説明

放出調節製剤及びその使用方法

放出調節医薬製剤は、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、約5〜30%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む薬物送達マトリックス、約1.0〜10%のアニオン性界面活性剤、及び腸溶性ポリマーを含む。この医薬製剤は、被験者への投与後に、レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より4〜20時間長く、レチガビンの持続した血漿濃度を生み出す。製剤は、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、約5〜30%の薬物送達マトリックス、及び胃環境中での放出を妨げるための薬剤を含む。この製剤の血漿濃度対時間のプロファイルは、約4時間から約36時間継続する長期間にわたり実質的に平坦である。神経系の過興奮により特徴づけられる疾患の治療方法は、これらの医薬製剤の有効量の被験者への投与を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本願は2008年7月18日に出願された米国仮特許出願第61/082,162号の優先権の利益を主張し、その全内容が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は全般的には医薬組成物に関し、より詳細には神経系の過興奮の有効な治療のための医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
錠剤又はカプセルなどの多くの固体経口医薬品は、投与して即座に活性成分が放出されるように製剤されている。一般的に、そのような即放性(IR)剤形は、初期に非常に高い血中濃度を生み出し、その後濃度は急速に低下する。即放性剤形が起こし得る結果の1つは、患者が様々な程度の血中濃度の変動を経験して、一時的な治療薬の過量服用(overload)を起こし、その後の治療薬過少量服用(under-dosing)の期間があることである。このような血中濃度の変動又は最高値と谷は制御が困難であり、投与される服用量の全体的な治療効果を低下させる。
【0004】
多くの即放性経口剤形は、活性成分の治療レベルをこのような血中濃度変動内に維持するために1日3回以上投与される。しかし、複数回投薬は変動を解決せず、過量服用と過少量服用とのいずれか又は両方の程度又は期間を減少させるに過ぎない。さらに、そのような1日3回以上の投薬では患者の服薬遵守が低下することもある。
【0005】
遅延放出製剤又は徐放性製剤も、多くの活性成分に対して開発されてきた。しかし、そのような遅延放出製剤は、特定の薬剤又は治療目的に対する好適性に影響を与える欠点を示す。さらに、このような種類の製剤は一般的に、服用量の過量服用及び過少量服用の程度を低下しようとして活性成分の放出を遅らせるように設計されている。しかし、活性成分が一旦放出されると、やはり血中濃度の変動を示すことがある。
【0006】
したがって、持続した期間にわたり比較的一定な濃度の活性成分を送達する信頼性のある製剤が必要とされる。本発明はこの必要性を満たし、関連する利点も与える。
【発明の概要】
【0007】
(発明の要旨)
いくつかの態様において、本発明の実施態様は、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、約5〜30%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む薬物送達マトリックス、約1.0〜10%のアニオン性界面活性剤、及び腸溶性ポリマーを含む放出調節医薬製剤に関する。該医薬製剤は、被験者への投与後に、レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より4〜20時間長く、レチガビンの持続した血漿濃度を生み出す。
【0008】
他の態様において、本発明の実施態様は、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、約5〜30%の薬物送達マトリックス、胃環境中での放出を妨げるための薬剤を含む製剤に関する。この製剤の血漿濃度−時間のプロファイルは、約4時間から約36時間継続する長期間にわたり実質的に平坦である。
【0009】
さらに他の態様において、本発明の実施態様は、神経系の過興奮により特徴づけられる疾患を治療する方法であって、被験者に有効量のこれらの医薬製剤を投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Avinza(登録商標)及びKapinol(登録商標)(Kadian(登録商標))の遅延放出製剤のインビトロ溶出及びインビボ吸収プロファイルを比較するものである。図1Aは、模擬腸液下でのAvinza(登録商標)及びKapinol(登録商標)の溶出プロファイルを示す。図1Bは、被験者への投与後のAvinza(登録商標)及びKapinol(登録商標)の血漿濃度を示す。
【図2】溶出結果に基づきシミュレートされたレチガビン濃度−時間プロファイルと、本発明の放出調節製剤の投与後に観察されたレチガビン濃度−時間プロファイルとの比較を示す。
【図3】即放性製剤又は対照製剤と比べた、摂食及び/又は絶食条件下の健常な被験者における、典型的な製剤の薬物動態学的濃度−時間プロファイルを示す。
【図4】製剤1〜9のレチガビンの溶出時間プロファイルを示す。0.1NのHCl中で1時間に次ぐホウ酸緩衝液(pH7.5)で4〜5時間の模擬インビボ条件下でのレチガビン即放性製剤及び数種の製剤の溶出プロファイル。
【図5】pHの関数としてのレチガビンの溶解度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、原薬レチガビンの放出調節性を有する医薬組成物を対象とする。本発明の放出調節組成物は、最長20時間以上原薬の持続した血漿濃度を生み出す。持続又は延長した血漿濃度は薬理学的作用をより長い期間与えるため、本発明の放出調節組成物は広範囲の神経病関連疾患の治療に特に有用である。これらの性質により実現できる利益には、効能の増大、全投薬量の減少、及び投与回数の低減がある。このような特性及び他の特性は、患者の服薬遵守を高め、薬剤の有害反応の発生を減らすこともできる。
【0012】
ある特定の実施態様において、本発明は、原薬N-(2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル又は2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンを含む医薬組成物を対象とする。この特定の実施態様用の典型的な製剤成分は、約10〜15%の薬物送達マトリックス、約20〜30%の微結晶性セルロース結合剤、約1〜5%のヒプロメロース2910結合剤、約3〜5%のコポビドン結合剤、約1%のクロスポビドン崩壊剤、約2〜7%のクロスカルメロースナトリウム崩壊剤、約2〜6%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤、約2〜6%の他の界面活性剤、約0.2〜1.0%のステアリン酸マグネシウム滑沢剤、約0.2〜1.0%の二酸化ケイ素流動促進剤、及び腸溶性コーティングを含むことができる。典型的な血漿濃度は、投与後約10時間以上の後に最大値に達することができ、且つ約10〜20時間以上持続する。有益な血漿濃度は、投与後30〜40時間観察することもできる。2-アミノ-4-(-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンを含む放出調節医薬組成物は、神経系の過興奮及び/又は平滑筋の過興奮により特徴づけられる種々の疾患の治療に有用であり、そのような疾患には、てんかんなどの発作性疾患、神経因性疼痛、炎症、過活動膀胱、尿失禁、機能性腸疾患、腸管の潰瘍病態、過活動胃部運動(hyperactive gastric motility)、喘息、高血圧、偏頭痛、及び摂食障害がある。一般的に、2-アミノ-4-(-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンを含む放出調節医薬組成物は抗ジストニア剤として有用であり、筋肉の緊張及び痙攣を有効に低減する。さらに、これらの放出調節組成物は、例えば、脳卒中及び他の虚血関連事象の間などの、脳の血流が減少した状態での神経保護剤として有用であり、レイノー症候群、インポテンス、早漏、女性アノーリャズミア(female anoryasmia)、陰核勃起不全、膣の充血、性交疼痛症、及び膣痙攣などの血流に影響を与える血管病の治療にも有用である。さらに、放出調節組成物は、可逆性の心停止を達成し、冠動脈血流量を回復するのに有用である。放出調節医薬組成物は、神経変性の治療にも有用である。放出調節組成物により効果的に治療される他の疾患には、間欠性跛行、頻尿、夜間頻尿、反射亢進、夜尿症、脱毛症、ジスメノレアル(dysmenorrheal)、良性前立腺肥大症、早産、糖尿病に関連する疾患、例えば、網膜症、神経障害、腎障害、末梢循環障害、及び皮膚潰瘍化がある。調節組成物は、ニコチン中毒離脱、躁病、躁鬱病、及び不安病などの行動障害の治療にも有用である。
【0013】
本発明の放出調節組成物は、典型的な徐放性製剤又は遅延放出製剤とは異なる性質を示す。一般的に、徐放性製剤又は遅延放出製剤は、服用量全体又はその一部の送達を妨害するために、原薬(API)の溶出又は放出の速度を遅らせることに基づいている。したがって、APIのインビボ吸収プロファイルは、そのインビトロ溶出プロファイルに近似する。例えば、徐放性製剤がAPIを10時間にわたり放出する場合、その吸収プロファイルはこの10時間にわたり上昇又は持続した血漿濃度を示し、次いで服用量のほとんどを放出した後に一様に低下するであろう。
【0014】
図1は、2種のモルヒネ製剤Avinza(登録商標)及びKapinol(登録商標)(Kadian(登録商標))の、このような徐放性製剤及び/又は遅延放出製剤の性質を例示している。図1Aは、Kadian(登録商標)のインビトロ溶出が、腸液を模した条件下で(例えば、pH7.5)約7時間で約100%完全であることを示す。これらの条件下でのAvinza(登録商標)のインビトロ溶出は、約24時間後で約90%完全である。それに対応し、インビボ吸収プロファイルはこのような遅延した放出割合に近似する。Kadian(登録商標)の血漿濃度は、投与後約6〜7時間で最大に達し、その後著しく低下する。Avinza(登録商標)の血漿濃度ははるかに低い最大値を有する濃度プロファイルを示すが、これは24時間の放出期間にわたり比較的一定であり、その後低下する。
【0015】
いくつかの実施態様において、本発明の放出調節製剤は、模擬腸内条件下でインビトロ溶出プロファイルに基づき予測されるものと比べて非常に異なるインビボ吸収特性を示す。以下にさらに記載されるとおり、放出調節製剤は、模擬腸内条件下で約80%以上が約4〜6時間までに溶出する、レチガビンの一様な放出をもたらす。しかし、レチガビン血漿濃度により測定されるインビボ吸収プロファイルは溶出プロファイルに近似しない。むしろ、最大レチガビン濃度は、そのピーク放出のはるか後に観察され、予測されるより少なくとも約4〜8倍長い間かなりの血漿レベルで維持される。
【0016】
予測されたレチガビン血漿濃度と観察される血漿濃度との間の相関がないことは図2に示されている。簡単に言うと、図2は、およそ27時間までレチガビンの75%の放出及び吸収を与える時間の範囲にわたり、レチガビン溶出の割合の変化に似せた、吸収速度定数(Ka)の変化の効果を示すシミュレーションである。このシミュレーションには、本発明の放出調節製剤のコーティングの一部として腸溶性ポリマーを含むことを考慮するために、1時間の遅延を含んだ。したがって、0.2に等しいKa(点線)により与えられる6.9時間までの活性成分の75%の放出は、被験者への投与後全体で7.9時間を表す。この割合は、図4及び以下の実施例Vに示されるインビトロ溶出結果にきわめて似ている。
【0017】
上記のレチガビン吸収のシミュレーションされた変化に、本発明の典型的な放出調節製剤の濃度−時間プロファイル(丸(●))に示される観察された吸収が重ね書きされている。観察結果の重ね書きは、投与の約24時間後又はインビトロ溶出18時間超を経て、最高濃度を達成する持続した吸収プロファイルを示す。これらの結果は、本発明の放出調節製剤が、その比較的速い溶出性に基づくと異例な長く持続した吸収を示すことを表す。このような放出調節性は、発作及び神経因性疼痛を含む広範囲の神経因性疾患並びに先に例示された疾患の治療のために、安全で有効な服用量のレチガビンを送達するのに特に有用である。
【0018】
原薬、すなわちAPI、又は活性成分は、医薬として活性のある薬剤中の化学薬品又は物質を意味する。これらの用語は本明細書で同じ意味に使用され、当分野で認められているそのような意味を全て含む。本発明の原薬は、化学薬品又は物質の医薬として許容し得る形態を含む。本発明の製剤に有用な原薬の具体例は、N-(2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル又は2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンである。この化合物は当分野でレチガビンとしても公知であり、以下の構造を有する。
【0019】
【化1】

【0020】
2-アミノ-4-(-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンの構造及び合成は、例えば米国特許第5,384,330号、同第5,914,425号、及び同第6,538,151号、並びにBlackburn-Munroら、CNS Drug Reviews, 11:1-20 (2005)、及びその中で引用されている参考文献に記載されている。「2-アミノ-4-(-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼン」、「N-(2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル」、又は「レチガビン」という用語が、該化合物の医薬として許容し得る形態を全て含むと理解されたい。
【0021】
活性成分の医薬として許容し得る形態には、例えば、投与される服用量で生理学的に許容でき、薬剤活性を保持する言及された原薬の変形物がある。原薬の医薬として許容し得る形態には、例えば、溶媒和物、水和物、異種同形体、多形体、仮晶、中性形、酸付加塩形態、塩基塩、エステル、及びプロドラッグがある。
【0022】
例えば、「医薬として許容し得る酸塩」という用語は、非毒性のアニオンを与える酸から形成される酸付加塩を意味する。医薬として許容し得るアニオンには、数多くの他の例の中でも、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ベンゼンスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩があるが、これらに限定されない。ヘミ硫酸塩を含むがそれに限定されないヘミ塩は、同様に本発明に向けられる。好適な塩に関する総説には、Stahl及びWermuthの「医薬塩のハンドブック:性質、選択、及び使用(Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)」(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照されたい。レチガビンの化合物の医薬として許容し得る酸付加塩は、フリーの塩基の溶液又は懸濁液を約1化学当量の医薬として許容し得る酸により処理することにより、当分野に周知の方法を利用して調製される。従来の濃縮及び再結晶技術が塩の単離に利用される。
【0023】
「医薬として許容し得る溶媒和物」という用語は、原薬と化学量論量若しくは非化学量論量の水及びエタノールを含むがこれらに限定されない1種以上の医薬として許容し得る溶媒分子とを含む分子錯体を意味する。したがって、溶媒和物という用語は、一例として水和物を他の例としてエタノール付加物を含む。
【0024】
本明細書では、原薬の血漿濃度に関連して使用される「持続した」という用語は、長期間にわたるピーク血漿濃度の約50%内の血漿API濃度の維持を意味するものとする。持続した濃度には、ピーク血漿濃度の約48%、45%、43%、40%、35%、33%、30%、28%、25%、23%、20%、18%、15%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%内の血漿API濃度の維持を含む。この用語には、長期間内の微小な濃度変動を含むものとする。長期間は、少なくとも約3時間(hrs)を意味し、30時間以上の期間を含むことがある。持続したAPI血漿濃度の典型的な長期間には、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、及び30時間以上、並びにこれらの典型的な点の間の全ての期間がある。さらに、長期間は、API血漿濃度に認識できるプラトーがある限り、3時間未満のこともある。持続した濃度の例は、図3(製剤3、摂食)に示されるとおり、投薬後約8時間から投薬後およそ30時間後までの約200ng/mlのレチガビン血漿濃度の維持である。図3は、本発明の医薬製剤を利用する3種の追加の持続した濃度も例示している。
【0025】
本明細書では、「薬物送達マトリックス」という用語は、構造的安定性を与え、原薬の放出を制御する不活性な物質を意味するものとする。本発明の製剤に使用される薬物送達マトリックスには、投与時の原薬の長期持続放出、徐放、及び比較的一様な増加する放出により特徴づけられるものがある。薬物送達マトリックスの例には、非スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリカルボフィルがある。
【0026】
本明細書では、「賦形剤」という用語は、医薬として不活性な物質を意味するものとする。賦形剤は幅広い目的のために本発明の製剤に含めることができ、例えば、医薬として許容し得る充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、薬物送達マトリックス、放出調節剤、流動促進剤、希釈剤、ビヒクル、緩衝剤、安定剤、等張化剤、甘味剤、低温保護剤(cryoprotectant)、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)、酸化防止剤、キレート剤、及び/又は保存剤がある。賦形剤は当分野に周知であり、例えば、レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)(以前はレミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)と呼ばれていた)、Alfonso R. Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins;第20版(2000年12月15日)に見いだすことができる。
【0027】
本明細書では、「崩壊剤」という用語は、投与後に錠剤又はカプセルなどの固体の医薬製剤の分散又は崩壊を促進する賦形剤又は複数の賦形剤の混合物を意味するものとする。したがって、崩壊剤は、原薬を含む製剤の成分の放出を促進する賦形剤である。本発明の医薬製剤に有用な崩壊剤には、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、及びデンプングルコール酸ナトリウムなどの種々の架橋セルロース組成物がある。当分野に周知の他の崩壊剤も本発明の製剤に使用でき、例えばコーンスターチ及びポテトスターチがある。
【0028】
本明細書では、「界面活性剤」という用語は、界面活性剤が溶解している液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味するものとする。界面活性剤には、例えば、有機溶媒と水溶液の両方に部分的な溶解度を示す両親媒性有機化合物がある。界面活性剤の一般的性質には、水の表面張力を低下させ、油との間の界面張力を低下させ、ミセルを形成する能力がある。本発明の界面活性剤には、非イオン性及びイオン性界面活性剤がある。界面活性剤は当分野に周知であり、例えば、Holmbergらの水溶液中の界面活性剤及びポリマー(Surfactants and Polymers in Aqueous Solution),第2版.,John Wiley & Sons Ltd. (2003);界面活性剤:実用ハンドブック(Surfactants: A Practical Handbook), K. Robert Lange編、Hanser Gardner Publications (1999); Vogel, A.I.のヴォーゲルの実用有機化学の教科書(Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry), 第5版, Prentice Hall (1996)に見いだすことができる。
【0029】
簡単に言うと、非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、及びコカミドTEAがある。非イオン性界面活性剤の具体例には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などのポリソルベート類;例えば、ポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)としても知られるポロキサマー188、ポロキサマー407又はポリエチレン-ポリプロピレングリコールなどのポロキサマー類;例えば、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の、任意にモノヒドロキシル化又はポリヒドロキシル化されている脂肪酸を含むショ糖エステルがある。ポリソルベート20はTween20、PEG(20)ソルビタンモノラウラート及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラートと同義である。
【0030】
イオン性界面活性剤には、例えば、アニオン性、カチオン性、及び双性イオン性界面活性剤がある。アニオン性界面活性剤にはスルホナート系又はカルボキシラート系界面活性剤があり、石鹸、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、及び他のアルキル硫酸塩がある。カチオン性界面活性剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩などの四級アンモニウム系界面活性剤、セチルピリジニウムクロライド、ポリエトキシ化タローアミン(POEA)、及びベンズアルコニウムクロライドがある。双性イオン性又は両性界面活性剤には、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、及びココアンフォグリシナート(coco ampho glycinate)がある。
【0031】
本明細書では、「結合剤」という用語は、固体粒子又は粉末化材料に、結合性、均一な堅さ、及び/又は凝固を付与し、医薬製剤が圧縮後完全なまま保たれることを確実にし、その自由流動性を促進する賦形剤又は複数の賦形剤の混合物を意味するものとする。結合剤は当分野に周知であり、例えば、ポビドン、コポビドン、メチルセルロース、ヒプロメロース2910、PEG6000及び/又はPEG8000などのポリエチレングリコール(PEG)、及びヒドロキシプロピルセルロースがある。本発明の製剤に適用可能な他の周知の結合剤には、スターチ、ゼラチン、並びにスクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、及びラクトースなどの糖類、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム(ghatti gum)などのゴム、及びカルボキシメチルセルロースがある。
【0032】
本明細書では、「滑沢剤」という用語は、製剤成分の製造装置への粘着を低減又は防止する賦形剤又は複数の賦形剤の混合物を意味するものとする。滑沢剤は、粒子間の摩擦を低減し、製造装置を通る粉末物質の流速を上げることもできる。本発明の製剤に有用な典型的な滑沢剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウムがある。当分野に周知の他の滑沢剤も本発明の製剤に使用でき、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水添植物油、ドデシル硫酸ナトリウム、及びポリエチレングリコール(PEG)がある。
【0033】
本明細書では、「流動促進剤」という用語は、粉末物質の流動特性を改善させる物質を意味するものとする。本発明の製剤に使用できる典型的な流動促進剤には、例えば、コロイド状二酸化ケイ素がある。
【0034】
本明細書では、疾患に関連して使用される場合の「神経系の過興奮」という用語は、異常又は過度の神経系の活性の状態を意味するものとする。活性は一般的に中枢神経系(CNS)に関連づけられるが、この用語の意味には末梢神経系(PNS)の過興奮も含まれる。神経系の過興奮は、例えば、哺乳動物のKCNQ2、KCNQ3及び/又はKCNQ5カリウムチャネルなどの電位開口型カリウムチャネルを含む、異常なカリウムチャネル活性により特徴づけられる。神経系の過興奮により特徴づけられる典型的な疾患には、例えば、発作、てんかん、痙攣、神経因性疼痛、神経痛、急性及び/又は慢性の脳血流量低下、神経変性疾患、薬物離脱、中毒、及び過活動膀胱、並びに先に例示された他の疾患がある。発作性疾患の具体例にはてんかんがある。神経因性疼痛の具体例には、異痛症及び痛覚過敏がある。神経痛の具体例には、三叉神経痛(TN)、非定型型三叉神経痛(ATN)、及び治療後疼痛(post-therapeutic neuralgia)がある。血流量の低下には例えば脳卒中などの病態があり、典型的な神経変性疾患には、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、及びパーキンソン病がある。過活動膀胱には、尿失禁、膀胱不安定性(bladder instability)、夜間頻尿、膀胱反射亢進、及び夜尿症などの膀胱の制御喪失がある。
【0035】
本明細書では、疾患又は疾病に関連して使用される場合「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」という用語、又はこれらの文法的な等価物は、言及された疾患又は疾病を示す臨床症状の重度を予防、改善、又は低減することを意味するものとする。したがって、この用語は、標的とされる疾患又は症状の阻害、停止、又は緩和のための投与並びに標的とされる疾患又は症状の発生を回避するための予防的治療を含む。疾患の治療の具体例は、本発明の製剤中の2-アミノ-4-(-フルオロベンジルアミノ)-1-エトキシカルボニルアミノベンゼンを投与して、発作の重度又はその発生の頻度を低減することである。
【0036】
本明細書では、本発明の医薬製剤に関連して使用される場合の「有効量」という用語は、標的とされる疾患又は疾病に関連する少なくとも1つの症状を改善する原薬の量を意味するものとする。
【0037】
いくつかの実施態様において、本発明は、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む約5〜30%の薬物送達マトリックス、約1.0〜10%のアニオン性界面活性剤、及び腸溶性ポリマーを含む、放出調節医薬製剤を提供する。本発明の製剤は、被験者への投与後に、レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より4〜20時間長い、持続したレチガビンの血漿濃度を生み出す。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、原薬とともに使用するのに好適な放出調節医薬製剤を対象とする。一実施態様において、放出調節製剤は、持続したレチガビンの血漿濃度を与えるのに有用である。レチガビン又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物は、意図される用途及び治療レジメンによって、広範囲の服用量及び量で、本発明の放出調節医薬製剤中に製剤できる。一般的に、レチガビンは、製剤の総重量の約30〜70%で製剤に含まれてよい。より詳細には、レチガビン又はその医薬として許容し得る形態は、約40〜60%と約49〜58%との間のパーセンテージで本発明の製剤に含まれてよい。レチガビン又はその医薬として許容し得る形態は、例えば、以下の典型的なパーセンテージの間の全ての値を含む、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、又は69%で含まれてよい。したがって、本発明の製剤中のレチガビンの量はこれらのパーセンテージに対応する全ての重量を含む。典型的なレチガビンパーセンテージは以下の実施例に記載されている。レチガビンは、約100mgから約500mgの範囲を含む、約5mgから約500mgの服用量で投与できる。レチガビンの服用量は、1日1回、1日2回、1日3回、又はそれより多数回の投薬に利用される量を表すことがある。服用量は、レチガビンの5mgから500mgの全ての量、例えば、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、及びこれらの間の値全てを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施態様において、レチガビンはこの公知の多形体のいずれでも提供できる。例えば、その全内容が引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,538,151号は、レチガビンの3つの多形体A、B、及びCを記載している。いくつかの実施態様において、本発明の製剤は純粋な単一の多形体を使用できる。例えば、純粋な多形体Aを本発明の製剤に含めることができる。同様に、本発明の製剤は、純粋な多形体B又は純粋な多形体Cを含むことができる。さらなる実施態様において、本発明の製剤は、2種以上の多形体の任意の組み合わせ、A及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA、B、及びCを与えることができる。さらに、多形体の組み合わせが本発明の製剤に存在する場合、そのような多形体は任意の比率で存在してよい。
【0040】
本発明の放出調節医薬製剤は薬物送達マトリックスも含む。本発明の製剤に含まれる薬物送達マトリックスの量は、中性pHでの約80%の放出より約4〜20時間以上長く、レチガビンのバイオアベイラビリティを延長する助けになることができる。一般的に、薬物送達マトリックスは、本発明の製剤中に製剤総重量の約7.5〜30%含まれる。そのような比率は、模擬腸内条件下での放出よりはるかに長く、被験者への投与後に、持続したレチガビン血漿濃度を与えるであろう。薬物送達マトリックスは、本発明の製剤中に、約10〜20%のパーセンテージで、例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29%で、並びにこれらの典型的なパーセンテージの間の全ての値で含まれてよい。したがって、本発明の製剤中の薬物送達マトリックスの実際の量は、これらのパーセンテージに対応する全ての重量を含む。薬物送達マトリックスの典型的なパーセンテージは以下の実施例に与えられる。
【0041】
本発明の医薬製剤に有用な薬物送達マトリックスの具体例はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。典型的な種類のヒドロキシプロピルメチルセルロース薬物送達マトリックスには、例えば、Methocel(商標)K4M及びMethocel(商標)K4M CRを含むヒプロメロース2208がある。本発明の製剤に有用な他の薬物送達マトリックスには、例えば、Methocel(商標)E Premium、Methocel(商標)K15M Premium、Methocel(商標)K100LV Premium、及びエチルセルロースがある。そのような薬物送達マトリックスは、単独でも組み合わせても使用できる。リン酸二カルシウムを薬物送達マトリックスに含ませてもよい。
【0042】
本発明の放出調節製剤中の界面活性剤は、組成物全体の約10%までの比率で使用できる。したがって、界面活性剤は、製剤の約1.0から約10%を構成することができ、一般的には、製剤の約3から約6%、約3.5から約5.5%、又は約4から約4.5%を構成するだろう。界面活性剤は、例えば、以下の典型的なパーセンテージの間の全ての値を含んで、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、8.0、8.25、8.5、又は8.75%で含まれてよい。したがって、本発明の製剤中の界面活性剤の量は、これらのパーセンテージに対応する全ての重量を含む。界面活性剤の典型的なパーセンテージは本明細書中の以下及び総重量の異なる製剤の実施例に示されている。本発明の典型的な界面活性剤には、アニオン性界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び非イオン性ショ糖エステルがある。例えば、本発明の製剤中の界面活性剤は、約2〜6%のショ糖エステル界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施態様において、ショ糖エステル界面活性剤がないこともある。さらなる実施態様において、複数の界面活性剤の組み合わせを使用できる。そのような組み合わせは、ショ糖エステル界面活性剤を含むことも、含まないこともある。同様に、本発明の製剤中の界面活性剤は、約2〜6%のSDS界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施態様において、SDS界面活性剤がないこともある。複数の界面活性剤の組み合わせを有する製剤の場合、SDSは含まれることも、含まれないこともある。本明細書に与えられる教示及び指示に従い、先に記載されたもの又は当分野に周知であるものなどの他の界面活性剤を本発明の医薬製剤に含めることもできる。例えば、アニオン性界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウムをSDSの代わりに使用できる。
【0043】
崩壊剤は、約4%、3%、2%、又は1%までのパーセンテージを含み、製剤全体の約5%までを構成するように含まれることができる。単一の崩壊剤又は2種若しくは3種以上の崩壊剤を含む複数の崩壊剤を、製剤全体の約10%までを構成するように製剤に含めることができる。例えば、1種以上の崩壊剤を、それぞれ製剤全体の約0.5〜5.5%、1〜5.0%、2〜4.5%、2.5〜4.0%、又は3.0〜3.5%のパーセンテージ、並びに5%までのこれらの値の間の全ての範囲のパーセンテージで製剤中に含めることができる。本発明の製剤に適用可能な典型的な崩壊剤には、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、又はこれらの組み合わせがある。したがって、本発明の医薬製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0%、並びにこれらのパーセンテージの間の全ての値でのクロスポビドンを含んでよい。本発明の医薬製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0%、並びにこれらのパーセンテージの間の全ての値でのクロスカルメロースナトリウムを含んでよい。これらの典型的な崩壊剤並びに当分野に公知の他の崩壊剤は、製剤全体の約10%までで、個別に含まれても、その任意の組み合わせで含まれてもよい。本発明の製剤の崩壊剤の量及び組み合わせの具体例には、0.5〜5.5%のクロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム又はその組み合わせは0.5〜2.5%のクロスポビドン、2.0〜5.5%のクロスカルメロースナトリウム、又は0.5〜2.5%のクロスポビドン及び2.0〜5.5%のクロスカルメロースナトリウムを含む。
【0044】
本発明の放出調節医薬製剤は、広範囲の賦形剤をさらに含むことができる。賦形剤は当分野に周知であり、例えば、製造プロセス、投与量、及び原薬の送達を容易にするのに有用である。本発明の製剤の典型的な賦形剤は先に記載されており、以下の表1にさらに記載される。そのような賦形剤には、例えば、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、及び流動促進剤がある。
【0045】
本発明の製剤に含まれてよいさらなる賦形剤には結合剤がある。1種以上の結合剤が本発明の製剤に含まれて、約35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%までのパーセンテージを含む、製剤全体の重量の最大約40%を構成してもよい。単一の結合剤が製剤に含まれてよいが、それに代わり、2種、3種、又は4種以上の異なる結合剤が含まれて、製剤中の結合剤の総パーセンテージを構成してもよい。例えば、1種以上の結合剤が本発明の製剤に、以下の値の間及びそれを超え重量で製剤全体の約40%までの全範囲を含む、約5〜40%、20〜35%、25〜30%のパーセンテージ、並びに約1〜6%、1〜5%、1〜4%、2〜5%、又は3〜5%の範囲内のパーセンテージで含まれてよい。本発明の製剤に適用可能な典型的な結合剤には、例えば、重量で製剤全体の約40%までの微結晶性セルロース、ヒプロメロース2910、コポビドン、ポビドン、スターチ、及びポリエチレングリコール、並びにこれらの組み合わせの全てがある。本発明の製剤に適用可能な結合剤の典型的な量及びその組み合わせには、例えば、約5〜40%の微結晶性セルロース、0〜10%のヒプロメロース2910、0〜10%のコポビドン、0〜10%のポリエチレングリコールがある。
【0046】
したがって、本発明の医薬製剤は、例えば、1、3、5、10、15、20、25、30、35、又は40%の微結晶性セルロース、並びにこれらのパーセンテージの間の全ての値のパーセンテージの微結晶性セルロースを含むことができる。本発明の製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10%のヒプロメロース2910、並びにこれらのパーセンテージの間の全ての値のパーセンテージのヒプロメロース2910を含んでよい。さらに、本発明の製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10%のコポビドン、並びにこれらのパーセンテージの間の全ての値のパーセンテージのコポビドンを含んでよい。ポリエチレングリコールなどの結合剤は、本発明の製剤中に、例えば、以下のパーセンテージの間の全ての値を含む、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10%でさらに含まれてよい。これらの典型的な結合剤並びに当分野に公知の他の結合剤は、製剤全体の約40%までで、個別に含まれても、任意の組み合わせで含まれてもよい。本発明の製剤の結合剤の量及び組み合わせの具体例は、25〜30%の微結晶性セルロース、25〜30%の微結晶性セルロース及び3〜5%のコポビドン、25〜30%の微結晶性セルロース及び1〜4%のヒプロメロース2910、又は25〜30%の微結晶性セルロース、1〜4%のヒプロメロース、及び3〜5%のコポビドンである。結合剤の量及びその組み合わせの他の具体例のいくつかは以下の表1〜3にさらに例示されている。
【0047】
滑沢剤及び流動促進剤も本発明の放出調節医薬製剤に含まれて、各賦形剤に対して約2%まで又はそれ以上を構成することができる。したがって、1種の潤沢剤又は流動促進剤に対し、約0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、又は2.0%までのパーセンテージが製剤に含まれてよい。2種若しくは3種以上の異なる潤滑剤又は2種若しくは3種以上の流動促進剤の様々な組み合わせも、各賦形剤に対して約2%まで本発明の製剤に含まれてよい。本発明の製剤に有用な典型的な滑沢剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウムがある。本発明の製剤に有用な典型的な流動促進剤には、コロイド状二酸化ケイ素などの二酸化ケイ素がある。本発明の製剤中の滑沢剤及び流動促進剤の量の具体例には、それぞれ、0.5〜2.0%のステアリン酸マグネシウム及び0.25〜1.5%の二酸化ケイ素がある。
【0048】
いくつかの実施態様において、本発明の製剤は、約5〜30%の薬物送達マトリックス中に、約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物を含む。製剤は胃環境中での放出を妨げる薬剤も含む。得られる製剤は、例えば、図3並びに以下の表5及び6に示されるとおり、約4から約36時間続く長期間にわたり実質的に平坦な血漿濃度対時間プロファイルを与える。胃環境への放出を妨げる薬剤は、レチガビンの溶解も遅らせることができる。図5に見られるとおり、レチガビンの溶解度はpH3を超えると急激に低下する。例えば腸溶性ポリマーの使用により胃環境を回避することにより、レチガビンは、胃よりpHが高い大腸の環境に最初に曝露される。さらに、大腸中のpHは、典型的にはレチガビンが良好な溶解度を示すより高い範囲にある。
【0049】
いくつかの実施態様において、胃環境への放出を妨げる薬剤には腸溶性ポリマーがある。ほとんどの腸溶性ポリマーは、胃の中に見いだされるpHで安定な表面を呈することにより作用している。しかし、そのようなポリマーは、大腸に見いだされるような酸性度の低いpHで分解する傾向がある。腸溶性ポリマーとして使用できる物質には、脂肪酸、蝋、及びセラック、並びにプラスチックがある。いくつかの実施態様において、腸溶性ポリマーは、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMC-AS)、及びメチルメタクリラートと、メタクリル酸と、メチルアクリラートとの2種以上のコポリマーから選択される。いくつかの実施態様において、腸溶性ポリマーは、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートスクシナート、メチルセルロースフタラート、エチルヒドロキシセルロースフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、ポリビニルブチラートアセタート、ビニルアセタート−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸モノエステルコポリマー、メチルアクリラート−メタクリル酸コポリマー、及びメタクリラート−メタクリル酸−オクチルアクリラートコポリマーから選択される。上記の腸溶性ポリマーのいずれも単独又は組み合わせて使用でき、胃環境への放出を妨げる薬剤として作用できる他のポリマーとともに使用することもできる。
【0050】
腸溶性ポリマーは、製剤の放出性を調節する他の物質とともに使用してもよく、そのような物質には、エチルセルロースにより例示されるアルキルセルロース誘導体、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーなどの架橋ポリマー、デキストランなどの多糖類、エピクロロヒドリン、ジクロロヒドリン、1,2,3,4-ジエポキシブタンなどの二官能性架橋剤により処理されたセルロース誘導体がある。腸溶性ポリマーは、スターチ及び/又はデキストリンとともに使用できる。胃環境での放出を妨げる薬剤は、上述の送達マトリックス、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルアセタートとポリビニルピロリドンとのコポリマーから選択される送達マトリックスをさらに含みうる。
【0051】
いくつかの実施態様において、腸溶性ポリマー材料は、医薬として許容し得るメタクリル酸コポリマー及びアニオン性を有する類似物である。典型的なコポリマーはメタクリル酸及びメチルメタクリラートを主成分とし、例えばフリーのカルボキシル基:メチルエステル化カルボキシル基の比率が1:>3、およそ1:1又は1:2であり、平均分子量が135,000のものである。そのようなポリマーは、Eudragit(商標)の商標で販売されており、例えば、Eudragit L 12.5(商標)、Eudragit L 12.5P(商標)、Eudragit L100(商標)、Eudragit L 100-55(商標)、Eudragit L-30(商標)、Eudragit L-30 D-55(商標)などのEudragit Lシリーズ、Eudragit S 12.5、Eudragit S 12.5P(商標)、Eudragit S100(商標)などのEudragit S(商標)シリーズ、Eudragit NE 30D(商標)などのEudragit NE(商標)シリーズ、Eudragit RL 12.5(商標)、Eudragit RL 100(商標)、Eudragit RL PO(商標)、Eudragit RL 30D(商標)などのEudragit RL(商標)シリーズ、及びEudragit RS 12.5(商標)、Eudragit RS 100(商標)、Eudragit RS PO(商標)、及びEudragit RS 30D(商標)などのEudragit RS(商標)シリーズがある。これらの腸溶性ポリマーの従来の水性塗布は、Acryl-Eze(登録商標)(Colorcon, Inc.; West Point, PA)を使用して達成できる。
【0052】
上述の腸溶性ポリマーは、単独でも可塑剤とともにも使用できる。使用可能な水性可塑剤には、プロピレングリコール又は主にトリエチルシトラート若しくはアセチルトリエチルシトラートであるCitroflex(商標)若しくはCitroflex A2(商標)がある。非水性可塑剤には、上述の水性可塑剤並びにジエチルフタラート及びジブチルフタラート及びジブチルセバカートがある。腸溶性ポリマーは、タルク、シリカ、又はグリセリルモノステアラートなどの粘着防止剤とともに使用できる。腸溶性ポリマーは、全コーティング重量に対して約10から約25重量%の可塑剤及び全コーティング重量に対して約50重量%までの粘着防止剤、例えば約5から約20重量%の粘着防止剤とともに使用できる。
【0053】
本発明は、30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物、7.5〜30%の薬物送達マトリックス、0.5〜10%の崩壊剤、賦形剤、及び腸溶性コーティングを含む医薬製剤であって、被験者への投与後に、レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より約4〜20時間長く、持続したレチガビンの血漿濃度を生み出す医薬製剤をさらに提供する。
【0054】
本明細書での教示及び指示を考慮すれば、先に例示されたものでなく当分野に公知の賦形剤を本発明の放出調節医薬製剤に含むこともできる。例えば、医薬製剤の製造、貯蔵、及び/又は送達において種々の有用な機能を有する広範囲の賦形剤がある。そのような賦形剤の添加又はそれによる置換によって、模擬インビボ条件下で活性薬剤(レチガビン)のインビトロ放出に要する時間より約4〜20時間長く、持続した原薬の血漿濃度を生み出す本発明の製剤の能力が実質的に変わらない限り、そのような賦形剤のいずれも本発明の製剤に含むことができる。さらに、補助の物質、キャリア、及び/又は希釈剤を含む、医薬として許容し得るキャリアなどの賦形剤も本発明の製剤に含まれてよい。そのような他の賦形剤の例には、リン酸二カルシウム及びEudragit(商標)又はAcryl-Eze(登録商標)(Evonik Industries 及びColorconから市販)などの腸溶性コーティングがある。上述の成分の一部又は全てを種々の組み合わせ及び比率で含む本発明の医薬製剤は、以下で実施例及び表1〜3にさらに例示される。
【0055】
本明細書に例示された成分を有する本発明の医薬製剤は、即放性製剤又は徐放性製剤に比べて、プラトー又はおおよそのピーク血漿濃度が長期間持続するように、原薬の放出調節をもたらす。図3は、摂食及び絶食の両方の状態での本発明の2,3の典型的な製剤のそのような持続した血漿濃度を表す。図中に示されるとおり、活性成分は、具体的な製剤及び個体が摂食状態か絶食状態かにより、約2〜5時間以内又はそれ以上でおおよその最大濃度に上昇する。おおよその最大濃度にほぼ等しい濃度は、約25〜30時間持続する。したがって、本発明の放出調節医薬製剤は、約3から約36時間、約3から約28時間、約4から約25時間、5から約20時間、6から約15時間、又は約5から約10時間持続した血漿濃度をもたらすことができる。一般に、本発明の製剤は、被験者への投与後に、レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より4〜20時間長く、持続したレチガビン血漿濃度を生み出すことができる。このインビトロ溶出プロファイルは、模擬インビボ条件下でも成り立つ。模擬インビボ条件下でのレチガビンのインビトロ放出は、胃条件を模すことのできる酸度に、ある期間レチガビン製剤を曝露させるものである。例えば、図4及び以下の実施例Vにおいて、胃条件は、レチガビン製剤を0.1NのHClに1時間初期曝露させて模される。腸溶性ポリマーを取り入れた本発明の製剤は、図4及び実施例Vに示されるとおり、これらの条件下でレチガビンの最低放出を示すと思われる。
【0056】
本発明の一用量放出調節製剤から生じる原薬の典型的な持続した血漿濃度には、例えば、摂食又は絶食状態で約400mgの投与量で1日1回投与後に少なくとも約20ng/ml、より詳細には約400mgの投与量で少なくとも約50、100、150、200、250、300、又は350ng/ml以上である。特に、本発明の典型的な製剤は、絶食状態で、約100ng/mLから約300ng/mL又はその90%信頼区間内のCmaxを生み出す。実施例でさらに記載されるとおり、絶食又は摂食状態での投与後の典型的なレチガビンの血漿中濃度対時間曲線下の面積(AUC)を利用して、活性成分の持続した濃度を見積もることができる。例えば、400mgで1日1回投与される製剤では、本発明の製剤は、約3000ng-hr/Lから約7000ng-hr/Lの範囲である絶食状態でのAUC0-inf値を与える。他の実施態様において、AUC0-infは、約4000ng-hr/Lから約6800ng-hr/Lであり、さらなる実施態様において約4000ng-hr/Lから約10,000ng-hr/Lである。当業者は、頻度の変更とともに投与量の変更によりCmax及びAUC0-infに類似の結果を得る能力を認識するであろう。同様に、当業者は、観察されたCmax及び/又はAUC0-inf値が、本明細書に例示された製剤の放出調節特性に実質的に影響することなく、上述の典型的な値に比べて、異なる投与量及び頻度では変わりうることを認識するであろう。投与量は、例えば、400mg服用量で示されたCmax及びAUC結果を実質的に変えることなく、例えば、1日おき、1日2回、1日3回、及び1日4回の投与用に処方できる。持続した血漿濃度に加え、本発明の放出調節製剤は、即放性製剤に比べて一定なクリアランス速度も示す。
【0057】
本発明の放出調節製剤は、投与後約0.5から2時間に原薬の少なくとも一部を放出する。しかし、放出調節製剤は、原薬の少なくとも一部の放出を約4から6時間遅らせることのできる腸溶性コーティングとともに使用することもできる。これは、腸内でのより緩慢な持続した放出を可能にすることにより有益になりうる。これは、活性成分の長期のバイオアベイラビリティを保証すると同時に効果的にCmaxを下げることにより、副作用の低減に有用になりうる。原薬の放出とは、製剤中の他の成分から解離又は放され次いで溶出する遊離の化合物の量又はパーセンテージを意味する。比較すると、即放性製剤は、投与後最初の1時間内に90%を超える活性成分を生み出す。特定の実施様態において、放出調節製剤では、投与後最初の2時間の間に製剤からの原薬の放出は90%以下である。他の実施態様において、本発明の製剤では、投与後最初の2時間の間の原薬の放出は80%以下、70%以下、又は約60%以下である。例えば、原薬の少なくとも約80%を放出する時間は、例えば、少なくとも約4時間になりうる。本発明の典型的な製剤の放出割合は図2及び3に示されている。いくつかの実施態様において、インビボでの活性成分の放出は、インビトロ放出後約3から6時間である。
【0058】
活性成分が製剤から放出される量又は割合を見積もる方法は当分野に周知である。典型的な方法には、例えば、EA残差(residual)試験及び直接試験(direct test)がある。簡単に言うと、残差試験は、溶解状態にある選択された時間後に製剤中に残る活性成分の量を測定するものである。各時間で最初に存在した量から各時間で放出された量を引くと、放出割合が得られる。直接試験は、各時間点での溶解媒体中の原薬の濃度を測定して、放出の割合又は量を計算するものである。本発明の製剤からの典型的な原薬放出割合は、0.5時間で約8から100%、1時間で18から100%、2時間で34〜100%、3時間で53〜100%、及び4時間で66〜100%であるが、より詳細な放出割合情報は以下の実施例で与えられる。
【0059】
本発明の製剤は、いくつかの実施態様において約4から約36時間、他の実施態様において約10から20時間持続する、実質的に平坦な部分を有する血漿濃度対時間プロファイルにより特徴づけることができる。理論に拘束はされるものではないが、レチガビンの血漿濃度がCmaxである長い期間は再循環などの生物学的な機構に関連づけることができる。例えば、多くの薬剤は、変化しない形態又は結合した形態での胆汁による除去を含む腸肝再循環を受ける。胆汁中に分泌された薬剤は胆嚢に入り、それは定期的に小腸に排出される。小腸へ入ることは薬剤が体内へ再び吸収される手段となり、薬剤が体から除去されるのに要する時間を長くする。
【0060】
やはり理論に拘束はされるものではないが、レチガビンの血漿濃度がCmaxである長い期間は、レチガビンと送達マトリックスとの準安定複合体の形成に関連づけることができる。レチガビンの血漿濃度がCmaxである長い期間のさらに他の理由は、腸肝再循環と複合体形成の組み合わせに関連づけることができる。長い期間のさらに他の理由は、レチガビンの溶解度プロファイルに関連づけることができる。腸溶性ポリマーの影響下で、レチガビン製剤は、高酸性である胃の環境を回避し、薬剤の溶解度及び全身への放出に影響するほど酸度が高い大腸へと入る。
【0061】
本発明の放出調節医薬製剤は、当分野に周知の種々の異なる固体剤形を含む、ドライパウダー製剤に製造できる。固体剤形は通常は経口で特定の部位に正確な投与量を送達するのに特に有用であるが、舌下、直腸内、又は膣内にも投与できる。固体剤形には、例えば、錠剤、丸剤、チュアブル錠、カプセル、カプレット、ペレット、又は顆粒などがある。
【0062】
本発明の放出調節医薬製剤は、本明細書に述べられる成分比率が最終剤形中に保たれる限り、原薬の任意の所望の固体投与量を、固体剤形の任意の所望の総重量で含むように製造することができる。原薬は、N-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル又はN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステルに類似の溶解度特性を有する化合物でよい。例えば、固体剤形は、剤形あたり5、10、15、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400mg以上の活性成分を含むように製造できる。剤形の典型的な総重量には、例えば、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800mg以上がある。これらの典型的な活性成分の量及び総重量の間の重量、それらより上の重量、及びそれらより下の重量も、本明細書に与えられる教示及び指示を考慮すれば製造できる。本発明の放出調節製剤は持続した血漿濃度を与えるので、1日3回(TID)、1日2回(BID)、1日1回(QD)、1日おき、週に3回、週に2回、週に1回、又はより長い投薬期間で投与するための原薬の有効量を有するように調製される剤形に特に有用である。そのような低い投薬レジメンは同様に患者の服薬遵守を向上させる。そのような固体剤形は、当分野に公知の薬務に従い包装及び貯蔵できる。
【0063】
当分野に周知のドライパウダー製剤の製造方法は、本発明の放出調節医薬製剤の製造に利用できる。そのような方法には、例えば、直接打錠、混合、及び/又は造粒がある。良好に混合可能なパウダー製剤は、例えば、直接打錠により錠剤又は他の固体剤形に圧縮できる。混合には、例えば、対流混合、剪断混合、及び/又は拡散混合がある。例えば、湿式造粒、乾式造粒、流動床造粒、及び押出造粒を含む造粒方法を、他のパウダー製剤の製造に利用でき、その後錠剤又は他の固体剤形へ圧縮できる。
【0064】
製剤均質性は、例えば、湿式又は乾式の粉砕により粒径を低下させ、且つ/又は、例えば、製剤成分を数段階で結合及び混合することにより向上させることができる。例えば、原薬を、例えば乾式又は湿式造粒により成分の1種類以上とともに造粒し、次いで残りの成分と混合できる。それに代わり、原薬を、例えばまず1種以上の薬物送達マトリックスと乾式混合することができ、流動促進剤、滑沢剤などの他の賦形剤はその後1回以上の混合操作において混合される。望まれる場合、混合する前に1種以上の成分をふるい分け若しくは粉砕又はその両方により分粒できる。最終的な薬剤製品を調製するために、圧縮剤形は、コーティング、研磨などのさらなる処理を受けることができる。乾式混合、湿式及び乾式造粒、粉砕、ふるい分け、打錠、コーティングなどの議論並びに医薬組成物調製のための当分野に公知の他の方法の記載には、A.R. Gennaro編、レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)(第20版、2000); H.A. Liebermanら(編)医薬剤形:錠剤(Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets), Vol. 1-3(第2版、1990);及びD.K. Parikh及びC.K. Parikh,医薬造粒技術のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology), Vol. 81 (1997)を参照されたい。
【0065】
上述の方法を利用して製造される製剤は、さらに以下で実施例中に例示される。したがって、本発明は医薬製剤の製造方法を提供する。典型的な特定の実施態様において、該方法は、粉砕されたN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステルなどの原薬を、例えば、薬物送達マトリックス、界面活性剤、及び結合剤、及び/又は本明細書に例示された成分と、先に例示された比率又は以下の表1〜3に示される比率で混合する工程を含む。混合プロセスに次いで、混合物を圧縮して適切な形状の錠剤にする。次いで、錠剤、カプセル、又は他の剤形は、任意に腸溶性コーティング又は他の種類のコーティングにより仕上げることができる。他の典型的な特定の実施態様において、該方法は、以下で実施例IIに例示される方法などの、本発明の医薬製剤を調製する湿式造粒方法を含む。造粒は、高剪断ミキサー又は流動床ドライヤーで実施できる。この典型的な製剤は滑沢剤を混ぜられ(lubricated)圧縮されて、所望の剤形が調製される。剤形は、任意に腸溶性コーティングにより仕上げることができる。本発明の方法により調製される医薬製剤は、貯蔵又は即時の使用に好適な活性成分の長期安定性を示す。
【0066】
本発明の医薬製剤の固体剤形は、持続した期間にわたり、原薬の制御された量を送達するのに有用である。したがって、本発明は、原薬の放出を制御する方法を提供する。該方法は、30〜70%の原薬、1〜30%の薬物送達マトリックス、9%までの界面活性剤、及び賦形剤を有する医薬製剤であって、個体への投与後約4〜20時間の間持続した原薬の血漿濃度を生みだし、該原薬レチガビン又はN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル又は医薬として許容しうるその塩、溶媒和物、若しくは水和物に実質的に類似する溶解度特性を有する化合物である医薬製剤を個体に投与する工程を含む。
【0067】
神経系の過興奮により特徴づけられる疾患の治療方法も提供される。該方法は、30〜70%の原薬、1〜30%の薬物送達マトリックス、9%までの界面活性剤、及び賦形剤を有する有効量の医薬製剤であって、被験者への投与後約4〜20時間の間持続した原薬の血漿濃度を生みだし、該原薬がレチガビン又はN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル又は医薬として許容しうるその塩、溶媒和物、若しくは水和物に実質的に類似する溶解度特性を有する化合物を含んでなる医薬製剤をその必要のある被験者へ投与する工程を含む。
【0068】
レチガビン又は類似の構造及び/又は溶解度プロファイルを有する化合物の構造を有する活性成分は、神経系の過興奮により特徴づけられる広範囲の疾患を治療するために本発明の医薬製剤に含めることができる。そのような疾患には、例えば、発作、てんかんなどの発作性疾患、痙攣、及び神経因性疼痛、並びに以下に例示される疾患がある。レチガビンに関連する1,2,4-トリアミノベンゼン誘導体を含む化合物は、神経系の過興奮により特徴づけられるこれらの疾患及び他の疾患若しくは疾病を治療するために記載されてきた。レチガビン又は関連化合物とともに放出調節医薬製剤を利用すると、長期にわたる持続した血漿濃度の生成によってより低い投薬及びより高い効能を与えるので、特に有用である。
【0069】
例えば、レチガビンなどの化合物は、発作、てんかん発作、遺伝性てんかんである良性家族性新生児痙攣、複雑部分発作、痙攣、及び/又は他の発作性疾患の治療又は重度の低減に有効である(例えば、米国特許第5,384,330号;Bialerら、Epilepsy Research 34:1-41 (1999); Blackburn-Munro及びJensen, Eur. J. Pharmacol. 460:109-116 (2003); Wickendenら、Expert Opin. Ther. Patents 14:1-13 (2004); Porterら、Neurotherapeutics 4:149-154 (2007); Rogawski, Trends in Neurosciences 23:393-398 (2000)を参照されたい)。
【0070】
レチガビン及びフルピルチンなどの関連化合物は、例えば、異痛症、痛覚過敏、幻肢痛などの神経因性疼痛の治療又は重度の低減にも有効である(例えば、米国特許第6,117,990号及び該特許中に引用されている参考文献及びBlackburn-Munro and Jensen、前記を参照されたい)。異痛症とは、接触又は熱さ/冷たさなどそれ自体痛みのない刺激を痛みとして知覚することを意味する。痛覚過敏とは、正常な人間よりも痛みの刺激を強く感じることを意味する。幻肢痛とは、存在しない痛みの知覚を意味する。反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)及び交感神経依存性疼痛(SMP)という用語もさらに使用される。したがって、本発明の放出調節医薬製剤に含まれるレチガビン又は関連化合物は、低い痛覚閾値により明らかになる疾患並びに高い痛覚閾値により明らかになる疾患の治療に有用である。神経因性疼痛を起こす広範囲の疾患及び疾病がある。典型的な原因には、例えば、帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こす帯状疱疹などのウイルス感染、帯状疱疹の痛みを伴う通常の合併症、後天性免疫不全症候群、火傷、ガン、ガンの細胞増殖抑制治療又は細胞傷害性治療、神経損傷、及び/又は神経圧迫がある。
【0071】
本発明の放出調節製剤中のレチガビン又は関連化合物に有用な他の効果の促進には、例えば、筋弛緩などの疼痛の治療、解熱、及び/又は末梢鎮痛に有用なものがある(例えば、米国特許第5,384,330号;同第6,326,385号参照)。本発明の放出調節製剤中のレチガビン又は関連化合物は、例えば神経変性疾患及び/又は脳卒中並びに神経変性疾患及び脳卒中により起こるものなど急性又は慢性の脳血流量低下の二次効果又は後遺症の治療に有用な神経保護効果を促進するのにさらに有用である(例えば、米国特許第5,852,053号参照)。本発明の放出調節製剤中の活性成分としてのレチガビン又は関連化合物での治療を適用可能な典型的な神経変性疾患には、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ヒト免疫不全ウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルス、及びボレリアの感染により媒介される脳症を含む感染関連脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、外傷誘発性神経変性又はニューロン過興奮状態、中毒からの離脱、末梢神経系の疾患及び/又は多発性神経炎又は多発性神経炎疾患がある。
【0072】
レチガビン又は関連化合物の活性成分を有する本発明の放出調節製剤に有用な他の治療用途には、例えば、異常又は望ましくない平滑筋収縮により起こされる病態がある。上述のとおり、レチガビン又は関連化合物は平滑筋の収縮を阻害するのに有用である。望ましくない平滑筋収縮を示す病態には、例えば、過敏性腸症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胆嚢疾患、高血圧、及び食道活動亢進(esophageal hyperactivity)がある。
【0073】
さらに、レチガビン又はフルピルチンなどの関連化合物の分子的作用部位の1つはカリウムチャネルである。例えば、N-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステルは、電位開口型カリウムチャネルを活性化又は開口するカリウムチャネル調節物質である。チャネルの開口は、ニューロンの興奮の低減及び/又はカリウムKCNQ2/3チャネルの神経伝達物質放出の減少を起こす(Delmas及びBrown, Nat. Revs Neurosci. 6:850-62 (2005); Wickendenら、Mol. Pharmacol. 58:591- 600 (2000); Mainら、Mol. Pharmcol.58:253-62 (2000); Wuttkeら、Mol. Pharmacol.67:1009-17 (2005))。さらに、N-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステルなどの化合物は、ニューロンM電流を増加させ、KCNQ2及び/又はKCNQ3チャネル(まとめて「KCNQ2/3」チャネル;Delmas及びBrown, (上記))のチャネル開口確率を高めることが示されている。したがって、ニューロンの興奮増加、カリウムチャネル開口低減、及び/又はニューロンM電流減少により起こるか又は悪化する疾患は、式Iの1,2,4-トリアミノベンゼン誘導体を活性成分として有する本発明の放出調節製剤を利用して治療できる。そのような疾患は、本発明の放出調節製剤により電位開口型カリウムチャネルが活性化され、1つ以上の症状の発生又は重度が緩和されることにより特徴づけることができる。
【0074】
上記の疾患又は疾病のいずれの治療も、有効量の活性成分を有する本発明の放出調節製剤の投与に達成できる。有効量は少なくとも1つの症状を緩和するに十分な量を含み、疾患及び所望の治療レジメンにより変動しうる。有効量は、1日あたり約5〜1,500mg又は1用量あたり約0.1〜5.0mg/kgの範囲であり得る。例えば、被験者に、1日あたり約10〜1,200mg、20〜1,000mg、約30〜800mg、約40〜600mg、約50〜400mg、約60〜200mg、又は約70〜100mgの活性成分の有効量を有する本発明の放出調節製剤を投与することができる。本発明の放出調節製剤中の活性成分の他の有効量には、例えば、1日あたり1.0、2.5、5.0、7.5、10、12、15、18、20、22、25、28、30、32、35、38、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mgがある。上記の典型的な有効量の間の値は全て、本発明の放出調節製剤中の活性成分の有効量を構成することができる。同様に、当業者は、上記で例示された量に対応する体重あたりの量が有効量の基準として使用できることも理解するであろう。
【0075】
有効量は、一般的に、1日約3回(TID)、1日2回(BID)、1日1回(QD)、週に3回、週に2回の投薬期間で、又はより大きな投薬間隔で送達することができる。しかし、剤形によっては、例えば1日あたり2回以上、又は週に4、5、若しくは6回などのより頻繁な投薬間隔で有効量を送達することもできる。
【0076】
同様に、本発明の放出調節医薬製剤は種々の異なる投与様式にも適用できる。放出調節製剤は、例えば経口投与される固体剤形として本明細書に例示される。しかし、当業者は、そのような固体剤形が、例えば他の経路により投与される医薬キャリア、液体希釈剤、又はシロップと混合可能であることを理解するであろう。医薬として許容し得る液体の媒体への希釈は、投与の直前又は活性製剤の実質的な放出の前に起こりうる。特に有用な媒体には、例えば、緩衝剤又は活性製剤の放出を妨害又は阻害するpHを有する他の溶液がある。本明細書に与えられる教示及び指示を考慮すると、当業者は、種々の異なる投薬間隔及びさらには種々の投与様式が、本発明の放出調節製剤とともに利用するのに適用可能であることを理解するであろう。
【0077】
したがって、本発明は、神経系の過興奮により特徴づけられる疾患を治療する方法であって、該疾患が発作性疾患、神経因性疼痛、神経変性病態、又は電位開口型カリウムチャネルの活性化若しくは平滑筋の異常な収縮により特徴づけられる疾患を含む治療方法をさらに提供する。本発明の放出調節製剤は、例えば、抗発作作用、筋弛緩作用、解熱作用、末梢鎮痛作用、又は抗痙攣作用を生み出すためにも使用できる。他の作用には、KCNQ2/3のチャネル開口確率の増大又はニューロンM電流の増加がある。
【0078】
本発明の種々の実施態様の活動に実質的に影響しない改良も、本明細書に与えられる本発明の定義内に含まれることが理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を説明するが限定するのではないものとする。
【実施例】
【0079】
(実施例I)
(放出調節製剤の組成及び比率)
この実施例は、式Iの化合物の製剤の成分及び成分の比率を説明する。
【0080】
表1は、放出調節剤形にある医薬組成物の製剤の成分及び成分の比率を示す。以下の実施例全てにおいて、利用される活性成分の比率は、剤形全体の35%から65%の範囲であり、残りは、表1に示される範囲の結合剤、崩壊剤、界面活性剤、放出調節剤、流動促進剤、又は滑沢剤を構成する。製剤の一部の直接打錠のための乾式混合若しくは湿式造粒又は製剤全体の湿式造粒を利用して、顆粒及び錠剤を製造した。
【0081】
【表1】

【0082】
(実施例II)
(放出調節製剤の調製)
この実施例は、本発明の放出調節製剤の調製方法を説明し、本発明の放出調節製剤の調製に利用される成分及びそれぞれの比率を与える。
【0083】
本明細書に記載される方法は、そのような多くの方法が当分野に公知であるため、当業者により理解されるであろう。表2は、特許請求される発明のいくつかの実施態様の調製に利用される成分及び比率を示す。表1及び2に使用される成分の量及び比率が、成分の比率を保ちながら少量にも多量にも配分でき、本発明の異なる放出調節製剤を生み出すことが理解できよう。成分のそのような配分も、請求項及び本発明の範囲内であることをさらに理解されたい。
【0084】
放出調節製剤A、B、C、D、F、及びHは以下のとおり調製した。簡単に言うと、レチガビンを粉砕し、表2に示す比率で微結晶性セルロース、ヒプロメロース2208、クロスポビドン、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と15分間混合した。カプレットは打錠により調製し、腸溶性コーティングにより仕上げた。
【0085】
放出調節製剤Eは以下のとおり調製した。レチガビンを粉砕し、ヒプロメロース2208、コポリビドンと混合し、最高温度50℃で流動床ドライヤー中でヒプロメロース2910の水溶液とともに造粒した。顆粒をクロスカルメロースナトリウムと混合し、滑沢剤と混合した。打錠し、腸溶性コーティングした。
【0086】
放出調節製剤Gを以下のとおり調製した。粉砕したレチガビンをRobot Coupe高剪断ミキサーで微結晶性セルロース、ヒプロメロース2208、プラスドン、及びドデシル硫酸ナトリウムと混合した。1500rpmで混合しながら、結合溶液を加えた。湿った顆粒の塊をふるいに通した。顆粒をオーブン中で45℃で乾燥し、その後滑沢剤及びクロスカルメロースナトリウムと混合し、次いで打錠した。
【0087】
放出調節製剤Iを以下のとおり調製した。簡単に言うと、粉砕したレチガビンを微結晶性セルロースの一部及びショ糖エステルと混合し、流動床ドライヤー中で最高温度50℃で水溶液及びヒプロメロース2910とともに造粒した。顆粒をヒプロメロース2208、クロスポビドン及び微結晶性セルロースの残量と混合し、滑沢剤を混ぜ、カプレット形状の錠剤に圧縮した。
【0088】
【表2】

【0089】
表2の放出調節製剤をpH7.5及びpH2.0で溶出特性について試験し、胃の中及び消化管(GI管)中での予測される溶出の程度を決定した。決定するために、USP溶出装置を利用するレチガビンの溶液への放出の割合を、表2の放出調節製剤のそれぞれに対し決定した。USP概要溶出試験に利用される手順に類似の緩衝媒体を利用して、インビトロ溶出試験を実施した。USP Type II装置、pH7.5の緩衝液及び1.7%(w/v)SDS又は模擬胃液(0.1N HCl)を使用して溶出させ、述べられた時間にわたり放出された薬剤のパーセンテージを測定した(例えば、米国薬局方(U.S. Pharmacopeia)、第28版、711章、2番目の補遺(2005年8月1日から2005年12月31日)を参照されたい)。時間の関数として放出されたレチガビンの%(w/w)として結果を報告する。
【0090】
表3は、放出調節製剤A〜Iに関して4時間にわたるレチガビン放出の割合を示す。製剤は全て、SDSを含むpH7.5ホウ酸緩衝液において、様々な溶出特性を示した。「A」は迅速な溶出を示し0.5時間以内に完全な溶出が起こった。「B」の放出割合は46%で測定し、3時間後に100%のレチガビンが放出された。放出調節製剤「C」は0.5時間で23%の放出割合及び4時間後に84%レチガビン放出をもたらした。放出調節製剤「D」の放出割合は比較的迅速で、0.5時間で75%の放出割合をもたらし、2時間で100%放出が起こった。製剤「E」の放出割合は測定できなかった。製剤「F」の放出割合は0.5時間で40%であり、4時間の時点で94%放出された。製剤「G」の放出パーセントは0.5時間で28%であり、4時間で90%と測定された。製剤「H」は比較的緩慢な放出割合を示し、0.5時間で14%の、4時間で72%のレチガビン放出が起こった。放出調節製剤「I」は、pH7.5緩衝媒体と0.1N HClの両方で試験した。緩衝媒体中で、放出調節製剤「I」は比較的低い放出割合を生みだし、0.5時間で8%の、4時間で66%のレチガビン放出が起こった。0.1NのHCl中では、0.5時間でのレチガビン放出割合は11%であり、2時間の時点で34%であった。
【0091】
放出割合を変動できるため、本発明の放出調節製剤は、独特の治療を要する患者において様々な程度の全身曝露を可能にする。
【0092】
【表3】

【0093】
(実施例III)
(成分量の異なる放出調節製剤の調製)
この実施例は、200mgのレチガビンを含む本発明の数種の放出調節製剤の組成及び比率を説明する。
【0094】
数種の放出調節製剤を、200mgのレチガビン及び様々な比率の本発明の成分を使用して調製した。表4は、200mgのレチガビンの数種の放出調節製剤を示す。錠剤のミリグラムあたりの成分の割合をかっこ内に示す。製剤9では、余分な顆粒のSDSを使用して組成物を調製した。成分の割合を維持しながら、表4に記載されているとおり、より大きい成分配分もより小さい成分配分も利用でき、同等な放出調節製剤を製造できることを当業者は理解できよう。そのような配分が本発明の範囲内にあることもさらに理解できよう。
【0095】
放出調節製剤を、上記の実施例IIに記載のとおり調製した。
【0096】
【表4】

【0097】
(実施例IV)
(数種の放出調節製剤の薬物動態学的パラメータの統計分析)
この実施例は、400mgレチガビン放出調節製剤を投薬される摂食及び絶食被験者中の血漿レチガビン薬物動態学的パラメータの比較を与える。
【0098】
レチガビンを含む放出調節製剤の血漿濃度時間プロファイルをより正式に評価するために、72時間の期間にわたり摂食及び絶食被験者においてPK試験を実施した。全体で14人の被験者が製剤の単回経口投与を受けた。
【0099】
1試験において、400mgのレチガビンを含む製剤1、3、5、及び6を摂食及び絶食被験者に経口投薬し、その結果を以下の表5に示す。一般に、被験者の体重を量り、レチガビン含有放出調節製剤を経口投与した。摂食被験者には食事とともに投薬した。絶食被験者は投薬4時間後に食事をし、投薬前に終夜絶食した。静脈穿刺により採血し、遠心分離により血漿を単離した。分析の時間まで血漿を-80℃で凍結した。認証された方法によりレチガビン濃度を測定した。濃度範囲にわたって直線である標準試料標準濃度(standard reference standard concentration)範囲で試料を分析した。
【0100】
曲線下面積(AUC)値(ng-hr/mL)値を、標準非コンパートメント法及び最小二乗(LS)平均を利用して測定し、平均比(mean ratio)(即放性錠の200mg服用量に対する)及び平均比の90%信頼区間を表5に示す。表5は、試験した放出調節製剤は全て同等なLS-平均AUC値を生み出したことを示す。400mgのMR製剤の服用量及び200mgのIR製剤服用量の投与と一致して、全放出調節製剤のAUC値の平均比は、144.48から235.7であった(MR 5、2×200mg、絶食)。さらに、食物効果が製剤のいくつかで観察され、絶食の被験者に対し摂食の被験者で測定されたAUC値は高かった。しかし、食品効果を示さなかった製剤もある。
【0101】
【表5】



【0102】
図3は、即放性対照に比べた、絶食又は摂食状態で経口投与された被験者の、製剤1、3、5、及び6の薬物動態学的プロファイル(PK;平均値)の比較を示す。
【0103】
放出調節製剤1、3、及び6の吸収及び排出プロファイル(72時間の期間にわたり測定した平均値)は、プラトー様の濃度プロファイルがおよそ15から20時間保たれており比較的類似していた。食物とともに投薬された場合の製剤1及び3では濃度は高かったが、それでもプラトー様濃度プロファイルは12〜20時間維持された。製剤3は、食物とともに投薬されても食物なしの投薬でも類似の総曝露を与えた。全体として、製剤1、3及び6は、インビトロ溶出結果に基づいて予測されるより著しく長い、12〜20時間の間ピーク濃度のレベル付近に維持される濃度を生み出すプラトー様濃度プロファイルを示した。
【0104】
別のPK試験を、以下の表6に要約するとおり製剤8及び9で実施した。
【0105】
【表6】

【0106】
(実施例V)
(放出調節製剤1〜9の溶出プロファイル)
この実施例は、製剤1〜9を利用して製剤されるレチガビンの溶出割合及びプロファイルを与える。
【0107】
実施例IIに記載された方法を利用し、製剤1〜9を、USP概要溶出手順を利用して溶出した。0.1N HCl(胃液への曝露の模擬インビボ条件)中で1時間、次いでpH7.5のホウ酸緩衝液中で4〜5時間におけるレチガビン放出割合を、4〜6時間にわたり測定した。図4は放出プロファイルである。0.1N HCl(pH2.0)には製剤1〜5及び7~9のいずれもほとんど溶出しないが、即放性(IR)レチガビン製剤は、示されるとおり1時間でこの媒体に完全に溶出した。
【0108】
全体として、これらの試験は、本発明の放出調節製剤が、胃に存在する低pH環境(pH2.0)の存在下で剤形の完全性が維持できることを示す。該製剤は、GI管に存在する高pH環境中で調節及び制御されたレチガビンの溶出も可能とする。
【0109】
(実施例VII)
(水溶液へのレチガビンの溶解度)
この実施例は、様々なpH値でのレチガビンの溶解度特性を与える。
【0110】
様々なpH環境中でのレチガビンの溶解度を評価するために、レチガビンを典型的な活性成分として使用する溶解度試験を37℃の水溶液で実施した。レチガビンの代表的な溶解度曲線を図5に示す。この結果は、最大の溶解度がpH1.5で見られ、水溶液中でおよそ16mg/mlの溶解度であることを示している。pH2.0まで上昇させると、ちょうど4mg/ml未満の溶解度になった。pH3.0まで上昇させると、水性条件下ではほとんど不溶性となった。pH4.0からpH12.0のpH範囲では溶解度は低かった。このpHプロファイルは、レチガビンが酸性(例えばpH2.0)条件下の胃で溶解すると予測されるだろうことを示すが、これは腸溶性コーティングが存在すれば防がれるであろう。
【0111】
本願全体で、種々の刊行物を引用した。これら刊行物の開示は、本発明が関係する技術水準をより完全に記載するために、その全内容が参照により本願に組み込まれる。
【0112】
本発明を、開示された実施態様に関連して記載したが、当業者は、具体的な実施例及び上記で詳述された試験が本発明を説明するに過ぎないことを容易に認識するであろう。本発明の精神から逸脱せずに種々の改良が可能であることを理解されたい。したがって、本発明は以下の請求項にのみ限定される。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物;
約5〜30%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む薬物送達マトリックス;
約1.0〜10%のアニオン性界面活性剤及び
腸溶性ポリマーを含む放出調節医薬製剤であって、
被験者への投与後に、前記レチガビンの80%のインビトロ放出に要する時間より4〜20時間長く、前記レチガビンの持続した血漿濃度を生み出す、前記放出調節医薬製剤。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウムである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記腸溶性ポリマーが、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMC-AS)、及びメチルメタクリラートと、メタクリル酸と、メチルアクリラートとの2種以上のコポリマーから選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
約5〜40%の結合剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
前記結合剤が微結晶性セルロースを含む、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
前記結合剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに含む、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
前記結合剤がコポビドンをさらに含む、請求項5記載の製剤。
【請求項8】
約0.5〜10%の崩壊剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項9】
前記崩壊剤がクロスポビドンを含む、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
前記崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
滑沢剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムを含む、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
流動促進剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項14】
前記流動促進剤が二酸化ケイ素を含む、請求項13記載の製剤。
【請求項15】
レチガビンが、約5mgから約500mgの範囲の服用量で投与される、請求項1記載の製剤。
【請求項16】
レチガビンが、約100mgから約500mgの範囲の服用量で投与される、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
約30〜70%のN-(2-アミノ-4-(フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは水和物;約5〜30%の薬物送達マトリックス、及び胃環境中での放出を妨げるための薬剤を含む製剤であって、血漿濃度対時間のプロファイルが、約4時間から約36時間継続する長期間にわたり実質的に平坦である、前記製剤。
【請求項18】
200mg服用量に対し、絶食条件下で、約100ng/mLから約300ng/mLのCmax、又はその90%信頼区間の生成をさらに含む、請求項17記載の製剤。
【請求項19】
400mg服用量に対し、約4000から約10,000ng*hr/Lである濃度−時間曲線下の面積(AUC0-inf)、又はその90%信頼区間の生成をさらに含む、請求項17記載の製剤。
【請求項20】
胃環境中での放出を妨げる薬剤が腸溶性コーティングを含む、請求項19記載の製剤。
【請求項21】
胃環境中での放出を妨げる前記薬剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルアセタートとポリビニルピロリドンとのコポリマーから選択される送達マトリックスの提供をさらに含む、請求項20記載の製剤。
【請求項22】
神経系の過興奮により特徴づけられる疾患を治療する方法であって、その必要のある被験者に、請求項1又は17に記載の医薬製剤の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項23】
神経系の過興奮により特徴づけられる前記疾患が発作性疾患を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記投与が抗発作作用、筋弛緩作用、解熱作用、末梢鎮痛作用、又は抗痙攣作用を生み出す、請求項22記載の方法。
【請求項25】
神経系の過興奮により特徴づけられる前記疾患が、電位開口型カリウムチャネルの活性化により特徴づけられる疾患をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記投与が、KCNQ2/3チャネルのチャネル開口確率の増大又はニューロンM電流の増加をもたらす、請求項22記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528666(P2011−528666A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518947(P2011−518947)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/051052
【国際公開番号】WO2010/009433
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510337506)バレアント プハルマセウトイカルス インターナショナル (2)
【Fターム(参考)】