説明

改良された耐衝撃性を示すポリヒドロキシアルカノエート組成物

本発明は、(A)コア−シェルエラストマー化合物と(B)エポキシ官能基を有するエチレ系モノマーを含むオレフィンコポリマーとをさらに含むポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物に関するものである。本発明組成物は優れた衝撃特性、特に低温に衝撃特性に優れている。本発明はさらに上記組成物の製造方法と上記組成物から製造される部品とに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された衝撃強度を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリヒドロキシアルカノエートまたはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)タイプのポリマー、例えばポリ乳酸(PLA)は植物起源のモノマーから得られるポリマーである。このポリマーはその生分解性特性のために大きな関心が寄せられている。しかし、このポリマーは脆弱なポリマーであり、衝撃に対する強化を必要とする。
【0003】
従来技術としては特許文献1(特開平JP H09−316310号公報)が挙げられる。この文献にはポリスチレンまたはポリジメタクリレートをグラフトしたエチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーまたは無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンを含むPLA組成物が記載されている。
【0004】
最近の特許文献2(国際特許第WO 2005/059031号公報)には3〜40質量%のエチレンとカルボン酸エステルとグリシジルエステルとのコポリマーを含むPLA組成物が記載されている。
【0005】
特許文献3(米国特許第2008/0071008号明細書)には0.2〜10%のコア−シェル化合物を含み、芳香族ビニルモノマーを全く含まない屈折率が1.5以下であるポリヒドロアルカン酸組成物が開示されている。
【0006】
これらの組成物は衝撃強度が実際に改良されてはいるが、20℃以下の温度での衝撃強度は十分満足のいくものではない。さらに、これらの組成物の一部は流動性がPHAより明らかに劣っている。この流動性の大幅な低下のために、薄くて大型の射出成形部品では使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特許第JP H09−316310号公報
【特許文献2】国際特許第WO 2005/059031号公報
【特許文献3】米国特許第2008/0071008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、衝撃強度、特に低温での衝撃強度に優れた新規なPHA組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、コア−シェルエラストマー化合物(A)と、エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンコポリマー(B)とをさらに含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)組成物にある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
コア−シェル化合物とオレフィンコポリマーとを組み合わせた上記衝撃改質剤を含む本発明の組成物は非常に優れた耐衝撃特性を有する。驚くことに、この耐衝撃特性は従来の組成物よりはるかに良く、特にエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンコポリマーまたはコア−シェル化合物から成る衝撃改質剤を含む組成物よりはるかに良い。
【0011】
本発明組成物は使用時に優れた流動性を有するという利点も有する。
エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーはグリシジル(メタ)アクリレートであるのが好ましい。
【0012】
コポリマー(B)はエチレンと、グリシジルメタクリレートとのコポリマーにすることができ、このコポリマーはアルキル鎖が1〜30の炭素原子を含む任意成分のアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートをさらに含むことができる。この任意成分のモノマーを本明細書ではアルキル(メタ)アクリレートという用語で表す。このアルキル(メタ)アクリレートの量は、オレフィンコポリマー(B)の全質量に対して0(すなわち全く含まない)から40%、有利には5〜35%、好ましくは20〜30%にすることができる。
【0013】
このオレフィンコポリマー(B)中のエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーの量は、例えば、その全質量に対して0.1〜20%、有利には2〜15%、好ましくは5〜10%である。
【0014】
本発明組成物は上記のエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンコポリマー以外の追加のオレフィンポリマー(C)をさらに含むことができる。この追加のオレフィンポリマー(C)は、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、エチレンとカルボン酸のビニルエステルとのコポリマー、エチレンと(メタ)アクリル酸またはアイオノマーとのコポリマー、好ましくはエチレンとアルキル鎖が1〜20のアルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチレンアクリレートまたはn−ブチルアクリレートとのコポリマーであるのが好ましい。この場合、組成物は(B)/(C)の質量比が90/10〜10/90、好ましくは75/25〜40/60であるのが有利である。
【0015】
(A)/((B)+任意成分の(C))の質量比は90/10〜10/90、例えば、85/15〜40/60、有利には80/20〜50/50、好ましくは75/25〜60/で40あるのが有利である。
改質剤((A)+(B)+任意成分の(C))の量は、全組成物の質量の1〜30%、有利には2〜15%、好ましくは3〜9%にすることができる。
【0016】
エポキシ官能基を含むエチレン系モノマーの重合状態での量は、全組成物の質量の0.01〜2%、有利には0.02〜1%、好ましくは0.03〜0.7%にすることができる。
【0017】
コア−シェルエラストマー化合物(A)のコアポリマーのガラス遷移温度は20℃以下、例えば−140℃〜0℃であるのが好ましい。シェルポリマーのガラス遷移温度は20℃以上、例えば30℃〜250℃であるのが好ましい。
【0018】
コア−シェルエラストマー化合物(A)のシェル部分は重合した状態で下記から成るのが好ましい:
(1)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜4の炭素原子を含むアルキルメタクリレート、および/または、
(2)6〜12の炭素原子を含む芳香族ビニル有機化合物、例えばスチレン、および/または
(3)アクリロニトリル。
このシェル部分は架橋されていてもよい。
【0019】
コア−シェル化合物(A)のコア部分は重合した状態で下記から成るのが有利である:
(1)4〜12、好ましくは4〜8の炭素原子を含む共役ジエン、または、
(2)アルキル鎖が1〜12、好ましくは1〜8の炭素原子を含むアルキルアクリレート。
【0020】
コア−シェル化合物(A)は下記の中から選択できる:
(1)ブタジエンを含むコアと、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリル酸および/またはスチレンを含むシェルとを有する化合物、
(2)ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートを含むコアと、メチルメタクリレートを含むシェルとを有する化合物、
(3)ブタジエンを含むコアと、アクリロニトリルとスチレンとの混合物を含むシェルとを有する化合物。
【0021】
コア−シェル化合物のコアの質量はコア−シェル化合物の全質量の10〜99%、例えば60〜95%であるのが有利である。
【0022】
コア−シェル化合物の寸法は50〜600nmであるのが有利である。
【0023】
PHAはポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)の中から選択するのが好ましい。
【0024】
本発明の別の対象は、PHA、(A)、(B)、任意成分の(C)および任意成分の一種以上の添加剤、例えば核形成剤の混合物を押出成形法で製造することを特徴とする改質PHA組成物の製造方法にある。
【0025】
本発明の一つの好ましい方法では下記段階を実施する:
(1)第1段階で、(A)と(B)と任意成分の(C)とを混合して衝撃改質剤を形成し、次いで、
(2)第2段階で、第1段階で得られた衝撃改質剤とPHAとを混合する。
【0026】
本発明の対象である上記組成物の別の製造方法では下記の段階を実施する:
(1)コポリマーが溶融状態になる温度かつ60〜180℃の最高温度で混合して衝撃改質剤を製造する第1段階、
(2)第1段階で得られた衝撃改質剤と、上記PHAとを押出成形または混合して、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物を製造する第2段階。
【0027】
第1段階の衝撃改質剤の製造段階は、最高温度を70〜140℃にして実施するのが有利である。
【0028】
本発明の一つの実施例では、衝撃改質剤を製造する第1段階を二軸または一軸押出機、好ましくは一軸押出機で押出成形で実施する。本発明の一つの実施例では、第1段階の衝撃改質剤の製造段階を共回転二軸押出機または逆回転二軸押出機またはコニーダまたはインターナルミキサまたは一軸押出機、好ましくは一軸押出機で、溶融状態で混合して実施する。衝撃改質剤の製造段階は、溶融状態での混合を含めて、本明細書では全て押出成形と表現する。
【0029】
第1段階での衝撃改質剤の滞留時間は10〜300秒にするのが好ましい。
【0030】
本発明の一つの実施例では、第1段階で得られた衝撃改質剤と上記PHAとを混合する第2段階を混合温度が180〜320℃にして実施できる。
【0031】
本発明の他の対象は、改質PHA組成物から成る部品または物品、例えば包装材料にある。
【0032】
本発明の別の対象は、組成物を例えば射出成形、プレスまたはカレンダリングによって形成する段階を含む部品または物品の製造方法にある。この製造方法は必要に応じて上記部品または物品をアニーリングする段階を含むことができる。
【0033】
本発明の対象は、(A)コア−シェル化合物と、(B)エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーとを含むオレフィンコポリマーを含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)組成物にある。
【0034】
本発明で、組成物または組成物のポリマーの一つが「モノマーを含む」とは、そのモノマーが重合した状態で上記ポリマーまたは組成物の一つ(または複数)のポリマー中に存在するということを意味する。
【0035】
PHAタイプのポリマーは生分解性ポリマーであり、その一部は、モノマーがバクテリア発酵過程で製造されるか、植物から抽出されるバイオ再生可能なポリマーである。「生分解性」という用語は微生物によって分解できる材料を意味する。この分解の結果、水、CO2および/またはCH4、場合によっては環境に無害な副生成物(残留物、新たなバイオマス)が形成される。材料が生分解性であるかどうかを調べるのに例えばEN規格13432を用いることができる。ポリマーが「バイオ再生可能」であるか否かはASTM規格D6866を用いて調べることができる。バイオ再生可能ポリマーは再生可能な材料を起源とする炭素すなわち14Cを含む点に特徴がある。特に、バイオ再生可能ポリマーを形成するの用いる生物、特に植物材料から得られる全ての炭素のサンプルは3つの同位元素:12C、13Cおよび14Cの混合物である。植物は環境と絶えず炭素を交換しているので14C/12C比は一定に保たれ、1.2×l0-12に等しい。14Cは放射性であるので、その濃度は経時的に減少する。14Cの半減期は5730年であり、従って、14Cの含有量は植物材料を抽出してから、バイオ再生可能ポリマーを製造し、さらにはその使用終了までほぼ一定である。例えば、14C/12C比が1×l0-12以上である場合、そのポリマーはバイオ再生可能であるとみなすことができる。
【0036】
バイオ再生可能ポリマー中の14Cの含有量は例えば液体シンチレーションスペクトロメトリ法またはマススペクトロメトリ法に従って測定できる。材料の14Cの含有量を測定するこれらの方法は、ASTM規格D6866(特にD 6866−06)およびASTM規格D7026(特にD 7026−04)に説明されている。これらの方法ではサンプル中の14C/12C比を測定し、この測定値を100%再生可能な材料起源の参考サンプルの14C/12C比と比較し、サンプル中の再生可能な材料起源の炭素の相対的パーセンテージを出す。
バイオ再生可能ポリマーの場合に用いるのが好ましい測定方法は、ASTM規格D6866−06(「加速質量分析法」)に記載のマススペクトロメトリである。
【0037】
PHAは、例えば2〜10の炭素原子を含むヒドロキシアルカン酸単位を含むポリマーである。例としては下記のものが挙げられる:、ポリカプロラクトン(PCL)ともよばれる6−ヒドロキシヘキサン酸を含むポリマー、3−ヒドロキシ−ヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸または3−ヒドロキシヘプタン酸を含むポリマー。5以下の炭素原子を含むポリマー、例えばグリコール酸(PGA)、乳酸(PLA)、3−ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレート(PHB)、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、4−ヒドロキシバレレートおよび5−ヒドロキシバレレートを含むポリマーが特に挙げられる。好ましいポリマーはPGA、PCL、PLAおよびPHBである。PHAは脂肪族でもよい。
【0038】
PHAはコポリマーでもよい。すなわち、PHAは第1のヒドロキシアルカン酸と、第1のヒドロキシアルカン酸とは異なる第2のヒドロキシアルカン酸または別のモノマー、例えばジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールまたは二酸、例えばコハク酸、アジピン酸およびテレフタル酸にすることができる別の単位を含むことができる。
本発明組成物はこれらポリマーの混合物から成っていてもよい。
【0039】
PHAは塊重合で作られることが多い。PHAはヒドロキシアルカン酸の脱水および縮合によって合成できる。PHAはヒドロキシアルカン酸のアルキルエステルの脱アルコールおよび縮合または対応するラクトンまたは環状エステルのダイマーの環状誘導体の開環重合によって合成することもできる。塊重合は一般にバッチまたは連続プロセスによって行う。PHAの連続製造方法の例としては下記の特許文献4〜6に記載の方法が挙げられる。特許文献7、8にはバッチプロセスが記載されている。
【特許文献4】特開JP−A 03−502115号公報
【特許文献5】特開JP−A 07−26001号公報
【特許文献6】特開JP−A 07−53684号公報
【特許文献7】米国特許第2 668 162号明細書
【特許文献8】米国特許第3 297 033号明細書
【0040】
コア−シェルコポリマー(A)は、コアがソフトポリマーから成り、少なくとも一つのシェルがハードポリマーから成る微粒子の形をしている。この微粒子の寸法は一般にマイクロメートル以下、有利には50〜600nmである。
【0041】
コアのポリマーはガラス遷移温度が20℃以下、例えば−140℃〜0℃、好ましくは−120℃〜−30℃であるのが好ましい。シェルのポリマーはガラス遷移温度が20℃以上、例えば30℃〜250℃であるのが好ましい。
組成物のポリマーのガラス遷移温度はISO規格11357-2:1999に従って測定できる。
【0042】
コアポリマーの例としてはイソプレンのホモポリマーまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレン−ブタジエンコポリマー、イソプレンと98重量%以下のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと98重量%以下のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、ブタジエンまたはイソプレンにすることができる。コアポリマーはシロキサン、必要に応じてアルキルアクリレートと共重合したものを含むこともできる。
【0043】
コア−シェルコポリマーのコアは完全または部分的に架橋されていてもよい。架橋に必要なことはコアの製造時に少なくとも二官能性モノマーを加えることだけであり、そのモノマーはポリオールのポリ(メタ)アクリル酸エステル、例えばブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタアクリレートの中から選択できる。他の多官能性モノマーの例はジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートおよびトリアリルシアヌレートである。重合中にコモノマーとして無水不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトによってコアを架橋できる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびメタクリル酸グリシジルを挙げることができる。また、モノマー、例えばジエンモノマーの固有の反応性を用いて架橋することもできる。
【0044】
シェルはスチレンのホモポリマー、アルキルスチレンのホモポリマーまたはメチルメタクリレートのホモポリマーか、これらのモノマーの少なくともの一つを70重量%以上含む少なくとも一つのコモノマーとのコポリマーである。コモノマーは他のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルから選択される。重合中にコモノマーとして無水不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトしてシェルを官能化することもできる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸グリシジル、ヒドロキシエチルメタクリラートおよびアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としてポリスチレンのシェルを有するコア−シェルコポリマー、PMMAのシェルを有するコア−シェルコポリマーが挙げられる。マレイミドを共重合するか、第一アミンでPMMAを化学的に修飾してイミド官能基を含むシェルにすることもできる。イミド官能基のモル濃度は30〜60%(シェル全体に対して)にするのが有利である。
【0045】
また、2つのシェルを有するコア−シェルコポリマー、例えば一方をポリスチレンにし、他方(外側)をPMMAにすることもできる。コポリマーとその製造方法の例は下記特許文献に記載されている:
【特許文献9】米国特許第US 4 180 494号明細書
【特許文献10】米国特許第US 3 808 180号明細書
【特許文献11】米国特許第US 4 096 202号明細書
【特許文献12】米国特許第US 4 260 693号明細書
【特許文献13】米国特許第US 3 287 443号明細書
【特許文献14】米国特許第US 3 657 391号明細書
【特許文献15】米国特許第US 4 299 928号明細書
【特許文献16】米国特許第US 3 985 704号明細書
【特許文献17】米国特許第US 5 773 520号明細書
【0046】
コアは例えば本発明では、コア−シェル化合物の5〜95重量%、シェルは95〜5重量%である。
【0047】
コポリマーの例としては、(i)少なくとも93%(モルで)のブタジエン、5%のスチレン、および0.5〜1%のジビニルベンゼンを含む50〜95部のコアおよび(ii)基本的に同じ重量の5〜50部の2つのシェル(内側シェルはポリスチレンで作られ、外側シェルはPMMAで作られる)から成るコポリマーが挙げられる。
【0048】
コアがブチルアクリレートで作られ且つシェルがPMMAで作られるコア−シェル化合物を使用するのが好ましい。この化合物は透明であるという利点を有する。
【0049】
コアがエラストマーであるため、これらのコア−シェル化合物は全てソフト/ハードとよばれる。コア−シェルコポリマー、例えばハード/ソフト/ハードコポリマーすなわちハードコア、ソフトシェルおよびハードシェルをこの順番で有するコポリマーを用いても、本発明から逸脱するものではない。ハード部分は、先のソフト/ハードコポリマーのシェルのポリマーで構成でき、ソフト部分は先のソフト/ハードコポリマーのコアのポリマーで構成できる。
【0050】
例としては特許文献18に記載のものが挙げられる。これは下記(1)〜(3)をこの順番で有する:
(1)メチルメタクリレートとエチルアクリレートとのコポリマーで作られたコア、
(2)ブチルアクリレートとスチレンとのコポリマーで作られたシェル、
(3)メチルメタクリレートとエチルアクリレートとのコポリマーで作られたシェル。
【特許文献18】欧州特許第270 865号公報
【0051】
その他のタイプのコア−シェルコポリマー、例えばハード(コア)/ソフト/セミハードコポリマーも存在する。先のコポリマーと比較すると、違いは一方は中間で他方は外側の2つのシェルから成る「セミ−ハード」外側シェルにある。中間シェルは、メチルメタクリレートと、スチレンと、アルキルアクリレート、ブタジエンおよびイソプレンから選択される少なくとも一つのモノマーとのコポリマーである。外側シェルはPMMAホモポリマーまたはコポリマーである。
【0052】
例としては下記(1)〜(4)をこの順番で有するものが挙げられる:
(1)メチルメタクリレートとエチルアクリレートとのコポリマーで作られたコア、
(2)ブチルアクリレートとスチレンとのコポリマーで作られたシェル、
(3)メチルメタクリレートとブチルアクリレートとスチレンとのコポリマーで作られたシェル、
(4)メチルメタクリレートとエチルアクリレートとのコポリマーで作られたシェル。
【0053】
化合物(A)は本出願人から商品名ビオストレングス(Biostrength、登録商標)、デュラストレングス(Durastrength、登録商標)およびクリアストレングス(Clearstrength、登録商標)で市販されている。
【0054】
ポリマー(B)はエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含む。ポリマー(B)はランダムコポリマーであるのが好ましい。エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーは不飽和エポキシド、例えば、下記(1)および(2)にすることができる:
(1)脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエートおよびイタコネート、およびグリシジル(メタ)アクリレート、および、
(2)脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、例えば2−シクロヘキセン−1−グリシジルエーテル、シクロヘキセン−4,5−ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキセン−4−グリシジルカルボキシレート、5−ノルボルネン−2−メチル−2−グリシジルカルボキシレートおよびエンドシス−ビシクロ−(2.2.1)−5−ヘプテン−2,3−ジグリシジルジカルボキシレート。
【0055】
エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーとしてはグリシジルメタクリレートであるのが好ましい。
【0056】
ポリマー(B)はエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンすなわち上記エチレン系モノマーと少なくとも一種の2〜20の炭素原子を含むα−オレフィン(例えばエチレンまたはプロピレン、好ましくはエチレン)とのコポリマーである。
【0057】
オレフィンコポリマーは、エポキシ官能基を有する上記α−オレフィンと異なる、上記エチレン系モノマーとは異なる少なくとも一つのモノマーをさらに含むことができる。例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
(1)共役ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、
(2)一酸化炭素、
(3)不飽和カルボン酸エステル、例えばアルキル(メタ)アクリレート、
(4)飽和カルボン酸ビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル。
【0058】
本発明の一つの有利な実施形態では、上記オレフィンポリマーはアルキル(メタ)アクリレートを含む。アルキル鎖は24以下の炭素を含むことができる。アルキル鎖が1〜12、有利には1〜6、さらには1〜4の炭素原子を含むものが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが有利である。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが好ましい。メチルアクリレートであるのが最も好ましい。
【0059】
最も好ましいポリマーはエチレン−アルキルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマーおよびエチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーである。
【0060】
エポキシ官能基を有するエチレン系モノマー以外で且つα−オレフィン以外のモノマー、例えば、アルキル(メタ)アクリレートの量は、オレフィンコポリマー(B)の全質量に対して0(すなわち全く含まない)〜40%、有利には5〜35%、好ましくは20〜30%にすることができる。
【0061】
オレフィンコポリマー(B)中のエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーの量は例えばその全質量に対して0.1〜20%、有利には2〜15%、好ましくは5〜10%である。
コポリマー(B)は本出願人から商品名ロタダ(Lotader、登録商標)で市販されている。
【0062】
本発明組成物は追加のオレフィンポリマー(C)、例えば(B)以外のエチレンコポリマー、すなわち、エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを全く含まないエチレンコポリマーをさらに含むことができる。このポリマーは、エチレンとビニルエステルとを含むコポリマーまたはエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとを含むコポリマー、例えばエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとから成るコポリマーの中から選択できる。(メタ)アクリレートのアルキル鎖は20以下の炭素を含むことができる。アルキル鎖が1〜12、有利には1〜6、さらには1〜4の炭素原子を含むものが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが有利である。アルキル(メタ)アクリレートはn−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルアクリレートであるのが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの量は、オレフィンコポリマー(C)の全質量に対して1〜40%、有利には5〜35%、好ましくは20〜30%であるのが好ましい。
【0063】
コポリマー(C)は本出願人から商品名ロトリル(Lotryl、登録商標)で市販されている。
【0064】
本発明の各種ポリマー中に存在する各種モノマーの量は、赤外線分光法で、例えばISO8985に記載の方法を用いて測定できる。
【0065】
コポリマー(B)および(C)の製造方法は周知である。これらのコポリマーは高圧ラジカル重合によって例えば管式反応装置またはオートクレーブ反応装置で製造できる。
【0066】
本発明の最も好ましい実施形態では、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物は(A)〜(C)を含む:
(A)コア−シェルタイプのエラストマー化合物、
(B)エチレンとグリシジルメタクリレートとのコポリマーから選択されるコポリマー、
(C)エチレンと、アルキル鎖が1〜20の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー。
【0067】
本発明PHA組成物は、PHA組成物のある種の特性を改良する添加剤、例えば核形成剤、可塑剤、染料、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、充填剤、難燃剤、滑剤、粘着防止剤、離型剤または一般に「加工助剤」として知られる加工促進剤をさらに含むことができる。
【0068】
本発明組成物は、標準的な熱可塑性材料の加工手段、例えば押出成形またはブレンディングによって各成分を混合して製造できる。へらまたはロータを備えたインターナルミキサ、エクスターナルミキサおよび一軸または共回転または逆回転する二軸押出機を使用できる。本発明組成物はPHAのガラス遷移温度以上の温度、さらにはそれ以上で調製するのが好ましい。組成物は例えば160〜260℃の温度で調製できる。
【0069】
本発明の好ましい方法では、衝撃改質剤をPHAに混合する段階を実施する。この衝撃改質剤は(A)と(B)と任意成分の(C)とを含む混合物である。
化合物(A)は粉末であるので、PHA組成物の製造方法は(A)と(B)と任意成分の(C)との混合で容易である。得られた衝撃改質剤は必要に応じて、PHA変形加工時に扱い易い顆粒の形にすることができる。
【0070】
本発明の別の対象は、本発明組成物から製造された部品または物品、例えば包装材料、フィルムまたはシートにある。
この部品または物品は周知の成形法、例えばプレスまたは射出成形プレス、周知の押出−ブロー成形法を使用して製造できる。フィルムまたはシートは、キャスト−フィルム押出、インフレーションフィルム押出またはカレンダリングによって製造することもできる。
【0071】
上記部品の製造法では、PHAを結晶化し、従って、その機械特性を改良するためのアニーリング段階を含むこともできる。
以下、組成物の実施例を説明するが、これらの実施例は本発明の説明として挙げられたもので、本発明の範囲をなんら制限するものではない。
【実施例】
【0072】
本発明の組成物および構造物を調製するために実施例では下記化合物を用いた:
(a1):ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートをベースにしたコア−シェル化合物、
(a2):ブチルアクリレートとメチルメタクリレートをベースにしたコア−シェル化合物、
(a3):アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンを含むコア−シェル化合物、
(b):重量で25%のアクリレートおよび8%のグリシジルメタクリレートを含むエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマー(ロタダー、Lotader(登録商標)AX 8900)、DSC(ISO 11357−03)で測定した融点は65℃である、
(c):重量で30%のアクリレートを含むエチレン−ブチルアクリレートコポリマー(ロトリル、Lotryl(登録商標)30BA02)、DSC(ISO 11357−03)で測定した融点は78℃である、
(d)ネーチャーワーク(Natureworks)社から市販のポリ乳酸2002D。
【0073】
本発明組成物(4)(5)および比較組成物(1)、(2)、(3)は成分(a)、(b1)、(b2)、(b3)、(c)および(d)を[表1]に示す比率で含む。
組成物(1)〜(5)は一段階で製造した。[表1]に示す比率で各成分を押出機で混合した。押出機は直径が16mmで、L/D比が25の共回転二軸押出機(Haake PTW16/25)である。最高混合物温度は240℃である。
【0074】
成分(b1)、(b2)、(b3)は粉末であり、上記押出機は一つの計量装置しか備えていないので、成分(a)および(d)を凍結粉砕で粉砕して微粉末にし、混合物(2)〜(5)を調製する押出機に入れる各成分を正確に計量する必要がある。各組成物は30℃に調節された金型中でKrauss Maffei 60-210 B1タイプの射出プレスによって200℃で射出成形した。
【0075】
ノッチ付きシャルピー衝撃特性は、110℃で1時間サンプルをアニーリングしてポリ乳酸を結晶化した後にISO規格179:2000に従って測定した。シャルピー衝撃値が高ければ高いほど、衝撃強度が良い。これらの特性は室温(23℃)および低温条件下(0℃および/または−40℃)で測定した。得られた値を[表2]に示す。
さらに、ノッチ付きシャルピー衝撃特性をアニーリングせずにISO規格179:2000に従って室温で測定した。得られた値を[表3]に示す。
【0076】
【表1】

【表2】

【表3】

【0077】
本発明に従って調製した組成物は従来技術で得られたものと比較して、改良された衝撃特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)と(B)を含むポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物:
(A)コア−シェルタイプのエラストマー化合物、
(B)エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンコポリマー。
【請求項2】
エポキシ官能基を有するエチレン系モノマーがグリシジル(メタ)アクリレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)がエチレンとグリシジルメタクリレートのコポリマーであり、このコポリマーは任意成分としてアルキル鎖が1〜30の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記のエポキシ官能基を有するエチレン系モノマーを含むオレフィンコポリマー以外の追加のオレフィンポリマー(C)をさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
追加のオレフィンポリマー(C)が、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、エチレンとカルボン酸ビニルエステルとのコポリマー、エチレンと(メタ)アクリル酸またはアイオノマーとのコポリマー、好ましくはエチレンとアルキル鎖が1〜20のアルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチレンアクリレートまたはn−ブチルアクリレートとのコポリマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(B)/(C)の質量比が90/10〜10/90、好ましくは75/25〜40/60である請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
(A)/((B)+任意成分の(C))の質量比が90/10〜10/90、例えば、85/15〜40/60、有利には80/20〜50/50、好ましくは75/25〜60/40である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
((A)+(B)+任意成分の(C))の量が、全組成物の質量の1〜30%、有利には2〜15%、好ましくは3〜9%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
エポキシ官能基を含むエチレン系モノマーの重合し状態での量が全組成物の質量の0.01〜2%、有利には0.02〜1%、好ましくは0.03〜0.7%である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
コア−シェル化合物(A)のコアのポリマーのガラス遷移温度が20℃以下で、シェルのポリマーのガラス遷移温度が20℃以上である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
コアの質量の量が、コア−シェル化合物の全質量の60〜95%である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
コア−シェル化合物の寸法が50〜600nmである請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
PHAがポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)の中から選択される請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
PHA、(A)、(B)、任意成分の(C)および任意成分の添加剤、例えば核形成剤の混合物をブレンディングまたは押出成形して製造する請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項15】
下記(1)と(2)の段階を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物の製造方法:
(1)(A)と(B)と任意成分の(C)とを混合して衝撃改質剤にする第1段階、
(2)第1段階で得られた衝撃改質剤とPHAとを混合する第2段階。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物または請求項14または15に記載の方法で得られる組成物を含む部品または物品、例えば包装材料。
【請求項17】
組成物を例えば射出成形、プレスまたはカレンダリングによって形成する段階を含み、必要に応じてこの部品または物品をアニーリングする段階を含む請求項16に記載の部品または物品の製造方法。

【公表番号】特表2012−533641(P2012−533641A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520071(P2012−520071)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051471
【国際公開番号】WO2011/007092
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】