説明

放収音装置

【課題】コンパクトな構成でありながら、スピーカからマイクに回り込む音声を抑え、S/N比を向上した放収音装置を提供する。
【解決手段】複数のスピーカ11は、放音面が筐体1の側面に設置されており、放収音装置の全周方向に音声を放音することができる。各マイク12は、収音方向が筐体1の中心方向になるように設置されている。マイク12とスピーカ11の指向性は、相反する方向に設置される。したがって、スピーカ11からマイク12に回り込む音声を極めて小さくすることができる。また、スピーカ11、マイク12ともに同心円の円周に設置されるため、コンパクトな構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカとマイクとを一体に備えた放収音装置に関し、特に、コンパクトな構成でありながらスピーカからマイクに回り込む音声を抑えた放収音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔地において音声会議(通信会議)を行うために、スピーカとマイクとを一体に備えた音声会議装置が普及している。音声会議装置は、マイクで収音した音声を接続先に送信し、接続先から受信した音声をスピーカから放音する。複数人同士で会議を行う場合、この様な音声会議装置は会議参加者の中心(会議机の中心等)に設置されることが多い。したがって、この様な音声会議装置は小型化されることが望まれ、例えば特許文献1に示すようにスピーカ用のボックスを省略して小型化した音声会議装置が提案されている。
【0003】
また、音声会議装置は、同一空間内にスピーカとマイクを備えた構成のため、接続先から受信した音声をスピーカから放音すると、この音声がマイクに収音され、接続先に送信されてしまい、エコー等の雑音が発生する。そこで、特許文献2に示すように、エコーキャンセラ機能を備えた音声会議装置において、筒状の弾性体の先端にマイクを収容し、スピーカとマイクの音響結合を抑えた音声会議装置が提案されている。
【特許文献1】特開平8−204803号公報
【特許文献2】特開平8−298696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、コンパクトな構成であるが、スピーカとマイクが近接してしまい、回り込み音量が大きくなってしまう。一方で、特許文献2の構成によれば、エコーキャンセラ機能によって回り込み音声を抑制することができる。また、特許文献2においては、弾性体により筐体内部の音響結合を抑える構成である。
【0005】
しかし、筐体内部の音響結合を抑えることができても、コンパクトな構成であるためにスピーカとマイクが近接しており、スピーカから放音された音声がマイクに回り込みやすいという問題は依然として有していた。この場合、エコーキャンセラ機能に処理負担がかかってしまう。
【0006】
この発明は、コンパクトな構成でありながら、スピーカからマイクに回り込む音声を抑え、S/N比を向上した放収音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の放収音装置は、1つの軸を中心とする第1の円周上に、前記中心に向けて配置されている複数の指向性マイクと、前記軸を中心とする第2の円周上に、前記中心と反対方向に向けて配置されている複数のスピーカと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明において、複数のマイクとスピーカが同一軸を中心とする円周上にそれぞれ設置されている。マイクとスピーカの指向性は、相反する方向に設置される。したがって、スピーカからマイクに回り込む音声を抑えることができる。スピーカ、マイクともに同一軸を中心とする円周上に設置されるため、コンパクトな構成となる。
【0009】
この発明は、さらに、前記第1の円周は、前記第2の円周よりも径が大きいことを特徴とする。
【0010】
この発明は、さらに、前記複数の指向性マイク、および前記複数のスピーカを配置する筐体を備え、前記複数のマイクは、前記筐体の上面に配置され、前記複数のスピーカは、前記筐体の側面側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明は、さらに、各マイクが収音した音声信号のレベルに基づいて音源方向を推定し、この音源方向を向いているマイクが収音した音声信号を後段に出力する信号処理手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明において、それぞれのマイクにおいて収音した音声信号のうち、最も音圧レベルの高い信号を選択的に出力する。これによりさらにS/N比を向上することができる。
【0013】
この発明は、さらに、前記信号処理手段は、隣接する複数のマイクが収音した音声信号を加算して音源方向を推定し、隣接する複数のマイクが収音した音声信号を加算した信号を後段に出力することを特徴とする。
【0014】
この発明において、それぞれのマイクにおいて、隣接するマイクから収音した音声信号を加算する。さらに、これらの加算後の音声信号のうち、最も音圧レベルの高い信号を選択的に出力する。これによりさらにS/N比を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数のマイクとスピーカが同心円の円周に、収音方向と放音方向が相反する方向に設置されるので、コンパクトな構成でありながら、スピーカからマイクに回り込む音声を抑え、S/N比を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る放収音装置について説明する。図1はこの実施形態に係る放収音装置の上面図、図2(A)は図1におけるA−A断面図である。図1において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をY方向、下側を−Y方向とする。図2(A)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をZ方向、下側を−Z方向とする。
【0017】
この放収音装置は、円柱形状の筐体1からなり、筐体1の最外周部分に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては4つ)のスピーカ11A〜スピーカ11Dと、筐体1の内部に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては8つ)のマイク12A〜マイク12Hと、を備えている。各マイク12A〜マイク12Hは、フロントエンドのアンプ13A〜アンプ13Hに接続され(図3参照)、収音した音声に基づいて音声信号を出力する。各スピーカ11A〜スピーカ11Dは、アンプ19A〜アンプ19Dに接続され(図3参照)、入力された音声信号に基づいて音声を放音する。
【0018】
筐体1は、上面から見た断面円の直径が約30cmほどのコンパクトな円柱形状であり、スピーカ11の放音面を円柱側面に配置可能な程度(例えば10cm程度)の高さを有する。
【0019】
各スピーカ11は、コーン型スピーカユニット、ホーン型スピーカユニット等を用いるが、その他の形式であってもよい。各マイク12は、所定方向に強い感度を有する指向性マイクである。マイク12にはダイナミックマイクユニット、コンデンサマイクユニット等を用いるが、その他の形式であってもよい。
【0020】
各スピーカ11は、放音方向が筐体1の外側になるように筐体1の側面に設置されており、4つのスピーカ11がそれぞれ異なる方向に音声を放音する。例えば図2に示すように、スピーカ11Bは、X方向に音声を放音し、スピーカ11Dは、−X方向に音声を放音する。したがって、それぞれのスピーカ11により、放収音装置の全周方向(X,−X,Y,−Y方向)に音声を放音することができる。
【0021】
各マイク12は、収音方向(強い感度を有する方向)が筐体1の上面から見て中心方向(例えばマイク12Cの収音方向は−X方向、マイク12Gの収音方向はX方向)になるように筐体1の上面に設置されている。各マイク12は、収音方向が筐体1の中心方向であるが、複数のマイク12がそれぞれ対向して設置されているため、それぞれのマイク12により放収音装置の全周方向(8方向)の音声を収音することができる。
【0022】
隣接するスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12C)の放音方向、収音方向は、略相反する方向となる。また、放音、および収音方向が同一方向であるスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12G)は、筐体1において互いに最も遠い位置に配置される。したがって、スピーカ11からマイク12に回り込む音声は極めて小さくなり、一般的な放収音装置(例えばスピーカ放音面が筐体上側、マイク収音面が筐体外側である場合)に比較してS/N比が向上する。
【0023】
次に、放収音装置の信号処理系統の構成について図3を参照して詳細に説明する。図3は、放収音装置の構成を示すブロック図である。放収音装置は、上述のスピーカ11A〜スピーカ11Dと、マイク12A〜マイク12Hと、各マイク12A〜マイク12Hに接続されるフロントエンドのアンプ13A〜アンプ13Hと、各アンプ13A〜アンプ13Hに接続されるA/Dコンバータ14A〜A/Dコンバータ14Hと、各A/Dコンバータ14A〜A/Dコンバータ14Hが接続されるマイク信号処理回路15と、マイク信号処理回路15に接続されるエコーキャンセラ16と、エコーキャンセラ16に接続される入出力インタフェース17と、エコーキャンセラ16に接続されるD/Aコンバータ18A〜D/Aコンバータ18Dと、各D/Aコンバータ18A〜D/Aコンバータ18Dに接続され、スピーカ11A〜スピーカ11Dに音声信号を供給するアンプ19A〜アンプ19Dと、を備えている。
【0024】
各マイク12A〜マイク12Hが出力した音声信号は、フロントエンドのアンプ13A〜アンプ13Hで増幅され、A/Dコンバータ14A〜A/Dコンバータ14Hでデジタル変換される。マイク信号処理回路15は、A/Dコンバータ14A〜A/Dコンバータ14Hから出力されるデジタル信号のうち、最も音圧レベルの高い信号を選択して出力する。
【0025】
図4にマイク信号処理回路15の詳細なブロック図を示す。マイク信号処理回路15は、加算器151A〜加算器151H、セレクト/ミキシング回路152、および最大信号強度検出回路153を備えている。各加算器151A〜加算器151Hには、A/Dコンバータ14A〜A/Dコンバータ14Hからそれぞれデジタル信号A〜デジタル信号Hが入力される。また、各加算器151にはそれぞれの加算器151に入力される信号の隣接する信号(各加算器に対応するマイクと隣接するマイクが出力した信号が隣接している)が分岐入力される。例えば、加算器151Aには、デジタル信号Aとデジタル信号Bが入力され、加算器151Bには、デジタル信号Bとデジタル信号Cが入力される。各加算器151は、入力されたデジタル信号を加算して出力する。隣接するマイクの信号を加算することにより、マイクの正面方向の信号が強められ、それ以外の方向の信号が弱められるので、マイクの指向性が向上する。
【0026】
加算された各デジタル信号は、最大信号強度検出回路153において、その音圧レベルが比較される。最大信号強度検出回路153は、それぞれのデジタル信号の音圧レベルを比較し、その結果最も音圧レベルが高いデジタル信号を選択してセレクト/ミキシング回路152に設定する。セレクト/ミキシング回路152は、設定されたデジタル信号のみを選択してエコーキャンセラ16に出力する。また、最大信号強度検出回路153は、最も音圧レベルが高いデジタル信号から順に複数のデジタル信号を選択してセレクト/ミキシング回路152に設定するようにしてもよい。その場合、セレクト/ミキシング回路152は、設定された複数のデジタル信号をミキシングしてエコーキャンセラ16に出力する。
【0027】
最も音圧レベルが高い信号、または最も音圧レベルが高い信号から順に複数の信号をミキシングした信号を出力し、他のレベルの低い信号が出力されることがないため、さらにS/N比が向上する。なお、上記構成では、隣接するマイク12の信号を加算して出力したが、各マイク12の収音した信号をそれぞれ単独で出力するようにしてもよいし、隣接する2以上の信号を加算して出力するようにしてもよい。
【0028】
マイク信号処理回路15の出力信号は、エコーキャンセラ16に入力される。エコーキャンセラ16の出力信号は、入出力インタフェース17を介して他の装置に送信される。入出力インタフェース17は、LAN端子、アナログオーディオ端子、デジタルオーディオ端子などを有しており、これらの端子に接続される装置に上記信号を送信する。LAN端子に出力する場合は、ネットワークを介して接続される遠隔地の装置等に音声情報として送信する。また、入出力インタフェース17は、他の装置から受信した音声情報(受信信号)をエコーキャンセラ16に出力する。エコーキャンセラ16は、スピーカ11からマイク12に至る回り込み成分を推定し、この推定した回り込み成分をマイク信号処理回路15の出力信号から差し引くものである。
【0029】
図5にエコーキャンセラ16の詳細なブロック図を示す。エコーキャンセラ16は、適応フィルタ161と、加算器162と、を備えている。適応フィルタ161は、FIRフィルタ等のデジタルフィルタを含んでいる。適応フィルタ161は、音響伝達系(スピーカ11からマイク12に至る音響伝搬経路)の伝達関数を推定し、推定した伝達関数を模擬するようにFIRフィルタのフィルタ係数を算出する。適応フィルタ161は、この推定したフィルタ係数でスピーカ11からマイク12へ至る回り込み成分の模擬信号を生成する。この模擬信号を加算器162においてマイク信号処理回路15の出力信号から差し引く。したがって、加算器162の出力信号は、マイク12の収音信号から回り込み成分を除去した信号となる。
【0030】
伝達関数の推定及びフィルタ係数の算出は、加算器162から出力された信号である残差信号を参照信号として用いてスピーカ11への供給信号に基づいて、適応アルゴリズムを用いて行われる。適応アルゴリズムは、残差信号ができるだけ小さくなるようにフィルタ係数を算出するアルゴリズムである。
【0031】
これにより、適応フィルタ161において音響伝達系の回り込み信号(スピーカ11からマイク12に至る音声信号)を模擬した信号が生成され、加算器162において収音信号から模擬信号を差し引くことで、回り込み信号のみを効率的に減衰させることができる。これにより、エコーキャンセラ16は、回り込み信号により発生するエコーを防止することができる。また、この放収音装置を、マイク12で収音した音声を入出力インタフェース17を経てスピーカ11から放音する拡声器として用いた場合、エコーキャンセラ16は回り込み信号のループ現象により発生するハウリングを防止することもできる。
【0032】
エコーキャンセラ16の出力信号(他の装置からの受信信号)は、D/Aコンバータ18A〜D/Aコンバータ18Dにそれぞれ出力され、アナログ音声信号に変換される。これらのアナログ音声信号はアンプ19A〜19Dで増幅され、スピーカ11A〜スピーカ11Dで放音される。
【0033】
なお、マイク信号処理回路15の構成は、上記例に限るものではない。図6にマイク信号処理回路15の応用例の構成を示す。この例において、各信号A〜信号Hは、ディレイ154A〜ディレイ154H、ディレイ155A〜ディレイ155H、およびディレイ156A〜ディレイ156Hにそれぞれ入力される。加算器157A〜加算器157Hには、それぞれディレイ154A〜ディレイ154Hの出力信号が入力される。また、加算器157A〜加算器157Hには、ディレイ155A〜ディレイ155Hの出力信号が、隣接する加算器157にずれて入力される。つまり、ディレイ155Bの出力信号が加算器157Aに、ディレイ155Cの出力信号が加算器157Bに、ディレイ155Dの出力信号が加算器157Cに、といった様にそれぞれの加算器157には対応するマイク12の出力信号と、隣接するマイク12の出力信号が加算される。
【0034】
また、加算器157A〜加算器157Hには、ディレイ156A〜ディレイ156Hの出力信号が、さらに1段ずれて入力される。つまり、ディレイ156Cの出力信号が加算器157Aに、ディレイ156Dの出力信号が加算器157Bに、ディレイ156Eの出力信号が加算器157Cに、といった様にそれぞれの加算器157には対応するマイク12の出力信号と、両隣のマイク12の出力信号が加算されることとなる。
【0035】
各ディレイ154、155、156は、加算器157において加算される3つの信号が同じ位相となるように入力された音声信号に遅延時間を付与する。したがって、マイク12が収音した音声は、それぞれの対応する加算器157において隣接する2つのマイク12の収音信号がそれぞれ同じ位相で加算される。同じ位相で加算されるため、特定の方向の信号が強められ、S/N比が向上するとともに指向性が向上する。無論、加算する信号は上記の様に3つに限るものではなく、さらに複数の信号を加算、あるいは減算することにより所定方向のS/N比を向上させることも可能である。
【0036】
なお、本発明の放収音装置の構造、ならびにスピーカ11、マイク12の個数は、図1、図2(A)に示した例に限るものではない。
【0037】
(筐体1の変形例)
例えば、図2(B)に示すように、筐体1の上面にZ方向に膨らみを有するドーム状(半球状)のカバー122を取り付けてもよい。カバー122は、筐体1上面に設置された複数のマイク12を全てカバーする大きさを有する。このカバー122はパンチメッシュ状の鋼板からなり、筐体1の上面に設置されたマイク12の収音を妨げないようになっている。
【0038】
図2(B)に示す状態においても、隣接するスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12C)の放音方向、収音方向は、略相反する方向となる。また、放音、収音方向が同一方向であるスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12G)は、筐体1において互いに最も遠い位置に配置される。したがって、図2(B)の例においてもスピーカ11からマイク12に回り込む音声は極めて小さくなり、S/N比が向上する。
【0039】
(他の実施例1)
図7に他の例における放収音装置の構造を示す。図7は、他の例の放収音装置を示す上面図、および断面図である。同図(A)は、放収音装置の上面図であり、同図(B)は同図(A)におけるA−A断面図である。同図(A)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をY方向、下側を−Y方向とする。同図(B)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をZ方向、下側を−Z方向とする。なお、図1、および図2に示した放収音装置と共通する構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
この例における放収音装置は、円柱形状の筐体2からなり、筐体2の最外周部分に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては4つ)のスピーカ11A〜スピーカ11Dと、筐体2の上面に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては8つ)のマイク12A〜マイク12Hと、を備えている。
【0041】
筐体2は、上面から見た断面円の直径が約30cmほどのコンパクトな円柱形状であり、スピーカ11の放音面を円柱側面に配置可能な程度(例えば10cm程度)の高さを有する。筐体2は、上面の中心付近にZ方向に台形状の膨らみを有する。マイク12は、この膨らみ面の上部に設置されている。この膨らみ面は、マイク12の収音を妨げないように中央部分が平面となっている。
【0042】
各スピーカ11は、放音方向が筐体2の外側になるように設置されている。各マイク12は、収音方向が筐体2の上面から見て中心方向(例えばマイク12Cの収音方向は−X方向、マイク12Gの収音方向はX方向)になるように設置されている。各マイク12は、筐体2の上面に乗るようにして設置されているため、筐体2の内部の音声(筐体2内においてスピーカ11の発する音声)を収音することがない。
【0043】
各スピーカ11、および各マイク12は、異なる高さに設置されるが、隣接するスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12C)の放音方向、収音方向は、略相反する方向となる。また、放音、収音方向が同一方向であるスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12G)は、筐体2において互いに最も遠い位置に配置される。したがって、この例においてもスピーカ11からマイク12に回り込む音声は極めて小さくなり、一般的な放収音装置(例えばスピーカ放音面が上側、マイク収音面が外側)に比較してS/N比が向上する。
【0044】
(他の実施例2)
また、放収音装置は、図8に示すような構造であってもよい。図8は、他の例の放収音装置を示す上面図、および断面図である。同図(A)は、放収音装置の上面図であり、同図(B)は同図(A)におけるA−A断面図である。同図(A)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をY方向、下側を−Y方向とする。同図(B)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をZ方向、下側を−Z方向とする。なお、この例においても図1、および図2に示した放収音装置と共通する構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
同図の例における放収音装置は、複数の円柱形状の筐体(上筐体3A、および下筐体3B)を上下方向に重ねた構造である筐体3からなり、上筐体3Aの最外周部の上面に同心円上に等間隔に配置された複数のマイク12A〜マイク12Hと、下筐体3Bの最外周部に同心円上に等間隔に配置された複数のスピーカ11A〜スピーカ11Dと、を備えている。
【0046】
上筐体3Aと下筐体3Bは底面の中心が同一軸上となるように接合されており、上筐体3Aは下筐体3Bよりも容積が大きく、上面から見て上筐体3Aの側面は外周側、下筐体3Bの側面は内周側となる。
【0047】
各スピーカ11は、放音方向が筐体3の外側になるように設置されている。各マイク12は、収音方向が筐体3の上面から見て中心方向(例えばマイク12Cの収音方向は−X方向、マイク12Gの収音方向はX方向)になるように設置されている。各マイク12は、筐体3の上面に乗るようにして設置されているため、筐体3の内部の音声(筐体3内においてスピーカ11の発する音声)を収音することがない。
【0048】
このように、筐体の上側から見て各スピーカ11が同心円の内周、各マイク12が外周側に配置されている場合でも隣接するスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12C)の放音方向、収音方向は、略相反する方向となる。また、放音、収音方向が同一方向であるスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12G)は、筐体3において互いに最も遠い位置に配置される。したがって、図8の例においてもスピーカ11からマイク12に回り込む音声は極めて小さくなり、S/N比が向上する。
【0049】
(他の実施例3)
図9は、さらに他の例の放収音装置を示す上面図、および断面図である。同図(A)は、放収音装置の上面図であり、同図(B)は同図(A)におけるA−A断面図である。同図(A)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をY方向、下側を−Y方向とする。同図(B)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をZ方向、下側を−Z方向とする。なお、この例においても図1、および図2に示した放収音装置と共通する構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
この例における放収音装置は、略円柱形状の筐体4からなり、筐体4の最外周部分に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては4つ)のスピーカ11A〜スピーカ11Dと、筐体1の内部に同心円上に等間隔に配置された複数(この例においては8つ)のマイク12A〜マイク12Hと、を備えている。
【0051】
筐体4は、上面から見た断面円の直径が約30cmほどのコンパクトな円柱形状であり、スピーカ11の放音面を円柱側面に配置可能な程度(例えば10cm程度)の高さを有する。
【0052】
各スピーカ11は、放音方向が筐体4の外側になるように各側面に設置されている。各マイク12は、収音方向が筐体4の上面から見て中心方向(例えばマイク12Cの収音方向は−X方向、マイク12Gの収音方向はX方向)になるように設置されている。筐体4は、上面の中心付近が筐体内部方向(−Z方向)に半球状に凹んでおり、この凹み面の一部に孔が複数空いている。この孔には密閉型のボックス121A〜ボックス121Hが設置されており、このボックス121A〜ボックス121Hの内部にマイク12A〜マイク12Hがそれぞれ埋め込まれている。上記孔がボックス121の開口面となり、マイク12の収音面がボックス121の開口面に向けられる。このボックス121は、ゴム等の弾性体であり、筐体4内においてスピーカ11の発する音声の伝搬を遮断する。各マイク12は、収音方向が筐体4の中心方向であるが、複数のマイク12がそれぞれ対向して設置されているため、それぞれのマイク12により放収音装置の全周方向(8方向)の音声を収音することができる。
【0053】
各スピーカ11、および各マイク12は、略同じ高さに設置される。したがって、隣接するスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12C)の放音方向、収音方向は、相反する方向となる。また、放音、および収音方向が同一方向であるスピーカ11とマイク12(例えばスピーカ11Bとマイク12G)は、筐体4において互いに最も遠い位置に配置される。したがって、スピーカ11からマイク12に回り込む音声は極めて小さくなり、一般的な放収音装置(例えばスピーカ放音面が筐体上側、マイク収音面が筐体外側である場合)に比較してS/N比が向上する。
【0054】
(他の実施例4)
図10は、さらに他の例の放収音装置を示す上面図、および断面図である。同図(A)は、放収音装置の上面図であり、同図(B)は同図(A)におけるA−A断面図である。同図(A)において、紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をY方向、下側を−Y方向とする。同図(B)において紙面右側をX方向、左側を−X方向、上側をZ方向、下側を−Z方向とする。なお、この例においても図1、および図2に示した放収音装置と共通する構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
この例における放収音装置は、略直方体形状の筐体5からなり、筐体5のY側面に設置されたスピーカ11A、X側面に設置されたスピーカ11B、−Y側面に設置されたスピーカ11C、−X側面に設置されたスピーカ11Dを備えている。また、筐体5内部にX,Y45度の方向に設置されたマイク12B、X,−Y45度の方向に設置されたマイク12D、−X,−Y45度の方向に設置されたマイク12F、−X,Y45度の方向に設置されたマイク12Hを備えている。
【0056】
筐体5は、上面から見て一辺の長さが30cmほどの正方形状の断面形状であり、スピーカ11の放音面を直方体側面に配置可能な程度(例えば10cm程度)の高さを有する。
【0057】
各スピーカ11は、放音方向が筐体5の外側になるように各側面に設置されている。各マイク12は、収音方向が筐体3の上面から見て中心方向(例えばマイク12Bの収音方向は−X,−Y45度の方向、マイク12Hの収音方向はX,−Y45度の方向)になるように設置されている。筐体5は、上面の中心付近が筐体内部方向(−Z方向)に半球状に凹んでおり、この凹み面の一部が(パンチメッシュ等で)内部に露出し、マイク12の収音面が覗くようになっている。さらに、マイク12B〜マイク12Hはそれぞれ、上記露出された面の筐体内部に設置された密閉型のボックス121B〜ボックス121Hに嵌めこまれている。このボックス121は、ゴム等の弾性体であり、筐体5内においてスピーカ11の発する音声の伝搬を遮断する。
【0058】
なお、この例における放収音装置においても、図2(B)に示したように、マイク12B〜マイク12Hを筐体5上面に設置して半球状のカバーを取り付けるようにしてもよい。
【0059】
この様に、筐体の形状は円柱に限らず、直方体形状であってもよい。また、マイク、スピーカの個数は上記例に限定されない。さらに、図10に示した放収音装置においては、マイクの個数が4つである例を示したが、仮想的にさらに複数のマイクを設置することが可能である。図11は、図10における放収音装置のマイク信号処理回路15の構成を示すブロック図である。マイク12B〜マイク12Hから出力される信号B〜信号Hは、それぞれセレクト/ミキシング回路152に入力されるが、各信号は複数のディレイ158に分岐入力される。例えば信号Bは、ディレイ158B1、およびディレイ158B2に分岐入力される。同様に、信号Dは、ディレイ158D1、およびディレイ158D2に分岐入力され、信号Fは、ディレイ158F1、およびディレイ158F2に分岐入力され、信号Hは、ディレイ158H1、およびディレイ158H2に分岐入力される。
【0060】
ディレイ158B2、およびディレイ158D1の出力信号は加算器159Cに入力される。同様に、ディレイ158D2、およびディレイ158F1の出力信号は加算器159Eに入力され、ディレイ158F2、およびディレイ158H1の出力信号は加算器159Gに入力され、ディレイ158H2、およびディレイ158B1の出力信号は加算器159Aに入力される。
【0061】
各加算器159においては、隣接するマイク12の2つの信号がディレイ158において遅延時間を付与された後、加算されるため、各加算器159の出力信号は、各マイク12の間の位置で収音した音声に対応する。例えばディレイ158B1における信号Bの遅延時間と、ディレイ158H2における信号Hの遅延時間が等しい場合、加算器159Aにおいて加算されて出力された信号Aは、図11に示すようにマイク12Bとマイク12Hとの距離が等しい位置に設置したマイクで収音した音声と同一となる。すなわち図11に示す信号Aは、図12の仮想マイク32Aの出力信号を表す。同様に、図11に示す信号Cは仮想マイク32Cの出力信号を表し、信号Eは仮想マイク32Eの出力信号を表し、信号Gは仮想マイク32Gの出力信号を表す。したがって、この例においては4つのマイク12によって8方向の音声を収音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】放収音装置の上面図
【図2】図1のA−A断面図、および筐体1の変形例のA−A断面図
【図3】放収音装置のブロック図
【図4】マイク信号処理回路の詳細なブロック図
【図5】エコーキャンセラの詳細なブロック図
【図6】マイク信号処理回路の応用例における詳細なブロック図
【図7】他の実施例1における放収音装置の上面図、およびA−A断面図
【図8】他の実施例2における放収音装置の上面図、およびA−A断面図
【図9】他の実施例3における放収音装置の上面図、およびA−A断面図
【図10】他の実施例4における放収音装置の上面図、およびA−A断面図
【図11】マイク信号処理回路のブロック図
【図12】仮想マイクの概念を示す図
【符号の説明】
【0063】
1−筐体
11−スピーカ
12−マイク
13−アンプ
14−A/Dコンバータ
15−マイク信号処理回路
16−エコーキャンセラ
17−入出力インタフェース
18−D/Aコンバータ
19−アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの軸を中心とする第1の円周上に、前記中心に向けて配置されている複数の指向性マイクと、
前記軸を中心とする第2の円周上に、前記中心と反対方向に向けて配置されている複数のスピーカと、
を備えた放収音装置。
【請求項2】
前記第1の円周は、前記第2の円周よりも径が大きいことを特徴とする請求項1に記載の放収音装置。
【請求項3】
前記複数の指向性マイク、および前記複数のスピーカを配置する筐体を備え、
前記複数のマイクは、前記筐体の上面に配置され、
前記複数のスピーカは、前記筐体の側面側に配置されている請求項1、または請求項2に記載の放収音装置。
【請求項4】
各マイクが収音した音声信号のレベルに基づいて音源方向を推定し、この音源方向を向いているマイクが収音した音声信号を後段に出力する信号処理手段を備えた請求項1、請求項2、または請求項3に記載の放収音装置。
【請求項5】
前記信号処理手段は、隣接する複数のマイクが収音した音声信号を加算して音源方向を推定し、隣接する複数のマイクが収音した音声信号を加算した信号を後段に出力する請求項4に記載の放収音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−173922(P2007−173922A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364617(P2005−364617)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】