説明

改質エチレン系重合体及び改質エチレン系重合体組成物、並びに改質エチレン系重合体の製造方法

【課題】 充分な封着力を有すると共に開封時の開封も容易であり、且つ透明性にも優れた改質エチレン系重合体組成物を与える改質エチレン系重合体、及び改質エチレン系重合体組成物、それを用いたフィルム又はシート、積層体、並びに改質エチレン系重合体の製造方法の提供。
【解決手段】 エチレン系重合体とアクリル系単量体とをグラフト反応条件に付して得られた改質エチレン系重合体であって、JIS K7105に準拠して測定した、厚み30μmのフィルムの内部ヘーズが20%以下、且つ、JIS K7105に準拠して測定した、冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における20度鏡面光沢度の和が50%以下である改質エチレン系重合体、及び、該改質エチレン系重合体と、未改質オレフィン系重合体とを含有してなる組成物、該組成物からなるフィルム又はシート、積層体、並びに、グラフト共重合による改質エチレン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の樹脂からなる包装容器や包装袋等の易開封性シーラントとして用いたとき、それら樹脂に対して汎用的に、充分な封着力を有すると共に開封時の開封も容易であり、且つ透明性にも優れた改質エチレン系重合体組成物を与える改質エチレン系重合体、及び改質エチレン系重合体組成物、それを用いたフィルム又はシート、積層体、並びに改質エチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂容器本体を樹脂フィルム状蓋材で熱封着して包装するシールパック包装が、乳製品、菓子、果汁飲料等の飲食品や、電気・電子部品、工業部品等の包装に盛んに用いられており、樹脂包装袋と共に重要な地位を占めるに到っている。そして、それらの易開封性シーラントとしては、従来より溶液型接着剤やポリ酢酸ビニル等のホットメルト型接着剤、及び、エチレン−酢酸ビニル共重合体に粘着付与剤等を配合した組成物等が用いられているが、溶液型接着剤では溶剤を使用していることに伴う環境問題等の諸問題があり、又、ホットメルト型接着剤やエチレン−酢酸ビニル共重合体系組成物では、樹脂包装体の成形温度程度の高温で分解等を生じることから成形時にシーラント層を一体化する成形ができないという欠点があると共に、いずれも、易開封性に欠けるという問題や、耐熱性不足のために高温下で剥離してしまう等の封着性に欠けるという問題があった。
【0003】
一方、易開封性を有すると共に、封着力不足の解消を目的として、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等を用いたシーラントも各種提案されている。しかしながら、提案されるいずれのシーラントも、包装容器や包装袋等において多用されているオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂等の各種の樹脂に対して汎用的に、封着力と易開封性のバランス等において市場の要求を充分に満足させ得るには到ってはいないものであった。
【0004】
こうした問題を改良すべく、本願出願人は、オレフィン系重合体に芳香族ビニル系単量体をグラフト反応させて得られた改質オレフィン系重合体を主成分とする材料が好適であるとの認識に立ち、該改質オレフィン系重合体を主成分とする各種組成物について検討し、エチレン系重合体を水中に懸濁させた水性懸濁液に、ラジカル発生剤を溶解させたスチレン系単量体を加え、加熱下に攪拌してエチレン系重合体に含浸させた後、ラジカル発生剤の分解温度以上に昇温してグラフト反応させて得られた改質エチレン系重合体を用いた各種の組成物について、先に提案した(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
しかしながら、従来提案した改質エチレン系重合体は、スチレン系単量体を用いていることから、改質エチレン系重合体としての透明性が必ずしも十分ではなく、易開封性シーラントとして用いたときに、内容物が判別しにくくなって、用途が限定されてしまうという欠点があった。
【特許文献1】特開平9−241440号公報。
【特許文献2】特開平10−101857号公報。
【特許文献3】特開平11−323067号公報。
【特許文献4】特開2000−177080号公報。
【特許文献3】特開2001−151976号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、易開封性シーラントにおける前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、各種の樹脂からなる包装容器や包装袋等の易開封性シーラントとして用いたとき、それら樹脂に対して汎用的に、充分な封着力を有すると共に開封時の開封も容易であり、且つ透明性にも優れた改質エチレン系重合体組成物を与える改質エチレン系重合体、及び改質エチレン系重合体組成物、それを用いたフィルム又はシート、積層体、並びに改質エチレン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、アクリル系単量体を用いて特定の条件でグラフト反応に付して得られた改質エチレン系重合体が前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成したもので、即ち、本発明は、エチレン系重合体とアクリル系単量体とをグラフト反応条件に付して得られた改質エチレン系重合体であって、JIS K7105に準拠して測定した、厚み30μmのフィルムの内部ヘーズが20%以下、且つ、JIS K7105に準拠して測定した、冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における20度鏡面光沢度の和が50%以下である改質エチレン系重合体、及び、該改質エチレン系重合体と、未改質オレフィン系重合体とを含有してなる改質エチレン系重合体組成物、該改質エチレン系重合体組成物からなるフィルム又はシート、該改質エチレン系重合体組成物の層とポリオレフィン系樹脂の層とを含む積層体、並びに、エチレン系重合体とアクリル系単量体とを含む水性懸濁液を、加熱下に攪拌してアクリル系単量体をエチレン系重合体に含浸させ、次いで、ラジカル発生剤を添加し、攪拌してラジカル発生剤をエチレン系重合体に含浸させた後、ラジカル発生剤の分解温度以上に昇温してグラフト反応させる改質エチレン系重合体の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各種の樹脂からなる包装容器や包装袋等の易開封性シーラントとして用いたとき、それら樹脂に対して汎用的に、充分な封着力を有すると共に開封時の開封も容易であり、且つ透明性にも優れた改質エチレン系重合体組成物を与える改質エチレン系重合体、及び改質エチレン系重合体組成物、それを用いたフィルム又はシート、積層体、並びに改質エチレン系重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の改質エチレン系重合体は、エチレン系重合体とアクリル系単量体とをグラフト反応条件に付して得られた改質エチレン系重合体であって、JIS K7105に準拠して測定した、厚み30μmのフィルムの内部ヘーズが20%以下である改質エチレン系重合体である。
【0010】
ここで、改質エチレン系重合体に用いられるエチレン系重合体としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸〔尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルトリメトキシシラン等との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、分岐状又は直鎖状のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−ビニルトリメトキシシラン共重合体等のエチレン系樹脂、及び、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のエチレン系エラストマー等が挙げられ、これらのエチレン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
【0011】
これらのエチレン系重合体の中で、本発明においては、分岐状低密度エチレン単独重合体樹脂、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂等が特に好ましい。
【0012】
又、アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸エステル、及び、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、これらの中で、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0013】
尚、本発明の改質エチレン系重合体の改質に用いられる単量体としては、前記アクリル系単量体以外の他単量体が併用されていてもよく、その他単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の不飽和モノ或いはジハライド等を挙げることができる。これらの中で、芳香族ビニルが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0014】
本発明の改質エチレン系重合体は、前記エチレン系重合体100重量部に対して、前記アクリル系単量体5〜200重量部を用いて、好ましくは40〜150重量部を用いてグラフト反応条件に付して得られたものであり、アクリル系単量体がこの範囲未満では、改質エチレン系重合体を易開封性シーラントとして用いたときに封着力が強過ぎて易開封性を付与することが困難な傾向なり、一方、この範囲超過では、改質エチレン系重合体として均質性が損なわれ易い傾向となる。
【0015】
又、前記エチレン系重合体と前記アクリル系単量体とのグラフト反応条件としては、基本的には、従来公知のラジカル発生剤存在下或いは電子線照射下等での溶融混練法、溶液法、水性懸濁法等による方法を採り得るが、本発明においては、ラジカル発生剤存在下での水性懸濁法によるのが好ましい。
【0016】
このラジカル発生剤存在下での水性懸濁法について、具体的に述べれば、ラジカル発生剤としては、分解温度が40℃以上、更には50〜120℃であって、油溶性であるものが好ましい。分解温度が40℃未満のものでは、アクリル系単量体の重合が異常に進行して均質な改質重合体が得られにくい傾向となる。尚、ここで、分解温度とは、ベンゼン1リットル中にラジカル発生剤0.1モルを添加して10時間放置したときにラジカル発生剤の50%が分解するときの温度、所謂、10時間半減期温度である。
【0017】
そのラジカル発生剤としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド(53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(55℃)、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(59.5℃)、オクタノイルパーオキサイド(62℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(72.5℃)、o−メチルベンゾイルパーオキサイド(73℃)、ベンゾイルパーオキサイド(74℃)、シクロヘキサノンパーオキサイド(97℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(100℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(104℃)、ジ−t−ブチルジパーオキシフタレート(107℃)、メチルエチルケトンパーオキサイド(109℃)、ジクミルパーオキサイド(117℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(124℃)等の有機過酸化物、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(52℃)、アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(65℃)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(67℃)、アゾビスイソブチロニトリル(79℃)等のアゾ化合物等が挙げられ、これらのラジカル発生剤は2種以上が併用されてもよい。尚、括弧内の温度は分解温度である。これらの中で、アゾ系化合物が好ましい。
【0018】
尚、前記ラジカル発生剤の使用量は、前記アクリル系単量体及び必要に応じて用いられる他単量体の使用量100重量部に対して0.01〜10重量部程度とするのが好ましく、この範囲未満では反応が円滑に進まず、この範囲超過では改質重合体中にゲルが発生し易くなる傾向となる。
【0019】
本発明の改質エチレン系重合体において好適な水性懸濁グラフト反応条件としては、前記エチレン系重合体と前記アクリル系単量体、及び必要に応じて用いられる他単量体の所定量を含む水性懸濁液を、加熱下に攪拌してアクリル系単量体及び他単量体をエチレン系重合体に含浸させ、次いで、前記ラジカル発生剤の所定量を添加し、攪拌してラジカル発生剤をエチレン系重合体に含浸させた後、ラジカル発生剤の分解温度以上に昇温してグラフト反応させる方法である。
【0020】
ここで、エチレン系重合体とアクリル系単量体、及び必要に応じて用いられる他単量体の水性懸濁液は、エチレン系重合体の水性懸濁液に、アクリル系単量体及び他単量体を加えて攪拌するか、アクリル系単量体及び他単量体の水性懸濁液に、エチレン系重合体を加えて攪拌するいずれかの方法によって作製するのが好ましい。
【0021】
又、その水性懸濁液中におけるエチレン系重合体とアクリル系単量体及び他単量体の濃度は、水100重量部に対して5〜100重量部程度とするのが好ましく、安定な分散状態を保つために、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子、アルキルベンゼンスルホネート等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、或いは、酸化マグネシウム、燐酸カルシウム等の水不溶性の無機塩等の懸濁安定剤を、単独で又は併用して、水に対して0.001〜10重量%程度用いることが好ましい。
【0022】
又、エチレン系重合体へのアクリル系単量体及び必要に応じて用いられる他単量体の含浸は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは50〜90℃程度の加熱下で攪拌して、遊離の単量体が単量体全量の80重量%以下となる程度まで、通常は2〜8時間程度でなされる。
【0023】
アクリル系単量体及び必要に応じて用いられる他単量体をエチレン系重合体に含浸させた後、使用するラジカル発生剤の分解温度以上の温度での含浸である場合等必要に応じて、ラジカル発生剤の分解温度未満の温度まで、好ましくはラジカル発生剤の分解温度より5℃以上低い温度以下まで、冷却し、次いで、前記ラジカル発生剤を添加し、攪拌下にエチレン系重合体に含浸させる。このときのラジカル発生剤の添加は、従来公知のスチレン系単量体を用いた水性懸濁法におけるように用いる単量体に溶解させて添加するのでは、アクリル系単量体がスチレン系単量体に比してエチレン系重合体に含浸しにくいことから、アクリル系単量体がエチレン系単量体に十分に含浸する前にアクリル系単量体の単独重合が開始し、これらの集合体がフィッシュアイ等の異物となって存在することとなり、封着性を阻害したり、開封時にシーラント層の破壊等を引き起こすこととなる。そして、このアクリル系単独重合体の集合体の存在はフィルム表面の鏡面光沢度によって確認することができる。尚、その際のエチレン系重合体へのラジカル発生剤の含浸は、好ましくは室温〜100℃、更に好ましくは40〜90℃程度の範囲で、且つ用いるラジカル発生剤の分解温度未満の温度下で攪拌することによりなされる。
【0024】
又、グラフト反応は、一般的には、攪拌下、50〜150℃程度の温度、常圧〜10kg/cm2 程度の圧力で、2〜10時間程度でなされるが、その間の温度及び圧力は、一定である必要はない。
【0025】
尚、反応に用いられるエチレン系重合体は、粉粒状で用いられるが、平均粒径が1〜8mm、特には3〜7mmの粒子状であるのが好ましい。又、アクリル系単量体或いは他単量体のエチレン系重合体へのグラフト鎖長、及びアクリル系単量体の単独重合体或いは他単量体との共重合体における分子量調節のため、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等、或いは、一般にα−メチルスチレンダイマーと称される2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の連鎖移動剤が用いられてもよい。
【0026】
以上の製造方法により得られる本発明の改質エチレン系重合体は、グラフト重合に用いられたアクリル系単量体、或いは更に、必要に応じて用いられた他単量体のエチレン系重合体へのグラフト反応が進行すると共に、アクリル系単量体の単独重合体、或いは必要に応じて用いられた他単量体との共重合体がエチレン系重合体中に微細に分散した状態で生成し、JIS K7105に準拠して測定した、厚み30μmのフィルムの内部ヘーズが20%以下を示すものとなって、易開封性シーラント用として透明性の優れたものとなるのである。尚、同内部ヘーズは15%以下であるのが好ましく、10%以下であるのが特に好ましい。
【0027】
尚、本発明において、「JIS K7105に準拠して測定した、フィルムの内部ヘーズ」とは、JIS K7105に準拠して測定されるヘーズは、フィルム表面の凹凸等も込みにした光の拡散透過率として測定されるものであるのに対して、本発明において規定する「内部ヘーズ」は、フィルム表面にオイル等を塗布して表面凹凸の影響を除き、フィルム内部のみにおける光の拡散透過率として測定したものである。
【0028】
更に、本発明の改質エチレン系重合体は、JIS K7105に準拠して測定した、冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における20度鏡面光沢度の和が50%以下を示すものとなって、易開封性シーラント用として封着性に優れたものとなるのである。尚、この20度鏡面光沢度の和は、40%以下であるのが好ましい。
【0029】
本発明の改質エチレン系重合体は、通常、未改質オレフィン系重合体との組成物として、易開封性シーラントに好適に用いられる。その際の未改質オレフィン系重合体としては、例えば、前記改質エチレン系重合体に用いられるエチレン系重合体として前述したと同様のエチレン系樹脂及びエチレン系エラストマー等のエチレン系重合体、及び、プロピレン、1−ブテン等の炭素数3〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との共重合体、具体的には、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂等が挙げられる。これらの中で、本発明の改質エチレン系重合体組成物としては、エチレン系重合体が好ましい。
【0030】
又、その改質エチレン系重合体組成物における未改質オレフィン系重合体の含有割合は、改質エチレン系重合体100重量部に対して、1〜1,000重量部であるのが好ましく、5〜500重量部であるのが特に好ましい。
【0031】
又、その改質エチレン系重合体組成物には、更に、芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体とのブロック共重合体、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン/イソプレンブロック共重合体、及びそれらの水素添加物等の、所謂熱可塑性スチレン系エラストマー、及びその他のゴム、並びに、例えば、脂肪族系、芳香族系、脂肪族芳香族系石油樹脂及びそれらの水素添加物、天然ロジン、重合ロジン等のロジン系樹脂及びそれらの水素添加物、ポリテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂及びそれらの水素添加物、クマロンインデン系樹脂及びそれらの水素添加物等の粘着性付与剤等が含有されていてもよい。
【0032】
更に、改質エチレン系重合体組成物には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、可塑剤、顔料等の添加剤、充填材等が含有されていてもよい。これらの配合は、改質に供するエチレン系重合体に予め加えておくとか、未改質オレフィン系重合体に加えておくとか、組成物の製造時に加えるとかの外、改質エチレン系重合体の製造時に加える等の方法によってもよい。
【0033】
本発明の改質エチレン系重合体組成物は、従来公知の方法により、被着基材上にアンカーコート剤を介して又は介さずして、逐次押出ラミネート、サンドイッチ押出ラミネート、共押出ラミネートする方法、或いは、被着基材と該重合体組成物、及び、更に他樹脂等と共押出する方法、並びに、予めフィルム状とし被着基材に熱融着する方法等により包装袋において、又は、被着基材の最外層に積層させて、射出成形、中空成形、或いは、シートの熱成形等の成形法等により包装容器において、易開封性シーラントとして好適に用いられる。尚、その際のシーラントとしての厚みは、通常、5〜100μm程度である。
【0034】
尚、その被着基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の未延伸又は延伸フィルムやシート、それらの表面に印刷等が施された印刷フィルムやシート、及び容器等、並びに、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属の箔や板、紙等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、各実施例及び比較例において用いた改質エチレン系重合体(A)、未改質オレフィン系重合体(B)、及びその他成分(C)を、それぞれ以下に示す。
【0036】
<改質エチレン系重合体(A)>
A−1;下記製造例1の改質エチレン系重合体
製造例1
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに平均粒径2〜4mmの分岐状エチレン単独重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「LJ802」)粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル4kgとスチレン2kgの混合物を加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で4時間攪拌することにより、メタクリル酸メチルとスチレンをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。引き続いて、この懸濁系を室温付近まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル24gを添加し、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて50℃で4時間攪拌することにより、アゾビスイソブチロニトリルをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に90℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて105℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン単独重合体樹脂A−1を収率90%で得た。
【0037】
この改質エチレン単独重合体樹脂A−1の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは5g/10分であった。又、得られた改質エチレン単独重合体樹脂A−1をペレット化した後、35mm径の一軸押出機で溶融混練し、240℃に設定したTダイより押出して、厚み30μmの単層フィルムを成形し、そのフィルムについて、以下に示す方法で、内部ヘーズを測定したところ10%であった。又、冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における20度鏡面光沢度をそれぞれ測定し、その和を算出したところ5.7%であった。
<内部ヘーズ>
JIS K7105に準拠して、フィルム試験片表面にオイルを塗布して表面凹凸の影響をなくしてヘーズを測定した。
<20度鏡面光沢度>
JIS K7105に準拠して、フィルムの冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における鏡面光沢度をそれぞれ測定した。
【0038】
A−2;下記製造例2の改質エチレン系重合体
製造例2
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに製造例1で用いたと同じ分岐状エチレン単独重合体樹脂粒子8.4kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル3.6kgを加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で4時間攪拌することにより、メタクリル酸メチルをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。引き続いて、この懸濁系を室温付近まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル14.4gを添加し、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて50℃で4時間攪拌することにより、アゾビスイソブチロニトリルをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に80℃に昇温し、この温度で6時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン単独重合体樹脂A−2を収率94%で得た。この改質エチレン単独重合体樹脂A−2の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは10g/10分であった。又、得られた改質エチレン単独重合体樹脂A−2について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ5%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ20%であった。
【0039】
A−3;下記製造例3の改質エチレン系重合体
製造例3
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに平均粒径2〜4mmのエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「レクスパールRB3240」)粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル6kgを加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で4時間攪拌することにより、メタクリル酸メチルをエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂粒子中に含浸させた。引き続いて、この懸濁系を室温付近まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル24gを添加し、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて50℃で4時間攪拌することにより、アゾビスイソブチロニトリルをエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に90℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて105℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂A−3を収率92%で得た。この改質エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂A−3の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは8g/10分であった。又、得られた改質エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂A−3について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ3%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ35%であった。
【0040】
A−4;下記製造例4の改質エチレン系重合体
製造例4
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに平均粒径2〜4mmのメタロセン系触媒で重合されたエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「カーネルKS560T」)粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル6kgを加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で4時間攪拌することにより、メタクリル酸メチルをエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子中に含浸させた。引き続いて、この懸濁系を室温付近まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル24gを添加し、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて50℃で4時間攪拌することにより、アゾビスイソブチロニトリルをエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に80℃に昇温し、この温度で6時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−4を収率91%で得た。この改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−4の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは3g/10分であった。又、得られた改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−4について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ4%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ15%であった。
【0041】
A−5;下記製造例5の改質エチレン系重合体(比較例用)
製造例5
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに製造例1で用いたと同じ分岐状エチレン単独重合体樹脂粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル4kgとスチレン2kgの混合物にアゾビスイソブチロニトリル24gを添加した溶液を加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で6時間攪拌することにより、メタクリル酸メチルとスチレン、及びアゾビスイソブチロニトリルをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に90℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて105℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン単独重合体樹脂A−5を収率70%で得た。この改質エチレン単独重合体樹脂A−5の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは0.5g/10分であった。又、得られたエチレン単独重合体樹脂A−5について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ7%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ127%であった。
【0042】
A−6;下記製造例6の改質エチレン系重合体(比較例用)
製造例6
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに製造例4で用いたと同じエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、メタクリル酸メチル6kgにアゾビスイソブチロニトリル24gを添加した溶液を加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて60℃で6時間攪拌することにより、メタクリル酸メチル及びアゾビスイソブチロニトリルをエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に90℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて105℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−6を収率75%で得た。この改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−6の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは6g/10分であった。又、得られた改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−6について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ5%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ190%であった。
【0043】
A−7;下記製造例7の改質エチレン系重合体(比較例用)
製造例7
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに製造例1で用いたと同じ分岐状エチレン単独重合体樹脂粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、スチレン6kgにビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド15.6gとベンゾイルパーオキサイド9gを添加した溶液を加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて55℃で5時間攪拌することにより、スチレン及びビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドをエチレン単独重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に65℃に昇温し、この温度で7時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて110℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン単独重合体樹脂A−7を収率99%で得た。この改質エチレン単独重合体樹脂A−7の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは2.5g/10分であった。又、得られた改質エチレン単独重合体樹脂A−7について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ90%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ1.0%であった。
【0044】
A−8;下記製造例8の改質エチレン系重合体(比較例用)
製造例8
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤として第三燐酸カルシウム600gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6gとを入れて水性媒体とし、これに製造例4で用いたと同じエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、スチレン6kgにビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド15.6gとベンゾイルパーオキサイド9gを添加した溶液を加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、攪拌しながら徐々に温度を上げて55℃で5時間攪拌することにより、スチレン及びビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドをエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂粒子中に含浸させた。次いで、攪拌しながら1時間かけて徐々に65℃に昇温し、この温度で7時間攪拌してグラフト反応を行い、更に1時間かけて110℃に昇温し、この温度で3時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗して微粉状の副生非含浸重合体を除去し、粒子状の改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−8を収率99%で得た。この改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−8の、190℃で2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは2.5g/10分であった。又、得られた改質エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂A−8について、前述した方法で内部ヘーズを測定したところ90%であった。又、MD方向とTD方向における20度鏡面光沢度の和を算出したところ4.2%であった。
【0045】
<未改質オレフィン系重合体(B)>
B−1;分岐状低密度エチレン単独重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「ノバテックLC607」)
B−2;直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「ノバテックUF240」)
B−3;エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー(三井化学社製「タフマーA4085M」)
B−4;エチレン−プロピレン共重合体エラストマー(ジェーエスアール社製「EP02P」)
B−5;プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(日本ポリプロ社製「ノバテックFG4」)
【0046】
<その他成分(C)>
C−1;スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマー(旭化成社製「タフテックH1041」)
C−2;粘着付与剤(荒川化学社製「アルコンP115」)
C−2;粘着付与剤(荒川化学社製「アルコンP140」)
【0047】
実施例1〜12、比較例1〜11
改質エチレン系重合体(A)、未改質オレフィン系重合体(B)、及びその他成分(C)として、各々表1に示すものを用い、タンブラーにて混合した後、一軸押出機に供給し、210℃で溶融混練してストランド状に押出し、カッティングすることにより、ペレット状の易開封性シーラント用改質エチレン系重合体組成物を製造し、得られた各組成物を、35mm径の一軸押出機で溶融混練し、240℃に設定したTダイより押出して、厚み30μmの単層フィルムを成形した。
【0048】
得られた各フィルムについて、表面外観を目視観察にて評価し、結果を表1に示した。又、以下に示す方法でヘーズを測定し、結果を表1に示した。
<ヘーズ>
JIS K7105に準拠してヘーズを測定し、表中「外部ヘーズ」として表示した。更に、フィルム試験片表面にオイルを塗布して表面凹凸の影響をなくして同様にヘーズを測定し、表中「内部ヘーズ」として表示した。
【0049】
更に、得られた各フィルムを、コロナ放電処理した後、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)/ポリエチレン(厚み18μm)の2層積層体のポリエチレン側にアンカーコート剤を用いて、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/改質エチレン系重合体組成物の3層積層体を製造し、得られた各3層積層体について、その改質エチレン系重合体組成物側を、ハイインパクトポリスチレンシート(厚み300μm)、或いはポリエチレンテレフタレートシート(厚み300μm)、或いはポリエチレンシート(厚み300μm)、或いはポリプロピレンシート(厚み300μm)に、又は3層積層体同士(表中、「面々シール」と表記。)で、表1に示す温度でヒートシールしたときの剥離強度を以下に示す方法で測定し、結果を表1に示した。
<剥離強度>
熱板式ヒートシーラーを用い、表1に示す各温度で、圧力2kg/cm2 、時間1秒で、各樹脂シートに5mm幅で熱圧着し、その接着部を15mm長さでサンプリングし、インストロン型引張試験機を用い、JIS K6854に準拠して、その一端を予め剥離し、23℃において、接着幅方向に剥離速度300mm/分で剥離することにより180度剥離強度(積層体同士のヒートシールの場合には、T形剥離強度)を測定した。
【0050】
実施例13〜15、比較例12〜14
改質エチレン系重合体(A)、未改質オレフィン系重合体(B)、及びその他成分(C)として、各々表1に示すものを用い、タンブラーにて混合した後、一軸押出機に供給し、210℃で溶融混練してストランド状に押出し、カッティングすることにより、ペレット状の易開封性シーラント用改質エチレン系重合体組成物を製造し、得られた各組成物を35mm径の一軸押出機で溶融混練し、一方、分岐状低密度エチレン単独重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「ノバテックLF440HB」)を別の一軸押出機で溶融混練し、240℃に設定したTダイより共押出して、低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み15μm)/改質エチレン系重合体組成物(厚み15μm)の2層積層体を製造し、その低密度エチレン単独重合体樹脂側をコロナ放電処理した後、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)/ポリエチレン(厚み18μm)の2層積層体のポリエチレン側にアンカーコート剤を用いて、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/低密度エチレン単独重合体樹脂/改質エチレン系重合体組成物の4層積層体を製造し、得られた各4層積層体について、その改質エチレン系重合体組成物側を、ハイインパクトポリスチレンシート(厚み300μm)、或いはポリエチレンテレフタレートシート(厚み300μm)に、表1に示す温度でヒートシールしたときの剥離強度を測定し、結果を表1に示した。
【0051】
実施例16〜17、比較例15〜16
改質エチレン系重合体(A)、未改質オレフィン系重合体(B)、及びその他成分(C)として、各々表1に示すものを用い、タンブラーにて混合した後、一軸押出機に供給し、210℃で溶融混練してストランド状に押出し、カッティングすることにより、ペレット状の易開封性シーラント用改質エチレン系重合体組成物を製造し、得られた各組成物を35mm径の一軸押出機で溶融混練し、一方、分岐状低密度エチレン単独重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「ノバテックLF440HB」)を別の一軸押出機で溶融混練し、240℃に設定したTダイより共押出して、低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み15μm)/改質エチレン系重合体組成物(厚み10μm)/低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み5μm)の3層積層体を製造し、その低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み15μm)側をコロナ放電処理した後、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)/ポリエチレン(厚み18μm)の2層積層体のポリエチレン側にアンカーコート剤を用い、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/低密度エチレン単独重合体樹脂/改質エチレン系重合体組成物/低密度エチレン単独重合体樹脂の5層積層体を製造し、得られた各5層積層体について、その低密度ポリエチレン(厚み5μm)側を、ポリエチレンシート(厚み300μm)に、又は5層積層体同士(表中、「面々シール」と表記。)で、表1に示す温度でヒートシールしたときの剥離強度を測定し、結果を表1に示した。
【0052】
実施例18〜19、比較例17〜18
改質エチレン系重合体(A)、未改質オレフィン系重合体(B)、及びその他成分(C)として、各々表1に示すものを用い、タンブラーにて混合した後、一軸押出機に供給し、210℃で溶融混練してストランド状に押出し、カッティングすることにより、ペレット状の易開封性シーラント用改質エチレン系重合体組成物を製造し、得られた各組成物を35mm径の一軸押出機で溶融混練し、一方、分岐状低密度エチレン単独重合体樹脂(日本ポリエチレン社製「ノバテックLF440HB」)を別の一軸押出機で溶融混練し、更に、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(日本ポリプロ社製「ノバテックFG4」)を別の一軸押出機で溶融混練し、240℃に設定したTダイより共押出して、低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み15μm)/改質エチレン系重合体組成物(厚み10μm)/プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(厚み5μm)の3層積層体を製造し、その低密度エチレン単独重合体樹脂(厚み15μm)側をコロナ放電処理した後、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)/ポリエチレン(厚み18μm)の2層積層体のポリエチレン側にアンカーコート剤を用いて、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/低密度エチレン単独重合体樹脂/改質エチレン系重合体組成物/プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂の5層積層体を製造し、得られた各5層積層体について、そのプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(厚み5μm)側を、ポリプロピレンシート(厚み300μm)に、表1に示す温度でヒートシールしたときの剥離強度を測定し、結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系重合体とアクリル系単量体とをグラフト反応条件に付して得られた改質エチレン系重合体であって、JIS K7105に準拠して測定した、厚み30μmのフィルムの内部ヘーズが20%以下、且つ、JIS K7105に準拠して測定した、冷却ロールと反対面の縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)における20度鏡面光沢度の和が50%以下であることを特徴とする改質エチレン系重合体。
【請求項2】
改質エチレン系重合体が、エチレン系重合体100重量部に対してアクリル系単量体5〜200重量部を用いてグラフト反応条件に付して得られたものである請求項1に記載の改質エチレン系重合体。
【請求項3】
アクリル系単量体がメタクリル酸メチルである請求項1又は2に記載の改質エチレン系重合体。
【請求項4】
改質エチレン系重合体が、エチレン系重合体とアクリル系単量体を含む水性懸濁液を、加熱下に攪拌してアクリル系単量体をエチレン系重合体に含浸させ、次いで、ラジカル発生剤を添加し、攪拌してラジカル発生剤をエチレン系重合体に含浸させた後、ラジカル発生剤の分解温度以上に昇温してグラフト反応させることにより得られたものである請求項1乃至3のいずれかに記載の改質エチレン系重合体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の改質エチレン系重合体と、未改質オレフィン系重合体とを含有してなることを特徴とする改質エチレン系重合体組成物。
【請求項6】
易開封性シーラント用である請求項5に記載の改質エチレン系重合体組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の改質エチレン系重合体組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の改質エチレン系重合体組成物の層と、ポリオレフィン系樹脂の層とを含むことを特徴とする積層体。
【請求項9】
エチレン系重合体とアクリル系単量体を含む水性懸濁液を、加熱下に攪拌してアクリル系単量体をエチレン系重合体に含浸させ、次いで、ラジカル発生剤を添加し、攪拌してラジカル発生剤をエチレン系重合体に含浸させた後、ラジカル発生剤の分解温度以上に昇温してグラフト反応させることを特徴とする改質エチレン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−137827(P2006−137827A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327628(P2004−327628)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】