説明

放射性医用薬剤としての窒素含有大環状結合体

本発明は、金属リガンドとして有用であり、分子認識部分を含むか、または分子認識部分に結合可能な化合物、およびこれらの化合物の作成方法に関する。分子認識部分を含む化合物がいったん適当な金属放射性核種に配位すると、配位した化合物は放射線療法および診断撮像の分野において放射性医用薬剤として有用である。したがって、本発明は、本発明の放射性標識化合物を用いての診断方法および治療方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、金属リガンドとして有用であり、分子認識部分を含むか、または分子認識部分に結合可能な化合物、およびこれらの化合物の作成方法に関する。分子認識部分を含む化合物がいったん適当な金属放射性核種に配位すると、配位した化合物は放射線療法および診断撮像の分野において放射性医用薬剤として有用である。したがって、本発明は、本発明の放射性標識化合物を用いての診断方法および治療方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
放射性標識化合物は、放射線療法または診断撮像などのいくつかの適用における放射性医用薬剤として用いうる。放射性標識化合物を放射性医用薬剤として用いるために、許容される安定性および可能な場合にはある程度の選択性または標的指向能力などの、理想的には化合物が有するべきいくつかの望ましい性質がある。
【0003】
放射性医用薬剤の分野における初期の研究は、一般に入手しやすく、したがって生成が容易な、単純な金属リガンドに焦点を合わせていた。これらの放射性標識化合物の多くで見られる難点は、リガンドと金属イオンとの間で生成される錯体の強度が十分でなく、したがって生理的環境でリガンドから金属イオンが解離することであった。これは望ましくなかった。というのも、生理的環境での金属イオンによる金属交換は、放射性医用化合物が所望の作用部位に到達したとき、化合物に配位した放射性標識金属イオンのレベルが著しく低下することを意味するため、この型のリガンドを用いて、放射性医用薬剤を体内の所望の標的部位に送達することができないからである。加えて、この型の交換が観察される場合、放射性材料が主としてその作用部位に送達されるよりは、むしろ体内の健常な組織に送達されるため、放射線療法または放射線撮像の対象が経験する副作用は増大する。
【0004】
生理的環境における金属解離の問題を克服するために、徐々にいくつかのより複雑なリガンドが開発され、試験されている。したがって、例えば、広い範囲のサイクラム(cyclam)およびサイクレン(cyclen)骨格に基づくテトラアザ大環状分子が研究されている。この型のリガンドの例にはDOTAおよびTETAが含まれる。

【0005】
残念ながら、これらのリガンドをもってしても、特定の誘導体ではまだ金属の解離が見られる。例えば、Cu2+として、またはCu+へのインビボでの還元後に、銅輸送タンパク質などの生体リガンドへのトランスキレーションの結果、キレートからのCuの解離が起こる誘導体がある。
【0006】
したがって、放射性標識化合物の安定性を高めるために、サルコファギンの慣用名で知られるヘキサミン大環状二環式かご型アミンリガンドが開発された。これらのかご型リガンドはCu2+などの金属と非常に安定な錯体を形成し、周囲温度で低い金属濃度でも速い錯化動態を有する。したがって、これらの特徴によってこの型のリガンドは、放射性医用薬剤の適用、特に銅に関与する適用に特に適したものとなっている。
【0007】
リガンドと金属との間で形成される錯体の安定性の問題が克服されると、注目は、金属リガンド錯体の安定性または標的指向分子の最終的な生物活性を損なうことなく、リガンド内に標的指向分子を組み込むための、リガンドを官能基化する方法の開発に向けられた。いくつかの異なる標的指向分子が当技術分野において公知で、論点はこれらをリガンド分子にいかにうまく連結させるかということになった。
【0008】
一般に、標的指向分子(または時として知られているとおり分子認識部分)をリガンドに連結させて、リガンドおよび分子認識部分の両方を含む最終化合物を提供する。これらの化合物は単一の分子認識部分を含んでいてもよいが、リガンドが2つ(またはそれ以上)の分子認識部分に連結された多量体構成物であってもよい。典型的には、多量体構成物はその単量体等価物よりも標的受容体への高い親和性を有するため、望ましい。これは部分的には標的指向基の局所濃度の上昇によるもので、内因性リガンドとより有効に競合することが可能となる。加えて、多量体構成物内の複数の標的指向基間に十分な長さがある状況では、協同的結合が可能で、複数の標的指向基は複数の受容体部位に同時に結合することになる。事実、インビボで、多量体構成物はしばしばその単量体等価物よりも標的組織への高い蓄積を示すことが観察されている。理論に縛られることなく、これは多量体構成物が単量体構成物よりも標的受容体に対して高い親和性を有するためと考えられる。さらに、多量体構成物は単量体構成物よりも高い分子量を有し、したがってバイオアベイラビリティが長い(生理的環境での分解に対する抵抗性が高いため)。これにより、標的組織における蓄積が増大し、保持時間が長くなりうる。
【0009】
かご型リガンド領域の初期の研究は、かご型アミン「ジアミノサルコファギン」、1,8-ジアミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]イコサン((NH2)2sar)の一級アミンのペプチドとの、標準的なカップリング法を用いての直接カップリング反応に目を向けていた。残念ながら、様々な理由により、これは比較的効率が悪いことが判明し、この領域の研究は中止された。次いで、研究者らはSarArを生成するための芳香族アミンの組込みに焦点を合わせた。側鎖芳香族アミンをペプチドまたは抗体のカルボキシレート残基との結合反応において用いることができ、SarArは抗GD2モノクローナル抗体(14.G2a)およびそのキメラ誘導体(ch14.8)に結合しうることが明らかにされ、結合体が64Cuで放射性標識された。

【0010】
このアプローチに伴う難点は、結合段階の芳香族アミンの反応において、SarAr分子には反応に競合することが可能な8つの他の窒素原子があり、薬学的な意味から望ましくない多数の不純物が生じる可能性が出てくることである。これらは実質的な保護基化学を用いることによって克服しうる可能性があるが、合成の立場および商業的規模でのスケールアップからは明らかに望ましくない。
【0011】
もう一つのアプローチは、リガンドを加工してカルボキシレート官能基を組み込み、ペプチドまたは抗体をそのN末端アミン残基を介して組み込むことで、このアプローチはC末端が生物活性にとって決定的である場合に特に重要である。試験により、(NH2)2Sarを最大4つのカルボキシメチル置換基でクロロ酢酸によるアルキル化反応を介して官能基化することができ、導入したカルボキシメチル基をさらなる官能基化の点として用いることができ、次いでEDCカップリング反応を用いてアミノ酸を導入しうることが明らかにされている。
【0012】
残念ながら、これらのシステムで考えられる不都合は、カルボキシメチルアームがかご型骨格の二級アミンと反応してラクタム環を形成する分子内環化反応がまだ起こって、六座配位子ではなく四座配位子リガンドを生じうることである。したがって、このアプローチを続けることはできるが、有害な副反応の可能性は商業的展望から明らかに望ましくない。
【0013】
したがって、放射性標識が可能で、放射性医用薬剤適用において用いることができる分子認識部分を含むか、またはこれに結合可能な化合物を開発することがいまだに必要とされている。加えて、前述のとおり、特定の状況で多量体構成物はより高い生物活性を示すため、これらの構成物を用いる可能性を提供するための柔軟性を化合物が有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0014】
概要
一つの局面において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは錯体が提供される:

式中、
Lは窒素含有大環状金属リガンドであり;
Xは連結部分であり;
YはOR、SR1およびN(R2)2からなる群より選択され;
RはH、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R1はH、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R2はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【0015】
さらなる局面において、式(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは錯体が提供される:

式中、
Lは窒素含有大環状金属リガンドであり;
Xは連結部分であり;
Yは分子認識部分である。
【0016】
特定の有用性を有する、構造的に関連する化合物の任意の基と同様に、それらの最終使用適用において特に有用である、式(I)および式(II)の化合物の変数の特定の態様。
【0017】
式(I)および式(II)の化合物において、X部分は、放射性核種に結合しうるリガンドと、分子認識部分の結合点または分子認識部分自体のいずれかとを分離する、2つのカルボニル部分の間のスペーサーとして作用するのに役立つ連結部分として役立つ。したがって、2つの実体が互いの活性を確実に妨害しないようにするために、2つの間はある程度分離されていることが望ましいが、放射性核種がその作用部位に有効に送達されないほど2つが遠く隔てられていないことも重要である。
【0018】
いくつかの態様において、Xは直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に1から15個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に1から12個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に1から10個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に1から8個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に8個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に7個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に6個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に5個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に4個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に3個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に2個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、Xは直鎖内に1個の原子を有する連結部分である。
【0019】
この型の連結部分を作るために、広範囲の可能な部分を用いてもよい。Xの作成において用いうる適当な部分の例には、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換C2-C12ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールが含まれる。
【0020】
いくつかの態様において、Xは以下の式の基である:
-(CH2)qCO(AA)rNH(CH2)s-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
qは1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
rは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
sは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【0021】
いくつかの態様において、qは1である。いくつかの態様において、qは2である。いくつかの態様において、qは3である。いくつかの態様において、qは4である。いくつかの態様において、qは5である。いくつかの態様において、qは6である。いくつかの態様において、qは7である。いくつかの態様において、qは8である。
【0022】
いくつかの態様において、rは0である。いくつかの態様において、rは1である。いくつかの態様において、rは2である。いくつかの態様において、rは3である。いくつかの態様において、rは4である。いくつかの態様において、rは5である。いくつかの態様において、rは6である。いくつかの態様において、rは7である。いくつかの態様において、rは8である。
【0023】
いくつかの態様において、sは0である。いくつかの態様において、sは1である。いくつかの態様において、sは2である。いくつかの態様において、sは3である。いくつかの態様において、sは4である。いくつかの態様において、sは5である。いくつかの態様において、sは6である。いくつかの態様において、sは7である。いくつかの態様において、sは8である。
【0024】
いくつかの態様において、アミノ酸は天然アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸は非天然アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はフェニルアラニン、チロシン、アミノヘキサン酸およびシステインからなる群より選択される。
【0025】
いくつかの態様において、qは3であり、rは0であり、かつsは5である。これらの態様において、Xは以下の式の基である:
-(CH2)3CONH(CH2)5-。
【0026】
いくつかの態様において、Xは以下の式の基である:
-(CH2)n-、
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR3から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR3はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;かつ
nは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【0027】
いくつかの態様において、nは1、2、3、4、および5からなる群より選択される。いくつかの態様において、nは4である。いくつかの態様において、nは3である。いくつかの態様において、nは3である。いくつかの態様において、nは1である。
【0028】
いくつかの態様において、Xは-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される。
【0029】
いくつかの態様において、Xは-(CH2)-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)2-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)3-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)4-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)5-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)6-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)7-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)8-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)9-である。いくつかの態様において、Xは-(CH2)10-である。
【0030】
式(I)および式(II)の化合物はいくつかの窒素含有大環状金属リガンドのいずれを含んでいてもよい。
【0031】
いくつかの態様において、リガンド(L)はサイクラムおよびサイクレン骨格に基づくテトラアザ大環状分子であってもよい。いくつかの態様において、Lは窒素含有かご型リガンドである。この型のかご型リガンドは典型的には、金属イオンに強く結合し、安定な錯体が形成されることになるため、有用である。
【0032】
いくつかの態様において、Lは以下の式の窒素含有かご型金属リガンドである:

VはNおよびCR4からなる群より選択され;
RxおよびRyはそれぞれH、CH3、CO2H、NO2、CH2OH、H2PO4、HSO3、CN、CONH2およびCHOからなる群より独立に選択され;
pはそれぞれ独立に2、3、および4からなる群より選択される整数であり;
R4はH、OH、ハロゲン、NO2、NH2、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、シアノ、CO2R5、NHR5、N(R5)2および以下の式の基からなる群より選択され:

式中、
X1は連結部分であり;
Y1はOR6、SR7、N(R8)2および分子認識部分からなる群より選択され;
ここでR5はHまたはC1-C12アルキルである。
R6はH、ハロゲン、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R7はH、ハロゲン、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R8はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【0033】
いくつかの態様において、Lは以下の式の大環状金属リガンドである:

式中、Rx、Ryおよびpは上で定義したとおりである。
【0034】
いくつかの態様において、Lは以下の式の大環状リガンドである:

式中、Rx、Ry、R4およびpは上で定義したとおりである。
【0035】
いくつかの態様において、Lは下記からなる群より選択される。

【0036】
リガンドLのいくつかの態様において、リガンドは基R4によってさらに官能基化または置換されている。基R4にはリガンドの既存の官能基を補完する、または必要があれば追加の官能基を提供する可能性があるため、R4による官能基化または置換によって二官能基リガンドの形成が可能になる。加えて、多量体構成物を作成しようとしている場合、基R4は典型的には第二の標的指向または分子認識部分を導入するために用いられる基である。
【0037】
いくつかの態様において、R4はNH2、CH3および以下の式の基からなる群より選択される:

X1は連結部分であり;
Y1はOR6、SR7、N(R8)2および分子認識部分からなる群より選択され;
R6はH、ハロゲン、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R7はH、ハロゲン、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R8はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【0038】
いくつかの態様において、X1は直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、X1は直鎖内に1から15個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、X1は直鎖内に1から12個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、X1は直鎖内に1から10個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、X1は直鎖内に1から8個の原子を有する連結部分である。いくつかの態様において、X1は直鎖内に8個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に7個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に6個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に5個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に4個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に3個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に2個の原子を有する。いくつかの態様において、X1は直鎖内に1個の原子を有する。
【0039】
この型の連結部分を作るために、広範囲の可能な部分を用いてもよい。X1の作成において用いうる適当な部分の例には、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換C2-C12ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールが含まれる。
【0040】
いくつかの態様において、X1は以下の式の基である:
-(CH2)tCO(AA)uNH(CH2)v-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
tは1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
uは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
vは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【0041】
いくつかの態様において、tは1である。いくつかの態様において、tは2である。いくつかの態様において、tは3である。いくつかの態様において、tは4である。いくつかの態様において、tは5である。いくつかの態様において、tは6である。いくつかの態様において、tは7である。いくつかの態様において、tは8である。
【0042】
いくつかの態様において、uは0である。いくつかの態様において、uは1である。いくつかの態様において、uは2である。いくつかの態様において、uは3である。いくつかの態様において、uは4である。いくつかの態様において、uは5である。いくつかの態様において、uは6である。いくつかの態様において、uは7である。いくつかの態様において、uは8である。
【0043】
いくつかの態様において、vは0である。いくつかの態様において、vは1である。いくつかの態様において、vは2である。いくつかの態様において、vは3である。いくつかの態様において、vは4である。いくつかの態様において、vは5である。いくつかの態様において、vは6である。いくつかの態様において、vは7である。いくつかの態様において、vは8である。
【0044】
いくつかの態様において、アミノ酸は天然アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸は非天然アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はフェニルアラニン、チロシン、アミノヘキサン酸およびシステインからなる群より選択される。
【0045】
いくつかの態様において、tは3であり、uは0であり、かつvは5である。これらの態様において、X1は以下の式の基である:
-(CH2)3CONH(CH2)5-。
【0046】
いくつかの態様において、X1は以下の式の基である:
-(CH2)a-、
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR9から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR9はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;
aは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【0047】
いくつかの態様において、aは1、2、3、4、および5からなる群より選択される。いくつかの態様において、aは4である。いくつかの態様において、nは3である。いくつかの態様において、aは2である。いくつかの態様において、aは1である。
【0048】
いくつかの態様において、X1は-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される。
【0049】
いくつかの態様において、X1は-(CH2)-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)2-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)3-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)4-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)5-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)6-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)7-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)8-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)9-である。いくつかの態様において、X1は-(CH2)10-である。
【0050】
いくつかの態様において、Y1はOHまたは分子認識部分である。いくつかの態様において、Y1はOHである。いくつかの態様において、Y1は分子認識部分である。
【0051】
いくつかの態様において、Lは以下の式の基である。

【0052】
式(I)の化合物のいくつかの態様において、YはOHである。
【0053】
式(II)の化合物において、Yは分子認識部分である。式(I)および式(II)両方の化合物のいくつかの態様において、Y1は分子認識部分である。
【0054】
YまたはY1が分子認識部分である態様において、生理的環境で標的部分を認識する能力を有するのはいかなる部分であってもよい。いくつかの態様において、分子認識部分は分子の残部に直接連結されている分子認識部(portion)を含む。いくつかの態様において、分子認識部分はスペーサー部および分子認識部を含み、ここでスペーサー部は分子認識部を分子の残部に連結する。スペーサーは任意の適当な構成物であってもよく、典型的には分子のリガンド部分と分子の分子認識部との間に適当な距離または「スペース」を提供するように選択される。正確な長さ(かりに必要とされる場合)は、具体的な標的受容体、リガンドの性質および分子認識部の性質に応じて変動することになる。いくつかの場合には、スペーサーは分子認識部の性質に基づき本発明の化合物の合成をより容易にするため、スペーサーが望ましいこともある。
【0055】
いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は、抗体、タンパク質、ペプチド、糖質、核酸、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖およびリポソーム、またはそれらの断片もしくは誘導体からなる群より選択される。
【0056】
いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は抗体またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はタンパク質またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はペプチドまたはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は糖質またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は核酸またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はオリゴヌクレオチドまたはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はオリゴ糖またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は葉酸またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はビタミンB12またはその断片もしくは誘導体である。いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はリポソームまたはその断片もしくは誘導体である。
【0057】
いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部はオクトレオタート、オクトレオチド、[Tyr3]-オクトレオタート、[Tyr1]-オクトレオタート、ボンベシン、ボンベシン(7-14)、ガストリン放出ペプチド、単一アミノ酸、ペネトラチン、アネキシンV、TAT、環状RGD、グルコース、グルコサミン(および伸展した糖質)、葉酸、ニューロテンシン、神経ペプチドY、コレシストキニン(CCK)類縁体、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、サブスタンスP、およびアルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)からなる群より選択される。
【0058】
いくつかの態様において、分子認識部分または分子認識部は[Tyr3]-オクトレオタートおよびボンベシンからなる群より選択される。いくつかの態様において、分子認識部分は[Tyr3]-オクトレオタートである。いくつかの態様において、分子認識部分はLys3-ボンベシンである。いくつかの態様において、分子認識部分は環状RGDである。
【0059】
式(I)または式(II)の化合物のいくつかの態様において、窒素含有大環状金属リガンドは金属イオンと錯体形成する。リガンドは任意の適当な金属イオンと錯体形成してもよく、一連の金属イオンを送達するために用いうる。いくつかの態様において、金属イオンはCu、Tc、Gd、Ga、In、Co、Re、Fe、Au、Ag、Rh、Pt、Bi、Cr、W、Ni、V、Ir、Pt、Zn、Cd、Mn、Ru、Pd、Hg、およびTiからなる群より選択される。
【0060】
いくつかの態様において、金属イオンはCu、Tc、Ga、Co、In、Fe、およびTiからなる群より選択される放射性核種である。本発明の化合物は銅イオンを結合する際に特に適用可能で有用であることが明らかにされている。いくつかの態様において、金属イオンは60Cu、62Cu、64Cuおよび67Cuからなる群より選択される放射性核種である。いくつかの態様において、金属イオンは60Cuである。いくつかの態様において、金属イオンは62Cuである。いくつかの態様において、金属イオンは64Cuである。いくつかの態様において、金属イオンは67Cuである。
【0061】
本発明は、前述の本発明の化合物および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物にも関する。
【0062】
さらなる局面において、式(I)の化合物の生成方法であって、

式中、L、XおよびYは上で定義したとおりである;
(a)以下の式のアミノ置換金属キレート化リガンドまたはその金属錯体:
L-NH2
式中、Lは窒素含有大環状金属リガンドである;
を活性化ジカルボニル化合物と反応させる段階;および
(b)式(I)の化合物またはその金属錯体を単離する段階
を含む方法が提供される。
【0063】
本発明の合成法において用いられる活性化ジカルボニル化合物は、任意の適当なジカルボニル化合物であってもよい。いくつかの態様において、活性化ジカルボニル化合物は式(III)の化合物である:

式中、Xは上で定義したとおりであり、かつZはO、SまたはNR2である。
【0064】
いくつかの態様において、活性化ジカルボニル化合物は式(IV)の化合物である:

式中、XおよびYは上で定義したとおりであり、かつLvは脱離基である。
【0065】
脱離基は、所望の入ってくる化学部分で置き換えることができる任意の適当な基であってもよく、いくつかの適当な脱離基が当技術分野において周知である。いくつかの態様において、脱離基はCl、Br、CH3SO3、CH3C6H4SO3、および下記の式の基からなる群より選択される。

【0066】
化合物は、反応を促進するのに適した多様な反応条件下で反応させうる。いくつかの態様において、アミノ置換金属キレート化リガンドおよび活性化ジカルボニル化合物を塩基存在下で反応させる。いくつかの適当な塩基を用いうる。いくつかの態様において、塩基はジイソプロピルエチルアミンである。
【0067】
さらなる局面において、対象の状態を治療または予防する方法であって、放射性核種に配位している式(II)の化合物の治療上有効な量を対象に投与する段階を含む方法が提供される。いくつかの態様において、状態は癌である。
【0068】
さらなる局面において、対象を放射線撮像する方法であって、放射性核種に配位している式(II)の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む方法が提供される。
【0069】
本教示のこれらおよび他の特徴を本明細書において示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
詳細な説明
本明細書において、当業者には周知のいくつかの用語が用いられる。それにも関わらず、明確にするために、いくつかの用語を定義する。
【0071】
本明細書において用いられる「無置換」なる用語は、置換基がまったくないか、または置換基が水素だけであることを意味する。
【0072】
本明細書の全体において用いられる「置換されていてもよい」なる用語は、基が1つまたは複数の非水素置換基でさらに置換されているか、またはそれらと縮合(縮合多環式系を形成するように)していてもよく、またはしていなくてもよいことを意味する。特定の態様において、置換基は下記からなる群より独立に選択される1つまたは複数の基である:ハロゲン、=O、=S、-CN、-NO2、-CF3、-OCF3、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、シクロアルキルアルケニル、ヘテロシクロアルキルアルケニル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、シクロアルキルヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル、アリールヘテロアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシシクロアルキル、アルキルオキシヘテロシクロアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アミノスルフィニルアミノアルキル、-C(=O)OH、-C(=O)Ra、-C(=O)ORa、C(=O)NRaRb、C(=NOH)Ra、C(=NRa)NRbRc、NRaRb、NRaC(=O)Rb、NRaC(=O)ORb、NRaC(=O)NRbRc、NRaC(=NRb)NRcRd、NRaSO2Rb、-SRa、SO2NRaRb、-ORa、OC(=O)NRaRb、OC(=O)Raおよびアシル、
ここでRa、Rb、RcおよびRdはそれぞれH、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C2-C10ヘテロアルキル、C3-C12シクロアルキル、C3-C12シクロアルケニル、C2-C12ヘテロシクロアルキル、C2-C12ヘテロシクロアルケニル、C6-C18アリール、C1-C18ヘテロアリール、およびアシルからなる群より独立に選択されるか、またはRa、Rb、RcおよびRdの任意の2つもしくはそれ以上は、それらが結合している原子と一緒になると、3から12個の環原子を有する複素環系を形成する。
【0073】
いくつかの態様において、任意の置換基はそれぞれ下記からなる群より独立に選択される:ハロゲン、=O、=S、-CN、-NO2、-CF3、-OCF3、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、アミノアルキル、-COOH、-SH、およびアシル。
【0074】
特に適当な任意の置換基の例には、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3、OH、OCH3、CF3、OCF3、NO2、NH2、およびCNが含まれる。
【0075】
本明細書において用いられる「アミノ酸」なる用語は、アミンおよびカルボキシル官能基の両方を含む分子を意味する。アミノ酸は天然または非天然アミノ酸であってもよい。
【0076】
基または基の一部としての「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、直鎖内に好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝でありうる、脂肪族炭化水素基を意味する。基は直鎖内に複数の二重結合を含んでいてもよく、それぞれの配向は独立にEまたはZである。例示的アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびノネニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0077】
基または基の一部としての「アルキル」は、特に記載がないかぎり、直鎖または分枝脂肪族炭化水素基、好ましくはC1-C12アルキル、より好ましくはC1-C10アルキル、最も好ましくはC1-C6を意味する。適当な直鎖および分枝C1-C6アルキル置換基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシルなどが含まれる。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0078】
基または基の一部としての「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含み、直鎖内に好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝でありうる、脂肪族炭化水素基を意味する。例示的構造には、エチニルおよびプロピニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0079】
基または基の一部としての「アリール」は以下を意味する:(i)好ましくは環1つあたり5から12個の原子を有する、置換されていてもよい単環式、または縮合多環式、芳香族炭素環(すべて炭素である環原子を有する環構造)。アリール基の例には、フェニル、ナフチルなどが含まれる;(ii)フェニルおよびC5-7シクロアルキルまたはC5-7シクロアルケニル基が一緒に縮合して、テトラヒドロナフチル、インデニルまたはインダニルなどの環状構造を形成する、置換されていてもよい部分飽和二環式芳香族炭素環部分。基は末端基または架橋基であってもよい。典型的には、アリール基はC6-C18アリール基である。
【0080】
「シクロアルキル」とは、特に記載がないかぎり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの、好ましくは環1つあたり3から9個の炭素を含む、飽和単環式または縮合もしくはスピロ多環式炭素環を意味する。これにはシクロプロピルおよびシクロヘキシルなどの単環系、デカリンなどの二環系、ならびにアダマンタンなどの多環系が含まれる。シクロアルキル基は典型的にはC3-C9シクロアルキル基である。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0081】
「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素である。
【0082】
「ヘテロアルキル」とは、炭素原子(および任意の関連する水素原子)の1つまたは複数がそれぞれ独立にS、O、PおよびNR'から選択されるヘテロ原子基で置き換えられており、ここでR'はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択される、鎖内に好ましくは2から12個の炭素、より好ましくは2から6個の炭素を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。例示的ヘテロアルキルには、アルキルエーテル、二級および三級アルキルアミン、アミド、アルキルスルフィドなどが含まれる。ヘテロアルキルの例には、ヒドロキシC1-C6アルキル、C1-C6アルキルオキシC1-C6アルキル、アミノC1-C6アルキル、C1-C6アルキルアミノC1-C6アルキル、およびジ(C1-C6アルキル)アミノC1-C6アルキルも含まれる。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0083】
「ヘテロアリール」は単独または基の一部のいずれかで、芳香環内に環原子として1つまたは複数のヘテロ原子を有し、環原子の残りは炭素原子である、芳香環(好ましくは5または6員芳香環)を含む基を意味する。適当なヘテロ原子には、窒素、酸素および硫黄が含まれる。ヘテロアリールの例には、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ナフト[2,3-b]チオフェン、フラン、イソインドリジン、キサントレン(xantholene)、フェノキサチン(phenoxatine)、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、テトラゾール、インドール、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、シンノリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジン、2-、3-または4-ピリジル、2-、3-、4-、5-、または8-キノリル、1-、3-、4-、または5-イソキノリニル 1-、2-、または3-インドリル、および2-、または3-チエニルが含まれる。ヘテロアリール基は典型的にはC1-C18ヘテロアリール基である。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0084】
「脱離基」は、所望の入ってくる化学部分で容易に置き換えられる化学基である。したがって、任意の状況において、脱離基の選択は入ってくる化学部分で置き換えられる特定の基の能力に依存することになる。適当な脱離基は当技術分野において周知で、例えば、''Advanced Organic Chemistry'' Jerry March 4th Edn. pp 351-357, Oak Wick and Sons NY (1997)を参照されたい。適当な脱離基の例には、ハロゲン、アルコキシ(エトキシ、メトキシなど)、スルホニルオキシ、置換されていてもよいアリールスルホニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。具体的な例には、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、エトキシ、メトキシ、メタンスルホニル、トリフラートなどが含まれる。
【0085】
「直鎖」なる用語は、連結部分の二端をつないでいる直接の鎖を意味する。
【0086】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、上で特定した化合物の所望の生物活性を保持している塩を意味し、薬学的に許容される酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。式(I)の化合物の適当な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製してもよい。そのような無機酸の例は、塩酸、硫酸、およびリン酸である。適当な有機酸は、有機酸の脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、複素環のカルボン酸およびスルホン酸類から選択してもよく、その例はギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸である。薬学的に許容される塩についてのさらなる情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Co., Easton, PA 1995中に見いだすことができる。固体の薬剤の場合、当業者には、本発明の化合物、薬剤および塩は異なる結晶または多形の形態で存在することがあり、これらはすべて本発明および明細書に記載した式の範囲内であることが意図されると理解される。
【0087】
「治療上有効な量」または「有効量」なる用語は、有益または所望の臨床上の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は1回または複数回の投与で与えることができる。有効量は典型的には、疾患状態の進行を和らげる、改善する、安定化させる、逆転させる、遅くする、または遅延させるのに十分である。放射線撮像のための有効量は典型的には、対象における放射性核種を同定するのに十分である。
【0088】
「分子認識部分」なる用語は、特定の分子実体、典型的には生理的環境における受容体部位に結合可能な実体を意味する。この用語には抗体、タンパク質、ペプチド、糖質、核酸、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖およびリポソームが含まれる。
【0089】
「酸素保護基」なる用語は、保護した化合物のさらなる誘導体化中に酸素部分が反応するのを防止することができ、かつ望まれる時に容易に除去することができる基を意味する。一つの態様において、保護基は生理的状態で自然の代謝プロセスによって除去可能である。酸素保護基の例には、アシル基(アセチルなど)、エーテル(メトキシメチルエーテル(MOM)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラン(THP)など)、およびシリルエーテル(トリメチルシリル(TMS) tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)およびトリイソプロピルシリル(TIPS)が含まれる。
【0090】
「窒素保護基」なる用語は、保護した化合物のさらなる誘導体化中に窒素部分が反応するのを防止することができ、かつ望まれる時に容易に除去することができる基を意味する。一つの態様において、保護基は生理的状態で自然の代謝プロセスによって除去可能であり、本質的に、保護した化合物は活性な非保護種のプロドラッグとして作用している。用いうる適当な窒素保護基の例には、ホルミル、トリチル、フタルイミド、アセチル、トリクロロアセチル、クロロアセチル、ブロモアセチル、ヨードアセチル;ベンジルオキシカルボニル(「CBz」)、4-フェニルベンジルオキシカルボニル、2-メチルベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、4-フルオロベンジルオキシカルボニル、4-クロロベンジルオキシカルボニル、3-クロロベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロベンジルオキシカルボニル、4-ブロモベンジルオキシカルボニル、3-ブロモベンジルオキシカルボニル、4-ニトロベンジルオキシカルボニル、4-シアノベンジルオキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル(「tBoc」)、2-(4-キセニル)-イソプロポキシカルボニル、1,1-ジフェニルエタ-1-イルオキシカルボニル、1,1-ジフェニルプロパ-1-イルオキシカルボニル、2-フェニルプロパ-2-イルオキシカルボニル、2-(p-トルイル)-プロパ-2-イルオキシ-カルボニル、シクロ-ペンタニルオキシ-カルボニル、1-メチルシクロペンタニルオキシカルボニル、シクロヘキサニルオキシカルボニル、1-メチルシクロヘキサニルオキシカルボニル、2-メチルシクロヘキサニルオキシカルボニル、2-(4-トルイルスルホノ)-エトキシカルボニル、2-(メチルスルホノ)エトキシカルボニル、2-(トリフェニルホスフィノ)-エトキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル(「FMOC」)、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、1-(トリメチルシリルメチル)プロパ-1-エニルオキシカルボニル、5-ベンズイソキサリメトキシカルボニル、4-アセトキシベンジルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、2-エチニル-2-プロポキシカルボニル、シクロプロピルメトキシカルボニル、4-(デシクロキシ)ベンジルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、1-ピペリジルオキシカルボンリルなどのウレタン型ブロック基;ベンゾイルメチルスルホノ基、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィンオキシドなどが含まれる。用いる実際の窒素保護基は、誘導体化窒素基がその後の反応条件に対して安定で、かつ任意の他の窒素保護基を含む分子の残りを実質的に破壊することなく、必要に応じて選択的に除去しうるかぎり、重要ではない。これらの基のさらなる例は下記において見られる:Greene, T. W. and Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, Second edition; Wiley-Interscience: 1991; Chapter 7;McOmie, J. F. W. (ed.), Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973;およびKocienski, P. J., Protecting Groups, Second Edition, Theime Medical Pub., 2000。
【0091】
前述の本発明の化合物には、多様な窒素含有大環状金属リガンドが含まれうる。
【0092】
リガンドはサイクラムまたはサイクレン骨格に基づく単環式窒素含有金属リガンドであってもよい。この型のリガンドおよびその誘導体は、Bernhardt (J. Chem. Soc., Dalton Transactions, 1996, pages 4319-4324)、Bernhardt et al (J. Chem. Soc., Dalton Transactions, 1996, pages 4325-4330)、およびBernhardt and Sharpe (Inorg Chem, 2000, 39, pages 2020-2025)などの当技術分野において利用可能な方法を用いて合成しうる。この一般型の様々な他のリガンドを、これらの記事に記載される手順の変形により作成しうる。
【0093】
リガンドは、例えば、Geue (Chemical communications, 1994, page 667)に記載のかご様クリプタンドリガンドであってもよい。この型のクリプタンドリガンドはSargesonらの米国特許第4,497,737号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
合成は金属イオン鋳型反応を含み、トリス-(ジアミン)金属イオン錯体(3段、30から35行参照)のホルムアルデヒドおよび適当な求核剤との塩基存在下での縮合を含む。求核剤の同一性はかご型リガンド上の置換基の同一性を決定することになり、当業者であれば縮合において用いる適当なアミンの賢明な選択ならびに求核剤の同一性によってかご型リガンドの周りの多様な置換パターンに到達することができる。
【0095】
本発明の式(I)の化合物を生成するために、アミノ置換リガンドまたはその金属錯体型を適当なジカルボニル化合物と、適当な反応条件下で反応させて、最終生成物を得る。
【0096】
反応は遊離リガンド上で実施してもよいが、環窒素の存在によって反応が損なわれる可能性がまだある。したがって、金属は環の二級窒素原子の保護基として作用するのに役立つため、その金属錯体を用いて反応を実施することが望ましい。
【0097】
反応は2つの反応物に対して不活性な任意の適当な溶媒中で実施してもよく、溶媒の同一性は無水物およびアミン置換金属リガンドの相対的溶解性によって決定される。用いうる溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン;クロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン;ジアルキルエーテル、エチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテルおよびエーテル化合物;アセトニトリルまたは2-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル;ジメチルホルムアミドなどのN,N-ジアルキル化アミド;およびジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素などの脂肪族、芳香族、またはハロゲン化炭化水素;ならびにこれらの溶媒の互いの混合物が含まれる。
【0098】
反応は任意のいくつかの適当な温度で実施してもよく、反応温度は場合ごとに容易に決定することができる。それにも関わらず、反応温度は典型的には0から100℃、より典型的には50から80℃で実施する。
【0099】
反応は多様な活性化ジカルボニル化合物を用いて実施してもよい。いくつかの態様において、活性化ジカルボニル化合物は以下の式の無水物である:

式中、Xは上で定義したとおりであり、ZはO、SまたはNR2である。
【0100】
この型の無水物化合物は一般に、Xの特定の値については容易に入手可能であり、したがってこれらの化合物は入手できるXの値で容易に用いうる。これらの化合物では副反応の可能性がいくぶん低下するため、可能であればこれらを用いることが望ましい。
【0101】
いくつかの態様において、活性化ジカルボニル化合物は以下の式の化合物である:

式中、XおよびYは上で定義したとおりであり、Lvは脱離基である。この型の化合物上のLv基は任意の適当な脱離基でありうるが、典型的にはCl、Br、CH3SO3、CH3C6H4SO3、および以下の式の基からなる群より選択される。

【0102】
この型の反応に適した脱離基を選択する際に、当業者であれば分子の残りの官能基およびそれぞれの場合の活性化ジカルボニル化合物の生成しやすさを考慮するであろう。
【0103】
塩基が反応を促進することが判明しているため、反応を典型的には塩基存在下でも実施する。適当な塩基の例には立体障害のある三級アミンが含まれ、トリメチルアミン、トリエチレンアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミンが反応で用いるのに適した塩基の例である。用いる塩基の量は、反応がその進行につれて酸性化による影響を確実に受けないように、大幅なモル過剰となる量である。
【0104】
生成する厳密な化合物は、反応化学量論および出発原料に依存することになり、当業者であればこれらの変数のいずれかを調節して所望の最終生成物を生成することができる。
【0105】
加えて、リンカーXは上で詳細を記載した経路によって到達可能な化合物よりも著しく長く伸長することが望ましく、鎖にさらなるアミノ酸基を導入するためにカルボキシ基を加工する(標準のペプチド化学技術などにより)ことが可能である。この型の反応を達成する方法は、当業者の技術の範囲内である。
【0106】
前述の方法を用いて生成しうる式(I)の化合物の例には下記またはその金属錯体が含まれる。

【0107】
次いで、カルボキシル末端(またはその活性化型)を分子認識部分上の適当な反応性要素と適当なカップリング条件下で反応させることにより、これらの化合物をさらに加工して、分子認識部分を含む式(II)の化合物を生成してもよい。そのような反応の例は、式(I)の化合物のカルボキシル部とペプチドまたはタンパク質のN末端(生物活性ペプチドのN末端など)との間のカップリングを行って、金属リガンドが分子認識単位に結合(リンカーを介して)するようにペプチド結合を形成する反応であろう。
【0108】
または、分子認識部分の分子認識部を付加する前に、式(I)の分子を「スペーサー部分」を導入するための分子と反応させてもよい。したがって、例えば、式(I)の化合物を、例えば、カルボキシル部分を通じて官能基化し、1つまたは複数のペプチド結合を形成して、合成中間体としてスペーサー部分が結合している式(I)の化合物を生成してもよい(スペーサー部分は最終化合物の分子認識部分の一部を形成する)。この型の化合物の例には下記が含まれる。

【0109】
これらの化合物それぞれにおいて明らかであるとおり、式(I)の化合物は「スペーサー部分」の付加によって加工されている。第一の化合物において、分子の片側にチロシン部分が付加されている。第二の化合物では、分子の片側にペプチドTyr-aHX-Cys-NH2が付加され、第三の化合物では、分子の両側にペプチドTyr-aHX-Cys-NH2が付加されている。
【0110】
前述のとおり、式(I)の化合物または前述の中間体化合物を次いで、場合により分子認識部分(または分子認識部)の付加によってさらに加工し、式(II)の化合物を生成してもよい。
【0111】
式(II)の化合物の例には下記が含まれる。

【0112】
原理的には、広い範囲の生物学的に活性な分子認識単位のいずれを本出願において用いてもよく、唯一の限定は用いる分子認識部分が式(I)の化合物に結合(直接またはスペーサーを通じて)可能な官能基を含まなければならないことである。いくつかの異なる官能基が企図されうる(その上でチオール部分とカップリングするRGDfK上のマレイミドプロピオネート基など)が、分子認識部分は好ましくは前述の本発明の化合物のカルボキシル残基を通じてカップリングするためのN末端を有する。カップリング反応は、当技術分野において周知の様式で実施してもよく、用いる固相または液相ペプチド合成技術のいずれかを含みうる当技術分野において周知のペプチド合成技術を用いてもよい。いくつかの場合には、円滑なカップリングを促進するために、リガンドの窒素原子を標準の窒素保護基を用いてペプチドカップリング前に保護してもよい。これを行う場合、任意の適当な窒素保護基を用いてもよく、N-tert-ブトキシカルボニル基(t-boc)が特に有用であると判明している。完了後、保護基を当技術分野において周知の技術を用いて除去してもよい。
【0113】
この様式で合成した化合物の金属錯体の生成は、当技術分野において周知の技術を用いて実施する。
【0114】
前述のとおり、本発明の化合物は分子認識部分を有するか、または分子認識部分を含むよう修飾しうるため、有用である。リガンドと錯体形成した放射性核種を含む式(II)の化合物を、放射線療法または診断撮像適用において用いてもよい。それぞれの場合に、療法および診断撮像はいずれも、治療/撮像を受ける対象の所望の組織または臓器への放射性核種を含む錯体の局在化を促進する際に、関与する分子認識部分に頼ることになる。
【0115】
したがって、例えば、式(II)の放射性標識化合物の使用に関連して、これらは放射性標識化合物が体内の特定の部位に局在化したかどうか、または化合物がおおざっぱに言って体内に均等に分布しているかどうかを調べるために、放射性標識化合物の有効量を対象に投与し、続いて適当な期間の後に対象をモニターすることにより用いることになると予想される。概して、放射性標識化合物が体の組織または臓器に局在化している場合、これは用いる特定の分子認識部分によって認識される何かが組織または臓器に存在することを示している。
【0116】
したがって、診断撮像適用における任意の本発明の放射性標識化合物の有効性を評価する上で、分子認識部分または分子認識部の賢明な選択は重要である。これに関して、十分に特徴づけされ、体内の特定の受容体を選択的に標的とすることが公知の、広範な分子認識部分または分子認識部が当技術分野において公知である。特に、患者が特定の医学的状態を患っている場合に、組織または臓器を標的とするいくつかの分子認識部分または分子認識部が公知である。公知で本発明において用いうる分子認識部分または分子認識部の例には、オクトレオタート、オクトレオチド、[Tyr3]-オクトレオタート、[Tyr1]- オクトレオタート、ボンベシン、ボンベシン(7-14)、ガストリン放出ペプチド、単一アミノ酸、ペネトラチン、アネキシンV、TAT、環状RGD、グルコース、グルコサミン(および伸展した糖質)、葉酸、ニューロテンシン、神経ペプチドY、コレシストキニン(CCK)類縁体、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、サブスタンスP、アルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が含まれる。例えば、特定の癌はソマトスタチン受容体を過剰発現することが公知であるため、分子認識部分はこれらの受容体を標的とするものであってもよい。この型の分子認識部分または分子認識部の一例は[Tyr3]-オクトレオタートである。分子認識部分または分子認識部のもう一つの例は、インテグリンを標的とする環状ペプチドである環状RGDである。他の例において、適当な分子認識部分または分子認識部は、乳癌および膵臓癌を標的とすることが公知のボンベシンである。
【0117】
対象の放射性標識材料の位置をモニターすることで、典型的には分析者は放射性標識材料の位置と、したがって分子認識部分が標的とする任意の材料(癌組織など)の位置に関する情報が得られる。本発明の化合物の有効量はいくつかの因子に依存することになり、必然的に所望の放射線撮像効果を達成するのに必要とされる放射能の量と有害でありうる放射線の任意の不必要なレベルまで対象(またはその組織もしくは臓器)を曝露しないことへの一般的な関心との間のバランスに関与することになる。
【0118】
本発明の治療方法は、放射性核種と錯体形成した式(II)の化合物の投与を含む。式(II)の化合物は、放射性核種をその作用機作が望まれる体内の所望の部位に送達するための、分子認識部分を含む。前述のとおり、そのような分子認識部分の例は当技術分野において公知で、当業者であれば治療する体内の所望の組織を標的とするための適当な分子認識部分を選択することができる。
【0119】
治療上有効な量は、通常の技術を用い、同様の状況で得られた結果を観察することにより、主治医が容易に決定することができる。治療上有効な量を決定する上で、動物の種、そのサイズ、年齢および全般的な健康、関与する具体的な状態、状態の重症度、治療に対する患者の反応、投与する特定の放射性標識化合物、投与の様式、投与した製剤のバイオアベイラビリティ、選択した投与法、他の薬物の使用ならびに他の関連する状況を含むが、それらに限定されるわけではない、いくつかの因子を考慮すべきである。
【0120】
加えて、治療方法は典型的にはいくつかの周期の放射線治療を含み、周期は状態が改善される時点まで継続されることになる。さらに、最適な周期の数および各治療周期の間の間隔は、治療中の状態の重症度、治療中の対象の健康(またはその欠乏)およびその放射線療法に対する反応などの、いくつかの因子に依存することになる。一般に、最適な用量および最適な治療方法は当業者であれば周知の技術を用いて容易に決定することができる。
【0121】
本発明の化合物を使用する上で、化合物はそれらを所望の適用(撮像または放射線療法)に対して利用可能とする任意の形式または様式で投与することができる。この型の製剤を調製する当業者であれば、選択する化合物の特定の特徴、治療する状態、治療する状態の病期および他の関連する状況に応じて、適当な投与の形式および様式を容易に選択することができる。さらなる情報については、Remingtons Pharmaceutical Sciences, 19th edition, Mack Publishing Co. (1995)を参照されたい。
【0122】
本発明の化合物は、単独で、または薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤と組み合わせての薬学的組成物の形で投与することができる。本発明の化合物は、それ自体有効であるが、薬学的に許容される塩の形が典型的にはより安定で、より容易に結晶化し、高い溶解性を有するため、典型的にはそのような形で製剤し、投与する。
【0123】
しかし、化合物は、典型的には所望の投与様式に応じて製剤した薬学的組成物の形で用いる。組成物は当技術分野において周知の様式で調製する。
【0124】
他の態様において、本発明は、本発明の薬学的組成物の1つまたは複数の成分を充填した1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。そのようなパックまたはキットにおいて、薬剤の単位用量を有する少なくとも1つの容器を見いだすことができる。便利なことに、キットでは、医師がバイアルを直接用いることができるように、1回用量を滅菌バイアル中に提供することができ、ここでバイアルは使用前に混合しうる所望の量および濃度の化合物および放射性核種を有することになる。そのような容器には、使用説明書、または薬物、造影剤もしくは生物製剤の製造、使用もしくは販売を規制する政府機関による通知書であって、ヒトへの投与のための製造、使用もしくは販売の政府機関による承認を示す通知書などの様々な書類を添付することができる。
【0125】
本発明の化合物は、言及する障害/疾患の治療のために、抗癌薬および/または手法(例えば、手術、放射線療法)である1つまたは複数の追加の薬物との組み合わせで使用または投与してもよい。成分は、同じ製剤または別々の製剤で投与することができる。別々の製剤で投与する場合、本発明の化合物は他の薬物と逐次または同時に投与してもよい。
【0126】
抗癌薬を含む1つまたは複数の追加の薬物との組み合わせで投与しうることに加えて、本発明の化合物は併用療法において用いてもよい。これを行う場合、化合物は典型的には互いに組み合わせて投与する。したがって、所望の効果を達成するために、本発明の化合物の1つまたは複数を同時(組み合わせた製剤として)または逐次のいずれかで投与してもよい。これは、2つの薬物の組み合わせた効果が改善された治療結果を提供するような、各化合物の治療特性が異なる場合に特に望ましい。
【0127】
非経口注射のための本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される滅菌水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳濁液ならびに使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。
【0128】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含んでいてもよい。微生物の作用の防止を、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含によって確実にしてもよい。糖類、塩化ナトリウムなどの等張化剤を含むことが望ましいこともある。注射用薬学的剤形の持続性吸収を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の包含によって行ってもよい。
【0129】
望まれる場合、およびより有効な分布のために、化合物をポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアなどの徐放性または標的指向性の送達システムに組み込むことができる。
【0130】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通してのろ過により、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒質中に溶解もしくは分散させうる滅菌固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0131】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性化合物を、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸2カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な、薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保水剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液遅延剤、f)4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコ−ルおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレーなどの吸収剤や、i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑沢剤と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝化剤を含んでいてもよい。
【0132】
同様の型の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、ゼラチン軟および硬カプセルにおける充填剤として用いてもよい。
【0133】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形を、腸溶コーティングおよび薬学的製剤の技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを伴って調製することができる。これらは任意に乳白剤を含んでいてもよく、活性成分だけ、または活性成分を優先的に、腸管の特定の部分で、任意に遅延様式で放出する組成物でありうる。用いうる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0134】
望まれる場合、およびより有効な分布のために、化合物をポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアなどの徐放性または標的指向性の送達システムに組み込むことができる。
【0135】
活性化合物は、適当であれば、前述の賦形剤の1つまたは複数と共に、マイクロカプセルに封入された形でもありうる。
【0136】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物などの、当技術分野において一般に用いられる不活性希釈剤を含んでいてもよい。
【0137】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、矯味矯臭剤、および香料などの補助剤を含むこともできる。
【0138】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、ヒドロキシアルミニウムオキシド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁化剤を含んでいてもよい。
【0139】
前述のとおり、本態様の化合物は増殖性疾患を治療および/または検出するために有用でありうる。そのような細胞増殖性疾患または状態には、癌(任意の転移も含む)、乾癬、および再狭窄などの平滑筋細胞増殖性障害が含まれる。本発明の化合物は、乳癌、大腸癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、頭頸部癌、または腎臓、胃、膵臓癌および脳癌ならびにリンパ腫および白血病などの血液悪性病変などの腫瘍を治療および/または検出するために、特に有用でありうる。加えて、本発明の化合物は、他の抗癌薬による治療および/または検出に抵抗性の増殖性疾患を治療および/または検出するため;ならびに白血病、乾癬および再狭窄などの過剰増殖状態を治療および/または検出するためにも有用でありうる。他の態様において、本発明の化合物は、家族性腺腫性ポリープ症、大腸腺腫性ポリープ、骨髄形成異常、子宮内膜形成異常、子宮内膜異型増殖症、子宮頚部形成異常、膣上皮内新形成、良性前立腺過形成、咽頭の乳頭腫、光線角化症および日光角化症、脂漏性角化症ならびに角化棘細胞腫を含む、前癌状態または過形成を治療および/または検出するために用いることができる。
【0140】
本発明の化合物の合成
様々な態様の薬剤を、以下に記載する反応経路および合成スキームを用い、容易に入手可能な出発原料を用いての当技術分野において利用可能な技術を使用して調製してもよい。これらの態様の特定の化合物の調製を、以下の実施例において詳細に記載するが、当業者であれば、記載する化学反応は様々な態様のいくつかの他の薬剤を調製するために容易に適合させうることを理解するであろう。例えば、例示していない化合物の合成は、例えば、干渉する基を適当に保護すること、当技術分野において公知の他の適当な試薬に変更すること、または反応条件の日常的改変を行うことによる、当業者には明らかな改変によって首尾よく実施しうる。有機合成における適当な保護基の一覧は、T.W. Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, 1991に見いだすことができる。または、本明細書において開示する、または当技術分野において公知の他の反応は、様々な態様の他の化合物を調製するための適用性を有すると理解されるであろう。
【0141】
化合物を合成するのに有用な試薬は、当技術分野において公知の技術により入手または調製してもよい。
【0142】
一般合成スキーム
スキーム1は、一般式(I)の本発明の化合物を製造する手順の概要を示す一般合成スキームである。この一般手順は、用いる出発原料および試薬を適当に改変することにより、環状ジカルボニル(III)の異なる連結部分Xを有する本発明の他の化合物を生成するために改変することができる。当業者であれば、これらの変更を容易に行うことができるであろう。
【0143】
スキーム1に見られるとおり、適当な窒素含有大環状リガンド(V)(金属と錯体形成していてもよく、していなくてもよい)を所望の連結部分Xを含む適当な環状ジカルボニル(III)と塩基性条件下で反応させて、ジカルボニル金属キレート化剤(I)を得る。ジカルボニル金属キレート化剤(I)は、適当な分子認識部分とのさらなる結合のための官能基Yを有する。
スキーム1

【0144】
このスキームは、Zが酸素もしくは硫黄原子または式NR2の基である合成の概要を示す。Zが酸素原子であるとき、さらなる加工のための末端カルボン酸ハンドルが生成される。または、Zが硫黄原子であるとき、当技術分野において周知の方法により、さらなる加工のための末端カルボキシルチオールが生成される。ZがNR2であるとき、末端アミドが生成される。スキームを改変して本開示の範囲内の化合物を生成してもよく、ここで環状ジカルボニル(III)は上に示す反応における塩基としても作用しうる。所望の最終生成物に到達するための他の変動は、当業者の技術の範囲内である。
【0145】
スキーム2は、本発明の化合物のもう一つの合成を示す。スキーム2に示すとおり、もう一つの合成は、カルボニル部分の1つがカルボニルに適当な脱離基を提供することにより活性化されている、適当に活性化された直鎖ジカルボニル化合物の提供を含む。これをアミン化合物と適当な反応条件下で反応させて、脱離基の置換および所望の最終生成物の生成を引き起こす。
スキーム2

【0146】
前述の合成で用いるための窒素含有大環状金属キレート化リガンドLは、前述のとおり当技術分野において公知の一連の大環状金属リガンドのいずれであってもよい。上のスキームにおいて、金属リガンドを遊離型の無水物と反応させるか、または金属イオンと結合させ、それにより反応前に大環状分子のヘテロ原子の求核性を不活性化することができる。そのような金属キレート化剤の一例は、1,8-(NH2)2sarである。1,8-(NH2)2sarは金属イオンと配位して、大環状分子の6つの二級アミンを実質的に不活性化し、それにより2つの「遊離」一級アミンを選択的に反応させることができる。
【0147】
式(II)の化合物を式1の化合物から、標準のペプチドカップリング技術を用いて生成してもよく、ここで式(I)の化合物のカルボキシ末端を分子認識部分のアミン末端と標準の条件下で反応させて、カップリングした生成物を得る。
【0148】
選択した式(I)の化合物合成のための合成手順を以下に詳細に記載する。
【実施例】
【0149】
以下に記載する実施例において、特に記載がないかぎり、以下の記載における温度はすべて摂氏度であり、割合およびパーセンテージはすべて、特に記載がないかぎり、重量によるものである。
【0150】
様々な出発原料および他の試薬は、Aldrich Chemical CompanyまたはLancaster Synthesis Ltd.などの商業的供給業者から購入し、特に記載がないかぎり、それ以上精製せずに使用した。テトラヒドロフラン(THF)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)はAldrichからSureSeal瓶で購入し、受け取ったままで使用した。すべての溶媒は、特に記載がないかぎり、当技術分野における標準の方法を用いて精製した。SP Sephadex C25およびDOWEX 50wx2 200-400メッシュカチオン交換樹脂はAldrichから購入した。Fmoc-L-アミノ酸、HATU、HCTUおよび2-クロロトリチル樹脂はGL Biochem Ltd (Shanghai, China)から購入した。Fmoc-Lys(iv-Dde)-OHおよびFmoc-D-アミノ酸はBachem AG (Switzerland)から購入した。Fmoc-Pal-PEG-PS樹脂はApplied Biosystems (Foster City, California)から購入した。Nova PEG Rink Amide樹脂はNovaBiochem, Darmstadt, Germanyから購入した。[Co((NO2)2sar)]Cl3、[Co((NH2)2sar)]Cl3、(NH2)2sar、[Cu(NH3)2sar](CF3SO3)4は確立された手順に従って調製した。(1)Geue, R. J.; Hambley, T. W.; Harrowfield, J. M.; Sargeson, A. M.; Snow, M. R. J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 5478-5488.(2)Bottomley, G. A.; Clark, I. J.; Creaser, I. I.; Engelhardt, L. M.; Geue, R. J.; Hagen, K. S.; Harrowfield, J. M.; Lawrance, G. A.; Lay, P. A.; Sargeson, A. M.; See, A. J.; Skelton, B. W.; White, A. H.; Wilner, F. R. Aust. J. Chem. 1994, 47, 143-179および(3)Bernhardt, P. V.; Bramley, R.; Engelhardt, L. M.; Harrowfield, J. M.; Hockless, D. C. R.; Korybut-Daszkiewicz, B. R.; Krausz, E. R.; Morgan, T.; Sargeson, A. M.; Skelton, B. W.; White, A. H. Inorg. Chem. 1995, 34, 3589-3599。
【0151】
以下に示す反応は、無水溶媒中、窒素、アルゴンまたは乾燥管を用いての陽圧下、周囲温度(特に記載がないかぎり)で実施し、反応フラスコは基質および試薬をシリンジから導入するためにゴム製のふたを取り付ける。ガラス器具は乾燥器乾燥および/または熱乾燥した。
【0152】
後処理は典型的には、反応溶媒または抽出溶媒で反応量を2倍にし、次いで指定の水性溶液で抽出量(特に記載がないかぎり)の25体積%を用いて洗浄して実施した。生成物溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒の蒸発はロータリーエバポレーターにより減圧下で行い、溶媒を減圧下で除去したと記した。フラッシュカラムクロマトグラフィ[Still et al, J. Org. Chem., 43, 2923 (1978)]は、特に記載がないかぎり、E Merck等級のフラッシュシリカゲル(47〜61mm)を用い、シリカゲル:粗製材料の比は約20:1から50:1で行った。水素化分解は示した圧または周囲圧で行った。
【0153】
質量分析は、Agilent 1100 LCシステムに連結したAgilent 6510 Q-TOF LC/MS Mass Spectrometer(Agilent, Palo Alto, CA)で陽イオンモードで記録した。データを取得し、基準質量を工場で規定した較正手順を用い、デュアルスプレーエレクトロスプレーイオン化源で補正した。全イオンクロマトグラムでの各スキャンまたはデータポイントは平均9652トランジェントで、1.02スキャン/秒となる。スキャンを各ピークにわたり平均することによってスペクトルを作成した。質量分析計の条件:フラグメンター:200〜300V;乾燥ガス流量:7L/分;ネブライザー:30psi;乾燥ガス温度:325℃;Vcap:4000V;スキマー:65V;OCT RfV:750V;取得したスキャン範囲:150〜3000m/z。
【0154】
HPLC-MSトレースを前述のAgilent 6510 Q-TOF LC/MS Mass Spectrometerに連結したAgilent Eclipse Plus C18カラム(5μm、2.1×150mm)を用いて記録した。各試料の一定量1μLをカラムにAgilent 1100 LCシステムを流速0.5mL/分で用いて注入した。データ収集パラメーターは、フラグメンター(フラグメンター電圧:100V)以外は質量スペクトルについて前述したものと同じである。
【0155】
NMRスペクトルはVarian FT-NMR 500分析計で、1H NMRには500MHz、13C-NMRには125.7MHzで操作して記録した。NMRスペクトルは、標準としてアセトンを用い(それぞれ2.22ppmおよび30.89ppm)、D2O溶液として得た(ppmで報告)。他のNMR溶媒を必要に応じて用いた。ピーク多重度を報告する場合、以下の略語を用いる:s=一重線、d=二重線、t=三重線、m=多重線、br=広幅、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線。カップリング定数を示す場合は、ヘルツで報告する。
【0156】
半調製用HPLC精製は、Agilent 1200 Series HPLCシステムを流速5mL/分で用いて実施した。溶媒勾配およびカラムの明細は実施例に記載する。自動Agilent 1200フラクションコレクターで1〜3mLの分画を集め、分画の収集は214または220nmのUV-Vis検出に基づいており、検出の下限は100〜400mAUの間であった。各分画をMSおよび分析用HPLCを用いて分析した。
【0157】
分析用HPLCトレースは、Agilent 1200 Series HPLCシステムおよびAgilent Zorbax Eclipse XDB-C18カラム(4.6×150mm、5μm)を流速1mL/分、214nm、220nmおよび270nmのUV分光検出を用いて取得した。
【0158】
UV-Visスペクトルは、Cary 300 Bio UV-Vis分光光度計を用い、800〜200nmを0.500nmのデータ間隔、スキャン速度300.00nm/分で取得した。
【0159】
ボルタメトリー実験を、Autolab (Eco Chemie, Utrecht, Netherlands)コンピューター制御電気化学ワークステーションで実施した。作用電極としてガラス状炭素ディスク(d、3mm)、補助電極としてPtワイア、およびAg/AgCl基準電極(H2O中の銀ワイア(KCl(0.1M)AgNO3(0.01M))による標準の3電極配置を用いた。スキャン速度:100mV/秒、試料間隔:1.06mV、感度:1×10-4A。
【0160】
放射性標識ペプチドのHPLCトレースは、ヨウ化ナトリウムシンチレーション検出器およびUV-Vis検出器を備えたShimadzu LC-20ATに連結したWaters Comosil C18カラム(4.6×150mm)を用いて取得した。各放射性標識試料の一定量100μLを、流速1mL/分を用いてカラムに注入した。
【0161】
以下の実施例は、開示する態様を例示することを意図しており、それを限定すると解釈されるべきではない。以下に記載するもの以外の他の化合物は、以下に記載する反応スキームまたはその適当な変形もしくは改変を用いて調製してもよい。
【0162】
実施例1
[Cu((1-NH3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar)](NO3)3([CuL1](NO3)3とも呼ぶ)および[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar](CF3SO3)Cl([CuL2](CF3SO3)Clとも呼ぶ):

無水N,N-ジメチルアセトアミド(12mL)中の[Cu(NH3)2Sar](CF3SO3)4(1.5g、1.53mmol)の溶液を窒素雰囲気下で70℃まで加熱した。無水グルタル酸(0.19g、1.64mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(600μL)を加え、溶液を70℃で2時間加熱した。溶液を冷却し、水(20mL)を加えた。溶液をSP Sephadex C-25カチオン交換カラム(Na+型、30×5cm)に加えた。カラムを0.05Mクエン酸ナトリウム溶液で溶出して、3つの成分を分離した。(クロマトグラフィ収率:分画1:約40%、分画2:約40%、分画3:約20%)。各分画をDOWEX 50W×2カチオン交換カラム(H+型、10×5cm)に別々に加えた。カラムを水(500mL)および1M HCl溶液(500mL)で洗浄し、次いで4M HCl(350mL)で溶出し、溶出剤を減圧下、40℃で蒸発乾固した。分画1:[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar]Cl2.xHCl(1.00g)MS:[CuC24H45N8O6]+ m/z = 604.2732(実測値)、604.2764(計算値)。分画2:[Cu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar]Cl3.xHCl(0.82g)MS:[CuC19H39N8O3]+ m/z = 490.2439(実測値)、490.2447(計算値)。分画2からの暗青色残渣を蒸留水(30mL)に溶解した。濃硝酸(2mL)を加え、溶液をロータリーエバポレーションにより結晶化が始まるまで濃縮した。混合物を5℃で30分間冷却した後、淡青色結晶をろ取した。[Cu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](NO3)3:0.13g、単離収率13%。
【0163】
X線回折に適した結晶が約1M HNO3(2mL)中の[Cu(1-NH3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar]Cl3.xHCl(20mg)の溶液の周囲温度での蒸発から生じた。
【0164】
[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar](CF3SO3)Clの結晶はX線回折試験に適しており、以下のとおりに生成した:[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar]Cl2.xHCl(0.45g)を水(2mL)に溶解し、銀トリフラートの溶液(水2mL中の0.33g)を加えた。この溶液を2回ろ過(MilliQシリンジフィルター(0.45μm))し、減圧下で蒸発乾固して、暗青紫色残渣を得た。残渣を水(8mL)に溶解し、10分経過後、この溶液から青色結晶が沈澱した。これらを回収し、ろ過により乾燥した。Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar](CF3SO3)Cl:0.13g。X線回折に適した結晶が水(6mL)中のCu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar](CF3SO3)Cl(30mg)の溶液の周囲温度での蒸発から生じた。
【0165】
結晶データ:[CuL1](NO3)3 C25H41N11O12Cu、M = 679.17、T = 130.0(2) K、λ= 0.71069、単斜晶、空間群P21/c a = 8.345(5) b = 12.231(5)、c =26.941(5)Å、b = 93.658(5)°、V = 2744(2)Å3、Z = 4、Dc = 1.644mg M-3 μ(Mo-Kα) 0.879mm-1、F(000) = 1428、結晶サイズ 0.35 x 0.3 x 0.01mm。測定された反射17656、独立の反射6107 (Rint =0.17)、最終Rは0.067 [I > 2□(I)]でwR(F2)は0.1524であった。[CuL2](CF3SO3)Cl C19H46ClCuF3N8O9S、M = 790.75、T = 130.0(2) K、λ= 0.71069、斜方晶、空間群C2221 a = 12.4608(13) b = 20.445(2)、c =13.2263(14)Å、V = 3369.6(6)Å3、Z = 4、Dc = 1.559mg M-3 μ(Mo-Kα) 0.879mm-1、F(000) = 1652、結晶サイズ 0.40 x 0.30 x 0.20mm。測定された反射8848、独立の反射2973 (Rint =0.0334)、最終Rは0.0542 [I > 2σ(I)]およびwR(F2)は0.1471であった。構造はAssoc. Prof. Jonathan M. Whiteにより得られ、解析された。
【0166】
微量分析:[CuL1](NO3)3:CuC19H41N11O12 - C 34.86%、H 6.40%、N 24.76%(実測値);- C 33.60%、H 6.08%、N 22.69%(計算値);[CuL2](CF3SO3)Cl:CuC25H46N8O9SClF3 - C 38.06%、H 5.92%、N 14.20%、S 3.88%(実測値);- C 37.97%、H 5.86%、N 14.17%、S 4.06%(計算値)。
【0167】
UV-vis:水中[Cu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](NO3)3、pH4、λmax = 658nm、ε = 140M-1cm-1;水中[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar](CF3SO3)Cl、pH = 4、λmax = 655nm、ε = 146M-1cm-1
【0168】
電気化学:NaBF4の水溶液(100mM)中の[Cu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](NO3)3(1mM)、pH3.5、Ered = -1.086(対[Fe(CN)6]3-/4-、E° = 0)。
【0169】
実施例2
(1-NH3Cl)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar:(L1・HClとも呼ぶ)

水(4mL)中の[Cu(1-NH3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar]Cl3.xHCl(0.44g、x=0に基づき約0.73mmol)にN2ガスを20分間パージすることにより脱酸素した。硫化ナトリウム(0.6g)を加え、溶液を室温(窒素ガス雰囲気下)で終夜撹拌した。硫化ナトリウムの添加後、溶液は暗緑色に変わった。約16時間後、黒褐色沈澱が見られ、溶液は淡黄緑色に見えた。この混合物をろ過(Whatman Filter Paper 1)し、ろ液を1M HCl(250mL)で希釈して、混濁した白色沈澱が生じた。混合物をろ過(MilliQシリンジフィルター(0.45μm))し、DOWEX 5OW x 2カチオン交換カラム(H+型、10 x 5cm)に加えた。カラムを1M HCl溶液(750mL)で洗浄(Na2Sを除去するため)し、次いで4M HCl溶液(400mL)で溶出した。溶出剤を減圧下で蒸発乾固し、わずかに青みを帯びた澄明残渣を得た。この残渣はまだわずかに青色であったため、前述の手順を繰り返した。最終溶液を蒸発乾固して、無色澄明残渣を得た。(1-NH3Cl(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar.xHCl:0.30g、89% MS:[C19H40N8O3]+ 429.3372(実測値)、429.3296(計算値)。

【0170】
実施例3
(8-NHCO(CH2)3COOH)(x-NCO2-t-Bu)4.5Sar:(L1-(t-Boc)3-5とも呼ぶ)
(1-NH3Cl)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar.xHClをトリフルオロメタンスルホン酸塩に変換して、N,N-ジメチルアセトアミド中のその溶解性を高めた。簡単に言うと、(1-NH4Cl)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar.xHCl(0.20g、0.43mmol)を水(5mL)に溶解し、銀トリフラート(0.11g、0.43mmol)を加え、塩化銀を沈澱させた。溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、減圧下で蒸発乾固して、無色澄明の吸湿性(hydroscopic)残渣を得た。(1-NH4CF3SO3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar.xH2O:0.31g。
【0171】
(1-NH3CF3SO3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar.xH2O(80mg、x=0に基づき0.138mmol)をN,Nジメチルアセトアミド:水(4:1)(10mL)の溶液に溶解した。二炭酸ジ-tert-ブチル(0.25g、1.15mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(100μL)を加え、溶液を窒素ガス雰囲気下で30分間撹拌した。この後、溶媒を高減圧下、約40℃で除去した。残渣をアセトニトリル(15mL)に溶解し、ろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥して痕跡量のN,N-ジメチルアセトアミドを除去した。粗製化合物をいったん乾燥し、これをA:B(70:30)(A=0.1%トリフルオロ酢酸を含むmilliQ水、B=0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル)の溶液(5mL)に溶解し、ろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、C18カートリッジ(Alltech Maxi-Clean C18 900mg)に加えた。カートリッジを5mLのA、5mLの10%B/A、および5mLの20%B/Aで逐次洗浄した。次いで、これを5mLの80%B/Aで溶出し、1mLの分画を集めた。所望の化合物の大部分(>95%)が最初の2分画に集められた。これらを凍結乾燥して、t-BOC保護異性体の混合物を得、保護の程度はかご型化合物1分子あたりt-BOC基3〜5個の範囲であった。(8-NHCO(CH2)3COOH)(x-NCOO-t-Bu)4.5Sar:30mg、収率25%。MS:[C19H41N8O3(C5H8O2)3]+ 729.4879(実測値)、729.4869(計算値);[C19H41N8O3(C5H8O2)4]+ 829.5414(実測値)、829.5414(計算値);[C19H41N8O3(C5H8O2)5]+ 929.5942(実測値)、929.5918(計算値)。
【0172】
実施例4
(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar:(L2とも呼ぶ)

水(20mL)中の[Cu(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar]Cl2.xHCl(1.0g、x=0に基づき約1.48mmol)にN2ガスを20分間パージすることにより脱酸素した。硫化ナトリウム(1.3g)を加え、溶液を室温(窒素ガス雰囲気下)で終夜撹拌した。約16時間後、溶液は黒褐色沈澱を伴う緑色であった。硫化水素(1.4g)をさらに追加し、溶液を室温で終夜撹拌した。この後、溶液は淡黄色に見えた。混合物をろ過(Whatman Filter Paper 1)し、ろ液を1M HCl(250mL)で希釈して、混濁した白色沈澱が生じた。混合物をろ過(MilliQシリンジフィルター(0.45μm))し、DOWEX 5OW x 2カチオン交換カラム(H+型、10 x 5cm)に加えた。カラムを1M HCl溶液(750mL)で洗浄(Na2Sを除去するため)し、次いで4M HCl溶液(400mL)で溶出した。溶出剤を減圧下で蒸発乾固し、無色澄明残渣を得た。(1,8-NHCO(CH2)3COOH)2Sar.xHCl:0.255g、32% MS:[C24H47N8O6]+ 543.3686(実測値)、534.3619(計算値)。

【0173】
実施例5 L2-(t-Boc)4.:
L2.xHCl(0.17g、x=0に基づき0.31mmol)を水(3mL)に溶解した。アセトニトリル(7mL)中の二炭酸ジ-tert-ブチル(1g、約20当量)およびトリエチルアミン(0.5mL)を加えた。アセトニトリル相は水相と混和しなかったが、反応混合物を窒素ガスの不活性雰囲気下で2時間激しく撹拌した。この後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を高減圧下、45℃で2時間乾燥した。乾燥した残渣をA:B(90:10)溶液に再度溶解し、ろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、C18カートリッジ(Alltech Maxi-Clean C18 900mg)に加えた。カートリッジを5mLのAおよび5mLの20%B/Aで逐次洗浄した。次いで、これを5mLの50%B/Aで溶出した。この分画を凍結乾燥して、主にL2-(t- Boc)4を得た。L1-(t-Boc)3-5:30mg、収率10%。MS:[C44H79N8O14]+ 943.68(実測値)、943.57(計算値)。
【0174】
実施例6
Sar-オクトレオタート(L1-Tyr3-オクトレオタート):

直鎖[Tyr3]-オクトレオタート(直鎖OCT)ペプチド(dPhe-Cys-Tyr-dTrp-Lys-Thr-Cys-Thr-OH(配列ID番号:1)を塩化2-クロロトリチル樹脂上で、標準のFmoc固相ペプチド合成手順を用いて合成した。過剰の樹脂(0.06g、約0.8mmol/g)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で膨潤させた。DMF(1mL)中のL1-(t-Boc)3-5(25mg、0.03mmol)、HCTU(20mg、0.05mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(20μL)を樹脂に加え、混合物を撹拌し、終夜反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)およびジクロロメタン(DCM)(3×5mL)で洗浄した。樹脂をファルコンチューブに移し、トリフルオロ酢酸(5mL)、脱イオン水(0.15mL)およびトリイソプロピルシラン(0.15mL)を加えた。ファルコンチューブを振盪機上に40分間置いた。ジエチルエーテル(15mL)を用いてペプチド材料を溶液から沈澱させ、混合物を遠心分離(3分間、3000rpm)した。上清を廃棄し、沈澱をA:B(70:30)に溶解した。この溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥した。
【0175】
粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。直鎖L1-Tyr3-オクトレオタートは30分で溶出し(ESI-MSで決定)、直鎖L1-Tyr3-オクトレオタートを含む分画を凍結乾燥した。次いで、乾燥した分画を酢酸アンモニウム(25mM、pH6.5、8mL)に再度溶解し、過剰の2,2-ジチオジピリジン(12mg)を加えた。次いで、溶液を半調製用逆相HPLCカラムに加え、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。環状L1-Tyr3-オクトレオタートは30分で溶出し、環状L1-Tyr3-オクトレオタートを含む分画を凍結乾燥した。L1-Tyr3-オクトレオタート:1〜2mg;HPLC保持時間:12.99分(直線勾配、25分間で0→60%B/A);MS:[C68H105N18O14S2]3+ 487.25(実測値)、487.25(計算値);[C68H104N18O14S2]2+ 730.37(計算値)、730.37(実測値)。
【0176】
実施例7
CuSar-オクトレオタート(Cu L1-Tyr3-オクトレオタート)

[Cu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar]Cl3.xHClをトリフルオロメタンスルホン酸塩に変換して、N,N-ジメチルアセトアミド中のその溶解性を高めた。簡単に言うと、[Cu(1-NH3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar]Cl3.xHCl(0.14g、0.23mmol)を水(5mL)に溶解し、銀トリフラート(0.18g、0.70mmol)を加え、塩化銀を沈澱させた。溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、減圧下で蒸発乾固して、粘稠、青色の含水残渣を得た。[Cu(1-NH3)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](CF3SO3)3.xH2O:0.21g。
【0177】
樹脂上の直鎖オクトレオタートペプチド(0.10g、約0.8mmol/g)をジメチルホルムアミド中で膨潤させた。DMF(1mL)中のCu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](CF3SO3)3(30mg、0.03mmol)、HCTU(40mg、0.1mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(40μL)を樹脂に加え、混合物を撹拌し、3時間反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をジメチルホルムアミド(3×5mL)で洗浄した。二回目のカップリングを実施した。DMF(1mL)中のCu(1-NH4)(8-NHCO(CH2)3COOH)Sar](CF3SO3)3(10mg、0.01mmol)、HCTU(20mg、0.05mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(20μL)を樹脂に加え、混合物を撹拌し、40分間反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をジメチルホルムアミド(3×5mL)およびジクロロメタン(3×5mL)で洗浄した。樹脂をファルコンチューブに移し、トリフルオロ酢酸(5mL)、脱イオン水(0.15mL)およびトリイソプロピルシラン(0.15mL)を加えた。ファルコンチューブを振盪機上に40分間置いた。ジエチルエーテル(15mL)を用いてペプチド材料を溶液から沈澱させ、混合物を遠心分離(3分間、3000rpm)した。上清を廃棄し、沈澱をA:B(70:30)に溶解した。この溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥して、淡青色材料を得た。
【0178】
粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。直鎖CuSar-オクトレオタートは30分で溶出し(MSで決定)、直鎖CuSar-オクトレオタートを含む分画を凍結乾燥した。次いで、乾燥した分画を25mM酢酸アンモニウム(8mL)に再度溶解し、過剰の2,2-ジチオジピリジン(12mg)を加えて、分子内ジスルフィド結合を形成し、オクトレオタートを環化した。次いで、この溶液を半調製用逆相HPLCカラムに加え、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。環状CuSar-オクトレオタートは31.5分で溶出し、環状CuSar-オクトレオタートを含む分画を凍結乾燥して、淡青色ペレットを得た。CuSar-NHCO(CH2)3CO-オクトレオタート:4mg;HPLC保持時間:12.049分(直線勾配、25分間で0→60%B/A)。MS:[CuC68H102N18O14S2]2+:760.8296(実測値)、760.8280(計算値);[CuC68H101N18O14S2]2+:1520.6513(実測値)、1520.6482(計算値)。
【0179】
実施例8
Sar-Lys3-BBN:(L1-Lys3-BBNとも呼ぶ)

ボンベシンペプチド(BBN)(1-14)(Pyr-Gln-Lys-Leu-Gly-Asn-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Leu-Met-NH2(配列ID番号:2))をFmoc-PAL-PEG-PS樹脂上で、標準のFmoc固相ペプチド合成手順を用いて合成した。Lys3残基の側鎖をiv-Dde(Nε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)基で保護した。これをDMF中5%ヒドラジン(3×5mL)を1時間かけて用いて選択的に脱保護した。樹脂(0.05g、約0.2mmol/g)をDMF中で膨潤させた。DMF(1mL)中のL1-(t-Boc)3-5(10mg、0.012mmol)、HATU(10mg、0.026mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(20μL)を樹脂に加え、混合物を撹拌し、3時間反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)およびDCM(3×5mL)で洗浄した。樹脂をファルコンチューブに移し、トリフルオロ酢酸(2mL)、脱イオン水(70μL)およびトリイソプロピルシラン(70μL)を加えた。この溶液を振盪機上に40分間置いた。溶媒をN2ガス気流下で蒸発させ、残渣をA:B(70:30)に溶解した。この溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥した。
【0180】
粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Phenomenex Synergi 4u Hydro-RP 80A 50 x21.20mm)で、「低速」直線勾配(0.5%A→B/分)を用いて精製した。L1-Lys3-ボンベシンは25%B/Aで溶出し、L1-Lys3-ボンベシンを含む分画を凍結乾燥した。ペプチドは純粋ではなかったため、乾燥した分画をmilliQ水に再度溶解し、同じ半調製用逆相HPLCカラムにかけ、0.25%A→B/分の「非常に低速」直線勾配を用いて精製した。L1-Lys3-ボンベシンは約26.5%B/Aで溶出した。低分子量(約780)の不純物がまだこれらの分画に残存したため、ペプチドを半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、「低速」直線勾配(0.5%A→B/分)を用いて精製した。L1-Lys3-ボンベシンは26%B/Aで溶出し、L1-Lys3-ボンベシンを含む分画を凍結乾燥した。分析用逆相HPLCにより、最終分画は95%L1-Lys3-ボンベシンを含むことが示された。L1-Lys3-ボンベシン:1〜50μg;HPLC保持時間:13.59分(直線勾配、25分間で0→60%B/A);MS:[C90H152N30O20S2]4+:501.54(実測値)、501.54(計算値);[C90H151N30O20S2]3+:668.39(実測値)、668.38(計算値);[C90H150N30O20S2]2+:1002.07(実測値)、1002.07(計算値)。
【0181】
実施例9 L1-Tyr:

Fmoc-Tyr(tBu)-OHを2-クロロトリチル樹脂(約1.3mmol/g)に、標準のカップリング手順を用いてカップリングさせた。Fmoc保護基をDMF中50%ピペリジンを用いて除去し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した。Tyr樹脂(0.08g)をDMF(0.5mL)中で膨潤させた。DMF(1mL)中のL1-(t-Boc)3-5(12mg、0.014mmol)、HATU(10mg、0.026mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(10μL)を樹脂に加え、混合物を撹拌し、2時間反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)およびDCM(3×5mL)で洗浄した。樹脂をファルコンチューブに移し、トリフルオロ酢酸(2mL)、脱イオン水(70μL)およびトリイソプロピルシラン(70μL)を加えた。この溶液を振盪機上に40分間置いた。溶媒をN2ガス気流下で蒸発させ、残渣をA:B(70:30)に溶解した。この溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥した。
【0182】
粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。L1-Tyrは13%B/Aで溶出し(ESI-MSで決定)、L1-Tyrを含む分画を凍結乾燥した。L1-Tyr:約1mg。MS:[C28H51N9O5]2+ 296.72(実測値)、296.70(計算値);[C28H50N9O5]+ 592.40(実測値)、592.39(計算値)。HPLC:7.360分(直線勾配、25分間で0→60%B/A)。

【0183】
実施例10 L2-(YaHxC)2

この分子の合成を以下に示す。

【0184】
Tyr(tBu)-aHx-Cys(Trt)-NH2をNova Peg Rink Amide樹脂上で0.67mmol/gをロードして合成した。DMF(0.5mL)中のHATU(8.9mg、0.02mmol、2当量)およびDIPEA(7μL)をDMF(0.5mL)中のL2-(t-Boc)4(10mg、0.01mmol)の溶液に加えた。この溶液を樹脂上のTyr(tBu)-aHx-Cys(Trt)-NH2(0.05g、約0.22mmol/g、約0.01mmol)に加え、混合物を終夜反応させた。次いで、反応上清を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)およびDCM(3×5mL)で洗浄した。樹脂をファルコンチューブに移し、トリフルオロ酢酸(3mL)、脱イオン水(80μL)およびトリイソプロピルシラン(80u mL)を加えた。ファルコンチューブを振盪機上に90分間置いた。この後、溶媒を窒素ガス気流下で蒸発させ、残渣をA:B(50:50)に溶解した。この溶液をろ過(MilliQ 0.45μmシリンジフィルター)し、凍結乾燥した。
【0185】
粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。L2-(YHxC)2は27分で溶出した(ESI-MSで決定)。L2-(YHxC)2を含む分画を凍結乾燥した。この試料を第二のHPLC精製にかけ、0.5%A→B/分の直線勾配を用いて44分で溶出した。L2-(YHxC)2:約1mg;HPLC保持時間:10.52分(直線勾配、25分間で0→60%B/A) MS:[C60H100N16O12S]2+ 650.36(計算値)、650.36(実測値);[C60H99N16O12S]+ 1299.71(計算値)、1299.71(実測値)。

【0186】
実施例11 L2-(YaHxC):

L2-(YaHxC)を、カップリング剤としてHATUの代わりにジイソプロピルカルボジイミド(7μL)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(3.5mg)を用いた以外は、L2-(YaHxC)2と同じ様式および同じ規模で合成した。スキームを以下に示す。

【0187】
粗製ペプチド材料の質量スペクトルは、L2-(YaHxC)2およびL2-(YaHxC)の両方が存在することを示していた。粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5 x 250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。L2-(YHxC)は23.5分で溶出し、L2-(YaHxC)2は28.5分で溶出した(ESI-MSで決定)。L2-(YHxC)を含む分画を凍結乾燥した。この試料を第二のHPLC精製にかけ、0.5%A→B/分の直線勾配を用いて35.8分で溶出した。L2-(YaHxC):約0.2〜0.6mg;HPLC保持時間:8.73分(直線勾配、25分間で0→60%B/A) MS:[C42H74N12O9S]2+ 461.27(実測値)、461.27(計算値);[C42H73N12O9S]+ 921.53(計算値)、921.53(実測値)。

【0188】
実施例12 c(RGDfK(マレイミドプロピオネート)):

D(tBu)fK(ivDde)R(Pbf)G-OH(1mmol)をクロロトリチル樹脂(1mmol/g、1g)上で合成した。N末端を塩化トリチルで保護して、Trt-D(tBu)fK(ivDde)R(Pbf)G-OHを得、続いてLys側鎖のivDde保護基をヒドラジン(3×5ml DMF中5%ヒドラジン)を用いて除去した。次いで、マレイミドプロピオン酸をLys側鎖にカップリングして、Trt-D(tBu)fK(マレイミドプロピオネート)R(Pbf)G-OHを得た。この種に対し、DCM中2%TFAをラジカル捕捉剤とともに用いて、N末端の脱保護および樹脂からの切断を同時に行い、D(tBu)fK(マレイミドプロピオネート)R(Pbf)G-OHを得た。得られた溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した後、DCM(5mL)中のHCTU(1当量)およびDIPEA(1mL)を加えて、ペプチドを環化した。溶液を2時間撹拌し、この後、溶媒を減圧下で除去した。次いで、残存する保護基をTFA:H2O:TIPS(95:2.5:2.5)で除去した。TFAを窒素ガス気流(scream)下で蒸発させ、粗製材料をA:B(50:50)に再度溶解し、ろ過し、凍結乾燥した。粗製ペプチド材料を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5×250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。c(RGDfK(マレイミドプロピオネート))は28.5分で溶出した。c(RGDfK(マレイミドプロピオネート)):1〜2mg;HPLC保持時間:15.31分(直線勾配、25分間で0→60%B/A) MS:[C34H46N10O10]+ 755.35(実測値)、755.35(計算値)。
【0189】
実施例13 L2-(RGD)2

この分子を添付のスキームに示すとおりに合成した。

【0190】
L2-(YaHzC)2(約0.5mg)およびc(RGDfK(マレイミドプロピオネート))(約1mg)を酢酸アンモニウム溶液(25mM、pH=6.5)に溶解した。室温で約30分間放置した後、溶液を半調製用逆相HPLC(Eclipse XDB-C18 5μm 9.5×250mmカラム)で、1%A→B/分の直線勾配を用いて精製した。c(RGDfK(マレイミドプロピオネート))は26分で溶出し、L2-(RGD)2は29分で溶出した。L2-(RGD)2:L2-(RGD)2:約1mg;HPLC保持時間:16.54分(直線勾配、25分間で0→60%B/A) MS:[C128H194N36O32S2]4+ 703.11(実測値)、703.10(計算値);[C128H193N36O32S2]3+ 937.14(実測値)、937.13(計算値)。
【0191】
実施例14 Sar-ペプチドのHPLC-MS:
HPLC-MSトレースを合成したSar-ペプチドについて取得した。HPLC-MSトレースもSar-ペプチドおよびCuCl2を含む溶液について取得し、Sar-ペプチドが「遊離」Cu2+イオンに結合するかどうかを調べた。発明者らは逆相C18分析用HPLCカラムを直線勾配(25分間で0→60%B/A)で用いて、ペプチド種の保持時間および分子質量を求めた。(ここで、A=0.1%ギ酸を含むmilliQ水;B=0.1%ギ酸を含むアセトニトリル。)
【0192】
L1-Tyr:L1-Tyr(約10μg)をmilliQ水(50μL)に溶解した。この溶液をさらに希釈(milliQ水10μL中にペプチド溶液5μL)して、HPLC-MSに適した濃度の溶液とした。milliQ水(15μL)中にL1-Tyr(元の保存ペプチド溶液5μL)およびCuCl2(1mM CuCl2溶液10μL)を含む溶液も作成した。LCMS:L1-Tyr、R.T.:5.992;[C28H51N9O5]2+ 296.72(実測値)、296.70(計算値);[C28H50N9O5]+ 592.40(実測値)、592.39(計算値);[Cu(L1-Tyr)]x+、R.T.:6.485;[CuC28H49N9O5]2+ 327.17(実測値)、327.16(計算値)、[CuC28H48N9O5]+ 653.31(実測値)、653.31(計算値)。
【0193】
L1-Tyr3-オクトレオタート:L1-Tyr3-オクトレオタート(約10μg)をmilliQ水(50μL)に溶解した。この溶液をさらに希釈(milliQ水20μL中にペプチド溶液5μL)して、HPLC-ESI-MSに適した濃度の溶液とした。milliQ水(15μL)中にL1-Tyr3-オクトレオタート(元の保存ペプチド溶液5μL)およびCuCl2(1mM CuCl2溶液5μL)を含む溶液も作成した。HPLC-ESI-MS:L1-Tyr3-オクトレオタート、R.T.:12.984分;[C68H106N18O14S2]4+ 365.69(実測値)、365.69(計算値);[C68H105N18O14S2]3+ 487.25(実測値)、487.25(計算値);[C68H104N18O14S2]2+ 730.37(計算値)、730.37(実測値);[Cu(L1-Tyr3-オクトレオタート)]x+、R.T.:13.199分;[CuC68H104N18O14S2]4+ 380.92(実測値)、380.92(計算値);[CuC68H103N18O14S2]3+ 507.56(実測値)、507.55(計算値);[CuC68H102N18O14S2]2+ 760.83(計算値)、760.83(実測値)。
【0194】
(L1)2-Tyr3-オクトレオタート:(L1)2-Tyr3-オクトレオタート(約10μg)をmilliQ水(50μL)に溶解した。この溶液をさらに希釈(milliQ水20μL中にペプチド溶液5μL)して、HPLC-MSに適した濃度の溶液とした。milliQ水(15μL)中に(L1)2-Tyr3-オクトレオタート(元の保存ペプチド溶液5μL)およびCuCl2(1mM CuCl2溶液5μL)を含む溶液も作成した。LCMS:(L1)2-Tyr3-オクトレオタート、R.T.:11.213;[C87H145N26O16S2]5+ 375.02(実測値)、375.02(計算値);[C87H144N26O16S2]4+ 468.52(実測値)、468.52(計算値);[C87H143N26O16S2]3+ 624.36(実測値)、624.36(計算値);[C87H142N26O16S2]2+ 936.03(実測値)、936.03(計算値);[Cu2(L1)2-Tyr3-オクトレオタート]x+、R.T.:11.938;[Cu2C87H141N26O16S2]5+ 399.58(実測値)、399.58(計算値);[Cu2C87H140N26O16S2]4+ 499.23(実測値)、499.23(計算値);[Cu2C87H139N26O16S2]3+ 665.30(実測値)、665.29(計算値)。
【0195】
L1-Lys3-ボンベシン:L1-Lys3-ボンベシン((約1〜5μg)をmilliQ水(50μL)に溶解した。この溶液の濃度はHPLC-ESI-MSに適していた。この溶液の一部(20μL)に1mM CuCl2溶液(2.5μL)を加えて、L1-Lys3-ボンベシンが「遊離」Cu2+イオンに結合するかどうかを調べた。HPLC-ESI-MS:L1-Lys3-ボンベシン、R.T.:13.520分;[C90H152N30O20S]4+:501.54(実測値)、501.54(計算値);[C90H151N30O20S]3+:668.39(実測値)、668.38(計算値);[C90H150N30O20S2]2+:1002.07(実測値)、1002.07(計算値);[Cu(L1-Lys3-ボンベシン)]x+、R.T.:13.769分;[CuC90H150N30O20S]4+:517.02(実測値)、517.02(計算値);[CuC90H149N30O20S]3+:689.03(実測値)、689.02(計算値);[CuC90H148N30O20S]2+:1033.03(実測値)、1033.03(計算値)。
【0196】
実施例15 64Cuによる放射性標識
64CuCl2(1.88GBq/mL、0.1M HCl pH1)をANSTO radiopharmaceuticals and industrials(ARI), Lucas Heights, NSW, Australiaから購入した。較正時の放射性核種の純度{(64Cu)/(67Cu)}は100%で、Cu2+としての放射化学純度は100%であった。銅、亜鉛および鉄の化学純度はそれぞれ1.1μg/mL、0.9μg/mLおよび10μg/mLであった。
【0197】
放射性ヨウ化ナトリウムシンチレーション検出器によるHPLCを用いて、L1-ペプチドの64Cu2+への連結をモニターした。発明者らは逆相C18分析用HPLCカラムを直線勾配(15分間で0→60%B/A)で用いて、[64CuL1-ペプチド]2+の保持時間を求めた。これらの保持時間を「非放射性」[CuL1-ペプチド]2+の保持時間と、同じHPLC条件下、275nmのUV分光検出により比較した。
【0198】
[64Cu(L1)]2+:トレース1:64CuCl2(38MBq、20μL、0.1M HCl)をL1(0.015mg/mL)および酢酸ナトリウム(0.015M)を含む水溶液(580μL)に加えた。pHは約4.5であった(pHストリップで測定)。溶液を周囲温度で10分間放置した後、一定量(100μL)を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:2.33分、放射化学収率約82%。保持時間:8.36、放射化学収率約18%。トレース2:酢酸ナトリウム溶液(100μL、0.1M)を前述の溶液の残りに加えた。pHは≧5.5であった。この溶液の一定量(100μL)を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:8.334分、放射化学収率>95%。トレース3:64CuCl2(38MBq、20μL、0.1M HCl)を前述の溶液の残りに加えて、ノイズに対するシグナルの比を高め、同様に溶液中に存在する64Cu2+の100%を錯体形成するのに必要な時間を求めた。酢酸ナトリウム(100μL、0.1M)溶液のさらなる一定量を加えた。溶液を周囲温度で5分間放置した後、一定量を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:8.334分、放射化学収率>95%。「非放射性」[Cu(L1)](NO3)3(約1mg/mL)の水性試料をHPLCカラムに注入し(注入量約30μL)、同じ直線勾配(15分間で0→60%B/A)を用いて溶出した。保持時間:8.573分。
【0199】
[64Cu(L1-Tyr)]2+64CuCl2(19MBq、10μL、0.1M HCl)をL1-Tyr(0.02mg/mL)および酢酸ナトリウム(0.02M)を含む水溶液(490μL)に加えた。溶液を周囲温度で10分間放置した後、一定量(100μL)を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:10.231分、放射化学収率>95%。「非放射性」[Cu(L1-Tyr)]2+:(約1mg/mL)の水性試料をHPLCカラムに注入し(注入量約30μL)、同じ直線勾配(15分間で0→60%B/A)を用いて溶出した。保持時間:10.403分。
【0200】
[64CuL1-Tyr3-オクトレオタート]2+64CuCl2(38MBq、20μL、0.1M HCl)を含む0.1M HCl溶液の一定量をL1-Tyr3-オクトレオタート(0.02mg/mL)および酢酸ナトリウム(0.02M)を含む水溶液(490μL)に加えた。pHは≧5.5であった。溶液を周囲温度で20分間放置した後、一定量(100μL)を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:12.730分、放射化学収率>95%。「非放射性」[CuL1-Tyr3-オクトレオタート]2+(約1mg/mL)の水性試料をHPLCカラムに注入し(注入量約30μL)、同じ直線勾配(15分間で0→60%B/A)を用いて溶出した。保持時間:12.937分。
【0201】
ヒト男性AB血清(200μL)を[64CuL1-Tyr3-オクトレオタート]2+の溶液(200μL)に加えた。この溶液を37°の水浴中でインキュベートした。1時間、4時間および20時間の時点で、この血清溶液の一定量(100μL)を放射性HPLC分析のために取り出した:アセトニトリル(200μL)を血清の一定量に加えて、血清タンパク質を沈澱させた。この混合物をろ過し、アセトニトリルをアルゴンガス気流下で蒸発させた。最終量は<100μLであった。溶液を-70℃でHPLCカラムに注入するまで凍結した。1時間:保持時間12.716分、放射化学収率>95%;4時間:保持時間12.725分、放射化学収率>95%;20時間:保持時間12.800分、放射化学収率>95%。
【0202】
[64CuL1-Lys3-ボンベシン]2+64CuCl2(38MBq、20μL、0.1M HCl)を含む0.1M HCl溶液の一定量をL1-Lys3-ボンベシン(約0.03mg/mL)および酢酸ナトリウム(0.03M)を含む水溶液(290μL)に加えた。溶液を周囲温度で10分間放置した後、一定量(100μL)を直線勾配(15分間で0→60%B/A)による逆相C18分析用HPLCカラムに注入した。保持時間:12.642;放射化学収率>95%。「非放射性」[CuL1-Lys3-ボンベシン]2+(約0.5mg/mL)の水性試料をHPLCカラムに注入し(注入量約60μL)、同じ直線勾配(15分間で0→60%B/A)を用いて溶出した。保持時間:13.073分。
【0203】
[64CuL1-Lys3-ボンベシン]2+についての単一時点の血清安定性試験を、[64CuL1-Tyr3-オクトレオタート]2+についての試験と同じ様式で行った。[64CuL1-Lys3-ボンベシン]2+の一定量(200μL)をヒト男性AB血清に加え、37℃でインキュベートした。2時間後、試料を前述と同じ処理にかけ、HPLCカラムに注入した。2時間:保持時間12.828分、放射化学収率>95%。
【0204】
最後に、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載の本発明の方法および組成物の様々な改変および変形は当業者には明らかであることが理解されよう。本発明を具体的な好ましい態様に関連して記載してきたが、特許請求する発明はそのような具体的態様に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。事実、当業者には明らかな本発明を実施するための記載の様式の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは錯体:

式中、
Lは窒素含有大環状金属リガンドであり;
Xは連結部分であり;
YはOR、SR1およびN(R2)2からなる群より選択され;
RはH、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R1はH、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択され;
R2はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項2】
Xが直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが以下の式の基である、請求項1または2のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)qCO(AA)rNH(CH2)s-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
qは1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
rは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
sは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【請求項4】
qが3であり、rが0であり、かつsが5である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xが以下の式の基である、請求項1または2のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)n-
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR3から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR3はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;
nは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【請求項6】
nが1、2、3、4、および5からなる群より選択される整数である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される、請求項5または6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
Xが-(CH2)3-である、請求項5から7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
YがOHである、請求項1から8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
Lが窒素含有かご型金属リガンドである、請求項1から10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
Lが以下の式の窒素含有かご型金属リガンドである、請求項10記載の化合物:

VはNおよびCR4からなる群より選択され;
RxおよびRyはそれぞれH、CH3、CO2H、NO2、CH2OH、H2PO4、HSO3、CN、CONH2およびCHOからなる群より独立に選択され;
pはそれぞれ独立に2、3、および4からなる群より選択される整数であり;
R4はH、OH、ハロゲン、NO2、NH2、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、シアノ、CO2R5、NHR5、N(R5)2および以下の式の基からなる群より選択され:

式中、
X1は連結部分であり;
Y1はOR6、SR7、N(R8)2および分子認識部分からなる群より選択され;
ここでR5はHまたはC1-C12アルキルであり;
R6はH、ハロゲン、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R7はH、ハロゲン、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R8はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項12】
Lが以下の式の大環状金属リガンドである、請求項1から11のいずれか一項記載の化合物:

式中、Rx、Ryおよびpは請求項11で定義したとおりである。
【請求項13】
Lが以下の式の大環状リガンドである、請求項1から11のいずれか一項記載の化合物:

式中、Rx、Ry、R4およびpは請求項11で定義したとおりである。
【請求項14】
Lが下記からなる群より選択される、請求項1から11のいずれか一項記載の化合物:

式中、R4は請求項11で定義したとおりである。
【請求項15】
R4がNH2、CH3および以下の式の基からなる群より選択される、請求項11、13または14のいずれか一項記載の化合物:

式中、X1、Y1、R6、R7およびR8は請求項11で定義したとおりである。
【請求項16】
X1が直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
X1が以下の式の基である、請求項15または16のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)tCO(AA)uNH(CH2)v-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
tは1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
uは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
vは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【請求項18】
tが3であり、uが0であり、かつvが5である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
X1が以下の式の基である、請求項15または16のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)a-
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR9から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR9はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;
aは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【請求項20】
aが1、2、3、4、および5からなる群より選択される整数である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Xが-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される、請求項19または20のいずれか一項記載の化合物。
【請求項22】
X1が-(CH2)3-である、請求項19から21のいずれか一項記載の化合物。
【請求項23】
Y1がOHである、請求項15から22のいずれか一項記載の化合物。
【請求項24】
Lが以下の式の基である、請求項1から14のいずれか一項記載の化合物:


【請求項25】

からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項26】
式(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは錯体:

式中、
Lは窒素含有大環状金属リガンドであり;
Xは連結部分であり;
Yは分子認識部分である。
【請求項27】
Xが直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
Xが以下の式の基である、請求項26または27のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)qCO(AA)rNH(CH2)s-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
qは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
rは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
sは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【請求項29】
rが0であり、かつsが5である、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
Xが以下の式の基である、請求項26または27のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)n-
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR3から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR3はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;
nは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【請求項31】
nが1、2、3、4、および5からなる群より選択される整数である、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
Xが-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される、請求項30または31のいずれか一項記載の化合物。
【請求項33】
Xが-(CH2)3-である、請求項30から32のいずれか一項記載の化合物。
【請求項34】
Lが窒素含有かご型金属リガンドである、請求項26から33のいずれか一項記載の化合物。
【請求項35】
Lが以下の式の窒素含有かご型金属リガンドである、請求項34記載の化合物:

VはNおよびCR4からなる群より選択され;
RxおよびRyはそれぞれH、CH3、CO2H、NO2、CH2OH、H2PO4、HSO3、CN、CONH2およびCHOからなる群より独立に選択され;
pはそれぞれ独立に2、3、および4からなる群より選択される整数であり;
R4はH、OH、ハロゲン、NO2、NH2、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、シアノ、CO2R5、NHR5、N(R5)2および以下の式の基からなる群より選択され:

式中、
X1は連結部分であり;
Y1はOR6、SR7、N(R8)2および分子認識部分からなる群より選択され;
ここでR5はHまたはC1-C12アルキルであり;
R6はH、ハロゲン、酸素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R7はH、ハロゲン、硫黄保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より選択され;
R8はそれぞれH、窒素保護基、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC2-C12アルケニル、置換されていてもよいC2-C12アルキニルおよび置換されていてもよいC2-C12ヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項36】
Lが以下の式の大環状金属リガンドである、請求項26から35のいずれか一項記載の化合物:

式中、Rx、Ryおよびpは請求項35で定義したとおりである。
【請求項37】
Lが以下の式の大環状リガンドである、請求項26から36のいずれか一項記載の化合物:

式中、Rx、Ry、R4およびpは請求項35で定義したとおりである。
【請求項38】
Lが下記からなる群より選択される、請求項26から35のいずれか一項記載の化合物:

式中、R4は請求項35で定義したとおりである。
【請求項39】
R4がNH2、CH3および以下の式の基からなる群より選択される、請求項35、37または38のいずれか一項記載の化合物:

式中、X1、Y1、R6、R7およびR8は請求項35で定義したとおりである。
【請求項40】
X1が直鎖内に1から20個の原子を有する連結部分である、請求項39記載の化合物。
【請求項41】
X1が以下の式の基である、請求項15または16のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)tCO(AA)uNH(CH2)v-
式中、AAはそれぞれ独立にアミノ酸基であり;
tは1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
uは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数であり;
vは0、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群より選択される整数である。
【請求項42】
tが3であり、uが0であり、かつvが5である、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
X1が以下の式の基である、請求項39または40のいずれか一項記載の化合物:
-(CH2)a-
式中、任意にCH2基の1つまたは複数は、S、O、PおよびNR9から選択されるヘテロ原子基で独立に置き換えられていてもよく、ここでR9はH、置換されていてもよいC1-C12アルキル、置換されていてもよいC3-C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6-C18アリール、および置換されていてもよいC1-C18ヘテロアリールからなる群より選択され;
aは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される整数である。
【請求項44】
aが1、2、3、4、および5からなる群より選択される整数である、請求項43記載の化合物。
【請求項45】
Xが-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2OCH2-からなる群より選択される、請求項43または44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項46】
X1が-(CH2)3-である、請求項43から45のいずれか一項記載の化合物。
【請求項47】
Y1がOHである、請求項39から46のいずれか一項記載の化合物。
【請求項48】
Lが以下の式の基である、請求項26から39のいずれか一項記載の化合物:


【請求項49】
Y1が分子認識部分である、請求項39から46のいずれか一項記載の化合物。
【請求項50】
分子認識部分がそれぞれスペーサー部および認識部を含み、スペーサー部が認識部を分子の残部に連結する、請求項26から49のいずれか一項記載の化合物。
【請求項51】
分子認識部分または分子認識部が抗体、タンパク質、ペプチド、糖質、核酸、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖およびリポソーム、またはそれらの断片もしくは誘導体からなる群より選択される、請求項26から50のいずれか一項記載の化合物。
【請求項52】
分子認識部分または分子認識部がペプチドまたはその断片もしくは誘導体である、請求項51記載の化合物。
【請求項53】
分子認識部分または分子認識部が[Tyr3]-オクトレオタート、Lys3-ボンベシンおよび環状RGDからなる群より選択される、請求項52記載の化合物。
【請求項54】
窒素含有大環状金属リガンドが金属イオンと配位する、請求項1から53のいずれか一項記載の化合物。
【請求項55】
金属イオンがCu、Tc、Gd、Ga、In、Co、Re、Fe、Au、Ag、Rh、Pt、Bi、Cr、W、Ni、V、Ir、Pt、Zn、Cd、Mn、Ru、Pd、Hg、およびTiからなる群より選択される放射性核種である、請求項54記載の化合物。
【請求項56】
金属イオンが60Cu、62Cu、64Cuおよび67Cuからなる群より選択される放射性核種である、請求項54または55のいずれか一項記載の化合物。
【請求項57】
請求項1から56のいずれか一項記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項58】
式(I)の化合物の生成方法であって:

式中、L、XおよびYは請求項1で定義したとおりである;
(a)以下の式のアミノ置換金属キレート化リガンドまたはその金属錯体を活性化ジカルボニル化合物と反応させる段階:
L-NH2
式中、Lは窒素含有大環状金属リガンドである;および
(b)式(I)の化合物またはその金属錯体を単離する段階
を含む方法。
【請求項59】
活性化ジカルボニル化合物が式(III)の化合物である、請求項58記載の方法:

式中、Xは請求項1で定義したとおりであり、かつZはO、SまたはNR2である。
【請求項60】
活性化ジカルボニル化合物が式(IV)の化合物である、請求項58記載の方法:

式中、XおよびYは請求項1で定義したとおりであり、かつLvは脱離基である。
【請求項61】
脱離基が、Cl、Br、CH3SO3、CH3C6H4SO3、および式:

の基からなる群より選択される、請求項59記載の方法。
【請求項62】
アミノ置換金属キレート化リガンドおよび活性化ジカルボニル化合物を塩基存在下で反応させる、請求項58から61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
塩基がジイソプロピルエチルアミンである、請求項62記載の方法。
【請求項64】
Xが請求項2から8のいずれか一項で定義したとおりである、請求項58から63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
Lが請求項10から24のいずれか一項で定義したとおりである、請求項58から64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
請求項54から55のいずれか一項記載の化合物の治療上有効な量を対象に投与する段階を含む、対象の状態を治療または予防する方法。
【請求項67】
状態が癌である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
請求項54から56のいずれか一項記載の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む、対象を放射線撮像する方法。

【公表番号】特表2012−510477(P2012−510477A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538797(P2011−538797)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001572
【国際公開番号】WO2010/063069
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(591143869)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (9)
【氏名又は名称原語表記】The University of Melbourne
【Fターム(参考)】