説明

改質システムの起動方法

【課題】改質システムの起動時間を短縮し、起動時に消費する熱エネルギーを低減する。
【解決手段】改質触媒層とそれを加熱するバーナ燃焼部2を有する改質器1に、酸化触媒層とそれを加熱する加熱部11を有するプレヒータ10を設け、改質システムの起動に際し、バーナ燃焼部2を起動して改質触媒層の昇温を開始すると共に、プレヒータ10を起動してその加熱部11で酸化触媒層の昇温を開始し、プレヒータ10の酸化触媒層が酸化反応領域まで昇温したとき、プレヒータ10に原料ガスの炭化水素および空気を供給して酸化燃焼し、その際、空気の供給量を原料ガスの一部が未反応状態となるように設定し、プレヒータ10から排出する燃焼ガスを改質器1に供給してその改質触媒層をさらに加熱し、改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、プレヒータ10の運転を停止すると共に、改質器1に原料ガスおよび水蒸気を供給して改質器1を運転状態に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質触媒層とそれを加熱するバーナ燃焼部を有する改質器により、炭化水素を含む原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな水素を生成し、生成した改質ガスを負荷設備に供給するように構成した改質システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭化水素を含む原料ガスと水蒸気を改質触媒の存在下に水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを生成する改質器を備えた改質システムが知られている。改質器で得られる水素リッチな改質ガスは、更にCO変成器やCO低減器により、含まれている僅かなCO(一酸化炭素)を最終的に数ppmレベルまで低減し、得られた高純度の改質ガスを負荷設備、例えば固体高分子電解質型などの燃料電池に供給している。
【0003】
炭化水素を含む原料ガスとしては、メタンやプロパン、メタノール等の脂肪族アルコール類、或いはジメチルエーテル等のエーテル類、天然ガスなどが使用できるが、家庭用などの燃料電池では供給体制の点から都市ガス(メタン、エタン、プロパン、ブタン等を含むいわゆる13A)が一般に使用される。かかる改質器における水蒸気改質の反応式は、例えばメタンを原料ガスとして使用した場合は、CH+2HO→CO+4Hで示すことができ、好ましい改質反応温度は、650〜750℃の範囲である。
【0004】
改質器の反応に必要な熱を供給する方式として外部加熱型と、内部加熱型がある。外部加熱型の改質器は、改質器の外部にバーナ燃焼部を設けてその熱源で改質触媒層を加熱して、原料ガスと水蒸気を反応させて水素リッチな改質ガスを生成する。
【0005】
図4は外部加熱型の改質器を用いた改質システムのプロセスフロー図である。改質器1には改質触媒層が充填され、改質触媒層に隣接してバーナ燃焼部2が設けられる。改質器1には配管aから炭化水素を含む原料ガスが供給されると共に、配管bから水が供給され、その水を改質システム内の高温部との熱交換により、加熱部3で加熱して得られる水蒸気が配管cから改質器1に供給される。図4においては、一例として、加熱部3は、改質器1との熱交換を行う構成にて記載してあるが、CO変成器4、CO低減器5、配管d、配管e、配管gとの熱交換を行う構成でも実現できる。
【0006】
改質器1で生成した水素リッチな改質ガスは配管dから流出し、シフト触媒層を充填したCO変成器4でCOの大部分がCO(一酸化炭素)に変成されて除去され、さらにCO変成器4から配管eを経て流出する改質ガスは酸化触媒を充填したCO低減器5に供給され、そこを通過する間に改質ガスに微量に残存するCOが配管fから供給される空気で酸化されてppmレベルまで低減される。
【0007】
CO低減器5から配管gを経て流出する改質ガスは負荷設備6に供給される。図示の例は負荷設備として燃料電池7が設けられ、その燃料電池7では改質ガスに含まれる水素と空気が反応して発電するが、発電の際には水素を含むアノード排ガスが配管hから連続的に排出される。一方、バーナ燃焼部2には都市ガスやメタンなどの燃料が配管iから供給されるが、その配管iに燃料電池からの配管hを接続することにより、アノード排ガスが改質器1の加熱源の一部として利用回収される。
【0008】
次に上記改質システムの起動方法を説明すると、先ず、バーナ燃焼部2を起動して配管iから供給される燃料を燃焼し、その燃焼ガスで改質触媒層の昇温を開始すると共に、改質器1の内部に設けた加熱管3を加熱する。改質触媒層が改質温度領域(例えば700度程度)に達したとき、配管aから炭化水素を含む原料ガスを供給すると共に、配管bから純水等の水を改質器1に供給する。水は改質器1に設けた加熱管3で加熱されて水蒸気となり、配管cを経て原料ガスと混合されて改質器1に供給される。この時点で改質器1は原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを連続的に生成する運転状態に移行される。なお改質器1の内部温度(改質触媒の温度)を測定するため、改質器1には温度検出器が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記の起動方法は、改質器1の改質触媒を700℃程度の高温の改質反応領域まで昇温するために長時間を要し、起動に必要な燃料消費量も大きいという問題がある。そこで本発明は、このような従来の起動方法における問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する本発明は、改質触媒層とそれを加熱するバーナ燃焼部を有する改質器により、炭化水素を含む原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな水素を生成し、生成した改質ガスを負荷設備に供給するように構成した改質システムの起動方法である。そして、酸化触媒層とそれを加熱する加熱部を有するプレヒータを設け、改質システムの起動に際し、バーナ燃焼部を起動して改質触媒層の昇温を開始すると共に、プレヒータを起動してその加熱部で酸化触媒層の昇温を開始し、プレヒータの酸化触媒層が酸化反応領域まで昇温したとき、プレヒータに前記原料ガスおよび空気を供給して前記原料ガスを酸化燃焼し、その際、空気の供給量を原料ガスに含まれる炭化水素の一部が未反応状態となるように設定し、プレヒータから排出する燃焼ガスを改質器に供給し、改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、プレヒータの運転を停止すると共に、改質器に水蒸気と前記原料ガスを供給して改質器を運転状態に移行させることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
前記起動方法において、プレヒータには前記原料ガスおよび空気に加え水蒸気を供給することができる(請求項2)。
【0012】
前記いずれかの起動方法において、改質システムの起動中に改質器から流出する炭化水素を含む流出ガスをバーナ燃焼部に燃料として供給し、改質器が運転状態に移行した後はその流出ガスを負荷設備に供給することができる(請求項3)。
【0013】
前記起動方法において、改質器のバーナ燃焼部に主バーナと起動バーナを備え、改質システムの起動中は起動バーナに燃料を供給し、改質器から流出する流出ガスを主バーナに供給することができる(請求項4)。
【0014】
前記いずれかの起動方法において、プレヒータの加熱部に電気ヒータを用い、その熱源で酸化触媒を加熱することができる(請求項5)。
【0015】
さらに前記起動方法において、プレヒータの加熱部は起動バーナで生成する燃焼ガスによる熱源で酸化触媒を加熱するように構成できる(請求項6)。
【0016】
さらに前記いずれかの起動方法において、前記改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、前記改質器には、前記プレヒータを経由して前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始するか、または前記プレヒータを経由せず直接前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始することができる(請求項7)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の起動方法は、請求項1に記載のように、酸化触媒層とそれを加熱する加熱部を有するプレヒータを設け、改質システムの起動に際し、バーナ燃焼部を起動して改質触媒層の昇温を開始すると共に、プレヒータを起動してその加熱部で酸化触媒層の昇温を開始し、プレヒータの酸化触媒層が酸化反応領域まで昇温したとき、プレヒータに前記原料ガスおよび空気を供給して前記原料ガスを酸化燃焼し、その際、空気の供給量を原料ガスに含まれる炭化水素の一部が未反応状態となるように設定し、プレヒータから排出する燃焼ガスを改質器に供給してその改質触媒層をさらに加熱し、改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、プレヒータの運転を停止すると共に、改質器に水蒸気と前記原料ガスを供給して改質器を運転状態に移行させることを特徴とする。
【0018】
上記起動方法によれば、改質システムの起動に際して、改質器の改質触媒層がバーナ燃焼部による加熱に加えてプレヒータから排出する燃焼ガスにより加熱されるので、改質触媒層の昇温時間が大幅に短縮され、それに応じて改質システムの起動時間も従来の起動方法に比べて著しく短縮される。さらに、プレヒータへの空気の供給量を原料ガスの炭化水素の一部が未反応状態となるように設定しているので、プレヒータに供給される炭化水素は全体として部分酸化(若しくは不完全燃焼)状態になり、プレヒータから改質器へ供給される燃焼ガス中には酸素が含まれなくなる。
【0019】
改質器の起動中にその内部に充填された改質触媒層に酸素が供給されると、改質触媒が酸化劣化を起こすことが分かっている。また図4に示すように改質器1の出口側にCO変成器4を接続する場合は、CO変成器4のシフト触媒も同様に酸化劣化する。なお図4のようにCO変成器4を設ける代わりに、改質器1の内部(改質触媒層の下流側)にシフト触媒層を充填することもできるが、その場合もシフト触媒に同様な酸化劣化を生じる。しかし本発明の起動方法によれば、高温の燃焼ガスを生成するプレヒータを用いても、起動中の改質器には上記のように酸素を含まない燃焼ガスが供給されるので、改質触媒やその下流側のシフト触媒などに酸化劣化による寿命短縮が起こる恐れはない。
【0020】
さらに、プレヒータに供給された炭化水素が部分酸化状態になると、後述するように、炭化水素の酸化反応に際して水素が発生し、その水素が燃焼ガスと共に改質器に供給される。この水素は改質触媒やシフト触媒の酸化劣化を積極的に防止するという効果があり、それら触媒の寿命を延ばすことができる。
【0021】
前記起動方法において、請求項2に記載のように、プレヒータには前記原料ガスおよび空気に加え水蒸気を供給することができる。このようにプレヒータに水蒸気を供給すると、プレヒータ内部で酸化反応と同時に水蒸気改質反応も進行して、炭化水素の一部がより多く水素に変換される。そのためプレヒータから排出する燃焼ガス中の水素量も増加し、前記のようにその水素が改質触媒やシフト触媒の酸化劣化をさらに効果的に防止することになる。
【0022】
前記いずれかの起動方法において、請求項3に記載のように、改質システムの起動中に改質器から流出する炭化水素を含む流出ガスをバーナ燃焼部に燃料として供給し、改質器が運転状態に移行した際に、その流出ガスを負荷設備に供給することができる。このように改質システムの起動中に改質器から流出する流出ガスをバーナ燃焼部に燃料として供給すると、流出ガスに含まれている未反応の炭化水素と水素を有効利用できるので、改質システムの起動中の燃料消費量を減少できる。また、改質器が運転状態に移行した後は改質器から流出する改質ガスをバーナ燃焼部から燃料電池などの負荷設備に切り換えるだけで、改質システムを簡単に運転状態に切り換えることができる。
【0023】
前記起動方法において、請求項4に記載のように、改質器のバーナ燃焼部に主バーナと起動バーナを備え、改質システムの起動中は起動バーナに燃料を供給し、改質器から流出する流出ガスを主バーナに供給することができる。このようにバーナ燃焼部を主バーナと起動バーナで構成すると、改質システムの起動中に主バーナと起動バーナの両方を運転して起動時間をより短縮化し、改質システムの運転中は主バーナだけを使用することができるので、燃焼効率を最適化できる。
【0024】
前記いずれかの起動方法において、請求項5に記載のように、プレヒータの加熱部として電気ヒータを用い、その熱源で酸化触媒を加熱することができる。プレヒータの加熱部の熱源を電気ヒータとすると、プレヒータの酸化触媒層の昇温速度を高めることが容易になると共に、正確な温度制御(または温度プログラム制御)が簡単にできる。
【0025】
さらに前記起動方法において、請求項6に記載のように、プレヒータの加熱部を起動バーナで生成する燃焼ガスによる熱源で酸化触媒を加熱するように構成できる。このようにプレヒータの加熱部の熱源を起動バーナで生成する燃焼ガスで賄うと、プレヒータに特別な熱源発生手段を設ける必要がないので、システム構成をより簡単化できる。
【0026】
さらに前記いずれかの起動方法において、請求項7に記載のように、前記改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、前記改質器に前記プレヒータを経由して前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始するか、または前記プレヒータを経由せず直接前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始することができる。
【0027】
前者のように改質器にプレヒータを経由して原料ガスおよび水蒸気の供給を開始する場合は、改質システムを起動中から運転中に切り換える際に、原料ガスなどの配管をプレヒータから改質器へ切り換える操作が不要になる。一方、後者のように改質器にプレヒータを経由せず直接原料ガスおよび水蒸気の供給を開始する場合は、改質システムの運転中にプレヒータが系から切り離されるので、内部汚染も減少し、メンテナンス等も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の改質システムの起動方法の第1の実施形態を説明するためのプロセスフロー図。
【図2】本発明の改質システムの起動方法の第2の実施形態を説明するためのプロセスフロー図。
【図3】本発明の改質システムの起動方法の第3の実施形態を説明するためのプロセスフロー図。
【図4】外部加熱型の改質器を用いた改質システムのプロセスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に図面を参照しながら本発明の改質システムの起動方法の実施形態を説明する。図1は本発明の改質システムの起動方法の第1の実施形態を説明するためのプロセスフロー図である。図1に示された改質システムは前述した図4の改質システムを基礎としている。従って図4と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
本実施形態では、改質システムの起動時において、従来法と同様にバーナ燃焼部で改質器に充填された改質触媒層の昇温を行うが、その昇温を加速するためにプレヒータ10を設けている。プレヒータ10は、その内部に酸化触媒層(図示せず)が充填されると共に、その酸化触媒を加熱するため電気ヒータを熱源とする加熱部11が設けられる。なお電気ヒータは酸化触媒層を予め設定された温度に昇温制御するように、図示しない温度制御装置で制御される。
【0031】
酸化触媒層は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)あるいはパラジウム(Pd)等の貴金属触媒の粒子またはそれら粒子をアルミナ等の担体に担持させたものをプレヒータの内部に層状に充填して形成される。プレヒータ10の入口側にはメタン等の炭化水素を含む原料ガスを供給する配管aと、酸化用の空気を供給する配管jと、水蒸気を供給する配管cが接続され、プレヒータ10の出口側には燃焼ガスを排出する配管kが接続され、配管kの先端部は改質器1の入口側に接続される。なお、各配管には必要に応じて符号Vで表示した開閉弁もしくは調整弁が設けられる。
【0032】
改質器1には改質触媒層(図示せず)が充填されると共に、その改質触媒を加熱するバーナ燃焼部2が設けられる。改質触媒としては、従来から知られているNiO−A1OあるいはNiO−SiO・A1などのNi系、またWO−SiO・A1やNiO−WO・SiO・A1などが用いられる。
【0033】
バーナ燃焼部2は主バーナ2aと起動バーナ2bを備えている。改質器1の出口側には改質ガス等の流出ガスを流出させる配管dが接続され、配管dの先端はCO変成器4の入口側に接続され、CO変成器4の出口側は配管eを介してCO低減器5に接続される。CO変成器4にはシフト触媒層が充填され、シフト触媒としては従来から知られているCuO−ZnO、Fe、Feまたは酸化銅の混合物などの銅系または鉄系の卑金属系の触媒が用いられる。またCO低減器5の内部には前記プレヒータ10に充填したものと同様な酸化触媒が充填される。
【0034】
CO低減器5の出口側に配管gが接続され、配管gは燃料電池等7の負荷設備6に接続されると共に、そこから分岐した配管lを介して改質器1の主バーナ2aに接続される。主バーナ2aには更にメタンや都市ガス等の燃料を供給する配管iが接続されると共に、配管iには燃料電池7から流出するアノード排ガス用の配管hが合流している。一方、起動バーナ2bには原料ガスを供給する配管aが接続される。なお起動バーナ2bには配管aとは別の配管で都市ガス等の燃料ガスを供給することもできる。
【0035】
次に図1に示す改質システムの起動方法を説明する。先ず、改質器1のバーナ燃焼部2を起動し、改質器1に充填した改質触媒層を加熱する。具体的には開閉弁V2を開けて配管aから起動バーナ2bに炭化水素を含む原料ガスを供給して燃焼し、生成する高温の燃焼ガスの熱エネルギーを熱源として改質触媒層を加熱する。
【0036】
上記バーナ燃焼部2の起動と共に、プレヒータ10も起動する。具体的にはその加熱部11の熱源を供給する電気ヒータに通電し、その発熱エネルギーを熱源として内部の酸化触媒層の昇温を開始する。酸化触媒層が酸化反応温度領域(例えば250℃以上)に達したとき、調整弁V1を開けて配管aから炭化水素を含む原料ガスをプレヒータ10に供給すると共に、調整弁V3を開けて配管jから酸化用の空気をプレヒータ10に供給する。
【0037】
プレヒータ10に炭化水素と空気が供給されると、炭化水素は酸化触媒の作用により酸化反応(燃焼)し酸化熱が生成する。酸化熱が生成すると、それ以降はその酸化熱により酸化触媒層の酸化反応温度を維持できるので、電気ヒータの通電は停止してもよい。この酸化反応を継続する際に、本発明では前述したように空気の供給量を原料ガスの炭化水素の一部が未反応状態となる範囲に設定する。この設定は調整弁V1とV3の開度調整により行うことができる。
【0038】
ここで参考までに、原料ガスの炭化水素がメタン(CH)である場合を例に、種々の酸化反応の形態について説明する。先ず、炭化水素が完全酸化(100%酸化)するような空気供給量に設定した場合は、その酸化反応式はCH+2O=2HO+COとなり、メタンは完全に酸化されて水と炭酸ガスに変化される。しかし炭化水素を完全に酸化するには、理論値より幾分かの余剰空気を供給する必要があるので、プレヒータ10から排出する燃焼ガス中に未反応酸素が含まれることは避けられない。
【0039】
次に、炭化水素が50%(部分酸化50%)となるような空気量に設定した場合は、その酸化反応式はCH+O=2H+COとなり、炭化水素の一部が炭酸ガスと水素に変換され、残りは未反応状態のまま燃焼ガスとして排出する。さらに、炭化水素が25%(部分酸化25%)となるような空気量に設定した場合は、その酸化反応式はCH+1/2O=2H+COとなり、炭化水素の一部が一酸化炭素と水素に変換され、残りは未反応状態のまま燃焼ガスとして排出する。これら反応状態から、プレヒータ10に供給すべき空気量は、理論空気量の30%〜90%、好ましくは40%〜70%程度とすることが望ましい。
【0040】
前記のようにプレヒータ10から排出される高温の燃焼ガスは改質器1に供給されるが、その供給時点では改質器1の改質触媒層は既にバーナ燃焼部2からの熱源で加熱され昇温途中にあり、プレヒータ10から燃焼ガスの供給が開始されることにより、その昇温速度を急速に加速することができる。また前記のようにプレヒータ10からの燃焼ガスには未反応酸素が含まれていないので、改質触媒を酸化劣化させることはない。さらに改質器1から流出する流出ガスにも未反応酸素は含まれないので、CO変成器4のシフト触媒やCO低減器5の酸化触媒を酸化劣化させることもない。またプレヒータ10からの燃焼ガスには水素が含まれており、この水素は改質触媒やシフト触媒などの酸化劣化を積極的に防止するという効果がある。
【0041】
これまでの説明では、プレヒータ10には酸化反応時に炭化水素を含む原料ガスと空気のみを供給しているが、図1に示すように、プレヒータ10の入口側に更に水蒸気を供給する配管cの調整弁V4を開けて、水蒸気をプレヒータ10に供給することもできる。このようにプレヒータ10に水蒸気を供給すると、前記のようにプレヒータ10内部では酸化反応と共に水蒸気改質反応が進行して、炭化水素の一部が水素に変換される割合が大きくなる。そのためプレヒータから排出する燃焼ガス中の水素量も増加し、その水素が改質触媒やシフト触媒などの酸化劣化をさらに効果的に防止することになる。
【0042】
改質器1から流出する流出ガスは配管dによりCO変成器4に流入し、さらにCO変成器4から配管eを経てCO低減器5に流入し、CO低減器5から配管gに流出する。そこで配管gに設けた開閉弁V5を開けることにより、未反応炭化水素や水素を含む流出ガスが配管lから主バーナ2aに供給され燃焼する。
【0043】
図1に示す実施形態では、配管bより供給される水が改質器1の加熱管3で加熱されて蒸発し、得られた水蒸気が配管cを経由してプレヒータ10に供給される。なお、改質器1に加熱管3を設けない場合、或いはこの時点で改質器1の加熱管3が充分に水蒸気を生成できる温度に達していない場合などには、燃焼型の水蒸気発生装置を別途用意し、そこから直接プレヒータ10に水蒸気を供給することもできる。またCO変成器4やCO低減器5に水を加熱する加熱管を設け、そこで得られた水蒸気を配管cでプレヒータ10に供給することもできる。
【0044】
上記のように改質器1の改質触媒層をバーナ燃焼部2とプレヒータ10から排出する燃焼ガスで昇温し、改質触媒層が改質温度(例えば700℃程度)に達したとき、調整弁V3を閉じてプレヒータ10の運転(酸化反応)を停止する。すると炭化水素を含む原料ガスと水蒸気はプレヒータ10を未反応のまま素通りして改質器1に供給され、改質器1はそれらを原料として水素リッチな改質ガスを生成する運転状態に移行する。そこで開閉弁V5を閉じ開閉弁V6を開けることにより、改質器1から流出する改質ガスが負荷設備6としての燃料電池7に供給される。
【0045】
さらに開閉弁V2を閉じて調整弁V7を開けることにより、起動バーナ2bが停止し、主バーナ2aが都市ガスなどの燃料ガスと燃料電池7のアノード排ガスを燃焼して改質器1の改質触媒の改質反応温度を維持する。なお主バーナ2aには配管hから供給されるアノード排ガスが主体であり、その不足分が配管iから供給される。
【0046】
図2は本発明の改質システムの起動方法の第2の実施形態を説明するためのプロセスフロー図である。本実施形態が図1の例と異なる部分は、プレヒータ10の加熱部11の熱源として電気ヒータの代わりに起動バーナ2bの燃焼ガスを用いている点であり、そのほかは同様に構成される。従って図1と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態では改質システムの起動時に、先ず開閉弁V2を開けて起動バーナ2bを起動し、その原料ガスを熱源としてプレヒータ10の酸化触媒層を酸化反応領域に昇温する点に特徴がある。それ以降の起動工程は図1の例と同様であり、改質器1を以降運転状態にしたときに、開閉弁V2を閉じて起動バーナ2bを停止する。
【0048】
図3は本発明の改質システムの起動方法の第3の実施形態を説明するためのプロセスフロー図である。本実施形態が図1の例と異なる部分は、改質器1が運転状態に移行したときに、改質器1にはプレヒータ10を通さずに直接炭化水素を含む原料ガスと水蒸気を供給する点であり、そのほかは同様に構成される。従って図1と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
本実施形態では、プレヒータ10に原料ガスを供給する配管aから配管mを分岐して改質器1に接続し、さらにプレヒータ10に水蒸気を供給する配管cから配管nを分岐して改質器1に接続している。
【0050】
本実施形態においては、改質器1が運転状態に移行したときに、開閉弁V1,V10を閉じて開閉弁V8,V9を開ける。これらの操作により、起動時にプレヒータ10に供給されていた原料ガスと水蒸気が停止され、改質器1に原料ガスと水蒸気がそれぞれの供給源から直接供給される。
【実施例1】
【0051】
本発明の効果を確認するため、図1に示す構成による1kW級改質システムの起動実験を行った。プレヒータ10にはアルミナに担持させた白金(pt)触媒を酸化触媒層として55cc充填し、その酸化触媒を加熱する加熱部11として120V,200Wの電気ヒータを設けた。改質器1は改質触媒としてNiO−AlO系触媒を500cc充填したものを使用した。
【0052】
先ず、起動バーナ2bを起動して改質器1の改質触媒の昇温を開始した。同時にプレヒータ10の加熱部11を起動して酸化触媒層の昇温を開始した。4.5分後に酸化触媒が酸化反応領域である350℃付近に達したので、調整弁V1を開けて配管aから原料ガスとしてメタンガス(CH)を1400cc/分の割合でプレヒータ10に供給すると共に、調整弁V3を開けて配管jから酸化用の空気を6000cc/分の割合でプレヒータ10に供給した。この空気供給量はメタンガスが完全に酸化反応する理論空気量のおよそ45%で、メタンガスの不完全酸化反応(不完全燃焼)状態とした。
【0053】
プレヒータ10から排出する燃焼ガスを改質器1に供給し、既に起動バーナ2bからの加熱で昇温途中にあった改質触媒層の昇温の加速化を行ったところ、20分後に改質反応温度領域(およそ700℃)に達した。すなわち、起動してからの時間と、改質器の改質触媒を改質反応領域の温度にするまではおよそ20分であった。
【0054】
これに対しプレヒータ10を使用せず、起動バーナ2だけで改質器1の昇温を行ったところ、改質反応温度領域(およそ700℃)に達するのにおよそ1時間かかった。この実験により、図4のような従来法に較べて、改質システムの起動時間を1/3程度に短縮可能なことが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の改質システムの起動方法は、燃料電池などの負荷設備に改質器から水素リッチな改質ガスを供給するシステムの起動方法として利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 改質器
2 バーナ燃焼部
2a 主バーナ燃焼部
2b 起動バーナ燃焼部
3 加熱管
【0057】
4 CO変成器
5 CO低減器
6 負荷設備
7 燃料電池
【0058】
10 プレヒータ
11 加熱部
12 改質システム
a〜n 配管
V1〜V10 開閉弁または調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒層が加熱されるバーナ燃焼部(2)を有する改質器(1)により、炭化水素が含まれる原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな水素を生成し、生成した改質ガスを負荷設備(6)に供給するように構成した改質システムの起動方法において、
酸化触媒層とそれを加熱する加熱部(11)を有するプレヒータ(10)を設け、改質システムの起動に際し、前記バーナ燃焼部(2)を起動して前記改質触媒層の昇温を開始すると共に、前記プレヒータ(10)を起動してその加熱部(11)で前記酸化触媒層の昇温を開始し、
前記プレヒータ(10)の前記酸化触媒層が酸化反応領域まで昇温したとき、そのプレヒータ(10)に前記原料ガスおよび空気を供給して、前記原料ガスを酸化燃焼し、その際、空気の供給量を原料ガスに含まれる炭化水素の一部が未反応状態となるように設定し、
そのプレヒータ(10)から排出する燃焼ガスを前記改質器(1)に供給し、その改質器(1)の前記改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、プレヒータ(10)の運転を停止すると共に、その改質器(1)に水蒸気と前記原料ガスを供給して改質器(1)を運転状態に移行させることを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項2】
請求項1において、
プレヒータ(10)には前記原料ガスおよび空気に加え水蒸気を供給することを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
改質システムの起動中に改質器(1)から流出する炭化水素を含む流出ガスをバーナ燃焼部(2)に燃料として供給し、改質器(1)が運転状態に移行した後はその流出ガスを負荷設備(6)に供給することを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項4】
請求項3において、
改質器(1)のバーナ燃焼部(2)に主バーナ(2a)と起動バーナ(2b)を備え、改質システムの起動中は起動バーナ(2b)に燃料を供給し、改質器(1)から流出する流出ガスを主バーナ(2a)に供給することを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記プレヒータ(10)の加熱部(11)に電気ヒータを用い、その熱源で酸化触媒層を加熱することを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記プレヒータ(10)の加熱部(11)は前記起動バーナ(2b)で生成する燃焼ガスによる熱源で酸化触媒層を加熱するように構成することを特徴とする改質システムの起動方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記改質触媒層が改質反応領域まで昇温したとき、前記改質器には、前記プレヒータを経由して前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始するか、または前記プレヒータを経由せず直接前記原料ガスおよび水蒸気の供給を開始することを特徴とする改質システムの起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−189232(P2010−189232A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36728(P2009−36728)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】