説明

放射源及び蛍光物質を有する照明システム

本発明は、放射源と、前記放射源によって発せられる光の一部を吸収し、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる少なくとも1つの蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムであって、前記少なくとも1つの蛍光体は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである、照明システムに関する。本発明は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)の緑色発光セリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、放射源と蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムに関する。本発明は、このような照明システムにおいて使用されるための蛍光体にも関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ルミネセントダウンコンバージョン及び紫外線又は青色光を発する放射源に基づく加法混色による、白色光を含む特定の有色光の生成のための蛍光体を有する蛍光物質及び照明システムに関する。放射源として発光ダイオードが特に考えられる。
【背景技術】
【0003】
近年、発光ダイオードを放射源として用いることにより白色光発生照明システムを作製するための種々の試みがなされている。赤色、緑色及び青色発光ダイオードの配列により白色光を生じる際には、発光ダイオードの色調、輝度及び他の因子の変動のため、所望の色調の白色光が生じさせられることができないという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、発光ダイオードによって発せられる光の色を、蛍光体を含む蛍光物質によって変換して、可視白色光照明を提供する、種々の照明システムがこれまでに開発されてきた。
【0005】
これまでの照明システムは、3色(RGB)アプローチ、即ち3つの色(即ち赤、緑及び青)の混合(この場合青色成分は蛍光体又はLEDの一次発光によって提供される)か、又は、黄色及び青色を混合する二色(BY)アプローチという第2の簡略化された解決策(この場合黄色成分は黄色蛍光体によって提供されることができ、青色成分は青色LEDの一次発光によって提供されることができる)のいずれかに基づくものであった。
【0006】
具体的には、例えば米国特許第5,998,925号に開示される二色アプローチは、InGaN半導体の青色発光ダイオードをYAl12:Ce(YAG−Ce3+)蛍光体と組み合わせて用いる。YAG−Ce3+蛍光体がInGaN LEDにコーティングされ、LEDから発せられた青色光の一部は蛍光体によって黄色光に変換される。LEDからの青色光の他の部分は、蛍光体を通じて伝達される。このように、このシステムは、LEDから発せられる青色光及び蛍光体から発せられる黄色光の両方を発する。青色及び黄色発光帯域の混合は、観察者によって、80台半ばののCRI及び約6000Kから約8000Kに亘る色温度Tcを持つ白色光として知覚される。
【0007】
しかし、二色アプローチに基づく白色光LEDは、赤色成分の欠如によって生じる貧弱な演色のため、限られた範囲内でしか汎用照明のために用いられることができない。
【0008】
所望される汎用の白色ランプの特性は、経済的なコストでの高い輝度及び高い演色である。3つの発光帯域(590〜630nmの赤、520〜560nmの緑、450nmの青)を持つRGBアプローチに従う三色ランプスペクトルによって、改善された効率及び非常に改善された演色能力が可能である。これらの波長は、色を規定するのに用いられるCIE三刺激関数のピークに近い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
残念ながら、今日まで、十分な効率及び安定性を持つ緑色発光体は知られていない。
【0010】
従って、近紫外から青色の領域で励起可能であり可視の緑色領域で発光する新しい蛍光体を提供する必要性がある。緑から赤の広い波長領域で光を発する新規な蛍光体ブレンドを提供してこれらを紫外/青色LEDと組み合わせて高効率及び/又は高い演色評価数(「CRI」)を持つ白色光を生じさせることができるようにすることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、放射源と、前記放射源によって発せられる光の一部を吸収し、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる少なくとも1つの蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムであって、前記少なくとも1つの蛍光体は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである、照明システムを提供する。
【0012】
好適には、放射源は、400〜480nmのピーク発光波長を有する発光を持つ放射源から選択される。
【0013】
好適には、放射源は発光ダイオードである。
【0014】
本発明の他の側面は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと少なくとも1つの第2の蛍光体とを有する蛍光物質を有する照明システムを提供する。
【0015】
特に、蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと赤色蛍光体とを含む白色発光蛍光体ブレンドである。
【0016】
上記の赤色蛍光体は、(Ca1−xSr)S:Eu(ここで0≦x≦1)及び(Sr1−x−yBaCa2−zSi5−aAl8−a:Eu(ここで0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1及び0<z≦1)の群から選択されたEu(II)付活蛍光体の群から選択されることができる。
【0017】
本発明による白色発光LEDの概念は、RGB混合、即ち青、赤及び緑色の組合せに基づく。必須の要素は、黄色から緑色、及び赤色の蛍光体が、全スペクトル領域を通じて十分な割合の発光も持つほど広帯域であるということである。
【0018】
このような蛍光物質の発光スペクトルは、LEDの青色光及び本発明によるガーネットの緑色光と共に、必要な色温度で良好な演色を持つ高品質の白色光を得るための、適切な波長を持つ。
【0019】
この白色光照明デバイスは、実質的にCIE色度図の黒体軌跡上に色座標を持つ。
【0020】
高い演色を持つ白色発光を得ることは、青色発光LEDと共に全スペクトル範囲をカバーする赤色及び緑色の広帯域発光の蛍光体の使用によって可能である。本発明による広帯域蛍光体を用いるブレンドは、比較的高い演色評価数(91〜93までにも高い)を持つことができる。
【0021】
本発明の他の側面は、放射源によって発せられる光の一部を吸収して、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる蛍光体であって、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12: CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである蛍光体を提供する。
【0022】
これらのセリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネット蛍光体は、ルテチウム及びセリウムを含む適当なイオンによって光ルミネセンス又はX線のために付活されたホストガーネットを有する。これらのガーネットは、更に、カチオンの混合物を付活剤として含むプラセオジム及びその他のカチオンを含んでもよい。
【0023】
これらの物質のホストガーネットは、例えばルテチウムアルミニウムガーネット(LuAl12)等の3元素(2カチオン)ガーネットであってよく、又は、ルテチウム−イットリウム−アルミニウムガーネット((Lu,Y)Al12)等又はルテチウム−ガリウム−アルミニウムガーネット((Lu(Al,Ga)12)等、3を超える元素を有してもよい。
【0024】
ルテチウム濃度は、光源(特にLED)において用いられると、発せられる光の色軌跡に影響を与える。この蛍光体の色軌跡は、加えて、2つの濃度Lu:Ceの比を用いて微調整されることができ、これは、LED中のあらゆる他の(黄色又は赤色)蛍光体への適合を簡略化又は最適化する。
【0025】
具体的には、付活剤カチオンとして低濃度で存在するプラセオジムを持つガーネット組成物が、特に望ましい。なぜなら、このような組成物は、可視スペクトルの赤領域においても、シャープな線発光を示すからである。
【0026】
これらの蛍光体は、可視発光が主に位置する80nm波長範囲がないほど可視発光が広い、広帯域のエミッタである。
【0027】
これらのガーネット蛍光体は、紫外及び青色励起の下で非常に高い強度を有する可視スペクトルの黄緑色のスペクトル領域の広帯域を発し、そのため特定色又は白色光を発するLEDの緑色成分を提供する。合計変換効率は、最高90%であってもよい。蛍光体の追加の重要な特性は、1)典型的な装置動作温度(例えば80°C)におけるルミネセンスの熱消光への抵抗;2)装置において用いられる封入樹脂との干渉性反応性の欠如;3)可視スペクトルの範囲内での死吸収を最小化するのに適切な吸収性プロファイル;4)装置の動作寿命に亘って時間的に安定な発光出力;5)蛍光体の励起及び発光特性の組成的に制御された調整、を含む。これらのガーネット蛍光体は、容易に合成されることができる。
【0028】
好適には、照明システムの蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、y=0、z =0、a=0.01、b=0)の蛍光体を有する。
【0029】
特に、本発明は、特定の蛍光体組成物(Lu0.99Ce0.01Al12に関し、これは、80〜90%という高い量子効率、370nm〜470nmの領域で60〜80%という高い吸収、熱消光による室温から100℃までのルミネセントルーメン出力の10%未満という低い損失を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、放電ランプ、蛍光ランプ、LED、LD及びX線管を含むがこれらに限られない、放射源を含むあらゆる構成の照明システム中の蛍光体としてのセリウム付活ルテチウムアルミニウムガーネットを対象とする。ここで使用される場合、用語「放射(線)、radiation」は、UV、IR及び可視領域の電磁スペクトルの放射(線)を含む。
【0031】
本発明の蛍光体の使用は広範囲の照明システムのために考えられるが、本発明は、発光ダイオード、特に紫外及び青色発光ダイオードを特に参照して説明され、これに特に特定用途がある。
【0032】
本発明による蛍光物質は、蛍光体としてセリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネットを有する。蛍光体は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)に従う。
【0033】
この種類の蛍光物質は、立方晶ガーネット結晶の活性化ルミネセンスに基づく。ガーネットは、結晶の化学式A12を有する種類の物質である。
【0034】
ガーネット結晶格子は、12面体8配位、8面体6配位及び4面体4配位の3つの異なる原子占有サイトを持ち、ここで、Aカチオンは酸素により8配位しており、Bカチオンは酸素により6配位又は4配位している。この結晶構造は、8つの式単位を含むユニットセルにつき160のイオンを有する立方晶である。本発明によれば、Aカチオンは、ルテチウムイオン単独又はこれとイットリウム及びガドリニウムとの組合せであり、これは、セリウム及び場合によってはプラセオジムの置換付活剤との組合せである。Bカチオンは、アルミニウム及び場合によってはガリウム又は他のイオンであってよく、ここでも、単独であるか、組み合わせであるか、及び/又は置換を有する。特に、8配位又は6配位サイトに付活剤イオンが置換される場合、これらのガーネットがX線刺激に応答して発光することが分かった。このホスト材料においてX線発光する特に重要な付活剤イオンは、8配位サイトに位置するCe3+イオンである。
【0035】
セリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネット(LuAl12:Ce蛍光体)の幾つかのルテチウムをガドリニウムGd3+又はイットリウムY3+等のより小さいイオンで置換することは、緑から黄色領域への蛍光体の発光帯域のシフトを生じる。
【0036】
セリウム付活ルテチウム−アルミニウムガーネット(LuAl12:Ce蛍光体)の幾つかのアルミニウムをガリウムGa3+等のより大きいイオンで置換することは、緑から青色領域への蛍光体の発光帯域のシフトを生じる。
【0037】
プラセオジムによって共付活剤としてのセリウム付活ルテチウム−アルミニウムガーネットの幾つかのセリウムを置換することは、プラセオジムが、一般に可視スペクトルの黄色領域に集中する、セリウム付活ルテチウム−アルミニウム蛍光体からの典型的な広帯域の二次発光ではなく、可視スペクトルの赤色領域に集中する二次発光を生成するという効果を有する。共付活剤としてのプラセオジムの量は、特定用途のための白色出力光において必要とされうる赤色の量に依存して、変動することができる。
【0038】
好適には、これらのガーネット蛍光体は、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタンの酸化物並びにアルミニウムの窒化物の元素のフッ化物及びオルトリン酸塩によって形成される群から選択される1つ又は複数の化合物の、薄い均一な層でコーティングされてもよい。
【0039】
層厚は、通常、0.001〜0.2μmに亘り、従って、この層がエネルギーの実質的な損失無しに放射源の放射線によって貫通されることができるほど薄い。蛍光体粒子上のこれらの材料のコーティングは、例えば、気相からの堆積又は湿式コーティングプロセスによって適用されてもよい。
【0040】
これらの蛍光体は、可視部分のスペクトルより高いエネルギーの電磁スペクトルの部分に応答する。
【0041】
特に、本発明による蛍光体は、蛍光ランプ及び発光ダイオードにおける紫外光、青色発光ダイオードにおける可視光、(陰極線管における)電子及び(ラジオグラフィーにおける)X線に応答する。
【0042】
本発明は、放射源と、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)の少なくとも1つの蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムにも関する。
【0043】
放射源は、半導体光学放射線エミッタ及び電気励起に応答して光学放射線を発する他のデバイスを含む。半導体光学放射線エミッタは、発光ダイオードLEDチップ、発光ポリマー(LEP)、有機発光デバイス(OLED)、ポリマー発光デバイス(PLED)等を含む。
【0044】
更に、放電ランプ及び蛍光ランプ、例えば水銀低圧及び高圧放電ランプ、硫黄放電ランプ、硫黄放電ランプ並びに分子ラジエータに基づく放電ランプにおけるような発光部品は、本発明の蛍光体組成物を有する本発明における放射源として考えられる。
【0045】
本発明の好適な実施例において、放射源は発光ダイオードである。
【0046】
本発明において、LED及びセリウム付活ルテチウム−アルミニウムガーネット蛍光体組成物を含むあらゆる構成の照明システムが考えられ、これは好適には他の良く知られた蛍光体の追加を伴い、この蛍光体は、上記で特定された一次紫外線又は青色光を発するLEDによって照射されたときに特定の色又は白色の光を達成するために組み合わせられてよい。
【0047】
本発明の好適な実施例において、使用される一次放射源は、紫外発光又は青色発光LEDチップからの放射である。特に良い結果は、発光最大が400〜480nmに位置する青色LEDによって達成される。ガーネット蛍光体の励起スペクトルを特に考慮して、最適条件は、445〜460nmに位置すると分かった。
【0048】
特に良い演色を有する変形例は、2つの蛍光体、即ち、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)の緑色放出セリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネット蛍光体と、(Ca1−xSr)S:Eu(ここで0≦x≦1)及び(Sr1−x−yBaCa2−zSi5−aAl8−a:Eu(ここで0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1、0<z≦1)の群から選択された赤色発光ユーロピウム付活蛍光体からの赤色蛍光体との共同使用である。
【0049】
好適には、ユーロピウム付活カルシウムストロンチウム硫化物が用いられ、これは、近紫外(400nm)から青緑(500nm)で高い量子効率で励起可能な高色度の赤色蛍光体である。一次LED光のルミネセント変換のための、この蛍光体の最適化された使用のためには、例えば、関連する発光デバイスの有効性、表色及び寿命を達成するために、光物理的特性を修正することが必要である。ユーロピウム付活ストロンチウム硫化物の色度及び量子効率は、ストロンチウムを、Ba、Ca、Mg及びZnを含むリストからの二価金属イオンで置換すること通じて、修飾されることができる。
【0050】
【表1】

【0051】
蛍光体ブレンドは、所定量の組成比の、セリウムによって付活されたガーネット構造のルテチウム−アルミニウム酸化物及び二価ユーロピウムによって付活されたカルシウムストロンチウム硫化物の混合物を有する。アパタイト構造物質は、可視領域の広帯域発光を有し、イットリウム酸化物物質は、可視スペクトルの赤橙領域に狭い発光を有する一方で、相対蛍光体比は、第1の蛍光層の複合発光が、ICIシステムのx−y色度図に温白色楕円内にほぼ内接するように入るようなものである。
【0052】
特に好適なのは、455nmでピーク発光を有する可視スペクトルの青色領域において発光するInGaNチップと、青:緑:赤=1.1:2.4:2.18の対応するスペクトル重量比を有するLuAl12:Ce及びCaS:Euを有する蛍光体ブレンドとを有する白色発光放射源であり、これは色座標x=0.336及びy=0.339、83の演色評価数、そして、約21ルーメン/ワットの発光効率を有する白色光を発する。LuAl12:Ce及びCaS:Euの3つの異なったブレンドを有するこのような白色発光LEDのスペクトルが、図4において与えられる。
【0053】
このような発光デバイスの詳細な構造が、図1に示される。
【0054】
図1は、本発明のデバイスの模式図である。デバイスは、LED1を有する。LED1は、リフレクタカップ2内に配置される。LED1は、光をパターンで発する。蛍光体組成物4、5は、このパターンに配置される。蛍光体組成物は、樹脂3に埋め込まれる。この例では、リフレクタカップ2が、光が、最初の光パターンによって以前にカバーされていない空間に反射される場合(例えば放物面リフレクタの場合)、光パターンを修正することができる。当業者は、リフレクタカップ2を、光の蛍光体組成物4,5への反射を最適化する、又は、LED1の配置を、効率的な変換のための光パターンを提供するように最適化する、如何なる形状にもすることができることは理解される。例えば、リフレクタカップ2の壁は、放物線状でもよい。
【0055】
1つの実施例において、デバイスは、蛍光体又は蛍光体ブレンドを封入するためのポリマーを更に有する。本実施例において、蛍光体又は蛍光体ブレンドは、封入体内で高い安定性特性を示すはずである。好適には、ポリマーは、大きな光散乱を防止するため、光学的に透明である。1つの実施例において、ポリマーはエポキシ及びシリコン樹脂からなる群から選択される。LEDランプを作るための種々のポリマーが、LED産業において知られている。ポリマー前駆体である液体に対する蛍光体混合物の添加は、封入として機能することができる。例えば、蛍光体混合物は、粉末であってもよい。蛍光体粒子を液体ポリマー前駆体に添加することは、スラリー(即ち粒子の懸濁液)の形成という結果となる。重合に際して、蛍光体混合物は、封入体によって適当な位置にしっかりと固定される。1つの実施例において、組成物及びLEDは、ポリマー内に封入される。
【0056】
蛍光体は、別々に又は混合物として塗布される。蛍光体は、紫外/青色光を発するLEDからの光を完全に又は部分的に吸収し、これを再び他のスペクトル領域(主に黄色及び緑)で、所望の色点を有する全体的な発光が形成されるのに十分に広帯域で(特に赤の大きな部分を伴って)発する。
【0057】
種々の温度における黒体に対応する色点が、黒体軌跡(BBL)によって与えられる。黒体から発せられる色は白と考えられ、白色光は一般にランプにとって望ましいので、ルミネセントランプのルミネセント物質から発せられる光の色点が、BBLに又はその近くに位置することは一般的に望ましい。BBLの一部が図2中で示されており、ここで、その発光スペクトルが図4に与えられる白色発光LEDに対応する3つの色温度点が、該BBL上でハイライトされている。
【0058】
他の性能指数は、演色評価数(CRI)として示される、白色発光放射源の照光された色をレンダリングする際の品質である。100のCRIは、光源から発される光が、黒体源(即ち白熱又はハロゲンランプ)からの光と類似していることの表れである。85〜95のCRIが、青色発光LED中にLuAl12:Ce及びCaS:Euを有する発光スクリーンを適用することによって達成されることができる。
【0059】
図4は、青色LEDと、本発明のセリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネット蛍光体及びCaS:Euとの種々の組合せから生じることができる白色光を与える種々の照明システムの色座標を示す。
【0060】
本発明の複数の蛍光体が、色調整を提供するために同じデバイスに組み込まれてよい。
【0061】
実施例の他の群は、特に良い演色を有する緑色発光照明システムに関し、当該システムは、420〜480nmの青色スペクトル範囲で一次光を発する発光半導体部品と、緑色発光セリウム付活ルテチウム−アルミニウムガーネット蛍光体LuAl12:Ceを含む蛍光体ブレンドとの組合せを有し、ここで、青:緑の対応するスペクトル重量比は1.0:2.4〜1.0:3.5から選択され、これは、色座標x=0.336、y=0.339を有し、83の演色評価数及び約450ルーメン/ワットの発光効率を有する緑色光を発する。
【0062】
説明された蛍光体は、広い吸収帯のため、発光半導体部品によって発せられる一次光に対して、開示されるスペクトル領域370nm〜480nmで適切な吸収又は低反射率を示す。
【0063】
緑色発光蛍光体は、適当なら、特定色の光の生成のために、そしてより好適には80を超える高い演色評価数を有する白色光の生成のために、他の黄色又は赤色発光蛍光体と組み合わせられることができる。
【0064】
緑から黄色の広帯域の発光の結果、緑色発光が発生されることができ、これは図3の幾つかの例において示される。
具体例
【0065】
一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)の蛍光体の蛍光体合成のためには、1つ又は複数の出発物質は、酸素を含む化合物、例えば、硝酸溶液に可溶である塩素酸塩、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、又はクエン酸塩であってよい。例えば、或る量のLu、Al(NO・9HO、Ce(NO)・36HO及びAlFが、混合されて、硝酸溶液に溶解される。酸性溶液の強さは、酸素を含む化合物を急速に溶解するように選択され、この選択は、当業者の技術の範囲内である。硝酸溶液は、蒸発させられる。乾燥された析出物は、ボールミルにかけられ、又は別の方法で入念に混合され、次に、原料物質のほぼ完全な脱水を保証するのに十分な時間、約1300℃でCO雰囲気で仮焼される。仮焼は、一定温度で実行されてもよい。代わりに、仮焼温度は、室温から逓増され、仮焼の期間、最終温度で保持されてもよい。間欠的なミリングステップの後、仮焼された物質は、同様に、H、CO又はこれらの気体のうちの1つの不活性ガスとの混合体等の還元雰囲気下で、1500〜1700℃で、仮焼物質の全部を所望の蛍光体組成物に変換するための酸素含有化合物の分解に十分な時間焼成される。
【0066】
得られる粉末は、数時間、ローラーベンチでミリングされる。ミリングされた粉末は、40〜60μmの平均粒径を有する。
【0067】
その量子効率は90%であり、その発光効率は430〜470lm/Wである。色点は、x=0.33〜0.38であり、y=0.57〜0.58である。
【0068】
【表2】

【0069】
この明細書に伴う図面の図5、6、7において、種々の化合物の発光スペクトルが与えられる。これらのガーネット蛍光体は、355nm波長の放射線によって励起されると、515nmにピークを持つ広帯域の発光を与えると分かった。
【0070】
この明細書に伴う図面の図5は、組成(Lu0.99Ce0.01Al12の励起及び発光スペクトルを示す。
【0071】
この明細書に伴う図面の図6は、組成(Lu0.4950.495Ce0.01Al12の励起及び発光スペクトルを示す。
【0072】
図7は、(Lu0.989Ce0.01Pr0.001Al12が、励起のためにスキャンされると、ピークが515〜540nmに延び、サイドバンドが610nmの、広帯域(515〜540nm)励起を持つことを示す。
【0073】
励起スペクトルから、これらのセリウム付活ルテチウム−アルミニウム−ガーネット蛍光体は、254nm並びに355及び420nmの放射によって効率的に励起されることができることも明らかである。460nmで発光するInGaN LEDに基づいて白色照明システムを製造するためには、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)の少なくとも1つのガーネットと、表2による赤色蛍光体のうちの1つとを有する蛍光体ブレンドが、シリコーン前駆対中に縣濁される。この懸濁液の液滴は、LEDチップ上に堆積され、続いて重合される。プラスチックレンズがLEDを密封する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】LED構造によって発せられた光の通路に位置する本発明の2蛍光体ブレンドを有する3色白色LEDランプの模式図である。
【図2】Commission Internationals de I’Eclairage(「CIE」)の色度図中の(Lu0.4950.495Ce0.01Al12及びSrGa:Euの蛍光体混合物の座標を示す。これらの蛍光体のブレンドは、黒体軌跡に近い座標を有するように作製されることができる。
【図3】460nmにおける青色LEDによる励起の際の緑色LEDの発光スペクトルを示す。
【図4】460nmにおける青色LEDによる励起の際の白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図5】(Lu0.99Ce0.01Al12の励起及び発光スペクトルを開示する。
【図6】(Lu0.989Ce0.01Pr0.001Al12の励起及び発光スペクトルを開示する。
【図7】(Lu0.4950.495Ce0.01Al12の励起及び発光スペクトルを開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源と、前記放射源によって発せられる光の一部を吸収し、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる少なくとも1つの蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムであって、前記少なくとも1つの蛍光体は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである、照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照明システムにおいて、前記放射源は、400〜480nmの領域のピーク発光波長を有する発光を持つ放射源から選択される、照明システム。
【請求項3】
請求項1に記載の照明システムにおいて、前記放射源は、発光ダイオードである、照明システム。
【請求項4】
請求項1に記載の照明システムにおいて、前記蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと、少なくとも1つの第2の蛍光体との蛍光体ブレンドである、照明システム。
【請求項5】
請求項1に記載の照明システムにおいて、前記放射源は、青色発光ダイオードであり、前記蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12: CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと、赤色蛍光体との蛍光体ブレンドである、照明システム。
【請求項6】
請求項5に記載の照明システムにおいて、前記蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12: CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと、Eu(II)付活蛍光体の群から選択される赤色蛍光体との蛍光体ブレンドである、照明システム。
【請求項7】
請求項5に記載の照明システムにおいて、前記蛍光物質は、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットと、(Ca1−xSr)S:Eu(ここで0≦x≦1)及び(Sr1−x−yBaCa2−zSi5−aAl8−a:Eu(ここで0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1、0<z≦1)の群から選択される赤色蛍光体との蛍光体ブレンドである、照明システム。
【請求項8】
放射源によって発せられる光の一部を吸収して、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる蛍光体であって、一般式(Lu1−x−y−a−bGd(Al1−zGa12:CePr(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである蛍光体。
【請求項9】
請求項8に記載の蛍光体において、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウム、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物並びにアルミニウムの窒化物の元素のフッ化物及びオルトリン酸塩によって形成される群から選択されるコーティングを持つ、蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−520836(P2006−520836A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506339(P2006−506339)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000733
【国際公開番号】WO2004/084261
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【Fターム(参考)】