説明

改良型アノードを備えたアルカリ電池

亜鉛粒子と、水性アルカリ電解液と、モレキュラーシーブ添加物とを含むアノード混合物(815)を有するアルカリ電池(810)。カソード(812)は、好ましくは二酸化マンガンを含む。電池は、円筒状であってもよく、又は他のいずれかの形状若しくはサイズであってもよい。モレキュラーシーブ添加物は、好ましくは、水性電解質、好ましくは水酸化カリウムとの混合前には少なくとも部分的に脱水された状態である、結晶性アルミノケイ酸塩材料を含む。アルミノケイ酸塩結晶構造は、平均孔径約3〜25オングストロームを有する。亜鉛アノードへのモレキュラーシーブの添加は、電池の放電容量及び耐用年数を改善する。モレキュラーシーブは、好ましくはアノード混合物の約0.07〜0.7重量パーセントを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛を含むアノードと、二酸化マンガンを含むカソードとを備える、電池の放電容量及び耐用年数を改善するためにモレキュラーシーブ(脱水されたゼオライト、脱水されたアルカリ金属アルミノケイ酸塩)材料がアノードに添加された水性アルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアルカリ電気化学電池には、亜鉛が含まれているアノードと二酸化マンガンが含まれているカソードが備わっている。電池は、通常、円筒状のケーシングから形成される。初めに、大きく広げた開口端とその反対側の閉口端によってケーシングを形成させる。電池内容物を注入した後、絶縁プラグを備えたエンドキャップを開口端に挿入する。電池は、ケーシング縁部を絶縁プラグの縁部に被せて圧着し、ケーシングを絶縁プラグの周りで径方向に圧縮して緊密な封止を提供することによって密閉される。閉口端のところの電池ケーシングの部分が、正端子を形成する。
【0003】
1次アルカリ電気化学電池には、通常、亜鉛アノード活物質、アルカリ電解質、二酸化マンガンカソード活物質、及び通常はセルロース又はセルロース繊維若しくはポリビニルアルコール繊維の電解質透過性隔離材フィルムが含まれている。アノード活物質は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はアクリル酸コポリマーのナトリウム塩のような従来のゲル化剤類、および電解質と混合させた亜鉛粒子を包含することができる。ゲル化剤は、亜鉛粒子を懸濁させ、そして粒子を互いに接触させたままにする働きをする。典型的に、アノード活物質に挿入される導電性金属くぎは、負端子エンドキャップに電気接続するアノード集電体の役割を果たす。電解質は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムの水溶液であり得る。カソードには典型的に、導電率を高めるために、導電性添加物、典型的にグラファイト材料と混合させた電気化学的活物質として粒子状二酸化マンガンが包含される。所望により、少量のポリマー結合剤類、例えば、ポリエチレン結合剤、およびチタン含有化合物類のような他の添加物類を、カソードに加えることもできる。
【0004】
カソードで使用される二酸化マンガンは、好ましくは、硫酸マンガンと硫酸の槽の直接電気分解によって製造される電解二酸化マンガン(EMD)である。EMDが、密度と純度が高いため望ましい。EMDの電気伝導度は、かなり低い。個々の二酸化マンガン粒子間の導電率を改善するために、導電性材料がカソード混合物に添加される。このような導電性添加物は更に、二酸化マンガン粒子と、カソード集電体の役割も果たす電池ハウジングとの間の電気伝導度を向上させる。好適な導電性添加物としては、例えば、アセチレンブラック、片状結晶性天然黒鉛、片状結晶性人造黒鉛(膨張または剥離黒鉛も含む)などのカーボンブラックのような導電性炭素粒子を挙げることができる。片状天然黒鉛又は膨張黒鉛のような黒鉛の抵抗率は典型的に、約3×10−3〜4×10−3Ω−cmであってよい。
【0005】
一次アルカリバッテリは高い放電容量(すなわち、長い耐用年数)を有することが望ましい。市販の電池サイズが固定されているので、より多くの量の電極活物質を電池に詰め込むことによって電池の有用な耐用年数を向上できることが知られている。しかし、そのような手法には、例えば、電池に電極活物質があまりにも密に詰め込まれる場合、電池放電時の電気化学反応速度が低下して耐用年数を短縮するおそれがあるなど、実際的な限界がある。電池の分極など、他の有害な効果も同様に起こり得る。分極は、性能及び耐用年数を制限する。アノードに含まれる亜鉛又は他の活物質の量は、電解質の量を削減することによって増加させることができるが、より多くの活物質がアルカリ電解液に関連してアノードに詰め込まれるにつれて、アノード活物質の利用が減少し始めるので、実際的な限界がある。同様に、カソードに含まれる二酸化マンガン又は他の活物質の量は、通常、高分子結合剤若しくは炭素導電性添加剤など、電気化学的に活性ではない物質の量を削減することによって増加させることができ、カソードにおけるバルク伝導度の適切なレベルを保証するために、十分な分量の導電性添加剤が維持されなければならない。
【0006】
アルカリ電池の容量及び性能の改善に関係した他の問題は、アノードにおける亜鉛腐食速度を低減することである。亜鉛アノード中のアルカリ電解液、通常は水酸化カリウムの存在は、徐々に、直接に亜鉛粒子上及びアノードコア内での酸化亜鉛(ZnO)堆積物の生成をまねく。これが、最終的には残りの亜鉛の有効性を抑え(placates)、ゆえに亜鉛利用を低減し、また、電池の全体的な電気化学的効率を低減する。酸化亜鉛堆積物の蓄積は、最終的には電池を停止させるおそれがある。腐食反応の副生成物は、電池の内部圧力を徐々に上昇させる水素ガスの生成である。
【0007】
水銀による亜鉛粒子のアマルガム化は、亜鉛腐食反応速度を抑制し、水素ガス生成速度を低減することで知られているが、現代のアルカリ電池は、一般に、環境規制があるので添加水銀を含有しない。そのような場合、電池内の水銀の総量は、亜鉛100万重量部当たり水銀約100重量部未満、通常は亜鉛100万重量部当たり水銀約50重量部未満である。アノード混合物への界面活性剤の添加、又はインジウム、ビスマス、若しくはアルミニウムなどの金属による亜鉛粒子の合金化が、水銀の有益な効果に取って代わるように使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなアルカリ電池は、広範囲にわたって商業的に使用されているが、依然として、亜鉛腐食速度を抑制し、また同時に電池の放電容量及び耐用年数を改善する必要がある。改良された電池は、また、費用効果が高いものでなければならず、懐中電灯、ラジオ、及びオーディオプレーヤーなどの通常の用途について信頼性の高い性能並びに高い容量(ミリアンペア時)を示さなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アノード内に亜鉛又は亜鉛合金粒子を有する一次アルカリ電池を対象とする。カソードは、好ましくは二酸化マンガンを含む。電解質は、好ましくは水酸化カリウムの水溶液であるが、また、水酸化ナトリウム若しくは水酸化リチウムなど、他のアルカリの水溶液であってもよい。電池形状は、通常は円筒状であるが、例えば、ほぼ平らな1つ若しくはそれより多くの側部を有する、他の形状であってもよい。ゆえに、一例として、電池は、角柱形状又は長方形(直平行六面体)形状を有してよい。円筒状アルカリ電池サイズは、通常、標準AAAA(42×8mm)、AAA(44×9mm)、AA(49×12mm)、C(49×25mm)、及びD(58×32mm)サイズであってよい。本発明は、電池形状又はサイズにかかわらず、亜鉛又は亜鉛合金粒子を含むアノードと、好ましくは、二酸化マンガンを含むカソードとを有する、アルカリ電池に適用可能である。
【0010】
主態様では、本発明は、アルカリ電池のアノード混合物へのモレキュラーシーブの添加を対象とし、その際、アノードは、亜鉛又は亜鉛合金粒子を含む。亜鉛又は亜鉛合金粒子を含むアノード混合物への少量のモレキュラーシーブの添加は、通常使用時の電池の耐用年数を増加させると判定されている。亜鉛又は亜鉛合金粒子は、通常、約30〜350ミクロンの平均粒子サイズを有する。アノード混合物は、亜鉛又は亜鉛合金粒子と、アルカリ電解液、好ましくは水性水酸化カリウムと、本発明のモレキュラーシーブ添加物がそれに添加されるゲル化剤とのスラリーを含む。電池は、通常、添加水銀を含有しない、すなわち、亜鉛の重量ベースで約100ppm(百万分率)未満の水銀、通常は50ppm未満の水銀を含有する。そのようなアルカリ電池のカソードは、通常、二酸化マンガン(EMD)及びグラファイト粒子を含む。モレキュラーシーブ添加物は、望ましくはアノード混合物中の全亜鉛の約0.01〜1重量パーセント、望ましくはアノード混合物中の全亜鉛の約0.1〜1重量パーセントを構成する。好ましくは、モレキュラーシーブは、アノード混合物中の全亜鉛百万重量部当たり約1000部(ppm)、すなわち、アノード混合物中の全亜鉛の約0.1重量パーセントを構成する。これは、モレキュラーシーブが全アノードの約0.007〜0.7重量パーセントを構成することになる。望ましくは、モレキュラーシーブは、全アノードの約0.07〜0.7重量パーセントを構成する。
【0011】
本発明におけるモレキュラーシーブアノード添加物は、脱水されたアルミノケイ酸塩、好ましくは脱水されたアルカリ金属アルミノケイ酸塩であることができる。用語「モレキュラーシーブ」は、当該技術分野において周知であり、脱水されたアルミノケイ酸塩、より一般的にはアルカリ金属アルミノケイ酸塩として参照される既知の主要な材料の部類を参照する。そのようなモレキュラーシーブは、ゼオライトとして知られる鉱物の部類で自然に生じることのある結晶性アルミノケイ酸塩である。結晶性アルミノケイ酸塩は、また、合成的に生成されてもよい。そのようなアルミノケイ酸塩(天然若しくは合成)は、通常ならばアルミノケイ酸塩構造内に自然に捕捉、結合、若しくは吸着されている可能性のある水の少なくとも大部分を含めたほとんどの水和物水を除去するために、製造又は処理中に少なくとも1回熱処理されている。
【0012】
ゆえに、本明細書で使用するとき、用語「脱水された」は、水和物水としてアルミノケイ酸塩構造内に結合している可能性のある、又は他の何らかの形でアルミノケイ酸塩構造内に自然に結合、捕捉、若しくは吸着されている可能性のある水の少なくとも大部分が、アルミノケイ酸塩又は他の種類のモレキュラーシーブ結晶構造から少なくとも1回除去されていることを意味する。そのような水は、通常、「熱処理」によってアルミノケイ酸塩結晶構造から除去される。望ましくは、アルミノケイ酸塩内に結合、捕捉、若しくは吸着されている可能性のある水の少なくとも大部分、通常はほぼすべて(90%超過)が、モレキュラーシーブ材料を形成するために初めにアルミノケイ酸塩から除去される。これは、モレキュラーシーブ構造内の孔及び微視的表面を適切に調節し、活性化する。モレキュラーシーブは、結晶構造をほとんど又は全く変化せずに脱水を受けるという特性を有する。
【0013】
モレキュラーシーブの保管中に、水和物水の一部がモレキュラーシーブ結晶構造内に再吸収される場合があることが理解されよう。普通の状況では、モレキュラーシーブを長期間にわたって高湿度環境に曝さないように、又は他の何らかの形でモレキュラーシーブを使用前に液体の水(若しくは他の液体)との直接接触に曝さないように、適当な予防措置が取られる。にもかかわらず、水和物水の少なくともわずかな部分は、長期にわたる保管期間中に結晶構造へと再吸収されることがある。製造時に1回「脱水された」そのようなモレキュラーシーブは、アルカリ電池のための亜鉛含有アノード混合物中で本明細書で使用される水性アルカリ電解液とそれらが混合される直前には、単なる「部分脱水」の状態にあることがある。ゆえに、水性アルカリ電解液と接触する直前に、モレキュラーシーブ添加物の状態は、少なくとも「部分的に脱水された」状態であることが理解されよう。すなわち、結晶孔内に自然に捕捉されていることのある他の水を含めた水和物水の少なくとも約10重量パーセント、望ましくは少なくとも約20重量パーセント、好ましくは少なくとも約40重量パーセントは、結晶孔内に存在しない。
【0014】
脱水されたモレキュラーシーブ構造は、高い吸着能力を有する。モレキュラーシーブの脱水された構造内の空洞は、失われた水分子、又はモレキュラーシーブ構造内の小孔空洞内に嵌まるのに十分に小さい他の分子を再び捕捉する傾向が高い。アルカリ電池のためのアノード添加物として使用するための、本発明で参照されるモレキュラーシーブを形成する脱水された結晶性金属アルミノケイ酸塩である材料の部類は、また、化学処理産業で、例えば、ガスを処理する(水及び他の不純物を抜き取る)ために充填層塔内で、また有機液体を乾燥する際に、使用されてきた。本明細書で「モレキュラーシーブ」として参照される材料の部類は、また、例えば、本明細書に参考として組み込まれる、ハーシュ(Hersh)の「モレキュラーシーブ(Molecular Sieves)」、ラインホールド(Reinhold)、ニューヨーク(1961)に与えられている記述及びサンプル材料によって表される。
【0015】
モレキュラーシーブは、それらの孔(格子空孔)が概ね「均一な」サイズ及び分子寸法である、それらの高い多孔性によって特徴付けられる。結晶の孔をすり抜けるのに十分に小さい分子、例えば水分子だけが、これらの空洞に入ることになる。典型的なモレキュラーシーブは、それらの結晶構造内にナトリウム、カリウム、又はカルシウムのうちの1つ若しくはそれより多くを含有する、脱水されたアルカリ金属アルミノケイ酸塩である。モレキュラーシーブを形成するそのようなナトリウム、カルシウム、又はカリウムアルミノケイ酸塩の孔(格子開口部)は、脱水されると、通常、わずか約3〜5オングストローム、より典型的には約4〜5オングストロームの直径を有することがある。アルミノケイ酸塩の化学組成の他の多様性、並びに結晶構造の多様性は、より大きな孔を有する、例えば、最大10オングストロームまで、又はさらに最大25オングストロームまでの孔径、及びさらにいくらか大きい孔径の、モレキュラーシーブをもたらすことがある。ゆえに、本明細書の発明で、すなわちアルカリ電池の亜鉛アノード混合物への添加物として、採用されるべきモレキュラーシーブについての平均孔径(格子開口部)の範囲は、約3〜25オングストローム、好ましくは約3〜5オングストロームであってよい。
【0016】
亜鉛アノードを有するアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で使用するための代表的なモレキュラーシーブは、好ましくは亜鉛/MnOアルカリ電池の状況では、以下の通りである。アルカリ金属アルミノケイ酸塩型の以下のモレキュラーシーブは、約3〜5オングストロームの平均(公称)孔径を有する:K12[(AlO12(SiO12]・xHO(3オングストローム孔);Na12[(AlO12(SiO12]・xHO(4オングストローム孔);Ca1.5Na[(AlO12.(SiO12].H0(5オングストローム孔)。
【0017】
亜鉛アノードを有するアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で使用するための、より大きな孔の代表的なモレキュラーシーブは、好ましくは亜鉛/MnO2アルカリ電池の状況では、以下の通りである。以下のモレキュラーシーブは、約10オングストロームの平均(公称)孔径を有する:Na86[(AlO86(SiO106]・xHO(10オングストローム)。モレキュラーシーブの他の部類は、チタン酸化物ベースのモレキュラーシーブ、例えば、約25オングストロームの均一な公称孔径を有する代表式TiOのモレキュラーシーブであり、それらは、アルカリ電池、好ましくは亜鉛/MnOアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で有益に使用することができる。1つの均一な孔径の個々の粒子の群と、他の均一な孔径のTiOモレキュラーシーブ粒子の1つ若しくはそれより多くの他の群とが存在する、TiOベースのモレキュラーシーブ粒子の混合物が使用されてよい。また、例えば前述の代表的な種類からの、異なる化学組成及び異なる均一な公称孔径のモレキュラーシーブの混合物が、アルカリ電池の亜鉛アノード混合物に添加されてよい。
【0018】
亜鉛又は亜鉛合金粒子を含むアルカリ電池アノードへのモレキュラーシーブ添加物は、特に亜鉛/MnOアルカリ電池の状況では、アノード内での酸化亜鉛堆積物の蓄積速度を抑制し、ゆえに電池の実際の放電容量及び耐用年数を延ばす働きをする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のアノード混合物を使用できる代表的なアルカリ電池810が図に示されている。アルカリ電池810は、好ましくは、閉口端814と開口端816とを有する、鋼、好ましくはニッケルめっき鋼の円筒状ケーシング820を含む一次(非充電式)アルカリ電池である。電池は、好ましくは、亜鉛アノード活物質と本発明のモレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)添加物とを含むアノード混合物815と、二酸化マンガンカソード活物質を含むカソード混合物812とで充填される。(本明細書で使用するとき、アノード活物質及びカソード活物質という用語は、それぞれ、電池放電の間に電気化学反応を起こすアノード及びカソード内の化学物質を意味する。)亜鉛を含むアノード活物質は、望ましくはアノード混合物815の約60〜72重量パーセントを構成し、好ましくはアノード混合物815の約62〜71重量パーセントを構成する。アノード815は、亜鉛粒子と、水性KOH電解質と、本発明のモレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)添加物とを含む。アノード中の電解質は、KOH、ZnO、及びゲル化剤の従来の混合物を含む。亜鉛は、アノード活物質としての役割を果たす。亜鉛粒子は、好ましくはインジウム及びビスマスで合金化されており、またさらにインジウム又はビスマスでめっきされてよい。全インジウム及びビスマス含有量は、それぞれ、好ましくは亜鉛百万重量部当たり約100〜1500部、好ましくは亜鉛百万重量部当たり約150〜1500部である。これらの粒子状亜鉛合金は実質的に純亜鉛から構成されており、実質的に純亜鉛の電気化学容量を備えている。したがって、「亜鉛」という用語には前記物質が含まれるものと理解すべきである。
【0020】
電池は、好ましくは添加水銀を含有しない。それゆえに、水銀含有量は、亜鉛百万重量部当たり水銀約100部未満、通常は亜鉛百万重量部当たり水銀約50部未満である。電池は、また、好ましくは添加された量の鉛を含有せず、ゆえに本質的に鉛フリーであり、すなわち、全鉛含有量は、アノードの全亜鉛又は全活性金属含有量の30ppm未満、望ましくは15ppm未満である。アノード混合物815は、通常、亜鉛粒子と、本発明のモレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)添加物と、KOH電解質水溶液と、ゲル化剤(例えば、B.F.グッドリッチ(B.F. Goodrich)から商標名CARBOPOL C940として入手可能なアクリル酸共重合体)と、任意の界面活性剤(例えば、ローヌ・プーラン(Rhone Poulenc)から商標名GAFAC RA600として入手可能な有機燐光体エステル基界面活性剤)とを含有することができる。このようなアノード混合物は、単に実例として与えられるにすぎず、本発明を制限しようとするものではない。亜鉛アノード用の他の代表的なゲル化剤は、米国特許第4,563,404号に開示されている。
【0021】
亜鉛アノード混合物815へのモレキュラーシーブ添加物は、ゼオライトとして知られる鉱物の部類に属する結晶性アルミノケイ酸塩材料である。ゼオライトは、アルミニウムと、ナトリウム、カリウム、若しくはカルシウムのうちの1つ若しくはそれより多くとの、天然又は合成の水和したケイ酸塩である。例えば、ナトリウムを含有するアルミノケイ酸塩は、通常、NaO.Al.nSiO.xHOの種類のものである場合がある。(ゲスナー・G・ホーリー(Gessner G. Hawley)、要約化学辞典(The Condensed Chemical Dictionary)、第10版、ヴァン・ノストランド・ラインホールド社(Van Nostrand Reinhold Company)を参照。)アノード添加物としての特定の有用性を有するモレキュラーシーブは、脱水された、すなわち、ほとんどの水和物水を除去するために少なくとも1回熱処理された、結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩(ゼオライト)である。それらは、それらの孔(格子空孔)が概ね「均一な」サイズ及び分子寸法である、それらの高い多孔性によって特徴付けられる。モレキュラーシーブは、それらの精密で均一な結晶孔径によって特徴付けられる。
【0022】
例えば、孔(格子開口部)は、通常、アルミノケイ酸塩のナトリウム又はカルシウム形態では、わずか約4〜5オングストロームの直径を有することがある。製造時又はその後の処理時にアルカリ金属アルミノケイ酸塩(又は他のモレキュラーシーブ構造)がそれに曝される脱水プロセスは、通常ならば結晶構造内に捕捉されているほとんどの水を含めた、ほとんどの水和物水を除去する。脱水プロセスは、モレキュラーシーブを調節し、「活性化」する。モレキュラーシーブは、結晶構造をほとんど又は全く変化せずに脱水を受けるという特性を有する。脱水されたモレキュラーシーブ構造は、高い吸着能力を有する。モレキュラーシーブの脱水された構造内の空洞は、失われた水分子、又はモレキュラーシーブ構造内の小孔空洞内に嵌まるのに十分に小さい他の分子を再び捕捉する傾向が高い。結晶の孔をすり抜けるのに十分に小さい分子だけが、これらの空洞に入ることになる。ゆえに、モレキュラーシーブは、化学処理産業で、例えば、ガスを処理する(水及び他の不純物を抜き取る)ために充填層塔内で、また、有機液体を乾燥する際、及びはるかに大きな分子から非常に小さな分子を分離する際に、使用されてきた。
【0023】
本発明では、亜鉛アノード混合物815へのモレキュラーシーブ添加物は、ナトリウム、カリウム、若しくはカルシウム(又はそれらのいずれかの組み合わせ、例えば、ナトリウム及びカルシウムの両方)を好ましくは含有する種類の脱水されたアルカリ金属アルミノケイ酸塩である。好ましいモレキュラーシーブは、式Na12[(AlO12(SiO12]・xHOを有するナトリウム型のアルミノケイ酸塩であり、約4オングストロームの平均(公称)結晶孔径(格子開口部)を有する。このようなモレキュラーシーブは、UOPから商品表記モレキュラーシーブタイプ4A(Molecular Sieve Type 4A)として入手可能であり、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)から注文することができる。
【0024】
亜鉛アノードを有するアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で使用するための代表的なモレキュラーシーブは、好ましくは亜鉛/MnOアルカリ電池の状況では、以下の通りである。アルカリ金属アルミノケイ酸塩型の以下のモレキュラーシーブは、平均(公称)孔径約3〜5オングストロームを有する:UOPから商品表記モレキュラーシーブタイプ3A(Molecular Sieve Type 3A)として入手可能なK12[(AlO12(SiO12]・xHO(3オングストローム孔);UOPから商品表記モレキュラーシーブタイプ4A(Molecular Sieve Type 4A)として入手可能なNa12[(AlO12(SiO12]・xHO(4オングストローム孔);UOPから商品表記モレキュラーシーブタイプ5A(Molecular Sieve Type 5A)として入手可能なCa1.5Na[(AlO12.(SiO12].H0(5オングストローム孔)。
【0025】
亜鉛アノードを有するアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で使用するための、より大きな孔の代表的なモレキュラーシーブは、好ましくは亜鉛/MnO2アルカリ電池の状況では、以下の通りである。以下のモレキュラーシーブは、約10オングストロームの平均孔径を有する:UOPから商品表記モレキュラーシーブタイプ13X(Molecular Sieve Type 13X)として入手可能なNa86[(AlO86(SiO106]・xHO(10オングストローム)。モレキュラーシーブの他の部類は、均一な孔径のチタン酸化物ベースのモレキュラーシーブである。すなわち、均一な孔径の、例えば、公称孔径が約25オングストロームのTiOベースのモレキュラーシーブを、アルカリ電池、好ましくは亜鉛/MnOアルカリ電池のためのアノード添加物として本発明で有益に使用することができる。また、例えば前述の代表的な種類からの、異なる化学組成及び異なる平均孔径のモレキュラーシーブの混合物が、アルカリ電池の亜鉛アノード混合物に添加されてよい。
【0026】
望ましくは、モレキュラーシーブは、全アノード混合物815中に、該アノード混合物中の全亜鉛の約0.01〜1重量パーセントの量で存在する。好ましくは、モレキュラーシーブは、アノード混合物中の全亜鉛百万重量部当たり約1000部(ppm)を構成する。これは、モレキュラーシーブが全アノード混合物の約0.007〜0.7重量パーセントを構成することになる。望ましくは、モレキュラーシーブは、全アノード混合物の約0.07〜0.7重量パーセントを構成する。モレキュラーシーブは、アノード混合物中で不活性なままであり、すなわち、それらは亜鉛粒子と化学的に反応しない。それらは、通常は約1〜10ミクロンの平均粒子サイズを有する、粉末形態で得られることがある。
【0027】
理論に束縛されるものではないが、アノード混合物815へのモレキュラーシーブ添加物の存在は、亜鉛酸イオン[Zn(OH)−2が酸化亜鉛(ZnO)堆積物へと変化する速度を遅らせる又は抑制する働きをすると考えられている。(電池放電時にアノード内で形成されるZnO堆積物は、徐々に亜鉛粒子を腐食させ、ゆえにそれらの有効性を抑え(placates)、全体的な電池効率を低減する。)
モレキュラーシーブの存在が何故電池の性能を改善するかについては確実にはわかっていないが、アノード混合物中のヒドロキシルイオン濃度の変化速度を低減する働きをする緩衝効果を有するという理論が立てられている。これは、アノードにおける酸化亜鉛堆積物の蓄積を抑制すると考えられている。アノードでの亜鉛の利用が改善され、それが実際の放電容量(ミリアンペア時)の増加をもたらす。モレキュラーシーブ結晶構造内の微小孔(格子開口部)の吸着能は、アノードにおけるヒドロキシルイオン濃度の変化速度を低減するという理論が立てられている。理論に束縛されるものではないが、アノードにおける酸化亜鉛(ZnO)堆積速度を抑制する際のモレキュラーシーブ添加物の有益な効果は、以下の基本的なアノード反応の状況でさらに分析できると考えられている。
【0028】
基本的なアルカリ電池反応は、以下の通りである:
アノード
Zn+2(OH)=Zn(OH)+2e 式1
Zn(OH)+2(OH)=[Zn(OH)−2 式2
[Zn(OH)−2=ZnO+HO+2(OH) 式3
全体的なアノード反応:(式1+式2+式3)
Zn+2(OH)=ZnO+HO+2e 式4
カソード
2MnO+2HO+2e−=2MnO(OH)+2(OH) 式5
全体的な電池反応:(式4+式5)
Zn+2MnO+HO=ZnO+2MnO(OH) 式6
【0029】
最初の電気化学反応は、式1によって表されており、亜鉛がヒドロキシルイオン(OH)と反応して、沈殿剤である水酸化亜鉛Zn(OH)を形成する。しかし、アノード中の水酸化物イオンが高濃度の(過剰な)状況、すなわち、新しいアルカリ電池における典型的な環境では、Zn(OH)は、溶解して、式2に示される反応によって可溶性の亜鉛酸イオン[Zn(OH)−2を形成する。亜鉛酸イオンは、この方式で増加して、水性KOHベース電解質中の過飽和溶液を形成することがある。ただし、亜鉛酸イオン[Zn(OH)−2は、継続的に電池放電又は保管すると、徐々に分解する。具体的には、継続的に電池放電すると、初めの2つの反応(式1及び2)ゆえに、ヒドロキシルイオン(OH)含有量がアノード中で消耗し、次にはこれが亜鉛酸イオンをより速い速度で分解させて酸化亜鉛ZnO堆積物を形成させる(式3)。すなわち、アノード中のヒドロキシルイオン含有量が消耗し続けるにつれて、動力学(kinetics)は、式3へと傾き、亜鉛酸イオンがZnO堆積物へと変化する速度の緩やかな増加をもたらす(式3)。
【0030】
ZnOは、徐々に亜鉛粒子の表面上に堆積して、残っている(未放電)粒子を抑え(placate)、ついには蓄積してアノード内で酸化亜鉛のコアを形成し、最終的にはそれが電池を停止させるおそれがある。アノードにおけるZnO堆積物の蓄積をまねくこれらのメカニズムの結果として、全体的なアルカリ電池放電効率は、通常使用時でさえ、かなり低くなる可能性がある。例えば、実現される実際の容量(ミリアンペア時)は、通常、間欠放電試験の中間電流速度範囲内で利用可能な亜鉛(過剰なMnOで平衡が保たれた電池)に基づいて、理論容量の約60〜70%である。
【0031】
亜鉛アノード混合物への少量のモレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)の添加が、中間の速度、例えば、約0.2〜0.4アンペア放電での間欠放電において電池の性能を改善できることが見出された。望ましくは、モレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)は、アノード中の全亜鉛百万重量部に対してモレキュラーシーブ約100〜10000重量部(ppm)、通常はアノード中の全亜鉛百万重量部に対してモレキュラーシーブ約1000重量部(ppm)の量でアノードに添加される。これは、モレキュラーシーブが全アノードの約0.007〜0.7重量パーセントを構成することになる。望ましくは、モレキュラーシーブは、全アノードの約0.07〜0.7重量パーセントを構成する。アノード混合物へのモレキュラーシーブ材料添加の結果としてのアノードにおけるZnO蓄積速度の低減は、亜鉛利用の増加をもたらす。これは、次には、通常使用時のアルカリ電池についての実際の放電容量(ミリアンペア時)を改善する。
【0032】
アノードへのモレキュラーシーブの添加による、ZnO蓄積速度の低減、並びに亜鉛利用及び電池放電容量(ミリアンペア時)の改善が、以下のメカニズムによって支配される可能性があるという理論が立てられている。
【0033】
亜鉛アノード中のモレキュラーシーブの存在は、電池放電時のアノード混合物中のヒドロキシルイオン(OH)濃度の変化を緩和する。すなわち、それは、アノード混合物中のヒドロキシルイオン濃度の変化速度を低減する働きをする、緩衝効果をもつように思われる。これは、次には、式3の反応のような[Zn(OH)−2の分解からのZnOの生成を遅らせる。
【0034】
アノード混合物815は、望ましくは:亜鉛合金粉末62〜71重量%(合金及びめっきされた材料として200〜1500ppmのインジウムと、100〜1000ppmのビスマスとを含有する、99.9重量%の亜鉛)、約0.01〜1重量%のモレキュラーシーブ(脱水されたアルミノケイ酸塩)添加物、33〜38重量%のKOHと約2重量%のZnOとを含むKOH水溶液;B・F・グッドリッチ(B. F. Goodrich)から商標名「CARBOPOL C940」として市販されている架橋アクリル酸ポリマーゲル化剤(例えば、0.5〜2重量%)、及びグレイン・プロセシング社(Grain Processing Co.)から商標名「ウォーターロックA−221(Waterlock A-221)」として市販されている、デンプン骨格上にグラフトされた加水分解ポリアクリロニトリル(0.01〜0.5重量%);ローヌプーラン(Rhone-Poulenc)から商標名「RA−600」として市販されているジオニルフェノールホスフェートエステル界面活性剤(50〜200ppm)を含む。亜鉛合金平均粒子サイズは、望ましくは約30〜350ミクロンである。アノード内の亜鉛のバルク密度(アノード多孔度)は、通常、アノード1立方センチメートル当たり亜鉛約1.75〜2.2グラムである。
【0035】
カソード混合物812は、二酸化マンガン(EMD)と、導電性炭素、好ましくは黒鉛材料、望ましくは薄片状結晶天然黒鉛若しくは膨張グラファイト又はそれらの混合物とを含む。カソード混合物812は、また、黒鉛状炭素繊維又は黒鉛状炭素ナノ繊維も含んでよい。カソード混合物中の全導電性炭素は、望ましくはカソードの約3〜10重量パーセント、好ましくはカソードの約4〜10重量パーセントを構成する。カソード混合物812は、また、望ましくは、約7〜9規定の強度を好ましくは有する、約5〜10重量パーセントのKOH水溶液も含む(30〜40重量%KOH及び2重量%ZnO)。
【0036】
通常は二酸化マンガン(EMD)を含むカソード活物質は、カソード混合物812の約80〜92重量パーセント、好ましくはカソード混合物812の約80〜90重量パーセントを構成する。カソード812は、望ましくは次の組成を有することができる:87〜93重量%の電解二酸化マンガン(例えば、カー・マギー(Kerr-McGee)のトロナD(Trona D))、2〜6重量%(合計)のグラファイト、KOH濃度約30〜40重量%を有する5〜7重量%の7〜10規定KOH水溶液;及び0.1〜0.5重量%の任意のポリエチレン結合剤。電解二酸化マンガンは、典型的に、約1〜100μm、望ましくは約20〜60μmの平均粒子サイズを有する。グラファイトは典型的には、天然、若しくは膨張グラファイト、又はこれらの混合物の形状である。また、グラファイトには、黒鉛状炭素ナノ繊維を単独で、又は、天然、若しくは膨張グラファイトとの混合で含めることもできる。そのようなカソード混合物類は、例示を目的としたものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「グラファイト(graphite)」又は「黒鉛材料(graphitic material)」は、天然及び合成の結晶性グラファイト(合成的に調製若しくは加工されるグラファイト)、膨張グラファイト、黒鉛状炭素、並びに黒鉛状炭素繊維を包含するものとする。天然又は膨張グラファイトは、好ましくは、望ましくは約0.5ミクロン〜50ミクロン、通常は約10ミクロン〜50ミクロンの平均粒子サイズを有する微粒子形態である。黒鉛状炭素は、X線回折によって決定されるように互いに平行に積み重ねられた六角形に配列された炭素原子の層から成る、規則的な三次元グラファイト結晶構造の特徴を有する。ジャーナル・カーボン(Journal Carbon)、第20巻、445頁に公開されている、炭素の特性評価及び用語法に関する国際委員会(International Committee for Characterization and Terminology of Carbon)(ICCTC、1982)で定義されているように、黒鉛状炭素は、構造欠陥にかかわらず、グラファイトの同素体形態にある元素炭素から成る様々な物質を包含する。本明細書で使用するとき、黒鉛状炭素という用語は、この方式で解釈されるものとする。
【0038】
カソード混合物812は、二酸化マンガン(EMD)粉末と、KOH電解質水溶液とを含む。少量の結合剤、例えば、約0.5重量%未満のポリエチレン結合剤が、所望により混合物に添加されてもよい。カソード混合物は、該混合物が電池に挿入される前に、含まれる水性KOH電解質によって濡れた状態に調製することができる。例えば、ケーシング820をカソード混合物で満たすことができ、カソード混合物の中央部分をくり抜いて、図に示したように環状カソード812を残すことができる。濡れたカソード混合物は、電池内にある間、圧縮することができる。別法として、濡れた混合物を電池に挿入する前に圧縮してディスク812aにすることもでき、次いで、所望により、電池内にある間にさらに圧縮することもできる。別法として、初めに二酸化マグネシウム粉末と黒鉛状炭素材料とを乾式混合することによって、カソード混合物812を調製することもできる。乾燥混合物は、電池ケーシング820内に圧縮することもでき、又は圧縮してディスク形ブロック812aにすることもでき、それらブロックを積み重ねられた配置で電池に挿入することができる。セパレータシート890は、カソードディスク812aの内面に接触させて配置することができる。セパレータ890は、セルロース系フィルム、又は、ポリビニルアルコール繊維及びレーヨン繊維から成る不織布材料の形状をしているフィルムから作られたものであってよい。セパレータ890は、前記の不織布材料の単一層から構成させることも、不織布材料に接着させたセロファンの外層を有する複合物にすることもできる。不織布材料は、通常、約60重量パーセント〜80重量パーセントのポリビニルアルコール繊維と、約20〜40重量パーセントのレーヨン繊維とを含有することができる。セパレータ890は、セロファン層がカソード812又はアノード815のいずれかに隣接するように位置決めすることができる。上記のセパレータは既知であり、従来型の亜鉛/MnOアルカリ電池とともに用いられてきており、更には、本発明のアルカリ電池810での使用にも適している。水性KOH電解質は、乾燥カソード上に注ぎかけることができ、該電解質は、セパレータ及びカソードに吸収される。次いで、アノード材料815を電池に加えることができる。
【0039】
アノードとカソードとは、例えばポリビニルアルコールとセルロース系繊維材料とを含む、従来のイオン多孔性セパレータ890によって隔てることができる。電池810に充填した後、絶縁プラグ860を開口端に挿入する。絶縁プラグ860は、ポリプロピレン、タルク充填ポリプロピレン、スルホン酸化ポリエチレン、又はナイロン製であってよい。プラグ860には、通常、小さい円形、楕円形、又は多角形状の薄型部分865を設けることができる。薄型部分865は破裂可能な膜として機能し、この膜は破裂して、電池内部の過剰ガスを解放させるように設計することができる。これによって、例えば電池が過度の熱、又は乱用状態にさらされた場合に、電池内のガス圧の過剰な上昇を防ぐ。プラグ860は、好ましくは、プラグが適所で開口端816内に係止するように、図に示したように円周ステップ818の周りにスナップ嵌めされる。ケーシング820の周辺縁部827は、絶縁プラグ860の上部の上に圧着される。紙絶縁ワッシャ880が、ケーシング820の圧着された周辺縁部827に被せて適用される。絶縁ワッシャ880は、ポリエチレン被覆紙ワッシャであってよい。端子エンドキャップ830は、集電体840のヘッドに溶接される。続いて、絶縁プラグ860の開口844に細長い集電体840を挿入(圧力嵌め)し、エンドキャップ830が絶縁ワッシャ880と接する位置で止まるようにする。集電体840は、例えば黄銅、スズめっき黄銅、青銅、銅又はインジウムめっき黄銅など、集電体材として有用なことが知られている既知のさまざまな導電性金属から選択することができる。試験電池で使用された集電体840は、スズめっき黄銅製であった。集電体840を開口844に挿入する前に、従来型のアスファルト封止材を集電体840の周囲に事前配置してもよい。フィルムラベル870はケーシング820の周囲に配置する。端子エンドキャップ830は、アルカリ電池810の負端子になり、ケーシング820の閉口端のピップ825は正端子になる。
【0040】
図に示した代表的な電池810は、AA電池(50×14mm)とすることができる。ただし、図に示したアルカリ電池は、特定のサイズに制限することを意図したものではない。ゆえに、本発明は、AAA(44×9mm)、C(50×25mm)、及びD(58×32mm)サイズの円筒状アルカリ電池、並びにAAAAサイズ(42×8mm)及び任意のサイズ若しくは形状のボタンサイズアルカリ電池に適用可能である。
【0041】
Zn/MnOアルカリ電池アノード及びカソード
組成及び性能試験
亜鉛とモレキュラーシーブ添加物とを含むアノード混合物815と、MnO(EMD)を含むカソード815とを用いて、AAサイズの試験アルカリ電池を製造した。同一サイズの比較アルカリ電池は、同一のカソード組成と、比較電池のアノードがモレキュラーシーブ添加物を含有しなかったことを除いて本質的に同一のアノード混合物とを有する。比較電池及び試験電池は、添加水銀を含有しなかった。比較電池(比較実施例)と、試験実施例1及び2の試験電池とは、平衡比率、すなわち、MnO2の理論容量(MnO1グラム当たり370ミリアンペア時に基づく)を亜鉛のミリアンペア時容量(亜鉛1グラム当たり820ミリアンペア時に基づく)によって除したものが1.05となるように平衡を保たれた。
【0042】
以下の諸実施例の比較電池及び試験電池は、次のサイクルで間欠的に放電された:
a)0.8ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の3.9オーム負荷、続いて23時間の静置。
b)0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の0.25A放電電流、続いて23時間の静置。
【0043】
このような間欠放電は、アルカリ電池を使用する一般的な電子デバイスの典型的な使用を模す。次いで、前述の放電試験それぞれについて、実際の総耐用時間を記録した。
【0044】
比較電池並びに試験電池のアノード及びカソード組成並びに試験結果は、次の通りである:
比較実施例(比較電池)
円筒状構成の比較試験電池810を用意した。ケーシング外側寸法によって定義される電池は、ほぼAAサイズのものであり、長さ約50.4mm及び直径約14.3mmを有していた。アノード815及びカソード812は、以下の組成を有していた。
【表1】

注:
1.亜鉛粒子は、約294ミクロンの平均粒子サイズを有し、それぞれ約150及び230ppmの全インジウム及び全ビスマス含有量をもたらすようにインジウム及びビスマスで合金化且つめっきされた。
2.電解質溶液は、合計でアノード組成の約0.5重量%を構成する、ゲル化剤ウォーターロックA221(Waterlock A221)及びカーボポールC940(Carbopol C940)を含有した。
【表2】

【0045】
電池のケーシング820は、0.254mmの壁厚を有していた。電池のアノード及びカソードは、MnOの理論容量(MnO1グラム当たり370ミリアンペア時に基づく)を亜鉛のミリアンペア時容量(亜鉛1グラム当たり820ミリアンペア時に基づく)によって除したものが1.05となるように平衡を保たれた。アノードは、4.416グラムの亜鉛を有していた。(カソードは、10.280グラムのMnOを有していた。)
電池を、0.8ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の3.9オーム負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(7.78±0.04)耐用時間であった。別の同一の新しい電池を用意し、0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の0.25アンペア負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(8.74±0.06)耐用時間であった。
【0046】
試験電池実施例1
円筒状構成で比較実施例と同一のサイズの試験電池810を用意した。アノード及びカソードは、以下の組成を有していた。
【表3】

注:
1.亜鉛粒子は、約294ミクロンの平均粒子サイズを有し、それぞれ約150及び230ppmの全インジウム及び全ビスマス含有量をもたらすようにインジウム及びビスマスで合金化且つめっきされた。
2.アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)からの、式Na12[(AlO12(SiO12]・xHOの4Å(4オングストローム孔)モレキュラーシーブ。
3.電解質溶液は、合計でアノード組成の約0.5重量%を構成する、ゲル化剤ウォーターロックA221(Waterlock A221)及びカーボポールC940(Carbopol C940)を含有した。
【表4】

【0047】
電池のケーシング820は、0.254mmの壁厚を有していた。電池のアノード及びカソードは、MnOの理論容量(MnO1グラム当たり370ミリアンペア時に基づく)を亜鉛のミリアンペア時容量(亜鉛1グラム当たり820ミリアンペア時に基づく)によって除したものが1.05となるように平衡を保たれた。アノードは、4.416グラムの亜鉛を有していた。(カソードは、10.280グラムのMnOを有していた。)
試験電池を、0.8ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の3.9オーム負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(8.61±0.09)耐用時間であった。別の同一の新しい試験電池を用意し、0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の0.25アンペア負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(9.28±0.01)耐用時間であった。
【0048】
試験電池実施例2
円筒状構成で比較実施例と同一のサイズの試験電池810を用意した。アノード及びカソードは、以下の組成を有していた。
【表5】

注:
1.亜鉛粒子は、約294ミクロンの平均粒子サイズを有し、それぞれ約150及び230ppmの全インジウム及び全ビスマス含有量をもたらすようにインジウム及びビスマスで合金化且つめっきされた。
2.アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)からの、式Na12[(AlO12(SiO12]・xHOの4Å(4オングストローム孔)モレキュラーシーブ。
3.電解質溶液は、合計でアノード組成の約0.5重量%を構成する、ゲル化剤ウォーターロックA221(Waterlock A221)及びカーボポールC940(Carbopol C940)を含有した。
【表6】

【0049】
電池のケーシング820は、0.254mmの壁厚を有していた。電池のアノード及びカソードは、MnOの理論容量(MnO1グラム当たり370ミリアンペア時に基づく)を亜鉛のミリアンペア時容量(亜鉛1グラム当たり820ミリアンペア時に基づく)によって除したものが1.05となるように平衡を保たれた。アノードは、4.416グラムの亜鉛を有していた。(カソードは、10.280グラムのMnOを有していた。)
【0050】
試験電池を、0.8ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の3.9オーム負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(8.65±0.02)耐用時間であった。別の同一の新しい試験電池を用意し、0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、1時間の0.25アンペア負荷、続いて23時間の静置というサイクルで、間欠的に放電させた。実際の耐用年数は、(9.29±0.02)耐用時間であった。
【0051】
試験結果の考察
亜鉛アノードへのモレキュラーシーブ添加物を用いる試験電池(実施例1及び2)は、3.9オーム負荷の間欠放電試験について、比較電池(モレキュラーシーブ添加物なし)に比べて耐用年数の増加を示した。この試験の結果は、7.78耐用時間(比較電池)から、8.61時間(実施例1、モレキュラーシーブあり)及び8.65耐用時間(実施例2、モレキュラーシーブあり)への改善を示した。
【0052】
亜鉛アノードへのモレキュラーシーブ添加物を用いる試験電池(実施例1及び2)は、0.25アンペア負荷の間欠放電試験について、比較電池(モレキュラーシーブ添加物なし)に比べて耐用年数の増加を示した。この試験の結果は、8.74耐用時間(比較電池)から、9.28耐用時間(実施例1、モレキュラーシーブあり)及び9.29耐用時間(実施例2、モレキュラーシーブあり)への改善を示した。
【0053】
アノード混合物に少量のモレキュラーシーブを添加した結果としてのアルカリ電池についての耐用年数のこのような改善は、有意と考えられる。
【0054】
本発明は特定の実施形態に関して記載されているが、当然のことながら、本発明の概念から逸脱することなく他の実施形態が実行可能であるべきである。したがって、本発明は特定の実施形態に限定することを意図せず、むしろ、その範囲は請求項及びその等価物により反映される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のアノードを有する細長い円筒状アルカリ電池の断面切欠図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛粒子と水性アルカリ電解液とを含んでなるアノード混合物と、カソード活物質を含んでなるカソード混合物とを含んでなり、アノード混合物は、モレキュラーシーブをさらに含んでなることを特徴とする、アルカリ電池。
【請求項2】
前記モレキュラーシーブが、結晶性アルミノケイ酸塩材料を含んでなる、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記モレキュラーシーブが、本質的に結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩材料から成る、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項4】
前記結晶性アルミノケイ酸塩材料が、それを前記水性アルカリ電解液と混合する前には脱水された状態である、請求項2に記載のアルカリ電池。
【請求項5】
結晶性アルミノケイ酸塩材料が、それを前記水性アルカリ電解液と混合する前には少なくとも部分的に脱水された状態である、請求項2に記載のアルカリ電池。
【請求項6】
前記モレキュラーシーブが、前記アノード混合物の約0.007〜0.7重量パーセントを構成する、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項7】
前記結晶性アルミノケイ酸塩材料が、約3〜25オングストロームの平均孔径を有する、請求項2に記載のアルカリ電池。
【請求項8】
前記結晶性アルミノケイ酸塩材料が、アルミノケイ酸塩結晶構造内に化学結合した、ナトリウム、カルシウム、及びカリウムから成る群から選択される材料を含んでなる、請求項2に記載のアルカリ電池。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブは、二酸化チタン粒子を含んでなり、前記粒子内の孔は、均一な孔径のものである、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項10】
前記アノード混合物中の前記亜鉛粒子が、約30〜350ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載のアルカリ電池。

【図1】
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【公表番号】特表2009−522715(P2009−522715A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548062(P2008−548062)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050168
【国際公開番号】WO2007/083277
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】