説明

放射性物質除去性能を高めた浄水装置

【課題】一般に普及している逆浸透膜を使用する浄水器では、液中に含まれる様々な物質の殆どを、飲用水質基準に適合する濃度以下まで除去できる。しかし、除去対象の物質・液温・圧力・浸透膜の種類など諸条件によって完全な除去を行う事はできない。放射性物質の場合、逆浸透膜を使用しても2乃至5パーセント程度が残留する。特に放射性ヨウ素131では飲用水中に微量ながら残留していると乳幼児や小児の甲状腺に蓄積され、甲状腺癌をはじめとする健康上の危険性が高い。そこで本発明では逆浸透膜による除去性能に加えて放射性物質の除去率を高める事のできる浄水装置を得る。
【解決手段】逆浸透膜フィルターの前処理として活性炭フィルターを配置し、逆浸透膜フィルターの濾過液の後処理として銀イオンの放射性物質に対する化学反応によって放射性物質の除去を行うフィルターを配置して浄水することで、放射性物質の除去率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性物質除去性能を備える浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既に普及している浄水技術のうち逆浸透膜を使用する浄水装置では、液中に含まれる様々な物質を飲用水質基準に適合する濃度以下まで除去でき、原水に含まれる放射性ヨウ素・放射性セシウム等の放射性物質も除去可能である。
【0003】
しかし、除去対象の物質・濃度・液温・圧力・浸透膜の種類など諸条件によって100%の除去を行う事はできず、放射性物質の場合では逆浸透膜を使用しても平均的に2乃至5%程度の残留が生じる事が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に示したように、精密濾過性能に優れる逆浸透膜を用いてもなお、浄水において数%の残留濃度が生じ、特に放射性ヨウ素131にあっては飲用水中に微量でも残留していると、乳幼児や小児の甲状腺に蓄積されて体内被曝を生じ、癌や白血病の原因となる危険性が高いことから、本発明において放射性ヨウ素131の完全な除去性能を備える浄水装置を得る事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
逆浸透膜を使用することで浄化対象である原水に含まれる放射性物質は、概ね95%乃至98%程度を除去する事が出来るので、これに加えて逆浸透膜フィルターの前処理として活性炭フィルターを配置し、逆浸透膜フィルターで濾過された水の後処理として、銀イオンと放射性物質(主に放射性ヨウ素)による化学反応によって放射性物質の除去を行うフィルターを配置して、浄水することで放射性物質の除去率を高めることができる。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本発明による浄水装置では一般的に普及している逆浸透膜による浄水方法と放射性物質(放射性ヨウ素131)を除去するフィルターを組み合わせて用いることで、放射性セシウム137の98%以上を除去する事ができ、特に甲状腺への蓄積性が深刻な健康被害の原因となる放射性ヨウ素131は完全に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明による各フィルターの接続構成例図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0010】
図1において、原水1は加圧ポンプ2に吸込まれて概ね0.5乃至0.7MPs程度に加圧されて活性炭フィルター3へ流入する。加圧ポンプ2は活性炭フィルター3と逆浸透膜フィルター4の間に挿入してもよい。原水1は活性炭フィルター3内の活性炭層を通過する際に、逆浸透膜フィルター4と放射性物質除去フィルター4を損耗させる有機物や塩素等を吸着除去され、続いて逆浸透膜フィルター4へ流入する。
【0011】
活性炭フィルター3から逆浸透膜フィルター4に流入した前処理済みの水に含まれている物質の95%乃至98%程度は、浸透膜を通過できず排水6となって浄水装置の系外へ排出される。この際の排水割合は排水調整バルブ5によって調整する事が出来る。
【0012】
逆浸透膜フィルター4を通過して濾過された水には、まだ2%乃至5%程度の放射性物質の残留がある。そこで続いて放射性物質除去フィルター7に流入させる。放射性物質除去フィルター7の内部には銀が蒸着された吸着材8が充填されている。ここで水中に残留している放射性ヨウ素131はヨウ素イオンと銀イオンがヨウ素銀反応を起こしてヨウ化銀となり吸着材8に固定されることとなる。
【0013】
以上により、残留していた放射性物質のうち放射性ヨウ素131を完全に除去した浄化済みの浄水9を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、飲用水などの液中に含まれる有害な物質をはじめ、特に健康上の被害が懸念される放射性物質に対して、高い除去率を得る事が出来るので原子力炉事故等により環境放出された放射性物質が、地下浸透して井戸水を汚染したり河川湖沼等の水系を経由して浄水場に混入した場合でも、安心して飲用水を確保する事が出来る。
【符号の説明】
1・・・原水
2・・・加圧ポンプ
3・・・活性炭フィルター
4・・・逆浸透膜フィルター
5・・・排水調整バルブ
6・・・排水
7・・・放射性物質除去フィルター
8・・・吸着材
9・・・浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中に含まれる放射性物質の除去率を高めるため、活性炭フィルタと逆浸透膜フィルタと銀イオンの放射性物質に対する化学反応によって放射性物質の除去を行うフィルタ、を備えることを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
逆浸透膜フィルタの前処理として活性炭フィルタを配置し、逆浸透膜フィルタの濾過液の後処理として銀イオンの放射性物質に対する化学反応によって放射性物質の除去を行うフィルタを配置すること、を特徴とする請求項1に記載の浄水装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−220487(P2012−220487A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103261(P2011−103261)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(501086932)
【出願人】(501249386)
【出願人】(501250887)
【Fターム(参考)】