説明

改良型太陽電池

有機感光性オプトエレクトロニックデバイスが開示される。このデバイスは、光に露出されると電圧を発生させることができる薄膜結晶有機オプトエレクトロニックデバイスであって、第1の電極上に第1の有機物層を蒸着する段階と、第1の有機物層上に第2の有機物層を蒸着する段階と、第2の有機物層上に封止層を蒸着してスタックを形成する段階と、スタックをアニーリングする段階と、最後に第2の有機物層上に第2の電極を蒸着する段階と、を有する方法により作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、有機感光性オプトエレクトロニックデバイスに関わり、より詳しくは、例えばアニーリングによって作成された有機太陽電池などの薄膜結晶有機光電池デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニックデバイス(optoelectronic device;光電子デバイス)は、電磁放射を電子工学的に発生または検出するための材料、あるいは周囲の電磁放射から電気を発生させる材料の光学的および電子的特性に依存する。
【0003】
感光性オプトエレクトロニックデバイスは電磁放射を電気に変換する。光電池(PV)デバイスとも呼ばれる太陽電池は、特に電力を発生させるのに使用される一種の感光性オプトエレクトロニックデバイスである。PVデバイスは、日光以外の光源から電気エネルギーを発生させることができるが、例えば、照明、加熱などを提供したり、あるいは計算機、ラジオ、コンピュータ、または遠隔モニターなどの回路構成やデバイスまたは通信機器を動かしたりするための負荷を消費する電力駆動に使用されうる。これらの発電用途は、太陽または他の光源からの直接照明が利用可能でないときに、動作が続けられるように、または特定の用途を必要とするPVデバイスの電力出力を均衡させるために、電池または他のエネルギー蓄積装置の充電もしばしば必要とする。ここで使用される「抵抗負荷」という用語は、何らかの電力消費または電力蓄積をする回路、デバイス、機器、またはシステムのことを言う。
【0004】
他のタイプの感光性オプトエレクトロニックデバイスは光伝導体電池である。この機能においては、信号検出回路構成が、光の吸収による変化を検出するためにデバイスの抵抗をモニターする。
【0005】
他のタイプの感光性オプトエレクトロニックデバイスは光検出装置である。動作においては、光検出装置は、その光検出装置が電磁放射にさらされ、バイアス電圧をかけられている時に生じる電流を測定する電流検出回路に関連付けて使用される。ここに説明される検出回路は、バイアス電圧を光検出装置に供給して、光検出装置の電磁放射に対する電子応答を測定できる。
【0006】
これらの3種類の感光性オプトエレクトロニックデバイスは、以下で定義されるような整流接点が存在しているか、またデバイスが、バイアスまたはバイアス電圧としても知られている外部印加電圧で操作されているかどうか、によって特徴付けることができる。光伝導体電池は整流接点を持たず、通常バイアスで操作される。PVデバイスは、少なくとも1つの整流接点を持ち、バイアスなしで操作される。光検出装置は、少なくとも1つの整流接点を持ち、大抵はバイアスで操作されるが、しかしいつもそうではない。原則として、光電池は回路、デバイスまたは機器に電力を提供するが、検出回路構成、または検出回路構成からの情報出力を制御するための信号または電流を供給しない。対照的に、光検出装置または光伝導体は、検出回路構成、または検出回路構成からの情報出力を制御するための信号または電流を提供するが、回路構成、デバイスまたは機器に電力は提供しない。
【0007】
伝統的に、感光性オプトエレクトロニックデバイスは、例えば結晶、多結晶、アモルファスシリコン、ガリウム砒素、テルル化カドミウムなどのような多くの無機半導体で構築されてきた。ここでは、「半導体」という用語は、電荷キャリアが熱または電磁的励起により誘起される時に電気を通すことができる材料のことを言う。「光伝導性」という用語は、一般に、電磁放射エネルギーが吸収され、それによってキャリアが材料における電荷を伝導、すなわち輸送できるように電荷キャリアの励起エネルギーに変換される過程のことを言う。「光伝導体」および「光伝導性材料」という用語は、ここでは、電磁放射を吸収する特性がその生成電荷キャリアを生成するように選ばれた半導体材料のことを言うものとして使用される。
【0008】
PVデバイスは、入射する太陽出力(solar power)を有用な電力に変換できる効率によって特徴付けることができる。結晶またはアモルファスのシリコンを利用するデバイスが商業利用を支配し、いくつかが23%以上の効率を達成してきた。しかしながら、効率的な結晶ベースのデバイス、特に大きい表面積のものは、大幅な効率低下という不具合なしに大きな結晶を作ることの本来の問題によって、生産することが難しく、高価である。他方で、高効率アモルファスシリコンデバイスは、依然として安定性に関する問題を被っている。今日の市販のアモルファスシリコン電池は4から8%の安定効率を有している。より最近の努力は、経済的製造コストに対し許容できる光電池変換効率を達成するために有機光電池の使用に焦点を合わせてきた。
【0009】
PVデバイスは、標準の照度条件(すなわち、1000W/m、AM1.5のスペクトル照度である標準試験条件)の下で、光電流かける光電圧の最大の積としての最大の電力発電のために最適化できる。標準の照射条件下におけるそのような電池の出力変換効率は、以下の3つのパラメータ、すなわち(1)ゼロバイアス下における電流、すなわち短絡電流ISC、(2)開回路状態下における光電圧、すなわち開回路電圧VOC、および(3)フィルファクタffに依存する。
【0010】
ここに使用されるように、また一般に、当業者に理解されるように、第1の「最高占有分子軌道」(HOMO)エネルギー準位または「最低非占有分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、この第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位により近いならば、第2のHOMOエネルギー準位または第2のLUMOエネルギー準位「より高い」、あるいは「より低い」。イオン化電圧(IP)は真空準位に対して負エネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値(より小さい負のP)を持つIPに対応している。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値(より小さい負のEA)を持つ電子親和力(EA)に対応している。従来のエネルギー準位図式では、真空準位が最高位にある状態で、材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位より高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位よりも、上記のような図式の最高位の、より近くに現れる。
【0011】
有機材料の場面においては、「ドナー」及び「アクセプタ」という用語は、2つの接しているが異なった有機材料のHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギー準位の相対位置のことを言う。これは、無機の場面におけるこれらの用語の使用と対照的であって、「ドナー」および「アクセプタ」は、無機のn型層およびp型層をそれぞれ形成するのに利用されうるドーパントの型のことを言う。有機の場面では、もし、他の材料に接する1つの材料のLUMOエネルギー準位がより低いならば、その材料はアクセプタである。そうでなければ、それはドナーである。外部バイアスがないときに、ドナー−アクセプタ接合がアクセプタ材料側に移動し、正孔がドナー材料側に移動することがエネルギー的に好ましい。
【0012】
有機半導体の重要な特性はキャリア移動度である。移動度は、電界に対応して電荷キャリアが導電性材料を通って動くことができる容易さを測定する。有機感光性デバイスの場面では、高い電子移動度に起因して優先的に電子が伝導する材料を含む層を、電子輸送層またはETLと言うことができる。高い正孔移動度に起因して優先的に正孔が伝導する材料を含む層を、正孔輸送層またはHTLと言うことができる。アクセプタ材料がETLであり、ドナー材料がHTLであることが望ましいが、必ずしもその必要性はない。
【0013】
従来の無機半導体PV電池は内部場を構築するのにp−n接合を使う。TangらによりAppl. Phys Lett. 48, 183 (1986年)で報告されているような初期の有機薄膜電池は、従来の無機PV電池に使われていたのと類似のヘテロ接合を有している。しかしながら、現在では、p−n型接合の構築に加えて、ヘテロ接合のエネルギー準位オフセット(energy level offset)も重要な役割を果たすものと認められる。
【0014】
有機D−Aヘテロ接合においてオフセット(offset)されたエネルギー準位は、有機材料中での光生成過程の基本的性質に起因した有機PVデバイスの動作に重要であると考えられる。有機材料の光学励起の下に、局部的なフレンケル(Frenkel)または電荷伝達励起子(charge-transfer exciton)が生成する。電気的検出または電流発生が起こるように、束縛励起子はそれらの構成成分の電子と正孔に解離されなければならない。そのような過程は内部の(built-in;ビルトインの)電界によってもたらされうるが、有機デバイスにおいて通常見られる電界(F〜106V/cm)での効率は低い。有機材料における最も効率的な励起子解離はドナー−アクセプタ(D−A)界面で起こる。そのような界面では、低イオン化ポテンシャルを持ったドナー材料が高電子親和性を持ったアクセプタ材料とヘテロ接合を形成する。ドナー材料とアクセプタ材料のエネルギー準位の配置に応じて、励起子の解離はそのような界面においてエネルギー的に好ましくなることができ、アクセプタ材料中の自由電子ポーラロン(polaron)とドナー材料中の自由正孔ポーラロンを引き起こす。
【0015】
有機PV電池は、伝統的なシリコンベースのデバイスと比べると、多くの潜在的利点を有する。有機PV電池は軽量で、材料使用の際に経済的であり、そして柔軟なプラスチック箔などの低価格基板上に堆積(蒸着)することができる。しかしながら、いくつかの有機PVデバイスは、通常、比較的低い外部量子効率を有し、1%あるいはそれ未満のオーダーである。これは、一部で、本質的な光伝導過程の二次の性質のためであると考えられる。すなわち、キャリア生成は励起子の発生、拡散、および電離作用、あるいは収集を必要とする。これらの過程のそれぞれに関連している効率gが存在する。以下の通り添字を使用する:出力効率に対するP、外部量子効率に対するEXT、光子吸収に対するA、拡散に対するED、収集に対するCC、および内部量子効率に対するINT。この記法を使用して、以下の通り表せる。
【0016】
【数1】

【0017】
励起子の拡散長さ(L)は、通常、光吸収長さ(〜500Å)よりはるかに小さく(L〜50Å)、複数のまたは高度に折り重ねた界面を持った、厚く、そのため抵抗のある電池、あるいは低い光吸収率を持った薄い電池を使用して、その間で、交換を必要とする。これまで、これらの提案は、どれも、総合的な電池性能、特に高い照度における大きな改善につながっていない。電池性能を増加させるために、材料とデバイスの構成では、量子収率を高め、その結果、出力変換効率を高められことが望ましい。
【0018】
通常、有機薄膜における励起子を形成するために光を吸収するとき、一重項励起子が形成される。項間交差(intersystem crossing)の機構により、一重項励起子は三重項励起子に減衰(decay)しうる。この過程において、より低い効率をデバイスにもたらすことになるエネルギーは失われる。もし、項間交差からのエネルギー損失がなければ、三重項励起子は一重項励起子を発生させるよりも長い寿命、従って長い拡散長さを一般に持つので、三重項励起子を発生させる材料を使用することが望ましいであろう。
【0019】
光活性領域における有機金属材料の使用により、本発明のデバイスは効率的に三重項励起子を利用できる。一重項−三重項を混合することが有機金属化合物に対して非常に強力であるので、吸収が一重項基底状態から直接に三重項励起状態への励起に関わり、一重項励起状態から三重項励起状態への遷移に関わる損失を排除できることを、我々は見出した。三重項励起子の、一重項励起子に比べて長い寿命と拡散長さは、デバイス効率を犠牲にすることなくドナー−アクセプタヘテロ接合に三重項励起子が達するように、より長い距離を拡散させることができるので、より厚い光活性領域の使用を許容する。
【0020】
ここで使用される「有機」という用語は、重合体材料と、さらに有機光電デバイスを製造するのに使用できる小分子有機材料をも含んでいる。「小分子」とは、重合体でないいかなる有機材料のことをも指し、また「小分子」は実際にはかなり大きいこともある。小分子は、状況によっては、繰り返し単位を含むことができる。例えば、置換基として長鎖アルキル基を使用することは、「小分子」類から分子を取り外さないことである。小分子は、例えば重合体骨格上のペンダント基としてまたは骨格の一部として、重合体類に組み入れることもできる。小分子は、コア部分に構築された一連の化学殻から成るデンドリマー(dendrimer)のコア部分としても機能できる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性または燐光性の小分子放出源とすることができる。デンドリマーは「小分子」であることが可能で、また現在OLEDの分野で使用されているすべてのデンドリマーが小分子であると考えられる。
【0021】
ここで使用される「上部」は基板から最も遠いこと意味し、一方、「下部」は基板に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有するデバイスに対して、下部電極は基板に最も近い電極であり、一般的に作製される最初の電極である。下部電極は、基板に最も近い下面と基板からより遠い上面の、2つの表面を有する。第1の層が第2の層の「上に配置される」状況では、第1の層は基板からより遠くに配置される。第1の層が第2の層に「物理的に接触する状態」であると特定されない場合には、第1の層と第2の層との間には他の層が存在できる。例えば、様々な有機物層が中間に存在していても、カソードがアノードの「上に配置される」ものとして記述できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明によれば、改良されたデバイス処理技術により、従来通りに作製されたデバイスと比較して改良された出力変換効率を有する有機PV電池の構築が可能になる。
【0023】
本発明は、改良された出力変換効率を有する有機ベースの太陽電池を作成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらのPVデバイスは、アノード層、第1の有機物層(有機正孔輸送(ドナー型)層)、第2の有機物層(電子輸送層(アクセプタ型))、およびカソードを有する。このデバイスは、好都合に、ETLとカソード、および/または、アノードとHTLの間に、1つ以上の励起子障壁層(EBL)をも有している。
【0025】
この有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを作るこの方法は、
(a)第1の電極の上に第1の有機物層を蒸着する段階と、
(b)第1の有機物層の上に第2の有機物層を蒸着する段階と、
(c)第2の有機物層の上に封止層を蒸着してスタック(stack)を形成する段階と、
(d)スタックをアニーリングする段階と、
(e)第2の有機物層の上に第2の電極を蒸着する段階と、を有し、
前記デバイスは、光に露出されると、電圧を発生させることができる。
【0026】
改良された光電池性能を有する有機PVデバイスを提供することが本発明の目的である。この目的を達成するために、本発明は、高い外部量子効率で動作できる有機PVデバイスを提供する。
【0027】
本発明の他の目的は、小さな分子量の材料を使用してバルクの(bulk;大量の)ヘテロ接合を作る方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
上記の、そして他の本発明の特徴は、添付の図面に関連して採用された模範的実施形態についての以下の詳細な説明から、容易に一層明らかとなるであろう。
【0029】
有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを提供する。本発明の実施形態による有機デバイスは、例えば、入射する電磁放射からの使用可能な電流を発生させる(例えばPVデバイス)ために、または入射する電磁放射を検出するために使用できる。本発明の実施形態は、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間の光活性領域を有することができる。光活性領域は、電磁放射を吸収して電流を発生させるために解離可能な励起子を発生させる感光性デバイスの部分である。有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、入射する放射がデバイスによって吸収されることを可能にするために、少なくとも1つの透明電極を有することもできる。幾つかのPVデバイス材料と構成については、参照として全体がここに組み入れられている米国特許第6,657,378号明細書、米国特許第6,580,027号明細書、および米国特許第6,352,777号明細書において説明されている。
【0030】
図6は有機感光性オプトエレクトロニックデバイス100を示す。図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。デバイス100は、基板110、アノード115、アノード平滑化層(smoothing layer)120、ドナー層125、アクセプタ層130、障壁層(blocking layer)135、およびカソード140を含むことができる。カソード140は第1導電層と第2導電層を持った複合カソードとすることができる。デバイス100は説明された層を順番に蒸着(堆積)することによって、作製することができる。電荷分離は、大部分が、ドナー層125とアクセプタ層130の間の有機ヘテロ接合において起こることが可能である。ヘテロ接合におけるビルトインポテンシャル(built-in potential;内部電位)は、ヘテロ接合形成のために接触する2つの材料間のHOMO−LUMOエネルギー準位差によって決まる。ドナー材料とアクセプタ材料間でオフセットされたHOMO−LUMOギャップは、ドナー/アクセプタ界面において、界面の励起子拡散長さの範囲で生成された励起子に対して電荷分離を容易にするような電界を作る。
【0031】
図6に示された層の特定の配列は単なる模範的なものであって、これに限定することを意図していない。例えば、いくつかの層(障壁層など)を省略できる。また、他の層(反射層、または追加のアクセプタ層およびドナー層など)を付加することができる。層の順序は変更できる。特定的に説明した配列以外の配列を使用できる。
【0032】
図6に示した簡単な層構造を非限定的な例によって説明する。また、本発明の実施形態は、広く様々な他の構造に関連して使用できることが理解される。説明された特定の材料と構造は、本質的には模範的でなものあり、他の材料と構造が使用できる。機能デバイスは、異なった方法で説明される様々な層を結合することによって実現でき、あるいは、設計、性能、およびコスト要因に基づいて層を完全に省略できる。明確に説明しなかった他の層を含めることもできる。明確に説明した材料以外の材料も使用できる。ここに提供された多くの例では、ただ一つの材料を有するものとして様々な層のことを説明するが、ホスト(host)とドーパントの混合物などの材料の組み合わせ、または、より一般的に混合物を使用できる、ということが理解される。また、層は様々なサブ層(sublayer;下位層)を持つことができる。ここにおける様々な層に対して与えられる名前は、厳密にそれに限定することを意図していない。光活性領域の一部でない有機物層、すなわち光電流に大きく寄与するフォトン(光子)を一般的に吸収しない有機物層のことを、「非光活性層」という。非光活性層の例は、EBLおよびアノード平滑化層を含む。他のタイプの非光活性層も使用できる。
【0033】
有機物層は、真空蒸着、スピンコーティング、有機気相蒸着、インクジェット印刷、および当技術分野で知られる他の方法を使用して作ることができる。
【0034】
本発明の実施形態による有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、PV、光検出装置または光伝導体として機能できる。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスがPVデバイスとして機能するときはいつも、光伝導性有機物層に使用される材料、およびその厚さは、例えば、デバイスの外部量子効率を最適化するように選択できる。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスが光検出装置または光伝導体として機能するときはいつも、光伝導性有機物層に使用される材料、およびとその厚さは、例えば、デバイスの感度を必要なスペクトル領域に対して最大にするように選択できる。
【0035】
基板は、必要な構造特性を提供する適切な何らかの基板とすることができる。基板は軟質(フレキシブル)または硬質とすることができ、平面状または非平面状とすることができる。基板は透明、半透明または不透明とすることができる。プラスチックおよびガラスが、好適な硬質基板材料の例である。プラスチックおよび金属薄片が好適なフレキシブル基板の材料の例である。必要な構造的な、および光学的な特性を得るように、基板の材料と厚さを選ぶことができる。
【0036】
有機感光性デバイスは、光が吸収されて励起状態を形成する少なくとも1つの光活性領域、またはその中で続いて電子と正孔に解離できる「励起子」、を有することとなる。励起子の解離は、通常、アクセプタ層とドナー層の並置により形成されたヘテロ接合において起こることになる。例えば、図6のデバイスでは、「光活性領域」はドナー層125とアクセプタ層130を含むことができる。
【0037】
アクセプタの例は、例えばペリレン類、ナフタリン類、フラーレン類、またはナノチューブ類(nanotubule)を含む。アクセプタの例は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシル・ビス・ベンズイミダゾール(3,4,9,10-perylenetetracarboxylic bis-benzimidazole)(PTCBI)である。あるいは、アクセプタ層は、参照として全体がここに組み入れられている米国特許第6,580,027号明細書で説明されているようなフラーレン材料から成ることができる。アクセプタ層に隣接するのは、有機ドナー型材料の層である。アクセプタ層とドナー層の境界は、内部的に発生する電界を作ることができるヘテロ接合を形成する。ドナー層のための材料は、フタロシアニン(pthalocyanine)、ポルフィリン(porphyrin)、またはその誘導体、あるいは銅フタロシアニン(pthalocyanine)(CuPc)などの、それの遷移金属錯体とすることができる。他の適切なアクセプタ材料とドナー材料も使用できる。
【0038】
小分子量と重合体の両方の有機光電池(PV)の出力変換効率ηは、ここ10年間で着実に増加してきた。この進歩は、強く結合した光生成励起子のための解離サイトとして機能するドナー−アクセプタ(DA)ヘテロ接合の導入の大いなる結果と考えられる。さらなる進歩は、重合体デバイスにおいてドナー材料とアクセプタ材料のブレンドの使用により実現された。スピンコーティング時の相分離は、ドナー材料とアクセプタ材料の相互貫入ネットワークを作ることによって、励起子拡散障壁を取り除くバルクの(bulk;大量の)ヘテロ接合に通じる。真空蒸着した小分子量材料の混合物を使用してバルクのヘテロ接合を実現することは、基板温度を上げることによって誘起される相分離が、薄膜表面を著しく粗くして短絡回路デバイスに通じるので、とらえどころがなかった。
【0039】
本発明の一実施形態においては、PV電池はアニーリング時に有機材料を封止するように金属キャップを使用して作成される。理論に縛られることを望むことなく、金属キャップ封止層は粗い面形態の生成を防止するように作用する一方で、相互貫入DAネットワークの形成を可能にすると考えられる。この方法により、同程度の二層デバイスに対して報告されている最も良好な値より50%高い出力変換効率がもたらされることが、今ここで発見された。バルクのヘテロ接合生成のための応力下のアニーリング工程が基本的かつ実用的な意味を有し、真空蒸着した小分子量の有機材料をベースとする低コストで高効率の薄膜有機太陽電池の作成を含んでいる、と考えられる。
【0040】
PVデバイスは、それらに負荷が接続されて光に照射されるとき、光生成された(photogenerated)電圧を作り出す。外部の電子負荷が全くない状態で照射されると、PVデバイスは可能な最大の(開回路)電圧V、つまりVOCを発生させる。電気接点(contact;コンタクト)がショートされている状態でPVデバイスが照射されるならば、最大の短絡電流、つまりISCが生成される。出力を発生させるのに実際に使用されるときには、PVデバイスは有限の抵抗負荷に接続され、電力出力が電流と電圧の積I×Vにより提供される。PVデバイスで発生する最大の総出力は、本来、積ISC×VOCを超えることができない。負荷値が最大の出力抽出のために最適化されると、電流と電圧はそれぞれImaxおよびVmaxの値を持つ。
【0041】
太陽電池の性能係数はフィルファクタffであり、以下と定義される。
【0042】
【数2】

【0043】
ここに、実際の使用においてはISCとVOCとは決して同時には得られないので、ffは常に1より小さい。それにもかかわらず、ffが1に近づくほど、デバイスは一層効率的となる。
【0044】
適切なエネルギーの電磁放射が半導体有機材料、例えば有機分子結晶(OMC)材料や重合体などに入射するとき、フォトンが吸収されて励起分子状態を作ることができる。これは、S+hν→Sのように象徴的に表される。ここで、SとSは、それぞれ規定状態と励起分子状態を示す。このエネルギー吸収は、π−結合となりうるHOMOにおける束縛状態からπ−結合となりうるLUMOへの電子の昇格(promotion)、あるいは同等にLUMOからHOMOへの正孔の昇格に関連している。有機薄膜光伝導体においては、発生した分子状態は励起子、すなわち擬似粒子として輸送される束縛状態の電子正孔対であると、一般に考えられる。励起子は、ジェミネート(geminate)再結合の前に、相当の寿命を持つことができる。このジェミネート再結合は、他の対からの正孔または電子との再結合とは対照的に、自身の電子と正孔がお互いに再結合する過程のことを言う。光電流を発生させるために、電子正孔対は、通常、2つの異なる接触有機薄膜間のドナー−アクセプタ界面で分離されるようにならなければならない。電荷が分離しなければ、それらは、入射光より低いエネルギーの発光による放射的に消滅(quench;消光)すること、または熱の生成による非放射的に消滅することとしても知られている、ジェミネート再結合過程で再結合しうる。これらの結果のどちらかは、感光性オプトエレクトロニックデバイスにおいては望ましくない。
【0045】
接点における電界または不均質性は、ドナー−アクセプタ界面で励起子を解離させるよりはむしろ消滅させ、電流に対しいかなる寄与ももたらさない。したがって、光生成励起子を接点から遠ざけることが望ましい。これは、接合に近い励起子の解離により解放された電荷キャリアを分離する多くの機会を、関連する電界が持つよう、接合に近い領域への励起子の拡散を制限する、という効果がある。
【0046】
かなりの量を占める内部的に発生する電界を作るため、通常の方法では、特に分子量子エネルギー状態の分配に対して適切に選択した導電特性を持つ材料の2つの層を並置する。これら2つの材料の界面は光電池ヘテロ接合と呼ばれる。伝統的な半導体理論では、PVヘテロ接合形成のための材料は、一般にn型またはドナー型、あるいはp型またはアクセプタ型のいずれかとして提供されてきた。ここで、n型とは、大多数キャリア型が電子であることを与える。これは、比較的自由なエネルギー状態に多くの電子を有する材料として見なすことができる。p型は、大多数キャリア型が正孔であることを与える。このような材料は、比較的自由なエネルギー状態に多くの正孔を有する。バックグラウンドのタイプ、すなわち光生成されないものについては、大多数キャリア濃度は、欠陥または不純物による意図的でないドーピング処理に、主に依存する。不純物の型と濃縮は、HOMO−LUMOギャップを呼ばれる最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)とのギャップの中で、フェルミエネルギーの値または準位を決定する。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等しいエネルギーの値により与えられる分子量子エネルギー状態の統計的な占有を特性付ける。LUMOエネルギーに近いフェルミエネルギーは、電子が支配的なキャリアであることを示す。HOMOエネルギーに近いフェルミエネルギーは、正孔が支配的なキャリアであることを示す。従って、フェルミエネルギーは伝統的な半導体の主要な特徴的な特性であり、原型的なPVヘテロ接合は伝統的にp−n界面である。
【0047】
「整流すること(rectifying)」という用語は、とりわけ、界面が非対称の伝導特性を有すること、すなわち界面が電子電荷輸送を好ましくは一方向にサポートすることを表す。「整流作用(rectification)」は、通常、適切に選択された材料間のヘテロ接合で起こる内部の電界に関連している。
【0048】
有機半導体の重要な特性はキャリア移動度である。移動度は、電界に対応して導電性材料を通って電荷キャリアが移動することができる容易さを測定したものである。自由キャリア濃度とは対照的に、キャリア移動度は、主に、結晶の対称性や周期性などの有機材料固有の特性により決まる。適切な対称性と周期性は、より高い正孔移動度を作り出すHOMOレベルのより大きな量子波動関数の重なり、または、同様に、より高い電子移動度を作り出すLUMOレベルのより大きな重なりを作ることができる。さらに有機半導体、例えば3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシル二無水物(3,4,9,10-perylenetetracarboxylic dianhydride)(PTCDA)などのドナーまたはアクセプタ特性は、より高いキャリア移動度と対立する可能性がある。例えば、化学的議論が、PTCDAに対するドナーまたはn型特性を提案する一方で、実験は、正孔移動度が電子移動度を数桁ほども超えていることを指摘し、正孔移動が重要要因となる。ドナー/アクセプタの評価基準からのデバイス構成予測が、実際のデバイス性能によって証明できない、という結果になる。有機材料のこれらの独特の電子物性のために、「p型」や「アクセプタ型」として、および「n型」や「ドナー型」としてそれらを指定するよりことは、むしろ、「正孔輸送層」(HTL)または「電子輸送層」(ETL)の術語が頻繁に使用される。この術語体系では、ETLは優先的に電子伝導的となり、HTLは優先的に正孔輸送的となるであるだろう。
【0049】
典型的な従来技術の光電池デバイス構成は有機二層電池である。二層電池では、電荷分離は有機ヘテロ接合において支配的に起こる。ビルトインポテンシャルは、ヘテロ接合を形成するために接触させた2つの材料間の、HOMO−LUMOエネルギーギャップにより決定される。HTLとETLの間のHOMO−LUMOギャップオフセットは、HTL/ETL界面付近の電界を作り出す。
【0050】
DA界面における励起子解離に基づくPV電池の外部量子効率は、ηEQE=η・ηED・ηCCである。ここに、ηは吸収効率である。拡散効率ηEDは再結合前にDA界面に達する光生成励起子の割合である。キャリア収集効率ηCCは、DA界面において励起子の解離で発生する自由キャリアが、対応する電極に達する確率である。通常、光吸収長さLのオーダーでの全厚さLを有する二層DAPV電池において、光干渉効果を無視すれば、η=1−exp(−L=L)>50%である。しかしながら、有機材料中の励起子拡散長さ(L)が、通常はLより1桁小さいので、光生成励起子の大きな割合が光電流発生のために使用されずに残る(図1(a))。これはηEQE、従ってこのタイプの平面接合電池のηに大幅な制限を与える。
【0051】
重合体PV電池において、バルクのヘテロ接合(図1(b))の導入で励起子拡散障壁が取り除かれた。バルクのヘテロ接合では、光生成励起子がその発生場所の距離L内にDA界面を常に見つけられるように、DA界面は高度に折り重ねられる。現在、最先端のバルクのヘテロ接合重合体PV電池は、最大3.5%の出力変換効率を有する。バルクのヘテロ接合は、ドナー材料とアクセプタ材料の溶解可能な種類の混合物をスピンコーティングすることによって、通常作られる。スピンコーティングおよび溶媒蒸発の際、ドナーとアクセプタの材料相は分離して複雑な相互貫入ネットワークを形成する。結果としての構造の形態は、スピン条件、溶剤、および相対的な物質濃度を変えることによって、制御される。そのようなシステムの挑戦により、微細な粒状形態を好む高いηEDと、粗い粒状性を好む高いηCCとを、積ηED・ηCCが最大になるようにバランスさせるべきである。
【0052】
小分子系に基づくバルクタイプのヘテロ接合を実現することは大体は失敗してきた。ドナー材料とアクセプタ材料の共蒸着によるバルクのヘテロ接合を実現する試みは、同じ材料を使用する最適化された二層デバイスで実現可能な出力変換効率を下回る出力変換効率を、デバイスにもたらす。混合材料中のフォトルミネセンス(photoluminescence)の強い消滅はηED〜100%を示す。したがって低い効率は不十分な電荷輸送の結果と考えられ、低キャリア収集効率ηCCをもたらす(図1(c))。もし、電荷収集が外部電圧の印加により助けられるならば、高い外部量子効率を得ることができる。
【0053】
高い基板温度での混合層の成長は相分離と結晶領域の出現につながる。しかしながら、この結晶化度の増加と可能性のある大きなLは、増加する薄膜の粗さの犠牲に被る。そのような構造のカソードとアノード接点間の短絡に通じるピンホールの高い密度が、デバイス製造を非実用的にする。混合層薄膜が、相分離を誘起するためのアニーリングされた蒸着場所であるときに、同じ問題が起こる。
【0054】
一実施形態では、本発明は、封止配置で混合層薄膜をアニーリングすることをベースにした小分子系において、バルクのヘテロ接合を作るための方法に関する。この場合、デバイスは適切なカソードを備え、そしてそれに続いてアニールされる。適切なカソードは、金属カソードを含んでいて、典型的に約1000Åの厚さを持つ。金属カソードはアニーリングの際に有機薄膜を圧し、形態的な緩和と、同時に起こる高密度のピンホールの生成とを防ぎ、一方で、有機薄膜のバルクにおいて相分離が起こって必要高さに折り重ねられたバルクのヘテロ接合をもたらす。好適な実施形態では、封止配置でのアニーリングは、結晶領域の生成を抑制するか、または防止する。例えば、そのようなアニーリングの際に形成されたいかなる結晶領域も、好ましくは0.5nmから100nmに、あるいは好ましくは0.5nm未満にサイズが制限されうる。
【0055】
本発明は、アノード層と、第1の有機物層(有機物正孔輸送層(ドナー型))と、第2の有機物層(電子輸送層(アクセプタ型))と、カソードと、を有する、改良された効率を持った有機PVデバイス、およびそのようなデバイスを作成するための方法を提供する。あるいは、第1の有機物層はアクセプタ型層であって、第2の有機物層はドナー型層でありうる。好都合に、デバイスは1つ以上の励起子障壁層(EBL)をも含む。さらに、デバイスは電荷伝達層(charge transfer layer)を有することができる。
【0056】
本発明は、少なくとも第1および第2の有機物層を組み込んだデバイスであって、先に示した有機薄膜PV電池を超える大幅に改良された出力変換効率を示すデバイスを提供する。このデバイスは、アノードの上に第1の有機物層を蒸着し、第1の有機物層の上に第2の有機物層を蒸着し、第2の有機物層の上に封止層を蒸着してスタックを形成し、スタックをアニーリングし、最後に、第2の有機物層の上に第2の電極を蒸着することによって作成される。スタックのアニーリングは、有機物層で相分離を誘起するために、十分な温度において十分な時間行われる。
【0057】
封止層はアニーリング工程の間にダメージを受けるか破壊しうる。そして、必要ならば、封止層の除去と、それに続いて第2の電極が第2の有機物層の上に蒸着される。封止層はアニーリング工程の間に、有機物層を封止できる何らかの適切な材料とすることができる。封止層の存在が表面粗さの進行を防ぐ一方で、それは混合された有機物層のバルク中の相分離(phase segregation)を妨げない。封止層に使用する好適材料は金属銀(Ag)およびBCP/Agを含む。封止層に使用するのに最も好適な材料は金属銀(Ag)である。
【0058】
第1の層が、第2の層の「上に配置」されるとして説明する状況では、第1の層は基板から、より遠くに配置される。第1の層が第2の層に「物理的な接触の下に」あることを特定しなければ、第1および第2の層の間に他の層が存在できる。例えば、間に様々な有機物層があるとしても、カソードはアノードの「上に配置される」として記述できる。
【0059】
アニーリング工程は、層の相分離を引き起こすのに適切な時間と温度で行われる。好適な実施形態では、アニーリングは約340Kから約600Kの温度で行われる。より好ましくは、アニーリングは約560Kの温度で行われる。好ましくは、アニーリング工程の時間は約5秒から約30分である。より好ましくは、アニーリング工程は約2分から約30分である。
【0060】
アニーリング工程は通常減圧下で実行される。使用される圧力は、好ましくは約10mTorr未満で、約1mTorr〜10mTorrが好ましく、より好ましくは1mTorrから10−10Torrである。アニーリングは機能的な雰囲気中で起こすことができる。機能的な雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気であり、窒素とアルゴンを含む。もし存在すればアニーリング温度で有機材料と反応するかもしれないオキシダントの存在を減少させるために、真空下または不活性ガス下でアニーリングすることが望ましい。1mTorr〜10mTorrの真空を実現するのには比較的安価な真空の技術を使用でき、そのため、この圧力範囲は、低コストとオキシダントをいくらか減少させることとを組み合わせるために好まれる。より良好な真空は、純粋な性能の見通しからは一層望ましいが、別途費用を必要とする可能性がある。
【0061】
アニーリング時に相分離が起きて、例えばCuPcやPTCBIなどの混合層からなる個々の光活性材料に富んだ領域をもたらす、ということが発見された。さらに、その領域のサイズが、アニーリング温度の上昇に伴って増加することが発見された。550Kでは、約20nmの領域サイズが見出だされる。交互にCuPcとPTCBIに富んだ領域をもたらすこのような相分離が図2(a)〜(d)に示されている。ここで、ITO/5000ÅCuPc:PTCBI(4:1)/1000ÅAgの層構造の断面SEM画像を、(a)成長直後の薄膜について示し、また(b)TA1=450K、(c)TA1=500K、(d)TA1=550Kでそれぞれ15分間アニーリングした薄膜について示す。成長直後の薄膜の断面(図2(a))は人為的な劈開(cleaving)工程以外に、いかなる形態的な特徴も示さない。
【0062】
有機物層の境界は内部的に発生する電界を作るヘテロ接合を形成する。HTLに好適な材料は、フタロシアニンまたはその誘導体、あるいはそれの遷移金属錯体である。銅フタロシアニン(CuPc)はHTLにとって特に好適な材料である。
【0063】
感光性オプトエレクトロニックデバイスに使用される電極または接点は、参照としてここに組み入れられている米国特許第6,352,777号明細書に示されているように、重要な考慮すべき事柄である。「電極」および「接点」という用語は、ここに使用される時には、外部回路に光生成出力を供給するための媒質、またはデバイスにバイアス電圧を供給するための媒質を提供する層のことを言う。すなわち、電極または接点は、有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの光伝導性活性領域と、ワイヤ、リード線、経路、あるいは外部回路に電荷キャリアを輸送する他の手段、または外部回路から電荷キャリアを輸送する他の手段の間にインターフェースを提供する。感光性オプトエレクトロニックデバイスにおいては、デバイス外部からの最大量の周囲電磁放射を、光伝導的に活性な内部領域に収容することが可能なことが望ましい。つまり、電磁放射が光伝導層に達しなければならず、その状況で、光伝導性の吸収によりそれを電気に変換できる。これは、少なくとも1つの電気接点が、入射する電磁放射を最少量で吸収し、最少量で反射すべきであることを、折々で決定付ける。すなわち、そのような接点は実質的に透明であるべきである。反対側の電極は、吸収されず電池を通り抜けた光が電池を通って反射されるように、反射材料とすることができる。ここで使用される材料の層または異種材料からなる一連のいくつかの層は、層や複数層が、関連波長の周囲電磁放射の少なくとも50%がその層や複数層を透過することを許容するとき、「透明である」と言われる。同様に、関連波長の周囲電磁放射のいくらかの透過を許容するが、それが50%未満であるような層は、「半透明である」と言われる。
【0064】
電極は金属または「金属代用材」からなることが好ましい。ここでは、「金属」という用語は、例えばMgなどの単体の純金属で構成された材料、また例えばMg:Agで表されるMgとAgのような2つ以上の単体の純金属から構成される材料であるところの合金の、両方を包含するものとして使用される。ここでは、「金属代用材」という用語は、通常の定義において金属でない材料のことを言うが、一定の適切な用途に必要な金属に似た特性を持つ。電極および電荷伝達層に一般的に使用される金属基板は、インジウムすず酸化物(ITO)、ガリウムインジウムすず酸化物(GITO)、亜鉛インジウムすず酸化物(ZITO)などの透明導電酸化物などの、ドーピングされた広いバンドギャップ半導体を含む。特に、ITOは、約3.2eVの光学バンドギャップを持ち、高濃度にドーピングされた縮退(degenerate)したn半導体であり、約3900Åを超える波長に対して透明である。他の適切な金属代用材は透明の伝導性重合体のポリアニリン(polyanaline)(PANI)とその化学的誘導体(relatives;関連物)である。金属代用材は、さらに、広く様々な非金属の材料から選択でき、その状況で、「非金属」という用語は、その材料に化学的に非結合形態の金属がないならば、広い範囲の材料を包含することができる。金属が、単独、または合金として他の1つ以上の金属との組み合わせで化学的に非結合形態で存在しているとき、金属は、その代わりの呼び方として、金属的な形態または「自由金属(free metal)」として存在している、と言うことができる。したがって、本発明の金属代替電極は、折々に「無金属」と言うことができ、その状況では、「無金属」という用語は、化学的に非結合形態の金属がない材料を包含することを明白に意味する。自由金属は、通常、金属格子中を介して電子伝導バンド内を自由に移動できる価電子の海からもたらされる金属結合の形態を持つ。金属代用材は金属成分を包含できる一方で、それはいくつかの理由で「非金属」である。それは純粋な自由金属でないし、自由金属の合金でもない。金属がその金属的形態で存在している時、電子伝導バンドは、種々の金属特性のうちでも、光放射のための高反射性と共に高い電気伝導率を提供する傾向がある。
【0065】
本発明の実施形態は、1つ以上の感光性オプトエレクトロニックデバイスの透明電極として、Parthasarathyらの米国特許第6,469,437号明細書および米国特許第6,420,031号明細書(「parthasarathy」と記す)に開示されているような非常に透明で非金属の低抵抗カソード、またはForrestらの米国特許第5,703,436号明細書に開示されているような高効率で低抵抗金属/非金属化合物カソード(「Forrest436」と記す)を含むことができる。それぞれのタイプのカソードは, 好ましくは、非常に透明で非金属の低抵抗カソードを形成するために銅フタロシアニン(CuPc)などの有機材料上に、または、高効率で低抵抗金属/非金属化合物カソードを形成するために薄いMg:Ag層上に、ITO層を蒸着するスパッタ段階を含んだ作製工程で作られる。Parasarathyは、ITO層を蒸着した有機物層の代わりに有機物層を蒸着したITO層が、効率的なカソードとして機能しないことを開示している。
【0066】
ここでは、「カソード」という用語は、以下の用法で使用される。周囲照射下で抵抗負荷に接続され、そして例えば太陽電池などの外部的に印加された電圧がない状態の、非スタックPVデバイスまたはスタックPVデバイスの単一ユニットにおいては、電子は、隣接する光伝導性材料からカソードに移動する。同様に、ここでは、「アノード」という用語は、照明下の太陽電池において、正孔が隣接する光伝導性材料からアノードに移動するように使用され、つまり逆の様式の電子移動と同等である。なお、これらの用語がここで使用される時、アノードとカソードは電極または電荷伝達層であることが可能なことに注意されたい。
【0067】
本発明の好適な実施形態では、スタックされた有機物層は、参照としてここに組み入れられている米国特許第6,097,147号明細書および米国特許第6,451,415号明細書、さらにPeumansら著、Applied Physics Letters2000年、76(2650−52)で説明されるような、1つ以上の励起子障壁層(EBL)を含んでいる。より高い内部および外部量子収率は、1つ以上のEBLを含め、解離界面の近くの領域に光生成励起子を閉じ込めて感光性の有機/電極界面での寄生励起子の消滅を防ぐことにより実現された。励起子が拡散しうる体積を制限することに加えて、EBLは、電極の蒸着の時に導入された物質に対する拡散障壁としても機能することができる。いくつかの状況では、EBLはピンホールを充填できる程度に厚く作ることができ、または有機PVデバイスを非機能的にしてしまう欠陥を短絡(ショート)することができる。したがって、EBLは、脆弱な有機物層を、電極が有機材料上に蒸着される時に作られたダメージから保護することの助けとなることができる。
【0068】
EBLは、それらの励起子ブロッキング特性を、励起子がブロックされる隣接の有機半導体より高いLUMO−HOMOエネルギーギャップをもつことから得ている、と考えられる。好ましくは、障壁層のエネルギーギャップは、少なくとも、励起子が閉じ込められている隣接層より高い2.3kTであり、さらに好ましくは、少なくとも4.6kTである。「k」はボルツマン定数、そしてTは温度(普通の環境に対しては約300K)である。4.6kT以上のエネルギー準位に対して、電子は、エネルギー障壁を登る約1%の確率を有する。したがって、閉じ込められた励起子はエネルギーを考慮してEBLに存在することが禁止される。EBLが励起子をブロックすることは望ましいが、EBLがすべての電荷をブロックすることは望ましくない。しかしながら、隣接するエネルギー準位の性質のために、EBLは必ず1つの符号(sign)の電荷キャリアだけをブロックすることになる。故意に、EBLは、2つの層、通常は有機感光性半導体層と電極や電荷伝達層との間に常に存在していることになる。隣接する電極または電荷伝達層は、文中ではカソードかアノードかのいずれかである。したがって、デバイスの与えられた位置のEBLの材料は、必要な符号のキャリアの、電極または電荷伝達層への輸送を駆り立てないように、選ばれることになる。適切なエネルギー準位配置は、電荷輸送の障壁が存在しないことを確実にして、直列抵抗の増加を防ぐ。例えば、カソード側のEBLとして使用される材料は、電子の望ましくないいかなる障壁をも最小化にされるように、隣接するETL材料のLUMOレベルに厳密に一致するLUMOレベルを持つことが望ましい。
【0069】
材料の励起子ブロッキング性質が固有の特性でないことを理解すべきである。所与の材料が励起子ブロッカーとして作用するかどうかは、隣接の有機感光性材料の相対的なHOMOおよびLUMOレベルに依存する。したがって、使用できるデバイスの状況を考えずに、孤立した化合物の種類を励起子ブロッカーとして認識することは可能でない。しかしながら、この技術分野における通常の当業者のここでの教示によれば、有機PVデバイスを構築するために選択された材料の組合せと共に使用される時に、与えられた材料が励起子障壁層として機能することになるかどうかを、特定できる。
【0070】
本発明の好適な実施形態では、EBLはETLとカソードの間に位置する。EBLのための好適な材料は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)(バソキュプロリン(bathocuproine)またはBCPとも呼ばれる)であって、約3.5eVのLUMO−HOMOの分離を持つと考えられるもの、あるいは、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリノエート)−アルミニウム(III)フェノレート(bis(2-methyl-8-hydroxyquinolinoato)-aluminum(III)phenolate)(AlqOPH)である。BCPは、隣接する有機物層からカソードに容易に電子を輸送することができる有効な励起子ブロッカーである。
【0071】
本発明の他の好適な実施形態では、EBLはアノードとHTLの間に位置する。このEBLのための好適な材料は、3,4ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸塩(3,4-polyethylene dioxythiophene:polystyrenesulfonate)(PEDOT:PSS)の薄膜を有する。アノード(ITO)とHTL(CuPc)の間へのPEDOT:PSS層の導入は、100%に近い生産歩留りに通じる(すなわち>50の測定された様々な厚さのデバイスに対していかなる短絡も観測されなかった)。我々はこれを、スピンコーティングされたPEDOT:PSS薄膜の、ITOを平面化する能力のためと考えるが、そうでなければ、その粗い面が薄い分子膜を通して短絡する結果となってしまうかも知れない。さらに、本発明の他の好適な実施形態は、2つのEBLを含むことができ、一方はETLとカソードの間に位置し、他方はアノードとHTLの間に位置する。
【0072】
EBL層は、3,4,9,10−ペリレントラカルボキシル・ジアンハイドリド(3,4,9,10-perylenetracarboxylic dianhydride)(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレントラカルボキシル・ジイミド(3,4,9,10-perylenetracarboxylic diimide)(PTCDI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシル−ビス−ベンズイミダゾール(3,4,9,10-perylenetetracarboxylic-bis-benzimidazole)(PTCBI)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボシキル・ジアンハイドリド(1,4,5,8-naphthalenetetracarboxylic dianhydride)(NTCDA)、およびそれらの誘導体を含む適切なドーパントでドーピングできるが、それらに限定されない。本発明のデバイスに蒸着されるBCPはアモルファスであることが考えられる。本発明の明確なアモルファスBCP励起子障壁層は薄膜再結晶を示しうる。そして、それは、特に強い光度下で急速に起こる。結果としての多結晶材料への形態変化は、電極材料の短絡、空洞、電極材料の侵入などの欠陥の可能性を有した低品質薄膜をもたらす。そのため、BCPなどのEBL材料のドーピング処理は、適切で比較的大きく安定した分子によりその効果を示し、EBL構造を安定させて形態変化を劣化する挙動を防げることが見出だされた。所与のデバイス中で電子を輸送しているEBLを、そのEBLの近くにLUMOエネルギー準位を持った材料によってドーピング処理することは、空間電荷の蓄積を作って性能を抑制するかも知れない電子トラップが形成されないようにすることを確実にする助けとなる、ということもさらに理解すべきである。さらに、比較的低いドーピング濃度が孤立しているドーパントサイトにおいて励起子発生を最小化することを理解すべきである。そのような励起子は、拡散することが周囲のEBL材料によって事実上禁止されているので、かかる吸収はデバイスの光変換効率を減少させる。
【0073】
代表的な実施形態は透明な電荷伝達層または電荷再結合層も有することができる。ここで説明したように、電荷伝達層が、頻繁に、しかし必ずしもそうでではないが、無機(しばしば金属)であり、そして光伝導的に活性にならないようにそれらを選ぶことができる、という事実によって、電荷伝達層はアクセプタ層およびドナー層と区別される。「電荷伝達層」という用語は、ここでは、電極と類似しているが、電荷伝達層は、オプトエレクトロニックデバイスの1つの小セクションから隣接する小セクションに電荷キャリアを届けるだけであるという点で電極と異なる層である、ということを言及するのに使われる。「電荷再結合層」という用語は、ここでは、電極と類似しているが、電荷再結合層が、直列の感光性デバイスの間の電子と正孔再結合を可能にし、1つ以上の活性層付近の内部の光学的な場の強さも高めることもできるという点では、電極と異なる層である、ことを言及するのに使われる。電荷再結合層は、参照として全体がここに組み入れられている米国特許第6,657,378号明細書で説明されているような、半透明の金属ナノクラスタ(metal nanocluster)、ナノ粒子、またはナノロッドから構成することができる。
【0074】
本発明の他の好適な実施形態では、アノード平滑化層がアノード層とドナー層の間に位置する。この層のための好適な材料は、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸塩(3,4-polyethylenedioxythiophene:polystyrenesulfonate)(PEDOT:PSS)の薄膜を有する。アノード(ITO)とドナー層(CuPc)の間へのPEDOT:PSS層の導入は、改良された生産歩留りに大いに通じることが可能である。我々は、これを、スピンコーティングされたPEDOT:PSS薄膜のITOを平面化する能力のためと考えるが、そうでなければ、その粗い面が薄い分子膜を通して短絡する結果となってしまうかも知れない。
【0075】
本発明のさらなる実施形態では、1つ以上の層が、次の層の蒸着前にプラズマで処理される。その層は、例えば軽度のアルゴンまたは酸素のプラズマで処理できる。この処理は直列抵抗を減少させるので、有益である。PEDOT:PSS層が、次の層の蒸着前に軽度のプラズマ処理にさらされるならば、特に有利である。
【0076】
有機光伝導体の高いバルク抵抗(bulk resistivity)は、これらの材料の比較的薄い膜を利用することを望ましくする。しかしながら、薄い感光層が、入射する放射の一層少ない部分を吸収することになり、その結果、薄い層の光伝導体の外部量子効率は厚い層の光伝導体よりも低くなりうる。しかしながら、ここで説明されたような薄い層の有機デバイスの外部量子効率は、デバイスの適切な幾何学的設計によりさらに高めることができる。これまで説明してきた実施形態の薄い光活性層に起因して、吸収層の有効厚さを増加させる手段を提供するデバイスの幾何学構成が望ましい。そのような構成の1つは、参照としてここに組み入れられている米国特許第6,198,091号明細書で説明されているようなスタックされたデバイスである。ここで使用される「スタック」、「スタックされた」、「多重セクション」、および「多重セル」という用語は、1つ以上の電極または電荷伝達層によって分離された光伝導性材料の複数の層を有するいくつかのオプトエレクトロニックデバイスのことを言う。「サブセル」という用語が今後使用されるときには、それは有機感光性オプトエレクトロニック構造のことを言う。サブセルが感光性オプトエレクトロニックデバイスとして個別に使用されるときには、それは、通常、電極の完全な組合せ、すなわち正極と負極を含んでいる。ここで開示されるいくつかのスタックされた構成では、隣接するサブセルが電極または電荷伝達層を共通に、すなわち共有して利用できる。他の場合では、隣接するサブセルは共通の電極または電荷伝達層を共有しない。したがって、サブセルは、各サブユニット(subunit)がそれ自身の独特の電極を有するか、隣接のサブユニットと共に電極または電荷伝達層を共有するかどうかにかかわらず、サブユニット構造を包含できる。ここでは、「セル(cell)」、「サブセル」、「ユニット」、「サブユニット」、「セクション」、および「サブセクション」という用語は、光伝導層または層の組合せ、および隣接する電極または電荷伝達層のことを言うのに、互換性を持って使われる。
【0077】
太陽電池のスタックされたサブセルは、外部の電気接続部分がサブセルを分離する電極に対して作ることを可能にする真空蒸着技術を利用して作製できるので、デバイスのそれぞれのサブセルは、太陽電池で発生する出力および/または電圧が最大化されるかどうかに応じて、並列または直列に電気的に接続できる。本発明のスタックされた太陽電池の実施形態のために達成できる改良された外部量子効率は、サブセルが直列に接続される時よりも実現すべき実質的に高いフィルファクタを電気的並列構成が可能にするので、スタックされた太陽電池のサブセルが電気的に並列に接続できる、という事実にも依っている。
【0078】
光伝導性有機材料の高い直列抵抗が直列配置におけるサブセルの高出力用途のための使用を抑制するにもかかわらず、例えば、高い電圧を必要としうるが、低電流のみ、従って低出力レベルでもよい液晶ディスプレイ(LCD)の動作のような、一定の用途がある。このタイプの適用に関して、スタックされ直列接続された太陽電池は、LCDに必要な電圧を供給するのに適切である。そのようなより高い電圧デバイスを作るために、太陽電池が電気的に直列接続されたサブセルから成る場合には、スタックされた太陽電池は、非効率性を減少させるようなほぼ同じ電流を各サブセルに発生させるように作ることができる。例えば、入射する放射が一方向のみに通り抜けるならば、スタックされたサブセルは、入射する放射に最も直接に露出され、最も薄い一番外側のサブセルによって、増加した厚みを持つことができる。あるいは、もしサブセルが反射面に重ねられるならば、元の方向および反射方向から各サブセルに入る全てを合わせた放射として計上されるように、個々のサブセルの厚さを調整できる。
【0079】
さらに、直流電力供給により多くの異なる電圧を生じさせるようにすることが望ましい。この用途のために、挿入する電極への外部接続部分は大いに有用である。従って、サブセルの組全体に亘って生じる最大電圧を提供できることに加えて、サブセルの選択されたサブセットから、選択された電圧をタップで口出し(tap)することによって本発明のスタックされた太陽電池の模範的実施形態を、単一の電源から複数の電圧を提供するのにも使用できる。
【0080】
本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは光検出装置として機能できる。この実施形態では、デバイスは、例えば、参照として全体がここに組み入れられている2003年11月26日に出願された、米国特許出願公開第10/723,953号明細書で説明されるような多層有機デバイスとすることができる。この場合、一般的に、分離された電荷の抽出を容易にするために外部電場が適用できる。
【0081】
デバイスの必要な領域に光学エネルギーを集束させるのにコーティングを使用できる。参照として全体がここに組み入れられている米国特許出願公開第10/857,747号明細書は、このようなコーティングの例を提供する。
【0082】
デバイスの効率を増加させるのに濃縮構成(concentrator configuration)を使うことができ、そこではフォトンを薄い吸収領域に多重に通過させる。参照としてここに組み入れられている「光学濃縮器を有する高効率的な多重反射感光性オプトエレクトロニックデバイス(Highly Efficient Multiple Reflection Photosensitive Optoelectronic Device with Optical Concentrator)」という発明の名称の米国特許第6,333,458号明細書(「458特許」と記す)では、高い吸収のための、また収集効率を増加させる光学濃縮器の使用のための光学幾何学構成の最適化によって感光性オプトエレクトロニックデバイスの光変換効率を高める構造設計を使用することにより、この問題に対処している。感光性デバイスのためのこのような幾何学構成は、反射性のキャビティまたは導波性の構造物中の入射する放射を捕獲することにより実質的に材料を通る光路を増加させ、その結果、光伝導性材料の薄膜を介した多重反射により再生光を増加させる。したがって、458特許に開示された幾何学構成は、バルク抵抗を実質的に増加させてしまうことなくデバイスの外部量子効率を高める。そのようなデバイスの幾何学構成に含まれているのが第1の反射層である。つまり、光学ミクロキャビティ干渉効果を防ぐためのあらゆる寸法において入射光の光学コヒーレンス長さより長くあるべき透明絶縁層、透明な絶縁層に隣接した透明な第1の電極層、透明電極に隣接した感光性のヘテロ構造、および反射性もある第2の電極、である。
【0083】
458特許は、効率的に集められ光伝導性材料を含んだキャビティに送られた電磁放射の量を増加させるためのウィンストン集光器(Winston collector)などの、光学濃縮器と結合するための、導波性デバイスの1つの反射面または外部側面のいずれかにおける開口(aperture)も開示している。模範的な非結像濃縮器は切断放物体(truncated paraboloid)濃縮器や鉢形(trough-shaped)濃縮器などの略円錐形濃縮器を有する。円錐形状に関しては、デバイスは、±θMAX(受入れの半分の角度)内の直径dの円形の入口開口部に入る放射を集めて、無視できる損失を持つ直径dの小さい方の出口開口に放射を指向し、いわゆる熱力学的限界に近づけることができる。この限界は与えられた画角に対する最大許容濃縮度である。円錐形濃縮器は、鉢形濃縮器より高い濃度率を提供するが、より小さな受入れ角度のためにジャーナル・ソーラー・トラッキング(diurnal solar tracking)を必要とする。(参照としてここに組み入れられているW. T. WelfordおよびR. Winston著、「High Collection Nonimaging Optics」、172〜175頁、Academic Press、1989年(以下、「WelfordとWinston」と記す)に倣って)
【0084】
効率的な有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを設計することにおいては、いくつかのガイドラインに留意すべきである。ほとんどの励起子解離が界面に起こると考えられるので、励起子拡散長さLが層厚Lより大きいか、または同程度であるようにすることが望ましい。もしLがLより小さいならば、多くの励起子が解離前に再結合しうる。光伝導性材料の全厚さが電磁放射の吸収長さ(1/α)のオーダーであることがさらに望ましく(ここにαは吸収係数である)、それにより太陽電池に入射する放射のほぼすべてが吸収されて励起子が作り出される。しかしながら、この厚さは、ヘテロ接合電界の程度と比較してあまり大きくはない筈なので、多くの励起子が無電界領域で発生する。電界は励起子の解離を助けるので、励起子が無電界領域で解離するならば、それはジェミネート再結合を経て、光電流に対しては何の寄付もしない。さらに電界は、電極/半導体界面で存在しうる。電極界面におけるこれらの電界は励起子消滅を促進することも可能である。その上、光伝導層は、有機半導体の高いバルク抵抗に起因して、できるだけ薄くして余分な直列抵抗を避けるべきである。
【0085】
他方で、励起子解離界面と隣接する電極の間の分離が増加するのに従って、界面付近の電界領域は、より大きな体積に亘ってより高い値を持つことになる、というのがもう一つの対抗する考えである。増加する電界強度により光吸収が増加するのに従って、より多くの励起子が発生することになる。また、より高い電界は、より速い励起子解離を促進することにもなる。
【0086】
η=3.6%を有する太陽電池を生産するためにCuPc/C60材料系が示されてきた。そしてそれは、ここで提示した方法を使用するさらなる改良の明白な候補である。Geens, W. ら著、「Organic Co-evaporated films of a PPV-pentamer and C60 : model systems for donor/acceptor polymer blends」、Thin Solid Films 403頁〜404頁、438頁〜443頁、(2002年)、およびTsuzuki, T. ら著、「The effect of fullerene doping on photoelectric conversion using titanyl phthalocyanine and a perylenepigment」、Sol. Energy Mater. Sol. Cells 61号、1〜8頁、(2000年)に同調して、C60を組み込んだ成長直後の混合層デバイスは変換効率のアプローチを示すが、最適化された二層系を超えないということを我々は見出している。これは、成長の間、純粋な芳香族の性質と、相分離の駆動力を促進するC60の高度な対称性形態と、に起因した実質的な相分離によるものと考えられる。
【0087】
本発明の模範的実施形態のために、デバイスを組み立て、実施例としてのデータを記録した。本発明の以下の実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0088】
[実施例]
[実施例1]
1500Å厚さで、透明で、電導性酸化インジウムすず(ITO)アノード(シート抵抗40Ω/□)で予め被覆されたガラス基板上にPV電池を堆積した。膜の蒸着のため真空システムにそれを移す直前に基板を洗浄した。有機材料は市販のものを得て、熱勾配昇華を利用する蒸着の前に浄化した。使用した光活性な材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、および3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシル・ビス・ベンズイミダゾール(PTCBI)であり、またバソキュプロリン(BCP)を接点緩衝層(contact buffer layer;コンタクトバッファ層)として使用した。高真空熱蒸発(ベース圧力10−7〜10−6Torr)によって、タングステン・ボートから室温の基板上に、有機物層を成長させた。シャドウマスクを通した金属カソードの蒸着はをこの後に行い、0.3mmと1mmの接点直径を得た。
【0089】
作成後、加熱ステージ、電気プローブおよび光アクセス用の窓を備え30mTorrに保持した真空容器に電池を移した。加熱ステージの加熱速度を15℃/minに固定した。電気的特徴付けは、電流−電圧(I−V)特性を得る半導体パラメータ分析器を使用して、アニーリングの際に実行した。インシチュ(in-situ)光電池出力効率測定のために、デバイスを、基板を介してAM1.0フィルタを装備した1000Wオリエルソーラシミュレータで照射した。外部量子効率を測定するために、400Hz(50%の負荷サイクル)で刻んだ可変波長光のモノクロビームを1mm径デバイス上に合焦させた。光電流を、刻み周波数を基準にしたロックインアンプを使用して測定した。
【0090】
図1(d)〜(e)における薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、アニーリングの時に厚さ1000ÅのAgでキャッピングをした効果を示す。層構造は、ITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(3:4)/100APTCBIであった。この場合の、PTCBIに対するCuPcの濃度は共蒸着による重量割合で3:4であった。この画像は、560Kで2分間のアニーリング後の有機物表面形態を示している。
【0091】
図1(d)および(e)では、アニーリング工程の際、金属によって薄膜をキャッピングせず、高密度のピンホール(〜8×10cm)と薄膜表面から突出する大きい結晶をもたらした。図1(f)では、アニーリングの際、有機物層を1000Å厚さのAgキャップでカバーした。画像撮影の前に粘着テープを使用してキャップを剥離した。その結果得られた有機薄膜はピンホールがなく、大きな(〜1μm)結晶領域を欠いており、金属層により構造変化が基本的な薄膜に起こらないことを示唆している。比較のため、従来の非アニーリングの二層構造、すなわち銀キャップを取り除いた後のITO/400ÅCuPc/400ÅPTCBI/1000ÅAgの表面形態を、図1(g)に示す。この画像の特徴は、純粋で平面的にスタックしたPTCBIの結晶領域に対応している。
【0092】
[実施例2]
図2は層構造ITO/5000ÅCuPc:PTCBI(4:1)/1000ÅAgの断面のSEM画像を、(a)成長直後の薄膜、また(b)TA1=450K、(c)TA1=500K、(d)TA1=550Kでそれぞれ15分間アニーリングした薄膜について示す。この画像は、相分離し、選択的にCuPcとPTCBIに富んだ領域を示し、この断面はアニーリング温度の増加に従ってサイズが増加する領域を表している。550Kでは、領域サイズは〜20nmと観測される。
【0093】
[実施例3]
20nmの領域サイズが図3に示したX線回折データによって確認されている。アニーリングで、斜方晶系α−CuPc相に対応する回折ピークが現れ、Θ=2.5°と12.5°の間の広範囲のアモルファスのバックグラウンド信号が減少している。ピークの広い幅は制限された結晶領域サイズを示す。550Kでアニーリングされた薄膜について、2Θ=6.7°と2Θ=12.2°でのピークのFWHM(半値全幅)を使用して、図2の観測と一致する(12±1)nmの領域サイズを計算した。これは、アモルファスマトリックス中の領域成長に関連した分子不揃いと大きなひずみによって回折ピークも広がるので、領域サイズに対する下限を表現している。ピーク幅に対する追加の潜在的寄与は、CuPcとPTCBIの豊富な相の、PTCBIとCuPcそれぞれによる残りのドーピング処理である。
【0094】
[実施例4]
混合層PV電池の性能における相分離の基本的な物理過程をより良く理解するために、ミクロモデルが必要である。この手法は、数値的に効率的で同時に現象論的に信頼でき、再結晶と粒成長を個別にシミュレートする方法を提供するので、我々は、セル構造オートマトン(cellular automata)を使用してそのようなモデルを実施した。簡潔には、N×N×N=Nのセルを含む体積を、単純立方格子の三次元の配列に分割する。成長方向としてz−方向(すなわち基板平面に対して垂直)を定義する。周期的境界条件はxおよびy−方向で適用される。構造の自由エネルギーは以下の通りである。
【0095】
【数3】

【0096】
ここで、jは全最近接に亘る合計、M(i)は場所iでの材料、EA,Bは分子AとBの間の分子接触に関連する自由エネルギーである。この理論体系では、材料Aのモル当りの凝集エネルギーはEcoh=3NA,Aであり、ここにNはアボガドロ数である。Ecohは蒸発エンタルピーΔHvapでもあり、これは熱重量分析で得ることができる。我々のシミュレーションでは、ただ2つの材料CuPc(ΔHvap(CuPc))=176kJ/モル)、およびPTCBIだけを使用している。ΔHvap(PTCBI)は未知であり、ほとんどの有機電子デバイスで使用される小分子有機材料が同様のΔHvapを持つので、EPTCBI=ECuPcと仮定する。さらに、我々は、
2ECuPc,PTCBI=ECuPc,CuPc=EPTCBI,PTCBI
と仮定する。
【0097】
格子は成長直後の混合構造を模倣するように初期化される。それに続いて、相分離は単一の変換規則、つまり2つの隣接する分子が位置を入れ換えることができる、という規則を使用してモデル化される。Rを、分子の入れ換えをセル単位で試行する割合とすると、入れ換える2つの分子のエネルギー障壁ΔEを乗り越え可能な試行の割合は、温度の関数R(T)=Rexp(−ΔE/kT)である。ここに、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。2つの分子の入れ換えに関連する活性化エネルギーは、分子をかなり変形する必要があるので、法外に高い。従って、実際の過程は、空孔(抜け殻)の存在を必要としており、それらの空孔(抜け殻)の生成に活性化エネルギーが依存する。
【0098】
図2(e)〜(h)に、混合層デバイスの界面形態に関するアニーリング温度TA1の効果を示す。乱数発生器を使用して生成した初期の構造(図2(e))は、1:1の混合物配合であると仮定する。これは、蒸着の間、いかなる顕著な相分離も起こらないと仮定する。(f)TA1=0.067Ecoh/k、(g)TA1=0.13Ecoh/k、および(h)TA1=0.20Ecoh/kでの、それぞれのアニーリングは、混合層デバイスの形態に劇的な影響を与え、それらは図2(a)〜(d)で観測される断面に対して著しい類似性持つ。相分離は、増加するTA1によって次第に厚く成長する純粋な材料の枝(branch)の発現につながる。励起子拡散効率ηEDは、枝が厚くなると減少するが、それらの存在は電荷収集効率ηCCを改善する。
【0099】
[実施例5]
アニーリング温度TA1の関数として、室温での外部量子効率ηEQE∝ηED・ηCCを測定することによって、励起子のこの形態変化および電荷輸送の効果を推論することができる。図4に挿入した図において、ITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(3:4)/100ÅPTCBI/1000ÅAgの層構造を持ったデバイスの作用スペクトルを、TA1の関数として示す。λ=690nmの波長で0.6%から19%まで、30倍のηEQEの増加が観測される。この増加は、CuPcおよびPTCBIの両方の吸収スペクトル全体で一定であり、単一成分だけでは確認できない。これは、ηEQEの増加が1つの材料特性の変化の結果ではなく、実際には、混合層全体の形態の変化に関連していることを裏付けている。
【0100】
[実施例5a]
図4は、ITO/400ÅCuPc/400ÅPTCBI/1000ÅAgの層構造を持った二層デバイス(黒塗りの正方形)、並びに、ITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(x:y)/100ÅPTCBI/1000ÅAgでx:yが1:2(白抜きの丸)、3:4(白抜きの三角)および6:1(白抜きの正方形)であるような層構造を持った混合層デバイスに対する、λ=632nmでのηEQEを示す。これらの測定値については、これらのセルを、続いて340Kと380K、次に420Kと540Kの間の20K毎、550K、および560Kでそれぞれ2分アニーリングし、アニーリング段階の度に室温に戻してηEQEを測定した。二層デバイスのアニーリングはηEQEを著しく改善せず、TA1>450Kでのアニーリングでさえ減少する結果となった。対照的に、すべての混合層デバイスに関しては、TA1>450K、最適のアニーリング温度TA1=540Kでのアニーリングで、ηEQEの著しい増加が観測された。達成できる最大のηEQEは混合層構造に明確に依存するが、一方で、ηEQE対アニーリング温度の特徴は、混合物配合によらずに同様の形状を有する。
【0101】
[実施例6]
表1は、アニーリング処理の関数としてのITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(6:1)/100ÅPTCBI/1000ÅAgの構造を持った混合層デバイスの室温の性能特徴を記載している。参考のために、二層デバイスの性能パラメータも示した。セルは7.8mW/cmの出力密度を持ったタングステンハロゲンランプで照射した。アニーリングの前に、混合層デバイスの短絡電流密度(JSC=15.5μA/cm)が二層の短絡電流密度(JSC=340μA/cm)より1桁以上小さく、η=(1.3±0.1)×10−2の低出力変換効率に通じる。TA1=520Kでのアニーリング後、JSC=190μA/cmであった。これは、同じ層構造(図4)を持ったデバイスのηEQEに対する結果と対照的になっており、その状況では、アニーリングされた混合層デバイスのηEQEが、成長直後の二層デバイスのそれに近づく。理論に縛られることなく、この見かけの矛盾は、ηEQE測定値と比べて、I−V特性の測定値の時に使用される一層高い光強度レベルの結果であると考えられる。0.26Vから0.1VへのVOCの低下は、JSCの増加を部分的にオフセットし、η=(6.5±0.4)×10−1%をもたらす。
【0102】
理論によって縛られることなく、VOCの低下は、アニーリング工程のために有機/Ag界面における不揃いの減少から起こる増加した抵抗によると考えられる。したがって、「封止した」Ag層を剥離して、それを120ÅBCP/1000ÅAg接点の蒸着により置き換えることで接点を交換し、それにより性能の改良を実現できる。この接点交換は増加したJSC=250μA/cmとVOC=0.3Vをもたらす(表1参照)。このデバイスにTA2=500Kで第2回めのアニーリングを行うと、今一度特性は改善され、JSC=880μA/cmとなる。VOC=0.44Vの開回路電圧も二層デバイスのそれ(VOC=0.33V)を上回る。接点交換されて二度アニーリングされた混合層デバイスの出力変換効率は、η=(1.5±0.1)%となる。これは、η=(0.75±0.1)%を持つ同じ全厚さの二層のものより2倍の改善となる。
【0103】
【表1】

【0104】
[実施例7]
実施例6で説明した接点交換方法は、105mW/cm(すなわち〜1sun)の強度を持つ標準AM1照射条件下での高出力変換効果を持った太陽電池を作るのに使用された。ITO/150ÅCuPc/440ÅCuPc:PTCBI(1:1)/100ÅPTCBI/1000ÅAgのデバイス層構造を、まずTA1=520Kで2分間アニーリングした。続いて接点を剥離し、150ÅBCP/1000ÅAg接点の蒸着に交換した。第2のアニーリング後の太陽電池性能特性を、TA2の関数として図5(a)に示す。最大効率は、TA2=460Kに対して、過去16年間に亘り、CuPc/PTCBIのPV「Tang」電池で実現された最高の効率(〜50%)を表すη=(1.42±0.07)%に達した。第2のアニーリング工程は、TA2=400Kで本質的に完結するので、電池改良につながるメカニズムは第1のアニーリング段階のものとは異なると考えられる。理論によって縛られることなく、第2のアニーリング工程の役割は、DA界面からHOまたはOなどの、励起子、および/または、電荷再結合のためのサイトを提供する汚染物質を取り除くことであると考えられる。第1のアニーリング後に空気に露出されたサンプルが第2回目のアニーリングをされた時、ηの類似の増加が観測された。空気に露出することはηの急速な減少の原因となり、予め露出した値の50%未満まで減少させる。ここで、予め露出したηは400Kまでアニーリングした後に回復する。DA混合層/BCP接点のいくらかの「形成」が第2の熱処理の間にも起こることが可能である。
【0105】
このデバイスの性能特徴の、入射する光強度への依存を図5(b)に示す。光電流は、図5(c)に示すように照射強度に線形依存性を有し、照射強度増加によるVOCの増加ははフィルファクタ(FF)の減少を相殺(オフセット)し、ηが照射強度にほとんど依存しないという結果になる。図5(c)では、また、電流−電圧特性を強度の関数として示す。−1Vバイアスでは、光電流密度は短絡条件のもとで得られるものの約2倍であった。理論によって縛られることなく、かけられたバイアスへの光電流の強い依存により、キャリア収集が結局ηを制限することが示唆されている、と考えられる。したがって、キャリア収集効率の最適化は、JSC、従ってηを改善することにつながる。
【0106】
105mW/cmAM1白色光照明による投光によって(白抜きの正方形)、およびその投光によらずに(黒塗りの正方形)測定した外部量子効率ηEQEを図5(d)に示す。比較のために、最適化されたITO/200ÅCuPc/200ÅPTCBI/150ÅBCP/Ag二層構造のηEQEも示した(白抜きの丸)。アニーリングされた混合層デバイスの「暗闇」ピークηEQE=28%は二層デバイスのηEQE=14%のピークの2倍である。白色光による投光におけるηEQEの減少は、再結合の確率を増加させる照射下でのキャリア濃度増加の結果であり、そして、バルクのヘテロ接合構造の複雑な折重なり中での空間電荷蓄積のために、電荷輸送を妨げる。
【0107】
要約すれば、我々は、真空蒸着した小分子量有機材料を使用してバルクのヘテロ接合PV電池を作成することを示してきた。この工程は、封止配置、つまり、昇温時の分子材料中に通常起こる形態的な緩和の際に応力緩和を防止する接点を用いた封止配置における混合層薄膜のアニーリングに依存している。走査電子顕微鏡、X線回折、および微視的相分離シミュレーションを使用してこの工程を分析した。アニーリング後の混合層デバイスに対する測定値は、それらの外部量子効率の劇的増加を示す。アニーリング時の接点特性の起こりうる劣化に対処するために、封止層キャップを取り除き、例えばBCP/Ag接点で交換することができる。2回目のデバイスのアニーリングにより、出力変換効率は二層デバイスを著しく上回る。
【0108】
以上のように、有機感光性オプトエレクトロニックデバイスとそれを作る方法をここで説明してきた。しかしながら、当業者ならば、明確に言及したもの以外の多くの修正および変更を、本発明の概念から実質的に逸脱することなく、ここで説明したデバイスと技術において成しうることが理解できるであろう。従って、ここに説明した本発明の形態が単なる模範的なものであって、本発明の範囲の制限を意図したものではない、というこを明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】様々なタイプの有機ドナー−アクセプタ有機光電池の概要図を示し、(a)は二層電池、(b)はバルクヘテロ接合電池、(c)は混合層電池である。さらにITO上の〜5000Å厚さのCuPc:PTCBI薄膜の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す。図1(d)では、薄膜を金属キャップがない状態でアニーリングし、白の矢印はいくつかのピンホールを示す。図1(f)では、薄膜の撮影前に除去される1000Å厚さの銀薄膜によってキャップしたものを示す。比較のために、図1(g)では、アニーリングなしのITO/400ÅCuPc/400ÅPTCBI/1000ÅAgの有機物表面のAgキャップ除去後のものを示す。全ての画像で、白の棒線は500nmを示す。
【図2】ITO上の5000Å厚さのCuPc:PTCBI(4:1)薄膜の断面における走査型電子顕微鏡画像を示す。図2(a)はアニーリングなしである。図2(b)は450Kで、(c)は500Kで、(d)は550Kで、それぞれ15分間アニーリングしたものを示す。下側の図は混合層PV電池の界面形態へのシミュレートされたアニーリング効果を示しており、そこでは、CuPcとPTCBIの界面を灰色の表面として示し、CuPcは黒で、PTCBIは「透明」状態で残している。成長直後または当初の構成を(a)に示す。(f)TA1=0.067Ecoh/k、(g)TA1=0.13Ecoh/k、および(h)TA1=0.20Ecoh/kでの、それぞれのアニーリング後の構成も示す。なお、上側の図における構造とシミュレートされた構造の間の類似性に注目されたい。
【図3】ITO上の5000Å厚さの薄膜のCu−Kα線を使用したブラッグ−ブレンターノ(Bragg-Brentano)X線回折像を示す。この薄膜は1000Å厚さのAgキャップで覆い、300K(アニーリングなし)、TA1=400K、450K、500K、および550Kでアニーリングした。走査を実施する前にAgキャップを取り除いた。CuPc結晶の屈折率を記載した。アモルファスバックグラウンドは、小さいX線角度において大きな湾曲を呈している。
【図4】ITO/400ÅCuPc/400ÅPTCBI/1000ÅAgの層構造を持った二層デバイス、並びに、ITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(x:y)/100ÅPTCBI/1000ÅAgでx:yが1:2、3:4および6:1であるような層構造を持った混合層デバイス、の様々な温度におけるアニーリング後の、室温の外部量子効率(ηEQE)を示す。これらのセルを、続いて340Kと380K、次に420Kと540Kの間の20K毎、550K、および560Kでそれぞれ2分アニーリングし、アニーリング段階の度に室温に戻してηEQEを測定した。ITO/100ÅCuPc/600ÅCuPc:PTCBI(3:4)/100ÅPTCBI/1000ÅAgの層構造を持ったデバイスの様々な温度でのアニーリング後の室温ηEQEを挿入した。このセルはアニーリングされ、図4のように測定された。
【図5】図5(a)は、第1のアニーリング(TA1=520Kでの)後にBCP/Ag層が蒸着された状況で、ITO/150ÅCuPc/440ÅCuPc:PTCBI(1:1)/100ÅPTCBI/150ÅBCP/1000ÅAgの層構造に対する第2のアニーリング温度TA2の関数としての、室温の出力変換効率η、開回路電圧VOC、およびフィルファクタFFを示す。図5(b)は、図5(a)と同じ層構造に対するTA2=460Kでの第2のアニーリング処理後の入射光強度Pincの関数としての室温でのη、VOC、およびFFを示す。図5(c)は、様々な入射出力レベルでの図5(b)のデバイスの室温での電流密度−電圧特性を示す。図5(d)は、図5(b)の混合層デバイスの外部量子効率ηEQEであって、105mW/cmAM1照明による投光によって(白抜きの正方形)、およびその投光によらずに(黒塗りの正方形)測定したものを示す。比較のために、最適化されたITO/200ÅCuPc/200ÅPTCBI/150ÅBCP/Ag二層構造のηEQEも示した(白抜きの丸)。
【図6】アノード、アノード平滑化層、ドナー層、アクセプタ層、障壁層、およびカソードを有する有機PVデバイスを示す。
【符号の説明】
【0110】
100 有機感光性オプトエレクトロニックデバイス
110 基板
115 アノード
120 アノード平滑化層
125 ドナー層
130 アクセプタ層
140 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを作る方法であって、
(a)第1の電極の上に第1の有機物層を蒸着する段階と、
(b)第1の有機物層の上に第2の有機物層を蒸着する段階と、
(c)第2の有機物層の上に封止層を蒸着してスタックを形成する段階と、
(d)スタックをアニーリングする段階と、
(e)第2の有機物層の上に第2の電極を蒸着する段階と、を有し、
前記デバイスは、光に露出されると、電圧を発生させることができることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の有機物層はアクセプタ層であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の有機物層はドナー層であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の有機物層の上に第3の有機物層を蒸着する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第3の有機物層は励起子(エキシトン)障壁層であることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
前記デバイスは少なくとも1つの結晶領域をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結晶領域は約0.5nmから約100nmであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2の有機物層の上に第3の有機物層を蒸着する段階をさらに有することを特徴とする請求項6の方法。
【請求項9】
アニーリングは約340Kから約600Kの温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アニーリングは約560Kの温度で行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アニーリングは約10mTorr未満の圧力で行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
アニーリングは機能的な雰囲気中で行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アニーリングは約400nmから約700nmの波長を持った光による照射によって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アニーリングは約5秒から約30分の間行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アニーリングは約15分間行われることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項16】
アニーリングは約2分の間行われることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項17】
請求項1の方法によって作製された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスであって、前記デバイスはアノード、カソード、およびアノードとカソードの間に配置された第1の有機物層を有し、第1の有機物層は、光に露出されると、電圧を発生させることができることを特徴とする有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって作成された有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項19】
外部出力変換効率が少なくとも約1.0%であることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスは従来方式で作製されたデバイスよりも少なくとも25%高い効率であることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
請求項1によって作製されたデバイスであって、電子輸送層、正孔輸送層、および励起子障壁層が、導波路を形成する2つの平行な反射平面の間に配置されることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
前記2つの反射面の1つは、光がデバイス上に入射することを可能にする開口を有することを特徴とする請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
反射面の平面に平行な方向から前記デバイスに光が入射することを可能にするように、2つの反射面の間に透明な開口を有することを特徴とする請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
スタックをアニーリングした後で第2の電極を蒸着する前に、封止層を取り除く段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
複数の感光性オプトエレクトロニック・サブセルから成るスタックされた有機感光性オプトエレクトロニックデバイスであって、少なくとも1つのそのようなサブセルが請求項1によって作製されることを特徴とするデバイス。
【請求項26】
有機感光性オプトエレクトロニックデバイスであって、
(a)第1の電極の上に第1の有機物層を蒸着する段階と、
(b)第1の有機物層の上に第2の有機物層を蒸着する段階と、
(c)第2の有機物層の上に封止層を蒸着してスタックを形成する段階と、
(d)スタックをアニーリングする段階と、
(e)第2の有機物層の上に第2の電極を蒸着する段階と、によって作成され、
前記デバイスは、光に露出されると、電圧を発生させることができることを特徴とするデバイス。
【請求項27】
第1および第2の層は、重合体および小分子を含むグループから選択された材料を有することを特徴とする請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
小分子のドナーとアクセプタの分子の相互貫入ネットワークによってバルクのヘテロ接合を有することを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項29】
請求項28に記載の有機電子デバイスであって、
a)第1の電極の上に第1の有機物層を蒸着する段階と、
b)第1の有機物層の上に第2の有機物層を蒸着する段階と、
c)第2の有機物層の上に封止層を蒸着してスタックを形成する段階と、
d)スタックをアニーリングする段階と、
e)第2の有機物層の上に第2の電極を蒸着する段階と、によって作成され、
前記デバイスは、光に露出されると、電圧を発生させることができることを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525010(P2007−525010A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517679(P2006−517679)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020476
【国際公開番号】WO2005/002745
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】