説明

改良された赤外染料として使用するためのガリウムナフタロシアニン塩

式(I)のIR吸収ナフタロシアニン染料(式中、MはGa(A)であり;Aは−OH、ハロゲン、−OR、−OC(O)R又は−O(CHCHO)から選択されるアキシアルリガンドであり、ここでeは2から10の整数であり、Rは、H、C1〜8アルキル又はC(O)C1〜8アルキルであり;R及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素又はC1〜12アルコキシから選択され;Rは、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル又はSi(R)(R)(Rz)から選択され;Rは、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択され;及びR、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、及びC1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル、C1〜12アルコキシ、C5〜12アリールオキシ又はC5〜12アリールアルコキシから選択され、各Bは、BHが4と9との間にpKを有する塩基から独立に選択される)が提供される。この染料は、IR吸収インクジェットインクとしての使用に特に適しており、既知のCMYKインクとの適合性を、最適に赤方偏移したλmaxと一緒に提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、赤外(IR)染料、特に、合成的に高収率で得られ易い、水性インク基剤に分散性の近赤外染料に関する。それは主として、CMYKインクと適合性の赤外インクを提供するために、及びIR吸収を最適化するために開発された。
【背景技術】
【0002】
IR吸収染料は、光学記録系、熱書き込み表示、レーザフィルター、赤外写真、医療用途、及び印刷などの多数の用途がある。通常、これらの用途に使用される染料は、半導体レーザ(例えば、約700nmと2000nmの間、好ましくは約700nmと1000nmの間)の発光波長で近赤外に強い吸収を有することが望ましい。光学記録技法において、例えば、ヒ素化ガリウムアルミニウム(GaAlAs)及びリン化インジウム(InP)ダイオードレーザが、光源として広く使用されている。
【0003】
インクIR染料の他の重要な用途は、印刷インクなどのインクである。印刷された形態にあるディジタル情報の貯蔵及び検索は特に重要である。この技法の身近な例は、印刷されたスキャン可能なバーコードの使用である。バーコードは、通常、特定の製品に付けられたタグ又はラベルに印刷され、その識別情報、価格など製品についての情報を含む。バーコードは、通常可視的な黒色インクの線で印刷されて、スキャナからの可視光を使用して検出される。スキャナは、典型的には、LED又はレーザ(例えば、HeNeレーザ、633nmで発光)光源及び反射光を検出するための光電池を含む。バーコードインクに使用するのに適当な黒色染料は、例えば、国際公開第03/074613号パンフレットに記載されている。
【0004】
しかしながら、この技法の他の応用(例えば、セキュリティタグ付け)においては、裸眼には不可視でUV又はIR光で検出することができるインクで印刷されたバーコード又は他の秘密情報マーク付けを有することが望ましい。
【0005】
検出可能な不可視インクの特に重要な用途は、自動認識システム、特に「ネットページ」及び「Hyperlabel(商標)」システムである。ネットページシステムは、多数の特許及び特許出願の主題であり、その幾つかを上記の相互参照の部に挙げてあり、それらの全てを参照により本明細書中に組み込む。
【0006】
一般的に、ネットページシステムは、ネットページの製作、及びそれと人とのインタラクションに依存する。これらは、普通の紙に印刷されたテキスト、グラフィック及び画像のページであるが、それは双方向性のウェブページのように機能する。情報は、裸眼には実質的に不可視のインクを使用して各ページにコード化される。しかしながら、インク及びそれによりコード化されたデータは、光学的撮像ペンに感知されてネットページシステムに移され得る。
【0007】
各ページ上のアクティブボタン及びハイパーリンクをペンでクリックして、ネットワークから情報を要求し、又はネットワークサーバに選択の信号を送ることができる。幾つかのフォームでは、ネットページに手書きしたテキストが自動的に認識され且つネットページシステム中のコンピュータテキストへの変換が可能で、フォームが満たされることが可能になる。他のフォームでは、ネットページに登録された署名を自動的に照合することができて、電子商取引業務を安全に認可することが可能になる。
【0008】
ネットページは、ネットページ存立の基礎である。それらは、刊行された情報及び双方向サービスへの紙に基づくユーザインターフェースを提供することができる。
【0009】
ネットページは、そのページのオンライン記載への参照の不可視タグ付きの印刷されたページ(又は他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバにより絶えず維持されている。ページ記述は、テキスト、グラフィック及び画像を含むページの可視的レイアウト及び内容を記載する。それは、ページ上に、ボタン、ハイパーリンク及び入力フィールドを含む入力要素も記載する。ネットページは、ネットページペンでその面に付けられたマークがネットページシステムにより捕捉され同時に処理されることを可能にする。
【0010】
多重ネットページは、同じページの記載を共有することができる。しかし、他の点では同一のページによる入力が識別されることを可能にするために、各ネットページには固有のページ識別子が割り当てられる。このページIDは、非常に多数のネットページ間を識別するのに十分な精度を有する。
【0011】
ページ記述への各参照は、印刷されたタグによりコード化される。タグは、それが現れる固有のページを識別し、それにより間接的にページ記述を識別する。タグはページ上のそれ自身の位置も識別する。
【0012】
タグは、普通紙などの赤外線反射性の任意の基材上に赤外線吸収インクで印刷される。近赤外波長は人の目には不可視であるが、適当なフィルターを付けたソリッドステート画像センサにより容易に感知される。
【0013】
ネットページペン中の領域画像センサによりタグは感知されて、タグのデータは、最も近いネットページプリンタによりネットページシステムに送信される。ペンはワイヤレスであり、ネットページプリンタと近距離無線リンクによって通信する。タグは、十分小さく且つ密に配置されているので、ペンは、ページ上1度のクリックでも少なくとも1つのタグの画像を信頼性をもってとることができる。ペンがページとのどの対話でもページID及び位置を認識することは、対話はステートレスなので、重要である。タグはエラー訂正可能にコード化されて、表面損傷にある程度耐えるようになっている。
【0014】
ネットページページサーバは、固有のページインスタンスを印刷された各ネットページに対して維持しており、ページ記述中の入力フィールドに対するユーザ供給値の別個のセットを、印刷された各ネットページについて維持することを可能にしている。
【0015】
Hyperlabel(商標)はSilverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である。通常、Hyperlabel(商標)システムは、不可視(例えば、赤外)タグ付け方式を使用して、製品項目を一意的に識別する。これは、そのことが製品の表面全体にタグ付けすること又は製品の包装のグラフィックデザイン若しくはラベリングを侵さないでそのかなりの部分の表面にタグ付けすることを可能にするという大きな利点を有する。製品の全表面がタグ付けされれば(「全タグ付け」)、そのとき、製品の向きはそのスキャンされる性能に影響しない、即ち可視バーコードの視線上の不利の重要部分が排除される。さらに、タグがコンパクトで且つ大きく模写されれば(「全タグ」)、ラベル損傷はスキャニングを最早妨げない。
【0016】
このように、ハイパーラベリングは、製品表面の大きな部分を光学読み取り可能な不可視タグで覆うことからなる。タグが赤外スペクトルにおける反射又は吸収を利用するとき、それらは、赤外識別(IRID)タグと称される。各Hyperlabel(商標)タグは、それが現れる製品を一意的に識別する。タグは、項目の製品コードを直接コード化することができ、又はそれは、製品コードをデータベース検索により順番に識別する代理IDをコード化することができる。各タグは、場合により製品項目の表面でそれ自身の位置を識別し、ネットページ対話式利用の下流の消費者の利益を提供することもできる。
【0017】
Hyperlabels(商標)は、製品製造及び/又は包装中に、ディジタルプリンタ、好ましくはインクジェットプリンタを使用して、適用される。これらは、テキスト及びグラフィックが他の手段により印刷された後でタグを印刷する、アドオン方式の赤外プリンタ、又はタグ、テキスト及びグラフィックを同時に印刷する全カラー及び赤外プリンタであってよい。
【0018】
Hyperlabels(商標)は、適当な近赤外周波数を有する光源を使用する以外は同様な技法を、バーコードに使用して検出することができる。光源は、レーザ(例えば、GaAlAsレーザ、830nmで発光)であってもよく、又はそれはLEDであってもよい。
【0019】
前述のことから、不可視のIRを検出できるインクは、ネットページ及びHyperlabel(商標)システムの重要な成分であることが直ちに明らかになろう。IR吸収インクがこのシステムで満足に機能するために、それは幾つかの基準に理想的に合致する必要がある:即ち、
(i)IR染料の通常のインクジェットインクとの適合性;
(ii)IR染料とインクジェットインクに使用される水性溶媒との適合性;
(iii)近赤外領域における強い吸収(例えば、700nmから1000nm);
(iv)ゼロ又は低強度の可視吸収;
(v)耐光性;
(vi)熱安定性;
(vii)無毒性又は低毒性;
(viii)低コストの製造;
(ix)紙及び他の媒体によく付着する;及び
(x)印刷したときに裏抜けがなく且つインクの滲みが最小であること。
【0020】
したがって、上記基準の少なくとも幾つか及び好ましくは全てを満たすIR染料及びインク組成物を開発することが望ましいであろう。そのようなインクは、ネットページ及びHyperlabel(商標)システムを補完するために望ましい。
【0021】
幾つかのIR染料が、Epolin Products、Avecia Inks及びH.W.Sands Corp.など種々の供給源から市販されている。
【0022】
それに加えて、先行技術が種々のIR染料を記載している。例えば、米国特許第5,460,646号明細書は着色剤、媒体及び溶媒を含む赤外印刷インクを記載しており、その中で着色剤は2,3−ナフタロシアニンビストリアルキルシリロキシドケイ素(IV)である。
【0023】
米国特許第5,282,894号明細書は、金属を含まないフタロシアニン、フタロシアニン錯体、金属を含まないナフタロシアニン、ナフタロシアニン錯体、ニッケルジチオレン、アミニウム化合物、メチン化合物、又はアズレンスクワリン酸を含む溶媒系印刷インクを記載している。
【0024】
しかしながら、これらの先行技術の染料で、配合してネットページ又はHyperlabel(商標)システムでの使用に適当なインク組成物にできるものはない。特に、市販の、及び/又は先行技術のインクは、次の問題の1つ又は複数の難点がある:即ち、近赤外センサによる検出に不適当な波長での吸収;水系溶媒システムでの低い溶解性若しくは分散性;又はスペクトルの可視領域における許容できない高い吸収。
【0025】
本発明者らの先の米国特許出願第10/986,402号明細書(その内容は参照により本明細書中に組み込む)において、本発明者らは、上で特定した望ましい性質の多くを満たす水溶性のガリウムナフタロシアニン染料を記載した。これらの染料は、典型的には、4つのスルホン酸基を含み、それらが、酸型又は塩型のいずれでも高度の水溶性を付与している。しかしながら、その後例えば、水酸化ナトリウム又はトリエチルアミンを使用する塩形成は、予期されない染料のQ帯(λmax)における約805nmから約790nm以下への青方偏移を生ずることが見出された。他方、塩形成は、それが溶液中の染料のpHを上げて染料を他のCMYKインクと適合性にするので望ましい。通常、CMYKインクは、8〜9の範囲にpHを有するので、強い酸性のIRインクは、IRインクとCMYKインクがプリントヘッド面で放出中に混合されると、インク成分の沈殿を惹起する可能性があるであろう。他方、これらの染料は、IRセンサにより許容され得る検出性を有するためには、高濃度で使用されなければならず、インクがより濃く着色して見える結果を生じるので、塩形成により惹起されるQ帯の青方偏移は、これらの染料のIRインク候補としての魅力を減少させる。
【0026】
IR染料のこれらの相反する要求は、ネットページ及びHyperlabel(商標)用途において最適性能を有するIRインクを配合するために、検討される必要がある。
【発明の概要】
【0027】
第1の態様において、式(I)のIR吸収ナフタロシアニン染料が提供される:
【化1】


(式中、
MはGa(A)であり;
は、−OH、ハロゲン、−OR、−OC(O)R又は−O(CHCHO)から選択されるアキシアルのリガンドであり、ここでeは、2から10の整数であり、Rは、H、C1〜8アルキル又はC(O)C1〜8アルキルであり;
及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素又はC1〜12アルコキシから選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル又はSi(R)(R)(R)から選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択され;
、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル、C1〜12アルコキシ、C5〜12アリールオキシ又はC5〜12アリールアルコキシから選択され;
各Bは、BHが4と9の間のpKを有する塩基から独立に選択される)。
【0028】
或いは、式(II):
【化2】


(式中、
MはGa(A)であり;
は、−OH、ハロゲン、−OR、−OC(O)R又は−O(CHCHO)から選択されるアキシアルのリガンドであり、ここでeは、2から10の整数であり、Rは、H、C1〜8アルキル又はC(O)C1〜8アルキルであり;
及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素又はC1〜12アルコキシから選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル又はSi(R)(R)(R)から選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択され;
、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル、C1〜12アルコキシ、C5〜12アリールオキシ又はC5〜12アリールアルコキシから選択される)
のIR吸収ナフタロシアニン染料又はその塩を含む水性配合物が提供され、前記配合物は3.5から7の範囲のpHを有する。
【0029】
第2の態様で、染料又は上記の配合物を含むインクジェットインクが提供される。
【0030】
第3の態様で、上記のインクジェットインクを含む少なくとも1つのインク容器と流体連通するプリントヘッドを備えたインクジェットプリンタが提供される。
【0031】
第4の態様で、上記のインクジェットインクを含む、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジが提供される。
【0032】
第5の態様で、上記の染料が上に置かれた基材が提供される。
【0033】
第6の態様では、人が読み取れる情報とフォームの識別情報及びフォームの複数の位置を示す、機械が読み取れるコード化されたデータとを含む、印刷されたフォームにより、データをコンピュータシステム中に入れることを可能にする方法であって、
コンピュータシステムで、フォームの識別情報に関する指示データを、フォームに対して作動位置に置かれたときに少なくとも幾つかのコード化されたデータを使用して指示データを発生させる感知器から受け取るステップ;
コンピュータシステムで、指示データからフォームの少なくとも1つのフィールドを識別するステップ;及び
コンピュータシステムで、少なくとも1つのフィールドに関する指示データの少なくとも幾つかを解釈するステップ
を含み、前記コード化されたデータは、上記のIR吸収染料を含む、方法が提供される。
【0034】
第7の態様では、人が読める情報を含む印刷面と製品項目の識別情報を表すコード化された、機械が読めるデータとを有する製品項目と対話する方法であって、
(a)コンピュータシステムで、感知器から、製品項目の識別情報、製品項目に対して作動する位置に置かれたときの感知器に関する指示データを受け、コード化されたデータの少なくとも幾つかを使用する指示データを発生するステップ;及び
(b)コンピュータシステムで、指示データを使用して、製品項目に関する双方向性を識別するステップ
を含み、前記コード化されたデータは、上記のIR吸収染料を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】印刷されたネットページの見本とそのオンラインページ記述との間の関係の図解である。
【図2】ネットページペン、ウェブ端末、ネットページプリンタ、ネットページリレー、ネットページページサーバ、及びネットページアプリケーションサーバ、及びウェブサーバの間のインタラクションの概略図である。
【図3】ネットワークにより相互接続したネットページサーバ、ウェブ端末、プリンタ及びリレーの集合を例示する図である。
【図4】印刷されたネットページ及びそのオンラインページ記述の高レベル構造の概略図である。
【図5a】タグの4つの符号語の記号のインターリーブ及び回転を示す平面図である。
【図5b】図5aに示したタグに対するマクロドットの配置を示す平面図である。
【図5c】隣接するタグ間でターゲットが共有される、図5a及び5bに示したタグの9つの配置を示す平面図である。
【図5d】図5aに示したタグのセットとネットページペンのフォームにおけるネットページ感知器の視野との間の関係を示す平面図である。
【図6】ネットページペン及びその関連タグ感知視野円錐の斜視図である。
【図7】図6に示したネットページペンの斜視分解図である。
【図8】図6及び7に示したネットページペンのためのペンコントローラの概略ブロック図である。
【図9】壁掛けネットページプリンタの斜視図である。
【図10】図9のネットページプリンタの長さ方向の断面である。
【図10a】二重プリントエンジン及びグルーホイール(glue wheel)アセンブリの区域を示す、図10の部分の拡大である。
【図11】図9及び10のネットページプリンタのインクカートリッジ、インク、空気及び接着剤の通路、並びにプリントエンジンの詳細な図である。
【図12】インクカートリッジの分解図である。
【図13】項目IDの構造の概略図である。
【図14】全タグの構造の概略図である。
【図15】ペンクラス図の概略図である。
【図16】製品項目、固定製品スキャナ、手持ち製品スキャナ、スキャナリレー、製品サーバ、及び製品アプリケーションサーバの間のインタラクションの概略図である。
【図17】二体構造プリントヘッドの斜視図である。
【図18】図17の二体構造プリントヘッドの分解斜視図である。
【図19】図17の二体構造プリントヘッドの1端を通る断面図である。
【図20】図17の二体構造プリントヘッドの縦の断面図である。
【図21(a)】図17の二体構造プリントヘッドの側面図である。
【図21(b)】図17の二体構造プリントヘッドの平面図である。
【図21(c)】図17の二体構造プリントヘッドの反対側の側面図である。
【図21(d)】図17の二体構造プリントヘッドの逆平面図である。
【図22(a)】熱アクチュエータの基本的作動原理を示す図である。
【図22(b)】熱アクチュエータの基本的作動原理を示す図である。
【図22(c)】熱アクチュエータの基本的作動原理を示す図である。
【図23】図22に従って構成された単独のインクジェットノズル機構の3次元図を示す図である。
【図24】図23に示したノズル機構のアレイを示す図である。
【図25】バブル形成加熱要素アクチュエータのユニットセルのインク室を通る概略断面図である。
【図26】ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4の反射スペクトルを示す図である。
【図27】d−DMSO(0.1%w/v)中のヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4のH NMRスペクトルを示す図である。
【図28】テトライミダゾリウムヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホネート7の反射スペクトルを示す図である。
【図29】テトラキス(DBUアンモニウム)ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホネート9の反射スペクトルを示す図である。
【図30】p−トルエンスルホン酸(3当量)を加えたテトラキス(DBUアンモニウム)ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホネート9の反射スペクトルを示す図である。
【図31】2当量の酢酸を加えたテトライミダゾリウムヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホネート7の反射スペクトルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0036】
IR吸収染料
本明細書で使用する用語「IR吸収染料」は、赤外放射線を吸収し、それ故、赤外センサによる検出に適する染料物質を意味する。IR吸収染料は好ましくは近赤外領域で吸収し、好ましくは700nmから1000nm、より好ましくは、750nmから900nm、より好ましくは780nmから850nmの範囲にλmaxを有する。この範囲にλmaxを有する染料は、ヒ素化ガリウムアルミニウムダイオードレーザなどの半導体レーザによる検出に特に適している。
【0037】
下でさらに詳細に説明するように、式(I)により表される染料は、ナフタロシアニン環系のmeso窒素(1個又は複数)がプロトン化されている他の互変異性体と平衡していてよい。実際、式(I)により表される染料は、この平衡において少ない方の種である場合がある。しかし慣例的に、本発明の染料は通常、式(I)により表される。それと平衡にある他の互変異性体は、いうまでもなく本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明の染料は、近赤外領域における最適吸収;水性インクジェットインク中での配合物適合;最適近赤外線吸収を犠牲にしない、既知のCMYKインクとのpH適合性;及び容易な調製という有利な特徴を有する。さらに、それらの近赤外領域における高い吸光係数は、染料が、近赤外検出器(例えば、ネットページペン)による検出に適した濃度で「不可視」に見えることを意味する。したがって、本発明の染料は、ネットページ及びHyperlabel(商標)の用途での使用に特に適している。先行技術で知られている染料で、これらの性質のこの独特の組合せを有するものはない。
【0039】
本発明は、最初、ガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸塩と4当量のアミンとの反応がアンモニウム塩を生ずることを観察することにより着想された。驚いたことに、アンモニウム塩の反射スペクトルはアミンの構造と独立であるが、アンモニウム塩のpKにより非常に大きく影響されることが見出された。低いpKでQ帯(λmax)は、多くのモノマー成分を有して800〜810nmへ赤方偏移する。しかしながら、強い塩基性のアミンが使用されるとき、Q帯は、多くの2量体又は凝集成分を示して、モノマー成分は<800nmに青方偏移する。ナフタロシアニン環系の内部meso窒素が約11.5(第1プロトン化)及び6.7(第2プロトン化)のpK値を有することを考慮に入れれば、その場合は、学説にとらわれず、これらの結果は、アンモニウムイオンがゼロ個(構造A)、1個(構造B)又は2個(構造C)のmeso窒素をプロトン化する能力の点から解釈された。アンモニウムイオンのプロトン化能力が大きいほど(pKaが低いほど)、多環系のプロトン化の程度は大きくなる。多環系のプロトン化は、隣接する分子間のπ−π重なりを静電気的反発により減少させると信じられている。より少ない凝集及びより大きいモノマー成分とともに、塩のQ帯の赤方偏移が観察される。
【化3】

【0040】
これらの驚くべき結果に続いて、次に、他の弱酸が同じ現象を生じ得ることが見出された。例えば、テトラスルホン酸を4当量の酢酸リチウム又はナトリウム(B=AcO)で処理すると、リチウム又はナトリウム塩及び4当量の酢酸の形成物から生ずる特徴的な赤方偏移したスペクトルが得られる。したがって、溶液のpH(BH種のpKにより制御される)は、特定のナフタロシアニン染料の赤方偏移挙動の制御における最も重要な要因であると結論された。
【0041】
pHがλmaxを制御する最重要要因と確認されたことにより、ナフタロシアニンテトラスルホン酸をインク媒体に溶解して、生ずる配合物のpHを調整することにより、適当なIRインク配合物を調製することができる。3.5から7又は場合により4から6.5の範囲内のpHを有する配合物が、CMYK適合性を維持しながら、赤方偏移したQ帯を得るために望ましいことが見出された。pHは、任意の適当な塩基(例えば、下記する弱酸の共役塩基)を使用して、又は緩衝溶液を使用して調整することができる。
【0042】
同じ現象が、全範囲のスルホン化されたフタロシアニン及びナフタロシアニン染料について、Q帯吸収を制御することに同様に使用され得ると期待される。Q帯吸収を微調整するためのpHの使用は、これまで活用されたことがなく、赤方偏移したIR染料を製造する便利で低コストの手法を提供する。この現象を活用する染料及び配合物の具体的な例は、下の実施例で提供される。
【0043】
本発明におけるBH種は、4から9又は場合により4.5から8の範囲にpKを有する弱酸である。式(I)の染料は、対応するテトラスルホン酸に塩基を添加することにより容易に形成させることができる。塩基Bは中性(例えば、ピリジン)であってよく、その場合、BHは全体的に正に荷電するであろう(例えば、CNH)。或いは、塩基はアニオン性であってもよく(例えば酢酸アニオン)、その場合、BHは全体的に中性であろう(例えば、AcOH)。任意の又は全てのBHが中性である場合、ナフタロシアニン塩が全体的に中性であることは、適当な量の金属対イオン(例えば、Li、Naなど)により維持される。
【0044】
当業者は、本発明の基準を満たす広範囲の弱酸をよく知っているであろう。4から9の範囲にpKを有する普通の酸の若干例を下に挙げる。慣行に従って、幾つかの酸のpKは、それらの対応する共役塩基によって示す。例えば、ピリジン類のpKには対応するピリジニウムイオンのpKを示す。
酢酸 4.76
エチレンイミン 8.01
1H−イミダゾール 6.95
2−チアゾールアミン 5.36
アクリル酸 4.25
メラミン 5.00
プロパン酸 4.86
3−ヒドロキシプロパン酸 4.51
トリメチルアミンオキシド 4.65
バルビツール酸 4.01
アロキサン酸 6.64
1−メチルイミダゾール 6.95
アラントイン 8.96
3−ブテン酸 4.34
trans−クロトン酸 4.69
3−クロロブタン酸 4.05
4−クロロブタン酸 4.52
ブタン酸 4.83
2−メチルプロパン酸 4.88
3−ヒドロキシブタン酸 4.70
4−ヒドロキシブタン酸 4.72
モルホリン 8.33
ピリジン 5.25
2−ピリジンアミン 6.82
2,5−ピリジンジアミン 6.48
2,4−ジメチルイミダゾール 8.36
メチルコハク酸 4.13
ヒスタミン 6.04;9.75
2−メチルブタン酸 4.80
3−メチルブタン酸 4.77
ペンタン酸 4.84
トリメチル酢酸 5.03
2,3−ジクロロフェノール 7.44
3,6−ジニトロフェノール 5.15
プテリジン 4.05
2−クロロフェノール 8.49
3−クロロフェノール 8.85
3−ピリジンカルボン酸 4.85
4−ピリジンカルボン酸 4.96
2−ニトロフェノール 7.17
3−ニトロフェノール 8.28
4−ニトロフェノール 7.15
4−クロロアニリン 4.15
4−フルオロアニリン 4.65
アニリン 4.63
2−メチルピリジン 5.97
3−メチルピリジン 5.68
4−メチルピリジン 6.02
メトキシピリジン 6.47
4,6−ジメチルピリミジンアミン 4.82
3−メチルグルタル酸 4.24
アジパミン酸 4.63
ヘキサン酸 4.85
4−メチルペンタン酸 4.84
ベンズイミダゾール 5.53
安息香酸 4.19
3,5−ジヒドロキシ安息香酸 4.04
没食子酸 4.41
3−アミノ安息香酸 4.78
2,3−ジメチルピリジン 6.57
2,4−ジメチルピリジン 6.99
2,5−ジメチルピリジン 6.40
2,6−ジメチルピリジン 6.65
3,4−ジメチルピリジン 6.46
3,5−ジメチルピリジン 6.15
2−エチルピリジン 5.89
N−メチルアニリン 4.84
o−メチルアニリン 4.44
m−メチルアニリン 4.73
p−メチルアニリン 5.08
o−アニシジン 4.52
m−アニシジン 4.23
p−アニシジン 5.34
4−メチルチオアニリン 4.35
シクロヘキサンカルボン酸 4.90
ヘプタン酸 4.89
2−メチルベンズイミダゾール 6.19
フェニル酢酸 4.28
2−(メチルアミノ)安息香酸 5.34
3−(メチルアミノ)安息香酸 5.10
4−(メチルアミノ)安息香酸 5.04
N,N−ジメチルアニリン 5.15
N−エチルアニリン 5.12
2,4,6−トリメチルピリジン 7.43
o−フェネチジン 4.43
m−フェネチジン 4.18
p−フェネチジン 5.20
ベロナール 7.43
オクタン二酸 4.52
オクタン酸 4.89
o−クロロケイ皮酸 4.23
m−クロロケイ皮酸 4.29
p−クロロケイ皮酸 4.41
イソキノリン 5.42
キノリン 4.90
7−イソキノリノール 5.68
1−イソキノリンアミン 7.59
3−キノリンアミン 4.91
trans−ケイ皮酸 4.44
2−エチルベンズイミダゾール 6.18
メシチレン酸 4.32
N−アリルアニリン 4.17
チロシンアミド 7.33
ノナン酸 4.96
2−メチルキノリン 5.83
4−メチルキノリン 5.67
5−メチルキノリン 5.20
6−メトキシキノリン 5.03
o−メチルケイ皮酸 4.50
m−メチルケイ皮酸 4.44
p−メチルケイ皮酸 4.56
4−フェニルブタン酸 4.76
N,N−ジエチルアニリン 6.61
ペリミジン 6.35
2−ナフト酸 4.17
ピロカルピン 6.87
1,10−フェナントロリン 4.84
2−ベンジルピリジン 5.13
アクリジン 5.58
フェナントリジン 5.58
モルフィン 8.21
コデイン 8.21
パパベリン 6.40
ストリキニーネ 8.26
ブルシン 8.28
【0045】
本発明が上に挙げたこれらの酸に限定されないこと、及び当業者は、4から9、又は場合により5から8の範囲内のpKを有する他の酸(又は共役塩基)を容易に選択することができるであろうということは、いうまでもなく認識されるであろう。
【0046】
場合により、各Bは、窒素塩基及びオキシアニオンからなる群から独立に選択される。したがって、各Bは窒素塩基であってもよい。或いは、各Bはオキシアニオン塩基であってもよい。或いは、1つの染料塩中に窒素及びオキシアニオン塩基の混合物があってもよい。例えば、4つのBH分子が2分子の酢酸及び2つのピリジニウムイオン、又は別の場合として1分子の酢酸及び3つのイミダゾリウムイオンからなってもよい。当業者は、本発明の範囲内の種々の混合された染料の塩を容易に思いつくことができるであろう。
【0047】
「窒素塩基」により、プロトン化され得る少なくとも1つの窒素原子を含む塩基を意味する。場合により、窒素塩基はイミダゾール又はピリジンなどのC5〜12ヘテロアリール塩基である。イミダゾールは、本発明において特に好ましい塩基である。
【0048】
「オキシアニオン」により、プロトン化され得る少なくとも1つのオキシアニオンを含む塩基を意味する。場合により、オキシアニオン塩基はカルボキシレート塩基である。カルボキシレート塩基は少なくとも1つのカルボキシレート(CO)部分を含む有機分子である。場合により、カルボキシレート塩基は、Rが、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択される式RC(O)Oを有するものである。カルボキシレート塩基の例にはアセテート、ベンゾエートなどが挙げられる。
【0049】
及びRにより表される基は、染料のλmaxの波長を修正する又は「調整する」ために使用することができる。オルト位にある電子供与性置換基(例えばアルコキシ)は、染料で赤方偏移を生じさせ得る。本発明の好ましい1実施形態において、R及びRは、両方ともC1〜8アルコキシ基、好ましくはブトキシである。ブトキシ置換基は、λmaxを市販のレーザにより検出するために好ましい近赤外における長波長側へ偏移させて、有利である。他の好ましい実施形態において、R及びRは両方とも水素であり、それが、必要なナフタロシアニンの速くて能率的な合成をもたらす。
【0050】
驚いたことに、中心の金属原子Mは、本発明の化合物の光安定性に対して非常に大きい影響を有することが見出された。以前は、有機ナフタロシアニン発色団の性質は、そのような化合物が分解する速度に対する主たる原因であると信じられていた。しかしながら、ある種の金属ナフタロシアニンは他の金属に比較して異常に高い光安定性を示すことが、今や見出されている。特に、ガリウム及び銅ナフタロシアニンは、非常に良好な光安定性を示し、これらの化合物を、IR染料がオフィスの照明又は日光に1年以上曝される可能性がある、ネットページ及びHyperlabel(商標)用途に高度に適したものにすることを示した。ガリウム化合物は、これが銅に比較してより赤方に偏移したλmaxを有するので、特に好ましい。より赤方偏移したλmaxは、着色したシアン染料がIR染料のネットページペンに対する応答を妨害する可能性が低いので、好ましい。
【0051】
は通常ヒドロキシル基(−OH)である。或いは、Aは染料分子に特定の性質を付与するように選択又は改変されてもよい。Aは、染料分子にアキシアルの立体的嵩高さを付け加えて、それにより、隣接する染料分子間の面相互の相互作用を減少させるように選択することもできる。
【0052】
場合により、アキシアルのリガンドは、存在するときには、それが染料分子のπ面を効果的に「保護」又は封鎖するような配座をとる(又は構成される)。π系を覆う「傘」を形成して、隣接染料分子間の面相互の相互作用を減少させることができる、アキシアルなリガンドは本発明における使用に特に適している。
【0053】
先行技術のIR吸収染料化合物は、少なくともある程度は、スペクトルの可視領域で吸収することが本発明者らにより認められている。実際、先行技術で知られているIR吸収染料化合物の大部分は、固体状態で黒色又は緑色又は褐色を帯びた黒色である。この可視吸収は、「不可視」IRインク、特にネットページ又はHyperlabel(商標)システムで使用するためのIRインクでは、明らかに望ましくない。
【0054】
IR吸収染料化合物及び特にIR吸収金属リガンド錯体の吸収スペクトルにおける可視帯の存在は、少なくとも一部は隣接分子間の面相互の相互作用に基づくことが本発明者らによりさらに認められている。
【0055】
通常、IR吸収化合物は、分子の少なくとも一部に実質的に平面の部分を形成するπ系を含む。隣接分子における平面状のπ系は、π−πスタッキングとして知られる面相互のπ相互作用により、互いの上に積み重なる自然の傾向がある。したがって、IR吸収化合物は、面相互のπ相互作用により一緒になって集まる自然の傾向を有し、比較的弱く結合した2量体、3量体などを生ずる。学説にとらわれることは望まず、本発明者らは、IR吸収化合物のπ−πスタッキングは、それがなければ対応するモノマー状化合物に存在しないであろう、化合物のIRスペクトルにおける可視吸収帯の生成に大きく貢献すると理解する。この可視吸収は、π系が互いの上に積み重なり、π軌道が相互作用して、それらそれぞれのエネルギーレベルに小変化を生ずるときのIR吸収帯の広がりに基づくと理解される。IR吸収帯の広がりは、2つの点で望ましくない:第1に、それはIR領域における吸収強度を減少させる;第2に、IR吸収帯は可視領域にすそをひく傾向があり、強く着色した化合物を生ずる。
【0056】
さらに、π−π相互作用による着色した2量体、3量体などの形成は、固体状態及び溶液中の両方で生ずる。しかしながら、拡張されたπスタッキングしたオリゴマーの形成を妨げる溶媒分子がない固体状態においては、それが特別の問題である。許容される溶解特性を有するIR染料は、紙上に印刷されたとき、なおも強く着色した固体である可能性がある。理想的な「不可視」IR染料は、溶媒が蒸発してしまったか又は紙の中に吸収されてしまったときに不可視の状態であるべきである。
【0057】
デンドリマーは、ポリマー鎖などの複数の分岐鎖を有するので、例えば、最大級の立体的反発を作用させるのに有用である。しかしながら、隣接染料分子の面相互のπ−π相互作用に十分に干渉し得る任意の部分又は基が、可視吸収を最小化するのに適するであろうということは、上記から理解されるであろう。
【0058】
或いは(又はそれに加えて)、Aは、染料分子にさらに親水性を加えてその水分散性を増加させるように選択することもできる。
【0059】
一般的に、本発明の染料ナフタロシアニンは、4つの2,3−ジシアノナフタレン(1)分子の段階的カップリングにより合成されるが、それらは対応する1−アミノ−3−イミノイソインドレン(2)から調製することもできる。
【化4】

【0060】
段階的な塩基触媒による多環化は、金属テンプレーティング(templating)により促進することができ、又はそれは金属が存在しなくても進行し得る。多環化がテンプレーティング金属の存在なしで実施されたなら、そのときは、金属を、生じた金属を含まないナフタロシアニン中に容易に挿入することができる。それに続くスルホン化及び塩形成は、標準的手順により進行する。さらなる合成上の詳細は、下の実施例で提供する。
【0061】
用語「ヒドロカルビル」は、本明細書では、一般的に炭素と水素とからなる1価の基を指して使用する。したがって、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニル及びアルキニル基(直鎖及び分岐鎖形両方の)、炭素環基(ビシクロオクチル及びアダマンチルなどのポリシクロアルキル基を含む)及びアリール基、並びにアルキルシクロアルキル、アルキルポリシクロアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、シクロアルキルアリール及びシクロアルケニルアリール基などの前述の基の組合せを含む。同様に、用語「ヒドロカルビレン」は、上記の1価のヒドロカルビル基に対応する2価の基を指す。
【0062】
特に断らない限り、ヒドロカルビル基中の4までの−C−C−及び/又は−C−H部分は、場合により−O−;−NR−;−S−;−C(O)−;−C(O)O−;−C(O)NR−;−S(O)−;−SO−;−SOO−;−SONR−から選択される1つ又は複数の部分により中断されてもよく;ここでRは、H、C1〜12アルキル、C6〜12アリール又はC6〜12アリールアルキルから選択される基である。
【0063】
特に断らない限り、ヒドロカルビル基が1つ又は複数の−C=C−部分を含む場合、4までの−C=C−部分は、場合により−C=N−によって置き換えられてもよい。したがって、用語「ヒドロカルビル」は、ヘテロアリール、エーテル、チオエーテル、カルボキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、チオール、アミド、エステル、ケトン、スルホキシド、スルホネート、スルホンアミドなどの部分を含むことができる。
【0064】
特に断らない限り、ヒドロカルビル基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、上で定義した親水性基(例えば、−SOH、−SOK、−CONa、−NH、−NMeなど)又は上で定義したポリマー状の基(例えば、ポリエチレングリコールから誘導されたポリマー状の基)から独立に選択された4個までの置換基を含むことができる。
【0065】
用語「アリール」は、本明細書においては、フェニル、ナフチル又はトリプチセニル(triptycenyl)などの芳香族基を指して使用する。C6〜12アリールは、例えば、どのような置換基も除外して6〜12個の炭素原子を有する芳香族基を指す。用語「アリーレン」は、いうまでもなく、上記の1価アリール基に対応する2価の基を指す。アリールに対する如何なる言及も、当てはまる場合は、暗黙のうちにアリーレンを含む。
【0066】
用語「ヘテロアリール」は、1、2、3又は4個の炭素原子がN、O又はSから選択されるヘテロ原子により置き換えられたアリール基を指す。ヘテロアリール(即ちヘテロ芳香族)基の例には、ピリジル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリニル、イソインドリニル、インドリル、イソインドリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾロニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾピリミジニル、ベンゾトリアゾール、キノキサリニル、ピリダジル、クマリニルなどが挙げられる。用語「ヘテロアリーレン」は、いうまでもなく、上記の1価のヘテロアリール基に対応する2価の基を指す。ヘテロアリールに対する如何なる言及も、当てはまる場合は、暗黙のうちにヘテロアリーレンを含む。
【0067】
特に断らない限り、アリール、アリーレン、ヘテロアリール及びヘテロアリーレン基は、下記の1、2、3、4又は5個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0068】
場合により置換されている基が言及された場合(例えば、架橋された環状基、アリール基又はヘテロアリール基との関連で)、場合による置換基(1つ又は複数)は、C1〜8アルキル、C1〜8アルコキシ、−(OCHCHOR(ここで、dは2から5000の整数であり、Rは、H、C1〜8アルキル又はC(O)C1〜8アルキルである)、シアノ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、チオール、−SR、−NR、ニトロ、フェニル、フェノキシ、−CO、−C(O)R、−OCOR、−SO、−OSO、−SOOR、−NHC(O)R、−CONR、−CONR、−SONRから独立に選択され、ここで、R及びRは、水素、C1〜12アルキル、フェニル又はフェニル−C1〜8アルキル(例えば、ベンジル)から独立に選択される。例えば、基が2つ以上の置換基を含む場合、異なる置換基は、異なるR又はR基を有することができる。例えば、ナフチル基は3種の置換基:−SONHPh、−COMe基及び−NHで置換されていてもよい。
【0069】
用語「アルキル」は、本明細書では、直鎖の及び分岐した形態の両方で、アルキル基を指して使用する。アルキル基は、O、N又はSから選択された1、2又は3個のヘテロ原子で中断されていてもよい。アルキル基は、1、2又は3個の二重及び/又は三重結合で中断されていてもよい。しかしながら、用語「アルキル」は、ヘテロ原子による中断又は二重若しくは三重結合による中断を有しないアルキル基を通常は指す。「アルケニル」基が特に言及された場合、これは、上記「アルキル」の定義に対する限定として解釈されると意図したものではない。
【0070】
用語「アルキル」はハロゲノアルキル基も含む。例えば、C1〜12アルキル基は、5個までの水素原子がハロゲン原子により置き換えられていてもよい。例えば、−OC(O)C1〜12アルキル基は特に、−OC(O)CFを含む。
【0071】
例えば、C1〜12アルキルが言及された場合、それは、アルキル基が1と12の間の任意の数の炭素原子を含んでいてよいことを意味する。特に断らない限り、「アルキル」へのどのような言及も、C1〜12アルキル、好ましくはC1〜6アルキルを意味する。
【0072】
用語「アルキル」は、シクロアルキル基も含む。本明細書で使用する用語「シクロアルキル」は、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、及びシクロアルケニル基並びにシクロアルキルアルキル基などこれらと線状アルキル基との組合せを含む。シクロアルキル基は、O、N又はSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子により中断されていてもよい。しかしながら、用語「シクロアルキル」は、通常、ヘテロ原子による中断を有しないシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルメチル、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0073】
用語「アリールアルキル」は、ベンジル、フェニルエチル、及びナフチルメチルなどの基を指す。
【0074】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のいずれかを指して使用される。しかしながら、通常、ハロゲンは、塩素又はフッ素置換基を指す。
【0075】
「...を含む置換基」(例えば、「親水性基を含む置換基」、「酸基を含む置換基(その塩を含む)」、「ポリマー鎖を含む置換基」その他)と言及された場合、問題の置換基は全体的に又は部分的に、特定化された基から構成されていてよい。例えば、「酸基を含む置換基(その塩を含む)」は、式−(CH−SOK(jは、0又は1から6の整数)のものであってよい。したがって、この関係で、用語「置換基」は、例えば、特定化された基が結合されたアルキル基であってよい。しかしながら、置換基の厳密な性質は、特定化された基が存在する限り、所望の官能性に決定的に重要なものではないことが容易に理解されるであろう。
【0076】
本明細書中に記載されたキラルな化合物は、立体記述子を示されていない。しかしながら、化合物が立体異性体形で存在する可能性があれば、そのときは、全ての可能な立体異性体及びそれらの混合物が含まれる(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及びラセミ混合物などを含む全ての組合せ)。
【0077】
同様に、化合物が多くの位置異性体の形態で存在し得れば、そのときは、全ての可能な位置異性体及びそれらの混合物が含まれる。
【0078】
疑問を避けるために、「を含む(comprising a)」などの語句中の用語「a」(又は「an」)は、「少なくとも1つ」を意味し、「1つであってただ1つだけ」を意味しない。用語「少なくとも1つ」が特に使用される場合、これは「a」の定義に限定を有すると解釈されるべきではない。
【0079】
本明細書全体を通して、用語「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」などの変化形は、述べられた要素、整数、又はステップを含むが、如何なる他の要素、整数又はステップも排除しないと解釈されるべきである。
【0080】
インクジェットインク
本発明はインクジェットインクも提供する。インクジェットインクは水系インクジェットインクであることが好ましい。
【0081】
水系インクジェットインク組成物は、文献でよく知られており、水に加えて、共溶媒、殺生物剤、金属イオン封鎖剤、保湿剤、粘度改良剤、浸透剤、湿潤剤、界面活性剤などの添加剤を含んでいてよい。
【0082】
共溶媒は、典型的には水溶性有機溶媒である。適当な水溶性有機溶媒には、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール及び2−プロパノールなどのC1〜4アルキルアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノt−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビトール、ソルビタン、グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、及びスルホラン;又はそれらの組合せが含まれる。
【0083】
他の有用な水溶性有機溶媒には、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、スルホラン、モルホリン、N−エチルモルホリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの極性溶媒及びそれらの組合せが含まれる。
【0084】
インクジェットインクは、インク組成物に濡れ特性及び保水性を付与する湿潤剤又は保湿剤として役立ち得る高沸点水溶性有機溶媒を含有してよい。そのような高沸点水溶性有機溶媒は、180℃以上の沸点を有するものを含む。180℃以上の沸点を有する水溶性有機溶媒の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール及びそれらの組合せが挙げられる。
【0085】
インクジェットインク中の水溶性有機溶媒含有率合計は、全インク組成物を基準にして、好ましくは約5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0086】
他の適当な湿潤剤又は保湿剤には、糖類(単糖、オリゴ糖及び多糖を含む)及びそれらの誘導体(例えば、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸塩、アルドン酸、ウロン酸など)が含まれる。
【0087】
インクジェットインクは、水性インクの記録媒体中への浸透を促進するための浸透剤も含んでよい。適当な浸透剤には、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル)及び/又は1,2−アルキルジオールが含まれる。適当な多価アルコールのアルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノt−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルである。適当な1,2−アルキルジオールの例は1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールである。浸透剤は、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオールなどの直鎖炭化水素ジオールから選択されてもよい。グリセロール又は尿素も浸透剤として使用することができる。
【0088】
浸透剤の量は、全インク組成物を基準にして、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲内である。
【0089】
インクジェットインクは、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤も含むこともできる。有用なアニオン性界面活性剤には、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アシルメチルタウリン、及びジアルキルスルホコハク酸などのスルホン酸型;アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オイル、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;カルボン酸型、例えば、脂肪酸塩及びアルキルサルコシン塩;及びアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、及びグリセロリン酸エステル塩などのリン酸エステル型が含まれる。アニオン性界面活性剤の具体的な例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩である。
【0090】
適当なノニオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、及びポリオキシエチレンアルキルアミドなどのエチレンオキシド付加物型;グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、及び糖アルキルエステルなどのポリオールエステル型;多価アルコールアルキルエーテルなどのポリエーテル型;及びアルカノールアミン脂肪酸アミドなどのアルカノールアミド型が含まれる。ノニオン性界面活性剤の具体的な例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル;及びポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンオレエートエステル、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステルである。2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール又は3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール界面活性剤も使用することができる。
【0091】
インクジェットインクは、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オン又は4,4−ジメチルオキサゾリジンなどの殺生物剤も含むことができる。
【0092】
インクジェットインクは、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などの金属イオン封鎖剤も含むことができる。
【0093】
インクジェットインクは、一重項酸素クエンチャーも含むことができる。インク中の一重項酸素クエンチャー(単数又は複数)の存在は、IR吸収染料が分解する性向を低下させる。クエンチャーは染料分子の付近で発生した如何なる一重項酸素も消費して、その結果染料の分解を最小化させる。過剰の一重項酸素クエンチャーは、染料の分解を最小化させるのに有利であり、そのIR吸収特性を長期にわたり維持する。一重項酸素クエンチャーは、アスコルビン酸、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、アジド類(例えば、ナトリウムアジド)、ヒスチジン、又はトリプトファンから選択されることが好ましい。
【0094】
インクジェットプリンタ
本発明は、上記のインクジェットインクの入った少なくとも1つインク容器に流体連通するプリントヘッドを備えたインクジェットプリンタも提供する。
【0095】
熱バブルジェット及び圧電性プリンタなどのインクジェットプリンタは、当技術分野において周知であり、当業者共通の一般的知識の一部を形成しているであろう。プリンタは高速インクジェットプリンタであってよい。プリンタは、ページ幅プリンタであることが好ましい。本発明における使用にとって好ましいインクジェットプリンタ及びプリントヘッドは、それらの全体を参照により本明細書に組み込む次の特許出願に記載されている。
10/302,274 6692108 6672709 10/303,348 6672710 6669334
10/302,668 10/302,577 6669333 10/302,618 10/302,617 10/302,297
【0096】
プリントヘッド
Memjetプリンタは、通常、ページ幅のプリントヘッドを形成するために、互いに隣接して取り付けられた2つのプリントヘッド集積回路を有する。典型的には、プリントヘッドICは、サイズが2インチから8インチまで変わることができて、それで数通りの組合せが、例えば、A4のページ幅のプリントヘッドを作るために使用され得る。例えば、7及び3インチの、2及び4インチの、又は5及び5インチの2つのプリントヘッドICが、A4プリントヘッド(ノーテーションは7:3である)を作るために使用され得る。同様に、6及び4(6:4)又は5及び5(5:5)の組合せが使用され得る。A3プリントヘッドは、例えば8及び6インチのプリントヘッド集積回路から構成することができる。写真印刷用には、特にカメラには、小さめのプリントヘッドを使用することができる。単独のプリントヘッド集積回路、又は3つ以上のそのような集積回路も、必要なプリントヘッド幅を得るために使用することができるということも認識されるであろう。
【0097】
プリントヘッドの好ましいプリントヘッド実施形態を、ここで図17及び18を参照して説明することにする。プリントヘッド420は細長い部品の形をしている。図18で最もよくわかるように、プリントヘッド420の構成要素は、支持部材421、可撓性PCB422、インク分配モールディング423、インク分配プレート424、第1及び第2プリントヘッド集積回路(IC)425及び426を備えたMEMSプリントヘッド及び母線427を備える。
【0098】
支持部材421は、金属又はプラスチックなどの任意の適当な材料から形成することができて、押し出し、成形又は任意の他の方法で形成することができる。支持部材421は他の構成要素を互いに対して適当な配置で保持して、同時にプリントヘッドを全体として剛直にし強化するのに十分強い必要がある。
【0099】
可撓性のPCBは、プリントヘッド420の長さにわたり、第1及び第2電気的接続部428及び429を備える。電気的接続部428及び429は、柔軟性のコネクター(示していない)に対応している。電気的接続部は、接触領域450及び460を備え、それらは、使用時にSoPECチップ(示していない)からの対応する出力コネクターと接する位置にある。SoPECチップからのデータは、電気的接続部428及び429に沿って通り、第1及び第2プリントヘッドIC425及び426それぞれの端末に分配される。
【0100】
図19に示すように、インク分配モールディング423は、複数の細長い導管430を備え、それらは液体(即ち着色インク、赤外インク及び固定液)及びエアポンプからの圧縮空気を、プリントヘッド420(図18)の長さに沿って分配する。インク分配モールディング423の長さに沿って配置された一連の液体開口部431(図20)は、液体及びエアを導管430からインク分配するプレート424へと分配する。液体及びエアは、プリンタにある対応するソケット(示していない)に差し込まれるプラグ441(図21)に形成されたノズル440により供給される。
【0101】
分配プレート424は、液体開口部431から局所的に供給される液体を取り入れて、それらをより小さい分配開口部432を通してプリントヘッドIC425及び426(図20に示す)に分配するように構成された多層構造物である。
【0102】
プリントヘッドIC425及び426は、端から端へと位置して、より小さい分配開口部432からのインクがプリントヘッドIC425及び426の対応する開口部(示していない)中に供給され得るように、分配プレート424と接触して固定されている。
【0103】
母線427は、プリントヘッドノズルのアクチュエータ(下で詳細に説明する)に駆動電流を供給するように位置する比較的高容量の導体である。図20に最もよく示すように、母線427は、ソケット433により一端で、及び可撓性PCB422の一回りする翼434により両端で位置を保持されている。母線も、プリントヘッドIC425を適した位置に保つのに役立っている。
【0104】
図18に最もよく示したように、組み立てたとき、可撓性PCB422は、他の構成要素を効果的に包み、それによりそれらを互いに接触させて保持する。この束ね効果にも拘らず、支持部材421は、プリントヘッド420全体の必要な剛直性及び強度の主要な部分を提供する。
【0105】
上記のプリントヘッドでの使用に適したプリントヘッドノズルの2つの形態(「熱アクチュエータ」及び「バブル形成ヒータ要素アクチュエータ」)を、ここで説明することにする。
【0106】
熱アクチュエータ
熱アクチュエータにおいては、通常、インクを含むノズルチャンバーを有するノズル配列及びチャンバー内に位置するパドルに接続された熱アクチュエータが提供される。熱アクチュエータデバイスは、ノズルチャンバーからインクを噴出させるように作動させられる。好ましい実施形態は、伝導性トレースの伝導加熱を提供するための一連のテーパ付き部分を備えた特別の熱アクチュエータを含む。アクチュエータは、ノズルチャンバーのスロットの付けられた壁を通して受け入れられたアームによりパドルに接続されている。アクチュエータアームは、ノズルチャンバーの壁のスロットの表面と実質的に合致する合致形状を有する。
【0107】
最初に図22(a)〜(c)を見れば、この実施形態のノズル配列の基本的作動の図解的例示が提供されている。ノズルチャンバー501は、ノズルチャンバー501を乗せているウェハ基材を通してエッチングされ得るインク導入チャンネル503によりインク502で満たされて用意される。ノズルチャンバー501は、さらにインク噴出口504を備え、その周囲にインクメニスカスが形成される。
【0108】
ノズルチャンバー501の内部にはパドル型デバイス507があり、それはアクチュエータ508に、ノズルチャンバー501の壁にあるスロットを通して相互接続している。アクチュエータ508は、ヒータ手段、例えば、支柱510の一端部分に隣接して位置する509を含む。支柱510は基材に固定されている。
【0109】
ノズルチャンバー501から液滴を噴出させることが望まれるときは、図22(b)に例示したように、ヒータ手段509が、熱膨張を受けるように加熱される。好ましくは、ヒータ手段509自体又はアクチュエータ508の他の部分が、高い曲げ効率を有する材料で構築されており、ここで曲げ効率は、
【数1】


により定義される。
【0110】
ヒータ要素の適当な材料は、ガラス材料を曲げるように成形することができる銅ニッケル合金である。
【0111】
ヒータ手段509は、駆動効果がパドル末端507で拡大されて、支柱510付近の小さな熱膨張がパドル末端の大きい動きをもたらすように、支柱510の末端に隣接して位置することが理想的である。
【0112】
ヒータ手段509及びその結果として起こるパドルの動作は、インクメニスカス505周囲の圧力の全体的上昇を惹起して、メニスカスは、図22(b)に示すように、急速に膨張する。ヒータ電流は脈打ち、インクはインクチャンネル503からの流入に加えて出口504から噴出する。
【0113】
続いて、パドル507は、作動を停止してその休止位置に復帰する。作動停止は、インクのノズルチャンバー中への全般的逆流を起こす。ノズル周縁外におけるインクの前方への運動量と対応する逆流とが、全体的くびれと液滴512のちぎれを生じさせ、液滴は印刷媒体へ向かって行く。メニスカス505が崩れた結果、インク流通チャンネル503を通る、インクのノズルチャンバー502中への全体的吸い込みが起こる。それに合わせて、ノズルチャンバー501は再び満たされて、その結果、配置は図22(a)に戻り、ノズルチャンバーは引き続きもう1つのインク滴の噴出に備える。
【0114】
図23は、ノズル配列の横からの斜視図を例示する。図24は、図23のノズル配列アレイを通る断面図を例示する。これらの図で、以前導入した要素の番号付けをそのまま使用した。
【0115】
先ず、アクチュエータ508は、一連のテーパ付きアクチュエータユニット例えば、窒化チタン層517の上に形成された上部ガラス部分(アモルファス二酸化ケイ素)516を含む515を備える。或いは、より高い曲げ効率を有するであろう銅ニッケル合金層(以後キュプロニッケルと呼ぶ)を使用することができる。
【0116】
窒化チタン層517はテーパ付き形態であり、そのままで、抵抗加熱が支柱510の末端部付近で起こる。隣接した窒化チタン/ガラス部分515は、アクチュエータ508に機械的な構造的支持も与えるブロック部分519で相互接続している。
【0117】
ヒータ手段509は細長くて、加熱時にアクチュエータ508の軸に沿って示される曲げの力が最大化されるように間隔を空けた、複数のテーパ付きアクチュエータユニット515を含むことが理想的である。スロットは隣接するテーパ付きユニット515の間に付けられ、各アクチュエータ508の隣接アクチュエータ508に対して僅かに異なる作動を可能にする。
【0118】
ブロック部分519は、アーム520と相互接続している。アーム520は、次にノズルチャンバー501の側面に形成されたスロット例えば522により、ノズルチャンバー501の中側のパドル507に接続している。スロット522は、インクがアーム520の周囲に溢れ出す機会を最小化するように、通常アーム520の表面と合致するように、設計されている。インクは、スロット522周囲の表面張力効果により、通常ノズルチャンバー501内に保持される。
【0119】
アーム520を作動させることが望まれるときは、伝導電流が、下側のCMOS層506に接続しているブロック部分519内の通路を通って窒化チタン層517を通過して、必要な電力を供給し且つノズル配列回路網を制御する。伝導電流は、支柱510に隣接する窒化物層517の加熱を生じさせ、それがアーム20の全体的な上方への曲げを生じさせ、その結果、ノズル504からのインク噴出を起こさせる。噴出された液滴は、インクジェットプリンタにとって普通の先に述べた方法でページ上に印刷される。
【0120】
ノズル配列のアレイは、単一のプリントヘッドを作るように形成することができる。例えば、図24には、プリントヘッドアレイを形成するように、交互配置されたラインに置かれた図23の複数のインク噴出ノズルの配列を含む、種々のアレイの部分的断面図が例示されている。いうまでもなく、フルカラーアレイなどを含む種々のタイプのアレイを考案することができる。
【0121】
記載されたプリントヘッドシステムの構築は、内容を相互参照により全て組み込む、本出願人の「像創出方法及び装置(IJ41)」と題する米国特許第6,243,113号明細書に記載されているステップの適当な改変により、標準MEMS技法を使用して進めることができる。
【0122】
バブル形成ヒータ要素アクチュエータ
図17を参照して、バブル形成ヒータ要素アクチュエータのユニットセル1001は、ノズル輪縁1004を有するノズル1003が中にあるノズルプレート1002;及びノズルプレートを通して散開する開口部1005を含む。ノズルプレート1002は後でエッチングする犠牲材料上に化学蒸着法(CVD)により析出した窒化ケイ素構造からプラズマエッチングされる。
【0123】
プリントヘッドは、各ノズル1003に関して、ノズルプレートを支持する側壁1006、この壁により仕切られたチャンバー1007及びノズルプレート1002、多層基材1008及び多層基材を通って基材の遠い側(示していない)に伸びる導入路1009も備える。円弧を描く細長いヒータ要素1010は、要素が懸垂する梁の形態になるように、チャンバー1007内に懸垂している。示したプリントヘッドは、微小電子機械システム(MEMS)構造であり、それはリトグラフ法により形成される。
【0124】
プリントヘッドが使用されるとき、インク容器(示していない)からのインク1011は、導入路1009を通ってチャンバー1007に入り、チャンバーが満たされる。その後、ヒータ要素1010は、加熱が脈打つ加熱の形態になるように、1マイクロ秒より幾分短く加熱される。ヒータ要素1010は、チャンバー1007中のインク1011と熱的に接しており、その結果、要素が加熱されると、それはインク中に蒸気バブルの発生を惹起することが認識されるであろう。したがって、インク1011はバブル形成液体を構成する。
【0125】
バブル1012は、一旦発生すると、チャンバー1007内の圧力の増大を惹起し、それが次にノズル1003を通してインク1011の液滴1016の噴出を起こさせる。輪縁1004は、液滴1016を噴出したときに、滴下方向を誤る確率を最小化するように方向付けるのに役立つ。
【0126】
導入路1009当たりただ1つのノズル1003及びチャンバー1007しかない理由は、要素1010の加熱及びバブル1012の形成で、チャンバー内に発生した圧力波が、隣接チャンバー及びそれらの対応するノズルに影響しないようにすることである。
【0127】
チャンバー1007内の圧力の上昇は、インク1011をノズル1003を通して押し出すだけでなく、若干のインクを導入路1009を通して押し返しもする。しかしながら、導入路1009は、およそ200から300ミクロンの長さであり、直径はおよそ16ミクロンしかない。そのため、実質的な粘性抵抗がある。結果として、チャンバー1007内における圧力上昇の主たる効果は、インクを、導入路9を通して戻すよりも、ノズル1003を通して噴出した液滴1016として押し出すことである。
【0128】
図17に示すように、インク液滴1016が噴出されているところは、液滴がちぎれて離れる前のその「くびれ期」の間で示されている。この段階で、バブル1012は既にその最大サイズに達しており、そのとき破裂点1017に向かって破裂し始めていた。
【0129】
バブル1012の破裂点1017に向かっての破裂は、若干のインク1011がノズル1003内(液滴の横1018)から引き出され、及び若干は導入路1009から引き出されて、破裂点に向かう原因となる。このようにして引き出されたインク1011の大部分はノズル1003から引き出され、ちぎれる前に液滴16の下側で輪状のくびれ1019を形成する。
【0130】
液滴1016は、ちぎれるためには、表面張力に打ち克つためにある量の運動量を必要とする。インク1011がノズル1003からバブル1012の破裂により引き出されると、くびれ1019の直径は減少し、それにより、液滴を保つ全表面張力の大きさを減少させ、その結果、液滴の運動量は、それがノズルから噴出するとき、液滴がちぎれることを可能にするのに十分である。
【0131】
液滴1016がちぎれるとき、バブル1012が破裂点1017に向かって破裂するので、空洞化力が矢印1020により表したように惹起される。空洞化が影響し得る破裂点1017の周辺には固体表面はないことが注目されるであろう。
【0132】
インクジェットカートリッジ
本発明は、上記のインクジェットインクを入れたインクジェットインクカートリッジも提供する。インクジェットプリンタ用のインクカートリッジは、当技術分野において周知であり、多くの形態で入手可能である。本発明のインクジェットインクカートリッジは交換可能であることが好ましい。本発明での使用に適したインクジェットカートリッジは、参照により全て本明細書に組み込む次の特許出願に記載されている。
6428155、 10/171,987
【0133】
1つの好ましい形態で、インクカートリッジは、少なくとも1つの貯蔵区域が人の目に可視の情報を印刷するための着色剤を含み、少なくとも1つの他の貯蔵区域が上記のインクジェットインクを含む、複数の貯蔵区域を区分する筐体を備える。
【0134】
好ましくは、各貯蔵区域は、多数の印刷されるページに対する意図された印刷範囲に対して予想される内容物の使用レベルに対応するサイズである。
【0135】
ここで次に、本発明のインクカートリッジを簡単に説明する。図12は、交換可能なインクカートリッジ627の完全な組み立てを示す。それは、固定液644、接着剤630、並びにシアン631、マゼンタ632、黄色633、黒色634及び赤外635のインクを貯蔵するための袋又はチャンバーを有する。カートリッジ627は、ベースモールディング637中ミクロエアフィルター636も備える。図9に示すように、ミクロエアフィルター636は、ホース639を通してプリンタ内のエアポンプ638と接続して機能する。これは濾過されたエアをプリントヘッド705に供給して、ノズルを詰まらせ得る微粒子がMemjet(商標)プリントヘッド705中に進入することを防止する。エアフィルター636をカートリッジ627内に組み込むことにより、フィルターの作動寿命はカートリッジの寿命に効果的に連結する。これは、必要な間隔でフィルターを清浄化又は交換することをユーザに頼るよりも、フィルターをカートリッジと一緒に交換することを保証する。さらに、接着剤及び赤外インクは、可視インク及びエアフィルターと一緒に補充され、それによりプリンタの作動が消耗材料の減耗が理由で中断される頻度が減少する。
【0136】
カートリッジ627は薄壁ケーシング640を有する。インク袋631から635及び固定液袋644は、カートリッジを一緒に掛けるピン645によりケーシング内に懸垂される。単一の糊袋630は、ベースモールディング637に収容される。これは、3000ページ(1500枚)を印刷して接着する能力のある十分リサイクル可能な製品である。
【0137】
基材
上で触れたように、本発明の染料は、Hyperlabel(商標)及びネットページシステムでの使用に特に適している。そのようなシステムは下に、及び全体を参照により本明細書に組み込む上でリストを挙げた特許出願に、より詳細に記載されている。
【0138】
したがって、本発明は、上記のIR吸収染料が上に置かれた基材を提供する。好ましくは、基材はインターフェース表面を有する。好ましくは、染料は、ネットページ及び/又はHyperlabel(商標)システムでの使用に適した、コード化されたデータの形態で置かれる。例えば、コード化されたデータは、製品項目の識別情報を表すことができる。好ましくは、コード化されたデータは、基材のインターフェース表面の実質的部分(例えば、表面の20%を超える、50%を超える又は90%を超える)にわたって置かれる。
【0139】
基材は、その上に置かれた染料が感知器により検出され得るようにIR反射性であることが好ましい。基材は、プラスチック(例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなど)、紙、金属又はそれらの組合せなどの任意の適当な材料を含んでよい。
【0140】
ネットページ用途にとって、基材は、紙のシートであることが好ましい。Hyperlabel(商標)用途にとって、基材は、好ましくは、タグ、ラベル、包装材料又は製品項目の表面である。通常、タグ及びラベルは、プラスチック、紙又はそれらの組合せを含む。
【0141】
本発明のHyperlabel(商標)用途によって、基材は、感知器及びコンピュータシステムによるユーザとの相互連絡に適合させた双方向性製品項目にすることが可能で、双方向性製品項目は、
識別情報を有する製品項目;
製品項目に関連し且つ及び製品項目に関する情報及び製品項目の識別情報を示す上記のIR吸収染料を含むコード化されたデータをその上に配置したインターフェース表面;
を含む。
【0142】
ネットページ及びHyperlabel(商標)
本発明のネットページ応用は、上で本発明の第6及び第7態様で一般的に説明し、本発明のHyperlabel(商標)応用は、上で本発明の第8及び第9態様で一般的に説明してある。
【0143】
ここで、ネットページ及びHyperlabel(商標)の詳細な全体像について続ける(注:Memjet(商標)及びHyperlabel(商標)はSilverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である)。実施全部でも、基本システムに関して下で論ずる具体的詳細及び拡張の全て又は大部分を必ずしも包含していないであろうということは理解されるであろう。しかしながら、好ましい本発明の実施形態及び態様が役に立つ情況を理解することを試みるときに、外部の文献の必要性を減少させるために、システムをその最も完成した形態で説明する。
【0144】
簡単にまとめると、ネットページシステムの好ましい形態は、マップ化された表面、即ち、コンピュータシステム中に維持される表面のマップへの参照を含む物理的表面の形態でコンピュータインターフェースを使用する。マップへの参照は、適当な感知器により照会することができる。具体的実施に依存して、マップへの参照は、可視的に又は不可視的にコード化されて、マップ化された表面に対する局所的照会が、マップ内及び異なるマップ間両方で曖昧でないマップへの参照を生ずるように定義することができる。コンピュータシステムは、マップ化された表面上の特徴についての情報を含むことができて、そのような情報は、マップ化された表面で使用される感知器により供給されるマップへの参照に基づいて取り出すことができる。そのようにして取り出された情報は、オペレーターと表面の特徴との対話に応答してオペレーターの代わりにコンピュータシステムにより始動されるアクションの形態を取ることができる。
【0145】
好ましい形態において、ネットページシステムは、ネットページの製作及びそれと人の双方向性に依存する。これらは、普通紙上に印刷されたテキスト、グラフィック及び画像のページであるが、それらは双方向性のウェブページのように機能する。情報は、裸眼に実質的に不可視のインクを使用して各ページ上にコード化されている。しかしながら、インク及びそれによりコード化されたデータは、光学的に像を描くペンにより感知されて、ネットページシステムへ送信することができる。
【0146】
好ましい形態において、各ページ上のアクティブボタン及びハイパーリンクは、ペンでクリックして、ネットワークからの情報を要求するか又はネットワークサーバに選択のシグナルを送ることができる。1実施形態において、ネットページ上に手で書かれたテキストは、自動的に認識されて、ネットページシステム中のコンピュータテキストに変換され、フォームが満たされることが可能になる。他の実施形態において、ネットページ上に登録された署名は自動的に検証され、電子商取引が安全に認可されることが可能になる。
【0147】
図1に例示したように、印刷されたネットページ1は、ユーザにより、印刷されたページ上に物理的に、及びペンとネットページシステムとの間のコミュニケーションにより「電子的に」の両方で書き込みすることができる双方向性のフォームを呈示することができる。この例は、名前及びアドレスフィールド及び投入ボタンを含む「リクエスト」フォームを示す。ネットページは、可視インクを使用して印刷されたグラフィックデータ2、及び不可視インクを使用してタグ4の集まりとして印刷されたコード化されたデータ3から構成されている。ネットページネットワーク上に貯蔵された対応するページ記述5は、ネットページの個々の要素を記載している。特にそれは、各双方向性要素(即ち例中のテキストフィールド又はボタン)のタイプ及び空間的広がり(ゾーン)を記載し、ネットページシステムがネットページによる入力を正しく解釈することを可能にする。投入ボタン6は、例えば、対応するグラフィック8の空間的広がりに対応するゾーン7を有する。
【0148】
図2に例示したように、ネットページペン101(その好ましい形態は図6及び7に示し、下でもっと詳細に説明する)は、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェブ端末75、又はネットページプリンタ601と共同して機能する。ネットページプリンタは、家庭、オフィス、又はモバイルで使用するためのインターネット接続印刷機器である。ネットページペンはワイヤレスであり、ネットページネットワークと、短距離無線リンク9で安全に通信する。短距離通信は、PC、ウェブ端末又はネットページプリンタのいずれにも内蔵されている、又は別のリレー装置44により提供される局所リレー機能によりネットページネットワークにリレーされる。リレー機能は、携帯電話又は短距離及び遠距離両方の通信機能を組み込んでいる他の装置により提供することもできる。
【0149】
別の実施形態において、ネットページペンは、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタ又はリレー装置への有線接続、例えばUSB又は他のシリアル接続などを利用する。
【0150】
ネットページプリンタ601(その好ましい形態は図9から11に示し、下でより詳細に説明する)は、個人別にした新聞、雑誌、カタログ、小冊子及び他の刊行物を、定期的に又は要求に応じて、全て高品質で印刷して、双方向性ネットページとして配信することができる。パーソナルコンピュータと違って、ネットページプリンタは、例えば、ユーザのキッチンに、朝食のテーブル近くに、又は家族の1日の出発点付近など、朝のニュースに最初に接する場所に隣接して壁掛けしておくことができる機器である。それは、卓上、机上、ポータブル、及びミニアチュア型にもなる。
【0151】
消費場所で印刷されるネットページは、紙の使い易さと双方向性媒体の適時性及び対話性とを合わせ持っている。
【0152】
図2に示したように、ネットページペン101は、印刷されたネットページ1(又は製品項目201)上のコード化されたデータと対話して、その対話を短距離無線リンク9によりリレーに通信する。リレーは、その対話を関連ネットページページサーバ10に解釈のために送る。適当な情況では、ページサーバは、対応するメッセージをネットページアプリケーションサーバ13上で走っているアプリケーションコンピュータソフトウェアに送る。アプリケーションサーバは、順送りで始めのプリンタで印刷された応答を送ることができる。
【0153】
別の実施形態において、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタ又はリレー装置は、ローカル又は遠隔ウェブサーバを含むローカル又は遠隔アプリケーションソフトウェアと直接通信することができる。関連して、出力は、ネットページプリンタにより印刷されることに限定されない。出力は、PC又はウェブ端末上に表示することもでき、さらに対話は、紙によるよりもむしろスクリーンによるか又はそれら2つの混合によることができる。
【0154】
ネットページシステムは、高速微小電気機械システム(MEMS)によるインクジェット(Memjet(商標))プリンタと共同して使用することによる好ましい実施形態において、相当により便利になる。この技法の好ましい形態で、比較的高速及び高品質の印刷が、消費者により手の届く範囲のものになる。好ましい形態において、ネットページ刊行物は、両面フルカラーで印刷され、容易なページ移動及び快適な取り扱いのために一緒に綴じられた、レターサイズの光沢あるページのセットなどの伝統的なニュース雑誌の物理的特性を有する。
【0155】
ネットページプリンタは、ブロードバンドインターネットアクセスの成長する可用性を活用する。ケーブルサービスは、米国における家庭の95%で利用可能であり、ブロードバンドインターネットアクセスを提供するケーブルモデムサービスは、これらの20%で既に利用可能である。ネットページプリンタは、それより遅い接続でも作動し得るが、より長い送信時間及びより低い画像品質になる。実際、ネットページシステムは、既存の消費者向けインクジェット及びレーザプリンタを使用可能にすることはできるが、システムは、より遅く作動するであろうし、それ故、消費者の視点から受け入れ難くなるであろう。他の実施形態において、ネットページシステムは、私的イントラネットに提供されている。さらに他の実施形態において、ネットページシステムは単独のコンピュータ又はプリンタなどのコンピュータ対応のデバイスに提供される。
【0156】
ネットページネットワーク上のネットページ発行サーバ14は、ネットページプリンタに印刷品質の刊行物を送信するように構成される。定期刊行物は、予約しているネットページプリンタに、ポイントキャスティング及びマルチキャスティングインターネットプロトコルにより、自動的に送信される。個人専用の刊行物は、個々のユーザのプロファイルに従ってフィルターにかけられ、書式を設定される。
【0157】
ネットページプリンタは、任意の数のペンを扱うことができるように構成することができて、ペンは、任意の数のネットページプリンタで作動することができる。好ましい実施において、各ネットページペンは、固有の識別子を有する。家庭は、家族の各メンバーに帰属する着色したネットページペンの集まりを有することができる。このことは、各ユーザが、ネットページ発行サーバ又はアプリケーションサーバに関して別個のプロファイルを維持することを可能にする。
【0158】
ネットページペンは、ネットページ登録サーバ11とともに登録されて、1つ又は複数の支払いカードアカウントに連結することもできる。これは、電子商取引の支払いがネットページペンを使用して安全に認証されることを可能にする。ネットページ登録サーバは、ネットページペンが捉えた署名を予め登録された署名を比較して、ユーザの識別情報を電子商取引サーバに対して認証する。他の生体測定も識別情報を認証するために使用することができる。ネットページペンの様式には、ネットページ登録サーバにより同様な方法で検証される指紋スキャンが含まれる。
【0159】
ネットページプリンタは、ユーザ参加のない朝刊紙などの定期刊行物を配信することができるが、頼まれもしないジャンクメールを決して配信しないように構成することができる。その好ましい形態において、それは申し込まれたか又は他の方法で認証された出所からの定期刊行物を配信するだけである。この点で、ネットページプリンタは、電話番号又はeメールアドレスを知るどのようなジャンクメール送信者にも見えるファックス機又はeメールアカウントとは似ていない。
【0160】
1 ネットページシステム構築
システムにおける各オブジェクトモデルは、統一モデリング言語(UML)のクラス図を使用して記述される。クラス図は、関係により接続されるオブジェクトクラスのセットにより構成され、関連付け及び一般化の2種類の関係がここでは興味がある。関連付けは、オブジェクト間の即ちクラスのインスタンス間のある種の関係を表す。一般化は、実際のクラスを関係づけるもので、次のように理解することができる:即ち、あるクラスがそのクラスの全てのオブジェクトの集合と考えられ、クラスAがクラスBの一般化であるならば、そのときBは単にAの部分集合である。UMLは、2次モデリング即ちクラスのクラスは直接扱うことはしない。
【0161】
各クラスは、そのクラスの名で長方形に表示して描かれる。それはクラスの帰属のリストを水平方向の線により名前と分けて含み、及びクラスの操作のリストを水平方向の線により帰属のリストと分けて含む。しかしながら、それに続くクラス図において、操作がモデル化されることはない。
【0162】
関連付けは、2つのクラスを結び付ける線として描かれ、場合により両側で複数の関連付けで表示される。初期設定の多重度は1である。アステリスク(*)は、「多さ」即ちゼロ又は1以上の多重度を示す。各関連付けは、場合によりその名により表示され、場合により対応するクラスの役割でいずれかの端に表示されることもある。中抜きダイヤ印は、集合関連付け(「部分である」)を示し、関連付け線のアグリゲータ端に描かれる。
【0163】
一般化関係(「である」)は、2つのクラスを結ぶ実線で一般化の端に矢印(中抜き三角形で)を付けて描かれる。
【0164】
クラス図が複数の図に分解されているとき、2つに分けられた任意のクラスは、それを規定する主図以外の全部に破線の輪郭を付けて示される。それは、規定されているところでだけ帰属を付けて示される。
【0165】
1.1 ネットページ
ネットページは、ネットページネットワークが作られる基礎である。それらは、公開された情報及び双方向性サービスへの紙によるユーザインターフェースを提供する。
【0166】
ネットページは、ページのオンライン記述を参照する不可視タグを付けて印刷されたページ(又は他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバにより持続的に維持される。オンラインページ記述は、可視レイアウト及びテキスト、グラフィック及び画像を含むページ内容を記載する。それは、ボタン、ハイパーリンク、及び入力フィールドを含む入力要素もページ上に記載する。ネットページは、ネットページペンでその表面上に作成された標記が、ネットページシステムにより捉えられて同時に処理されることを可能にする。
【0167】
複数のネットページが同一のページ記述を共有することは可能である。しかしながら、他の点では同一のページによる入力が区別されることを可能にするために、各ネットページは固有のページ識別子として帰属されている。このページIDは、非常に多数のネットページ間を区別するのに十分な精度を有する。
【0168】
ページ記述への各参照は、印刷されたタグにコード化されている。タグは、それが現れてそれによりページ記述を間接的に識別する固有のページを識別する。タグは、ページ上でそれ自体の位置も識別する。タグの性質は、下でさらに詳細に説明する。
【0169】
タグは、赤外線吸収インクで普通紙などの赤外線反射性の任意の基材上に印刷される。近赤外波長は人の目に不可視であるが、適当なフィルターを付けた半導体画像センサにより容易に感知される。
【0170】
タグは、ネットページペン中の領域画像センサにより感知され、タグデータは最も近いネットページプリンタによりネットページシステムに送信される。ペンはワイヤレスであり、短距離無線連結によりネットページプリンタと通信する。タグは、十分小さく且つ高密度で配列されているので、ペンは、ページ上1回のクリックでさえ、信頼性をもって少なくとも1つのタグを描くことができる。ペンがページとのどの対話でもページID及び位置を認識することは、対話はステートレスなので、重要である。タグは錯誤補正可能にコード化されていて、それらが表面の損傷に部分的に耐え得るようにしてある。
【0171】
ネットページページサーバは、印刷された各ネットページに固有のページインスタンスを維持して、印刷された各ネットページに対して、ページ記述中の入力フィールドにユーザが供給した値の別個のセットを維持することを可能にする。
【0172】
ページ記述、ページインスタンス及び印刷されたネットページの間の関係を、図4に示す。印刷されたネットページは、印刷されたネットページ文書45の一部であってよい。ページインスタンスは、それを印刷したネットページプリンタ及び、もし知られていれば、それを要求したネットページユーザの両方と関連付けられる。
【0173】
図4に示すように、1つ又は複数のネットページは、例えば、製品項目のラベル、包装又は実物表面に印刷されたとき、製品項目などの物理的オブジェクトとも関連付けられ得る。
【0174】
1.2ネットページタグ
1.2.1タグデータの内容
好ましい形態において、各タグはそれが現れる領域、及び領域内のそのタグの位置を識別する。タグは、全体としての領域に関係する又はそのタグに関係するフラグも含むことができる。例えば、1つ又は複数のフラグビットは、タグ感知器にシグナルを送って、タグ感知器が領域の記述を参照することを必要とせずに、タグの直接の領域に関連する機能を示すフィードバックを提供することができる。ネットページペンは、ハイパーリンクのゾーンにあるとき、例えば「作用領域」LEDを点灯することができる。
【0175】
下でさらに明確に説明するように、好ましい実施形態において、各タグは、初期検出に役立つ容易に認識される変化しない構造を含み、それは表面により又は感知プロセスにより誘起される如何なる歪みの影響も最小化するのに役立つ。タグは、好ましくはページ全体に表題を付け、十分に小さく且つ密に配列されているので、ペンはページ上1度のクリックでも信頼性をもって少なくとも1つのタグの画像を描くことができる。対話はステートレスなので、ペンがページとのどの対話でもページID及び位置を認識することは重要である。
【0176】
好ましい実施形態において、タグが参照する領域はページ全体と一致して、それ故、タグ中にコード化された領域IDは、タグが現れるページのページIDと同義語である。他の実施形態においては、タグが参照する領域が、ページの任意の部分領域又は他の表面であることも可能である。例えば、それは双方向性要素の区域と一致させることができ、その場合、領域IDは双方向性要素を直接識別することができる。
【0177】
好ましい形態において、各タグは、120ビットの情報を含む。領域IDは、通常100ビットまで、タグIDは少なくとも16ビットを割り当てられ、残余のビットはフラグなどに割り当てられる。平方インチ当たり64のタグ密度を仮定すると、16ビットのタグIDは、1024平方インチまでの領域サイズに対応できる。より大きい領域は、タグID精度を増加させずに、単に隣接領域及びマップを使用することにより、連続的にマッピングすることができる。100ビット領域IDは、2100(約1030即ち1兆の1兆倍の百万倍)の異なる領域が一意的に識別されることを可能にする。
【0178】
1.2.2 タグデータのコード化
1実施形態において、120ビットのタグデータは、(15,5)リードソロモンコードを使用して冗長性をもってコード化される。これは、各々15の4ビット記号の6つの符号語からなる360のコード化ビットを生ずる。(15,5)コードは、1符号語当たり5つまでの記号エラーが訂正されることを可能にする、即ち、1符号語当たり33%までの記号エラー率に耐える。
【0179】
各4ビット記号は、タグ中に空間的に密着して表され、6つの符号語の記号がタグ内に空間的にインターリーブされる。これは、バースト誤り(複数の空間的に隣接するビットに影響する誤り)による、全体的な記号の損傷及び任意の1符号語中の記号の損傷を最少にして、その結果バースト誤りが十分に補正され得る可能性を最大化することを確実にする。
【0180】
任意の適当な誤り訂正コードコード、例えば、冗長性がより多いか又はより少ない、同一又は異なる記号及び符号語サイズのリードソロモンコード;他のブロックコード;又は畳み込みコード(例えば、参照によりその内容を本明細書中に組み込むStephen B.Wicker,Error Control Systems for Digital Communication and Storage,Prentice−Hall,1995を参照されたい)など他の種類のコードを、(15,5)リードソロモンコードの代わりに使用することができる。
【0181】
タグ領域との感知器による「1回クリック」での対話に対応するために、感知器は、その視野にある少なくとも1つのタグ全体を、それが領域内のどこにあるか又はどの向きで位置しているかに拘らず、見ることができなければならない。したがって、感知器の視野に必要な直径は、タグのサイズ及び間隔の関数である。
【0182】
1.2.3 タグ構造
図5aは、4つの透視ターゲット17を有するタグ726の形態にあるタグ4を示す。タグ726は、合計240ビットになる60の4ビットリードソロモン記号747を表す。タグは、マーク748(マクロドットと称する)の存在により各「1」ビットを、及び対応するマクロドットが存在しないことにより各「ゼロ」ビットを表す。図5cは、例示目的で、全ての「1」ビットを含む9つのタグの正方形タイル張り728を示す。透視ターゲットが隣接タグ間で共有されるように設計されていることは気がつくであろう。図5dは、16のタグの正方形タイル張り及び2つのタグの対角にまたがる対応する最小視野193を示す。
【0183】
(15,7)リードソロモンコードを使用して、112ビットのタグデータは冗長性にコード化されて240コード化ビットを生ずる。バースト誤りに対する復元力を最大化するようにタグ内で空間的に4つの符号語がインターリーブされる。前のように16ビットのタグIDを仮定して、これが92ビットまでの領域IDを可能にする。
【0184】
タグのデータ担持マクロドット748は、それらの隣のものと重ならないようにデザインされ、その結果、タグ群はターゲットに類似する構造を生じ得ない。これはまたインクの節約にもなる。透視ターゲットはタグの検出を可能にして、その結果、さらなるターゲットは必要とされない。
【0185】
タグは、センサに対するタグの4つの可能な配向の明確化を可能にする配向特徴を含むことができるが、本発明は、配向データをタグデータ中に埋め込むことに関する。例えば、図5aに示されるように、4つの符号語は、各タグ配向(回転の意味で)がその配向で置かれた1つの符号語を含むように配列することができ、ここで各記号はその符号語の数字(1−4)及び符号語内における記号の位置(A−O)で標識されている。次にタグの復号は、各回転配向における1つの符号語を復号することからなる。各符号語は、それが第1符号語であるかということ示す単一ビットか又はそれがどの符号語であるかを示す2ビットのいずれかを含むことができる。後者のアプローチは、例えば、ただ1つの符号語のデータコンテンツが必要ならば、そのときは、所望のデータを得るために最大で2つの符号語が復号される必要があるという利点を有する。領域IDが1ストローク内で変化すると予想されず、したがってストローク開始時に復号されるだけであれば、その通りであり得る。それで、ストローク内ではタグIDを含む符号語のみが望まれる。さらに、感知器の回転はストローク内でゆっくりと且つ予測可能に変わるので、フレーム当たり通常ただ1つの符号語が復号される必要があるだけである。
【0186】
透視ターゲットを全てなしで済ませ、その代わりに自動記録式のデータ表示に依存することは可能である。この場合、各ビット値(又はマルチビット値)は、通常、明示的なグリフにより表され、即ち、グリフの欠如により表されるビット値はない。これは、データグリッドにデータが良好に読み込まれることを確実にして、その結果グリッドが信頼できるように識別され且つデータサンプリング中にその透視歪みが検出されて引き続き補正されることを可能にする。タグ境界域が検出されることを可能にするために、各タグデータはマーカーパターンを含まなければならず、これらは冗長にコード化されて信頼できる検出を可能にしなければならない。そのようなマーカーパターンのオーバーヘッドは、明確な透視ターゲットのオーバーヘッドと同様である。種々のそのような図解が、本出願人らの同時係属出願の国際特許出願PCT/AU01/01274(2001年、10月11日出願)に記載されている。
【0187】
図5cの配列728は、正方形タグ726が、任意のサイズの平面を、タイル張り又はモザイクで、即ち間隙も重複もなく全部埋め尽くすことに使用され得ることを示す。
【0188】
好ましい実施形態において、本明細書に記載したタグ付け計画は、単一の識別されないマクロドットの存在又は欠如を使用して単一データビットをコード化するが、それらは、本出願人らの同時係属出願の国際特許出願PCT/AU01/01274(2001年10月11日出願)に例示したグリフのセットなどの識別されたグリフのセットを使用して、単一ビット又はマルチビット値を表すこともできる。
【0189】
1.3 ネットページネットワーク
好ましい実施形態において、ネットページネットワークは、図3に示したように、インターネットなどのネットワーク19により接続された、ネットページページサーバ10、ネットページ登録サーバ11、ネットページIDサーバ12、ネットページアプリケーションサーバ13、ネットページ発行サーバ14、ウェブ端末75、ネットページプリンタ601、及びリレー装置44の分配されたセットから構成される。
【0190】
ネットページ登録サーバ11は、ユーザ、ペン、プリンタ、アプリケーション、及び刊行物の間の関係を記録して、それにより種々のネットワーク活動を認可するサーバである。それは、ユーザを認証して、アプリケーショントランザクションにおいて認証されたユーザのためにサインするプロキシとして行動する。それは手書き認識サービスも提供する。上記のように、ネットページページサーバ10は、ページ記載及びページインスタンスについての持続的情報を維持する。ネットページネットワークは、各々ページインスタンスのサブセットを扱う任意の数のページサーバを含む。ページサーバは、各ページインスタンスに対してユーザ入力値も維持しているので、ネットページプリンタなどのクライアントは、適当なページサーバにネットページ入力を直接送る。ページサーバは、対応するページの記述に対する任意のそのような入力を解釈する。
【0191】
ネットページIDサーバ12は、文書ID51を要求に基づいて割り当て、ページサーバの負荷均衡をそのID割り当て体系により提供する。
【0192】
ネットページプリンタは、ネットページページID50を解読し、対応するページインスタンスを扱うネットページページサーバのネットワークアドレスに変換するために、インターネット配分名システム(DNS)又は同様なものを使用する。
【0193】
ネットページアプリケーションサーバ13は、双方向性ネットページアプリケーションを提供するサーバである。ネットページ発行サーバ14は、ネットページ文書をネットページプリンタに発行するアプリケーションサーバである。
【0194】
ネットページサーバは、IBM、Hewlett−Packard及びSunなどの製作者からの種々のネットワークサーバプラットフォームに受け入れることができる。多数のネットページサーバが、単一のホスト上で同時に走ることができ、及び単一のサーバが多数のホストにわたって配分され得る。ネットページサーバにより提供される機能性、及び特にIDサーバ及びページサーバにより提供される機能性の一部又は全部が、ネットページプリンタなどのネットページ機器中で、コンピュータワークステーション中で、又はローカルネットワーク上で直接提供されることも可能である。
【0195】
1.4 ネットページプリンタ
ネットページプリンタ601は、ネットページシステムで登録された機器であり、要求及び申し込みに応じてネットページ文書を印刷する。各プリンタは、固有のプリンタID62を有していて、インターネットなどのネットワークにより、理想的にはブロードバンド接続によりネットページネットワークに接続されている。
【0196】
不揮発性のメモリーにおける識別情報及び安全性設定は別として、ネットページプリンタは、持続的貯蔵は含まない。ユーザの関する限り、「ネットワークがコンピュータである」。ネットページは、配分されたネットページページサーバ10に助けられて、特定のネットページプリンタとは独立に、空間及び時間を越えて双方向性に機能する。
【0197】
ネットページプリンタは、申し込んだネットページ文書をネットページ発行サーバ14から受け取る。各文書は2つの部分にして配分される:即ちページレイアウト、及びページを埋めている実際のテキスト及び画像オブジェクトである。個人化のために、ページレイアウトは通常特定の申込者に特異的であり、したがって適当なページサーバを通して申込者のプリンタにだけ送られる。それに対して、テキスト及び画像オブジェクトは、通常、他の申込者と共有され、それ故全ての申込者のプリンタ及び適当なページサーバにマルチキャストされる。
【0198】
ネットページ発行サーバは、文書コンテンツのポイントキャスト及びマルチキャストへのセグメント化を最適化する。文書のページレイアウトのポイントキャストを受け取った後、プリンタは、どのマルチキャスト(それがある場合には)を聴取すべきかわかっている。
【0199】
プリンタが完全なページレイアウト及び印刷されるべき文書を規定しているオブジェクトを受け取りさえすれば、それは文書を印刷することができる。
【0200】
プリンタは、ラスター化して、奇数及び偶数ページを同時にシートの両面に印刷する。それは、この目的のために、複式のプリントエンジンコントローラ760及びプリントエンジン利用Memjet(商標)プリントヘッド350を備えている。
【0201】
印刷工程は、2つの分離した段階からなる:即ちページ記述のラスター化、並びにページ画像の拡大及び印刷である。ラスター画像プロセッサ(RIP)は、1つ又は並行して走る複数の標準DSP757から構成される。複式プリントエンジンコントローラは、プリントエンジン中のプリントヘッドの作動と同調して、リアルタイムでページ画像を拡大し、ディザー処理して印刷する注文製のプロセッサで構成される。
【0202】
IR印刷できるようにされていないプリンタは、IR吸収黒色インクを使用してタグを印刷する選択肢を有するが、これはページのそうでなければ空白の領域にタグを限定する。そのようなページはIR印刷されたページよりも機能が限定されるが、それでもそれらはネットページとして分類される。
【0203】
通常のネットページプリンタは、紙のシート上にネットページを印刷する。より特殊化されたネットページプリンタは、球などのより特殊な表面に印刷することができる。各プリンタは、少なくとも1つの型の表面に対応し、各表面型に対して、少なくとも1つのタグタイル張りスキーム、したがってタグマップに対応する。文書印刷に実際に使用されるタグタイル張りスキームを記述するタグマップ811は、その文書と関連付けられており、その結果、文書のタグは正しく解釈される。
【0204】
図2は、ネットページネットワーク上で登録サーバ11により維持されるプリンタ関連情報を反映するネットページプリンタクラス図を示す。
【0205】
1.5 ネットページペン
ネットページシステムのアクティブな感知器は、典型的にはペン101であり、それは、その埋め込まれたコントローラ134を使用して、画像センサによりページからIR位置タグを捉えて復号することができる。画像センサは、近赤外波長でのみ感知可能な適当なフィルターを備えた半導体デバイスである。下でより詳細に説明するように、そのシステムは、ペン先が表面と接触しているときに感知することができ、ペンは、人の手書きを捉えるのに十分な速度で(即ち200dpi以上及び100Hz以上で)タグを感知することができる。ペンにより捉えられた情報は暗号化されて無線でプリンタ(又は基地局)へ送信され、プリンタ又は基地局は(知られている)ページ構造に関してデータを解釈する。
【0206】
ネットページペンの好ましい実施形態は、通常のマーク付けインクペン及びマーク付けでない尖筆の両者として機能する。しかしながら、マーク付け態様は、ブラウジングシステムとしてネットページシステムを使用するためには、例えばインターネットインターフェースとしてそれを使用するときなどには必要でない。各ネットページペンは、ネットページシステムで登録されており、固有のペンID61を有する。図14は、ネットページネットワーク上で登録サーバ11により維持されるペン関連情報を反映するネットページペンクラス図を示す。
【0207】
どちらかのペン先がネットページと接触しているとき、ペンはページに対するその位置及び配向を決定する。ペン先は力センサに取り付けられており、ペン先上の力は、ペンが「上へ」か又は「下へ」かを示す閾値に関して読み取られる。このことは、例えば、ネットワークからの情報を要求するために、ページ上の双方向性要素が、ペンの先で押すことにより「クリック」されることを可能にする。さらに、力は、例えば、サイン全体の強弱の検証を可能にする連続値として捉えられる。
【0208】
ペンは、ペン先の近傍のページ領域193を、赤外スペクトルで画像化することにより、ネットページ上のペン先の位置及び配向を決定する。それは最も近いタグを復号して、画像化されたタグ上の観察された透視歪み及びペンの光学素子の知られた幾何学配置から、タグに対するペン先の位置を計算する。ページ上のタグ密度はタグサイズに反比例するので、タグの位置分解能が低い可能性があるが、調整された位置分解能は非常に高く、正確な手書き認識に要求される最小分解能を超える。
【0209】
ネットページに対するペンの動作は、一連のストロークとして捉えられる。ストロークは、ペンを下ろす事象により開始され、その後ペンを上げる事象により完結する、ページ上に時間を刻印したペン位置の連続からなる。ページIDが変わるときは何時でも(普通の情況では、ストロークの開始時に起こる)、ストロークは、ネットページのページID50によってもタグ付けされる。
【0210】
各ネットページペンは、それと関連する現行選択826を有し、ユーザがコピー及びペーストの作業などを実施することを可能にする。選択は時間刻印され、システムが所定時間後にそれを廃棄することを可能にする。現行選択は、ページインスタンスの領域を記載する。それは、ページの背景領域に対してペンにより捉えられた最も新しいディジタルインクストロークからなる。それは、選択ハイパーリンク起動によりアプリケーションに提示されさえすれば、アプリケーション特異的な方法で解釈される。
【0211】
各ペンは現行ペン先824を有する。これは、システムに対してペンにより最後に通知されたペン先である。上記の初期設定のネットページペンの場合、マーク付け黒色インクペン先又はマーク付けでない尖筆のペン先のいずれかが現行である。各ペンは、現行ペン先スタイル825も有する。これは、アプリケーションにより、例えば、パレットから色を選択するユーザに応じて、ペンと最後に関連したペン先スタイルである。初期設定ペン先スタイルは、現行ペン先と関連したペン先スタイルである。ペンにより捉えられたストロークは、現行ペン先スタイルでタグ付けされる。ストロークがその後再生されるとき、それらは、それらがタグ付けされたペン先スタイルで再生される。
【0212】
ペンが通信できるプリンタの範囲内にあるときは何時でも、ペンはその「オンライン」LEDをゆっくりと光らせる。ペンがページに関するストロークを復号し損なったとき、それはその「エラー」LEDを瞬間的に作動させる。ペンがページに関するストロークの復号に成功したとき、それはその「ok」LEDを瞬間的に作動させる。
【0213】
一連の捉えられたストロークはディジタルインクと称される。ディジタルインクは、図面及び手書きのディジタル交換、手書きのオンライン認識、及びサインのオンライン認証のための基礎を形成する。
【0214】
ペンはワイヤレスであり、ディジタルインクをネットページプリンタに短距離無線リンクにより送信する。送信されるディジタルインクは、プライバシー及びセキュリティのために暗号化され、効率的送信のためにパケット化されるが、プリンタにおける臨機の操作を確保するために、ペンを上げるときには常に投光される。
【0215】
ペンがプリンタの範囲外にあるとき、それは、ディジタルインクを10分間を超える連続した手書きの容量を有する内部メモリー中にバッファする。ペンがもう一度プリンタの範囲内にきたとき、それは、任意のバッファに入れられていたディジタルインクを送信する。
【0216】
ペンは、任意の数のプリンタに登録することができるが、全ての状態データは、ネットページで紙上及びネットワーク上の両方に存在するので、ペンが任意の特定の時にどのプリンタと通信しているかは大して重要ではない。
【0217】
ペンの好ましい実施形態は、図6から8を参照して、下でさらに詳細に説明する。
【0218】
1.6 ネットページ対話
ネットページプリンタ601は、ペンがネットページ1と対話するために使用されるとき、ペン101からストロークに関するデータを受け取る。ペンがストロークなどの動作を実行するために使用されるとき、タグ4のコード化されたデータ3は、ペンにより読まれる。データは、特定のページの識別情報及び関連する対話要素が決定されること、及びページに対するペンの相対的位置決めの指示が得られることを可能にする。指示データは、プリンタに送信され、そこで指示データは、DNSにより、ストロークのページID50を解読し、対応するページインスタンス830を維持するネットページページサーバ10のネットワークアドレスに変換する。次にプリンタがストロークをページサーバに送信する。ページが以前のストロークで最近識別されたのであれば、その場合、プリンタは、関連するページサーバのアドレスをそのキャッシュ中に既に有している可能性がある。各ネットページは、ネットページページサーバにより持続的に維持されるコンパクトなページレイアウトから構成される(下を参照されたい)。ページレイアウトは、通常ネットページネットワークのどこかに貯蔵されている、画像、フォント及びテキストの一部などのオブジェクトを指す。
【0219】
ページサーバがペンからストロークを受け取るとき、それは、ストロークが当てはまるページ記述を検索して、ページ記述のどの要素とストロークが対話するかを決定する。次に、ページサーバは、関連する要素のタイプの文脈でストロークを解釈することができる。
【0220】
「クリック」は、ペンを下ろす位置とそれに続くペンを上げる位置との間の距離及び時間が、両方ともある小さい最大値未満であるストロークである。クリックにより起動されるオブジェクトは、通常、起動されるべきクリックを要求し、したがって、長過ぎるストロークは無視される。登録するために「合っていない」クリックなどのペンの動作の失敗は、ペンの「ok」LEDからの応答がないことにより示される。
【0221】
ネットページページ記述には2種類の入力要素、即ち、ハイパーリンク及びフォームフィールドがある。フォームフィールドによる入力も、関連付けされたハイパーリンクを起動させることができる。
【0222】
2.ネットページペン記述
2.1 ペン機構
図6及び7を参照して、一般的に参照番号101により示されるペンは、ペンの構成要素を装着するための内部空間104の輪郭となる壁103を有するプラスチック成形物の形態のハウジング102を備える。ペン頭部105は、ハウジング102の一端106に操作時回転可能に取り付けられている。半透明のカバー107は、ハウジング102の反対側の端108に固定されている。カバー107もプラスチック成形物であり、ユーザがハウジング102内に取り付けられているLEDの状態を見ることができるように、半透明材料で形成されている。カバー107は、ハウジング102の端108を実質的に取り囲む主要部109及び主要部109から後方へ突き出てハウジング102の壁103に形成された対応するスロット111内にぴったり合う突出部分110を備えている。無線アンテナ112は、ハウジング102内で突出部分110の後ろ側に取り付けられる。カバー107上の開口部113A周囲のスクリュー繊条113は、対応するスクリュー繊条115を備える金属端部分114を受け入れるように配置されている。金属端部分114は取り外し可能であり、インクカートリッジ交換ができる。
【0223】
3色ステータスLED116もカバー107内で可撓性PCB117上に取り付けられている。アンテナ112も可撓性PCB117上に取り付けられている。ステータスLED116は、全周囲がよく見えるように、ペン101の頂点に取り付けられている。
【0224】
ペンは通常のマーク付けインクペン及びマーク付けでない尖筆の両方として作動し得る。ペン先119の付いたインクペンカートリッジ118及び尖筆ペン先121の付いた尖筆120が、ハウジング102内に並んで取り付けられている。インクカートリッジペン先119又は尖筆ペン先121のいずれかが金属端部分114の開放端122を通ってペン頭部105の回転により前にもたらされ得る。それぞれの滑動ブロック123及び124は、インクカートリッジ118及び尖筆120にそれぞれ取り付けられている。回転可能なカム胴部125は作動時にはペン頭部105に固定されてそれと一緒に回転するように配置されている。カム胴部125は、カム胴部の壁181内にスロット形態のカム126を備える。滑動ブロック123及び124から突き出たカム従動子127及び128は、カムスロット126内に嵌まる。カム胴部125の回転で、滑動ブロック123又は124は、互い対して動き、金属端部分114中の孔122を通して、ペンのペン先119又は尖筆のペン先121のいずれかを突き出す。ペン101は、3つの作動状態を有する。頭部105を90°刻みで回すことにより、3つの状態は:
・尖筆120のペン先121が出る、
・インクカートリッジ118のペン先119が出る、及び
・インクカートリッジ118のペン先119も尖筆120のペン先121も出ない
である。
【0225】
第2の可撓性PCB129は、ハウジング102内に収まる電子シャーシ130に取り付けられている。第2可撓性PCB129は、表面に投影するための赤外放射を提供する赤外LED131を取り付けている。画像センサ132は、表面から反射した放射を受けるための第2の可撓性PCB129上に取り付けられて提供される。第2の可撓性PCB129は、RF送信機及びRF受信機を備える高周波チップ133及びペン101の作動を制御するためのコントローラチップ134も取り付けている。光学ブロック135(成形された透明プラスチックで形成されている)は、カバー107内にあり、赤外ビームを表面に投影し、画像センサ132上に画像を受け取る。動力供給線136は、第2の可撓性PCB129上の構成要素をカム胴部125内に取り付けているバッテリー接触子137に接続する。端子138は、バッテリー接触子137及びカム胴部125に接続している。3ボルトの再充電可能バッテリー139が、カム胴部125内でバッテリー接触子と接触している。誘導充電コイル140は第2の可撓性PCB129の周りに取り付けられ、誘導によるバッテリー139の再充電を可能にする。尖筆120又はインクカートリッジ118のいずれかが書くために使用されるとき、ペンのペン先119又は尖筆のペン先121により表面に加えられる力の測定を可能にするために、第2の可撓性PCB129は、カム胴部125の変位を検出するための赤外LED143及び赤外フォトダイオード144も取り付けている。IRフォトダイオード144は、IR LED143からの光を、滑動ブロック123及び124上に取り付けられた反射板(示していない)により検出する。
【0226】
ゴムの握りパッド141及び142は、ペン101を握り易くするためにハウジング102の端部108に向かって付けられ、頭部105もペン101をポケットにとめるためにクリップ142を備えている。
【0227】
3.2 ペンコントローラ
ペン101は、ペン先周辺の表面領域を赤外スペクトルで画像化することにより、そのペン先(尖筆ペン先121又はインクカートリッジペン先119)の位置を決定するように整えられている。それは、最も近い位置のタグからの位置データを記録して、ペン先121又は119の位置決めタブからの距離を、光学素子135及びコントローラチップ134を利用して計算するように準備されている。コントローラチップ134は、ペンの向き及びペン先からタグの距離を画像化されたタグで観察される透視歪みから計算する。
【0228】
RFチップ133及びアンテナ112を利用して、ペン101は、ディジタルインクデータ(セキュリティのために暗号化され且つ効率的送信のために及びパッケージにしてある)を計算システムに送信することができる。
【0229】
ペンが受信機の範囲にあるとき、ディジタルインクデータは、それが形成されたときに送信される。ペン101が範囲外に移動したとき、ディジタルインクデータはペン101の中のバッファに入れられて(ペン101の回路構成は、表面上における約12分のペンの動きのディジタルインクデータを貯蔵するように準備されたバッファを含む)、後で送信することができる。
【0230】
コントローラチップ134は、ペン101の第2の可撓性PCB129上に取り付けられている。図8は、コントローラチップ134の構成をより詳細に例示するブロック図である。図8は、RFチップ133、画像センサ132、3色ステータスLED116、IRイルミネーションLED131、IR力センサLED143、及び力センサフォトダイオード144の表示も示す。
【0231】
ペンコントローラチップ134は、制御プロセッサ145を含む。バス146は、コントローラチップ134の構成要素間のデータ交換を可能にする。フラッシュメモリー147及び512KB DRAM148も含まれる。アナログからディジタルへの変換器149は、力センサフォトダイオード144からのアナログシグナルをディジタルシグナルに変換するように用意されている。
【0232】
画像センサインターフェース152は、画像センサ132とインターフェースで接続する。送受信機コントローラ153及びベースバンド回路154も、RF回路155並びにアンテナ112に接続されているRF共鳴器及び誘導器156を含むRFチップ133とのインターフェース接続に含まれる。
【0233】
制御プロセッサ145は、画像センサ132により、タグからの位置データを表面から捉えて復号し、力センサフォトダイオード144をモニターし、LED116、131及び143を制御して、無線送受信機153により短距離無線通信を処理する。それは、中性能(約40MHz)の汎用RISCプロセッサである。
【0234】
プロセッサ145、ディジタル送受信機構成要素(送受信機コントローラ153及びベースバンド回路154)、画像センサインターフェース152、フラッシュメモリー147及び512KB DRAM148は、単一のコントローラASIC中に統合されている。アナログRF構成要素(RF回路155及びRF共鳴器及び誘導器156)は、別々のRFチップで提供される。
【0235】
画像センサはCCD又はCMOS画像センサである。タグ付けスキームに依存して、画像センサは、約100×100ピクセルから200×200ピクセルの範囲のサイズを有する。National Semiconductor LM9630を含む多くの小型CMOS画像センサが市販されている。
【0236】
コントローラASIC134は、ペン101が表面に接触しないとき、活動しない期間の後に休止状態に入る。それは、力センサフォトダイオード144をモニターして、ペンを下げる事象でパワーマネジャー151によりコントローラ134を起動させる専用回路150を組み込んでいる。
【0237】
無線送受信機は、通常コードレス電話により使用される無免許900MHz帯域か、或いは無免許の2.4GHzの工業用、科学及び医学用(ISM)帯域で通信して、干渉のない通信を提供するために、周波数ホッピング及び衝突検出を使用する。
【0238】
別の実施形態において、ペンは、基地局又はネットページプリンタとの短距離通信のためのInfrared Data Association(IrDA)インターフェースを組み込んでいる。
【0239】
さらなる実施形態において、ペン101は、ペン101軸の法平面に取り付けられた一対の直交する加速度計を備えている。加速度計190は、図7及び8中で点線の外枠に入れて示す。
【0240】
加速度計の備えは、ペン101のこの実施形態が表面位置決めタグを参照しないで動作を感知することを可能にして、位置決めタグがより低いペースでサンプリングされることを可能にする。それで、各位置決めタグIDは、表面上の位置よりもむしろ興味あるオブジェクトを識別することができる。例えば、オブジェクトがユーザインターフェース入力要素(例えば、コマンドボタン)であれば、その場合は、入力要素の領域内の各位置決めタグのタグIDが、入力要素を直接識別することができる。
【0241】
x及びy方向の各々で加速度計により測定された加速度は、時間に関して積分されて、瞬間速度及び位置を与える。
【0242】
ストロークの出発位置はわからないので、ストローク内の相対的位置のみが計算される。位置の積分は感知された加速度の誤差を累積するが、加速度計は、通常、高い分解能を有し、誤差が累積するストローク持続時間は短い。
【0243】
3 ネットページプリンタ記述
3.1 プリンタ機構
縦に取り付けたネットページ壁式プリンタ601を完全に組み立てて図9に示す。それは、ネットページをレター/A4サイズ媒体上に、図10及び10aに示す複式8・1/2インチMemjet(商標)プリントエンジン602及び603を使用して印刷する。それは紙の直線通路を使用し、紙604は、シートの両側を同時にフルカラーで且つ全裁ち切りで印刷する複式プリントエンジン602及び603を通る。
【0244】
内蔵のバインディングアセンブリ605は、印刷された各シートの一端に沿って一条の糊を付け、圧してそれを先行シートに接着させる。これで1枚から数百枚の範囲の厚さになってよい最終製本された文書618が作られる。
【0245】
交換可能なインクカートリッジ627は、図12に示すように、複式プリントエンジンと連結されて、固着剤、接着剤、並びにシアン、マゼンタ、黄色、黒色及び赤外インクを貯蔵するための袋又はチャンバーを有する。カートリッジは、ベースモールディング中にミクロエアフィルターも備える。ミクロエアフィルターは、プリンタ内のエアポンプ638とホース639を通じてインターフェース接続している。これは、濾過した空気をプリントヘッドに供給して、そうしなければプリントヘッドノズルを詰まらせる恐れのある微粒子のMemjet(商標)プリントヘッド350中への進入を防止する。カートリッジ内にエアフィルターを組み込むことにより、フィルターの作動寿命は、カートリッジの寿命と効果的に連結される。インクカートリッジは、3000ページ(1500枚)を印刷及び糊付けする能力のある完全リサイクル製品である。
【0246】
図10を参照すると、モータ付き媒体ピックアップローラアセンブリ626は、媒体トレイから一番上にあるシートを直接第1プリントエンジン602上の紙センサを過ぎて、複式Memjet(商標)プリントヘッドアセンブリへと押しやる。2つのMemjet(商標)プリントエンジン602及び603は、反対側のラインに紙の直線通路に沿って順に配置して取り付けられている。紙604は、内蔵の動力付きピックアップローラ626により第1プリントエンジン602中に引き込まれる。紙604の位置及びサイズが感知されて完全裁断印刷が開始される。固着剤が同時に印刷されて可能な最短時間で乾燥するのを促進する。
【0247】
紙は、ゴム付きローラに相対して作動する、一連の動力駆動排出スパイクホイール(紙の直線通路に沿って整列されている)により第1Memjet(商標)プリントエンジン602を出る。これらのスパイクホイールは、「濡れた」印刷面と接触して、シート604を第2Memjet(商標)プリントエンジン603に供給し続ける。
【0248】
図10及び10aを参照すると、紙604は、複式プリントエンジン602及び603を通ってからバインダーアセンブリ605に入る。印刷されたページは、繊維質の支持ローラ付き動力駆動スパイクホイールの心棒670及び他のスパイクホイール付き可動式心棒及び瞬時作動糊付けホイールの間を通過する。可動式心棒/糊アセンブリ673は、金属の支持棚に取り付けられ、それはカムシャフトの作動によりギヤを介して動力駆動軸670でインターフェースの方へ輸送される。別のモータがこのカムシャフトを動かす。
【0249】
糊ホイールアセンブリ673は、インクカートリッジ627から糊を供給するホース641のための回転継手の付いた一部中空の心棒679からなる。この心棒679は糊ホイールに接続し、それが放射状の孔を通して毛管作用により接着剤を吸収する。成形ハウジング682は糊ホイールを囲み、前方は開いている。旋回する側方成形物及びバネ付きの外側扉は、金属棚に取り付けてあり、アセンブリ673の残部が前方へ押されたときに、蝶番式に側方へ出る。この動作が糊ホイールを成形ハウジング682の前を通して露出させる。作動しない期間中は、引張バネがアセンブリを閉鎖して効果的に糊ホイールに蓋をする。
【0250】
シート604が糊ホイールアセンブリ673中を通ると、それは下に向かって製本アセンブリ605中に運ばれるので、接着剤は、(文書の最初のシートは別として)前側で縦に一方の端に適用される。
【0251】
4 製品のタグ付け
自動識別とは、バーコード、磁気ストライプカード、スマートカード、及びRF中継器などの、手動打鍵なしでオブジェクトをデータ処理システムに向けて(半)自動的に識別する技法の使用のことである。
【0252】
自動識別の目的で、通常、製品項目は、印刷されたバーコードの形態で機械で読まれるようにコード化された、12桁の統一商品コード(UPC)により識別される。最も普及しているUPC番号付けシステムは、5桁の製造者番号及び5桁の項目番号を組み込んでいる。その精度に限界があるので、UPCは、個々の製品項目よりもむしろ製品のクラスを識別するために使用される。統一コード委員会及びEANインターナショナルは、UPC及び関連コードを14桁の世界通商項目番号(GTIN)の部分集合として定義し管理している。
【0253】
供給チェーン経営においては、個々の製品項目が唯一のものとして識別され、それにより追跡されることを可能にするように、UPCスキームを拡張するか又は置き換えることに相当の関心がある。個々の項目のタグ付けは、製品の紛失、盗難、又は傷みによる「目減り」を減少させ、需要主導の製造及び供給の効率を向上させ、製品使用のプロファイリングを促進し、而も顧客の経験を向上させることができる。
【0254】
個々の項目タグ付けに対して2つの主要な競合案がある:いわゆる2次元バーコードの形態の光学タグ、及び無線周波数識別(RFID)タグである。RFIDタグの詳細な説明については、その内容を相互参照により本明細書に組み込む、Klaus Finkenzeller,FRID Handbook,John Wiley & Son(1999)を参照されたい。光学タグは、費用がかからないという利点を有するが、読み取りのための光学的見通し線が必要になる。RFIDタグは、全方向性の読み取りに対応するという利点を有するが、比較的費用がかかる。金属又は液体の存在は、RFIDタグ性能を深刻に損なう可能性があり、全方向性読み取りの利点を傷つける。受動(リーダー出力の)RFIDタグが、2003年末までに数百万の量で各10セントの価格で、及びそのすぐ後に各5セントで計画されたが、これは未だ、食料雑貨販売業などの低価格項目に対する1セント未満の産業標的に達しない。大部分の光学タグの読み取り専用の性質も、タグ項目が供給チェーンを通って進むとき状態の変化を書くことができないので、不利点として挙げられてきた。しかしながら、この不利点は、読み取り専用タグは、ネットワーク上で流動的に維持される情報を参照できるという事実により軽減される。
【0255】
マサチューセッツ工科大学(MIT)のAuto−ID Centerは、Internet−based Object Name Service(ONS)及びProduct Markup Language(PML)と連結した、96ビットの電子製品コード(EPC)のための標準を開発した。EPCがスキャンされるか又は他の方法で得られさえすれば、それは、PML中にポータブルにコード化された応分の製品情報を、恐らくONSを介して調べるために使用される。EPCは、8ビットのヘッダー、28ビットのEPCマネジャー、24ビットのオブジェクトクラス、及び36ビットのシリアル番号からなる。EPCの詳細な説明については、その内容を相互参照により本明細書に組み込む、Brock,D.L.,The Electronic Product Code(EPC),MIT Auto−ID Center(January 2001)を参照されたい。Auto−ID Centerは、GTINのEPCへのマッピングを定義して、EPCと現行の実施、即ちその内容を相互参照により本明細書に組み込む、Brock,D.L.,Integrating the Electronic Product Code(EPC) and the Global Trade Item Number(GTIN),MIT Auto−ID Center(November 2001)との間の適合性を示した。EPCは、EAN−UCCのジョイントベンチャーであるEPC globalにより管理される。
【0256】
EPCは技法に関係なく、コード化して多くの形態で運ぶことができる。Auto−ID Centerは、EPCを担持する低コストの受動RFIDタグの使用を強く提唱して、RFIDタグのコストを短期間に最小化させることが可能なEPCの64ビットバージョンを定義している。低コストRFIDタグの特性の詳細な説明については、その内容を相互参照により本明細書に組み込む、Sarma,S.,Towards the 5c Tag,MIT Auto−ID Center(November 2001)を参照されたい。市販の低コスト受動RFIDタグの説明については、その内容を相互参照により本明細書に組み込む、915 MHz RFID Tag,Alien Technology(2002)を参照されたい。64ビットEPCの詳細な説明については、その内容を相互参照により本明細書に組み込む、Brock,D.L.,The Compact Electronic Product Code,MIT Auto−ID Center (November 2001)を参照されたい。
【0257】
EPCは、単に唯一の項目レベルのタグ付け及び追跡だけではなく、ハウジングレベル及び荷台レベルのタグ付け並びにコンテナ及びトラックなどの船積み及び輸送の他の物流単位のタグ付けもまた目的としている。分配されたPMLデータベースは、項目と包装、船積み及び輸送階層におけるより高レベルのコンテナとの間の流動的関係を記録する。
【0258】
4.1 供給チェーンにおける全タグ付け
製品項目を一意的に識別するための不可視(例えば、赤外)タグ付けスキームの使用は、それが製品の全表面又はその大部分を、製品の包装の図案又はラベルを侵さずにタグ付することを可能にするという大きい利点を有する。製品の全表面がタグ付けされれば、その場合、製品の配向はそれがスキャンできることに影響しない、即ち、可視バーコードの見通し線の不利点の大部分は排除される。さらに、タグが小さく、大量に模写されるので、ラベルの損傷は最早スキャニングを妨げない。
【0259】
したがって、全タグ付けは、製品項目表面の大部分を光学的に読み取り可能な不可視タグで覆うことからなる。各全タグは、それが現れる製品項目を唯一のものとして識別する。全タグは、項目の製品コード(例えば、EPC)を直接コード化することができ、又は代理IDをコード化して、それが次にデータベース調査により製品コードを識別することもできる。各全タグも、場合により、製品項目表面上のそれ自体の位置を識別して、前に説明したネットページ対話の下流消費者の利益を提供する。
【0260】
全タグは、製品製造及び/又は包装中にディジタルプリンタを使用して適用される。これらは、テキスト及びグラフィックが他の手段により印刷された後に全タグを印刷する追加方式の赤外プリンタであってもよく、又は全タグ、テキスト及びグラフィックを同時に印刷するフルカラー及び赤外プリンタであってもよい。ディジタルで印刷されたテキスト及びグラフィックは、ラベル又は包装上のどのようなものも含んでよく、又は他の手段によりさらに印刷された他の部分のある可変部分のみからなってもよい。
【0261】
4.2 全タグ付け
図13に示すように、製品の唯一の項目ID215は、特殊な種類の唯一のオブジェクトID210として見ることができる。電子製品コード(EPC)220は、項目IDに対する1つの新しく生じた規格である。項目IDは、通常、製品ID214及びシリアル番号213からなる。製品IDは製品のクラスを識別するが、シリアル番号は、クラスの特定のインスタンス、即ち、個々の製品項目を識別する。次に、製品IDは、通常、製造者番号211及び製品クラス番号212からなる。最もよく知られた製品IDは、EAN.UCC統一商品コード(UPC)221及びその変形である。
【0262】
図14に示すように、全タグ202は、ページID(又は領域ID)50及び2次元(2D)位置86をコード化する。領域IDはタグを含む表面領域を識別し、及び位置は2次元領域内のタグの位置を識別する。問題になる表面は物理的製品項目201の表面であるから、領域IDと製品項目の固有のオブジェクトID210、及びより具体的には項目ID215との間の1対1マッピングを定義することは有用である。しかしながら、マッピングは全タグの有用性を損なうことなく多数:1であり得る;例えば、製品項目の包装の各パネルは異なった領域ID50を有するとができることに注目されたい。逆に言えば、全タグは、項目IDを直接コード化することができて、その場合、領域IDは、一般的なネットページ領域ID割り当てから項目ID割り当てを分離するように適当にプレフィックスを付けられた項目IDを含む。領域IDは、グローバルのネットページシステム内で識別された全ての他の表面領域から、対応する表面領域を唯一のものとして区別することに注目されたい。
【0263】
項目ID215は、好ましくはAuto−ID Centerにより提案されたEPC220であり、それは、これが全タグとEPC担持RFIDタグとの間の直接の適合性を提供するからである。
【0264】
図14において、位置86はオプションとして示されている。これは、供給チェーンにおける全タグの有用性の多くが領域ID50に由来し、位置は、特定の製品に対して所望でなければ省略できることを示す。
【0265】
ネットページシステムとの相互運用性について、全タグ202はネットページタグ4である;即ち、それは、ネットページタグの論理構造、物理的レイアウト及び記号の意味を有する。
【0266】
ネットページペン101などのネットページ感知器が、画像及び全タグの像を作り復号するとき、それは、その視野におけるタグの位置及び配向を使用し、及びこれとタグ中にコード化された位置とを組み合わせて、タグに対するそれ自体の位置を計算する。感知器がハイパーラベルを付けられた表面領域に対して動かされると、感知器は、それにより、領域に対するそれ自体の動きを追跡することができて、その時間変化通路を表す一連の時間刻印位置見本を発生させる。感知器がペンであるとき、その場合、通路は一連のストロークからなり、各ストロークは、ペンが表面と接触したときに始まりペンが表面との接触を断ったときに終わる。
【0267】
ストロークが領域IDに対応するページサーバ10に進んだとき、ページサーバは、領域領域IDにより鍵をかけられた領域の記述を引き出して、記述に関してストロークを解釈する。例えば、記述がハイパーリンクを含み、及びストロークがハイパーリンクのゾーンを横切れば、その場合、サーバは、ストロークをハイパーリンクの指名と解釈してハイパーリンクを起動させることができる。
【0268】
4.3 全タグ印刷
全タグプリンタは、全タグを、製品製造及び/若しくはアセンブリの前、間又は後で、ラベル、包装又は製品の現物の表面上に印刷するディジタルプリンタである。それはネットページプリンタ601の特別の事例である。それは、全タグの連続パターンを、表面上に、通常は近赤外吸収インクを使用して印刷することができる。高速の環境で、プリンタは、タグ翻訳を加速するハードウェアを備える。これは、通常、タグ位置などの可変タグデータのリアルタイムのリードソロモンコード化及びプリントヘッドのドット分解能での実際のタグパターンのリアルタイムのテンプレートに基づく翻訳を含む。
【0269】
プリンタは、テキスト及びグラフィックが他の手段で印刷された後で全タグを印刷する追加式赤外プリンタであってもよく、又は全タグ、テキスト及びグラフィックを同時に印刷するフルカラー及び赤外プリンタであってもよい。ディジタルで印刷されたテキスト及びグラフィックは、ラベル又は包装上のどのようなものも含んでよく、又は他の手段によりさらに印刷された他の部分のある、可変部分のみからなっていてもよい。したがって、赤外及び黒色印刷能力のある全タグプリンタは、可変データ印刷に使用される、従来の熱転写又はインクジェットプリンタなどの既存のディジタルプリンタを置き換えることができる。
【0270】
次の考察の目的で、項目ラベルへの印刷に対する如何なる言及も、項目包装への一般的な又は項目表面上への直接的な印刷を含むことを意図している。さらに、項目ID215に対する如何なる言及も、領域ID50(又は全パネル(per−panel)領域IDの集合)、又はその構成要素を含むことを意図している。
【0271】
プリンタは、プリンタに固定及び/又は可変テキスト及びグラフィック並びに項目IDを、全タグ中に含めるために提供するホストコンピュータによって通常は制御される。ホストは、プリンタのリアルタイムの制御を提供することができ、それにより、印刷が進行するとき、ホストはプリンタにデータをリアルタイムで提供する。最適化として、ホストは、プリンタに固定データを、印刷が開始される前に提供して、可変データをリアルタイムでのみ提供することができる。プリンタは、ホストにより提供されたパラメーターに基づく項目毎の可変データも発生させることができる。例えば、ホストは、プリンタに基本項目IDを印刷に先立って提供することができ、プリンタは、基本項目IDを単純に増してそれに続く項目IDを発生させることができる。或いは、インクカートリッジ又はプリンタ中に挿入された他の貯蔵媒体中のメモリーが、固有項目IDの供給源を提供することができ、その場合、プリンタは項目IDの帰属をホストによる登録のためにホストコンピュータに報告する。
【0272】
さらに別のやり方で、先立つ製造段階中に固有IDが何らかの形態でラベルに適用されたと仮定して、プリンタは、全タグが前もって入れらているラベルから予め存在する項目IDを読み取ることができる可能性がある。例えば、項目IDは、可視2次元バーコードの形態で既に存在してもよく、又はRFIDタグとしてコード化されて入れられていてもよい。前者の場合、プリンタは光学バーコードスキャナを備えることができる。後者の場合、それはRFIDリーダーを備えることができる。
【0273】
プリンタは、項目IDを他の形態で表現することもできる。例えば、それは、項目IDを2次元バーコードの形態で印刷すること、又は項目IDの製品ID構成要素をIDバーコードの形態で印刷すること、又は項目IDを書き込み可能な又は追記型RFIDタグに書き込むことができる可能性がある。
【0274】
4.4 全タグスキャニング
項目情報は、通常、情況で起こったスキャンイベントに応じて製品サーバに流れる。例えば、項目が発送時に目録にスキャンされるとき;項目が小売り店の棚に置かれるとき;及び項目が販売時点でスキャンされるときなどである。レーザによる2次元スキャニング及び2次元画像センサによるスキャニングの両方を使用し、ネットページペンで利用されるのと同様な又は同一の技法を使用して、固定及び手持ち両方のスキャナを、全タグ付けされた製品項目をスキャンするために使用することができる。
【0275】
図16に示すように、固定スキャナ254及び手持ちスキャナ252の両方がスキャンデータを製品サーバ251に送信する。製品サーバは、順送りで製品項目事象データを、同位の製品サーバ(示していない)に、又は製品アプリケーションサーバ250に送信することができ、それが関連する製品サーバとのデータの共有を実行することができる。例えば、小売り店内での貯蔵の移動は、小売り店の製品サーバ上で局所的に記録され得るが、製造業者の製品サーバは製品項目が売られてはじめて通知を受けることができる。
【0276】
4.5 全タグによるネットページ対話
ラベル、包装又は現物の表面が全タグ付けされた製品項目は、任意の他のネットページと同じレベルの対話を提供する。
【0277】
ネットページ適合性製品タグ付けが是非ともされるべき場合がある。ネットページは、どのような印刷された表面もウェブページに類似した細かく区別された図形的なユーザインターフェースに変え、それで製品の表面上に細かく地図状に位置して多くのアプリケーションが存在する。これらのアプリケーションは、種々の種類の製品情報(栄養情報;料理使用説明書;レシピ;関連製品;消費期限;サービス説明書;回収注意書)を得ること;ゲームをすること;コンテストに参加すること;所有権を運営すること(登録;盗品の場合などにおける質問;移転);製品フィードバックを提供すること;伝言;及び間接的な装置の制御を含む。それに反して、区別されていない2次元バーコード又はRFID担持項目IDの場合などにおけるように、製品タグ付けが区別されていなければ、その場合、情報ページ移動の責任は情報送信装置に移転され、それは、ユーザ経験の複雑性又は送信装置のユーザインターフェースの高機能化への要求を大きく増大させる場合がある。
【0278】
ここで、本発明を、次の実施例を参照して説明することにする。しかしながら、本発明が、添付の請求項において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、多くの他の形態で具体化することができることは、いうまでもなく理解されるであろう。
【実施例】
【0279】
実施例1−ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4の調製
【化5】


(i)塩化ガリウム(III)(5.70g;0.032mol)を無水トルエン(68mL)中に窒素をゆっくりと流しながら溶解し、次に生じた溶液を氷水で冷却した。ナトリウムメトキシド(メタノール中に25%;23.4mL)をゆっくりと攪拌しながら加えると濃い白色沈殿が生成した。添加終了後、混合物を室温で1時間攪拌してから、ナフタレン−2,3−ジカルボニトリル(22.8g;0.128mol)を、続いてトリエチレングリコールモノメチルエーテル(65mL)を分割添加した。濃厚なスラリーを2時間蒸留してメタノール及びトルエンを除去した。トルエンが留去されると、反応混合物は均一になり、粘性が低下して及び容易に攪拌された。加熱を190℃(内部)で3時間継続した。黒褐色の反応混合物を60℃に冷却し、クロロホルム(150mL)で希釈し、焼結ガラス漏斗で重力濾過した。固体残渣を、新たなクロロホルム(50mL)で、及びさらにそれに50mLを追加して、減圧下に吸引して洗浄した。生じた暗緑色固体を、次に減圧下にアセトン(2×50mL)、DMF(2×50mL)、水(2×50mL)、アセトン(2×50mL)、及びジエチルエーテル(2×50mL)で順に洗浄した。湿気を含んだ固体を空気乾燥して乾燥粉末とし、次に高真空下約100℃で1時間加熱して乾燥工程を終了した。ナフタロシアナトガリウムメトキシトリエチレンオキシド3が微細な暗緑色粉末として得られた(23.14g;80%)、λmax(NMP)770nm。
【0280】
(ii)ナフタロシアニナトガリウムメトキシトリエチレンオキシド3(9.38g;0.010mol)を、窒素雰囲気下に氷/水浴で冷却しながら、30%発煙硫酸(47mL)を、滴下ロートによりゆっくり加えることにより処理した。添下終了後、反応混合物を55℃に予熱された水浴に移して、この温度で2時間攪拌すると、その間に混合物は均一で粘性のある暗青色の溶液になった。攪拌された反応混合物を氷/水浴で冷却してから、2−プロパノール(40mL)を滴下ロートによりゆっくり加えた。次に、この混合物を新たな2−プロパノール(160mL)を使用して2−プロパノール(100mL)中に注ぎ、反応フラスコから残渣を洗い出した。次に、ジエチルエーテル(100mL)を混合物に加え、次にそれを焼結ガラスロートに移して重力濾過すると、湿気を含んだ暗褐色固体と黄褐色濾液が得られた。固体を減圧下に吸引して、エーテル(50mL)、アセトン/エーテル(1:1、100mL)、及びエーテル(100mL)で順に洗浄した。次に、高真空で乾燥後に生じた固体(13.4g)を、エタノール/エーテル(1:3、100mL)中で3日間攪拌して濾過し、乾燥すると、テトラスルホン酸4が微細な赤褐色固体として得られた(12.2g;理論収量の105%;電位差滴定による純度90%)。H NMR(d−DMSO)δ7.97、8.00(4H,dd,J7,8=J7,6=7.2Hz,H7);8.49(4H,dd,J8,7=7.2,J8,1=5.7Hz,H8);8.84、8.98(4H,d,J6,7=7.2Hz,H6);10.10、10.19、10.25(4H,d,J1,8=5.7Hz,H1);11.13、11.16(4H,s,H4)。
【0281】
実施例2−アンモニウム塩の調製
次の塩を下記のようにして調製した。
【化6】


(a)テトラピリジニウム5
ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4(189mg;0.17mmol)をピリジン/水(50:50;4ml)中に懸濁させて、室温で16時間攪拌すると、その間に反応混合物は均一になった。エーテル/エタノール(86:14、35mL)を加えて塩を沈殿させ、上澄液をデンカントで除去した後、エーテル/エタノール(83:17、12mL)を攪拌しながら加えた。固体を濾別してエーテル/エタノール(50:50、2×5mL)及びエーテル(2×5mL)で洗浄した。高真空で乾燥後、テトラピリジニウム塩5が緑色粉末として得られた(136mg;56%)。H NMR(d−DMSO)δ7.78(8H,dd,J=6.3,6.3Hz,H3’,H5’);7.97、8.00(4H,dd,J7,8=J7,6=7.2Hz,H7);8.25(4H,dd,J=7.8,7.8Hz,H4’);8.49(4H,dd,J8,7=7.2,J8,1=5.7Hz,H8);8.80(8H,d,J=7.8Hz,H2’,H6’);8.84、8.98(4H,d,J6,7=7.2Hz,H6);10.10、10.19、10.25(4H,d,J1,8=5.7Hz,H1);11.13、11.16(4H,s,H4)。
【0282】
(b)テトラキス(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エニウム)9−比較例
ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4(348mg;0.31mmol)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(306mg;2.17mmol)をメタノール(5mL)中で20時間室温で攪拌すると、その間に反応混合物は均一になった。混合物は、エタノール/エーテル(25:75;20ml)で希釈して、30分間攪拌した。上澄をデカントして除去し、エーテル(20mL)を加え、固体を濾別してエタノール/エーテル(50:50;2×20mL)及びエーテル(2×20mL)で洗浄した。高真空で乾燥後、テトラアンモニウム塩9が緑色粉末として得られた(252mg;48%)。H NMR(d−DMSO)δ1.1〜1.2(32H,m,H3’,H4’,H5’,H10’);2.5(8H,m,H6’);3.0〜3.1(24H,m,H2’,H9’,H11’);7.97、8.00(4H,dd,J7,8=J7,6=7.2Hz,H7);8.49(4H,dd,J8,7=7.2,J8,1=5.7Hz,H8);8.84、8.98(4H,d,J6,7=7.2Hz,H6);10.10、10.19、10.25(4H,d,J1,8=5.7Hz,H1);11.13、11.16(4H,s,H4)。
【0283】
(c)テトラキス(トリブチルアンモニウム)8−比較例
ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4(905mg;0.81mmol)及びトリブチルアミン(2.32mL;9.70mmol)をエタノール(96%;5mL)中で4.75時間室温で攪拌すると、その間に反応混合物は均一になった。その溶液をエーテル(100mL)で希釈して沈殿した固体を濾別し、新たなエーテル(2×25mL)で洗浄した。過剰アミンは、固体をテトラヒドロフラン/エーテル(70:30、40mL)中で2時間攪拌して濾過することにより除去した。テトラキス(トリブチルアンモニウム)塩8を高真空で乾燥して、緑色粉末として得た(730mg;49%)。この塩は、水に殆ど溶解しないが、エタノールに容易に溶解する。H NMR(d−DMSO)δ0.90(12H,t,J=7.2Hz,H4’);1.34(8H,s×t,J=7.5Hz,H3’);1.58(6H,m,H2’);3.03(6H,br dd,J=7.8,7.8Hz,H1’);7.97、8.00(4H,dd,J7,8=J7,6=7.2Hz,H7);8.49(4H,dd,J8,7=7.2,J8,1=5.7Hz,H8);8.84、8.98(4H,d,J6,7=7.2Hz,H6);10.10、10.19、10.25(4H,d,J1,8=5.7Hz,H1);11.13、11.16(4H,s,H4)。
【0284】
(d)テトライミダゾリウム7
ヒドロキシガリウムナフタロシアニンテトラスルホン酸4(1.40g;1.25mmol)及びイミダゾール(0.596g;8.75mmol)をメタノール/水(80:20;17.5mL)中に懸濁して、生成した緑色の混合物を室温で2時間攪拌すると、1時間後に均一になった。その溶液をジエチルエーテル(50mL)で希釈して、15分間攪拌してから静置した。上澄液をデカントで除去して、次にエーテル/メタノール(50:50;20mL)を攪拌しながら加えた。固体を濾別してエーテル/メタノール(50:50;3×20mL)及びエーテル(2×20mL)で洗浄した。次に固体をメタノール/エーテル(50:50;20mL)に懸濁して3時間攪拌した。濾過及び高真空での乾燥によりテトライミダゾリウム塩7が緑色粉末として得られた(1.32g;76%)。H NMR(d−DMSO)δ7.61(8H,br s,H4’,H5’);7.98、8.02(4H,dd,J7,8=J7,6=7.2Hz,H7);8.49(4H,br m,H8);8.84、8.98(4H,d,J6,7=7.2Hz,H6);8.91(4H,br s,H2’);10.10、10.19、10.25(4H,d,J1,8=5.7Hz,H1);11.13、(4H,br m,H4)。
【0285】
実施例3−インクの調製及びアンモニウム塩の反射スペクトル
各塩の溶液を表1に従ってインク媒体中で作製した。
【表1】

【0286】
生じた透明緑色溶液をCelcastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上にエプソンC61インクジェットプリンタで印刷し、次に反射スペクトルをCary 5 UV−可視分光光度計で測定した。結果を表2に示す。
【0287】
【表2】

【0288】
表2から、BHが4から9の範囲のpKを有し、インク配合物のpHは4と6.5との間である化合物5及び7では、吸収のQ帯は800nmを超えることがわかる。しかしながら、BHは9を超えるpKを有し、且つインク配合物のpHが6.5を超える化合物8及び9に対して、Q帯は有意に800nm未満である。したがって、化合物5及び7は、酸性が強過ぎず従来のCMYKインクと適合性の、800nmを超える近赤外領域で強い吸収を保持するインクを配合するために適している。
【0289】
ガリウムナフタロシアニンテトラスルホネートの他のアミン塩4は、上の実施例2(a)〜(d)で調製されたものと同様にして調製され、インク媒体A中2mM溶液として配合された。生じた透明緑色溶液をCelcastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)にエプソンC61インクジェットプリンタで印刷し、次に反射スペクトルをCary 5 UV−可視分光光度計で測定した。結果を表3に示す。
【0290】
【表3】

【0291】
表3から、DABCOとキノリンとは4:1の化学量論量比で塩を生じ、それは許容される反射スペクトルを有するインクに配合することができることがわかる。同じ比で使用されるさらに強い塩基は一般に不適当であり、かなりの青方偏移を生ずる。しかしながら、より強い塩基のより少ない当量の使用は、赤方偏移したQ帯を有するインクをまだ提供することができる。実施例3(i)は、トリブチルアミンを1:1の比で使用して、Q帯を805nmに有する配合物を提供する。対照的に、トリブチルアミンは4:1の比で(表2)青方偏移したQ帯を792nmに有する配合物を生ずる。
【0292】
実施例4−カルボン酸塩を添加したインクの調製及び反射スペクトル
本発明によるインクは、ナフタロシアニン塩の単離をせずに調製することもできる。例えば、テトラスルホン酸4は、インク媒体中で配合して、pHは適当な塩基又は緩衝剤を使用して調整することができる。下の実施例4(a)及び4(b)は、テトラスルホン酸4を含むインク中にカルボン酸塩を添加することによるインクの調製を記載する。
【0293】
(a)酢酸リチウム/ナトリウム及びテトラスルホン酸4
テトラスルホン酸4を、8mMのNaOAc又はLiOAcを含むインク媒体B中で2mMに作製した。これは、6(pH5.1)を含む透明緑色溶液を生じ、それをCelcastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上に印刷した。反射スペクトルは、ナトリウム及びリチウムの両者に対してλmax806nmを有した。
【0294】
(b)EDTA二ナトリウム塩及びテトラスルホン酸4
テトラスルホン酸4を、3mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)二ナトリウム塩を含むインク媒体B中で、1.5mMに作製した。これは、透明緑色溶液(pH3.7)を生じ、それをCelcastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上に印刷した。反射スペクトルは、λmax805nmを有した。
【0295】
実施例5−混合塩を含むインクの調製及び反射スペクトル
本発明によるインクは、混合塩も含むことができる。混合塩は性質の適当なバランスを提供する点で、又は塩の分光学的特性を調整するために有利であり得る。例えば、実施例5(b)では、インク配合物中においてテトラキス(DBUアンモニウム)塩9に対して3当量のp−トルエンスルホン酸を直接添加すると、pHが7.7から4.0に低下し、且つQ帯は内部メソ窒素のプロトン化が起こったことを示す806nmに偏移する。
【0296】
(a)テトラスルホン酸4及びテトラキス(トリブチルアンモニウム)塩8
テトラスルホン酸4及びテトラキス(トリブチルアンモニウム)塩8(媒体C中2mM)の溶液を表4に示した比で混合した。生じた透明緑色溶液をCeloastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上にエプソンC61インクジェットプリンタで印刷し、pH及び最大吸収を測定した。
【0297】
【表4】

【0298】
(b)テトラキス(DBUアンモニウム)塩9及びp−トルエンスルホン酸
DBUアンモニウム塩9(26.3mg;15.2μmol)及びp−トルエンスルホン酸(8.68mg;45.6μmol)をインク媒体B(11.2mL)に溶解して、ナフタロシアニンが1.36mMである溶液を作製した。これは透明緑色溶液(pH4.0)を生じ、それをCeleastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上に印刷した。反射スペクトルはλmax806nmを有した(図30)。
【0299】
(c)イミダゾリウム塩7及び酢酸
テトライミダゾリウム塩7を、3mM酢酸を含むインク媒体B中で1.5mMに作製した。これは、透明緑色溶液(pH5.1)を生じ、それをCeleastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)上に印刷した。反射スペクトルは、λmax807nmを有した(図31)。
【0300】
実施例6−耐光性
17,000ルーメンの強度のOsram 250Wの金属ハロゲンランプ(HQI−EP 250W/D E40)(約70,000ルックス)を、電球から9.0cmの距離に置かれた印刷試料を照射するために使用した。耐光性の工業的標準測定は、通常の室内照明条件下において試料が30%退色するのに要する時間である。通常の室内照明条件は、500ルックスの照度で1日当たり10時間の照明と定義される。
【0301】
耐光性=30%退色するに要した時間×(70,000ルックス/500ルックス)×(24h/10h)
=30%退色するに要した時間×336
【0302】
【表5】

【0303】
pHが3.5から7の範囲内の本発明による全てのインクは、優れた耐光性を有する。対照的に、テトラキス(DBUアンモニウム)9から調製され7.7のpHを有するインクは、7.9年の予測寿命しかない劣った耐光性を有する。
【0304】
この驚くべき結果は、本発明のさらなる利点であり、プロトン化された多環系は一重項酸素に対して反応性がより小さいことの結果であると理解される。
【0305】
実施例7−耐オゾン性
インクは、インク媒体A、B、C、D、F、H又はIを使用する種々の塩から配合された。インク媒体A〜Cは上の表1に記載した。下の表6には、インク媒体D、F、H及びIを記載する。
【0306】
【表6】

【0307】
Celcastつや消し写真画質インクジェット紙(143gsm)に印刷されたインクの耐オゾン性を次のようにして試験した。印刷された試料を、1ppmの濃度のオゾンに、810nmの強度が70%に減少するまで曝露した。「F」は、強度70%に達した試料に対する最終結果を表す。他の試料は試験期間中70%を超える強度を有し、オゾン寿命は取得したデータから外挿した。
【0308】
【表7】

【0309】
本発明によるインクは、許容される耐光性に加えて許容される耐オゾン性を有することが示された。
【0310】
結論として、本発明のガリウムナフタロシアニン塩及びインク配合物は、ネットページ及びHyperlabel(商標)システムでの使用に優れている。これらの染料及びインクは、800nmを超える近赤外線吸収、インクジェットインク配合物中への良好な溶解性、無視し得るか又は低い可視性及び優れた耐光性を示す。その上、これらの染料は、高収率で、便利且つ効率的な合成で調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のIR吸収ナフタロシアニン染料
【化1】


(式中、
MはGa(A)であり;
は、−OH、ハロゲン、−OR、−OC(O)R又は−O(CHCHO)から選択されるアキシアルのリガンドであり、ここでeは、2から10の整数であり、Rは、H、C1〜8アルキル又はC(O)C1〜8アルキルであり;
及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素又はC1〜12アルコキシから選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル又はSi(R)(R)(R)から選択され;
は、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択され;
、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、C1〜12アルキル、C5〜12アリール、C5〜12アリールアルキル、C1〜12アルコキシ、C5〜12アリールオキシ又はC5〜12アリールアルコキシから選択され;
各Bは、BHが4と9の間のpKを有する塩基から独立に選択される)。
【請求項2】
BHが4.5と8の間のpKを有する、請求項1に記載の染料。
【請求項3】
各Bが窒素塩基及びオキシアニオン塩基からなる群から独立に選択される、請求項1に記載の染料。
【請求項4】
前記窒素塩基が窒素含有C5〜12ヘテロアリール塩基である、請求項3に記載の染料。
【請求項5】
前記窒素塩基がイミダゾール又はピリジンである、請求項4に記載の染料。
【請求項6】
前記オキシアニオン塩基がカルボキシレート塩基である、請求項3に記載の染料。
【請求項7】
前記カルボキシレート塩基が式RC(O)Oを有し、Rが、C1〜12アルキル、C5〜12アリール又はC5〜12アリールアルキルから選択される、請求項6に記載の染料。
【請求項8】
各Bが同一である、請求項1に記載の染料。
【請求項9】
各Bがイミダゾールである、請求項1に記載の染料。
【請求項10】
及びRが両方ともHである、請求項1に記載の染料。
【請求項11】
MがGa(OH)である、請求項1に記載の染料。
【請求項12】
請求項1に記載の染料を含むインクジェットインク。
【請求項13】
4〜7の範囲のpHを有する、請求項1に記載の染料を含むインクジェットインク。
【請求項14】
請求項12に記載のインクジェットインクを含む少なくとも1つのインク容器と流体連通するプリントヘッドを備えたインクジェットプリンタ。
【請求項15】
インクジェットプリンタ用の、請求項12に記載のインクジェットインクを含むインクカートリッジ。
【請求項16】
請求項1に記載の染料がその上に置かれた基材。
【請求項17】
人が読み取れる情報と、フォームの識別情報及びフォームの複数の位置を示す機械が読み取れるコード化されたデータとを含む、印刷されたフォームにより、データをコンピュータシステム中に入れることを可能にする方法であって、
コンピュータシステム中で、フォームの識別情報及びフォームに対する感知器の位置に関する指示データを、フォームに対して作動位置に置かれたときに少なくとも幾つかのコード化されたデータを使用して指示データを発生させる感知器から受け取るステップ;
コンピュータシステム中で、指示データから、フォームの少なくとも1つのフィールドを識別するステップ;及び
コンピュータシステム中で、少なくとも幾つかの指示データを、それが少なくとも1つのフィールドに関するとき、解釈するステップ
を含み、前記コード化されたデータが、請求項1に記載のIR吸収インクを含む方法。
【請求項18】
人が読み取れる情報及び製品項目の識別情報を示す、機械が読み取れるコード化されたデータを含む、印刷された表面を有する製品項目と対話する方法であって、
(a)コンピュータシステム中で、製品項目の識別情報に関する指示データを、製品項目に対して作動位置に置かれたときに、少なくとも幾つかのコード化されたデータを使用して指示データを発生させる感知器から受け取るステップ;及び
(b)コンピュータシステム中で、指示データを使用して製品項目に関する対話を識別するステップ
を含み、前記コード化されたデータが、請求項1に記載のIR吸収インクを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21(A)】
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【図21(B)】
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【図21(C)】
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【図21(D)】
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【図22(A)】
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【図22(B)】
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【図22(C)】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2009−542866(P2009−542866A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518676(P2009−518676)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000550
【国際公開番号】WO2008/006137
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】