができる。かかるデマッチング層を音響アレイの背面側に用いると、デマッチング層の裏面の層(すなわちビームフォーミング電子回路)のインピーダンスを変化させ、従ってインピーダンス差を増大させることにより、これらのアーティファクトを大幅に減少させることは周知である。しかしながら、高インピーダンスのデマッチング層自体は、好ましい画質を提供するのに十分なだけこれらのアーティファクトを減少させる訳ではない。すなわち、デマッチング層をシリコン(ビームフォーミング電子回路のシリコン基材等)に取り付けてもシリコン自体がかなり高い音響インピーダンス及び低い音響損失を有するので、デマッチング層の音響アーティファクトを減少させる能力は相対的に顕著でない。このように、最適な音響撮像を提供するためには改善された音響構造が必要である。
【0005】
従って、音響アーティファクトを減少させる改善された音響性能を有する超音波トランスデューサを設計することが望ましい。さらに、かかる超音波トランスデューサの体内型超音波プローブとしての利用を可能にするように最小寸法を保つことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、音波スペクトルの内部のアーティファクトを減少させることにより超音波トランスデューサの音響性能を改善する方法及び装置に関するものである。この装置は、トランスデューサ素子のアレイをビームフォーミング電子回路パッケージに結合する介在(interposer)層を含んでいる。
【0007】
本発明の一観点によれば、超音波トランスデューサが、音響素子のアレイを有する音響層と、音響層に結合されており音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層と、デマッチング層に結合されており基材及び複数の伝導性素子を含む介在層とを含んでおり、介在層はデマッチング層の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有する。この超音波トランスデューサはまた、介在層に結合されておりデマッチング層及び介在層を通して音響素子のアレイに電気的に接続されている集積回路を含んでいる。
【0008】
本発明のもう一つの観点によれば、超音波トランスデューサを製造する方法が、介在層を設けるステップと、介在層に複数のビアを形成するステップと、ビアの内部に導電性材料を追加するステップと、音響層をデマッチング層に結合するステップとを含んでおり、デマッチング層は、音響層の音響インピーダンスよりも高く介在層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する。この方法はまた、介在層をデマッチング層に結合するステップと、ビームフォーミング電子回路パッケージを介在層に結合するステップとを含んでおり、ビームフォーミング電子回路パッケージは、複数の接続パッドを形成されて有し、介在層を経由して音響層に電気的に結合される。
【0009】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、侵襲型プローブ用に構成された超音波トランスデューサが、音響素子のアレイを有する音響層と、音響層に結合されており音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層と、音響層に信号を送り音響層から信号を受けるように構成されており複数の接続パッドを形成されて有するビームフォーミング電子回路とを含んでいる。この超音波トランスデューサはまた、デマッチング層に結合された介在層を含んでおり、介在層はさらに、デマッチング層の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有し複数のビアを形成されて有する非導電性基材と、ビームフォーミング電子回路を音響層に電気的に接続するように構成されており、複数のビアを通して延在する複数の導電性経路を有する第一の接続領域と、ビームフォーミング電子回路を信号入出力接続、電力及び制御接続、並びに接地及び二重電力接続の少なくとも一つを含むシステム接続に電気的に接続するように構成されている第二の接続領域とを含んでいる。
【0010】
他の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明を実施するために現状で思量される好適実施形態を示す。
【図1】超音波システムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による超音波データを取得するように構成され得るトランスデューサを有する小型超音波システムの図である。
【図3】本発明の一実施形態による図1の超音波システム用のトランスデューサ・アセンブリの実施形態の一例の遠近図である。
【図4】本発明の一実施形態による観点でのトランスデューサ・アセンブリの介在層の断面図である。
【図5】本発明のもう一つの実施形態による観点でのトランスデューサ・アセンブリの介在層の断面図である。
【図6】本発明のもう一つの実施形態による観点でのトランスデューサ・アセンブリの介在層の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるトランスデューサ・アセンブリの段階的形成を示す一連の断面模式図である。
【図8】本発明の一実施形態によるトランスデューサ・アセンブリ、介在層及びビームフォーミング電子回路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、超音波トランスデューサ106の内部の素子104(すなわちトランスデューサ素子)のアレイを駆動して体内にパルス型超音波信号を放出する送波器102を含む超音波システム100を示している。素子104の各々が、音響積層体(図3に示す)に対応している。素子104は、例えば一次元又は二次元で配列されていてよい。多様な幾何学的構成を用いることができる。各々の超音波トランスデューサ106は、所定の中心動作周波数及び帯域幅を有している。超音波信号は脂肪組織又は筋組織のような身体の構造から後方散乱されてエコーを発生し、エコーは素子104に帰投する。エコーは受波器108によって受波される。受波されたエコーはビームフォーミング電子回路110を通過し、ビームフォーミング電子回路110はビームフォーミングを実行してRF信号を出力する。次いで、RF信号はRFプロセッサ112を通過する。代替的には、RFプロセッサ112は、RF信号を復調してエコー信号を表わすIQデータ対を形成する複素復調器(図示されていない)を含み得る。次いで、RF信号データ又はIQ信号データをメモリ114に直接送って記憶させることができる。
【0013】
超音波システム100はまた、取得された超音波情報(例えばRF信号データ又はIQデータ対)を処理して、表示器118での表示のために超音波情報のフレームを作成するプロセッサ・モジュール116を含んでいる。プロセッサ・モジュール116は、取得された超音波情報に対し複数の選択可能な超音波モダリティに応じて1又は複数の処理演算を実行するように構成されている。取得された超音波情報を、エコー信号が受信されるのに伴って走査セッション中に実時間で処理して表示することができる。加えて、又は代替的には、超音波情報を走査セッション中にはメモリ114に一時的に記憶させ、次いでオフライン動作として処理して表示してもよい。
【0014】
プロセッサ・モジュール116は、以下でさらに詳細に説明するように、プロセッサ・モジュール116の動作を制御し得るユーザ・インタフェイス124に接続されている。表示器118は、診断及び解析のために利用者に提供される診断用超音波情報を含む患者情報を提示する1又は複数のモニタを含んでいる。メモリ114及びメモリ122の一方又は両方が超音波データの三次元(3D)データ集合を記憶することができ、かかる3Dデータ集合にアクセスして2D画像及び3D画像を提示する。また、多数の連続した三次元データ集合を経時的に取得して記憶することができ、実時間の3D表示又は4D表示等を提供することができる。これらの画像を、ユーザ・インタフェイス124を用いて修正することができ、また表示器118の表示設定を手動で調節することができる。
【0015】
図2は、3D超音波データを取得するように構成され得るトランスデューサ132を有する3D対応小型超音波システム130を示す。例えば、図1の超音波トランスデューサ106に関して上で述べたように、トランスデューサ132はトランスデューサ素子104の2Dアレイを有し得る。ユーザ・インタフェイス134(一体型表示器136も含み得る)が設けられて、操作者からの指令を受け取る。本書で用いられる「小型」との用語は、超音波システム130がハンド・ヘルド型若しくはハンド・キャリー型の装置であるか、又は人の手、ポケット、ブリーフケース大の鞄若しくは背嚢で運搬されるように構成されていることを意味する。例えば、超音波システム130は、典型的なラップトップ型コンピュータの寸法、例えば厚み約2.5インチ、幅約14インチ及び高さ約12インチの寸法を有するハンド・キャリー型装置であってよい。超音波システム130は約10ポンドの重量であってよく、このため操作者によって容易に持ち運び可能である。また、一体型表示器136(例えば内部表示器)が設けられ、医用画像を表示するように構成されている。
【0016】
超音波データは、有線網若しくは無線網140(又は例えばシリアル・ケーブル、パラレル・ケーブル若しくはUSBポートを介した直接接続)を介して外部装置138に送信され得る。幾つかの実施形態では、外部装置138は表示器を有するコンピュータ又はワークステーションであってよい。代替的には、外部装置138は、ハンド・キャリー型超音波システム130から画像データを受け取ることが可能であり、一体型表示器よりも高い分解能を有し得る画像を表示し又は印刷し得るような別個の外部表示器又はプリンタであってもよい。
【0017】
もう一つの例として、超音波システム130は3D対応のポケット・サイズ型超音波システムであってよい。例として述べると、ポケット・サイズ型超音波システムは幅約2インチ、長さ約4インチ、及び厚み約0.5インチで、重量が約3オンス未満であってよい。ポケット・サイズ型超音波システムは、表示器、ユーザ・インタフェイス(すなわちキーボード)、及びトランスデューサとの接続のための入出力(I/O)ポートを含み得る(全て図示されていない)。尚、異なる寸法、重量及び消費電力を有する小型超音波システムに関連して様々な実施形態を具現化し得ることを特記する。
【0018】
ここで図3を参照すると、超音波トランスデューサ106(図1)及び/又はトランスデューサ132(図2)に組み入れられるトランスデューサ・アセンブリ142の実施形態の一例の遠近図が本発明の一実施形態に従って示されている。トランスデューサ・アセンブリ142は、所望の素子間隔又はピッチ145による隔設関係に形成されており複数の層を含む音響積層体として形成されているトランスデューサ素子のアレイ144を含むものとして示されている。各々のトランスデューサ素子144には音響層146又は音響素子が含まれており、音響素子のアレイがトランスデューサ・アセンブリ142に設けられている。音響層146は第一の表面及び第二の表面を有し、第二の表面は第一の表面の裏面に位置する。一実施形態では、第一の表面は上面を含み、第二の表面は底面を含み得る。
【0019】
認められるように、音響層146は、音波エネルギを発生して患者(図示されていない)の体内に送波し、患者から後方散乱音響信号を受波して画像を作成して表示するように構成され得る。音響層146は、当技術分野で公知のように、上面及び底面に電極(図示されていない)を含み得る。音響層146は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミック、圧電複合材料、圧電単結晶又は圧電ポリマーで形成されていてよい。幾つかの実施形態では、音響層146は上述の材料の多数の層を含み得ることが特記され得る。さらに具体的には、一実施形態では、音響層146は同じ材料の多数の層を含んでいてよく、もう一つの実施形態では、音響層146は異なる材料の多数の層を含んでいてよい。
【0020】
図3に示すように、各々のトランスデューサ素子144が、音響層146の第一の表面に配設された少なくとも一つのマッチング(整合)層を含み得る。少なくとも一つのマッチング層は、音響層146の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有するように構成され得ることが特記され得る。例えば、少なくとも一つのマッチング層の音響インピーダンスは約2MRayl〜約15MRaylの範囲にあってよく、音響層146の音響インピーダンスは約3MRayl〜約35MRaylの範囲にあってよい。
【0021】
一実施形態では、第一のマッチング層148が、当該層自体上面及び底面を有し、音響層146の第一の面に配設され得る。認められるように、第一のマッチング層148は、高インピーダンスのトランスデューサ素子と、例えば低インピーダンスの患者との間に存在し得るインピーダンス差の整合を容易にするように構成され得る。現在思量される構成では、第一のマッチング層148は、充填エポキシ、金属含浸グラファイト、又はガラス・セラミックスを含み得る。
【0022】
現在思量される構成では、各々のトランスデューサ素子144はまた、上面及び底面を有し第一のマッチング層148の上面に配設された第二のマッチング層150を含み得る。第一のマッチング層148に関して特記されたように、第二のマッチング層150も、高インピーダンスのトランスデューサ素子と低インピーダンスの患者との間に存在し得るインピーダンス差の整合を容易にするように構成され得る。また、第一のマッチング層148に関して前述したように、現在思量される構成では、第二のマッチング層150は、無充填エポキシ、又はポリスルホン若しくはポリスチレンのようなプラスチックを含み得る。第一及び第二のマッチング層148、150がトランスデューサ素子144に含まれるように示されているが、さらに少数又は多数のマッチング層を用いてよいことが認められる。このようなものとして、単一のマッチング層を用いることもできるし、第一及び第二のマッチング層に第三及び第四のマッチング層を加えることもできる。
【0023】
一実施形態によれば、第一のマッチング層148は導電性材料で構成される。第二のマッチング層150は第一のマッチング層148に連続した層として施工され、当該層の底面に導電性薄膜151を含んでいる。このように、連続した第二のマッチング層150(及び導電性薄膜151)は、トランスデューサ素子144の各々に電気的接地接続を提供する。もう一つの実施形態によれば、第一のマッチング層は非導電性であり、当該層の底面に形成された導電層を有し、このようにして連続した層として形成され得ることが認められる。さらに、実施形態の一例によれば、第二のマッチング層150の上面にシリコン又はポリウレタンのような表面仕上げ材(図示されていない)を載置して、患者と共に用いられるトランスデューサ・アセンブリ142を構成し得ることが認められる。
【0024】
さらに図3に示すように、各々のトランスデューサ素子144は、音響層146の底面に隣接して配設されたデマッチング層152を含み得る。デマッチング層152は音響層146の底面に配設されて音響層146に結合されている。デマッチング層152は、音響層146の音響インピーダンスよりも実質的に高いインピーダンスを有する材料を用いて構築され得る。例えば、音響層146の音響インピーダンスは約3MRayl〜約35MRaylの範囲にあってよく、デマッチング層152の音響インピーダンスは約60MRayl〜約100MRaylの範囲にあってよく、好ましくは約70MRaylよりも高い。幾つかの実施形態では、高インピーダンス材料は炭化タングステンで形成され得るが、タングステン、タンタル、又は同様の音響インピーダンスを有する他の材料を用いてもよいことが認められる。デマッチング層152は音響インピーダンス変換器として作用し、音響層146の後面に現われる(又は後面が経験する)実効音響インピーダンスを、音響層146のインピーダンスよりも実質的に高い値まで顕著に上昇させる。結果として、音波エネルギの大半が音響層146の前面から反射される。
【0025】
デマッチング層152の底面(及び音響積層体144の底面)に介在層154が結合されており、介在層154は、超音波トランスデューサ106(図1)のトランスデューサ・アセンブリ142に含まれてビームフォーミングを実行するように構成されている集積回路156(すなわち「ビームフォーミング電子回路」)に各々のトランスデューサ素子144の音響層を結合して作用するように構成されている。介在層154は低音響インピーダンスの材料で形成される。介在層154及び集積回路156の組み合わせは、デマッチング層152の背面に加わる音響負荷として作用する。デマッチング層152は音響インピーダンス変換器として作用し、これにより音響層素子146の背面に対する音響負荷の変換後のインピーダンスを与える。介在層が存在しなければ、音響層の背面に与えられる音響インピーダンスは、介在層が存在する場合よりも低い。低音響インピーダンスの介在層154を含むことにより、音響素子は音響層146の前面からさらに多くの音波エネルギを反射し、これによりトランスデューサ・アセンブリ142の音響アーティファクトを減少させる。デマッチング層152とビームフォーミング電子回路156との間に低音響インピーダンス材料で形成されている介在層154を配置すると、ビームフォーミング電子回路156の実効音響インピーダンスが顕著に上昇し、これにより音響層146の前面/上面から音波エネルギの大半を反射して、トランスデューサ・アセンブリ142における音響アーティファクトの存在を減少させる。
【0026】
実施形態の一例によれば、介在層154は、約10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満の音響インピーダンスを有する非導電性有機基材158で形成されている。有機基材158は、例えばKapton(登録商標)ポリイミドのようなポリイミドで構成されていてよい。また、介在層154には基材158を通して延在する複数の伝導性素子160が含まれており、ビームフォーミング電子回路156とデマッチング層152との間に(及び引き続き音響層146まで)電気的接続又は経路を設ける。図3に示すように、伝導性素子160の間隔又はピッチは、ビームフォーミング電子回路156の上の相互接続パッド161と各々のトランスデューサ素子144との間に電気的接続が形成されるようなものとなっている。
【0027】
介在層154が薄いとデマッチング層152及び/又はビームフォーミング電子回路156での超音波の捕捉を解消するのに十分な損失を提供しない場合があり、この超音波は後に漏洩して音響層146に戻り得ることが認められる。このため、本発明の一実施形態によれば、ビームフォーミング電子回路156の背面に損失性バッキング層163が追加される。好適実施形態では、損失性バッキング層163は、例えばエポキシ又はPVCのような損失性ポリマーに重金属粉末を混合したもののような散乱体で形成される。これらの(又は類似の)材料で形成された場合に、バッキング層163は、ビームフォーミング電子回路156の音響インピーダンス以下の音響インピーダンスを有する。損失性バッキング層163の高減弱/高散乱特性は、超音波がデマッチング層152及び/又はビームフォーミング電子回路156で捕捉された後に漏洩して音響層146に戻り得るのを防ぐのに役立つ。このように、損失性バッキング層163は、音波スペクトル内部のアーティファクトをさらに減少させるように作用する。
【0028】
尚、音響層146、第一のマッチング層148、第二のマッチング層150、デマッチング層152、及び介在層154の各々の厚みは、トランスデューサ・アセンブリ142の利用を必要とする応用に従って決定され選択され得ることが特記され得る。さらに具体的には、トランスデューサ・アセンブリ142の様々な応用によって広範囲の動作周波数が要求され得る。従って、トランスデューサ・アセンブリ142の構成層146、148、150、152、154の各々の厚みは、トランスデューサ・アセンブリ142の利用を必要とする応用に基づいて決定され得る。一実施形態によれば、層146、148、150、152、154の厚みは、「特定周波数」すなわち通常は中心周波数において動作するトランスデューサ・アセンブリ142に基づいてスケーリングされる。もう一つの実施形態によれば、層146、148、150、152、154の厚みは、幾つかの異なる周波数でのトランスデューサ・アセンブリ142の利用に基づいて異なるようにスケーリングされる。すなわち、音響層146が一つの周波数で送波し異なる周波数で受波するような高調波では、デマッチング層152及びマッチング層148、150の厚みはこれらの送受波作用を最適化するように選択される。
【0029】
ここで図4〜図6を参照すると、介在層154のさらに詳細な図が本発明の各実施形態に従って示されている。介在層154の伝導性素子160は、ビームフォーミング電子回路156とデマッチング層152との間に(及び引き続き音響層146まで)電気的接続又は経路を設けるために幾つかの形態を取り得ると認められる。本発明の一実施形態によれば、伝導性素子160は、銀エポキシのような低音響インピーダンスを有する導電性充填材料の形態にある。本発明のもう一つの実施形態によれば、伝導性素子は、低インピーダンスの非伝導性エポキシと組み合わせて用いられる1ミクロン〜10ミクロンの厚みを有するめっき銅の薄層のような伝導性相互接続の形態にあってよいことが認められる。
【0030】
図4には、本発明の一実施形態による図3のトランスデューサ・アセンブリ142と共に用いられる介在層162が示されている。介在層162は、単層の非導電性有機基材164で形成されるものとして示されている。基材164は、例えばKapton(商標登録)ポリイミドで形成されてよく、約10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満の音響インピーダンスを有する。基材164は、当該基材の前面から背面まで延在する貫通ビアとして構成されている複数のビア166を形成されて含んでいる。図4の実施形態によれば、ビア166は、図3に示すようなトランスデューサ・アセンブリ142のトランスデューサ素子144(及び音響層146)と同一の間隔又はピッチを有するように基材164に形成される。
【0031】
ビア166の各々は、介在層162を通る電気的接続又は経路を設ける導電性充填材料168で充填されている。本発明の実施形態の一例によれば、充填材料168は基材164の音響インピーダンスに類似した音響インピーダンスを有する。例えば、ビア166の内部に含まれる充填材料168は、約3MRaylの音響インピーダンスを有する銀エポキシであってよい。複数の接続パッド170が、介在層162の上面及び底面でビア166の各々に対応する位置に配置されている。このように、充填材料168及び接続パッド170は、図3に示すように、ビームフォーミング電子回路156の相互接続パッド161とトランスデューサ・アセンブリ142のトランスデューサ素子144の各々との間に電気的接続/経路を設けている。
【0032】
ここで図5を参照すると、本発明のもう一つの実施形態による図3のトランスデューサ・アレイ142と共に用いられる介在層172のさらに詳細な図が示されている。介在層172は、単層の非導電性有機基材174で形成されるものとして示されている。基材174は例えばポリイミドで形成されていてよく、約10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満の音響インピーダンスを有する。基材174には、複数の穿孔178を形成されて有する金属シート176が埋め込まれている。複数のビア180が基材174に形成されており、基材の上面から背面まで金属シート176の穿孔178を通して延在する貫通ビアとして構成されている。図5の実施形態によれば、ビア180は、図3に示すようなトランスデューサ・アセンブリ142のトランスデューサ素子144(及び音響層146)と同一の間隔又はピッチを有するように基材174に形成されている。このようなものとして、ビア180は、金属シートの穿孔のピッチに依存して金属シート176の穿孔178の各々を通して又は穿孔の一部のみを通して形成され得る。有益なこととして、金属シート176は、介在層172が被るx方向及びy方向の熱膨張の量を、有機材料の基材のみで形成された介在層と比較して低減する。実施形態の一例によれば、金属シートは、全介在層構造の25%未満を構成する。
【0033】
図5にさらに示すように、ビア180の各々は、介在層172を通して電気的接続又は経路を設ける導電性充填材料182で充填されている。本発明の実施形態の一例によれば、充填材料182は基材174の音響インピーダンスに類似した音響インピーダンスを有する。例えば、ビア180の内部に含まれる充填材料182は、約3MRaylの音響インピーダンスを有する銀エポキシであってよい。複数の接続パッド184が、介在層172の上面及び底面でビア180の各々に対応する位置に配置されている。このように、充填材料182及び接続パッド184は、図3に示すように、ビームフォーミング電子回路156の相互接続パッド161とトランスデューサ・アセンブリ142のトランスデューサ素子144の各々との間に電気的接続/経路を設けている。
【0034】
ここで図6を参照すると、本発明のもう一つの実施形態による図3のトランスデューサ・アレイ142と共に用いられる介在層186のさらに詳細な図が示されている。介在層186は、複数の別個の基材の層188、190、192を有する多層構造として形成されるものとして示されている。介在層186は、底面層188、中間層190及び最上層192の三つの基材層を含むものとして示されているが、さらに多数又は少数の層も具現化され得ることが思量される。基材層188、190、192の各々は、ポリイミドのような低音響インピーダンス(例えば10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満)を有する非導電性有機基材で形成されている。基材層188、190、192の各々は、層の前面から当該層の背面まで延在する複数のビア180を形成されて含んでいる。図6の実施形態によれば、基材層188、190、192の各々に形成されたビア194のピッチは互いに異なっており、第一のピッチを有するトランスデューサ素子144(及び音響素子146)(図3)並びに第一のピッチと異なる第二のピッチを有するビームフォーミング電子回路156(図3)の相互接続パッド161に対する介在層186の接続を可能にしている。
【0035】
図6に示すように、底面基材層188に形成されたビア194は、ビームフォーミング電子回路156の相互接続パッド161のピッチに合致する第一のピッチを有する。本発明の実施形態の一例によれば、底面基材層188のビア166の各々が金属相互接続196を形成されて有する。金属相互接続196は、銅のような伝導性材料の薄層(例えば1ミクロン〜10ミクロン厚)で形成されており、各々の相互接続はビアと実質的に一致し且つ基材層188の上面にまで延在するように刻印されている。底面基材層188のビア194の各々はまた、低インピーダンスの非導電性充填材料198で充填されており、充填材料はビアの内部まで延在する金属相互接続の上に堆積させられて、基材層と実質的に類似した音響インピーダンス(例えば約3MRayl)を有するビア構造を形成する。複数の接続パッド170が、底面基材層188の底面でビア194の各々に対応する位置に配置されている。
【0036】
ビア194はまた、中間基材層190にも形成されており、中間基材層のビアは底面基材層188のビアのピッチとは異なる第二のピッチを有する。中間基材層190のビア194は、底面層ビアの金属相互接続196と重なり合う/交差するような位置に形成されており、底面基材層188と中間基材層190との間に電気的接続が形成され得るようにしている。底面基材層188と同様に、中間基材層190のビア194の各々もまた金属相互接続196を形成されて有し、金属相互接続はビアを通して下方に延在し、また基材層190の上面まで延在している。中間基材層190のビア194の各々は非導電性充填材料198で充填されており、充填材料はビアの内部まで下方に延在する金属相互接続の上に堆積させられて、基材層と実質的に類似した音響インピーダンスを有するビア構造を形成する。
【0037】
ビア194はまた、最上基材層192にも形成されており、最上基材層のビアは底面基材層及び中間基材層188、190のビアのピッチと異なる第三のピッチを有する。最上基材層192のビア194は、中間層ビアの金属相互接続196と重なり合う/交差するような位置に形成されており、中間基材層190と最上基材層192との間に電気的接続が形成され得るようにしている。最上基材層192のビア194のピッチはまた、トランスデューサ素子144(及び音響素子146)のピッチに合致する。最上基材層192のビア194の各々もまた金属相互接続196を形成されて有しており、金属相互接続はビアを通して下方に延在し、また最上基材層192の上面まで延在し、最上基材層の外側に面した表面に延在して接続パッドを形成することができる。最上基材層192のビア194の各々は非導電性充填材料198で充填されており、充填材料はビアの内部まで下方に延在する金属相互接続の上に堆積させられて、基材層と実質的に類似した音響インピーダンスを有するビア構造を形成する。複数の接続パッド170が、最上基材層192の上面でビア194の各々に対応する位置に配置されている。
【0038】
介在層186の多層基材は、外側に面した表面での接続パッド170の再取り回しを可能にするので、底面基材層188の上の接続パッドは最上基材層192の接続パッドとは異なるピッチを有する。このように、介在層186は、第一のピッチを有するトランスデューサ素子144の第一のピッチとは異なる第二のピッチで相互接続パッドを有するビームフォーミング電子回路156への接続を可能にしている。
【0039】
図4〜図6の実施形態の各々において、介在層に形成される伝導性素子/経路は、薄い金属の伝導性相互接続と併せて用いられる伝導性エポキシ又は非伝導性エポキシの形態を取り得ることが認められる。このように、図4〜図6の実施形態の各々での伝導性素子の特定の形態は、伝導性素子の代替的な形態によって置換され得る。例えば、図4の実施形態で述べた伝導性エポキシは、薄い金属の伝導性相互接続と併せて用いられる非伝導性エポキシに置き換えることができ、同様の置換は図5及び図6の実施形態の各々についても行なわれ得る。
【0040】
ここで図7を参照すると、本発明の一実施形態による図3に示すトランスデューサ・アセンブリ142のような例示的なトランスデューサ・アセンブリを製造する例示的な工程200において作製される段階的構造が示されている。工程は、介在層204を設けるステップ202から開始される。図7の実施形態では、介在層204を単層基材204から形成されるものとして示しているが、図6の実施形態に従って多層基材も設けられ得ることが認められる。介在層基材206は、例えばポリイミドで形成され得る非導電性有機基材であり、約10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満の音響インピーダンスを有する。基材には複数のビア208が形成され、これらのビアは基材206の前面から背面まで延在する貫通ビアとして構成される。図7の実施形態によれば、ビア208は、以下で説明するように、トランスデューサ・アセンブリ142(図3)のトランスデューサ素子144(及び音響層146)と同一の間隔又はピッチを有するように基材206に形成される。ビア208の各々は、介在層204を通る電気的接続又は経路を設ける導電性充填材料210で充填される。本発明の実施形態の一例によれば、充填材料210は基材206の音響インピーダンスに類似した音響インピーダンスを有する。例えば、ビア208の内部に含まれる充填材料210は、約3MRaylの音響インピーダンスを有する銀エポキシであってよい。次いで、複数の接続パッド212が、介在層206の上面及び底面でビア208の各々に対応する位置に追加される。
【0041】
介在層204の形成に続いて、ステップ214においてトランスデューサ・アセンブリ142(図3を参照)のような例示的なトランスデューサ・アセンブリが形成される。上面及び底面を有する音響層216が設けられる。電極(図示されていない)が、音響層216の上面及び底面にスパッタリング及び/又はめっきで付着し得る。認められるように、電極は、特に接地電極及び信号電極について、異なる物理的構成を有していてよい。一実施形態では、電極は巻き付け構成を含み得る。音響層216は、約50ミクロン〜約600ミクロンの範囲の厚みを有するように構成され得る。
【0042】
上面及び底面を有する第一のマッチング層218が音響層216の上面に配設され得る。第一のマッチング層218は、約40ミクロン〜約300ミクロンの範囲の厚みを有するように構成され得る。続いて、上面及び底面を有する第二のマッチング層220が、第一のマッチング層218の上面に配設され得る。第一のマッチング層218に関して記載されるように、第二のマッチング層220は、約30ミクロン〜約250ミクロンの範囲の厚みを有するように構成され得る。第一及び第二のマッチング層218、220は、高インピーダンスの音響層216と低インピーダンスの患者との間に存在し得るインピーダンス差の整合を容易にするように構成され得る。かかるトランスデューサは単一又は多数のマッチング層を含み得ることが認められよう。現在利用可能なトランスデューサは典型的には二つのマッチング層を用いており、この場合にトランスデューサでの二つのマッチング層の利用は、空間的に制約された応用での性能と積層体の厚みとの間の最善の兼ね合いに相当し得る。
【0043】
加えて、ステップ214では、上面及び底面を有する例示的なデマッチング層222を音響層216の底面に配設することができる。換言すると、音響層216の第一のマッチング層218が配設されている表面の裏面にデマッチング層222を配設することができる。さらに、デマッチング層222は約50ミクロン〜約500ミクロンの範囲の厚みを有するように構成され得る。さらに、認められるように、デマッチング層222は、導電性の基材で形成されるか、伝導性ビア構造を形成した非導電性基材で形成されるかの何れかによって、導電性となるように構成することができる。このように、ダイス切断前の音響積層体224が、第二のマッチング層220、第一のマッチング層218、音響層216及びデマッチング層222を積み重ねて各層を共に結合することにより形成され得る。
【0044】
ステップ214を引き続き参照して述べると、介在層204は、デマッチング層222の底面に結合される。かかる結合は、圧縮結合、金スタッド・バンプ結合、伝導性エポキシ、はんだリフロー、異方伝導性フィルム、又は他の方法を含む幾つかの公知の方法の任意のものによって実行することができる。上で述べたように、介在層204は、デマッチング層222の音響インピーダンスよりも実質的に低い音響インピーダンスを有する。さらに図7に示すように、上面及び底面を有する基材226を選択することができる。基材226は、プラスチック、金属、セラミック、シリコン、ポリマー又はガラスの一つを含み得る。基材226は、作製工程時にトランスデューサ・アセンブリに機械的強度を与えるように構成され得ることが特記され得る。
【0045】
ステップ228は、トランスデューサ・アセンブリをダイス切断して複数のトランスデューサ素子を形成するステップを表わしている。従って、1又は複数の鋸切り溝230が、第二のマッチング層220、第一のマッチング層218、音響層216、及びデマッチング層222を通して延在し得る。本発明のさらに他の観点によれば、1又は複数の鋸切り溝230は介在層204まで部分的に延在していてもよい。ステップ228での四つの層のダイス切断の結果として、複数のトランスデューサ素子232を形成することができる。
【0046】
ステップ234では、複数のトランスデューサ素子232の間の素子間の空間に切り溝充填材236を配設することができる。代替的には、トランスデューサ素子232の各々の間に空気が存在するように切り溝230を充填せずに残してもよい。切り溝充填剤236は、充填又は無充填のシリコン又はエポキシを含み得る。また、切り溝充填剤236は、素子間空間230を充填することによりトランスデューサ・アセンブリを機械的に強化するように構成されることができ、これにより脆性を小さくしさらに信頼性の高いアセンブリを得ることができる。切り溝充填剤236は、低剪断剛性又は高剪断減弱性を有するように構成されることができ、これにより素子間クロストークを最小にする。ステップ234に続いて、ステップ238において基材226を取り除いてビームフォーミング電子回路240を介在層の底面に結合することができ、圧縮結合、金スタッド・バンプ結合、伝導性エポキシ、はんだリフロー、異方伝導性フィルム、又は他の方法によって結合することができる。また、損失性バッキング層163をビームフォーミング電子回路240の背面に追加することができる。図7に示すように、ビームフォーミング電子回路240の相互接続パッド242の間隔又はピッチは、ビームフォーミング電子回路240と介在層204との間に電気的接続が形成されるように、介在層204の接続パッド212のピッチに合致している。
【0047】
図7において述べた製造工程以外に、トランスデューサ・アセンブリ142を構築する代替的な製造工程を具現化し得ることが認められる。例えば、代替的な製造工程の実施形態によれば、基材226を製造工程から省くことができる。一実施形態によれば、製造工程は、介在層204をビームフォーミング電子回路240に取り付けることから開始することができる。次いで、音響積層体224を介在層204及びビームフォーミング電子回路240(支持を提供する)の上に組み立てることができ、これにより基材226の必要性をなくすことができる。もう一つの実施形態によれば、音響積層体224を介在層204のみの上に組み立てることができる。次いで、ビームフォーミング電子回路240がトランスデューサ素子232の形成工程を受けないように、ビームフォーミング電子回路240を引き続き介在層204に取り付ける。もう一つの実施形態によれば、音響積層体224は第二のマッチング層220の追加の前にダイス切断されることができ、第二のマッチング層が連続的な層のままとなり、この層の底面に施工される伝導性フィルム(図示されていない)と共にトランスデューサ素子232の各々に電気的接地接続を提供するようにする。
【0048】
ここで図8を参照すると、本発明の一実施形態によれば、トランスデューサ素子及びビームフォーミング電子回路の相互接続への同時接続を可能にするように構成されている介在層250が設けられる。介在層250は、図3に記載されるようなトランスデューサ素子256への結合のための第一の接続領域252と、ビームフォーミング電子回路258への結合のための第二の接続領域254とを含んでいる。介在層250の第一の接続領域252及び第二の接続領域254は、ビームフォーミング電子回路258の上の第一及び第二の群の相互接続パッド260、262に対応している。第一の群の相互接続パッド260はビームフォーミング電子回路258の中央部分の内部に配置されてトランスデューサ素子256と関連するが、第二の群の相互接続パッド262はビームフォーミング電子回路258の1又は複数の端辺に沿って配置されて信号入出力(I/O)、電力及び制御の各作用を提供するシステム接続に関連する。
【0049】
図3〜図7において議論された介在層と同様に、介在層250は非導電性有機基材264で形成される。実施形態の一例によれば、基材264は、約10MRayl未満、好ましくは5MRayl未満の音響インピーダンスを有する非導電性材料で形成される。有機基材264は、例えばポリイミドで構成されており、全厚が約25ミクロン〜約500ミクロンの範囲にあり、好ましくは125ミクロンよりも厚い。低音響インピーダンス材料で形成される介在層250は、デマッチング層280、介在層250及び集積回路258が音響反射体としてさらに効率よく作用することを可能にする。デマッチング層280とビームフォーミング電子回路258との間に低音響インピーダンスの介在層250を配置すると、ビームフォーミング電子回路の実効音響インピーダンスが顕著に上昇し、これによりトランスデューサ素子256の前面/上面から音波エネルギの大半を反射させる。
【0050】
図8に示すように、介在層250の基材264は第一の層266及び第二の層268を含んでいるが、他の単層基材又は多層基材も具現化され得ることが認められる。実施形態の一例によれば、第二の接続領域254では、基材264の第一の層266が、ビームフォーミング電子回路258とケーブル・フレックス回路のようなシステム接続(図示されていない)との間で信号を伝える信号I/Oとして作用する。基材264の第二の層268は、システム接続からビームフォーミング電子回路258へ電力/制御信号を供給する電力及び制御層として作用する。
【0051】
介在層250の第一の接続領域252は複数のビア270を形成されて含んでおり、ビアは基材の前面から背面まで延在する貫通ビアとして構成されている。図4に関して上で述べたように、ビア270は、トランスデューサ素子256の間隔又はピッチ、及びビームフォーミング電子回路258の群260の相互接続パッド(例えばバンプ接続)のピッチと同一の間隔又はピッチを有するように基材264に形成される。ビア270の各々は、導電性充填材272(例えば銀エポキシ)で又は薄い金属伝導性相互接続及び非導電性エポキシで充填されており、この相互接続が介在層250を通してビームフォーミング電子回路258の第一の群の相互接続パッド260及びトランスデューサ素子256の各々に電気的接続又は経路を設けている。
【0052】
介在層250の第二の接続領域254は、ケーブル・フレックス回路のようなシステム相互接続からビームフォーミング電子回路258へ電力及び制御命令を送信するように作用する。このように、第二の接続領域254は、当該領域を走行する伝導性トレース(図示されていない)、並びにビームフォーミング電子回路258の上の第二の群の相互接続パッド262に対応する一連のパッド接続274及び/又はビア270(伝導性エポキシ272で充填されている)を含んでいる。実施形態の一例によれば、介在層250の上の接続パッド274は、第一の基材層266を第二の群の相互接続パッド262の相互接続パッドに電気的に結合して、ビームフォーミング電子回路258に信号I/Oを提供する。ビームフォーミング電子回路258に電力及び制御信号を提供するためには、第二の基材層268は、第一の基材層266(導電性材料で充填されている)を通して延在する単層ビア276(伝導性エポキシ272で充填されている)、及び接続パッド274を経由して、第二の群の相互接続パッド262のもう一つの相互接続パッドに電気的に結合される。また、第二の群の相互接続パッド262のもう一つの相互接続パッドと電気的接地278との間の接地/二重電力接続が介在層250によって提供される。すなわち、伝導性エポキシ272で充填された貫通ビア270が基材264を通して形成され、第二の群の相互接続パッド262の相互接続パッドを導電性のデマッチング層280に電気的に結合し、デマッチング層が電気的接地278にさらに結合される。
【0053】
図8に示すように、実施形態の一例によれば、トランスデューサ素子256を形成する音響積層体は、第一の接続領域252及び第二の接続領域254の両方をカバーするのに十分な寸法を有する。製造工程時に、成層した音響積層体が介在層250(第一及び第二の接続領域252、254をカバーする)の一方の側面に積層され、図7において述べたようなトランスデューサ素子256の2Dアレイに加工される。次いで、接合されたトランスデューサ素子及びフレックス回路は、第一の接続領域252(及びトランスデューサ素子256)が音響送受波信号に関連する第一の群の相互接続パッド260に電気的に接合され、また第二の接続領域254が信号I/O、電力及び制御作用に関連する第二の群の相互接続パッド262に電気的に接合されるように、ビームフォーミング電子回路258の上に接着剤を用いて圧着積層される。有益なこととして、介在層250は、トランスデューサ素子のアレイをビームフォーミング電子回路258の表面に取り付けることなく構築する(各構成要素を積層し、研磨し、清浄化し、ダイス切断する等)ことを可能にし、これによりビームフォーミング電子回路への損傷の可能性を制限する。加えて、介在層250は、トランスデューサ素子256並びに介在層の信号I/O、電力及び制御接続に対するビームフォーミング電子回路258の同時接続を可能にし、システム相互接続への容易な接続を提供する。
【0054】
従って、本発明の一実施形態によれば、超音波トランスデューサが、音響素子のアレイを有する音響層と、音響層に結合されており音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層と、デマッチング層に結合されており基材及び複数の伝導性素子を含む介在層とを含んでおり、介在層はデマッチング層の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有する。この超音波トランスデューサはまた、介在層に結合されておりデマッチング層及び介在層を通して音響素子のアレイに電気的に接続されている集積回路を含んでいる。
【0055】
本発明のもう一つの実施形態によれば、超音波トランスデューサを製造する方法が、介在層を設けるステップと、介在層に複数のビアを形成するステップと、ビアの内部に導電性材料を追加するステップと、音響層をデマッチング層に結合するステップとを含んでおり、デマッチング層は、音響層の音響インピーダンスよりも高く介在層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する。この方法はまた、介在層をデマッチング層に結合するステップと、ビームフォーミング電子回路パッケージを介在層に結合するステップとを含んでおり、ビームフォーミング電子回路パッケージは、複数の接続パッドを形成されて有し、介在層を経由して音響層に電気的に結合される。
【0056】
本発明のさらにもう一つの実施形態によれば、侵襲型プローブ用に構成された超音波トランスデューサが、音響素子のアレイを有する音響層と、音響層に結合されており音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層と、音響層に信号を送り音響層から信号を受けるように構成されており複数の接続パッドを形成されて有するビームフォーミング電子回路とを含んでいる。この超音波トランスデューサはまた、デマッチング層に結合された介在層を含んでおり、介在層はさらに、デマッチング層の音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有し複数のビアを形成されて有する非導電性基材と、ビームフォーミング電子回路を音響層に電気的に接続するように構成されており、複数のビアを通して延在する複数の導電性経路を有する第一の接続領域と、ビームフォーミング電子回路を信号入出力接続、電力及び制御接続、並びに接地及び二重電力接続の少なくとも一つを含むシステム接続に電気的に接続するように構成されている第二の接続領域とを含んでいる。
【0057】
この書面の記載は、最適な態様を含めて本書において本発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。本発明の特許付与可能な範囲は特許請求の範囲によって画定され、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造的要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0058】
100 超音波システム
102 送波器
104 素子のアレイ
106 超音波トランスデューサ
108 受波器
110 ビームフォーミング電子回路
112 RFプロセッサ
114、122 メモリ
116 プロセッサ・モジュール
118 表示器
124 ユーザ・インタフェイス
130 3D対応小型超音波システム
132 トランスデューサ
134 ユーザ・インタフェイス
136 一体型表示器
138 外部装置
140 有線網又は無線網
142 トランスデューサ・アセンブリ
144 トランスデューサ素子のアレイ
145 所望の素子間間隔又はピッチ
146 音響層
148 第一のマッチング層
150 第二のマッチング層
151 導電性薄膜
152 デマッチング層
154 介在層
156 集積回路
158 基材
160 伝導性素子
161 相互接続パッド
162、172、186 介在層
163 損失性バッキング層
164、174 基材
166、180、194 ビア
168、182、198 充填材
170、184 接続パッド
176 金属シート
178 穿孔
188、190、192 基材層
196 金属相互接続
204 介在層
206 基材
208 ビア
210 充填材
212 接続パッド
216 音響層
218 第一のマッチング層
220 第二のマッチング層
222 デマッチング層
224 ダイス切断前の音響積層体
226 基材
230 鋸切り溝
232 トランスデューサ素子
236 切り溝充填材
240 ビームフォーミング電子回路
241 損失性バッキング層
242 相互接続パッド
250 介在層
252 第一の接続領域
254 第二の接続領域
256 トランスデューサ素子
258 ビームフォーミング電子回路
260 第一の群の相互接続パッド
262 第二の群の相互接続パッド
264 有機基材
266 第一の層
268 第二の層
270 ビア
272 充填材
274 パッド接続部
276 単層ビア
278 電気的接地
280 デマッチング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響素子のアレイを有する音響層(146)と、
該音響層(146)に結合されており該音響層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層(152)と、
該デマッチング層(152)に結合されており基材(158)及び複数の伝導性素子(160)を含んでいる介在層(154)であって、前記デマッチング層(152)の前記音響インピーダンスよりも低い音響インピーダンスを有する介在層(154)と、
該介在層(154)に結合されており前記デマッチング層(152)及び前記介在層(154)を通して前記音響素子のアレイ(146)に電気的に接続されている集積回路(156)と
を備えた超音波トランスデューサ(106)。
【請求項2】
前記介在層の基材(158)は、複数のビア(166)を形成されて有する非導電性基材を含んでおり、
前記複数の伝導性素子(160)は、前記複数のビア(166)の各々に導電性経路を含んでいる、請求項1に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項3】
前記基材(158)及び前記導電性経路(160)の各々が、約10MRayl未満の音響インピーダンスを有している、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項4】
前記導電性経路(160)は、前記複数のビア(166)の各々に充填された銀エポキシ(182)を含んでいる、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項5】
前記導電性経路(160)は、
前記基材(158)の上に形成されており、前記複数のビア(166)の各々を通して延在している導電性の金属相互接続(196)と、
各々の金属相互接続(196)を覆って前記複数のビア(166)の各々の残部に充填された非導電性エポキシ(198)と
を含んでいる、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項6】
前記介在層(154)は、前記基材(158)に埋め込まれて複数の穿孔(178)を形成されて有する金属芯材(176)をさらに含んでおり、
前記複数のビア(166)は、前記複数の穿孔(178)の少なくとも一部を通して延在している、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項7】
前記介在層(154)は、
前記集積回路(156)を前記音響素子のアレイ(146)に電気的に接続するように構成されており、前記複数のビア(166)を形成されて有する第一の接続領域(252)と、
信号入出力接続、電力及び制御接続、並びに接地及び二重電力接続の少なくとも一つを含むシステム接続に前記集積回路(156)を電気的に接続するように構成されている第二の接続領域(254)とを含んでいる、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項8】
前記第二の接続領域(254)は、パッド接続、トレース接続、エポキシ充填単層ビア、及びエポキシ充填貫通ビアの少なくとも一つを含んでいる、請求項7に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項9】
前記基材(158)に形成された前記複数のビア(166)のピッチが、前記音響素子のアレイ(146)のピッチに合致している、請求項2に記載の超音波トランスデューサ(106)。
【請求項10】
前記介在層(154)の反対側で前記集積回路(156)の背面に結合された損失性バッキング層(163)をさらに含んでいる請求項1に記載の超音波トランスデューサ(106)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4395(P2011−4395A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131565(P2010−131565)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】