説明

放射性医薬組成物の製造用のポリアミンによるグラフト化多糖

本発明は、特に、グラフト多糖および放射性の多価金属錯体生成剤に基づく新規医薬組成物、ならびに医学画像化、特にシンチグラフィー、および内部放射線療法におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト化多糖に基づく新規医薬組成物、ならびに医学画像化、特にシンチグラフィー、および内部放射線療法におけるその使用に関する。
本願は、2007年7月26日に出願された米国仮出願第60/952094号の利益を主張し、該出願の内容を全ての目的のためにここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【背景技術】
【0002】
放射性元素のベクター粒子は、医薬および生物学の分野において長期にわたって用いられており(一般的概念については、Haefeli、2001参照)、例えば、充分なサイズ(数十マイクロメートル)の非吸収性ミクロ粒子による組織血流量の推定に用いられ、該ミクロ粒子は、それらが血管網状構造に注入された際に最初に遭遇する毛細血管網状構造に隔離される。該粒子を、例えば、ガラス粒子の形態で用いて(Haefeliら、1999)、特定組織(特に、腫瘍組織)を電離放射線に曝露し得るが、該粒子は吸収性でないので、診断レベル、および多くの場合に治療レベル(標的組織の全虚血が望ましくない場合)での、日常的生体内適用を行なうことができない。
【0003】
最も一般的な、ヒトにおけるミクロ粒子の生体内使用は、肺塞栓症のシンチグラフィー診断における使用である。この一般的な疾患(米国において毎年約650,000人の新規罹患者)は、血栓(最も多くは下肢からの血栓)によるものであり、血栓が静脈系から移動し、右心を通って、肺毛細血管を塞ぐ。塞栓が重度である場合、心力不全のリスクがある。大きい塞栓に有効かつそれを予防することを目的として、広範囲の抗凝血治療計画を実施するために、小さな塞栓を早期に検出する必要がある。X線スパイラルコンピュータ断層撮影法(X線スキャナ)は、近年、広く行きわたっている方法であるが、末梢塞栓につき、その性能は低い。さらに、胸部が曝露される電離放射線量は、乳癌を発症させ得る。従って、現在、灌流シンチグラフィーはその存在価値を保持し、換気はエアロゾルまたは放射性気体によって評価される。
【0004】
歴史的には、吸収性であることが既知である粒子の最初の使用の1つは、99mTcで標識した酸化鉄粒子を用いる肺灌流シンチグラフィーであった(米国第3962412号および米国第4057616号)。Fe2+鉄イオンを用いるこの方法は、過テクネチウム酸塩の減少、ならびに粒子のコアを形成する酸化および水酸化鉄における高レベルの結合を可能にした。しかしながら、この種の技術の限界は、約数十マイクロメートルの均一なサイズを得ることが困難なことであった。さらに、標識用キットの形態で用いられる該調製物の凍結乾燥の方法は、繊細であった。
【0005】
該粒子の使用に対する別法は、タンパク質、特に卵アルブミンまたは血清アルブミン(米国第4024233号)を、粒子マトリックスとして用いることである(米国第3663685号)。均一なサイズを得る方法(例えば、米国第6709650号)があるが、それは多くの場合、製造につき比較的高レベルの複雑性を伴い、かなりのレベルのバッチ間変動を生じる。さらに、ヨウ素およびテクネチウムを用いる標識化は、比較的簡単な実績のある方法である(例えば、米国第4410507号)。これらの製品は、現在、臨床診療において肺塞栓症の診断に広く用いられている。しかしながら、これらの粒子は、ヒトにおける使用、特に、静脈注射後の肺灌流シンチグラフィーにおける使用において、3つの重要な制限:
−原位置分解動態が、多くの場合、4時間超の比較的長時間にわたって持続する。この持続時間は、血栓溶解剤での静脈処置における短い持続時間(1〜2時間)より低い好適性である(該静脈処置は早期診断を可能にし、次いで、処置直後の引き続いての有効性検査を可能にする);
−これらの粒子は免疫原になる場合があり、これはヒト由来のタンパク質を用いるのが好ましい理由である;
−これらの粒子がヒトまたは動物起源である場合、これらの配合物は全て、感染病原体、特にウイルス感染病原体(HIV、肝炎ウイルス等)およびプリオン(クロイツフェルト−ヤコブ病などに関与している非通常伝染性物質)を伝染させるリスクを潜在的に有し、この伝染は現在予防するのが非常に難しい。安全性を増加させる1つの方法は、6ヶ月間保存されたアルブミン溶液を用いて粒子を製造することだけである。追加コストがかかる上に、この予防措置は完全には信頼できない、なぜなら、献血者の1人が抗体陽転を受ける場合があり、または後に疾患を申告する場合があり、従って、数年の沈黙潜伏期後にキャリア(および潜在的に汚染物質)であることが見出される場合があるからである(非日常伝染性物質の場合)
を有する。
【0006】
ある研究チームは、非毒性であるという特有の利点を有するリポソームの使用を提案している。しかしながら、凍結乾燥および再構成の際に安定な大きいリポソーム(数十マイクロメートル)を製造することは極めて困難である。さらに、リポソームを標識化する3つの主要な方法:放射性生成物を小胞の内部に組み込む(製造中、または内部で親水性になる親油性生成物を用いる;例えば、I’HMPAO−99mTc);脂質二重層の脂肪族コアを疎水性生成物の保持系として用いる(例えば、111In−オキシン);または、I’HYNIC−99mTcの場合のような表面グラフト化錯体生成剤がある。前記の全ての場合に、高度の標識化を達成することは、リポソームの不安定性により困難である。
【0007】
これらの制限を回避するために、完全合成生分解性ポリマーを用いることが提案されている(ES2096521、Delgado A.ら、2000)。しかしながら、筆者自身の見解においてさえ、ポリエステルの使用は、安定な標識化、ならびに凍結乾燥および放出動態の高レベルの再現性を達成することが困難である。
【0008】
有益なポリマーおよび粒子を得る補足的方法は、天然または人工の多糖を用いることである(米国第3663685号、米国第3758678号)。いくつかの該多糖の植物または微生物起源は、動物界からの病原体の感染がないことを確実にする。それらの製造の容易性、および(それらの多くの)低コストに加えて、それらの豊富な化学的作用が、それらの生分解過程を充分に制御し得るものにする。
【0009】
従って、仏国特許出願第2273516号は、アミロペクチンマイクロキャリアビーズの使用を開示し、該ビーズは、エピクロロヒドリンによって架橋され、肺灌流シンチグラフィー用に99mTcで標識化されている。しかしながら、アミロペクチンヒドロキシル基は、テクネチウムとの弱い結合を形成し、安定な標識化を達成できない。さらに、架橋に用いられているエピクロロヒドリンは、高毒性および変異原性であることが既知である。
【0010】
また、少なくとも1つのイオウ原子を含むアミン錯体生成系によって、放射性元素によりグラフト化されたデンプン粒子が開示されている(仏国第2797769号)。錯体生成基による放射性元素の錯化速度は、比較的満足のいくものと考えられるが、記載されている特定配合物は、非常に速い分解速度(10分未満)を示し、これは断層撮影法につき制限要素である。分解速度は、選択されたコーンスターチの酸化速度およびグラフト化速度に部分的に依存すると考えられる。さらに、それらは制限された貯蔵安定性を有すると考えられる。最後に、この文書に記載されている錯体生成基は、いくらかの段階の化学合成を必要とし得る比較的複雑な構造であり、これは放射性医薬組成物の毒性のリスク、およびその製造コストを増加させ得る。毒物学的レベルにおいて、研究された化合物の分解についての代謝経路は特定されておらず、潜在的に危険な二次化合物源になり得る。
【0011】
より一般的には、放射性原子が配置された多糖ポリマーは、血管および/または間隙領域のための放射活性標識剤(99mTcで標識されたデキストラン)として(デキストランの分子量の関数として、Kellaway I.W.ら、1995);透過性指示薬として(Akgun Aら、2005)またはセンチネルリンパ節の検出のため(Paiva G.R.ら、2006);内部放射線治療用途において放射性原子の量を増加させる物質として(タンパク質に結合させた131Iでヨード化したデキストラン、Andersson A.ら、1992);さらには、ペプチドまたは抗体による活性ベクトル化のための使用において信号対雑音比を増加させるために、放射性トレーサーの腎クリアランスを増加させる物質として(99mTcで標識されたデキストラン、Line B.R.ら、2000)用いられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
グラフト化多糖に基づく新規医薬組成物、ならびに医学画像化、特にシンチグラフィー、および内部放射線療法におけるその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の目的によれば、本発明は、式(I)または(II):
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、式(I)および(II)において、
は、水素原子またはC〜Cアルキル基を表わし;
、Rは、同じかまたは異なり、水素原子、直鎖または分岐鎖C〜Cアルキル基を表わし、それらは、1またはそれを超えるハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル、アルケニル、オキソ、−C(=O)OR、−C(=O)R、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキル(C〜C)アミノ、ジアルキル(C〜C)アミノ、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、ジホスホネート基または非硫化ペプチド基によって同様にまたは異なるように任意に置換されてもよく;
または、R、Rは、同じかまたは異なり、−C(=O)OR、−C(=O)R、オキシム基、非硫化ペプチド基、ホスホネート基またはジホスホネート基を表わし;
は、水素原子、直鎖または分岐鎖C〜Cアルキル基を表わし、それらは、1またはそれを超えるハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル、アルケニル、オキソ、−C(=O)OR、−C(=O)R、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、ジホスホネート基、またはペプチド基によって同様にまたは異なるように任意に置換されてもよく;
【0016】
または、Rは、−C(=O)OR、−C(=O)R、オキシム基、ペプチド基、ホスホネート基またはジホスホネート基を表わし;
は、直鎖または分岐鎖C〜Cアルキレン基、直鎖または分岐鎖C〜Cアルケニレン基、アリーレンまたはビスアリーレン基を表わし、該基Lは、n>1につき同じかまたは異なってよく、1またはそれを超える酸素原子によって任意に中断されてもよく、n>1につき、1またはそれを超えるハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル、アルケニル、オキソ、−C(=O)OR、−C(=O)R、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキル(C〜C)アミノ、ジアルキル(C〜C)アミノ、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、ジホスホネート基または非硫化ペプチド基によって同様にまたは異なるように置換されてもよく;
は、直鎖または分岐鎖C〜Cアルキレン基、直鎖または分岐鎖C〜Cアルケニレン基、アリーレンまたはビスアリーレン基を表わし、該基Lは、n>1につき同じかまたは異なってよく、1またはそれを超える酸素および/またはイオウ原子で中断されてもよく、n>1につき、1またはそれを超えるハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル、アルケニル、オキソ、−C(=O)OR、−C(=O)R、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、ジホスホネート基またはペプチド基によって同様にまたは異なるように置換されてもよく;
nは1〜6の整数であり、mおよびpは同じかまたは異なり、0、1または2であってよく、mおよびpはそれぞれ好ましくは0を表わし、
前記の式(I)または式(II)の基の全てまたは一部は、少なくとも1つの多価金属との錯体を形成する]
で示される1またはそれを超える錯体生成基が共有結合した多糖を含む組成物に関する。
【0017】
これらの組成物は、多価原子の錯化速度の上昇の達成を可能にする点で特に有利であり、これは、患者に投与された放射性医薬組成物の投与量を放射性原子につき減少させ、医学画像化法の画質を向上させ、毒物学的リスクを減少させる。
さらに、これらの組成物は、非常に良好な肺収集を有し、用いられる投与量において毒性でなく、生物排除の既知の方法によって易生分解性であり、診断ケースの形態で包装し得る。
【0018】
本発明による多糖は、好ましくは球状粒子、特にミクロ粒子またはナノ粒子の形態である。
粒子サイズは、毛細血管遮断用途(例えば、肺塞栓症のシンチグラフィー診断のための肺灌流シンチグラフィー)において、10nm〜200μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは約40μmであってもよい。ナノメートル粒子、すなわち、1μm未満のサイズの粒子(特に、10〜500nmのサイズの粒子、特に約40〜80nmのサイズの粒子)が、本発明の組成物の組織内投与に特に有用であり、該組織内投与は、例えば、センチネル神経節の存在の検出および/またはその可視化のため、リンパシンチグラフィーのため、静脈注射後の骨髄またはリンパ性ガングリオンの画像形成のため(標識コロイドシンチグラフィー)、または内部放射線治療における該多糖による組織の照射のために行なわれる。
【0019】
マイクロメートル粒子、すなわち、約1μmおよびそれを超える(約10μmまで)サイズの粒子は、静脈内投与することができ、肝臓、骨髄等の単核食細胞系を医学画像化によって可視化するか、または内部放射線療法によって肝臓または脾臓腫瘍を治療するのに特に有用である。
【0020】
本発明によって用いることができる多糖は、好ましくは天然由来、特に植物または微生物由来である。その例は、特に、デンプン、セルロース、アミロペクチン、アミロース、アガロース、プルラン、キトサンまたはデキストランおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの2またはそれを超える混合物であり;デンプンが特に好ましい。
【0021】
有利には、多糖は、タンパク質、例えば、ヒトアルブミンおよびゼラチン、一般的にブタゼラチンに基づくものと比較して、放射性医薬組成物の微生物学的リスクを減少させる。他の利点は、原位置での分解動態を、多糖の酸化またはグラフトの速度によって変更できることであり、タンパク質を用いてこれを再現的に行なうのは困難である。
【0022】
デンプンは、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたはアワデンプン等、またはヒドロキシエチルアミドン(HES)等の誘導体であってよく、それは、静脈注射後にゆっくり分解して、循環血液量減少性ショックの場合に血管充填溶液として用いることができる。この生成物は、補体を活性化せず、従って、それによって生じる二次作用を生じない。
【0023】
好ましくは、錯体生成基は、Rおよび/またはRが水素原子を表わす式(I)の基である。
好ましくは、nは1、2または3である。
好ましくは、数値mまたはpの少なくとも1つは0を表わすか、またはmおよびpがそれぞれ0を表わす。
好ましくは、Lはアルキレン基、特にC〜Cアルキレン基である。
【0024】
式(I)の特に好ましい錯体生成基の例は、特に、プトレシンNH(CHNH、スペルミンHN(CHNH(CHNH(CHNH、スペルミジンNH(CHNH(CHNH、またはカダベリンNH(CHNHと、酸化多糖との共有結合によって得られる錯体生成基である。
これらの錯体生成基は、生体ポリアミン、すなわち生物媒体に存在するポリアミンから誘導され、これらの生成物の分解方法が周知の故に組成物の毒性リスクを減少させるので、特に好都合である。さらに、これらの内因性ポリアミンは、低コストで商業的に入手可能である。
【0025】
錯体生成基の割合は、多糖の単糖単位に基づいて0.1〜200%、好ましくは10〜100%であってもよい。
組成物に存在する多価金属は、原子番号20〜33、38〜51、56〜84、または88〜103を有する金属元素から選択できる。
【0026】
多価金属の非限定的な例は、テクネチウムの放射性同位元素、例えば、99mTc、94Tcまたは94mTc;レニウムの放射性同位元素、例えば、188Reまたは186Re;銅の放射性同位元素、例えば、60Cu、61Cu、64Cuまたは67Cu;ストロンチウムの放射性同位元素、例えば、89Sr;インジウムの放射性同位元素、例えば、111Inまたは113In;サマリウムの放射性同位元素、例えば、153Sm;スズの放射性同位元素、例えば、113mSn;スカンジウムの放射性同位元素、例えば、44Sc;イットリウムの放射性同位元素、例えば、90Yまたは86Y;ガリウムの放射性同位元素、例えば、67Gaまたは68Ga;ガドリニウムの放射性同位元素;またはルテチウムの放射性同位元素であり;99mTcが特に好ましい。
【0027】
好ましくは、本発明の組成物は、医薬的に許容される媒体または賦形剤も含む。
好ましくは、該組成物は、本発明の式(I)または(II)の錯体生成基を介して、放射性元素で標識された有効量の多糖を含有する。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは、医薬用および/または診断用組成物である。
本発明の医薬組成物は、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、組織内、脳内、脊髄内または肺内投与;ORLスフェア、眼、膣または直腸粘膜を介した投与;経腸的(胃通過)投与およびエアロゾルによる投与を意図した形態で与えることができる。
従って、該組成物は、溶質、溶液または注射可能懸濁液の形態、または単回用量もしくは多回用量粉末もしくはバイアルの形態で与えられる。
非経口使用の場合、水、水溶液、生理血清および等張液が、用いるのに最も好都合な媒体である。
【0029】
本発明の組成物は、それ自体で既知の、かつ/または当業者の知識の範囲内の、任意の方法、特に、LarockによってComprehensive Organic Transformations,VCH Pub.,1989に記載されている方法の適用または適合によるか、または下記の実施例に記載されている方法の適用または適合によって製造し得る。
【0030】
従って、さらなる目的によれば、本発明は本発明組成物の製造方法にも関し、該方法は下記の工程:
i)多糖を、制御酸化剤と接触させる工程;
ii)酸化多糖を、式(Ia)または(IIa):
【0031】
【化2】

【0032】
[式中、L、L、R、R、R、R、m、nおよびpは、前記のように定義される]
の化合物と接触させて、多糖に共有結合した式(I)または(II)の錯体生成基を含む多糖を得る工程;
iii)任意に、得られた多糖を還元剤と接触させる工程;
iv)得られた多糖を、多価金属塩と接触させる工程
を含む
【0033】
本発明の方法は、一般的に、水中において周囲温度で行なわれる。
用い得る制御酸化剤の例は、特に、過ヨウ素酸塩、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムである。
還元剤の例は、特に、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0034】
いずれの特定理論にも拘束されるものではないが、多糖の制御酸化は、カルボニル官能基の形成を生じ、該官能基は、式(Ia)または(IIa)の化合物のそれぞれのHN−またはHS−基と反応する。
例えば、デンプンは、制御酸化後に、アルデヒド官能基を形成し、該官能基はプトレシン、スペルミン、スペルミジンまたはカダベリンのHN−基と反応して、特に還元後に、イミン共有結合(−CH=N−)を形成することができる。
【0035】
得られた多糖を多価金属塩と接触させる工程iv)(標識化反応)は、99mTcを用いて標識化を有利に行なう場合に、スズ、ホウ酸塩およびその誘導体またはアスコルビン酸型の還元剤の存在下か、または、特にテクネチウムの場合に放射性多価金属塩を有効に還元するいずれかの他の手段によって行なうことができる。
式(Ia)または(IIa)[式中、L、L、R、R、R、R、m、nおよびpは、前記の式(I)または(II)と同意義である]の誘導体は、商業的に入手可能であるか、または文献に記載の方法に基づいて調製される。
本発明の方法は、得られた組成物を分離する後続工程も含んで成ってよい。
【0036】
さななる目的によれば、本発明は、特に、医用、ヒト用または獣医学用画像化、特に、モノフォトニック、バイフォトニックまたはポリフォトニックシンチグラフィー画像化用の診断組成物の製造における前記組成物の使用に関する。
本発明の組成物は、患者または動物における1またはそれを超える器官、例えば、肺、肝臓、脾臓、骨髄またはリンパ節を可視化するのにも特に有用である。
本発明のいくつかの組成物は、センチネルリンパ節を可視化するのにも用い得る。
【0037】
さらなる目的によれば、本発明組成物は、内部放射線療法による患者または動物の癌の治療用、特にリンパ節または肝臓または脾臓腫瘍の治療用の医薬組成物を製造するのに用い得る。
この文脈において、本発明の組成物は、特に肝臓および/または脾臓、またはリンパ節の、癌性腫瘍を、電離放射線に曝露するのに一般的に用いられる。
【0038】
さらなる目的によれば、本発明は、前記に定義した多糖に共有結合した1またはそれを超える式(I)または(II)の錯体生成基を含む多糖に関する。
これらの多糖は、実際に、本発明の組成物を製造するのに特に有用である。
本発明は、前記に定義した方法の工程i)〜iii)によって得られる多糖に共有結合した1またはそれを超える式(I)または(II)の錯体生成基を含む多糖にも関する。
【0039】
前記および本発明の全ての記載で用いられている用語は、特記されない限りは、下記の意味を有するものと理解すべきである。
「多糖」なる用語は、複数の単糖単位、特に10〜1000個の単糖の結合によって生じるポリマーを意味する。
本発明によれば、アルキル基は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素基である。
直鎖基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル基を包含する。
イソプロピル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチル、2−メチルペンチルおよび1−メチルペンチル基は、特に、分岐鎖基、または1またはそれを超えるアルキル基で置換された基として挙げられる。
【0040】
本発明によるアルコキシ基は、式−O−アルキルで示される基であり、該アルキルは前記のように定義される。
本発明によるアルキルチオ基は、式−S−アルキルで示される基であり、該アルキルは前記のように定義される。
アルキレン基は、1〜6個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖の二価炭化水素基である。
アルケニレン基は、直鎖または直線の二価炭化水素基であり、1またはそれを超えるエチレン不飽和を含む。アルケニレン基は、特に、−CH=CH−、−CHCH=CH−、−C(CH)=CH−、−CHCH=CHCH−基を含む。
アリーレンは、6〜10個の炭素原子を有する二価単環式または二環式芳香族炭化水素基を意味する。アリーレン基は、特に、フェニレンまたはナフチレン基を含む。
ビス−アリーレンは、6〜10個の炭素原子を有する2個の単環式または二環式芳香族炭化水素基を有する二価の系を意味する。ビス−アリーレン基は、特に、ビスフェニレンまたはビスナフチレン基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1:フルオレスカミンの存在下に、光学蛍光顕微鏡で観察したデンプン粒子に対するカダベリンの結合。
【図2−3】図2および3:4MBqの99mTcで標識化された20%酸化デンプン粒子を静脈注射されたラット(前方向撮影)の、注射直後(図2)および15分後(図3)の典型的シンチグラフィー画像。
【図4−6】図4、5、6:4MBqの99mTcで標識化されたカダベリンに結合した50%酸化デンプン粒子を静脈注射されたラット(前方向撮影)の、注射後15分(図4)、30分(図5)および90分(図6)の典型的シンチグラフィー画像。
【図7−9】図7、8、9:4MBqの99mTcで標識化されたカダベリンに結合した50%酸化デンプン粒子を静脈注射されたラット(前方向撮影)の、注射後5分(図7)、15分(図8)および30分(図9)の典型的シンチグラフィー画像。
【図10−11】図10および11:カダベリンとの反応前(図10)および反応後(図11)に標識化された50%酸化デンプンミクロ粒子の、光学顕微鏡(倍率10倍)で観察された形態特徴。
【図12】図12:Coulter Multisizer3カウンターで測定した、カダベリンに結合した酸化デンプンミクロ粒子のサイズ分布の例。
【図13】図13:最終ミクロ粒子に含有された窒素のパーセンテージに対する、温度(B1)、反応時間(B2)、還元剤当量値(B3)、および最後に、還元時間(B4)の影響についての試験のグラフ。
【図14】図14:カルダベリンとデンプン粒子との結合収率に対する、4つの実験パラメータ(アミン/デンプン当量値;反応のpH;デンプンの酸化のレベル;および反応媒体中のデンプン濃度)の影響を模倣する二次元グラフ試験。
【図15】図15:雄性ウィスターラットにおける、99mTcで標識化したデンプンミクロ粒子(配合物C)の静脈注射後に撮影した典型的画像。平面画像(同一ウィンドー処理)を、120分間継続する動的試験の10、20、60および120分において抜き出した(180 45秒画像)。
【図16】図16:雄性ウィスターラットにおける、99mTcで標識化したデンプンミクロ粒子(配合物C)の静脈注射後に実施した動的シンチグラフィー試験から得た時間−活性曲線の例。
【図17】図17:雄性ウィスターラットにおける、99mTcで標識化したデンプンミクロ粒子(配合物C)の静脈注射後に撮影した典型的画像。画像は、注射後10、20および90分で行なった静止シンチグラフィー取得(同一ウィンドー処理)(600秒静止)と共にX線画像化した結果である。
【図18−20】図18、19および20:99mTcで標識化したデンプンミクロ粒子(配合物C)の雄性ウィスターラットへの静脈注射後に収集した尿代謝産物の、ゲル透過クロマトグラフィーによる分離。 収集した種々の尿試料を、排除限界1,500ダルトンを有するSephadex G15カラムの使用(18)、排除限界5,000ダルトンを有するP6カラムの使用(19)、および排除限界10,000ダルトンを有するSephadex G50の使用(20)によって溶出した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例は、本発明を例示するが、限定されるものではない。用いた出発物質は、既知の物質であるか、または既知の方法によって調製される物質である。
【0043】
実施例1:天然ポリアミンに結合したデンプン粒子:フルオレスカミンとの反応による結合の確認
デンプン粒子の制御酸化:
36〜50μmで篩にかけた10g(グルコース単位0.055molに相当)のジャガイモデンプン(ヨーロッパ薬局方のモノグラフに従った天然ジャガイモデンプン)を、水100mLに分散させた。水100mLに予め溶解させた過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)0.028mol、すなわち6gを添加した。その懸濁液を周囲温度で18時間撹拌した。18時間後、50%酸化デンプンの粒子懸濁液を得た。酸化デンプンを、遠心分離によって収集し、次いで、水200mLで3回濯いだ。
【0044】
天然ポリアミンへの結合による酸化デンプンの官能化:
濯いだ後、デンプン1g、すなわち、グルコース単位0.0055molを水60mL中でインキュベートし、水10mL中の天然ポリアミン(プトレシン、カダベリン、スペルミンおよびスペルミジン)0.00385molの溶液、すなわち、0.0077molのNH(1.4当量)と、周囲温度で18時間接触させた。形成されたイミンを安定化するために、NaBH 0.56g、すなわち0.015molを、改質デンプン懸濁液に撹拌しながら1時間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0045】
光学蛍光顕微鏡によるデンプン−アミン結合の確認:
デンプン粒子へのカダベリンの結合を、光学蛍光顕微鏡による観察によって確認し;3mg/mLフルオレスカミン(C1710)溶液100μLを、カダベリンで官能化されたデンプン粒子(水300μL中10mg)に添加する間に、蛍光錯体が形成された。蛍光顕微鏡で確認されたこの蛍光錯体の形成は、官能化デンプン粒子上の第一級アミン官能基(NH)の存在を示し、これは、透明フルオレスカミン上での該アミンの特定反応によるものであり、次いで、該透明フルオレスカミンは緑色がかった黄色に変わり、デンプン/酸化アミン結合の有効性を裏付けている。
【0046】
実施例2:肝臓および脾臓のシンチグラフィー画像化に用いる放射性トレーサーとしての酸化ジャガイモデンプン粒子
デンプン粒子の制御酸化:
実施例1と同様に、36〜50μmで篩にかけた10g(グルコース単位0.055molに相当)のジャガイモデンプン(ヨーロッパ薬局方のモノグラフに従った天然ジャガイモデンプン)を、水100mLに分散させた。水100mLに予め溶解させた過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)0.0112mol、すなわち2.4gを、粒子懸濁液に添加した。その懸濁液を周囲温度で18時間撹拌した。18時間後、20%酸化デンプンの粒子懸濁液を得た。酸化デンプンを遠心分離によって収集し、水200mLで3回濯ぎ、次いで、凍結乾燥した。
【0047】
99mTcでの標識化反応:
20%酸化および凍結乾燥デンプン20mgを、不活性雰囲気下に、空の溶出フラスコに入れた。生理血清4mL、次いで、20μgのSnCl,2HOを添加した。1mLの185MBq/mL 過テクネチウム酸ナトリウム(Na+99mTcO)溶液を添加した。溶液を1分間撹拌し、放射化学的純度(RCP)を、0.22μmフィルタで溶液1mLを濾過し、生理血清5mLでフィルタを濯ぐことによって検査した。放射化学的純度は、
RCP=(フィルタ上での活性/総活性)×100
に相当し;実施例2において、それは99%より大である。
【0048】
ラットにおける静脈注射後の体内分布のシンチグラフィー可視化:
標識化した後、99mTcで標識された4MBqの20%酸化デンプン粒子を、体重約200gの雄性ウィスターラットに静脈(陰茎静脈)注射した。30kCpsのシンンチグラフィー取得を、注射後すぐ、次いで、15分後に行なった。肺(上方領域)、肝臓および脾臓(下方右側領域)の可視化段階の後、活性が、急速に(15分以内)肝臓および脾臓(画像の下方右側領域における定点)に集中した(図2および3)。
【0049】
実施例3:肺灌流のシンチレーション画像化に用いる放射性トレーサーとしての、カダベリンに結合した酸化ジャガイモデンプン粒子
デンプン粒子の制御酸化:
36〜50μmで篩にかけた10g(グルコース単位0.055molに相当)のジャガイモデンプン(ヨーロッパ薬局方のモノグラフに従った天然ジャガイモデンプン)を、水100mLに分散させた。水100mLに予め溶解させた過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)0.028mol、すなわち6gを添加した。その懸濁液を周囲温度で18時間撹拌した。18時間後、50%酸化デンプンの粒子懸濁液を得た。酸化デンプンを遠心分離によって収集し、次いで、水200mLで3回濯いだ。
【0050】
カダベリンへの結合による酸化デンプンの官能化:
酸化デンプン10g、すなわち、グルコース単位0.055molを、水600mL中でインキュベートし、水100mLに溶解させ4gのカダベリン(NH(CHNH)、すなわち0.0385molのカダベリン、すなわち0.077molのNH(1.4当量)と、周囲温度で18時間接触させた。形成されたイミンを安定化するために、NaBH 5.6g、すなわち0.15molを、改質デンプン懸濁液に撹拌しながら1時間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0051】
99mTcでの標識化反応:
カダベリンに結合し、凍結乾燥したデンプン20mgを、不活性雰囲気下に、溶出フラスコに入れた。生理血清4mL、次いで、60μgのSnCl,2HOを添加した。1mLの185MBq/mL 過テクネチウム酸ナトリウム(Na+99mTcO)溶液を添加した。溶液を1分間撹拌し、放射化学的純度(RCP)を、0.22μmフィルタで溶液1mLを濾過し、生理血清5mLでフィルタを濯ぐことによって検査した。放射化学的純度は、
RCP=(フィルタ上での活性/総活性)×100
に相当し;実施例3において、それは95%より大である。
【0052】
ラットにおける静脈注射後の体内分布のシンチグラフィー可視化:
標識化した後、99mTcで標識されたカダベリンに結合した4MBqの50%酸化デンプン粒子を、体重約200gの雄性ウィスターラットに静脈(陰茎静脈)注射した。30kCpsのシンンチグラフィー取得を、注射後すぐ、15分後、30分後、次いで90分後に行なった(図4〜5)。肺の排他的可視化段階後に、脾臓、次いで腎臓の活性が急速に増加し、90分後に肺活性が顕著に減少した。図4〜6において、どの分析時においても、肝臓における活性の有意な欠乏があることに注目すべきである。さらに、肺の初期画像の優れた可視性、ならびに肝臓および脾臓の可視化のほぼ完全な不存在も注目される。30分後において、脾臓、および腎臓の定着の開始が観察でき、これら2つの要素は、90分後において実質的に増加し、肺活性は顕著に減少した。
【0053】
実施例4:肺灌流のシンチレーション画像化用の、金属還元剤(SnCl)を用いない放射性トレーサーとしての、カダベリンに結合した酸化ジャガイモデンプン粒子
デンプン粒子の制御酸化:
36〜50μmで篩にかけた10g(グルコース単位0.055molに相当)のジャガイモデンプン(ヨーロッパ薬局方のモノグラフに従った天然ジャガイモデンプン)を、水100mLに分散させた。水100mLに予め溶解させた過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)0.028mol、すなわち6gを添加した。その懸濁液を周囲温度で18時間撹拌した。18時間後、50%酸化デンプンの粒子懸濁液を得た。酸化デンプンを遠心分離によって収集し、次いで、水200mLで3回濯いだ。
【0054】
カダベリンへの結合による酸化デンプンの官能化:
酸化デンプン10g、すなわち、グルコース単位0.055molを、水600mL中でインキュベートし、水100mLに溶解させた4gのカダベリン(NH(CHNH)、すなわち0.0385molのプトレシン、すなわち0.077molのNH(1.4当量)と、周囲温度で18時間接触させた。形成されたイミンを安定化するために、NaBH 5.6g、すなわち0.15molを、改質デンプン懸濁液に撹拌しながら1時間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0055】
還元剤を用いない99mTcでの標識化反応:
凍結乾燥形態の下記化合物の混合物を含有するIsolink(商標)フラスコに、1mLの185MBq/mL 過テクネチウム酸ナトリウム(Na+99mTcO)溶液を入れた:8.5mg 酒石酸ナトリウム、2.85mg 四ホウ素酸ナトリウム、7.15mg 炭酸ナトリウムおよび4.5mg ナトリウムボラノカーボネート。フラスコを乾燥水浴(dry water bath)に100℃で20分間入れた。得られた溶液を、1mLの0.1N 塩酸(HCl)溶液の添加によって中和した。中和した後、カダベリンと結合した酸化デンプン20mgを含有するフラスコに、その溶液を不活性雰囲気下に入れた。
その懸濁液を15分間撹拌し、放射化学的純度(RCP)を、0.22μmフィルタで溶液1mLを濾過し、生理血清5mLでフィルタを濯ぐことによって検査した。放射化学的純度は、
RCP=(フィルタ上での活性/総活性)×100
に相当し;実施例4において、それは95%より大である。
【0056】
ラットにおける静脈注射後の体内分布のシンチグラフィー可視化:
標識化した後、99mTcで標識されたカダベリンに結合した4MBqの50%酸化デンプン粒子を、体重約200gの雄性ウィスターラットに静脈(陰茎静脈)注射した。30秒間隔で90分間にわたる連続動的シンチグラフィー取得を、注射後すぐに行なった(図7〜9)。5分後(図7)、肺のほぼ排他的可視化、ならびに低い肝臓および腎臓活性が観察された。安定な肺活性が、注射後15分(図8)および30分(図9)において観察された。図7〜9において、どの分析時においても、脾臓における有意な活性がないことに注目すべきである。さらに、肝臓および腎臓活性における増加がその時間中に観察されず(図8および9)、これは肺捕捉の高レベルの安定性によって説明される。
【0057】
実施例5:酸化デンプンミクロ粒子と天然ポリアミンとの結合
実施例1に従って調製した50%過ヨウ素酸塩酸化ジャガイモデンプン粒子を、カダベリンの存在下にインキュベートした(周囲温度で18時間)。光学顕微鏡検査法による形態分析(図10および11)およびCoulter Multisizer(商標)カウンターを用いる粒度分析顕微鏡検査法(図12)を行なった後に、カダベリンに結合した粒子は、形態(図11)および粒度分布(図12)の点でかなり均質であると考えられた。
肺毛細血管でブロックされる粒子の比率を増加させるために、均質粒度分布を選択することが重要であり、約20〜40μmが最適である。10μm未満の場合、粒子は、肺で正確に停止せず、特に肝臓および脾臓において、単核食細胞系によって捕捉される危険性がある。
【0058】
実施例6:カダベリンに結合した粒子の製造および配合物A、B、Cの製造の最適化
ミクロ粒子製造を最適化するため、酸化デンプンをカダベリンに結合させる反応に最適なパラメータを決定するために多くの実験計画を立てた。第1の実験計画は、結合反応に影響を与えるかまたは与えない要素を明らかにすることを可能にした。第2の実験計画は、実験パラメータの影響を量的に測定し、それによって、99mTcを効果的に錯化し得るミクロ粒子の製造に最も適した反応条件を得ることを可能にした。
【0059】
第1の実験計画は、14の実験(表1)に基づいて、下記の4つの実験変数の質的影響を評価することを可能にする:B1:反応温度、B2:反応時間、B3:還元剤当量値、B4:還元時間。各実験変数を、2つのレベル(1つは低く、1つは高い)で試験した。全ての実験において、応答を、下記事項を測定することによって評価した:最終ミクロ粒子に含有されている窒素のパーセンテージ(元素分析によって測定される主要評価事項)、結合反応の収率、および得られたミクロ粒子の粒度分析的分布(Coulter Multisizer(商標)カウンター)。得られた結果(図13)は、最終ミクロ粒子の窒素含有量における、特定反応パラメータ(B3:還元剤当量値、B4:還元時間)の弱い影響または影響の欠如を示し、これに対して、温度および反応時間の該窒素含有量への正の有意な影響を示す。従って、温度および反応時間の増加は、カダベリンと酸化デンプンミクロ粒子との結合を増加させ、それによって、次のミクロ粒子による99mTcの錯化に、より有利である。
【0060】
【表1】

【0061】
第2の実験計画については、結合を量的に最適化し得るように、かつ、ミクロ粒子の窒素含有量における、種々の実験パラメータの変動への応答を模擬実験し得るように行なった。第2の実験計画は、25の実験から成り、Doelhertマトリックスの使用に基づいた(表2)。試験したパラメータは、アミン/デンプン当量値の数値(5つのレベルで試験した)、反応のpH(7つのレベルで試験した)、デンプンの酸化度(7つのレベルで試験した)、最後に、反応媒体中のデンプン濃度(3つのレベルで試験した)であった。第1の実験計画と同様に、全ての実験について、下記を測定することによって、応答を評価した:最終ミクロ粒子に含有されていた窒素のパーセンテージおよび結合収率(元素分析による主要評価事項)、ならびに得られたミクロ粒子の粒度分析的分布(Coulter Multisizer(商標)カウンターで測定された第2の評価事項)。得られた結果は、結合収率につき、実験パラメータの変動の関数として、応答を模擬実験することを可能にした(図14)。図14における円は、第2の実験計画中に試験された実験領域を2次元的に表わしている。該第2の実験計画中に、酸化デンプンとカダベリンとの結合が、100%(図14の円の上右側部分)に近い収率で最大になる条件を決めることができた。
【0062】
これらの全ての結果は、酸化デンプンおよびカダベリンの結合から得られるミクロ粒子調製物の最適化を可能にした。該実験計画は、所望の用途に必要とされる特性を有するミクロ粒子調製物を得るための理想的実験条件を規定するために用いられた。それによって、医学画像化における診断用途に理想的形態特徴を有する3タイプの配合物(配合物A、BおよびC)が、これらの計画から得られた。
【0063】
【表2】

【0064】
配合物Aの製造:
50%酸化デンプン4g、すなわち、グルコース単位0.022molを水120mL中でインキュベートし、水120mLに溶解させた2268mgのカダベリン(NH(CHNH)と接触させた。その懸濁液を、暗所において40℃で18時間にわたって撹拌下に置いた。形成されたイミンを安定化するために、水10mLに溶解させたNaBH 420mgを、改質デンプン懸濁液に、撹拌しながら15分間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0065】
配合物Bの製造:
58.75%酸化デンプン4g、すなわち、グルコース単位0.022molを、水120mL中でインキュベートし、水250mLに溶解させた4048mgのカダベリン(NH(CHNH)と接触させ、その懸濁液のpHを8.8に調節した。懸濁液を、暗所において40℃で18時間にわたって撹拌下に置いた。形成されたイミンを安定化するために、水10mLに溶解させたNaBH 760mgを、改質デンプン懸濁液に、撹拌しながら60分間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0066】
配合物Cの製造:
65%酸化デンプン4g、すなわち、グルコース単位0.022molを、水120mL中でインキュベートし、水158mLに溶解させた2920mgのカダベリン(NH(CHNH)と接触させ、その懸濁液のpHを8.8に調節した。懸濁液を、暗所において40℃で18時間にわたって撹拌下に置いた。形成されたイミンを安定化するために、水10mLに溶解させたNaBH 420mgを、改質デンプン懸濁液に、撹拌しながら60分間にわたって添加した。次いで、粒子をデカントし、濾過し、水200mLで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥した。
【0067】
実施例7:カダベリンに結合した粒子の体内分布および代謝
99mTcの錯化および静脈内投与後の、カダベリンに結合したミクロ粒子(実施例6の配合物A、B、C)の薬物動態プロフィールを調査した。
これを行なうために、2つのタイプの試験を健康な動物において実施した:
−動的および静的シンチグラフィー試験;
−デンプンミクロ粒子の体内分布および尿代謝産物のクロマトグラフィー分離の試験。
a)シンチグラフィー試験
SnCl(50μg)ならびに実施例6に従って調製した配合物A、BおよびCのミクロ粒子(20mg)を含有する種々のすぐに使用できるキットを用いて、シンチグラフィー試験を行なった。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTcO)で標識化した後、種々のキットの放射化学的純度を調査し、その結果は、各場合において95%より大であった(表3)。
【0068】
【表3】

【0069】
動的試験を、雄性ウィスターラット(n=3)において120分間行なった(図15)。該試験によって、時間活性曲線を形成することができ(図16)、それによって種々の活性率を得ることができた(表3)。種々の時点でのトレーサーの分布を解剖学的に追跡するために、スキャナー画像化と共にシンチグラフィー静的取得も行なった(図17)。
【0070】
これらの種々の試験によって、静脈注射後のトレーサーの優勢肺局在を観察することができ(図15および17)、肺半減期は配合物に依存して1.5〜3時間であった(表3)。動的試験の間に得た時間活性曲線は、トレーサーの腎臓および泌尿器排泄、および経時において一定に維持される肝臓、消化器および血管活性のプロフィールを示している(図16)。
【0071】
配合物Cの生体外および生体内特性は、以下の通りである:
放射化学的純度(%):98±2
粒度:4〜90μm
肺半減期(時):3±0.50
肺活性/血管活性比(t=30分):310±116
【0072】
これらの特性は、肺灌流のシンチグラフィー画像化用の放射性医薬としてのそれらの臨床的使用に大いに貢献する。
【0073】
b)体内分布試験
SnCl(50μg)および配合物C(最も貢献するシンチグラフィー特性を有する配合物)のミクロ粒子(20mg)を含有するすぐに使用できるキットを用いて、体内分布試験を行なった。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTcO)溶液で標識化した後、99mTcで標識したデンプンミクロ粒子の10MBq懸濁液を、雄性ウィスターラット(n=8)に静脈注射した。注射後15分および120分において、動物を殺し(各時点につきn=4)、それらの器官を除去し、洗浄し、秤量し、ガンマカウンターでカウントした。注射された活性の80%超が肺で見出されたので(表4)、結果はトレーサーの肺分布を裏付けた。20分後において、注射された活性の70%がまだ肺に存在していたので、この肺活性は比較的安定であった。シンチグラフィー試験の間に示されたように、トレーサーの除去は主として泌尿器排泄によるものであった。
【0074】
【表4】

【0075】
これらの体内分布結果を完全なものにするために、尿代謝産物のクロマトグラフィー分離による試験を行なった。99mTc標識デンプンミクロ粒子(配合物C)を雄性ウィスターラット(n=2)に静脈注射した後、トレーサーの投与後12時間にわたって尿を収集できる代謝ケージに動物を入れた。
【0076】
これにより種々の尿試料を、変動多孔度のゲル透過カラム(Sephadex G15、P6およびSephadex G50)を用いて溶出することができ、これによって放射標識尿代謝産物の分子分布の第1の特徴付け行なうことができた(図18、19および20)。排除限界1,500ダルトンを有するSephadex G15カラムを用いた溶出(図18)は、尿代謝産物のほぼ50%について、排除限界より大きい分子分布を示した。排除限界5,000ダルトンを有するP6カラムを用いた溶出(図19)は、尿代謝産物のほぼ40%〜50%について、排除限界より大きい分子分布を示した。最後に、排除限界10,000ダルトンを有するSephadex G50を用いた溶出(図20)は、尿代謝産物のほぼ30%〜40%について、排除限界より大きい分子分布を示した。結論として、ゲル透過クロマトグラフィーは、尿代謝産物のおよその分子分布に関する情報を与え、該分布の約50%が1,500ダルトン(8グルコース単位に対応する)より小さい分子から成り、約10%の分子が1,500〜5,000ダルトンのサイズ(8〜27グルコース単位)であり、約10%の分子が5,000〜10,000ダルトンのサイズ(27〜55グルコース単位)であり、最後に、約30%の分子が10,000ダルトンより大きい。
【0077】
99mTcで標識された改質デンプンミクロ粒子を用いて行なった全てのシンチグラフィー試験および体内分布試験は、放射性医薬の生体内使用に適合性の生物学的性能を示す。静脈注射後の肺リザーバからの99mTcの放出制御および均一性の特性は、下記の組合せ:
−特定の均一なサイズおよび形態;
−錯化剤を結合させる化学の優れた制御;
−放射性トレーサー99mTcの保持に有効な錯化剤の選択
の結果である。
【0078】
参照文献
Haefeli,UO 2001, Radioactive Microspheres For Medical Applications.In:Bulte J,de Kuyper M(eds) Focus on biotechnology.Kluwer Academic Publishing
Haefeli UO,Casillas S,Dietz DW,Pauer GJ,Rybicki LA,Conzone SD,Day DE,Hepatic Tumor Radioembolization in a Rat Model Using 186/188 Radioactive Rhenium Glass Microspheres,Int.J.Radiation Oncology Biol. Phys.,Vol.44,No.1,pp.189−199,1999
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【0080】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
プトレシンNH(CHNH、スペルミンHN(CHNH(CHNH(CHNH、スペルミジンNH(CHNH(CHNH、またはカダベリンNH(CHNHと、該多糖とを共有結合させることによって得られる1またはそれを超える錯体生成基を有する多糖を含み、該錯体生成基の全てまたはいくらかが少なくとも1つの多価金属との錯体を形成する組成物の製造方法であって、
i)多糖を、制御酸化剤と接触させる工程;
ii)酸化多糖を、プトレシン、スペルミン、スペルミジンまたはカダベリンから選択される錯体生成化合物と接触させる工程;
iii)任意に、工程ii)で得られた多糖を、還元剤と接触させる工程;および
iv)工程ii)またはiii)で得られた多糖を多価金属塩と接触させる工程を含むことを特徴とする該製造方法。
【請求項2】
多価金属が99mTcであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程iv)を、スズ、ホウ酸塩およびその誘導体またはアスコルビン酸型の還元剤の存在下で行なうことを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
プトレシンNH(CHNH、スペルミンHN(CHNH(CHNH(CHNH、スペルミジンNH(CHNH(CHNH、またはカダベリンNH(CHNHと、該多糖とを共有結合させることによって得られる1またはそれを超える錯体生成基を有する多糖を含み、該錯体生成基の全てまたはいくらかが少なくとも1つの多価金属との錯体を形成する、請求項1〜3のいずれか1記載の製造方法によって得られる組成物。
【請求項5】
多糖が粒子の形態である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
粒子サイズが10nm〜200μmである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
多糖が、植物または微生物起源である請求項4〜6のいずれか1記載の組成物。
【請求項8】
多糖が、デンプン、セルロース、アミロペクチン、アミロース、アガロース、キトサン、プルランまたはデキストラン、それらの誘導体、およびそれらの2または複数の混合物から選択される請求項7記載の組成物。
【請求項9】
多価金属が、原子番号20〜33、38〜51、56〜84、および88〜103を有する金属元素から選択される請求項4〜8のいずれか1記載の組成物。
【請求項10】
多価金属が、テクネチウム、レニウム、銅、ストロンチウム、インジウム、サマリウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ガリウム、ガドリニウムまたはルテチウムの放射性同位元素から選択され、99mTcが特に好ましい、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
医薬的に許容される賦形剤をさらに含む請求項4〜10のいずれか1記載の組成物。
【請求項12】
請求項4〜11のいずれか1記載の組成物を含むヒトまたは動物薬局方の診断用または医薬組成物。
【請求項13】
医学または獣医学画像化用の診断組成物を製造するための請求項4〜11のいずれか1記載の組成物の使用。
【請求項14】
シンチグラフィー画像化のための請求項13に記載の使用。
【請求項15】
肺塞栓症のシンチグラフィー診断のための請求項14に記載の使用。
【請求項16】
センチネルリンパ節の検出のための、またはリンパシンチグラフィーのための請求項14記載の使用。
【請求項17】
医学画像化によって患者または動物における1またはそれを超える器官を可視化するための請求項4〜11のいずれか1記載の組成物の使用。
【請求項18】
画像化される器官が、肺、肝臓、脾臓、骨髄またはリンパ節である請求項17記載の使用。
【請求項19】
内部放射線療法による患者または動物における癌の治療用の医薬組成物を製造するための、請求項4〜11のいずれか1記載の組成物の使用。
【請求項20】
リンパ節または肝臓または脾臓腫瘍の治療のための請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−534732(P2010−534732A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517415(P2010−517415)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059825
【国際公開番号】WO2009/013358
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510024363)
【氏名又は名称原語表記】LABORATOIRES CYCLOPHARMA
【Fターム(参考)】