説明

改良された耐熱亀裂性を有する物品

焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含む物品が開示されている。前記ヒートシンク部分は、前記焼結炭化物より高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料を含んでいる。焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しており且つ前記焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分とを含んでいる物品を形成する方法も開示されている。前記ヒートシンク部分は、前記加工部分から熱を伝導させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具、切り刃インサート、シールリング、圧延ロール、ボーリングビットのような焼結炭化物(超硬合金)を含む物品のみならず加熱サイクル及び/又は熱サイクルを受けるその他の物品の改良に関する。本発明はまた、このような物品を製造する方法にも関する。より特定すると、本発明のある種の実施形態は、改良された耐熱亀裂性を有する焼結炭化物物品に関する。
(関連出願)
本願は、2006年10月25日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第60/854,348号に基づく優先権を主張している。
【背景技術】
【0002】
焼結炭化物を含んでいる物品は、一般的に、旋削、フライス加工及び穴開けにおいて使用するための切削工具又は切り刃インサート、撹拌機及びポンプのためのシールリング並びに鋼を圧延するためのロールのような高い応力及び摩擦を含む用途において使用される。焼結炭化物を含む物品は熱亀裂によって破損する傾向がある。このような物品の亀裂は、物品が閾値よりも高い温度まで加熱される場合に始まり、物品が熱サイクルを受ける場合には更に進行するかも知れない。
【0003】
例えば、ボーリング(又は穴開け)ビットは、一般的に、オイル及び天然ガスの探鉱、採鉱及び掘削のために使用される。このようなボーリングビットは、固定された又は回転可能な切削部材を備えることができる。図1は、回転可能な切削部材11を備えた典型的なロータリーコーン型ボーリングビット10を示している。切り刃12は、典型的には、焼結炭化物によって作られ且つ切削部材11の外面上に二次加工されたポケット内に配置される。幾つかの切り刃インサート12は、切削を最適化するために、所定の位置で回転可能な切削部材に固定することができる。
【0004】
ボーリングビットの作動寿命は、典型的には、焼結炭化物インサートの摩耗特性の関数である。ボーリングビットの作動寿命を延ばす一つの方法は、強度、靱性及び耐摩耗性/耐腐食性の改良された組み合わせを有する材料によって作られた切り刃インサートを採用することである。上記したように、切り刃インサートは、焼結炭化物すなわち焼結された硬質粒子を含んでいる。このような用途のための焼結炭化物の選択は、これらの材料が、強度、破壊靱性及び耐摩耗性(すなわち、ボーリング又は穴開けビットの効率の良い機能にとって極めて重要な特性)の極めて興味深い組み合わせを提供するという事実に基づいている。焼結炭化物は、周期表のIVB族、VB族、VIB族に属する遷移金属(Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びW)のうちの1以上の炭化物粒子を分散させた不連続相と、硬質粒子と共に焼結した連続のバインダ相(典型的には、コバルト、ニッケル又は鉄を含んでいる)とを含む複合物である。種々の可能な硬質粒子−バインダの組み合わせのうちで、硬質粒子としてのタングステンカーバイド(WC)とバインダ相としてのコバルトとは、最も一般的に使用される焼結粒子である。
【0005】
焼結炭化物の特性は、とりわけ、2つの微細構造パラメータ、すなわち、平均硬質粒子の粒径及び硬質粒子及び/又はバインダの重量含有率又は体積含有率に依存する。一般的に、高度及び耐摩耗性は、粒径が減少し且つ/又はバインダ成分が減少するにつれて増加する。他方、破壊靱性は、粒径が増大し且つ/又はバインダ成分が増加するにつれて増大する。従って、如何なる用途に対しても、焼結炭化物グレードを選択するときに、耐摩耗性と破壊靱性との間に妥協点が存在する。耐摩耗性が増大するにつれて、破壊靱性は、典型的には減少するかその逆である。
【0006】
図2A〜2Eは、典型的には、ロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される焼結炭化物の種々の形状及び設計のうちの幾つかを示している。ボーリングビットのための切り刃インサートは、典型的には、卵形(図2A)、弾丸形(図2B)、たがね形(図2C)、マルチドーム形(図2D)及び円錐(図2E)のような半球形部分によって特徴付けられている。使用される形状及び焼結炭化物のグレードの選択は、穴が開けられる岩石のタイプに依存する。形状及び大きさに拘わらず、インサートは、切削部分の形態の加工部分と本体部分とを有している。例えば図2Aにおける切り刃インサート20は、半球形状の切削部分22と本体部分24とを有している。更に、例えば、図2Bにおける切り刃インサート30は、弾丸形状の切削部分32と本体部分34とを備えている。切削作用は切削部分によって行われ、一方、本体部分は切削部分のための支持部を提供している。本体部分の殆ど又は全ては、ビット本体又は切削部材内に埋め込まれ、本体部分は、典型的には、切り刃インサートをポケット内に圧入することによってビット本体内に挿入される。
【0007】
既に説明したように、切削作用は、主として、工具の切削部分によってなされる。摩耗し始める切削部分の第一の部分は、先端半分及び特に切削部分の先端である。ボーリングビットの場合には、切削部分の頂部が平らになり始めると、切削の効率は非常に低下する。なぜならば、地球は、比較的効率の良い切削作用とは対照的に、擦過作用によって比較的多く取り除かれるからである。擦過作用が続くと、岩石と切り刃インサートとの間の摩擦の増大によってかなりの熱が発生され、それによって、インサート部分の加熱が生じる。物品の一部分の温度が閾値を超えると、硬質粒子とバインダとの境界部に亀裂が惹き起こされるであろう。物品の熱サイクルによって亀裂の進行が惹き起こされる。
【0008】
従って、高い耐熱疲労及び耐亀裂性を有するボーリングビットのための改良された焼結炭化物からなる切り刃インサートの必要性がある。より一般的には、熱サイクルによって生じる亀裂を受けるかも知れない焼結炭化物を含む加工部分を備えている物品に対する改良の必要性がある。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、焼結炭化物内の硬質粒子が、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物を含んでいる焼結炭化物を含む物品の改良に関する。このような物品としては、切削工具、切り刃インサート、シールリング、圧延機ロール、ボーリングビットのための切削部材のみならず加熱及び/又は熱サイクルを受ける焼結炭化物を含んでいるその他の物品がある。本発明はまた、このような物品を製造する方法にも関する。本発明による物品のある種の実施形態は、バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物とを含んでいる焼結炭化物の含む部分と、焼結炭化物の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料を含んでいるヒートシンク部分とを含んでいても良い。ヒートシンク部分は、例えば、接触部分又は切削部分とすることができる加工部分から熱を除去し、それによって、ある種の熱破壊モードに対する改良された耐性を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの特徴に従って、焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる物品が提供される。加工部分の焼結炭化物は、バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物からなる硬質粒子とを含んでおり、ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有するヒートシンク材料を含んでいる。ある種の非限定的な実施形態によれば、物品のヒートシンク部分は、当該物品の本体部分と接触し、前記本体部分は前記加工部分を支持している。同じく、ある種の非限定的な実施形態によれば、当該加工部分は、切削部分と接触部分とのうちの少なくとも1つである。加工部分が接触部分であるある種の非限定的な実施形態においては、当該物品は、圧延機ロールとシールリングとのうちの一つである。加工部分が切削部分であるある種の非限定的な実施形態においては、当該物品は、ボーリングビット、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタのうちの1つである。
【0011】
本発明の別の特徴によると、焼結炭化物を含んでいる切削部分と、本体部分と、当該本体部分と接触しているヒートシンク部分とを含んでいる物品が提供される。ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している材料を含んでおり、当該ヒートシンク部分は、前記切削部分と熱的に連通している。ある種の非限定的な実施形態においては、当該物品は、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタのうちの1つである。
【0012】
本発明のもう一つ別の特徴によれば、圧延機ロールは、バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子と、を含んでいる焼結炭化物を含んでいる接触部分と、本体部分と、ヒートシンク部分とを含んでいる。接触部分は、第一の端部と、これと反対側の第二の端部と、当該第一の端部と第二の端部との間に延びており且つ接触面を含む環状の外壁とを備えている。本体部分は、前記接触部分を支持し且つ圧延機ロールの中を長手方向に延びている穴を規定している環状の内壁を備えている。当該内壁は内部に凹部を含んでいる。ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有し且つ接触部分と熱的に連通している材料を含んでいる。ヒートシンク部分の少なくとも一部分は、前記凹部内に配置され且つ本体部分と接触している。
【0013】
本発明の別の特徴に従って、シールリングは、焼結炭化物を含んでいる接触部分と、本体部分と、ヒートシンク部分とを含んでおり、前記焼結炭化物は、バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子とを含んでいる。前記接触部分は、接触面を含んでいる第一の面を備えている。前記本体部分は、前記接触部分を支持しており且つ当該本体部分内に凹部を規定している第二の面を備えている。環状の内壁が、前記第一の面と第二の面との間に延びており且つこれらの面上で開口している穴を規定している。前記ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している材料を含んでおり且つ前記接触部分と熱的に連通している。当該ヒートシンク部分の少なくとも一部分は、前記凹部内に配置されており且つ前記本体部分と接触している。
【0014】
同じく、本発明の一つの特徴によれば、物品を形成する方法は、バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子とを含んでいる焼結炭化物を含んでいる加工部分を提供することと、本体部分を提供することと、当該本体部分と接触しており且つ焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有するヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分を提供することとを含んでいる。加工部分は、ヒートシンク部分と熱的に連通している。当該方法のある種の非限定的な実施形態によれば、前記ヒートシンク部分は本体部分と接触している。同じく、ある種の非限定的な実施形態によれば、加工部分は、切削部分と接触部分とのうちの少なくとも1つである。加工部分が接触部分である方法のある種の実施形態においては、接触部分は接触面を備えており、物品は、圧延機ロールとシールリングとのうちの一方である。加工部分が切削部分である方法のある種の非限定的な実施形態においては、切削部分は切削面を含んでいても良く、物品は、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタのうちの1つである。
【0015】
本発明の更に別の特徴によれば、加工部分と当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを備えている物品を製造する方法は、粉末状にされたバインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の硬質粒状炭化物とを含んでいる焼結炭化物粉末を、型の空洞内に部分的に充填することと、前記空洞内に固体のヒートシンク材料を配置することと、焼結炭化物粉末を焼結させることとを含んでいる。当該方法は、焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通している固定のヒートシンク部分とを含んでいる焼結された物品を提供する。
【0016】
本発明の更に別の特徴によると、加工部分と、当該加工部分を支持する本体部分と、前記加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含む物品を製造する方法が提供される。焼結炭化物を含んでいる焼結された本体が準備される。当該焼結された本体にヒートシンク材料が添加される。当該ヒートシンク材料は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している。ある種の実施形態においては、加工部分は、焼結炭化物と接触面とを含んでいる接触部分である。ある種の他の実施形態においては、加工部分は、焼結炭化物と切削面とを含んでいる切削部分である。ヒートシンク部分は、本体部分と接触し且つ加工部分からの熱を伝える。
【0017】
本発明の更に別の特徴は、少なくとも、加工部分と当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含む物品を形成する方法に関する。当該方法は、型の空洞に第一の焼結炭化物粉末を部分的に充填することと、空洞の残りの部分に第二の焼結炭化物粉末であって当該第二の焼結炭化物粉末の焼結温度よりも低い溶融温度を有する不安定材料を含んでいる第二の焼結炭化物粉末を充填することとを含んでいる。前記第一の焼結炭化物の粉末及び前記第二の焼結炭化物の粉末は圧密されて圧粉体を形成し、当該圧粉体は焼結されて前記不安定材料を除去し且つ、第一の焼結炭化物の領域と、連続気泡を有する第二の焼結炭化物領域と、を含んでいる焼結された物品を形成する。ヒートシンク材料は、当該ヒートシンク材料が第一の焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している第二の焼結炭化物の連続気泡内に浸入せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ビット本体、ローラーコーン及び切り刃インサートを含んでいる典型的なロータリー型ボーリング穴開けビットを示している図である。
【図2A】図2Aは、卵形のロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される切り刃インサートの形状及びサイズを示している図である。
【図2B】図2Bは、弾丸形のロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される切り刃インサートの形状及びサイズを示している図である。
【図2C】図2Cは、たがね形のロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される切り刃インサートの形状及びサイズを示している図である。
【図2D】図2Dは、マルチドーム形のロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される切り刃インサートの形状及びサイズを示している図である。
【図2E】図2Eは、円錐形のロータリーコーン型ボーリングビットにおいて使用される切り刃インサートの形状及びサイズを示している図である。
【図3】図3は、焼結炭化物材料における熱疲労によって生じる亀裂の写真である。
【図4】図4は、連続的なバインダ相と、不連続な硬質粒子相とを有している焼結硬質粒子の典型的な微細構造を示している図である。
【図5A】図5Aは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5B】図5Bは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5C】図5Cは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5D】図5Dは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5E】図5Eは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5F】図5Fは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5G】図5Gは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5H】図5Hは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5I】図5Iは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図5J】図5Jは、焼結炭化物とヒートシンクとを含んでいる物品の概略図である。
【図6】図6は、伝導性材料が浸入した焼結炭化物を含んでいる本発明の切り刃インサートの概略図である。
【図7】図7は、焼結炭化物の加工部分内に見ることができるヒートシンク材料のプラグを備えたボーリングビットのための2つの焼結炭化物切り刃インサートの写真である。
【図8A】図8Aは、焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる本発明によるシールリングの一実施形態の概略図である。
【図8B】図8Bは、焼結炭化物を含んでいる加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる本発明によるシールリングの一実施形態の概略図である。
【図9A】図9Aは、焼結炭化物を含んでいる環状の加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる本発明による圧延機ロールの一実施形態の概略図である。
【図9B】図9Bは、焼結炭化物を含んでいる環状の加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる本発明による圧延機ロールの一実施形態の概略図である。
【図9C】図9Cは、焼結炭化物を含んでいる環状の加工部分と、当該加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分とを含んでいる本発明による圧延機ロールの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
読者は、以下の本発明の実施形態の詳細な説明を考慮することによって、本発明の上記の詳細及び利点を理解できるであろう。読者はまた、本発明に含まれる実施形態を形成し且つ/又は使用して、本発明の付加的な詳細及び利点も理解することができるであろう。
【0020】
別の方法で示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている成分、時間、温度等の量を表している全ての符号は、“約”という用語によって全ての例において少し変えることができるものと理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載されている符号パラメータは、本発明によって得ようとされている所望の特性に応じて変化するかも知れない近似である。少なくとも且つ特許請求の範囲の等価物の原理の適用を制限する試みとしてではなく、各符号パラメータは、少なくとも多くの報告された重要な数字を参考にし且つ通常の近似技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0021】
本発明の広い範囲を示している符号範囲及びパラメータは近似であるにも拘わらず、特定の例に記載されている符号の値は、出来る限り正確に報告されている。しかしながら、如何なる値も、それらの各々の試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含んでいるかも知れない。
【0022】
本発明の実施形態は、焼結炭化物とヒートシンク材料とを含む物品を含んでいる。ここで使用されている“焼結炭化物”という用語は、硬質粒子を含む不連続な相と、硬質粒子と共に焼結するバインダの連続した相とを含んでいる複合材料を示している。硬質粒子は、周期表のIVB族、VB族及びVIB族(チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステン)から選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物を含んでいる。硬質粒子が遷移金属の炭化物からなる焼結炭化物は、ここでは、“焼結遷移金属炭化物”と称される。本発明による物品の実施形態は、焼結炭化物を含んでいる加工部分と、ヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分とを含むことができる。当該物質はまた、加工部分を支持している本体部分を含んでいても良い。本発明の実施形態の例としては、限定的ではないが、圧延機ロール、シールリング、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタがある。
【0023】
ここで使用されている“加工部分”という用語は、物品の意図されている機能を果たす際に含まれている物品の部分を意味している。例えば、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタは、目標材料を削り取り且つ/又は分離させる機能を果たし、このような物品の加工部分は、材料を除去し且つ/又は分離させるようになされた切削部分である。切削部分は、目標材料を除去し又は分離させる作用を果たす切削部分の面である切削面を含んでいても良い。別の例によれば、圧延機ロールは加工片と接触し、それによって、機械的力がかけられ且つ加工片の形状を変化させる。圧延機ロールの加工部分は接触部分であり、当該接触部分は、ロールの意図された機能を行いつつ加工片と接触するロールの部分である。当該接触部分はまた、加工片と接触する接触部分の面である接触面をも含んでいても良い。更に別の例によれば、(密封リングとしても知られている)シールリングは、2以上の部分間の境界部に機械的シールを形成する機能を果たし、シールリングの加工部分もまた、1以上の部品と接触する接触面を含んでいても良い接触部分である。
【0024】
同じく、ここで使用されている“本体部分”は、加工部分を支持している物品の部分を示している。本体部分と加工部分とは、必須ではないが、単一の物品の領域であっても良い。従って、本発明による物品のある種の実施形態には、加工部分と本体部分との間に明確な分割線が存在しないかも知れないことが理解されるであろう。しかしながら、このような実施形態においては、当業者は、加工部分が物品の意図された機能を行うようになされる一方で、本体部分は加工部分を支持するようになされるであろうという点において、これらの部分の差異を認識するであろう。別の方法として、加工部分と本体部分とは、異なる材料によって作ることができ、さもなければ、物品が使用されつつあるときに、前記本体部分が加工部分に必須の支持部を提供するように確実に固定されるか又は相互に接合される。
【0025】
本発明の実施形態は、加工部分とヒートシンク部分とを含んでいる物品を含んでおり、当該ヒートシンク部分は加工部分と熱的に連通している。ヒートシンク部分のヒートシンク材料は、加工部分の焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している。ここで使用されている“熱的に連通”という用語は、熱を前記加工部分からヒートシンク部分へと伝導させることができることを意味している。ヒートシンク部分は、加工部分と接触して熱を当該加工部分からヒートシンク部分へと直接伝導させることができる。別の方法として、ヒートシンク部分は、本体部分と接触しており、加工部分とは接触していなくても良い。この形態の場合には、熱は、加工部分から本体部分を通ってヒートシンク部分へと伝えられる。
【0026】
本発明の実施形態は、加工部分とヒートシンク部分とを備えている物品を含んでいる。当該物品は更に、本体部分又はその他の部分を含んでいても良い。加工部分との熱的連通状態に維持するためには、ヒートシンク部分は、熱を加工部分からヒートシンク部分まで導くことができる形態で、物品、加工部分、本体部分又は物品の別の部分のうちの1つと接触していなければならない。熱的連通を達成するためには、ヒートシンク部分は、物品、加工部分、本体部分又はその他の部分のうちの1つに機械的に取り付けることができる。ここで使用されている“機械的に取り付けられる”という用語は、ヒートシンク部分を、限定的ではないが、接着剤の塗布、固定部材(例えば、ねじ、ボルト、ピン)、半田付け、蝋付け、クランプビング、圧入及び焼嵌めによる結合を含む別の部分へ機械的に取り付ける手段を示している。更に、ヒートシンク部分は、物品又は物品の一部分に、当該物品又は物品の部分内のヒートシンク部分の全て又は一領域を物理的に封じ込めることによって機械的に取り付けられても良い。ヒートシンク部分を機械的に取り付ける他の可能な手段としては、例えば、ねじ、穴及びキー溝の使用がある。ヒートシンク部分を物品又は物品の一部分に機械的に取り付ける他の手段は、本発明の当該説明を考慮に入れることによって当業者に容易に明らかとなるであろう。同じく、ヒートシンク部分と加工部分との間に必須の熱的連通を可能にする方法で、接着、半田付け、蝋付け等の使用がなされなければならないことも明らかとなるであろう。例えば、加工部分からヒートシンク部分へ熱を伝導させる経路を提供するような形態で、ヒートシンク部分と、物品、加工部分、本体部分又はその他の部分との間に、少なくとも何らかの直接的な接触が形成されることを確保することによって達成することができる。また、ある種の実施形態によれば、加工部分を機械的に取り付けるために使用される接着、半田付け又は蝋付け材料は、加工部分又は当該加工部分の焼結炭化物のうちの一つのよりも高い熱伝導率を有することができる。
【0027】
本発明の実施形態は、ボーリングビット、穴開けビット、切削工具、切り刃インサート、シールリング及び圧延機ロールのみならず、加熱及び/又は熱サイクルを受ける他の物品を含む高い耐熱亀裂性を有する焼結炭化物硬質粒子を含む物品を含んでいる。本発明の物品のある種の実施形態は、切削部分とヒートシンク部分とを含んでいる。切削部分は焼結炭化物を含んでいる。ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している材料を含んでいる。もちろん、本発明の実施形態は、切削部分とヒートシンク部分との種々の形状を有しているボーリングビットのための切り刃インサートであっても良い。図2A〜2Eに示されている形状は、卵形(図2A)、弾丸形(図2B)、たがね形(図2C)、マルチドーム形(図2D)及び円錐形(図2E)である。ヒートシンク部分は、切り刃インサートの本体部分のコア領域であっても良く又は本体領域であっても良い。切削部分51の形態の加工部分と、その中に埋設されたヒートシンク部分53を含んでいる本体部分52とを含んでいる本発明によるボーリングビットのための切り刃インサート50の断面図を示している図5Aを参照のこと。ヒートシンク部分53は、切削部分51と熱的に連通しており且つ切削部分51から熱を伝導させる。図7は、図5Aに示されている構造を有しているボーリングビットのための切り刃インサート60の実際的な例の写真である。図7において、インサート60は、焼結炭化物切削部分61と、切削部分61を支持している焼結炭化物の本体部分62と、切削部分61と熱的に連通している本体部分62内に埋設されている銅製のヒートシンク部分63とを含んでいる。本発明による切り刃インサート内の付加的な部分は、中心軸線支持部分と、底部と、移行部分と、ボーリング穴開けドリルのための切り刃インサートの熱的特性を高めることができる他の部分とを含んでいても良い。
【0028】
本発明の物品の実施形態は、例えば、切削部分又は接触部分のような加工部分(当該加工部分は焼結炭化物を含んでいる)と、ヒートシンク部分が接触している本体部分とを備えている。加工部分の焼結炭化物は、硬質粒子とバインダとを含んでいる。当該硬質粒子は、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物を含んでいる。焼結炭化物のバインダは、典型的には、コバルト、ニッケル、鉄又はこれらの金属の合金を含むが、硬質粒子を一緒に固めることができる如何なる金属又は合金であっても良い。バインダは更に、タングステン、チタン、タンタル、ニオビウム、クロム、モリブデン、硼素、炭素、シリコン、ルテニウム、レニウム、マンガン、アルミニウム及び銅から選択された合金化材料を含んでいても良い。一つの実施形態においては、焼結炭化物の硬質粒子は、0.3〜10μmの平均粒径を有しているタングステン炭化物を含んでおり、焼結炭化物のバインダはコバルトを含んでいる。ある種の用途のための所望の特性を提供するためには、焼結炭化物は、2〜40重量パーセントのバインダと、60〜98重量パーセントの遷移金属の炭化物とを含んでいても良い。ある種の実施形態においては、焼結炭化物は、0.5〜10μmの平均粒径を有しているタングステン炭化物粒子を含んでいても良い。
【0029】
ヒートシンク部分は、加工部分と熱的に連通しており且つ加工部分内に生じた熱を低下させるために加工部分から熱を伝導させて逃がす。上記したヒートシンク部分が加工部分と“熱的に連通している”ということは、熱が加工部分からヒートシンク部分へと流れることができることを意味している。従って、本発明の物品のある種の実施形態においては、ヒートシンク部分が加工部分と接触しているけれども、これは、必ずしもヒートシンク部分と加工部分とが接触している場合ではない。その代わりに、適切な熱伝導材料が、加工部分とヒートシンク部分との間に介装されて、熱が加工部分からヒートシンク部分へと流れるようにされても良い。例えば、ある種の実施形態においては、物品の本体部分の領域が加工部分とヒートシンク部分との間に介装されていても良い。当業者は、加工部分とヒートシンク部分との間の不可欠な熱的連通を可能にする本発明による物品のための他の設計を容易に理解できるであろう。このような実施形態の全てが本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
ヒートシンク部分は、加工部分の焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有する如何なる材料としても良いヒートシンク材料を含んでいる。ヒートシンク材料は、加工部分の焼結炭化物の熱伝導率の2倍よりも高い熱伝導率を有している。例えば、ヒートシンク材料は、150W/mKよりも高いのが好ましく、更に250W/mKよりも高い熱伝導率を有していても良い。ある種の高摩擦用途においては、ヒートシンク材料は、350W/mKよりも高い熱伝導率を有していても良い。ヒートシンク材料の例としては、限定されないが、銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びこれらの組み合わせがある。更に、ヒートシンク材料は、グラファイト及びその他の形態の炭素を含んでいても良い。ヒートシンク部分は、加工部分が亀裂の開始のための閾値に達するのを防止するのに十分な速度で、加工部分から熱を導くのに十分な大きさであるのが好ましい。
【0031】
図5A〜5Jは、本発明による物品の実施形態を示している。これらの図面は、ここに開示された種々の概念を示すことを意図した限られた数の可能な実施形態のみを必然的に示していることが理解されるであろう。上記したように、図5Aは、本発明のボーリングビット50のための切り刃インサートの実施形態の断面図である。図5の切り刃インサート50の断面は、切削部分51と本体部分52とを示している。切り刃インサート50の切削部分51は、焼結タングステン炭化物材料を含んでおり且つ穴開け動作中に岩石及び地球を掘削するようになされている。本体部分52は、コア領域を形成しているヒートシンク部分53を含んでいる。ヒートシンク部分53は、切削部分51と熱的に連通しており且つ当該切削部分から熱を導いて切削部分51内に生じた熱を低下させ、それによって、熱亀裂の開始及び進行の発生率を低下させる。ある種の実施形態においては、ヒートシンク部分は、本体部分全体を含んでいても良い。他の実施形態においては、ヒートシンク部分は、物品と接触しているが物品の別個の部分を構成していても良い。例えば、図5A及び7に示されているように、ヒートシンク部分は、本体部分内に設けられた凹部内に配置されても良い。
【0032】
図5Bは、ボーリングビットのための切り刃インサート150の別の実施形態の断面図であり、ヒートシンク部分が物品の本体部分に設けられた凹部に配置されている。特に、切り刃インサート150は、切削部分151の形態の加工部分と、本体部分152とを含んでいる。本体部分152は、多数のヒートシンク部分153が配置されている多数の凹部を含んでいる。本体部分の領域154は、ヒートシンク部分153と切削部分151との中間にあり且つ切削部分151とヒートシンク部分153との間の熱的連通を提供している。ヒートシンク部分153は、物品のバルク熱伝導率を増大させることができる方法で設計されても良い。
【0033】
ある種の実施形態においては、本発明に従って形成されたボーリングビットのための切り刃インサートは、ビット本体内へ延びているヒートシンク部分を備えていても良い。例えば、図5C及び5Dは、ボーリングビットのための切り刃インサートの実施形態の断面図を示しており、当該実施形態においては、切り刃インサート250、350は、切削部分251、351と本体部分252、352との形態の加工部分を備えている。各本体部分252、352は、ヒートシンク部分254、354を受け入れるための凹部を内部に備えている。切り刃インサート250の凹部は、本体部分252内を通り且つ加工部分251内へ延びている。本体部分252、352は、ビット本体又はローラーコーン253、353内の凹部内に圧入することができ且つビット本体又はローラーコーン253、353の凹部内に圧入しても良い。このようにして、ヒートシンク部分254、354は、物品からビット本体へと直接熱を伝導させる。
【0034】
図5Eは、本発明による金属加工のための切り刃インサートの一実施形態450を示している。切り刃インサート450は、加工片から金属を削り取るための焼結金属炭化物からなる切削部分451と、切削部分から伝導によって熱を除去し且つ物品の熱伝導率を大きくするためのヒートシンク部分452とを備えている。従って、インサート450のヒートシンク部分452は、切削部分451と直接接触している。中心穴453は、常にではないが典型的には、ねじによる工具ホルダへの取り付けを可能にするために、切り刃インサート450内に含まれている。本発明によって利益を得ることができるインサートのある種の実施形態は、フライス加工、回転、穴開け又はその他の切削動作に適合させることができる。
【0035】
図5Fは、本発明に従って形成されたダイヤモンド形状の切り刃インサートの実施形態550の平面図及び(A−Aに沿った)断面図を含んでいる。切り刃インサート550は、4つの切り刃によって割り送り可能である。切り刃インサート550は、切削部分551の形態の加工部分と、ヒートシンク材料を含んでいる本体部分552とを含んでいる。従って、本体部分552もまた、切削部分551から熱を伝導させるヒートシンク部分を構成している。切り刃インサートの実施形態550においては、切削部分551は焼結遷移金属炭化物材料によって構成されており、ヒートシンク材料は、焼結炭化物材料よりも高い熱伝導率を有している。
【0036】
図5Gは、本発明に従って形成されたダイヤモンド形状の切り刃インサートの別の実施形態650の平面図及び(B−Bに沿った)断面図である。図示された切り刃インサート650は、両方の切り刃インサートが金属加工のための割り送り可能なダイヤモンド形状の切り刃である点で、切り刃インサート550に類似している。インサート650は、切削部分651の形態の加工部分と、本体部分652とを備えている。インサート550と650との違いは、図5Fの断面A−Aと図5Gの断面B−Bとを比較することによって見ることができる。断面B−Bにおいて見ることができるように、切削部分651は、焼結繊維金属炭化物の領域653を備えている。ヒートシンク材料の領域654は、インサート650の各端部に設けられた焼結炭化物領域653の下に横たわっている。このような実施形態においては、領域654はヒートシンク部分と考えても良く、又は別の方法として、領域654は本体部分652の領域であると考えられても良い。いずれの場合にも、ヒートシンク材料領域654は、切削部分653から熱を伝導させる。このような実施形態は、切り刃インサート内に多量のヒートシンク材料を提供する。
【0037】
本発明による物品の実施形態はまた、切削工具をも含んでいる。切削工具の実施形態750が図5Hに示されている。切削工具は、切削部分の形態の加工部分751と、本体部分752とを備えている。切削部分751は、2つの焼結遷移金属領域753を備えている。ヒートシンク材料領域754は、切削領域753間に介装されており且つ当該切削領域753から熱を伝導させる。ヒートシンク材料は、焼結炭化物より高い熱伝導率を有している。一つの実施形態においては、ヒートシンク領域754は、同じく領域753の焼結炭化物材料よりも高い熱伝導率を有するヒートシンク材料によって作ることができる。別の方法として、ヒートシンク領域754は、単一のヒートシンク材料によって形成されている本体部分752の一部分と一体化され且つ当該本体部分の一部分を形成している。
【0038】
本発明に従って作られた物品の更に別の実施形態が、図5I及び図5Jの断面図に示されている。図5Iの長手方向断面図に示されている実施形態は、外側すなわち接触部分851及び内側すなわちコア領域852の形態の加工部分を含んでいるロッド850である。このような実施形態は、例えばドリルビット及びエンドミルのためのブランク材のような回転工具のためのブランク材のような回転工具のためのブランク材として使用することができる。内側すなわちコア領域は、ヒートシンク部分を含んでいても良い。ヒートシンク部分は、コア領域の断面のみであっても良く又はコア領域全体がヒートシンク部分であっても良い。ヒートシンク部分は、コア領域の断面のみであっても良く又はコア領域全体がヒートシンク部分であっても良い。ヒートシンク部分は、コア領域の断面のみであっても良く又はコア領域全体がヒートシンク部分であっても良い。接触部分851は焼結炭化物を含んでいても良く、ヒートシンク部分は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料を含んでいても良い。切削構造は、外側すなわち接触部分上に形成されていても良い。更に、切削構造は、ロッドの端部上に形成されていても良い。使用時に接触領域851は熱くなり、その熱は、ヒートシンク部分852によって接触領域851から伝導される。
【0039】
図5Jもまた、本発明に従って作られたロッドの実施形態を示している。図5Jに示されている断面図は、ロッド950の長手軸線に対して直角に断面されている。ロッド950は、外側すなわち接触領域951及び内側すなわちコア領域952の形態の加工部分を含んでいる。図5Iの実施形態におけるように、コア領域952の全て又は一部分は、ヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分である。しかしながら、ロッド950はまた、長手方向に延びている冷却剤用の溝953を備えており、当該冷却剤用の溝内では、接触部分951及びコア領域952からの熱を更に導くために冷却剤を循環させることができる。このような実施形態は、穴開けビット、フライス加工ビット又はその他の回転工具のために使用することができる。図5I及び5Jはロッドを示しているけれども、同じ構成原理が、ブランク材としてロッドを使用して作ることができる仕上工具に適用することができる。ここに示唆されているように、このような工具としては、例えば、穴開けビット及びある種の回転工具がある。
【0040】
本発明の実施形態としてはまた、ビット本体又はローラーコーンを含んでいるボーリングビット、ヒートシンク及びヒートシンクと接触している切り刃インサート(当該切り刃インサートはビット本体又はローラーコーンに固定されている)がある。ヒートシンクはまた、ビット本体と接触していても良い。ヒートシンクは、切り刃インサート又はビット本体又はローラーコーンのうちの少なくとも1つに埋設されるか、一体化されるか又は設けられた凹部内に配置されるのが好ましい。更に、切り刃インサートは、蝋付け、接着、摩擦嵌合又はその他の機械的固定装置のみならずその他の手段によって、ビット本体又はローラーのポケット内に固定することができる。
【0041】
本発明による物品のある種の付加的な実施形態は、図8Aにおいて斜視図で及び線B−Bに沿った図8Bの断面図で示されているシールリング1000のようなシールリングを含んでいる。シールリングは、一般的には、ポンプ及びコンプレッサ内に見出すことができ、軸又はその他の可動部分の周囲に機械的なシールを提供する。シールリング1000は、環状の接触部分1010の形態の加工部分と、ヒートシンク部分1020と、接触部分1010とヒートシンク部分1020との少なくとも中間にある本体部分1015とを備えている。接触部分は、焼結炭化物を含んでいても良く且つ機械的シールを提供するために装置の1以上の部分に接触し且つ力をかける接触面1012を含んでいても良い。接触面1012において接触がなされると、摩擦によって、当該接触面1012に熱が発生される。ヒートシンク部分1020は、接触面1012に生じた熱を下げるために、接触部分1010から熱を伝導させて逃がす。ヒートシンク部分1020は、接触部分1010の焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有するヒートシンク材料を含んでおり且つ前記接触部分と熱的に連通している。
【0042】
本発明による物品のある種の他の実施形態は、図9A〜9Cに示されているロール2000のような圧延機ロールを含んでいる。図9Aは、ある種の内部の特徴を点線で示している概略斜視図である。図9Bは、ロールの長手軸線に対して直角にロール2000の中間点を通って断面された断面図である。図9Cは、ロール2000の長手軸線で断面された断面図である。圧延機ロールは、一般的には、金属及び合金の加工片を加工するために使用され且つこのような加工片の厚みを薄くするか、さもなければこのような加工片の形状を変えることができるようになされている。ロール2000は、接触部分2010と、少なくとも1つのヒートシンク部分2020と、接触部分2010とヒートシンク部分2020との中間の本体部分2015とを含んでいる。接触部分2010のみならず本体部分2015は、本明細書の他の部分にも記載されているように、焼結炭化物を含んでいても良い。接触部分2010はまた、接触面2012を含んでいても良い。圧延機ロール2000が回転すると、加工片との接触によって摩擦が生じ、接触面2012を加熱する。更に加工片自体は、ロール2000によって加工される前に、高い温度まで加熱されるかも知れない。ヒートシンク部分2020は、接触部分2010の焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有する適切な材料とすることができる。ヒートシンク部分2020は、接触面2012に発生する熱を減じるために、接触部分2010から熱を伝導させ且つ接触部分と熱的に連通している。
【0043】
焼結炭化物は、強度、耐摩耗性及び耐食性のみならず破壊靱性を有する極めて優れた組み合わせを提供する。しかしながら、焼結炭化物は、制限された熱疲労及び耐衝撃性を有する。熱疲労及び衝撃(加熱による高温と冷却との繰り返し)を受けたときに、焼結炭化物は、しばしば表面の亀裂を呈する。図3は、熱疲労によって生じる表面の亀裂を有する典型的な焼結炭化物を示している。ひとたび焼結炭化物に亀裂が始まると、亀裂は、インサートが連続的な熱サイクルを受けるときに大きくなり続ける。最終的に、多くの亀裂が交差して焼結炭化物インサートの部片がバルク材料(しばしば、スポーリングと称される)から離脱するかも知れない。
【0044】
例えば、ボーリングビットの切り刃インサートは、ボーリング動作中に、切削されつつある岩石に対する多大な摩擦作用を受ける。摩擦作用によって生じる摩擦は、インサートの切削面に実質的な温度の上昇を惹き起こす。更に、切削インサートはまた、ボーリング動作中に、冷却剤(泥)によって冷却される。従って、これらは、一定の加熱及び冷却によって強い熱サイクルを受ける。多くの例においては、熱疲労による早期の熱亀裂は、ボーリングビットにおいて使用される焼結炭化物インサートの寿命を制限する主要ファクタである。熱サイクル及び熱疲労を受ける物品の他の例としては、フライス加工、穴開け又はボーリング用の切り刃インサート及び圧延機ロールがある。
【0045】
焼結炭化物の比較的制限された耐熱亀裂性は、材料が異なる熱膨張特性を有する2つの相を含んでいる複合物であるという事実に関係付けることができる。図4は、焼結炭化物の典型的な微細構造を示している。図4に見ることが出来るように、当該微細構造は、バインダ相42の連続的なマトリックス内に分散せしめられた硬質の不連続な相41の粒子からなる。硬質の不連続な相41の熱膨張率(CTE)は、バインダ相42のCTEと著しく異なっている。例えば、コバルト(焼結炭化物の典型的なバインダ)のCTEは、タングステンカーバイド(WC)(焼結炭化物内の典型的な硬質粒子)のCTEの約3倍である(コバルトの12×10−6cm/cm/℃に対するWCの4×10−6cm/cm/℃)。焼結炭化物の温度が上昇すると、コバルトはWCよりも遙かに速い速度で膨張する。結果として、2つの相間の境界部に大きな応力が発生する。当該応力の大きさは、温度上昇の程度に直接関係付けられている。更に、焼結炭化物が熱サイクル(加熱と冷却の繰り返し)を受けると、境界部は、亀裂を開始させるのに十分な程度まで弱くなる。連続する熱サイクルの場合には、亀裂はスポーリングが発生するまで大きくなり得る。
【0046】
従って、焼結炭化物及びその他の焼結硬質粒子材料の耐熱亀裂性は改良するが、それらの本来の強度、耐摩耗性、耐食性及び破壊靱性を犠牲にすることのない方法の必要性が大きい。
【0047】
一般的には、焼結炭化物の耐熱亀裂性は、熱伝導率(TC)のみならず破壊靱性(KIc)に直接比例し且つ熱膨張率(CTE)及びヤング率(E)に逆比例する。従って、耐熱亀裂性は、バルク熱伝導率及び/又は破壊靱性を増大させることによって、及びバルク熱膨張及び/又は剛性(ヤング率)を減じることによって改良することができる。TCが増大することによって局部的なホットスポットが防止され、一方、熱伝導率が低いと、相間の境界部の応力が減じられる。改良された耐熱亀裂性を有する焼結炭化物材料は、熱亀裂が開始し且つ大きくなる前に、より高い温度及びより多数の熱サイクルに対して作動することが期待できる。
【0048】
焼結炭化物の熱伝導率、破壊靱性、熱膨張及びヤング率は、化学組成及び/又は微細構造を変えることによって変えることができる。例えば、バルク機械靱性又は局部的な破壊靱性は、硬質粒子の粒径及び/又はバインダ成分を変えることによって変えることができる。不幸にも、破壊靱性の増大(耐熱亀裂性の観点からは望ましい)は、特定の観点から決定することができる。なぜならば、硬質粒子の粒径及び/又はバインダ成分の増大は、常に、耐摩耗性及び耐食性の減少をもたらすからである。
【0049】
同様に、熱伝導率は、焼結炭化物材料の硬質粒子成分を多くすることによって高くすることができる。しかしながら、硬質粒子の濃度の上昇は、常に破壊靱性の低下をもたらすであろう。また、熱膨張率は、バインダの組成を変えるか又はバインダ成分を減らすことによって低くすることができる。いずれの場合にも、破壊靱性は低下せしめられる。最後に、ヤング率は、硬質粒子成分を減らすことによって低下させることができる。しかしながら、硬質粒子成分の低減によって、耐摩耗性及び耐食性の低下がもたらされるであろう。従って、一般的な方法を使用して、熱伝導率、破壊靱性、熱膨張及びヤング率を変えることによって耐熱亀裂性を改良する試みは、破壊靱性又は耐摩耗性及び耐食性の低下による性能の低下をもたらし得る。
【0050】
本発明のある種の実施形態は、インサートの切削部分の化学的組成又は微細構造を変えることなく、焼結炭化物のボーリングインサートにおける有効な熱伝導率を改良する新規な方法に向けられている。このようにして、インサートの本来の破壊靱性、強度及び耐摩耗性/耐食性は変わらない一方で、全体の熱伝導性(従って、耐熱亀裂性)が実質的に改良される。
【0051】
一つの実施形態においては、切り刃インサートは、焼結遷移金属炭化物の化学的組成(例えば、バインダ及び/又は硬質粒子の特性及び/又は成分)を有する切削部分の形態の加工部分と、意図されている用途(例えば、切削されている岩石のタイプ、所望の切削速度)に対して最適化されている微細構造(例えば、硬質粒子の粒径)のみならず前記切削部分と比較して実質的により高い熱伝導率を有しているヒートシンク部分によって構成されている。切削動作中に、ヒートシンク部分は、切削部分の切削面に発生した熱を当該切削面から逃がす。このようにして、切削部分の温度上昇が従来の設計による物品よりも減じられ、熱亀裂が始まる傾向が減じられる。
【0052】
図5Aは、ヒートシンクを備えている切り刃インサート50の一実施形態を示している。インサート50は、切削面55を有しているドーム形状の切削部分51と本体部分52とを含んでいる。切削部分51と本体部分52との両方が、焼結遷移金属炭化物を含んでいる。ヒートシンク部分53は、本体部分52内に配置されており且つヒートシンク材料を含んでいる。可能なヒートシンク材料としては、例えば、Cu、Al、Ag又はAuのような熱伝導率の高い金属がある。ある種の実施形態においては、焼結炭化物は、90W/mK〜105W/mKの範囲内の熱伝導率(TC)を有するグレードとすることができる。このような実施形態においては、ヒートシンク材料のTCは比較的高い。例えば、Cuは約401W/mKのTCを有しており、Alは約373W/mKのTCを有しており、Agは約429W/mKのTCを有しており、Auは約317W/mKのTCを有している。代替的に、例えば、ヒートシンク部分は、グレードに応じて450W/mK以下の熱伝導率を有しているグラファイトを含むことができる。明らかに、焼結遷移金属炭化物からなるインサート50のバルク熱伝導率は、図5Aに示されている伝導性が高いコア領域を組み込むことによって高くすることができる。伝導性のコア(ヒートシンク部分53)が存在することによって、切削面55から熱を迅速に伝えること、従って、熱の発生と熱亀裂の開始を阻止することが期待できる。熱伝導率の改良は、切削部分51内の破壊靱性又は耐摩耗性/耐食性を犠牲にすることなく行うことができる。本発明による物品、例えば、他の切り刃インサート、工具、圧延機ロール及びシールリングの他の実施形態は、ここに記載された設計原理と類似の方法で利点を得ることができる。
【0053】
第一の例による切り刃インサートは、最初に、インサートの本体部分内の中心の盲穴又は凹部をインサートに二次加工し、当該凹部内に熱伝導性の金属又は合金からなるヒートシンク材料を配置してヒートシンク部分を提供することによって形成することができる。ある種の実施形態においては、熱伝導性のヒートシンク材料は、当該材料を加熱し、次いで、溶融した材料凹部内へ注ぎ且つ材料を冷却して固体状態とすることによって、本体部分内の凹部内に配置することができる。別の方法として、ヒートシンク材料を固体プラグとして凹部内に配置するか又は粉末として凹部内に配置しても良い。固体のヒートシンク材料は、熱嵌め及び/又は圧入によって凹部内に固定しても(すなわち、機械的に取り付けても)良い。更に、粉末形状の熱伝導性の金属又は合金を凹部内に配置し、次いで、定位置に突き固めて稠密に詰め込み、それによって、ヒートシンク材料を凹部内に機械的に取り付けることができる。上記した図5Aは、溶融した又は粉末化されたヒートシンク材料を、インサートの基部の凹部内に配置することによって作ることができる実施形態を概略的に示している。更に、粉末化されたヒートシンク材料を凹部に付加することに続いて、固体プラグを凹部内に圧入するか、さもなければ機械的に取り付けられるようにすることができる。固体プラグはまた、ヒートシンク材料を含んで、当該固体プラグによって本体部分の空洞内に固定された固体プラグ及び粉末がヒートシンク部分を形成するようにしても良い。当該凹部内に固体プラグを固定することはまた、凹部内の粉末化されたヒートシンク材料を更に突き固め又は圧密する機能を果たすことができ、これは、粉末及びより一般的にはヒートシンク部分の熱伝導性を改良することができる。図5Bに示されている代替的な設計においては、本発明による切削インサートは、インサートの本体部分内に配置された1以上のヒートシンク部分を含んでいても良い。
【0054】
図6は、本発明によるボーリングビットのための切り刃インサートのもう一つの実施形態を示している。切り刃インサート60は、ドーム形状の切削部分61と基部又は本体部分62を備えている。切削部分61は一般的な十分に高密度の焼結炭化物材料からなるけれども、基部部分62は、連続する気泡を有する焼結炭化物からなる。基部領域の気泡には、熱伝導率が高い金属又は合金とすることができるヒートシンク材料が浸み込ませられている。ここに記載されているように、適切な熱伝導率を有する金属又は合金は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有する如何なる材料であっても良い。適切なヒートシンク材料の例としては、限定的ではないが、銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びこれらの組み合わせがある。基部部分62は、切削部分61よりも著しく高い熱伝導率を有することが予想することができ、従って、上記した図5Aに示されている実施形態における中心に配置されたヒートシンク部分に似たヒートシンクとして機能するであろう。このような実施形態の本体部分においては、焼結炭化物の硬質粒子が分散された第一の相を形成している。焼結炭化物のバインダは、第一の連続相を形成しており、当該第一の連続相内には、硬質粒子が分散されている。ヒートシンク部分は第二の連続相を形成している。
【0055】
浸入せしめられたヒートシンク部分を備えている物品を形成する方法がここに記載されている。型の一部分は、不安定な材料を含んでいる焼結炭化物粉末の混合物が充填されている。不安定な材料は、粉末金属混合物内に含まれ且つ加熱によって圧密された粉末から除去されて圧密体又は焼結材料内に連続気泡を提供する比較的低融点の材料である。このような不安定な材料としては、粉末金属技術において知られており且つ限定的ではないがポリエチレン及びポリプロピレンのような蝋粒子及び粒状のポリマーがある。前記粉末混合物は、圧密されて圧粉体を形成することができ、当該圧粉体は続いて焼結される。焼結プロセス中(焼結前の何らかの他の加熱プロセス中)に、当該不安定な材料は、溶融、焼成及び蒸発のうちの一つによって除去され、それによって、一連の連続する空洞が提供される。当該連続する空洞には、当該技術において知られている溶浸法によってヒートシンク材料が浸入せしめられる。例えば、当該物品は、ヒートシンク材料の塊と接触させ且つ当該ヒートシンク材料の溶融温度より高い温度まで加熱しても良い。
【0056】
連続する気泡内へ浸入せしめられたヒートシンク材料を含んでいる物品の代替的な実施形態は、最初に型の一部分に第一の焼結炭化物粉末を充填することによって形成することができる。空洞の残りの部分の少なくとも一部分には、不安定な材料を含んでいる第二の焼結炭化物粉末が充填される。粉末は、型内で固められて2つの領域を有する一体の圧粉体が形成される。当該圧粉体は焼結され、それによって、前記不安定な材料が除去され且つほぼ完全に稠密な焼結炭化物の第一の領域と、連続する空洞を含んでいる焼結炭化物の第二の領域とを備えた焼結炭化物の物品がもたらされる。前記第二の領域には、ヒートシンク材料が浸入せしめられる。
【0057】
本発明に従って形成された物品のいずれもが、例えば、加工部分及び/又は本体部分に、混成焼結炭化物を含んでいる。例えば、本発明による切り刃インサート及びその他の物品の実施形態は、限定的ではないが、本明細書に参考として組み入れられている同時係属中の米国特許出願題10/735,379号に記載されている混成焼結炭化物のような混成型の焼結炭化物を含んでいても良い。一般的に、混成型の焼結炭化物は、第二の焼結炭化物の連続相全体に分散され、それによって、焼結炭化物の複合物を形成している少なくとも1つの焼結炭化物グレードの粒子を含んでいる材料である。米国特許出願第10/735,379号は、例えば、他の構成焼結炭化物と比較して低い連続比率及び改良された特性を有している。好ましくは、混成焼結炭化物が分散された相の連続比率は、0.48より小さいか又は等しくても良い。更に、本発明による混成焼結炭化物は、前記の連続相よりも高い硬度を有する分散相を有しているのが好ましい。例えば、本発明による切削インサート及びその他の物品の1以上の部分に使用される混成焼結炭化物のある種の実施形態においては、前記分散相の硬度は、88HRAより大きいか又は等しく且つ95HRAより小さいか等しいのが好ましく、前記連続相の硬度は、78HRAより大きいか又は等しく且つ91HRAより小さいか又は等しいのが好ましい。
【0058】
本発明による切り刃インサート及びその他の物品の付加的な実施形態は、第一の焼結炭化物の分散相と、第二の焼結炭化物の連続相とを含んでいる混成の焼結炭化物を含んでいても良く、前記第一の焼結炭化物分散相の体積比率は50重量パーセント未満であり、前記分散相の連続比率は、複合材料内の分散相の体積比率の1.5倍より小さいか又は等しい。
【0059】
焼結炭化物の物品の製造プロセスは、典型的には、硬質の遷移金属炭化物粒子を含んでいる粉末金属と、粉末混合物を形成するためのバインダを含んでいる粉末金属とを混和又は混合することを含んでいる。圧粉体を形成するためには、当該粉末混合物が固められ又は加圧される。当該圧粉体は次いで焼結され、固体の一体構造を有する物品又は物品の一部分が形成される。ここで使用されている物品又は物品の一部は、例えば、物品又は物品の一部の加工部分の体積とほぼ同じ特性を有する焼結炭化物材料のような材料によって作られている場合には、一体構造を有している。焼結に続いて、当該物品は、物品の特定の幾何学的構造の所望の形状又はその他の特徴を形成するために適切に機械加工することができる。例えば、当該粉末混合物は、圧粉体を形成するために、粉末混合物を機械的に又は静的に圧縮することによって固化することができる。当該圧粉体は、引き続き焼結させて、圧密体を更に圧縮強化し且つ物品の領域又は部分間に自己結合が形成される。当該圧密体は、300〜2000psi(2.068〜13.79MPa)の圧力及び1350〜1500℃の温度で過圧焼結されるのが好ましい。
【0060】
本発明の実施形態は、穴開けビット又はボーリングビットのための切り刃インサートを製造する方法を含んでいる。しかしながら、このような方法はまた、例えば、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ、スリッタ、圧延機ロール及びシールリングを含む本発明による物品のいずれかを形成するように適合させても良い。このような方法の一つは、型の空洞の第一の領域内に焼結炭化物粉末混合物を配置することを含んでいる。1以上のヒートシンク材料の固体片のような固体ヒートシンク材料を、型の空洞の第二の領域内に配置しても良い。ヒートシンク材料と共に切り刃インサート内に含まれるべき焼結炭化物の領域の数に応じて、型には、付加的な粉末を配置することができる付加的な領域に仕切っても良い。例えば、当該型は、幾つかの領域を規定するために型の空洞内に1以上の物理的な仕切りを配置することによって、又は仕切りを設けることなく型の部分に単に充填することによって、幾つかの領域に分けても良い。前記粉末は、ここに記載されている切り刃インサートの対応する部分の所望の特性を達成するために選択される。型内の粉末及び固体ヒートシンク材料は、次いで、粉末及びヒートシンク材料の固体を圧縮強化させるために同時に機械的に又は静的に圧縮されて、固められた粉末及びヒートシンク材料の圧粉体が形成される。当該圧粉体は、次いで、焼結されて型に本来付加されている固化された粉末を圧密強化する。しかしながら、焼結炭化物粉末を焼結させるために焼結炭化物粉末とヒートシンク材料とが相互に接触せしめられながら加熱される本発明による実施形態においては、ヒートシンク材料は、焼結温度より高い溶融温度を有していなければならない。特に、一般的な焼結炭化物粉末の焼結温度よりも低い溶融温度を有しているここに記載されているヒートシンク材料(例えば、銅、アルミニウム、銀又は金)の場合には、これらのヒートシンク材料は、浸潤しておらず且つ焼結炭化物粉末を粉末化されたヒートシンク材料と接触させた状態で共焼結させることによって形成された焼結炭化物と金属結合を形成する。
【0061】
ヒートシンク材料は、インサートの加工部分と接触しているか、さもなければ熱的に連通しているヒートシンク部分を形成し又は含んでいる。ヒートシンク部分を含んでいる焼結された圧密体を準備する上記の方法は、如何なる形状であっても良く且つ他の如何なる物理的な幾何学的特徴を有している切り刃インサートを提供する。本発明による方法において形成される特に有利な切り刃インサートの形状及び特徴は、切り刃インサートを製造する当業者によく知られているであろう。
【0062】
本発明によるある種の方法においては、焼結炭化物粉末は、型内で固化されて圧粉体が形成され、当該圧粉体は、ヒートシンク材料が物品に付加される前に焼結される。
他の実施形態においては、焼結炭化物粉末が型に付加され且つ固化されて第一の圧粉体が形成される。続いて、ヒートシンク材料が前記第一の圧粉体に付加され、結合された材料が固化される。続いて、第二の圧粉体が焼結されて物品が形成される。当該物品は、焼結炭化物の焼結中に形成された焼結炭化物を含んでいる加工部分と、ヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分とを含んでいる。しかしながら、ヒートシンク材料の特性を考えると、金属結合は、加熱中に、加工部分とヒートシンク部分との間に形成されないであろう。
【0063】
本発明の方法の更に別の実施形態は、凹部を含む第一の圧粉体を形成するために、型内で焼結炭化物を固化させることを含んでいる。次いで、凹部にヒートシンク金属を充填することができる。第一の圧粉体は、ヒートシンク材料の添加する前に焼結させても良い。ヒートシンク材料が固体形態で添加され且つ焼結温度よりも高い溶融温度を有している場合には、第一の圧粉体もまたヒートシンク材料の添加後に焼結させても良い。所望ならば、第一の圧粉体は、ヒートシンク材料の添加より前に圧粉体に強度を付与するために、約1200℃の温度まで予め焼結させても良い。ヒートシンク材料が固体である実施形態においては、当該固体は、凹部上に固体を熱嵌めするか又は圧入することによって凹部内に固定しても良い。
【0064】
本発明による物品を形成する方法のある種の実施形態においては、焼結炭化物を含んでいる焼結された本体が準備され、ヒートシンク材料は、当該焼結された本体内に配置され且つ機械的に取り付けられる。ヒートシンク材料は、焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有している。当該焼結された本体は凹部を含んでいても良く、ヒートシンク材料の添加は、凹部内にヒートシンク材料を配置することを含むことができる。当該ヒートシンク材料は、固体、粉末、液体又はこれらのいずれかの組み合わせとすることができる。固体は、例えば、圧入又は熱嵌めによって凹部に付加し、それによって、固体ヒートシンクと凹部との間に機械的結合を形成しても良い。他の実施形態においては、粉末ヒートシンク材料が凹部内に配置される。当該粉末は、凹部内で圧密させることができる。更に、ある種の実施形態においては、粉末は圧密され且つ凹部内に固体プラグを配置することによって凹部内に固定して粉末化されたヒートシンク材の添加に続いて凹部内に機械的なシールが形成される。
【0065】
本発明による方法のこのような実施形態は、切り刃インサートの設計者に、特定の用途のための各部分の種々の形状の設計における大きな自由度を提供する。圧粉体は、あらゆる所望の焼結炭化物材料によってあらゆる所望の形成に設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
当業者は、焼結炭化物の切り刃インサート及びその他の物品を形成するために固化させ且つ焼結させるのに必要とされるプロセスパラメータを理解するであろう。このようなパラメータが本発明において使用することができる。例えば、本発明に従って切り刃インサート及びその他の物品を形成するのに使用される焼結炭化物粉末の焼結は、例えば、1500℃以下の温度において、物品を圧密強化するのに適した温度で行うことができる。
【0067】
当該記載は、本発明の明確な理解に関係がある本発明の特徴を示していることが理解されるべきである。当業者に明らかであり、従って、本発明の更に十分な理解を補助する本発明のある種の特徴は、当該説明を簡素化するために提供しなかった。以上、本発明の実施形態を説明したけれども、当業者は、上記の説明を考慮したときに、本発明の多くの改造及び変形を採用することができることを認識するであろう。本発明のこのような変更例及び変形例の全てが、上記の説明及び特徴によって保護されることが意図されている。
【符号の説明】
【0068】
50 ボーリングビット、
51 切削部分、
52 本体部分、
53 ヒートシンク部分、
55 切削面、
60 切り刃インサート、
61 切削部分、
62 本体部分、
150 切り刃インサート、
151 切削部分、
152 本体部分、
153 ヒートシンク部分、
154 本体部分、
250,350 切り刃インサート、
251,351 切削部分、
252,352 本体部分、
254,354 ヒートシンク部分、
253,353 ビット本体又はローラーコーン、
450 切り刃インサート、
451 切削部分、
452 ヒートシンク部分、
453 中心穴、
550 切り刃インサート、
551 切削部分、
552 本体部分、
650 切り刃インサート、
651 切削部分、
653 焼結繊維金属炭化物の領域、
654 ヒートシンク材料の領域、
750 切削工具、
751 加工部分、
752 本体部分、
753 2つの焼結遷移金属領域、
754 ヒートシンク材料領域、
850 ロッド、
851 接触部分、
852 コア領域、
950 ロッド、
951 接触領域、
952 コア領域、
953 冷却剤用の溝、
1000 シールリング、
1010 加工部分、
1015 本体部分、
1020 ヒートシンク部分、
1012 接触面、
2000 ロール、
2010 接触部分、
2015 本体部分、
2020 ヒートシンク部分、
41 不連続相、
42 バインダ相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダと、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子とを含む焼結炭化物を含んでいる加工部分と、
前記焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料からなるヒートシンク部分であって、前記加工部分と熱的に連通しているヒートシンク部分と、を含む物品。
【請求項2】
請求項1に記載の物品であり、
前記加工部分を支持している本体部分を更に含み、前記ヒートシンク部分が当該本体部分と接触していることを特徴とする物品。
【請求項3】
請求項1に記載の物品であり、
前記ヒートシンク部分が前記本体部分の少なくとも一部分を含んでいることを特徴とする物品。
【請求項4】
請求項2に記載の物品であり、
前記加工部分が接触部分と切削部分とのうちの一つであることを特徴とする物品。
【請求項5】
請求項2に記載の物品であり、
前記加工部分が接触部分であり、当該物品が圧延機ロールとシールリングとから選択されたものであることを特徴とする物品。
【請求項6】
請求項2に記載の物品であり、
前記加工部分が切削部分であり、当該物品が、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタから選択されたものであることを特徴とする物品。
【請求項7】
請求項1に記載の物品であり、
前記加工部分が外側部分であり、前記ヒートシンク部分が、内側部分、コア部分及び本体部分の少なくとも一部分のうちの少なくとも一つである作動ことを特徴とする物品。
【請求項8】
請求項2に記載の物品であり、
前記ヒートシンク部分が、圧入、熱嵌め、固定部材、半田付け、接着剤及びクランピングのうちの少なくとも1つによって、前記本体部分に機械的に取り付けられていることを特徴とする物品。
【請求項9】
請求項2に記載の物品であり、
前記バインダが、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする物品。
【請求項10】
請求項2に記載の物品であり、
前記焼結炭化物が、タングステンカーバイドの硬質粒子及びコバルトを含んでいるバインダを含んでいることを特徴とする物品。
【請求項11】
請求項2に記載の物品であり、
前記焼結炭化物が、2〜40重量パーセントのバインダと、60〜98重量パーセントの粒子とを含んでいることを特徴とする物品。
【請求項12】
請求項2に記載の物品であり、
前記硬質粒子が、0.1〜10μmの平均粒径を有しているタングステンカーバイド粒子を含んでいることを特徴とする物品。
【請求項13】
請求項2に記載の物品であり、
前記ヒートシンク材料が150W/mKより高い熱伝導率を有していることを特徴とする物品。
【請求項14】
請求項2に記載の物品であり、
前記ヒートシンク材料が、銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド、グラファイト及びこれらの2以上の組み合わせから選択された物質を含んでいることを特徴とする物品。
【請求項15】
請求項2に記載の物品であり、
焼結炭化物が混成の焼結炭化物からなることを特徴とする物品。
【請求項16】
請求項15に記載の物品であり、
前記混成の焼結炭化物が、
焼結炭化物が分散された相と、
焼結炭化物の連続相とを含み、
前記分散相の連続比率が0.48以下であることを特徴とする物品。
【請求項17】
請求項2に記載の物品であり、
前記本体部分が凹部を含んでおり、前記ヒートシンク部分の少なくとも一部分が前記凹部内に配置されていることを特徴とする物品。
【請求項18】
請求項17に記載の物品であり、
前記ヒートシンク部分が、固体と粉体とのうちの少なくとも一方からなることを特徴とする物品。
【請求項19】
請求項18に記載の物品であり、
前記ヒートシンク部分が、前記凹部内に機械的シールを形成し且つ前記本体部分内に空洞を規定している固体プラグを備え、前記ヒートシンク部分が更に前記空洞内に粉体を含んでいることを特徴とする物品。
【請求項20】
請求項2に記載の物品であり、
前記ヒートシンク部分が、
硬質粒子を含んでいる第一の分散相と、
バインダを含んでいる第一の連続相であって、前記硬質粒子が当該第一の連続相内に分散されている前記第一の連続相と、
前記ヒートシンク材料を含んでいる第二の連続相と、を含んでいることを特徴とする物品。
【請求項21】
請求項3に記載の物品であり、
当該物品が圧延機ロールであり、当該圧延機ロールが、
第一の端部と、これと反対側の第二の端部と、当該第一の端部と第二の端部との間に延びており且つ接触面を含んでいる環状の外壁とを含んでいる接触部分と、
前記接触部分を支持しており且つ前記圧延機ロール内を長手方向に延びている穴を規定しており且つ内部に凹部を有している内壁を含んでいる本体部分と、を備え、
前記ヒートシンク部分の少なくとも一部分が前記凹部内に配置されていることを特徴とする物品。
【請求項22】
請求項3に記載の物品であり、
当該物品がシールリングであり、当該シールリングが、
接触面を含んでいる第一の面を備えた接触部分と、
当該接触部分を支持し且つ凹部を規定している第二の面を備えている本体部分であって、前記第一の面と前記第二の面との間に環状の外壁が延びており、前記第一の面と前記第二の面との間には、環状の内壁が延びており且つ前記第一の面と第二の面との間に延びている穴と当該第一の面及び第二の面上の開口部とを規定している本体部分と、を備えており、
前記ヒートシンク部分の少なくとも一部分が、前記凹部内に配置されていることを特徴とする物品。
【請求項23】
ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタから選択された物品であり、
チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物からなる硬質粒子と、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいるバインダとを含んでいる切削部分であって、切削面を含んでいる切削部分と、
当該切削部分を支持している本体部分と、
当該本体部分と接触しており且つ銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含んでいる物質を含んでおり、前記焼結炭化物より高い熱伝導率を有しているヒートシンク部分であって、前記切削部分と熱的に連通しており且つ当該切削部分から熱を伝導させて逃がす前記ヒートシンク部分と、を含んでいる物品。
【請求項24】
圧延機ロールであり、
チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物からなる硬質粒子と、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいるバインダとを含んでいる焼結炭化物を含む接触部分であって、更に、
第一の端部と当該第一の端部と反対側の第二の端部と、
前記第一の端部と第二の端部との間に延びており且つ接触面を備えている環状の外壁とを更に含んでいる前記接触部分と、
当該接触部分を支持しており且つ当該圧延機ロール内を長手方向に延びている穴を規定しており且つ凹部を含んでいる本体部分と、
当該本体部分と接触しており且つ銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含んでいる物質を含んでおり、前記焼結炭化物より高い熱伝導率を有しているヒートシンク部分であって、前記切削部分と熱的に連通しており且つ当該切削部分から熱を伝導させて逃がす前記ヒートシンク部分と、を含んでいる物品。
【請求項25】
シールリングであり、
チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物からなる硬質粒子と、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいるバインダとを含んでいる焼結炭化物を含む接触部分であって、更に、接触面を含んでいる第一の面を備えている接触部分と、
前記接触部分を支持しており且つ内部に凹部を規定している第二の面を備えており、前記第一の面と第二の面との間に環状の内壁が延びており且つ当該内壁は前記第一の面と第二の面との間に環状の内壁が延びており且つ当該内壁は前記第一の面と第二の面との間に延びている穴と、当該第一の面及び第二の面上に開口部を規定している本体部分と、
銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含んでいる物質を含んでおり、前記焼結炭化物より高い熱伝導率を有しているヒートシンク部分であって、当該ヒートシンク部分の少なくとも一部分が前記凹部内に配置されており、更に、前記加工部分と熱的に連通しており且つ当該加工部分から熱を伝導させて逃がす前記ヒートシンク部分と、を含んでいる物品。
【請求項26】
物品を形成する方法であり、
チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子とバインダとを含んでいる焼結炭化物を含んでいる加工部分を提供するステップと、
前記加工部分と熱的に連通しており且つ前記焼結炭化物よりも高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料を含んでいるヒートシンク部分を提供するステップと、を含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であり、
前記ヒートシンク部分が接触している本体部分を提供するステップを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であり、
前記加工部分が切削部分と接触部分とのうちの少なくとも一方であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であり、
前記加工部分が接触部分であり、前記物品が、圧延機ロール及びシールリングから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であり、
前記加工部分が切削部分であり、前記物品が、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項27に記載の方法であり、
加工部分を提供すること及び本体部分を提供することのうちの少なくとも一方が、焼結炭化物を含む焼結された本体を提供することを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であり、
前記ヒートシンク部分を、圧入、熱嵌め、締結部材による取り付け、半田付け、接着剤による取り付け、クランピングのうちの少なくとも1つによって、機械的に物品に取り付けることを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であり、
前記焼結された本体が凹部を備えており、
ヒートシンク部分を提供するステップが、当該ヒートシンク材料を前記凹部内に配置することを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が、固体、溶融材料、粉体及びこれらの2以上の組み合わせから選択されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が固体からなり、
前記ヒートシンク部分を提供するステップが、固体を前記凹部内に熱嵌めすること及び圧入することのうちの少なくとも一方を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が粉末化されたヒートシンク材料を含んでおり、
ヒートシンク部分を提供するステップが、前記粉体を前記凹部内に配置し且つ当該粉体を前記凹部内に機械的に取り付けるために固定プラグを前記凹部内に配置することを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項34に記載の方法であり、
加工部分を提供すること及び本体部分を提供するステップが、型の空洞内に焼結炭化物粉末を部分的に充填することを含んでおり、
ヒートシンク部分を提供するステップが、ヒートシンク材料を空洞内に配置することを含み、前記ヒートシンク材料は、固体であり且つ焼結炭化物粉末の焼結温度よりも高い融点を有しており、
更に、前記焼結炭化物粉末とヒートシンク材料とは、前記焼結炭化物粉末の焼結温度まで加熱され、当該焼結温度は、前記ヒートシンク材料の溶融温度よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料を前記空洞内に配置する前に、前記焼結炭化物粉末を空洞内で固めるステップを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料を前記空洞内に配置するステップに続いて及び前記焼結炭化物粉末及びヒートシンク材料を焼結炭化物粉末の焼結温度まで加熱するステップの前に、前記焼結炭化物粉末及び前記ヒートシンク材料を固めるステップを更に含み、
前記焼結温度は、前記ヒートシンク材料の溶融温度よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項37に記載の方法であり、
前記空洞内に前記ヒートシンク材料を配置するステップの前に、前記焼結炭化物粉末を固めて第一の圧粉体を提供するステップと、
焼結温度まで加熱するステップの前に、前記圧粉体及び前記ヒートシンク材料を固めて第二の圧粉体を提供するステップ、を更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項27に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が、銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド、グラファイト及びこれらの2以上の組み合わせから選択された材料を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項27に記載の方法であり、
前記バインダが、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項27に記載の方法であり、
前記焼結炭化物が混成の焼結炭化物を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項27に記載の方法であり、
前記焼結炭化物が0.3〜10μmの平均粒径を有するタングステンカーバイド粒子を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項27に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が50W/mKより高い熱伝導率を有していることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項27に記載の方法であり、
型の空洞内に第一の焼結炭化物粉末を部分的に充填するステップと、
前記空洞の残りの部分に少なくとも部分的に、第二の焼結炭化物粉末を充填するステップであって、当該第二の焼結炭化物粉末は、当該第二の焼結炭化物粉末の焼結温度よりも低い溶融温度を有する不安定な材料を含んでいるステップと、
前記第一の焼結炭化物及び第二の焼結炭化物を固めて圧粉体を形成するステップと、
当該圧粉体を焼結させて前記不安定な材料を除去し且つ第一の焼結炭化物の領域と連続気孔を含んでいる第二の焼結炭化物の領域とを含んでいる焼結された物品を形成するステップと、
前記第二の焼結炭化物の連続気孔内に、前記第一の焼結炭化物より高い熱伝導率を有しているヒートシンク材料を配置することと、を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であり、
前記ヒートシンク材料が、銅、アルミニウム、銀及び金のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項48】
加工部分と、当該加工部分を支持している本体部分とを含んでいる物品を形成する方法であり、
前記加工部分を含んでいる焼結された本体であって、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、ニオビウム及びタングステンから選択された少なくとも1つの遷移金属の炭化物の硬質粒子を含んでいる焼結炭化物と、コバルト、ニッケル及び鉄のうちの少なくとも1つを含んでいるバインダとを含んでいる焼結された本体を準備するステップと、
前記焼結された本体に、ヒートシンク材料であって、銅、アルミニウム、銀、金、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム、窒化硼素、アルミニウムシリコンカーバイド、酸化ベリリウム、シリコン−シリコンカーバイド、銅タングステン合金、銅モリブデンカーバイド、炭素、ダイヤモンド及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含み、前記焼結された本体と接触しており、前記焼結炭化物より高い熱伝導率を有し、前記加工部分と熱的に連通していて当該加工部分から熱を伝導させる前記ヒートシンク材料を添加するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であり、
前記加工部分が接触面を含んでいる接触部分であり、前記物品が、圧延機ロール及びシールリングから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であり、
前記加工部分が切削面を含んでいる切削部分であり、前記物品が、ボーリングビット、切り刃インサート、切削工具、回転工具、回転工具インサート、ドリル、ナイフ及びスリッタから選択されたものであることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2010−507742(P2010−507742A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534646(P2009−534646)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/022605
【国際公開番号】WO2008/051588
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(500566936)ティーディーワイ・インダストリーズ・インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】