説明

放射線撮像装置

【課題】より少ない材料で機械的強度のバランスを図ることにより装置全体の軽量化を実現すると共に、外部から伝わる熱に起因した放射線画像の画像ムラの発生を防止する。
【解決手段】放射線撮像装置(20A)において、筐体本体部(30)は、繊維強化プラスチックからなり、少なくとも天板(35)には、筐体本体部(30)の軸方向と交差する方向に沿って、繊維強化プラスチックを構成する繊維(90)が配置され、接続部材(122、126)は、放射線の入射方向から視て前記軸方向に沿って延在し、且つ、該軸方向に交差する放射線変換パネル(116)の側部に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルを筐体内に収容した放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルを筐体内に収容した放射線撮像装置においては、繊維強化プラスチック(FRP)を用いて筐体を構成することにより、該筐体の機械的強度を向上させるようにしている。例えば、特許文献1には、一方向に配列された炭素繊維の束と、該束に直交する方向に配列した他の炭素繊維の束とを編み込んだ炭素繊維群を含む炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いて筐体を構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−243564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筒状の筐体本体部と該筐体本体部の開口部を閉塞する蓋部材とで筐体が構成される場合、外部から前記筐体本体部に荷重がかかると、前記開口部が撓んで潰れるように前記筐体本体部が変形し、該筐体本体部の撓み方向(前記荷重を受けて前記筐体本体部が潰れる方向)の機械的強度が低下するおそれがある。
【0005】
特許文献1の技術では、直交する2方向の炭素繊維の束からなる炭素繊維群が筐体全体に均一に配置されることにより、撓み方向に対する機械的強度が向上する一方で、機械的強度が元々十分に確保された方向に対しても、必要以上に機械的強度を増加させることになる。このように、特許文献1の技術では、筐体本体部において、機械的強度が元々確保されている方向に対しても、必要以上に機械的強度を増加させるように炭素繊維群が不必要に配置されている。この結果、筐体を含めた放射線撮像装置全体の重量が増加することになる。
【0006】
また、筐体内には、放射線変換パネルに加え、放射線画像に応じた電気信号を処理する電子部品が搭載された回路基板、及び、放射線変換パネルと回路基板とを電気的に接続する接続部材も収容されている。
【0007】
ここで、筐体本体部の天板に被写体が接触した状態で、該被写体に放射線が照射された場合、前記被写体を透過した放射線は、前記天板の外表面(照射面)に到達し、該天板を透過した放射線が前記放射線変換パネルで放射線画像に変換される。この場合、前記被写体から前記天板を介して前記放射線変換パネルに熱が伝わると、該熱に起因して前記放射線画像に画像ムラが発生するおそれがある。
【0008】
そこで、前記画像ムラの発生を回避するために、前記筐体を介して外部に前記熱を逃す場合、該熱を逃す方向に前記接続部材、前記電子部品及び前記回路基板が配置されていれば、前記放射線変換パネルから前記接続部材を介して前記回路基板に前記電気信号を出力する際、又は、前記電子部品において前記電気信号を処理する際に、逃した前記熱に起因して前記放射線画像に画像ムラが発生することが懸念される。
【0009】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、より少ない材料で機械的強度のバランスを図ることにより装置全体の軽量化を実現すると共に、外部から伝わる熱に起因した放射線画像の画像ムラの発生を防止することができる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮像装置は、
放射線を放射線画像に応じた電気信号に変換する放射線変換パネルと、前記放射線変換パネルからの前記電気信号を処理する電子部品が搭載された回路基板と、前記放射線変換パネルと前記回路基板とを電気的に接続する接続部材と、前記放射線変換パネル、前記電子部品、前記回路基板及び前記接続部材を収容し且つ前記放射線を透過可能な筐体とを備え、
前記筐体は、前記放射線変換パネル、前記電子部品、前記回路基板及び前記接続部材を収容可能な中空部と該中空部に連通する開口部とが形成された筒状の筐体本体部と、該開口部を閉塞する蓋部材とから構成され、
前記筐体本体部は、繊維強化プラスチックからなり、
前記筐体本体部のうち少なくとも前記放射線が照射される照射面を有する天板には、前記筐体本体部の軸方向と交差する方向に沿って前記繊維強化プラスチックを構成する繊維が配置され、
前記接続部材は、前記放射線の入射方向から視て前記軸方向に沿って延在し且つ該軸方向に交差する前記放射線変換パネルの側部に接続されていることを特徴としている。
【0011】
前記放射線撮像装置においては、被写体が前記天板に接触した状態で該被写体に前記放射線が照射されることにより、前記被写体に対する放射線撮影を行うことができる。この場合、前記被写体から前記天板に荷重がかかることにより、前記中空部及び前記開口部が撓んで潰れるように前記筐体本体部が変形する。
【0012】
そこで、本発明では、少なくとも前記天板内で前記軸方向と交差する方向に沿って前記繊維を配置することにより、該筐体本体部の撓み方向(前記荷重を受けて前記筐体本体部が潰れる方向)の機械的強度を増加させることができる。この結果、特許文献1の技術と比較して、より少ない前記繊維の量で前記筐体全体の機械的強度のバランスを図って、装置全体の軽量化を実現することができる。
【0013】
また、可搬型の放射線撮像装置では、持ち運びの際に、誤って落下させたり、あるいは、誤って外部から衝撃を加えると、該放射線撮像装置の少なくとも一部が破損する可能性があるため、耐落下性や耐衝撃性も考慮する必要がある。
【0014】
これに対して、本発明では、上述のように、少なくとも前記天板内で前記軸方向と交差する方向に沿って前記繊維を配置することで、前記筐体全体の機械的強度のバランスを図っているため、放射線撮像装置を可搬型の装置として構成した場合での耐落下性及び耐衝撃性も向上させることができる。
【0015】
また、特許文献1の技術では、直交する2方向に炭素繊維の束を均一に配置することにより筐体が構成され、これらの炭素繊維の束を伝って被写体からの熱が前記2方向に沿って逃げるので、前記筐体内において、接続部材、電子部品及び回路基板の配置箇所を確保することは容易ではない。
【0016】
これに対して、本発明では、前記繊維の配置方向(前記交差する方向)と、前記接続部材の配置方向(前記軸方向)とを互いに異なる方向に設定すると共に、前記放射線変換パネルにおける前記軸方向に交差する側部に前記接続部材を接続している。これにより、前記被写体から前記天板に伝わる熱は、前記繊維の配置方向に沿って逃げる一方で、前記放射線変換パネルで前記放射線から変換された前記電気信号は、前記軸方向に沿って前記接続部材を介して前記回路基板に出力される。
【0017】
この結果、前記熱に起因した前記放射線変換パネルにおける画像ムラの発生を防止することができる。また、前記熱を逃す方向(前記繊維の配置方向である前記交差する方向)に前記接続部材が配置されていないため、逃げた前記熱が前記接続部材、前記電子部品及び前記回路基板に伝わることを回避することができる。従って、前記放射線変換パネルから前記接続部材を介して前記回路基板に前記電気信号を出力する際、又は、前記電子部品において前記電気信号を処理する際に、逃した前記熱に起因して前記放射線画像に画像ムラが発生することも防止することができる。
【0018】
このように、本発明によれば、より少ない材料で機械的強度のバランスを図ることにより前記放射線撮像装置全体の軽量化を実現すると共に、外部から伝わる熱に起因した前記放射線画像の画像ムラの発生を防止することができる。
【0019】
ここで、前記繊維強化プラスチックを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とし、前記軸方向と交差する方向に沿って炭素繊維を配置すれば、従来より一般的に用いられてきたCFRPからなる筐体に本発明を容易に適用することが可能となる。
【0020】
また、前記筐体本体部のうち少なくとも前記天板については、前記炭素繊維を含むプリプレグを前記天板の厚み方向に複数枚積層して構成してもよい。これにより、前記軸方向と交差する方向に前記炭素繊維を容易に配置することが可能となる。
【0021】
この場合、少なくとも最外層のプリプレグに含まれる炭素繊維を、前記軸方向と略直交する方向に配置すれば、前記開口部近傍での前記炭素繊維のささくれの発生を回避することができる。
【0022】
また、上記の各発明において、前記中空部における前記筐体本体部の対向する2つの側板の近傍に、少なくとも前記放射線変換パネル又は前記回路基板を前記開口部を介して前記中空部に出し入れ可能とする案内部材をそれぞれ配置してもよい。これにより、前記放射線変換パネル、前記電子部品又は前記回路基板の交換を容易に行うことができる。
【0023】
また、前記各案内部材が前記筐体本体部の2つの側板にそれぞれ接触し且つ前記軸方向に沿って延在していれば、前記筐体の厚みを薄くすることにより該筐体全体の機械的強度が低下する場合でも、耐落下性や耐衝撃性を補償することができる。
【0024】
また、前記筐体内には、前記天板側の一面に前記放射線変換パネルが配置され且つ前記筐体本体部の底板側の他面に前記回路基板及び前記放射線撮像装置を駆動するための電源部が配置される基台をさらに収容してもよい。この場合、前記各案内部材に前記軸方向に沿って溝をそれぞれ形成し、前記基台の両側部を前記各溝にそれぞれ差し込めば、前記軸方向に沿って前記基台が摺動可能となる。これにより、前記基台、前記放射線変換パネル、前記電子部品及び前記回路基板をアッシー(ASSY)として一体的に構成し、該アッシーを前記開口部を介して前記中空部に容易に出し入れすることが可能となる。
【0025】
なお、前記各案内部材が導電性部材であれば、熱伝導率も良好となり、前記放射線変換パネル、前記電子部品及び前記回路基板で発生した熱を前記各案内部材を介して前記筐体本体部に逃すことも可能となるので、前記放射線画像の画像ムラの発生を一層抑制することが可能となる。
【0026】
また、前記各案内部材の少なくとも一部が衝撃を吸収する緩衝部材として形成されていれば、耐衝撃性を一層向上させることができる。具体的には、前記各案内部材において、前記溝を含む部分を熱伝導性樹脂(例えば、フィラーを含んだ樹脂)又は金属で構成し、それ以外の部分を熱伝導性ゴムで構成すれば、前記溝に沿った前記基台の摺動性能と、前記基台から前記各案内部材への伝熱機能とを損なうことなく、耐衝撃性を向上させることができる。この場合、前記溝を含む部分が熱伝導性樹脂で構成されていれば、前記各案内部材が全体的に緩衝部材として機能し、一方で、前記溝を含む部分が金属で構成されていれば、前記熱伝導性ゴムの部分が緩衝部材として機能する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より少ない材料で機械的強度のバランスを図ることにより放射線撮像装置全体の軽量化を実現すると共に、外部から伝わる熱に起因した放射線画像の画像ムラの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る電子カセッテが適用される放射線撮像システムの構成図である。
【図2】図1の電子カセッテの斜視図である。
【図3】図2の筐体の分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7Aは、外部から荷重がかからない筐体本体部の状態を模式的に示す説明図であり、図7Bは、外部から荷重がかかった筐体本体部の状態を模式的に示す説明図である。
【図8】天板内での炭素繊維の配置、被写体から伝わる熱が逃げる方向、並びに、制御信号及び電荷信号の供給方向を図示した筐体の模式的平面図である。
【図9】複数枚のプリプレグを積層して構成される天板を模式的に示す説明図である。
【図10】図1の電子カセッテのブロック図である。
【図11】図1の電子カセッテを用いた被写体の撮像を説明するためのフローチャートである。
【図12】第2実施形態に係る電子カセッテの断面図である。
【図13】図12の電子カセッテにおいて、天板内での炭素繊維の配置、被写体から伝わる熱が逃げる方向、並びに、制御信号及び電荷信号の供給方向を図示した筐体の模式的平面図である。
【図14】図12の電子カセッテの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る放射線撮像装置の好適な実施形態について、図1〜図14を参照しながら以下詳細に説明する。
【0030】
[第1実施形態の構成]
先ず、第1実施形態に係る放射線撮像装置としての電子カセッテ20Aについて、図1〜図11を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aが適用される放射線撮像システム10の構成図である。
【0032】
放射線撮像システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線源18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ20Aと、放射線源18及び電子カセッテ20Aを制御するコンソール22と、放射線画像を表示する表示装置24とを備える。
【0033】
コンソール22と電子カセッテ20Aと表示装置24との間では、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.60.a/b/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0034】
コンソール22には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)26が接続され、RIS26には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)28が接続されている。
【0035】
図2は、図1に示す電子カセッテ20Aの斜視図である。
【0036】
電子カセッテ20Aは、撮影台12と被写体14との間に配置される略矩形状(六面体)の筐体29を有する可搬型の放射線撮像装置である。
【0037】
筐体29は、中空の角筒状のハウジング本体(筐体本体部)30と、ハウジング本体30の開口部分を両側から閉塞する2つの蓋部材32、34とを有するモノコック構造の筐体であり、外部からの応力(例えば、筐体29の落下、被写体14からの荷重、外部からの衝撃)を筐体29全体として受ける構造となっている。また、筐体29(のハウジング本体30及び蓋部材32、34)は、放射線16を透過可能な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる。
【0038】
被写体14が横臥する筐体29の上面は、放射線16が照射される照射面36とされている。照射面36には、被写体14の撮像領域及び撮像位置を示すガイド線38が形成され、ガイド線38の外枠は、放射線16の最大照射範囲(照射野)を示す撮像可能領域40とされている。また、ガイド線38の中心位置(十字状に交差する2本のガイド線38の交点)は、該撮像可能領域40の中心位置である。
【0039】
図2及び図3に示すように、ハウジング本体30を構成する4つの側面42a〜42dのうち、側面42aと側面42bとの間にx方向に沿って中空部41が形成されることにより、側面42aには、中空部41に連通する開口部44aが形成され、側面42bには、中空部41に連通する開口部44bが形成される。すなわち、照射面36を有する天板35と、底面47を有する底板53と、側面42aを有する側板49と、側面42dを有する側板51とによって、角筒状のハウジング本体30が構成されて、その内部にx方向に延在する中空部41が形成される。
【0040】
そして、開口部44aを蓋部材32で閉塞すると共に、開口部44bを蓋部材34で閉塞することにより、筐体29が構成される。従って、筐体29は、照射面36と、蓋部材32の側面52と、蓋部材34の側面81と、ハウジング本体30の2つの側面42c、42dを含む2つの側面43、45と、ハウジング本体30の底面47を含む底面46とを有する六面体として構成される。
【0041】
蓋部材32のx2方向側の側面52には、電子カセッテ20Aを起動するための電源スイッチ54、各種情報を表示するディスプレイ56、外部から充電を行なうためのACアダプタの入力端子58、外部機器との間で情報の送受信が可能なインターフェース手段としてのUSB(Universal Serial Bus)端子60、PCカード等のメモリカード62を装填するためのカードスロット64、及び、電子カセッテ20Aの各種の状況等を表示するLED等のインジケータ66が配設されている。
【0042】
また、電子カセッテ20Aでは、インジケータ66とディスプレイ56とが配設されているが、インジケータ66の表示機能をディスプレイ56が代行することで、インジケータ66を不要にすることができる。また、ディスプレイ56での一部の表示機能をインジケータ66が代行することで、ディスプレイ56を不要にすることもできる。
【0043】
蓋部材32は、側面52を備え且つ電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64及びインジケータ66が配設された蓋本体68と、該蓋本体68のx1方向側に形成され、開口部44aに嵌合可能な挿入部70と、挿入部70のy方向に沿った両端から開口部44aに向かって突出する係合片72とから構成されている。また、2つの係合片72の外側面(図3の左側の係合片72ではy1方向の側面、及び、右側の係合片72ではy2方向の側面)には係合凸部74が形成され、ハウジング本体30内壁の開口部44a側には、係合凸部74に係合可能な係合凹部76が形成されている。
【0044】
従って、蓋部材32をx1方向に進行させて、開口部44aと挿入部70とを嵌合させ、且つ、ハウジング本体30の中空部41に進入した2つの係合片72の係合凸部74と係合凹部76とをそれぞれ係合させると、開口部44aが蓋部材32により閉塞され、蓋部材32とハウジング本体30とを一体化させることができる。
【0045】
一方、蓋部材34は、電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64及びインジケータ66が配設されていない点を除いては、前述の蓋部材32と略同じ構成である。すなわち、蓋部材34は、蓋本体68と略同一形状であり且つ側面52と対向するx1方向の側面81を有する蓋本体80と、該蓋本体80のx2方向側に形成され、開口部44bに嵌合可能な挿入部82と、挿入部82のy方向に沿った両端から開口部44bに向かって突出する係合片84とから構成されている。また、2つの係合片84の外側面(図3の左側の係合片84ではy1方向の側面、及び、右側の係合片84ではy2方向の側面)にも係合凸部86が形成され、ハウジング本体30内壁の開口部44b側には、係合凸部86に係合可能な係合凹部88が形成されている。
【0046】
従って、蓋部材32の場合と同様に、蓋部材34をx2方向に進行させて、開口部44bと挿入部82とを嵌合させ、且つ、ハウジング本体30の中空部41に進入した2つの係合片84の係合凸部86と係合凹部88とをそれぞれ係合させると、開口部44bが蓋部材34により閉塞され、蓋部材34とハウジング本体30とを一体化させることができる。
【0047】
図4〜図6は、筐体29内を図示した電子カセッテ20Aの断面図である。
【0048】
ハウジング本体30の開口部44a、44bを2つの蓋部材32、34でそれぞれ閉塞することにより、筐体29内には、中空部41である室110が形成される。
【0049】
室110の中央部には基台112が配置され、該基台112の表面114(照射面36を有する天板35側の面)には、ハウジング本体30の天板35側を透過して室110に入射した放射線16を放射線画像に変換する放射線変換パネル116が配置されている。放射線変換パネル116は、撮像可能領域40(図2及び図3参照)に対応する程度の大きさであることが望ましい。
【0050】
放射線変換パネル116は、放射線16を可視光等の他の波長の電磁波に変換するシンチレータ118と、該シンチレータ118により変換された電磁波を電気信号に変換する光電変換層120とから構成された、いわゆる間接変換型の放射線検出器である。また、図5及び図6に示すように、放射線変換パネル116は、放射線16の照射方向に沿って、天板35に対して、光電変換層120とシンチレータ118とが順に配置された表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の放射線検出器である。なお、シンチレータ118としては、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)又はガドリニウム・オキサイド・サルファ(GdS:Tb(GOS))から構成されるシンチレータを用いればよい。
【0051】
放射線変換パネル116(の光電変換層120)のx2方向の側面には、光電変換層120を駆動するための制御信号を光電変換層120に供給するための複数のフレキシブル基板(接続部材)122が所定間隔毎に配置され、各フレキシブル基板122には、前記制御信号を生成する駆動用IC124がそれぞれ配置されている。一方、放射線変換パネル116(の光電変換層120)のx1方向の側面には、制御信号の供給によって駆動された光電変換層120から放射線画像に応じた電気信号を読み出すための複数のフレキシブル基板(接続部材)126が所定間隔毎に配置され、各フレキシブル基板126には、前記電気信号を読み出して所定の信号処理を行う読出用IC128がそれぞれ配置されている。
【0052】
基台112の裏面129(筐体29の底面46側の面)には、電源部94と、複数の回路基板130とが取り付けられ、各回路基板130には電子部品132が配設されている。図5に示すように、2つの回路基板130には、フレキシブル基板122、126が接続されている。なお、基台112は、図示しない支持部材によって室110の中央部で支持されている。また、放射線16の照射による電源部94と回路基板130及び電子部品132との劣化を防止するために、基台112は、放射線16を遮蔽可能な鉛板で構成されてもよいし、あるいは、鉛を含むように構成されてもよい。
【0053】
ここで、ハウジング本体30の構成、特に、天板35の構成について、図7A〜図9を参照しながら説明する。
【0054】
前述のように、筐体29は、放射線16を透過可能なCFRPからなる。この場合、天板35には、図7A〜図8に示すように、角筒状のハウジング本体30の軸方向(x方向)に直交するy方向に沿って延在した炭素繊維90が、天板35の厚み方向(z方向)に沿って積層されている。また、該炭素繊維90は、x方向に沿って所定間隔で配置されていることが望ましい。
【0055】
天板35はハウジング本体30の一部であるため、炭素繊維90は、実際には、室110を囲繞するように、天板35、側板49、51及び底板53内に配置されていることが望ましい。すなわち、図7A及び図7Bは、天板35内に炭素繊維90が直線状に配置される場合についてのみ図示したものであり、炭素繊維90は、実際には、室110を取り囲むように配置されている。また、ハウジング本体30を構成するCFRPは、放射線16を透過可能な炭素繊維90の周囲を、放射線16を透過可能なエポキシ樹脂等のプラスチックで固めることにより形成される。
【0056】
ここで、ハウジング本体30内での炭素繊維90の配置は、下記のようにしてもよい。
【0057】
例えば、図9に示すように、少なくとも天板35については、炭素繊維90を含むプリプレグ35a〜35dを天板35の厚み方向(z方向)に沿って積み重ね、これらのプリプレグ35a〜35dを加圧又は加熱して一体化することにより、y方向に延在する炭素繊維90が配置された天板35を構成すればよい。
【0058】
なお、各プリプレグ35a〜35dは、炭素繊維90の周囲をエポキシ樹脂等のプラスチック材料で固めることにより形成されることは勿論であり、図9では、一例として、4枚のプリプレグ35a〜35dを積層して天板35を構成した場合を図示している。
【0059】
また、ハウジング本体30全体をプリプレグで構成する場合、複数枚のプリプレグ35a〜35dをリング状に巻き回した後に、これらのプリプレグ35a〜35dを加圧又は加熱して一体化することによりハウジング本体30を構成することができる。
【0060】
そして、第1実施形態では、図7Aに示すように、天板35内の炭素繊維90がy方向に沿って延在しているため、放射線撮影の際、被写体14が天板35(の照射面36)に接触して、該被写体14から天板35に荷重がかかれば、図7Bに示すように、ハウジング本体30は、中空部41及び開口部44a、44bが撓んで潰れるように変形する。
【0061】
この場合、天板35内でハウジング本体30の軸方向であるx方向に直交するy方向に沿って炭素繊維90が配置されているので、ハウジング本体30の撓み方向(荷重を受けてハウジング本体30が潰れるz1方向)に対する機械的強度が増加し、この結果、筐体29全体の機械的強度を増加させることができる。
【0062】
また、被写体14が天板35に接触することにより該被写体14の熱が天板35に伝わるが、前記熱は、炭素繊維90を伝って図8のH1及びH2に示す伝熱方向に逃げて外部に放熱される。そのため、放射線変換パネル116への前記熱の伝達を回避することができる。
【0063】
さらに、図8に示すように、制御信号を光電変換層120に供給する各フレキシブル基板122は、炭素繊維90の延在方向(y方向)に直交するx方向に沿って延在することにより光電変換層120におけるx2方向の側部に接続され、光電変換層120から電気信号を読み出す各フレキシブル基板126は、x方向に沿って延在することにより光電変換層120におけるx1方向の側部に接続される。
【0064】
従って、制御信号の供給方向Sg及び電気信号の読出方向Soと、伝熱方向H1、H2とは、互いに異なる方向となる。つまり、電子カセッテ20Aでは、伝熱方向H1、H2に沿って各フレキシブル基板122、126が配置されないような構成となっているため、前記熱が各フレキシブル基板122、126を介して駆動用IC124及び読出用IC128や、回路基板130、電子部品132及び電源部94に伝達されることを回避することができる。
【0065】
また、本実施形態において、電子カセッテ20Aでは、被写体14からの熱が、放射線変換パネル116や、フレキシブル基板122、126、駆動用IC124、読出用IC128、回路基板130、電子部品132及び電源部94に伝わらないようにすればよいので、天板35を下記のように構成してもよい。
【0066】
(1)天板35を構成するプリプレグ(プリプレグ35a〜35d)の枚数を、底板53及び側板49、51に積層されるプリプレグの枚数よりも多くする。
【0067】
(2)天板35を構成する複数枚のプリプレグのうち、少なくとも、最外層のプリプレグ(プリプレグ35a)については、炭素繊維90の配置方向をy方向とする。
【0068】
図10は、電子カセッテ20Aのブロック構成図である。
【0069】
光電変換層120は、放射線16(図1、図2、図5及び図6参照)を電荷に変換して蓄積可能なpin型のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子140と、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)142とを有する。なお、図10では、光電変換素子140がpin型のフォトダイオードである場合を図示している。
【0070】
この場合、光電変換層120では、ガラス又は樹脂からなる基板の一面に複数の信号線144とゲート線146とを互いに交差させるように配設し、各ゲート線146と各信号線144とにより区画された小領域に光電変換素子140とTFT142とをそれぞれ設けることで、前記基板に複数の光電変換素子140及び複数のTFT142を二次元マトリクス状に配列させている。また、1つの光電変換素子140には1本のバイアス線148が接続され、各バイアス線148は、1本の結線150を介してバイアス電源172に接続されている。
【0071】
ここで、光電変換素子140のアノード電極は、バイアス線148に接続され、カソード電極は、TFT142のソース電極Sに接続されている。一方、TFT142のゲート電極Gは、ゲート線146を介してゲート駆動回路152に接続され、ドレイン電極Dは、信号線144を介して信号読出回路154に接続されている。この場合、ゲート駆動回路152は、複数の駆動用IC124に対応する放射線変換パネル116を駆動するための駆動回路部であり、一方で、信号読出回路154は、複数の読出用IC128に対応する放射線画像に応じた電気信号を読み出す読出回路部である。
【0072】
バイアス電源172は、結線150及び各バイアス線148を介して各光電変換素子140に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)を印加する。なお、図10では、pin型の光電変換素子140のp層側にアノード電極を介してバイアス線148が接続されているので、バイアス電源172からは、光電変換素子140のアノード電極に結線150及びバイアス線148を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。なお、光電変換素子140のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子140の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線148を接続する場合には、バイアス電源172からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図10における光電変換素子140のバイアス電源172に対する接続の向きが逆向きになる。
【0073】
ゲート駆動回路152からゲート線146を介してTFT142のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧(制御信号)が印加されると、TFT142のゲートが開き、光電変換素子140に蓄積された電荷、すなわち、電気信号(放射線画像信号)が、TFT142のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線144に読み出される。
【0074】
信号読出回路154では、各信号線144に対して、増幅器160、サンプルホールド回路162、マルチプレクサ164及びAD変換器166が順に接続されている。従って、各信号線144を介して読み出された電気信号は、チャージアンプからなる増幅器160によって増幅され、サンプルホールド回路162によってサンプリングされた後、マルチプレクサ164を介してAD変換器166に順次供給され、デジタル信号(デジタル値)に変換される。AD変換器166は、デジタル値に変換された各光電変換素子140の電気信号を後述するカセッテ制御部174に順次出力する。
【0075】
また、電子カセッテ20Aは、装置全体を制御するための制御部170を有する。
【0076】
制御部170は、前述した電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64、インジケータ66、電源部94及びバイアス電源172に加え、放射線変換パネル116、ゲート駆動回路152及び信号読出回路154等を制御するカセッテ制御部174と、コンソール22との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部176とを有する。
【0077】
電源部94は、電源回路178と電源180とを有する。電源180は、バッテリ又はキャパシタ(例えば、電気二重層キャパシタ)等の蓄電手段である。また、電源回路178は、電源180の電圧を所望の電圧に変換して電子カセッテ20A内の各部に供給可能なDC/DCコンバータ等の電力変換回路である。
【0078】
カセッテ制御部174は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、図示しないCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。
【0079】
具体的に、カセッテ制御部174は、画像メモリ182及び記憶部186を有する。画像メモリ182は、放射線変換パネル116から信号読出回路154を介して取得した放射線画像を記憶する。記憶部186は、電子カセッテ20Aを特定するためのカセッテID情報を記憶する。
【0080】
なお、制御部170中、バイアス電源172、カセッテ制御部174及び通信部176は、前述した回路基板130に搭載される電子部品132によって実現される。
【0081】
[第1実施形態の動作]
次に、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aを含む放射線撮像システム10の動作について、図11のフローチャートに従って説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、図1〜図10も参照しながら説明する。
【0082】
先ず、ステップS1において、ユーザは、病院内の放射線科等の所定の保管場所から撮影台12(図1参照)にまで電子カセッテ20Aを運搬する。この場合、電子カセッテ20Aは、電源部94(図5、図6及び図10参照)がカセッテ制御部174にのみ電力供給を行って、該カセッテ制御部174のみが動作しているスリープ状態である。
【0083】
次に、ユーザは、照射面36を上方に向けた状態で電子カセッテ20Aを撮影台12に配置した後に、電源スイッチ54を投入する。これにより、先ず、カセッテ制御部174は、該カセッテ制御部174に加え、ディスプレイ56、インジケータ66及び通信部176にも電力供給を行うように電源部94を制御する。この結果、ディスプレイ56は、電子カセッテ20Aの起動を画面表示する。また、インジケータ66は、LED等によって電子カセッテ20Aの起動を示す発光を行う。ユーザは、ディスプレイ56の画面表示又はインジケータ66の発光を視認することにより、電子カセッテ20Aが起動したことを把握することができる。さらに、通信部176は、コンソール22との間での無線による信号の送受信が可能となる。
【0084】
次に、ユーザは、コンソール22を操作することにより、撮像対象である被写体14に関わる被写体情報等の撮像条件(例えば、放射線源18の管電圧や管電流、放射線16の曝射時間)を含めた撮影オーダを登録する。なお、撮像枚数や撮像部位や撮像方法が予め決まっている場合に、ユーザは、これらの条件も撮影オーダに含めて登録しておく。前述のように、コンソール22と通信部176との間は、無線による信号の送受信が可能であるため、カセッテ制御部174は、通信部176を介して無線通信によりコンソール22に撮影オーダの送信を要求し、コンソール22は、電子カセッテ20Aからの送信要求に応じて、前記撮影オーダを無線通信により電子カセッテ20Aに送信する。通信部176で受信された前記撮影オーダは、記憶部186に記憶される。
【0085】
次のステップS2において、ユーザ及び電子カセッテ20Aは、撮影準備を行う。
【0086】
この場合、カセッテ制御部174は、ディスプレイ56、インジケータ66、カセッテ制御部174及び通信部176以外の電子カセッテ20A内の各部にも電力供給を行うように、電源部94を制御する。これにより、電源部94からの電力供給を受けたバイアス電源172は、逆バイアス電圧を各光電変換素子140に印加し、該各光電変換素子140は、電荷蓄積が可能な状態に至る。また、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、全てのTFT142をオフ状態とする。
【0087】
一方、ユーザは、放射線源18と放射線変換パネル116との間の距離をSID(線源受像画間距離)に調整すると共に、照射面36に被写体14を配置させて、該被写体14の撮像部位が撮像可能領域40に入り、且つ、該撮像部位の中心位置が撮像可能領域40の中心位置と略一致するように、該被写体14のポジショニングを行う。
【0088】
この場合、電子カセッテ20Aの天板35に対して被写体14が上から乗りかかる(横臥する)ことになるので、図7Bのように、被写体14から天板35にz1方向に向かう荷重がかかり、ハウジング本体30は、中空部41及び開口部44a、44bが撓んで潰れるように変形する。しかしながら、ハウジング本体30のうち、荷重によって変形する少なくとも天板35には、y方向に沿って炭素繊維90が配置されているので、荷重に対するハウジング本体30の機械的強度を大きくすることができる。
【0089】
また、被写体14から天板35に伝わる熱は、炭素繊維90に沿って図8の伝熱方向H1、H2に逃げ、外部に放熱される。従って、放射線変換パネル116や、光電変換層120のx1方向及びx2方向の側部にそれぞれ接続されたフレキシブル基板122、126に、前記熱が伝わることを回避することができる。
【0090】
このようにして撮影準備が完了した後のステップS3において、ユーザがコンソール22又は放射線源18に備わる図示しない曝射スイッチを投入する。コンソール22に曝射スイッチが備わっている場合には、曝射スイッチの投入後、コンソール22から無線通信によって撮像条件が放射線源18に送信される。また、放射線源18に曝射スイッチが備わっている場合には、曝射スイッチの投入後、放射線源18から無線通信によりコンソール22に対して撮像条件の送信が要求され、該コンソール22は、放射線源18からの送信要求に応じて、前記撮像条件を無線通信により放射線源18に送信する。
【0091】
放射線源18は、撮像条件を受信すると、該撮像条件に従って、所定の線量からなる放射線16を所定の曝射時間だけ被写体14に照射する。放射線16は、被写体14を透過してハウジング本体30内の放射線変換パネル116に至る。この場合、シンチレータ118は、放射線16の強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層120を構成する各光電変換素子140は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する(ステップS4)。
【0092】
次のステップS5において、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、ゲート駆動回路152から1本のゲート線146に信号読み出し用の電圧(制御信号)を印加させる。これにより、該ゲート線146にゲート電極Gが接続されている全てのTFT142のゲートが開き、これらのTFT142が接続されている各光電変換素子140に蓄積された電荷(図10のpin型の光電変換素子140では電子)が、電気信号として各信号線144にそれぞれ読み出される。各増幅器160は、読み出された電気信号を増幅し、各サンプルホールド回路162は、増幅後の電気信号をサンプリングし、マルチプレクサ164を介してAD変換器166に順次供給する。AD変換器166は、順次供給された電気信号に対するAD変換を行い、デジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された電気信号に応じた放射線画像は、カセッテ制御部174の画像メモリ182に一旦記憶される(ステップS6)。
【0093】
このようにして、1本のゲート線146に接続された各光電変換素子140に対する電気信号(に応じた放射線画像)の読み出しの完了後、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、信号読み出し用の電圧を印加するゲート線146を順次切り替え、切り替えたゲート線146に接続された各光電変換素子140に対する電気信号の読み出しを順次行う。従って、電子カセッテ20Aでは、全てのゲート線146に接続された各光電変換素子140からの放射線画像の読み出しが完了するまで、ステップS5及びS6の処理を繰り返し行う。
【0094】
このようにして、全ての光電変換素子140からの放射線画像の読み出しが完了し、被写体14の放射線画像が画像メモリ182に記憶された後のステップS7において、カセッテ制御部174は、画像メモリ182に記憶された放射線画像をディスプレイ56に表示させると共に、当該放射線画像と、記憶部186に記憶されたカセッテID情報とを共に通信部176を介して無線通信によりコンソール22に送信する。コンソール22は、受信した放射線画像に対して所定の画像処理を行い、画像処理後の放射線画像を無線通信により表示装置24に送信する。表示装置24は、受信した放射線画像を表示する。従って、ユーザは、ディスプレイ56に表示された放射線画像、又は、表示装置24に表示された放射線画像を視認することにより、被写体14に対して撮影オーダに応じた適切な撮像が行われたか否かを容易に判断することができる。
【0095】
そして、ステップS8において、被写体14に対する撮像が完了した場合(ステップS8:YES)、ユーザは、被写体14を解放して撮像を終了させ(ステップS9)、次に、電源スイッチ54を押して、電子カセッテ20Aをスリープ状態に移行させる。その後、ユーザは、電子カセッテ20Aを所定の保管場所まで運搬する(ステップS10)。
【0096】
一方、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合であって、全ての撮像が完了していない場合には(ステップS8:NO)、ステップS2又はステップS3に戻り、次の撮像、又は、次の撮像のための撮影準備が行われる。
【0097】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aによれば、被写体14が天板35に接触した状態で該被写体14に放射線16が照射される場合(被写体14に対する放射線撮影が行われる場合)、被写体14から天板35に荷重がかかることにより、中空部41及び開口部44a、44bが撓んで潰れるようにハウジング本体30が変形する。
【0098】
そこで、第1実施形態では、荷重がかかる少なくとも天板35内において、ハウジング本体30の軸方向であるx方向と直交するy方向に沿って炭素繊維90を配置することにより、ハウジング本体30の撓み方向であるz1方向の機械的強度を増加させることができる。この結果、特許文献1の技術と比較して、より少ない炭素繊維90の量でハウジング本体30を含めた筐体29全体の機械的強度のバランスを図って、装置全体の軽量化を実現することができる。
【0099】
また、可搬型の電子カセッテ(放射線撮像装置)では、持ち運びの際に、誤って落下させたり、あるいは、誤って外部から衝撃を加えると、該電子カセッテの少なくとも一部が破損する可能性があるため、耐落下性や耐衝撃性も考慮する必要がある。
【0100】
これに対して、第1実施形態では、上述のように、少なくとも天板35内でx方向と直交するy方向に沿って炭素繊維90を配置することで、ハウジング本体30を含めた筐体29全体の機械的強度のバランスを図っているため、電子カセッテ20Aを可搬型の装置として構成した場合での耐落下性及び耐衝撃性も向上させることができる。
【0101】
また、特許文献1の技術では、直交する2方向に炭素繊維の束を均一に配置することにより筐体が構成され、これらの炭素繊維の束を伝って被写体からの熱が前記2方向に沿って逃げるので、前記筐体内において、接続部材、電子部品及び回路基板の配置箇所を確保することは容易ではない。
【0102】
これに対して、第1実施形態では、炭素繊維90の配置方向であるy方向と、フレキシブル基板122、126の配置方向であるx方向とが互いに異なる方向であると共に、放射線変換パネル116の光電変換層120におけるx1方向及びx2方向の各側部に各フレキシブル基板122、126を接続している。これにより、被写体14から天板35に伝わる熱は、伝熱方向H1、H2(炭素繊維90の配置方向)に沿って逃げる一方で、制御信号は、x方向に沿って配置されたフレキシブル基板122を介して放射線変換パネル116に供給されると共に、放射線変換パネル116で放射線16から変換された電気信号は、x1方向に沿って配置されたフレキシブル基板126を介して回路基板130に出力される。
【0103】
この結果、前記熱に起因した放射線変換パネル116における画像ムラの発生を防止することができる。また、伝熱方向H1、H2にフレキシブル基板122、126が配置されていないため、逃げた熱がフレキシブル基板122、126、駆動用IC124、読出用IC128、回路基板130、電子部品132及び電源部94に伝わることを回避することができる。従って、放射線変換パネル116からフレキシブル基板126を介して回路基板130に電気信号を出力する際、又は、電子部品132において電気信号を処理する際に、逃した熱に起因して放射線画像に画像ムラが発生することも防止することができる。
【0104】
このように、第1実施形態によれば、より少ない材料で機械的強度のバランスを図ることにより電子カセッテ20A全体の軽量化を実現すると共に、外部から伝わる熱に起因した放射線画像の画像ムラの発生を防止することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、炭素繊維90を天板35内に配置することで、上記の各効果が得られるため、従来より一般的に用いられてきたCFRPからなる筐体に第1実施形態を容易に適用することが可能となる。
【0106】
また、ハウジング本体30のうち少なくとも天板35について、炭素繊維90を含むプリプレグ35a〜35dを天板35の厚み方向(z方向)に複数枚積層して構成することで、y方向に炭素繊維90を容易に配置することが可能となる。この場合、少なくとも最外層のプリプレグ35aに含まれる炭素繊維90をy方向に配置すれば、開口部44a、44b近傍での炭素繊維90のささくれの発生を回避することができる。
【0107】
また、第1実施形態では、下記の効果も得られる。
【0108】
ハウジング本体30の開口部44a、44bを蓋部材32、34で閉塞して筐体29を構成することにより、電子カセッテ20Aの落下や、外部からの衝撃があっても蓋部材32、34のみの破損で済ませることが可能となる。この結果、リワーク時には、蓋部材32、34のみ交換すればよく、電子カセッテ20Aの修理コストを大幅に削減することができる。
【0109】
このように、蓋部材32、34のみの破損で済むため、ハウジング本体30の中空部41(室110)に収容された放射線変換パネル116や、電源部94、フレキシブル基板122、126、駆動用IC124、読出用IC128、回路基板130及び電子部品132等の各種の電子部品を適切に保護することができる。
【0110】
また、ハウジング本体30には、2つの開口部44a、44bが形成されているので、どちらの開口部44a、44bからも室110内の放射線変換パネル116及び各種の電子部品の出し入れが可能となり、これらの構成要素の交換作業等を容易に行うことができる。
【0111】
さらに、上述のように、筐体29がモノコック構造であるため、装置全体の軽量化を実現できると共に、外部からの応力(例えば、筐体29の落下、被写体14からの荷重、外部からの衝撃)を筐体29全体として受けることができるので、該筐体29の機械的強度(耐落下性、耐荷重性、耐衝撃性)を向上させることができる。
【0112】
また、筐体29は、落下や外部からの衝撃に対して蓋部材32、34のみの損傷で済むような構造であるため、筐体29の上面である照射面36と底面46との損傷を回避することができる。
【0113】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電子カセッテ20Bについて図12〜図14を参照しながら説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0114】
第2実施形態に係る電子カセッテ20Bは、図12〜図14に示すように、中空部41に2つの案内部材188、190を配置した点で第1実施形態とは異なる。
【0115】
案内部材188、190は、アルミニウム等の熱伝導率が比較的良好な材質で構成され、x方向に沿って延在する矩形状の導電性部材である。この場合、案内部材188は、側板49の内壁に接するように中空部41内に配置されている。また、案内部材188には、基台112の一方の側部が嵌合する溝部192が設けられている。一方、案内部材190は、側板51の内壁に接するように中空部41内に配置されている。また、案内部材190には、基台112の他方の側部が嵌合する溝部194が設けられている。なお、第2実施形態において、基台112は、案内部材188、190と同様に、アルミニウム等の熱伝導率が比較的良好な金属材料からなることが望ましい。
【0116】
ここで、電源部94、基台112、放射線変換パネル116、フレキシブル基板122、126、回路基板130及び電子部品132をアッシー(ASSY)として一体的に構成し、いずれか一方の蓋部材32、34をハウジング本体30から離間させて、開口部44a又は開口部44bを外部と連通させた状態で、外部と連通した開口部を介して、ASSYを構成する基台112の一方の側部を溝部192に嵌合させると共に、基台112の他方の側部を溝部194に嵌合させ、該基台112を溝部192、194に沿って摺動させると、中空部41内に前記ASSYを容易に入れることができる。
【0117】
また、電子カセッテ20Bから前記ASSYを取り出す場合には、いずれか一方の蓋部材32、34をハウジング本体30から離間させて、開口部44a又は開口部44bを外部に連通させた後に、各溝部192、194に沿って基台112を外部に連通した開口部にまで摺動させればよい。
【0118】
このようにすれば、中空部41に対して前記ASSYを出し入れすることができ、該ASSYを構成する電源部94、基台112、放射線変換パネル116、フレキシブル基板122、126、回路基板130及び/又は電子部品132の交換が一層容易なものとなる。
【0119】
また、各案内部材188、190がハウジング本体30の2つの側板49、51にそれぞれ接触し且つx方向に沿って延在しているので、筐体29の厚みを薄くすることにより該筐体29全体の機械的強度が低下する場合でも、耐落下性や耐衝撃性を補償することができる。特に、図14のように、筐体29の厚みを薄くすると共に、側板49、51が丸みを帯びるような構造の電子カセッテ20Bでは、筐体29全体の機械的強度が低下する傾向があるため、各案内部材188、190を設けることで、機械的強度の低下を容易に補償することができる。
【0120】
また、基台112及び各案内部材188、190が熱伝導率の良好な導電性部材であれば、ハウジング本体30(を構成する炭素繊維90)と各案内部材188、190と基台112とが熱結合する構造となるため、電源部94、放射線変換パネル116、回路基板130及び電子部品132で発生した熱を、基台112及び各案内部材188、190を介してハウジング本体30に逃し、外部に放熱することが可能となる。この結果、放射線画像の画像ムラの発生を一層抑制することが可能となる。なお、被写体14から天板35に伝わる熱についても、天板35の炭素繊維90から案内部材188、190及び側板49、51を介して外部に放熱することも可能となる。
【0121】
また、第2実施形態では、各案内部材188、190を下記のように構成してもよい。
【0122】
各案内部材188、190の少なくとも一部を、衝撃を吸収する緩衝部材としてそれぞれ形成することにより、耐衝撃性を一層向上させてもよい。具体的には、各案内部材188、190において、溝部192、194を含む一部分を熱伝導性樹脂(例えば、フィラーを含んだ樹脂)又は金属で構成し、それ以外の他の部分を前記緩衝部材としての熱伝導性ゴムで構成する。このようにすれば、溝部192、194に沿った基台112の摺動性能と、該基台112から各案内部材188、190への伝熱機能とを損なうことなく、耐衝撃性を向上させることができる。この場合、溝部192、194を含む部分が熱伝導性樹脂で構成されていれば、各案内部材188、190が全体的に緩衝部材として機能し、一方で、溝部192、194を含む部分が金属で構成されていれば、熱伝導性ゴムの部分が緩衝部材として機能する。
【0123】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0124】
14…被写体
16…放射線
20A、20B…電子カセッテ
29…筐体
30…ハウジング本体
32、34…蓋部材
35…天板
35a〜35d…プリプレグ
36…照射面
41…中空部
44a、44b…開口部
49、51…側板
53…底板
90…炭素繊維
94…電源部
110…室
116…放射線変換パネル
120…光電変換層
122、126…フレキシブル基板
130…回路基板
132…電子部品
188、190…案内部材
192、194…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を放射線画像に応じた電気信号に変換する放射線変換パネルと、
前記放射線変換パネルからの前記電気信号を処理する電子部品が搭載された回路基板と、
前記放射線変換パネルと前記回路基板とを電気的に接続する接続部材と、
前記放射線変換パネル、前記電子部品、前記回路基板及び前記接続部材を収容し、且つ、前記放射線を透過可能な筐体と、
を備え、
前記筐体は、前記放射線変換パネル、前記電子部品、前記回路基板及び前記接続部材を収容可能な中空部と該中空部に連通する開口部とが形成された筒状の筐体本体部と、該開口部を閉塞する蓋部材とから構成され、
前記筐体本体部は、繊維強化プラスチックからなり、
前記筐体本体部のうち、少なくとも、前記放射線が照射される照射面を有する天板には、前記筐体本体部の軸方向と交差する方向に沿って前記繊維強化プラスチックを構成する繊維が配置され、
前記接続部材は、前記放射線の入射方向から視て前記軸方向に沿って延在し、且つ、該軸方向に交差する前記放射線変換パネルの側部に接続されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記繊維強化プラスチックは、炭素繊維強化プラスチックであり、
前記軸方向と交差する方向に沿って炭素繊維が配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記筐体本体部のうち少なくとも前記天板は、前記炭素繊維を含むプリプレグを前記天板の厚み方向に複数枚積層することにより構成されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
少なくとも最外層のプリプレグに含まれる炭素繊維は、前記軸方向と略直交する方向に配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記中空部における前記筐体本体部の対向する2つの側板の近傍には、少なくとも前記放射線変換パネル又は前記回路基板を前記開口部を介して前記中空部に出し入れ可能とする案内部材がそれぞれ配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記各案内部材は、前記筐体本体部の2つの側板にそれぞれ接触し且つ前記軸方向に沿って延在していることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記天板側の一面に前記放射線変換パネルが配置され、且つ、前記筐体本体部の底板側の他面に前記回路基板及び前記放射線撮像装置を駆動するための電源部が配置される基台が、前記筐体内にさらに収容され、
前記各案内部材には、前記軸方向に沿って溝がそれぞれ形成され、
前記基台の両側部を前記各溝にそれぞれ差し込むことにより、前記軸方向に沿って前記基台を摺動可能であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記各案内部材は、導電性部材であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記各案内部材は、少なくとも一部が衝撃を吸収する緩衝部材からなることを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−2828(P2013−2828A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130957(P2011−130957)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】