説明

改良されたイオントリガ可能なカチオン系ポリマー、その製造方法及びそれを用いる物品

本発明は、イオントリガ可能な水分散性のカチオン系ポリマーに向けられたものである。本発明はまた、イオントリガ可能な水分散性のカチオン系ポリマーの製造方法と、それらのバインダ組成物としての適用性に向けられている。本発明はさらに、イオントリガ可能な水分散性のバインダ組成物を含む繊維含有布及びウェブと、湿潤拭取り材のような水分散性のパーソナルケア製品におけるそれらの適用性に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン感応性又はトリガ可能、水分散可能又は水溶性のカチオン系ポリマー及びポリマー配合物に関する。本発明はまた、イオン感応性又はトリガ可能、水分散性又は水溶性のカチオン系ポリマー及びポリマー配合物の製造方法と、それらの使い捨て物品用のバインダ組成物としての適用性に関する。本発明はさらに、カチオン系ポリマー又はポリマー配合物を含むイオン感応性又はトリガ可能、水分散可能なバインダ組成物からなる、湿潤拭取り材のような使い捨て物品に向けられている。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、おむつ、湿潤拭取り材、失禁用衣類、及び女性用ケア製品のような使い捨て物品を提供する産業では、廃棄性の問題に悩まされてきた。この問題に対処する多くの進展があったが、その弱点の1つは、水にすぐに溶けるか又は分解するが依然として十分な使用時の強度をもつ経済的な凝集性の繊維性ウェブを生産できなかったことである。例えば、英国特許公開第2,241,373号、及び米国特許第4,186,233号を参照されたい。このような製品がなければ、ユーザが製品をトイレに流すことにより製品を廃棄できるようになる可能性は、なくならないとしても大きく減少される。さらに、十分に生分解可能又は光分解可能である製品構成材の大部分が、プラスチックの中に包まれるか又はこのようなプラスチックによって互いに結合され、仮に劣化するとしても劣化が長期にわたるので、製品が廃棄物埋立地において分解される可能性は非常に制限される。したがって、プラスチックが水の存在下で分解される場合には、プラスチック包囲体又は結合が破壊されるために、その内部構成材が劣化することになる。
【0003】
おむつ、女性用ケア製品、及び成人失禁ケア製品のような使い捨て製品は、トイレに流すことによって廃棄されるように形成することができる。通常、こうした製品は身体側ライナを備えており、この身体側ライナは、尿又は月経血のような流体を迅速に通して、該流体が製品の吸収体コアによって吸収されるようにしなければならない。典型的には、身体側ライナを、望ましくは柔軟性及び可撓性のような多くの特性を備える凝集性の繊維性ウェブとすることができる。身体側ライナ材料の繊維性ウェブは、典型的には、複数の繊維を全体として不規則に湿式又は乾式(空気)堆積させ、それらを互いに接合し、バインダ組成物を用いて凝集性ウェブを形成することによって形成することができる。過去のバインダ組成物は、この機能を良好に果たしていた。しかしながら、これらの組成物からなる繊維性ウェブは、分散しない傾向があり、典型的な家庭の公衆衛生システムに問題を生じさせる。
【0004】
過去のバインダ組成物より大きい分散性があり、多くの環境責任を担う現在のバインダ組成物が開発されている。バインダ組成物の類の1つは、水中での逆溶解性をもつポリマー材料を含む。これらのバインダ組成物は、温水には溶けないが、トイレの中で見られるような冷水には溶ける。多くのポリマーが、水性媒体中で曇り点又は逆溶解特性を示すことが良く知られている。これらのポリマーは、(1)蒸発遅延剤として(日本国特許第6207162号)、(2)対応する温度変化に関連する鋭い色変化による温度指示剤として有用な温度感応性組成物として(日本国特許第6192527号)、(3)特定の温度において不透明であり、その特定の温度以下に冷却されると透明になる熱感応性材料として(日本国特許第51003248号、及び日本国特許第81035703号)、(4)良好な吸収特性を備え取り外しが簡単な創傷被覆材として(日本国特許第6233809号)及び(5)水に流すことができるパーソナルケア製品の材料として(1996年4月23日にRichard S.Yeoに発行され、キンバリー・クラーク社に譲渡された米国特許第5,509,913号)を含む、種々の用途についての幾つかの刊行物に記載されている。
【0005】
対象となる最近の他のバインダは、イオン感応性のバインダの類を含む。日本国東京のライオン社に譲渡された幾つかの米国及び欧州特許は、アクリル酸とアルキル又はアリールアクリレートからなるイオン感応性ポリマーを開示している。米国特許第5,312,883号、第5,317,063号、及び第5,384,189号並びに欧州特許第608460A1号を参照されたく、これらの開示を引用によりここに組み入れる。米国特許第5,312,883号においては、水に流すことができる不織ウェブに適したバインダとしてターポリマーが開示されている。部分的に中性化されたアクリル酸、ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる開示されたアクリル酸ベースのターポリマーは、世界の一部の地域においては水に流すことができる不織ウェブに用いるのに適したバインダである。しかしながら、部分的に中性化されたターポリマーには少量のナトリウムアクリレートが存在しているので、これらのバインダは、約15ppmより多いCa2+及び/又はMg2+を含む水の中では分散できない。約15ppmより多いCa2+及び/又はMg2+イオンを含む水の中に入れられたとき、上述のバインダを用いる不織ウェブは、30g/インチより大きい引張強度を維持するが、これは、ウェブの「分散性」に悪影響を及ぼす。この提案された機構の欠点は、分子内又は分子外のいずれかにおいて、各カルシウムイオンが2つのカルボキシル基と結合することである。分子内会合によって、ポリマー鎖がコイル状になり、これが最終的にポリマーの沈殿をもたらすことになる。分子内会合は架橋を生じさせる。分子内又は分子外会合が起こるかどうかに関係なしに、ターポリマーは、約15ppmより多いCa2+及び/又はMg2+を含む水に溶けない。カルシウムイオンとターポリマーのカルボキシル基との間の強い相互作用のために、この会合は不可逆的であるので、錯体の解離は極めて起こり難い。したがって、高いCa2+及び/又はMg2+濃度の溶液に曝された上述のポリマーは、たとえカルシウム濃度が減少した場合であっても水に分散することはない。そのため、米国中のほとんどの地域が、15ppmより多いCa2+及び/又はMg2+を含む硬水であるので、水に流すことができるバインダ材料としてのポリマーの適用が制限される。
【0006】
その開示内容を引用によりここに組み入れるキンバリー・クラーク社に譲渡された米国特許第6,423,804号B1において、上で参照したライオン社への特許のアクリル酸ターポリマーの修飾が開示されている。特に、米国特許第6,423,804号B1は、修飾されていないライオン社のポリマーと比べると、例えば、Ca2+及び/又はMg2+が200ppmまでといった比較的硬い水中での改善された分散性を有する、スルホン酸塩アニオン修飾アクリル酸ターポリマーを開示している。湿ったシートは、可撓性があり柔軟である。しかしながら、上で参照した特許のライオン社のイオン感応性ポリマー、及びスルホン酸塩アニオンで修飾されたアクリル酸ターポリマーは、湿潤拭取り材のようなパーソナルケア製品のバインダとして用いられる場合には、一般的に、最初のシート湿潤性が減少され、乾燥シートの剛性が増加し、シート粘着性が増加し、バインダの噴射可能性が減少し及び製品コストが比較的高くなる。
【0007】
分散性のパーソナルケア製品の別の手法は、日本国東京の花王社による米国特許第5,281,306号に開示されている。この特許は、水によって崩壊することができる洗浄シート、すなわちカルボキシル基を有する水溶性のバインダを用いて処理された水分散性の繊維からなる湿潤拭取り材を開示している。洗浄シートは、5%−95%の水混和性の有機溶媒と、95%−5%の水とを含む洗浄剤で処理される。好ましい有機溶媒は、プロピレングリコールである。洗浄シートは、湿潤強度を維持し、有機溶媒ベースの洗浄剤中では分散しないが、水中では分散する。シートは、該シートの使用時の湿潤強度を保証するだけのレベルの有機溶媒を含まなければならない。溶媒なしでは、シートの使用時の湿潤強度は小さく、湿潤拭取り材として有効なものとはならない。しかしながら、こうした大量の有機溶剤の使用の結果として、製品が使用された後のべたついた感触がもたらされ、これらの有機溶剤は、大量だと皮膚に不快感を与えることがある。
【0008】
多くの特許が、水分散可能な材料又は水に流すことができる材料のための種々のイオン及び温度感応性組成物を開示しているが、柔軟性、可撓性、三次元性、及び弾力性、並びに体温の身体流体(便を含む)の存在下での吸上げ及び構造的一体性、及びトイレに流した後の真の繊維分散性をもち、それにより下水管の木の根状の部分又は屈曲部分において製品が交絡しない分散可能な製品に対する必要性が存在している。さらに、当該技術分野においては、軟水及び硬水の地域を含む世界の全ての地域において水分散可能な水に流すことができる製品に対する必要性も存在している。さらに、それらが用いられる製品の湿潤性を低下させず、比較的簡単に噴射可能で一様に適用され製品の中に染み込む水分散可能なバインダに対する必要性も存在している。最終的には、貯蔵中は安定しており、使用の際には所望のレベルの湿潤強度を保ち、有機溶媒を比較的含まないか又は実質的に含まない湿潤組成物で濡らされる水分散可能な水に流すことができる湿潤拭取り材に対する必要性が存在している。こうした製品は、過去の製品では成し得なかったことであるが、製品の安全性及び環境に対する配慮に対し妥協することなく、適正な費用で必要とされる。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、トリガ可能なカチオン系ポリマー及びポリマー配合物に向けられており、これらは文献に記載されている現在入手可能なイオン感応性のポリマーその他のポリマーに関連した上述の問題に対処するように開発されたものである。本発明のバインダは、乾燥状態での強度を与えるが、より重要なのは、イオントリガ可能であることによって湿潤状態での所望の強度レベルを維持する一助となることである。湿潤溶液中の制御された濃度の塩によってバインダが不溶化され、該バインダがウェブの接着剤として機能できるようになる。湿潤拭取り材が排水流中に廃棄されるときには、塩濃度が希釈され、バインダが溶解可能となり、強度が臨界レベルより下になる。本発明のイオントリガ可能なポリマー配合物は、「トリガ特性」を有し、それによりポリマーは、約0.3重量%を上回る濃度の一価及び/又は二価塩溶液のような特定のタイプ及び濃度の不溶化剤を含有する湿潤配合物に溶けないが、200ppm(100万分の1)までのカルシウム及びマグネシウムイオンを含有する硬水を含む水で希釈されたときには溶ける。その結果、ウェブは、小さい塊に分解されて、最終的には分散する。
【0010】
カルシウムイオンによるイオン架橋により硬水中での分散性を失う幾つかのイオン感応性ポリマー配合物とは異なり、本発明のトリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、数百ppmの濃度のカルシウム及び/又はマグネシウムイオンに対して敏感ではなく、pHの変動に対して敏感ではない。その結果、本発明のポリマー配合物を含有する流すことができる製品は、硬水又は軟水中での分散性を維持する。
【0011】
バインダ組成物は、唯一の又は主要なトリガ剤として塩化ナトリウムを用いたときに最適なレベルの湿潤強度を与え、高濃度の二価金属イオンの使用を必要としない。また、トリガ特性を与えるのに必要とされる塩化ナトリウムのレベルは、特定条件下で極めて低い

。トリガ活性をもたらすのに必要とされるこの低レベルの一価塩により、これらのバインダは、外部的トリガ剤を用いることなく、尿、月経血その他の生物学的流体の存在下での十分な強度を維持することができる。したがって、それらは、予め湿潤された製品よりも、パーソナルケア用途に非常に適している。また、本発明のバインダは、それらの溶解度特性により、乾燥ティッシュ製品のために添加される塩が存在しない状態での湿潤強度及び/又は一時的な湿潤強度を与えるのに適している。さらに、改善されたバインダの特性は、毒性、反応性の不適合又はバインダ性能への悪影響のために望ましくない場合がある非イオン系親水性コモノマーを使用せずに与えられる。
【0012】
本発明のポリマー配合物は、身体側ライナ、流体分配材料、流体取り込み材料(サージ)又は種々のパーソナルケア製品のカバーストックのような用途のための空気堆積及び湿式堆積不織布のバインダ及び構造成分として有用である。本発明のポリマー配合物は、流すことができるパーソナルケア製品、特に皮膚の洗浄又は手当て、化粧落とし、マニキュア落とし、医療的ケアのような個人使用のための湿潤拭取り材、並びに洗浄剤、消毒剤などを含有する拭取り材を含むハード面洗浄、自動車の手入れに用いるための拭取り材のバインダ材料として特に有用である。水に流すことができる製品は、貯蔵中及び使用中の一体性又は湿潤強度を維持し、トイレの中に捨てられた後に、塩又はイオン濃度が臨界レベルより低く下がると、ばらばらになるか又は分散する。処理に適した基体は、クレープ加工された又はクレープ加工されていないティッシュのようなティッシュ、コフォーム製品、水圧交絡ウェブ、空気堆積マット、フラフパルプ、不織ウェブ、及びそれらの複合材を含む。本発明に用いられるクレープ加工されていないティッシュ及び成形された三次元ティッシュウェブの製造方法は、本出願人が所有する、1997年8月15日に出願されたF.−J. Chen他の米国特許出願第08/912,906号の「湿潤性弾性ウェブ及びこれを用いて製造された使い捨て可能な物品」、1995年7月4日Chiu他に発行された米国特許第5,429,686号、1995年3月21日S.J.Sudall及びS.A.Engelに発行された米国特許第5,399,412号、1997年9月30日Wendt他に発行された米国特許第5,672,248号、及び1997年3月4日Farrington他に発行された米国特許第5,607,551号に見ることができ、これらの全ては引用によりその全体がここに組み入れられる。上記の特許の成形されたティッシュ構造は、湿潤拭取り材に良好な洗浄性をもたらすのに特に有用となり得る。良好な洗浄性はまた、テキスチャー化された布にエンボス加工すること、成形すること、濡らすこと、及び通気乾燥することなどにより、他の基体にも同様の風合いを与えることによって促進することができる。本発明のカチオン系ポリマー及びポリマー配合物は、該ポリマー及びポリマー配合物が繊維に対して大量であるので、繊維性材料のバインダとして特に有用である。
【0013】
実質的に乾いた状態の繊維その他の随意的材料を含有する空気流を計量することによって、通常は水平方向に移動するワイヤ形成スクリーンの上に空気堆積材料を形成することができる。繊維及び熱可塑性材料の空気堆積混合物に適したシステム及び装置は、例えば、1979年6月12日に発行され、米国特許第31,775号として1984年12月25日に再発行された(Persson)米国特許第4,157,724号、1981年7月14日に発行された(Persson)米国特許第4,278,113号、1981年4月28日に発行された(Dayの)米国特許第4,264,289号、1982年10月5日に発行された(Jacobsen他の)米国特許第4,352,649号、1982年10月12日に発行された(Hosler他の)米国特許第4,353,687号、1985年1月22日に発行された(Kroyer他の)米国特許第4,494,278号、1986年12月9日に発行された(Johnsonの)米国特許第4,627,806号、1987年3月17日に発行された(Nistri他の)米国特許第4,650,409号、1988年2月16日に発行された(Farleyの)米国特許第4,724,980号、及び1987年2月3日に発行された(Laursen他の)米国特許第4,640,810号に開示されており、これらの開示の全てを引用によりここに組み入れる。
【0014】
本発明はまた、バインダ組成物として上述の独特なポリマー配合物を用いて、典型的な硬水又は軟水中で見られるものより実質的に高い特定の濃度の一価イオン及び/又は二価イオンのような第1イオン組成を有する流体中で安定な、カバーストック(ライナ)、取り込み(サージ)材料及び湿潤拭取り材を含む、水分散可能な不織材を作る方法を開示する。結果として得られる不織材は、米国及び世界中のトイレに見られる水の硬度に関係なくトリガすることができるように調整されたイオン感応性により、水に流すことができ、かつ水分散可能となる。
本発明はさらに、湿潤拭取り材のための適切な湿潤配合物を開示する。本発明のポリマー組成物を用いる湿潤拭取り材は、貯蔵の間安定しており、使用中に所望のレベルの湿潤強度を維持し、有機溶媒を比較的含まないか又はほぼ含まない湿潤配合物か又は洗浄剤で湿潤される。ここで用いられる「ほぼ含まない」という用語は、ほんの僅かな又は取るに足らない量を含有することを意味する。
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、及び利点は、開示された実施形態の以下の詳細な説明及び特許請求範囲の請求項を読むことにより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、トリガ可能なカチオン系ポリマー又はポリマー組成物を用いて実施される。トリガ可能なカチオン系ポリマー組成物は、イオン感応性カチオン系ポリマー組成物である。水に流すことができるか又は水分散可能なパーソナルケア製品に用いるのに適した有効なイオン感応性又はトリガ可能なカチオン系ポリマー或いはカチオン系ポリマー配合物とするには、配合物は望ましくは、(1)機能的なもの、すなわち制御された条件下で湿潤強度を維持し、世界中のトイレ及び流し台に見られるような軟水又は硬水中で適度な時間にわたって溶けるか又は分散するもの、(2)安全な(毒性がない)もの、(3)比較的経済的なものにすべきである。上記の因子に加えて、イオン感応性又はトリガ可能な配合物は、湿潤拭取り材のような不織基体のためのバインダ組成物として用いられたときには、望ましくは(4)商業的基準で処理可能なもの、すなわち噴射すること(それにより高剪断において比較的低い粘度をもつバインダ組成物が要求される)などによって大規模基準で比較的迅速に適用され得るもの、(5)シート又は基体の許容可能なレベルの湿潤性をもたらすもの、(6)減少されたレベルのシート剛性を与えるもの、及び(7)粘着性が減少されたものとすべきである。本発明の湿潤拭取り材を処理する湿潤組成物は、幾つかの上述の利点をもたらすことができ、それに加えて、(8)皮膚の刺激の減少又は他の利点のようなスキンケアの改善、(9)触覚特性の改善、及び(10)皮膚の上での摩擦と潤滑性との間の使用中のバランス(肌滑り)をもたらすことによる良好な洗浄の促進、の1つ又はそれ以上をもたらすことができる。本発明のイオン感応性又はトリガ可能なカチオン系ポリマー及びポリマー配合物並びにそれで作られた物品、特に後述する特定の湿潤組成物からなる湿潤拭取り材は、多くの又は全ての上記の基準を満たすことができる。もちろん、本発明の好ましい実施形態の全ての利点が、本発明の範囲内に含まれるように適合される必要はない。
【0016】
(イオントリガ可能なカチオン系ポリマー組成物)
本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマーは、ビニル官能性カチオン系モノマーと、4までの大きさの炭素長のアルキル側鎖を有する1つ又はそれ以上の疎水性ビニルモノマーとの重合生成物である。好ましい実施形態においては、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマーは、ビニル官能性カチオン系モノマーと、炭素数4までのアルキル側鎖が不規則に組み込まれた1つ又はそれ以上の疎水性ビニルモノマーとの重合生成物である。さらに、炭素数4又はそれより長い直鎖又は分岐アルキル基、アルキルヒドロキシ基、ポリオキシアルキレン、又は他の官能基を有する少量の別のビニルモノマーを使用することができる。イオントリガ可能なカチオン系ポリマーは、ティッシュ、空気堆積パルプその他の不織ウェブのための接着剤として機能し、塩溶液、特に塩化ナトリウム中の十分な使用時強度(典型的には>300g/インチ)を与える。不織ウェブはまた、水道水(金属イオンが200ppmまでの硬水を含む)中で分散可能であり、典型的にはそれらの湿潤強度のほとんど(<30−75g/インチ)を24時間又はそれより短い時間で失う。
【0017】
本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマーの一般構造が以下に示されており、
【化1】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約60から約99モルパーセント、及びz=0から約30モルパーセントであり、Qは、C1−C4アルキルアンモニウム、第4級C1−C4アルキルアンモニウム及びベンジルアンモニウムから選択され、Zは、−O−、−COO−、−OOC−、−CONH−、及び−NHCO−から選択され、R1、R2、R3は、水素及びメチルから個別に選択され、R4は、メチル及びエチルから個別に選択され、R5は、水素、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレンから選択される。本発明のビニル官能性カチオン系モノマーは、望ましくは、この限りではないが、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム(ADAMQUAT)、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム(MADQUAT)、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチル塩化アンモニウム、N,N−ジアリルジメチル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウムを含む。重合し、重合後反応を通じて第4級化することができるビニルピリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート、及びジメチルアミノエチルメタクリレートのような前駆体モノマーも可能である。臭化物、ヨウ化物、又は硫酸メチルといった異なる対イオンを与えるモノマー又は第4級化試薬も有用である。疎水性ビニルモノマーと共重合することができる他のビニル官能性カチオン系モノマーも、本発明においては有用である。
【0018】
本発明のイオン感応性カチオン系ポリマーに用いるのに望ましい疎水性モノマーは、この限りではないが、カチオン系モノマーと共重合することができる分岐又は直鎖C1−C18アルキルビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、アクリレート、その他のモノマーを含む。ここで用いられるモノマーメチルアクリレートは、疎水性モノマーとなると考えられる。メチルアクリレートは、20℃の水中で6g/100mlの溶解度を有する。
【0019】
好ましい実施形態においては、バインダは、以下の一般構造式をもつカチオン系アクリレート又はメタクリレートと、1つ又はそれ以上のアルキルアクリレート又はメタクリレートとの重合生成物であり、
【化2】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約60から約99モルパーセント、及びz=0から約30モルパーセントであり、R4は、メチル及びエチルから選択され、R5は、水素、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレンから選択される。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態においては、イオントリガ可能なポリマーは、以下の構造式を有し、
【化3】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約85から約99モルパーセント、及びR4は、C1−C4アルキルである。最も望ましい実施形態においては、R4がメチルであり、x=3から約6モルパーセントであり、y=約94から約97モルパーセントである。
【0021】
本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマーは、ポリマーの最終用途に応じて変化する平均分子量をもつことができる。本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマーは、約10,000から約5,000,000グラム毎モルの範囲の重量平均分子量を有する。より具体的には、本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマーは、約25,000から約2,000,000グラム毎モル又はそれ以上、特定的には約200,000から約1,000,000グラム毎モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0022】
本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマーは、種々の重合方法、望ましくは溶液重合方法に従って調製されてもよい。重合方法に適した溶媒は、この限りではないが、メタノール、エタノール及びプロパノールのような低級アルコール、水と上記の1つ又はそれ以上の低級アルコールとの混合溶媒、及び水とアセトン又はメチルエチルケトンのような1つ又はそれ以上の低級ケトンの混合溶媒を含む。
【0023】
本発明の重合方法においては、フリーラジカル重合開始剤のいずれかを用いても良い。特定の開始剤の選択は、この限りではないが、重合温度、溶媒、及び使用するモノマーを含む因子の数に依存しうる。本発明に用いるのに適した重合開始剤は、この限りではないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過酸化水素水を含む。重合開始剤の量は、望ましくは、存在するモノマーの総重量に基づき約0.01から5重量パーセントまでの範囲とされ得る。
重合温度は、使用される重合溶媒、モノマー及び開始剤に応じて変えてもよいが、一般に、約20℃から約90℃までの範囲である。重合時間は通常約2から約8時間までの範囲に及ぶ。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、上述のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、水に流すことができ、及び/又は水に流すことはできない製品のバインダ材料として用いられる。米国内で水に流すことができる製品のバインダ材料として有効なものとするために、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、乾燥状態又は比較的高濃度の一価及び/又は二価イオンの存在下では安定なままとなってそれらの一体性を維持するが、約200ppm又はそれ以上の二価イオン、特にカルシウム及びマグネシウムを含有する水に溶けるようにされる。望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、一価及び/又は二価イオンを含む1つ又はそれ以上の無機塩及び/又は有機塩を少なくとも約0.3重量パーセント含有する塩溶液に溶けない。より望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、一価及び/又は二価イオンを含む1つ又はそれ以上の無機塩及び/又は有機塩を約0.3重量パーセントから約10重量パーセントまで含有する塩溶液に溶けない。さらに望ましくは、本発明のイオントリガ可能ポリマー配合物は、一価及び/又は二価イオンを含む1つ又はそれ以上の無機塩及び/又は有機塩を約0.5重量パーセントから約5重量パーセントまで含有する塩溶液に溶けない。特に望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、一価及び/又は二価イオンを含む1つ又はそれ以上の無機塩及び/又は有機塩を約1.0重量パーセントから約4.0重量パーセントまで含有する塩溶液に溶けない。適当な一価イオンは、この限りではないが、Na+イオン、K+イオン、Li+イオン、NH4+イオン、低分子量第4級アンモニウム化合物(例えば側基のいずれかに5つより少ない炭素を有するもの)、並びにこれらの組合せを含む。適当な多価イオンは、この限りではないがZn2+及びCa2+及びMg2+を含む。一価及び二価イオンは、この限りではないが、NaCl、NaBr、KCl、NH4Cl、Na2SO4、ZnCl2、CaCl2、MgCl2、MgSO4、NaNO3、NaSO4CH3、及びこれらの組み合わせを含む。典型的には、コスト、純度、低毒性及び可用性から、ハロゲン化アルカリ金属が最も望ましい。特に望ましい塩はNaClである。
【0025】
米国化学協会によって行われた現在の研究によれば、米国にわたる水の硬度は大きく変動し、CaCO3の濃度は、軟水のゼロ付近から非常に硬い水の約500ppmCaCO3(Ca2+イオン約200ppm)までの範囲に及ぶ。米国(及び全世界)にわたるポリマー配合物の分散性を保証するために、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、望ましくは約50ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に溶ける。より望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、約100ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に溶ける。さらに望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、約150ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に溶ける。さらにもっと望ましくは、本発明のイオントリガ可能カチオン系ポリマー配合物は、約200ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に溶ける。
【0026】
(コバインダポリマー)
上述のように、本発明のカチオン系ポリマー配合物は、単一のトリガ可能なカチオン系ポリマーか、或いは、少なくとも1つのポリマーはトリガ可能なポリマーである2つ又はそれ以上の異なるポリマーの組合せから形成される。第2のポリマーを、コバインダポリマーとしても良い。コバインダポリマーは、トリガ可能なカチオン系ポリマーと組み合わされたときに、コバインダポリマーが望ましくはトリガ可能なカチオン系ポリマー中で大きく分散する、すなわちトリガ可能なカチオン系ポリマーが望ましくは連続相となり、コバインダポリマーが望ましくは不連続相となるようなタイプ及び量である。コバインダポリマーはまた、幾つかの付加的な基準を満たせることが望ましい。例えば、コバインダポリマーは、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーのガラス転移温度より低いガラス転移温度、すなわちTgをもつことができる。さらに又は或いは、コバインダポリマーは、水に溶けないものとすることができる、すなわちイオントリガ可能なカチオン系ポリマーの剪断粘度を減らすことができる。コバインダは、トリガ可能なポリマーの固体質量に対して約45%又はそれ以下、特定的には約30%又はそれ以下、より特定的には約20%又はそれ以下、もっと特定的には約15%又はそれ以下、最も特定的には約10%又はそれ以下のレベルで存在することができ、例示的な範囲は、約1%から約45%までか又は約25%から約35%まで、並びに約1%から約20%までか又は約5%から約25%までである。水に溶けない結合部又はフィルムを形成する可能性をもつコバインダについては、存在するコバインダの量は、コバインダが、十分に架橋された、すなわち不溶性の結合を形成して、処理された基体の分散性を脅かすことができない不連続相のまま残るのに十分低いものとすべきである。
【0027】
必ずしもそうである必要はないが、コバインダポリマーは、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーと組み合わされたときに、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーの剪断粘度を、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーとコバインダポリマーとが組み合わされたものが噴射可能となる程度まで減少させることが望ましい。噴射可能とは、ポリマーを噴射することによって不織繊維性基体に適用可能であることを意味し、基体にわたるポリマーの分布と基体の中へのポリマーの浸透は、ポリマー配合物が基体に均一に適用されるようなものにされる。
【0028】
幾つかの実施形態においては、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーとコバインダポリマーとの組合せは、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーのみを有する物品に比べて、それらを適用した物品の剛性を減らすことができる。
本発明のコバインダポリマーは、ポリマーの最終的な使用に応じて変化する平均分子量をもち得る。コバインダポリマーは、約500,000から約200,000,000グラム毎モルまでの範囲の重量平均分子量をもつ。より望ましくは、コバインダポリマーは、約500,000から約100,000,000グラム毎モルまでの範囲の重量平均分子量をもつ。
【0029】
コバインダポリマーは、エマルジョンラテックスの形態とすることができる。こうしたラテックスエマルジョンに用いられる界面活性剤システムは、イオントリガ可能なカチオン系ポリマーの分散性を実質的に妨害しないようなものであるべきである。したがって、弱いアニオン系、非イオン系又はカチオン系ラテックスは、本発明に有用なものとすることができる。一実施形態においては、本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物は、約55重量パーセントから約95重量パーセントまでのイオントリガ可能なカチオン系ポリマーと、約5重量パーセントから約45重量パーセントまでのポリ(エチレン−酢酸ビニル)を含む。より望ましくは、本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物は、約75重量パーセントのイオントリガ可能なカチオン系ポリマーと、約25重量パーセントのポリ(エチレン−酢酸ビニル)を含む。特に好ましい非架橋ポリ(エチレン−酢酸ビニル)は、ニュージャージー州ブリッジウォーター所在のNational Starch and Chemical Co.から入手可能なDur−O−Set(登録商標)RBである。
【0030】
ラテックスコバインダ又は架橋可能となり得るコバインダのいずれかが用いられるときには、ラテックスは、繊維性基体を互いに結合して物品の分散性に影響を及ぼす実質的に水に溶けない結合を形成することが防止されるべきである。したがって、ラテックスは、N−メチロール−アクリルアミド(NMA)のような架橋剤なしとするか、又は架橋剤のための触媒なしとするか、或いはこの両方とすることができる。或いは、架橋剤か又は触媒を妨害して、物品が通常の架橋温度まで加熱されても架橋が妨げられるように、抑制剤を添加しても良い。こうした抑制剤は、フリーラジカル・スカベンジャー、メチルヒドロキノン、t−ブチルカテコール、水酸化カリウムのようなpH制御剤等を含むことができる。N−メチロール−アクリルアミド(NMA)のような或るラテックス架橋剤においては、例えば、8か又はそれより高いpHのような上昇されたpHは、通常の架橋温度(例えば約130℃又はそれより高い温度)において架橋を妨害し得る。或いはまた、ラテックスコバインダを含む物品は、架橋が起こる温度範囲を下回る温度に維持して、架橋剤の存在が架橋を招かないようにするか、又は物品の分散性が脅かされない程度に架橋度を十分に低く維持することができる。或いはまた、架橋可能なラテックスの量を閾値レベルより低く保って、架橋を有するときであっても物品が分散可能なままであるようにすることができる。例えば、イオン感応性バインダ中に個別の粒子として分散された少量の架橋可能なラテックスは、十分に架橋されたときであっても分散することが可能である。後の実施形態においては、ラテックスの量は、イオン感応性バインダに対して約20重量パーセントを下回り、より特定的には約15重量パーセントを下回るものとすることができる。
【0031】
ラテックス化合物は、架橋可能であるかどうかにかかわらず、コバインダである必要はない。有用な非架橋ラテックスエマルジョンがその中に分散された、好結果が得られるイオン感応性バインダフィルムのSEM顕微鏡写真は、ラテックスコバインダ粒子がイオン感応性バインダ内に個別の実体として残り、恐らくはフィラー材料としてある程度作用することを示している。随意的には添加された界面活性剤/分散剤からなるトリガ可能なバインダ中に分散された鉱物又は粒子フィラーを含む他の材料は、同様の役割を果たせると考えられる。例えば、1つの想定される実施形態においては、Presperse,Inc.社(ニュージャージー州ピスカタウェイ所在)の自由に流動するGanzpearl PS−8F粒子、約0.4ミクロンの粒子を含むスチレン/ジビニルベンゼンコポリマーを、トリガ可能なバインダ中に約2から10重量パーセントまでのレベルで分散させて、トリガ可能なバインダの機械的特性、触覚特性、及び光学特性を変えることができる。他のフィラー状の手法は、金属、ガラス、炭素、鉱物、石英、及び/又はアクリル性又はフェノール性のようなプラスチックの微粒子、ミクロスフェア、又はミクロビーズと、それらの内部にシールされた不活性ガス雰囲気をもつ中空の粒子を含むことができる。その例は、スエーデンのExpancel社からの加熱されると実質的に膨張するEXPANCELフェノール性ミクロスフェアか、又はペンシルバニア州のPQ社から入手可能なPM6545として知られているアクリル性ミクロスフェアを含む。トリガ可能なバインダ中に溶解されたCO2を含む発泡剤も、トリガ可能なバインダのマトリックス内の気泡として、有用な不連続性をもたらすことができ、トリガ可能なバインダ内の分散された気相をコバインダとして働くようにする。一般に、製品の水分散性に影響を及ぼすように繊維を結合する多くの共有結合を与える状態で与えられるものでなければ、バインダ、特に接着剤と混和しない適合可能な材料のいずれか、又はそれ自体の結合特性を、コバインダとして用いることができる。しかしながら、噴射粘度の減少といった付加的な利点も与えるこれらの材料は、特に好ましいものとなり得る。架橋剤を含有しないか又は減少された量の架橋剤を含有するラテックスのような接着剤コバインダは、上昇された温度での乾燥を含む広範囲の処理条件において良好な結果をもたらすのに特に有用となることが見出されている。
【0032】
コバインダポリマーは、バインダ混合物を適用した後に基体の湿潤性を向上させる界面活性化合物を含むことができる。トリガ可能なポリマー配合物で処理された乾燥した基体の湿潤性は、トリガ可能なポリマー配合物の疎水性部分が乾燥の間に気相に向かって選択的に配向され、湿潤組成物に界面活性剤が添加されない限り、後で湿潤組成物が適用されたときに濡れるのを困難にする疎水性表面を形成することになるので、或る実施形態においては問題となりうる。コバインダポリマー中の界面活性剤又は他の表面活性化成分は、トリガ可能なポリマー配合物で処理された乾燥した基体の湿潤性を向上させることができる。コバインダポリマー中の界面活性剤は、トリガ可能なポリマー配合物に対して大きな影響を及ぼさないものであるべきである。したがって、バインダは、界面活性剤を含む予め湿らされた拭取り材の良好な一体性及び触覚特性を維持するべきである。
一実施形態においては、有効なコバインダポリマーがイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物の一部に置き換わり、コバインダポリマーを含有せず、所与の引張強度を達成するのに十分なレベルのイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物を含むこと以外は同一である予め湿らされた拭取り材に対し、低い剛性、良好な触覚特性(例えば潤滑性又は滑らかさ)、又は減少したコストの少なくとも1つをもつ予め湿らされた拭取り材における所与の強度レベルを達成できるようにする。
【0033】
(他のコバインダポリマー)
VINNEK(登録商標)バインダシステムのようなWacker Polymer Systems社(ドイツBurghausen所在)の乾燥エマルジョン粉末(DEP)バインダを、本発明の或る実施形態において適用することができる。これらは、液体エマルジョンから形成された再分散可能な自由に流動するバインダ粉末である。分散剤からの小さいポリマー粒子は、粉末粒子の形態で水溶性の保護コロイドの保護マトリックスに与えられる。粉末粒子の表面は、鉱物結晶小板によるケーキングに対して保護される。その結果として、液状分散液中にあったポリマー粒子を、自由に流動する乾燥粉末の形状で入手可能となり、これは次いで、水の中に再び分散させるか又は膨潤させて、水分を加えることによって粘性のある粒子にすることができる。これらの粒子は、空気堆積工程の間にそれらを繊維と共に堆積し、次いで後で10%から30%までの水分を加えて粒子を膨潤させて繊維に付着させることによって、ハイロフト不織材に適用可能である。これは「チューインガム効果」と呼ぶことができ、ウェブの乾燥した粘性のない繊維が、湿らされるとチューインガムのように粘着性をもつようになることを意味する。極性のある表面その他の表面に対する良好な付着が得られる。これらのバインダは、乾燥状態での凝集を防ぐために乾燥され薬剤で処理されたラテックスエマルジョンから形成される自由流動粒子として入手可能である。これらは、空気堆積工程の間に空気中に随伴させて繊維に堆積させることもできるし、静電的手段、直接接触、重力送り装置、その他の手段によって基体に適用することもできる。これらはバインダとは別にして、バインダが乾燥する前か又は乾燥した後のいずれかで適用可能である。液体としてか又は蒸気としての水分との接触は、ラテックス粒子を再び水和させ、それらを膨潤させて繊維に付着させる。乾燥させること、及び高い温度(例えば160℃を上回る温度)まで加熱することによって、バインダ粒子が架橋されて耐水性になるが、低い温度(例えば110℃か又はそれ以下の温度)で乾燥させることによって、フィルムが形成され、予め湿らされる拭取り材の水分散性を著しく損ねない程度の繊維の結合が得られる。したがって、乾燥時間及び温度の制限といったコバインダポリマーのキュアリングを制御して、著しく架橋しない程度の結合をもたらすことによって、架橋剤の量を減らすことなく市販の製品を用いることができると考えられる。
【0034】
Dr.Klaus Kohlhammerによって、「New Airlaid Binders」、Nonwovens Report International、1999年9月、第342刊、p20−22、28−31において指摘されたように、乾燥エマルジョンバインダ粉末は、材料を既存の基体に適用することとは対照的に、ウェブの形成の間に不織又は空気堆積ウェブに簡単に組み入れることができるという利点を有し、コバインダポリマーの配置に対する制御の改善を可能にする。したがって、不織又は空気堆積ウェブは、既にその中に乾燥エマルジョンバインダが入っている状態で形成し、その後に、イオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物溶液が適用されたときに湿らすことができ、そのとき乾燥エマルジョンパウダーは、粘着性となって基体の結合に寄与する。或いは、乾燥エマルジョンパウダーは、基体がトリガ可能なバインダで処理され乾燥された後に、ろ過機構によって基体の中に捕捉されてもよく、そして湿潤組成物が適用されて、乾燥エマルジョンパウダーが粘着性となる。
別の実施形態においては、乾燥エマルジョンパウダーは、イオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物溶液がウェブに噴射される際のパウダーの適用か、又は乾燥エマルジョンパウダー粒子をイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物溶液中に添加し及び分散させ、その後に、噴射することによって、発泡適用方法によって、又は他の当該技術分野で知られた技術によって、混合物をウェブに適用することにより、トリガ可能なポリマー配合物溶液中に分散される。
【0035】
(バインダ配合物及びこれを含有する布)
本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物は、バインダとして用いても良い。本発明のトリガ可能なバインダ配合物は、どんな繊維性基体に適用しても良い。バインダは、水分散性の製品に用いるのに特に適している。適当な繊維性基体は、これに限定する意味ではないが、不織及び織布を含む。多くの実施形態、特にパーソナルケア製品においては、好ましい基体は不織布である。ここで用いられる「不織布」という用語は、マット状に不規則に配置された個々の繊維又はフィラメントの構造をもつ布のことをいう(紙を含む)。不織布は、この限りではないが、空気堆積工程、湿式堆積工程、水圧交絡工程、ステープル繊維のカーディング及びボンディング、並びに溶液紡糸を含む種々の工程から形成することができる。
トリガ可能なバインダ組成物は、公知の適用方法のいずれかによって繊維性基体に適用しても良い。バインダ材料を適用するのに適した工程は、この限りではないが、印刷すること、噴射すること、静電的に噴射すること、コーティングすること、浸水ニップ、計量プレスロール、含浸すること又はその他の技術を含む。バインダ組成物の量は、計量し、繊維性基体内に均一に分散させても良いし、繊維性基体内に不均一に分散させても良い。バインダ組成物は、繊維性基体全体に分散されても良いし、多数の小さい緊密に配置された領域に分散されても良い。殆どの実施形態においては、バインダ組成物の均一な分散が望ましい。
【0036】
繊維性基体への適用を容易にするために、トリガ可能なバインダは、水に又は、メタノール、エタノール、アセトンなどのような非水性溶媒に溶かしてもよく、水は好ましい溶媒である。溶媒に溶かされたバインダの量は、使用されるポリマー及び布の用途に応じて変えてもよい。望ましくは、バインダ溶液は、約50重量パーセントまでのバインダ組成物固形分を含有する。より望ましくは、バインダ溶液は、約10から30重量パーセントまでのバインダ組成物固形分、特に約15−25重量パーセントのバインダ組成物固形分を含有する。可塑剤、香料、着色剤、消泡剤、殺菌剤、防腐剤、表面活性剤、増粘剤、フィラー、乳白剤、粘着付与剤、粘着防止剤、及びこれに類する添加剤を、必要に応じてバインダ組成物の溶液に組み入れることができる。
【0037】
トリガ可能なバインダ組成物が基体に適用されると、基体は、通常の手段のいずれかによって乾燥される。乾燥されると、凝集性の繊維性基体は、処理されていない湿式堆積又は乾式堆積基体の引張強度と比べたときに、改善された引張強度を呈し、迅速に「ばらばらになる」すなわち、約200ppmまでの二価イオン濃度を有する軟水又は硬水に入れられ攪拌されたときに崩壊する能力を有する。例えば、繊維性基体の乾燥引張強度は、バインダを含んでいない未処理の基体の乾燥引張強度に比べて、少なくとも25パーセント上昇されうる。より特定的には、繊維性基体の乾燥引張強度は、バインダを含んでいない未処理の基体の乾燥引張強度に比べて、少なくとも100パーセント上昇されうる。さらに特定的には、繊維性基体の乾燥引張強度は、バインダを含んでいない未処理の基体の乾燥引張強度に比べて、少なくとも500パーセント上昇されうる。
【0038】
本発明の望ましい特徴は、結果として得られる繊維性基体に存在するバインダ組成物の量である「付加量」が、基体全体の重量のほんの僅かを占めることを表わす場合に、引張強度の改善がもたらされることである。「付加量」は、特定の用途に応じて変えることができるが、「付加量」の最適な量によって、使用の間に一体性をもち、なおかつ水に浸されたときに迅速に分散する繊維性基体が得られる。例えば、バインダ組成物は、典型的には、基体の総重量の約5から約65重量パーセントまでである。より特定的には、バインダ組成物は、基体の総重量の約7から約35重量パーセントまでとされても良い。さらに特定的には、バインダ組成物は、基体の総重量の約10から約20重量パーセントまでとされても良い。
【0039】
本発明の不織布は、良好な使用中の引張強度とイオントリガ性を有する。望ましくは、本発明の不織布は、耐摩耗性であり、上記で開示された特定の量及びタイプのイオンを含有する水性溶液中で大きな引張強度を保つ。この後者の特性により、本発明の不織布は、生理用ナプキン、おむつ、成人失禁用製品、並びに乾燥した及び予め湿らされた拭取り材(湿潤拭取り材)のような使い捨て製品に非常に適しており、これらは世界のどこかの地域で使用された後に水洗トイレに流すことができる。
【0040】
上記の布を形成する繊維は、天然繊維、合成繊維及びこれらの組合せを含む種々の材料から形成することができる。繊維の選択は、例えば、完成された布の意図されている最終用途と繊維コストに依存する。例えば、適切な繊維性基体は、この限りではないが、綿、亜麻、ジュート、ヘンプ、ウール、木材パルプ等のような天然繊維を含み得る。同様に、ビスコースレーヨン及び銅アンモニアレーヨンのような再生セルロース繊維、酢酸セルロースのような修飾されたセルロース繊維、又はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル系等のような合成繊維を、単独で又は互いに組み合わせて同様に用いても良い。また、必要であれば上記の繊維の1つ又はそれ以上のブレンドを用いても良い。木材パルプ繊維の中で、軟木及び硬木繊維を含む公知の製紙繊維のいずれかを用いても良い。繊維は、例えば化学的にパルプ化された又は機械的にパルプ化された、漂白された又は漂白されていない、バージンの又はリサイクルの、高収率又は低収率のもの等とされても良い。マーセル法で処理され化学的に硬化されるか又は架橋された繊維を用いても良い。
【0041】
合成セルロース繊維の種類は、全ての形式のレーヨンと、ビスコースか又はLyocellのような再生セルロース及び溶媒紡糸セルロースを含む化学的に修飾されたセルロースから誘導されたその他の繊維を含む。マーセル法で処理されたパルプ、化学的に硬化された又は架橋された繊維、或いはスルホン化された繊維のような化学的に処理された天然セルロース繊維を用いることができる。リサイクル繊維及びバージン繊維を用いることができる。微生物によって産生されたセルロースその他のセルロース誘導体を用いることができる。ここで用いられる「セルロース性」という用語は、主成分としてセルロースを有し、特に重量の少なくとも50%がセルロース又はセルロース誘導体からなる材料のいずれをも含むことを意味する。したがって、この用語は、典型的には木材パルプである綿、非木材セルロース性繊維、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、レーヨン、サーモメカニカル木材パルプ、化学的木材パルプ、デボンデッド化学木材パルプ、トウワタ、又はバクテリア・セルロースを含む。
【0042】
本発明のトリガ可能なバインダは、他の繊維又は粒子に適用しても良い。本発明のトリガ可能なバインダで処理してもよい他の繊維は、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンから作られた繊維のようなものである。本発明のトリガ可能なバインダは、ナトリウムポリアクリレート超吸収体粒子のような粒子に適用されても良い。超吸収体粒子は、パーソナルケア物品、特に不織布に用いられる繊維性基体の上に又は中に頻繁に組み入れられる。
繊維長は、本発明の布を製造するのに重要である。水に流すことができる製品のようなある実施形態においては、繊維長は、さらに重要である。繊維の最小長さは、繊維性基体を形成するために選択される方法に依存する。例えば、繊維性基体がカーディングによって形成される場合には、繊維長さは、均一性を保証するために普通は少なくとも約42mmとするべきである。
繊維性基体が空気堆積又は湿式堆積工程によって形成される場合には、繊維長さは、約0.2から6mmまでとされ得ることが望ましい。50mmより大きい長さを有する繊維は、本発明の範囲内に包含されるが、約15mmより大きい長さを有する相当量の繊維が水に流すことができる繊維に入れられるときには、繊維は水中で分散し分離するが、それらの長さは繊維の「ロープ」を形成する傾向があり、これは家庭のトイレに流すときに望ましくないことが突き止められている。したがって、これらの製品においては、繊維長は、トイレに流されたときに繊維が「ロープ」を形成する傾向をもたないように約15mmか又はそれ以下とされることが望ましい。本発明においては種々の長さの繊維が適用可能であるが、繊維は、水と接触したときに互いから簡単に分散するように約15mmより小さい長さのものであることが望ましい。繊維、特に合成繊維は、捲縮させることもできる。
【0043】
本発明の布は、単一の層又は多数の層から形成されても良い。多数の層の場合においては、層は、通常は並列関係すなわち表面対表面の関係で配置され、層の全体又は一部を隣接する層に結合させても良い。本発明の不織ウェブは、複数の別個の不織ウェブから形成されても良く、この別個の不織ウェブは、単一の又は多数の層から形成されても良い。これらの例においては、不織ウェブが多数の層を含む場合には、不織ウェブの厚さ全体にバインダを適用するか、又は個々の層の各々にバインダを別々に適用し、次いで他の層と並列関係で組み合わせて、完成された不織ウェブを形成してもよい。
【0044】
一実施形態においては、本発明の布基体は、生理用ナプキン、おむつ、成人失禁用製品、外科用被覆材、ティッシュ、湿潤拭取り材等のような洗浄及び体液吸収製品に組み入れてもよい。これらの製品は、吸収体繊維性材料の1つ又はそれ以上の層からなる吸収体コアを含むことができる。コアはまた、繊維性ティッシュ、ガーゼ、プラスチックネット等のような流体透過性要素の1つ又はそれ以上の層を含んでも良い。これらは通常、コアの構成材を互いに保持する被覆材料として有用である。さらに、コアは、コアの中及び製品の外表面上の流体の通過を防ぐ流体不透過性要素か又は障壁手段を備えてもよい。障壁手段も水分散性であることが望ましい。上述の水分散性バインダと実質的に同じ組成をもつポリマーフィルムは、この目的に特に適している。本発明によれば、ポリマー組成物は、吸収体コア、流体透過性要素、被覆材料、及び流体不透過性要素又は障壁手段の層を含む上述の製品構成材の各々を形成するのに有用である。
【0045】
本発明のトリガ可能なバインダ配合物は、空気堆積不織布の繊維を結合するのに特に有用である。これらの空気堆積材料は、種々の水分散性パーソナルケア製品の身体側ライナ、流体分散材料、サージ材料のような流体取り込み材料、吸収体ラップシート、及びカバーストックに有用である。空気堆積材料は、予め湿らされた拭取り材(湿潤拭取り材)として用いるのに特に有用である。空気堆積不織布の坪量は、約20から約200グラム毎平方メートル(「gsm」)までの範囲に及ぶことができ、約0.5−10デニール及び約6−15ミリメートルの長さをもつステープル繊維を有する。サージ、すなわち取り込み材料は、良好な弾力性と高い嵩高性を必要とし、そのため約6デニール又はそれ以上を有するステープル繊維が、これらの製品を形成するのに用いられる。サージすなわち取り込み材料に望ましい最終密度は、約0.025グラム毎立方センチメートル(「g/cc」)から約10g/ccまでの間である。流体分散材料は、低デニールの繊維を用いる約0.10から約0.20g/ccまでの所望の範囲内の高い密度をもってもよく、最も望ましい繊維は、約1.5より小さいデニールを有する。拭取り材は、通常は、約0.025g/ccから約0.2g/ccまでの繊維密度と、約20gsmから約150gsmまで、特に約30gsmから約90gsmまで、最も特定的には約60gsmから約65gsmまでの坪量とを有することができる。
【0046】
本発明の不織布は、生理用ナプキン、おむつ、外科用被覆材、ティッシュ等のような体液吸収製品に組み入れても良い。一実施形態においては、トリガ可能なバインダは、体液中の一価イオンの濃度が、溶解に必要とされるレベルを超える、すなわち1重量%より多いので、体液と接触したときに溶けないようなものにされる。不織布は、構造、柔軟性、を保ち、実際の使用を満足させる堅牢性を呈する。しかしながら、約200ppmまでか又はそれ以上のCa2+及びMg2+イオンのような二価イオンの濃度を有する水と接触されたときには、バインダが分散する。不織布構造は、その後簡単に壊れて、水の中で分散される。
【0047】
本発明の一実施形態においては、不織布の使用中の引張強度は、本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物からなるバインダ材料を有する不織布を形成し、その後に1つ又はそれ以上の一価及び/又は二価塩のいずれかを不織布に適用することによって改善される。塩は、この限りではないが、固体粉末を布の上に適用すること、塩溶液を布の上に噴射することを含む当業者には公知の方法のいずれかによって不織布に適用することができる。塩の量は、特定の用途に応じて変えることができる。しかしながら、布に適用される塩の量は、布の総重量に基づき塩固形分が典型的には約0.3重量パーセントから約10重量パーセントまでである。本発明の塩を含有する布は、この限りではないが、婦人用パッド、外科用被覆材、及びおむつを含む種々の布の用途に用いることができる。
当業者であれば、本発明のバインダ配合物及び繊維性基体は、この限りではないが、体液と接触するように設計されたパーソナルケア吸収製品を含む多種多様な製品の製造に有利に用いることができることをすぐに理解するであろう。こうした製品は、単一層の繊維性基体のみから構成されてもよいし、上述のような要素の組合せから構成されてもよい。本発明のバインダ配合物及び繊維性基体はパーソナルケア製品に特に適しているが、バインダ配合物及び繊維性基体は、多種多様な消費者製品に有利に用いることができる。
【0048】
当該技術分野で知られている他のバインダシステムとは異なり、本発明のイオントリガ可能なカチオン系ポリマー配合物は、温度を高める必要なしにバインダとして活性化することができる。乾燥させること、すなわち水の除去は、繊維性ウェブ中のバインダの良好な分散を達成するのに有用であるが、バインダは、バインダとして働くために架橋又は高い活性化エネルギーをもつ他の化学反応を必要としないので、上昇された温度自体は必要不可欠なものではない。むしろ、典型的には塩である溶解性の不溶化化合物との相互作用は、バインダを溶けなくする、すなわち「塩析」させるか又はポリマーのカチオンと塩との間の相互作用によって活性化させるのに十分なものである。したがって、必要であれば、乾燥ステップをなくすか、もしくは室温乾燥又は凍結乾燥のような低温の水除去工程に代えることができる。上昇された温度は、通常は乾燥を助けるが、乾燥は、架橋反応を起こすのに通常必要とされる温度を下回る温度で行うことができる。したがって、基体が曝されるか又は基体がおかれるピーク温度は、以下の温度、すなわち200℃、180℃、160℃、140℃、120℃、110℃、105℃、100℃、90℃、75℃、及び60℃のいずれかより低いものとすることができる。市販のラテックスエマルジョンのようなポリマーシステムも、160℃又はそれ以上の温度で反応するのに適した架橋剤を含有することができるが、そうでなければ予め湿らされた拭取り材の水分散性を妨害しうるポリマーの過剰な強度が発達するのを防ぐのに有用となる低いピーク温度を維持する。
【0049】
(湿潤拭取り材の湿潤組成物及びこれを含有する湿潤拭取り材)
本発明の特に関心ある実施形態の1つは、上述のトリガ可能なバインダ組成物及び繊維性材料からの予め湿らされた拭取り材、すなわち湿潤拭取り材の製造である。拭取り材においては、繊維性材料は、織布か又は不織布の形態とされてもよいが、不織布がより望ましい。不織布は、木材パルプ繊維のような比較的短い繊維から形成されることが望ましい。繊維の最小長さは、不織布を形成するために選択された方法に依存する。不織布が湿式又は乾式の方法によって形成される場合には、繊維長さは、約0.1ミリメートルから15ミリメートルまでであることが望ましい。本発明の不織布は、接着剤か又はバインダ材料によって互いに結合されていないときに比較的低い湿潤凝集強度を有することが望ましい。こうした不織布が、水道水及び下水中でその結合強度を失うバインダ組成物によって互いに結合されるときには、布は、流され下水管を通って移動することによってもたらされる攪拌により、すぐに分解する。
【0050】
完成された拭取り材は、望ましくは折り畳まれた状態で防湿包囲体の中に個々に包装するか、又は拭取り材に適用される湿潤組成物を収容する防水パッケージの中にどんな所望の数のシートをも保持する容器の中に包装することができる。完成された拭取り材はまた、別個のシートのロールとして防湿容器の中にパッケージされてもよく、拭取り材に適用される湿潤組成物が入っている、ロールのどんな所望の数のシートをも保持する容器の中に包装することができる。ロールは、芯無し、及び中空又は中実のいずれかとすることができる。中空の中心をもつすなわち固体の中心をもたないロールを含む芯無しロールを、SRP Industry.Inc.(カリフォルニア州サンジョーズ所在)及び島津製作所(日本)のものと、Gietmanの1987年5月26日付けの米国特許第4,667,890号に開示されている装置を含む公知の芯無しロール・ワインダによって製造することができる。固体巻き芯無しロールは、所与の体積当りにより多くの製品を与えることができ、多種多様なディスペンサに適用可能である。
【0051】
乾燥した布の重量に対して、拭取り材は、望ましくは約10パーセントから約400パーセントまでの湿潤組成物、より望ましくは約100パーセントから約300パーセントまでの湿潤組成物、もっと望ましくは約180パーセントから約240パーセントまでの湿潤組成物を含有する。拭取り材は、入庫、輸送、小売陳列、及び消費者による保管の期間にわたって所望の特性を維持する。したがって、保管寿命は、2ヶ月から2年までの範囲に及び得る。
種々の形態の不透過性の包囲体、並びに拭取り材及びタオル等のような湿潤包装された材料を収容するための貯蔵手段は、当該技術分野において良く知られている。これらのいずれかを、本発明の予め湿らされた拭取り材を包装するのに用いても良い。
【0052】
望ましくは、本発明の予め湿らされた拭取り材は、1つ又はそれ以上の以下の特性をもつ水性湿潤組成物で濡らされる。
(1)本発明の上述のトリガ可能なバインダ組成物と適合すること、
(2)予め湿らされた拭取り材が、加工、貯蔵、及び使用(供給を含む)の間の湿潤強度、及び便器の中での分散性を維持できるようにすること、
(3)皮膚の刺激を起こさないこと、
(4)拭取り材の粘着性を減少させ、肌すべり及び「ローション状の感触」のような触覚特性をもたらすこと、
(5)「うるおいのある洗浄」その他の皮膚の健康上の利点を与える伝達手段として働くこと、
である。
【0053】
本発明の1つの態様は、不溶化剤が水で希釈されて水分散性のバインダの強度が減少し始めるまで水分散性のバインダの強度を維持する不溶化剤を含有する湿潤組成物である。水分散性のバインダは、本発明のトリガ可能なバインダ組成物のいずれか、又はその他のトリガ可能なバインダ組成物とすることができる。湿潤組成物中の不溶化剤は、種々のトリガ可能なポリマーについて開示されたもののような、水分散性のバインダ組成物に使用中及び貯蔵強度をもたらす塩、一価及び多価イオンの両方を有する塩のブレンド、或いはその他の化合物とすることができ、水に希釈して、バインダポリマーがより弱い状態にトリガされる際に基体の分散を可能にすることができる。望ましくは、湿潤組成物は、イオン感応性ポリマーの湿潤組成物の総重量に基づき約0.3重量パーセントより多い不溶化剤を含有する。特定的には、湿潤組成物は、約0.3重量パーセントから約10重量パーセントまでの不溶化剤を含有することができる。さらに特定的には、湿潤組成物は、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントまでの不溶化剤を含有することができる。より厳密には、湿潤組成物は、約1重量パーセントから約4重量パーセントまでの不溶化剤を含有することができる。
【0054】
本発明の湿潤組成物はさらに、拭取り材の強度及び分散性機能が脅かされないような不溶化剤及び水分散性のバインダと適合性のある種々の添加剤を含むことができる。湿潤組成物に適した添加剤は、この限りではないが、以下の添加剤、すなわち、スキンケア添加剤、臭気制御剤、バインダの粘着性を減らすための粘着防止剤、粒子、抗菌剤、防腐剤、及び、洗剤、界面活性剤、幾つかのシリコンのような湿潤剤及び洗浄剤、軟化薬、皮膚に対する改善された触感のための表面感触改良剤(例えば潤滑性)、香料、香料安定化剤、乳白剤、蛍光増白剤、UV吸収剤、薬剤、及びリンゴ酸か又は水酸化カリウムのようなpH調整剤を含む。
【0055】
(スキンケア添加剤)
ここで用いられる「スキンケア添加剤」という用語は、糞便の酵素によって生じるおむつかぶれ及び/又はその他の皮膚の損傷が起こる可能性を減らすことといった1つ又はそれ以上の利点を使用者にもたらす添加剤を表わす。これらの酵素、特にトリプシン、キモトリプシン及びエラスターゼは、食物を消化するために胃腸管内で産生される蛋白分解酵素である。幼児においては、例えば、便は水様となる傾向があり、その他の物質の中でもバクテリアと幾らかの量の劣化していない消化酵素を含有する。これらの酵素は、適当な時間にわたって皮膚に接触したまま維持される場合には、それ自体快適ではない刺激を生じることが見出されており、皮膚に微生物による影響を受けやすくする。対応策として、スキンケア添加剤は、この限りではないが、後述する酵素阻害剤及び金属イオン封鎖剤を含む。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約5重量パーセントより少ないスキンケア添加剤を含むことができる。より特定的には、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約2重量パーセントまでのスキンケア添加剤を含むことができる。さらに特定的には、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでのスキンケア添加剤を含むことができる。
【0056】
種々のスキンケア添加剤を、湿潤組成物及び本発明の予め湿らされた拭取り材に添加するか又はその中に含めることができる。本発明の一実施形態においては、粒子の形態のスキンケア添加剤を添加し、糞便酵素阻害剤として働いて、糞便酵素によって引き起こされるおむつかぶれ及び皮膚の損傷を低減させる潜在的利点をもたらすようにする。その全体が引用によりここに組み入れられるSchulz他の2000年4月18日付の米国特許第6,051,749号は、糞便酵素を阻害するのに有用であると言われる織成ウェブ又は不織ウェブにおける有機親和性クレイを開示している。長鎖第4級アンモニウム有機化合物と、以下のクレイ、すなわち、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、及びステベンサイトの1つ又はそれ以上との反応生成物を含む材料を本発明に用いることができる。
【0057】
トリプシンその他の消化又は糞便酵素を阻害するもの、及びウレアーゼの阻害剤を含む他の公知の酵素阻害剤及び金属イオン封鎖剤を、本発明の湿潤組成物のスキンケア添加剤として用いることができる。例えば、体液の臭気の発生を防ぐために、酵素阻害剤及び抗菌剤を用いても良い。例えば、臭気の吸収の役割も果たすウレアーゼ阻害剤は、T.Trinhの1998年6月25日付の「Absorbent Articles with Odor Control System」と題する国際特許出願第98/26808号に開示されており、該特許出願の全体は引用によりここに組み入れられる。こうした阻害剤は、湿潤組成物及び本発明の予め湿らされる拭取り材に組み入れることができ、銀、銅、亜鉛、鉄、及びアルミニウム塩のような遷移金属イオン及びその溶解性の塩を含む。ホウ酸塩、フィチン酸塩等のようなアニオンも、ウレアーゼに対する阻害性を与えることができる。潜在的な価値をもつ化合物は、この限りではないが、塩素酸銀、硝酸銀、酢酸水銀、塩素水銀、硝酸水銀、メタホウ酸銅、臭素酸銅、臭化銅、塩化銅、重クロム酸銅、硝酸銅、サリチル酸銅、硫酸銅、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、フィチン酸亜鉛、臭素酸亜鉛、臭化亜鉛、塩素酸亜鉛、塩素亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸カドミウム、ホウ酸カドミウム、臭化カドミウム、塩素酸カドミウム、塩化カドミウム、蟻酸カドミウム、ヨウ素酸カドミウム、ヨウ化カドミウム、過マンガン酸カドミウム、硝酸カドミウム、硫酸カドミウム、及び塩化金を含む。
【0058】
ウレアーゼ阻害特性をもつと開示されている他の塩は、鉄及びアルミニウム塩、特にその硝酸塩及びビスマス塩を含む。他のウレアーゼ阻害剤は、Trinhによって開示されており、ヒドロキサム酸及びその誘導体と、チオ尿素と、ヒドロキシルアミンと、フィチン酸塩と、種々のタンニン、例えばイナゴマメタンニンを含む種々の植物種の抽出物、並びにクロロゲン酸誘導体のようなそれらの誘導体と、アスコルビン酸、クエン酸及びそれらの塩のような天然由来の酸と、フェニルホスホロジアミデート/ジアミノリン酸フェニルエステルと、置換されたホスホロジアミデート化合物を含む金属アリールホスホラミデート錯体、窒素置換されていないホスホラミデートと、特にホウ砂及び/又は有機ホウ素酸化合物を含むホウ酸及び/又はその塩と、ヨーロッパ特許出願第408,199号に開示された化合物と、ナトリウム、銅、マンガン及び/又は亜鉛ジチオカルバメートと、キノンと、フェノールと、チウラムと、置換されたローダミン酢酸と、アルキレート化ベンゾキノンと、ホルマニジンジスルフィドと、1:3−ジケトン無水マレイン酸と、コハク酸アミドと、無水フタル酸と、石炭酸と、N,N−ジハロ−2−イミダゾリジノンと、N−ハロ−2−オキサゾリジノンと、チオ−及び/又はアシル−ホスホリルアミド(phosphoryltnamide)及び/又はそれらの置換誘導体と、チオピリジン−N−オキシドと、チオピリジン及びチオピリイミジンと、ジアミノホスフィニル(diaminophosphinyl)化合物の酸化硫黄誘導体と、シクロトリホスファザトリエン誘導体と、オキシムのオルト−ジアミノホスフィニル誘導体と、ブロモ−ニトロ化合物と、S−アリル及び/又はアルキルジアミドホスホロチオレートと、ジアミノホスフィニル誘導体と、モノ−及び/又はポリホスホロジアミドと、5−置換ベンゾオキサチオール−2−オンと、N(ジアミノホスフィニル)アリルカルボキサミドと、アルコキシ−1,2−ベンゾタイジン化合物等を含む。
【0059】
限定的な意味ではないが、サンブロック剤及びUV吸収剤、アクネ処置剤、薬剤、ふくらし粉(カプセルに閉じ込められた形態を含む)、ビタミンA又はEのようなビタミン及びそれらの誘導体、ウィッチヘーゼル抽出物及びアロエベラのような植物、アラントイン、軟化薬、消毒薬、皺の調整又はアンチエイジング効果のためのヒドロキシ酸、サンスクリーン、日焼け促進剤、皮膚の色を明るくするもの、デオドラント、及び制汗剤、皮膚の為その他の用途のためのセラミド、収斂剤、皮膚軟化剤、除光液、虫除け剤、抗酸化剤、防腐剤、抗炎症剤等を含む多くの他のスキンケア添加剤を、該添加剤がそれらに関連するイオン感応性バインダ組成物、特に本発明のイオン感応性バインダ組成物と適合する(すなわち水の中で分散可能でありながら、水の中で希釈される前の予め湿らされた拭取り材の濡れた状態における強度を著しく損ねない)ならば、湿潤組成物及び本発明の予め湿らされた拭取り材に組み入れることができる。
スキンケアに有用な材料とその他の利点は、McCutcheon、1999年、第2巻、機能性材料、MC Publishing Company,Glen Rock,NJに列挙されている。スキンケアのための多くの有用な利点は、テキサス州ルイスヴィル所在のActive Organics社によって提供される。
【0060】
(臭気制御添加剤)
湿潤組成物及び本発明の予め湿らされた拭取り材に用いるのに適した臭気制御添加剤は、この限りではないが、亜鉛塩、タルク粉末、包み込まれた香料(マイクロカプセル、マクロカプセル、及びリポソーム、ベシクル(vessicle)、又はマイクロエマルジョンを含む)、エチレンジアミン四酢酸のようなキレート、ゼオライト、活性シリカ、活性炭の粒又は繊維、活性シリカ粒子、クエン酸のようなポリカルボン酸、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体、キトサン又はキチン及びその誘導体、酸化剤、銀担持ゼオライト(例えば、マサチューセッツ州ビバリー所在のBF Technologies社のHEALTHSHIELD(登録商標)という商標名で市販されているもの)を含む抗菌剤、トリクロサン、珪藻土、及びこれらの混合物を含む。身体又は身体排出物からの臭気を制御することに加えて、臭気制御方法は、処理された基体の臭気をマスクするか又は制御するのに用いることができる。望ましくは、湿潤配合物は、湿潤配合物の総重量に基づき約5重量パーセントより少ない臭気制御添加剤を含有する。より望ましくは、湿潤配合物は、約0.01重量パーセントから約2重量パーセントまでの臭気制御添加剤を含有する。もっと望ましくは、湿潤配合物は、約0.03重量パーセントから約1重量パーセントまでの臭気制御添加剤を含有する。
【0061】
本発明の一実施形態においては、湿潤組成物及び/又は予め湿らされた拭取り材は、拭取った後に皮膚の上に残って臭気吸収層を与える溶液状態のヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンのような誘導体化されたシクロデキストリンを含む。他の実施形態においては、臭気源は、一般に臭気を産生する多くのプロテアーゼその他の酵素が機能するのに必要とされる金属群と結合するキレートの作用によって例示される臭気制御添加剤の適用によって除去されるか又は中和される。金属基のキレートは、酵素の作用を妨害し、製品の悪臭のリスクを減少させる。
不織ウェブ及びセルロース繊維に対するキトサン又はキチン誘導体の適用の原理は、S.Lee他の「Antimicrobial and Blood Repellent Finishes for Cotton and Nonwoven Fabrics Based on Chitosan and Fluoropolymers」、Textile Research Journal、69(2)、p104−112、1999年2月によって説明される。
【0062】
(粘着防止剤)
上昇された塩濃度は、トリガ可能なバインダの粘着性を減少させることができるが、粘着性を減少させる他の手段が望ましい場合が多い。したがって、トリガ可能なバインダの、もしあるとすれば粘着性を減少させるために、湿潤組成物に粘着防止剤を用いてもよい。適切な粘着防止剤は、皮膚の上での接着剤状ポリマーの粘着感を減らして、製品の剥離力を減少させ、又は分配力を減少させることができる接着剤状のポリマーか又はその他の物質で処理された2つの隣接する繊維シート間の粘着性を減少させるために当該技術分野で知られている物質のいずれかを含む。粘着防止剤は、乾燥形態の固体粒子として、懸濁物として、又は粒子のスラリーとして適用可能である。堆積は、噴射、コーティング、静電的堆積、衝突、ろ過(すなわち圧力差によって粒子を抱え込んだ気相が基体を通って移動し、ろ過機構によって粒子が堆積されること)等によるものとすることができ、基体の1つ又はそれ以上の表面上に均一に適用するか又は表面の一部又は基体の表面上にパターン(例えば繰り返し又は不規則パターン)状に適用することができる。粘着防止剤は、基体の厚さにわたって存在することができるが、一方又は両方の表面に集中させても良く、基体の一方又は両方の表面にのみ存在させても良い。
【0063】
特定の粘着防止材は、この限りではないが、タルク粉末、炭酸カルシウム、マイカのような粉末と、コーンスターチのようなでんぷんと、石松子粉末と、二酸化チタンのような鉱物フィラーと、シリカ粉末と、アルミナと、一般的な金属酸化物と、ベーキングパウダーと、珪藻土等を含む。多種多様なフッ化ポリマー、シリコン添加剤、ポリオレフィン及び熱可塑性プラスチック、ワックス、16個又はそれ以上の炭素を有するもののようなアルキル側鎖をもつ化合物を含む製紙産業において知られている剥離剤等を含む低い表面エネルギーを有するポリマーその他の添加剤を用いることもできる。モールド及びキャンドル製造のための離型剤として用いられる化合物、及び乾燥滑剤、並びにフッ化離型剤も考慮に入れられる。
【0064】
一実施形態においては、粘着防止剤は、噴射製品としてMiller−Stephenson(コネチカット州ダンベリー所在)によって市販されているPTFE離型乾燥滑剤MS−122DFに用いられるPTFEテロマー(KRYTOX(登録商標)DF)化合物のようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。例えば、PTFE粒子は、予め湿らされた拭取り材が巻かれる前に、噴射によって基体の片側に適用しても良い。一実施形態においては、粘着防止剤は、ロール状に巻かれる前に基体の片面にのみ適用される。
湿潤組成物は、望ましくは、湿潤組成物の総重量に基づき約25重量パーセントより少ない粘着防止剤を含有する。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約10重量パーセントまで、より特定的には約5%又はそれ以下の粘着防止剤を含有する。さらに特定的には、湿潤組成物は、約0.05重量パーセントから約2重量パーセントまでの粘着防止剤を含有する。
【0065】
粘着防止剤として作用することに加えて、でんぷん化合物は、予め湿らされた拭取り材の強度特性も改善することができる。例えば、親水性のタピオカでんぷんのようなゲル化していないでんぷん粒子は、湿潤組成物の重量に対して約1%か又はそれより多い重さのレベルで存在するときに、予め湿らされた拭取り材がでんぷんの存在なしで可能なものより低い塩濃度でそれと同じ強度を維持できるようにすることが見出されている。したがって、例えば、所与の強度は、でんぷん無しのときに必要とされる4%の塩レベルに比べて、湿潤組成物中に2%の塩が存在するときに達成することができる。でんぷんは、湿潤組成物中のでんぷんの分散性を向上させるために、でんぷんをラポナイトの懸濁液に添加することによって適用することができる。
【0066】
(ミクロ粒子)
本発明の湿潤組成物は、固体微粒子すなわちミクロ粒子を添加することによってさらに改良される。適切な微粒子は、この限りではないが、マイカ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、及びゼオライトを含む。微粒子は、必要に応じて、バインダシステムへの微粒子の引き寄せ又は橋かけを改善するために、ステアリン酸か又は他の添加剤で処理することができる。また、製紙産業において保持助剤として通常用いられる二成分ミクロ粒子システムを用いても良い。こうした二成分ミクロ粒子システムは、通常は、シリカ粒子のようなコロイド粒子相と、該粒子を形成されるウェブの繊維に橋かけするための水溶性カチオン系ポリマーを含む。湿潤組成物中の微粒子の存在は、(1)予め湿らされた拭取り材の不透明性を増加させること、(2)レオロジーを変更する、すなわち予め湿らされた拭取り材の粘着性を低下させること、(3)拭取り材の触覚特性を改善すること、又は(4)多孔性キャリアか又はマイクロカプセルのような微粒子キャリヤを介して所望の薬剤を皮膚に送達すること、といった1つ又はそれ以上の有用な機能として働く。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約25重量パーセントより少ない微粒子を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.05重量パーセントから約10重量パーセントまでのミクロ粒子を含有する。さらに特定的には、湿潤組成物は、約0.1重量パーセントから約5重量パーセントまでのミクロ粒子を含有する。
【0067】
(マイクロカプセルその他の送達媒体)
マイクロカプセルその他の送達媒体も、スキンケア剤、薬物、ユーカリのような快適性促進剤、芳香剤、スキンケア剤、臭気制御添加剤、ビタミン、パウダー、その他の使用者の皮膚への添加剤を与えるために、本発明の湿潤組成物に用いることができる。特定的には、湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約25重量パーセントまでのマイクロカプセル又は他の送達媒体を含有することが望ましい。より特定的には、湿潤組成物は、約0.05重量パーセントから約10重量パーセントまでのマイクロカプセル又は他の送達媒体を含有する。さらに特定的には、湿潤組成物は、約0.2重量パーセントから約5.0重量パーセントまでのマイクロカプセル又は他の送達媒体を含有する。
【0068】
マイクロカプセルその他の他の送達媒体は、当該技術分野においては良く知られている。例えば、POLY−ROPE(登録商標)E200(イリノイ州アーリントンハイツ所在のChemdal Corp.)は、送達媒体の重量の10倍を上回る添加剤を含有することができる柔軟な中空の球体からなる送達剤である。POLY−ROPE(登録商標)E200に使用されることが報告されている公知の添加剤は、この限りではないが、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、レチノール、レチニルパルミテート、オクチルメトキシシンナマート、トコフェロール、シリコン化合物(DC435)、及び鉱物油を含む。別の有用な送達媒体は、POLY−ROPE(登録商標)L200として市販されているスポンジ状の材料であり、これは、シリコン(DC435)及び鉱物油に用いられることが報告されている。他の公知の送達システムは、シクロデキストリン及びその誘導体、リポソーム、ポリマー性スポンジ、及び噴射乾燥されたでんぷんを含む。
マイクロカプセル中に存在する添加剤は、拭取り材が皮膚に適用されマイクロカプセルが壊れてそれらの担持物が皮膚又は他の表面に送達されるまで、環境及び湿潤組成物中のその他の薬剤から分離される。
【0069】
(防腐剤及び抗菌剤)
本発明の湿潤組成物は、防腐剤及び/又は抗菌剤も含有することができる。Mackstat H66(イリノイ州シカゴ所在のMcIntyre Group)のような幾つかの防腐剤及び/又は抗菌剤は、バクテリア及びカビの成長を防ぐのに優れた結果をもたらすことが見出されている。他の適切な防腐剤及び抗菌剤は、この限りではないが、DMDMヒダントイン(ニュージャージー州フェアローン所在のLonza,Inc.社のGlydant Plus(登録商標))、ヨードプロピニル・ブチルカルバメート、Kathon(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のRohm and Haas社)、メチルパラベン、プロピルパラベン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、安息香酸、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等を含む。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき活性基準で約2重量パーセントより少ない防腐剤及び/又は抗菌剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでの防腐剤及び/又は抗菌剤を含有する。さらに望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.5重量パーセントまでの防腐剤及び/又は抗菌剤を含有する。
【0070】
(湿潤剤及び洗浄剤)
本発明の湿潤組成物に種々の湿潤剤及び/又は洗浄剤を用いることができる。適切な湿潤剤及び/又は洗浄剤は、この限りではないが、洗剤及び非イオン性、両性、カチオン系、及びアニオン系界面活性剤を含む。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約3重量パーセントより少ない湿潤剤及び/又は洗浄剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約2重量パーセントまでの湿潤剤及び/又は洗浄剤を含有する。さらに望ましくは、湿潤組成物は、約0.1重量パーセントから約0.5重量パーセントまでの湿潤剤及び/又は洗浄剤を含有する。適切なカチオン系界面活性剤は、この限りではないが、セチルトリメチル塩化アンモニウム及びセチルトリメチル臭化アンモニウムのような第4級アンモニウムハロゲン化アルキルを含むことができる。
【0071】
アミノ酸L−グルタミン酸その他の天然脂肪酸から誘導されたアミノ酸ベースの界面活性剤システムは、他のアニオン系界面活性剤と比べて比較的安全で改善された触覚及び潤い特性をもたらしながらも、人間の皮膚へのpH適合性と良好な洗浄力を与える。界面活性剤の機能の1つは、湿潤組成物を有する乾燥した基体の湿潤性を改善することである。界面活性剤の他の機能は、予め湿らされた拭取り材が汚れた領域に接触するときに浴室の汚れを分散させることと、基体の中へのそれらの吸収性を改善することとされ得る。界面活性剤はさらに、化粧落とし、一般的な人の洗浄、ハード表面洗浄、臭気制御等を助けることができる。アミノ酸ベースの界面活性剤の1つの市販例は、日本東京の味の素社によってアミソフトという名称で市販されているアシルグルタメートである。
【0072】
適切な非イオン性界面活性剤は、この限りではないが、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成された疎水性(親油性)ポリオキシアルキレンベースとエチレンオキシドとの縮合生成物を含む。これらの化合物の疎水性部分は、水に溶けなくするのに十分なだけ高い分子量を有することが望ましい。この疎水性部分へのポリオキシエチレン部分の付加は、分子の水溶性を全体として上昇させ、生成物の液体特性は、ポリオキシエチレン含量が縮合生成物の総重量の約50%となる程度まで保持される。この種の化合物の例は、市販のPluronic界面活性剤(BASF Wyandotte Corp.)、特にポリオキシプロピレンエーテルが約1500−3000の分子量をもち、ポリオキシエチレン含量が分子重量の約35−55%であるもの、すなわちPluronic L−62を含む。
他の有用な非イオン性界面活性剤は、この限りではないが、C8−C22アルキルアルコールとアルコール1モル当り2−50モルのエチレンオキシドとの縮合生成物を含む。この種の化合物の例は、C11−C15第二級アルキルアルコールとアルコール1モル当り3−50モルのエチレンオキシドとの縮合生成物を含み、これは、Olin ChemicalsからのPoly−Tergent SLFシリーズか又はユニオンカーバイド社からのTERGITOL(登録商標)シリーズ、すなわち、約7モルのエチレンオキシドとC12−C15アルカノールとの縮合によって形成されたTERGITOL(登録商標)25−L−7として市販されている。
【0073】
本発明の湿潤組成物として使用可能な他の非イオン性界面活性剤は、(ノニルフェノキシ)ポリオキシエチレンエーテルのようなC6−C12アルキルフェノールのエチレンオキシドエステルを含む。特に有用なのは、約8−12モルのエチレンオキシドと、ノニルフェノールとの縮合によって調製されたエステルすなわちIGEPAL(登録商標)COシリーズ(GAF社)である。さらに、非イオン性表面活性化剤は、この限りではないが、ブドウ糖(D−グルコース)と直鎖又は分岐鎖アルコールとの縮合生成物として誘導されたアルキルポリグリコシド(APG)を含む。界面活性剤のグリコシド部分は、高いヒドロキシル密度を有する親水性物質を与え、これは水に対する溶解性を向上させる。さらに、グリコシドのアセタール・リンケージの固有の安定性は、アルカリ系における化学的安定性を与える。さらに、幾つかの非イオン性表面活性化剤とは異なり、アルキルポリグリコシドは曇り点をもたず、ヒドロトロープなしで形成可能にし、これらは非常にマイルドであり、すぐに生分解される非イオン性界面活性剤である。この類の界面活性剤は、APG−300、APG−350、及びAPG−500という商標名でHorizon Chemical社から入手可能である。
【0074】
シリコンは、純粋な形態で、すなわちマイクロエマルジョン、マクロエマルジョン等として入手可能な、別の類の湿潤剤である。例示的な非イオン性界面活性剤群の1つは、シリコン−グリコールコポリマーである。これらの界面活性剤は、ジメチルポリシロキサノールの自由なヒドロキシル基に、ポリ(低級)アルキレノキシ鎖を付加することによって調製され、Dow Corning CorpからDow Corning190及び193界面活性剤(CTFAという名称のジメチコンコポリオール)として入手可能である。溶媒として用いられる揮発性シリコンを含有する又は含有しないこれらの界面活性剤は、他の界面活性剤によってもたらされる発泡を制御し、なおかつ金属、セラミック、及びガラス表面に光沢を与えるように機能する。
【0075】
アニオン系界面活性剤も、本発明の湿潤組成物に用いることができる。水溶性の高級脂肪酸アルカリ金属石鹸、例えばミリスチン酸ナトリウム及びパルミチン酸ナトリウムのような8から22個までの炭素原子のアルキル置換基を有する陰イオン洗剤塩を含むアニオン系界面活性剤は、それらの高い洗浄力から有用である。好ましい類のアニオン系界面活性剤は、高級アルキルモノ又はアルキル基に約1から16までの炭素原子を有する多核アリールスルホン酸塩のような疎水性の高級アルキル部分(典型的には約8から22までの炭素原子を含有する)を有する水溶性の硫酸化及びスルホン化アニオン系アルカリ金属及びアルカリ土類金属洗剤塩を包含し、例えばBio−Softシリーズ、すなわちBio−SoftD−40(Stepan Chemical Co.)として入手可能である。
【0076】
他の有用な類のアニオン系界面活性剤は、この限りではないが、アルキルナフタレンスルホン酸(ペトロケミカル社のPetroAAであるメチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)アルカリ金属塩、ココア油脂肪酸の硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩、及び獣脂脂肪酸の硫酸化モノグリセリドのカリウム塩のような硫酸化高級脂肪酸モノグリセリド、約10から約18までの炭素原子を含有する硫酸化脂肪アルコールのアルカリ金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリル硫酸ナトリウム)、Bio−Tergeシリーズ(Stepan Chemical Co.)のようなC14−C16アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、硫酸化エチレンオキシ脂肪アルコールのアルカリ金属塩(約3モルのエチレンオキシドとC12−C15n−アルカノールとの縮合生成物の硫酸ナトリウム又はアンモニウム、すなわちShell Chemical Co.のNeodolエトキシ硫酸塩)、低分子量アルキロールスルホン酸の高級脂肪エステルのアルカリ金属塩、例えばイソチオン酸のナトリウム塩の脂肪酸エステル、脂肪エタノールアミド硫酸塩、アミノアルキルスルホン酸の脂肪酸アミド、例えばタウリンのラウリン酸アミド、及びキシレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム及びこれらの混合物のような多くの他のアニオン系有機表面活性化剤を含む。
【0077】
さらに有用な類のアニオン系界面活性剤は、8−(4−n−アルキル−2−シクロヘキセニル)−オクタン酸を含み、シクロヘキセニル環は、付加的なカルボン酸基で置換される。これらの化合物又はそれらのカリウム塩は、Westvaco CorporationからDiacid1550又はH−240として市販されている。一般に、これらの陰イオン性表面活性化剤は、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム又はアルカリ土類金属塩の形態で用いることができる。
【0078】
(シリコン粒子のマクロエマルジョン及びマイクロエマルジョン)
湿潤配合物はさらに、シリコン粒子の水性マイクロエマルジョンを含む。例えば、2000年3月14日付けの「Process for the Preparation of Aqueous Emulsions of Silicone Oils and/or Gums and/or Resins」と題する米国特許第6,037,407号は、水性マイクロエマルジョン中の有機ポリシロキサンを開示している。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約5重量パーセントより少ないシリコン粒子のマイクロエマルジョンを含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.02重量パーセントから約3重量パーセントまでのシリコン粒子のマイクロエマルジョンを含有する。さらに望ましくは、湿潤組成物は、約0.02重量パーセントから約0.5重量パーセントまでのシリコン粒子のマイクロエマルジョンを含有する。
シリコンエマルジョンは一般に、公知のコーティング方法のいずれかによって予め湿らされた拭取り材に適用することができる。例えば、予め湿らされた拭取り材は、湿潤組成物中の不溶化化合物と適合する水分散性の又は水混和性のシリコンベースの成分を含む水性組成物で湿らせることができる。さらに、拭取り材は、水分散性のバインダを有する不織繊維ウェブから構成することができ、該ウェブは、シリコンベースのスルホスクシナートを含有するローションで湿らされる。シリコンベースのスルホスクシナートは、高レベルの界面活性剤なしで優しく効果的な洗浄をもたらす。さらに、シリコンベースのスルホスクシナートは、香料成分、ビタミン抽出物、植物抽出物、及び精油のような油溶性成分の沈殿を防ぐ可溶化機能をもたらす。
【0079】
本発明の一実施形態においては、湿潤組成物は、ジメチコンコポリオールスルホスクシナート二ナトリウム及びジメチコンコポリオールスルホスクシナート二アンモニウムのようなシリコンコポリオールスルホスクシナートを含む。望ましくは、湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ないシリコンベースのスルホスクシナートを含有し、より望ましくは約0.05重量パーセントから約0.30重量パーセントまでのシリコンベースのスルホスクシナートを含有する。
シリコン・エマルジョンを含む生成物の別の例においては、湿潤組成物中にDow Corning9506粉末を存在させても良い。Dow Corning9506粉末は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを含むと考えられ、球形粉末であり、皮脂を制御するのに有用であると言われている(「New Chemical Perspectives」、Soap and Cosmetics、Vol.76、No.3、2000年3月、p12を参照されたい。)したがって、皮脂を制御するのに有効なパウダーを送達する水分散性の拭取り材も、本発明の範囲内に含まれる。シリコンエマルジョンを調製する原理は、1997年3月20日付けのWO97/10100に開示されている。
【0080】
(皮膚軟化剤)
本発明の湿潤組成物は、1つ又はそれ以上の皮膚軟化剤も含むことができる。適切な皮膚軟化剤は、この限りではないが、PEG75ラノリン、メチルグルセス20ベンゾエート、C12−C15アルキルベンゾエート、エトキシレート化セチルステアリルアルコール、LambentワックスWS−L、LambentWD−F、Cetiol HE(ヘンケル社)、Glucam P20(Amerchol)、Polyox WSR N−10(ユニオンカーバイド社)、Polyox WSR N−3000(ユニオンカーバイド社)、Luviquat(BASF社)、Finsolv SLB101(Finetex社)ミンクオイル、アラントイン、ステアリルアルコール、Estol1517(Unichema)、及びFinsolv SLB201(Finetex社)を含む。
皮膚軟化剤はまた、湿潤組成物で湿らされる前に又は湿らされた後に物品の表面に適用することができる。こうした皮膚軟化剤は、湿潤組成物中に溶けないものとされても良く、力がかけられたとき以外は動かないものとすることができる。例えば、ペトロラタムベースの皮膚軟化剤を一方の表面にパターン状に適用し、その後に他方の表面を濡らして拭取り材を飽和させることができる。こうした製品は、洗浄面と、反対側の皮膚トリートメント面とを与えることができる。
【0081】
こうした製品及び本発明のその他の製品の皮膚軟化剤組成物は、1つ又はそれ以上の液体炭化水素(例えばペトロラタム)、鉱物油等、植物性及び動物性脂肪(例えばラノリン、リン脂質、及びそれらの誘導体)、及び/又は、Osborn、III他の1999年4月6日付の米国特許第5,891,126号に開示されているポリシロキサン皮膚軟化剤を含む1つ又はそれ以上のアルキル置換されたポリシロキサンポリマーのようなシリコン材料といったプラスチック又は流体皮膚軟化剤を含むことができる。(その開示を引用によりここに組み入れる)。随意的に、親水性の界面活性剤をプラスチック皮膚軟化剤と組み合わせて、被覆面の湿潤性を改善することができる。本発明の或る実施形態においては、液体炭化水素皮膚軟化剤及び/又はアルキル置換されたポリシロキサンポリマーを、脂肪酸か又は脂肪アルコールから誘導された1つ又はそれ以上の脂肪酸エステル皮膚軟化剤とブレンドするか又は組み合わせることができる。
【0082】
本発明の一実施形態においては、皮膚軟化剤材料は、皮膚軟化剤ブレンドの形態である。望ましくは、皮膚軟化剤ブレンドは、液体炭化水素(例えばペトロラタム)、鉱物油等、植物性及び動物性脂肪(例えばラノリン、リン脂質、及びそれらの誘導体)の1つ又はそれ以上と、1つ又はそれ以上のアルキル置換されたポリシロキサンポリマーのようなシリコン材料との組合せからなる。より望ましくは、皮膚軟化剤ブレンドは、液体炭化水素(例えばペトロラタム)とジメチコンか又はジメチコンと他のアルキル置換されたポリシロキサンポリマーとの組合せからなる。本発明のある実施形態においては、液体炭化水素皮膚軟化剤及び/又はアルキル置換されたポリシロキサンポリマーのブレンドは、脂肪酸か又は脂肪アルコールから誘導された1つ又はそれ以上の脂肪酸エステル皮膚軟化剤とブレンドできることが考慮に入れられる。Standamul HE(ニュージャージー州ホーボーケン所在のヘンケル社)として入手可能なPEG−7グリセリルココエートも考慮に入れることができる。
【0083】
本発明の湿潤組成物に有用な水溶性の自己乳化する皮膚軟化剤油は、Smith他の1987年9月1日付けの米国特許第4,690,821号に開示されるようなポリオキシアルコキシレート化ラノリン及びポリオキシアルコキシレート化脂肪アルコールを含む。(その開示を引用によりここに組み入れる)。ポリオキシアルコキシ鎖は、プロピレンオキシ単位とエチレンオキシ単位が混合されたものを含むことが望ましい。ラノリン誘導体は、典型的には約20−70のこうした低級アルコキシ単位を含み、一方C12−C20脂肪アルコールは、約8−15の低級アルキル単位によって誘導される。こうした有用なラノリン誘導体の1つは、Lanexol AWS(ニューヨーク州ニューヨーク所在のCroda、Inc.のPPG−12−PEG−50)である。有用なポリ(15−20)C2−C3−アルコキシレートは、Procetyl AWS(Croda、Inc.)として知られるPPG−5−Ceteth−20である。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、皮膚軟化剤材料は、湿潤組成物の、もしあるなら望ましくない触覚特性を低減させる。例えば、ジメチコンを含む皮膚軟化剤材料は、湿潤組成物のイオン感応性バインダか又は他の成分によって生じる粘着性レベルを低下させることができ、それにより粘着防止剤として働く。
湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約25重量パーセントより少ない皮膚軟化剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約5重量パーセントより少ない皮膚軟化剤を含有し、最も望ましくは約2重量パーセントより少ない皮膚軟化剤を含有することができる。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約8重量パーセントまでの皮膚軟化剤を含有することができる。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.2重量パーセントから約2重量パーセントまでの皮膚軟化剤を含有することができる。
一実施形態においては、本発明の湿潤組成物及び/又は予め湿らされた拭取り材は、その全体が引用によりここに組み入れられるスミス他の1985年12月17日付けの米国特許第4,559,157号に開示されるような少なくとも1つの皮膚軟化剤油を含有する油相を有する水中油型エマルジョンを含み、少なくとも1つの皮膚軟化剤ワックス安定化剤は、少なくとも1つの多価アルコール・皮膚軟化剤と少なくとも1つの有機水溶性洗剤とを含有する水相に分散される。
【0085】
(表面感触改良剤)
表面感触改良剤は、製品の使用中の皮膚の触感(例えば潤滑性)を改善するのに用いられる。適切な表面感触改良剤は、この限りではないが、市販の剥離剤、脂肪酸側鎖基をもつ第4級アンモニウム化合物を含むティッシュ製造分野において用いられる軟化剤のような軟化剤、シリコン、ワックス等を含む。軟化剤としての有用性をもつ例示的な第4級アンモニウム化合物は、1971年1月12日付けのHervey他の米国特許第3,554,862号、1979年3月13日付のEmanuelsson他の米国特許第4,144,122号、1996年11月12日付けのAmpulski他の米国特許第5,573,637号、及び1984年10月9日付けのHellsten他の米国特許第4,476,323号に開示されており、これらの全体は引用によりここに組み入れられる。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ない表面感触改良剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでの表面感触改良剤を含有する。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでの表面感触改良剤を含有する。
【0086】
(香料)
種々の香料を本発明の湿潤組成物に用いることができる。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ない香料を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでの香料を含有する。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでの香料を含有する。
【0087】
(香料可溶化剤)
さらに、種々の香料可溶化剤を本発明の湿潤組成物に用いることができる。適切な香料可溶化剤は、この限りではないが、ポリソルベート20、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、トリエチルクエン酸塩、Ameroxol OE−2(Amerchol Corp.)、Brij78及びBrij98(ICI Surfactants)、Arlasolve200(ICI Surfactants)、Calfax 16L−35(パイロットケミカル社)、Capmul POE−S(Abitec Corp.),Finsolv SUBSTANTIAL(Finetex)等を含む。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ない香料可溶化剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでの香料可溶化剤を含有する。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでの香料可溶化剤を含有する。
【0088】
(乳白剤)
適切な乳白剤は、この限りではないが、二酸化チタンか又は他の鉱物或いは顔料、及びREACTOPAQUE(登録商標)粒子(サウスカロライナ州チェスター所在のSequa Chemicals、Inc.から入手可能)のような合成乳白剤を含む。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ない乳白剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでの乳白剤を含有する。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでの乳白剤を含有する。
【0089】
(pH調整剤)
本発明の湿潤組成物に用いるのに適したpH調整剤は、この限りではないが、マレイン酸、クエン酸、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を含む。適切なpH範囲は、皮膚に対する湿潤組成物から結果として得られる皮膚の刺激の程度を最小にする。湿潤組成物のpH範囲は、約3.5から約6.5までであることが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物のpH範囲は、約4から約6までである。望ましくは、湿潤拭取り材製品、すなわち布部分と湿潤溶液部分とを含む完成した湿潤拭取り材製品の全体的なpHは、約4.5−5.5であり、好ましくは約5.0である。湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量に基づき約2重量パーセントより少ないpH調整剤を含有することが望ましい。より望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約1重量パーセントまでのpH調整剤を含有する。もっと望ましくは、湿潤組成物は、約0.01重量パーセントから約0.05重量パーセントまでのpH調整剤を含有する。
【0090】
上述の成分の1つ又はそれ以上から形成された種々の湿潤組成物は、本発明の湿潤拭取り材に用いることができ、一実施形態においては、湿潤組成物は、以下の表1に示すように、湿潤組成物の重量パーセントで与えられた以下の成分を含有する。


【0091】
本発明の別の実施形態においては、湿潤組成物は、下記の表2に示されるように、湿潤組成物の重量パーセントで与えられた以下の成分を含む。

【0092】
本発明の別の実施形態においては、湿潤組成物は、下記の表3に示されるように、湿潤組成物の重量パーセントで与えられた以下の成分を含む。

【0093】
本発明の上記の湿潤組成物は、上記の本発明のトリガ可能なバインダ組成物の1つ又はそれ以上と共に用いることができることに注意されたい。さらに、本発明の上記の湿潤組成物は、通常のバインダ組成物を含むその他のバインダ組成物か、或いは分散性であるか又は分散性でないかにかかわらずに公知の繊維性又は吸収性基体と共に用いることができる。
【0094】
(強度特性)
本発明の一実施形態においては、湿潤拭取り材は、上記の表2の湿潤組成物と、約75重量パーセントの漂白クラフト繊維と25重量パーセントの上記の本発明のイオン感応性又はトリガ可能バインダ組成物のいずれかからなる空気堆積繊維性材料とを用いて生産され、重量パーセントは、乾燥した不織布の総重量に基づいている。それらの実施形態における乾燥した不織布の重量に対する、不織布に適用される湿潤組成物の量は、望ましくは約180重量パーセントから約240重量パーセントまでである。本発明の別の実施形態においては、湿潤拭取り材は、上記の表1の湿潤組成物と、80重量パーセントの軟木繊維と20重量パーセントの本発明のイオン感応性バインダからなる空気堆積繊維性材料とを用いて生産される。それらの実施形態における乾燥した不織布の重量に対する、不織布に適用される湿潤組成物の量は、望ましくは約180重量パーセントから約240重量パーセントまでである。本発明の別の実施形態においては、湿潤拭取り材は、上記の表1の湿潤組成物と、90重量パーセントの軟木繊維と10重量パーセントの本発明のイオン感応性バインダからなる空気堆積繊維性材料とを用いて生産される。それらの実施形態における乾燥した不織布の重量に対する、不織布に適用される湿潤組成物の量は、望ましくは約180重量パーセントから約240重量パーセントまでである。
【0095】
望ましくは、本発明の湿潤拭取り材は、NaCl、ZnCl2及び/又はCaCl2或いはこれらの混合物といった一価及び/又は二価塩を0.5重量%より多く含有する10重量%から400重量%までの湿潤拭取り材溶液に浸されたときに、少なくとも約100g/インチの使用時湿潤引張強度と、200ppmまでの濃度のCa2+及び/又はMg2+を含有する軟水又は硬水中に24時間又はそれより短い時間浸された後に、好ましくは約1時間後に、約30g/インチより小さい引張強度を有する。ハンドシート基体については、クロスデッケル湿潤引張強度(CDWT)が報告されている。連続フォーマ上に形成された基体については、機械方向湿潤引張強度(MDWT)が報告されている。
【0096】
より望ましくは、本発明の湿潤拭取り材は、NaCl、ZnCl2及び/又はCaCl2或いはこれらの混合物といった一価及び/又は二価塩を0.5重量%より多く含有する10重量%から400重量%までの湿潤拭取り材溶液に浸されたときに、約300g/インチの使用時湿潤引張強度と、200ppmまでの濃度のCa2+及び/又はMg2+を含有する軟水又は硬水中に24時間又はそれより短い時間浸された後に、好ましくは約1時間後に、約75g/インチより小さい引張強度を有する。
最も望ましくは、本発明の湿潤拭取り材は、NaCl、ZnCl2及び/又はCaCl2或いはこれらの混合物といった一価及び/又は二価塩を0.5重量%より多く含有する10重量%から400重量%までの湿潤拭取り材溶液に浸されたときに、>約300g/インチの使用時湿潤引張強度と、200ppmまでの濃度のCa2+及び/又はMg2+を含有する軟水又は硬水中に24時間又はそれより短い時間浸された後に、好ましくは約1時間後に、約30g/インチより小さい引張強度を有する。
【0097】
水に流すことができる湿潤拭取り材より高い坪量をもつ製品は、比較的高い湿潤引張強度をもつことができる。例えば、予め湿らされたタオル又はハード表面洗浄拭取り材のような製品は、80gsmから150gsmといった70gsmを上回る坪量をもつことができる。こうした製品は、500g/インチか又はそれより大きいCDWT値と、約150g/インチか又はそれより小さい、より特定的には約100g/インチか又はそれより小さい、最も特定的には約50g/インチか又はそれより小さい浸漬後の値をもつことができる。
【0098】
(湿潤拭取り材の製造方法)
本発明の予め湿らされた拭取り材は、幾つかの方法で形成することができる。一実施形態においては、トリガ可能なポリマー組成物は、水性溶液又は懸濁液の一部として繊維性基体に適用され、その後、水を除去し繊維の結合を促進するのに乾燥が必要とされる。具体的には、乾燥の間に、バインダは繊維の交差点に移動して、これらの領域においてバインダとして活性化され、それにより、基体に許容可能な強度がもたらされる。例えば、以下のステップを適用することができる。
1.高度に結合されていない吸収性基体(例えば非結合空気堆積物、ティッシュウェブ、カーデッドウェブ、フラフパルプ等)を用意すること。
2.通常は液体、懸濁物又は発泡体の形態であるトリガ可能なポリマー組成物を基体に適用すること。
3.基体を乾燥して基体の結合を促進すること。基体は、ピーク基体温度が約100℃から220℃までを超えないようにして乾燥される。
4.基体に湿潤組成物を適用すること。
5.ロール形状の又はスタック状の濡れた基体を入れ、製品を包装すること。
【0099】
基体へのトリガ可能なポリマー組成物の適用は、噴射を用いること、発泡体適用すること、浴の中に浸すこと、カーテンコーティングすること、及びワイヤ巻きロッドでコーティングし、計量すること、基体を浸水ニップを通して通過させること、予め計量され濡らされたバインダ溶液で被覆されたロールに接触させること、スポンジか又はフェルトのようなトリガ可能なポリマー組成物を含有する変形可能なキャリアに対して基体を押し付けて基体の中に送達させること、グラビア、インクジェット、又はフレキソ印刷といった印刷をすること、及び当該技術分野において公知であるその他の手段を用いること、とすることができる。
【0100】
バインダ又はコバインダポリマーを適用するための発泡体の使用においては、混合物は、典型的には発泡剤で泡立てられ、基体の上に一様に広がり、その後に真空が適用されて基体を通して泡がひっぱられる。Wietsmaの1977年4月19日付けの「Process for the Impregnation of a Wet Fiber Web with a Heat Sensitized Foamed Latex Binder」と題する米国特許第4,018,647号を含む公知の発泡体適用方法のいずれかを用いることができ、該特許の全体は引用によりここに組み入れられる。Wietsmaは、発泡されたラテックスを、シロキサンオキシアルキレンブロックコポリマーと有機ポリシロキサンを含む官能性シロキサン化合物のような感熱剤の添加によって感熱性にする方法を開示している。ラテックスの感熱化のために適用可能な感熱剤及びそれらの使用法の特定の例は、米国特許第3,255,140号、第3,255,141号、第3,483,240号、及び第3,484,394号に説明されており、これらの全ては引用によりここに組み入れられる。感熱剤の使用は、発泡されたラテックスバインダを適用する従来の方法に比べて、非常に柔軟でテキスタイル状の手触りをもつ製品が得られると言われている。
【0101】
添加される感熱剤の量は、特に、使用されるラテックスのタイプ、所望の凝固温度、機械速度及び機械の乾燥区分の温度に依存し、通常は、重量の約0.05から約3%までの範囲であり、ラテックスの乾燥重量における乾燥物として計算されるが、これより多いか又は少ない量も使用可能である。感熱剤は、ラテックスが水の沸点よりかなり低い温度で、例えば35℃から95℃までか又は約35℃から65℃までの範囲の温度で凝集するような量で添加することができる。
【0102】
理論によって縛ろうとするものではないが、トリガ可能なバインダ溶液を適用した後の、及び湿潤組成物を適用する前の乾燥段階は、水分が逃げていく際にバインダを繊維の交差点に運ぶことによって繊維性基体の結合を向上させ、それによりバインダの有効な使用を促進すると考えられる。しかしながら、代替的方法においては、上記に挙げられた乾燥段階は抜かされ、トリガ可能なポリマー組成物が基体に適用され、その後目立った介在する乾燥なしに湿潤組成物が適用される。この方法の1つの態様においては、トリガ可能なポリマー組成物は、繊維に選択的に付着して、基体からのバインダの著しい損失なしに、随意的な処理段階において過剰な水が除去されるようにする。別の態様においては、湿潤組成物の適用前に目立った水の除去は起こらない。さらに別の代替的方法においては、トリガ可能なポリマー組成物と湿潤組成物は同時に適用され、随意的にはその後に塩か又は他の不溶化化合物が適用されて、バインダがさらに不溶化される。
【0103】
本発明は、いかなる方法においても本発明の範囲を制限するように解釈されるものではない以下の実施例によってさらに説明される。それに対して、ここでの詳細な説明を読んだ後に、手段は、種々の他の実施形態、修正及びその均等物をもち得ることが明白に理解され、本発明の精神及び/又は請求項の範囲から逸脱することなく、それを当業者に提案することができる。
【0104】
ここで用いられるウェブの「厚さ」は、Mitutoyo Digimatic Indicator(日本東京108港区芝5丁目31−19所在のミツトヨ社)のスピンドルに接続され、計測するサンプルに0.05psiのネット荷重を与える3インチのアクリルプラスチックディスクで計測される。Mitutoyo Digimatic Indicatorは、ディスクが平坦な表面上にのせられたときにゼロに合わせられる。少なくともアクリルディスクと同じ位の寸法をもつサンプルがディスクの下におかれたときに、インジケータのデジタル読出しから厚さの読取り値を得ることができる。本発明の水分散性の基体は、約0.1mmから5mmまでといったどんな適切な厚さをもつこともできる。湿潤拭取り材においては、厚さは、0.2mmから約1mmまで、より特定的には約0.3mmから約0.8mmまでの範囲とすることができる。厚さは、例えばウェブ形成中の又は形成後のコンパクション・ロールの適用によって、バインダ又は湿潤組成物が適用された後に押し付けることによって、或いはロールの形成が良好であるときに巻き取りの張力を制御することによって、制御することができる。
厚さを測定するためのプラテン方法の使用は、巨視的なレベルでの平均厚さを与える。局所的な厚さは、特に製品がエンボス加工されるか又はその他の方法で三次元的テキスチャーが与えられる場合に変えることができる。
【実施例1】
【0105】
(カチオン系ポリマー合成)
カチオン系アクリレートポリマーを、全モノマー固形分30%−40%においてメタノール、エタノール又は75/25アセトン/水混合物中で合成した。フリーラジカル開始剤としてVazo−52(DuPont)を使用した。典型的な実験室手順を以下に示す。
アセトン(VWR、Westchester、PA)399g及び脱イオン(DI)水125gを3Lの4首丸底フラスコの中に入れた。フラスコを氷浴中で冷却し、窒素を20分間バブリングして酸素を除去した。モノマー供給物を加える前に反応フラスコを加熱して還流させ(およそ60℃)、反応の間窒素下に維持した。ADAMQUAT MC−80(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のAtofina Chemicals)39.6gを42.0gのDI水で希釈し、それを反応フラスコに送る際に窒素でバブリングした。メチルアクリレート(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のAtofina Chemicals)267.7gとVazo−52(DuPont)0.6gを、126.1gのアセトン中に溶解させた。この溶液を氷浴中で冷却させ、それを反応フラスコに送る際に窒素でバブリングした。機械的投与ポンプを用いてモノマー溶液を4時間にわたって反応フラスコに送り、さらに2時間還流状態に保った。およそ5時間にわたって蒸留することによってアセトンを除去し、アセトンを除去したときにDI水を加えた。固形分約23%のおよそ0.2%残留アセトンを含有する水性溶液を得た。
【実施例2】
【0106】
(ポリマー合成)
実施例1において既に説明したように、バッチ又は半バッチ反応によってポリマーを合成した。
(サンプル調製)
2つの異なるベースシート材料、すなわちUCTADティッシュ及び熱結合空気堆積不織材を用いて、バインダ性能を評価した。
【0107】
(UCTADティッシュ)
およそ33gsmの坪量の非クレープ加工通気乾燥ティッシュ基体を用いて、15%−30%の塗布量におけるバインダサンプルを評価した。UCTADベースシートは、水中では湿潤強度が残存していなかった。一様かつ一定の量の各バインダを、加圧スプレーユニットにより基体に適用した。このハンドシートスプレーユニットは、液体又はエマルジョンバインダを用いて市販の空気堆積マシンの作動に非常に類似するように、しかしかなり小規模に設計される。装置は、小フレームのハウジング内に囲まれ、それを実験室フードの下に置くことができる。このユニットは、該ユニットの中央の固定サンプルホルダ(10インチ×13インチ)と、該サンプルホルダの真上の可動スプレーヘッダを有するものである。適用工程の間にバインダをウェブの中に引き込む一助とするために、真空ボックスをサンプルホルダ区域の下に設置する。ハンドシートを真空ボックスの上に置き、スプレーヘッドが基体を横切って移動する際にバインダが平坦なV字形状パターンにスプレーされる。バインダは、スプレーキャビネットの外側に配置された加圧貯蔵容器に入れられ、高圧可撓性チューブを介してスプレーノズルに給送される。スプレーノズル(Spraying Systems Company)を備えたスプレーヘッダが、所望の適用均一度及び速度を与えるベルト駆動スライド組立体を用いてサンプル上に動かされる。スプレーヘッダは、180fpmに近い速度で作動され、スプレー霧化圧は200psigの高さに設定することができる。サンプルは、手で除去され、示された温度で示された時間に亘ってWerner Mathis,Model LTV Through−Air Dryer(TAD)中で乾燥される。バインダを有するサンプルの最終的な坪量は、およそ39−40gsmであった。
【0108】
(熱結合空気堆積不織材)
弱く熱結合された空気堆積不織材(TBAL)試験基体を、Weyerhauser NF405木材パルプとKoSA T−255バインダ繊維から製造した。バインダ繊維は、およそ130℃で溶解するポリエステル芯及びポリエチレン鞘を有するものであった。空気堆積ウェブは、およそ4%のバインダ繊維を用いて形成され、鞘の溶融温度より高い温度で熱結合される。TBALベースシートは、51gsmの平均坪量と、1.0mmの平均キャリパを有するものであった。TBAL基体は、水中でおよそ30g/インチの残存CD湿潤引張強度を有した。適用及び乾燥方法は、UCTADサンプルについて説明したのと同様である。バインダを有するサンプルの最終的な坪量は、およそ63−64gsmであった。
【0109】
(引張試験)
全てのサンプル試験のために、Testworks3.03バージョンのソフトウェアを備えるSinTech社の1/D引張試験機が使用された。空気圧グリップを備えた100ニュートンのロードセルを使用した。2インチのゲージ長、及び12インチ/分のクロスヘッド速度を用いた。複製サンプルのピーク荷重値(g/インチ)を記録し、平均し、どのように測定したかに応じて、機械方向の湿潤引張強度(MDWT)又はクロスデッケル湿潤引張強度(CDWT)として報告した。
各々のサンプルの使用中の強度は、1)所望の塩種類及び濃度の塩溶液又は塩を含有する調製済み湿潤溶液中に引張サンプルを浸すか、又は2)前述の溶液の1つを一定の適用量で適用する(典型的には200%−300%)ことによって模擬された。サンプルは、引張強度を測定する前に数時間にわたって平衡化された。崩壊強度又は分散性は、「使用時」として取り扱われたサンプルを過剰量(典型的には800mL)の脱イオン水又は指定された硬度レベル(金属イオンとして)の硬水に移し、引張強度を測定する前にそれらを指定された時間の長さだけ浸すことによって評価した。
【0110】
(トリガ特性、UCTAD及びTBALサンプル)
以下の表4から表16までは、TBAL及びUCTADベースシート上の種々のカチオン系バインダの性能を示す。表中の項目番号は、特定のバインダのことをいい、a/bの添え字は、TBAL(a)又はUCTAD(b)ベースシート上のバインダの適用を示す。
表4及び表5は、バッチ重合条件下で作られ、かつポリマー組成物中の主なモノマーがメチルアクリレート又はエチルアクリレート(6b)のいずれかである5−10モル%のカチオン系モノマーMADQUATに基づく、カチオン系バインダのトリガ可能な引張強度を示す。カチオン系アクリレート又は他のカチオン系ビニル化合物と、4又はそれ以上の炭素を含む側鎖を有するアルキルアクリレート又はメタクリレート(1a)とからなり、ZnCl2中では有効にトリガするが、NaCl中ではそうではないトリガ可能なカチオン系バインダが、比較のために示されている。TBALベースシートの1aと比べて、表1の全てのバインダは、4%NaCl中で160から290g/インチの範囲のより大きい使用時CDWTを示し、200ppmの硬水に1時間浸した後にCDWTの降下が引き起こされる。これらの結果は、UCTAD上へのバインダの適用に関する表5にも現れており、使用時CDWTは、200ppmの硬水に移されて引張強度が失われたときに、4%のNaClにおいて100から351g/インチの範囲である。これらのバインダはまた、ZnCl2、CaCl2、又はMgCl2といったNaCl以外の塩を含有する溶液で湿潤されたときに有用な引張特性を示す。
【0111】





【0112】

【0113】
表6及び表7は、大規模産業用途にとって好ましい半バッチモノマー添加方法によって合成されたバインダの例を示す。表6のバインダは、137から336g/インチまでの範囲のTBALベースシートの4%NaCl中の使用時CDWTを与え、それら全ては、200ppmの硬水に移した後に1から16時間にわたる適切な引張強度の低下を呈する。表7のUCTADベースシート上のバインダに関して同様の結果が観測された。
【0114】





【0115】

【0116】
表8及び表9は、カチオン系モノマー対イオンの影響を示す。項目11a/11bは、塩化物対イオンを有するカチオン系ADAMQUATモノマーに基づくバインダのトリガ特性を示し、一方、項目12a/12bは、硫酸メチル対イオンを有すること以外は同じポリマーのトリガ特性を示す。両方の表に示されるように、塩化物イオン含有バインダは、硫酸メチル材料より良好に作用する。硫酸メチル対イオンは、塩化物ほど効果的なものではないが、特にUCTADベースシートに対して硫酸メチルを用いた時に依然として有用かつトリガ可能な強度特性が得られる。

【0117】

【0118】

【0119】
表10及び表11は、5%ADAMQUAT/95%メチルアクリレートバインダ組成物の合成における重合開始剤レベルの変化の影響を示す。同様の重合条件のとき、開始剤レベルを減少させた結果として、通常は分子量が高くなる。項目13a/13b、14a/14b、及び15a/15bは、開始剤レベルを減少させたときの使用時CDWT値の増加を示し、分子量の増加はより高い使用時強度のために好ましいことを意味する。同じサンプルについて、200ppm硬水中に1時間浸した後の残存引張強度の並行増加が観測された。しかしながら、この残存強度は、項目13b、14b及び15a/15bに示されるように最初は動的なものであり、24時間後には、残存CDWT値は大きく低下する。
【0120】















【0121】

【0122】
表12は、一定の開始剤レベルでの5%ADAMQUAT/95%メチルアクリレートバインダ組成物の合成におけるモノマー固形分の増加の影響を示す。モノマー固形分の増加の結果として、通常は、モノマー転換の改善、並びにポリマー分子量の増加がもたらされる。項目16a及び17aは、硬水中で1時間後の僅かに高い残存CDWTのときの、13aを約100g/インチ上回る高い使用時強度を示す。しかしながら、これらの残存強度は、硬水に24時間曝された後に大きく低下する。






【0123】

【0124】
表13は、5%ADAMQUAT/95%メチルアクリレートバインダ組成物からさらに変更されたポリマー組成物の、バインダの引張特性に対する影響を示す。13aのバインダと比べて、組成物を4%ADAMQUAT/96%メチルアクリレート(18a)に変化させることにより、使用時CDWTの相対的増加、並びに硬水(1時間)中での最初に高めの残存CDWTがもたらされ、それは24時間後に許容可能なレベルまで低下する。15%のメチルアクリレートをメチルメタクリレートに置換することによる13a組成物の変更を通じて、サンプル18aと同様のバインダ性能が得られる。サンプル13aに対するサンプル18a及び19aの特性の変化は、それらのより大きい疎水性及び/又はより大きい剛性(19aの場合の)主鎖構造によるものである。比較的に、これらのバインダ組成物18a及び19aは、使用時強度及びバインダ15aへの分散性に関して同様に機能する。同様の結果はまた、サンプル13bを18bと比較するUCTADベースシートに関する表14において観測された。



【0125】



















【0126】

【0127】
表15は、使用時強度及び分散性に対するポリマー組成物の影響を再び示す。バインダ組成物15aを、1%より多い親水性ADAMQUATモノマーを含有する20aのバインダ組成物に変更することにより、減少した使用時CDWTと、硬水中に1時間浸した後に僅かに速い分散速度を有するが、24時間浸漬後の最終残存CDWT値は同様であるバインダが得られる。使用時CDWTの減少は、15aバインダに対する20aバインダのより大きい親水性構造によるものである。

















【0128】

【0129】
表16は、25%の5%ADAMQUAT/95%メチルアクリレートバインダを含有するTBALハンドシートの湿潤引張崩壊特性を示す。乾燥ベースシートをDI水か又は200ppmの硬水中に入れることにより、24時間以内に約400g/インチから70−100g/インチの比較的遅いCDWT崩壊がもたらされる。
引張崩壊プロフィール及び最終的な引張強度は、バインダ組成物、バインダ適用量、及びベースシート構造の選択によってさらに調整することができる。
【0130】

【0131】
トリガ剤として塩化ナトリウムを用いたときの必要な湿潤引張強度と分散性を与えることに加えて、これらの新しい材料は、短鎖アルキルの本質的により大きい湿潤性のために、ベースシート又は基体の増強された湿潤性を与える。これは、湿潤溶液がより迅速な作動速度で適用されるようにし、製造作動速度を改善するための積極的意味合いをもつ。
【実施例3】
【0132】
2つのバインダが、本発明のバインダのための比較例を与える。第1のバインダは、米国特許第6,423,801号B1に開示されたイオン感応性スルホネート・アニオン修飾アクリル酸コポリマー(SSB)と、ニュージャージー州ブリッジウォーター所在のNational Starch and Chemical Co.によって製造された非架橋エチレン酢酸ビニルラテックス、DUR−O−SET(登録商標)−RBとの75/25(w/w)混合物である。以下の記述では「SSB/RB」と称するこのバインダパッケージは、米国特許第6,429,261号B1(引用によりここに組み入れる)に開示されている。これは、空気堆積その他の基体のためのイオン感応性トリガ可能バインダとして機能するが、本発明に比べると多くの欠点に悩まされる。これらは、より高いTg(乾燥ベースシートのより高い剛性をもたらす)及び低い湿潤性又は流体吸収、湿潤状態におけるより高いシート粘着性、並びに湿潤された製品の乏しいpH制御性を含む。
第2のバインダ、DUR−O−SET(登録商標)Elite−22は、ニュージャージー州ブリッジウォーター所在のNational Starch and Chemical Co.によって製造された軟質の自己架橋エチレン酢酸ビニルエマルジョンである。これは、高い湿潤又は使用時強度を与えるが、ベースシートを分散できなくする。このバインダは、以下の記述では「Elite−22」と呼ぶ。
【0133】
(事前形成された基体)
実施例2で既に説明したような2つの異なる事前形成ベースシート材料、すなわちUCTADティッシュ及び熱結合空気堆積不織ベースシートにバインダを適用することによって、プロトタイプ製品におけるバインダ性能の評価を最初に行った。
(空気堆積ベースシートの連続形成及び乾燥ベースシートの特性)
空気堆積基体材料は、幅24インチの実験的空気堆積機械で連続的に形成した。2つの形成ヘッドを備えたDanWeb空気堆積フォーマを用いて、表17に挙げられた物理的特性をもつ基体を製造した。パルプシートフォーム中のWeyerhauserNF405漂白軟材クラフト繊維が、ハンマーミル中で繊維化され、移動ワイヤ上に200−300fpmで堆積された。新たに形成されたウェブが、加熱圧縮ロールによって所望のレベルまで緻密にされ、オーブンワイヤに移動され、そこでその上側に所望のバインダ配合物がスプレーされ、該ウェブの乾燥繊維重量に対し約半分の所望のバインダ固形分が適用された。
【0134】
スプレーは、約100psiで作動するイリノイ州ホイートン所在のSpraying Systems Co.によって製造された一連のQuick Veejet(登録商標)ノズル、ノズル型600050によって適用された。ウェブの上のスプレーブームには、5つのそうしたノズルが中央に5.5インチ刻みで設けられ、チップ−ワイヤの距離は8インチであった。この配置は、バインダのスプレーコーンの100%重なりをもたらすものであった。各バインダは、キャリアとして水を含有するときバインダ固形分約15%でスプレーされた。
湿潤ウェブは、バインダを乾燥させるために華氏395度で作動する長さ約30フィートのオーブン区域を通って運ばれた。次いで、ウェブは回転されて、別のワイヤ上に移され、第2のスプレーブームの下に送られて、別の半分の所望のバインダ固形分が適用され、該ウェブの乾燥繊維重量に対し総重量パーセントの20%がバインダ固形分となるようにされた。次いで、ウェブは、前述のように第2のオーブン区域に通されて、基体の乾燥が完了された。
【0135】
各コードの中央の12インチには、3つの幅4インチのスリットが入れられ、その後の実験のために保存された。
比較バインダ、SSB/RB及びElite−22を、LX−7170−02という製品名でBostik Findley,Inc.によって提供された95モルパーセントのメチルアクリレート(M)と5モルパーセントの[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム(U)とからなるカチオン系塩感応性バインダと比較した。ポリマーは、0.074%のVazo−52開始剤を含有する総固形分30%のアセトン/水(75/25)中で調製された。
調製は、大規模に行われたが、そうでなくても前述の方法に類似するものであった。以下の記述においては、本発明に係るこのバインダを、MU−5と呼ぶ。
【0136】
表17の試験は、各コードが、およそ60gsmの坪量、およそ0.8mmのキャリパ、及びおよそ2,000g/インチのMD乾燥引張強度(MDDT)を有したことを示す。したがって、乾燥及び湿潤ベースシート特性におけるその他の違いは、それぞれのバインダの性能の違いによるものである。
【0137】

【0138】
(湿潤製品変換)
各コードの4インチスリットに湿潤溶液を適用し、それを米国特許第6,429,261号(引用によりここに組み入れる)に記載されたような方法によってロールに巻くことにより、前述の乾燥ベースシート材料を湿潤コアレスロールに変換させた。或いは、湿潤溶液は、手持ち式エアロゾル又はポンプ作動式噴霧器により、所望の寸法のシートに適用された。目標適用量は、典型的には、乾燥ベースシートの重量に対し約100%から400%である。より典型的には、適用量は、乾燥ベースシートの重量に対し約200%から300%である。実験サンプルのほとんどのケースでは、溶液適用量は200%から250%であった。
最小限に、水性湿潤溶液は、拭取り材に適した湿潤強度を与えるのに必要十分なだけの塩を含有するべきである。
塩に加えて、調整された湿潤溶液は、この限りではないが、界面活性剤、保存剤、香料、皮膚軟化剤、pH調整剤、緩衝剤、スキンケア添加剤、及び臭気制御剤を含む他の成分を含むことができる。例示的な調整済み湿潤溶液の成分は、「C01」と称され、表18に示されている。
【0139】

【0140】
(湿潤引張強度及びトリガ特性)
全てのサンプル試験のために、Testworks3.03バージョンのソフトウェアを備えるSinTech社の1/D引張試験機が使用された。空気圧グリップを備えた100ニュートンのロードセルを使用した。2インチのゲージ長、及び12インチ/分のクロスヘッド速度を用いた。複製サンプルのピーク荷重値(g/インチ)を記録し、平均し、どのように測定したかに応じて、機械方向の湿潤引張強度(MDWT)又はクロスデッケル湿潤引張強度(CDWT)として報告した。取り扱う及び測定するには弱すぎたサンプル(典型的には20g/インチより小さい)については、ピーク荷重について「0」が記録された。
各々のサンプルの使用時強度は、前述のように塩溶液又は調製済み湿潤溶液を所望の適用量で適用することによって模擬された。サンプルは、引張強度を測定する前に数時間にわたって平衡化された。廃棄強度又は分散性は、「使用時」として取り扱われたサンプルを過剰量(典型的には800mL)の脱イオン水又は指定された硬度レベル(金属イオンとして)の硬水に移し、引張強度を測定する前にそれらを指定された時間の長さだけ浸すことによって評価した。
【0141】
(NaCl溶液を用いたハンドシートの湿潤強度及び分散性)
表19は、特定のカチオン系バインダのTBAL及びUCTADハンドシート試作品のデータを表わす。これらのデータは、バインダ調製及び組成に応じて、300−400g/インチを超える使用時引張強度をもたらし、硬水中で<50g/インチの残存強度にまで崩壊したことを示す。UCTADティッシュハンドシートはまた、高レベルの使用時引張強度(500−600g/インチ)をもたらし、硬水中でほぼ同じ低いレベルの残存強度にまで崩壊した。





























【0142】

【0143】
(NaCl溶液を用いた空気堆積湿潤強度及び分散性)
表20は、0.5重量%から4.0重量%のNaCl溶液中の分散可能な空気堆積コードのMDWTを詳細に示す。SSB/RBバインダを有するコード202は、2%NaClより下において、非常に低い使用時MDWTを呈する。2%又はそれ以上では、およそ一定であると言える。湿潤ストリップをDI水又は硬水中に入れた後に、MDWTは、湿潤溶液中に存在するNaClの割合に関係なしに、本質的にゼロまで低下する。対照的に、MU−5コードは、0.5%NaClの低さであっても依然として十分な大きさの使用時強度を維持する。また、比較できる塩レベルにおいて、SSB/RBコードを上回る増加した使用時MDWTが与えられる。硬水中では、DI水に対し、動力学的にゆっくりと分散し、より高い度合いの残存強度が維持される。効果の詳細は、現在完全には分かっていないが、それはポリマー主鎖中での少量のエステル加水分解によるものである。

【0144】

【0145】
トリガ活性をもたらすのに必要とされる一価塩の量が少ないために、本発明のバインダは、外部のトリガ剤の使用抜きで、尿、月経血、その他の生物学的流体の存在下で十分な強度を維持することができる。したがって、それらは、予め湿潤された製品よりもパーソナルケア用途に非常に適したものとなる。
【0146】
(他の塩溶液を用いた湿潤強度及び分散性)
表21及び22は、種々の塩溶液中でのMU−5コード#208のMDWT値を詳細に示す。これらのデータは、性能がNaClと類似しており、MU−5の種々の二価及び一価塩がトリガ剤として良好に機能することを示す。使用時強度は、4%塩中で少なくとも約500g/インチであり、2%塩中では少なくとも約400g/インチである。硬水中では、DI水に対し、分散性が動力学的に遅く、より僅かに高い度合いの残存強度が維持される。















【0147】

【0148】

【0149】
(C01溶液を用いた湿潤強度及び分散性)
表23は、調整済みC01湿潤溶液中の空気堆積コードのMDWTを詳細に示す。平均して、MU−5コードは、SSB/RBコードより約25%高い強度を示す。SSB/RBコードは、MU−5コードに対し、より速く分散し、残存強度レベルはより高かった。しかしながら、これらは、C01溶液を用いたMU−5コードのDI水及び硬水中での分散性の僅かな差が現れた。硬水中では、強度は24時間後に70g/インチより低い値にまで低下した。





【0150】

【0151】
(空気堆積ベースシートの剛性)
前述のように、ベースシートが、乾燥状態と湿潤状態との両方において低い剛性をもつことが望ましい。乾燥状態においては、ベースシートは、特にコアレスロールの湿潤巻き及び製造に関して、変換し及び取り扱うために、より大きい可撓性を維持することが望ましい。また、湿潤状態での低い製品剛性が望ましい。より可撓性の大きい湿潤製品は、使用された時に身体及び手に対して良好な感触及び適合性を与える。また、より剛性の小さい拭取り材シートは、乱れ及び流れに対する抵抗性の低いものとすることができ、詰ることなく家庭の配管設備をより良好にきれいにすることができる。乾燥ベースシート及び湿潤製品剛性は、引用によりここに組み入れるキンバリー・クラーク社に譲渡された出願継続中の米国特許出願第09/900,698号に記載されたCupCrushTestによって特徴付けられる。表24は、3つのベースシートコードのCupCrush結果を与える。乾燥状態においては、SSB/RBバインダを有するコード202は、より高い全クラッシュエネルギー及びピーク荷重値によって示される他のコードより剛性が高い。カチオン系MU−5バインダは、低TgのElite−PEバインダと同様の乾燥全クラッシュエネルギー及びピーク荷重結果を与える。湿潤状態においては、Elite−PEバインダを用いたコードは、バインダの架橋性による最も高い全クラッシュエネルギー及びピーク荷重を与える。MU−5及びSSB/RBコードは、湿潤状態において概ね同等の値を与える。
【0152】

【0153】
カップクラッシュは、製品の柔軟性及び可撓性の尺度であり、値が低くなると、湿潤拭取り材がより柔軟にかつより可撓性となり、それゆえ製品がより望ましいものとなる。乾燥状態においては、約500gより低いピーク荷重と、約4000g*mmより小さい全クラッシュエネルギーとをもつことが望ましい。より望ましくは、乾燥ピーク荷重は、約400gより小さくなり、全クラッシュエネルギーは、約3000g*mmより小さくなる。最も望ましくは、乾燥ピーク荷重は、約300gより小さくなり、全クラッシュエネルギーは、約2000g*mmより小さくなる。
本発明の湿潤拭取り材は、約40gより小さいカップクラッシュと、約450g*mmより小さい湿潤全クラッシュエネルギーとを有することが望ましい。より望ましくは、湿潤拭取り材は、約30gより小さいカップクラッシュと、約350g*mmより小さい湿潤全クラッシュエネルギーとを有する。さらにより望ましくは、湿潤拭取り材は、約20gより小さいカップクラッシュと、約250g*mmより小さい湿潤全クラッシュエネルギーとを有する。
【0154】
(湿潤性)
前述のように、乾燥ベースシートは、高い度合いの湿潤性を有することが望ましい。これは、コアレスロールの湿潤巻き及び製造に関して特に重要である。乏しい湿潤性により、湿潤工程におけるウェブの制御性が乏しくなり、湿潤巻き工程における作動速度が減少することになる。自動液滴投与システム及びCCDカメラを備えたノースカロライナ州シャーロット所在のKruss USA社のDrop Shape Analyzer(DSA−10)を用いて、乾燥ベースシートの湿潤性を評価した。DSAは、高速写真技術を用いて、液滴が多孔性基体に接触し、吸収されるのを捕らえる。これらの画像は、製造業者によって提供されたソフトウェアで評価することができ、本発明における空気堆積基体のような不織材の接触角及び流体取込時間を測定するのに用いられる。
【0155】
表25は、他の点では同様の物理的特性をもつベースシートコードについて、MU−5コードが、良好な湿潤性、すなわち最短の液滴吸収時間を与えることを示す。このMU−5についての短い吸収時間は、湿潤巻き工程において高い作動速度で稼動する可能性が最も高いことを示す。


本発明の目的上、ベースシートは、約150msより短いDSA吸収時間をもつことが望ましい。望ましくは、ベースシートは、約100msより短いDSA吸収時間をもつ。より望ましくは、ベースシートは、約75msより短いDSA吸収時間をもつ。
【0156】
(粘着性)
低い製品粘着性又は粘性は、別の望ましい特性である。低い粘着性は、良好な消費者感覚及び触覚性、並びに製品分与の容易さを与える。C01湿潤溶液で湿らされたベースシートサンプルのシートとシートとの接着は、ニューヨーク州スカーズデール所在のTexture Technologies,Inc.のStable Microsystems TA−XT21 Texture Analyzerで測定した。0.1gの力の解像度をもつ5kgのロードセルを使用した。使用されたプローブは、可撓性材料の粘着性及び接着性用のTexture Technologies TA−310 indexable Release Liner Rigであった。底部プラテンリグは使用しなかったが、Texture TechnologiesのTA−96ダブルクランプセットからのプラテンリグと交換した。さらに、プラテンクランプリグの内側の材料プラットフォームとして、厚さ0.25cmのステンレススチールブロックを使用した。各試験リグは、クランプされた試験材料との最大接触面積を与えるために、Plexiglasシム(およそ2.5cm×4.4cm×0.25cm)を装備している。以下の試験手順を用いた。
【0157】
各シートは、(ロールの機械方向に)4つの2.5cm(1インチ)幅の区域に区分された。サンプルは、迅速に切断され、次いで湿潤溶液が乾ききるのを防ぐために、サンプル容器に戻された。試験の最初の実行の前に、Texture Analyzerについて概説された手順に従ってロードセルを校正した。
シートの1つのストリップを、ステンレススチールブロック(この実験に用いられたブロックは、丸みの付いた縁部と滑らかな縁部とを有するものであった)の滑らかな縁部の上に長さ方向に迅速にかけた。各シートは、ブロックの中央にくるように調節された。シートに手で少量の張力をかけた。Plexiglasシムの1つを、スチールブロックのベース付近のストリップの下部においた。第2シムをブロックの上面から底面にスライドさせることによって、ストリップの他方の側に張力をかけた。張力を維持した状態で、ブロック/シート/シム装置をプラテンクランプに配置した。組立体を中心に配置し、Plexiglasシムに接触するクランプジョーによって一定位置に張った。
【0158】
シートの第2ストリップをTA−310プローブの上にかけ、中央にくるようにした。手で少量のシート張力をかけた。1つのPlexiglasシムを、ストリップと張力スクリュとの間にスライドさせ、次いで下向きに取り付けた。第2シムを、プローブの他方の側にスライドさせ、下向きに取り付けた。このステップの間、ストリップとプローブとの間にどんなギャップも存在しないようにシート張力を維持した。さらに、シムを、プローブ端部から同じ距離に維持して、試験の間にシートにかかる圧力を一定に維持した。次いで、プローブをロードセルに取り付けた。試験のストリップを位置合わせするために、プラテンリグに微調整を行った。上記のステップは、シートが乾ききらないことを保証するために、3分より短い時間で完了させた。
【0159】
Texture Expert Exceedソフトウェアを使用して、表26における以下のパラメータを用いて粘着力対距離曲線を作成した。


【0160】
この方法を用いてピーク粘着力を求め、そのデータを表27に示した。SSS/RSバインダを用いたコード202は、最も高い粘着力を有し、それはMU−5コードより著しく高かった。コード213は、バインダの分散せずに架橋する性質のために最も低い粘着力を呈した。
【0161】

本発明の目的上、湿潤ベースシートは、約50gより小さいピーク粘着力を有することが望ましい。望ましくは、湿潤ベースシートは、約35gより小さいピーク粘着力を有する。より望ましくは、湿潤ベースシートは、約10gより小さいピーク粘着力を有する。
【0162】
(製品pH)
また、製品から変化されるか又は示される湿潤溶液のpHを容易に制御することが望ましい。その目的は、製品と接触する皮膚のための適正な又は最適なpHを与えることである。普通の皮膚のためのpH範囲は、約4.5−5.5であり、最適な湿潤溶液は、穏やかな洗浄を保証するためにこの範囲内で調製されるべきである。理想的には、示された溶液のpHは、調製された溶液のpHに近いままであるべきである。言い換えれば、湿潤溶液のpHのみによって、製品の示されたpHを制御することが望ましい。
Acufet(登録商標)固相電極を装備したAcumet(登録商標)AR25pHメータ(ペンシルベニア州ピッツバーグ所在のFisher Scientific)を用いて、前述のC01湿潤溶液で湿潤された空気堆積コードの示されたpH値を測定した。4つの4×4.5インチシートを、60mLシリンジに入れ、そこからきれいなポリエチレンバッグの中に溶液を押し出した。この手順は、各コードについて2回以上繰り返した。各サンプルのpHを測定し、値を平均した。これらの値を以下の表28に列挙した。SSB/RBコードは、大きなpHシフトダウンを与えた。SSBバインダは、ポリマー主鎖中に大量のカルボン酸残基を有し、それが湿潤溶液に固有のプロトン源を与え、示されたpHを押し下げる。Elite−PEコードは、より小さくより穏やかな下方へのpHシフトを与える。MU−5コードのpH値は、認められているように、バインダpHがSSBより低い場合であっても上方への僅かなpHシフトを与える。これは、MU−5が、固有の酸の源をもたず、示されたpHが湿潤溶液のpHによって容易に制御されたことを示す。
【0163】

【0164】
(乾燥ベースシートの一時的な湿潤強度)
前述のように、MU−5空気堆積コードは、トリガ活性を与えるために低レベルの塩又はトリガ剤を要求する。また、本発明のバインダは、それらの溶解特性により、乾燥ティッシュ、タオル、その他の製品のために加えられる塩が存在しない状態で、湿潤強度及び/又は一時的な湿潤強度を与えるのに適している。これは、以下の表29によって示される。表29は、即時の湿潤引張強度を示し、MU−5空気堆積コードの引張強度は、種々のレベルの硬水中で低下する。約400g/インチの即時の湿潤引張強度が見られた。24時間又はそれより短い時間の後に、水の硬度レベルに応じて、湿潤引張強度がおよそ70−100g/インチにまで低下した。強度は、DI水又は軟水中で>20g/インチにまで低下した。
【0165】

【0166】
もちろん、上記は、本発明の或る開示された実施形態にのみ関するものであって、特許請求の範囲の請求項に示されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに多くの修正又は変更を行うことができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性材料と、
前記繊維性材料を結合して一体化されたウェブにするためのバインダ組成物と、
を含み、前記バインダ組成物は、ビニル官能性カチオン系モノマーと、炭素原子が1から4までのアルキル側鎖を有する1つ又はそれ以上の疎水性ビニルモノマーとの重合生成物を含み、
前記繊維性材料は、約0.3重量%から約10重量%の一価又は二価塩を含有する水性塩溶液を含む湿潤溶液によって湿潤され、前記バインダ組成物が前記湿潤溶液中に溶けず、前記バインダ組成物が200ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に分散するようにされたことを特徴とする湿潤拭取り材。
【請求項2】
前記一価又は二価塩が、約0.5重量%から約5重量%までの濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項3】
前記一価又は二価塩が、約1.0重量%から約4.0重量%までの濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項4】
前記一価又は二価塩がハロゲン化アルカリ金属であることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項5】
前記一価又は二価塩が、NaCl、NaBr、KCl、NH4Cl、Na2SO4、ZnCl2、CaCl2、MgCl2、MgSO4、NaNO3、NaSO4CH3、及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項6】
前記一価又は二価塩がNaClであることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項7】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチル塩化アンモニウム、N,N−ジアリルジメチル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウム、及び[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項8】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、後でそのポリマーを第4級化することができるビニルピリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート、及びジメチルアミノエチルメタクリレートから選択された前駆体モノマーから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項9】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチル臭化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルヨウ化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチル硫酸メチルアンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項10】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチル臭化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルヨウ化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチル硫酸メチルアンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項11】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル臭化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチルヨウ化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]トリメチル硫酸メチルアンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項12】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチル臭化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチルヨウ化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]トリメチル硫酸メチルアンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項13】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチル塩化アンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチル臭化アンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルヨウ化アンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチル硫酸メチルアンモニウム、から選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項14】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、N,N−ジアリルジメチル塩化アンモニウム、N,N−ジアリルジメチル臭化アンモニウム、N,N−ジアリルジメチルヨウ化アンモニウム、及びN,N−ジアリルジメチル硫酸メチルアンモニウム、から選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項15】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル臭化アンモニウム、[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジルヨウ化アンモニウム、及び[2−(アクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル硫酸メチルアンモニウム、から選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項16】
前記ビニル官能性カチオン系モノマーが、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル塩化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル臭化アンモニウム、[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジルヨウ化アンモニウム、及び[2−(メタクリロキシ)エチル]ジメチルベンジル硫酸メチルアンモニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項17】
前記疎水性ビニルモノマーが、分岐鎖又は直鎖アルキルビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド及びアクリレートから選択されることを特徴とする請求項1に記載の湿潤拭取り材。
【請求項18】
繊維性材料と、
前記繊維性材料を結合して一体化されたウェブにするためのバインダ組成物と、
を含み、前記バインダ組成物は、以下の構造をもつ組成物を含み、
【化1】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約60から約99モルパーセント、及びz=0から約30モルパーセントであり、Qは、C1−C4アルキルアンモニウム、第4級C1−C4アルキルアンモニウム及びベンジルアンモニウムから選択され、Zは、−O−、−COO−、−OOC−、−CONH−、及び−NHCO−から選択され、R1、R2、R3は、水素及びメチルから個別に選択され、R4は、C1−C4アルキルであり、R5は、水素、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレンから選択され、
前記繊維性材料は、約0.3重量%から約10重量%の一価又は二価塩を含有する水性塩溶液を含む湿潤溶液によって湿潤され、前記バインダ組成物が前記湿潤溶液中に溶けず、前記バインダ組成物が200ppmまでのCa2+及び/又はMg2+イオンを含有する水に分散するようにされたことを特徴とする湿潤拭取り材。
【請求項19】
前記一価又は二価塩が、約0.5重量%から約5重量%までの濃度を有することを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項20】
前記一価又は二価塩が、約1.0重量%から約4.0重量%までの濃度を有することを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項21】
前記一価又は二価塩がハロゲン化アルカリ金属であることを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項22】
前記一価又は二価塩が、NaCl、NaBr、KCl、NH4Cl、Na2SO4、ZnCl2、CaCl2、MgCl2、MgSO4、NaNO3、NaSO4CH3、及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項23】
前記一価又は二価塩がNaClであることを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項24】
前記組成物が、以下の構造をもつカチオン系アクリレート又はメタクリレートと、1つ又はそれ以上のアルキルアクリレート又はメタクリレートとの重合生成物であり、
【化2】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約60から約99モルパーセント、及びz=0から約30モルパーセントであり、R4は、C1−C4アルキルであり、R5は、水素、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレンから選択されることを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項25】
前記組成物が、以下の構造を有し、
【化3】

式中、x=1から約15モルパーセント、y=約85から約99モルパーセント、及びR4は、C1−C4アルキルであることを特徴とする請求項18に記載の湿潤拭取り材。
【請求項26】
x=約3から約6モルパーセント、y=約94から約97モルパーセント、及びR4は、メチルであることを特徴とする請求項25に記載の湿潤拭取り材。
【請求項27】
繊維性材料と、
前記繊維性材料を結合して一体化されたウェブにするためのバインダ組成物と、
を含み、前記バインダ組成物は、以下の構造をもつ組成物を含み、
【化4】

式中、x=3から約6モルパーセント、y=約96から約97モルパーセント、及びR4は、メチルであり、
前記繊維性材料が、約1重量%から約4重量%までのNaClを含む水性塩溶液からなる湿潤溶液によって湿潤されることを特徴とする湿潤拭取り材。

【公表番号】特表2006−500101(P2006−500101A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537751(P2004−537751)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/028244
【国際公開番号】WO2004/026354
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】