改変MVAウイルスHIV−1ベクターを用いて免疫応答を誘発する方法
本発明の分野は、HIV−1ワクチン候補としての、1又は複数のHIV−1免疫原をコードする新規な組換えMVAベクター、及びそれを使用する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組込み
本出願は、2007年3月26日に出願された米国特許仮出願第60/908082号に基づく優先権を主張する。
【0002】
以上の出願及びそれらの中で引用されるかそれらの審査中に引用された全ての文献(「出願の引用文献」)、並びに出願の引用文献内で引用又は参照された全ての文献、並びに本明細書で引用又は参照された全ての文献(「本明細書の引用文献」)並びに本明細書の引用文献で引用又は参照された全ての文献を、本明細書又は参照により本明細書に組み込まれているいずれかの文書で言及されたいずれかの製品に関する製造会社の指示書、明細、製品仕様及び製品シートのいかなるものも併せて、参照により本明細書に組込み、本発明の実施に利用できるものとする。
【0003】
本発明の分野は、HIV−1ワクチンとして使用するための、HIV−1抗原をコードする新規な組換え体改変アンカラ(Ankara)ウイルスベクター(MVA)に関する。
【背景技術】
【0004】
AIDS、すなわち後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)は、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)によって引き起こされ、消耗症候群と、中枢神経系変性と、日和見感染及び悪性疾患をもたらす深刻な免疫抑制とを含めたいくつかの臨床的特性を特徴とする。HIVは、動物レトロウイルスのレンチウイルス(lentivirus)ファミリーのメンバーであり、これには、ヒツジのビスナウイルス(visna virus)、並びにウシ免疫不全症ウイルス(bovine immunodeficiency virus)、ネコ免疫不全症ウイルス(feline immunodeficiency virus)及びサル免疫不全症ウイルス(SIV,simian immunodeficiency virus)が含まれる。HIV−1及びHIV−2と名付けられた、密接に関連した2つのタイプのHIVがこれまでに同定されており、そのうち、HIV−1がAIDSの圧倒的に最も一般的な原因となっている。しかし、ゲノム構造及び抗原性が相違しているが、HIV−2も、同様な臨床的症候群を引き起こす。
【0005】
感染性のHIV粒子は、ウイルスタンパク質のコアにパッケージングされたそれぞれが長さ約9.2kbの2本の同一なRNA鎖からなる。このコア構造は、ウイルスによってコードされている膜タンパク質も含有する宿主細胞膜由来のリン脂質二重層エンベロープに囲まれている(Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454)。HIVゲノムは、レトロウイルスファミリーに特徴的な5’−LTR−Gag−Pol−Env−LTR−3’構成を有する。ウイルスゲノムのそれぞれの端にあるLTR(末端反復配列、Long terminal repeat)は、宿主の転写制御タンパク質の結合部位として働き、宿主ゲノムへのウイルス組込み、ウイルス遺伝子発現及びウイルス複製を調節する。
【0006】
HIVゲノムは、いくつかの構造タンパク質をコードしている。Gag遺伝子は、ヌクレオキャプシドコアのコア構造タンパク質と、マトリックスとをコードしている。Pol遺伝子は、ウイルスの複製に必要である逆転写酵素(RT,reverse transcriptase)、インテグラーゼ(Int,integrase)及びウイルスプロテアーゼ酵素をコードしている。tat遺伝子は、ウイルス転写産物の伸長に必要なタンパク質をコードしている。rev遺伝子は、不完全にスプライシングされているか、スプライシングされていないウイルスRNAの核外輸送を促進するタンパク質をコードしている。Vif遺伝子産物は、ウイルス粒子の感染力を強化する。vpr遺伝子産物は、ウイルスDNAの核内移行を促進し、G2細胞周期停止を調節する。vpu及びnef遺伝子は、宿主細胞のCD4発現を下方制御し、感染細胞からのウイルスの放出を促進するタンパク質をコードしている。Env遺伝子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードしており、これは160キロダルトン(kDa,kilodalton)の前駆体(gp160)として翻訳され、細胞性プロテアーゼによって切断されて、細胞の感染に必要である外側120kDaエンベロープ糖タンパク質(gp120)と、膜貫通41kDaエンベロープ糖タンパク質(gp41)とを産生する(Abbas, pp. 454-456)。Gp140は、外側120kDaエンベロープ糖タンパク質部分と、envのgp41部分の一部とを含有する改変形態のenv糖タンパク質であり、gp120及びgp41の両方の特徴を有する。nef遺伝子は、霊長類レンチウイルス間で保存されており、感染後に最初に転写されるウイルス遺伝子の1つである。インビトロでは、CD4及びMHCクラスIの表面発現の下方制御、T細胞シグナル伝達及び活性化の改変、ウイルス感染力の強化を含めたいくつかの機能が記述されている。HIV−1のTat(転写のトランス活性化因子、transactivator of transcription)タンパク質は、多く細胞型で広範な生物学的作用を誘導する多面的な因子である。HIVプロモーターにおいて、Tatは遺伝子転写の強力なトランス活性化因子であり、これは、クロマチンリモデリングを誘導すること、及び伸長能を有する転写複合体を重要なLTRに動員するこの両方によって作用する。これらの転写活性に加えて、Tatは、細胞外に放出されて、様々な細胞膜結合受容体と相互作用する。最後に、細胞は、能動的なエンドサイトーシス過程を介して細胞外Tatを外面化できる。
【0007】
HIV感染は、CD4+T細胞、マクロファージ及び樹状細胞などの標的細胞の細胞膜表面にあるCD4及びケモカインに受容体分子(例えば、CXCR4、CCR5)にウイルス粒子表面のgp120が結合することで開始する。結合したウイルスは、標的細胞と融合し、RNAゲノムを逆転写する。この結果生じたウイルスDNAが細胞ゲノムに組み込まれ、そこで、ウイルスDNAは新規なウイルスRNAの産生を指示し、それによって、ウイルスタンパク質及び新規なウイルス粒子の産生を指示する。これらのウイルス粒子は、感染細胞膜から出芽し、他の細胞で増殖性感染を確立する。この過程は、最初に感染した細胞の死滅ももたらす。未感染T細胞上のCD4受容体は感染細胞の表面に発現されたgp120への強い親和性を有するので、HIVは間接的にも細胞の死滅をもたらしうる。この場合、非感染細胞は、CD4受容体−gp120相互作用を介して感染細胞に結合し、融合して合胞体を形成するが、この合胞体は生き残ることができない。CD4+Tリンパ球は免疫防御に極めて重要であり、それらの破壊は、AIDS疾患進行の顕著な特徴である進行性免疫機能不全の主要因である。CD4+T細胞の減失は、ほとんどの異物と戦う身体能力を深刻に損なうが、それは、ウイルス、真菌、寄生生物、及びミコバクテリアを含めた特定の細菌に対する防御にとりわけ深刻な影響力を有する。
【0008】
このウイルスは、ほとんど脆弱性がない多くの効果的な防御機構を有することが、Env糖タンパク質の研究によって示されている(Wyatt & Sodroski, Science. 1998 Jun 19;280(5371):1884-8)。その標的細胞と融合するために、HIV−1は、gp120及びgp41サブユニットを含有する三量体Env複合体を用いる(Burton et al., Nat Immunol. 2004 Mar;5(3):233-6)。Env複合体の融合能は、CD4受容体と、通常はCCR5又はCXCR4である一受容体との結合によって引き起こされる。中和抗体は、ウイルス粒子表面の成熟三量体に結合し、最初の受容体結合イベントを阻止することによって、又はウイルス粒子の付着後に結合し、融合過程を阻害することによって奏効するようである(Parren & Burton, Adv Immunol. 2001;77:195-262)。後者の場合、中和抗体は、受容体結合によって、その露出が促進又は誘発されるエピトープに結合している可能性がある。しかし、中和抗体の潜在的抗ウイルス効果を考慮すると、HIV−1が抗体結合から自らを保護する複数の機構を進化させていても予想外ではない(Johnson & Desrosiers, Annu Rev Med. 2002;53:499-518)。
【0009】
したがって、HIV−1に対する効果的な免疫処置の必要性が依然として存在している。
【0010】
本出願におけるいかなる文書の引用又は特定も、そのような文書が本発明の先行技術として利用可能であると認めるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454-456
【非特許文献2】Wyatt & Sodroski, Science. 1998 Jun 19;280(5371):1884-8
【非特許文献3】Burton et al., Nat Immunol. 2004 Mar;5(3):233-6
【非特許文献4】Parren & Burton, Adv Immunol. 2001;77:195-262
【非特許文献5】Johnson & Desrosiers, Annu Rev Med. 2002;53:499-518
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、MVAウイルスベクターに挿入された標的HIV−1タンパク質に対する免疫応答を誘導するための組換えMVAワクチンを対象とする。選択された6種のHIVタンパク質(env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev)全ては組換えMVAウイルスによって発現する。
【0013】
本発明の組換えMVAワクチンは、第1相試験で高免疫原性応答を誘発するものであり、それゆえ、HIV感染に対する効果的なワクチンでありうる。
【0014】
本発明は、1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し及び発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法に関する。
【0015】
本発明は、(a)1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法にも関する。第1及び第2に投与された1又は複数の免疫原は、同じ1又は複数の免疫原でも、異なる1又は複数の免疫原でもよい。
【0016】
有利な実施形態では、上記1又は複数の免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質又はそれらの断片からなる群から選択される。
【0017】
この開示中、とりわけ特許請求の範囲及び/又は諸段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」及び「含むこと(comprising)」などの用語は、米国特許法でそれに属すると定められた意味を有しうるものであり、例えば、これらの用語は、「包含する(includes)」、「包含される(included)」及び「包含すること(including)」などを意味しうること;さらに「から本質的になること(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれに属すると定められた意味を有すること、例えば、これらの用語は、明示的に記述されていない要素も容認するが、先行技術に存在する要素又は本発明の基本的特徴若しくは新規な特徴に影響する要素は除外することに留意するべきである。
【0018】
これら及び他の実施形態は、開示されているか、又は以下の「発明を実施するための形態」から明らかであり、それに包含されている。
【0019】
以下の詳細な説明は、一例として示されており、記載されている特定の実施形態のみに本発明を限定するものではなく、下記の通りの添付図面と組み合わせて最も良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】TBC−M4のプラスミドコンストラクト/ゲノム構造を示す図である。
【図2A】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2B】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2C】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2D】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2E】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2F】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2G】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図3A】nefの配列を示す図である。
【図3B】図3B〜3Cは、revの配列を示す図である。
【図3C】図3B〜3Cは、revの配列を示す図である。
【図3D】gagの配列を示す図である。
【図3E】tatの配列を示す図である。
【図3F】図3F〜3Gは、polの配列を示す図である。
【図3G】図3F〜3Gは、polの配列を示す図である。
【図3H】図3H〜3Iは、envの配列を示す図である。
【図3I】図3H〜3Iは、envの配列を示す図である。
【図4A】envの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4B】gagの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4C】tat.revの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4D】nef.RTの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図5A】tatの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5B】revの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5C】RTの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5D】nefの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図6】導入ベクターのアノテーション付きプラスミドマップを示す図である。
【図7】TBC−M420組換え体の単離及び種ウイルスストックの調製の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法に関する。
【0022】
本発明は、(a)1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法にも関する。1番目及び2番目に投与された1又は複数の免疫原は、同じ1又は複数の免疫原でも、異なった1又は複数の免疫原でもよい。
【0023】
本明細書において、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基の任意な長さのポリマーを指すのに同義的に使用される。上記ポリマーは、線状でも、分岐していてもよく、修飾アミノ酸又はアミノ酸類似体を含んでいてもよく、また、アミノ酸以外の化学部分によって中断されていてもよい。これらの用語は、天然で、或いは介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識若しくは生理活性成分との結合などの何らかの他の操作若しくは修飾によって、修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗原」又は「免疫原」という用語は、対象の体内で免疫応答を誘導できる物質、通常タンパク質を指すのに同義的に使用される。この用語は、ひとたび対象に投与されたならば(直接投与、又はそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列若しくはベクターを対象に投与することによって)、そのタンパク質に対して向けられた体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘起できるという意味で、免疫学的に活性なタンパク質も指す。
【0025】
本発明のタンパク質及び抗原は、本明細書に例示及び記載された正確な配列と異なっていてもよいということを理解するべきである。したがって、本発明では、示されている配列への欠失、付加及び置換も、それらの配列が本発明の方法に従って機能する限り、企図されている。これとの関連では、特に好ましい置換は、通常、性質を保存するもの、すなわち、1つのアミノ酸ファミリーの中で起こる置換であろう。例えば、アミノ酸は通常、4つのファミリー、すなわち、(1)酸性−アスパラギン酸及びグルタミン酸、(2)塩基性−リジン、アルギニン及びヒスチジン、(3)無極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファン、並びに(4)無電荷極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリントレオニン及びチロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、場合によっては、芳香族アミノ酸として分類される。ロイシンからイソロイシン若しくはバリンへ、又はその逆、アスパラギン酸からグルタミン酸へ、又はその逆、トレオニンからセリンへ、又はその逆の孤立した置換、或いはあるアミノ酸から構造的に関連したアミノ酸への同様な保存的置換は、生物活性への大きな影響を有しないであろうことが合理的に予測できる。そのタンパク質の免疫原性に実質的に影響しない小さなアミノ酸置換を有するが、例示及び記載されている配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するタンパク質は、それゆえ、本発明の範囲内である。
【0026】
有利な実施形態では、本発明の免疫原がHIV−1タンパク質であり、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされたHIV−1タンパク質、又はそれらの任意な免疫原性断片が有利である。有利な実施形態では、env及びRT配列がGenBank受託番号AF067158から得られるものであり(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al., J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)、gag及びtat配列がGenBank受託番号AF067157から得られるものであり(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al.、J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)、rev及びnef配列がGenBank受託番号AF067154から得られるものである(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al.、J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)。
【0027】
特に有利な実施形態では、TBC−M4 HIV遺伝子配列インサートが本発明の免疫原をコードする。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、限定されるものではないが、メッセンジャーRNA(mRNA,messenger RNA)、DNA/RNAハイブリッド又は合成核酸を含めたデオキシリボ核酸(DNA,deoxyribonucleic acid)又はリボ核酸(RNA,ribonucleic acid)の配列を指す。この核酸は、一本鎖又は部分的若しくは完全な二本鎖(二重鎖)でありうる。二重鎖核酸は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖でありうる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、当業者に知られているHIV−1抗原の配列に由来する「組換え」ヌクレオチド配列を指すのに使用される。導入遺伝子の配列は、本発明のHIV−1クレードAコンセンサスヌクレオチド配列に由来するものでも、これらのコンセンサス配列への一致率が高いものとして同定された最近伝播しているHIV−1クレードA株の抗原をコードするヌクレオチド配列に由来するものでもよい。「組換え」という用語は、「人によって」操作されていて、天然には存在しないか、又は別のヌクレオチド配列に連結されているか、又は天然では異なった配置で見出されるヌクレオチド配列を意味する。「人によって」操作されるとは、機械の使用、コドン最適化及び制限酵素などによるものを含めた、何らかの人工的手段によって操作されることを意味するものと理解されている。
【0030】
本発明のヌクレオチドは、コンセンサスヌクレオチド配列と比較して、又はそのようなコンセンサス配列に密接に関連した、伝播しているHIV−1単離株の配列と比較して、改変されていてもよい。例えば、一実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、コードされているタンパク質の活性がインビボで消滅するように変異導入されていてもよい。別の実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、最適化されたコドンであってもよく、例えば、ヒト使用用にコドンが最適化されていてもよい。好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチド配列は、コードされているタンパク質の正常なインビボ機能が消滅するように変異導入されているのと同時に、ヒト使用用にコドンが最適化されている。例えば、本発明のGag、Pol、Env、Nef、RT、Tat及びRev配列のそれぞれは、これらの方法で改変されていてもよい。
【0031】
特に有利な実施形態では、標的HIV−1サブタイプC遺伝子が以下の通りに改変された。
【0032】
完全長envは、ワクシニアウイルスの初期転写終止シグナルをコードする内部T5NTモチーフにサイレント変異が導入されるように改変されている。これは、T5NT配列の除去は未熟な転写終結を最小限し、ワクシニアウイルスの外来遺伝子発現を最適化することが知られているためである。
【0033】
p55ポリプロテインをコードする完全長gag遺伝子は、いかなる改変もなく単離されている。
【0034】
rev遺伝子はいくつかの方法で改変されている。アミノ酸75〜86をコードする12のコドンを除去し、アスパラギン酸及びロイシンをコードする2つのコドンで置換して、revタンパク質を非機能性にした。加えて、rev遺伝子のヌクレオチド配列は、tat遺伝子とrev遺伝子との間の相同性を最小にするため、及び他の方法でアミノ酸配列を変えずに、ヒト細胞におけるrevタンパク質の発現を最適化するため、すなわち発現を「ヒト化」するために、コドンの3番目の位置(「ゆらぎ位置」)で改変されている。
【0035】
tat遺伝子の第1エキソンは、3次元構造を保存しながらタンパク質を非機能性にするために、アミノ酸26及び32の2つのコドンをチロシンからアラニンに変えるように、インビトロ変異誘発で改変されている。加えて、tat遺伝子の第2エキソンが欠失している。
【0036】
改変されたtat及びrev配列は、適切な開始コドン及び終止コドンと共に融合遺伝子としてクローニングされている。
【0037】
nef遺伝子は、MHCクラスIの下方制御及びCD3シグナル伝達を低減するために、アミノ酸62〜65のコドンをグルタミン酸からアラニンに変えることによって改変されている。
【0038】
pol遺伝子の逆転写酵素(RT)部分は、逆転写酵素活性を除去するために、アミノ酸336及び337のコドンをアスパラギン酸からアスパラギンに変えることによって、改変されている。プロテアーゼ及びインテグラーゼの配列はコンストラクトに含まれていない。
【0039】
改変されたnef及びRTコード配列は、nef−RT融合遺伝子を生成するようにインフレームで融合させてある。
【0040】
抗原のインビボ機能を抑止するために導入できる変異のタイプ。ミリスチル化部位を除去し、かつウイルス様粒子(VLP,virus-like-particle)の形成を阻止するための、GagにおけるGly2からAlaへの変異;自然発生のフレームシフト配列におけるスリップを回避して、保存アミノ酸配列(NFLG)を完全な状態のままにし、かつ完全長GagPolタンパク質産物のみが翻訳されるようにするための、Gagの変異;活性酵素残基を不活性化するための、RTにおけるAsp185からAlaへの変異及びAsp186からAlaへの変異。活性酵素残基を不活性化するための、IntにおけるAsp64からAlaへの変異、Asp116からAlaへの変異及びGlu152からAlaへの変異。
【0041】
コドン最適化に関しては、本発明の核酸分子は、本発明の抗原をコードするヌクレオチド配列を有し、上記抗原がその中で産生されることになっている対象の遺伝子で使用されているコドンを利用するように設計できる。HIV及び他のレンチウイルスを含めた多くのウイルスは、多数のまれなコドンを用いており、これらのコドンを、望ましい対象で一般的に使用されているコドンに相当するように変えることによって、上記抗原の発現の増強を実現できる。好ましい実施形態では、使用されるコドンが「ヒト化」コドンである。すなわち、それらのコドンは、HIVによって高頻度で使用されているコドンではなく、高発現のヒト遺伝子において高頻度で現れるものである(Andre et al., J. Virol. 72:1497-1503, 1998)。そのようなコドン使用は、ヒト細胞のトランスジェニックHIVタンパク質の効率的な発現をもたらす。いかなる適した方法のコドン最適化も使用できる。しかし、いかなる他の適した方法のコドン最適化も使用できる。そのような方法、及びそのような方法の選択は当業者によく知られている。加えて、Geneart社(geneart.com)など、配列のコドンを最適化する会社がいくつかある。したがって、本発明のヌクレオチド配列は容易にコドン最適化できる。
【0042】
本発明は、本発明の抗原の、機能的に同等かつ/又は抗原性が同等な変異体及び誘導体、並びに機能的に同等なそれらの断片をコードするヌクレオチド配列をさらに包含する。これらの機能的に同等な変異体、誘導体及び断片は、抗原活性を保持する能力を示す。例えば、コードしているアミノ酸配列を変えない、DNA配列の変化、並びにアミノ酸残基の保存的置換、1又は数残基のアミノ酸欠失又は付加、及びアミノ酸類似体によるアミノ酸残基の置換をもたらすものは、コードされているポリペプチドの特性に有意な影響を与えられないものである。保存的アミノ酸置換は、グリシン/アラニン、バリン/イソロイシン/ロイシン、アスパラギン/グルタミン、アスパラギン酸/グルタミン酸、セリン/トレオニン/メチオニン、リジン/アルギニン、及びフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。一実施形態では、上記変異体は、所望の抗原、エピトープ、免疫原、ペプチド又はポリペプチドに、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の相同性又は同一性を有する。
【0043】
本発明の目的では、配列の同一性又は相同性は、配列ギャップを最小にしながら、重複部分及び同一性を最大にするようにアラインされた際の配列を比較することによって決定される。詳細には、配列同一性は、多くの数学的アルゴリズムのうちのいずれかを用いることによって決定できる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの非制限的な一例が、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993;90: 5873-5877にある通りに改変されたKarlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990; 87: 2264-2268のアルゴリズムである。
【0044】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の例は、Myers & Miller, CABIOS 1988;4: 11-17のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いることができる。局所配列類似性の領域の同定及びアラインメントのためのさらに別の有用なアルゴリズムは、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85: 2444-2448に記載のFASTAアルゴリズムである。
【0045】
本発明による使用には、WU−BLAST(ワシントン大学BLAST、Washington University BLAST)バージョン2.0ソフトウェアが有利である。数種のユニックスプラットフォーム用のWU−BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executables からダウンロードできる。このプログラムはWU−BLASTバージョン1.4に基づいており、それは同様にパブリックドメインのNCBI−BLASTバージョン1.4に基づいている(参照により全て本明細書に組み込まれている、Altschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266: 460-480、Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990; 215: 403-410、Gish & States, 1993;Nature Genetics 3: 266-272、Karlin & Altschul, 1993;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)。
【0046】
本発明の様々な組換えヌクレオチド配列及び免疫原は、標準的な組換えDNA技法及びクローニング技法を用いて作製される。そのような技法は当業者によく知られている。例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版(Sambrook et al. 1989)を参照のこと。
【0047】
本発明のヌクレオチド配列は、「ベクター」に挿入できる。「ベクター」という用語は、当業者によって広く使用及び理解されており、本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが当業者に意味することと一致して使用される。例えば、「ベクター」という用語は、ある環境から別の環境への核酸分子の導入を可能にするか、若しくは促進する媒体、又は核酸分子の操作を可能にするか、若しくは促進する媒体を指すのに、当業者によって一般的に使用されている。
【0048】
本発明の免疫原の発現を可能にするいかなるベクターも、本発明に従って使用できる。特定の実施形態では、本発明の免疫原は、コードされているHIV−1抗原を産生させるために、インビトロで(無細胞発現系を用いてなど)、かつ/又はインビトロで培養された培養細胞内で使用でき、それらのHIV−1抗原は、その後、タンパク質ワクチンの産生など、様々な適用に使用できる。そのような適用には、インビトロで、かつ/又は培養細胞内での免疫原の発現を可能にするいかなるベクターも使用できる。
【0049】
免疫原をインビボで発現することが望ましい適用、例えば、本発明の免疫原をDNA又はDNA含有ワクチンで用いる場合には、本発明の免疫原の発現を可能にし、かつインビボでの使用が安全であるいかなるベクターも使用できる。好ましい実施形態では使用されるベクターが、ヒト、哺乳動物及び/又は実験動物での使用に安全である。
【0050】
本発明の免疫原が発現されるためには、上記タンパク質のコード配列が上記タンパク質の転写及び翻訳を指示する調節配列又は核酸調節配列に「作用可能に連結されている」べきである。本明細書で使用される場合、コード配列及び核酸調節配列又はプロモーターは、上記コード配列の発現又は転写及び/若しくは翻訳を上記核酸調節配列の影響下又は制御下に置くような方法で、それらが共有結合によって連結されている場合に、「作用可能に連結されている」と言われる。「核酸調節配列」は、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、及びそれに作用可能に連結された核酸配列又はコード配列の発現を指示する本明細書に記載の他のエレメントなど、いかなる核酸エレメントでもありうる。「プロモーター」という用語は、本明細書では、RNAポリメラーゼII用の開始部位周辺でクラスターとなっており、かつ本発明のタンパク質コード配列に操作可能に連結されている場合に、コードされているタンパク質の発現をもたらす一群の転写制御モジュールを指すのに使用されるであろう。本発明の免疫原の発現は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下におくことができる。誘導性プロモーターは、限定されるものではないが、テトラサイクリンなどの抗生物質、エクジソンなどのホルモン、又は重金属など、何らかの特定の外部刺激に暴露された場合にのみ転写を開始する。上記プロモーターは、特定の細胞型、組織又は臓器に特異的なものでもよい。多くの適したプロモーター及びエンハンサーが当技術分野で知られており、そのような適したプロモーター又はエンハンサーのいかなるものも、本発明の免疫原の発現に使用できる。例えば、適したプロモーター及び/又はエンハンサーは真核細胞プロモーターデータベース(EPDB,Eukaryotic Promoter Database)から選択できる。
【0051】
通常、本発明に従って使用されるベクターは、それらがプロモーター又はエンハンサーなどの適した遺伝子調節領域を含有し、それによって、本発明の免疫原を発現できるように選択するべきである。
【0052】
例えば、インビトロで、又は培養細胞内で、又はその免疫原によってコードされた1又は複数のタンパク質を産生することを目的とした任意の原核細胞系又は真核細胞系で、本発明の免疫原を発現することが目的である場合、その適用に応じて、いかなる適したベクターも使用できる。例えば、プラスミド、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、昆虫ベクター、バキュロウイルス発現ベクター、酵母ベクター及び哺乳動物細胞ベクターなどを用いることができる。適したベクターは、ベクターの特徴及び特定された状況下で免疫原を発現するための要件を考慮に入れて、当業者が選択できる。
【0053】
本発明の免疫原を、例えばHIV−1抗原に対する免疫応答及び/又はHIV−1に対する防御免疫を引き起こすために、対象においてインビボで発現させることが目的である場合、その対象での発現に適し、かつインビボでの使用に安全である発現ベクターを選択するべきである。例えば、一部の実施形態では、HIV−1免疫原性組成物及び本発明のワクチンの前臨床試験のためなど、本発明の免疫原を実験動物で発現することが望ましい可能性がある。他の実施形態では、臨床試験中である場合、及び本発明の免疫原性組成物及びワクチンの実際の臨床使用のためなど、本発明の免疫原をヒト対象で発現することが望ましいであろう。そのような使用に適したいかなるベクターも利用でき、適したベクターの選択は、十分に当業者の能力の範囲内にある。一部の実施形態では、対象においてベクターが増幅するのを阻止するために、これらのインビボ適用に使用されるベクターが弱毒化されていることが好ましい可能性がある。例えば、プラスミドベクターが使用される場合には、対象におけるインビボ使用の安全性を強化するために、それらは、対象で機能する複製開始点を欠失していることが好ましいであろう。ウイルスベクターが使用される場合には、再び、対象におけるインビボ使用の安全性を強化するために、それらは、弱毒化されているか、対象において複製欠損となっていることが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルスベクターが使用される。ウイルス発現ベクターは当業者によく知られており、それらには、例えば、アデノウイルス(adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(AAV,adeno-associated virus)、アルファウイルス(alphavirus)、レトロウイルス(retrovirus)、トリポックスウイルス(avipox virus)、弱毒化ポックスウイルス(attenuated poxvirus)を含めたポックスウイルス(poxvirus)及びワクシニアウイルス(vaccinia virus)、とりわけ改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA,modified vaccinia Ankara virus、ATCC受託番号VR−1566)などのウイルスが含まれる。そのようなウイルスは、発現ベクターとして使用される場合、ヒトなどの選択された対象で生得的に非病原性であるか、それらが、選択された対象で非病原性となるように改変されている。例えば、複製欠損アデノウイルス及びアルファウイルスは、よく知られており、遺伝子送達ベクターとして使用できる。
【0055】
特に好ましい実施形態では、MVAベクターが使用される。MVAは、ニワトリ胚線維芽(CEF,chick embryo fibroblast)細胞を経て、野生型ワクシニアウイルスから得られた弱毒化生ウイルス株である。弱毒化の過程において、MVAウイルスは、詳細に特性分析されている複数のゲノム欠失を起こしており、それらには病原性の減弱が伴っていた。これらのゲノム欠失は、広範に特性分析されており、後期のウイルス粒子構築及びサイトカイン受容体の発現に影響を与えているようである。この結果、この改変ウイルスは、ほとんどの哺乳動物(ヒトも含まれる)の細胞を感染させ、正常な方法でウイルス(及び組換え)遺伝子を発現するが、ほとんどの初代細胞型又は不死化細胞株で効率的に複製しない。米国特許第7189536号、第7118754号、第7097842号、第7094412号、第7067251号、第7056723号、第7049145号、第7034141号、第6960345号、第6924137号、第6913752号、第6893869号、第6884786号、第6869793号、第6663871号、第6649409号、第6582693号、第6440422号、第5676950号及び第5185146号明細書のいずれに記載のMVAベクターも、本発明用に使用及び/又は改変することができる。
【0056】
有利な実施形態では、本発明のMVAは弱毒化MVAに由来する。
【0057】
本発明のヌクレオチド配列及びベクターは、例えば、細胞内でHIV−1抗原を発現して、発現されたタンパク質を産生させ、培養中で増殖した細胞などから単離することが目的である場合には、細胞に送達することができる。細胞内で抗原を発現するには、いかなる適した形質移入、形質転換又は遺伝子送達法を用いることもできる。そのような方法は、当業者によく知られており、使用されるヌクレオチド配列、ベクター及び細胞型の性質に応じて、当業者ならば適した方法を容易に選択できよう。例えば、形質移入、形質転換、微量注入、感染、エレクトロポレーション、リポフェクション又はリポソーム媒介送達を用いることができよう。抗原の発現は、細菌細胞、酵母、昆虫細胞及び哺乳動物細胞など、いかなる適した型の宿主細胞でも行える。本発明のHIV−1抗原は、インビトロ転写/翻訳系を用いて発現することもできる。そのような方法は全て当業者によく知られており、使用されるヌクレオチド配列、ベクター及び細胞型の性質に応じて、当業者ならば適した方法を容易に選択できよう。
【0058】
発現に続いて、本発明の抗原を単離及び/又は精製若しくは濃縮することもでき、それには当技術分野で知られているいかなる適した技法を用いてもよい。例えば、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電点焦点法、ゲル電気泳動又はいかなる他の適した方法若しくは方法の組合せも使用できる。
【0059】
好ましい実施形態では、例えば対象における免疫原応答を生成させることが目的である場合、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原をインビボで投与する。本発明の文脈では、「対象」はいかなる動物でもよい。例えば、一部の実施形態では、本発明のHIV−1免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験のためなど、本発明の免疫原を実験動物で発現させることが望ましい可能性がある。他の実施形態では、臨床試験中である場合、及び本発明の免疫原性組成物及びワクチンの実際の臨床使用のためなど、本発明の免疫原をヒト対象で発現させることが望ましいであろう。好ましい実施形態では、対象がヒト、例えば、HIV−1に感染しているか、HIV−1に感染する危険があるヒトである。
【0060】
そのようなインビボ適用には、薬学的に許容される担体と混合した本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原を含む免疫原性組成物の構成成分として、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原を投与することが好ましい。本発明の免疫原性組成物は、HIV−1に対する免疫応答を刺激するのに有用であり、AIDSを予防、改善又は治療するための、HIV−1に対する予防用又は治療用ワクチンの1又は複数の構成成分として使用できる。本発明の核酸及びベクターは、とりわけ、遺伝子ワクチン、すなわち、後に抗原が対象で発現されて、免疫応答を誘発するように、本発明の抗原をコードする核酸をヒトなどの対象に送達するためのワクチンを提供するのに有用である。
【0061】
本発明の組成物は、注射可能の懸濁液、溶液、噴霧剤、凍結乾燥粉末薬、シロップ剤及びエリキシル剤などであってもよい。いかなる適した形態の組成物も使用できる。そのような組成物を調製するには、望ましい純度を有する本発明の核酸又はベクターを1又は複数の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と混合する。上記担体及び賦形剤は、組成物の他の成分と適合性があるという意味で「許容される」ものでなければならない。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、利用される用量及び濃度で受容者に対して無毒であり、それらには、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール若しくはこれらの組合せ;リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸塩などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた酸化防止剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含めた単糖、二糖及び他の糖;EDTAなどのキレート化剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなど、塩を形成する対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
免疫原又は免疫組成物は、水中油型乳剤の形態でも処方できる。水中油型乳剤は、例えば、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方型);スクアラン、スクアレン、EICOSANE(商標)又はテトラテトラコンタンなどのイソプレノイド油;1又は複数のアルケン、例えばイソブテン又はデセンのオリゴマー形成から生じる油;植物油、オレイン酸エチル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル又はジオレイン酸プロピレングリコールなど、直鎖状アルキル基を含有する酸又はアルコールのエステル;分岐した脂肪酸又はアルコールのエステル、例えばイソステアリン酸エステルをベースにしたものでありうる。油は、乳剤を形成するのに、乳化剤と併用すると有利である。乳化剤は、エトキシ化されていてもよい、ソルビタンのエステル、マンナイド(例えば無水マンニトールオレイン酸エステル)、グリセロール、ポリグリセリン、プロピレングリコール、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸、並びにPluronic(登録商標)製品、例えばL121などのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体などの非イオン界面活性剤でありうる。アジュバントは、Provax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)という名称で市販されているものなど、1又は複数の乳化剤、ミセル形成剤及び油の混合物でありうる。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は、湿潤剤若しくは乳化剤、緩衝剤、又はワクチンの効果を強化するためのアジュバントなど、追加物質を含有できる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, (ed.) 1980)。
【0064】
アジュバントも含有されうる。アジュバントには、無機質塩(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH(SO4)2、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン又は炭素)、免疫刺激複合体(ISCOM,immune stimulating complex)含有又は非含有ポリヌクレオチド(例えば、Chuang, T.H. et al, (2002) J. Leuk. Biol. 71(3): 538-44、Ahmad-Nejad, P. et al (2002) Eur. J. Immunol. 32(7): 1958-68に記載のものなどのCpGオリゴヌクレオチド;ポリIC又はポリAU酸、CpG含有又は非含有ポリアルギニン(当技術分野ではIC31としても知られている;Schellack, C. et al (2003) Proceedings of the 34th Annual Meeting of the German Society of Immunology、Lingnau, K. et al (2002) Vaccine 20(29-30): 3498-508を参照)、JuvaVax(商標)(米国特許第6693086号明細書))、ある種の天然物質(例えば、結核菌のワックスD、座瘡プロピオンバクテリウム(Cornyebacterium parvum)、百日咳菌又はブルセラ属の構成員で見出された物質)、フラジェリン(Toll様受容体5リガンド;McSorley, S.J. et al (2002) J. Immunol. 169(7): 3914-9を参照)、サポニン、すなわちQS21、QS17及びQS7など(米国特許第5057540号、第5650398号、第6524584号、第6645495号明細書)、モノホスホリルリピドA、とりわけ3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL,3-de-O-acylated monophosphoryl lipid A)、イミキモド(imiquimod)(当技術分野でIQMとしても知られ、Aldara(登録商標)として市販されている;米国特許第4689338号、第5238944号明細書、Zuber, A.K. et al (2004) 22(13-14): 1791-8)、並びにCCR5阻害剤CMPD167(Veazey, R.S. et al (2003) J. Exp. Med. 198: 1551-1562を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
水酸化又はリン酸アルミニウム(ミョウバン)は通常、0.05〜0.1%のリン酸緩衝食塩水溶液で使用される。とりわけDNAワクチンと共に使用できる他のアジュバントは、コレラトキシン、とりわけCTA1−DD/ISCOM(Mowat, A.M. et al (2001) J. Immunol. 167(6): 3398-405参照)、ポリホスファゼン(Allcock, H.R. (1998) App. Organometallic Chem. 12(10-11): 659-666、Payne, L.G. et al (1995) Pharm. Biotechnol. 6: 473-93)、サイトカイン、すなわち、限定されるものではないが、IL−2、IL−4、GM−CSF、IL−12、IGF−1、IFN−α、IFN−β及びIFN−γなど(Boyer et al., (2002) J. Liposome Res. 121:137-142、国際公開第01/095919号パンフレット)、免疫調節性タンパク質、すなわちCD40L(ADX40;例えば、国際公開第03/063899号パンフレット参照)、及びナチュラルキラー細胞のCD1aリガンド(CRONY又はα−ガラクトシルセラミドとしても知られている;Green, T.D. et al, (2003) J. Virol. 77(3): 2046-2055を参照)など、免疫賦活性融合タンパク質、すなわち、免疫グロブリンFc断片と融合したIL−2(Barouch et al., Science 290:486-492, 2000)並びに同時刺激分子B7.1及びB7.2(Boyer)などであり、これらは全て、タンパク質として、又は本発明の抗原をコードするものと同一の発現ベクター上にあるか、若しくは別々の発現ベクター上にあるDNAの形態で投与できる。
【0066】
免疫原性組成物は、抗原、核酸又は発現ベクターを望ましい作用部位に導入し、適切かつ制御可能な速度でそれを放出するように設計できる。調節放出製剤を調製する方法は当技術分野で知られている。例えば、調節放出製剤は、免疫原及び/又は免疫原性組成物と複合体形成するか、それを吸収する重合体の使用によって生産できる。調節放出製剤は、望ましい調節放出特性又は放出プロフィールを与えることが知られている適切な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又は硫酸プロタミン)を用いて調製できる。調節放出製剤によって作用持続時間を制御する別の可能な方法は、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ポリグリコールの酸、これらの酸の共重合体、又はエチレンビニルアセテート共重合体などの重合物質の粒子に活性成分を組み入れることである。或いは、これらの活性成分を重合体粒子に組み入れる代わりに、例えば、それぞれコロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルの中にこれらの物質を捕捉することが可能である。そのような技法は、New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. (eds.), University Park Press, Baltimore, Md., 1978及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th editionに開示されている。
【0067】
本発明の免疫原性組成物中の本発明の抗原、核酸及び発現ベクター(まとめて免疫原)の適した用量は、当業者が容易に決定できる。例えば、免疫原の用量は、投与経路及び対象のサイズに応じて変動しうる。適した用量は、例えば、実験動物などの対象の免疫応答を従来の免疫手法を用いて測定し、必要に応じて用量を調整することによって、当業者が決定できる。対象の免疫応答を測定するためのそのような技法には、クロム放出アッセイ、四量体結合アッセイ、IFN−γ ELISPOTアッセイ、IL−2 ELISPOTアッセイ、細胞内のサイトカインアッセイ、及び他の免疫学的検出アッセイ、例えば、Ed Harlow及びDavid Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」の本文に記載のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
予防用に与える場合、本発明の免疫原性組成物は、HIV感染若しくはHIV感染の証拠の前に、又はとりわけ高リスク対象におけるAIDSによるいかなる症候でも、その前に、対象に投与するのが理想的である。免疫原性組成物の予防投与は、HIV−1感染に対する対象の防御免疫を与えるか、又はHIV−1に既に感染している対象におけるAIDSの進行を阻止又は減弱するのに役立ちうる。治療用に与える場合、免疫原性組成物は、AIDSの症候を改善及び治療するのに役立つ可能性があり、感染後できるだけ早く、好ましくはAIDSのいかなる症候でも、それが現れる前に使用すると有利であるが、病徴の開始時(又は後)で用いてもよい。
【0069】
免疫原性組成物は、限定されるものではないが、筋肉内、静脈内、皮内、粘膜及び局所送達を含めた、いかなる適した送達法を用いても投与できる。そのような技法は、当業者によく知られている。送達方法のより詳細な例は、筋肉内注射、皮内注射及び皮下注射である。しかし、送達は、注射法に限定される必要はない。さらに、動物組織へのDNAの送達は、陽イオン性リポソーム(Watanabe et al., (1994) Mol. Reprod. Dev. 38:268-274及び国際公開第96/20013号パンフレット)、動物筋組織への裸のDNAの直接注射(Robinson et al., (1993) Vaccine 11:957-960、Hoffman et al., (1994) Vaccine 12: 1529-1533、Xiang et al., (1994) Virology 199: 132-140; Webster et al., (1994) Vaccine 12: 1495-1498、Davis et al., (1994) Vaccine 12: 1503-1509及びDavis et al., (1993) Hum. Mol. Gen. 2: 1847-1851)、又は「遺伝子銃」技法を用いたDNAの皮内注入(Johnston et al., (1994) Meth. Cell Biol. 43:353-365)によって実現されている。或いは、送達系路は、経口、鼻腔内、又はいかなる他の適した経路でもありうる。送達は、肛門、腟又は口腔粘膜などの粘膜表面を介しても実現される。
【0070】
免疫処置スケジュール(又はレジメン)は、動物(ヒトを含める)に関してはよく知られており、特定の対象及び免疫原性組成物について容易に決定できる。したがって、免疫原を1又は複数回対象に投与することができる。免疫原性組成物の別々の投与の間には、設定された時間間隔があることが好ましい。あらゆる対象ごとにこの間隔は異なるが、それは通常、10日間から数週間までの範囲にあり、しばしば2、4、6又は8週間である。ヒトでは、この間隔は通常2〜6週間、最長6カ月又はそれ以上である。免疫処置のレジメンは、通常、免疫原性組成物の1〜6回の投与を有するが、1、2又は4回という少ない回数も有しうる。免疫応答を誘導する方法には、免疫原と共にアジュバントを投与することも含まれうる。一部の場合では、年に1回、年2回、又は他の長い間隔(5〜10年)の追加免疫を初期の免疫処置プロトコールに補足することができる。
【0071】
本発明の方法には、様々な一次−追加免疫レジメンも含まれ、とりわけDNA一次−アデノウイルス追加免疫処置又はDNA一次−MVA追加免疫処置レジメンが含まれる。これらの方法では、1又は複数回の初回刺激免疫処置の後に1又は複数回の追加免疫処置を行う。実際の免疫原性組成物は、各免疫処置で同じものか、異なったものでありえ、免疫原性組成物の型(例えば、タンパク質を含有するか、発現ベクターを含有するか)経路、及び免疫原の処方も変動しうる。例えば、発現ベクターを初期刺激ステップ及び追加免疫ステップに用いる場合、それは同じ型のものか、異なった型のものか(例えば、DNA又は細菌性又はウイルス性発現ベクター)のいずれかでありえる。1つの有用な初回刺激−追加免疫レジメンは、4週間の間をおいた2回の初回刺激免疫処置に続いて、最後の初回刺激免疫処置の4週間後及び8週間後に2回の追加免疫処置を行うものである。初回刺激及び追加免疫レジメンを実施するのに本発明のDNA、細菌性及びウイルス性発現ベクターを用いて包含されるいくつかの順列及び組合せがあることも、当業者には容易に明らかであろう。
【0072】
本発明の特定の実施形態は、好ましくは本発明の1又は複数のHIV−1抗原(好ましくはenv、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされたHIVタンパク質又はその断片)をコードするDNAを含有するアデノウイルスベクターを含む本発明の免疫原性組成物を対象に1又は複数回投与することによって、HIVに対する免疫応答を対象で誘導する方法であって、上記1又は複数のHIV−1抗原が、特異的な免疫応答を対象で誘導するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。そのような免疫処置は、望ましい免疫処置レジメンに従って、少なくとも2、4又は6週間の(又はさらに長い)時間間隔で複数回繰り返すことができる。
【0073】
本発明の免疫原性組成物は、単独で投与することも、他のHIV免疫原及び/又はHIV免疫原性組成物と同時投与又は逐次投与することもでき、例えば、「他」の免疫学的抗原性、ワクチン又は治療用組成物と共に投与して、それによって、本発明の多効果組成物又は「カクテル」組成物又は混合型組成物及びそれらを用いた方法を提供することもできる。この場合も、投与の成分及び方法(逐次投与又は同時投与)並びに用量は、特定の対象の年齢、性別、体重、種及び状態並びに投与経路などの因子を考慮に入れて決定できる。
【0074】
併用の場合、他のHIV免疫原は、全体的免疫処置レジメンの一部として、例えば初回刺激−追加免疫レジメン又は他の免疫処置プロトコールの一部として、同時に投与することも、異なったときに投与することもできる。HIV−1導入遺伝子などの他のHIV免疫原(好ましくはGRIN、GRN若しくはEnv、又はこれらの組合せ)を本発明で用いてもよい。他の多くのHIV免疫原は当技術分野で知られており、そのような好ましい免疫原の1つはHIVA(国際公開第01/47955号パンフレットに記載されている)であり、これは、タンパク質として投与することも、プラスミド(例えばpTHr.HIVA)で投与することも、ウイルスベクター(例えばMVA.HIVA)で投与することもできる。別のそのようなHIV免疫原は、RENTA(PCT/US2004/037699に記載されている)であり、これも、タンパク質として投与することも、プラスミド(例えばpTHr.RENTA)で投与することも、ウイルスベクター(例えば、MVA.RENTA)で投与することもできる。
【0075】
例えば、HIVに対する免疫応答をヒト対象で誘導する1つの方法は、HIV免疫原の少なくとも1用量の初回刺激投与と、HIV免疫原の少なくとも1用量の追加免疫投与とを行うステップを含み、その際、上記免疫原の少なくとも1つが本発明のHIV−1抗原、本発明のHIV−1抗原をコードする核酸、又は本発明のHIV−1抗原をコードする発現ベクター、好ましくはアデノウイルスベクターであるという条件で、各用量中の免疫原が同じもの又は異なったものでありえ、かつ上記免疫原が、HIV特異的な免疫応答を対象で誘導するのに十分な量で投与されるか、そのようなレベルで発現される。各用量は、1回の免疫処置あたり約1×107〜約2×1011ウイルス粒子であると有利である。
【0076】
HIV特異的な免疫応答は、HIV特異的なT細胞性免疫応答も、HIV特異的なB細胞性免疫応答も含みうる。そのような免疫処置は間隔をおいて、好ましくは少なくとも2〜6週間の間隔又はさらに長い間隔で行うことができる。
【0077】
初回刺激用の免疫処置注射と、追加免疫用の免疫処置注射との間の好ましい時間間隔は約3〜6カ月の間であり、6カ月が有利である。1回の初回刺激及びその3〜6カ月後の1回の追加免疫が好ましい。
【0078】
本発明は、ワクチンの投与も包含する。好ましい実施形態では、PMED(PowderJect(登録商標)粉末媒介の表皮送達で投与されるDNAワクチン(PowderJect powder mediated epidermal delivery))技法を用いてDNA追加免疫を行うことができる。同種追加免疫(homologous boost)又は異種追加免疫(heterologous boost)の約12週間後に1用量のPMEDを投与するのが有利である。
【0079】
当業者にならば、上述及び下記の実施例に記載の発明の原則に変更を加えられうるということが理解され、かつ予期されている。そのような改変、変更及び置換も本発明の範囲に包含されるものとする。
【0080】
これより下記の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
[実施例]
【実施例1】
【0081】
TBC−M4 HIV遺伝子配列インサート
TBC−M4ワクチン候補株は、サブタイプCウイルス単離株の遺伝子配列をコードしている。サブタイプC変異体に感染している血清陽転者における、インド由来の6株の異なったHIV−I単離株をクローニングし、特性分析した。単離株のヌクレオチド配列はGenBankから入手可能であり、ウイルスクローンは、国立AIDS参照試薬プログラム(National AIDS Reference Reagent Program)(米国国立衛生研究所)から入手可能である。
【0082】
候補ワクチンの各HIV−1遺伝子構成要素、すなわち、env、gag、RT、nef、tat及びrevのコンセンサス配列を得た。その後、上記6つの標的HIV−1遺伝子それぞれのコンセンサス配列に、どの1又は複数の単離株が最も密接に一致するかを同定するために、6つの単離株の天然配列を、得られたコンセンサス配列と比較した。以下の単離株が、コンセンサス配列に最も近い遺伝子を含有すると判定された。
GenBank受託番号AF067158:env及びRT
GenBank受託番号AF067157:gag及びtat
GenBank受託番号AF067154:rev及びnef
【0083】
これら3株のHIV−1単離株全てが、サブタイプCであり、かつ非合胞体形成型(NSI,non-syncytium-inducing)の表現型である。その後、同定された標的HIV−1遺伝子配列をサブクローニングする目的で、これら3株の単離株のクローニングされたゲノムを国立AIDS参照試薬プログラムから得た。
【0084】
Pfuポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR,polymerase chain reaction)によって、3つのゲノムDNAクローンからenv、RT、gag、tat及びnef遺伝子をサブクローニングした。rev遺伝子は、その長さが短く、かつ広範な改変が必要であるため、合成オリゴヌクレオチドから構築した。哺乳動物細胞における理論上の遺伝子発現を最適化するため、及び天然のタンパク質機能を選択的に低減させるために、上記HIV−1遺伝子を改変するためのヌクレオチド変化を、インビトロ変異誘発によって、PCR増幅中に意図的に導入した。
【0085】
各遺伝子の予測された配列は、GenBankから入手可能であった。サブクローニングされた遺伝子それぞれのヌクレオチド配列を標準的なゲノム配列決定法によって決定し、予測された配列と比較した。
【0086】
標的のHIV−1サブタイプC遺伝子を以下の通りに改変した。
【0087】
ワクシニアウイルスの初期転写終結シグナルをコードする内部T5NTモチーフにサイレント変異を導入するように完全長envを改変した。T5NT配列の除去は未熟な転写終結を最小限にし、ワクシニアウイルスの外来遺伝子発現を最適化することが知られている。
【0088】
p55ポリプロテインをコードする完全長gag遺伝子は、いかなる改変も行わずにサブクローニングした。
【0089】
rev遺伝子はいくつかの方法で改変した。アミノ酸75〜86をコードする12のコドンを欠失し、アスパラギン酸及びロイシンをコードする2つのコドンで置換して、revタンパク質を非機能性にした。加えて、rev遺伝子のヌクレオチド配列は、tat遺伝子とrev遺伝子との間の相同性を最小にするため、及び他の方法でアミノ酸配列を変えずに、ヒト細胞におけるrevタンパク質の発現を最適化するため、すなわち発現を「ヒト化」するために、コドンの3番目の位置(「ゆらぎ位置」)で改変した。
【0090】
tat遺伝子の第1エキソンは、3次元構造を保存しながらタンパク質を非機能性にするために、アミノ酸26及び32の2つのコドンをチロシンからアラニンに変えるように、インビトロ変異誘発で改変した。加えて、tat遺伝子の第2エキソンを欠失させた。同等なtat変異体を製造会社がトランス活性化アッセイで試験した。それらの変異体は、HIV−1 LTRの転写を活性化できなかった。
【0091】
改変されたtat及びrev配列を、適切な開始コドン及び終止コドンと共に融合遺伝子としてクローニングした。
【0092】
nef遺伝子は、MHCクラスIの下方制御及びCD3シグナル伝達を低減するために、アミノ酸62〜65のコドンをグルタミン酸からアラニンに変えることによって改変した。
【0093】
pol遺伝子の逆転写酵素(RT)部分は、逆転写酵素活性を除去するために、アミノ酸336及び337のコドンをアスパラギン酸からアスパラギンに変えることによって改変した。プロテアーゼ及びインテグラーゼの配列はコンストラクトに含まれていなかった。
【0094】
改変されたnef及びRTコード配列は、nef−RT融合遺伝子を生成するようにインフレームで融合させた。比色分析イムノアッセイを用いて、同等なコンストラクトのレトロウイルス活性に関して、nef−RTを評価した。酵素活性は検出されなかった。
【0095】
【表1】
【0096】
TBC−M4及び約800〜900bpのゲノムウイルス配列を含む、導入遺伝子(HIV 1C env、gag、nef−RT及びtat−rev)及び付随転写制御領域のDNA配列を決定した。2つの配列が決定された。第1の配列は、49/50領域、導入遺伝子tat−rev及びnef−RGを含有し、TB19a.1と命名されている。第2の配列、すなわちTB19a.2は、del III領域(欠失III領域、deletion III region)、並びに導入遺伝子env及びgagを含有しており、TBC−M4インサート中の特徴の座標を含有している。ウイルスインサートの決定された配列(19a.1及び19a.2)と、予測されたTBC−M4配列とのアライメントを行った。
【0097】
【表2】
【0098】
インサートの配列を図2A〜5Dに示す。
【実施例2】
【0099】
MVA組換え体の構築
組換え体のMVAウイルスの作製は、MVAゲノムDNAと、挿入することになっている異種配列を保持するプラスミドベクターとの間のインビトロ相同組換えを介して行われる。このプラスミドベクターは、MVAウイルスゲノムの必須ではない領域からのウイルス配列によって挟まれた外来配列を含有している。親MVAウイルスに感染している細胞の中に、このプラスミドを導入して形質移入を行い、プラスミド上のMVA配列と、ウイルスゲノム中の対応するDNAとの間の組み換えによって、プラスミド上の外来遺伝子の、ウイルスゲノムへの挿入がもたらされる。
【0100】
構築されたプラスミドベクターは、以下のエレメント、すなわち、(1)細菌宿主内でベクターの増幅を可能にする、原核細胞の複製開始点、(2)プラスミドを含有している原核宿主細胞の選択を可能にする、抗生物質アンピシリンに対する耐性をコードしている遺伝子、(3)相同組換えを介したこの領域への外来配列の挿入を指示する、MVAゲノムの欠失III(deletion III)領域に相同なDNA配列、及び(4)それぞれが、HIV−1遺伝子に連結されたポックスウイルスプロモーターを含む、1セットのキメラ遺伝子を含有していた。
【0101】
図6は、導入ベクターのアノテーション付きプラスミドマップを示す。導入ベクターのサイズは177923bpであり、機能的構成要素には、amp遺伝子、ポックスウイルスプロモーターであるsE/L、40K及び7.5K、MVA挿入部位であるdel III及び49/50、レポータ遺伝子であるlacZ及びgus、並びにHIV−1C抗原(env、gag、tat−rev及びnef−RT)が含まれる。
【0102】
ヒト臨床試験において、組換え生ポックスウイルスは、忍容性が良く、かつ免疫原性であって、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘発することが判明している。MVAは、ヒト細胞内で複製しないという利点を有し、ワクチン接種された個体12万人超における実証された安全記録を有する。加えて、MVA DNAの複製及び遺伝子発現は、ヒト細胞で比較的損なわれておらず、外来タンパク質の高レベルな発現を可能にしている。これは、ワクチン接種で、より強力な免疫応答をもたらしうる。MVAは、良好な安全記録を有し、かつ抗原特異的なMHCクラスI拘束性CTLを含めた、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘導できる。
【0103】
MVAは、デルモワクシニア(Dermovaccinia)株CVAから生じた。CVAは、AVS(アンカラワクチン接種場、Ankara Vaccination Station)で、ロバ−コウシ−ロバ継代によって長年にわたって保持されていた。1953年に、このウイルスが精製され、ウシを介して2回継代された。1954/55年に、CVAはドイツ連邦共和国で痘瘡ワクチンとして使用された。1958年に、CVAの限界希釈による弱毒化実験がニワトリ胚線維芽細胞(CEF,chicken embryo fibroblast)で開始された。360継代後に、ウイルスは連続して3回プラーク精製され、その後、継代数が570になるまで、CEFで複製した。ウイルスは、再度、トリ白血病ウイルス(avian leukosis virus)を含まないことが認識されているニワトリの群れから調製されたCEF上でプラーク精製された。「"MVA" Saatvirus 575. FHE-K. v.14.12.83」(翻訳:MVA種ウイルス、継代575、ニワトリ胚線維芽細胞K、1983年12月14日から)と標識された凍結乾燥原種ウイルスのバイアル2本を受け取り、凍結乾燥ウイルスは、それが使用されるまで、未開封のまま4℃で保存されていた。
【0104】
TBC−MVAの生産用の出発物質は、1995年に入手したMVA Saatvirus 575. FHE-K. v.14.12.83バイアルの1つであった。原種ウイルスのバイアル1本を1mM Tris pH9.0で再構成し、分注し、その後、0.1%FBSを補足したDME(DME/0.1%FBS)中に段階希釈して、初代ニワトリ胚皮膚(CED,chicken embryo dermal)細胞上でのプラーク精製の準備とした。希釈されたウイルスをCED細胞内で継代させ、TBC−MVA原種ロット番号1〜9を産生させた。
【0105】
850cm2のローラーボトル20本に、ローラーボトル1本あたり6×107CED細胞で播種し、0.1pfu/CED細胞のMOIで、TBC−MVA原種ロット番号1〜9に感染させた。その後、ローラーボトルに10%CO2/20%O2/平衡N2でスパージし、暖かい部屋のローラーラック上に配置した。感染は、34.5±1.5℃で、4±1日間、進行させた。感染期間の最後に、感染細胞及び培養培地を採取し、工程間試験用の試料を生成させた(粗原体)。感染細胞懸濁液を低速で遠心処理し、上清を捨て、ペレット細胞を1mM Tris、pH9.0中に再懸濁した。このペレット細胞を低速で遠心処理し、上清を採取した(清澄化原体)。ペレットを1mM Tris、pH9.0中に再懸濁し、この懸濁液を再度、低速で遠心処理した。この結果得られた上清を清澄化原体に添加した。力価決定用に試料を取り出し、清澄化原体をクライオバイアルに分注し、それらを−70℃以下で保存した。マスターウイルスストックは、TBC−MVA MVSロット番号1−030599と命名された。
【0106】
このTBC−MVA MVSロット番号1−030599(希釈液)1×107、2001年5月16日を、TBC−M420(インド由来(Indian)HIV−1C env、gag、tat−rev、nef−RT)組換え体を作製するための親ウイルスとして用いた。
【0107】
TBC−M420組換え体ウイルスは、インビボ組換えの標準的な技法を用いて作製した。CED細胞を親MVAウイルス(TBC−MVAマスターウイルスストック)に感染させた。その後、リン酸カルシウム沈殿法を用いて、プラスミド導入ベクターpT207及びpT216で細胞に形質移入した。48時間後に、感染細胞を採取し、3ラウンドの凍結融解によって子孫ウイルスを遊離させた。
【0108】
組換え体子孫ウイルスは、ウイルスプラーク上でインサイチュで行った、lacZ及びgus遺伝子産物の発現を検出する色素アッセイを用いて特定した。インビボ組換えの後に得られたウイルス子孫を用いて、6cm組織培養プレート内のCED細胞の単層培養物を感染させた。約24時間後に、アガロース溶液を感染細胞の上に重ねた。初期感染の4日後に、組織化学基質Bluo-Gal/マゼンタを含有するアガロース溶液を添加した。Bluo-Gal/マゼンタは、lacZ遺伝子及びgus遺伝子の産物によって変換され、それゆえ、これらの酵素を発現するプラークで紫色沈殿を生成する。次の日に、薄赤色のバックグランドに対して紫色で現れる陽性プラークを、無菌パスツールピペットを用いて取り上げた。純粋なプラーク単離株が得られるまで、これらのプラークを追加の精製ラウンドにかけた。
【0109】
TBC−M420組換え体の単離及び種ストックの調製の概略を示す流れ図を図7に示す。種ストックを調製するために、この最後に取り上げたプラーク内に存在しているウイルスに2ラウンドの増幅を施した。第1のラウンドは、1枚の6cm組織培養プレート内で行い、第2のラウンドは、10枚の15cm組織培養プレート内で行った。感染細胞を採取し、3ラウンドの凍結融解によって子孫ウイルスを遊離させた。その後、ウイルスをクライオバイアル内に分注し、−70℃以下で保存した。このストックは、TBC−M420種ストックロット番号2−080802と命名され、ワクチン生産用の組換えマスターウイルスストックを調製するための出発物質として用いられている。
【0110】
TBC−M420のゲノム解析に関して、試験物品(test Article)は、TBC−M420 SSロット番号2−080802であり、陰性対照は、TBC−MVAロット番号1−030599であり、陽性対照は、pT207ロット番号01−060502及びpT216ロット番号01−060502であった。
【0111】
試験物品ゲノムDNAは、ニワトリ胚皮膚細胞をTBC−M420に感染させ、MVAゲノムDNAを抽出することによって調製した。このDNAを、BamH I、EcoR I及びXba Iを用いた制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析した。その際、各制限エンドヌクレアーゼ消化は単一の酵素を用いて行った。その後、消化産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、エチジウムブロマイドを用いて染色して、DNA断片を可視化した。サザンブロットハイブリダイゼーション用にDNA断片をナイロン膜に転写した。env、gag、del III、tat−rev、nef−RT及び49/50の配列に対応するジゴキシゲニン標識DNAを用いて、各消化産物を個別にプロービングした。env、gag及びdel IIIの陽性対照には、プラスミドpT207ロット番号01−060502を使用し、tat−rev、nef−RT及び49/50の陽性対照には、プラスミドpT216ロット番号01−060502を使用して、分析を行った。陰性対照には、非組換え体MVAウイルスであるTBC−MVAロット番号1−030599から調製されたDNAを用いて、分析を行った。ハイブリッド形成している断片のサイズをそれらの予測されたサイズと比較して、適切な分子量の断片がプローブ配列を含有するかどうか判定した。予測された断片の全てが観察された。
【0112】
env遺伝子を発現しないものが種ストックで観察された。
【0113】
【表3】
【0114】
ウエスタンブロット分析は、全遺伝子が発現されたことを明らかにした(データは示されていない)。TBC−M420種ストック番号2−080802は、HIV−1クレードCのENV、GAG、TAT−REV及びNEF−RT融合タンパク質をコードするMVA組換え体である。これらの遺伝子/タンパク質の発現をウエスタンブロット分析で測定した。簡潔には、組換え体感染細胞の溶解物/タンパク質をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース膜ペーパーにトランスブロットした。これらのブロットを、HIV−1 ENV(gp120)、GAG、REV、TAT、NEF及びRTの検出に特異的な抗体と共にインキュベートした。その後、発色基質を用いてそれらを発色させた。特徴的なサイズ(ENV=160/120kD;GAG=55kD、TAT−REV=29kD及びNEF−RT=90kD)のバンドは、遺伝子発現の陽性の証拠と考えられる。
【0115】
試験物品であるTBC−M420 SS番号2−080802の力価が低く、かつその利用が限定されていたため、MOI 2を用いた。他の全ての組換え体は、一貫性を得るために最も低い力価に調整した。TBC−M420 SS番号2−080802の遺伝子は、TBC−M395 SS番号1−121801より強いプロモーターの下にあるという事実により、TBC−M420 SS番号2−080802のバンド強度は、全てのブロットで、陽性対照であるTBC−M395 SS番号1−121801より強かった。
【0116】
・エンベロープ:
TBC−M420 SS番号2は、160kD及び120kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、160kD及び120kDのバンドに関して陽性であった。しかし、これは、スキャンでは、オリジナルのブロットが適切なバンドを示しているほどには検出可能でない。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1エンベロープの検出に特異的であったことが確認された。
【0117】
・Gag:
TBC−M420 SS番号2は、約55/45kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約55/45kDのバンドに関して陽性であった。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 GAGの検出に特異的であったことが確認された。
【0118】
・Nef及びRT:
TBC−M420 SS番号2は、約90kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約90kDのバンドに関して陽性であった。しかし、陽性対照TBC−M395 SS番号1のスキャンは、約90kDの顕著なバンドを示さない。オリジナルのブロットでは、このバンドが検出可能である。両方の抗体条件下で同じサイズのバンドが検出されたという事実によって、発現された遺伝子が単一のポリプロテインであることが確認された。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 NEF及びRTの検出に特異的であったことが確認された。
【0119】
・TAT及びREV:
TBC−M420 SS番号2は、約29kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約90kDのバンドに関して陽性であった。両方の抗体条件下で同じサイズのバンドが検出されたという事実によって、発現された遺伝子が単一のポリプロテインであることが確認された。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 TAT及びREVの検出に特異的であったことが確認された。
【0120】
上述の通り、env以外の遺伝子の発現の純度(プラーク分析)は、適したアッセイがないため行っていない。
【0121】
6cm組織培養プレート内の初代CED細胞を用いて、ウイルスの力価決定を行った。培養培地中にウイルスを段階希釈し、これらの希釈物を細胞に添加した。感染の約24時間後に、培養培地を除去し、感染細胞単層培養物にアガロースオーバレイを適用した。3日後に、ニュートラルレッドを含有する第2のアガロースオーバレイを適用した。さらに2日間インキュベートした後、各プレート上のプラークの総数を数え、20〜200プラークを含有するプレートからの計数を用いて、力価を1mlあたりのプラーク形成単位(pfu,plaque-forming unit)で計算した。TBC−M420種ストックロット番号2−080802の濃度は、8.8×107pfu/mlであると測定された。
【0122】
AIDSワクチン評価グループ(AVEG,AIDS Vaccine Evaluation Groups)は、ポックスウイルスベースのAIDSワクチン候補株を評価するための多くのフェーズI臨床試験プロトコールを実施している。プロトコール002、002A、002B、008及び010は、HIV−1 env遺伝子を発現する複製性ワクシニアウイルス(HIVAC−1e)を、様々なHIV envサブユニット調製物と併用した初回刺激−追加免疫レジメンを試験した。同様に、プロトコール014A及び014Cは、Therion社製の多重遺伝子組換え体であるTBC−3Bを評価した。TBC−3Bは、HIV−1の3B単離株に由来するenv及びgag−pol遺伝子を発現する。014Cでは、TBC−3Bで免疫処置されたボランティアに、HIV env調製物で追加免疫した。残りの試験は、1又は複数のHIV遺伝子を発現する様々なカナリア痘組換え体(Pasteur Merieux Connaught社製)を、様々な異なったサブユニットの追加免疫と併用した。したがって、臨床試験における、複製性及び非複製性のポックスウイルスベースのワクチンの使用には十分な経験がある。
【0123】
これらのヒト臨床試験で、組換え体生ワクシニアウイルスは、忍容性が良く、免疫原性であることが立証されている。同様に、カナリア痘組換え体も忍容性が良く、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘発した。しかし、カナリア痘組換え体によって誘発された免疫応答の効力に関しては、最近のデータは、HIV特異的なCTL応答を一過性のものでさえ発生するのは、ワクチン接種を受けた全ての人のうち約半分のみであることを示しており、いくらかの懸念がもちあがっている。
【0124】
MVA組換え体は、トリポックスウイルス及び複製性ワクシニアウイルスの最も良い特徴を組み合わせることができる。このベクターがヒト細胞では複製できないこと、及びワクチン接種を受けた12万人超の個体で立証された安全記録は、複製可能なワクシニアの使用に関してもちあがっている懸念に取り組むものである。しかし、トリポックスとは対照的に、MVA DNAの複製及び遺伝子発現は、ヒト細胞で損なわれておらず、外来タンパク質の高レベルな発現を可能にするこの特徴は、ワクチン接種の際に、より強力な免疫応答をもたらしうる。
【実施例3】
【0125】
動物データ
TBC−M4ワクチンの意図されている薬理効果は、改変ワクシニアウイルス(MVA)のウイルスベクターに挿入された標的HIV−1タンパク質に対する免疫応答の誘導である。ウエスタンブロットによって評価した場合、選択された6つのHIV−1タンパク質、すなわちenv、gag、nef、RT、tat及びrevの全てが、組換え体MVAウイルスによって発現されることが示されている(実施例2)。前臨床薬理試験の目的は、インビボでのワクチンの生物学的活性を評価することであった。ウイルスベクターMVA及びコードされているHIV−1タンパク質に対する宿主免疫応答の評価を用いて、TBC−M4ワクチン候補株の生物活性を評価した。
【0126】
TBC−M4ワクチンの、提唱されている作用機序は、組換え体MVAウイルスがヒト細胞を感染させ、限定的な複製を行い、今度は細胞が、挿入されているHIVタンパク質を発現するであろうというものである。TBC−M4ワクチンに暴露されたヒト対象におけるHIV−1抗原の発現は、宿主の細胞性及び体液性免疫応答を誘発するであろう。env、gag、nef、RT、tat及び/又はrevタンパク質に対して誘発された広範な免疫応答は、その後でヒト免疫不全症ウイルス(HIV)に暴露された際に、宿主におけるウイルス暴露及び二次的帰結を有意に低減しうると仮定されている。提唱されている作用機序に関する支持情報を以下に示す。
【0127】
ヒトでのHIV感染及びアカゲザルでのSIV感染に関する研究によって、中和抗体の重要な役割が明らかになった。強力な体液性及び細胞性応答を誘導する弱毒化生ウイルスへのHIV遺伝子の標的挿入は、HIVに対する防御免疫応答を誘導するための可能な戦略であると考えられている。
【0128】
改変ワクシニアアンカラウイルスは、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞を介した連続継代によって、野生型ワクシニアウイルスから得られた弱毒化生ウイルス株である。弱毒化の過程において、MVAウイルスは、詳細に特性分析されている複数のゲノム欠失を起こしており、それらにはこのウイルスの病原性の減弱が伴っていた。これらのゲノム欠失は、広範に特性分析されており、後期のウイルス粒子構築及びサイトカイン受容体の発現に影響を与えているようである。この結果、この改変ウイルスは、ほとんどの哺乳動物(ヒトも含まれる)の細胞を感染させ、正常な方法でウイルス(及び組換え体)遺伝子を発現することができるが、ほとんどの初代細胞型又は不死化細胞株で効率的に複製しない。20年間の研究の後、MVAウイルスの増殖性複製は、主として、ニワトリ胚線維芽細胞に限定されていると考えられている。
【0129】
親株であるCVAと異なり、MVAウイルスは、IFN−γ、IFN−αβ、TNF及びケモカインを含めた一連のサイトカインの可溶性受容体を発現しない。しかし、MVAウイルスは、可溶性IL−1β受容体を発現し、様々な疾患モデルで、体液性免疫応答、I型IFN及びCD8+細胞の強力な誘導因子であることが立証されている。
【0130】
MVAウイルスに挿入された外来遺伝子が発現される正確な機序、及び特異的な免疫を誘導するために提示される関連抗原は、いまだなお明らかになっていない。上記6つのHIV−1ポリペプチドは、感染細胞内で発現した後、MHCクラスIのコンテクストでプロセシング及び提示されるであろうと推定されている。体液性応答は、ウイルス感染細胞からの抗原の分泌によって、又は細胞溶解に続くそのような抗原の遊離によって誘発されうる。これらの方法で遊離した抗原は、その後、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC,antigen-presenting cell)によって取り込まれ、流入領域リンパ節でCD4+T細胞に提示されうる。
【0131】
組換え体MVAウイルスによって遺伝学的に導入された抗原がCD8+応答に提示される機序は、それよりよく判っていないが、これらの細胞の誘導は、HIV、SIV及び他の疾患モデルで実証されている。動物研究は、マウス及びアカゲザルの両方で、HIV−1サブタイプAエピトープ又はSIV CTLエピトープを発現する組換え体MVAウイルスによる特異的CD8+応答の誘導を実証している。マウスでは、静脈内経路による投与が、筋肉内経路より良い応答を与えたが、皮内注射による投与も有効であった。アカゲザルでは、免疫処置された動物は、それに続く攻撃の後、対照と比較して、少ないウイルス量及び延命を示したが、完全な防御は示さなかった。
【0132】
TBC−M4ワクチンの意図されている薬理効果は、MVAウイルスベクターによってコードされている標的HIV−1タンパク質に対する細胞性及び体液性免疫応答の誘導である。初代CED細胞並びに非ヒト霊長類細胞系及びヒト細胞系のウエスタンブロットによって評価した場合、選択された6つのHIV−1タンパク質、すなわちenv、gag、nef、RT、tat及びrevの全てが、組換え体MVAウイルスによって発現されることが示されている。ワクチンに対する免疫応答は、ワクシニア(MVAウイルス)結合抗体を測定するELISAと、HIV−1標的遺伝子産物に対する細胞性免疫応答を測定する酵素結合イムノスポット(ELISPOT,enzyme-linked immunospot)γインターフェロンアッセイとを用いて評価されている。
【0133】
宿主免疫を誘導するTBC−M4ワクチンの能力は、3つの動物モデル、すなわち齧歯動物(マウス)、ウサギ及び非ヒト霊長類で独立に確証されている。
【0134】
体液性及び細胞性という2クラスの免疫応答が、TBC−M4ワクチンに暴露された動物で測定されている。ELISA法は、血清中のワクシニア結合抗体を検出するのに用いられる。ELISPOTインターフェロンγアッセイは、標的HIV−1抗原に対するT細胞応答を検出するのに用いられる。
【0135】
抗ワクシニア体液性応答。第1相臨床開発中である他の組換え体ポックスウイルスベースのワクチンでは、暴露された動物の血清中におけるワクシニア結合抗体の誘導が、薬理活性の主要な指標として用いられている。ワクシニア結合抗体を測定するELISAは、ヒト及びマウス血清のアッセイに関して確証されており、ウサギ血清に関して適格となっている。ワクシニア結合抗体の測定は、最初、ワクチンの免疫原性能力を実証するために行われ、その後の試験では、TBC−M4ワクチンの薬理活性を確証するために、2通りの非臨床毒性学試験が行われた。
【0136】
HIV−1特異的なELISPOTγインターフェロンアッセイ。より後の段階の臨床開発に備えて、ワクチンに対する抗原の特異的T細胞応答を測定するアッセイ及び試薬が開発されている。インビトロ刺激に続く、抗原特異的細胞性免疫応答を測定するために、脾臓IFN−γ産生細胞を検出するELISPOTアッセイが開発されている。TBC−M4ワクチンを用いて、抗原特異的な細胞性免疫応答を測定する2通りの試験が行われている。
【0137】
マウスにおけるTBC−M4の免疫原性。この試験の目的は、TBC−M4への筋肉内暴露に続く、マウスの抗ワクシニア、抗gag及び抗env体液性応答を評価することであった。抗env及びgag免疫グロブリン応答のアッセイに使用されたELISA法は、サブタイプB抗原を用いて開発され、サブタイプC抗原に対して産生された免疫グロブリンとの交差反応性は、この試験での血清のアッセイの前には確立されていなかった。
【0138】
TBC−M4ワクチンの臨床ロットの1つは、1×108pfu/mlのストック濃度の凍結状態であった。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。試験物品を投与するそれぞれの日に、1×107pfu/mlの使用溶液となるように、プラセボ中にストック物質の1〜10倍希釈液を作ることによって、新しい投与溶液を調製した。メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。
【0139】
SD0の前及び投与を行うそれぞれの機会の2週間後に、各動物から採血した。免疫処置前及び後の試料を、血清ワクシニア結合反応に関して、ELISAによってアッセイした。報告の力価は、未処置の血清で測定されたOD値に3を掛けた値に基づいて決定した。検出限界は力価100であり、これは、1:100希釈のときに試料のODが陰性対照ウェルに匹敵することを示す。
【0140】
抗ワクシニアELISAから得たデータを表4に示す。最初のワクチン投与の2週間以内、すなわちSD14に、6匹のマウスのうち4匹で抗ワクシニア力価が検出された。2回以上(SD0及び21、又はSD0、21及び35)ワクチン接種された動物からの血清試料は、ワクシニア抗体結合ELISAで全て陽性であった(12匹のうち12匹)。ワクシニアイムノグロブリンアッセイで得た結果は、マウスにおける上記ワクチンの薬理活性を確証し、TBC−M4ワクチンが一次暴露の後に、検出可能な宿主免疫応答を誘導し始めることを示した。
【0141】
【表4】
【0142】
最終試験報告書に示されている通り、抗gag及びenv ELlSAは、クレードB HIV−1抗原を用いて開発され、サブタイプC抗原に対して誘発された血清との交差反応性は知られていない。env及びgag ELISAからの結果は決定的ではなかった。TBC−M4ワクチン(サブタイプC)で免疫処置された動物からの血清試料はいずれも、製造会社のELISAアッセイで使用されたサブタイプB gag抗原を検出しなかった。TBC−M4ワクチン(サブタイプC)で免疫処置された動物からの18の血清試料のうち1つは、サブタイプB env抗原との穏やかな反応性を示した。報告されている、クレードB及びサブタイプC HIV−1株におけるgag抗原性の保存を前提として、クレードB gag抗原との陰性データは予測されていなかった。しかし、サブタイプC抗原に対して産生された抗体を検出する現在のアッセイの能力が確認されていないので、env及びgag ELISAで得られた結果を解釈することができなかった。サブタイプCのenv及び/又はgag抗原に対する確証された反応性を有する陽性対照血清は利用可能でなかった。
【0143】
この試験の目的は、CD1マウス系統における、上記ワクチンの生物学的活性を確証することであった。血清抗ワクシニア結合反応を確証済みのELISA法でアッセイした。
【0144】
TBC−M4ワクチンは、5×108pfu/mlの凍結状態で用意された。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。投与を行う機会ごとに、50μlの希釈されていない解凍試験物質又はプラセボを動物に投与した。これは、交互の後肢への筋肉内注射によって与えた。動物に投与し、血清を回収した。SD0の前と、第4(最後)の投与機会の2週間後であるSD78に、各動物から採血した。免疫処置前及び後の試料を、血清ワクシニア結合反応に関して、ELISAによってアッセイした。報告の力価は、天然の血清で測定されたOD値に3を掛けた値に基づいて決定した。検出限界は力価100であり、これは、1:100希釈のときに試料のODが陰性対照壁に匹敵することを示す。
【0145】
抗ワクシニア結合ELISAの結果を表5に示す。投与の前に収集された血清試料又はプラセボに暴露された動物からの試料はいずれも、検出可能な抗ワクシニア力価を含有していなかった。TBC−M4ワクチンを投与されたマウスからの血清試料全てが、著しく高い抗ワクシニア力価を含有していた(25600〜51200の範囲)。陽性の体液性応答は、免疫処置後の抗ワクシニア力価が、投与前の力価の2倍に増大することによって示される。ワクチン接種された動物における25600〜51200の血清力価は、ワクチンに対する陽性応答を示し、反復投与毒性試験で用いられたCD1マウスモデルにおける上記ワクチンの薬理活性を確証した。
【0146】
【表5】
【0147】
マウスIFN−γELISPOT。この研究の目的は、HIV1抗原特異的な脾細胞の頻度をIFN−γELISPOTアッセイで測定することによって、TBC−M4ワクチンに対する、BALB/cマウスの細胞性免疫応答を決定することであった。この試験は、関連しているが同一ではない多重遺伝子HIV−1サブタイプCコンストラクト用に合成されたペプチド試薬を用いて行う概念実証試験である。上記ペプチドプールは、env、gag、pol(RT)及びnef−tatタンパク質由来の、オーバーラップを有する15量体アミノ酸配列を含有するようにモデル化され、合成された。
【0148】
TBC−M4ワクチンは、1×109pfu/mlのストック濃度の凍結状態で用意した。試験物質は、使用するまで凍結状態で保存した。1、2又は3回の投与機会に、1回の投与あたり1×104pfu、1×106pfu又は1×108pfuの試験物品を与えて、動物に投与した。試験物品を投与するそれぞれの日に、新たな投与溶液を調製した。原液保存ワクチンが1×109pfu/mlで用意されたので、投与溶液C(1×108pfu/0.1m)は調製を必要としなかった。投与溶液B(1×106pfu/0.1ml)は、エンドトキシン非含有PBS中への保存ワクチンの1対10希釈を順次に2回行うことによって調製した。投与溶液A(1×104pfu/0.1ml)は、エンドトキシン非含有PBS中への投与溶液の1対10希釈を順次に2回行うことによって調製した。
【0149】
同様な免疫原性プロトコールを用いた以前の経験に基づいて、メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。動物に投与し、各免疫処置の2週間後に脾臓を回収した。
【0150】
脾臓を2%ウシ胎児血清を含有する完全培地中に収集して、ELISPOT試験施設に移した。脾臓は、収集と同じ日に受理され、ELISPOTアッセイ用に処理された。組織解離を通した無菌技法を用いて、各組織試料から脾臓リンパ球を単離し、収集した。各試料の単細胞懸濁液の計数を行い、1ウェルあたり2×105細胞の最終細胞密度となるように、濃度を調整した。2つの対照、すなわち培地のみ(陰性対照)及びCon A(T細胞マイトジェン;陽性対照)と、1.5〜2μg/μlの9つの異なったペプチド刺激とを含めた合計11の刺激条件に関して、トリプリケートのウェルで試料を試験した。用いられたHIV−1ペプチドプール及び単独のペプチドを表6に示す。抗マウスIFN−γ抗体でプレコーティングされた96ウェルELISPOTフィルター−プレート内に細胞及び刺激物を分注し、37℃で18〜24時間インキュベートした。残った未使用の細胞は−70℃で冷凍した。刺激された細胞によって分泌されたIFN−γによって生じたスポットを、酵素標識されたマウスIFN−γ特異検出抗体を用いて検出した。
【0151】
【表6】
【0152】
ELISPOTアッセイから得た結果の要約を表7に示す。EliSPOTの結果は、1ウェル(2×105細胞)あたりのIFN−γ産生細胞の数として報告されている。このアッセイでは、陰性対照(刺激されていないウェル)の平均に標準偏差(SD)の2倍を足した値以上の値が陽性と考えられている。
【0153】
試験された全ての用量(1×104〜1×108pfu)のTBC−M4で免疫処置された全ての動物からの細胞培養で、Env、gag及びpol(RT)特異的な応答が観察された。未処置の動物からの脾細胞培養では、HIV−1抗原(ペプチド)特異的な応答が検出されなかった。未処置細胞のインビトロ刺激は、検出可能なワクチン特異的IFN−γ産生細胞を誘導しなかったので、観察された応答は、TBC−M4ワクチンによる、宿主免疫細胞のインビボ刺激に起因すると考えられた。
【0154】
【表7】
【0155】
env、gag及びpol(RT)への応答の規模は、投与されたワクチンの用量におおよそ相関しており、ワクチンに対する用量依存的な免疫応答を示した。これら3つの投与群全てで、ワクチンの一次暴露の後、IFNγ応答が検出された。応答の規模は、通常、後続のワクチン投与それぞれの後の方が高かった。しかし、最も高い用量(1×108pfu)までの3回の暴露を受けた動物からの脾細胞は、2回の暴露を受けた同じ投与群からの脾細胞と比較すると刺激に不応性のようであった。
【0156】
gag及びpol(RT)に由来する単独のペプチドで刺激された培養物では、同様なパターンの抗原特異的IFN−γ刺激が観察されたが、応答は動物間での一貫性が低くなっており、より低い規模のものであった。単独のenvペプチドエピトープは刺激性でなく(データは示されていない)、類似したサブタイプC nef−tat融合ポリペプチドに由来するペプチドプールも刺激性でなかった(データは示されていない)。単独のenvペプチドに対して応答がなかったことは予想外ではない。envプール内に含有される複数のペプチド(env(1)及びenv(2))に対して試験した場合には、このコードされているHIVタンパク質に対する応答が明らかになった。再刺激に用いられたnefペプチドプールを後で分析したところ、用いられたnefペプチドプールと、TBC−M4ワクチンに一致した理論上のnefプールとの間では、51のエピトープ配列のうち9しか一致しないことが明らかになった。2つのnefポリペプチドプールで観察された相違は、nef(及びtat)に対する応答の低さが、適した試薬がないことに関係していると示唆している。
【0157】
したがって、6つの標的HIV−1抗原インサートのうち3つに対する応答が検出され、残りの3つに対する応答の測定には、適した試薬が利用できなかった。TBC−M4投与に続くIFN−γ応答は、ワクチンのT細胞刺激活性の指標であると考えられている。T8C−M4の薬理効果は、投与の回数及び投与を行う機会それぞれで投与されたワクチンの量によって影響される。
【0158】
マウスIFN−γELISPOT。この試験の目的は、BALB/cマウス及びCD1マウスの脾細胞における、TBC−M4ワクチンに対する免疫応答を、IFN−γELISPOTアッセイによって測定することであった。この試験は、関連しているが同一ではない多重遺伝子HIV−1サブタイプCコンストラクト用に合成された、env、gag及びpol(RT)ペプチド試薬を用いて行う概念実証試験であった。IFN−γELISPOTアッセイのインビトロ刺激段階中に、上述の試験で活性であることが示されたペプチドプールを用いた。上記ペプチドプールは、env、gag、pol(RT)及びnef−tatタンパク質由来の、オーバーラップを有する15量体アミノ酸配列を含有するようにモデル化され、合成された。
【0159】
TBC−M4ワクチンは、5×108pfu/mlのストック濃度の凍結状態で用意された。試験物質は、使用するまで凍結状態で保存した。同様な免疫原性プロトコールを用いた以前の経験に基づいて、メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。CD1マウスを選択して、このマウス系統における上記ワクチンの薬理活性を確証するために選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの希釈されていない試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。動物に投与し、第2の投与(SD35)の2週間後に脾臓を回収した。脾臓採取の際に採血を行った。血清は冷凍保存した。
【0160】
脾臓を2%ウシ胎児血清を含有する完全培地中に収集して、ELISPOT試験施設に移した。脾臓は、収集と同じ日に、ELISPOTアッセイ用に処理された。組織解離を通した無菌技法を用いて、各組織試料から脾臓リンパ球を単離し、収集した。各試料の単細胞懸濁液の計数を行い、1ウェルあたり2×105細胞の最終細胞密度となるように、濃度を調整した。2つの対照、すなわち培地のみ(陰性対照)及びCon A(T細胞マイトジェン;陽性対照)と、1.5〜2μg/mlの5つの異なったHIV−1ペプチドプールを含めた合計7つの刺激条件の合計に関して、トリプリケートのウェルで試料を試験した。これらのHIV−1ペプチドプールは表8に記載されている。抗マウスIFN−γ抗体でプレコーティングされた96ウェルELISPOTフィルター−プレート内に細胞及び刺激物を分注し、37℃で18〜24時間インキュベートした。残った未使用の細胞は−70℃で冷凍した。刺激された細胞によって分泌されたIFN−γによって生じたスポットを、酵素標識されたマウスIFN−γ特異検出抗体を用いて検出した。
【0161】
【表8】
【0162】
96ウェルのスポット画像を得るために、フィルターELISPOTプレートをCTL社製Immunospotスキャナーでスキャンした。CTL社製Immunospot(登録商標)分析ソフトウェアを用いて、各ウェル内のスポット数を計数した。トリプリケートの値の平均は、excelテンプレートに組み込まれた数式を用いて得た。
【0163】
ELISPOTアッセイの結果の要約を表9に示す。ELISPOTの結果は、1ウェル(2×105細胞)あたりのIFN−γ産生細胞の数として報告されている。このアッセイでは、陰性対照(刺激されていないウェル)の平均に標準偏差(SD)の2倍を足した値以上の値が陽性と考えられている。
【0164】
【表9】
【0165】
TBC−M4ワクチンで免疫処置された動物からの細胞培養は、env、gag又はpol(RT)ペプチドプールを用いたインビトロ刺激に続いて、IFN−γ応答を示した。BALB/cマウスにおける、T細胞関連のIFN−γ応答の規模及びパターンは、以前に報告された陽性の結果を確証した。gag及びenv成分に対するT細胞応答の規模は、CD1マウスとBALB/cマウスとで匹敵していた。Pol(RT)関連の応答は、BALB/cマウスからの脾細胞の方が強いようであった。未処置の動物からのBALB/c脾細胞培養では、抗原(ペプチド)特異な応答が検出されなかった。
【0166】
予想外なことに、2匹の未処置CD1マウスのうち1匹からの細胞培養物がHIV−1ペプチドプールに応答した。アッセイ及び応答の再調査は、その動物番号のスポットパターンが、免疫処置された動物におけるスポットパターンとは異なっており、トリプリケートウェルの間で、予測より高い変異と、操作者が気付いた定性的な相違とを有していたことを示した。予想外の応答に寄与する要因を調査したが、見逃がせない原因は1つも決定できなかった。予期しなかった結果に寄与していたかもしれない潜在的要因には、免疫処置及び/又はアッセイを行っている間の操作者の間違い又はCD1マウスの非近交系バックグランドが含まれる。調査の結論は以下の通りである。
【0167】
・試験物品は、ワクチン接種されたマウスの100%で活発な細胞性免疫応答を誘導した。
【0168】
・2匹のCD1陰性対照マウスのうちの1匹における見かけの応答に関する問題は、他の原因[操作者の間違いなど]も完全には除外できないが、HIVペプチドに対する、この動物のバックグランド応答によって、最ももっともらしく説明される。
【0169】
・CD1バックグランドの説明は、2匹の陰性対照BALB/cマウスにおける応答の不在及び陰性対照マウスにおける応答の規模、並びにアッセイ行為に関する調査によって支持される。
【0170】
まとめると、これらの試験で観察された、6つの標的HIVタンパク質のうちの3つ(env、gag及びRT)に対する抗原特異的なIFN−γ応答は、上記ワクチンの意図された効果、すなわち、TBC−M4産物によってコードされたHIVタンパク質に対する免疫応答の誘導を確証する。TBC−M4投与に続くIFN−γ応答は、ワクチンのHIV抗原成分に対するT細胞応答性の指標であると考えられている。これらの結果は、筋肉内投与経路によって暴露された動物における、TBC−M4ワクチンの薬理活性を再確認するものである。
【0171】
ウサギにおけるTBC−M4の免疫原性。この試験の目的は、ニュージランドホワイト(NZW,New Zealand White)ウサギの動物モデルにおける、上記ワクチンの生物活性を確証することであった。ワクシニア結合抗体が存在しているかどうかに関して、適格なELISA法を用いて、ワクチン接種前及び後にNZWウサギから収集した血清を試験した。
【0172】
TBC−M4ワクチンは、臨床ロット1A(5×108pfu/ml)及び臨床ロット1B(1×108pfulml)として、凍結状態で用意された。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。臨床ロット1A、臨床ロット1B及びプラセボを用いて、プロトコールで指定された通り、SD1(左)、SD22(右)、SD43(左)及びSD64(右)という交互の肢領域で動物に投与した。投与を行う機会ごとに、0.5μlの希釈されていない解凍試験物質又はプラセボを動物に投与した。これは、上記の通り、交互に左/右の後肢に筋肉内注射することによって与えた。動物に投与し、血清を回収した。
【0173】
血液(1ml)を各動物から、いかなる試験物品の投与も行われる前(試験前)に収集し、再度、SD67、すなわち第4(最終)の投与を行う機会の3日後にも収集した。ワクチン接種前及び後の血液は、耳の静脈又は動脈から収集した。標準的な凝固手順及び遠心分離手順の後、血清を収集した。ELISAによる、ワクシニア結合抗体応答アッセイ用に、免疫処置前及び後の試料を収集した。
【0174】
力価は、未処置の血清の値に3を掛けた値に基づいて決定した。陽性の応答は、免疫処置後の試料が、投与前試料と比べて、2倍に増大することによって示された。
【0175】
抗ワクシニア結合ELISAの結果を表10に示す。試験物品を投与する前には、36羽の試験動物のうち34羽で、血清抗ワクシニア力価が検出限界にあった(≦100)。検査の開始時に、2羽の動物が血清力価400を有していた。これは、小さなサブセットの動物で、ワクシニア交差反応性抗原への事前暴露があったことを示すものでありうる。
【0176】
【表10】
【0177】
対照群である群1の12羽のウサギはどれも、ELISAで、ワクシニア抗原に対する陽性結合反応、すなわち、投与前血清の力価と比較した、SD67血清の抗体力価の増大を示さなかった。TBC−M4ワクチン(群2:5×107pfu及び群3:2.5×108pfu)を投与された24羽のウサギ全てが、ワクシニアに対して血清陽転した。群2(低用量)の動物からの力価は6400〜25600の範囲であった。群3(高用量)の動物からの力価は25600〜102400の範囲であった。TBC−M4を投与された動物全てが血清陽転したことは、毒性試験用に選択されたウサギモデルにおける、上記ワクチンの薬理活性を確証する。
【0178】
まとめると、TBC−M4ワクチンの生物学的活性を動物で評価するために、5通りのインビボ試験を行った。4通りの試験はマウスで行い、1通りの試験はウサギで行った。複数のワクチン成分に対する宿主免疫応答の誘発によって、弱毒化ワクシニアベクター及び挿入HIV遺伝子産物を含めたワクチンの薬理活性を実証した。上記ワクチンベクターに対する体液性応答は、3通りの試験の全てで観察された。挿入HIV−1遺伝子産物に対する応答は、2通りの原理証明試験で観察された。両方の試験で、env、gag及びpol(RT)抗原に対する有意なIFN−γ応答が観察された。併せて、これらの試験の結果は、TBC−M4ワクチン候補株の第1相臨床試験を支持する。
【実施例4】
【0179】
動物毒性学
2通りの反復投与非臨床安全性試験を、TBC−M4ワクチンの、提案されている臨床ロットを用いて行った。交互の後肢への3週間間隔、4回のプラセボ又はTBC−M4の筋肉内注射にマウス及びウサギの両方を暴露した。提案されている臨床レジメン(3回の投与)に1回足したものに相当する4回の反復注射を与えた。マウスで最大許容容積を与えるため、及び最大ヒト用量相当をウサギに与えるための用量レベル選択を行った。
【0180】
提案されている2通りの臨床用量、すなわち5×108pfu/mLのロットA及び1×108pfu/mLのロットB 50μlを用いて、この種に与えることのできる最大容積の試験物品を与える、マウス試験用の用量を選択した。50μl容積は、0.5mLでヒトに与えることが提案されている最大ヒト用量のほぼ1/10に相当している。ヒトの平均体重を70キログラム(kg,kilogram)、週齢1週間のマウスを30グラムと仮定すると、ロット1Bに関しては、kgあたりの用量ベースで与えられた用量は、ヒト用の最大臨床用量の50倍増大に相当する。ロット1Aに関しては、kgあたりの用量ベースで与えられた用量は、ヒト用に意図されている最大臨床用量の230倍増大に相当する。
【0181】
ウサギ試験で与えられた用量は、提案されている最大臨床用量(ロット1A:5×108pfu/mL)の最大ヒト用量、及び第2のサブロットである、1×108pfu/mLで充填された臨床ロット1Aに相当する。ヒトの平均体重を70キログラム(kg)、若年成体ウサギの体重を3.5キログラム(kg)と仮定すると、kgあたりの用量ベースでは、これは、ヒト用に意図されている最大臨床用量の20倍安全マージンの最小値に相当する。
【0182】
2通りの非臨床安全性試験を独立に行った。これら両試験には、死亡率、臨床観察及び症状観察、体重、体重変化、飼料消費量、眼科、死体解剖、臓器重量及び比率、並びに臨床病理学パラメータ(血液学及び臨床化学)のモニタリングが含まれていた。マウスでは、標準的な組織一式の顕微鏡分析を行い、ウサギでは注射部位の顕微鏡分析を行った。
【0183】
プラセボ(PBS/グリセロール)又はTBC−M4ワクチンの反復筋肉内注射は、ウサギ及びマウスの両動物モデルで良好に忍容された。両動物モデルにおける試験物品に関連した観察には、注射部位における軽度から中程度の局所的な可逆的反応性が含まれていた。これは、ドレーズ(Draize)スコア判定によって測定した場合、巨視的に明らかであり、かつ注射部位からの生検の組織病理学では顕微鏡的に明らかであった。マウス試験では、試験物品に関連した他の変化に、グロブリンレベルの上昇、リンパ節腫脹及び白脾髄過形成が含まれ、これらは、ワクチンに対する、意図されていた免疫応答に起因すると考えられた。ウサギ試験では、処置されたメスの頚部領域における、皮膚の発赤及び/又は痂皮形成が、より高い頻度で発生した。処置との関係性を除外することはできなかったが、用量反応性も、オスにおける類似の観察もなかったので、この変化は偶発的なものであると考えられた。
【実施例5】
【0184】
ベクターベースのHIVワクチンの免疫原性の比較:ELISPOT−IFN−γ
表11は、ELISPOT−IFN−γに基づいた、ベクターベースのHIVワクチンの免疫原性の比較を示す。各試験における、ワクチン接種後のピーク時点での、複数のワクチンのワクチン応答率;中核検査室で作成したデータ;応答者のGMT SFC及び最小、最大SFC;バックグランドを引いた、106PBMCあたりの値。
【0185】
【表11】
【0186】
本発明は、以下の番号付き項によって、さらに記述されうる。
【0187】
1.1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含む、HIV−1に対する免疫原性応答を得る方法。
【0188】
2.(a)1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む1又は複数のHIV−1免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含む、HIV−1に対する免疫原性応答を得る方法。
【0189】
3.(a)及び(b)が順次に投与され、それにより、最初に(a)の投与があり、それに続いて(b)の投与が行われる、第2項に記載の方法。
【0190】
4.(a)及び(b)が順次に投与され、それにより、最初に(b)の投与があり、それに続いて(a)の投与が行われる、第2項に記載の方法。
【0191】
5.第1の免疫原と第2の免疫原が同じ免疫原である、第2〜4項のいずれかに記載の方法。
【0192】
6.初回刺激追加免疫レジメンが使用される、第2〜5項のいずれかに記載の方法。
【0193】
7.哺乳動物がヒトである、第1〜6項のいずれかに記載の方法。
【0194】
8.HIV−1免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質、又はこれらの断片からなる群から選択される、第1〜7項のいずれかに記載の方法。
【0195】
9.HIV−1免疫原がTBC−M4 HIV遺伝子配列インサートによってコードされている、第1〜8項のいずれかに記載の方法。
【0196】
これまで本発明の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、上記の項により規定される本発明は、上記説明に示した特定の細部に限定されるものではなく、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、それらの多くの明らかな変更が可能であることを理解するべきである。
【技術分野】
【0001】
参照による組込み
本出願は、2007年3月26日に出願された米国特許仮出願第60/908082号に基づく優先権を主張する。
【0002】
以上の出願及びそれらの中で引用されるかそれらの審査中に引用された全ての文献(「出願の引用文献」)、並びに出願の引用文献内で引用又は参照された全ての文献、並びに本明細書で引用又は参照された全ての文献(「本明細書の引用文献」)並びに本明細書の引用文献で引用又は参照された全ての文献を、本明細書又は参照により本明細書に組み込まれているいずれかの文書で言及されたいずれかの製品に関する製造会社の指示書、明細、製品仕様及び製品シートのいかなるものも併せて、参照により本明細書に組込み、本発明の実施に利用できるものとする。
【0003】
本発明の分野は、HIV−1ワクチンとして使用するための、HIV−1抗原をコードする新規な組換え体改変アンカラ(Ankara)ウイルスベクター(MVA)に関する。
【背景技術】
【0004】
AIDS、すなわち後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)は、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)によって引き起こされ、消耗症候群と、中枢神経系変性と、日和見感染及び悪性疾患をもたらす深刻な免疫抑制とを含めたいくつかの臨床的特性を特徴とする。HIVは、動物レトロウイルスのレンチウイルス(lentivirus)ファミリーのメンバーであり、これには、ヒツジのビスナウイルス(visna virus)、並びにウシ免疫不全症ウイルス(bovine immunodeficiency virus)、ネコ免疫不全症ウイルス(feline immunodeficiency virus)及びサル免疫不全症ウイルス(SIV,simian immunodeficiency virus)が含まれる。HIV−1及びHIV−2と名付けられた、密接に関連した2つのタイプのHIVがこれまでに同定されており、そのうち、HIV−1がAIDSの圧倒的に最も一般的な原因となっている。しかし、ゲノム構造及び抗原性が相違しているが、HIV−2も、同様な臨床的症候群を引き起こす。
【0005】
感染性のHIV粒子は、ウイルスタンパク質のコアにパッケージングされたそれぞれが長さ約9.2kbの2本の同一なRNA鎖からなる。このコア構造は、ウイルスによってコードされている膜タンパク質も含有する宿主細胞膜由来のリン脂質二重層エンベロープに囲まれている(Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454)。HIVゲノムは、レトロウイルスファミリーに特徴的な5’−LTR−Gag−Pol−Env−LTR−3’構成を有する。ウイルスゲノムのそれぞれの端にあるLTR(末端反復配列、Long terminal repeat)は、宿主の転写制御タンパク質の結合部位として働き、宿主ゲノムへのウイルス組込み、ウイルス遺伝子発現及びウイルス複製を調節する。
【0006】
HIVゲノムは、いくつかの構造タンパク質をコードしている。Gag遺伝子は、ヌクレオキャプシドコアのコア構造タンパク質と、マトリックスとをコードしている。Pol遺伝子は、ウイルスの複製に必要である逆転写酵素(RT,reverse transcriptase)、インテグラーゼ(Int,integrase)及びウイルスプロテアーゼ酵素をコードしている。tat遺伝子は、ウイルス転写産物の伸長に必要なタンパク質をコードしている。rev遺伝子は、不完全にスプライシングされているか、スプライシングされていないウイルスRNAの核外輸送を促進するタンパク質をコードしている。Vif遺伝子産物は、ウイルス粒子の感染力を強化する。vpr遺伝子産物は、ウイルスDNAの核内移行を促進し、G2細胞周期停止を調節する。vpu及びnef遺伝子は、宿主細胞のCD4発現を下方制御し、感染細胞からのウイルスの放出を促進するタンパク質をコードしている。Env遺伝子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードしており、これは160キロダルトン(kDa,kilodalton)の前駆体(gp160)として翻訳され、細胞性プロテアーゼによって切断されて、細胞の感染に必要である外側120kDaエンベロープ糖タンパク質(gp120)と、膜貫通41kDaエンベロープ糖タンパク質(gp41)とを産生する(Abbas, pp. 454-456)。Gp140は、外側120kDaエンベロープ糖タンパク質部分と、envのgp41部分の一部とを含有する改変形態のenv糖タンパク質であり、gp120及びgp41の両方の特徴を有する。nef遺伝子は、霊長類レンチウイルス間で保存されており、感染後に最初に転写されるウイルス遺伝子の1つである。インビトロでは、CD4及びMHCクラスIの表面発現の下方制御、T細胞シグナル伝達及び活性化の改変、ウイルス感染力の強化を含めたいくつかの機能が記述されている。HIV−1のTat(転写のトランス活性化因子、transactivator of transcription)タンパク質は、多く細胞型で広範な生物学的作用を誘導する多面的な因子である。HIVプロモーターにおいて、Tatは遺伝子転写の強力なトランス活性化因子であり、これは、クロマチンリモデリングを誘導すること、及び伸長能を有する転写複合体を重要なLTRに動員するこの両方によって作用する。これらの転写活性に加えて、Tatは、細胞外に放出されて、様々な細胞膜結合受容体と相互作用する。最後に、細胞は、能動的なエンドサイトーシス過程を介して細胞外Tatを外面化できる。
【0007】
HIV感染は、CD4+T細胞、マクロファージ及び樹状細胞などの標的細胞の細胞膜表面にあるCD4及びケモカインに受容体分子(例えば、CXCR4、CCR5)にウイルス粒子表面のgp120が結合することで開始する。結合したウイルスは、標的細胞と融合し、RNAゲノムを逆転写する。この結果生じたウイルスDNAが細胞ゲノムに組み込まれ、そこで、ウイルスDNAは新規なウイルスRNAの産生を指示し、それによって、ウイルスタンパク質及び新規なウイルス粒子の産生を指示する。これらのウイルス粒子は、感染細胞膜から出芽し、他の細胞で増殖性感染を確立する。この過程は、最初に感染した細胞の死滅ももたらす。未感染T細胞上のCD4受容体は感染細胞の表面に発現されたgp120への強い親和性を有するので、HIVは間接的にも細胞の死滅をもたらしうる。この場合、非感染細胞は、CD4受容体−gp120相互作用を介して感染細胞に結合し、融合して合胞体を形成するが、この合胞体は生き残ることができない。CD4+Tリンパ球は免疫防御に極めて重要であり、それらの破壊は、AIDS疾患進行の顕著な特徴である進行性免疫機能不全の主要因である。CD4+T細胞の減失は、ほとんどの異物と戦う身体能力を深刻に損なうが、それは、ウイルス、真菌、寄生生物、及びミコバクテリアを含めた特定の細菌に対する防御にとりわけ深刻な影響力を有する。
【0008】
このウイルスは、ほとんど脆弱性がない多くの効果的な防御機構を有することが、Env糖タンパク質の研究によって示されている(Wyatt & Sodroski, Science. 1998 Jun 19;280(5371):1884-8)。その標的細胞と融合するために、HIV−1は、gp120及びgp41サブユニットを含有する三量体Env複合体を用いる(Burton et al., Nat Immunol. 2004 Mar;5(3):233-6)。Env複合体の融合能は、CD4受容体と、通常はCCR5又はCXCR4である一受容体との結合によって引き起こされる。中和抗体は、ウイルス粒子表面の成熟三量体に結合し、最初の受容体結合イベントを阻止することによって、又はウイルス粒子の付着後に結合し、融合過程を阻害することによって奏効するようである(Parren & Burton, Adv Immunol. 2001;77:195-262)。後者の場合、中和抗体は、受容体結合によって、その露出が促進又は誘発されるエピトープに結合している可能性がある。しかし、中和抗体の潜在的抗ウイルス効果を考慮すると、HIV−1が抗体結合から自らを保護する複数の機構を進化させていても予想外ではない(Johnson & Desrosiers, Annu Rev Med. 2002;53:499-518)。
【0009】
したがって、HIV−1に対する効果的な免疫処置の必要性が依然として存在している。
【0010】
本出願におけるいかなる文書の引用又は特定も、そのような文書が本発明の先行技術として利用可能であると認めるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454-456
【非特許文献2】Wyatt & Sodroski, Science. 1998 Jun 19;280(5371):1884-8
【非特許文献3】Burton et al., Nat Immunol. 2004 Mar;5(3):233-6
【非特許文献4】Parren & Burton, Adv Immunol. 2001;77:195-262
【非特許文献5】Johnson & Desrosiers, Annu Rev Med. 2002;53:499-518
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、MVAウイルスベクターに挿入された標的HIV−1タンパク質に対する免疫応答を誘導するための組換えMVAワクチンを対象とする。選択された6種のHIVタンパク質(env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev)全ては組換えMVAウイルスによって発現する。
【0013】
本発明の組換えMVAワクチンは、第1相試験で高免疫原性応答を誘発するものであり、それゆえ、HIV感染に対する効果的なワクチンでありうる。
【0014】
本発明は、1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し及び発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法に関する。
【0015】
本発明は、(a)1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法にも関する。第1及び第2に投与された1又は複数の免疫原は、同じ1又は複数の免疫原でも、異なる1又は複数の免疫原でもよい。
【0016】
有利な実施形態では、上記1又は複数の免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質又はそれらの断片からなる群から選択される。
【0017】
この開示中、とりわけ特許請求の範囲及び/又は諸段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」及び「含むこと(comprising)」などの用語は、米国特許法でそれに属すると定められた意味を有しうるものであり、例えば、これらの用語は、「包含する(includes)」、「包含される(included)」及び「包含すること(including)」などを意味しうること;さらに「から本質的になること(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれに属すると定められた意味を有すること、例えば、これらの用語は、明示的に記述されていない要素も容認するが、先行技術に存在する要素又は本発明の基本的特徴若しくは新規な特徴に影響する要素は除外することに留意するべきである。
【0018】
これら及び他の実施形態は、開示されているか、又は以下の「発明を実施するための形態」から明らかであり、それに包含されている。
【0019】
以下の詳細な説明は、一例として示されており、記載されている特定の実施形態のみに本発明を限定するものではなく、下記の通りの添付図面と組み合わせて最も良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】TBC−M4のプラスミドコンストラクト/ゲノム構造を示す図である。
【図2A】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2B】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2C】図2A〜2Cは、49/50挿入領域であるTB19a.1の配列を示す図である。
【図2D】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2E】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2F】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図2G】図2D〜2Gは、del III挿入領域であるTB19a.2の配列を示す図である。
【図3A】nefの配列を示す図である。
【図3B】図3B〜3Cは、revの配列を示す図である。
【図3C】図3B〜3Cは、revの配列を示す図である。
【図3D】gagの配列を示す図である。
【図3E】tatの配列を示す図である。
【図3F】図3F〜3Gは、polの配列を示す図である。
【図3G】図3F〜3Gは、polの配列を示す図である。
【図3H】図3H〜3Iは、envの配列を示す図である。
【図3I】図3H〜3Iは、envの配列を示す図である。
【図4A】envの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4B】gagの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4C】tat.revの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図4D】nef.RTの予測アミノ酸配列を示す図である。
【図5A】tatの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5B】revの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5C】RTの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図5D】nefの天然/野生型アミノ酸配列対改変アミノ酸配列の配列アラインメントを示す図である。
【図6】導入ベクターのアノテーション付きプラスミドマップを示す図である。
【図7】TBC−M420組換え体の単離及び種ウイルスストックの調製の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法に関する。
【0022】
本発明は、(a)1又は複数の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含みうる、免疫原性応答を得る方法にも関する。1番目及び2番目に投与された1又は複数の免疫原は、同じ1又は複数の免疫原でも、異なった1又は複数の免疫原でもよい。
【0023】
本明細書において、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基の任意な長さのポリマーを指すのに同義的に使用される。上記ポリマーは、線状でも、分岐していてもよく、修飾アミノ酸又はアミノ酸類似体を含んでいてもよく、また、アミノ酸以外の化学部分によって中断されていてもよい。これらの用語は、天然で、或いは介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識若しくは生理活性成分との結合などの何らかの他の操作若しくは修飾によって、修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗原」又は「免疫原」という用語は、対象の体内で免疫応答を誘導できる物質、通常タンパク質を指すのに同義的に使用される。この用語は、ひとたび対象に投与されたならば(直接投与、又はそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列若しくはベクターを対象に投与することによって)、そのタンパク質に対して向けられた体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘起できるという意味で、免疫学的に活性なタンパク質も指す。
【0025】
本発明のタンパク質及び抗原は、本明細書に例示及び記載された正確な配列と異なっていてもよいということを理解するべきである。したがって、本発明では、示されている配列への欠失、付加及び置換も、それらの配列が本発明の方法に従って機能する限り、企図されている。これとの関連では、特に好ましい置換は、通常、性質を保存するもの、すなわち、1つのアミノ酸ファミリーの中で起こる置換であろう。例えば、アミノ酸は通常、4つのファミリー、すなわち、(1)酸性−アスパラギン酸及びグルタミン酸、(2)塩基性−リジン、アルギニン及びヒスチジン、(3)無極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファン、並びに(4)無電荷極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリントレオニン及びチロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、場合によっては、芳香族アミノ酸として分類される。ロイシンからイソロイシン若しくはバリンへ、又はその逆、アスパラギン酸からグルタミン酸へ、又はその逆、トレオニンからセリンへ、又はその逆の孤立した置換、或いはあるアミノ酸から構造的に関連したアミノ酸への同様な保存的置換は、生物活性への大きな影響を有しないであろうことが合理的に予測できる。そのタンパク質の免疫原性に実質的に影響しない小さなアミノ酸置換を有するが、例示及び記載されている配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するタンパク質は、それゆえ、本発明の範囲内である。
【0026】
有利な実施形態では、本発明の免疫原がHIV−1タンパク質であり、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされたHIV−1タンパク質、又はそれらの任意な免疫原性断片が有利である。有利な実施形態では、env及びRT配列がGenBank受託番号AF067158から得られるものであり(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al., J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)、gag及びtat配列がGenBank受託番号AF067157から得られるものであり(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al.、J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)、rev及びnef配列がGenBank受託番号AF067154から得られるものである(例えば、その開示が参照により組込まれている、Lole et al.、J Virol. 1999 Jan;73(1):152-60を参照)。
【0027】
特に有利な実施形態では、TBC−M4 HIV遺伝子配列インサートが本発明の免疫原をコードする。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、限定されるものではないが、メッセンジャーRNA(mRNA,messenger RNA)、DNA/RNAハイブリッド又は合成核酸を含めたデオキシリボ核酸(DNA,deoxyribonucleic acid)又はリボ核酸(RNA,ribonucleic acid)の配列を指す。この核酸は、一本鎖又は部分的若しくは完全な二本鎖(二重鎖)でありうる。二重鎖核酸は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖でありうる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、当業者に知られているHIV−1抗原の配列に由来する「組換え」ヌクレオチド配列を指すのに使用される。導入遺伝子の配列は、本発明のHIV−1クレードAコンセンサスヌクレオチド配列に由来するものでも、これらのコンセンサス配列への一致率が高いものとして同定された最近伝播しているHIV−1クレードA株の抗原をコードするヌクレオチド配列に由来するものでもよい。「組換え」という用語は、「人によって」操作されていて、天然には存在しないか、又は別のヌクレオチド配列に連結されているか、又は天然では異なった配置で見出されるヌクレオチド配列を意味する。「人によって」操作されるとは、機械の使用、コドン最適化及び制限酵素などによるものを含めた、何らかの人工的手段によって操作されることを意味するものと理解されている。
【0030】
本発明のヌクレオチドは、コンセンサスヌクレオチド配列と比較して、又はそのようなコンセンサス配列に密接に関連した、伝播しているHIV−1単離株の配列と比較して、改変されていてもよい。例えば、一実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、コードされているタンパク質の活性がインビボで消滅するように変異導入されていてもよい。別の実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、最適化されたコドンであってもよく、例えば、ヒト使用用にコドンが最適化されていてもよい。好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチド配列は、コードされているタンパク質の正常なインビボ機能が消滅するように変異導入されているのと同時に、ヒト使用用にコドンが最適化されている。例えば、本発明のGag、Pol、Env、Nef、RT、Tat及びRev配列のそれぞれは、これらの方法で改変されていてもよい。
【0031】
特に有利な実施形態では、標的HIV−1サブタイプC遺伝子が以下の通りに改変された。
【0032】
完全長envは、ワクシニアウイルスの初期転写終止シグナルをコードする内部T5NTモチーフにサイレント変異が導入されるように改変されている。これは、T5NT配列の除去は未熟な転写終結を最小限し、ワクシニアウイルスの外来遺伝子発現を最適化することが知られているためである。
【0033】
p55ポリプロテインをコードする完全長gag遺伝子は、いかなる改変もなく単離されている。
【0034】
rev遺伝子はいくつかの方法で改変されている。アミノ酸75〜86をコードする12のコドンを除去し、アスパラギン酸及びロイシンをコードする2つのコドンで置換して、revタンパク質を非機能性にした。加えて、rev遺伝子のヌクレオチド配列は、tat遺伝子とrev遺伝子との間の相同性を最小にするため、及び他の方法でアミノ酸配列を変えずに、ヒト細胞におけるrevタンパク質の発現を最適化するため、すなわち発現を「ヒト化」するために、コドンの3番目の位置(「ゆらぎ位置」)で改変されている。
【0035】
tat遺伝子の第1エキソンは、3次元構造を保存しながらタンパク質を非機能性にするために、アミノ酸26及び32の2つのコドンをチロシンからアラニンに変えるように、インビトロ変異誘発で改変されている。加えて、tat遺伝子の第2エキソンが欠失している。
【0036】
改変されたtat及びrev配列は、適切な開始コドン及び終止コドンと共に融合遺伝子としてクローニングされている。
【0037】
nef遺伝子は、MHCクラスIの下方制御及びCD3シグナル伝達を低減するために、アミノ酸62〜65のコドンをグルタミン酸からアラニンに変えることによって改変されている。
【0038】
pol遺伝子の逆転写酵素(RT)部分は、逆転写酵素活性を除去するために、アミノ酸336及び337のコドンをアスパラギン酸からアスパラギンに変えることによって、改変されている。プロテアーゼ及びインテグラーゼの配列はコンストラクトに含まれていない。
【0039】
改変されたnef及びRTコード配列は、nef−RT融合遺伝子を生成するようにインフレームで融合させてある。
【0040】
抗原のインビボ機能を抑止するために導入できる変異のタイプ。ミリスチル化部位を除去し、かつウイルス様粒子(VLP,virus-like-particle)の形成を阻止するための、GagにおけるGly2からAlaへの変異;自然発生のフレームシフト配列におけるスリップを回避して、保存アミノ酸配列(NFLG)を完全な状態のままにし、かつ完全長GagPolタンパク質産物のみが翻訳されるようにするための、Gagの変異;活性酵素残基を不活性化するための、RTにおけるAsp185からAlaへの変異及びAsp186からAlaへの変異。活性酵素残基を不活性化するための、IntにおけるAsp64からAlaへの変異、Asp116からAlaへの変異及びGlu152からAlaへの変異。
【0041】
コドン最適化に関しては、本発明の核酸分子は、本発明の抗原をコードするヌクレオチド配列を有し、上記抗原がその中で産生されることになっている対象の遺伝子で使用されているコドンを利用するように設計できる。HIV及び他のレンチウイルスを含めた多くのウイルスは、多数のまれなコドンを用いており、これらのコドンを、望ましい対象で一般的に使用されているコドンに相当するように変えることによって、上記抗原の発現の増強を実現できる。好ましい実施形態では、使用されるコドンが「ヒト化」コドンである。すなわち、それらのコドンは、HIVによって高頻度で使用されているコドンではなく、高発現のヒト遺伝子において高頻度で現れるものである(Andre et al., J. Virol. 72:1497-1503, 1998)。そのようなコドン使用は、ヒト細胞のトランスジェニックHIVタンパク質の効率的な発現をもたらす。いかなる適した方法のコドン最適化も使用できる。しかし、いかなる他の適した方法のコドン最適化も使用できる。そのような方法、及びそのような方法の選択は当業者によく知られている。加えて、Geneart社(geneart.com)など、配列のコドンを最適化する会社がいくつかある。したがって、本発明のヌクレオチド配列は容易にコドン最適化できる。
【0042】
本発明は、本発明の抗原の、機能的に同等かつ/又は抗原性が同等な変異体及び誘導体、並びに機能的に同等なそれらの断片をコードするヌクレオチド配列をさらに包含する。これらの機能的に同等な変異体、誘導体及び断片は、抗原活性を保持する能力を示す。例えば、コードしているアミノ酸配列を変えない、DNA配列の変化、並びにアミノ酸残基の保存的置換、1又は数残基のアミノ酸欠失又は付加、及びアミノ酸類似体によるアミノ酸残基の置換をもたらすものは、コードされているポリペプチドの特性に有意な影響を与えられないものである。保存的アミノ酸置換は、グリシン/アラニン、バリン/イソロイシン/ロイシン、アスパラギン/グルタミン、アスパラギン酸/グルタミン酸、セリン/トレオニン/メチオニン、リジン/アルギニン、及びフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。一実施形態では、上記変異体は、所望の抗原、エピトープ、免疫原、ペプチド又はポリペプチドに、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の相同性又は同一性を有する。
【0043】
本発明の目的では、配列の同一性又は相同性は、配列ギャップを最小にしながら、重複部分及び同一性を最大にするようにアラインされた際の配列を比較することによって決定される。詳細には、配列同一性は、多くの数学的アルゴリズムのうちのいずれかを用いることによって決定できる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの非制限的な一例が、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993;90: 5873-5877にある通りに改変されたKarlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990; 87: 2264-2268のアルゴリズムである。
【0044】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の例は、Myers & Miller, CABIOS 1988;4: 11-17のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いることができる。局所配列類似性の領域の同定及びアラインメントのためのさらに別の有用なアルゴリズムは、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85: 2444-2448に記載のFASTAアルゴリズムである。
【0045】
本発明による使用には、WU−BLAST(ワシントン大学BLAST、Washington University BLAST)バージョン2.0ソフトウェアが有利である。数種のユニックスプラットフォーム用のWU−BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executables からダウンロードできる。このプログラムはWU−BLASTバージョン1.4に基づいており、それは同様にパブリックドメインのNCBI−BLASTバージョン1.4に基づいている(参照により全て本明細書に組み込まれている、Altschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266: 460-480、Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990; 215: 403-410、Gish & States, 1993;Nature Genetics 3: 266-272、Karlin & Altschul, 1993;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)。
【0046】
本発明の様々な組換えヌクレオチド配列及び免疫原は、標準的な組換えDNA技法及びクローニング技法を用いて作製される。そのような技法は当業者によく知られている。例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版(Sambrook et al. 1989)を参照のこと。
【0047】
本発明のヌクレオチド配列は、「ベクター」に挿入できる。「ベクター」という用語は、当業者によって広く使用及び理解されており、本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが当業者に意味することと一致して使用される。例えば、「ベクター」という用語は、ある環境から別の環境への核酸分子の導入を可能にするか、若しくは促進する媒体、又は核酸分子の操作を可能にするか、若しくは促進する媒体を指すのに、当業者によって一般的に使用されている。
【0048】
本発明の免疫原の発現を可能にするいかなるベクターも、本発明に従って使用できる。特定の実施形態では、本発明の免疫原は、コードされているHIV−1抗原を産生させるために、インビトロで(無細胞発現系を用いてなど)、かつ/又はインビトロで培養された培養細胞内で使用でき、それらのHIV−1抗原は、その後、タンパク質ワクチンの産生など、様々な適用に使用できる。そのような適用には、インビトロで、かつ/又は培養細胞内での免疫原の発現を可能にするいかなるベクターも使用できる。
【0049】
免疫原をインビボで発現することが望ましい適用、例えば、本発明の免疫原をDNA又はDNA含有ワクチンで用いる場合には、本発明の免疫原の発現を可能にし、かつインビボでの使用が安全であるいかなるベクターも使用できる。好ましい実施形態では使用されるベクターが、ヒト、哺乳動物及び/又は実験動物での使用に安全である。
【0050】
本発明の免疫原が発現されるためには、上記タンパク質のコード配列が上記タンパク質の転写及び翻訳を指示する調節配列又は核酸調節配列に「作用可能に連結されている」べきである。本明細書で使用される場合、コード配列及び核酸調節配列又はプロモーターは、上記コード配列の発現又は転写及び/若しくは翻訳を上記核酸調節配列の影響下又は制御下に置くような方法で、それらが共有結合によって連結されている場合に、「作用可能に連結されている」と言われる。「核酸調節配列」は、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、及びそれに作用可能に連結された核酸配列又はコード配列の発現を指示する本明細書に記載の他のエレメントなど、いかなる核酸エレメントでもありうる。「プロモーター」という用語は、本明細書では、RNAポリメラーゼII用の開始部位周辺でクラスターとなっており、かつ本発明のタンパク質コード配列に操作可能に連結されている場合に、コードされているタンパク質の発現をもたらす一群の転写制御モジュールを指すのに使用されるであろう。本発明の免疫原の発現は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下におくことができる。誘導性プロモーターは、限定されるものではないが、テトラサイクリンなどの抗生物質、エクジソンなどのホルモン、又は重金属など、何らかの特定の外部刺激に暴露された場合にのみ転写を開始する。上記プロモーターは、特定の細胞型、組織又は臓器に特異的なものでもよい。多くの適したプロモーター及びエンハンサーが当技術分野で知られており、そのような適したプロモーター又はエンハンサーのいかなるものも、本発明の免疫原の発現に使用できる。例えば、適したプロモーター及び/又はエンハンサーは真核細胞プロモーターデータベース(EPDB,Eukaryotic Promoter Database)から選択できる。
【0051】
通常、本発明に従って使用されるベクターは、それらがプロモーター又はエンハンサーなどの適した遺伝子調節領域を含有し、それによって、本発明の免疫原を発現できるように選択するべきである。
【0052】
例えば、インビトロで、又は培養細胞内で、又はその免疫原によってコードされた1又は複数のタンパク質を産生することを目的とした任意の原核細胞系又は真核細胞系で、本発明の免疫原を発現することが目的である場合、その適用に応じて、いかなる適したベクターも使用できる。例えば、プラスミド、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、昆虫ベクター、バキュロウイルス発現ベクター、酵母ベクター及び哺乳動物細胞ベクターなどを用いることができる。適したベクターは、ベクターの特徴及び特定された状況下で免疫原を発現するための要件を考慮に入れて、当業者が選択できる。
【0053】
本発明の免疫原を、例えばHIV−1抗原に対する免疫応答及び/又はHIV−1に対する防御免疫を引き起こすために、対象においてインビボで発現させることが目的である場合、その対象での発現に適し、かつインビボでの使用に安全である発現ベクターを選択するべきである。例えば、一部の実施形態では、HIV−1免疫原性組成物及び本発明のワクチンの前臨床試験のためなど、本発明の免疫原を実験動物で発現することが望ましい可能性がある。他の実施形態では、臨床試験中である場合、及び本発明の免疫原性組成物及びワクチンの実際の臨床使用のためなど、本発明の免疫原をヒト対象で発現することが望ましいであろう。そのような使用に適したいかなるベクターも利用でき、適したベクターの選択は、十分に当業者の能力の範囲内にある。一部の実施形態では、対象においてベクターが増幅するのを阻止するために、これらのインビボ適用に使用されるベクターが弱毒化されていることが好ましい可能性がある。例えば、プラスミドベクターが使用される場合には、対象におけるインビボ使用の安全性を強化するために、それらは、対象で機能する複製開始点を欠失していることが好ましいであろう。ウイルスベクターが使用される場合には、再び、対象におけるインビボ使用の安全性を強化するために、それらは、弱毒化されているか、対象において複製欠損となっていることが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルスベクターが使用される。ウイルス発現ベクターは当業者によく知られており、それらには、例えば、アデノウイルス(adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(AAV,adeno-associated virus)、アルファウイルス(alphavirus)、レトロウイルス(retrovirus)、トリポックスウイルス(avipox virus)、弱毒化ポックスウイルス(attenuated poxvirus)を含めたポックスウイルス(poxvirus)及びワクシニアウイルス(vaccinia virus)、とりわけ改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA,modified vaccinia Ankara virus、ATCC受託番号VR−1566)などのウイルスが含まれる。そのようなウイルスは、発現ベクターとして使用される場合、ヒトなどの選択された対象で生得的に非病原性であるか、それらが、選択された対象で非病原性となるように改変されている。例えば、複製欠損アデノウイルス及びアルファウイルスは、よく知られており、遺伝子送達ベクターとして使用できる。
【0055】
特に好ましい実施形態では、MVAベクターが使用される。MVAは、ニワトリ胚線維芽(CEF,chick embryo fibroblast)細胞を経て、野生型ワクシニアウイルスから得られた弱毒化生ウイルス株である。弱毒化の過程において、MVAウイルスは、詳細に特性分析されている複数のゲノム欠失を起こしており、それらには病原性の減弱が伴っていた。これらのゲノム欠失は、広範に特性分析されており、後期のウイルス粒子構築及びサイトカイン受容体の発現に影響を与えているようである。この結果、この改変ウイルスは、ほとんどの哺乳動物(ヒトも含まれる)の細胞を感染させ、正常な方法でウイルス(及び組換え)遺伝子を発現するが、ほとんどの初代細胞型又は不死化細胞株で効率的に複製しない。米国特許第7189536号、第7118754号、第7097842号、第7094412号、第7067251号、第7056723号、第7049145号、第7034141号、第6960345号、第6924137号、第6913752号、第6893869号、第6884786号、第6869793号、第6663871号、第6649409号、第6582693号、第6440422号、第5676950号及び第5185146号明細書のいずれに記載のMVAベクターも、本発明用に使用及び/又は改変することができる。
【0056】
有利な実施形態では、本発明のMVAは弱毒化MVAに由来する。
【0057】
本発明のヌクレオチド配列及びベクターは、例えば、細胞内でHIV−1抗原を発現して、発現されたタンパク質を産生させ、培養中で増殖した細胞などから単離することが目的である場合には、細胞に送達することができる。細胞内で抗原を発現するには、いかなる適した形質移入、形質転換又は遺伝子送達法を用いることもできる。そのような方法は、当業者によく知られており、使用されるヌクレオチド配列、ベクター及び細胞型の性質に応じて、当業者ならば適した方法を容易に選択できよう。例えば、形質移入、形質転換、微量注入、感染、エレクトロポレーション、リポフェクション又はリポソーム媒介送達を用いることができよう。抗原の発現は、細菌細胞、酵母、昆虫細胞及び哺乳動物細胞など、いかなる適した型の宿主細胞でも行える。本発明のHIV−1抗原は、インビトロ転写/翻訳系を用いて発現することもできる。そのような方法は全て当業者によく知られており、使用されるヌクレオチド配列、ベクター及び細胞型の性質に応じて、当業者ならば適した方法を容易に選択できよう。
【0058】
発現に続いて、本発明の抗原を単離及び/又は精製若しくは濃縮することもでき、それには当技術分野で知られているいかなる適した技法を用いてもよい。例えば、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電点焦点法、ゲル電気泳動又はいかなる他の適した方法若しくは方法の組合せも使用できる。
【0059】
好ましい実施形態では、例えば対象における免疫原応答を生成させることが目的である場合、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原をインビボで投与する。本発明の文脈では、「対象」はいかなる動物でもよい。例えば、一部の実施形態では、本発明のHIV−1免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験のためなど、本発明の免疫原を実験動物で発現させることが望ましい可能性がある。他の実施形態では、臨床試験中である場合、及び本発明の免疫原性組成物及びワクチンの実際の臨床使用のためなど、本発明の免疫原をヒト対象で発現させることが望ましいであろう。好ましい実施形態では、対象がヒト、例えば、HIV−1に感染しているか、HIV−1に感染する危険があるヒトである。
【0060】
そのようなインビボ適用には、薬学的に許容される担体と混合した本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原を含む免疫原性組成物の構成成分として、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原を投与することが好ましい。本発明の免疫原性組成物は、HIV−1に対する免疫応答を刺激するのに有用であり、AIDSを予防、改善又は治療するための、HIV−1に対する予防用又は治療用ワクチンの1又は複数の構成成分として使用できる。本発明の核酸及びベクターは、とりわけ、遺伝子ワクチン、すなわち、後に抗原が対象で発現されて、免疫応答を誘発するように、本発明の抗原をコードする核酸をヒトなどの対象に送達するためのワクチンを提供するのに有用である。
【0061】
本発明の組成物は、注射可能の懸濁液、溶液、噴霧剤、凍結乾燥粉末薬、シロップ剤及びエリキシル剤などであってもよい。いかなる適した形態の組成物も使用できる。そのような組成物を調製するには、望ましい純度を有する本発明の核酸又はベクターを1又は複数の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と混合する。上記担体及び賦形剤は、組成物の他の成分と適合性があるという意味で「許容される」ものでなければならない。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、利用される用量及び濃度で受容者に対して無毒であり、それらには、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール若しくはこれらの組合せ;リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸塩などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた酸化防止剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含めた単糖、二糖及び他の糖;EDTAなどのキレート化剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなど、塩を形成する対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
免疫原又は免疫組成物は、水中油型乳剤の形態でも処方できる。水中油型乳剤は、例えば、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方型);スクアラン、スクアレン、EICOSANE(商標)又はテトラテトラコンタンなどのイソプレノイド油;1又は複数のアルケン、例えばイソブテン又はデセンのオリゴマー形成から生じる油;植物油、オレイン酸エチル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル又はジオレイン酸プロピレングリコールなど、直鎖状アルキル基を含有する酸又はアルコールのエステル;分岐した脂肪酸又はアルコールのエステル、例えばイソステアリン酸エステルをベースにしたものでありうる。油は、乳剤を形成するのに、乳化剤と併用すると有利である。乳化剤は、エトキシ化されていてもよい、ソルビタンのエステル、マンナイド(例えば無水マンニトールオレイン酸エステル)、グリセロール、ポリグリセリン、プロピレングリコール、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸、並びにPluronic(登録商標)製品、例えばL121などのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体などの非イオン界面活性剤でありうる。アジュバントは、Provax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在)という名称で市販されているものなど、1又は複数の乳化剤、ミセル形成剤及び油の混合物でありうる。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は、湿潤剤若しくは乳化剤、緩衝剤、又はワクチンの効果を強化するためのアジュバントなど、追加物質を含有できる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, (ed.) 1980)。
【0064】
アジュバントも含有されうる。アジュバントには、無機質塩(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH(SO4)2、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン又は炭素)、免疫刺激複合体(ISCOM,immune stimulating complex)含有又は非含有ポリヌクレオチド(例えば、Chuang, T.H. et al, (2002) J. Leuk. Biol. 71(3): 538-44、Ahmad-Nejad, P. et al (2002) Eur. J. Immunol. 32(7): 1958-68に記載のものなどのCpGオリゴヌクレオチド;ポリIC又はポリAU酸、CpG含有又は非含有ポリアルギニン(当技術分野ではIC31としても知られている;Schellack, C. et al (2003) Proceedings of the 34th Annual Meeting of the German Society of Immunology、Lingnau, K. et al (2002) Vaccine 20(29-30): 3498-508を参照)、JuvaVax(商標)(米国特許第6693086号明細書))、ある種の天然物質(例えば、結核菌のワックスD、座瘡プロピオンバクテリウム(Cornyebacterium parvum)、百日咳菌又はブルセラ属の構成員で見出された物質)、フラジェリン(Toll様受容体5リガンド;McSorley, S.J. et al (2002) J. Immunol. 169(7): 3914-9を参照)、サポニン、すなわちQS21、QS17及びQS7など(米国特許第5057540号、第5650398号、第6524584号、第6645495号明細書)、モノホスホリルリピドA、とりわけ3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL,3-de-O-acylated monophosphoryl lipid A)、イミキモド(imiquimod)(当技術分野でIQMとしても知られ、Aldara(登録商標)として市販されている;米国特許第4689338号、第5238944号明細書、Zuber, A.K. et al (2004) 22(13-14): 1791-8)、並びにCCR5阻害剤CMPD167(Veazey, R.S. et al (2003) J. Exp. Med. 198: 1551-1562を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
水酸化又はリン酸アルミニウム(ミョウバン)は通常、0.05〜0.1%のリン酸緩衝食塩水溶液で使用される。とりわけDNAワクチンと共に使用できる他のアジュバントは、コレラトキシン、とりわけCTA1−DD/ISCOM(Mowat, A.M. et al (2001) J. Immunol. 167(6): 3398-405参照)、ポリホスファゼン(Allcock, H.R. (1998) App. Organometallic Chem. 12(10-11): 659-666、Payne, L.G. et al (1995) Pharm. Biotechnol. 6: 473-93)、サイトカイン、すなわち、限定されるものではないが、IL−2、IL−4、GM−CSF、IL−12、IGF−1、IFN−α、IFN−β及びIFN−γなど(Boyer et al., (2002) J. Liposome Res. 121:137-142、国際公開第01/095919号パンフレット)、免疫調節性タンパク質、すなわちCD40L(ADX40;例えば、国際公開第03/063899号パンフレット参照)、及びナチュラルキラー細胞のCD1aリガンド(CRONY又はα−ガラクトシルセラミドとしても知られている;Green, T.D. et al, (2003) J. Virol. 77(3): 2046-2055を参照)など、免疫賦活性融合タンパク質、すなわち、免疫グロブリンFc断片と融合したIL−2(Barouch et al., Science 290:486-492, 2000)並びに同時刺激分子B7.1及びB7.2(Boyer)などであり、これらは全て、タンパク質として、又は本発明の抗原をコードするものと同一の発現ベクター上にあるか、若しくは別々の発現ベクター上にあるDNAの形態で投与できる。
【0066】
免疫原性組成物は、抗原、核酸又は発現ベクターを望ましい作用部位に導入し、適切かつ制御可能な速度でそれを放出するように設計できる。調節放出製剤を調製する方法は当技術分野で知られている。例えば、調節放出製剤は、免疫原及び/又は免疫原性組成物と複合体形成するか、それを吸収する重合体の使用によって生産できる。調節放出製剤は、望ましい調節放出特性又は放出プロフィールを与えることが知られている適切な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又は硫酸プロタミン)を用いて調製できる。調節放出製剤によって作用持続時間を制御する別の可能な方法は、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ポリグリコールの酸、これらの酸の共重合体、又はエチレンビニルアセテート共重合体などの重合物質の粒子に活性成分を組み入れることである。或いは、これらの活性成分を重合体粒子に組み入れる代わりに、例えば、それぞれコロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルの中にこれらの物質を捕捉することが可能である。そのような技法は、New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. (eds.), University Park Press, Baltimore, Md., 1978及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th editionに開示されている。
【0067】
本発明の免疫原性組成物中の本発明の抗原、核酸及び発現ベクター(まとめて免疫原)の適した用量は、当業者が容易に決定できる。例えば、免疫原の用量は、投与経路及び対象のサイズに応じて変動しうる。適した用量は、例えば、実験動物などの対象の免疫応答を従来の免疫手法を用いて測定し、必要に応じて用量を調整することによって、当業者が決定できる。対象の免疫応答を測定するためのそのような技法には、クロム放出アッセイ、四量体結合アッセイ、IFN−γ ELISPOTアッセイ、IL−2 ELISPOTアッセイ、細胞内のサイトカインアッセイ、及び他の免疫学的検出アッセイ、例えば、Ed Harlow及びDavid Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」の本文に記載のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
予防用に与える場合、本発明の免疫原性組成物は、HIV感染若しくはHIV感染の証拠の前に、又はとりわけ高リスク対象におけるAIDSによるいかなる症候でも、その前に、対象に投与するのが理想的である。免疫原性組成物の予防投与は、HIV−1感染に対する対象の防御免疫を与えるか、又はHIV−1に既に感染している対象におけるAIDSの進行を阻止又は減弱するのに役立ちうる。治療用に与える場合、免疫原性組成物は、AIDSの症候を改善及び治療するのに役立つ可能性があり、感染後できるだけ早く、好ましくはAIDSのいかなる症候でも、それが現れる前に使用すると有利であるが、病徴の開始時(又は後)で用いてもよい。
【0069】
免疫原性組成物は、限定されるものではないが、筋肉内、静脈内、皮内、粘膜及び局所送達を含めた、いかなる適した送達法を用いても投与できる。そのような技法は、当業者によく知られている。送達方法のより詳細な例は、筋肉内注射、皮内注射及び皮下注射である。しかし、送達は、注射法に限定される必要はない。さらに、動物組織へのDNAの送達は、陽イオン性リポソーム(Watanabe et al., (1994) Mol. Reprod. Dev. 38:268-274及び国際公開第96/20013号パンフレット)、動物筋組織への裸のDNAの直接注射(Robinson et al., (1993) Vaccine 11:957-960、Hoffman et al., (1994) Vaccine 12: 1529-1533、Xiang et al., (1994) Virology 199: 132-140; Webster et al., (1994) Vaccine 12: 1495-1498、Davis et al., (1994) Vaccine 12: 1503-1509及びDavis et al., (1993) Hum. Mol. Gen. 2: 1847-1851)、又は「遺伝子銃」技法を用いたDNAの皮内注入(Johnston et al., (1994) Meth. Cell Biol. 43:353-365)によって実現されている。或いは、送達系路は、経口、鼻腔内、又はいかなる他の適した経路でもありうる。送達は、肛門、腟又は口腔粘膜などの粘膜表面を介しても実現される。
【0070】
免疫処置スケジュール(又はレジメン)は、動物(ヒトを含める)に関してはよく知られており、特定の対象及び免疫原性組成物について容易に決定できる。したがって、免疫原を1又は複数回対象に投与することができる。免疫原性組成物の別々の投与の間には、設定された時間間隔があることが好ましい。あらゆる対象ごとにこの間隔は異なるが、それは通常、10日間から数週間までの範囲にあり、しばしば2、4、6又は8週間である。ヒトでは、この間隔は通常2〜6週間、最長6カ月又はそれ以上である。免疫処置のレジメンは、通常、免疫原性組成物の1〜6回の投与を有するが、1、2又は4回という少ない回数も有しうる。免疫応答を誘導する方法には、免疫原と共にアジュバントを投与することも含まれうる。一部の場合では、年に1回、年2回、又は他の長い間隔(5〜10年)の追加免疫を初期の免疫処置プロトコールに補足することができる。
【0071】
本発明の方法には、様々な一次−追加免疫レジメンも含まれ、とりわけDNA一次−アデノウイルス追加免疫処置又はDNA一次−MVA追加免疫処置レジメンが含まれる。これらの方法では、1又は複数回の初回刺激免疫処置の後に1又は複数回の追加免疫処置を行う。実際の免疫原性組成物は、各免疫処置で同じものか、異なったものでありえ、免疫原性組成物の型(例えば、タンパク質を含有するか、発現ベクターを含有するか)経路、及び免疫原の処方も変動しうる。例えば、発現ベクターを初期刺激ステップ及び追加免疫ステップに用いる場合、それは同じ型のものか、異なった型のものか(例えば、DNA又は細菌性又はウイルス性発現ベクター)のいずれかでありえる。1つの有用な初回刺激−追加免疫レジメンは、4週間の間をおいた2回の初回刺激免疫処置に続いて、最後の初回刺激免疫処置の4週間後及び8週間後に2回の追加免疫処置を行うものである。初回刺激及び追加免疫レジメンを実施するのに本発明のDNA、細菌性及びウイルス性発現ベクターを用いて包含されるいくつかの順列及び組合せがあることも、当業者には容易に明らかであろう。
【0072】
本発明の特定の実施形態は、好ましくは本発明の1又は複数のHIV−1抗原(好ましくはenv、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされたHIVタンパク質又はその断片)をコードするDNAを含有するアデノウイルスベクターを含む本発明の免疫原性組成物を対象に1又は複数回投与することによって、HIVに対する免疫応答を対象で誘導する方法であって、上記1又は複数のHIV−1抗原が、特異的な免疫応答を対象で誘導するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。そのような免疫処置は、望ましい免疫処置レジメンに従って、少なくとも2、4又は6週間の(又はさらに長い)時間間隔で複数回繰り返すことができる。
【0073】
本発明の免疫原性組成物は、単独で投与することも、他のHIV免疫原及び/又はHIV免疫原性組成物と同時投与又は逐次投与することもでき、例えば、「他」の免疫学的抗原性、ワクチン又は治療用組成物と共に投与して、それによって、本発明の多効果組成物又は「カクテル」組成物又は混合型組成物及びそれらを用いた方法を提供することもできる。この場合も、投与の成分及び方法(逐次投与又は同時投与)並びに用量は、特定の対象の年齢、性別、体重、種及び状態並びに投与経路などの因子を考慮に入れて決定できる。
【0074】
併用の場合、他のHIV免疫原は、全体的免疫処置レジメンの一部として、例えば初回刺激−追加免疫レジメン又は他の免疫処置プロトコールの一部として、同時に投与することも、異なったときに投与することもできる。HIV−1導入遺伝子などの他のHIV免疫原(好ましくはGRIN、GRN若しくはEnv、又はこれらの組合せ)を本発明で用いてもよい。他の多くのHIV免疫原は当技術分野で知られており、そのような好ましい免疫原の1つはHIVA(国際公開第01/47955号パンフレットに記載されている)であり、これは、タンパク質として投与することも、プラスミド(例えばpTHr.HIVA)で投与することも、ウイルスベクター(例えばMVA.HIVA)で投与することもできる。別のそのようなHIV免疫原は、RENTA(PCT/US2004/037699に記載されている)であり、これも、タンパク質として投与することも、プラスミド(例えばpTHr.RENTA)で投与することも、ウイルスベクター(例えば、MVA.RENTA)で投与することもできる。
【0075】
例えば、HIVに対する免疫応答をヒト対象で誘導する1つの方法は、HIV免疫原の少なくとも1用量の初回刺激投与と、HIV免疫原の少なくとも1用量の追加免疫投与とを行うステップを含み、その際、上記免疫原の少なくとも1つが本発明のHIV−1抗原、本発明のHIV−1抗原をコードする核酸、又は本発明のHIV−1抗原をコードする発現ベクター、好ましくはアデノウイルスベクターであるという条件で、各用量中の免疫原が同じもの又は異なったものでありえ、かつ上記免疫原が、HIV特異的な免疫応答を対象で誘導するのに十分な量で投与されるか、そのようなレベルで発現される。各用量は、1回の免疫処置あたり約1×107〜約2×1011ウイルス粒子であると有利である。
【0076】
HIV特異的な免疫応答は、HIV特異的なT細胞性免疫応答も、HIV特異的なB細胞性免疫応答も含みうる。そのような免疫処置は間隔をおいて、好ましくは少なくとも2〜6週間の間隔又はさらに長い間隔で行うことができる。
【0077】
初回刺激用の免疫処置注射と、追加免疫用の免疫処置注射との間の好ましい時間間隔は約3〜6カ月の間であり、6カ月が有利である。1回の初回刺激及びその3〜6カ月後の1回の追加免疫が好ましい。
【0078】
本発明は、ワクチンの投与も包含する。好ましい実施形態では、PMED(PowderJect(登録商標)粉末媒介の表皮送達で投与されるDNAワクチン(PowderJect powder mediated epidermal delivery))技法を用いてDNA追加免疫を行うことができる。同種追加免疫(homologous boost)又は異種追加免疫(heterologous boost)の約12週間後に1用量のPMEDを投与するのが有利である。
【0079】
当業者にならば、上述及び下記の実施例に記載の発明の原則に変更を加えられうるということが理解され、かつ予期されている。そのような改変、変更及び置換も本発明の範囲に包含されるものとする。
【0080】
これより下記の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
[実施例]
【実施例1】
【0081】
TBC−M4 HIV遺伝子配列インサート
TBC−M4ワクチン候補株は、サブタイプCウイルス単離株の遺伝子配列をコードしている。サブタイプC変異体に感染している血清陽転者における、インド由来の6株の異なったHIV−I単離株をクローニングし、特性分析した。単離株のヌクレオチド配列はGenBankから入手可能であり、ウイルスクローンは、国立AIDS参照試薬プログラム(National AIDS Reference Reagent Program)(米国国立衛生研究所)から入手可能である。
【0082】
候補ワクチンの各HIV−1遺伝子構成要素、すなわち、env、gag、RT、nef、tat及びrevのコンセンサス配列を得た。その後、上記6つの標的HIV−1遺伝子それぞれのコンセンサス配列に、どの1又は複数の単離株が最も密接に一致するかを同定するために、6つの単離株の天然配列を、得られたコンセンサス配列と比較した。以下の単離株が、コンセンサス配列に最も近い遺伝子を含有すると判定された。
GenBank受託番号AF067158:env及びRT
GenBank受託番号AF067157:gag及びtat
GenBank受託番号AF067154:rev及びnef
【0083】
これら3株のHIV−1単離株全てが、サブタイプCであり、かつ非合胞体形成型(NSI,non-syncytium-inducing)の表現型である。その後、同定された標的HIV−1遺伝子配列をサブクローニングする目的で、これら3株の単離株のクローニングされたゲノムを国立AIDS参照試薬プログラムから得た。
【0084】
Pfuポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR,polymerase chain reaction)によって、3つのゲノムDNAクローンからenv、RT、gag、tat及びnef遺伝子をサブクローニングした。rev遺伝子は、その長さが短く、かつ広範な改変が必要であるため、合成オリゴヌクレオチドから構築した。哺乳動物細胞における理論上の遺伝子発現を最適化するため、及び天然のタンパク質機能を選択的に低減させるために、上記HIV−1遺伝子を改変するためのヌクレオチド変化を、インビトロ変異誘発によって、PCR増幅中に意図的に導入した。
【0085】
各遺伝子の予測された配列は、GenBankから入手可能であった。サブクローニングされた遺伝子それぞれのヌクレオチド配列を標準的なゲノム配列決定法によって決定し、予測された配列と比較した。
【0086】
標的のHIV−1サブタイプC遺伝子を以下の通りに改変した。
【0087】
ワクシニアウイルスの初期転写終結シグナルをコードする内部T5NTモチーフにサイレント変異を導入するように完全長envを改変した。T5NT配列の除去は未熟な転写終結を最小限にし、ワクシニアウイルスの外来遺伝子発現を最適化することが知られている。
【0088】
p55ポリプロテインをコードする完全長gag遺伝子は、いかなる改変も行わずにサブクローニングした。
【0089】
rev遺伝子はいくつかの方法で改変した。アミノ酸75〜86をコードする12のコドンを欠失し、アスパラギン酸及びロイシンをコードする2つのコドンで置換して、revタンパク質を非機能性にした。加えて、rev遺伝子のヌクレオチド配列は、tat遺伝子とrev遺伝子との間の相同性を最小にするため、及び他の方法でアミノ酸配列を変えずに、ヒト細胞におけるrevタンパク質の発現を最適化するため、すなわち発現を「ヒト化」するために、コドンの3番目の位置(「ゆらぎ位置」)で改変した。
【0090】
tat遺伝子の第1エキソンは、3次元構造を保存しながらタンパク質を非機能性にするために、アミノ酸26及び32の2つのコドンをチロシンからアラニンに変えるように、インビトロ変異誘発で改変した。加えて、tat遺伝子の第2エキソンを欠失させた。同等なtat変異体を製造会社がトランス活性化アッセイで試験した。それらの変異体は、HIV−1 LTRの転写を活性化できなかった。
【0091】
改変されたtat及びrev配列を、適切な開始コドン及び終止コドンと共に融合遺伝子としてクローニングした。
【0092】
nef遺伝子は、MHCクラスIの下方制御及びCD3シグナル伝達を低減するために、アミノ酸62〜65のコドンをグルタミン酸からアラニンに変えることによって改変した。
【0093】
pol遺伝子の逆転写酵素(RT)部分は、逆転写酵素活性を除去するために、アミノ酸336及び337のコドンをアスパラギン酸からアスパラギンに変えることによって改変した。プロテアーゼ及びインテグラーゼの配列はコンストラクトに含まれていなかった。
【0094】
改変されたnef及びRTコード配列は、nef−RT融合遺伝子を生成するようにインフレームで融合させた。比色分析イムノアッセイを用いて、同等なコンストラクトのレトロウイルス活性に関して、nef−RTを評価した。酵素活性は検出されなかった。
【0095】
【表1】
【0096】
TBC−M4及び約800〜900bpのゲノムウイルス配列を含む、導入遺伝子(HIV 1C env、gag、nef−RT及びtat−rev)及び付随転写制御領域のDNA配列を決定した。2つの配列が決定された。第1の配列は、49/50領域、導入遺伝子tat−rev及びnef−RGを含有し、TB19a.1と命名されている。第2の配列、すなわちTB19a.2は、del III領域(欠失III領域、deletion III region)、並びに導入遺伝子env及びgagを含有しており、TBC−M4インサート中の特徴の座標を含有している。ウイルスインサートの決定された配列(19a.1及び19a.2)と、予測されたTBC−M4配列とのアライメントを行った。
【0097】
【表2】
【0098】
インサートの配列を図2A〜5Dに示す。
【実施例2】
【0099】
MVA組換え体の構築
組換え体のMVAウイルスの作製は、MVAゲノムDNAと、挿入することになっている異種配列を保持するプラスミドベクターとの間のインビトロ相同組換えを介して行われる。このプラスミドベクターは、MVAウイルスゲノムの必須ではない領域からのウイルス配列によって挟まれた外来配列を含有している。親MVAウイルスに感染している細胞の中に、このプラスミドを導入して形質移入を行い、プラスミド上のMVA配列と、ウイルスゲノム中の対応するDNAとの間の組み換えによって、プラスミド上の外来遺伝子の、ウイルスゲノムへの挿入がもたらされる。
【0100】
構築されたプラスミドベクターは、以下のエレメント、すなわち、(1)細菌宿主内でベクターの増幅を可能にする、原核細胞の複製開始点、(2)プラスミドを含有している原核宿主細胞の選択を可能にする、抗生物質アンピシリンに対する耐性をコードしている遺伝子、(3)相同組換えを介したこの領域への外来配列の挿入を指示する、MVAゲノムの欠失III(deletion III)領域に相同なDNA配列、及び(4)それぞれが、HIV−1遺伝子に連結されたポックスウイルスプロモーターを含む、1セットのキメラ遺伝子を含有していた。
【0101】
図6は、導入ベクターのアノテーション付きプラスミドマップを示す。導入ベクターのサイズは177923bpであり、機能的構成要素には、amp遺伝子、ポックスウイルスプロモーターであるsE/L、40K及び7.5K、MVA挿入部位であるdel III及び49/50、レポータ遺伝子であるlacZ及びgus、並びにHIV−1C抗原(env、gag、tat−rev及びnef−RT)が含まれる。
【0102】
ヒト臨床試験において、組換え生ポックスウイルスは、忍容性が良く、かつ免疫原性であって、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘発することが判明している。MVAは、ヒト細胞内で複製しないという利点を有し、ワクチン接種された個体12万人超における実証された安全記録を有する。加えて、MVA DNAの複製及び遺伝子発現は、ヒト細胞で比較的損なわれておらず、外来タンパク質の高レベルな発現を可能にしている。これは、ワクチン接種で、より強力な免疫応答をもたらしうる。MVAは、良好な安全記録を有し、かつ抗原特異的なMHCクラスI拘束性CTLを含めた、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘導できる。
【0103】
MVAは、デルモワクシニア(Dermovaccinia)株CVAから生じた。CVAは、AVS(アンカラワクチン接種場、Ankara Vaccination Station)で、ロバ−コウシ−ロバ継代によって長年にわたって保持されていた。1953年に、このウイルスが精製され、ウシを介して2回継代された。1954/55年に、CVAはドイツ連邦共和国で痘瘡ワクチンとして使用された。1958年に、CVAの限界希釈による弱毒化実験がニワトリ胚線維芽細胞(CEF,chicken embryo fibroblast)で開始された。360継代後に、ウイルスは連続して3回プラーク精製され、その後、継代数が570になるまで、CEFで複製した。ウイルスは、再度、トリ白血病ウイルス(avian leukosis virus)を含まないことが認識されているニワトリの群れから調製されたCEF上でプラーク精製された。「"MVA" Saatvirus 575. FHE-K. v.14.12.83」(翻訳:MVA種ウイルス、継代575、ニワトリ胚線維芽細胞K、1983年12月14日から)と標識された凍結乾燥原種ウイルスのバイアル2本を受け取り、凍結乾燥ウイルスは、それが使用されるまで、未開封のまま4℃で保存されていた。
【0104】
TBC−MVAの生産用の出発物質は、1995年に入手したMVA Saatvirus 575. FHE-K. v.14.12.83バイアルの1つであった。原種ウイルスのバイアル1本を1mM Tris pH9.0で再構成し、分注し、その後、0.1%FBSを補足したDME(DME/0.1%FBS)中に段階希釈して、初代ニワトリ胚皮膚(CED,chicken embryo dermal)細胞上でのプラーク精製の準備とした。希釈されたウイルスをCED細胞内で継代させ、TBC−MVA原種ロット番号1〜9を産生させた。
【0105】
850cm2のローラーボトル20本に、ローラーボトル1本あたり6×107CED細胞で播種し、0.1pfu/CED細胞のMOIで、TBC−MVA原種ロット番号1〜9に感染させた。その後、ローラーボトルに10%CO2/20%O2/平衡N2でスパージし、暖かい部屋のローラーラック上に配置した。感染は、34.5±1.5℃で、4±1日間、進行させた。感染期間の最後に、感染細胞及び培養培地を採取し、工程間試験用の試料を生成させた(粗原体)。感染細胞懸濁液を低速で遠心処理し、上清を捨て、ペレット細胞を1mM Tris、pH9.0中に再懸濁した。このペレット細胞を低速で遠心処理し、上清を採取した(清澄化原体)。ペレットを1mM Tris、pH9.0中に再懸濁し、この懸濁液を再度、低速で遠心処理した。この結果得られた上清を清澄化原体に添加した。力価決定用に試料を取り出し、清澄化原体をクライオバイアルに分注し、それらを−70℃以下で保存した。マスターウイルスストックは、TBC−MVA MVSロット番号1−030599と命名された。
【0106】
このTBC−MVA MVSロット番号1−030599(希釈液)1×107、2001年5月16日を、TBC−M420(インド由来(Indian)HIV−1C env、gag、tat−rev、nef−RT)組換え体を作製するための親ウイルスとして用いた。
【0107】
TBC−M420組換え体ウイルスは、インビボ組換えの標準的な技法を用いて作製した。CED細胞を親MVAウイルス(TBC−MVAマスターウイルスストック)に感染させた。その後、リン酸カルシウム沈殿法を用いて、プラスミド導入ベクターpT207及びpT216で細胞に形質移入した。48時間後に、感染細胞を採取し、3ラウンドの凍結融解によって子孫ウイルスを遊離させた。
【0108】
組換え体子孫ウイルスは、ウイルスプラーク上でインサイチュで行った、lacZ及びgus遺伝子産物の発現を検出する色素アッセイを用いて特定した。インビボ組換えの後に得られたウイルス子孫を用いて、6cm組織培養プレート内のCED細胞の単層培養物を感染させた。約24時間後に、アガロース溶液を感染細胞の上に重ねた。初期感染の4日後に、組織化学基質Bluo-Gal/マゼンタを含有するアガロース溶液を添加した。Bluo-Gal/マゼンタは、lacZ遺伝子及びgus遺伝子の産物によって変換され、それゆえ、これらの酵素を発現するプラークで紫色沈殿を生成する。次の日に、薄赤色のバックグランドに対して紫色で現れる陽性プラークを、無菌パスツールピペットを用いて取り上げた。純粋なプラーク単離株が得られるまで、これらのプラークを追加の精製ラウンドにかけた。
【0109】
TBC−M420組換え体の単離及び種ストックの調製の概略を示す流れ図を図7に示す。種ストックを調製するために、この最後に取り上げたプラーク内に存在しているウイルスに2ラウンドの増幅を施した。第1のラウンドは、1枚の6cm組織培養プレート内で行い、第2のラウンドは、10枚の15cm組織培養プレート内で行った。感染細胞を採取し、3ラウンドの凍結融解によって子孫ウイルスを遊離させた。その後、ウイルスをクライオバイアル内に分注し、−70℃以下で保存した。このストックは、TBC−M420種ストックロット番号2−080802と命名され、ワクチン生産用の組換えマスターウイルスストックを調製するための出発物質として用いられている。
【0110】
TBC−M420のゲノム解析に関して、試験物品(test Article)は、TBC−M420 SSロット番号2−080802であり、陰性対照は、TBC−MVAロット番号1−030599であり、陽性対照は、pT207ロット番号01−060502及びpT216ロット番号01−060502であった。
【0111】
試験物品ゲノムDNAは、ニワトリ胚皮膚細胞をTBC−M420に感染させ、MVAゲノムDNAを抽出することによって調製した。このDNAを、BamH I、EcoR I及びXba Iを用いた制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析した。その際、各制限エンドヌクレアーゼ消化は単一の酵素を用いて行った。その後、消化産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、エチジウムブロマイドを用いて染色して、DNA断片を可視化した。サザンブロットハイブリダイゼーション用にDNA断片をナイロン膜に転写した。env、gag、del III、tat−rev、nef−RT及び49/50の配列に対応するジゴキシゲニン標識DNAを用いて、各消化産物を個別にプロービングした。env、gag及びdel IIIの陽性対照には、プラスミドpT207ロット番号01−060502を使用し、tat−rev、nef−RT及び49/50の陽性対照には、プラスミドpT216ロット番号01−060502を使用して、分析を行った。陰性対照には、非組換え体MVAウイルスであるTBC−MVAロット番号1−030599から調製されたDNAを用いて、分析を行った。ハイブリッド形成している断片のサイズをそれらの予測されたサイズと比較して、適切な分子量の断片がプローブ配列を含有するかどうか判定した。予測された断片の全てが観察された。
【0112】
env遺伝子を発現しないものが種ストックで観察された。
【0113】
【表3】
【0114】
ウエスタンブロット分析は、全遺伝子が発現されたことを明らかにした(データは示されていない)。TBC−M420種ストック番号2−080802は、HIV−1クレードCのENV、GAG、TAT−REV及びNEF−RT融合タンパク質をコードするMVA組換え体である。これらの遺伝子/タンパク質の発現をウエスタンブロット分析で測定した。簡潔には、組換え体感染細胞の溶解物/タンパク質をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース膜ペーパーにトランスブロットした。これらのブロットを、HIV−1 ENV(gp120)、GAG、REV、TAT、NEF及びRTの検出に特異的な抗体と共にインキュベートした。その後、発色基質を用いてそれらを発色させた。特徴的なサイズ(ENV=160/120kD;GAG=55kD、TAT−REV=29kD及びNEF−RT=90kD)のバンドは、遺伝子発現の陽性の証拠と考えられる。
【0115】
試験物品であるTBC−M420 SS番号2−080802の力価が低く、かつその利用が限定されていたため、MOI 2を用いた。他の全ての組換え体は、一貫性を得るために最も低い力価に調整した。TBC−M420 SS番号2−080802の遺伝子は、TBC−M395 SS番号1−121801より強いプロモーターの下にあるという事実により、TBC−M420 SS番号2−080802のバンド強度は、全てのブロットで、陽性対照であるTBC−M395 SS番号1−121801より強かった。
【0116】
・エンベロープ:
TBC−M420 SS番号2は、160kD及び120kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、160kD及び120kDのバンドに関して陽性であった。しかし、これは、スキャンでは、オリジナルのブロットが適切なバンドを示しているほどには検出可能でない。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1エンベロープの検出に特異的であったことが確認された。
【0117】
・Gag:
TBC−M420 SS番号2は、約55/45kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約55/45kDのバンドに関して陽性であった。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 GAGの検出に特異的であったことが確認された。
【0118】
・Nef及びRT:
TBC−M420 SS番号2は、約90kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約90kDのバンドに関して陽性であった。しかし、陽性対照TBC−M395 SS番号1のスキャンは、約90kDの顕著なバンドを示さない。オリジナルのブロットでは、このバンドが検出可能である。両方の抗体条件下で同じサイズのバンドが検出されたという事実によって、発現された遺伝子が単一のポリプロテインであることが確認された。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 NEF及びRTの検出に特異的であったことが確認された。
【0119】
・TAT及びREV:
TBC−M420 SS番号2は、約29kDのサイズのバンドに関して陽性であった。陽性対照TBC−M395 SS番号1は、約90kDのバンドに関して陽性であった。両方の抗体条件下で同じサイズのバンドが検出されたという事実によって、発現された遺伝子が単一のポリプロテインであることが確認された。陰性対照であるTBC−MVAでは、これらのバンドが存在していなかった。これによって、条件が、HIV−1 TAT及びREVの検出に特異的であったことが確認された。
【0120】
上述の通り、env以外の遺伝子の発現の純度(プラーク分析)は、適したアッセイがないため行っていない。
【0121】
6cm組織培養プレート内の初代CED細胞を用いて、ウイルスの力価決定を行った。培養培地中にウイルスを段階希釈し、これらの希釈物を細胞に添加した。感染の約24時間後に、培養培地を除去し、感染細胞単層培養物にアガロースオーバレイを適用した。3日後に、ニュートラルレッドを含有する第2のアガロースオーバレイを適用した。さらに2日間インキュベートした後、各プレート上のプラークの総数を数え、20〜200プラークを含有するプレートからの計数を用いて、力価を1mlあたりのプラーク形成単位(pfu,plaque-forming unit)で計算した。TBC−M420種ストックロット番号2−080802の濃度は、8.8×107pfu/mlであると測定された。
【0122】
AIDSワクチン評価グループ(AVEG,AIDS Vaccine Evaluation Groups)は、ポックスウイルスベースのAIDSワクチン候補株を評価するための多くのフェーズI臨床試験プロトコールを実施している。プロトコール002、002A、002B、008及び010は、HIV−1 env遺伝子を発現する複製性ワクシニアウイルス(HIVAC−1e)を、様々なHIV envサブユニット調製物と併用した初回刺激−追加免疫レジメンを試験した。同様に、プロトコール014A及び014Cは、Therion社製の多重遺伝子組換え体であるTBC−3Bを評価した。TBC−3Bは、HIV−1の3B単離株に由来するenv及びgag−pol遺伝子を発現する。014Cでは、TBC−3Bで免疫処置されたボランティアに、HIV env調製物で追加免疫した。残りの試験は、1又は複数のHIV遺伝子を発現する様々なカナリア痘組換え体(Pasteur Merieux Connaught社製)を、様々な異なったサブユニットの追加免疫と併用した。したがって、臨床試験における、複製性及び非複製性のポックスウイルスベースのワクチンの使用には十分な経験がある。
【0123】
これらのヒト臨床試験で、組換え体生ワクシニアウイルスは、忍容性が良く、免疫原性であることが立証されている。同様に、カナリア痘組換え体も忍容性が良く、抗体及び細胞性免疫応答の両方を誘発した。しかし、カナリア痘組換え体によって誘発された免疫応答の効力に関しては、最近のデータは、HIV特異的なCTL応答を一過性のものでさえ発生するのは、ワクチン接種を受けた全ての人のうち約半分のみであることを示しており、いくらかの懸念がもちあがっている。
【0124】
MVA組換え体は、トリポックスウイルス及び複製性ワクシニアウイルスの最も良い特徴を組み合わせることができる。このベクターがヒト細胞では複製できないこと、及びワクチン接種を受けた12万人超の個体で立証された安全記録は、複製可能なワクシニアの使用に関してもちあがっている懸念に取り組むものである。しかし、トリポックスとは対照的に、MVA DNAの複製及び遺伝子発現は、ヒト細胞で損なわれておらず、外来タンパク質の高レベルな発現を可能にするこの特徴は、ワクチン接種の際に、より強力な免疫応答をもたらしうる。
【実施例3】
【0125】
動物データ
TBC−M4ワクチンの意図されている薬理効果は、改変ワクシニアウイルス(MVA)のウイルスベクターに挿入された標的HIV−1タンパク質に対する免疫応答の誘導である。ウエスタンブロットによって評価した場合、選択された6つのHIV−1タンパク質、すなわちenv、gag、nef、RT、tat及びrevの全てが、組換え体MVAウイルスによって発現されることが示されている(実施例2)。前臨床薬理試験の目的は、インビボでのワクチンの生物学的活性を評価することであった。ウイルスベクターMVA及びコードされているHIV−1タンパク質に対する宿主免疫応答の評価を用いて、TBC−M4ワクチン候補株の生物活性を評価した。
【0126】
TBC−M4ワクチンの、提唱されている作用機序は、組換え体MVAウイルスがヒト細胞を感染させ、限定的な複製を行い、今度は細胞が、挿入されているHIVタンパク質を発現するであろうというものである。TBC−M4ワクチンに暴露されたヒト対象におけるHIV−1抗原の発現は、宿主の細胞性及び体液性免疫応答を誘発するであろう。env、gag、nef、RT、tat及び/又はrevタンパク質に対して誘発された広範な免疫応答は、その後でヒト免疫不全症ウイルス(HIV)に暴露された際に、宿主におけるウイルス暴露及び二次的帰結を有意に低減しうると仮定されている。提唱されている作用機序に関する支持情報を以下に示す。
【0127】
ヒトでのHIV感染及びアカゲザルでのSIV感染に関する研究によって、中和抗体の重要な役割が明らかになった。強力な体液性及び細胞性応答を誘導する弱毒化生ウイルスへのHIV遺伝子の標的挿入は、HIVに対する防御免疫応答を誘導するための可能な戦略であると考えられている。
【0128】
改変ワクシニアアンカラウイルスは、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞を介した連続継代によって、野生型ワクシニアウイルスから得られた弱毒化生ウイルス株である。弱毒化の過程において、MVAウイルスは、詳細に特性分析されている複数のゲノム欠失を起こしており、それらにはこのウイルスの病原性の減弱が伴っていた。これらのゲノム欠失は、広範に特性分析されており、後期のウイルス粒子構築及びサイトカイン受容体の発現に影響を与えているようである。この結果、この改変ウイルスは、ほとんどの哺乳動物(ヒトも含まれる)の細胞を感染させ、正常な方法でウイルス(及び組換え体)遺伝子を発現することができるが、ほとんどの初代細胞型又は不死化細胞株で効率的に複製しない。20年間の研究の後、MVAウイルスの増殖性複製は、主として、ニワトリ胚線維芽細胞に限定されていると考えられている。
【0129】
親株であるCVAと異なり、MVAウイルスは、IFN−γ、IFN−αβ、TNF及びケモカインを含めた一連のサイトカインの可溶性受容体を発現しない。しかし、MVAウイルスは、可溶性IL−1β受容体を発現し、様々な疾患モデルで、体液性免疫応答、I型IFN及びCD8+細胞の強力な誘導因子であることが立証されている。
【0130】
MVAウイルスに挿入された外来遺伝子が発現される正確な機序、及び特異的な免疫を誘導するために提示される関連抗原は、いまだなお明らかになっていない。上記6つのHIV−1ポリペプチドは、感染細胞内で発現した後、MHCクラスIのコンテクストでプロセシング及び提示されるであろうと推定されている。体液性応答は、ウイルス感染細胞からの抗原の分泌によって、又は細胞溶解に続くそのような抗原の遊離によって誘発されうる。これらの方法で遊離した抗原は、その後、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC,antigen-presenting cell)によって取り込まれ、流入領域リンパ節でCD4+T細胞に提示されうる。
【0131】
組換え体MVAウイルスによって遺伝学的に導入された抗原がCD8+応答に提示される機序は、それよりよく判っていないが、これらの細胞の誘導は、HIV、SIV及び他の疾患モデルで実証されている。動物研究は、マウス及びアカゲザルの両方で、HIV−1サブタイプAエピトープ又はSIV CTLエピトープを発現する組換え体MVAウイルスによる特異的CD8+応答の誘導を実証している。マウスでは、静脈内経路による投与が、筋肉内経路より良い応答を与えたが、皮内注射による投与も有効であった。アカゲザルでは、免疫処置された動物は、それに続く攻撃の後、対照と比較して、少ないウイルス量及び延命を示したが、完全な防御は示さなかった。
【0132】
TBC−M4ワクチンの意図されている薬理効果は、MVAウイルスベクターによってコードされている標的HIV−1タンパク質に対する細胞性及び体液性免疫応答の誘導である。初代CED細胞並びに非ヒト霊長類細胞系及びヒト細胞系のウエスタンブロットによって評価した場合、選択された6つのHIV−1タンパク質、すなわちenv、gag、nef、RT、tat及びrevの全てが、組換え体MVAウイルスによって発現されることが示されている。ワクチンに対する免疫応答は、ワクシニア(MVAウイルス)結合抗体を測定するELISAと、HIV−1標的遺伝子産物に対する細胞性免疫応答を測定する酵素結合イムノスポット(ELISPOT,enzyme-linked immunospot)γインターフェロンアッセイとを用いて評価されている。
【0133】
宿主免疫を誘導するTBC−M4ワクチンの能力は、3つの動物モデル、すなわち齧歯動物(マウス)、ウサギ及び非ヒト霊長類で独立に確証されている。
【0134】
体液性及び細胞性という2クラスの免疫応答が、TBC−M4ワクチンに暴露された動物で測定されている。ELISA法は、血清中のワクシニア結合抗体を検出するのに用いられる。ELISPOTインターフェロンγアッセイは、標的HIV−1抗原に対するT細胞応答を検出するのに用いられる。
【0135】
抗ワクシニア体液性応答。第1相臨床開発中である他の組換え体ポックスウイルスベースのワクチンでは、暴露された動物の血清中におけるワクシニア結合抗体の誘導が、薬理活性の主要な指標として用いられている。ワクシニア結合抗体を測定するELISAは、ヒト及びマウス血清のアッセイに関して確証されており、ウサギ血清に関して適格となっている。ワクシニア結合抗体の測定は、最初、ワクチンの免疫原性能力を実証するために行われ、その後の試験では、TBC−M4ワクチンの薬理活性を確証するために、2通りの非臨床毒性学試験が行われた。
【0136】
HIV−1特異的なELISPOTγインターフェロンアッセイ。より後の段階の臨床開発に備えて、ワクチンに対する抗原の特異的T細胞応答を測定するアッセイ及び試薬が開発されている。インビトロ刺激に続く、抗原特異的細胞性免疫応答を測定するために、脾臓IFN−γ産生細胞を検出するELISPOTアッセイが開発されている。TBC−M4ワクチンを用いて、抗原特異的な細胞性免疫応答を測定する2通りの試験が行われている。
【0137】
マウスにおけるTBC−M4の免疫原性。この試験の目的は、TBC−M4への筋肉内暴露に続く、マウスの抗ワクシニア、抗gag及び抗env体液性応答を評価することであった。抗env及びgag免疫グロブリン応答のアッセイに使用されたELISA法は、サブタイプB抗原を用いて開発され、サブタイプC抗原に対して産生された免疫グロブリンとの交差反応性は、この試験での血清のアッセイの前には確立されていなかった。
【0138】
TBC−M4ワクチンの臨床ロットの1つは、1×108pfu/mlのストック濃度の凍結状態であった。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。試験物品を投与するそれぞれの日に、1×107pfu/mlの使用溶液となるように、プラセボ中にストック物質の1〜10倍希釈液を作ることによって、新しい投与溶液を調製した。メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。
【0139】
SD0の前及び投与を行うそれぞれの機会の2週間後に、各動物から採血した。免疫処置前及び後の試料を、血清ワクシニア結合反応に関して、ELISAによってアッセイした。報告の力価は、未処置の血清で測定されたOD値に3を掛けた値に基づいて決定した。検出限界は力価100であり、これは、1:100希釈のときに試料のODが陰性対照ウェルに匹敵することを示す。
【0140】
抗ワクシニアELISAから得たデータを表4に示す。最初のワクチン投与の2週間以内、すなわちSD14に、6匹のマウスのうち4匹で抗ワクシニア力価が検出された。2回以上(SD0及び21、又はSD0、21及び35)ワクチン接種された動物からの血清試料は、ワクシニア抗体結合ELISAで全て陽性であった(12匹のうち12匹)。ワクシニアイムノグロブリンアッセイで得た結果は、マウスにおける上記ワクチンの薬理活性を確証し、TBC−M4ワクチンが一次暴露の後に、検出可能な宿主免疫応答を誘導し始めることを示した。
【0141】
【表4】
【0142】
最終試験報告書に示されている通り、抗gag及びenv ELlSAは、クレードB HIV−1抗原を用いて開発され、サブタイプC抗原に対して誘発された血清との交差反応性は知られていない。env及びgag ELISAからの結果は決定的ではなかった。TBC−M4ワクチン(サブタイプC)で免疫処置された動物からの血清試料はいずれも、製造会社のELISAアッセイで使用されたサブタイプB gag抗原を検出しなかった。TBC−M4ワクチン(サブタイプC)で免疫処置された動物からの18の血清試料のうち1つは、サブタイプB env抗原との穏やかな反応性を示した。報告されている、クレードB及びサブタイプC HIV−1株におけるgag抗原性の保存を前提として、クレードB gag抗原との陰性データは予測されていなかった。しかし、サブタイプC抗原に対して産生された抗体を検出する現在のアッセイの能力が確認されていないので、env及びgag ELISAで得られた結果を解釈することができなかった。サブタイプCのenv及び/又はgag抗原に対する確証された反応性を有する陽性対照血清は利用可能でなかった。
【0143】
この試験の目的は、CD1マウス系統における、上記ワクチンの生物学的活性を確証することであった。血清抗ワクシニア結合反応を確証済みのELISA法でアッセイした。
【0144】
TBC−M4ワクチンは、5×108pfu/mlの凍結状態で用意された。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。投与を行う機会ごとに、50μlの希釈されていない解凍試験物質又はプラセボを動物に投与した。これは、交互の後肢への筋肉内注射によって与えた。動物に投与し、血清を回収した。SD0の前と、第4(最後)の投与機会の2週間後であるSD78に、各動物から採血した。免疫処置前及び後の試料を、血清ワクシニア結合反応に関して、ELISAによってアッセイした。報告の力価は、天然の血清で測定されたOD値に3を掛けた値に基づいて決定した。検出限界は力価100であり、これは、1:100希釈のときに試料のODが陰性対照壁に匹敵することを示す。
【0145】
抗ワクシニア結合ELISAの結果を表5に示す。投与の前に収集された血清試料又はプラセボに暴露された動物からの試料はいずれも、検出可能な抗ワクシニア力価を含有していなかった。TBC−M4ワクチンを投与されたマウスからの血清試料全てが、著しく高い抗ワクシニア力価を含有していた(25600〜51200の範囲)。陽性の体液性応答は、免疫処置後の抗ワクシニア力価が、投与前の力価の2倍に増大することによって示される。ワクチン接種された動物における25600〜51200の血清力価は、ワクチンに対する陽性応答を示し、反復投与毒性試験で用いられたCD1マウスモデルにおける上記ワクチンの薬理活性を確証した。
【0146】
【表5】
【0147】
マウスIFN−γELISPOT。この研究の目的は、HIV1抗原特異的な脾細胞の頻度をIFN−γELISPOTアッセイで測定することによって、TBC−M4ワクチンに対する、BALB/cマウスの細胞性免疫応答を決定することであった。この試験は、関連しているが同一ではない多重遺伝子HIV−1サブタイプCコンストラクト用に合成されたペプチド試薬を用いて行う概念実証試験である。上記ペプチドプールは、env、gag、pol(RT)及びnef−tatタンパク質由来の、オーバーラップを有する15量体アミノ酸配列を含有するようにモデル化され、合成された。
【0148】
TBC−M4ワクチンは、1×109pfu/mlのストック濃度の凍結状態で用意した。試験物質は、使用するまで凍結状態で保存した。1、2又は3回の投与機会に、1回の投与あたり1×104pfu、1×106pfu又は1×108pfuの試験物品を与えて、動物に投与した。試験物品を投与するそれぞれの日に、新たな投与溶液を調製した。原液保存ワクチンが1×109pfu/mlで用意されたので、投与溶液C(1×108pfu/0.1m)は調製を必要としなかった。投与溶液B(1×106pfu/0.1ml)は、エンドトキシン非含有PBS中への保存ワクチンの1対10希釈を順次に2回行うことによって調製した。投与溶液A(1×104pfu/0.1ml)は、エンドトキシン非含有PBS中への投与溶液の1対10希釈を順次に2回行うことによって調製した。
【0149】
同様な免疫原性プロトコールを用いた以前の経験に基づいて、メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。動物に投与し、各免疫処置の2週間後に脾臓を回収した。
【0150】
脾臓を2%ウシ胎児血清を含有する完全培地中に収集して、ELISPOT試験施設に移した。脾臓は、収集と同じ日に受理され、ELISPOTアッセイ用に処理された。組織解離を通した無菌技法を用いて、各組織試料から脾臓リンパ球を単離し、収集した。各試料の単細胞懸濁液の計数を行い、1ウェルあたり2×105細胞の最終細胞密度となるように、濃度を調整した。2つの対照、すなわち培地のみ(陰性対照)及びCon A(T細胞マイトジェン;陽性対照)と、1.5〜2μg/μlの9つの異なったペプチド刺激とを含めた合計11の刺激条件に関して、トリプリケートのウェルで試料を試験した。用いられたHIV−1ペプチドプール及び単独のペプチドを表6に示す。抗マウスIFN−γ抗体でプレコーティングされた96ウェルELISPOTフィルター−プレート内に細胞及び刺激物を分注し、37℃で18〜24時間インキュベートした。残った未使用の細胞は−70℃で冷凍した。刺激された細胞によって分泌されたIFN−γによって生じたスポットを、酵素標識されたマウスIFN−γ特異検出抗体を用いて検出した。
【0151】
【表6】
【0152】
ELISPOTアッセイから得た結果の要約を表7に示す。EliSPOTの結果は、1ウェル(2×105細胞)あたりのIFN−γ産生細胞の数として報告されている。このアッセイでは、陰性対照(刺激されていないウェル)の平均に標準偏差(SD)の2倍を足した値以上の値が陽性と考えられている。
【0153】
試験された全ての用量(1×104〜1×108pfu)のTBC−M4で免疫処置された全ての動物からの細胞培養で、Env、gag及びpol(RT)特異的な応答が観察された。未処置の動物からの脾細胞培養では、HIV−1抗原(ペプチド)特異的な応答が検出されなかった。未処置細胞のインビトロ刺激は、検出可能なワクチン特異的IFN−γ産生細胞を誘導しなかったので、観察された応答は、TBC−M4ワクチンによる、宿主免疫細胞のインビボ刺激に起因すると考えられた。
【0154】
【表7】
【0155】
env、gag及びpol(RT)への応答の規模は、投与されたワクチンの用量におおよそ相関しており、ワクチンに対する用量依存的な免疫応答を示した。これら3つの投与群全てで、ワクチンの一次暴露の後、IFNγ応答が検出された。応答の規模は、通常、後続のワクチン投与それぞれの後の方が高かった。しかし、最も高い用量(1×108pfu)までの3回の暴露を受けた動物からの脾細胞は、2回の暴露を受けた同じ投与群からの脾細胞と比較すると刺激に不応性のようであった。
【0156】
gag及びpol(RT)に由来する単独のペプチドで刺激された培養物では、同様なパターンの抗原特異的IFN−γ刺激が観察されたが、応答は動物間での一貫性が低くなっており、より低い規模のものであった。単独のenvペプチドエピトープは刺激性でなく(データは示されていない)、類似したサブタイプC nef−tat融合ポリペプチドに由来するペプチドプールも刺激性でなかった(データは示されていない)。単独のenvペプチドに対して応答がなかったことは予想外ではない。envプール内に含有される複数のペプチド(env(1)及びenv(2))に対して試験した場合には、このコードされているHIVタンパク質に対する応答が明らかになった。再刺激に用いられたnefペプチドプールを後で分析したところ、用いられたnefペプチドプールと、TBC−M4ワクチンに一致した理論上のnefプールとの間では、51のエピトープ配列のうち9しか一致しないことが明らかになった。2つのnefポリペプチドプールで観察された相違は、nef(及びtat)に対する応答の低さが、適した試薬がないことに関係していると示唆している。
【0157】
したがって、6つの標的HIV−1抗原インサートのうち3つに対する応答が検出され、残りの3つに対する応答の測定には、適した試薬が利用できなかった。TBC−M4投与に続くIFN−γ応答は、ワクチンのT細胞刺激活性の指標であると考えられている。T8C−M4の薬理効果は、投与の回数及び投与を行う機会それぞれで投与されたワクチンの量によって影響される。
【0158】
マウスIFN−γELISPOT。この試験の目的は、BALB/cマウス及びCD1マウスの脾細胞における、TBC−M4ワクチンに対する免疫応答を、IFN−γELISPOTアッセイによって測定することであった。この試験は、関連しているが同一ではない多重遺伝子HIV−1サブタイプCコンストラクト用に合成された、env、gag及びpol(RT)ペプチド試薬を用いて行う概念実証試験であった。IFN−γELISPOTアッセイのインビトロ刺激段階中に、上述の試験で活性であることが示されたペプチドプールを用いた。上記ペプチドプールは、env、gag、pol(RT)及びnef−tatタンパク質由来の、オーバーラップを有する15量体アミノ酸配列を含有するようにモデル化され、合成された。
【0159】
TBC−M4ワクチンは、5×108pfu/mlのストック濃度の凍結状態で用意された。試験物質は、使用するまで凍結状態で保存した。同様な免疫原性プロトコールを用いた以前の経験に基づいて、メスのBALB/cマウスを動物モデルとして選択した。CD1マウスを選択して、このマウス系統における上記ワクチンの薬理活性を確証するために選択した。投与を行う機会ごとに、100μlの希釈されていない試験物質が動物に投与された。これは、50μlの筋肉内注射を2回、2本の後肢それぞれに1回行って与えた。動物に投与し、第2の投与(SD35)の2週間後に脾臓を回収した。脾臓採取の際に採血を行った。血清は冷凍保存した。
【0160】
脾臓を2%ウシ胎児血清を含有する完全培地中に収集して、ELISPOT試験施設に移した。脾臓は、収集と同じ日に、ELISPOTアッセイ用に処理された。組織解離を通した無菌技法を用いて、各組織試料から脾臓リンパ球を単離し、収集した。各試料の単細胞懸濁液の計数を行い、1ウェルあたり2×105細胞の最終細胞密度となるように、濃度を調整した。2つの対照、すなわち培地のみ(陰性対照)及びCon A(T細胞マイトジェン;陽性対照)と、1.5〜2μg/mlの5つの異なったHIV−1ペプチドプールを含めた合計7つの刺激条件の合計に関して、トリプリケートのウェルで試料を試験した。これらのHIV−1ペプチドプールは表8に記載されている。抗マウスIFN−γ抗体でプレコーティングされた96ウェルELISPOTフィルター−プレート内に細胞及び刺激物を分注し、37℃で18〜24時間インキュベートした。残った未使用の細胞は−70℃で冷凍した。刺激された細胞によって分泌されたIFN−γによって生じたスポットを、酵素標識されたマウスIFN−γ特異検出抗体を用いて検出した。
【0161】
【表8】
【0162】
96ウェルのスポット画像を得るために、フィルターELISPOTプレートをCTL社製Immunospotスキャナーでスキャンした。CTL社製Immunospot(登録商標)分析ソフトウェアを用いて、各ウェル内のスポット数を計数した。トリプリケートの値の平均は、excelテンプレートに組み込まれた数式を用いて得た。
【0163】
ELISPOTアッセイの結果の要約を表9に示す。ELISPOTの結果は、1ウェル(2×105細胞)あたりのIFN−γ産生細胞の数として報告されている。このアッセイでは、陰性対照(刺激されていないウェル)の平均に標準偏差(SD)の2倍を足した値以上の値が陽性と考えられている。
【0164】
【表9】
【0165】
TBC−M4ワクチンで免疫処置された動物からの細胞培養は、env、gag又はpol(RT)ペプチドプールを用いたインビトロ刺激に続いて、IFN−γ応答を示した。BALB/cマウスにおける、T細胞関連のIFN−γ応答の規模及びパターンは、以前に報告された陽性の結果を確証した。gag及びenv成分に対するT細胞応答の規模は、CD1マウスとBALB/cマウスとで匹敵していた。Pol(RT)関連の応答は、BALB/cマウスからの脾細胞の方が強いようであった。未処置の動物からのBALB/c脾細胞培養では、抗原(ペプチド)特異な応答が検出されなかった。
【0166】
予想外なことに、2匹の未処置CD1マウスのうち1匹からの細胞培養物がHIV−1ペプチドプールに応答した。アッセイ及び応答の再調査は、その動物番号のスポットパターンが、免疫処置された動物におけるスポットパターンとは異なっており、トリプリケートウェルの間で、予測より高い変異と、操作者が気付いた定性的な相違とを有していたことを示した。予想外の応答に寄与する要因を調査したが、見逃がせない原因は1つも決定できなかった。予期しなかった結果に寄与していたかもしれない潜在的要因には、免疫処置及び/又はアッセイを行っている間の操作者の間違い又はCD1マウスの非近交系バックグランドが含まれる。調査の結論は以下の通りである。
【0167】
・試験物品は、ワクチン接種されたマウスの100%で活発な細胞性免疫応答を誘導した。
【0168】
・2匹のCD1陰性対照マウスのうちの1匹における見かけの応答に関する問題は、他の原因[操作者の間違いなど]も完全には除外できないが、HIVペプチドに対する、この動物のバックグランド応答によって、最ももっともらしく説明される。
【0169】
・CD1バックグランドの説明は、2匹の陰性対照BALB/cマウスにおける応答の不在及び陰性対照マウスにおける応答の規模、並びにアッセイ行為に関する調査によって支持される。
【0170】
まとめると、これらの試験で観察された、6つの標的HIVタンパク質のうちの3つ(env、gag及びRT)に対する抗原特異的なIFN−γ応答は、上記ワクチンの意図された効果、すなわち、TBC−M4産物によってコードされたHIVタンパク質に対する免疫応答の誘導を確証する。TBC−M4投与に続くIFN−γ応答は、ワクチンのHIV抗原成分に対するT細胞応答性の指標であると考えられている。これらの結果は、筋肉内投与経路によって暴露された動物における、TBC−M4ワクチンの薬理活性を再確認するものである。
【0171】
ウサギにおけるTBC−M4の免疫原性。この試験の目的は、ニュージランドホワイト(NZW,New Zealand White)ウサギの動物モデルにおける、上記ワクチンの生物活性を確証することであった。ワクシニア結合抗体が存在しているかどうかに関して、適格なELISA法を用いて、ワクチン接種前及び後にNZWウサギから収集した血清を試験した。
【0172】
TBC−M4ワクチンは、臨床ロット1A(5×108pfu/ml)及び臨床ロット1B(1×108pfulml)として、凍結状態で用意された。試験物質及びプラセボ(PBS/10%グリセロール)は、使用するまで凍結状態で保存した。臨床ロット1A、臨床ロット1B及びプラセボを用いて、プロトコールで指定された通り、SD1(左)、SD22(右)、SD43(左)及びSD64(右)という交互の肢領域で動物に投与した。投与を行う機会ごとに、0.5μlの希釈されていない解凍試験物質又はプラセボを動物に投与した。これは、上記の通り、交互に左/右の後肢に筋肉内注射することによって与えた。動物に投与し、血清を回収した。
【0173】
血液(1ml)を各動物から、いかなる試験物品の投与も行われる前(試験前)に収集し、再度、SD67、すなわち第4(最終)の投与を行う機会の3日後にも収集した。ワクチン接種前及び後の血液は、耳の静脈又は動脈から収集した。標準的な凝固手順及び遠心分離手順の後、血清を収集した。ELISAによる、ワクシニア結合抗体応答アッセイ用に、免疫処置前及び後の試料を収集した。
【0174】
力価は、未処置の血清の値に3を掛けた値に基づいて決定した。陽性の応答は、免疫処置後の試料が、投与前試料と比べて、2倍に増大することによって示された。
【0175】
抗ワクシニア結合ELISAの結果を表10に示す。試験物品を投与する前には、36羽の試験動物のうち34羽で、血清抗ワクシニア力価が検出限界にあった(≦100)。検査の開始時に、2羽の動物が血清力価400を有していた。これは、小さなサブセットの動物で、ワクシニア交差反応性抗原への事前暴露があったことを示すものでありうる。
【0176】
【表10】
【0177】
対照群である群1の12羽のウサギはどれも、ELISAで、ワクシニア抗原に対する陽性結合反応、すなわち、投与前血清の力価と比較した、SD67血清の抗体力価の増大を示さなかった。TBC−M4ワクチン(群2:5×107pfu及び群3:2.5×108pfu)を投与された24羽のウサギ全てが、ワクシニアに対して血清陽転した。群2(低用量)の動物からの力価は6400〜25600の範囲であった。群3(高用量)の動物からの力価は25600〜102400の範囲であった。TBC−M4を投与された動物全てが血清陽転したことは、毒性試験用に選択されたウサギモデルにおける、上記ワクチンの薬理活性を確証する。
【0178】
まとめると、TBC−M4ワクチンの生物学的活性を動物で評価するために、5通りのインビボ試験を行った。4通りの試験はマウスで行い、1通りの試験はウサギで行った。複数のワクチン成分に対する宿主免疫応答の誘発によって、弱毒化ワクシニアベクター及び挿入HIV遺伝子産物を含めたワクチンの薬理活性を実証した。上記ワクチンベクターに対する体液性応答は、3通りの試験の全てで観察された。挿入HIV−1遺伝子産物に対する応答は、2通りの原理証明試験で観察された。両方の試験で、env、gag及びpol(RT)抗原に対する有意なIFN−γ応答が観察された。併せて、これらの試験の結果は、TBC−M4ワクチン候補株の第1相臨床試験を支持する。
【実施例4】
【0179】
動物毒性学
2通りの反復投与非臨床安全性試験を、TBC−M4ワクチンの、提案されている臨床ロットを用いて行った。交互の後肢への3週間間隔、4回のプラセボ又はTBC−M4の筋肉内注射にマウス及びウサギの両方を暴露した。提案されている臨床レジメン(3回の投与)に1回足したものに相当する4回の反復注射を与えた。マウスで最大許容容積を与えるため、及び最大ヒト用量相当をウサギに与えるための用量レベル選択を行った。
【0180】
提案されている2通りの臨床用量、すなわち5×108pfu/mLのロットA及び1×108pfu/mLのロットB 50μlを用いて、この種に与えることのできる最大容積の試験物品を与える、マウス試験用の用量を選択した。50μl容積は、0.5mLでヒトに与えることが提案されている最大ヒト用量のほぼ1/10に相当している。ヒトの平均体重を70キログラム(kg,kilogram)、週齢1週間のマウスを30グラムと仮定すると、ロット1Bに関しては、kgあたりの用量ベースで与えられた用量は、ヒト用の最大臨床用量の50倍増大に相当する。ロット1Aに関しては、kgあたりの用量ベースで与えられた用量は、ヒト用に意図されている最大臨床用量の230倍増大に相当する。
【0181】
ウサギ試験で与えられた用量は、提案されている最大臨床用量(ロット1A:5×108pfu/mL)の最大ヒト用量、及び第2のサブロットである、1×108pfu/mLで充填された臨床ロット1Aに相当する。ヒトの平均体重を70キログラム(kg)、若年成体ウサギの体重を3.5キログラム(kg)と仮定すると、kgあたりの用量ベースでは、これは、ヒト用に意図されている最大臨床用量の20倍安全マージンの最小値に相当する。
【0182】
2通りの非臨床安全性試験を独立に行った。これら両試験には、死亡率、臨床観察及び症状観察、体重、体重変化、飼料消費量、眼科、死体解剖、臓器重量及び比率、並びに臨床病理学パラメータ(血液学及び臨床化学)のモニタリングが含まれていた。マウスでは、標準的な組織一式の顕微鏡分析を行い、ウサギでは注射部位の顕微鏡分析を行った。
【0183】
プラセボ(PBS/グリセロール)又はTBC−M4ワクチンの反復筋肉内注射は、ウサギ及びマウスの両動物モデルで良好に忍容された。両動物モデルにおける試験物品に関連した観察には、注射部位における軽度から中程度の局所的な可逆的反応性が含まれていた。これは、ドレーズ(Draize)スコア判定によって測定した場合、巨視的に明らかであり、かつ注射部位からの生検の組織病理学では顕微鏡的に明らかであった。マウス試験では、試験物品に関連した他の変化に、グロブリンレベルの上昇、リンパ節腫脹及び白脾髄過形成が含まれ、これらは、ワクチンに対する、意図されていた免疫応答に起因すると考えられた。ウサギ試験では、処置されたメスの頚部領域における、皮膚の発赤及び/又は痂皮形成が、より高い頻度で発生した。処置との関係性を除外することはできなかったが、用量反応性も、オスにおける類似の観察もなかったので、この変化は偶発的なものであると考えられた。
【実施例5】
【0184】
ベクターベースのHIVワクチンの免疫原性の比較:ELISPOT−IFN−γ
表11は、ELISPOT−IFN−γに基づいた、ベクターベースのHIVワクチンの免疫原性の比較を示す。各試験における、ワクチン接種後のピーク時点での、複数のワクチンのワクチン応答率;中核検査室で作成したデータ;応答者のGMT SFC及び最小、最大SFC;バックグランドを引いた、106PBMCあたりの値。
【0185】
【表11】
【0186】
本発明は、以下の番号付き項によって、さらに記述されうる。
【0187】
1.1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含む、HIV−1に対する免疫原性応答を得る方法。
【0188】
2.(a)1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む第1の免疫原に対する免疫組成物と、(b)哺乳動物の病原体の第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有及び発現するMVAを含む1又は複数のHIV−1免疫原に対する免疫組成物とを哺乳動物に投与するステップであって、(a)及び(b)を順次に投与するステップを含む、HIV−1に対する免疫原性応答を得る方法。
【0189】
3.(a)及び(b)が順次に投与され、それにより、最初に(a)の投与があり、それに続いて(b)の投与が行われる、第2項に記載の方法。
【0190】
4.(a)及び(b)が順次に投与され、それにより、最初に(b)の投与があり、それに続いて(a)の投与が行われる、第2項に記載の方法。
【0191】
5.第1の免疫原と第2の免疫原が同じ免疫原である、第2〜4項のいずれかに記載の方法。
【0192】
6.初回刺激追加免疫レジメンが使用される、第2〜5項のいずれかに記載の方法。
【0193】
7.哺乳動物がヒトである、第1〜6項のいずれかに記載の方法。
【0194】
8.HIV−1免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質、又はこれらの断片からなる群から選択される、第1〜7項のいずれかに記載の方法。
【0195】
9.HIV−1免疫原がTBC−M4 HIV遺伝子配列インサートによってコードされている、第1〜8項のいずれかに記載の方法。
【0196】
これまで本発明の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、上記の項により規定される本発明は、上記説明に示した特定の細部に限定されるものではなく、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、それらの多くの明らかな変更が可能であることを理解するべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV−1に対する免疫原性応答を誘発する方法であって、1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含み、前記HIV−1免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質又はそれらの断片からなる群から選択される方法。
【請求項2】
HIV−1免疫原がHIV−1サブタイプC免疫原である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HIV−1免疫原が完全長envを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
完全長envが、初期転写終結シグナルをコードする内部モチーフにサイレント変異を導入するように改変されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
HIV−1免疫原が完全長gagを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
HIV−1免疫原がtatとrevの融合遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HIV−1免疫原がpol遺伝子の改変された逆転写酵素(RT)部分を含み、前記改変が逆転写酵素活性を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HIV−1免疫原がnef−RT融合遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HIV−1免疫原が、完全長env、完全長gag、tatとrevの融合遺伝子、pol遺伝子の改変された逆転写酵素(RT)部分を含み、前記改変が、逆転写酵素活性及びnef−RT融合遺伝子を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
HIV−1に対する免疫原性応答を誘発する方法であって、1又は複数のHIV−1免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有し、発現させるMVAを含む、1又は複数の免疫原に対する免疫組成物を哺乳動物に投与するステップを含み、前記HIV−1免疫原が、env、gag、nef、逆転写酵素(RT)、tat及びrev遺伝子によってコードされているHIVタンパク質又はそれらの断片からなる群から選択される方法。
【請求項2】
HIV−1免疫原がHIV−1サブタイプC免疫原である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HIV−1免疫原が完全長envを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
完全長envが、初期転写終結シグナルをコードする内部モチーフにサイレント変異を導入するように改変されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
HIV−1免疫原が完全長gagを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
HIV−1免疫原がtatとrevの融合遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HIV−1免疫原がpol遺伝子の改変された逆転写酵素(RT)部分を含み、前記改変が逆転写酵素活性を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HIV−1免疫原がnef−RT融合遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HIV−1免疫原が、完全長env、完全長gag、tatとrevの融合遺伝子、pol遺伝子の改変された逆転写酵素(RT)部分を含み、前記改変が、逆転写酵素活性及びnef−RT融合遺伝子を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
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【図3I】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
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【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−522761(P2010−522761A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501178(P2010−501178)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058206
【国際公開番号】WO2008/118936
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(502150764)インターナショナル エイズ バクシーン イニシアティブ (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058206
【国際公開番号】WO2008/118936
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(502150764)インターナショナル エイズ バクシーン イニシアティブ (3)
【Fターム(参考)】
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