説明

改良された機械的特性を有するポリカーボネート組成物

【課題】高い耐熱変形性、改良された曲げ疲れ強さを有するポリカーボネート組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1a)で表される1以上の環状脂肪族ビスフェノールに基づく少なくとも1種のポリカーボネート、82〜99.5重量%、および(B)少なくとも一つのエチレンアルキルアクリレートブロックコポリマー、0.5〜18重量%を含有するポリカーボネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2009年12月12日に出願されたドイツ特許出願1020009058100.6の利益を主張し、それの全てをこの出願の中に導入する。
【従来技術】
【0002】
本発明は、高温で安定な少なくとも一つのポリカーボネートおよび少なくとも一つのエチレン‐アルキルアクリレートブロックコポリマーを含有する組成物に関する。本願はまた、これらの組成物から得られる成形物または射出成形物品および押出物、ポリカーボネート組成物を調製する方法および成形物や押出物に関する。これらのポリカーボネート組成物は、高い熱安定性とともに、組成物から得られた材料から製造されるフィルムの曲げ疲れ強さが改良される点で優れている。
【0003】
自動車のシートでは、エアーバッグの発射を制御できるフィルムを使用している。即ち人の重さやシート位置に応じてエアーバッグが選択的に発射されるものである。これらのフィルムは高温に安定なければならない、導電性ペーストを印刷してもかなり高い乾燥温度を用いることができる。シート表面の曲げ応力により、フィルムは耐曲げ性に関して特定の要求を付加的に満足しなければならない(曲げ疲れ強さ、ISO5625によるショッパー(Schopper)に基づく折り曲げ数(double fold number)によって決定)。
【0004】
フィルムの基材として高温に安定なポリカーボネートを使用することは知られている。これらの製品は、バイエルマテリアルサイエンスAGからBayfolR1202として入手可能であり、例えば拡声器膜に使用されている。
【0005】
これらのフィルムは、その高い熱安定性の為に、上記の用途に好適であるが、耐屈曲性が不十分でもある。
【0006】
エラストマーの添加によるポリマーの期待的特性を改善することも知られている。
【0007】
例えば、WO2006/01570A1(特許文献1)には、ポリカーボネートに0.1〜50重量%のエチレン−アルキルアクリレートコポリマーを混合したものが記載されている。この公報の材料は他の特性を保持したまま、高い流れ特性と高い衝撃強さを有している。しかしながら、この公報には、所望の用途に必要な高温での安定なポリカーボネートについては記載がない。この公報には折り曲げ数の改善は教示されていない。
【0008】
WO2006/042638A1には、エチレン−アルキルアクリレートコポリマーとエチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマーとの組合せに変性剤を添加することによるポリカーボネート/ABSブレンドの改良が開示されている。この公報にも、本発明の組成物における高温で安定なポリカーボネートについての記載はない。
【0009】
EP362646A2には、エラストマーと共に高い耐熱変形性を有するポリカーボネート組成物を記載する。しかし折り曲げ数に関する改良特性は記載されていない。この公報は、特に、本発明の用途における特定の変性剤が所望の目的をもたらすとの示唆を記載していない。
【0010】
DE4009759A1には、より優れた相溶性を示す混合物を提供する方法として、高い耐熱変形性を有するポリプロピレンとポリカーボネートとの混合を開示する。
【0011】
EP722984A2には、高温で安定なポリカーボネートとエチレン、アクリレートおよびエポキシ官能性モノマーのターポリマーとの混合物が開示されている。ここでの効果は、ポリカーボネートの応力亀裂抵抗および衝撃強さの改善であり、耐熱変形性は保持されている。しかしながら、この出願は異なる特性の組成を記載している。
【0012】
この出願では、ポリカーボネート組成物(またはブレンド)は、添加剤を必要に応じて添加してもよい2種以上のポリカーボネートの混合物を意味するものと理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2006/01570A1
【特許文献2】WO2006/042638A1
【特許文献3】EP362646A2
【特許文献4】DE4009759A1
【特許文献5】EP722984A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術から出発して、高い耐熱変形性を有するポリカーボネート組成物を提供することが目的であり、その組成物改良された曲げ疲れ強さを有している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、A)高い耐熱変形性を有し、式(1a):
【化1】

[式中、R1およびR2は互いに独立して、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、またはC〜C12アラルキルであり、nは4〜7の整数であり、R3およびR4は各Xで個々に選択的であり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、Xは炭素であり、ただし、少なくとも1つのXについて、R3およびR4は同時にアルキルである。]
で表される1以上の環状脂肪族ビスフェノールに基づく少なくとも1種のポリカーボネート、成分AおよびBの総重量部にそれぞれ基づいて82〜99.5重量%、および
B)少なくとも一つのエチレン−アルキルアクリレートブロックコポリマー、成分AおよびBの総重量部にそれぞれ基づいて、0.5〜18重量%
を含有するポリカーボネート組成物を提供する。
【0016】
本発明の別の態様では、上記のポリカーボネート組成物において、R1およびR2が、互いに独立して、塩素、臭素、メチル、フェニルまたは水素であり、nが4または5であるものである。
【0017】
本発明の別の態様では、成分AがビスフェノールAおよびビスフェノールTMCのコポリカーボネートを含有する上記組成物を提供する。
【0018】
本発明の更に別の態様は、組成物が成分A89〜99重量部および成分B1〜11重量部(重量部は成分Aおよび成分Bの合計量に基づく)を含有する上記組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、成分Bのエチレン‐アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが式(4):
【化2】

[式中、Rはメチルまたは水素であり、Rは水素またはC〜C12アルキル基であり、nおよびmは重合度である。]
で表されるエチレン‐アルキル(メタ)アクリレートブロックコポリマーである上記ポリカーボネート組成物を提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、Rがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ヘキシル、イソアミル、またはt−アミルである上記のポリカーボネート組成物を提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、重合度n:重合度mの比が1:300〜90:10の範囲である上記のポリカーボネート組成物を提供する。
【0022】
本発明の別の態様は、さらに、成分AおよびBの総重量部に基づいて、成分Cとして添加剤0〜5重量部含有する上記のポリカーボネート組成物を提供する。
【0023】
本発明の別の態様は、上記のポリカーボネート組成物から得られた成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネートを提供する。
【0024】
本発明の別の態様は、少なくとも一つのポリカーボネートがコポリカーボネートである、上記のポリカーボネート組成物から得られた共押出層を含有する成形品、押出物またはフィルムを提供する。
【0025】
本発明の別の態様は、成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネートが電子デバイスまたは装置のハウジング部品、工具ハウジング、携帯電話、加熱/排気パネル、タコメーターのディスク、装備ダイヤル、パネル、電気または電子デバイスのキーボード、レンズ、スクリーン/ディスプレーカバー、LED用途、または自動車シート用フィルムである上記の成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネートを提供する。
【0026】
本発明の別の態様は、電子デバイスまたは装置がスイッチボックスである上記の電子デバイスまたは装置のハウジング部品を提供する。
【0027】
本発明の別の態様は、界面法による一以上ポリカーボネートを配合する工程を含む上記のポリカーボネート組成物の調製方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
驚くべきことに、エラストマー状変性剤(モノマーの一つとしてエチレンを有するエラストマー状ブロックコポリマー)を高温で安定なポリカーボネートに添加することが耐熱変形性(ビカー軟化温度>165℃)を大きく低下することなく、折り曲げ数(double fold number)を改善することが解った。
【0029】
単にエチレン−アルキルアクリレートブロックコポリマーを添加することで、熱安定性に対する高い要求を満足し、得られた材料から製造されるフィルムの曲げ疲れ強さを改善することが可能となった。
【0030】
異なるフィルムの厚さにおいてショッパー(Schopper)による折り曲げ数を決定する曲げ抵抗の測定に置いて、切り欠き衝撃強さ(nocched impact strength)に改良は曲げ抵抗の改善と対応していないことが解った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、A)高い耐熱変形性を有し、式(1a):
【化3】

[式中、R1およびR2は互いに独立して、水素、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素)、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、またはC〜C12アラルキル、好ましくはメチル、フェニルまたはHで、特にHであり、nは4〜7、好ましくは4または5の整数であり、R3およびR4は各Xで個々に選択的であり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、Xは炭素であり、ただし、少なくとも1つのXについて、R3およびR4は同時にアルキル、好ましくはメチルである。]
で表される1以上の環状脂肪族ビスフェノールに基づく少なくとも1種のポリカーボネート(特に好ましくはビスフェノールAおよびビスフェノールTMCのコポリカーボネート)、成分AおよびBの総重量部にそれぞれ基づいて82〜99.5重量%、好ましくは85〜99重量%、および
B)少なくとも一つのエチレン−アルキルアクリレートブロックコポリマー、成分A+Bの重量部にそれぞれ基づいて、0.5〜18重量%、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1〜11重量%、最も好ましくは1〜10重量%、
C)要すれば、添加剤、成分A+Bの重量部にそれぞれ基づいて、0〜5重量部、好ましくは0〜2重量部、特に好ましくは0〜1重量部、
を含有するポリカーボネート組成物を提供する。
【0032】
成分A
適当なポリカーボネートは、好ましくは高分子量、熱可塑性、Mw(重量平均分子量)少なくとも10,000g/モルを有する芳香族ポリカーボネートであり、式(1)
【化4】

[式中、RおよびRは互いに独立して、水素、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素)、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アリール(好ましくはフェニル)、またはC〜C12アラルキル(好ましくはフェニル−C〜Cアルキル、特にベンジル)であり、nは4〜7、好ましくは4または5の整数であり、R3およびR4は各Xで個々に選択的であり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、Xは炭素であり、ただし、少なくとも1つのXについて、RおよびRは同時にアルキルである。]
の2官能性カーボネート構造ユニットを含む。
【0033】
ポリカーボネートの出発材料は式(1a)
【化5】

[式中、X、R、R、R、Rおよびmは式(1)に記載のものと同意義である。]
のジヒロドキシジフェニルシクロアルカンである。
【0034】
好ましいアルキル基は、メチルであり、ジフェニル置換C原子(C−1)に対してα位にあるXは好ましくはジアルキル置換でないが、一方C−1に対してβ位のアルキルジ置換が好ましい。
【0035】
シクロ脂肪族基(式(1a)においてm=4または5)における5および6環炭素原子を有するジヒドロキシジフェニルシクロアルカン、例えば下記式(1b)〜(1d)
【化6】

のジフェノールが好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(式(1b)においてRおよびRがHのもの)が特に好ましい。ポリカーボネートは、式(1a)のジフェノールからドイツ特許出願DE3,832,396A1に従って調製されうる。
【0036】
ホモポリカーボネートの形成には、式(1a)の一つのジフェノールを用い、コポリカーボネートの形成には式(1a)の複数のジフェノールを使用することが可能である。
【0037】
また、式(1a)のジフェノールは、高分子量、熱可塑性、芳香族ポリカーボネートの調製には、他のジフェノール、例えば式(2)のもの:
HO−Z−OH (2)
との混合物として用いてもよい。
【0038】
好適な式(2)の他のジフェノールは、Zが炭素数6〜30の芳香族基であるものであり、それは一以上の芳香環を有してもよく、置換されてもよく、かつ架橋部として式(1a)またはヘテロ原子のもの以外の脂肪族基または環状脂肪族基を有してもよい。
【0039】
式(2)のジフェノールの例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビ(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフォキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの核にアルキル化およびハロゲン化された化合物が挙げられる。
【0040】
これらのおよび更に好適なジフェノールは、例えばUS−A 3,028,365、2,999,835、3,148,172、3,275,601、2,991,273、3,271,367、3,062,781、2,970,131および2,999,846;およびDE−A 1,570,703、2,063,050、2,063,052、2,211,956;Fr−A1,561,518;モノグラフ、「H.Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates」 Interscience Publishers、ニューヨーク、1964に記載されている。
【0041】
好ましい他のジフェノールの例としては、4,4’−ジヒドロキビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロソキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0042】
式(2)の特に好ましいビスフェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0043】
特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。他のフェノール類も個別にまたは混合物として使用してもよい。
【0044】
式(1a)のジフェノールと要すれば同時に使用してもよい式(2)の他のジフェノールとのモル比(式(1a)/式(2))は(1a)100モル%/(2)0モル%〜(1a)2モル%/(2)98モル%;好ましくは(1a)100モル%/(2)0モル%〜(1a)10モル%/(2)90モル%;および特に(1a)100モル%/(2)0モル%〜(1a)30ル%/(2)70モル%であるべきである。
【0045】
式(1a)のジフェノール、要すれば他のジフェノールとの組み合わせから得られる高分子量ポリカーボネートは公知のポリカーボネートの調製方法によって得られうる。種々のジフェノールは、互いにランダムにまたはブロック的に結合していてもよい。
【0046】
本発明によるポリカーボネートは、それ自体公知の方法で分岐してもよい。分岐が望ましいのならば、少量、好ましくは0.02〜2.0モル%(使用されるフェノールの量に基づく)の三官能若しくは三官能以上の化合物、特に3以上のフェノール性水酸基を有するものを導入して縮合により分岐を公知の方法で達成してもよい。3以上のフェノール性水酸基を有する分岐剤は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシー5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサ[4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニル]オルトテレフタル酸エステル、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ[4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ]メタンおよび1,4−ビス[4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンが例示される。他の三官能化合物は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル酸および3,3−ビス(3−メチルー4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールが挙げられる。
【0047】
通常の濃度における単官能化合物はポリカーボネートの分子量の制限(制限自体は公知である。)用の連鎖停止剤として機能する。好適な化合物の例としては、フェノール、t−ブチルフェノールまたは他のアルキル置換フェノールである。特に、少量の式(3)
【化7】

(式中、Rは分岐C−および/またはC-−アルキル基を表す。)
のフェノールが分子量の制限に好適である。
【0048】
アルキル基Rにおいて、CHのプロトンの割合は、好ましくは47〜89%であり、CHおよびCHのプロトンの割合は53〜11%である。また、好ましくは、RはOH基に対してo−および/またはp−位に存在し、特に好ましくはオルト部分の上限は20%である。連鎖停止剤は一般に使用されるジフェノールに基づいて、0.5〜10モル%、好ましくは1.5〜8モル%である。
【0049】
ポリカーボネートは公知の方法における相境界法(H.Schnell、「ポリカーボネートの化学および物理」、ポリマー・レビュー、第IX冊、第33頁以降、Interscience Publ.1964年参照)により調製されてもよい。
【0050】
ここで、式(1a)のジフェノールは、水性アルカリ相に溶解されている。コポリカーボネートの他のジフェノールでの調製において、式(1a)のジフェノールおよび他のジフェノール、例えば式(2)のものの混合物が使用される。分子量の調整には、連鎖停止剤、例えば式(3)のものを加えることもできる。次いで、ホスゲンとの反応を不活性有機相、好ましくはポリカーボネート溶解有機相の存在下に相境界凝縮法によって行われる。反応温度は0〜40℃である。
【0051】
要すれば付随的に使用された分岐剤(好ましくは0.05〜2.0モル%)は最初にアルカリ水相にジフェノールと導入するか、ホスゲン化の前に有機溶媒中に溶液において添加してもよい。式(1a)のジフェノールおよび他のジフェノール(1a)の添加において、そのモノ−および・またはビスクロロカルボン酸エステルもまた、付随的に使用してもよく、これらは有機相に溶液で添加する。連鎖停止剤および分岐剤の量は、式(1a)および要すれば式(2)に対応するジフェノレート基のモル量に依存する。クロロカルボン酸エステルの付随的な使用については、ホスゲンの量は公知の方法で減少されうる。
【0052】
連鎖停止剤、分岐剤およびクロロカルボン酸エステルの為の好適な有機溶媒は、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン、特に塩化メチレンとクロロベンゼンの混合物である。要すれば、使用される連鎖停止剤および分岐剤は上記溶媒中に溶解されうる。
【0053】
例えば、塩化メチレン、クロロベンゼンおよび塩化メチレンとクロロベンゼンの混合物は相境界ポリ縮合用の有機相として使用される。
【0054】
例えば、NaOH溶液は水性アルカリ相として使用する。ポリカーボネートの相境界法による調製は一般的に触媒、例えば第3級アミン、特に第3級脂肪族アミン、例えばトリブチルアミンまたはトリエチルアミンを用いて行われる。触媒は使用するジフェノールのモルに基づいて、0.05〜10モル%の量で使用される。触媒はホスゲン化の始まる前、ホスゲン化の間若しくはその後でも添加される。
【0055】
ポリカーボネートは均一相における公知の方法、いわゆる「ピリジン法」および、ホスゲンの代わりにジフェニルカーボネートを使用する公知の溶融トランスエステル法によって調製してもよい。
【0056】
別の溶融トランスエステル法において、相境界法のために既に記載した芳香族ジヒロドキシ化合物が適当な触媒および要すれば溶融物中の添加剤によってカルボン酸ジエステルでトランエステル化される。
【0057】
本発明において、カルボン酸ジエステルは、式(4)および(5)
【化8】

(式中、R、R’およびR”はそれぞれ独立して、H、要すれば分岐C〜C34−アルキル/シクロアルキル、C〜C34アルカリールまたはC〜C34アリールを示してもよい。)
を有するもの、例えばジフェニルカーボネート、ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジブチルフェニルカーボネート、イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソブチツフェニルカーボネート、t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネート、n−ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−ペンチルフェニル)カーボネート、n−へキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−へキシルフェニル)カーボネート、シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソオクチルフェニルカーボネート、n−ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−ノニルフェニル)カーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルカーボネート、ナフチルフェニルフェニルカーボネート、ジナフチルフェニルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(ジ−t−ブチルフェニル)カーボネート、ジクミルフェニルフェニルカーボネート、ジ(クミルフェニル)カーボネート、4−フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジトリチルフェニルカーボネート、好ましくはジフェニルカーボネート、t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルフェニルカーボネート、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0058】
上記カルボン酸ジエステルの混合物も使用可能である。
【0059】
カルボン酸ジエステルの量はジヒドロキシ化合物に基づいて、100〜130モル%、好ましくは103〜120モル%、特に好ましくは103〜109モル%である。
【0060】
塩基性触媒、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属ヒドロキシドおよびオキシド、またはアンモニウム塩またはホスホニウム塩(以下、オニウム塩と呼ぶ。)を本発明における上記文献に記載の溶融トランスエステル法に触媒として用いる。オニウム塩が好ましくは用いられ、特に好ましくはホスホニウム塩である。本発明においてホスホニウム塩は以下の一般式(6)
【化9】

(式中、R1ー14は、同一または異なって、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、C〜C10アラルキルまたはC〜Cシクロアルキル、好ましくはメチルまたはC〜C10アリール、特に好ましくはメチルまたはフェニルであってよく、Xは、アニオン、例えばヒドロキシド、サルフェート、ハイドロジェンサルフェート、ビカーボネート、カーボネート、ハライド、好ましくはクロライド、または式OR(式中RはC〜C14アリールまたはC〜C12アラルキル、好ましくはフェニルである。)のアルコレートであってよい。)
のものである。好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムフェノレート、特に好ましくはテトラフェニルホスホニウムフェノレートである。
【0061】
触媒はジフェノール1モルにもとづいて、10ー8〜10ー3モル、特に好ましくは10ー7〜10ー4モルの量で用いられる。
【0062】
更に、触媒は単独、若しくは重合率を上げるためにオニウム塩を必要に応じて添加してもよい。これらには、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウムのヒドロキシド、アルコキシドおよびアリールオキシド、好ましくはナトリウムのヒドロキシド、アルコキシドまたはアリールオキシドを包含する。最も好ましくはナトリウムヒドロキシドおよびナトリウムフェノレートである。共触媒の量はナトリウムとして計算して、1〜200ppb、好ましくは5〜150ppb、最も好ましくは10〜125ppbであってよい。
【0063】
芳香族ジヒドロキシ化合物およびカルボン酸ジエステルの溶融中でのトランスエステル反応は好ましくは2段階でおこなわれる。最初の段階では、芳香族ジヒドロキシ化合物およびカルボン酸ジエステルを80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に好ましくは120〜190℃で、大気圧下0〜5時間、好ましくは0.25〜3時間で溶融化が行われる。触媒を添加した後、オリゴカーボネートが芳香族ジヒドロキシ化合物とカルボン酸ジエステルから真空(2mmHgまで)中昇温(260℃まで)下モノフェノールの蒸留によって調製される。このプロセスから主な蒸気がここでおこる。このように調製されたオリゴカーボネートは重量平均分子量(ジクロロメタン中での相対溶液粘度またはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量の混合物中での相対溶液粘度を測定して、光散乱によって補正して決定される。)2000g/モル〜18000g/モル、好ましくは4000g/モル〜15000g/モルの範囲を有する。
【0064】
第2段階では、ポリカーボネートは、温度250〜320℃、好ましくは270〜295℃で、圧力<2mmHgで、ポリ縮合間で調製される。プロセスからの蒸気の残りはここで取り除く。
【0065】
触媒は互いに2以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属触媒の使用では、アルカリ金属およびアルカリ土類金属触媒を後に(例えば、第2段階でのポリ縮合におけるオリゴカーボネート合成の後)添加するのが有利である。
【0067】
芳香族ジヒドロキシ化合物およびカルボン酸ジエステルのポリカルボン酸を与える反応は、本発明の方法ではバッチであるいは好ましくは連続的に、例えば撹拌タンク、薄層エバポレーター、落下フィルムエバポレーター、撹拌タンクカスケード、押出機、ニーダー、単純ディスク反応器および高粘度ディスク反応器で行ってもよい。
【0068】
分岐ポリ−またはコポリカーボネートは多官能性化合物を用いて相境界法で同様に調製される。
【0069】
ポリカーボネートは、好ましくは分子量Mw(ゲルクロマトグラフィーによって決定後補正する、重量平均)少なくとも10,000g/モル、特に好ましくは20,000〜300,000g/モル、就中20,000〜80,000g/モルを有する。それらは直鎖状または分岐鎖状であってよく、式(1a)のジフェノールに基づくホモポリカーボネートまたはコポリカーボネートである。
【0070】
式(1a)のジフェノールを導入することによって、高い耐熱変形性を有する新規なポリカーボネートが形成され、それらはまた優れた他の特性をも有している。このことは、特に式(1a)のジフェノールにおいて、mが4または5のもの、および同じ式(1a)のジフェノールにおいて、RおよびRが互いに独立して式(1a)に記載された意味を有し、特にこのましくは水素であるものに基づくポリカーボネートに特に当てはまる。
【0071】
従って、特に好ましいポリカーボネートは式(1’):
【化10】

(式中、RおよびRは式(1a)に記載された意味を有し、特に水素である。)
を有するユニットを含むものである。
【0072】
式(1b)のジフェノールで、RおよびRが水素のもの基づくポリカーボネートは高い耐熱変形性に加えて、特に期待はしていなかった溶融時に優れた流れ挙動を示し、ハロゲンを有さない下記の溶媒中で大変優れた溶解性を示す。
【0073】
他のジフェノール、特に式(2)のものと任意の組成によれば、ポリカーボネートの特性を有利な方法で変化することが可能である。そのようなコポリカーボネートでは、式(1a)のジフェノールは、ポリカーボネート中のジフェノールユニット100モル%の総量に対して、100〜2モル%、好ましくは100〜10モル%、特に100〜30モル%の量で存在する。
【0074】
成分B
本発明のエチレンーアルキル(メタ)アクリレートブロックコポリマーは一般式(4):
【化11】

(式中、Rはメチルまたは水素を示してもよく、Rは水素、またはC〜C12アルキル基を示してもよく、nおよびmは重合度であり、Rは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ヘキシル、イソアミルまたはt−アミルである。)
で記載される。
【0075】
エチレンーアルキル(メタ)アクリレートコポリマーはランダム、ブロックまたはマルチブロックコポリマーまたはこれらの構造の混合であってよい。
【0076】
エチレンーアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの溶融流れ指数(2.16Kg荷重で190℃で測定)は、好ましくは0.01〜40g/(10分)、特に好ましくは0.1〜10g/(10分)である。
【0077】
成分C
本発明の組成物には、これらの熱可塑性材料に好適な添加剤、例えば、充填剤、UV安定剤、IR安定剤、熱安定剤、荷電制御剤および顔料、着色剤を通常の量で添加しても良い。要すれば、外添離型剤、流れ改良剤および/または防炎剤(例えば、アルキルおよびアリールフォスファイト、フォスフェート、フォスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、チョーク、石英粉、ガラスファイバーおよびカーボンファイバー、顔料およびその組合せ、そのような化合物は例えば、WO99/55772、第15〜25頁および「プラスチック添加剤」、R.GraechterおよびH.Mueller、Hanser Publishers、1983年に記載されている。)を添加することによって、離型性、流れ性能および/または防炎性を改良しても良い。
【0078】
適当な添加剤は、「プラスチック用添加剤ハンドブック」、John Murphy、Elsevier、Oxford、1999および「プラスチック添加剤ハンドブック」、Hans Zweifel、Hanser、Munich、2001年に記載されている。
【0079】
適当な抗酸化剤および熱安定剤の例は、アルキル化モノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、O−、N−およびS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化マロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、アクリルアミノフェノール、β−(3,5−ビ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(5−t−ブチルー4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、適当なチオ協力剤、第2抗酸化剤、フォスファイトおよびフォスフォナイト、ベンゾフラノンおよびインドリノンが挙げられる。
【0080】
有機フォスファイト、フォスフォネートおよびフォスファンが好ましく、特に有機機が完全にまたは部分的に要すれば置換芳香族基を有するものがこのましい。
【0081】
o/mリン酸、完全または部分エステル化フォスフェートまたはフォスファイトが重金属やアルカリ痕跡の中和用の錯化剤として好適である。
【0082】
好適な光安定剤(UV吸収剤)は、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、置換および非置換安息香酸のエステル、あるキレート、立体的にヒンダードアミン、オキサミドおよび2−(ヒドロキシフェニル)1,3,5−トリアジンまたは置換ヒドロキシアルコキシフェニル、1,3,5−トリアゾール、置換ベンゾトリアゾール、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタリミドエチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールおよび2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−イル)フェノール]が挙げられる。
【0083】
安定剤として、ポリプロピレングリコールは、単独またはスルフォンまたはスルフォンアミドと組み合わせて、ガンマー線の損害を防止するために用いても良い。
【0084】
これらの安定剤および他の安定剤を個別にまたは組み合わせて用いても良く、ポリマーに前述の形態で添加しても良い。
【0085】
また、加工助剤、例えば離型剤、一般的に長鎖脂肪酸の誘導体を添加しても良い。例えば、ペンタエリスリチルテトラステアレートおよびグリセリルモノステアレートが好ましい。これらは単独または混合物として、組成物の質量に基づいて、0.01〜1重量%の量で使用される。
【0086】
好適な防炎添加剤はフォスフェートエステル(即ち、トリフェニルフォスフェート)、レゾルシノールジリン酸エステル、ヨウ素含有化合物(例えば、ヨウ素化リン酸エステル、ヨウ素化オリゴカーボネートおよびポリカーボネート)および好ましくはフッ素化有機スルフォン酸の塩である。
【0087】
更に、着色剤、例えば有機染料または顔料または無機顔料、IR吸収剤を個別にまたは混合物として、また安定剤、ガラスファイバー、(中空)ガラス球、無機フィラーと組み合わせて添加しても良い。
【0088】
成形材料および成形体の製造
本発明による熱可塑性成形材料は、各成分を公知の方法で混合し、好ましくは溶融物を配合し、一般的なユニット、例えばインターナルニーダー、押出機および2軸スクリュー装置中で240〜300℃の温度で溶融物を押し出すことによって製造される。
【0089】
ここの成分の混合は、公知の方法、例えば連続若しくは同時に約20℃(室温)またはより高い温度で行っても良い。
【0090】
本発明は、また成形材料の製造方法、成形物の製造における成形材料の使用、および成形物品自体に関する。
【0091】
本発明の成形材料は、種々の成形品の製造に用いられ得る。これらは射出成形、押出成形およびブロー成形によって行われる。成形の更なる形態は、予め製造されたシートやフィルムから熱成形することによって成形品を製造することである。
【0092】
フィルムおよびシートは、例えば成形材料を適当なユニット(例えば、2軸押出機)で溶融し、適当なダイで溶融物を成型することによって製造しても良い。
【0093】
本発明によるポリカーボネートおよびコポリカーボネートは、要すれば他の熱可塑性材料および/または一般の添加剤との混合物として、それを成型して梳毛の成形物および押出物にしたのち、公知のポリカーボネートおよびコポリカーボネートを使用する場合に使用しても良い。それらの特性的特徴の為に、それらはシート、マルチスキンシート、防眩、拡散スクリーン、ランプカバーまたは光学データ保持材、例えばCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)等の基材材料として好適であり、また電子部品のフィルム、自動車用構造体の成形品および安全セクターのカバーのシートとして使用しても良い。さらに本発明のポリカーボネートの可能な用途は、電子デバイスや装置のハウジング部品、例えばスイッチボックス、ツールハウジング、携帯電話、加熱/ベンチレーションパネル、タコグラフディスク、装置ダイヤル、電子および電気デバイスのパネルやキーボード、レンズ、スクリーン/ディスプレーカバーおよびLED用途および自動車シート用フィルムである。
【0094】
上記に記載した文献のすべては、そのすべての部分をこの明細書中に導入する。
【0095】
本発明を実施する特定の構造を示し、記載するが、当業者は、その部分の種々の変形や再配置を本発明の概念の精神と範囲から逸脱することなく、することが可能であり、それはまた以下に示しかつ記載された特定の形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
配合
配合用装置は以下のものからなる:
配合A:成分秤量装置
スクリュー直径25mm(ZE25/5)を有するバーストルフ(Berstorff)からの共回転ツインスクリューニーダー
溶融押出物の成形用ダイ
押出物を冷却および固化する水浴
ペレット化機
配合B:成分秤量装置
スクリュー直径32mm(ZE23)を有するクレックストラル(Clextral)からの共回転ツインスクリューニーダー
溶融押出物の成形用ダイ(おのおの3.2mmの6つのホール)
押出物を冷却および固化する水浴
ペレット化機
組成に関する限り、以下に記載する混合物は上記配合装置を用いて調製した。
【0097】
射出成形
機械的特性を調査するのに、対応標準に要求されるテスト標本を射出成形により製造した。各ペレットは乾燥し、真空乾燥オーブン中で120℃で5時間処理した。射出成形時の溶融温度は330℃で、金型温度は120℃であった。
【0098】
フィルム押出
フィルム押出A
厚さ100μmを有するフィルムを材料から押し出した。このために、クーネ(Kuhne)からのフィルム押出機を使用し、材料を溶融温度290℃(クーネ37、「チルロール(chill roll)」)で処理した。
【0099】
フィルム押出B
厚さ250μmを有するフィルムを材料から押し出した。この目的のために、ブレーヤー(Breyer)からのフィルム押出装置を用い、材料を溶融温度300℃で処理した。
【0100】
使用したユニットは以下のとおりである:
−直径(D)105mmのスクリューおよび41xDの長さを有する押出機。スクリューは脱揮発ゾーンを有する。
−25D長さおよび直径35mmのスクリューを有するカバー層を適用するための共押出機
−幅1500mmを有する特定共押出スロットダイ
−水平ロール配置を有するスリーロールカレンダーで、第3ロールは水平に対して±45°にピボットされる。
−ローラーコンベヤー
−保護層を両側に適用する装置
−テークオフ装置
−巻きつけ位置
【0101】
ベース材料のペレットを押出機のフィードホッパーに供給した。各シリンダー/スクリュープラスティケーティングシステムにおいて、各材料の溶融および移動を行う。ダイから、溶融物をカレンダーに移動し、そのロールは表1に示した温度を有する。カレンダー上で、最終の成形と材料の冷却を行う。その後、フィルムをテークオフから移動し、保護フィルムを両側に適用し、フィルムを巻き上げる。
【0102】
(表1)
【表1】

【0103】
機械的テスト
ポリマーおよびポリマー組成物の溶融フロー速度(MRF)はISO1133、ASTM D1238で決定し、溶融点はISO3146、ASTM D3418で決定する。
【0104】
製造された材料の熱安定性は、ISO306のビカー軟化温度によってテストされる。
【0105】
ビカー軟化温度の決定において、プラスチックテスト標本(80x10x4mm)をホルダー中に挟む。1mmの断面および所定の衝撃力を有する平面進入チップを適用する。サンプルに対する最適温度移動および均一増加加熱速度を確保することによって、進入チップがプラスチックテスト標本の表面に深さ1mm侵入した温度を測定する。これがISO306のビカー軟化温度に対応する。
【0106】
機械特性は切り欠き衝撃力よる例でテストされ、テストISO179/1eAにより23℃および−30℃で行われる。
【0107】
この目的のために、テスト標本(80x10x4)を標準切り欠き(V型のノッチ半径0.25mm)を供給し、二つの側サポートする(サポート間隔62mm)。衝撃振り子がノッチの高さでテスト標本の中心に当たる。テストユニットは所定の作動能力および所定の衝撃スピードを有する衝撃振り子装置からなる。
【0108】
曲げ疲れ力をショッパー(Shopper)による折り曲げ数で評価した。この目的のために、折り曲げ数は標準環境条件(23℃、50%相対湿度)でISO5625により決定した。
【0109】
折り曲げは、折り曲げ線に沿ってテスト片を完全に両側に移動する。折り曲げ数はテスト片が標準荷重で標準環境条件下に破断をするのに必要な折り曲げ数である。
【0110】
材料
耐熱変形性を有するポリカーボネート:ここでは、耐熱変形性HDT A159CよびHDTB174C(ISO75−1、−2で測定)およびISO1133で測定した溶融体積流れ速度10ml/(10分)を有するビスフェノールAおよびトリメチルシクロヘキシルビスフェノール(バイエルマテリアル・サイエンスAG、レーフェルクーゼンからのApe1800)からなるコポリカーボネートを使用した。
【0111】
エチレン−アクリレートコポリマー:ここでは、バッド・ホンブルグのデュポン・ド・ネモース(ドイツ)GmbHからのブロックコポリマーを使用した。使用したより詳細は以下の表に記載する。
【0112】
使用されたエチレン−アルキルアクリレートコポリマーの概要
(表2)
【表2】

【0113】
さらに、比較のため(比較例1)、テキサス州ヒューストンのKraton・Polymer・LLCからの「Kraton1651」として入手可能な結合スチレン比30〜33%(製造者データー、BMS0407)、溶液粘度1.5Pa・s(製造者データー、BMS0380)および比重0.91(ISO2781による)を有する直鎖3成分ブロックコポリマー(スチレン、エチレン、ブタジエン)を使用した。
【0114】
比較例2は、エラストマー添加剤を含まない、ビスフェノールAおよびトリメチルシクロヘキシルビスフェノール(バイエルマテリアル・サイエンスAG、レーフェルクーゼンからのApe1800)からなるコポリカーボネートに対応する。
【0115】
上記ユニット中に配合することによって、エラストマーコポリマーで高温で安定なポリカーボネートの混合物を表3中の組成によって調製した。
【0116】
(表3)
実施例と比較例の配合と性能
【表3】

【0117】
エラストマーの添加(実施例4、比較例1)により、高い耐熱変形性がすべての場合(ビカー軟化温度>165℃)で得られ、機械的特性(切り欠き衝撃強さ)が出発材料(比較例2)(表3)と比べてかなりのレベルおよび改善されたレベルが得られた。
【0118】
厚さ100μm(配合Aで調製されたベース材料、フィルム押出A)および250μm(配合Bで調製されたベース材料、フィルム押出B)を有するフィルムを上記方法によって実施例材料から得た。Schopperによる折り曲げ数は、これらのフィルムで測定した(表4および表5参照)。
【0119】
(表4)
100μmフィルムで測定した折り曲げ数
【表4】

【0120】
(表5)
250μmフィルムで測定した折り曲げ数
【表5】

【0121】
実施例中に示されたように、エチレン−アルキルアクリレートエラストマーの導入だけが、曲げ疲れ強さの改良、ここではSchopperによる折り曲げ数の大きな増加をもたらし、その場合耐室温と−30℃での熱変形性や切り欠き衝撃強さは保持した。この効果は別のエラストマーエチレンコポリマー(比較例1)では起こらず、非変性のポリカーボネートの場合では、高温で安定であった(比較例2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)耐熱変形性を有し、式(1a):
【化1】

[式中、R1およびR2は互いに独立して、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、またはC〜C12アラルキルであり、nは4〜7の整数であり、R3およびR4は各Xで個々に選択的であり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、Xは炭素であり、ただし、少なくとも1つのXについて、R4およびR4は同時にアルキルである。]
で表される1以上の環状脂肪族ビスフェノールに基づく少なくとも1種のポリカーボネート、成分AおよびBの総重量部にそれぞれ基づいて82〜99.5重量%、および
B)少なくとも一つのエチレンアルキルアクリレートブロックコポリマー、成分AおよびBの総重量部にそれぞれ基づいて、0.5〜18重量%
を含有するポリカーボネート組成物。
【請求項2】
R1およびR2は互いに独立して、塩素、臭素、メチル、フェニル、または水素であり、nは4または5である請求項1記載のポリカーボネート組成物。
【請求項3】
成分AがビスフェノールAおよびビスフェノールTMCのコポリカーボネートを含有する請求項1記載のポリカーボネート組成物。
【請求項4】
組成物が成分AおよびBの総重量部に各々基づいて、成分A89〜99重量部および成分B1〜11重量部を含有する請求項1記載のポリカーボネート組成物。
【請求項5】
成分Bのエチレン‐アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが式(4):
【化2】

[式中、Rはメチルまたは水素であり、Rは水素またはC〜C12アルキル基であり、nおよびmは重合度である。]
で表されるエチレン‐アルキル(メタ)アクリレートブロックコポリマーである請求項1記載のポリカーボネート組成物。
【請求項6】
がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ヘキシル、イソアミル、またはtert−アミルである請求項5記載のポリカーボネート組成物。
【請求項7】
重合度n:重合度mの比が1:300〜90:10の範囲である請求項5記載のポリカーボネート組成物。
【請求項8】
さらに、成分AおよびBの総重量部に基づいて、成分Cとして添加剤0〜5重量部含有する請求項1記載のポリカーボネート組成物。
【請求項9】
請求項1記載のポリカーボネート組成物から得られた成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネート。
【請求項10】
少なくとも一つのポリカーボネートがコポリカーボネートである、請求項1記載のポリカーボネート組成物から得られた共押出層を含有する成形品、押出物またはフィルム。
【請求項11】
成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネートが電子デバイスまたは装置のハウジング部品、工具ハウジング、携帯電話、加熱/排気パネル、タコメーターのディスク、装備ダイヤル、パネル、電気または電子デバイスのキーボード、レンズ、スクリーン/ディスプレーカバー、LED用途、または自動車シート用フィルムである請求項10記載の成形品、押出物、フィルムまたはフィルムラミネート。
【請求項12】
電子デバイスまたは装置がスイッチボックスである請求項11記載の電子デバイスまたは装置のハウジング部品。
【請求項13】
界面法による一以上ポリカーボネートを配合する工程を含む請求項1記載のポリカーボネート組成物の調製方法。

【公開番号】特開2011−122157(P2011−122157A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−276984(P2010−276984)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】