説明

放射線モニタ

【課題】温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い放射線モニタを得る。
【解決手段】サンプルガスに含まれる気体状放射性核種から放射される放射線を検出する放射線検出器1と、放射線検出器1の放射線入射窓11をバウンダリーとし、サンプルガスを内包して流す試料容器2と、放射線検出器1と試料容器2を環境放射線から遮蔽して保持するサンプラ3と、放射線検出器1から出力される放射線検出信号を入力してサンプルガスに含まれる気体状放射性核種の放射能濃度を測定する測定部4と、サンプラ3の温度と試料容器2に導入されるサンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段7と、放射線検出器1に設けられ、放射線検出器1の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプ14とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子炉施設、使用済燃料再処理施設等における放射性物質の放出管理、あるいは漏洩検知に用いられる放射線モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉施設、使用済燃料再処理施設等では、プロセス流体中に含まれる放射性物質の濃度を測定するために放射線モニタが使用されており、これに用いられる放射線検出器で代表的なものとしては、プラスチックシンチレーション検出器とタリウム活性化ヨウ化ナトリウム(以下、NaI(Tl)と記す。)シンチレーション検出器がある。
【0003】
プラスチックシンチレーション検出器は、サンプルガスに含まれる放射性核種から放射されるβ線を検出する場合に適用されることが多く、NaI(Tl)シンチレーション検出器は、サンプルガスに含まれる粒子状放射性核種をダストの形態でダスト捕集用濾紙に捕集し、粒子状放射性核種から放射されるγ線を検出する場合、あるいは、サンプルガスに含まれる放射性ヨウ素を活性炭カートリッジに捕集し、放射性ヨウ素から放射されるγ線を検出する場合に適用されることが多い。また、NaI(Tl)シンチレーション検出器は、サンプル水に含まれる放射性核種から放射されるγ線を検出する場合にも適用されることが多い。
【0004】
例えば、サンプルガスに含まれる放射性核種から放射される放射線を高感度で検出しようとする場含、1崩壊当たりの放射線放出率がγ線より大きいβ線を検出対象とし、サンプルガスを内包する試料容器の一部をプラスチックシンチレーション検出器のプラスチックシンチレータで構成し、β線が入射すると蛍光を発して放射線を検出するプラスチックシンチレータをサンプルガスに接するように配置してβ線を高効率で検出する。
【0005】
また、サンプルガスに含まれる粒子状放射性核種をダスト捕集濾紙に捕集して検出する場合、捕集されたダスト及び濾紙の中でβ線が吸収されるために、透過性の良好なγ線を検出対象とし、NaI(Tl)シンチレーション検出器を使用し、γ線が入射すると蛍光を発して放射線を検出するNaI(Tl)シンチレータをダスト捕集濾紙に近接対面させるように配置する。また、ダスト捕集濾紙が吸湿して流量が大きく変動するのを防止するために、サンプルガスを加熱してサンプルガスの湿度を下げている。
【0006】
また、サンプルガスに含まれる放射性ヨウ素を活性炭カートリッジに捕集して検出する場合、活性炭中でβ線が吸収されるために、透過性の良好なγ線を検出対象とし、NaI(Tl)シンチレーション検出器を使用し、NaI(Tl)シンチレータを活性炭カートリッジに近接対面させるように配置する。また、放射性ヨウ素を高効率で捕集するために、サンプルガスを加熱して湿度を下げている。
【0007】
更に、サンプル水に含まれる放射性核種の放射線を測定する場合、サンプル水中でβ線が吸収されるため透過性の良好なγ線を検出対象とし、NaI(Tl)シンチレーション検出器を使用し、サンプル水を内包する試料容器に保護筒を侵漬してバウンダリーを構成し、該保護筒に放射線検出器を収納することによってサンプル水に接しないように保護し、サンプル水による熱衝撃で、NaI(Tl)シンチレーション検出器のNaI(Tl)シンチレータが破損しないようにしている。
【0008】
ところで、放射線検出器を構成するシンチレータ及び光電子増倍管はそれぞれ温度特性を持っている。シンチレータの温度特性は種類により特性の形が大きく異なり、代表的なプラスチックシンチレータは約−0.1%/℃で概ね直線的に変化する負の特性を有しており、代表的なNaI(Tl)シンチレータは10〜20℃にピークを有する山形の温度特性で25℃以上は約−0.3%/℃で直線的に変化する負の温度特性を有している。また、光電子増倍管は概ね約−0.3%/℃の負の温度特性を持っている。
【0009】
従来の放射線モニタにおいて、上記シンチレータの温度特性と上記光電子増倍管の温度特性を合成した放射線検出器の固有の温度特性に対して、この逆の温度特性をプリアンプのゲインに持たせることにより、検出器固有の温度特性を補償して指示の安定化を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−188910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の放射線モニタは上記のように構成されているため、周囲から放射線検出器への熱伝達にムラが生じ、そのために定常的または過渡的な温度分布を生じ、放射線検出器を構成するシンチレータ、光電子増倍管、プリアンプに生じた温度差のために、シンチレータ、光電子増倍管に起因する放射線検出器固有の温度特性を、プリアンプの逆温度特性で補償する時に補償誤差が発生し、指示が不安定になる課題があった。
【0012】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い放射線モニタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る放射線モニタは、サンプルガスに含まれる気体状放射性核種から放射される放射線を検出する放射線検出器と、上記放射線検出器の放射線入射窓をバウンダリーとし、上記サンプルガスを内包して流す試料容器と、上記放射線検出器と上記試料容器を環境放射線から遮蔽して保持するサンプラと、上記放射線検出器から出力される放射線検出信号を入力して上記サンプルガスに含まれる気体状放射性核種の放射能濃度を測定する測定部と、上記サンプラの温度と上記試料容器に導入される上記サンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段と、上記放射線検出器に設けられ、上記放射線検出器の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る放射線モニタは、サンプラの温度とサンプルガスの温度を同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段を備えたので、放射線検出器の温度分布を抑制することができ、それにより、放射線検出器に固有のゲイン温度特性をプリアンプで好適な条件で補償でき、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明に係る放射線モニタの好適な実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る放射線モニタの構成図である。図1において、プラスチックシンチレーション検出器1は、プラスチックシンチレータ11、ライトガイド12、光電子増倍管13、プリアンプ14、クッション材15、及び検出器ケース16から構成されており、サンプルガスに含まれる気体状放射性核種から放射される主にβ線を検出して放射線検出信号を出力する。検出器ケース16は、プラスチックシンチレータ11、ライトガイド12、光電子増倍管13、プリアンプ14、クッション材15を内蔵固定し、電気的にシールドすると共に遮光する。
【0017】
試料容器2は、プラスチックシンチレーション検出器1の放射線入射窓を構成するプラスチックシンチレータ11、及びプラスチックシンチレータ11を接着したライトガイド12をバウンダリーとし、サンプルガスを内包して流す。なお、図中の実線矢印はサンプルガスの流れを示している。
【0018】
サンプラ3は、プラスチックシンチレーション検出器1と試料容器2を環境放射線から遮蔽して保持するものであり、測定部4は、プラスチックシンチレーション検出器1から出力される放射線検出信号を入力してサンプルガスに含まれる気体状放射性核種の放射能濃度を測定するものである。
【0019】
プラスチックシンチレーション検出器1を試料容器2に固定する箇所には、絶縁手段である例えばOリング5が設けられており、このOリング5によりプラスチックシンチレーション検出器1と試料容器2の間をシールすると共に電気的に絶縁している。また、プラスチックシンチレーション検出器1をサンプラ3に固定する箇所には、絶縁体6が設けられており、この絶縁体6によりプラスチックシンチレーション検出器1とサンプラ3の間を電気的に絶縁している。
【0020】
また、サンプラ3の外表面にはサンプラ3の温度と試料容器2に導入されるサンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱装置7が設けられている。この同一温度加熱装置7は、サンプラ3を加熱する第1のヒータ71、試料容器2にサンプルガスを導入する導入管72、導入管72の内部でサンプルガスを加熱する第2のヒータ73、サンプラ3の周囲温度を検出する第1の温度センサ74、サンプラ3の温度を検出する第2の温度センサ75、導入管72に入気されるサンプルガスの温度を検出する第3の温度センサ76、導入管72から排気されるサンプルガスの温度を測定する第4の温度センサ77、温度制御装置78、及び第1のヒータ71を内包する断熱材79から構成されている。
【0021】
実施の形態1に係る放射線モニタは上記のように構成されており、次に動作について説明する。
温度制御装置78は、第1〜第4の温度センサ74〜77により検出されるそれぞれの検出信号を入力することにより、サンプラ3の周囲温度T1と導入管72に入気するサンプルガスの温度T2を比較し、どちらか高い方の温度以上の同じ温度になるようにサンプラ3の周囲温度T1と導入管72に入気するサンプルガスの温度T2を制御することにより、サンプラ3の温度T3と導入管72から排気されるサンプルガスの温度T4が等しくなるようにする。例えば、サンプラ3の周囲温度T1が、導入管72に入気するサンプルガスの温度T2より低い場合は、サンプラ3の温度T3と導入管72から排気されるサンプルガスの温度T4を、導入管72に入気するサンプルガスの温度T2以上の同じ温度になるように制御する。
【0022】
図2は、プラスチックシンチレーション検出器1のゲイン温度係数の補償について示すもので、aはプラスチックシンチレータ11と光電子増倍管13のぞれぞれのゲイン温度係数を合成した検出器固有のゲイン温度係数、bはプリアンプ14のゲイン温度係数、cはプラスチックシンチレーション検出器1の出力の温度特性で、検出器固有のゲイン温度係数aをプリアンプ14のゲイン温度係数bで補償してプラスチックシンチレーション検出器1の出力の温度特性cが一定になるように動作する。
【0023】
プラスチックシンチレーション検出器1の検出器ケース16は、プリアンプ14の0V(図示せず)に接続されて電位を固定することにより電気的シールドとして機能し、更に、Oリング5で試料容器2から電気的に絶縁され、また、絶縁体6でサンプラ3から電気的に絶縁されて、同一温度加熱装置7のノイズがプリアンプ14の0Vに進入するのを防止している。
【0024】
上述のように、実施の形態1に係る放射線モニタは、プラスチックシンチレーション検出器1の温度を支配するサンプラ3の温度、及び試料容器2に導入されるサンプルガスの温度を、同一温度加熱装置7で同じ温度になるように加熱制御してプラスチックシンチレーション検出器1の温度分布を抑制するので、プラスチックシンチレーション検出器1に固有のゲイン温度特性をプリアンプ14で好適な条件で補償でき、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【0025】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る放射線モニタについて説明する。実施の形態2は、NaI(Tl)シンチレーション検出器でサンプルガスに含まれる粒子状放射性核種または放射性ヨウ素から放射されるγ線を検出し、同一温度加熱装置でサンプラの温度とサンプルガスの温度を加熱制御することにより、NaI(Tl)シンチレーション検出器の温度分布を抑制して、NaI(Tl)シンチレーション検出器に固有のゲイン温度係数に対し、その逆のゲイン温度係数をプリアンプに持たせて補償するようにしたものである。
【0026】
図3は、実施の形態2に係る放射線モニタの構成図である。図3において、NaI(Tl)シンチレーション検出器8は、NaI(Tl)シンチレータ81、光電子増倍管82、プリアンプ83、及び検出器ケース84から構成されており、サンプルガスに含まれる粒子状放射性核種または放射性ヨウ素を捕集する捕集装置9を備えている。なお、その他の構成については実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより、説明を省略する。
【0027】
捕集装置9に捕集された粒子状放射性核種または放射性ヨウ素から放射されるγ線をNaI(Tl)シンチレーション検出器8で検出し、同一温度加熱装置7でサンプラ3の温度と捕集装置9に導入されるサンプルガスの温度を、25℃以上の同じ温度になるように加熱制御する。
【0028】
図4は、NaI(Tl)シンチレーション検出器8のゲイン温度係数の補償について示すもので、dはNaI(Tl)シンチレータ81と光電子増倍管82のそれぞれのゲイン温度係数を合成した検出器固有のゲイン温度係数、eはプリアンプ83のゲイン温度係数、fはNaI(Tl)シンチレーション検出器8の出力の温度特性で、検出器固有のゲイン温度係数dをプリアンプ83のゲイン温度係数eで補償して25℃以上でNaI(Tl)シンチレーション検出器8の出力の温度特性fが一定になるように動作する。
【0029】
上述のように、実施の形態2に係る放射線モニタは、同一温度加熱装置7でサンプラ3の温度と捕集装置9に導入されるサンプルガスの温度を同じ温度になるように加熱制御してNaI(Tl)シンチレーション検出器8の温度分布を抑制したので、NaI(Tl)シンチレーション検出器8に固有のゲイン温度特性をプリアンプ83で好適な条件で補償でき、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【0030】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る放射線モニタについて説明する。実施の形態3はNaI(Tl)シンチレーション検出器で熱容量の大きいサンプル水に含まれる粒子状放射性核種から放射されるγ線を検出するものである。
【0031】
図5は、実施の形態3に係る放射線モニタの構成図である。図5において、NaI(Tl)シンチレーション検出器8は、NaI(Tl)シンチレータ81、光電子増倍管82、プリアンプ83、検出器ケース84、及び熱伝達遅延手段として機能する検出器断熱材85を備えている。
【0032】
試料容器2には、熱容量の大きいサンプル水が導入され、試料容器2には保護筒10が設けられている。この保護筒10はバウンダリーを構成してサンプル水に浸漬するように配置され、NaI(Tl)シンチレーション検出器8は保護筒10に収納される。
【0033】
NaI(Tl)シンチレーション検出器8の温度は、熱容量の大きいサンプル水の温度に追従して変化するので、実施の形態1あるいは実施の形態2で説明した同一温度加熱装置は設置されず、検出器断熱材85が、NaI(Tl)シンチレーション検出器8の全体を囲むように設置され、サンプル水からNaI(Tl)シンチレーション検出器8への熱伝達を遅らせるように構成されている。なお、その他の構成については、実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより、説明を省略する。
【0034】
上述のように、実施の形態3に係る放射線モニタは、検出器断熱材85を設置して熱容量の大きいサンプル水からNaI(Tl)シンチレーション検出器8への熱伝達を遅らせるようにしたので、NaI(Tl)シンチレータ81、光電子増倍管82、プリアンプ83の間に生じる過渡的な温度分布を大幅に抑制でき、NaI(Tl)シンチレーション検出器8に固有のゲイン温度特性を好適な条件で補償でき、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【0035】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4に係る放射線モニタについて説明する。実施の形態1または実施の形態2では、サンプラとサンプルガスを同−温度加熱装置で同じ温度になるように加熱抑制し、プラスチックシンチレーション検出器またはNaI(Tl)シンチレーション検出器の温度分布を抑制して、プラスチックシンチレーション検出器またはNaI(Tl)シンチレーション検出器に固有のゲイン温度係数に対し、その逆のゲイン温度係数をプリアンプに持たせて補償するように動作させる場合について説明したが、実施の形態4は、同一温度加熱装置の代わりに一定温度加熱装置を備え、サンプラの周囲温度を検出する温度センサ、導入管に入気されるサンプルガスの温度を検出する温度センサを省略し、プリアンプの温度補償機能をなくしたものである。
【0036】
図6は、実施の形態4に係る放射線モニタの構成図である。図6において、一定温度加熱装置20は、サンプラ3とサンプルガスを、一定温度になるように、例えば、周囲温度及びサンプルガス温度のどちらか高い方の仕様最大温度に加熱制御するものである。実施の形態4においては、一定温度加熱装置20を備えることにより、サンプラ3の周囲温度を検出する温度センサ、導入管72に入気されるサンプルガスの温度を検出する温度センサを省略し、プリアンプ14の温度補償機能をなくしている。なお、その他の構成については実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより、説明を省略する。
【0037】
上述のように、実施の形態4に係る放射線モニタは、一定温度加熱装置20を備えることにより、サンプラ3の周囲温度を検出する温度センサ、導入管72に入気されるサンプルガスの温度を検出する温度センサを省略でき、プリアンプ14の温度補償機能をなくすことができので、部品数を削減した上で、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【0038】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5に係る放射線モニタについて説明する。図7は、放射線モニタに用いられる測定部のブロック構成図である。図7において、測定部4は、NaI(Tl)シンチレーション検出器8からの信号パルスを増幅して出力するメインアンプ41、メインアンプ41の出カパルスを計数して工学値に変換して出力する測定回路42、メインアンプ41の出カパルスを入力し、NaI(Tl)シンチレーション検出器8のNaI(Tl)シンチレータ81(図5参照)の結晶(図示せず)及び光電子増倍管82(図5参照)のガラス(図示せず)に含まれる天然の放射性核種カリウム40(K−40)から放射される1.46MeVのγ線を指標にメインアンプ41のゲインを自動制御するゲイン自動制御回路43を備えている。このゲイン自動制御回路43は、天然の放射性核種カリウム40(K−40)から放射されるγ線1.46MeVの信号パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにメインアンプ41のゲインを自動で制御するものである。
【0039】
上述のように、実施の形態5に係る放射線モニタは、天然の放射性核種カリウム40(K−40)から放射されるγ線1.46MeVの信号パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにメインアンプ41のゲインを自動で制御するゲイン自動制御回路43を備えたので、NaI(Tl)シンチレーション検出器8の出力の温度依存性を抑制できると共に、長期的な経年変化も抑制した高い安定性を有する装置が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、この発明に係る放射線モニタは、原子力発電所、核燃料再処理施設、核燃料施設、粒子線利用施設、放射性同位元素使用施設などで利用でき、温度に対して高い安定性を有し、かつ信頼性の高い装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係る放射線モニタの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る放射線モニタのゲイン温度係数を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る放射線モニタの構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る放射線モニタのゲイン温度係数を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る放射線モニタの構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係る放射線モニタの構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係る放射線モニタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 プラスチックシンチレーション検出器
11 プラスチックシンチレータ
12 ライトガイド
13 光電子増倍管
14 プリアンプ
15 クッション材
16 検出器ケース
2 試料容器
21 保護筒
3 サンプラ
4 測定部
41 メインアンプ
42 測定回路
43 ゲイン自動制御回路
5 Oリング
6 絶縁体
7 同一温度加熱装置
71 第1のヒータ
72 導入管
73 第2のヒータ
74 第1の温度センサ
75 第2の温度センサ
76 第3の温度センサ
77 第4の温度センサ
78 温度制御器
79 断熱材
8 NaI(Tl)シンチレーション検出器
81 NaI(Tl)シンチレータ
82 光電子増倍管
83 プリアンプ
84 検出器ケース
85 検出器断熱材
9 捕集装置
10 保護筒
20 一定温度加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスに含まれる気体状放射性核種から放射される放射線を検出する放射線検出器と、上記放射線検出器の放射線入射窓をバウンダリーとし、上記サンプルガスを内包して流す試料容器と、上記放射線検出器と上記試料容器を環境放射線から遮蔽して保持するサンプラと、上記放射線検出器から出力される放射線検出信号を入力して上記サンプルガスに含まれる気体状放射性核種の放射能濃度を測定する測定部と、上記サンプラの温度と上記試料容器に導入される上記サンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段と、上記放射線検出器に設けられ、上記放射線検出器の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプと、を備えたことを特徴とする放射線モニタ。
【請求項2】
サンプルガスに含まれる粒子状放射性核種または放射性ヨウ素を捕集する捕集装置と、上記捕集装置に捕集された粒子状放射性核種または放射性ヨウ素から放射される放射線を検出する放射線検出器と、上記放射線検出器と上記捕集装置を環境放射線から遮蔽して保持するサンプラと、上記放射線検出器から出力される放射線検出信号を入力して上記サンプルガスに含まれる粒子状放射性核種または放射性ヨウ素の放射能濃度を測定する測定部と、上記サンプラの温度と上記捕集装置に導入される上記サンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段と、上記放射線検出器に設けられ、上記放射線検出器の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプと、を備えたことを特徴とする放射線モニタ。
【請求項3】
サンプル水に含まれる放射性核種から放射される放射線を検出する放射線検出器と、上記サンプル水を内包して流す試料容器と、上記試料容器に浸漬してバウンダリーを構成すると共に、上記放射線検出器を収納して保護する保護筒と、上記放射線検出器と上記試料容器を環境放射線から遮蔽して保持するサンプラと、上記放射線検出器から出力される放射線検出信号を入力してサンプル水に含まれる放射性核種の放射能濃度を測定する測定部と、上記サンプル水から上記放射線検出器への熱伝達を遅らせる熱伝達遅延手段と、上記放射線検出器に設けられ、上記放射線検出器の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプと、を備えたことを特徴とする放射線モニタ。
【請求項4】
上記サンプラの温度と上記サンプルガスの温度とを同じ温度になるように加熱する同一温度加熱手段と、上記放射線検出器に設けられ、上記放射線検出器の固有のゲイン温度特性を相殺する逆温度特性を有するプリアンプの代わりに、上記サンプラの温度及び上記サンプルガスの温度を一定温度に加熱する一定温度加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線モニタ。
【請求項5】
上記測定部は、上記放射線検出器を構成する材料に含まれる天然のカリウム40から放射される放射線を指標として放射線モニタの総合ゲインを制御し、上記放射線検出器が有する固有のゲイン温度特性を相殺することを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の放射線モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−180660(P2009−180660A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21205(P2008−21205)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】